説明

肌質改善組成物及びその用途

【課題】エラスチン及びコラーゲンを体外から補充することによって、体内への補充と合成能力を高め、もって、エラスチン及びコラーゲンの機能を賦活させる組成物を提供する。
【解決手段】本発明の肌質改善組成物は、エラスチン100重量部に対して、コラーゲンを100〜20,000重量部、好ましくは1,000〜10,000重量部、L−アスコルビン酸を100〜3,000重量部、好ましくは100〜1,000重量部及び銅塩類を銅換算で1〜9重量部、好ましくは1〜5重量部を配合してなる。この肌質改善組成物は、それを含有する肌質改善用機能性食品、化粧品及び医薬としての用途が期待される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌質改善組成物及びその用途に関し、より詳細には、エラスチンを含む組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、鋼のように強い剛性を有する線維状のタンパク質であり、哺乳類、鳥類、魚類等の皮膚の真皮、腱、動脈、軟骨等に多く含まれている。エラスチンは、ゴムのように伸び縮みする弾性を有する線維状のタンパク質であり、哺乳類、鳥類、魚類等の皮膚の真皮、靭帯、動脈等の結合組織の中にコラーゲンと共に存在する。ヒトの皮膚では、コラーゲンとエラスチンを一定の割合で含んでいる。これらのタンパク質の量は、年齢とともに減少し、それが肌のハリや潤いの低下及びシワの原因となる。
【0003】
肌の老化現象を回復し、また、予防する方法として、体外からエラスチン及びコラーゲンを補充し、また、体内でのエラスチン及びコラーゲンの合成効率を高めるような機能性食品が研究されている。例えば、特許文献1には、オリーブの葉を加工して成る茶葉とコラーゲンとを含み、さらに必要に応じて、ビタミンC、ヒアルロン酸、コエンザイムQ10、L−カルニチン、コンドロイチン、アセチルグルコサミン、エラスチン及びアスタキチンサンから選ばれた少なくとも1種を含む食品組成物が開示される。オリーブの葉には、体内でのコラーゲンの合成を促進する効果を有するオレウロペインが豊富に含まれるため、コラーゲンとオレウロペインとを同時に摂取することにより、コラーゲンの体内合成効率が向上するとされる。
【0004】
特許文献2には、2種以上のムコ多糖類と、コラーゲン及び/若しくはエラスチン又はその部分分解物と、コエンザイムQ10とを有効成分として含有する経口用皮膚老化予防・改善剤が開示される。この改善剤は、経口的に摂取することにより、肌の老化による皮膚のしわ、たるみ、くすみ等の予防・改善効果と安全性とを兼ね備えるとされる。
【0005】
特許文献3には、メチルスルホニルメタンを含有し、さらに、ムコ多糖類、アミノ糖、コラーゲン、エラスチン、アミノ酸、及びセラミド類からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、美容効果を有する食品組成物が開示される。食品組成物を摂取することによって、美白効果、シワの防止及び低減効果、肌のハリやツヤを改善する効果等の優れた美容効果が得られるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−191845(食品組成物及びその製造方法)
【特許文献2】特開2006−143671(経口用皮膚老化予防・改善剤)
【特許文献3】特開2005−13124(美容効果を有する食品組成物)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術は、体内へのエラスチンやコラーゲンの補充や合成が十分でなく、効果として満足ゆくレベルにない。そこで、本発明の目的は、エラスチン及びコラーゲンを体外から補充することによって、体内への補充と合成能力を高め、もって、エラスチン及びコラーゲンの機能を賦活させる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を鋭意検討した結果、エラスチン及びコラーゲンに対してビタミン及び銅塩類を一定割合配合することにより、上記の課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、エラスチン100重量部に対して、コラーゲンを100〜20,000重量部、好ましくは10,00〜10,000重量部、L−アスコルビン酸を100〜3,000重量部、好ましくは100〜1,000重量部、及び銅塩類を銅換算で1〜9重量部、好ましくは1〜5重量部配合してなる肌質改善組成物を提供する。本明細書において、肌質改善組成物は、肌の老化防止剤を含む意味で使用される。
【0009】
前記銅塩類は、グルコン酸銅、硫酸銅、銅クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル及び銅酵母からなる群の少なくとも一種であることが好ましい。
【0010】
さらに、銅塩類として、グルコン酸銅を5〜65重量部、好ましくは5〜35重量部配合することが好ましい
【0011】
上記銅以外のミネラルには、亜鉛、コバルト、ニッケル、チタン、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、マグネシウム及びマンガンが挙げられる。
【0012】
本発明は、また、上記肌質改善組成物を含有する肌質改善用食品、経口用肌質改善化粧品及び肌質改善用医薬を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の肌質改善組成物は、エラスチン、コラーゲン、L−アスコルビン酸及びミネラルを特定の割合で配合することにより、従来のエラスチン及びコラーゲンを含む混合物よりも、エラスチン及びコラーゲンの吸収及び合成効率が改善され、その結果、肌のハリや潤いの向上、肌のシワの改善、肌のくすみの改善及び防止、肌荒れの改善及び防止、肌色の改善、肌のキメの改善等といった肌質改善効果を奏する。したがって、本発明の肌質改善組成物は、それを含む機能性食品や化粧品としての用途が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う肌質改善組成物(実施例1)を服用した被験者A(50歳、女性)の目尻のシワの3DレプリカのCCD写真を示す。1:摂取前(0度解析)2:摂取前(180度解析)3:8週間の摂取後(0度解析)4:8週間の摂取後(180度解析) ここで、0度解析は、シワの方向に沿って解析することを意味し、そして180度解析は、シワに沿って180度回転させた方向から解析することを意味する。各写真において、明度が上がっている部分の長さは、シワの幅、そして、影になっている部分の長さをシワの深さとして検出される。
【図2】コラーゲンを単独服用した被験者B(52歳、女性)の目尻のシワの3DレプリカのCCD写真を示す。1:摂取前(0度解析)2:摂取前(180度解析)3:8週間の摂取後(0度解析)4:8週間の摂取後(180度解析)
【図3】前記被験者Aの頬のキメの3DレプリカのCCD写真を示す。1:摂取前(0度解析)2:摂取前(180度解析)3:8週間の摂取後(0度解析)4:8週間の摂取後(180度解析) 各写真において、明度が上がっている部分の長さは、キメの幅、そして、影になっている部分の長さをキメの深さとして検出される。
【図4】前記被験者Bの頬のキメの3DレプリカのCCD写真を示す。1:摂取前(0度解析)2:摂取前(180度解析)3:8週間の摂取後(0度解析)4:8週間の摂取後(180度解析)
【発明を実施するための形態】
【0015】
エラスチンは、哺乳類、鳥類、魚類等、特に哺乳動物の大動脈、項靭帯、黄色靭帯、肺、皮膚、子宮、弾性軟骨等に、コラーゲンと共に存在する主要蛋白質である。エラスチンの物理的機能として、力学的性質である弾性及び耐久性が周知されている。エラスチンの弾性機能低下は、老化や動脈硬化症等の病的老化に伴う量的、質的及び構造変化と関連している。また、エラスチンは、細胞遊走、細胞増殖等の生物学的機能も有する。エラスチンの量的、質的及び構造的改善、弾性機能等の物理的機能及び生物学的機能が、本発明おける肌質改善機能に関与していると推量される。
【0016】
エラスチンは、生体内において3次元網目構造を有する不溶性タンパク質として存在する。エラスチンは、動物性生体組織、例えば哺乳動物、鳥、魚等の結合組織から、酸又はアルカリでエラスチンを加水分解し、又は酵素処理することによって抽出することができる。本発明で用いるエラスチンには、水溶性エラスチンの他に加水分解エラスチン、α-エラスチン、κ-エラスチン及びエラスチンペプチド等も含まれる。
【0017】
水溶性エラスチンは、本発明者の一部が発明者である特許4078431(水溶性エラスチンとその製造方法及びそれを含む食品と医薬)に記載されるように、動物性生体組織から得られた不溶性エラスチンを、一定のアルカリ溶液に溶解して得られるエラスチン溶解性の可溶化液から精製されたエラスチンであって、エラスチンを構成するアミノ酸の含有量が特定された分子量約50,000以下の低分子量水溶性エラスチンである。好ましくは、分子量約30,000以下の低分子量水溶性エラスチンである。
【0018】
上記水溶性エラスチンの製造方法は、(1)動物性生体組織からコラーゲンやその他の不要タンパク質を除去処理することによって不溶性エラスチンを得る工程、(2)不溶性エラスチンを可溶化液に溶解しエラスチン溶解可溶化液を得る工程、(3)エラスチン溶解可溶化液から低分子量水溶性エラスチンを回収する工程からなる。
【0019】
動物性生体組織には、豚、馬、牛、羊等の哺乳動物から得られた項靱帯、大動脈血管等が挙げられる。また、カツオ、マグロ、ハマチ、サケ等の魚類から得られた動脈球も挙げられる。動物性生体組織は、ミキサー、ミートチョッパー等でよりホモジナイズすることで、コラーゲン等の不要タンパク質を除去しやすくなる。ホモジナイズした動物性生体組織を、適宜、熱水、熱希薄アルカリ水溶液又は有機溶媒で脱脂処理する。
【0020】
前記コラーゲンやその他の不要タンパク質の除去処理は、0.01〜0.5M、好ましくは0.05〜0.5Mのアルカリ溶液中に、動物性生体組織を90〜105℃で10〜20分間浸漬して行う。このコラーゲンやその他の不要タンパク質の除去処理に先立って、0.1〜2Mの塩溶液中に動物性生体組織を常温で1時間浸漬しておくことが好ましい。
【0021】
前記可溶化液は、0.1〜0.5Mの酸性溶液又は0.01〜1.0M、好ましくは0.05〜0.5Mのアルカリ水溶液を液温90〜105℃に加熱したものである。
【0022】
上記製造方法により得られる水溶性エラスチンは、エラスチンを構成するアミノ酸の78〜85%がプロリン、グリシン、アラニン及びバリンからなり、2〜4%がアスパラギン酸及びグルタミン酸からなり、1〜2%がリジン、ヒスチジン及びアルギニンからなり、そして、0.2〜0.4%がデスモシン及びイソデスモシンからなる。
【0023】
本発明の肌質改善組成物の必須成分であるコラーゲンの由来は、特に制限されない。例えば、豚、魚、鳥等から公知の方法に基づいて抽出及び精製されたものである。本発明で用いるコラーゲンには、加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン及びコラーゲンペプチドも含まれる。コラーゲンペプチドは、例えば、動物の真皮を洗浄し、アルカリ処理後、中和し、コラーゲンを含有する抽出物を得た後、この抽出物をコラゲナーゼ酵素で分解することにより得られる。ペプチドは、適宜、ろ過、殺菌し、乾燥後、粉末化される。コラーゲン、加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン及びコラーゲンペプチドは、市販品を使用することも可能である。
【0024】
ヒトの皮膚は、コラーゲンとエラスチンとを約50対1の割合で含む。この割合は皮膚の機能を正常に保つのに重要である。したがって、本発明の肌質改善組成物においても、エラスチンとコラーゲンとは上記割合で含有する。具体的には、本発明の肌質改善組成物には、エラスチン100重量部に対して、コラーゲンが100〜20,000重量部、好ましくは1,000〜10,000重量部、さらに好ましくは3,000〜7,000重量部含有される。
【0025】
本発明の肌質改善組成物には、L−アスコルビン酸が必須である。L−アスコルビン酸を必須成分とすることにより、コラーゲンの体内での合成が促進される。
【0026】
本発明の肌質改善組成物中のL−アスコルビン酸の含有量は、エラスチン100重量部に対して、100〜3,000重量部であり、好ましくは100〜1,000重量部である。
【0027】
本発明の肌質改善組成物には、銅塩類が必須である。これにより、エラスチンの体内での合成が促進される。銅塩類の具体例としては、グルコン酸銅、硫酸銅、銅酵母、銅クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル等が挙げられ、好ましくはグルコン酸銅である。
【0028】
本発明の肌質改善組成物中の銅塩類の含有量は、エラスチン100重量部に対して、銅換算で1〜9重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。例えば、グルコン酸銅は、エラスチン100重量部に対して、5〜65重量部であり、好ましくは5〜35重量部となる。
【0029】
本発明の肌質改善組成物には、本発明の目的を阻害しない限り、本発明の肌質改善組成物以外に、銅以外のミネラル、タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、甘味料、香料、着色剤等を適宜添加可能である。
【0030】
上記銅以外のミネラルには、亜鉛、コバルト、ニッケル、チタン、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、マグネシウム及びマンガンが挙げられる。
【0031】
本発明の肌質改善組成物の形態は、丸剤、錠剤、カプセル、粒剤、顆粒、粉剤、シロップ、ドロップ、液剤、ビスケット、ゼリー、ゲル等、特に制限されない。エラスチンの摂取量を高めるために、丸剤、錠剤、液剤、粉剤、顆粒等が好ましい。
【0032】
本発明の肌質改善組成物は、老化によるエラスチン及びコラーゲンの合成効率の低下を補う作用を期待できる。本発明の肌質改善組成物は、肌のハリや潤いの向上、肌のシワの改善、肌のくすみの改善及び防止、肌荒れの改善及び防止、肌色の改善、肌のキメの改善等といった肌質改善用の機能性食品として提供される。
【0033】
本発明の肌質改善組成物は、また、経口摂取することにより、皮膚のハリやキメの改善シワの防止等の化粧品が欲する機能を奏する。これらの作用は、美容を目的とした化粧品の機能でもあり、したがって、本発明の肌質改善組成物は、経口摂取による化粧品ともいえる。そこで、本発明は、肌質改善組成物を含有する経口用肌質改善化粧品もまた提供する。
【0034】
本発明の肌質改善組成物は、アトピー性皮膚炎、主婦湿疹、手湿疹等の肌の異常に関連する疾病の治癒や予防にも有効である。
【0035】
本発明の肌質改善組成物の用量は、成人の一日当たり、通常、エラスチン換算で10〜500mg、好ましくは50〜200mg、さらに好ましくは75〜125mgに相当する量である。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の実施例を示すことによって本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
〔実施例1〕
1.肌質改善組成物の調製
特許4078431に記載の方法にしたがって、豚の結合組織から、低分子量水溶性エラスチンを調製した。具体的には、豚の大動脈部位から、刃物で脂肪や筋肉等エラスチン含量の低い部分を除いた後、ホモジナイザーでホモジナイズした。均質化した組織を、組織の2倍容量の沸騰水中で10分間煮沸し、この操作を繰り返して脱脂した。脱脂した組織を組織の2倍容量の1M塩化ナトリウム水溶液に浸漬して常温で50分攪拌し、さらに組織の10倍容量の1M塩化ナトリウム水溶液に浸漬して常温で1時間攪拌し、不要タンパク質を除去した。浸漬処理した組織を7.5倍容量の0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液に入れ、100℃で15分間攪拌し、コラーゲンを除去した。この操作を繰り返した。次いで、組織とアルカリ性溶液とを分離し、純度の高い不溶性エラスチンを得た。次に、不溶性エラスチンに対して10倍容量の0.2Mの水酸化ナトリウム可溶化液を加え、100℃で2時間攪拌することで不溶性エラスチンを断片化した。その後、溶液を中和して25℃以下に冷却し、200メッシュのろ紙でろ過した。次に10〜45℃でNF膜(MW1,000〜2,000)を用いて4時間以上脱塩し、95℃で30分間滅菌処理し、分子量約50,000以下の低分子量水溶性エラスチンを粉末として回収した。
【0038】
上記で得たエラスチンにコラーゲン(製品名:C−ペプチド、ゼライス(株)製)、L−アスコルビン酸(製品名:L−アスコルビン酸(ビタミンC)、BASFジャパン(株)製)、及びグルコン酸銅(製品名:食品添加物 グルコン酸銅、富田製薬(株)製)を表1に示す割合で配合した。調合物をエラスチン換算で100mgになるように一袋化した。また、陽性対照として、保湿やアンチエイジングの素材としてよく知られるコラーゲンを、表1に示す量で一袋化した。
【0039】
【表1】

【0040】
2.肌質改善組成物の評価
本発明の肌質改善組成物の摂取による肌改善効果を検証するため、表1に示す肌質改善組成物(実施例1)とコラーゲン(比較例1)を用いて、単盲験並行群間比較試験を実施した(※2群比較)。結果は、前後比較/対応のあるt−検定、群間比較/対応のないt−検定による統計処理をし、その有意水準を両側検定で危険率5%以下とした。
【0041】
被験者数は、実施例について8名及び比較例について8名の合計16名とした。被験者には、以下の条件:
(1)40〜60歳の日本人の女性
(2)目尻のシワが気になる者
(3)化粧のノリ、肌のたるみ、肌の乾燥が気になる者
(4)試験期間中、故意に直射日光にあたる事(日焼け)を控えられる者及び紫外線対策ができる者
(5)試験期間中、肌質改善効果を目的とした既存の機能性食品等(例えばエラスチン、コラーゲン、セラミド、ヒアルロン酸強化食品)の摂取を禁止できる者
(6)試験期間中、化粧品の変更や追加を禁止できる者
のすべてを満足する者を採用した。
【0042】
外見上識別できないようにした実施例1又は比較例1の試験品を、オレンジジュース160mLに混ぜたものを、各被験者は、一日一回、就寝前に摂取した。摂取期間は、8週間とした。
【0043】
試験品の摂取前と、摂取8週間後の被験者に対して、肌の3Dレプリカ解析を行った。この3Dレプリカ解析は、頬や目尻から経時的にレプリカを採取し、キメ・シワの状態を解析することで、化粧品、美肌用サプリメント等の長期使用による効果を判定する手法である。具体的には、被験者のサンプリング部位に液状シリコーンを塗布して凝固させ、凝固したシリコーンを剥がすことにより、採取部位のキメ・シワのレプリカ(複製)を作製した。キメの測定では、被験者の左耳朶下と唇端とを結んだ頬中心値から3Dレプリカを採取した。また、シワの測定では、被験者の左目尻シワ部位から3Dレプリカを採取した。
【0044】
これらの3Dレプリカに光りを斜めから当て、明るくなっている部分と影になっている部分をCCDカメラで撮影した。図1〜4にレプリカ画像のCCD写真を示す。
【0045】
次に、市販の反射用3Dレプリカ解析システム(製品名:ASA−03RXD、アサヒバイオメッド製)を用いて、撮像を二値化後、明度が上がっている部分の長さをキメ・シワの幅、そして、影になっている部分の長さをキメ・シワの深さとして検出した。
【0046】
キメの測定の評価項目は、以下の2種である。
キメ体積率:指定されたエリア内において、キメと判断されたものの総和を1mm当たりの平均値として表し、1/100したもの。この数値が摂取前後で増加していることが肌の改善を示す。
キメ個数:光源に対して水平方向の解析1mmにおいてキメと判断されたものの個数の指定エリア内の平均値。この数値が摂取前後で増加していることが肌の改善を示す。
【0047】
シワ測定の評価項目は、以下の4種である。
シワ体積率:指定されたエリア内において、シワと判断されたものの総和を1mm当たりの平均値として表し、1/100したもの。この数値が摂取前後で減少していることが肌の改善を示す。
シワ最大深度:レプリカに光源と水平方向にできた影の長さから算出されたものでシワと判断された中で深いものの値。この数値が摂取前後で減少していることが肌の改善を示す。
シワ個数:光源に対して水平方向の解析1mmにおいてキメと判断されたものの個数の指定エリア内の平均値。この数値が摂取前後で減少していることが肌の改善を示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2から、実施例1では、キメ体積率及びキメ個数の結果から肌の改善効果が認められた。特に、キメ体積率は、比較例1で肌の状態に改善が見られないのに対し、実施例1では明らかな改善が認められた。群間でも統計学的に有意な差が認められた。
【0050】
本試験は、外気の湿度が低下し、肌のキメやハリが悪化する時期に実施されたため、比較例1では明らかな改善が認められなかった。一方、実施例1では、シワ体積率で約20%、そしてシワ個数でも約10%の改善傾向が見られた。
【0051】
被験者に対して以下のアンケートを行った。
調査方法:肌のハリと弾力、肌のつや、肌の潤い、肌のかさつき、化粧のノリ、毛穴の目立ち、及びシワと小ジワを100mmの線分上にて回答させた。
観察時期:摂取前及び摂取8週後
解析手法:前後比較/対応のあるt-検定、群間比較/対応のないt-検定
【0052】
【表3】

【0053】
表3から、実施例及び比較例とも、肌に対する改善効果を体感として捉えることができたと考えられる。
【0054】
以上のとおり、本発明の肌質改善組成物は、コラーゲン単独よりも効果的であることが確認された。すなわち、本発明の組成物は、成分の相互作用により、肌状態を改善する効果を有し、特に肌のキメやシワに対する改善効果に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラスチン100重量部に対して、コラーゲンを100〜20,000重量部、1,000〜10,000重量部、L−アスコルビン酸を100〜3,000重量部、重量部及び銅塩類を銅換算で1〜9重量部配合してなる肌質改善組成物。
【請求項2】
前記銅塩類が、グルコン酸銅、硫酸銅、銅クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル及び銅酵母からなる群の少なくとも一種である、請求項1に記載の肌質改善組成物。
【請求項3】
前記銅塩類として、グルコン酸銅を5〜65重量部配合することを特徴とする、請求項1又は2に記載の肌質改善組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の肌質改善組成物を含有する肌質改善用食品。
【請求項5】
請求項1〜3いずれかに記載の肌質改善組成物を含有する経口用肌質改善化粧品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−136462(P2012−136462A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289479(P2010−289479)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(503027861)トーシン株式会社 (8)
【出願人】(511000647)株式会社バイタルリソース応用研究所 (1)
【Fターム(参考)】