説明

肝機能改善剤組成物

【課題】肝機能改善剤組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の肝機能改善剤組成物は、ネムノキ抽出物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝機能を改善するための組成物に関し、具体的に、本発明は、ネムノキ抽出物を有効成分とする肝機能改善剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓は、生体の化学工場に例えられるもので、肝機能障害が発生すると、最悪の場合には生命維持が困難になるほど、我々の身体の最も重要な臓器である。
【0003】
肝臓の機能は三つに大別される。一つ目は3大栄養素である炭水化物、脂肪及びタンパク質の代謝機能であり、二つ目はアルブミン、血液凝固因子などの血清タンパク質、胆汁酸、リン脂質、コレステロール、各種酵素などを合成・蓄積し、これを組織に適正に分配する機能であり、三つ目は老廃物又は有害物質の分解・解毒作用である。
【0004】
ウイルス、アルコール、糖尿、肥満、薬物、有害物質などが肝機能の障害をもたらすものと知られている(非特許文献1)。
【0005】
これらの原因により肝機能に障害が生じると、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(以下、「GPT」という)、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(以下、「GOT」という)、グルタミルトランスフェラーゼ(以下、「γ−GTP」という)が血液中に分泌されるため、血液中におけるこれらの酵素活性の量が上昇する。よって、血液中のこれらのGPT、GOT、γ−GTPなどの活性は肝臓の機能障害を示す指標として広く一般に用いられている(非特許文献2)。
【0006】
GPT、GOT、γ−GTPなどの活性を抑制することによって肝機能を改善することができることを開示している特許文献には、黄耆、党参(ツルニンジン)、ボクリョン、甘草、黄精、五味子、枸杞子などの粉末自体、水抽出物又はエタノール抽出物の混合物を有効物質として開示している特許文献1、ハスカップの実の抽出物を有効物質として開示している特許文献2、ケンポナシの実、茵陳蒿、葛根、陳皮、ソウジュツ、甘草、及び高麗人参の混合抽出物を有効物質として開示している特許文献3などがある。
【0007】
本発明は、GPT、GOT、γ−GTPなどの抑制活性を有するネムノキ抽出物を用いて肝機能を改善することが可能な技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2004−0084475号明細書
【特許文献2】韓国登録特許第699782号明細書
【特許文献3】韓国登録特許第771524号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Mt Sinai J Med 2000; 67(1):84-94
【非特許文献2】林真知子他, 日本薬理学雑誌, 100, 391-399(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は肝機能改善剤組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の具体的な目的は以下で提示されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者は、下記の実施例及び実験例から確認できるように、ネムノキを80%エタノール、80%メタノール又は酢酸エチルで抽出し、得られた抽出物のいずれも動物実験で血液中のGTP及びGOTの活性を抑制することを確認し、さらに、臨床実験においても血液中のGPT、GOT及びγ−GTPの活性を抑制することを確認することができた。
【0013】
本発明は、このような実験結果に基づいて完成したものである。
【0014】
したがって、本発明の肝機能改善剤組成物は、ネムノキ抽出物を有効成分として含むことを特徴とする。
【0015】
本明細書において、「有効成分」とは、単独で目的する活性を示し、又はそれ自体では活性がない担体と共に活性を示すことが可能な成分を意味する。
【0016】
また、本明細書において、「ネムノキ抽出物」は、抽出方法を問わず、抽出対象であるネムノキの葉、茎、花、根、皮(茎又は根の皮である、以下同じ)、実又はこれらの混合物をエタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル、飽和n−ブタノール、クロロホルム、塩化メチレン、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物と、その抽出物から前記列挙された溶媒で分離された抽出物を含む意味として理解される。抽出方法を問わないので、抽出対象であるネムノキの葉、茎、花、根、皮、実又はこれらの混合物を抽出溶媒に浸漬させる段階によって抽出される限り、抽出方法は冷浸、還流、加温、超音波などの任意の方式が全て適用できるものと理解されるべきである。それにも拘らず、前記「ネムノキ抽出物」は、好ましくは抽出対象であるネムノキの葉、茎、花、根、皮、実又はこれらの混合物を水、エタノール、メタノール、酢酸エチル又はこれらの混合溶媒で抽出して得られたものであって、抽出溶媒が除去された濃縮液相の抽出物又は固相の抽出物を含む意味である。
【0017】
一方、本発明の肝機能改善剤組成物は、その有効成分であるネムノキ抽出物を、肝機能改善活性を示すものであれば、用途、剤形、配合目的などに応じて任意の量(有効量)で含むことができるが、通常の有効量は組成物の全体重量に対して0.001重量%〜99.900重量%の範囲内で決定される。ここで、「有効量」とは、肝機能改善効果を誘導することが可能な有効成分の量をいう。このような有効量は当業者の通常の能力の範囲内で実験的に決定できる。
【0018】
本発明の肝機能改善剤組成物は、その有効成分であるネムノキ抽出物を含む他に、肝機能改善活性を向上又は補強することができるように、肝機能活性があることが知られている公知の天然物又は化合物を含んでもよい。
【0019】
そのような天然物又は化合物としては、黄耆粉末又は抽出物、党参粉末又は抽出物、ボクリョン粉末又は抽出物、甘草粉末又は抽出物、黄精粉末又は抽出物、五味子粉末又は抽出物、枸杞子粉末又は抽出物、桑枝粉末及び抽出物、ハスカップの実粉末又は抽出物、ケンポナシ(葉、茎、花、根、皮、実)粉末又は抽出物、茵陳蒿粉末又は抽出物、葛根粉末又は抽出物、陳皮粉末又は抽出物、ソウジュツ粉末又は抽出物、ハンノキ(葉、茎、花、根、皮、実)粉末又は抽出物、熟地榲粉末又は抽出物、ナナカマド(葉、茎、花、根、皮、実)粉末又は抽出物、冬虫夏草粉末又は抽出物などを挙げることができる。
【0020】
前記において、抽出物の意味はネムノキ抽出物に関連して前述したとおりである。このような抽出物は抽出対象を混合して得られることも可能である。
【0021】
本発明の肝機能改善剤組成物は、具体的な様態において、食品組成物、特に機能性飲料となることができる。
【0022】
本発明の食品組成物には、その有効成分の他に甘味剤、風味剤、生理活性成分、ミネラル成分などを含有してもよい。
【0023】
甘味料は、食品が適当な甘い味を出させる量を使用するとよく、天然のもの又は合成のものである。好ましくは天然甘味料を使用する。天然甘味料としてはトウモロコシシロップ固形物、蜂蜜、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトースなどの糖甘味料がある。
【0024】
風味料は、食品の味又は香りを良くするために使用できるが、天然のものと合成のものの両方とも使用できる。好ましくは、天然のものを使用する。天然のものを使用する場合、風味以外に栄養強化の目的も持たせることができる。天然風味料としては、リンゴ、レモン、ミカン、ブドウ、イチゴ、モモなどから得られたもの、又は緑茶の葉、アマドコロ、竹の葉、桂皮、菊の葉、ジャスミンなどから得られたものであってもよい。さらに、高麗人参(紅参)、筍、アロエベラ、イチョウなどから得られたものを使用することができる。天然風味料は液相の濃縮液又は固相の抽出物であってもよい。場合によっては合成風味料が使用できるが、合成風味料としてはエステル、アルコール、アルデヒド、テルペンなどが使用できる。
【0025】
生理活性物質は、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキンなどのカテキン類、又はレチノール、アスコルビン酸、トコフェロール、カルシフェロール、チアミン、リボフラビンなどのビタミン類などが使用できる。
【0026】
ミネラル成分は、カルシウム、マグネシウム、クロム、コバルト、銅、フッ素化物、ゲルマニウム、ヨウ素、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、リン、カリウム、セレニウム、珪素、ナトリウム、硫黄、バナジウム、亜鉛などが使用できる。
【0027】
また、本発明の食品組成物は、前記甘味料等の他にも、必要に応じて保存料、乳化剤、酸味料、粘増剤などを含むことができる。
【0028】
このような保存剤、乳化剤などは、それが添加される用途を達成することができるはんに限り、極微量で添加されて使用されることが好ましい。極微量とは、数値的に表現するとき、食品組成物の全体重量に対して0.0005重量%〜約0.5重量%の範囲を意味する。
【0029】
使用可能な保存剤は、ソルビン酸カルシウムナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)などがある。
【0030】
使用可能な乳化剤は、アカシアゴム、カルボキシメチルセルロース、キサンタンゴム、ペクチンなどがある。
【0031】
使用可能な酸味料は、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、リン酸、グルコン酸、酒石酸、アスコルビン酸、酢酸などを挙げることができる。このような酸味料は、味を増進させる目的以外にも微生物の増殖を抑制する目的で食品組成物が適正の酸度となるように添加できる。
【0032】
使用可能な粘増剤は、懸濁剤、沈降剤、ゲル形成剤、膨化剤などがある。
【0033】
本発明の組成物は、具体的な様態においては、薬学的組成物として使用できる。
【0034】
本発明の薬学的組成物は、その有効成分以外に、薬学的に許容される担体、賦形剤などを含み、経口用剤形(錠剤、懸濁液、顆粒、エマルジョン、カプセル、シロップなど)、非経口用剤形(滅菌注射用水性又は油性懸濁液)、局所用剤形(溶液、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、パッチ)などに製造できる。
【0035】
ここまでの説明において、「薬学的に許容される」とは、有効成分の活性を抑制せず、処方対象に適応可能な以上の毒性であり、十分に低い毒性であるという意味である。
【0036】
薬学的に許容される担体の例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、澱粉(例えば、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉など)、セルロース、その誘導体(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースなど)、麦芽、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムなど)、硫酸カルシウム、植物性油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、胡麻油、オリーブ油など)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセリンなど)、アルギン酸、乳化剤(例えば、TWEENS)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、着色料、風味料、錠剤化剤、安定化剤、抗酸化剤、保存料、水、食塩水、リン酸塩緩衝溶液などを挙げることができる。このような担体は、本発明の薬学的組成物の剤形に応じて適当なものを少なくとも一つ選択して使用することができる。
【0037】
賦形剤も、本発明の薬学的組成物の剤形に応じて適したものを選択して使用することができるが、例えば、本発明の薬学的組成物が水性懸濁剤に製造される場合に適した賦形剤としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどの懸濁剤や分散剤などを挙げることができる。注射液に製造される場合に適した賦形剤としてはリンガー液、等張塩化ナトリウムなどを挙げることができる。
【0038】
本発明の薬学的組成物は、経口又は非経口で投与でき、場合によっては局所的に投与できる。
【0039】
本発明の薬学的組成物は、その1日投与量が通常0.001〜150mg/kg体重の範囲であり、1回又は数回に分けて投与することができる。ところが、本発明の薬学的組成物の投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重、患者の重症度などの様々な関連因子に応じて決定される。よって、前記投与量はいずれの側面からも本発明の範囲を限定するものと理解されてはならない。
【発明の効果】
【0040】
前述したように、本発明によれば、ネムノキ抽出物を用いた肝機能改善剤組成物を提供することができる。
【0041】
本発明の肝機能改善剤組成物は、機能性飲料などの食品組成物、錠剤、カプセル剤、液状製剤などの薬学的組成物に製品化されて使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を実施例及び実験例によって説明する。ところが、本発明の範囲はこれらの実施例及び実験例に限定されるものではない。
【0043】
<実施例>ネムノキ抽出物の製造
<実施例1>ネムノキ抽出物の製造例1
ネムノキの葉、茎、花、根、皮、実の混合粉砕物を80%エタノールに浸漬させ、12時間80℃の温度で抽出した後、抽出残渣を除去し、減圧濃縮して粉末状のネムノキ抽出物を得た。
【0044】
<実施例2>ネムノキ抽出物の製造例2
前記実施例1と同様にネムノキ抽出物を製造するが、80%メタノールを使用した。
【0045】
<実施例3>ネムノキ抽出物の製造例3
前記実施例1と同様にしてネムノキ抽出物を製造するが、酢酸エチルを使用した。
【0046】
<実験例>肝機能改善実験
<実験例1>肝機能改善動物実験
前記実施例で得られたネムノキ抽出物の肝機能改善効果を確認するために、実験動物に高脂肪食餌を給与して肝毒性を誘発した。
【0047】
実験動物は3週齢のSD系雄白マウス12匹を1群の実験群とし、対照群には10週間高脂肪食餌を給与し、実験群には10週間高脂肪食餌に前記実施例の各抽出物を添加して給与した(下記表1参照)。
【0048】
【表1】

【0049】
飼育室の条件は温度18±2℃、照明周期(L/Dサイクル)12時間、湿度60%とし、水と食餌は自由に与えた。
【0050】
飼育が終了した実験動物から血液を採取し、遠心分離して血清のみを分離した後、GPT及びGOT測定用キット(Bayer、USA、モデル名ADVIA 1650)でGPT及びGOTの活性を測定した。結果を下記表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
前記実験結果の統計分析は、one way ANOVAを使用し、Duncan's multiple range testによって5%水準で有意性を検証した。
【0053】
<実験例2>肝機能改善臨床実験
前記実施例1の抽出物80重量%及び蜂蜜20%の混合物100gに水1200ミリリットルを混合して飲料を製造し、この飲料を、肝機能障害を有する15名に1日1回、合計8週間飲ませ、実験開始時、実験開始から4週後及び実験開始から8週後にそれぞれ採血して、血清のGPT、GOT及びγ−GPTの活性を測定した。ここでは代表的に実施例1の抽出物のみを使用した。
【0054】
結果は下記の表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
実験前後の有意性検証はpaired T-testを用いて5%、1%及び0.1%の水準で行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネムノキ抽出物を有効成分として含む、肝機能改善剤組成物。
【請求項2】
前記ネムノキ抽出物はネムノキの葉、茎、花、根、皮、実又はこれらの混合物をエタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル、飽和n−ブタノール、クロロホルム、塩化メチレン、水、又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の肝機能改善剤組成物。
【請求項3】
前記ネムノキ抽出物はネムノキの葉、茎、花、根、皮、実又はこれらの混合物をエタノール、メタノール、酢酸エチル、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の肝機能改善剤組成物。
【請求項4】
前記組成物は、黄耆の粉末又は抽出物、党参の粉末又は抽出物、ボクリョンの粉末又は抽出物、甘草の粉末又は抽出物、黄精の粉末又は抽出物、五味子の粉末又は抽出物、枸杞子の粉末又は抽出物、ハスカップの実の粉末又は抽出物、ケンポナシ(葉、茎、花、根、皮、実)の粉末又は抽出物、茵陳蒿の粉末又は抽出物、葛根の粉末又は抽出物、陳皮の粉末又は抽出物、ソウジュツの粉末又は抽出物、ハンノキ(葉、茎、花、根、皮、実)の粉末又は抽出物、熟地黄の粉末又は抽出物、ナナカマド(葉、茎、花、根、皮、実)の粉末又は抽出物、冬虫夏草の粉末又は抽出物、及び桑枝の粉末又は抽出物よりなる群から選ばれたものを一つ以上含むことを特徴とする請求項1に記載の肝機能改善剤組成物。
【請求項5】
前記組成物が食品組成物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の肝機能改善剤組成物。
【請求項6】
前記食品組成物が飲料であることを特徴とする請求項5に記載の肝機能改善剤組成物。
【請求項7】
前記組成物が薬学的組成物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の肝機能改善剤組成物。

【公表番号】特表2013−510846(P2013−510846A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538743(P2012−538743)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002462
【国際公開番号】WO2011/059150
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512117339)
【Fターム(参考)】