肝炎に対するバクテリオファージを介する免疫
本発明は、免疫原性タンパク質/ペプチドを発現するように設計されたバクテリオファージを含むワクチンに関する。本発明のバクテリオファージ表面は、特定の細胞タイプの表面レセプターに対しファージを標的とするように設計されるペプチド/タンパク質を含むようには修飾されていない
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性タンパク質/ペプチドを発現するように設計されたバクテリオファージを含むワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子ワクチン接種は、核酸をワクチン成分として使用する新しく刺激的な手法である(総説として非特許文献1:Leitner et al., Vaccine 18: 765-777,2000参照)。これと対照的に、従来のワクチンでは、病原微生物またはその抗原部分を使用する必要がある。「従来の」ワクチンには3種類のタイプ:弱毒ワクチン、死菌/サブユニットワクチン、及び組換体ワクチンがある。弱毒ワクチンは病原性が低減された生菌を用いるもので、一般に最も有効なワクチンである。しかし、ワクチン成分である菌がチェックされずに成長したり病原性を有するタイプに復帰した場合に面倒な問題を生じるおそれがある。死菌ワクチンまたはサブユニットワクチンは複数回の注射が必要であり、その結果、コストが増す上、適切な投与をする上で問題があり、さらに、微生物が完全に死滅していないおそれもある。組換体ワクチンは、病原微生物由来の抗原を非病原性ベクターに組み込むものであり、効果的であるが、本来の立体構造のまま抗原を発現させるのが困難なため、効果が限られる場合が多い。
【0003】
ワクチンを有効にするには、十分に長い期間にわたって十分な量の抗原を投与し、2次(記憶)応答を誘導する必要がある。しかし、これは従来のワクチンでは問題がある。一方、DNA/RNAワクチンは、長期にわたって病原性抗原のコピーを有効に生産し、生ワクチンで見られるのと同様に、MHCクラスI応答とクラスII応答の両方を誘導することができる。しかし、有望であるとされているにもかかわらず、DNAワクチンは、まだその力を十分に発揮していない。感染微生物の攻撃を受けた際、DNAワクチンの多くは、測定可能な体液性(抗体)免疫応答を引き起こすにもかかわらず低い効果しか示さない(非特許文献2:Beard, CW & Mason PW., 1998. Nature Biotech. 16: 1325)。
【0004】
現時点では、核酸が宿主細胞に入り免疫応答を誘導するメカニズムはよくわかっていないが、最も簡単な手法は、可溶性注入液として通常筋肉内にDNAを投与することである。一般にはこれとは異なる2つの方法が使用されており、それらは、「遺伝子銃」法(DNAを微小金粒子上に付着させ、ヘリウム高速流を用いてこれを細胞内に強制注入する)とリポソームを用いたトランスフェクション(宿主細胞膜と融合する正電荷脂質によってDNAを被覆し複合体を形成する)である。免疫部位を取り巻く細胞がDNAを取り込んでコードされた抗原を発現し、これが免疫系の抗原提示(AP)細胞により「異物」と認識され、これによりT細胞とB細胞が活性化されて抗原に対する免疫応答が誘導されると考えられている。
【0005】
しかし、これには以下の問題がある。すなわち、(1)大多数のDNAが非AP細胞において発現するため、発現が比較的不十分な上、非特異的である。(2)非AP細胞において外来抗原が発現すると、その細胞が宿主免疫系から「感染状態にある」と認識され、結局その細胞が死んでしまうため、免疫応答が可能な期間が短くなってしまう。さらに、(3)裸のDNA/RNAはヌクレアーゼの作用に非常に敏感である。このため、免疫に用いられた核酸は大多数が免疫直後に分解されてしまう。
【0006】
国際公開第98/05344号(特許文献1)には、外来遺伝子を送達するために、標的細胞上のレセプターに結合するリガンドをその表面に含むように修飾されたバクテリオファージベクターを用いる方法が記載されている。この文献に記載されたベクターは、概ね遺伝子治療(この場合、ベクターは特定の細胞タイプを標的とする。)のために使用することが意図されている。抗原ペプチドを送達するために修飾バクテリオファージベクターを使用することにも言及している。
【0007】
米国特許第5,736,388号公報(特許文献2)には、真核細胞に核酸分子を送達するために、変異体尾部繊維タンパク質を組み込むか、または真核細胞レセプターに対するリガンドを組み込んで修飾したラムダ型のバクテリオファージが記載されている。
【0008】
米国特許第6,054,312号公報(特許文献3)は、表面にリガンドを提示する繊維状ファージ粒子に関するものであり、リガンドは、ファージ粒子に共有結合しているか修飾されたファージ粒子と複合したファージキャプシドタンパク質との融合タンパク質である。
【0009】
国際公開第99/55720号(特許文献4)も、標的遺伝子送達で使用される異種起源の標的タンパク質を外部に提示するように修飾したファージについて記載している。
【0010】
しかし、前述の特許/特許出願はすべて、一般に遺伝子治療の目的で核酸を特定の細胞を標的として送達し得るようにファージ表面を修飾することを記載している。
【0011】
多数の文献(Ishiura, M. et al, Molec. And Cell. Biol., p607-616, 1982(非特許文献3); Aujame, L. et al, Biotechiques, 28 pl202-1213, 2000(非特許文献4); Horst, J. et al, Proc. Natl. Acad. Sci., 72, p3531-3535, 1975(非特許文献5); Jkayama and Dery, Molec. and Cell. Biol. 5, pll36-1142, 1985(非特許文献6);及びSrivatsan, E. et al, 38, p227-234, 1984(非特許文献7))が、哺乳類培養細胞に感染させ、タンパク質を発現させるためのファージの使用に関連している。しかし、これがインビボに適用し得るという示唆、あるいはワクチンの開発に使用できるという示唆はない。
【0012】
【特許文献1】国際公開第98/05344号
【特許文献2】米国特許第5,736,388号公報
【特許文献3】米国特許第6,054,312号公報
【特許文献4】国際公開第99/55720号
【非特許文献1】Leitner et al., Vaccine 18: 765-777,2000
【非特許文献2】Beard, CW & Mason PW., 1998. Nature Biotech. 16: 1325
【非特許文献3】Ishiura, M. et al, Molec. And Cell. Biol., p607-616, 1982
【非特許文献4】Aujame, L. et al, Biotechiques, 28 pl202-1213, 2000
【非特許文献5】Horst, J. et al, Proc. Natl. Acad. Sci., 72, p3531-3535, 1975
【非特許文献6】Jkayama and Dery, Molec. and Cell. Biol. 5, pll36-1142, 1985
【非特許文献7】Srivatsan, E. et al, 38, p227-234, 1984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は前述の問題点の少なくとも1つを解消及び/または軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1に、本発明は、表面が修飾されていないバクテリオファージ粒子及び薬学的に許容される担体を含む肝炎ワクチン製剤を提供する。ここで、バクテリオファージ粒子は、生物体の抗原提示細胞の表面で発現及び提示され得る肝炎ウイルスポリペプチドをコードする外来の核酸分子を含み、その生物体中で前記ポリペプチドに対する免疫応答が引き起こされるものである。
【0015】
前述の開示例(例えば、国際公開第98/05344号、米国特許第5,736,388号公報、米国特許第6,054,312号公報及び国際公開第99/55720号参照)と異なり、本発明のバクテリオファージの表面は、ファージ表面に外来ペプチド/タンパク質(つまり、通常は存在しないペプチド/タンパク質)を含むようには修飾されておらず、特定の細胞タイプの表面レセプターに対しファージを標的とするように設計されていない。それ故、特定の細胞タイプの表面レセプターに対しファージを標的とするように設計せずに、外来ペプチド/タンパク質を含むようにバクテリオファージの表面を修飾してもよいという点は、理解される。
【0016】
肝炎ワクチンは肝炎ウイルス、例えばA型、B型、C型、D型またはE型、好ましくはB型のいずれかに対する予防接種に用いることが出来る。AP細胞の表面に発現及び提示された抗原は免疫応答を誘導できる他の肝炎タンパク質が発現されているにもかかわらず、B型肝炎表面抗原(HBs)のような表面抗原になる。
【0017】
さらに、バクテリオファージは1個以上の肝炎抗原を発現するように設計され、例えば1個以上の肝炎型から抗原を発現することができる。
【0018】
本発明者は高用量のバクテリオファージ粒子がより良好な免疫応答をもたらすことを観察している。したがって、好ましくは109個以上のバクテリオファージ、1010個あるいは1011個以上のバクテリオファージ粒子のような投与量が動物に投与される。
【0019】
したがって、第2に、109個以上のバクテリオファージ粒子、各粒子の修飾されていない表面及び薬学的に許容し得る担体を含むワクチン製剤が提供され、上記バクテリオファージ粒子は生物体の抗原提示細胞の表面に発現及び提示し得るポリペプチドをコードする外来核酸分子を含み、その結果上記ポリペプチドに対する免疫応答が生物体で惹起される。
【0020】
本発明者は、粒子表面に標的とするペプチドまたはリガンドを含むようには修飾されていないバクテリオファージがAP細胞によって取り込まれることを観察した。このように、本発明のバクテリオファージは「異物」として認識され、従って、宿主免疫系によって通常の方法で処理されると考えられる。さらに、外来ペプチド/タンパク質(それは選択された哺乳類宿主中には通常存在しないペプチド/タンパク質である)をコードし得る外来核酸を含むようにバクテリオファージのゲノムを修飾することによって、この外来タンパク質への免疫応答が誘発される。従って、外来ペプチド/タンパク質をコードする核酸は(抗原提示細胞その他において)発現され、AP細胞の表面上に提示される。免疫応答は体液性(即ち抗体)及び/または細胞性免疫応答のいずれでもよい。
【0021】
外来核酸は、天然には存在しないポリヌクレオチドに関するもので、異種起源のペプチドまたはタンパク質として(即ち、天然に存在するバクテリオファージ中では通常発現されないか生物学的に有意なレベルで発現されないペプチドまたはタンパク質として)発現され得るものである。発現されたペプチドまたはタンパク質は、ワクチンが接種された宿主において免疫応答を引き起こすのに十分なレベルで発現される。
【0022】
第2点に従って本発明は、病原体の1種または複数のタンパク質に対して適切な免疫保護反応が惹起され得る限りにおいて、必ずしも肝炎に限らず実際上任意の感染症のワクチンの調製に適用できる点が理解されるべきである。適当な疾病の例は、疾病を引き起こす病原体そのものに対しての予防接種、あるいは、疾病を運ぶベクターに対する予防接種を含む。こうした病原体またはベクターは、ウイルス、バクテリア、真菌類、酵母、原虫類、寄生虫、昆虫及び感染性海綿状脳症を含む。本発明は、ヒト及び動物の両方の感染症に適用可能である。適当な疾病のリストは当業者にはよく知られており、その例は、「O.I.E.標準品のマニュアル及び診断試験」第3版(O.I.E. Manual of Standards and Diagnostic Tests 3rd Ed., OIE, Paris 1996), トップリー&ウィルソン「細菌学・ウイルス学・免疫の原理」第8版(Topley & Wilson's Principles of Bacteriology, Virology and Immunity 8th Ed., Eds.Parker M.T. and Collier L.H., Vol. IV (Index), Edward Arnold, London 1990), Bell J.C.他著「人畜共通伝染病:動物から人への感染移行」(The Zoonoses: Infections Transmitted from Animals to Man. Bell J.C. et al., Edward Arnold, London 1988)及びNoble E.R.他著「寄生虫学:動物寄生虫の生物学」第6版(Parasitology: The Biology of Animal Parasites 6th Ed. Noble E.R. et al., Lea Febiger, Philadelphia, 1989.)に見ることができる。さらに、ワクチンタンパク質として癌細胞特異的抗原の発現による癌細胞に対する免疫応答を引き起こすために本発明を使用することができる。
【0023】
従って、本発明は、外来核酸(例えばDNA)を、例えば細胞中に存在する例えばヌクレアーゼから保護するため、安定なマトリックス内に封じ込める方法を提供する。バクテリオファージ表面の「外来」タンパク質は、特に抗原提示(AP)細胞への核酸の直接取り込みを可能にする。理論的に限定されるものではないが、バクテリオファージ粒子は外来抗原として認識されると予想される。粒子全体がこのように宿主免疫系の抗原提示細胞によって直接取り込まれ、タンパク質被覆が除去され、DNAが放出される。次いで、これが核に移動して発現される。このプロセスは、ワクチンDNAの発現及びその後のポリペプチドの生産が、免疫応答を引き起こすのには最適のルートであるAP細胞内でのみ起こるため効率的であると考えられる。
【0024】
一般に、「ポリペプチド」という用語は、抗原活性を示す一連のアミノ酸またはその配列を指し、特定の長さの生成物を指すものではない。ポリペプチドは、必要であれば、インビボで及び/またはインビトロで、例えば、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化及び/または翻訳後の開裂によって修飾されてもよく、従って特に、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質及び融合タンパク質が含まれる。当業者には当然理解されるであろうが、修飾されたポリペプチドは生理的機能(すなわち、免疫応答を引き起こす能力)を保持すべきである。
【0025】
本発明のバクテリオファージは、好ましくは、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター及び/またはその他同種のものなど、適切な転写/翻訳レギュレーターを含む。典型的には、プロモーターはCMV、SV(シミアンウイルス)40、チミジンキナーゼ、RSVプロモーターその他の真核生物プロモーターでよい。プロモーターはコンスティテューティブプロモーターが便利である。しかし、当業者に既知の制御可能なプロモーターも使用してもよい。例えば、コンスティテューティブプロモーターと制御可能なプロモーターの制御下に外来核酸を含むコンストラクトを設計してもよい。このようにすれば、初めにコンスティテューティブプロモーターによって外来核酸の発現を誘導し、次の時点で制御可能なプロモーターを発現させ、それによって外来核酸の発現を引き起こすことができる。これによって、より強い免疫応答をもたらすこともできる。
【0026】
多数の適当なバクテリオファージが当業者に知られている。適当なバクテリオファージの例はラムダ(λ)である。現在、バクテリオファージλは日常的なDNA操作手順でクローニングベクターとして使用されている。これらについては、DNAはファージ構造体とは別個に精製される。しかし、完全なλファージ粒子は、上に挙げた基準を満たす。すなわち、DNAは、宿主免疫系によって外来抗原として認識される保護タンパク質マトリックス内に包含される。ファージλは通常大腸菌に感染するため、そのDNAは真核細胞では「不活性」、つまり、発現されないと考えられる。しかし、DNAが哺乳類細胞に取込まれた場合、対象とするワクチン(または外来)遺伝子の上流に真核生物プロモーターが組み込まれ、次いでその遺伝子が発現されるのであれば、抗原、つまり、タンパク質/ペプチドが生じるはずである。日常的なクローニングベクターとして広範囲に使用されているため、λには多数の変異体が存在し、その中には、哺乳類細胞での発現のために設計された強力な真核生物のプロモーターが含まれる。通常は、λベクターの関連部分は、さらに遺伝子操作を行なう前にプラスミドDNAとして除去される。次いで、大腸菌宿主由来の高度に精製したプラスミドDNAが、遺伝免疫のために使用される。しかし、真核生物のプロモーター及び対象とするワクチン(つまり、外来)遺伝子を含む完全なλファージ粒子を免疫のために使用する場合、それはAP細胞によって取り込まれる。タンパク質被覆の除去に続いて、AP細胞内で直接に抗原が産生されると考えられ、抗原がAP細胞の表面に提示されて免疫応答を引き起こす。この場合、免疫用ファージ粒子の調製に必要なのは最も基礎的な精製プロセスだけである。プラスミドクローニングベクターと比較して、λを使用するさらなる利点は、より大きなサイズの挿入断片を収容できるという点である。
【0027】
他の適当なバクテリオファージも、当業者によく知られており、p1ファージ、Tファージ(例えばT1〜T7)、Mu、fdまたはM13並びに繊維状ファージが含まれる。
【0028】
本発明で好ましいバクテリオファージは、外来核酸及び関連するプロモーター、エンハンサー、ターミネーター及び/または同様なものを、約0.5〜l00キロ塩基の間に組み込む能力を有するものである。例えば、既知のラムダファージは、9〜50キロ塩基の間に収容できる。このようにすれば、1個のペプチド/タンパク質または複数のペプチド/タンパク質の単一または多数のコピーを発現することが可能である。
【0029】
典型的には、本発明のバクテリオファージは、選択された哺乳類の宿主の自然な細菌叢中で溶解成長(lytic growth)をしない。例えば、「研究室」ファージ株の多くは、非野生株である「研究室」細菌株にのみ感染できることが知られている。これに加え、またはこれに代えて、バクテリオファージは宿主の細菌株中でもインビトロでは溶解成長しないかインビトロでの生育にヘルパーファージを必要とする。従って、バクテリオファージは、例えば、アンバー変異、温度感受性変異などを含んでもよい。
【0030】
AP細胞中で外来核酸の発現を増強するための手段が一般に提供されている。このような手段としては、核酸分解を最小限にすること及び/または核を標的とすることを支援する方法が挙げられる。このような手段の例としては、クロロキンまたは他のリソソーム/エンドソーム酵素異化阻害剤を使用して核酸分解を最小限にする方法、及び/または核移行シグナルを使用して核酸を核に移行させる方法が挙げられる。
【0031】
ワクチン製剤は、バクテリオファージによって発現させるべきタンパク質源をさらに含んでもよい。このようにすれば、宿主は、タンパク質への1次的な免疫応答を誘発し、次いで、AP細胞の表面で発現され提示されたタンパク質によりさらに持続的な免疫応答を引き起こすことができる。
【0032】
別の具体化では、ファージ粒子表面の抗原タンパク質を発現するためにファージを修飾してもよい。例えば、ベクター媒体として完全なバクテリオファージM13粒子を使用することが可能である。M13に対する挿入サイズはλに対するものよりも相当に小さいが、「ファージディスプレイ」法(Hawkins, RE et al. 1992, J. Mol. Biol. 226: 889)は、ファージ粒子が、その外殻タンパク質に融合させた外来抗原部分を媒介できることを意味している。従って、ワクチン遺伝子が原核生物プロモーター(例えばLac Zプロモーター)と真核生物プロモーター(例えばCMVプロモーター)の両方の制御を受けるようなコンストラクトを作成することができ、大腸菌宿主中で成長させた場合、原核生物プロモーターはワクチン抗原の発現を指示し、タンパク質複合体としてM13外殻への組込みを可能にし、この結果、ワクチン後に強力な1次反応を誘導するはずである。次いで、AP細胞による取り込みに続いて、DNAが放出され、真核生物プロモーターがAP細胞内部からのワクチン抗原の長期にわたる発現を指示し、強力な2次応答が維持されるであろう。
【0033】
外来核酸は、免疫応答を増強することができるポリペプチドのような、少なくとも1つの別のポリペプチドをコードしてもよい。別のポリペプチドはサイトカインなどのアジュバントタンパク質やポリペプチドでもよく、例えばγインターフェロン(γIFN)のようなインターフェロン、IL−2、IL−6、IL−7、IL−12、GM−CSF及び/または他のサイトカイン/ケモカインをコードするものでもよい。さらに、HepBコア抗原のような「ヘルパーエピトープ」が、B細胞を活性化し、かつ強いT細胞反応を誘導するために使用できる。あるいはまたはさらに、CpGオリゴジヌクレオチドなどの免疫刺激シグナルを使用してもよい。
【0034】
バクテリオファージは、任意の適当な経路、例えば注入によって投与することができ、例えば、アンプルに入れて、または複数回分の投与量を容器に入れて単位用量形式(unit dosage form)で調製してもよい。バクテリオファージは、油性もしくは好ましくは水性媒体を用いた懸濁液、溶液または乳剤などの形でもよい。あるいは、バクテリオファージは凍結乾燥された形とし、投与の際に発熱性物質を含まない滅菌水などのような適当な媒体で再構成してもよい。この方法では、タンパク質、糖などの安定化剤をファージ粒子を凍結乾燥する際に加えてもよい。液状でも再構成される凍結乾燥形でも、注入溶液のpHを適切に調節するのに必要な量の薬剤、好ましくはバッファーを含む。非経口投与、特に、製剤を静脈内投与しようとする場合、溶質の総濃度は、製剤を等張性であるか低張性またはわずかに高張性であるように調整しなければならない。浸透圧の調節には糖のような非イオン性物質が好ましく、特にショ糖が好ましい。これらの形のうちのいずれでも、さらにデンプンまたは糖、グリセリンまたは食塩水などの適当な調整剤を含んでもよい。組成物は、液体でも固体でも、単位用量あたりバクテリオファージ材料を0.1%から99%まで含む。
【0035】
好ましい実施態様では、ワクチンはアジュバントを含んでもよい。一般にアジュバントは、非特異的に宿主の免疫応答を強化する物質を含む。多種多様なアジュバントが当業者に知られている。アジュバントの例としては、フロイント(Freund)完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、リポソーム及び、国際公開第90/11092号に記載されているようなニオソーム(niosome)、鉱物油及び非鉱物油ベースの油中水型乳剤アジュバント、サイトカイン、短い免疫刺激ポリヌクレオチド配列(例えば、Sato Y. et al. (1996) Science Vol. 273pp. 352-354; Krieg A.M. (1996) Trends in Microbial. 4pp. 73-77Sato Y. et al. (1996) Science Vol. 273pp. 352-354; Krieg A.M. (1996) Trends in Microbial. 4pp. 73-77に記載されているようなCpGジヌクレオチドを含むプラスミドDNA)が挙げられる。
【0036】
バクテリオファージはいわゆる「媒体」と結合させてもよい。媒体は共有結合することなくバクテリオファージが付着することができる化合物または基質である。典型的な「媒体」化合物は、金粒子、ガラスなどのシリカ粒子などを含む。従って、本発明のバクテリオファージはバイオリスティック(biolistic)な方法を使用して生物体に導入してもよい。例えば、被覆された金粒子を使用する高速衝撃法(high-velocity bombard method)が文献に記載されている(Williams R.S. et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88pp. 2726-2730; Fynan E.F. et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol. 90pp. 11478-11482)。
【0037】
さらに、ワクチンは1種類またはそれ以上の適当な界面活性化合物または乳化剤、例えばスパン(Span)またはトゥイーン(Tween)を含んでもよい。
【0038】
本発明のワクチンの投与態様は、患者に本発明の免疫保護量のウイルスを送達するものであれば任意の適当なルートによるものでよい。しかし、ワクチンは、筋肉内または深い皮下ルート経由で好ましくは非経口的に投与される。必要であれば、経粘膜(例えば経直腸、経口、経鼻、経膣)投与で、または他の腸管外ルート経由、すなわち、皮内、鼻腔内または静脈内などの他の投与態様も使用できる。経鼻投与のための製剤を開発してもよいし、アジュバントとして例えばキトサンを含んでもよい(Nat. Medicine 5(4) 387-92, 1999)。
【0039】
しかし、任意の特定のレシピエント生物体に対する具体的投与量は、年齢、一般的な健康状態及び性別、投与時間、投与ルート、投与されている他の薬との相乗効果及び求められている保護の程度を含む様々な要因に依存することが理解されるであろう。もちろん、必要ならば、投与は適当な間隔で繰り返すことができる。
【0040】
従って、本発明は、別の面では、ヒトまたは動物にここに記述されるようなワクチン製剤の有効量を投与して予防的かつ/または治療的に免疫する方法を提供する。ここで、有効量はヒト及び/または動物において免疫応答を誘発可能な量である。
【0041】
さらに、生物体の抗原提示細胞の表面に発現及び提示し得るポリペプチドをコードする外来核酸分子を含むバクテリオファージ粒子の使用が提供され、その結果上述のポリペプチドに対する免疫応答が、特定の疾患に対する予防接種のワクチン製造のための生物体において惹起される。
【0042】
好ましくは、予防接種される疾患は肝炎、例えばB型肝炎である。
好ましくは、単位用量当たりの薬剤は1010個あるいは1011個以上のような1010個以上のバクテリオファージ粒子を含む。
【0043】
本発明を実施例の方法ならびに以下に示す図を参照して述べる。
図1は本発明に従って設計されたラムダファージを作成するために用いたpRc/CMV−HBs(S)ベクターの概要図を示す;
図2はマウスに投与した様々な肝炎コンストラクトのELISA反応の時間経過の図表を示す;
図3は図2に示したデータのグループ平均を描いている図表を示す;
図4は国際標準品との比較によってマウス血清中の抗HBs濃度測定の図表を示す;及び
図5はELISAで測定した時の、λ−HBsAg(A〜D)及び組換えHBsAg(E+F)で予防接種したウサギにおけるHBsAg(白丸、左側目盛り)及び全バクテリオファージ(黒四角、右側目盛り)に対する抗体反応を示す。ウサギA〜Dは0、9、15及び27週にλ−HBsAgで予防接種した(矢印で示した)。ウサギEとFは0及び27週に組替えHBsAgで予防接種した。HBsAgプレートに対しモノクローナル抗体(クローンNF5、Aldevron)を1:50,000の希釈で用い、一方マウスのポリクローナル抗血清(1:500)をファージ−被覆プレートに対して用いた。各血清サンプルからのシグナルは種々のプレート間で相対シグナルを比較できるようにこの標準のシグナルに対して標準化した。
【実施例】
【0044】
実施例:B型肝炎に対するバクテリオファージを介した免疫
HepBsバクテリオファージベクターの作成−λHepBs
ラムダファージへのHepB発現カセットのクローニング。
プラスミドpRc/CMV−HBs(S)(pCMV−S)(Aldeveron)(図1を参照)をλ−gt11(Stratagene)のEcoRIサイトにクローニングした。pCMV−SベクターにはEcoRIサイトはないが、矛盾の無い(compatible)粘着末端を与えるMfeIサイトがある。MfeIサイトはプラスミド上160番目の塩基に存在し、一方サイトメガロウイルス真核生物プロモーターは206番目の塩基にあるので、この酵素による1ヶ所の切断は発現カセットを妨げない。
【0045】
プラスミド(1μg/μlを16ml)DNAをメーカー推奨バッファー中20単位のMfeI(New England Biolabs)を用い37℃、2時間で消化した。消化の成功は1%アガロースゲルで1mlの消化物を電気泳動することにより確認した。
消化したプラスミドDNAは次にフェノール/クロロフォルムで抽出し、エタノールで沈殿させた。消化物は蒸留水で200μlの最終容積にした。等容積のフェノール:クロロフォルム:イソアミルアルコール(35:34:1)(Fisher Biosciences UN2821)を加え、混合しフェーズロックチューブ(Eppendorf 0032 007.953)中マイクロフュージを用い13000rpmで回転させた。それから上部の水層を除き、同チューブ中当容積のクロロフォルムで抽出した。
【0046】
抽出後、水層を新しいチューブに移し、最終濃度が0.3Mになるように22μlの3M酢酸ナトリウムを加えた。2倍量の氷冷エタノールを加え、チューブを混合し−20℃で終夜貯蔵した。それからチューブを13000rpmで回転し、上澄み液を別の容器に移し750μlの氷冷70%エタノールを加えた。チューブを13000rpmで2分間遠心した。上澄み液を除き痕跡のアルコールを完全に除くためチューブを逆さにして10〜15分間放置した。それからペレットを15μlの滅菌蒸留水に再度懸濁させた。
【0047】
抽出したDNAは1%アガロースゲルで1μlを電気泳動し、OD260/280比をチェックすることにより純度を調べた。
この精製DNAとStratagene由来のEcoRIで消化した子牛腸管アルカリホスファターゼ処理λ−gt11(カタログ番号234211)を用いてライゲーションを行った。2μlのラムダDNA(0.5μg/μl)を既に90ng/μlに希釈された1.5μlの消化プラスミドに加えた。gt11はおよそ43kbで挿入断片はおよそ5.6kbなので、1μlのgt11及び135ngの挿入断片の使用は1:1のモル比となる。3UのDNAリガーゼ(Promega M1801)と適切なバッファーを加え容積を蒸留水で10μlとした。対照ライゲーションも用い、それは挿入DNAの替わりに1.5μlの水を加えた他には上述したようにセットアップした。ライゲーションは4℃で終夜インキュベートして行った。
【0048】
ライゲーション後、1μlのライゲーション混合物を挿入断片がしかるべき所にあることを確認するためにライゲーションさせていないラムダDNAと一緒にアガロースゲルで電気泳動を行った。ライゲーション後いずれのサイトも存在しないので、挿入断片はEcoRIあるいはMfeI消化によって除去されず、全体のサイズ差が確認に用いられた。
ライゲーションしたDNAをPromega lambda packagene system(cat. K3154)を用いてインビトロでパッケージした。上述したようにライゲーション反応物と対照反応物の5μlを25μlのpackagene抽出物に加えた。packagene kitより供給されたポジティブコントロールDNAを用いて3番目の反応をセットアップした。いずれの反応も室温で3時間インキュベートするために放置した。インキュベーション後反応を停止させるために225μlのファージバッファー(packageneの使用説明書を参照)を加え12.5μlのクロロフォルムを加えた。チューブを良く混ぜ白色沈殿物を沈殿させた。澄んだ上澄み液はパッケージされたファージを含む。
【0049】
packageneマニュアルに述べられたプロトコールを用いてパッケージされたファージを滴定した。簡単に述べると、ファージバッファー中でファージを連続希釈し(1:1000、1:10000)それぞれの希釈液100μlを指数関数的な発育期のE. coli LE392の100μlに加えた(37℃で前もって暖めた新鮮な培地1:100で新たに終夜生育させ、LE392を指数期とし37℃で2.5時間振ることにより生育させる)。細胞とファージをよく混合し37℃で30分間インキュベートした。それから3mlのTB top agar(1gのバクト−トリプトース、0.5gのNacl、100mlの水中0.8gの寒天−オートクレーブ、60℃に冷却し1mlの1M MgSO4を加える)を48℃で細胞/ファージに加え、良く混合しその後37℃に前もって暖められたLB−寒天プレート上に注いだ。
【0050】
終夜インキュベーション後プラーク数を数えた。挿入断片とのライゲーション由来のパッケージされたファージのプレートは挿入断片の無いコントロールよりも150〜200倍のカウントであった。計算したパッケージング効率は4.2×106組み換え体/μg DNAであった。
【0051】
6個のポジティブクローンと2個のネガティブクローンを選び、標準法(Sambrookら、1989年、分子クローニング:実験マニュアル。Cold Spring Harbour Laboratory Press, N.Y.)により小スケールのファージ増幅を行った。その後これら8個の精選ファージのサンプルを上述したようにX−galとIPTGの存在下E.coliのXL1−blue cell上で培養した。gt11のEcoRIサイトへの挿入断片はlacZ遺伝子を妨害するので、クローン中の挿入断片の存在を確認するために青/白のカラー選択を用いた。挿入断片を有するファージは白いプラークを与え、一方挿入断片の無いファージは青いプラークを与えた。挿入断片を有するプレートから選択した6個のファージ中5個が青のプラークを与え、これらの1つをその後の研究に選んだ。
【0052】
最終的に挿入断片の存在を確認するために、Promega Wizard lambda DNA抽出キット(カタログ番号A7290)を用いて選択したファージクローンからゲノムDNAを抽出した。pCMV−sプラスミドに特異的なプライマーを用いてPCRを行った。λ−gt11のEcoRIクローニングサイトのいずれかの側に位置する他のプライマーをクローニングサイト全域で配列を決定するために用い、さらに挿入断片の存在を確認するために用いた。
【0053】
それから多様性の低い標準的な大量スケールの液体培養(Sambrookら、1989年、分子クローニング:実験マニュアル。Cold Spring Harbour Laboratory Press, N.Y.)をその後のDNA予防接種試験のためのファージ(λHepBs)の大量製造に用いた。
【0054】
予防接種のプロトコール
それぞれ10匹のマウスを含む8群について検討した。
マウス群は以下の通り:
(1)ネガティブコントロール。非発現バクテリオファージ(λcI857)を筋肉内投与により免疫した。
(2)ポジティブコントロール。組換えB型肝炎表面抗原(HBsAg)で免疫した。
(3)‘裸‘のDNAによる予防接種のポジティブコントロール。サイトメガロウイルスプロモーター(pRC/CMV−HBs[S])のコントロール下HepB表面抗原を発現するプラスミドで免疫した。
(4)サイトメガロウイルスプロモーター(λHepBs)のコントロール下HepB表面抗原を発現するバクテリオファージλ。経口/鼻腔内投与、バクテリオファージは粘膜アジュバントキトサンとの複合体として与えた。
(5)λHepBs、リポソームと組み合わせて筋肉注射した。
(6)λHepBs、オイルを主体としたアジュバント(モンタニド206)で筋肉注射した。
(7)λHepBs、アジュバント無しSMバッファーのみで筋肉注射した。
(8)λHepBs、真空乾燥したバクテリオファージ粒子を皮膚に投与するためBio-Rad Helios圧縮窒素ガス‘遺伝子銃‘を用いて皮内/皮下免疫を行った。
ワクチンの製造と免疫のプロトコール:2週毎にマウスから採血した。0及び3週にマウスに予防接種した。予防接種に先立ち、ハロタンを吸入させマウスを麻酔した(グループ8を除いて)。
【0055】
予防接種法:
グループ1〜3及びグループ5〜7(筋肉内投与免疫)。前けい骨筋への到達を容易にするため後肢を剃った。皮膚にサンプルを注射するため27G×3/4インチの針を用いた。針の先は前けい骨粗面の約3mm外側。針先は3mm挿入し、サンプル(プラスミドDNA、ファージあるいは組替えHepB表面抗原[HBsAg])を約10秒かけてゆっくりと注射した。針は約5〜10秒そのままにし、その後ゆっくりと引き抜いた。
【0056】
ワクチン製造:
グループ3:プラスミドDNAは0.5mg/mlの濃度でエンドトキシンを含まないホスフェートバッファー食塩水(PBS)に含まれ、1匹当たり50μl(25μgDNA/マウス)を用いた。
【0057】
グループ2:エンドトキシンを含まない50μlのPBS中1μgの組換えHBsAgをマウスに注射した。
【0058】
グループ1及び7:バクテリオファージはSMバッファー(1リットル当たり;塩化ナトリウム5.8g、硫酸マグネシウム・7水和物2g、1mトリス−塩酸(pH7.5)50ml、2%ゲラチン溶液5ml)中1×1013個プラーク形成単位(pfu)/mlの濃度で投与した。5×1011個ファージ/マウスの用量に等価のファージ50μlを注射した。
【0059】
グループ5:マウス当たり;2×1011個のファージ(5μgのDNAに等価)を陽イオン性脂質のトランスフェクタム(Promega)で被覆して投与した。製造:20μlのファージ(SMバッファー中)を20μlの150mM塩化ナトリウムに加えた。10ml中10μlのトランスフェクタムを加え、溶液を混合し上述したように筋肉内投与する3時間前に10分間放置した。注射量は50μl/マウス。
【0060】
グループ6:SMバッファー中2×1013個/mlの濃度で25μlのファージを等容量のモンタニド206オイルアジュバント(Seppic、Paris、France)と混合し、各マウスに50μlのワクチン(5×1011個ファージ/マウス)を筋肉内投与し免疫した。
【0061】
グループ4(経口/鼻腔内投与免疫):10μlの1%キトサン([Fluka、媒体分子量]、1%酢酸中10mg/ml)を100μlのSMバッファー中1×1013個のファージに滴下して貯蔵用に調整した。投与に先立ち、懸濁液を暫時かき混ぜた。マウスが麻酔から意識を回復し始めた時に、ギルソン型ピペットを用いて5μlの滴量を各鼻孔に投与した。
【0062】
グループ8(遺伝子銃):ファージ粒子を送達させるためにBio−Rad Helios遺伝子銃を用いた。10μlのSMバッファー中1011個のファージ粒子を遺伝子銃プラスチックチューブカートリッジに移し、−70℃で凍らせ、それから終夜凍結乾燥した。各マススの腹部を剃り1回の免疫当たり1匹のマウス当たり500psiの圧力で1回の発射で投与した。
【0063】
採血スケジュール:
1群10匹のマウス、
マウス1〜2は0、2、4及び6週に採血、
マウス3〜4は0、2、4、6及び7週に採血、
マウス5〜6は0、2、4、6及び8週に採血、
マウス7〜8は0、2、4、6、8及び9週に採血、
マウス8〜9は0、2、4、6、8及び10週に採血。
各時点ですべてのマウスから採血していないので、このことから図2におけるマウス採血のギャップが説明される。
【0064】
結果
ELISAにより測定したHBsAgに対する抗体反応。
各群で個々のマウスについて抗体反応の時間経過を測定した。種々のプレート間の標準化を行うために個々のELISAプレートには抗HBsAgモノクローナル抗体の1:50,000の希釈液を含む(結果は各図表の関連部分に‘コントロール’値として示す)。図3は図2で示したデータの群平均を示す。
【0065】
有意な抗体反応がグループ2(組換えHepBs)とグループ5〜7(それぞれリポソーム、モンタニド及びアジュバント無しによるλHepBs)で観察された。他のグループでは反応は見られないかごく僅か観察された。(グループ4の見かけの増加はすべての採血に影響したELISAプレートの非特異的なエッジ効果であり、これが繰り返された。)。
【0066】
マウスにおける抗HepB表面抗原反応を定量化するために、最後の採血は国際標準品と比較した(Bio-Rad Monolisa抗HBs標準品カタログ番号72399)。間接ELISAによってマウス血清の1:10希釈を調べた。プレートを0.2Mの炭酸ナトリウムコーティングバッファー中pH9.6で100μl/ウェルのHBs(1μg/ml)で被覆した。プレートは被覆するために室温で終夜放置した。
【0067】
一夜インキュベーション後、プレートを一度PBS−Tweenですすぎ、PBS−ween中5%のMarvelスキムミルクの粉末をウェル当たり200μl加え、非結合サイトをブロックするために室温で30分間放置した。
【0068】
それからブロック溶液を除きブロッキングバッファー中マウス1次抗血清の1:10希釈の100μlを加え、ブロック溶液単独をネガティブコントロールとして用いた。標準品はウェル当たり100μlを加えるとの条件で用いた。例外として1mIU/ml(ミリ国際単位/ml)の標準品は10mIU/mlの標準品をPBS中1:10に希釈することにより作成した。それから室温で2.5時間プレートをインキュベートした。
【0069】
インキュベーション後、1次血清サンプルを除きプレートをPBS−Tweenで5回洗浄した。その後2次抗血清を加えた。セイヨウワサビペロキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(シグマ社カタログ番号A-8667)の1:500希釈液をウェル当たり100μl加えた。提供された国際標準品はヒトIgGであったので、2次抗体として抗ヒト血清を用いた。試験したサンプルはマウス血清であったが、マウス血清で得られた数値は実際の値よりも低いにもかかわらず、両者を検出するためのHRP標識2次抗体にとってマウス及びヒトの免疫グロブリン間に十分な交差反応性のあることが期待された。2次抗体でプレートを室温で1.5時間インキュベートした。
【0070】
その後PBS−Tweenでプレートを洗浄し、ウェル当たりSigma Fast OPD展開溶液(カタログ番号P9187)の200μl/ウェルを加え展開した。プレートを15分間展開し、その後3Mの硫酸50μl/ウェルを加え反応を止めた。自動プレート読み取り装置(492nm)でプレートを測定した。
【0071】
選択した結果を図4に示す。
リポソーム中λHepBsで免疫したマウス(グループ5、マウス4)の血清の1:10希釈液は17.5mIU/mlに等価の反応を示し、一方コントロールのpRC/CMV−HBs[S]で免疫したマウスは2.5mIU/mlに等価の反応を示した。保護のための認められた国際濃度は血清の10mIU/mlで、λHepBsによる免疫は保護に対して認められた国際濃度よりも大きな抗体価(1:10希釈で)をもたらしたことを示している。さらなる例は;グループ6(λHepBsプラスモンタニド)マウス5、16mIU/ml@1:10希釈、及びグループ7(λHepBsのみ)マウス8、14mIU/ml@1:10希釈。抗体濃度は無希釈マウス血清を用いて試験した時よりも高いと予想される。試験サンプルにおいて1次マウス血清に対して抗ヒト2次抗体が用いられているので(むしろ特異的抗マウスHRP複合体よりも)、これらの結果はおそらく実際の抗体価よりも表示不足していることが認められる。
【0072】
実施例2:B型肝炎に対するバクテリオファージを介する免疫に関するさらなる実験
ウサギの免疫
食塩水バッファー中2×1011個ファージ/ml(4×1010個ファージ、2μgDNA/ウサギ)の濃度で筋肉内投与した200μlのλ−HBsAgでウサギに予防摂取した。ファージワクチンを0、9、15及び27週に投与した。組換えB型肝炎表面抗原(HBsAg−Aldevron)を投与したウサギには0及び27週に25μg/ml(5μgタンパク質/ウサギ)の濃度で200μlの食塩水バッファー中タンパク質を筋肉内投与した。ウサギから定期的に採血し、抗体反応をELISAにより定量した。
【0073】
抗体反応のELISA測定
組換えHBsAgまたはバクテリオファージλコートタンパク質に対する抗体反応を間接ELISAにより測定した。ELISAプレートを100ngの精製HBsAg(Aldevron)あるいは109個のバクテリオファージ(50ng)/ウェルのいずれかで0.05Mの炭酸ナトリウムバッファー中pH9.2で終夜被覆した。その後コーティングバッファーを除き、200μl/ウェルのブロッキングバッファー(PBS−Tween中5%のMarvel乾燥スキムミルク)を37℃で30分間加えた。その後ブロッキングバッファーを除き、ブロッキングバッファー中1:50の希釈で100μl/ウェルの1次抗体を加え、プレートを4℃で終夜インキュベートした。それからプレートをPBS−Tween中で5回洗浄し、抗ウサギセイヨウワサビペロキシダーゼ標識2次抗体(DAKO)をメーカーの推奨希釈で37℃で1時間で加えた。その後プレートをPBS−Teen中で5回洗浄し、200μl/ウェルの基質(SIGMA Fast-OPD錠)を加え、プレートを暗所で5分間(ファージプレート)及び30分間(HBsAgプレート)展開した。50μl/ウェルの3M硫酸を加えて反応を停止させ、492nmで光学濃度を測定した。ELISAプレートの最初のウェルにブロッキングバッファー中100μlの希釈1次抗体(推定力価に依存して1:10〜1:50)を加え、プレートの12カラムすべてを1:1に連続希釈することにより反応を停止させた。各血清サンプルに対するエンドポイントの力価を計算するためにOD492NM=0.2のカットオフ値を用いた。
【0074】
結果
マウス以外の動物での免疫反応を調べ、追加の予防接種がより一貫した反応を与えるかどうかを明らかにするために、4羽のウサギをλ−HBsAgレポーターコンストラクトで免疫し、2羽を組換えHBsAgタンパク質で免疫した。注射間の間隔を大きく取り、初期の実験での2羽に比べて全部で4羽(λ−HBsAg)または2羽(組換えHBsAg)に投与し、1〜3週毎に採血した。組換えHBsAgに対しELISAによって抗体価を測定した(図5)。λ−HBsAgの2回の予防接種後、ファージをコードしたHBsAgワクチン抗原に対し矛盾する反応が再度見られた。λ−HBsAgを接種した4羽のウサギの内1羽がHBsAgに対して有意な反応を示し(図5D)、一方残る3羽は低レベルのゆるやかな増加を示した。これらの割合はλ−EGFPによる2回の予防接種後観察された割合と類似していた(即ち、レポーターファージワクチンによる2回の予防接種後動物の25%がEGFPに対し反応を示す)。しかし3回の予防接種後、いずれのウサギも組替えHBsAgタンパク質による1回の予防接種により誘導される反応に匹敵するかあるいは有意に増加した過剰な抗HBsAg反応を示した(図5)。λ−HBsAgによる4回の予防接種は1羽で抗HBsAg力価の顕著な増加(図5C)を、他の3羽に低強度のよりゆるやかな増加をもたらした。組換えHBsAgを投与したグループでは、2回目の予防接種は2羽でHBsAg抗体価の上昇をもたらしたが、この強度は特にこのグループの他のウサギ(ウサギF)で観察された力価に比較して、またはλ−HBsAgを予防接種したグループに比べた時非常に弱いHBsAg抗体価を示すウサギ5Eで低かった。この反応の矛盾は以前にHBsAgについて報告されている(Alper, C. A., Kruskall, M. S., Marcus-Bagley, D., Craven, D. E., Katz, A. J., Brink, S. J., Dienstag, J. L., Awdeh, Z., and Yunis, E. J. B型肝炎ワクチンに対する無反応の遺伝的予測N. Engl. J. Med. 1989; 321: 708-712)。
【0075】
HBsAg抗体反応のエンドポイントでの滴定はλ−HBsAgで予防接種したウサギ(力価は0週で1:10であった)に対して22週後1:120〜1:640の間であった、一方これらのウサギ(組換えλ−HBsAgを投与された)に対して同じ時点で1:160(ウサギE)と1:600(ウサギF)の力価が観察された。λファージコートタンパク質に対する最初の予防接種後λ−HBsAgで予防接種されたすべてのウサギで高い抗体反応が観察され、このことはこの高い抗ファージ反応がその後のファージ予防接種の有効性を阻害しなかった(図5A〜D)ことを示している。22週での抗ファージ反応は4羽いずれにとってもエンドポイントの滴定は1:50,000のオーダーであった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に従って設計されたラムダファージを作成するために用いたpRc/CMV−HBs(S)ベクターの概要図を示す。
【図2a】HepB抗原に対するグループ1(ネガティブコントロールファージ)のELISA反応を示す。
【図2b】HepB抗原に対するグループ2(HepBタンパク質)のELISA反応を示す。
【図2c】HepB抗原に対するグループ3(HepBプラスミドコントロール)のELISA反応を示す。
【図2d】HepB抗原に対するグループ4(経口/キトサンHepBファージ)のELISA反応を示す。
【図2e】HepB抗原に対するグループ5(HepBファージ+リポソーム)のELISA反応を示す。
【図2f】HepB抗原に対するグループ6(モンタニド/ラムダHepB)のELISA反応を示す。
【図2g】HepB抗原に対するグループ7(PBS中HepBファージ)のELISA反応を示す。
【図2h】HepB抗原に対するグループ8(DNA銃/HepB予防接種)のELISA反応を示す。
【図3】B型肝炎表面抗原(HBs)に対する反応のELISAによるグループ平均を示す。
【図4】国際標準との比較によるマウス血清中抗HBs濃度の測定結果を示す。
【図5】ウサギA〜Fについて、ELISAで測定した時の、λ−HBsAg(A−D)及び組換えHBsAg(E+F)で予防接種したHBsAg(白丸、左側目盛り)及び全バクテリオファージ(黒四角、右側目盛り)に対する抗体反応を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性タンパク質/ペプチドを発現するように設計されたバクテリオファージを含むワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子ワクチン接種は、核酸をワクチン成分として使用する新しく刺激的な手法である(総説として非特許文献1:Leitner et al., Vaccine 18: 765-777,2000参照)。これと対照的に、従来のワクチンでは、病原微生物またはその抗原部分を使用する必要がある。「従来の」ワクチンには3種類のタイプ:弱毒ワクチン、死菌/サブユニットワクチン、及び組換体ワクチンがある。弱毒ワクチンは病原性が低減された生菌を用いるもので、一般に最も有効なワクチンである。しかし、ワクチン成分である菌がチェックされずに成長したり病原性を有するタイプに復帰した場合に面倒な問題を生じるおそれがある。死菌ワクチンまたはサブユニットワクチンは複数回の注射が必要であり、その結果、コストが増す上、適切な投与をする上で問題があり、さらに、微生物が完全に死滅していないおそれもある。組換体ワクチンは、病原微生物由来の抗原を非病原性ベクターに組み込むものであり、効果的であるが、本来の立体構造のまま抗原を発現させるのが困難なため、効果が限られる場合が多い。
【0003】
ワクチンを有効にするには、十分に長い期間にわたって十分な量の抗原を投与し、2次(記憶)応答を誘導する必要がある。しかし、これは従来のワクチンでは問題がある。一方、DNA/RNAワクチンは、長期にわたって病原性抗原のコピーを有効に生産し、生ワクチンで見られるのと同様に、MHCクラスI応答とクラスII応答の両方を誘導することができる。しかし、有望であるとされているにもかかわらず、DNAワクチンは、まだその力を十分に発揮していない。感染微生物の攻撃を受けた際、DNAワクチンの多くは、測定可能な体液性(抗体)免疫応答を引き起こすにもかかわらず低い効果しか示さない(非特許文献2:Beard, CW & Mason PW., 1998. Nature Biotech. 16: 1325)。
【0004】
現時点では、核酸が宿主細胞に入り免疫応答を誘導するメカニズムはよくわかっていないが、最も簡単な手法は、可溶性注入液として通常筋肉内にDNAを投与することである。一般にはこれとは異なる2つの方法が使用されており、それらは、「遺伝子銃」法(DNAを微小金粒子上に付着させ、ヘリウム高速流を用いてこれを細胞内に強制注入する)とリポソームを用いたトランスフェクション(宿主細胞膜と融合する正電荷脂質によってDNAを被覆し複合体を形成する)である。免疫部位を取り巻く細胞がDNAを取り込んでコードされた抗原を発現し、これが免疫系の抗原提示(AP)細胞により「異物」と認識され、これによりT細胞とB細胞が活性化されて抗原に対する免疫応答が誘導されると考えられている。
【0005】
しかし、これには以下の問題がある。すなわち、(1)大多数のDNAが非AP細胞において発現するため、発現が比較的不十分な上、非特異的である。(2)非AP細胞において外来抗原が発現すると、その細胞が宿主免疫系から「感染状態にある」と認識され、結局その細胞が死んでしまうため、免疫応答が可能な期間が短くなってしまう。さらに、(3)裸のDNA/RNAはヌクレアーゼの作用に非常に敏感である。このため、免疫に用いられた核酸は大多数が免疫直後に分解されてしまう。
【0006】
国際公開第98/05344号(特許文献1)には、外来遺伝子を送達するために、標的細胞上のレセプターに結合するリガンドをその表面に含むように修飾されたバクテリオファージベクターを用いる方法が記載されている。この文献に記載されたベクターは、概ね遺伝子治療(この場合、ベクターは特定の細胞タイプを標的とする。)のために使用することが意図されている。抗原ペプチドを送達するために修飾バクテリオファージベクターを使用することにも言及している。
【0007】
米国特許第5,736,388号公報(特許文献2)には、真核細胞に核酸分子を送達するために、変異体尾部繊維タンパク質を組み込むか、または真核細胞レセプターに対するリガンドを組み込んで修飾したラムダ型のバクテリオファージが記載されている。
【0008】
米国特許第6,054,312号公報(特許文献3)は、表面にリガンドを提示する繊維状ファージ粒子に関するものであり、リガンドは、ファージ粒子に共有結合しているか修飾されたファージ粒子と複合したファージキャプシドタンパク質との融合タンパク質である。
【0009】
国際公開第99/55720号(特許文献4)も、標的遺伝子送達で使用される異種起源の標的タンパク質を外部に提示するように修飾したファージについて記載している。
【0010】
しかし、前述の特許/特許出願はすべて、一般に遺伝子治療の目的で核酸を特定の細胞を標的として送達し得るようにファージ表面を修飾することを記載している。
【0011】
多数の文献(Ishiura, M. et al, Molec. And Cell. Biol., p607-616, 1982(非特許文献3); Aujame, L. et al, Biotechiques, 28 pl202-1213, 2000(非特許文献4); Horst, J. et al, Proc. Natl. Acad. Sci., 72, p3531-3535, 1975(非特許文献5); Jkayama and Dery, Molec. and Cell. Biol. 5, pll36-1142, 1985(非特許文献6);及びSrivatsan, E. et al, 38, p227-234, 1984(非特許文献7))が、哺乳類培養細胞に感染させ、タンパク質を発現させるためのファージの使用に関連している。しかし、これがインビボに適用し得るという示唆、あるいはワクチンの開発に使用できるという示唆はない。
【0012】
【特許文献1】国際公開第98/05344号
【特許文献2】米国特許第5,736,388号公報
【特許文献3】米国特許第6,054,312号公報
【特許文献4】国際公開第99/55720号
【非特許文献1】Leitner et al., Vaccine 18: 765-777,2000
【非特許文献2】Beard, CW & Mason PW., 1998. Nature Biotech. 16: 1325
【非特許文献3】Ishiura, M. et al, Molec. And Cell. Biol., p607-616, 1982
【非特許文献4】Aujame, L. et al, Biotechiques, 28 pl202-1213, 2000
【非特許文献5】Horst, J. et al, Proc. Natl. Acad. Sci., 72, p3531-3535, 1975
【非特許文献6】Jkayama and Dery, Molec. and Cell. Biol. 5, pll36-1142, 1985
【非特許文献7】Srivatsan, E. et al, 38, p227-234, 1984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は前述の問題点の少なくとも1つを解消及び/または軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1に、本発明は、表面が修飾されていないバクテリオファージ粒子及び薬学的に許容される担体を含む肝炎ワクチン製剤を提供する。ここで、バクテリオファージ粒子は、生物体の抗原提示細胞の表面で発現及び提示され得る肝炎ウイルスポリペプチドをコードする外来の核酸分子を含み、その生物体中で前記ポリペプチドに対する免疫応答が引き起こされるものである。
【0015】
前述の開示例(例えば、国際公開第98/05344号、米国特許第5,736,388号公報、米国特許第6,054,312号公報及び国際公開第99/55720号参照)と異なり、本発明のバクテリオファージの表面は、ファージ表面に外来ペプチド/タンパク質(つまり、通常は存在しないペプチド/タンパク質)を含むようには修飾されておらず、特定の細胞タイプの表面レセプターに対しファージを標的とするように設計されていない。それ故、特定の細胞タイプの表面レセプターに対しファージを標的とするように設計せずに、外来ペプチド/タンパク質を含むようにバクテリオファージの表面を修飾してもよいという点は、理解される。
【0016】
肝炎ワクチンは肝炎ウイルス、例えばA型、B型、C型、D型またはE型、好ましくはB型のいずれかに対する予防接種に用いることが出来る。AP細胞の表面に発現及び提示された抗原は免疫応答を誘導できる他の肝炎タンパク質が発現されているにもかかわらず、B型肝炎表面抗原(HBs)のような表面抗原になる。
【0017】
さらに、バクテリオファージは1個以上の肝炎抗原を発現するように設計され、例えば1個以上の肝炎型から抗原を発現することができる。
【0018】
本発明者は高用量のバクテリオファージ粒子がより良好な免疫応答をもたらすことを観察している。したがって、好ましくは109個以上のバクテリオファージ、1010個あるいは1011個以上のバクテリオファージ粒子のような投与量が動物に投与される。
【0019】
したがって、第2に、109個以上のバクテリオファージ粒子、各粒子の修飾されていない表面及び薬学的に許容し得る担体を含むワクチン製剤が提供され、上記バクテリオファージ粒子は生物体の抗原提示細胞の表面に発現及び提示し得るポリペプチドをコードする外来核酸分子を含み、その結果上記ポリペプチドに対する免疫応答が生物体で惹起される。
【0020】
本発明者は、粒子表面に標的とするペプチドまたはリガンドを含むようには修飾されていないバクテリオファージがAP細胞によって取り込まれることを観察した。このように、本発明のバクテリオファージは「異物」として認識され、従って、宿主免疫系によって通常の方法で処理されると考えられる。さらに、外来ペプチド/タンパク質(それは選択された哺乳類宿主中には通常存在しないペプチド/タンパク質である)をコードし得る外来核酸を含むようにバクテリオファージのゲノムを修飾することによって、この外来タンパク質への免疫応答が誘発される。従って、外来ペプチド/タンパク質をコードする核酸は(抗原提示細胞その他において)発現され、AP細胞の表面上に提示される。免疫応答は体液性(即ち抗体)及び/または細胞性免疫応答のいずれでもよい。
【0021】
外来核酸は、天然には存在しないポリヌクレオチドに関するもので、異種起源のペプチドまたはタンパク質として(即ち、天然に存在するバクテリオファージ中では通常発現されないか生物学的に有意なレベルで発現されないペプチドまたはタンパク質として)発現され得るものである。発現されたペプチドまたはタンパク質は、ワクチンが接種された宿主において免疫応答を引き起こすのに十分なレベルで発現される。
【0022】
第2点に従って本発明は、病原体の1種または複数のタンパク質に対して適切な免疫保護反応が惹起され得る限りにおいて、必ずしも肝炎に限らず実際上任意の感染症のワクチンの調製に適用できる点が理解されるべきである。適当な疾病の例は、疾病を引き起こす病原体そのものに対しての予防接種、あるいは、疾病を運ぶベクターに対する予防接種を含む。こうした病原体またはベクターは、ウイルス、バクテリア、真菌類、酵母、原虫類、寄生虫、昆虫及び感染性海綿状脳症を含む。本発明は、ヒト及び動物の両方の感染症に適用可能である。適当な疾病のリストは当業者にはよく知られており、その例は、「O.I.E.標準品のマニュアル及び診断試験」第3版(O.I.E. Manual of Standards and Diagnostic Tests 3rd Ed., OIE, Paris 1996), トップリー&ウィルソン「細菌学・ウイルス学・免疫の原理」第8版(Topley & Wilson's Principles of Bacteriology, Virology and Immunity 8th Ed., Eds.Parker M.T. and Collier L.H., Vol. IV (Index), Edward Arnold, London 1990), Bell J.C.他著「人畜共通伝染病:動物から人への感染移行」(The Zoonoses: Infections Transmitted from Animals to Man. Bell J.C. et al., Edward Arnold, London 1988)及びNoble E.R.他著「寄生虫学:動物寄生虫の生物学」第6版(Parasitology: The Biology of Animal Parasites 6th Ed. Noble E.R. et al., Lea Febiger, Philadelphia, 1989.)に見ることができる。さらに、ワクチンタンパク質として癌細胞特異的抗原の発現による癌細胞に対する免疫応答を引き起こすために本発明を使用することができる。
【0023】
従って、本発明は、外来核酸(例えばDNA)を、例えば細胞中に存在する例えばヌクレアーゼから保護するため、安定なマトリックス内に封じ込める方法を提供する。バクテリオファージ表面の「外来」タンパク質は、特に抗原提示(AP)細胞への核酸の直接取り込みを可能にする。理論的に限定されるものではないが、バクテリオファージ粒子は外来抗原として認識されると予想される。粒子全体がこのように宿主免疫系の抗原提示細胞によって直接取り込まれ、タンパク質被覆が除去され、DNAが放出される。次いで、これが核に移動して発現される。このプロセスは、ワクチンDNAの発現及びその後のポリペプチドの生産が、免疫応答を引き起こすのには最適のルートであるAP細胞内でのみ起こるため効率的であると考えられる。
【0024】
一般に、「ポリペプチド」という用語は、抗原活性を示す一連のアミノ酸またはその配列を指し、特定の長さの生成物を指すものではない。ポリペプチドは、必要であれば、インビボで及び/またはインビトロで、例えば、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化及び/または翻訳後の開裂によって修飾されてもよく、従って特に、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質及び融合タンパク質が含まれる。当業者には当然理解されるであろうが、修飾されたポリペプチドは生理的機能(すなわち、免疫応答を引き起こす能力)を保持すべきである。
【0025】
本発明のバクテリオファージは、好ましくは、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター及び/またはその他同種のものなど、適切な転写/翻訳レギュレーターを含む。典型的には、プロモーターはCMV、SV(シミアンウイルス)40、チミジンキナーゼ、RSVプロモーターその他の真核生物プロモーターでよい。プロモーターはコンスティテューティブプロモーターが便利である。しかし、当業者に既知の制御可能なプロモーターも使用してもよい。例えば、コンスティテューティブプロモーターと制御可能なプロモーターの制御下に外来核酸を含むコンストラクトを設計してもよい。このようにすれば、初めにコンスティテューティブプロモーターによって外来核酸の発現を誘導し、次の時点で制御可能なプロモーターを発現させ、それによって外来核酸の発現を引き起こすことができる。これによって、より強い免疫応答をもたらすこともできる。
【0026】
多数の適当なバクテリオファージが当業者に知られている。適当なバクテリオファージの例はラムダ(λ)である。現在、バクテリオファージλは日常的なDNA操作手順でクローニングベクターとして使用されている。これらについては、DNAはファージ構造体とは別個に精製される。しかし、完全なλファージ粒子は、上に挙げた基準を満たす。すなわち、DNAは、宿主免疫系によって外来抗原として認識される保護タンパク質マトリックス内に包含される。ファージλは通常大腸菌に感染するため、そのDNAは真核細胞では「不活性」、つまり、発現されないと考えられる。しかし、DNAが哺乳類細胞に取込まれた場合、対象とするワクチン(または外来)遺伝子の上流に真核生物プロモーターが組み込まれ、次いでその遺伝子が発現されるのであれば、抗原、つまり、タンパク質/ペプチドが生じるはずである。日常的なクローニングベクターとして広範囲に使用されているため、λには多数の変異体が存在し、その中には、哺乳類細胞での発現のために設計された強力な真核生物のプロモーターが含まれる。通常は、λベクターの関連部分は、さらに遺伝子操作を行なう前にプラスミドDNAとして除去される。次いで、大腸菌宿主由来の高度に精製したプラスミドDNAが、遺伝免疫のために使用される。しかし、真核生物のプロモーター及び対象とするワクチン(つまり、外来)遺伝子を含む完全なλファージ粒子を免疫のために使用する場合、それはAP細胞によって取り込まれる。タンパク質被覆の除去に続いて、AP細胞内で直接に抗原が産生されると考えられ、抗原がAP細胞の表面に提示されて免疫応答を引き起こす。この場合、免疫用ファージ粒子の調製に必要なのは最も基礎的な精製プロセスだけである。プラスミドクローニングベクターと比較して、λを使用するさらなる利点は、より大きなサイズの挿入断片を収容できるという点である。
【0027】
他の適当なバクテリオファージも、当業者によく知られており、p1ファージ、Tファージ(例えばT1〜T7)、Mu、fdまたはM13並びに繊維状ファージが含まれる。
【0028】
本発明で好ましいバクテリオファージは、外来核酸及び関連するプロモーター、エンハンサー、ターミネーター及び/または同様なものを、約0.5〜l00キロ塩基の間に組み込む能力を有するものである。例えば、既知のラムダファージは、9〜50キロ塩基の間に収容できる。このようにすれば、1個のペプチド/タンパク質または複数のペプチド/タンパク質の単一または多数のコピーを発現することが可能である。
【0029】
典型的には、本発明のバクテリオファージは、選択された哺乳類の宿主の自然な細菌叢中で溶解成長(lytic growth)をしない。例えば、「研究室」ファージ株の多くは、非野生株である「研究室」細菌株にのみ感染できることが知られている。これに加え、またはこれに代えて、バクテリオファージは宿主の細菌株中でもインビトロでは溶解成長しないかインビトロでの生育にヘルパーファージを必要とする。従って、バクテリオファージは、例えば、アンバー変異、温度感受性変異などを含んでもよい。
【0030】
AP細胞中で外来核酸の発現を増強するための手段が一般に提供されている。このような手段としては、核酸分解を最小限にすること及び/または核を標的とすることを支援する方法が挙げられる。このような手段の例としては、クロロキンまたは他のリソソーム/エンドソーム酵素異化阻害剤を使用して核酸分解を最小限にする方法、及び/または核移行シグナルを使用して核酸を核に移行させる方法が挙げられる。
【0031】
ワクチン製剤は、バクテリオファージによって発現させるべきタンパク質源をさらに含んでもよい。このようにすれば、宿主は、タンパク質への1次的な免疫応答を誘発し、次いで、AP細胞の表面で発現され提示されたタンパク質によりさらに持続的な免疫応答を引き起こすことができる。
【0032】
別の具体化では、ファージ粒子表面の抗原タンパク質を発現するためにファージを修飾してもよい。例えば、ベクター媒体として完全なバクテリオファージM13粒子を使用することが可能である。M13に対する挿入サイズはλに対するものよりも相当に小さいが、「ファージディスプレイ」法(Hawkins, RE et al. 1992, J. Mol. Biol. 226: 889)は、ファージ粒子が、その外殻タンパク質に融合させた外来抗原部分を媒介できることを意味している。従って、ワクチン遺伝子が原核生物プロモーター(例えばLac Zプロモーター)と真核生物プロモーター(例えばCMVプロモーター)の両方の制御を受けるようなコンストラクトを作成することができ、大腸菌宿主中で成長させた場合、原核生物プロモーターはワクチン抗原の発現を指示し、タンパク質複合体としてM13外殻への組込みを可能にし、この結果、ワクチン後に強力な1次反応を誘導するはずである。次いで、AP細胞による取り込みに続いて、DNAが放出され、真核生物プロモーターがAP細胞内部からのワクチン抗原の長期にわたる発現を指示し、強力な2次応答が維持されるであろう。
【0033】
外来核酸は、免疫応答を増強することができるポリペプチドのような、少なくとも1つの別のポリペプチドをコードしてもよい。別のポリペプチドはサイトカインなどのアジュバントタンパク質やポリペプチドでもよく、例えばγインターフェロン(γIFN)のようなインターフェロン、IL−2、IL−6、IL−7、IL−12、GM−CSF及び/または他のサイトカイン/ケモカインをコードするものでもよい。さらに、HepBコア抗原のような「ヘルパーエピトープ」が、B細胞を活性化し、かつ強いT細胞反応を誘導するために使用できる。あるいはまたはさらに、CpGオリゴジヌクレオチドなどの免疫刺激シグナルを使用してもよい。
【0034】
バクテリオファージは、任意の適当な経路、例えば注入によって投与することができ、例えば、アンプルに入れて、または複数回分の投与量を容器に入れて単位用量形式(unit dosage form)で調製してもよい。バクテリオファージは、油性もしくは好ましくは水性媒体を用いた懸濁液、溶液または乳剤などの形でもよい。あるいは、バクテリオファージは凍結乾燥された形とし、投与の際に発熱性物質を含まない滅菌水などのような適当な媒体で再構成してもよい。この方法では、タンパク質、糖などの安定化剤をファージ粒子を凍結乾燥する際に加えてもよい。液状でも再構成される凍結乾燥形でも、注入溶液のpHを適切に調節するのに必要な量の薬剤、好ましくはバッファーを含む。非経口投与、特に、製剤を静脈内投与しようとする場合、溶質の総濃度は、製剤を等張性であるか低張性またはわずかに高張性であるように調整しなければならない。浸透圧の調節には糖のような非イオン性物質が好ましく、特にショ糖が好ましい。これらの形のうちのいずれでも、さらにデンプンまたは糖、グリセリンまたは食塩水などの適当な調整剤を含んでもよい。組成物は、液体でも固体でも、単位用量あたりバクテリオファージ材料を0.1%から99%まで含む。
【0035】
好ましい実施態様では、ワクチンはアジュバントを含んでもよい。一般にアジュバントは、非特異的に宿主の免疫応答を強化する物質を含む。多種多様なアジュバントが当業者に知られている。アジュバントの例としては、フロイント(Freund)完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、リポソーム及び、国際公開第90/11092号に記載されているようなニオソーム(niosome)、鉱物油及び非鉱物油ベースの油中水型乳剤アジュバント、サイトカイン、短い免疫刺激ポリヌクレオチド配列(例えば、Sato Y. et al. (1996) Science Vol. 273pp. 352-354; Krieg A.M. (1996) Trends in Microbial. 4pp. 73-77Sato Y. et al. (1996) Science Vol. 273pp. 352-354; Krieg A.M. (1996) Trends in Microbial. 4pp. 73-77に記載されているようなCpGジヌクレオチドを含むプラスミドDNA)が挙げられる。
【0036】
バクテリオファージはいわゆる「媒体」と結合させてもよい。媒体は共有結合することなくバクテリオファージが付着することができる化合物または基質である。典型的な「媒体」化合物は、金粒子、ガラスなどのシリカ粒子などを含む。従って、本発明のバクテリオファージはバイオリスティック(biolistic)な方法を使用して生物体に導入してもよい。例えば、被覆された金粒子を使用する高速衝撃法(high-velocity bombard method)が文献に記載されている(Williams R.S. et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88pp. 2726-2730; Fynan E.F. et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol. 90pp. 11478-11482)。
【0037】
さらに、ワクチンは1種類またはそれ以上の適当な界面活性化合物または乳化剤、例えばスパン(Span)またはトゥイーン(Tween)を含んでもよい。
【0038】
本発明のワクチンの投与態様は、患者に本発明の免疫保護量のウイルスを送達するものであれば任意の適当なルートによるものでよい。しかし、ワクチンは、筋肉内または深い皮下ルート経由で好ましくは非経口的に投与される。必要であれば、経粘膜(例えば経直腸、経口、経鼻、経膣)投与で、または他の腸管外ルート経由、すなわち、皮内、鼻腔内または静脈内などの他の投与態様も使用できる。経鼻投与のための製剤を開発してもよいし、アジュバントとして例えばキトサンを含んでもよい(Nat. Medicine 5(4) 387-92, 1999)。
【0039】
しかし、任意の特定のレシピエント生物体に対する具体的投与量は、年齢、一般的な健康状態及び性別、投与時間、投与ルート、投与されている他の薬との相乗効果及び求められている保護の程度を含む様々な要因に依存することが理解されるであろう。もちろん、必要ならば、投与は適当な間隔で繰り返すことができる。
【0040】
従って、本発明は、別の面では、ヒトまたは動物にここに記述されるようなワクチン製剤の有効量を投与して予防的かつ/または治療的に免疫する方法を提供する。ここで、有効量はヒト及び/または動物において免疫応答を誘発可能な量である。
【0041】
さらに、生物体の抗原提示細胞の表面に発現及び提示し得るポリペプチドをコードする外来核酸分子を含むバクテリオファージ粒子の使用が提供され、その結果上述のポリペプチドに対する免疫応答が、特定の疾患に対する予防接種のワクチン製造のための生物体において惹起される。
【0042】
好ましくは、予防接種される疾患は肝炎、例えばB型肝炎である。
好ましくは、単位用量当たりの薬剤は1010個あるいは1011個以上のような1010個以上のバクテリオファージ粒子を含む。
【0043】
本発明を実施例の方法ならびに以下に示す図を参照して述べる。
図1は本発明に従って設計されたラムダファージを作成するために用いたpRc/CMV−HBs(S)ベクターの概要図を示す;
図2はマウスに投与した様々な肝炎コンストラクトのELISA反応の時間経過の図表を示す;
図3は図2に示したデータのグループ平均を描いている図表を示す;
図4は国際標準品との比較によってマウス血清中の抗HBs濃度測定の図表を示す;及び
図5はELISAで測定した時の、λ−HBsAg(A〜D)及び組換えHBsAg(E+F)で予防接種したウサギにおけるHBsAg(白丸、左側目盛り)及び全バクテリオファージ(黒四角、右側目盛り)に対する抗体反応を示す。ウサギA〜Dは0、9、15及び27週にλ−HBsAgで予防接種した(矢印で示した)。ウサギEとFは0及び27週に組替えHBsAgで予防接種した。HBsAgプレートに対しモノクローナル抗体(クローンNF5、Aldevron)を1:50,000の希釈で用い、一方マウスのポリクローナル抗血清(1:500)をファージ−被覆プレートに対して用いた。各血清サンプルからのシグナルは種々のプレート間で相対シグナルを比較できるようにこの標準のシグナルに対して標準化した。
【実施例】
【0044】
実施例:B型肝炎に対するバクテリオファージを介した免疫
HepBsバクテリオファージベクターの作成−λHepBs
ラムダファージへのHepB発現カセットのクローニング。
プラスミドpRc/CMV−HBs(S)(pCMV−S)(Aldeveron)(図1を参照)をλ−gt11(Stratagene)のEcoRIサイトにクローニングした。pCMV−SベクターにはEcoRIサイトはないが、矛盾の無い(compatible)粘着末端を与えるMfeIサイトがある。MfeIサイトはプラスミド上160番目の塩基に存在し、一方サイトメガロウイルス真核生物プロモーターは206番目の塩基にあるので、この酵素による1ヶ所の切断は発現カセットを妨げない。
【0045】
プラスミド(1μg/μlを16ml)DNAをメーカー推奨バッファー中20単位のMfeI(New England Biolabs)を用い37℃、2時間で消化した。消化の成功は1%アガロースゲルで1mlの消化物を電気泳動することにより確認した。
消化したプラスミドDNAは次にフェノール/クロロフォルムで抽出し、エタノールで沈殿させた。消化物は蒸留水で200μlの最終容積にした。等容積のフェノール:クロロフォルム:イソアミルアルコール(35:34:1)(Fisher Biosciences UN2821)を加え、混合しフェーズロックチューブ(Eppendorf 0032 007.953)中マイクロフュージを用い13000rpmで回転させた。それから上部の水層を除き、同チューブ中当容積のクロロフォルムで抽出した。
【0046】
抽出後、水層を新しいチューブに移し、最終濃度が0.3Mになるように22μlの3M酢酸ナトリウムを加えた。2倍量の氷冷エタノールを加え、チューブを混合し−20℃で終夜貯蔵した。それからチューブを13000rpmで回転し、上澄み液を別の容器に移し750μlの氷冷70%エタノールを加えた。チューブを13000rpmで2分間遠心した。上澄み液を除き痕跡のアルコールを完全に除くためチューブを逆さにして10〜15分間放置した。それからペレットを15μlの滅菌蒸留水に再度懸濁させた。
【0047】
抽出したDNAは1%アガロースゲルで1μlを電気泳動し、OD260/280比をチェックすることにより純度を調べた。
この精製DNAとStratagene由来のEcoRIで消化した子牛腸管アルカリホスファターゼ処理λ−gt11(カタログ番号234211)を用いてライゲーションを行った。2μlのラムダDNA(0.5μg/μl)を既に90ng/μlに希釈された1.5μlの消化プラスミドに加えた。gt11はおよそ43kbで挿入断片はおよそ5.6kbなので、1μlのgt11及び135ngの挿入断片の使用は1:1のモル比となる。3UのDNAリガーゼ(Promega M1801)と適切なバッファーを加え容積を蒸留水で10μlとした。対照ライゲーションも用い、それは挿入DNAの替わりに1.5μlの水を加えた他には上述したようにセットアップした。ライゲーションは4℃で終夜インキュベートして行った。
【0048】
ライゲーション後、1μlのライゲーション混合物を挿入断片がしかるべき所にあることを確認するためにライゲーションさせていないラムダDNAと一緒にアガロースゲルで電気泳動を行った。ライゲーション後いずれのサイトも存在しないので、挿入断片はEcoRIあるいはMfeI消化によって除去されず、全体のサイズ差が確認に用いられた。
ライゲーションしたDNAをPromega lambda packagene system(cat. K3154)を用いてインビトロでパッケージした。上述したようにライゲーション反応物と対照反応物の5μlを25μlのpackagene抽出物に加えた。packagene kitより供給されたポジティブコントロールDNAを用いて3番目の反応をセットアップした。いずれの反応も室温で3時間インキュベートするために放置した。インキュベーション後反応を停止させるために225μlのファージバッファー(packageneの使用説明書を参照)を加え12.5μlのクロロフォルムを加えた。チューブを良く混ぜ白色沈殿物を沈殿させた。澄んだ上澄み液はパッケージされたファージを含む。
【0049】
packageneマニュアルに述べられたプロトコールを用いてパッケージされたファージを滴定した。簡単に述べると、ファージバッファー中でファージを連続希釈し(1:1000、1:10000)それぞれの希釈液100μlを指数関数的な発育期のE. coli LE392の100μlに加えた(37℃で前もって暖めた新鮮な培地1:100で新たに終夜生育させ、LE392を指数期とし37℃で2.5時間振ることにより生育させる)。細胞とファージをよく混合し37℃で30分間インキュベートした。それから3mlのTB top agar(1gのバクト−トリプトース、0.5gのNacl、100mlの水中0.8gの寒天−オートクレーブ、60℃に冷却し1mlの1M MgSO4を加える)を48℃で細胞/ファージに加え、良く混合しその後37℃に前もって暖められたLB−寒天プレート上に注いだ。
【0050】
終夜インキュベーション後プラーク数を数えた。挿入断片とのライゲーション由来のパッケージされたファージのプレートは挿入断片の無いコントロールよりも150〜200倍のカウントであった。計算したパッケージング効率は4.2×106組み換え体/μg DNAであった。
【0051】
6個のポジティブクローンと2個のネガティブクローンを選び、標準法(Sambrookら、1989年、分子クローニング:実験マニュアル。Cold Spring Harbour Laboratory Press, N.Y.)により小スケールのファージ増幅を行った。その後これら8個の精選ファージのサンプルを上述したようにX−galとIPTGの存在下E.coliのXL1−blue cell上で培養した。gt11のEcoRIサイトへの挿入断片はlacZ遺伝子を妨害するので、クローン中の挿入断片の存在を確認するために青/白のカラー選択を用いた。挿入断片を有するファージは白いプラークを与え、一方挿入断片の無いファージは青いプラークを与えた。挿入断片を有するプレートから選択した6個のファージ中5個が青のプラークを与え、これらの1つをその後の研究に選んだ。
【0052】
最終的に挿入断片の存在を確認するために、Promega Wizard lambda DNA抽出キット(カタログ番号A7290)を用いて選択したファージクローンからゲノムDNAを抽出した。pCMV−sプラスミドに特異的なプライマーを用いてPCRを行った。λ−gt11のEcoRIクローニングサイトのいずれかの側に位置する他のプライマーをクローニングサイト全域で配列を決定するために用い、さらに挿入断片の存在を確認するために用いた。
【0053】
それから多様性の低い標準的な大量スケールの液体培養(Sambrookら、1989年、分子クローニング:実験マニュアル。Cold Spring Harbour Laboratory Press, N.Y.)をその後のDNA予防接種試験のためのファージ(λHepBs)の大量製造に用いた。
【0054】
予防接種のプロトコール
それぞれ10匹のマウスを含む8群について検討した。
マウス群は以下の通り:
(1)ネガティブコントロール。非発現バクテリオファージ(λcI857)を筋肉内投与により免疫した。
(2)ポジティブコントロール。組換えB型肝炎表面抗原(HBsAg)で免疫した。
(3)‘裸‘のDNAによる予防接種のポジティブコントロール。サイトメガロウイルスプロモーター(pRC/CMV−HBs[S])のコントロール下HepB表面抗原を発現するプラスミドで免疫した。
(4)サイトメガロウイルスプロモーター(λHepBs)のコントロール下HepB表面抗原を発現するバクテリオファージλ。経口/鼻腔内投与、バクテリオファージは粘膜アジュバントキトサンとの複合体として与えた。
(5)λHepBs、リポソームと組み合わせて筋肉注射した。
(6)λHepBs、オイルを主体としたアジュバント(モンタニド206)で筋肉注射した。
(7)λHepBs、アジュバント無しSMバッファーのみで筋肉注射した。
(8)λHepBs、真空乾燥したバクテリオファージ粒子を皮膚に投与するためBio-Rad Helios圧縮窒素ガス‘遺伝子銃‘を用いて皮内/皮下免疫を行った。
ワクチンの製造と免疫のプロトコール:2週毎にマウスから採血した。0及び3週にマウスに予防接種した。予防接種に先立ち、ハロタンを吸入させマウスを麻酔した(グループ8を除いて)。
【0055】
予防接種法:
グループ1〜3及びグループ5〜7(筋肉内投与免疫)。前けい骨筋への到達を容易にするため後肢を剃った。皮膚にサンプルを注射するため27G×3/4インチの針を用いた。針の先は前けい骨粗面の約3mm外側。針先は3mm挿入し、サンプル(プラスミドDNA、ファージあるいは組替えHepB表面抗原[HBsAg])を約10秒かけてゆっくりと注射した。針は約5〜10秒そのままにし、その後ゆっくりと引き抜いた。
【0056】
ワクチン製造:
グループ3:プラスミドDNAは0.5mg/mlの濃度でエンドトキシンを含まないホスフェートバッファー食塩水(PBS)に含まれ、1匹当たり50μl(25μgDNA/マウス)を用いた。
【0057】
グループ2:エンドトキシンを含まない50μlのPBS中1μgの組換えHBsAgをマウスに注射した。
【0058】
グループ1及び7:バクテリオファージはSMバッファー(1リットル当たり;塩化ナトリウム5.8g、硫酸マグネシウム・7水和物2g、1mトリス−塩酸(pH7.5)50ml、2%ゲラチン溶液5ml)中1×1013個プラーク形成単位(pfu)/mlの濃度で投与した。5×1011個ファージ/マウスの用量に等価のファージ50μlを注射した。
【0059】
グループ5:マウス当たり;2×1011個のファージ(5μgのDNAに等価)を陽イオン性脂質のトランスフェクタム(Promega)で被覆して投与した。製造:20μlのファージ(SMバッファー中)を20μlの150mM塩化ナトリウムに加えた。10ml中10μlのトランスフェクタムを加え、溶液を混合し上述したように筋肉内投与する3時間前に10分間放置した。注射量は50μl/マウス。
【0060】
グループ6:SMバッファー中2×1013個/mlの濃度で25μlのファージを等容量のモンタニド206オイルアジュバント(Seppic、Paris、France)と混合し、各マウスに50μlのワクチン(5×1011個ファージ/マウス)を筋肉内投与し免疫した。
【0061】
グループ4(経口/鼻腔内投与免疫):10μlの1%キトサン([Fluka、媒体分子量]、1%酢酸中10mg/ml)を100μlのSMバッファー中1×1013個のファージに滴下して貯蔵用に調整した。投与に先立ち、懸濁液を暫時かき混ぜた。マウスが麻酔から意識を回復し始めた時に、ギルソン型ピペットを用いて5μlの滴量を各鼻孔に投与した。
【0062】
グループ8(遺伝子銃):ファージ粒子を送達させるためにBio−Rad Helios遺伝子銃を用いた。10μlのSMバッファー中1011個のファージ粒子を遺伝子銃プラスチックチューブカートリッジに移し、−70℃で凍らせ、それから終夜凍結乾燥した。各マススの腹部を剃り1回の免疫当たり1匹のマウス当たり500psiの圧力で1回の発射で投与した。
【0063】
採血スケジュール:
1群10匹のマウス、
マウス1〜2は0、2、4及び6週に採血、
マウス3〜4は0、2、4、6及び7週に採血、
マウス5〜6は0、2、4、6及び8週に採血、
マウス7〜8は0、2、4、6、8及び9週に採血、
マウス8〜9は0、2、4、6、8及び10週に採血。
各時点ですべてのマウスから採血していないので、このことから図2におけるマウス採血のギャップが説明される。
【0064】
結果
ELISAにより測定したHBsAgに対する抗体反応。
各群で個々のマウスについて抗体反応の時間経過を測定した。種々のプレート間の標準化を行うために個々のELISAプレートには抗HBsAgモノクローナル抗体の1:50,000の希釈液を含む(結果は各図表の関連部分に‘コントロール’値として示す)。図3は図2で示したデータの群平均を示す。
【0065】
有意な抗体反応がグループ2(組換えHepBs)とグループ5〜7(それぞれリポソーム、モンタニド及びアジュバント無しによるλHepBs)で観察された。他のグループでは反応は見られないかごく僅か観察された。(グループ4の見かけの増加はすべての採血に影響したELISAプレートの非特異的なエッジ効果であり、これが繰り返された。)。
【0066】
マウスにおける抗HepB表面抗原反応を定量化するために、最後の採血は国際標準品と比較した(Bio-Rad Monolisa抗HBs標準品カタログ番号72399)。間接ELISAによってマウス血清の1:10希釈を調べた。プレートを0.2Mの炭酸ナトリウムコーティングバッファー中pH9.6で100μl/ウェルのHBs(1μg/ml)で被覆した。プレートは被覆するために室温で終夜放置した。
【0067】
一夜インキュベーション後、プレートを一度PBS−Tweenですすぎ、PBS−ween中5%のMarvelスキムミルクの粉末をウェル当たり200μl加え、非結合サイトをブロックするために室温で30分間放置した。
【0068】
それからブロック溶液を除きブロッキングバッファー中マウス1次抗血清の1:10希釈の100μlを加え、ブロック溶液単独をネガティブコントロールとして用いた。標準品はウェル当たり100μlを加えるとの条件で用いた。例外として1mIU/ml(ミリ国際単位/ml)の標準品は10mIU/mlの標準品をPBS中1:10に希釈することにより作成した。それから室温で2.5時間プレートをインキュベートした。
【0069】
インキュベーション後、1次血清サンプルを除きプレートをPBS−Tweenで5回洗浄した。その後2次抗血清を加えた。セイヨウワサビペロキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(シグマ社カタログ番号A-8667)の1:500希釈液をウェル当たり100μl加えた。提供された国際標準品はヒトIgGであったので、2次抗体として抗ヒト血清を用いた。試験したサンプルはマウス血清であったが、マウス血清で得られた数値は実際の値よりも低いにもかかわらず、両者を検出するためのHRP標識2次抗体にとってマウス及びヒトの免疫グロブリン間に十分な交差反応性のあることが期待された。2次抗体でプレートを室温で1.5時間インキュベートした。
【0070】
その後PBS−Tweenでプレートを洗浄し、ウェル当たりSigma Fast OPD展開溶液(カタログ番号P9187)の200μl/ウェルを加え展開した。プレートを15分間展開し、その後3Mの硫酸50μl/ウェルを加え反応を止めた。自動プレート読み取り装置(492nm)でプレートを測定した。
【0071】
選択した結果を図4に示す。
リポソーム中λHepBsで免疫したマウス(グループ5、マウス4)の血清の1:10希釈液は17.5mIU/mlに等価の反応を示し、一方コントロールのpRC/CMV−HBs[S]で免疫したマウスは2.5mIU/mlに等価の反応を示した。保護のための認められた国際濃度は血清の10mIU/mlで、λHepBsによる免疫は保護に対して認められた国際濃度よりも大きな抗体価(1:10希釈で)をもたらしたことを示している。さらなる例は;グループ6(λHepBsプラスモンタニド)マウス5、16mIU/ml@1:10希釈、及びグループ7(λHepBsのみ)マウス8、14mIU/ml@1:10希釈。抗体濃度は無希釈マウス血清を用いて試験した時よりも高いと予想される。試験サンプルにおいて1次マウス血清に対して抗ヒト2次抗体が用いられているので(むしろ特異的抗マウスHRP複合体よりも)、これらの結果はおそらく実際の抗体価よりも表示不足していることが認められる。
【0072】
実施例2:B型肝炎に対するバクテリオファージを介する免疫に関するさらなる実験
ウサギの免疫
食塩水バッファー中2×1011個ファージ/ml(4×1010個ファージ、2μgDNA/ウサギ)の濃度で筋肉内投与した200μlのλ−HBsAgでウサギに予防摂取した。ファージワクチンを0、9、15及び27週に投与した。組換えB型肝炎表面抗原(HBsAg−Aldevron)を投与したウサギには0及び27週に25μg/ml(5μgタンパク質/ウサギ)の濃度で200μlの食塩水バッファー中タンパク質を筋肉内投与した。ウサギから定期的に採血し、抗体反応をELISAにより定量した。
【0073】
抗体反応のELISA測定
組換えHBsAgまたはバクテリオファージλコートタンパク質に対する抗体反応を間接ELISAにより測定した。ELISAプレートを100ngの精製HBsAg(Aldevron)あるいは109個のバクテリオファージ(50ng)/ウェルのいずれかで0.05Mの炭酸ナトリウムバッファー中pH9.2で終夜被覆した。その後コーティングバッファーを除き、200μl/ウェルのブロッキングバッファー(PBS−Tween中5%のMarvel乾燥スキムミルク)を37℃で30分間加えた。その後ブロッキングバッファーを除き、ブロッキングバッファー中1:50の希釈で100μl/ウェルの1次抗体を加え、プレートを4℃で終夜インキュベートした。それからプレートをPBS−Tween中で5回洗浄し、抗ウサギセイヨウワサビペロキシダーゼ標識2次抗体(DAKO)をメーカーの推奨希釈で37℃で1時間で加えた。その後プレートをPBS−Teen中で5回洗浄し、200μl/ウェルの基質(SIGMA Fast-OPD錠)を加え、プレートを暗所で5分間(ファージプレート)及び30分間(HBsAgプレート)展開した。50μl/ウェルの3M硫酸を加えて反応を停止させ、492nmで光学濃度を測定した。ELISAプレートの最初のウェルにブロッキングバッファー中100μlの希釈1次抗体(推定力価に依存して1:10〜1:50)を加え、プレートの12カラムすべてを1:1に連続希釈することにより反応を停止させた。各血清サンプルに対するエンドポイントの力価を計算するためにOD492NM=0.2のカットオフ値を用いた。
【0074】
結果
マウス以外の動物での免疫反応を調べ、追加の予防接種がより一貫した反応を与えるかどうかを明らかにするために、4羽のウサギをλ−HBsAgレポーターコンストラクトで免疫し、2羽を組換えHBsAgタンパク質で免疫した。注射間の間隔を大きく取り、初期の実験での2羽に比べて全部で4羽(λ−HBsAg)または2羽(組換えHBsAg)に投与し、1〜3週毎に採血した。組換えHBsAgに対しELISAによって抗体価を測定した(図5)。λ−HBsAgの2回の予防接種後、ファージをコードしたHBsAgワクチン抗原に対し矛盾する反応が再度見られた。λ−HBsAgを接種した4羽のウサギの内1羽がHBsAgに対して有意な反応を示し(図5D)、一方残る3羽は低レベルのゆるやかな増加を示した。これらの割合はλ−EGFPによる2回の予防接種後観察された割合と類似していた(即ち、レポーターファージワクチンによる2回の予防接種後動物の25%がEGFPに対し反応を示す)。しかし3回の予防接種後、いずれのウサギも組替えHBsAgタンパク質による1回の予防接種により誘導される反応に匹敵するかあるいは有意に増加した過剰な抗HBsAg反応を示した(図5)。λ−HBsAgによる4回の予防接種は1羽で抗HBsAg力価の顕著な増加(図5C)を、他の3羽に低強度のよりゆるやかな増加をもたらした。組換えHBsAgを投与したグループでは、2回目の予防接種は2羽でHBsAg抗体価の上昇をもたらしたが、この強度は特にこのグループの他のウサギ(ウサギF)で観察された力価に比較して、またはλ−HBsAgを予防接種したグループに比べた時非常に弱いHBsAg抗体価を示すウサギ5Eで低かった。この反応の矛盾は以前にHBsAgについて報告されている(Alper, C. A., Kruskall, M. S., Marcus-Bagley, D., Craven, D. E., Katz, A. J., Brink, S. J., Dienstag, J. L., Awdeh, Z., and Yunis, E. J. B型肝炎ワクチンに対する無反応の遺伝的予測N. Engl. J. Med. 1989; 321: 708-712)。
【0075】
HBsAg抗体反応のエンドポイントでの滴定はλ−HBsAgで予防接種したウサギ(力価は0週で1:10であった)に対して22週後1:120〜1:640の間であった、一方これらのウサギ(組換えλ−HBsAgを投与された)に対して同じ時点で1:160(ウサギE)と1:600(ウサギF)の力価が観察された。λファージコートタンパク質に対する最初の予防接種後λ−HBsAgで予防接種されたすべてのウサギで高い抗体反応が観察され、このことはこの高い抗ファージ反応がその後のファージ予防接種の有効性を阻害しなかった(図5A〜D)ことを示している。22週での抗ファージ反応は4羽いずれにとってもエンドポイントの滴定は1:50,000のオーダーであった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に従って設計されたラムダファージを作成するために用いたpRc/CMV−HBs(S)ベクターの概要図を示す。
【図2a】HepB抗原に対するグループ1(ネガティブコントロールファージ)のELISA反応を示す。
【図2b】HepB抗原に対するグループ2(HepBタンパク質)のELISA反応を示す。
【図2c】HepB抗原に対するグループ3(HepBプラスミドコントロール)のELISA反応を示す。
【図2d】HepB抗原に対するグループ4(経口/キトサンHepBファージ)のELISA反応を示す。
【図2e】HepB抗原に対するグループ5(HepBファージ+リポソーム)のELISA反応を示す。
【図2f】HepB抗原に対するグループ6(モンタニド/ラムダHepB)のELISA反応を示す。
【図2g】HepB抗原に対するグループ7(PBS中HepBファージ)のELISA反応を示す。
【図2h】HepB抗原に対するグループ8(DNA銃/HepB予防接種)のELISA反応を示す。
【図3】B型肝炎表面抗原(HBs)に対する反応のELISAによるグループ平均を示す。
【図4】国際標準との比較によるマウス血清中抗HBs濃度の測定結果を示す。
【図5】ウサギA〜Fについて、ELISAで測定した時の、λ−HBsAg(A−D)及び組換えHBsAg(E+F)で予防接種したHBsAg(白丸、左側目盛り)及び全バクテリオファージ(黒四角、右側目盛り)に対する抗体反応を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が修飾されていないバクテリオファージ粒子及び薬学的に許容される担体を含み、バクテリオファージ粒子が、生物体の抗原提示細胞の表面で発現及び提示され得る肝炎ウイルスポリペプチドをコードする外来の核酸分子を含み、その生物体において前記ポリペプチドに対する免疫応答を引き起こす肝炎ワクチン製剤。
【請求項2】
A型、B型、C型、D型、及び/またはE型肝炎に対する予防接種において使用する請求項1に記載の肝炎ワクチン。
【請求項3】
抗原提示細胞の表面に発現及び提示された抗原が肝炎表面抗原である請求項1または2に記載の肝炎ワクチン。
【請求項4】
バクテリオファージが1個以上の肝炎抗原を発現するように設計された先行するいずれかの請求項に記載の肝炎ワクチン。
【請求項5】
各粒子の表面が修飾されていない109個以上のバクテリオファージ粒子及び薬学的に許容される担体を含み、バクテリオファージ粒子が、生物体の抗原提示細胞の表面で発現及び提示され得る肝炎ウイルスポリペプチドをコードする外来の核酸分子を含み、その生物体において前記ポリペプチドに対する免疫応答を引き起こすワクチン製剤。
【請求項6】
体液性及び/または細胞性免疫応答を誘導することができる先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項7】
ウイルス、バクテリア、真菌類、酵母、原生動物、寄生虫、昆虫または伝染性海綿状脳症に対する予防接種において使用する請求項5に記載のワクチン製剤。
【請求項8】
癌細胞特異的抗原の発現によって癌細胞に対する免疫応答を誘導すべく使用する請求項5に記載のワクチン製剤。
【請求項9】
バクテリオファージが、ポリペプチドの発現を促進するための転写レギュレーター及び/または翻訳レギュレーターを含む先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項10】
CMV、SV40、チミジンキナーゼ、またはRSVプロモーターのような真核生物プロモーターを含む請求項9に記載のワクチン製剤。
【請求項11】
コンスティテューティブプロモーター及び制御可能なプロモーターの制御下外来核酸を含む請求項9に記載のワクチン製剤。
【請求項12】
バクテリオファージが、ラムダ(λ)、p1ファージ、Tファージ、Mu、fd、M13、または繊維状ファージである先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項13】
バクテリオファージが、1個のポリペプチドの単一コピーもしくは多重コピーまたは複数のポリペプチドを発現し得るものである先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項14】
バクテリオファージが、選択された哺乳類宿主の自然な細菌叢において溶解成長しない先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項15】
リソソーム/エンドソームの酵素的異化阻害剤及び/または核移行シグナルをさらに含む先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項16】
バクテリオファージによって発現されるポリペプチドをさらに含む先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項17】
ファージ粒子表面のポリペプチドを発現するようにバクテリオファージが修飾されている先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項18】
外来核酸が免疫応答を増強させ得るポリペプチドをもコードする先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項19】
さらにアジュバントを含む先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項20】
バクテリオファージが媒体と結合している先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項21】
ヒトまたは動物における疾病の予防及び/または治療において使用される先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項1】
表面が修飾されていないバクテリオファージ粒子及び薬学的に許容される担体を含み、バクテリオファージ粒子が、生物体の抗原提示細胞の表面で発現及び提示され得る肝炎ウイルスポリペプチドをコードする外来の核酸分子を含み、その生物体において前記ポリペプチドに対する免疫応答を引き起こす肝炎ワクチン製剤。
【請求項2】
A型、B型、C型、D型、及び/またはE型肝炎に対する予防接種において使用する請求項1に記載の肝炎ワクチン。
【請求項3】
抗原提示細胞の表面に発現及び提示された抗原が肝炎表面抗原である請求項1または2に記載の肝炎ワクチン。
【請求項4】
バクテリオファージが1個以上の肝炎抗原を発現するように設計された先行するいずれかの請求項に記載の肝炎ワクチン。
【請求項5】
各粒子の表面が修飾されていない109個以上のバクテリオファージ粒子及び薬学的に許容される担体を含み、バクテリオファージ粒子が、生物体の抗原提示細胞の表面で発現及び提示され得る肝炎ウイルスポリペプチドをコードする外来の核酸分子を含み、その生物体において前記ポリペプチドに対する免疫応答を引き起こすワクチン製剤。
【請求項6】
体液性及び/または細胞性免疫応答を誘導することができる先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項7】
ウイルス、バクテリア、真菌類、酵母、原生動物、寄生虫、昆虫または伝染性海綿状脳症に対する予防接種において使用する請求項5に記載のワクチン製剤。
【請求項8】
癌細胞特異的抗原の発現によって癌細胞に対する免疫応答を誘導すべく使用する請求項5に記載のワクチン製剤。
【請求項9】
バクテリオファージが、ポリペプチドの発現を促進するための転写レギュレーター及び/または翻訳レギュレーターを含む先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項10】
CMV、SV40、チミジンキナーゼ、またはRSVプロモーターのような真核生物プロモーターを含む請求項9に記載のワクチン製剤。
【請求項11】
コンスティテューティブプロモーター及び制御可能なプロモーターの制御下外来核酸を含む請求項9に記載のワクチン製剤。
【請求項12】
バクテリオファージが、ラムダ(λ)、p1ファージ、Tファージ、Mu、fd、M13、または繊維状ファージである先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項13】
バクテリオファージが、1個のポリペプチドの単一コピーもしくは多重コピーまたは複数のポリペプチドを発現し得るものである先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項14】
バクテリオファージが、選択された哺乳類宿主の自然な細菌叢において溶解成長しない先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項15】
リソソーム/エンドソームの酵素的異化阻害剤及び/または核移行シグナルをさらに含む先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項16】
バクテリオファージによって発現されるポリペプチドをさらに含む先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項17】
ファージ粒子表面のポリペプチドを発現するようにバクテリオファージが修飾されている先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項18】
外来核酸が免疫応答を増強させ得るポリペプチドをもコードする先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項19】
さらにアジュバントを含む先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項20】
バクテリオファージが媒体と結合している先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【請求項21】
ヒトまたは動物における疾病の予防及び/または治療において使用される先行するいずれかの請求項に記載のワクチン製剤。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図2g】
【図2h】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図2g】
【図2h】
【図3】
【図4】
【図5】
【公表番号】特表2006−503860(P2006−503860A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540967(P2004−540967)
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004267
【国際公開番号】WO2004/030694
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(503345307)モアダン・リサーチ・インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004267
【国際公開番号】WO2004/030694
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(503345307)モアダン・リサーチ・インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】
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