説明

肝疾患の診断及び治療

【課題】肝疾患、特に炎症を特徴とするものの診断及び治療に有用な方法及び組成物の提供。
【解決手段】MAdCAM上のエピトープに結合する単離された抗体。これらの組成物は、α4β7/MAdCAM阻止を含む疾患又は障害の治療、並びに細胞間接着分子とそれらのリガンドとの間の相互作用の阻止といった炎症反応の一次事象の阻害に有用である。治療可能な疾患は、感染、特にウイルス感染、医原性疾患、胆汁鬱滞性疾患、遺伝性疾患、サルコイドーシス、器官移植、等を含む。該抗体を用いた診断方法は、疾患の存在の検出又は疾患の治療に用いた療法の経過の監視に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓疾患、特に炎症を特徴とするものの予防、治療及び管理に用いることのできる方法及び組成物に関する。炎症性肝臓疾患の予後及び診断に有用な方法及び試薬も開示される。
【背景技術】
【0002】
(関連する開示の記載)
血液から組織を通ってリンパへ、そして血液に戻る白血球の補充及び再循環は、組織損傷、感染又は抗原沈積を伴う炎症プロセスの鍵となる事象である(Springer, T., (1994) Cell, 76: 301-314; Berlin等, (1995) Cell, 80: 413-422; Schweighoffer等, (1993) J. Immunol., 151: 717-729)。これらの事象は、循環している白血球表面の種々の特定化分子と内皮細胞との間の相互作用により分子レベルで調節される(Springer, T., (1994) 上掲)。最近のモデルは、リンパ球サブセットを含む末梢血液白血球の種々の組織部位への補充又はホーミングが、i)第一の過渡的接触事象、ii)Gタンパク質-結合シグナル伝達レセプターを含む迅速な活性化事象、及びiii)活性化誘発の強固な接着を含む多段階プロセスによって進行することを示している(Springer等, (1994) 上掲)。白血球の組織への走化性及び血管外遊出は、この3つの主要な事象に従う。
【0003】
粘膜アドレシン(addressin)細胞接着分子(MAdCAM-1)はリンパ球の正常粘膜組織への選択的ホーミングに含まれている(Berlin等, (1993) Cell, 74: 185-195; Briskin等, (1997) Am. J. Pathol. 151: 97-110)。それは、粘膜関連リンパ組織の高内皮性小静脈(HEV's)を含む血管の制限された組で発現され、パイアー斑及び腸管薄膜プロプリア(propria)へのリンパ球輸送を指示する(Berlin等, (1993) 上掲)。ヒトでは、MAdCAM-1発現は胃腸管(結腸及び小腸)の組織に関連し、リンパ組織(腸間膜リンパ節)に関連する(Briskin等, (1997) 上掲)。それは、膵臓、胆嚢及び脾臓小静脈及び脾臓白脾髄周縁洞で検出された(Kraal等, (1995) Am. J. Path. 147: 763-771)。炎症開始時に非肥満糖尿病マウスの膵臓におけるHEV様血管(Hanninen A.等, (1993) J. Clin. Invest 92: 2509)、実験的に誘発させた炎症性腸疾患を持つマウスからの腸管薄膜プロプリア(Viney J.等, (1996) J. Immunol. 157: 2488-2497; Picarella D.等, (1997) J. Immunol., 158: 2099-2016)及びヒトにおいて潰瘍性大腸炎及びクローン病に関連する炎症性病巣(Briskin等, (1997) 上掲)で増加したMAdCAM-1発現が観察された。それは、正常又は炎症を起こした腸管外組織の大部分で検出されなかった(Briskin等, (1997) 上掲)。
【0004】
リンパ球インテグリンα4β7はリンパ球(免疫記憶T細胞)のMAdCAM-1への接着を媒介することが示された(Tidwell等, J. Immunol. 159: 1497-1505; Walsh等, (1996) Immunol. 89: 112-119; Berlin等, (1993) Cell, 74: 185-195)。MAdCAM-1/α4β7相互作用は、セレクチン-非依存性相互作用及び生理学的流動下でのリンパ球ローリングを媒介することが示された(Berlin等, (1995) Cell, 80: 413-422)。
MAdCAM-1に対する抗体及びα4β7インテグリンのα4及びβ7サブユニットの両方は、リンパ球のMAdCAM-1発現細胞への結合を阻止する(Berlin等, (1993) Cell, 74: 185-195)。MAdCAM-1/α4β7阻止がリンパ球輸送を減少させ、炎症性浸潤の重篤さ及び急性炎症性腸疾患の実験的モデルにおける損傷の程度を低下させることが示された(Picarella等, (1997) J. Immunol. 158(5): 2099-2106; Hesterberg等, (1996) Gastroenterology 111: 1373-1380)。MAdCAM-1/α4β7相互作用の幾つかの潜在的な阻害剤が、胃腸管へのMAdCAM-1関連リンパ球補充を防止するために提案されている(国際公開番号WO 96/24673、国際公開番号WO 97/25351)。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、肝疾患の診断、予後及び治療に有用な方法及び組成物を包含する。本発明の方法及び組成物は、種々の肝疾患、特に肝臓へのMAdCAM-1関連リンパ球の補充を特徴とするものの診断、予後及び治療に用いることができる。本発明に含まれる肝疾患は、MAdCAM-1発現を特徴とする全身疾患又は障害を含み、感染、特にウイルス感染、自己免疫疾患、医原性疾患、遺伝性疾患、胆汁鬱滞性疾患、サルコイドーシス、器官移植及び骨髄移植後の移植片対宿主疾患を含む。本発明は、好ましくは肝炎、特にウイルス性肝炎、および自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変及び原発性硬化性胆管炎等の胆汁鬱滞性疾患、及び同種移植片拒絶の治療に使用される。
本発明に含まれる治療方法は、それを必要としている宿主に、MAdCAMとMAdCAMの結合パートナー又はリガンド、例えばα4β7インテグリンとの相互作用を防止する、又は肝臓におけるMAdCAMの発現を阻害する薬剤を投与することを含んでなる。この方法は、MAdCAM-1関連リンパ球の肝臓への補充並びに細胞間接着分子とそれらのリガンドとの間の相互作用の阻止といった炎症反応における主要な事象の阻害に有用である。好ましい実施態様では、本発明の方法は、α4β7保持リンパ球の肝臓への浸潤を抑制又は阻止するのに用いられ、それにより治療される肝疾患又は障害における炎症の重篤さ及び組織損傷の程度を低下させる。
【0006】
本発明は、抗体などの薬剤を含有する製薬組成物を含む肝疾患治療用の組成物並びにキット及び製造品を含む。キット及び製造品は、好ましくは:
(a)容器;
(b)前記容器上のラベル;及び
(c)前記容器に収容された活性剤を含有する組成物を含んでなり;当該組成物は肝疾患の治療に有効であり、前記容器上のラベルが組成物は肝疾患の治療に使用できることを表示し、前記組成物中の活性剤がMAdCAMとそのリガンドとの相互作用を防止する薬剤を含む。キットは、場合によっては、製薬的に許容されるバッファーを収容した第2の容器及び肝疾患の治療のために組成物を使用することについての指示といった付加的成分を含む。
また、肝疾患、特に肝組織におけるMAdCAM-1の発現を特徴とするものの予後及び診断に有用な方法も開示される。本発明での予後又は診断のための疾患又は障害は、本発明の内容で治療可能な疾患及び障害を含む。診断方法は、試料、特に肝臓生検におけるMAdCAM-1の存在又は試料中のMAdCAM-1のリガンドを保持する浸潤リンパ球の存在の検出に用いることができる。この方法は、疾患の検出又は疾患あるいは疾患の治療に用いた治療法の経過の監視、段階付け又は予測に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】正常成人ヒトリンパ節の内皮細静脈でのMAdCAM(矢印)発現を示す。
【図1B】正常成人ヒト脾臓におけるMAdCAM(矢印)発現を示す。発現は脾臓脾髄を取り囲む星状細胞で観察された。
【図1C】正常成人ヒト膵臓の毛細血管におけるMAdCAM(矢印)発現を示す。
【図2A】代表的な疾患試料を示す。図2Aは、炎症を起こした肝門脈路内の小毛細血管でのMAdCAM(矢印)の発現を示す。
【図2B】炎症を起こしたヒト肝門脈路内の拡張した脈管通路でのMAdCAM(矢印)の発現を示す。
【図2C】門脈路内のリンパ球凝集を取り囲む星状細胞でのMAdCAM(矢印)の発現を示す。
【図2D】炎症を起こしたヒト肝門脈路内の拡張した脈管通路でのMAdCAM(矢印)の発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
定義
一般に、以下の単語及び成句は、詳細な説明、実施例、及び請求の範囲で使用される場合には表示する定義を有する。
「MAdCAM」又は「MAdCAM-1」は本発明の文脈中では交換可能に使用され、タンパク質粘膜アドレシン細胞接着分子-1を意味し、それは短い細胞質尾部、膜貫通領域及び3つの免疫グロブリン様ドメインからなる細胞外配列を含む一本鎖ポリペプチドである。マウス、ヒト及びマカークMAdCAM-1についてのcDNAはクローン化されている(Briskin等, (1993) Nature, 363: 461-464; Shyjan等, (1996) J. Immunol. 156: 2851-2857)。
「MAdCAM結合パートナー又はリガンド」とは、MAdCAMと相互作用する分子を意味する。この分子は天然発生でよく、可溶性でも細胞表面に局在化していてもよい。一つの知られたMAdCAMリガンドは、リンパ球インテグリンα4β7(以後、「α4β7」とする)という、α及びβサブユニットから構成される異種二量体構造である。ヒトα4サブユニット(Kilger及びHolzmann (1995) J. Mol. Biol. 73: 347-354)はβ7サブユニット(Erle等, (1991) J. Biol. Chem. 266: 11009-11016)と関連し、成熟リンパ球の大部分、並びに胸腺細胞、骨髄細胞及び肥満細胞の小集団で発現される。(Kilshaw及びMurant (1991) Eur. J. Immunol. 21: 2591-2597及びGurish等, (1992) 149: 1964-1972)。ヒトでは、モノクローナル抗体ACT-1(Lazarovits等, (1984) J. Immunol. 133(4): 1857-1862)がヒトT及びB細胞上のα4β7異種二量体の同定に使用されている。
【0009】
本発明の文脈中で使用される「治療」という用語は、疾患又は障害に対する治療的処置並びに予防又は防御的手段を含むことを意味する。即ち、例えば治療という用語は、疾患又は障害の罹患前又は後に薬剤を投与し、それにより疾患又は障害の全ての徴候を防止又は除去することを含む。他の例として、疾患の臨床的顕現の後に疾患の徴候に抗するために薬剤を投与することは疾患の「治療」を包含する。さらに、投与が疾患又は障害の臨床パラメータ、例えば組織侵襲の程度又は白血球輸送の量又は範囲、及びおそらく疾患の緩和に影響する場合、罹患後及び臨床的徴候が進行した後に薬剤を投与することは、疾患の「治療」を包含する。
「治療の必要がある」ものには、疾患又は障害に既に羅患しているヒト等の哺乳動物が含まれ、疾患又は障害が予防されるべきものが含まれる。
【0010】
「薬剤」、「組成物」及び「アンタゴニスト」という表現は本発明の範囲内では交換可能に使用され、MAdCAM-1とMAdCAMリガンド又は結合パートナー、例えば白血球表面抗原α4β7との間の相互作用を妨害する任意の分子又は物質を含むことを意味する。このような分子は、小型生物有機分子、例えば、ペプチド模倣物、抗体、イムノアドヘシン、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、グリコペプチド、糖脂質、
多糖類、オリゴ糖類、核酸、生物有機分子、製薬剤及びそれらの代謝物、転写及び翻訳制御配列、等を含む。
ここでの「炎症」という用語は、特異的及び非特異的防御システム両方の反応を意味する。特異的防御システム反応は、ウイルス等の抗原に対するT細胞及び抗体応答、及び遅延型過敏症を含む。非特異的防御システム反応は、一般的に免疫記憶は不可能な白血球に媒介される炎症反応である。そのような細胞は、マクロファージ、好酸球、及び好中球を含む。非特異的反応の例は、蜂さされ後の即時型腫脹、及び細菌感染部位でのPMN白血球の堆積、例えば肺炎における肺浸潤及び膿瘍における膿の形成を含む。
【0011】
「医原性疾患」という用語は、幾つかの他の疾患の治療を意図する治療用化合物への暴露により誘発される疾患を意味する。薬物誘発肝疾患又は障害の例は、例えば、数例を挙げるとアミネプチン、クロメタシン、ダントロレン、ディクロフェナク、フェノフィブレートの投与に関連する慢性活性肝炎、数例を挙げるとアセプトメタジン、アジマリン及び関連薬、アミトリプチリン、及びアンピシリンの投与に関連する慢性胆汁鬱滞、数例を挙げるとアロプリナル、アスピリン、及びジアゼパンの投与に関連する肝肉芽腫を含む。この内容において、Pathology of Lver, 3rd. Edition, (Macseen, Anthony, Scheuer, Burt及びPortman,編) Churchill Livingstone (1994)の表15.10, 15.8及び15.11を参照することができ、その開示はここに全体を参考として取り入れるものとする。
【0012】
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、特に単一の抗モノクローナル抗体(アゴニスト及びアンタゴニスト抗体を含む)、及び多エピトープ特異性を持つ抗体組成物を包含している。
ここで使用される「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を称する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対応する。更に、異なる決定基(エピトープ)に対応する異なる抗体を典型的に含む通常の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各mAbは抗原の単一の決定基に対応する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンで汚染されないハイブリドーマ培養によって合成できることで有利である。
【0013】
ここで、モノクローナル抗体は、一の抗体の可変(高頻度可変を含む)ドメインを他の抗体の定常ドメイン(例えば「ヒト化」抗体)と、又は軽鎖を重鎖と、又は一の種からの鎖を他の種からの鎖とスプライシングすることによって生産されるハイブリッド及び組み換え抗体、もしくは異種タンパク質との融合物を含み、それは起源とする種や免疫グロブリンクラス又はサブクラス名によらず、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限り抗体断片(例えば、Fab、F(ab')、及びFv)を含む(例えば、Cabilly等の米国特許第4,816,567号とMage及びLamoyi,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 79-97(Marcel Dekker,Inc., New York, 1987)参照)。
よって「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られ、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とするとは解釈されない抗体の特徴を示す。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256: 495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法により作成してもよいし、組換えDNA法(例えば、Cabilly等, 上掲)により作成してもよい。
【0014】
ここで、モノクローナル抗体は特に、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいてそれらの抗体の断片である(Cabilly等, 上掲;Morrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 [1984])。
【0015】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有する特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')あるいは抗体の他の抗原結合性配列)である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントの相補性決定領域(CDR)が、マウス、ラット、ヤギなどのヒト以外の種のCDR(ドナー抗体)に由来する所望の特異性、親和性及び容量を持つ残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFv枠残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、輸入されるCDR又は枠配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密かつ最適化するために施される。一般にヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン共通配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含有するであろう。また、最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含有するであろう。さらなる詳細については、Jones等, Nature 321: 522 -525 (1986);Reichmann等, Nature 332: 323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. struct. Biol. 2: 593 -596 (1992)を参照のこと。
【0016】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され及び単離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、抗体は、(1)ローリー法で測定したときに95重量%より多くの、最も好ましくは99重量%より多くの抗体まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN-末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分な程度に、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0017】
ここで用いられる「イムノアドヘシン」なる用語は、異種性タンパク質、例えばMAdCAM(「アドヘシン」、例えば、レセプター、リガンド又は酵素)の「結合ドメイン」を免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能と結合させる抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(すなわち「異種性」)アドへシンアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG、IgM、IgE、IgA及びそれらの任意のサブクラス又はアイソタイプといった任意の免疫グロブリンから得ることができる。
【0018】
(発明の実施の形態)
肝疾患及び障害
本発明の方法は、種々の肝疾患、特にMAdCAM保持細胞の存在を特徴とするものの診断、予後及び治療に有用である。従って、本発明によると、肝疾患は、肝臓及び周辺脈管構造におけるMAdCAM-1の発現に関連する任意の肝臓疾患又は障害である。例えば、本発明の方法は、疾患がMAdCAM-1保持細胞型の存在を特徴とする限りにおいて、感染、医原性疾患、遺伝性疾患、自己免疫疾患、胆汁鬱滞性症候群、サルコイドーシス、器官移植等によってもたらされるものを含む種々の肝疾患の診断、予後及び治療に有用である。
【0019】
本発明の範囲内の疾患又は障害は、表1に詳述する疾患及び障害を含むがこれらに限られない。
表1
肝臓炎症を含む前進疾患及び障害
A.肝炎
1.任意の肝臓炎症、例えば、急性肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝炎及び肝硬変。
2.感染
-感染、特にウイルス感染、特に慢性ウイルス感染によってもたらされる任意の肝臓炎症、例えば以下に関連する炎症:
a)A型肝炎、ピコルナウイルス
b)B型肝炎、ヘパドナウイルス(肝細胞癌)
c)C型肝炎、フラビウイルス
d)D型肝炎(Δ)、不完全RNAウイルス(B型肝炎との同時感染が必要)
e)E型肝炎、一本鎖、ポジティブセンスRNAゲノム
f)F型肝炎、
g)G型肝炎(HGBV-C)一本鎖RNAウイルス
h)エプスタイン-バーウイルス
i)シテロメガロウイルス
j)アデノウイルス
k)肝臓の他のウイルス感染
3.自己免疫
-既知又は未知の病因の自己免疫攻撃に関連する、典型的には門脈道におけるかなりのリンパ球浸潤に関連する、及び断片的壊死に関連する任意の肝臓炎症。
4.医原性
-任意の薬物誘発性肝臓炎症、例えば、慢性活性肝炎、胆汁鬱滞又は肉芽腫形成を含む。
5.遺伝性
-遺伝関連体質、例えば、肝レンズ核変性症に関連する肝臓の慢性的変化に関連する任意の炎症、
a)ウイルソン病
b)α1-抗トリプシン欠損症
c)他の遺伝性代謝疾患、例えばガラクトース血症
B.胆汁鬱滞性症候群
-任意の肝臓内胆管炎症、例えば原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎及び成人特発性ダクトペニア(ductopenia)のように肝不全及び肝硬変をもたらすものを含む。
D.移植
-任意の肝臓及び胆管の炎症
肝臓移植、移植片対宿主疾患における肝臓損傷及び腎臓及び他の同種移植片の受容者、例えば超急性同種移植片拒絶、及び異種移植片拒絶を含む。
【0020】
本発明の文脈の中で特に好ましい疾患は、慢性肝炎、特に感染、中でもウイルス感染による肝炎である。この範疇に含まれるのは、ウイルス(HBV、HDV、HCV)、自己免疫性肝炎(古典的ルポイド及びサブタイプ)、自己免疫性オーバーラップ症候群、薬物誘発(例えばニトロフラントイン、アルファメチルドーパ、イソニアジド)及びいわゆる「特発性」肝炎を含む慢性肝炎の確立された血清学的範疇である。この点において、当業者は、Pathology of Liver, 3rd Edition, (Macseen, Anthony, Scheuer, Burt及びPortman編) Churchill Livingstone (1994)の第9章、特に表9.2及び9.3を参照することができ、その開示はここに全体を参考として取り入れる。当業者が認めるように、慢性肝炎の定義に含まれない幾つかの慢性肝臓疾患が慢性肝炎の組織学的特徴を有しうる(例えば、断片壊死)。これらの疾患、例えば肝臓内又は外胆管の疾患などはここの定義に含まれる。肝炎ウイルス、A型肝炎(HAV)、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、D型肝炎(HDV、デルタ剤)E型肝炎、F型肝炎及びエプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、パラミオウイルスなどを含む多くのウイルスでの感染が肝臓の重篤な炎症をもたらすことが知られている。今日までに少なくとも7タイプの肝炎ウイルス(A−Gと命名)が同定されている。これらの中で、最も破壊的なのはC型肝炎ウイルス(HCV、非-A、非-Bとも呼ばれる)である。米国内でおよそ390万人が現在HCVに感染しており、毎年およそ8,000−10,000人がHCV−関連慢性肝臓疾患で死亡している。現在の治療法は、γ-インターフェロン、エンプリアサイズ(empliasize)B及びリビビリン(ribivirin)を含み、それら各々は制限された有効性及び重大な副作用を有している。また現在の治療法は移植も含むが、移植された個体はウイルスに感染されたままなので、移植後の免疫抑制された患者はウイルスRNAレベルの増大及びしばしば新しい肝臓での肝臓疾患の迅速な進行を示す。
【0021】
慢性胆汁鬱滞症候群は肝臓内胆管の進行性の炎症的破壊を特徴とし、肝不全、線維症及び肝硬変をもたらす。この型の疾患は、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎及び成人特発性ダクトペニア(ductopenia)を含む。
ここに開示する方法により治療可能な遺伝性疾患は、遺伝関連体質に伴う炎症性疾患を含む。例としては、ウイルソン病、α1-抗トリプシン欠損症、及び他の遺伝性代謝疾患、例えばガラクトース血症及びチロシン血症が含まれる。
【0022】
肝疾患の診断及び予後
本発明の文脈内で予測及び診断するための肝疾患は上記のものであり、試料、例えば肝炎組織又は驚くべきことに血清などの細胞無し試料におけるMAdCAMの存在を特徴とする。従って、本発明の一実施態様は、試料中でのMAdCAMの検出及び/又は測定、及びそのような検出又は測定の、一般に肝疾患又は障害の診断、段階付け、重篤さの特定、及び予後における使用に係る。さらに、MAdCAMの発現はα4β7インテグリン保持リンパ球の存在と関連づけられているので、本発明の分脈内の肝疾患の予後及び診断は、α4β7インテグリン保持リンパ球の存在の測定又は検出を包含する。
【0023】
A.可溶性又は細胞無しMAdCAMの検出
本発明は、MAdCAMが患者の血清中で検出できるという発見に基づいて、肝疾患及び障害の診断及び予後のための方法を含み、それに限られるものではないがそれに使用するのが好ましい。従って本発明は、一般にMAdCAM保持細胞の発現によって特徴づけられる疾患又は障害の診断及び予後のための方法を含み、上に列挙した肝疾患又は障害を含むがそれらに限られない。
本発明のこの態様によると、試験を施される試料はヒトなどの患者から誘導された試料であり、これらに限られないが、任意の生物学的流体、好ましくは体液を含む。特に好ましいのは、細胞無しの試料であり、ここで細胞無しの試料という用語は、試料が実質的に細胞を欠いていること、又は試料が実質的にMAdCAM保持細胞型を含まないことを示す。体液の例は、これらに限られないが、全血、血清、血漿、尿、滑液、脳又は髄液、唾液、組織浸潤、頸部又は膣滲出液、組織浸潤、胸水、気管支肺胞洗浄液、小又は大腸内溶物、便調製物などを含む。他の実施態様では、生物学的流体は細胞培養媒質又は培養細胞の上清であってもよい。好ましくは、試料は血液試料、特に血清試料である。
【0024】
本発明によって提供される方法は、以前は免疫組織学的技術あるいは顕微鏡又はフローサイトメトリーによる直接又は間接的な免疫蛍光法に従う細胞含有試料を必要としていたMAdCAM測定又は検出の従来技術の方法の多くの制限を解消する。従来技術方法の制限は、(1)多数の細胞を含む極めて僅かな組織試料、(2)長い調製時間、及び(3)フローサイトメーター等の高価な装置を必要とすることを含む。ここに提供される方法は、これらの制限を解消する。
被分析物の測定のためのこの分野で知られた任意の方法が、試料中のMAdCAMの測定の実施に使用できる。このような方法は、これらに限られないが、数例を挙げると放射免疫測定、酵素免疫測定(EIA)、好ましくは酵素結合免疫測定(ELISA)、「サンドウィッチ」免疫測定、沈殿反応、ゲル拡散反応、免疫拡散測定、凝集測定、補体-固定測定、免疫放射定量測定、蛍光免疫測定、プロテインA免疫測定、及び免疫電気泳動測定等の技術を用いる競合及び非-競合アッセイシステムを含む。好ましい免疫測定方法の例については。米国特許第4,845,026号(1989年7月4日)及び米国特許第5,006,459号(1991年4月9日)を参照のこと。
【0025】
診断及び予後の応用のために、MAdCAM結合パートナー、典型的には抗体は検出可能部分で標識され、上記のような試料中のMAdCAMの検出に使用される。多くの標識が使用可能であり、好ましくは次の範疇にグループ分けできる:
(a)放射性同位体、例えば、35S、14C、125I、H及び131I等。抗体等のMAdCAM-1結合パートナーは、例えばCurrent Protocols in Immunology, Volumes 1 and 2, Coligen等, 編, Wiley-Interscience, New York, Pubs. (1991)に記載された技術を用いて放射性同位体で標識され、放射活性はシンチレーションカウンティングにより測定できる。
(b)蛍光標識、例えば希土類キレート(ユーロピウムキレート)又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、リサミン(Lissamine)、フィコエリトリン及びテキサスレッド等が使用できる。蛍光標識は、例えば上掲のCurrent Protocols in Immunologyに開示された技術を用いて抗体等のMAdCAM結合パートナーに抱合させることができる。蛍光は、蛍光光度計を用いて定量化できる。
(c)種々の酵素−基質標識が利用でき、米国特許第4,275,249号は、それらの幾つかの概説を提供している。酵素は好ましくは種々の技術を用いて測定可能な色素原基質の化学変換を触媒する。例えば、酵素は基質における色変化を触媒し、それは分光学的に測定可能である。あるいは、酵素は基質の蛍光又は化学発光を変化させることもある。蛍光変化を定量化する技術は上述した。化学発光基質は化学反応によって電子的に励起され、次いで(例えば化学発光計を用いて)測定可能な光を放出する、または蛍光受容体にエネルギーを供与する。酵素標識の例は、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸塩デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)等のペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソザイム、糖類オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、ヘテロ環オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ等)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ等を含む。酵素を抗体に抱合させる技術は、O'Sullivan等, Methods for Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (編J. Langone & H. Van Vunakis)Academic press, New York, 73: 147-166 (1981)に記載されている。
【0026】
酵素−基質の組み合わせは、例えば以下を含む:
(i)セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と基質としての過酸化水素、過酸化水素が染料前駆物質(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンヒドロクロリド(TMB))を酸化する;
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と色素原基質としてのパラ-ニトロフェニルホスフェート;及び
(iii)β-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)と色素原基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光原基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ。
当業者には、多くの他の酵素−基質の組み合わせが利用可能である。これらの一般的な概説については、米国特許第4,275,149号及び第4,318,980号を参照。
【0027】
本発明の測定法では、抗体等のMAdCAM結合パートナーは好ましくは固相支持体又は担体に結合している。「固相支持体又は担体」とは、抗原又は抗体を結合することのできる任意の支持体を意図する。周知の支持体、又は担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然及び変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、及び磁鉄鉱を含む。担体の性質は、本発明の目的のために、或る程度の可溶性又は不溶性のいずれかとできる。支持体材料は、結合した分子が抗原又は抗体に結合できる限り、実際に任意の構造的配置を有することができる。即ち、支持体配置は、ビーズのような球状、あるいは試験管内面又はロッドの外表面のような円筒状であってよい。また、表面はシート、試験剥離片などのように平坦でよい。好ましい支持体はポリスチレンビーズを含む。当業者は、抗体又は抗原結合のための他の多くの好ましい担体を知っており、日常的実験を用いてそれを確認できるであろう。
【0028】
好ましい実施態様では、抗体−MAdCAM−抗体サンドウィッチ免疫測定がなされる、即ち、MAdCAMは、第1の抗体をMAdCAM抗原に結合させ、そして第2の抗体をMAdCAMに結合させ、そして第1及び第2の抗体により免疫特異的に結合したMAdCAMを検出又は測定することを含む方法により検出又は測定される。特別な実施態様では、第1及び第2の抗体はモノクローナル抗体である。この実施態様において、第2のモノクローナル抗体は、好ましくは第1の抗体とは異なる部位に結合する(例えば、抗体への結合について2つの抗体間の競合的阻害が無いことによって反映される)。他の特別な実施態様では、第1又は第2の抗体はポリクローナル抗体である。さらに他の特別な実施態様では、第1及び第2の抗体の両方がポリクローナル抗体である。
【0029】
好ましい実施態様では、以下に概略を説明する「順方向」サンドウィッチ酵素免疫測定法が用いられる。MAdCAMに対する抗体(捕捉抗体、Ab1)が固相マトリクス、好ましくはマイクロプレートに結合される。試料をAb1-被覆マトリクスに接触させて、Ab1に特異的な試料中の任意のMAdCAMを固相Ab1に結合させる。未結合試料成分は洗浄により除去する。MAdCAMの第2のエピトープに対する酵素-抱合した第2の抗体(検出抗体、Ab2)をAb1によって捕捉された抗原に結合させ、サンドウィッチを完了する。洗浄により未結合のAb2を除去した後、酵素に対する色素原基質を添加し、着色生成物をサンドウィッチ中に存在する酵素量に比例して形成させ、それが試料中のMAdCAM量を反映する。反応は停止液の添加で終結させる。分光器を用いて適当な波長における吸収として色を測定する。既知の濃度のMAdCAMから標準曲線を作成し、それから未知試料の値を決定することができる。
【0030】
「サンドウィッチ」測定の他の型は、いわゆる「同時」及び「逆方向」測定である。同時測定は、固体支持体に結合した抗体及び標識抗体の両方が試験される試料に同時に添加される1回のインキュベーション工程を含む。インキュベーションが完了した後、固体支持体を洗浄して液体試料の残り及び複合していない標識抗体を除去する。次いで固体支持体に結合した標識抗体の存在を、従来の「順方向」サンドウィッチ測定におけるように決定する。
「逆方向」測定においては、第1に標識抗体溶液の液体試料への添加、それに続いて、適当なインキュベーション時間後の固体支持体に結合した非標識抗体の添加という段階が用いられる。第2のインキュベーションの後、固相を従来の方法で洗浄して試験される試料の残りと未反応の標識抗体を除く。次いで固体支持体に結合した標識抗体の決定を、「同時」及び「順方向」測定における用に決定する。
【0031】
B.一般的な診断及び予後方法
本発明の方法は、単独で又は他の診断試験と組み合わせて、肝疾患の診断及び検出のために用いることができる。ウイルス感染は、この分野で知られた技術を用いて検出できる。例えば、C型肝炎は、抗-HCV抗体を検出する市販の血清測定又は感染した患者でHCV RNAゲノムを検出する分子測定を用いて検出できる。本発明の方法は、単独でも診断を目的とするこれらの日常的試験と組み合わせても用いられ得る。他の例として、多くの場合において肝臓疾患の特異的原因は上昇した肝臓機能試験又は拡大した肝臓に基づいて同定される。本発明の診断方法は、単独でも、本発明の範囲内の疾患又は障害を診断するこれらの試験と組み合わせても用いられ得る。数例を挙げると、血液試験及び肝臓生検は、診断又は診断の確認、並びに肝臓損傷の量、程度及び重篤さの決定に用いられる。本発明の診断方法は、単独でも肝臓損傷の量、程度及び重篤さを決定するこれらの試験と組み合わせても用いることができる。
【0032】
幾分特定すると、例えば血清試料、インビボ試料又は肝臓生検について本発明で実施される診断試験は、試料中のMAdCAM発現の検出に拡張される。さらに、試料中のMAdCAMの検出は、疾患の経過又は進行並びに治療的処置の有効性の経過の監視に使用できる。
特別な実施態様では、記載した診断技術は治療法の進行を辿るのに使用できる。リンパ球輸送の増加又は減少をもたらす治療的処置を受けている患者において、リンパ球輸送の量は治療の成功又は失敗についての有用な尺度を提供する。即ち、本発明は、患者における治療的処置の効果を監視する方法を提供し、それは、適当な時間間隔で肝臓組織の試料中で発現されたMAdCAMの量、又は逆に試料中のリンパ球の量又は数を測定することを含む。MAdCAM又はα4β7の全量は「ベースライン」又は「対照」値に比較されるが、それは疾患、及び治療に依存し、正常な患者から、疾患罹患前又は疾患回復中の患者から、又は治療法の開始前の患者からの類似試料中のMAdCAM量としてもよい。当業者は、過度の実験をすることなく特定の状況で使用する適切なベースライン値を決定することができる。
【0033】
本発明の方法に好ましい患者は脊椎動物であり、これらに限られないが、哺乳類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、有袋類、最も好ましくはヒトの胎児又は成人ヒト肝臓である。即ち本発明の方法及びキットはヒト臨床及び獣医学的用途に応用できる。
本発明の特別な態様によると、試料、例えば肝臓生検試料は、当業者に常套的な方法により患者から誘導される。最も通常の方法では肝臓試料は肝臓生検、少量の肝臓組織医を得るために用いられる方法で得られ、それは続いて本発明の方法と組み合わせた常套的な免疫組織学的技術を用いて試験しうる。例えば、肝臓試料は、患者の肝臓への直接的な針生検により、又は例えば当業者に知られた種々の画像化技術を用いた腹部又は胸部を通しての患者の肝臓への針の誘導によって得られる。通常とはいえないが、試料はラプロスコープ(laproscopy)、経静脈又は経頸静脈肝臓生検及び外科的肝臓生検によって得られる。
【0034】
上記にように被分析物の測定のためにこの分野で知られた任意の方法が、MAdCAM又はα4β7等のそのリガンドの存在の検出のために本発明の実施で使用できる。このような方法は、これらに限られないが、数例を挙げれば当業者に知られた免疫組織学的技術、放射免疫測定等の技術を用いた競合的及び非競合的測定システム、酵素免疫測定(EIA)、好ましくは酵素結合免疫測定(ELISA)、「サンドウィッチ」免疫測定、沈降反応、ゲル拡散反応、免疫拡散測定、凝集測定、補体固定測定、免疫放射定量測定、蛍光免疫測定、プロテインA免疫測定、及び免疫電気泳動測定を含む。
【0035】
本発明の測定法を実施するための成分を含む一又は複数の容器又はバイアルを含んでなるキットも本発明の範囲内である。例えば、そのようなキットは、肝臓生検等の試料の免疫組織学的分析に必要な試薬を含むことができる。試薬は、抗原に対する一又は複数の結合パートナー、例えば抗体、例えば白血球インテグリン又は他のMAdCAM結合パートナー、又はMAdCAM自体を含んでいてよい。組織学的測定のために、キットは色素原基質、並びに発色が起こったときに酵素反応を停止させる試薬を含んでいる。キットに含まれる試薬は、抗-ヒトMAdCAM抗体等の抗体調製物の一つに抱合した酵素に適したものである。これらはこの分野で知られている。キットは、場合によっては標準品、即ち既知量の精製MAdCAMも含むことができる。
他の実施態様では、キットは一組以上の試薬を含むことができる。例えばキットは抗体又は他の結合パートナーの対を含むことができ、各対は異なる標的分子に向けられたものであり、よって試料中のそれら標的分子、例えばMAdCAM及び肝臓細胞特異的表面タンパク質又はMAdCAM-1及びα4β7の複数を検出又は測定することができる。
【0036】
組成物
本発明の治療及び診断方法で有用な組成物は、当業者には利用可能であり、MAdCAM媒介細胞接着を防止、阻止又は抑制するそれらの能力に基づいて同定することができる。組成物は、その接着に関連する肝疾患、例えば炎症及び免疫反応の治療及び診断において有用である。
MAdCAM媒介細胞接着の防止、阻止又は抑制が可能な適当な薬剤が、種々の方法でこの効果を達成できることが理解されるであろう。特定の理論に制限されることなく、或るクラスの薬剤が、リンパ球インテグリンα4β7等のMAdCAMに対する天然発生リガンドを発現するリンパ球との相互作用を防止するのに十分な親和性及び特異性をもってMAdCAM-1に結合するであろう。他のクラスの薬剤は、リンパ球インテグリンα4β7等のMAdCAMに対する天然発生白血球リガンドと結合し、それによりMAdCAMとの相互作用を防止するであろう。
【0037】
例示的な薬剤は抗体、好ましくはモノクローナル、キメラ、及び/又はヒト化抗体、又は白血球のMAdCAMへの接着を阻害するそれらの抗体結合断片である。さらなる例示的薬剤は、MAdCAMのインテグリン結合部位を含むMAdCAMの可溶性形態又は、例えば免疫グロブリン定常ドメインに融合したMAdCAMの細胞外ドメインを含むMAdCAMイムノアドヘシンといった、可溶性MAdCAM分子又はMAdCAMに基づく分子である。
薬剤のさらなる例としては、MAdCAMに存在しインテグリン結合に必要なペプチド配列に基づくペプチド又は分子が本発明の分脈における薬剤として使用できる。ヒトMAdCAMを含むIg様接着レセプターに保存され存在するアミノ酸モチーフGLDTSLは適当な薬剤の設計に使用できる。国際公報番号WO 97/25351は、MAdCAMの保存されたアミノ酸モチーフLDTSLの類似するこのタイプの分子を提供する。あるいは、インテグリンは種々のアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)含有リガンドに選択的に結合できることが示された。異なる構造を持つRGD-ベースのペプチド阻害剤が調製でき、それらは本発明の文脈内での有効な薬剤である(Jackson等, (1997) J. Med. Chem. 40: 3359-3368)。
【0038】
さらなる薬剤はアンチセンス核酸であり、それは全体又は部分的にセンス鎖を含む標的分子に相補的であり、標的分子にハイブリッド形成できる。細胞に導入されたときアンチセンス核酸はセンス鎖にコードされる遺伝子の発現を阻害できる。国際公報番号WO 96/24673に記載されたもの等のMAdCAMの核酸配列に全体又は部分的に相補的なアンチセンス核酸は、この目的のために生成することができる。
好ましい実施態様では、薬剤は抗体であり、その抗体はMAdCAM-1に結合し白血球関連リガンドとの相互作用を防止する望ましい特性を有する。好ましい抗体は、当業者に入手可能であり、ここに記載されたもの又はPodolsky等, (1993) J. Clin. Invest. 92(1): 372-380; Picarella等, (1997) J. Immunol. 158: 2099-2106;及びHesterberg等, (1996) Gastroenterology 111: 1373-1380に記載されたもの等である。以下の技術は、これらに限られないが、MAdCAM-1とMAdCAM結合パートナーとの間の相互作用を阻止又は防止するのに有用な適当な薬剤を同定及び単離するのに用いることができる。本発明の組成物は、それらの活性を示すためにこの分野で知られた技術によって検定することができる。そのような測定法は、これらに限られないが、MAdCAMタンパク質と相互作用する、MAdCAM関連活性を阻害する、又はMAdCAM誘導ペプチドの生成を選択的に阻害する能力についての以下のインビトロ試験を含む。インビトロ試験は、精製されたMAdCAMが結合検定のためにガラススライドに適用されるBerlin等, (1993) Cell 74: 185-195に記載されたもののようなタンパク質ベースの測定法を含む。本発明の文脈内の薬剤は、正常なリンパ球の固定化MAdCAMへの結合を阻害する。
【0039】
他の適当な測定法では、精製されたα4β7は、インテグリンとMAdCAMとの相互作用を阻止しないα4サブユニットに対する抗体とともにプレ-インキュベートされたガラススライド又はプラスチックプレート等の固体支持体上に固定化される。この測定法では、MAdCAM又は好ましくはMAdCAM-免疫グロブリンキメラが固定化インテグリンとともに懸濁した薬剤の有無においてインキュベートされる。次いで、試験される薬剤存在下でのMAdCAMの結合又は結合の不在が、抗-MAdCAM又は抗-Ig抗体などの検出試薬で測定される。
あるいは、α4β7インテグリンサブユニットで形質移入され無傷のインテグリンを発現する細胞を用いた細胞ベースの測定法を適切な薬剤を同定するための細胞ベース測定に使用できる。例えば、モノクローナル抗体の、天然細胞性リガンドのMAdCAM発現細胞又はα4β7インテグリンへの接着を阻害する能力を使用することができる。典型的には、本発明の薬剤は、MAdCAM/α4β7-保持細胞とともに、天然レセプター/リガンド-保持細胞の存在下でインキュベートされ、ここでMAdCAM-保持細胞は固体支持体に固定化されている。細胞接着の阻害は、次いで結合したmAb量の計算又は表示された細胞の評価のいずれかで評価される。
【0040】
MAdCAMとリンパ球との結合を阻止又は防止するのに有効な薬剤は、コットン-トップタマリンを利用したモデル等のインビボ検定で同定してもよい。コットン-トップタマリン(CTT's、Saguinus oedipus)は、新世界(New World)非ヒト霊長類種であり、監禁状態において、自発的にしばしば慢性結腸炎を発症し、それは臨床的及び組織学的にヒトの潰瘍性結腸炎に類似している(Madera等, (1985) Gastroenterology 88: 13-19)。このモデルは、α4β7に対するマウス非-ヒトモノクローナル抗体ACT-1(Lazarovits等, (1984) J. Immunol. 1331857)がCTTのα4β7と交差反応し、炎症を起こした結腸粘膜における白血球細胞密度を低下させ、組織学的炎症活性を緩和し、臨床的疾患を即座に解消することを示すのに使用された。即ち、それは肝-発現MAdCAMとMAdCAMリガンドとの間の相互作用を妨害するさらなる物質の同定で有用であろう。
マウストリ-ニトロ-ベンゼンスルホン酸(TNBS)誘発結腸炎モデルに関連し、Viney等, (1996) J. Immunol. 157: 2488-2497に記載されているもの等のリンパ球ホーミング測定法は、薬剤及び組成物の同定に適している。
【0041】
2又はそれ以上の競合物質の間の特異性又は区別は、非結合に対する結合の比率によって決定される。例えば、ここに記載したような細胞測定法によると、放射性標識された又は蛍光標識されたα4β7は固定化MAdCAM-1レセプター-免疫グロブリンキメラとともに種々の濃度の非標識候補化合物の存在下でインキュベートされる。成功した候補分子の濃度を増大させると、標識α4β7の固定化レセプターキメラへの結合が有効に防止される。最大の50%のα4β7が置換される非標識薬剤の濃度はEC50と呼ばれ、レセプター結合親和性を反映する。従って、100nMのEC50を持つ候補化合物は、10nMのEC50を持つ候補薬剤よりもレセプターとの相互作用が有意に弱い。この基質特異性における区別は、好ましい薬剤又はアンタゴニストが、例えば、MAdCAMと白血球表面抗原、特に天然リガンド及びいわゆる薬剤又はアンタゴニストの両方が存在する設定でのα4β7との相互作用を防止又は阻止することに有用性を持つことを示す。
【0042】
例示的薬剤は、α4β7又はMAdCAMと反応性のモノクローナル抗体である。抗体は親和性定数により評価される。親和性定数は特定のリガンドとその同族のレセプターとの間の相互作用の尺度である。特定のレセプターリガンド相互作用間の「結合親和性」又は結合の強さの尺度は、リガンドとそのレセプターとの結合した及び解離した配置の平衡濃度についての親和性定数によって測定される。本発明は、薬剤又は組成物と内皮細胞接着分子MAdCAM-1との間のそのような相互作用を考慮する。一般に、溶液中のリガンド/インテグリン相互作用の解離定数は比較的弱く、低マイクロモルから高ナノモルの範囲である。細胞表面での多重接着相互作用の付加性、又は「結合力」は、白血球を血管内皮に固着するのに必要なエネルギーを提供する。従って、一般に、有用な組成物又は薬剤は、インテグリンレセプターに対してその天然リガンドより高い親和性を有する。そのようなアンタゴニストは、α4β7/MAdCAM-1相互作用に媒介される細胞接着に含まれる細胞表面相互作用を高割合で阻止又は防止する。好ましくは、薬剤又はアンタゴニストの結合は、本発明で有用であるためには約ka=10−4M又はそれ以上、より好ましくは約10−8M以上、最も好ましくは約10−8Mと約10−10Mの間である。
【0043】
さらなる基準として、組織に容易に吸収される、即座の代謝から保護される、及び/又は延長された半減期を与える分子の形態が、本発明の組成物の製造において好ましく選択される。当業者は、タンパク質製剤を有効に吸収させるように改変することもできる。これらの改変は、これらに限られないが、プロドラッグの使用及び一次構造の化学的修飾を含む(Wearley, L.L., 1991, Crit. Rev. in Ther. Drug Carrier Systems, 8(4): 333)。タンパク質の代謝を最小化し、それによりタンパク質の有効量を増加させることにおいて、そのような改変は、これらに限られないが、化学的修飾及びポリマーへの共有結合を含む(Wearley, L.L., 1991, 上掲)。
【0044】
治療方法及び製薬組成物
作用機構によって限定することを意図するものではないが、血流から肝臓組織への活性化白血球の泳動は、リンパ球と肝臓組織中のMAdCAMとの相互作用に依存すると考えられる。脈管壁を通る脈管外脈管組織への白血球輸送は、微小ウイルス生物又は外来薬剤に対する宿主防御及び組織損傷の修復に必要である。しかしながら或る状況下では、白血球-内皮相互作用が宿主にとって悪い結果を有することがある。接着及び経内皮泳動の過程の間に、白血球は酸化物、プロテアーゼ、又はサイトカイン等の生成物を放出することがあり、それらは内皮を直接損傷させたり種々の炎症メディエータを放出して内皮損傷を起こす。MAdCAM-1と白血球表面分子、例えばα4β7との相互作用は、白血球泳動を促進させ、炎症過程の悪影響に寄与する。
【0045】
従って、本発明によると、肝臓で発現されるMAdCAMとα4β7等のリガンドとの間の相互作用を防止する薬剤を、肝臓におけるこれらの型の疾患の治療に使用できる。
さらに、本発明の製薬組成物は、移植された肝臓で起こる損傷を除去又は阻止するのに使用できる。
MAdCAM関連疾患又は障害の治療における本発明の臨床前及び臨床的な治療的使用は、認められている診断及び治療概念を用いて、当業者によって最良に達成されるでろう。そのような概念は当該分野で知られており、例えば、Braunwald等編, Harrison's Principles or International Medicine, 11th Ed., McGraw-Hill, H.Y. (1987)に記載されている。
【0046】
薬剤の最も有効な投与形態及び用量方式は、治療すべき疾患の型、疾患の重篤さ及び経過、薬剤が予防又は治療目的のいずれで投与されるか、以前の治療、患者の臨床履歴及び抗体等の薬剤に対する反応、及び担当医師の判断によるであろう。薬剤は患者に1回又は一連の治療に渡って好ましく投与される。
殆どの治療的応用では、薬剤は哺乳動物、好ましくは患者に、患者にボーラスとして静脈内投与されるもの、数分、数時間、数週間、又は数ヶ月の時間に渡る筋肉内、皮下、関節内、滑液内、鞘内又は骨膜内の連続的注入により投与されるもの、経口、局所、又は吸入経路により投与されるものといった、製薬的に許容される投与形態で投与される。
【0047】
薬剤の用量が、一又は複数の単独投与、連続吸入又はボーラス注射で患者に投与される。例えば、薬剤の初期用量は、注射又は吸入により患者に投与される。数日又はそれ以上に渡る繰り返し投与の場合、状態に応じて、所望の疾患徴候の抑制が起こるまで処置が繰り返される。しかしながら、他の用量計画も有用である。本発明の他の実施態様では、薬剤の有効性は、薬剤をこの目的に有効な他の薬剤(例えば、インターフェロンγ)と連続して又は組み合わせて投与することにより向上する。
【0048】
本発明の組成物は、リポソーム等のデリバリーシステムの一部であってもよい。リポソームを含むデリバリーシステムは、国際特許公報番号WO 91/02805及び国際特許公報番号WO 91/19501、並びにJanoff等の米国特許第4,880,635号に記載されている。
本発明の組成物は、疾患状態を予防的に防止するかそれが始まった後に回復させることにより患者を治療することを必要とする患者に投与することができる。本発明の製薬組成物は、腸管外、局所、経口又は局部的(エアロゾル又は経皮など)又はそれらの組み合わせを含む適切な方式で投与してよい。組成物は、好ましくは製薬的に許容される担体とともに投与されるが、担体の性質は投与方式によって異なり、例えば経口投与では通常固体担体が用いられ、I.V.投与では液体塩溶液担体である。
【0049】
本発明の組成物は、患者及び本発明の組成物のタンパク質及び炭水化物部分に適合する製薬的に許容される成分を含む。これらは一般に懸濁物、溶液及びエリキシル剤、特にリン酸緩衝塩水、塩水、ダルベッコの媒質などの生物学的バッファーを含む。エアロゾル、又はデンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、等(経口固体調製物の場合、粉末、カプセル、及び錠剤)の担体を用いてもよい。
ここで用いられる「製薬的に許容される」という語は、好ましくは合衆国政府又は州政府の監督官庁に許可されたこと、あるいは合衆国薬局方又は他の一般に認められた薬局方に動物、特にヒトでの使用のために列挙されたことを意味する。
製剤の選択は、上記のバッファー、又は例えば製薬級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸、サッカリンセルロースナトリウム、炭酸マグネシウム、等を含む賦形剤の種々のものを用いてなすことができる。組成物の「ペグレーション(peglation)」は、この分野で知られた技術を用いて実施してよい(例えば、国際特許公報番号WO 92/16555、Enzonの米国特許第5,122,614号、及び国際特許公報番号WO 92/00748を参照)。経口組成物は、溶液、懸濁物、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製薬、または粉末の形態をとることができる。
【0050】
MAdCAMと結合パートナーとの間の相互作用の有意な量が阻害されることを確実にするために本発明の組成物の十分な量が患者に投与されるべきである。この方法により、肝炎症は予防又は緩和される。組成物の選択、投与の頻度、及びそのように投与される組成物の量は、治療される特定の疾患及びその重篤さ、用いられる薬剤の型、投与方法、患者の全体的状態、及び治療している医師の判断によるであろう。典型的な用量範囲は、抗体又は他の生物学的製剤の使用によるこれらの疾患状態の治療に類似するであろう。典型的には、本発明の組成物は、約1%〜約95%、好ましくは約10%〜約50%の活性成分を含むであろう。好ましくは、用量は約1−100mg/kgであろう。約1mg〜約50mgが小児に投与され、約25mg〜約1000mgが成人に投与されるであろう。他の有効用量は、用量応答曲線を確立する日常的試験を通して当業者により容易に決定される。
【0051】
投与すべき組成物の用量を決定するために、全てのMAdCAM分子を完全に阻止することを望んではいけないこと、又は制限された時間量についてのみそのようなレセプターを完全に阻止することを望んでもよいことに留意すべきである。正常な治癒過程を進めるために、少なくとも幾つかの白血球細胞又は好中球を、損傷、感染又は疾患状態が起きている領域の組織に与える必要がある。即ち、阻止剤として投与される組成物の用量は、患者の特別な要求に基づく一方、治療される疾患の型といった様々な要因を考慮して注意深く調節する必要がある。
即ち、本発明による組成物の有効量は、MAdCAMとMAdCAM-結合パートナーとの間の相互作用を阻害するのに有効な量である。
以下の実施例は例示を目的とし、限定を意図するものではない。この明細書における全ての引用の開示は出典明示してここに参考として取り入れるものとする。
【0052】
(実施例)
実施例1−抗-MAdCAM抗体の生成
以下の実施例は、MAdCAM-特異的抗体の生成を記載する。
MAdCAMタンパク質の一部は、アミノ末端のHisx6タグとの融合物として発現される。このキメラは、大腸菌で発現され、生成したタンパク質はウサギの免疫化に使用される。これらの抗体は診断及び/又は治療薬として有用である。
【0053】
方法
PCRプライマーは全長ヒトMAdCAM(Shyjan等, (1996) J. Immunol. 156: 2851-2857)のヌクレオチド1−675を単離するように設計された。クローニングリンカー(EcoRI及びBamHI)及び停止コドンをPCRを通してcDNAに付加した。得られたPCR産物(ヒトMAdCAM-2D-stopと呼ぶ)を、大腸菌株DH5α(ATCC5386)での発現のためのpProEX発現ベクター(Gibco-BRL)のEcoRI-BamHI部位にサブクローニングした。製造者(Gibco-BRL)の指示からのプロトコールに従うIPTG誘発に続いてヒトMAdCAM-2D-stopをDH5α細胞で発現させた。次いで細胞を加工し、Hisx6タグタンパク質(BAC2D)をNi-NTA樹脂を用いて精製したが、ともに製造者(Gibco BRL)に従った。精製した画分にSDS PAGE分析を実施し、約25,000ダルトンのバンドを観察した(26.689ダルトンと予測された)。アミノ末端のアミノ酸分析は予測配列を与え、タンパク質の同一性を確認した。
【0054】
抗体を生成させるため、2つのニュージーランド白ウサギをフロイント完全アジュバント中の100gBAC2Dで免疫化した。3週間及び6週間後にウサギをフロイント不完全アジュバント中の100μgのBAC2Dで追加免疫した。血清を取り出して抗-MAdCAM抗体をプロテインAセファロース上のアフィニティクロマトグラフィで単離した。
抗体の特異性を幾つかの接着分子:MAdCAM-1-IgG、VCAM-1-IgG及びICAM-1-IgGの融合タンパク質への結合を比較することにより試験した。ミクロタイタープレート(96ウェル、NUNC MaxiSorp)を2μg/mlのMAdCAM-1-IgG、VCAM-1-IgG及びICAM-1-IgGの100μlで室温において2時間被覆した。ウェルをリン酸緩衝塩水(PBS)中の5mg/mlウシ血清アルブミン(BSAバッファー)の200μlで室温において1時間ブロックした。精製したウサギ抗-BAC2D抗体又は対照ウサギIgG(100μl)を添加し、BASバッファーで連続的に2倍に希釈した。プレートを室温で1時間インキュベートし、その後ウェルを200μlのPBS中の011%Tween(洗浄バッファー)で3回洗浄した。PBS中に1:2000ヤギ抗-ウサギ-アルカリホスファターゼ抗体を含有する溶液(カタログ番号L42008、100μl)を各ウェルに室温で1時間添加した。次いでウェルを200μlの洗浄バッファーで3回洗浄し、100μlの基質(リン酸p-ニトロフェニル二ナトリウム)を添加した。ODの読みは405nmで行った。
結果
抗-BAC2D抗体は、MAdCAM被覆ウェルに濃度依存的方式で結合した。しかしながら、VCAM-1又はICAM-1はいずれの濃度でも結合は観察されず、抗-BAC2D抗体はMAdCAMに特異的であることが示された。
【0055】
抗-ヒトMAdCAMモノクローナル抗体の生成
Balb/c雄マウスの群(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)に10μg/用量で、100μlのデトックス(Detox)アジュバント(RIBI ImmunoChem Res. Inc., Hamilton, MT)中の精製MAdCAM及びドメイン1及び2を、0、7、14、28、35、42、56、63、70、77、84及び91日に腹膜内注射により注射した。融合前追加免疫を、105日に第1の動物、126日に第2の動物そして166日に第3の動物に与えた。動物を融合前追加免疫の3日後に犠牲にした。脾臓を取り出して、リンパ球をマウス骨髄腫系653、Kearney等, J. Immunol., 123: 1548 (1979)に、50%ポリエチレングリコール1450(Sigma)を用いて確立された方法により融合させた(Oi及びHerzenberg, Selected Metods in Cellular Immunology, B. Mishel及びS. Schiigi,編, p.351, W.J. Freeman Co., San Francisco, CA, (1980))。融合細胞を96-ウェルミクロタイタープレートに2 x 10細胞/ウェルの密度で蒔き、次いで融合後1日にHAT選択した(Littlefield, J.W., Science, 145: 709 (1964))。
【0056】
雄マウスの他の群(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)には、100μlのデトックス(Detox)アジュバント(R101)中の5μgの精製MAdCAM及びドメイン1及び2を、0、7、14、28、35、42、56、63、70、77、84、91及び159日に後足の足蹠に注射した。162日目に、全ての動物を犠牲にし、膝窩節を取り出してリンパ球を上記のように融合させた。
免疫化ハイブリドーマ培養上清をMAdCAMと反応させた。抗-ヒトMAdCAM抗体にポジティブなウェルを更なる実験のために展開した。これらの培地は展開したときに安定であった。細胞系を制限希釈でクローニングして凍結保存した。親培地はアイソタイプし、それらのMAdCAMを捕捉する能力について測定した。
【0057】
結果
以下の抗-ヒトMAdCAM抗体を観察した。
免疫組織学での有用性
クローン# アイソタイプ エピトープ 阻止機能 凍結 固定
Mmc1 IgG1 A1 無し 有り 有り
Mmc2 IgG1 A2 無し 有り NT
Mmc3 IgG1 B 有り 有り 有り
Mmc4 IgG1 C1 無し 有り 有り
Mmc6 IgG2b D 無し 有り 無し
Mmc7 IgG1 C1 無し 有り 有り
Mmc8 IgG1 C2 無し NT NT
NT=試験せず。
【0058】
ハイブリドーマによって産生された抗体の特異性を、標準的なELISAにおけるMAdCAMとの直接インキュベーションによって試験した。この測定において、平底96ウェルプレートを、炭酸塩バッファー、pH9.6中約1μg/mlの精製ヒトMAdCAMを含む溶液100μlで4℃において終夜被覆した。プレートはPBS中1%のBSAで1時間ブロックし、次いで洗浄バッファー(PBS中0.05%のTween-20)で洗浄した。ハイブリドーマから生成された腹水から精製したモノクローナル抗体並びにアイソタイプが一致する対照をウェルに添加し、プレートを室温で1-2時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、約1μg/mlのセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)-抱合ヤギ-抗マウス特異的抗体(Boehringer Mannheim, Imdianapolis, IN)、0.5%BSA及び0.25%NP-40を含む溶液を添加し、そしてプレートを2時間インキュベートした。洗浄の後、0.4μg.mlのo-フェニレンジアミンプラス0.4/μl/mlの30%過酸化水素を含む溶液を添加することによりプレートを現像した。反応は2Nの硫酸を添加することにより停止させた。着色反応は、自動化ELISAプレートリーダーで490nmにおいて測定した。
この測定の結果は、ハイブリドーマからのモノクローナル抗体がMAdCAMに特異的に結合し、他のタンパク質では感知されないことを示した。各々の抗体についての特異性は、抗体を互いの結合を阻止するために使用する類似の実験で試験した。報告された結果は、ヒトMAdCAMの6つの異なるエピトープに対する抗体が同定及び単離されたことを示す。
【0059】
実施例2−炎症を起こした肝組織におけるMAdCAMの発現
以下の実施例は、MAdCAMが炎症中の肝臓の門脈路血管で発現されるが、正常肝臓組織では存在しない又は検出レベルが低いことを示す。
方法
組織:全ての組織、生検及び外科的切除物は4%緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋のために加工した。組織学的実験のために、4ミクロンの切片を切り出し、ヘマトキシリン及びエオシン又は後述のウサギ抗-ヒトMAdCAM抗体で染色した。
パラフィン切片をキシレン中で脱パラフィンし、蒸留水で水和した。切片をKPL阻止溶液(Kirkegaard及びPerry Laboratories, Gaitherburg, MD)(蒸留水中で1:10に希釈)で室温において4分間変換することにより内皮ペルオキシダーゼ活性を消失させた。次いで切片を、各リンス5分として蒸留水で2回リンスした。
【0060】
切片を、Biogenex Citra Solution(Biogenix)中で99℃において10分間マイクロ波処理し、次いで室温に20分間放置した。次いで切片を蒸留水、次いでリン酸緩衝塩水(PBS)で良く洗浄した。
非特異的抗体結合は、切片を10%のヤギ血清とともに室温で20分間インキュベーションすることによりブロックした。次いで切片を、4-7μg/mlに希釈したウサギ抗-ヒトMAdCAM(実施例1参照)とともに室温で30分間インキュベートした。対照切片はウサギアイソタイプ対照物(Zymed、カタログ番号08 6199)とインキュベートした。次いで切片を各5分としてPBSで2回リンスした。
抗体結合は、これらの切片を、阻止血清中1:200に希釈したビオチニル化ヤギ抗-ウサギ抗体とともに室温で30分間インキュベートし、次いで各5分としてPBSで2回リンスすることにより検出した。次いで切片を希釈したABC試薬(Vector Vectastain Elite ABC kit)とともに室温で30分間インキュベートし、各5分間としてPBSで2回リンスし、次いでDAB(Pierce)とともに5分間インキュベートした。切片を、メイヤーのヘマトキシリンで1分間逆染色し、次いで蒸留水でリンスした。
最後に、切片を脱水し、透明化して合成標本媒体に埋め込んだ。
【0061】
結果
胎児又は成人ヒト肝臓のいずれにも正常には検出されないが、MAdCAMは、慢性C型肝炎、原発性胆汁性肝硬変及び原発性硬化性胆管炎を含む多くの炎症性肝臓疾患における門脈路血管で発現される。
Fig1Aは、正常成人ヒトリンパ節の高内皮細静脈(矢印)でのMAdCAM発現を示す。Fig1Bは、正常成人ヒト脾臓におけるMAdCAM発現(矢印)を示す。発現は、脾臓白色脾髄を取り囲む星状細胞で観察された。Fig1Cは、正常成人ヒト膵臓の毛細血管(矢印)におけるMAdCAM発現を示す。
MAdCAMは、炎症性肝臓疾患における門脈路血管で検出された。Fig2Aは、炎症を起こした肝門脈路内の小毛細血管でのMAdCAMの発現を示す。Fig2Bは、炎症を起こしたヒト肝門脈路内の拡張した脈管通路でのMAdCAMの発現を示す。Fig2Cは、門脈路内のリンパ球凝集を取り囲む星状細胞でのMAdCAMの発現を示す。Fig2Dは、炎症を起こしたヒト肝門脈路内の拡張した脈管通路でのMAdCAMの発現を示す。
【0062】
実施例3−α4β7/MAdCAMタンパク質/タンパク質測定法を用いた薬剤の同定
(1)精製ヒトα4β7インテグリンレセプターの単離
ヒトα4及びβ7遺伝子の両方で高いレセプターコピー数(細胞当たり異種二量体インテグリンレセプターの>200.000コピー)で形質移入されたヒト293腎臓細胞系を成長させて10リットルまでスケールアップした。細胞を単離してペレット化した。細胞ペレットを、0.5%デオキシコレート、0.5%IGEPAL(NP-40)、50mMトリス-HCl(pH7.5)、1mMCa++Mg++Mn++、10μ/mlロイペプチン、10μg/mlアプロチニン、及び10μg/mlペプスタインAを含む10容量の溶解バッファに溶解させた。調製物を30秒間均一化した。均一化物を、1,500 x gで20分間2回遠心分離した。溶解物を0.2μmフィルターを通して濾過した。濾過物を、ラット抗-ヒトβ7抗体アフィニティカラムに負荷した。結合したタンパク質を、1mMのCa++、Mg++及びMn++を含むpH6.9のピアス(Pierce)バッファーで溶離し、1mMのCa++、Mg++及びMn++を含むトリス緩衝塩水(pH7.2)に対して透析した。
透析物は親和性精製されたα4β7インテグリンレセプターを構成する。
【0063】
(2)α4β7/MAdCAM-1タンパク質−タンパク質測定
最適濃度のα4β7インテグリンレセプター調製物を、α4β7インテグリンのMAdCAM-1への結合を阻止しない抗-α4モノクローナル抗体で予め被覆した固体プラスチックプレート上に固定化した。最適濃度のMAdCAM-1-Ig-セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合体を、MAdCAM-1のα4β7への結合の監視のために添加した。α4β7とMAdCAM-1との間の相互作用の阻害剤をこの時点で添加した。結合したHRP抱合体をTMBペルオキシダーゼ基質(Kirkegaard及びPerry Laboratories, Gaithersburg, MD)で、ミクロタイタープレートリーダーにおいて450nmの光学密度で分光学的に検出した。
結果
薬剤がこの方式で同定され、ここに開示した治療方法に使用された。
【0064】
実施例4−MAdCAMの阻止
JY細胞を、2',7'-ビス-(2-カルボキシエチル)-5(及び-6)-カルボキシフルオレセイン(BCECF、Molecular Probes, Eugene, OR)で30分間37℃で標識し、5mg/mlのBSAを含むRPMI培地に再懸濁させた。細胞を、MAdCAM-1-Igで予め被覆したマイクロウェルに添加し、室温で15分間インキュベートした、未結合細胞を洗い落とし、結合した細胞を50mMトリス-HCl(pH8.5)溶解バッファー中の0.1%SDSで可溶化した。放出された蛍光色素を、485nm励起及び530nm発光に設定されたCytofluorプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)により監視した。入力細胞数に対する最大蛍光強度を決定し、%細胞接着の計算に使用した。
結果
薬剤がこの方式で同定され、ここに開示した治療方法に使用された。
【0065】
材料の寄託
次の細胞系をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, 10801 ユニバーシティ ブルバード マナッサス、バージニア、20110−2209米国(ATCC)に寄託した:
ハイブリドーマ ATCC番号 寄託日
Mmc3 CRL-12530 1998年5月13日
Mmc6 CRL-12531 1998年5月13日
【0066】
この寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存可能な培養が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、どれが最初であろうとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、米国特許法第122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に子孫を入手可能とすることを保証するものである。
本出願の譲受人は、寄託した培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死亡もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと即座に取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した態様は、本発明のある側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、寄託された作成物により、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの物質の寄託は、ここに含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
【0067】
実施態様:
1. 宿主にMAdCAMとそのリガンドとの相互作用を防止する薬剤の治療的有効量を投与することを含んでなる治療を必要としている宿主における肝疾患の治療方法。
2. 肝疾患が炎症を特徴とする、実施態様1に記載の方法。
3. 炎症がリンパ球の肝浸潤を特徴とする、実施態様2に記載の方法。
4. リンパ球がα4β7を発現する、実施態様3に記載の方法。
5. 薬剤がMAdCAMと浸潤リンパ球との相互作用を防止する、実施態様3に記載の方法。
6. 薬剤がMAdCAMとα4β7発現リンパ球との相互作用を防止する、実施態様4に記載の方法。
7. 肝疾患が感染、医原性疾患、遺伝性疾患、胆汁鬱滞性疾患、サルコイドーシス又は器官移植である、実施態様3に記載の方法。
8. 感染がウイルス感染である、実施態様7に記載の方法。
9. 感染が肝炎感染である、実施態様8に記載の方法。
10.肝炎感染がC型肝炎感染である、実施態様9に記載の方法。
11.胆汁鬱滞性疾患が、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎又は成人特発性ダクトペニアである、実施態様7に記載の方法。
12.薬剤が抗体である、実施態様1に記載の方法。
13.抗体がモノクローナル抗体又はその抗原結合断片である、実施態様12に記載の方法。
14.抗体がMAdCAMに結合する、実施態様12に記載の方法。
15.抗体がMAdCAMリガンドに結合する、実施態様12に記載の方法。
16.MAdCAMリガンドがα4β7である、実施態様15に記載の方法。
17.薬剤がイムノアドヘシンである、実施態様1に記載の方法。
18.イムノアドヘシンが、免疫グロブリン定常ドメインに融合したMAdCAMのリガンド-結合部分を含む、実施態様17に記載の方法。
19.イムノアドヘシンが、免疫グロブリン定常ドメインに融合したリガンドのMAdCAM-結合部分を含む、実施態様17に記載の方法。
20.モノクローナル抗体がMmc3である、実施態様13に記載の方法。
21.モノクローナル抗体がMmc6である、実施態様13に記載の方法。
22.(a)容器;
(b)前記容器上のラベル;及び
(c)前記容器に収容された活性剤を含有する組成物を含んでなり;当該組成物が肝疾患の治療に有効であり、前記容器上のラベルが組成物は肝疾患の治療に使用できることを表示し、前記組成物中の活性剤がMAdCAMとそのリガンドとの相互作用を防止する薬剤を含んでなる製造品。
23.肝疾患が感染、医原性疾患、遺伝性疾患、未知の病因の疾患、胆汁鬱滞性疾患、サルコイドーシス又は器官移植である、実施態様22に記載の製造品。
24.感染がウイルス感染である、実施態様23に記載の製造品。
25.ウイルス感染がC型肝炎感染である、実施態様24に記載の製造品。
26.薬剤の投与についての指示をさらに含む、実施態様22に記載の製造品。
27.(a)第1の容器;
(b)前記容器上のラベル;
(c)前記容器に収容された活性剤を含有する組成物;ここで、当該組成物は肝疾患の治療に有効であり、前記容器上のラベルが組成物は肝疾患の治療に使用できることを表示し、前記組成物中の活性剤がMAdCAMとそのリガンドとの相互作用を防止する薬剤を含み;
(d)製薬的に許容されるバッファーを含む第2の容器;及び
(e)肝疾患の治療のための組成物の使用についての指示を含んでなるキット。
28.肝疾患が感染、医原性疾患、遺伝性疾患、未知の病因の疾患、胆汁鬱滞性疾患、サルコイドーシス又は器官移植である、実施態様27に記載のキット。
29.感染がウイルス感染である、実施態様28に記載のキット。
30.ウイルス感染がC型肝炎感染である、実施態様29に記載のキット。
31.MAdCAMのリガンドを発現する第1の細胞とMAdCAMを発現する第2の細胞との間の結合を阻害する方法において、第2の細胞が肝臓で天然発生し、一方又は両方の細胞をMAdCAMとMAdCAMリガンドとの相互作用を防止する薬剤に接触させることを含んでなる方法。
32.接触がインビボで起こる、実施態様31に記載の方法。
33.接触がインビトロで起こる、実施態様31に記載の方法。
34.(a)肝臓で天然発生する細胞をMAdCAMに結合する物質と接触させ;そして
(b)その結合を検出することを含んでなる肝疾患の診断方法。
35.物質が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはその抗原結合断片である、実施態様34に記載の方法。
36.モノクローナル抗体がMmc3である、実施態様35に記載の方法。
37.モノクローナル抗体がMmc6である、実施態様35に記載の方法。
38.物質がMAdCAMリガンドである、実施態様34に記載の方法。
39.物質が検出可能に標識される、実施態様34に記載の方法。
40.細胞を、それらが天然発生する生物から、物質との接触の前に取り出す付加的工程を含む、実施態様34に記載の方法、
41.抗体Mmc3。
42.抗体Mmc6。
43.実施態様41に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
44.実施態様42に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
45.患者からの試料中のMAdCAMの量を決定する方法において、
(a)MAdCAMを含むと疑われる患者からの血清試料を得;
(b)試料をMAdCAMに特異的な少なくとも1つの結合パートナーと、特異的結合可能な条件下で接触させ;そして
(c)試料中の成分と少なくとも1つの結合パートナーとの間に起こる特異的結合の量を測定する工程を含んでなり、特異的結合の量が試料中のMAdCAMの量を示す方法。
46.患者における肝疾患又は障害の診断方法において、
(a)患者からの血清試料を得;
(b)試料をMAdCAMに特異的な少なくとも1つの結合パートナーと、特異的結合可能な条件下で接触させ;そして
(c)試料中の成分と少なくとも1つの結合パートナーとの間に起こる特異的結合の量を測定し、ここで特異的結合の量が試料中で発現されたMAdCAMの量を示し;そして
(d)工程(c)で測定された特異的結合の量を特異的結合のベースライン量と比較する工程を含んでなり、
ここで特異的結合の量の増加が肝疾患又は障害の存在を示す方法。
47.MAdCAMの存在に関連する疾患を治療されている患者に対する治療的処置の効果を監視する方法であって、治療に対するポジティブ応答がMAdCAM量の減少又はその消失と関連する方法において、
(a)(1)試料をMAdCAMに特異的な少なくとも1つの結合パートナーと、特異的結合可能な条件下で接触させ;そして
(2)試料中の成分と少なくとも1つのMAdCAMの結合パートナーとの間に起こる特異的結合の量を測定する工程を含んでなり、特異的結合の量が試料中の前記MAdCAMの量を示す方法に従って、患者からの少なくとも2つの試料中のMAdCAM量を測定し、ここで、第1の試料は治療開始前に得、少なくとも1つの第2の試料は前記治療の開始後に得;そして
(b)特異的結合量又は第1の試料から前記特異的結合から計算したMAdCAM量を、第2の試料と比較することを含んでなり、ここで治療後の前記特異的結合又はMAdCAMの量の減少が治療に対する良好な応答を示す方法。
48.一又は複数の容器中に、
(a)固体支持体に結合した、MAdCAMの第1の結合パートナー;
(b)酵素標識した前記MAdCAMの第2の結合パートナー;及び
(c)酵素の色素原基質を含んでなる、試料中のMAdCAMの量を測定するのに有用なキット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATCC寄託番号CRL−12530で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む単離された抗体。
【請求項2】
ATCC寄託番号CRL−12530で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体の可変ドメインのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された抗体。
【請求項3】
ATCC寄託番号CRL−12530で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体である、請求項2に記載の単離された抗体。
【請求項4】
ATCC寄託番号CRL−12531で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体のCDRのアミノ酸配列を含む単離された抗体。
【請求項5】
ATCC寄託番号CRL−12531で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体の可変ドメインのアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の単離された抗体。
【請求項6】
ATCC寄託番号CRL−12531で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体である、請求項5に記載の単離された抗体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載の抗体と、MAdCAMへの結合について競合する単離された抗体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載の抗体と同じMAdCAM上のエピトープに結合する単離された抗体。
【請求項9】
およそ10−4Mよりも大きな結合親和性でMAdCAMを特異的に結合する、請求項1から8のいずれか一に記載の単離された抗体。
【請求項10】
10−8Mよりも大きな結合親和性でMAdCAMを特異的に結合する、請求項9に記載の単離された抗体。
【請求項11】
MAdCAM媒介性の接着を阻止、ブロック又は抑制する、請求項1から3及び7から10のいずれか一に記載の単離された抗体。
【請求項12】
MAdCAMへの白血球の接着を阻害する、請求項1から3及び7から11のいずれか一に記載の単離された抗体。
【請求項13】
MAdCAM−1に結合し、MAdCAM−1と白血球関連リガンドとの相互作用を阻止する、請求項1から3及び7から12のいずれか一に記載の単離された抗体。
【請求項14】
キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1から2、4から5及び7から13のいずれか一に記載の抗体。
【請求項15】
Fv、Fab、Fab'、F(ab')あるいは他の抗原結合性配列からなる群から選択される抗体断片である、請求項1から14のいずれか一に記載の抗体。
【請求項16】
放射性同位体、蛍光標識及び酵素性標識からなる群から選択される検出用分子にて標識される、請求項1から15のいずれか一に記載の抗体。
【請求項17】
固相支持体又は担体に結合されている、請求項1から16のいずれか一に記載の抗体。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか一に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項19】
被験者からの体液の試料中のMAdCAMの量を測定する方法において、
(a)試料をMAdCAMに特異的な少なくとも一の結合パートナーと、特異的結合を可能にする条件下で接触させる工程であって、ここで該少なくとも一の結合パートナーが請求項1から17のいずれか一に記載の抗体である工程、と
(b)試料中の成分と少なくとも一の結合パートナーとの間で起こる特異的結合の量を測定する工程であって、ここで特異的結合の量が試料中のMAdCAMの量を示す工程とを含んでなる方法。
【請求項20】
体液の試料が血液又は血漿の試料である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
体液の試料が血清試料である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
サンドウィッチ免疫測定法を含む、請求項19から21のいずれか一に記載の方法。
【請求項23】
疾患の経過又は進行、又は治療的処置の有効性の経過を監視するために用いられる、請求項19から22のいずれか一に記載の方法。
【請求項24】
抗体が、ATCC寄託番号CRL−12530で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体である、請求項19から23のいずれか一に記載の方法。
【請求項25】
抗体が、ATCC寄託番号CRL−12531で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体である、請求項19から23のいずれか一に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公開番号】特開2010−280659(P2010−280659A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−129284(P2010−129284)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【分割の表示】特願2000−548375(P2000−548375)の分割
【原出願日】平成11年5月12日(1999.5.12)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】