説明

肝癌の検出方法及び肝癌診断薬並びに癌治療薬

要約
高い特異性をもって肝癌を検出することができる肝癌の検出方法及びそのための診断薬並びに優れた抗癌効果を有する新規な癌治療薬が開示されている。試料中の肝癌細胞の検出方法は、dlk遺伝子の発現を指標とする。dlk遺伝子の発現は、抗dlk抗体を用いた免疫測定やdlk遺伝子のmRNAを測定することにより測定可能である。癌治療薬は、癌細胞表面上に発現しているDlkと抗原抗体反応する抗体であって、該癌細胞に対して抗癌作用を発揮する抗体を有効成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝癌の検出方法及び肝癌診断薬並びに癌治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞癌は世界中の癌腫の中で最も多いものの一つであり、東南アジア、中国、サハラ砂漠以南のアフリカでの発症が特に多い。また、日本での発症率・有病率も高い。日本における肝癌による死者は年間三万人以上にのぼっており、依然として増加傾向にある。肝癌のほとんどは肝細胞癌であり、その発生母地は肝炎ウイルス感染に起因する。しかしながら、ウイルス肝炎から肝硬変、肝細胞癌へと移行する癌化メカニズムは未だ不明である。それゆえ現在用いられている診断方法(超音波診断、CTによる画像診断、α−フェトプロテイン(AFP)などの腫瘍マーカーを用いた血液診断)は、すでに形成された癌組織を対象にした方法であり、ある程度進行した癌を検出することはできても、非常に初期段階にある癌細胞、もしくは前癌細胞の存在を検出するには至っていない。また、AFPを腫瘍マーカーとする血液診断は、簡便であるが、肝癌に対する特異性は高いとは言えず、肝硬変、肝炎などでも高い値を示すことが知られている。
【0003】
また、日本の癌による死亡率は1980年頃から増加し、死因の第一位となっている。なかでも肝癌による死者は年間35,000人以上に上り、癌死全体の第三位である。今後、画期的な診断薬、治療薬が開発されない限り、肝癌の発症数はさらに増加すると考えられている。肝癌の治療には、外科的肝切除や経皮的エタノール注入療法、肝動脈塞栓療法などの局所療法と抗癌剤の全身投与や免疫療法などの全身的治療法が行われている。治療の主流を占めるのは局所的治療法であり、治癒度の点からみて経皮的エタノール注入療法や肝動脈塞栓療法に比べ肝切除がもっとも優れている。しかし、肝機能の障害の程度や腫瘍の占有範囲によっては手術適応とならないことも多い。全身的治療法では、標準的化学療法は確立されておらず、単剤で行った治療成績で10%以上の有効率を示したのはシスプラチンだけであり、多剤併用療法についても確立されていない(非特許文献1)。また、免疫治療では免疫賦活薬である「ピシバニール(OK-432)」(中外製薬)が肝癌に対して有効性があると報告されている。このような治療法を用いても、肝癌は多中心性発癌および再発の面から、完治が難しいのが現状であり、肝癌を特異的に攻撃する分子標的医薬品(治療抗体)の開発が重要であると考えられる。
【0004】
ここ数年、癌細胞を特異的に攻撃する分子標的医薬品の上市、開発が活発になってきている。これらの医薬品はある特定の癌に特異的に発現している標的遺伝子を狙っているため、従来の抗癌剤よりも効果が高く、かつ副作用が少ないという利点があり、今後の抗癌剤開発の主流になっていくと考えられる。癌治療抗体としては、Her2過剰発現が確認された転移性乳癌の治療薬「ハーセプチン(抗Her2ヒト化モノクローナル抗体製剤)」(中外製薬)と、CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫の治療薬「リツキサン(抗CD20キメラモノクローナル抗体製剤)」(中外製薬、全薬工業)が製品化されている。これらの治療抗体は、抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity, ADCC)活性、補体依存性細胞傷害(complement-dependent cytotoxicity, CDC)活性といった生体内の免疫機構によって、癌細胞を殺傷する。癌特異的な分子標的医薬品は、現在、上市されているものは少ないが、このような癌に特異性が高い製剤が開発されれば、肝癌を含めた癌の治癒率が上昇することが期待される。
【0005】
一方、Dlk1/Pref-1はEGF様モチーフを持つ膜タンパク質で、その細胞外領域はNotch/Delta/Serrateファミリーと相同性を示す。Dlk1/Pref-1は、GRP(gastrin releasing peptide)応答性の肺小細胞癌由来細胞株で発現する分子(非特許文献1)あるいは前脂肪細胞の分化を抑制する因子としてクローニングされた(非特許文献2)。その発現は、胎生期には複数の組織、臓器に見られるが、出生後はほとんどの組織で発現が見られなくなる(非特許文献2、3)。また、肺小細胞癌や1型神経線維腫症など、一部の癌組織でも発現が認められる(非特許文献4、5)。Dlk1/Pref-1の機能については前脂肪細胞の分化抑制以外に、最近造血への関与も示唆されている(非特許文献6)。しかし、発現パターンなどから未分化細胞における未分化状態維持機構に関与している可能性も示唆されている。我々は、以前シグナル配列を持った分子、すなわち細胞表面抗原や分泌性タンパク質をコードする遺伝子を、選択的に単離するシグナルトラップ法を用いて、マウス胎性14.5日の肝臓に高発現する遺伝子dlkを同定した。マウス肝臓の発生過程におけるDlkの発現は、胎生10日以前にすでに見られ、胎生16日付近までは強く発現しているが、出生前後にかけて急激に減少し、成熟肝臓では発現していなかった(非特許文献7、13)。さらに抗Dlkモノクローナル抗体を用いて、胎児肝臓より1ステップで肝幹細胞を高純度精製できることを見い出した(非特許文献7、特許文献1)。
【0006】
【非特許文献1】Laborda, J., et al (1993) J. Biol .Chem. 268(6):3817-20
【非特許文献2】Smas, C.M., et al (1993) Cell. 73(4):725-34
【非特許文献3】Floridon, C., et al (2000) Differentiation 66(1):49-59
【非特許文献4】Harken, J.C., et al (1999) Tumour Biol. 20(5):256-62
【非特許文献5】Jensen, C.H., et al (1999) Br. J. Dermatol. 140(6):1054-9
【非特許文献6】Ohno, N., et al (2001) Stem Cells 19(1):71-9
【非特許文献7】Tanimizu, N., et al (2003) J. Cell Sci. 116(Pt 9):1775-86
【非特許文献8】Onishi, M., et al (1996) Exp. Hematol. 24;324-329
【非特許文献9】Sell, S. (1993) Int. J. Dev. Biol. 37:189-201
【非特許文献10】Jensen, C.H. et al (1994) Eur. J. Biochem. 225:83-92
【非特許文献11】Kaneta, M. et al. (2000) J. Immunol. 164:256-264
【非特許文献12】Okada, S., et al (1993) Oncology. 50 (1): 22-26.
【非特許文献13】Kitajima, T., et al (1999) Nat. Biotechnol. 17 (5): 487-490.
【非特許文献14】Jensen, C. H., et al (1999) Br. J. Dermatol. 140 (6): 1054-1059.
【非特許文献15】Russell, W. C., et al (1977) J. Gen. Virol. 36: 59-72.
【非特許文献16】Kipps, T. J., et al (1985) J. Exp. Med. 161: 1-17.
【特許文献1】国際公開公報WO 02/103033
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い特異性をもって肝癌を検出することができる肝癌の検出方法及びそのための診断薬を提供することである。また、本発明の目的は、優れた抗癌効果を有する新規な癌治療薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、成体の肝癌細胞表面上にdlkが発現していることを見出し、このdlkを腫瘍マーカーとして肝癌細胞の検出が可能であることを実験的に確認した。さらに、細胞表面上に発現するdlkの細胞外領域と抗原抗体反応する抗ヒトdlkモノクローナル抗体の作出に成功した。さらに、この抗ヒトdlkモノクローナル抗体が、血液中に遊離されるdlkの細胞外であるFA1とも抗原抗体反応することを確認した。
【0009】
さらに、本願発明者らは、この抗ヒトDlkモノクローナル抗体が、Dlkを発現している癌細胞を標的とした治療抗体になる可能性があることに想到した。そこで、作製した3種類の抗ヒトDlkモノクローナル抗体を用いて、in vitroの実験系でDlkを発現した癌細胞株を特異的に死滅させる抗腫瘍活性について検討し、抗ヒトDlkモノクローナル抗体の抗癌活性を確認し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、dlk遺伝子の発現を指標とする、試料中の肝癌細胞の検出方法を提供する。また、本発明は、生体から採取された血液中又は尿中に存在する、dlkの細胞外領域を測定することを含む肝癌の検出方法を提供する。さらに、本発明は、dlkの細胞外領域と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を含む、肝癌診断薬を提供する。さらに、本発明は、dlk遺伝子のmRNA又はcDNAとハイブリダイズし、dlk遺伝子のmRNA又はcDNAを測定するためのプライマー又はプローブとして利用できる核酸から成る、肝癌検出用核酸を提供する。さらに、本発明は、dlkの細胞外領域と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片の、肝癌診断薬の製造のための使用を提供する。さらに、本発明は、癌細胞表面上に発現しているDlkと抗原抗体反応する抗体であって、該癌細胞に対して抗癌作用を発揮する抗体を有効成分として含有する癌治療薬を提供する。さらに、本発明は、癌細胞表面上に発現しているDlkと抗原抗体反応する抗体であって、該癌細胞に対して抗癌作用を発揮する抗体の有効量を癌患者に投与することを含む、癌の治療方法を提供する。さらに、本発明は、癌細胞表面上に発現しているDlkと抗原抗体反応する抗体であって、該癌細胞に対して抗癌作用を発揮する抗体の、癌治療薬の製造のための使用を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本願発明により、新規な肝癌マーカーを利用した、肝癌の検出方法が提供された。成体におけるdlkは、胎盤以外の臓器では検出されず、また、マウス急性肝障害モデルにおいても検出されないことから、本発明の方法により高い特異性で肝癌を検出することが可能である。さらに、dlkは、増殖性の高い胎児期の肝細胞や、成体における肝再生時に出現するオーバル細胞においても発現することから、増殖する肝癌細胞において発現していると考えられるので、初期の肝癌を検出できると考えられる。また、抗dlkモノクローナル抗体を用いることにより、血液中又は尿中に遊離した、dlkの細胞外領域であるFA1を検出することが可能であることから、dlkの細胞外領域を腫瘍マーカーとした血液検査又は尿検査により簡便に肝癌を検出することが可能である。また、本発明により、高い抗癌作用を発揮する新規な癌治療薬が提供された。本発明の癌治療薬は、特に肝癌の治療に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ヒト胎児および成体組織におけるDlkの遺伝子発現を示すノーザンブロットの結果を示す写真であり、 (A) 妊娠6週目から12週目の胎児肝臓におけるDlkの遺伝子発現、 (B) 胎児組織におけるDlkの遺伝子発現、 (C) 成体組織におけるDlkの遺伝子発現を示す。
【図2】ヒト肝癌由来細胞株におけるDlkの発現解析の結果を示す図であり、 (A) FACS解析 (B) 免疫蛍光染色 (C) RT-PCR解析の結果を示す図である。
【図3】ヒト肝癌組織におけるDlkの発現を示す写真であり、 (A) 肝細胞癌組織 (B) 胆管細胞癌組織についての結果を示す。
【図4】(A)は、抗ヒトDlkモノクローナル抗体を用いたヒトFA1の検出を示す図であり、ELISA法により検出、確認した結果を示す。(B)は、抗ヒトDlkモノクローナル抗体を用いた精製ヒトFA1の検出を示す図であり、発光基質(QuantaBlu(商品名)Fluorogenic Peroxidase Substrates:PIERCE)を用いたELISA法により検出、確認した結果を示す。
【図5】Dlkの染色性を基準にした組織(64歳)のヒトDlkの免疫染色の結果を示す図である。矢印は基準にしたDlk陽性部位を示す。
【図6】肝細胞癌の染色像を示す。左:ヘマトキシリン・エオジン (HE) 染色 中央:ヒトDlk陽性の免疫染色右:ヒトの免疫染色GradeI:HE、Dlk陽性(48歳男性)、Dlk陰性(39歳男性)GradeII:HE、Dlk陽性(68歳男性)、Dlk陰性(36歳男性)GradeIII:HE、Dlk陽性(63歳男性)、Dlk陰性(43歳男性)
【図7】HEK293細胞とHEK293(hdlk)細胞のFACS解析によるDlkの発現を示す図であり、点線:コントロールIgG抗体、実線:抗ヒトDlkモノクローナル抗体、を示す。
【図8】抗ヒトDlkモノクローナル抗体を用いたCDC活性を示す図であり、(A) HEK293細胞およびHEK293(hdlk)細胞に、抗体5μg/ml、正常ヒト血清25%を添加して3日間培養し、MTTアッセイによりCDC活性を測定し、平均値±標準誤差で示した。吸光度の値は抗体非添加の系に比べ有意差を認めた(*: p<0.01, n=3, Student's t test)。(B) HEK293(hdlk)細胞に抗体、ヒト補体血清25%を添加して3日間培養し、MTTアッセイによりCDC活性を測定し、平均値±標準誤差で示した。吸光度の値は抗体非添加の系に比べ有意差を認めた(*: p<0.01, n=3, Student's t test)。
【図9】抗ヒトDlkモノクローナル抗体を用いたADCC活性を示す図であり、HEK293細胞およびHEK293(hdlk)細胞に、抗体5μg/mlと健常人末梢血単核球を加え3日間培養し、MTTアッセイによりADCC活性を測定し、平均値±標準誤差で示した。エフェクター:ターゲット比は10:1で培養した。
【図10】Huh-7 EGFPとHuh-7 (hdlk)細胞(クローンPC14, PC16)のFACS解析によるDlkの発現を示す図である。点線:コントロールIgG抗体、実線:抗ヒトDlkモノクローナル抗体
【図11】抗ヒトDlkモノクローナル抗体を用いたCDC活性を示す図である。(A) Huh-7 EGFP細胞およびHuh-7 (hdlk) 細胞(クローンPC14, PC16)に抗体5□g/ml、正常ラット補体血清25%で添加して3日間培養し、MTTアッセイによりCDC活性を測定し、平均値±標準誤差で示した。(*: p<0.01, n=3, Student's t test) (B) Huh-7 EGFP細胞およびHuh-7 (hdlk) 細胞(クローンPC14, PC16)に抗体を0, 0.3, 1, 3, 5, 10μg/mlの濃度、正常ラット補体血清を25%で添加して3日間培養し、MTTアッセイによりCDC活性を測定し、平均値±標準誤差で示した。
【図12】ヒトDlk遺伝子発現による腫瘍形成能の促進効果を示す図である。(A) Huh-7 EGFPとHuh-7 (hdlk)細胞(クローンPC14)のヌードマウス皮下における腫瘍形成。移植後19日目までの腫瘍体積(mm3)を示す。(B) Huh-7 EGFPとHuh-7 (hdlk)細胞(クローンPC16)のヌードマウス皮下における腫瘍形成。移植後21日目までの腫瘍体積(mm3)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
下記実施例に具体的に記載するように、本願発明者らは、dlkが成体において、高い特異性をもって肝癌細胞表面上に発現しており、細胞表面上のdlk抗原を腫瘍マーカーとして用いたり、dlk遺伝子のmRNAを測定することにより、肝癌細胞の検出が可能であることを見出した。本願発明は、この知見を基礎とするものである。なお、本明細書及び請求の範囲において、「測定」には、検出、定量及び半定量が包含される。
【0014】
dlk自体は公知であり、dlkをコードするcDNAはクローニングされており、その塩基配列及びそれがコードするアミノ酸配列も公知である。例えば、ヒトdlkは、GenBank accession番号U15979およびNM_003836等に示されている。ラットdlkは、GenBank accession番号AB046763およびD84336等に示されている。ウシのdlkは、GenBank accession番号AB009278に示されている。これらのうち、GenBank accession番号U15979に示されるヒトdlkのcDNA配列及びそれがコードするアミノ酸配列をそれぞれ配列表の配列番号1及び2に示す。また、GenBank accession番号NM_003836に記載されている通り、dlkcDNAには、SNPを有する複数のバリアントが知られており、このようなバリアントもdlkに包含されることは言うまでもない。なお、配列番号2に示すヒトdlkのアミノ酸配列のうち、細胞外領域は、24aa〜304aaの領域である。
【0015】
dlkは、肝癌細胞表面上に発現しているので、これを腫瘍マーカー抗原として利用することにより肝癌細胞を検出することができる。なお、肝癌細胞には、肝細胞癌細胞及び胆管細胞癌細胞が包含され、下記実施例において具体的に記載されるように、これらのいずれの表面にもdlkが発現していることが確認された。細胞表面上の腫瘍マーカー抗原を測定する方法自体は周知であり、該腫瘍マーカー抗原と抗原抗体反応する抗体との抗原抗体反応を利用した種々の方法により行うことができる。用いる抗体としては、高くて均一な特異性を有するモノクローナル抗体が好ましい。抗マウスdlkモノクローナル抗体は公知である(非特許文献11)。また、下記実施例に具体的に記載するように、本願発明者らは、抗ヒトdlkモノクローナル抗体の作出に成功した。すなわち、ヒトdlkcDNAを哺乳動物細胞用の発現ベクターに組み込み、この組換えベクターを細胞株に導入してdlkを細胞表面上に発現する細胞株を作出し、これを免疫原として用いて常法であるKohlerとMilsteinの方法により抗ヒトdlkモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを樹立することができる。あるいは、上記のように、dlkの細胞が領域のアミノ酸配列及びそれをコードするcDNA配列は公知であるので、dlkの細胞外領域又はその一部分は、遺伝子工学的手法又はペプチド合成法により容易に調製可能である。調製したdlkの細胞外領域又はその一部分をそのまま、又はキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)やウシ血清アルブミン(BSA)等の担体に結合させたものを免疫原として用いる常法によっても抗dlkモノクローナル抗体を作出することが可能である。また、抗体のFab断片や、F(ab')2断片のような、抗原結合性を有する抗体断片を用いることも可能である。
【0016】
細胞表面上に発現する抗原(本願発明の場合はdlk)に対する抗体又はその抗原結合性断片を用いた、該抗原を細胞表面上に発現する細胞の測定方法自体は周知であるので、抗dlk抗体を用いた周知の手法に基づき、試料中の肝癌細胞を測定することができる。測定方法としては、免疫染色、ELISA等のサンドイッチ法、ラテックス凝集法などの凝集法、競合法等を挙げることができる。これらはいずれも周知であり、用いる抗体さえ入手すれば常法により容易に行うことができる。さらに、本発明の肝癌細胞の検出を効率的に実施できる好ましい方法として、マグネティックセルソーター(MACS)又はフローサイトメーター、とりわけ蛍光活性化セルソーター(FACS)を用いる方法を挙げることができる。MACSは、細胞表面抗原に対する抗体を不動化した超微粒子磁性ビーズで細胞を標識し、これを強力磁場にセットしたカラムに通して目的の細胞を分離するシステムであり、回収率が高く高純度な細胞を得ることができ、大量の細胞も効率的に分離することができ、さらに、細胞の機能や増殖能を保ったまま分離できるので、検出した肝癌細胞の性質をさらに調べる場合等に好ましい。また、FACSは、蛍光標識した抗体で細胞を標識し、ノズルから噴射された細胞流にレーザーを当て、発生する分散光と蛍光を分析して、各1個の細胞を含む水滴を荷電させ、高電界で分離する装置である。FACSもMACSと同様な理由により、本発明の方法に好ましい。MACS及びFACSはいずれもこの分野において周知であり、そのための装置が市販されているので、用いる抗体さえ入手すればこれらの市販品を用いて容易に行うことができる。
【0017】
細胞表面上のdlk抗原を検出する方法に供される試料としては、肝癌細胞を含んでいるかもしれない試料であり、通常、肝臓の生検試料である。生検試料は、組織切片(免疫染色の場合)でもよいし、肝臓組織をコラゲナーゼやトリプシン等のプロテアーゼで処理して得られる細胞浮遊液であってもよい。
【0018】
一方、膜タンパク質であるDlkはその細胞外領域が切断され、FA1として知られる可溶性分子を生成することが明かとなっている(非特許文献10)。そして、下記実施例に記載したとおり、本願発明者らが作出した抗ヒトdlkモノクローナル抗体は、FA1とも抗原抗体反応をする。したがって、抗dlk抗体、好ましくは抗dlkモノクローナル抗体を用いて血液中のFA1を免疫測定することにより、血液試料(血清、血漿、全血等)、あるいは尿試料を用い肝癌の診断を行なうことが可能である。免疫測定自体は、上記のような常法により容易に行うことができる。例えば、サンドイッチELISAにより免疫測定を行う場合、抗Dlk抗体又はその抗原結合性断片を第1抗体として固相に不動化し、検体と反応させ、洗浄後、Dlkと抗原抗体反応する第2抗体を反応させ、洗浄後、固相に結合した第2抗体を測定する。第2抗体を酵素、蛍光物質、放射性物質、ビオチン等で標識しておくことにより固相に結合した第2抗体を測定することができる。濃度既知の複数の標準試料中について上記方法により測定し、測定された標識量と標準試料中のFA1量の関係に基づき検量線を作成し、未知濃度の被検試料についての測定結果をこの検量線に当てはめることにより、被検試料中のFA1を定量することができる。下記実施例に具体的に記載されるように、ELISAにおける酵素基質として発光基質(fluorogenic peroxidase substrate: PIERCE)を用い、蛍光を測定することにより、検出感度を1ng/mL以下の高感度を達成することが可能である。また、凝集法では、ラテックス等の粒子に抗Dlk抗体又はその抗原結合性断片を不動化し、検体と反応させて吸光度を測定する。濃度既知の複数の標準試料中について上記方法により測定し、測定された標識量と標準試料中のFA1量の関係に基づき検量線を作成し、未知濃度の被検試料についての測定結果をこの検量線に当てはめることにより、被検試料中のFA1を定量することができる。
【0019】
上記した抗原抗体反応を利用した細胞表面上のdlk抗原を測定する方法において、ヒトの細胞上のdlk抗原を測定する場合には、抗ヒトdlkモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を用いることが好ましいことは言うまでもない。
【0020】
上記のように、抗dlk抗体、好ましくは抗dlkモノクローナル抗体は、肝癌の検出に用いることができるので、肝癌診断薬としての用途を有する。
【0021】
また、細胞中の、dlk mRNAを測定することによっても、dlk遺伝子の発現を調べることができる。細胞中のmRNAの測定は、常法により行うことができる。すなわち、例えば、下記実施例に記載の通り、ノーザンブロット法により行うこともできるし、逆転写PCR(RT-PCR)を行い、PCR産物を電気泳動することにより、さらに電気泳動バンドをサザンブロット法にかけることにより行うことができる。あるいは、RT-PCRをリアルタイム検出PCR(RTD-PCR)法により行うことにより、鋳型となるcDNA量、ひいてはmRNA量を正確に定量することができる。あるいは、NASBA法等により、mRNAを直接増幅し、電気泳動さらには電気泳動後のノーザンブロットにより測定することも可能である。これらの方法自体は、いずれも常法であり、必要な試薬キット及び装置は市販されている。また、DlkのcDNA配列が公知であるので、これらの方法に必要なプローブやプライマーは容易に設計することができるし、下記実施例にも具体的にこれらの例が記載されている。したがって、DlkタンパクをコードするmRNAの測定は、当業者が容易に行うことができる。なお、DlkのmRNA(又はmRNAを鋳型として得られたcDNA)の検出や増幅に用いられるプローブやプライマーは、DlkのmRNA又はcDNAのいずれかの鎖に相補的な配列を有するものが好ましいが、プローブやプライマーのサイズの10%以下、好ましくは5%以下の塩基のミスマッチを有するものを用いることも可能である。このようなミスマッチを有するプライマーを用いることにより、増幅産物に所望の制限酵素部位を付与することができる。このような制限酵素部位は、増幅産物をベクターへ組み込む際に便利な場合がある。また、プローブやプライマーのサイズ(DlkのmRNA又はcDNAとハイブリダイズする領域のサイズ)は、特に限定されないが、常法と同様、15塩基以上、好ましくは20塩基以上であり、サイズの上限は特にないが、プライマーの場合には、通常、50塩基以下、好ましくは40塩基以下であり、プローブの場合には全長以下が適当である。なお、測定すべきDlkのmRNA又はcDNAの領域とハイブリダイズする上記核酸領域を含み、プライマー又はプローブとして利用可能であれば、核酸断片の一端に非相補的な配列が付加されていてもよい。このような付加的な配列は、タグや他の核酸との結合のために利用することが可能な場合がある。本発明は、DlkのmRNA又はcDNAとハイブリダイズする、これらのプローブ及びプライマーのような、肝癌検出用核酸をも提供する。
【0022】
上記の通り、本発明の癌治療薬は、癌細胞表面上に発現しているDlkと抗原抗体反応する抗体を有効成分として含有する。Dlkと抗原抗体反応する抗体としては、上記した抗Dlk抗体であって、細胞表面上にDlkを発現している癌細胞に対して抗癌作用を発揮するものを用いることができ、高くて均一な特異性を有するモノクローナル抗体が好ましい。細胞表面上にDlkを発現している癌細胞に対して抗癌作用を発揮する抗dlkモノクローナル抗体は、下記実施例に具体的に記載する、Dlk発現細胞株を用いたMTTアッセイによりスクリーニングすることができる。下記実施例では、得られた3種の抗ヒトDlkモノクローナル抗体のうち2種がMTTアッセイにより抗癌作用を発揮したので、MTTアッセイによるスクリーニングにより、再現性をもって、細胞表面上にDlkを発現している癌細胞に対して抗癌作用を発揮する抗dlkモノクローナル抗体を得ることができる。
【0023】
抗体は、治療薬の投与対象の動物種と異なる動物種由来の抗体であってもよいが、少なくとも定常部が、投与対象の動物種と同一種の抗体の定常部(Fc)であることが好ましい。例えば、ヒトに投与する治療薬の場合、少なくとも定常部がヒト由来の抗体である、キメラ抗体やヒト化抗体を好ましく用いることができる。キメラ抗体やヒト化抗体を用いることにより、抗体の抗原性を減じることができ、抗体を投与した際の抗原抗体反応が起きにくくなる。のみならず、ヒトに投与する場合に抗体の定常部分をヒト由来とすることにより、ADCC活性が高くなると考えられる。すなわち、ADCCが起きるためには、エフェクター細胞のFc受容体に抗体のFcが結合することが必要であるので、Fcはその動物種のエフェクター細胞のFc受容体にフィットするものが有利であるからである。キメラ抗体は、抗原をマウスに免疫し、得られるマウスモノクローナル抗体の遺伝子から抗原と結合する抗体可変部(V領域)を切り出し、ヒト骨髄腫由来の抗体定常部(C領域)遺伝子と結合してキメラ遺伝子を作成し、このキメラ遺伝子を宿主細胞で発現させることにより得られる抗体である。その調製方法は周知であり、市販のキメラ抗体も多数存在する。また、ヒト化抗体は、マウス抗体の抗原結合部位(CDR,相補性決定領域)の遺伝子配列だけをヒト抗体遺伝子に移植した抗体であり、キメラ抗体よりもさらにマウス由来部分が少ない抗体である。ヒト化抗体及びその調製方法も周知であり、近年、多くのヒト化抗体が市販されている。
【0024】
抗Dlk抗体は、下記実施例に具体的に記載するように、少なくとも補体の存在下で抗癌作用を発揮する。補体は、患者の血液内に含まれているので、抗Dlk抗体は、そのままで癌治療薬として機能する。なお、下記実施例では、抗ヒトDlkモノクローナル抗体のヒト肝癌細胞株に対するADCC活性は認められなかったが、これは、抗体のFcがラット由来であるためと考えられ、CDC活性が認められているので、Fcをヒト由来に変えればADCCも発揮されると考えられる。抗Dlk抗体はそのままでも用いることができるが、抗体にリシン等の毒素や他の抗癌剤を結合させることにより、いわゆるミサイル療法も可能になる。
【0025】
本発明の癌治療薬により治療される癌としては、Dlkが癌細胞表面上に発現される癌であり、肝細胞癌や胆管細胞癌のような肝癌、肺小細胞癌や1型神経線維腫症を挙げることができる。これらのうち、肝細胞癌や胆管細胞癌のような肝癌が特に好ましい。
【0026】
本発明の癌治療薬の投与経路は、患部への注射、静脈内注射、筋肉内注射等の非経口投与が好ましい。投与量は、患者の状態や癌の進行度等に応じて適宜選択されるが、通常、成人患者1日1回、体重1kg当たり、抗体量で0.001〜100mg程度、好ましくは0.01〜50mg程度、さらに好ましくは0.1〜5mg程度である。製剤は、単に抗体を生理緩衝液中に溶解したものであってもよいし、医薬製剤の分野において一般に用いられている1又は2以上の添加剤を添加してもよい。
【0027】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
実施例1 肝癌の検出
1. 材料と方法
(1) ヒトdlk 全長cDNAの単離と発現ベクターの構築
ヒトDlk(Genbank accession No. U15979)の遺伝子配列情報よりPCRプライマーを設計した。作成したプライマーの配列は以下の通りである。
フォワード側プライマー: 5'-cgcgtccgcaaccagaagccc-3'
リバース側プライマー: 5'-aagcttgatctcctcgtcgccggcc-3'
この時、リバース側プライマーにはHindIIIによる制限酵素消化配列を付加した。これらのプライマーと胎生10週のヒト肝臓より調整した全RNA (TAKARA)から合成したcDNAを鋳型としてPCR反応を行った。その後、アガロースゲル電気泳動による展開、目的のバンドの抽出を行い、pCRIIベクター(Invitrogen)にクローニングした(pCRII-hdlk)。クローニングしたヒトDlkのcDNAはシークエンスにより確認した。
【0029】
発現ベクターの構築にあたり、ヒトDlkのC末端にFlagタグを付加するため、まずpbluescript II SK(+)ベクター(STRATAGENE)のHindIII/SalI部位にFlagタグ配列をコードするオリゴヌクレオチド(配列:フォワード側5'-agcttgactacaaggacgacgatgacaagtgag-3'、リバース側5'-tcgactcacttgtcatcgtcgtccttgtagtca-3')を挿入した(pBS-Flag)。次にpCRII-hdlkからヒトdlk遺伝子を含むEcoRI/HindIII断片を切り出し、pBS-FlagベクターのEcoRI/HindIII部位に挿入した(pBS-hdlk-Flag)。さらにpBS-hdlk-FlagからEcoRI/SalI断片を切り出し、pcDNA3.1ベクター(Invitrogen)およびpMIGベクター8)のEcoRI/XhoI部位に挿入した(それぞれpcDNA-hdlk-Flag、pMIG-hdlk-Flag)。
【0030】
ヒトFA1発現ベクターを構築するにあたり、以下のプライマーを設計し、合成した。
フォワード側プライマー:5'-cgcgtccgcaaccagaagccc-3'
リバース側プライマー:5'-ctcgaggtgctccggctgctgcaccggc-3'
この時リバース側プライマーにはXhoIによる制限酵素消化配列を付加した。これらのプライマーとヒトdlkのcDNAを鋳型としてPCR反応を行い、得られたヒトFA1 cDNAをpCRIIベクター(Invitrogen)にクローニングした(pCRII-hFA1)。クローニングしたヒトFA1のcDNAはシークエンスにより確認した。
【0031】
pCRII-hFA1からヒトFA1 cDNAを含むEcoRI/XhoI断片を切り出し、pcDNA4/Myc-Hisベクター(Invitrogen)のEcoRI/XhoI部位に挿入した(pcDNA4-hFA1)。この発現ベクターにはC末端側にMycタグ及びHisタグ配列が付加されており、ヒトFA1はMycタグ及びHisタグとの融合タンパク質として発現する。
【0032】
(2) ヒト肝癌由来細胞株
ヒト肝癌由来細胞株は、JHH-6、HLF、JHH-5及びHuh-6であり、いずれも(財)ヒューマンサイエンス振興財団より分譲を受けた。
【0033】
(3) 培養細胞への遺伝子導入
培養細胞への遺伝子導入は、LipofectAMINE-plus試薬(GIBCO BRL)を用い、添付のプロトコルに従い行った。
【0034】
(4) RT-PCR
ヒト肝癌由来細胞株からTrizol試薬(ニッポンジーン)を用いてRNAを抽出した。First-strand cDNA synthesis kit(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて抽出したRNAからcDNAを合成した後、PCR法によりヒトDlkの発現を解析した。使用したプライマーは以下の通りである。
フォワード側プライマー: 5'-agagctcaacaagaaaacc-3'
リバース側プライマー: 5'-gcgtatagtaagctctgagg-3'
【0035】
(5) ノーザンブロット解析
胎児組織全RNA(TAKARA)および細胞からTrizol試薬(ニッポンジーン)を用いて抽出した全RNA、各10μgをホルムアルデヒド変性ゲルにて電気泳動した。ナイロン膜に転写した後、DIGラベルしたcDNAプローブを用いてハイブリダイズした。プローブの検出は、CDP-starを基質とした化学発光により行った。
【0036】
(6) 抗ヒトDlkモノクローナル抗体の作製
ヒトdlk遺伝子を組み込んだ、上記レトロウイルスベクター(pMIG-hdlk-Flag)をパッケージング細胞であるBOSC23細胞(Pear, W.S. et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 8392-8396)に導入し、ヒトdlk遺伝子を持つレトロウイルスを産生した。我々が以前、温度感受性SV40 large T antigenのトランスジェニックマウス(Yanai,N. et al. (1991) Exp. Cell Res. 197, 50-56)の胎児肝臓から樹立した細胞株7E2-Cに産生したレトロウイルスを感染させ、恒常的にヒトDlkを発現する細胞株7E2-C(hdlk)を得た。
【0037】
さらに、HEK293細胞(入手先:東京大学分子細胞生物学研究所機能形成)に上記発現ベクターpcDNA-hdlk-Flagを導入し、抗生物質G418(geneticin, GIBCO BRL)による選択を行った後、ヒトDlkを安定して発現している細胞株HEK293(hdlk)を樹立した。
【0038】
上記2種の細胞株をそれぞれ抗原としてラットを免疫し、常法により抗ヒトDlkモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローン作製した。これらのクローンを、予め(7日前)2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン(プリスタン)を投与されたBALB/cヌードマウスの腹腔内に3x106個投与し、2週間後の腹水を採取した。さらに、この腹水からカプリル酸沈澱、プロテインGカラム精製を行うことで、各ハイブリドーマクローンが産生する抗ヒトDlkモノクローナル抗体を得た。
【0039】
(7) cell ELISA法
ゼラチンでコートした96穴培養プレート(Corning)に上記7E2-C(hdlk)株を7.5x103 細胞/ウェルで播種し、37℃で2日間培養した。氷冷PBSで洗浄後、4%パラホルムアルデヒド溶液で固定、0.2% Triton-X-100(商品名)溶液で処理し、cell ELISA用プレートとした。以後、定法に従いELISA法を行った。具体的には、ELISAは次のようにして行なった。まず1%BSA-PBS溶液によるブロッキングを室温で2時間行った。次に、ハイブリドーマ上清を加え、室温で1時間反応させた後、0.1%Tween20(商品名)-PBS溶液で3回洗浄した。二次抗体としてビオチン化抗ラットIgG(Vector社製)を0.1%Tween20-PBS溶液で100倍希釈して使用した。室温で1時間反応させた後、0.1%Tween20-PBS溶液で3回洗浄した。さらに0.1%Tween20-PBS溶液で1000倍希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ−ストレプトアビジン (Vector社製)を室温で1時間反応させ、0.1%Tween20-PBS溶液で3回洗浄した。TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンチジン: SIGMA社製)基質溶液を添加し発色反応を行い、1M 硫酸を加え反応を停止させた。Microplate reader Model 550(BIO-RAD)を用い吸光度を測定した。
【0040】
(8) 免疫組織染色法
ヒト正常組織、肝癌組織のパラフィン切片(Bio Chain, Hepatocellular carcinoma; catalog No.:T2235149-4, lot No.:A607070, Cholangiocellular carcinoma; catalog No.:T2235149-2, lot No.:A603549)は、脱パラフィン処理後、10mMクエン酸ナトリウム溶液中で10分間加熱処理し、抗ヒトDlkモノクローナル抗体を用いた染色に使用した。DAB(3,3'-ジアミノベンチジン)を基質とて発色反応を行った後、対比染色としてヘマトキシリンによる核染色を行った。これらの操作はより具体的には次のようにして行なった。4%パラホルムアルデヒドによる固定及びパラフィン包埋された切片を、脱パラフィン処理後、10mMクエン酸ナトリウム溶液中で10分間加熱処理した。次にメタノールに終濃度0.3%となるように過酸化水素水を加えた溶液によって、室温で20分間処理し内因性のペルオキシダーゼ活性を除いた。PBSで室温5分間の洗いを2回行い、ブロックエース試薬(大日本製薬株式会社)を用いて30分間ブロッキングを行い、組織中の非特異的結合部位をふさぐ操作を行った。次に1/10に希釈したブロックエース試薬により希釈した抗ヒトdlkモノクローナル抗体clone 1C1(終濃度0.25μg/ml)を室温で1時間反応させ、PBSで5分の洗いを3回行い、続いて1/10に希釈したブロックエース試薬によって100倍に希釈したビオチン化抗ラットIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSによる5分間の洗いを3回行った後、ABCキットの試薬を説明書通りに混ぜてABCコンプレックスを作り、これを室温で30分反応させた。PBSで5分間3回の洗いの後、ペルオキシダーゼ基質(0.02%DAB、0.03%過酸化水素水、50mM Tris-HCl pH 7.5)によって発色を行った。発色を確認した後、水で10分間洗い、マイヤーヘマトキシリン溶液(和光)によって核を染色し、その後アルコールで脱水し、キシレンで透徹して、エンテランニュー(メルク・ジャパン株式会社)で封入した。
【0041】
また、ヒト肝細胞癌のパラフィン切片 (Cybrdi社, Hepatocellular carcinoma; catalog No.: CS03-01, lot No.: CS03-01-001-012 (23患者、63切片), CS03-01-002 (63患者、63切片)) は、脱パラフィン処理後、親水化し、10mMクエン酸緩衝液 (pH6.0)で、オートクレーブ処理 (121℃、5分)した。次にメタノールに最終濃度0.3%となるように過酸化水素水を加えた溶液によって、室温で5分間処理し、内因性のペルオキシダーゼ活性を除いた。PBSで5分間の洗いを3回行い、1.5%ヤギ血清PBS溶液で30分間ブロッキングを行い、組織中の非特異的結合部位をふさぐ操作を行った。次に1.5%ヤギ血清PBS溶液で希釈した抗ヒトdlkモノクローナル抗体clone1C1 (濃度0.25μg/ml)を4℃で一晩反応させ、PBSで5分間の洗浄を3回行い、1.5%ヤギ血清PBS溶液で100倍に希釈したビオチン化抗ラットIgG抗体(Vector)を室温で2時間反応させた。PBSで5分間の洗浄を3回行い、ABCコンプレックスを室温で30分反応させた。PBSで5分間ずつ3回洗った後、ペルオキシダーゼ基質(0.02%DAB、0.03%過酸化水素水、50mM Tris-HCl pH7.5)により発色を行った。発色後、精製水で10分間洗い、マイヤーヘマトキシリン(和光)によって核を染色し、エタノールによる脱水、キシレンでの透徹の後、エンテランニュー(メルク・ジャパン)で封入した。
【0042】
(9) FACS解析
細胞はトリプシン処理によって培養皿より剥がし、細胞懸濁液(細胞密度5x106cells/ml)を調製した。抗ヒトDlkモノクローナル抗体0.5μgと細胞懸濁液100μLを4℃、30分間反応させた。PBSで洗浄後、ビオチン化抗ラットIgG(Vector)(0.5μg)と反応(4℃、30分)させ、再びPBSで洗浄した。ストレプトアビジン-FITC(Pharmingen)またはストレプトアビジン-PE(Pharmingen)(0.5μg)と反応(4℃、30分)させた後、FACSCalibur (BECTON DICKINSON)にて解析した。
【0043】
(10) 抗ヒトdlkモノクローナル抗体によるヒトFA1の検出
ヒトFA1発現ベクターを7E2-C細胞に導入し、3日後の培養上清、又は培養上清からHis Trap HP Kit (Amersham Bioscience)を用いて精製(hFA1濃度:30μg/ml)したhFA1を検出試料とした。検出には、捕獲抗体としてclone 31C4、検出抗体としてビオチン化したclone 4C4を用いたサンドイッチELISA法を用いた。検出抗体のビオチン化はECLTM Protein Biotinylation Module(Amersham Bioscience)を用いて行った。なお、このサンドイッチELISAは具体的に次のようにして行なった。まず捕獲抗体clone31C4をPBSで10μg/mlに希釈し、96穴プレートに100μl/wellで添加した。室温で一晩静置した後、PBSで3回洗浄し、2%スキムミルク-PBS溶液(以降 2%MPBSとする)によるブロッキングを室温で2時間行った。次に、hFA1を含む培養上清または2%MPBSで各濃度に希釈したhFA1を加え室温で1時間静置した。PBSで3回洗浄した後、検出用抗体のビオチン化したclone4C4を2%MPBS で1μg/mlに希釈し添加した。室温で1時間反応させた後、0.1%Tween20(商品名)-PBS溶液で3回洗浄した。二次抗体としてビオチン化抗ラットIgG(Vector社製)を2%MPBS溶液で100倍希釈して使用した。室温で1時間反応させた後、0.1%Tween20-PBS溶液で3回洗浄した。さらに2%MPBS溶液で1000倍希釈したセイヨウワサビベルオキシダーゼ−ストレプトアビジン (Vector社製)を室温で1時間反応させ、0.1%Tween20-PBS溶液で3回洗浄した。発色反応はTMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンチジン: SIGMA社製)を基質溶液として添加して行い、1M 硫酸を加え反応を停止させた。Microplate reader Model550(BIO-RAD)を用い吸光度を測定した。蛍光反応はQuantaBlu(商品名)Fluorogenic Peroxidase Substrates(PIERCE社製)と測定機器としてフルオロスキャンアセント(Thermo Labsystems社製)を用いて測定した。
【0044】
2. 結果
(1) ヒト正常肝臓におけるヒトDlkの発現
本願発明者らは、以前、マウスにおいてDlkが胎生肝細胞に高発現しており、成体肝細胞には発現が見られないこと、抗マウスDlkモノクローナル抗体とMACS(Magnetic beads cell sorting)を組み合わせて用いることで、胎児肝臓から肝細胞のみを高純度で回収することができることを見い出している(非特許文献7、特許文献1)。そこで、まずヒトにおいても同様な発現パターンを示すのか検討した。ヒト胎児肝臓全RNAサンプル(TAKARA)を用いてノーザンブロット解析を行った結果、妊娠6週目から12週目の胎児肝臓においてヒトDlkの発現が認められた(図1A)。また妊娠12週目における各臓器でのヒトDlkの発現を調べた結果、肝臓以外に腎臓、骨格筋でも発現していた(図1B)。これに対し成体組織での発現は、以前の報告にあるように、胎盤以外では検出できなかった(図1C)(非特許文献1)。しかしながら最近の報告では、FA1が下垂体(Larsen, J.B. et al. (1996) Lancet. 347, 191)、副腎(Jensen, C.H. et al. (1993) Hum. Reprod. 8, 635-641)などにも発現していることが明らかにされている。このことから、ヒトでもマウスと同様に、肝臓でのDlkの発現は胎児で見られるものの、成体肝臓では発現していないことがわかった。
【0045】
(2) 抗ヒトDlkモノクローナル抗体
上記の結果を更に確認するため、本願発明者らはまず、抗ヒトDlkモノクローナル抗体(ラットIgG)を作製した。抗原として2種類のヒトDlk発現細胞を樹立し、これを抗原としてラットを免疫した。ハイブリドーマを定法に従い調整し、その後、抗原として用いた7E2-C(hdlk)株を用いたFACS解析、およびcell ELISA法により陽性クローンを選択した。さらにクローニングを行い、3種類(clone 1C1、4C4、31C4)の安定したクローンを確立した。最終的に確立したクローンの培養上清を用いてFACS解析を行った結果、確かにこれらの培養上清中にヒトDlkと特異的に反応するモノクローナル抗体が産生されていることが確認された。
【0046】
これらのクローンを、予め(7日前)2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン(プリスタン)を投与されたBALB/cヌードマウスの腹腔内に3x106個投与し、2週間後の腹水を採取した。さらに、この腹水からカプリル酸沈澱、プロテインGカラム精製を行うことで、各ハイブリドーマクローンが産生する抗ヒトDlkモノクローナル抗体を得た。得られた精製モノクローナル抗体は、対応する各培養上清とFACS解析において同等の活性を示した。
【0047】
得られた抗ヒトDlkモノクローナル抗体clone 1C1を用いて、ヒト胎児組織の免疫組織染色を行った。ノーザンブロットの結果に一致して、肝臓、腎臓、骨格筋で染色像が見られた。また、胎盤組織でも同様に染色を行った結果、絨毛の合胞体性栄養細胞において強い染色が見られた。
【0048】
(3) ヒト肝癌由来細胞株におけるヒトDlkの発現
ヒトDlkの発現は、マウスでの結果と同様、胎児の未熟な肝細胞では見られるが、成体の肝細胞では発現が認められない。本願発明者らは、ヒト肝癌におけるヒトDlkの発現の可能性を検討した。まず4種類のヒト肝癌由来細胞株(JHH-6、HLF、JHH-5、Huh-6)について、FACS解析、免疫染色およびRT-PCR法によって検討した。抗ヒトDlkモノクローナル抗体clone 4C4を用いてFACS解析を行った結果、未分化型の細胞株(JHH-6、HLF)ではシフトは認められなかったが、分化型の細胞株(JHH-5、Huh-6)ではヒトDlkの発現を示すシフトが見られた(図2A)。また免疫染色法の結果も同様に、分化型の細胞株では染色像が確認された(図2B)。
【0049】
次にRT-PCR法による解析を行った。それぞれの細胞株から抽出した全RNAからcDNAを合成し、これを鋳型としてPCR反応を行った。その結果、FACS解析、免疫染色の結果と同様に、分化型の細胞株ではヒトDlkの発現が見られた。しかしながらRT-PCR法では、FACS解析、免疫染色では発現の見られなかった未分化型の細胞株でも、弱いながらヒトDlkの発現が認められた(図2C)。未分化型の細胞株における結果の相違は、ヒトDlkの検出感度の差であると考えられる。
【0050】
(4) ヒト肝癌組織におけるヒトDlkの発現
ヒト肝癌由来細胞株におけるヒトDlkの発現解析の結果は、ヒトDlkが肝癌組織においても発現している可能性を示唆している。そこでヒト肝癌組織でのヒトDlkの発現を、抗ヒトDlkモノクローナル抗体clone 1C1を用いて免疫組織染色法により検討した。その結果、肝細胞癌および胆管細胞癌の組織において癌部で強く染色されることが明かとなった(図3)。この時、癌部に隣接する正常組織では全く染色されなかった。このことはDlkが胎生肝細胞のみならず、成体肝細胞の癌化によっても発現することを示しており、肝癌における腫瘍マーカーになりうることが示唆された。
【0051】
さらに、肝細胞癌におけるDlkの陽性率を、正確に調べる為に、多数の肝細胞患者由来の病理切片を抗Dlk抗体を用いて免疫染色を行い検討した。ヒト組織アレイを用いた肝細胞癌でのヒトDlkの発現は、lot No.: CS03-01-001-012のNo. 51切片を基準にし、Dlk陽性染色部位と同等以上の染色性のものをDlk陽性とし、それ以下のものを陰性として測定した(図5)。80患者、118切片の肝細胞癌組織を検討したところ、全体では118病理切片中65切片においてDlk陽性(55%)であり、更に、各グレード(Grade)ごとに検討したところ, Grade Iの肝細胞癌でのDlk陽性率は82 % (9/11), Grade I〜IIが100% (3/3), Grade IIが61 % (33/54)、Grade IIIで40% (20/50)であり(表1)、低分化型から高分化型に至るすべての肝細胞癌において広くDlk陽性であることが判明した。しかしながら、特にGrade I, IIの分化度の低い肝細胞癌において、高頻度でDlkの発現が認められ、また上記したように、Dlkは増殖性の高い胎児期の肝細胞や、成体における肝再生時に出現し、前癌細胞である可能性が指摘されているオーバル細胞においても発現することから、肝細胞癌Grade I での高いDlkの発現率は、Dlkが初期の肝細胞癌の腫瘍マーカーである可能性を示唆している。観察した各Gradeのヘマトキシリン・エオジン (HE) 染色、Dlk染色の陽性および陰性組織像の例は図6に示した。
【0052】
なお、図2B、図3、図4、図5及び図6の原図はカラー写真であり、添付の図面(白黒グレースケール)では結果は明瞭ではないかもしれないが、原図では、上記結果が明瞭に示されている。
【0053】
【表1】

【0054】
(5) 抗ヒトdlkモノクローナル抗体によるヒトFA1の検出
Dlkは、その細胞外領域が切断され、FA1として知られる可溶性分子を産生することが明かとなっている。我々が作出した抗ヒトDlkモノクローナル抗体は、Dlkの細胞外領域を認識することから、この抗体を用いてヒトFA1を認識、検出できる可能性が考えられた。そこで、7E2-C細胞にヒトFA1を一過性に発現させた培養上清を用いてELISA法により検討した。その結果、確かにコントロールベクターを導入した培養上清ではシグナルが検出されないが、ヒトFA1を含む培養上清ではシグナルが検出されることが確認された(図4)。以上のことから我々の作出した抗ヒトDlkモノクローナル抗体は、ヒトFA1を検出できることが明かとなった。
【0055】
(6) 抗ヒトdlkモノクローナル抗体によるヒトFA1の検出法の感度検定
さらに、上記の「1.材料と方法」の「(10) 抗ヒトdlkモノクローナル抗体によるヒトFA1の検出」に記載したように、精製ヒトFA1タンパク質を用いて、ELISA法の感度検定を行った結果、発光基質(QuantaBlu(商品名)Fluorogenic Peroxidase Substrates:PIERCE)と測定機器としてフルオロスキャンアセント(Thermo Labsystems)を用いることで、1ng/mlのヒトFA1が検出可能であった(図4B、表2)。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例2 抗Dlk抗体の抗癌活性
1. 材料及び方法
「(1) ヒトdlk 全長cDNAの単離と発現ベクターの構築」、「(2) ヒト肝癌由来細胞株」、「(3) 培養細胞への遺伝子導入」、「(4) RT-PCR」、「(5) ノーザンブロット解析」は実施例1記載の通りに行った。
【0058】
(6) 抗ヒトDlkモノクローナル抗体の作製
2種類のDlk発現細胞株7E2-C(hdlk)とHEK293(hdlk)の樹立までは実施例1記載の通りに行った。
【0059】
抗ヒトDlkモノクローナル抗体を作製するために、2種類のDlk発現細胞株7E2-C(hdlk)とHEK293(hdlk)の細胞懸濁液を、免疫補助剤(完全フロイントアジュバンド:和光純薬工業)と1:1 で混合したエマルジョンを6週齢のウイスターラットの両足に1X107細胞ずつ注射し、免疫を行った。追加免疫を2回行った後に両足のリンパ節を採取し、リンパ球を調製し、マウスのミエローマ細胞株(P3X)とポリエチレングリコール法で細胞融合を行った。96穴平底プレートでHAT(アミノプテリン、ヒポキサンチン、チミジン)を含む培地で、5% CO2インキュベーターで培養した。培養後、増殖したハイブリドーマの培養上清を7E2-C(hdlk)株を用いたFACS解析およびCell ELISA法によりスクリーニングし、陽性クローンを選択した。このクローンをさらにクローニングし、3種類のハイブリドーマ株(クローン1C1, 4C4, 31C4)を樹立した。これらのハイブリドーマ株は、それぞれ1.5X107個/mlの濃度でRPMI培地に懸濁した。細胞懸濁液を予め7日前に2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン(プリスタン)を投与したヌードマウス(Balb/c-nu/nuSlc)の腹腔内に200μL(3X106個)投与した。2週間後に腹水を採取し、カプリル酸沈殿、プロテインGカラムを用いて、各抗体をアフィニティー精製した。得られた精製モノクローナル抗体は、対応する各培養上清とFACS解析において同等の活性を示した。
【0060】
「(7) cell ELISA法」、「(8) 免疫組織染色法」、「(9) FACS解析」は実施例1記載の通りに行った。
【0061】
(10) ヒト末梢血単核細胞の分離
健常人静脈血をヘパリン採血し、PBSで2倍に希釈後、Lymphoprep (第一化学薬品)上に重層し20℃で800g、20分間遠心した。遠心後、中間層分画にある単核細胞を回収し、PBSで3回洗浄後、10% FCSを加えたDMEM培地に浮遊させエフェクター細胞として用いた。
【0062】
(11) ヒト補体血清の分離
健常人静脈血は抗凝固剤を加えずに採血し、15mlチューブに移して37℃の孵卵器内に60分間放置した。さらに室温に60分間放置し、血餅をチューブの壁から剥がした後に20℃で2500rpm、15分間遠心した。遠心後、上清の血清を回収し、補体血清として用いた。56℃、30分間の加温により補体を不活性化(非働化)した血清は、コントロールとして使用した。
【0063】
(12) MTT法
96穴プレートで培養した細胞にテトラカラーワン(生化学工業)を、添付のプロトコールに従い、各培養ウエルに添加し、5% CO2インキュベーターで3-4時間反応させた。反応後96穴プレートをそのままマイクロプレートリーダーを用いて490nm(対照波長:655nm)の吸光度を測定した。
【0064】
(13) 補体依存性細胞傷害活性
HEK293とHEK293(hdlk)細胞はトリプシン処理によってプレートから剥離し、10% FCSを加えたDMEM培地に1x105/mlの濃度で浮遊させターゲット細胞として用いた。ゼラチンコートした96穴平底プレートに1x104/wellで播き、抗ヒトDlk抗体4C4、31C4およびラットIgG(それぞれ0.2、1.0、5μg/ml)の存在下で30分培養した。さらに補体として使用するヒト血清を培養液の25%になるように加え、72時間培養した。培養後、MTT法により吸光度を測定した。CDC活性における生細胞数を示す吸光度の値は、対照として作製した、培地に補体血清を添加したウエルの平均値を差し引いて算出した。有意差検定はStudent's t testにより行った。
【0065】
Huh-7EGFPとHuh-7(hdlk)細胞はトリプシン処理によってプレートから剥がし、DMEM培地で2x105/mlの濃度で浮遊させ、ターゲット細胞として用いた。96穴プレートに1x104/wellで播き、抗ヒトDlk抗体4C4、31C4およびラットIgG(それぞれ0.3、1、3、5、10μg/ml)の存在下で30分培養した。さらに補体として使用するラット血清を培養液の25%になるように加え、72時間培養した。培養後、MTT法により吸光度を測定した。CDC活性における生細胞数を示す吸光度の値は、対照として作製した、培地に補体血清を添加したウエルの平均値を差し引いて算出した。有意差検定はStudent's t testにより行った。
【0066】
(14) 抗体依存性細胞傷害活性
HEK293とHEK293(hdlk)細胞はトリプシン処理によってプレートから剥離し、10% FCSを加えたDMEM培地に2x105/mlの濃度で浮遊させ、ターゲット細胞として用いた。ゼラチンコートした96穴平底プレートに1x104/wellで播き、抗ヒトDlk抗体1C1、4C4、31C4およびラットIgG (5μg/ml)の存在下で30分培養した。さらにエフェクター細胞は、エフェクター:ターゲット比(20:1、10:1、 5:1)でターゲット細胞に加え5% CO2インキュベーターで72時間培養した。培養後MTT法により吸光度を測定した。ADCC活性における生細胞数を示す吸光度の値は、対照として作製した培地だけのウエルの平均値を差し引いて算出した。
【0067】
(15) ヒトDlkを発現するヒト肝癌由来細胞株Huh-7の樹立
実施例1の「1.材料と方法 (1) ヒトdlk 全長cDNAの単離と発現ベクターの構築」に記載したヒトDlkの全長cDNAを組み込んだ発現ベクター(pcDNA-hdlk-Flag)をヒト肝癌由来細胞株Huh-7(入手先:東京大学分子細胞生物学研究所機能形成)に遺伝子導入し、G418(geneticin, GIBCO BRL)による選択後、ヒトDlkを安定に発現している2種の細胞株Huh-7(hDlk)(クローンPC14, PC16)を樹立した。また、コントロール細胞としてEGFPの全長cDNAを組み込んだ発現ベクター(PEGFP)をHuh-7細胞に導入し、G418による選択後、EGFPを安定に発現している細胞株Huh-7 EGFPを樹立した。
【0068】
(16) 補体血清の分離
Std: Wister/STラット、8週齢、雄の静脈血を抗凝固剤を加えずに採血し、実施例2の「1.材料と方法(11) ヒト補体血清の分離」記載の方法で、補体血清を分離した。
【0069】
(17) ヒトDlk遺伝子の腫瘍形成促進活性の検討
ヒトDlkを安定に発現している2種の細胞株Huh-7(hDlk)(クローンPC14, PC16)およびコントロール細胞(EGFPを安定に発現している細胞株Huh-7 EGFP)を3X106 cell / 100 μL (PBS: EHS-gel=1:1)ずつ、6週齢のヌードマウス(Balb/c; nu/nu、雌、日本エスエルシー)の皮下に移植した。ヒトDlk遺伝子の腫瘍形成に与える影響を検討する為に、ヌードマウス同一個体において、背中の左側皮下と右側皮下において、片方にコントロール細胞を、もう一方にクローンPC14, あるいはPC16細胞を移植し、移植後3週間にわたり、それぞれの移植肝癌細胞の腫瘍形成を観察した。腫瘍体積の測定はノギスを用いて、常法に従い、
腫瘍体積 (mm3)=π/6 X 長径 X (短径)2
の計算式で算出した。
【0070】
2. 結果
「(1) ヒト正常肝臓におけるヒトDlkの発現」、「(2) 抗ヒトDlkモノクローナル抗体」、「(3) ヒト肝癌由来細胞株におけるヒトDlkの発現」、「(4) ヒト肝癌組織におけるヒトDlkの発現」の結果は実施例1に記載したとおりである。
【0071】
(5) 抗ヒトDlkモノクローナル抗体を用いた293 (hdlk)細胞のFACS解析(Dlk発現量の確認)
作製した抗ヒトDlkモノクローナル抗体(クローン4C4)を用いて、HEK293細胞とHEK293 (hdlk)細胞のFACS解析を行った。ヒトDlkはHEK293細胞では全く発現していなかったが、HEK293 (hdlk)細胞では強く発現していることが確認された(図7)。
【0072】
(6) 抗ヒトDlkモノクローナル抗体を用いたCDC活性
Dlkがヒト癌細胞株や癌組織で発現していることは、Dlkが腫瘍マーカーになり、抗ヒトDlkモノクローナル抗体が、Dlkを発現している癌細胞を標的とした治療抗体になる可能性を示唆している。そこで、まず、抗体と補体による細胞傷害、すなわちCDC活性を測定した(図8、表3.1,3.2)。96穴プレートにターゲット細胞として、HEK293またはHEK293(hdlk)細胞を播き、抗ヒトDlk抗体(クローン4C4, 31C4を5μg/mlで添加)と補体血清を加えて培養した。培養3日後、MTTアッセイによりターゲット細胞の傷害を測定した。Dlk抗体を5μg/mlで添加したときのHEK293(hdlk)細胞の傷害は、抗体非添加やコントロールIgG抗体を添加した系に比較し、抗ヒトDlk抗体(クローン4C4, 31C4)と補体血清を添加した系で吸光度の値が低下し、生細胞数が70-90%減少していた。また、非働化した補体血清を添加して培養した場合、5μg/mlの抗ヒトDlk抗体(クローン31C4)を添加した系は、抗体非添加およびコントロール抗体を添加した系と吸光度に違いはみられず、生細胞数は同等であった(図8A、表3.1)。また、Dlkを発現していないHEK293細胞に対しては、いずれの抗体も細胞傷害活性を示さなかった。
【0073】
HEK293(hdlk)細胞を顕微鏡下で観察すると、補体血清にコントロールIgG抗体を添加した系、非働化補体血清に抗ヒトDlk抗体(クローン31C4)を添加した系では、細胞がコロニーを作って増殖している形態が観察されたが、補体血清に抗ヒトDlk抗体(クローン31C4)を添加した系では、ほとんどの細胞が散在し、死滅している様に見られた。一方、Dlkを発現していないHEK293細胞では、抗ヒトDlk抗体と補体血清を添加した系でも傷害を受けた細胞は確認されなかった。
【0074】
さらに、抗ヒトDlk抗体(クローン4C4、31C4)を0.2、1.0、5μg/mlで添加した時のHEK293(hdlk)細胞のCDC活性を検討した(図8B、表3.2)。培養3日後のCDC活性をMTTアッセイによって測定すると、HEK293(hdlk)細胞の生細胞数は抗ヒトDlk抗体濃度に依存して減少し、4C4と比較して31C4に強い活性が見られることが確認された。これらの結果は作製した抗ヒトDlk抗体が、Dlk抗原を発現する細胞に対してCDC活性を有することを示している。
【0075】
【表3.1】

【0076】
【表3.2】

【0077】
(7) 抗ヒトDlkモノクローナル抗体を用いたADCC活性
次に、ヒトDlkを発現しているHEK293(hdlk)をターゲット細胞、健常人末梢血単核球をエフェクター細胞として、作製した抗ヒトDlkモノクローナル抗体のADCC活性を測定した。
【0078】
96穴プレートを使い、HEK293またはHEK293(hdlk)細胞と抗ヒトDlkモノクローナル抗体(クローン1C1, 4C4, 31C4)およびヒト末梢血単核球を合わせて培養し、3日後にMTTアッセイによって各ウエルのターゲット細胞の傷害を測定した。この時、エフェクター:ターゲット比はそれぞれ20:1、10:1、5:1として培養した。エフェクター:ターゲット比が、10:1の時、HEK293(hdlk)細胞は、いずれの抗ヒトDlk抗体を添加しても、抗体非添加やコントロール抗体を添加した系と同様な活性を示し、HEK293細胞とも同様な活性だった(図9、表4)。また、エフェクター:ターゲット比がそれぞれ20:1、5:1の時でも、抗ヒトDlk抗体を添加した系でターゲット細胞は死滅しなかった。HEK293(hdlk)細胞の抗ヒトDlkモノクローナル抗体を介した、エフェクター細胞による傷害活性は観察されなかった。
【0079】
【表4】

【0080】
さらに、Huh-7EGFP細胞とHuh-7(hdlk)細胞(クローンPC14, PC16)を用いて抗体と補体による細胞傷害、すなわちCDC活性を測定した(図11、表5)。96穴プレートに細胞を播き、抗ヒトDlk抗体(クローン4C4, 31C4を5μg/mlで添加)と補体血清を加えて培養した。培養3日後、MTTアッセイによりターゲット細胞の傷害を測定した。Dlk抗体を添加したときのHuh-7(hdlk)細胞の傷害は、コントロールIgG抗体を添加した系に比較し、抗ヒトDlk抗体(クローン4C4, 31C4)と補体血清を添加した系で吸光度の値が低下し、生細胞が24-94%減少していた。しかし、Dlkを発現していないHuh-7EGFP細胞に対してはいずれの抗体も細胞傷害活性は示さなかった(図11A、表5A)。
【0081】
さらに、抗ヒトDlk抗体(クローン4C4, 31C4)を0.3, 1, 3, 5, 10μg/mlで添加した時のHuh-7(hdlk)細胞のCDC活性を検討した(図11B、表5B)。培養3日後のCDC活性をMTTアッセイによって測定すると、クローン4C4と31C4のいずれにおいても、濃度依存的にHuh-7(hdlk)細胞を死滅させた。
【0082】
【表5】

【0083】
抗ヒトDlkモノクローナル抗体は、ヒト肝癌由来の細胞株Huh-7細胞を補体依存的に死滅させる細胞傷害活性を示した。ヒト肝癌細胞の癌部にDlkの発現が認められることから、作製したモノクローナル抗体はDlkを発現している肝癌細胞を殺傷する治療抗体として有効である。また、抗ヒトDlkモノクローナル抗体クローン1C1は、現時点では、CDC活性、ADCC活性のいずれも認められていないが、実施例1の「2.結果(4) ヒト肝癌組織におけるヒトDlkの発現」に示したとおり、ヒト肝癌由来細胞株、および肝癌病理切片においてDlk抗原を強く認識すること、上記のとおり、ADCC活性、CDC活性はいずれも抗体の定常部(Fc)に依存することから、少なくとも定常部がヒトFc由来の抗体である、キメラ抗体やヒト化抗体を作成することにより、抗癌作用を発揮する抗dlkモノクローナル抗体作成することができる。
【0084】
(8) 抗ヒトモノクローナル抗体を用いたHuh-7(hdlk)細胞のFACS解析(Dlk発現量の確認)
実施例1の「1.材料と方法(9)FACS解析」に示した方法で、作製した抗ヒトDlkモノクローナル抗体を用いて、Huh-7EGFP細胞とHuh-7(hdlk)細胞(クローンPC14, PC16)のFACS解析を行った。ヒトDlkはHuh-7EGFP細胞では全く発現していなかったが、Huh-7(hdlk)細胞では強く発現していることが確認された(図10)。
【0085】
(9) ヒトDlk遺伝子発現による腫瘍形成能の促進
Dlkは、ヒト肝癌細胞株や肝癌組織で発現していることが明らかとなったが、Dlkの肝癌腫瘍形成における機能については不明であった。樹立したヒトDlkを安定に発現しているヒト肝癌由来細胞株Huh-7(hDlk)クローンPC14細胞のヌードマウス皮下における腫瘍形成をコントロール細胞(Huh-7 EGFP)と比較したところ、移植した5匹全ての個体において、クローンPC14細胞の著しい腫瘍の成長が観察された(図12A)。移植19日目のコントロール細胞由来の癌組織の体積は1271 + 427.5 (mm3) に対して、クローンPC14細胞由来の癌組織の体積は4319.4 + 378.5 (mm3) であった。クローンPC16細胞細胞についても同様に実験を行ったところ、やはりコントロール細胞と比較して、著しい腫瘍の成長が再現された(図12B)。以上の結果は、Dlkが肝癌の腫瘍形成を著しく促進させる機能を持っていることを示唆しており、Dlkが肝癌治療の標的として優れていることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の肝癌の検出方法及び肝癌診断薬は、肝癌の診断に有用である。本発明の癌治療薬は、肝癌等の癌の治療に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
dlk遺伝子の発現を指標とする、試料中の肝癌細胞の検出方法。
【請求項2】
細胞表面上に発現するdlkを測定することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞表面上に発現するdlkと、抗dlk抗体又はその抗原結合性断片との抗原抗体反応を利用する請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記抗dlk抗体が、モノクローナル抗体である請求項3記載の方法。
【請求項5】
FACS又はMACSにより行なう請求項2ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
dlk遺伝子のmRNAを測定することにより行なう請求項1記載の方法。
【請求項7】
mRNA又はそれに由来するcDNAを核酸増幅法により増幅することを含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
RT-PCRを行なうことを含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記肝癌細胞が、肝細胞癌細胞又は胆管細胞癌細胞である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記肝癌細胞がヒト肝癌細胞である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記肝癌細胞がヒト肝癌細胞であり、前記モノクローナル抗体が抗ヒトdlkモノクローナル抗体である請求項4記載の方法。
【請求項12】
生体から採取された血液中又は尿中に存在する、dlkの細胞外領域を測定することを含む肝癌の検出方法。
【請求項13】
血液中に存在するdlkの細胞外領域と、抗dlk抗体又はその抗原結合性断片との抗原抗体反応を利用する請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記抗dlk抗体が、モノクローナル抗体である請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記血液又は尿がヒト血液又はヒト尿であり、前記モノクローナル抗体が抗ヒトdlkモノクローナル抗体である請求項14記載の方法。
【請求項16】
dlkの細胞外領域と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を含む、肝癌診断薬。
【請求項17】
前記抗体が抗ヒトdlkモノクローナル抗体である請求項16記載の診断薬。
【請求項18】
dlk遺伝子のmRNA又はcDNAとハイブリダイズし、dlk遺伝子のmRNA又はcDNAを測定するためのプライマー又はプローブとして利用できる核酸から成る、肝癌検出用核酸。
【請求項19】
dlk遺伝子のmRNA又はcDNAの一部領域と相補的な塩基配列又は該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列であって15塩基以上のサイズの領域を含む請求項18記載の核酸。
【請求項20】
dlk遺伝子のmRNA又はcDNAの一部領域と相補的な塩基配列であって15塩基以上のサイズの領域を含む請求項19記載の核酸。
【請求項21】
dlkの細胞外領域と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片の、肝癌診断薬の製造のための使用。
【請求項22】
前記抗体が抗ヒトdlkモノクローナル抗体である請求項21記載の使用。
【請求項23】
dlk遺伝子のmRNA又はcDNAとハイブリダイズし、dlk遺伝子のmRNA又はcDNAを測定するためのプライマー又はプローブとして利用できる核酸の、肝癌検出用試薬の製造のための使用。
【請求項24】
dlk遺伝子のmRNA又はcDNAの一部領域と相補的な塩基配列又は該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列であって15塩基以上のサイズの領域を含む請求項23記載の使用。
【請求項25】
dlk遺伝子のmRNA又はcDNAの一部領域と相補的な塩基配列であって15塩基以上のサイズの領域を含む請求項24記載の使用。
【請求項26】
癌細胞表面上に発現しているDlkと抗原抗体反応する抗体であって、該癌細胞に対して抗癌作用を発揮する抗体を有効成分として含有する癌治療薬。
【請求項27】
前記癌細胞が、肝癌細胞である請求項26記載の癌治療薬。
【請求項28】
前記肝癌細胞が、肝細胞癌細胞又は胆管細胞癌細胞である請求項26又は27記載の癌治療薬。
【請求項29】
前記抗体がモノクローナル抗体である請求項26ないし28のいずれか1項に記載の癌治療薬。
【請求項30】
前記癌細胞がヒト細胞であり、前記抗体が抗ヒトDlk抗体である請求項26ないし29のいずれか1項に記載の癌治療薬。
【請求項31】
前記抗体は、補体の存在下において抗癌作用を発揮するものである請求項26ないし30のいずれか1項に記載の癌治療薬。
【請求項32】
癌細胞表面上に発現しているDlkと抗原抗体反応する抗体であって、該癌細胞に対して抗癌作用を発揮する抗体の有効量を癌患者に投与することを含む、癌の治療方法。
【請求項33】
前記癌細胞が、肝癌細胞である請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記肝癌細胞が、肝細胞癌細胞又は胆管細胞癌細胞である請求項32又は33記載の方法。
【請求項35】
前記抗体がモノクローナル抗体である請求項32ないし34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記癌細胞がヒト細胞であり、前記抗体が抗ヒトDlk抗体である請求項32ないし35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体は、補体の存在下において抗癌作用を発揮するものである請求項32ないし36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
癌細胞表面上に発現しているDlkと抗原抗体反応する抗体であって、該癌細胞に対して抗癌作用を発揮する抗体の、癌治療薬の製造のための使用。
【請求項39】
前記癌細胞が、肝癌細胞である請求項38記載の使用。
【請求項40】
前記肝癌細胞が、肝細胞癌細胞又は胆管細胞癌細胞である請求項38又は39記載の使用。
【請求項41】
前記抗体がモノクローナル抗体である請求項38ないし40のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
前記癌細胞がヒト細胞であり、前記抗体が抗ヒトDlk抗体である請求項38ないし41のいずれか1項に記載の使用。
【請求項43】
前記抗体は、補体の存在下において抗癌作用を発揮するものである請求項38ないし42のいずれか1項に記載の使用。


【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【国際公開番号】WO2005/052156
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515795(P2005−515795)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017499
【国際出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】