説明

肝細胞癌の診断方法

【課題】肝細胞癌の診断方法、およびヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出方法を提供すること。
【解決手段】ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体とを組み合わせて用いてサンドイッチ酵素免疫測定(ELISA)法を行うことを含む、ヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出方法、並びに肝細胞癌の診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞癌の90%は肝硬変からの進展であり、自覚症状や他覚症状は進行した肝硬変の症状と同一である。つまり全身倦怠感、易疲労感、食欲不振、やせ、腹痛、微熱などのほかの病気でもみられる漠然とした症状がみられるのみであり、早期診断はきわめてむずかしい。
【0003】
慢性肝炎患者のうち、肝臓の繊維化が強い症例では肝細胞癌の発症率が高いことが知られている。このため腹壁を切開して腹腔鏡による観察や肝臓組織を採取する肝生検などが行われるが、患者に対する負担はきわめて大きい。一方、血清を用いたモニター法は、患者に対する負担が少なく簡便なので、スクリーニング方法として極めて有効である。血清中のαフェト蛋白(AFP)レベルは肝細胞癌のマーカーとして利用されているが、著しい高値を示す場合以外は慢性肝炎との鑑別が困難である。AFPのうちフコースという糖鎖が付加したものは肝細胞癌に対する特異性が高い優れたマーカーであるが、フコースの付加を検出するためにレクチン電気泳動法を行う必要があり多検体のスクリーニングが難しい。その他にもdes-gamma-carboxy-prothrombin (DCP), CA 125, interleukin-2 receptor (IL-2R), human cervical cancer oncogene protein (HCCR), glypican-3 (GPC3)などのマーカーの利用がこころみられているが、ひろく臨床応用されるには至っていない。
【0004】
他方、β−セクレターゼとシアル酸転移酵素とを接触させた後に、β−セクレターゼの酵素活性により切断されたラット由来の分泌型シアル酸転移酵素を、該酵素を特異的に認識する抗体を用いて検出又は測定することによってβ−セクレターゼのシアル酸転移酵素切断活性を測定する方法が報告されている(特開2003−334071号公報)。特開2003−334071号公報にも記載されている通り、ラット血清中のα2,6シアル酸転移酵素(βセクレターゼ産物)を定量する方法は開発されていたが、ヒトとラットでは切断部位近傍のアミノ酸配列が異なるために、従来の方法ではヒト試料の定量は困難であった。
【0005】
また、ヒトβセクレターゼがラットα2,6シアル酸転移酵素を切断することが知られている。この切断によって生じた産物である可溶性のシアル酸転移酵素を検出する抗体は、新たに生じたN-末端(切断端)を特異的に認識する抗体であり、この抗体を用いることにより試験管内あるいは培養細胞実験レベルにおいてはβセクレターゼ活性を評価することが可能であった。このような抗体を用いたアルツハイマー病の診断方法も報告されている(国際公開WO2005/047897)。
【0006】
【非特許文献1】S.Kitazume, Tachida Y, Oka R, Shirotani K, Saido TC and Hashimoto Y: Alzheimer's beta-secretase, beta-site amyloid precursor protein-cleaving enzyme, is responsible for cleavage secretion of a Golgi-resident sialyltransferase. Proceedings of the National Academy of Sciences, USA, 98(24):13554-13559, 2001, Nov. 20
【非特許文献2】S. Kitazume, R. Oka, Y. Tachida, K. Ogawa, K. Nakagawa, Y. Luo, M. Citron, H. Shitara, C. Taya, H. Yonekawa, J.C. Paulson, E. Miyoshi, N. Taniguchi and Y. Hashimoto, "In vivo cleavage of alpha2,6-sialyltransferase by Alzheimer's beta-secretase (BACE1)," J. Biol. Chem., 280, 8589- 8595 (2005)
【非特許文献3】S. Kitazume, T.C. Saido and Y. Hashimoto, "Alzheimer's beta-secretasae cleaves a glycosyltransferase as a physiological substrate," Glycocojugate J., 20, 59-62 (2004)
【非特許文献4】S. Kitazume, Y. Tachida, R. Oka, N. Kotani, K. Ogawa, M. Suzuki, N. Dohmae, K. Takio, T.C. Saido and Y. Hashimoto, "Characterization of alpha2,6-sialyltransferase cleavage by Alzheimer's beta-secretase (BACE1)," J. Biol. Chem., 278, 14865-14871 (2003)
【非特許文献5】J. B. Lopez "Recent Developments in the First Detection of Hepatocellular Carcinoma" Clin Biochem Rev. 2005 August; 26(3): 65-79.
【特許文献1】特開2003-334071号公報
【特許文献2】国際公開WO2005/047897
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
日本における肝疾患患者は200万人に達し、そのうち10〜20%は肝硬変を経て肝細胞癌を発症する。肝硬変の患者数は約20万人と推定されており、年間約1万6000人が死亡している。肝硬変患者のうち、肝細胞癌の発症を早期に診断することは、患者の救命の観点から非常に重要である。本発明は、肝細胞癌の診断方法を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、ヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、シアル酸転移酵素に対する2種類以上の特異的な抗体を作製し、血清中のヒトα2,6シアル酸転移酵素(ST6Gal I)を定量するためのサンドイッチELISA法を開発した。即ち、本発明者らは、ヒト転移酵素のC末端側に近いアミノ酸配列に対する抗体(STC抗体)およびこの配列よりN末端側にあるアミノ酸配列に対する2種類の抗体(M1抗体およびM2抗体)を作製した(図1)。さらに本発明者らは、肝臓から血清中へ分泌されるα2,6シアル酸転移酵素を高感度に定量する方法を開発し、その病理的意義を検討した。肝細胞癌発症例では正常コントロールや肝硬変患者に比べてα2,6シアル酸転移酵素が有意に増加することを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0009】
即ち、本発明によれば、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体とを組み合わせて用いてサンドイッチ酵素免疫測定(ELISA)法を行うことを含む、ヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出方法が提供される。
【0010】
好ましくは、本発明によるヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出方法は、(1)ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を固定化した固相にヒトα2,6シアル酸転移酵素を含む試料を接触させて上記抗体にヒトα2,6シアル酸転移酵素を結合させる工程:及び(2)上記工程(1)で結合したヒトα2,6シアル酸転移酵素にヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を反応させて、結合したヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出する工程を含む。
【0011】
本発明の別の側面によれば、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、ヒト由来の試料に含まれるヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定することを含む、肝細胞癌の診断方法が提供される。
【0013】
好ましくは、本発明による肝細胞癌の診断方法においては、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を用いてヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定する。
【0014】
好ましくは、本発明による肝細胞癌の診断方法においては、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体とを組み合わせて用いてサンドイッチ酵素免疫測定(ELISA)法を行うことによってヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定する。
【0015】
好ましくは、本発明による肝細胞癌の診断方法においては、(1)ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を固定化した固相にヒトα2,6シアル酸転移酵素を含む試料を接触させて上記抗体にヒトα2,6シアル酸転移酵素を結合させる工程:及び(2)上記工程(1)で結合したヒトα2,6シアル酸転移酵素にヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を反応させて、結合したヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出する工程によってヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定する。
【0016】
好ましくは、ヒト由来の試料は血清、血漿あるいは胆汁などの体液である。
【0017】
本発明のさらに別の側面によれば、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体とを少なくとも含む、肝細胞癌の診断キットが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、肝臓から血清中へ分泌されるα2,6シアル酸転移酵素を特異的かつ高感度に定量する方法が提供される。さらに本発明の肝細胞癌の診断方法によれば、肝細胞癌の早期診断が可能となり、肝細胞癌患者の救命が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(1)ヒトα2,6シアル酸転移酵素を認識する抗体、及びそれを用いたヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出方法
本発明によるヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出方法は、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体とを組み合わせて用いてサンドイッチ酵素免疫測定(ELISA)法を行うことを特徴とする方法である。
【0020】
より具体的には、ELISA用のプレートに予め配列番号3で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体をコートしておき、試料中のヒトα2,6シアル酸転移酵素をプレート上にトラップする。よく洗浄した後に、トラップされたヒトα2,6シアル酸転移酵素を、配列番号1又は配列番号2で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と反応させる。ここで用いる配列番号1又は配列番号2で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体としては、ホースラディッシュ・パーオキシダーゼなどの標識でラベルした抗体を用いることができる。ヒトα2,6シアル酸転移酵素を、配列番号1又は配列番号2で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と反応させた後に、発色基質を加えて発色させ、その濃度を吸光光度計を用いて測定することができる。あらかじめ既知の濃度のヒトα2,6シアル酸転移酵素を含む標準試料によって検量線作製しておき、これによって定量値を算出することができる。
【0021】
上記の通り本発明の好ましい態様によれば、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を捕捉(capture)抗体として固定化した固相にヒトα2,6シアル酸転移酵素を含む試料を接触させて上記抗体にヒトα2,6シアル酸転移酵素を結合させ、次いで、上記工程において固相に捕捉されたヒトα2,6シアル酸転移酵素にヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を反応させて、固相に捕捉されたヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出することによって、ヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出を行うことができる。
【0022】
本発明はさらに、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体にも関する。本発明の抗体は、例えば、アミノ酸配列Ser-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はアミノ酸配列Asn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)を有するペプチドを、ウシ血清サイログロブリンに結合させた複合体を抗原として動物に免疫することにより得ることができる。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の何れでもよい。本発明の抗体の作製は常法により行なうことができる。
【0023】
例えば、上記した配列番号1又は配列番号2で表されるアミノ酸配列を認識することができるポリクローナル抗体は、上記したアミノ酸配列を有するペプチドを抗原として哺乳動物を免疫感作し、該哺乳動物から血液を採取し、採取した血液から抗体を分離・精製することにより得ることができる。例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ラット、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ等の哺乳動物を免疫することができる。免疫感作の方法としては、当業者に公知の通常の免疫感作の方法を用いて、例えば抗原を1回以上投与することにより行うことができる。
【0024】
抗原投与は、例えば、7から30日、特に12から16日間隔で2または3回投与することができる。投与量は1回につき、例えば抗原約0.05から2mg程度を目安とすることができる。投与経路も特に限定されず、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与等を適宜選択することができるが、静脈内、腹膜腔内もしくは皮下に注射することにより投与することが好ましい。また、抗原は適当な緩衝液、例えば完全フロイントアジュバント、RAS〔MPL(Monophosphoryl Lipid A)+TDM(Synthetic Trehalose Dicorynomycolate)+CWS(Cell Wall Skeleton) アジュバントシステム〕 、水酸化アルミニウム等の通常用いられるアジュバントを含有する適当な緩衝液に溶解して用いることができるが、投与経路や条件等によっては、上記したアジュバントは使用しない場合もある。ここでアジュバントとは抗原とともに投与したとき、非特異的にその抗原に対する免疫反応を増強する物質を意味する。
【0025】
免疫感作した哺乳動物を0.5から4ケ月間飼育した後、該哺乳動物の血清を耳静脈等から少量サンプリングし、抗体価を測定することができる。抗体価が上昇してきたら、状況に応じて抗原の投与を適当回数実施する。例えば10μg〜1000μgの抗原を用いて追加免疫を行なうことができる。最後の投与から1〜2ケ月後に免疫感作した哺乳動物から通常の方法により血液を採取して、56℃で30分間処理して補体系を不活性化した後、アフィニティークロマトグラフィーで特異抗体の精製を行なう。アフィニティー担体としては、例えば、抗原ペプチドをAffigelなどに固相化したものを用いることができる。該血液を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールを用いた沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の通常の方法によって分離・精製することにより、ポリクローナル抗血清として、本発明のポリクローナル抗体を得ることができる。なお血清は、たとえば、56℃で30分間処理することによって補体系を不活性化してもよい。
【0026】
本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞株は特に制限されないが、例えば、抗体産生細胞とミエローマ細胞株との細胞融合によりハイブリドーマとして得ることができる。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、以下のような細胞融合法によって得ることができる。
【0027】
抗体産生細胞としては、免疫された動物からの脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等を使用する。抗原としては、ポリクローナル抗体の場合と同様のペプチド(即ち、配列番号1又は配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するペプチド)を使用することができる。免疫される動物としてはマウス、ラット等が使用され、これらの動物への抗原の投与は常法に従って行う。例えば完全フロインドアジュバント、不完全フロインドアジュバントなどのアジュバントと抗原ペプチドとの懸濁液もしくは乳化液を調製し、これを動物の静脈、皮下、皮内、腹腔内等に数回投与することによって動物を免疫化する。免疫化した動物から抗体産生細胞として例えば脾細胞を取得し、これとミエローマ細胞とをそれ自体公知の方法(G.Kohler et al .,Nature,256 495(1975))により融合することにより、ハイブリドーマを作製することができる。
【0028】
細胞融合に使用するミエローマ細胞株としては、例えばマウスではP3X63Ag8、P3U1株、Sp2/0株などが挙げられる。細胞融合を行なうに際しては、ポリエチレングリコール、センダイウイルスなどの融合促進剤を用い、細胞融合後のハイブリドーマの選抜にはヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地を常法に従って使用することができる。細胞融合により得られたハイブリドーマは限界希釈法等によりクローニングすることができる。更に、酵素免疫測定法等によりスクリーニングを行なうことにより、ヒトα2,6シアル酸転移酵素を特異的に認識することができるモノクローナル抗体を産生する細胞株を得ることができる。
【0029】
このようにして得られたハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造するには、通常の細胞培養法や腹水形成法により該ハイブリドーマを培養し、培養上清あるいは腹水から該モノクローナル抗体を精製すればよい。培養上清もしくは腹水からのモノクローナル抗体の精製は、常法により行なうことができる。例えば、硫安分画、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて使用できる。
【0030】
また、本発明の抗体がモノクローナル抗体の場合、該モノクローナル抗体のグロブリンタイプは特に限定されず、例えばIgG、IgM、IgA、IgE、IgD等が挙げられる。また、本発明のモノクローナル抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体でもよい。
【0031】
また、上記したような各種抗体の断片も本発明の範囲内である。抗体の断片としては、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント等が挙げられる。
【0032】
本発明によるサンドイッチELISAによるヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出方法においては、本発明の抗体は、標識抗体として使用することができる。標識抗体を作製することにより、ヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出や測定を簡便に行うことができる。また、本発明の抗体と結合する二次抗体を標識して使用することもできる。本発明の抗体またはその二次抗体の標識の種類及び標識方法は当業者に知られているものから適宜選択することができる。
【0033】
標識として酵素を使用する場合には、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、炭酸アンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、マレートデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ等を標識として使用することができる。これらの酵素を本発明の抗体又はその二次抗体又はその断片(F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント等)に標識する方法としては、酵素の糖鎖を過ヨウ素酸で酸化し、生成したアルデヒド基に該抗体などのアミノ酸を結合させる方法や、酵素にマレイミド基あるいはピリジルスルフィド基等を導入し、該抗体のFab’フラグメントに存在するチオール基と結合させる方法等を挙げることができる。
【0034】
標識として酵素を使用する場合、試験試料と標識抗体とをインキュベートした後、遊離した標識抗体を洗浄して除去してから、上記の標識酵素の基質を作用させて発色等で反応を測定することによって標識抗体を検出することができる。例えば、ペルオキシダーゼで標識される場合には、基質として過酸化水素、発色試薬としてジアミノベンジジンまたはO−フェニレンジアミンと組み合わさって褐色または黄色を生じる。グルコースオキシダーゼで標識される場合には、基質として、たとえば2,2’ −アシド−ジ−(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)等を用いることができる。
【0035】
標識として蛍光色素を使用する場合には、例えば、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)又はTRITC(テトラメチルローダミンBイソチオシアネート)等の蛍光色素で本発明の抗体又はその二次抗体を標識することができる。本発明の抗体又はその二次抗体と蛍光色素との結合は常法によって行うことができる。
【0036】
標識として呈色標識物質を使用する場合には、例えば、コロイド金属および着色ラテックスなどを標識として使用できる。コロイド金属の代表例としては、金ゾル、銀ゾル、セレンゾル、テルルゾルおよび白金ゾルなどのそれぞれの分散粒子である金属コロイド粒子を挙げることができる。コロイド金属の粒子の大きさは、通常は、直径3〜60nm程度とされる。また、着色ラテックスの代表例としては、赤色および青色などのそれぞれの顔料で着色されたポリスチレンラテックスなどの合成ラテックスを挙げることができる。ラテックスとして天然ゴムラテックスのような天然ラテックスを使用することができる。着色ラテックスの大きさは、直径数十nm〜数百nm程度から選択することができる。これらの呈色標識物質は市販品をそのまま使用することができるが、場合によりさらに加工し、または、それ自体公知の方法で製造することもできる。
【0037】
本発明の抗体又はその二次抗体と呈色標識物質との結合は常法によって行うことができる。例えば、呈色標識物質が金ゾルの分散粒子である金コロイド粒子の場合には、通常は、抗体と金ゾルとを室温下で混合することによって両者を物理的に結合することが可能である。
【0038】
なお、標識としては、上記以外にもアフィニティー標識(例えば、ビオチン等)、又は、同位体標識(例えば、125I等)等を使用することもできる。
【0039】
本発明の抗体を用いたヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出又は測定は、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降、スロット或いはドットブロットアッセイ、免疫組織染色、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ、アビジン−ビオチン又はストレプトアビジン−ビオチン系を用いるイムノアッセイなどにより行うことができ、これらの分析は当業者に周知の方法である。
【0040】
(2)肝細胞癌の診断方法
本発明による肝細胞癌の診断方法は、ヒト由来の試料に含まれるヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定することを特徴とする方法である。本発明の方法により、ヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定することにより、肝細胞癌の診断(発症危険度の予測などを含む)を行うことができる。
【0041】
本発明の診断方法の一例においては、被験者由来の試料中に存在するヒトα2,6シアル酸転移酵素の量を、対照被験者の試料中に存在するヒトα2,6シアル酸転移酵素の量と比較することにより、肝細胞癌の診断を行うことができる。
【0042】
ヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出又は測定は、ヒトα2,6シアル酸転移酵素を特異的に認識する抗体を用いるイムノアッセイにより行うことができる。即ち、ヒトα2,6シアル酸転移酵素と上記抗体との結合の分析は、上記抗体、あるいは上記抗体と結合する二次抗体に酵素標識、発色標識、放射標識又は発光標識などの標識を結合し、この標識を検出又は測定することにより行うことができる。本発明で行うことができるイムノアッセイとしては、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降、スロット或いはドットブロットアッセイ、免疫組織染色、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ、アビジン−ビオチン又はストレプトアビジン−ビオチン系を用いるイムノアッセイなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
好ましくは、本明細書中に上記したような、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体とを組み合わせて用いるサンドイッチ酵素免疫測定(ELISA)法によってヒト由来の試料に含まれるヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定し、これにより肝細胞癌の診断を行うことができる。
【0044】
本発明による肝細胞癌の診断方法においては、ヒト由来の試料を使用することができる。ヒト由来の試料としては、ヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定できる試料であれば特に限定されず、血清、血漿、尿あるいは胆汁などの体液を使用することもできるが、好ましくは血清を使用することができる。
【0045】
また、本発明による肝細胞癌の診断方法においては、他の肝細胞癌のマーカーの測定を併用することもできる。本発明において併用することができる肝細胞癌のマーカーとしては、αフェト蛋白(AFP)、PIVKA IIなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
(3)肝細胞癌の診断キット
さらに本発明は、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体とを少なくとも含む、肝細胞癌の診断キットにも関する。本発明の診断キットを用いることにより、ヒト由来の試料に含まれるヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定することができ、これにより肝細胞癌を診断することができる。
【0047】
本発明の診断キットにおいては、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体はあらかじめ固相化されていてもよい。また、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体は、予め標識されていてもよい。本発明の診断キットにおいて用いることができる固相としては特に限定されず、例えば、ポリスチレン等のポリマー、ガラスビーズ、磁性粒子、マイクロプレート、イムノクロマトグラフィー用濾紙、グラスフィルター等の不溶性担体を挙げることができる。
【0048】
本発明の診断キットには、更に他の任意成分を含めることができる。他の任意成分としては、例えば、標識に用いる酵素、その基質、放射性同位元素、発光物質、蛍光物質、着色物質、緩衝液、プレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
また、本発明の診断キットの形態も特に限定されないが、迅速かつ簡便に診断を行うことを目的として、本発明の診断キットの構成成分が一体となった一体型の診断キットとすることができる。
【0050】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
(1)材料
DMEM及びLipofectin等の組織培養培地及び試薬はInvitrogenから購入した。DNA精製用カラムはQiagenから得た。タンパク質分子量標準はBio-Radから購入した。
【0052】
(2)抗体の作製
抗原合成ペプチドとしては、Ser-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、Asn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)、及びCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを使用した。それぞれの抗原合成ペプチドをマレイミド法でウシ血清サイログロブリンに結合する。この抗原(100 micro gram)をFreund complete adjuvantと混合してウサギの皮下および皮内に免疫する。追加免疫のために抗原(100micro gram)をFreund incomplete adjuvantとともに2週ごとに8回皮下および皮内に接種する。得られた抗血清を抗原アフィニティカラムで精製する。アフィニティーカラムは抗原ペプチドをActivated Thiol Sepharose4Bゲルに結合したものである。D-PBSバッファーで吸着後、0.2Mグリシンバッファー(pH2.5)で溶出する。これよって特異性の高いポリクローナル抗体を得た。
【0053】
(3)細胞培養およびトランスフェクション
一過性トランスフェクション実験のために、ヒト、ラット、マウスST6Gal I-pSVL及びST6Gal I FLAG-pSVLを既報の通り構築した(Kitazume-Kawaguchi,他、(1999) Glycobiology 9, 1397-1406)。
【0054】
DMEM/10%FBS中で維持したCOS-7を100mm組織培養皿上に播種し、37℃の5% CO2インキュベーター内で50〜70%コンフルエントになるまで生育させた。Lipofectin法およびOpti-MEM Iを用いて細胞をトランスフェクションした(Colley, K., 他、(1992) J. Biol. Chem. 267, 7784-7793)。トランスフェクションしたタンパク質の発現は典型的には16〜36時間持続させた。培地中の可溶性シアル酸転移酵素-FLAGタンパク質をM2アガロース(Sigma)を用いて沈降させた。
【0055】
(4)ウエスタンブロット法
沈降させたM2アガロースゲルをLaemmli緩衝液中にとり、4〜20%勾配SDS/PAGEに付し、ニトロセルロース膜に移した。ブロットした膜をそれぞれの精製ポリクローナル抗体(1:500)と一緒にインキュベートし、適当な2次抗体、HRP標識抗ウサギIgG(Cappel)とインキュベートし、化学発光基質(Pierce)を用いて可視化した。図2に示されるようにこれらの抗体は可溶性分泌型シアル酸転移酵素に対して高い反応性を示した。
【0056】
(5)サンドイッチELISA法の開発
M2抗体とSTC抗体を用いてサンドイッチELISA法を開発した。ELISA用のプレートにあらかじめSTC抗体(2 micro gram/ウェル)を固相化しておき、血清(10〜20 micro liter)を加えて37度で1時間インキュベーションすることによりシアル酸転移酵素を選択的にトラップする。phosphate buffered saline (PBS)などの洗浄液で7回洗浄する。horse radish peroxidate(HRP)でラベル化したM2抗体のFab フラグメントとともに4度で30分間インキュベーションする。(ラベル化Fabフラグメントはマレイミド法でHRPと結合しゲル濾過法にて精製した。)洗浄液で9回洗浄した後にHRPの発色基質(TMB: Tetra Methyl Benzidineなど)を加えて発色させたのち、1規定硫酸で反応を停止する。発色度を吸光光度計を用いて測定する。既知の濃度のα2,6シアル酸転移酵素含む標準試料によってあらかじめ検量線を作製しておき、これによって定量値を算出する(図3)。ラット血清中のα2,6シアル酸転移酵素(βセクレターゼ産物)を定量する類似の方法は既報である(特開2003-334071号公報)。しかし、ヒトとラットでは切断部位近傍のアミノ酸配列が異なるために従来の方法ではヒト試料の定量は困難であった。今回の方法によりはじめてヒト血清中のα2,6シアル酸転移酵素量を正確に測定することが可能となった。従来も酵素の活性量を指標としてα2,6シアル酸転移酵素量を推測する方法は存在したが、この方法では酵素活性を失った転移酵素の存在を検出することができない。また、活性測定のためには放射性アイソトープでラベルされた糖供与体(CMP-シアル酸)を用いた煩雑な実験操作が必要であり、スクリーニング方法として利用するのは困難である。さらに、血清中には同じ糖供与体(CMP-シアル酸)を基質とするα2,3シアル酸転移酵素が存在し、α2,6シアル酸転移酵素の活性との区別には複雑な実験操作が必要である。すなわち、本発明によって血清α2,6シアル酸転移酵素のタンパク質量を簡便に測定することが可能となり、肝細胞癌の新たなスクリーニング法が開発された。
【0057】
(6)肝疾患患者の血清中α2,6シアル酸転移酵素レベルの定量)
STC抗体とHRP-ラベル化M2 Fab フラグメントを用いた実施例(測定例)を示す(図4)。正常コントロールに比べて肝硬変患者で若干の増加が認められるが、有意差は認められない。一方、肝細胞癌発症例では有意に増加することがしめされた(p = 0.013)。
【0058】
また、慢性肝炎患者の非活動型および活動型(肝障害マーカーとしてのALT値の上昇を示す症例)それぞれ30および36例の血清ST6Gal I値は正常コントロールと同程度であった。この結果はST6Gal I値が肝障害マーカーであるALT値とは異なる動態を示すこと、また前癌状態である肝硬変から肝細胞癌への移行を示す有力なマーカーになりうることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列(配列表の配列番号4)、ラットα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列(配列表の配列番号5)、及びマウスα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列(配列表の配列番号6)をそれぞれ示す。C末端側に近いアミノ酸配列に対する抗体(STC抗体)およびこの配列よりN末端側にあるアミノ酸配列に対する2種類の抗体(M1抗体およびM2抗体)を作製した。
【図2】図2は、ウエスタンブロットの結果を示す。三角印示されるようにこれらの抗体はMouse, Rat, Humanの可溶性分泌型シアル酸転移酵素に対して高い反応性を示した。
【図3】図3は、本発明のサンドイッチELISA法を示す。STC抗体をプレートに固相化しcapture抗体として血清中のシアル酸転移酵素を選択的にトラップした。その後ラベル化Fab フラグメント(M2抗体由来)を用いて定量を行った。標準試料による検量線を右側に示した。
【図4】図4は肝疾患における血清ST6Gal Iの測定値を示す。STC抗体とHRP-ラベル化M2 Fab フラグメントを用いた実施例(測定例)を示す。正常コントロール(6例)に比べて肝硬変患者(30例)で若干の増加が認められるが、有意差は認められない。一方、肝細胞癌発症例(29例)では有意に増加することがしめされた。バーにより標準偏差を示した。
【配列表フリーテキスト】
【0060】
[配列表]
SEQUENCE LISTING
<110> RIKEN
<120> A method for diagnosing hepatocellular carcinoma
<130> A61401A
<160> 6
<210> 1
<211> 15
<212> PRT
<213> human
<400> 1
Ser Ser Ala Gly Ser Leu Lys Ser Ser Gln Leu Gly Arg Glu Ile
1 5 10 15
<210> 2
<211> 16
<212> PRT
<213> human
<400> 2
Asn Ser Gln Leu Val Thr Thr Glu Lys Arg Phe Leu Lys Asp Ser Leu
1 5 10 15
<210> 3
<211> 18
<212> PRT
<213> human
<400> 3
Cys Asp Gln Val Asp Ile Tyr Glu Phe Leu Pro Ser Lys Arg Lys Thr
1 5 10 15
Asp Val

<210> 4
<211> 406
<212> PRT
<213> human
<400> 4
Met Ile His Thr Asn Leu Lys Lys Lys Phe Ser Cys Cys Val Leu Val
1 5 10 15
Phe Leu Leu Phe Ala Val Ile Cys Val Trp Lys Glu Lys Lys Lys Gly
20 25 30
Ser Tyr Tyr Asp Ser Phe Lys Leu Gln Thr Lys Glu Phe Gln Val Leu
35 40 45
Lys Ser Leu Gly Lys Leu Ala Met Gly Ser Asp Ser Gln Ser Val Ser
50 55 60
Ser Ser Ser Thr Gln Asp Pro His Arg Gly Arg Gln Thr Leu Gly Ser
65 70 75 80
Leu Arg Gly Leu Ala Lys Ala Lys Pro Glu Ala Ser Phe Gln Val Trp
85 90 95
Asn Lys Asp Ser Ser Ser Lys Asn Leu Ile Pro Arg Leu Gln Lys Ile
100 105 110
Trp Lys Asn Tyr Leu Ser Met Asn Lys Tyr Lys Val Ser Tyr Lys Gly
115 120 125
Pro Gly Pro Gly Ile Lys Phe Ser Ala Glu Ala Leu Arg Cys His Leu
130 135 140
Arg Asp His Val Asn Val Ser Met Val Glu Val Thr Asp Phe Pro Phe
145 150 155 160
Asn Thr Ser Glu Trp Glu Gly Tyr Leu Pro Lys Glu Ser Ile Arg Thr
165 170 175
Lys Ala Gly Pro Trp Gly Arg Cys Ala Val Val Ser Ser Ala Gly Ser
180 185 190
Leu Lys Ser Ser Gln Leu Gly Arg Glu Ile Asp Asp His Asp Ala Val
195 200 205
Leu Arg Phe Asn Gly Ala Pro Thr Ala Asn Phe Gln Gln Asp Val Gly
210 215 220
Thr Lys Thr Thr Ile Arg Leu Met Asn Ser Gln Leu Val Thr Thr Glu
225 230 235 240
Lys Arg Phe Leu Lys Asp Ser Leu Tyr Asn Glu Gly Ile Leu Ile Val
245 250 255
Trp Asp Pro Ser Val Tyr His Ser Asp Ile Pro Lys Trp Tyr Gln Asn
260 265 270
Pro Asp Tyr Asn Phe Phe Asn Asn Tyr Lys Thr Tyr Arg Lys Leu His
275 280 285
Pro Asn Gln Pro Phe Tyr Ile Leu Lys Pro Gln Met Pro Trp Glu Leu
290 295 300
Trp Asp Ile Leu Gln Glu Ile Ser Pro Glu Glu Ile Gln Pro Asn Pro
305 310 315 320
Pro Ser Ser Gly Met Leu Gly Ile Ile Ile Met Met Thr Leu Cys Asp
325 330 335
Gln Val Asp Ile Tyr Glu Phe Leu Pro Ser Lys Arg Lys Thr Asp Val
340 345 350
Cys Tyr Tyr Tyr Gln Lys Phe Phe Asp Ser Ala Cys Thr Met Gly Ala
355 360 365
Tyr His Pro Leu Leu Tyr Glu Lys Asn Leu Val Lys His Leu Asn Gln
370 375 380
Gly Thr Asp Glu Asp Ile Tyr Leu Leu Gly Lys Ala Thr Leu Pro Gly
385 390 395 400
Phe Arg Thr Ile His Cys
405
<210> 5
<211> 403
<212> PRT
<213> rat
<400> 5
Met Ile His Thr Asn Leu Lys Lys Lys Phe Ser Leu Phe Ile Leu Val
1 5 10 15
Phe Leu Leu Phe Ala Val Ile Cys Val Trp Lys Lys Gly Ser Asp Tyr
20 25 30
Glu Ala Leu Thr Leu Gln Ala Lys Glu Phe Gln Met Pro Lys Ser Gln
35 40 45
Glu Lys Val Ala Met Gly Ser Ala Ser Gln Val Val Phe Ser Asn Ser
50 55 60
Lys Gln Asp Pro Lys Glu Asp Ile Pro Ile Leu Ser Tyr His Arg Val
65 70 75 80
Thr Ala Lys Val Lys Pro Gln Pro Ser Phe Gln Val Trp Asp Lys Asp
85 90 95
Ser Thr Tyr Ser Lys Leu Asn Pro Arg Leu Leu Lys Ile Trp Arg Asn
100 105 110
Tyr Leu Asn Met Asn Lys Tyr Lys Val Ser Tyr Lys Gly Pro Gly Pro
115 120 125
Gly Val Lys Phe Ser Val Glu Ala Leu Arg Cys His Leu Arg Asp His
130 135 140
Val Asn Val Ser Met Ile Glu Ala Thr Asp Phe Pro Phe Asn Thr Thr
145 150 155 160
Glu Trp Glu Gly Tyr Leu Pro Lys Glu Asn Phe Arg Thr Lys Val Gly
165 170 175
Pro Trp Gln Arg Cys Ala Val Val Ser Ser Ala Gly Ser Leu Lys Asn
180 185 190
Ser Gln Leu Gly Arg Glu Ile Asp Asn His Asp Ala Val Leu Arg Phe
195 200 205
Asn Gly Ala Pro Thr Asp Asn Phe Gln Gln Asp Val Gly Ser Lys Thr
210 215 220
Thr Ile Arg Leu Met Asn Ser Gln Leu Val Thr Thr Glu Lys Arg Phe
225 230 235 240
Leu Lys Asp Ser Leu Tyr Thr Glu Gly Ile Leu Ile Val Trp Asp Pro
245 250 255
Ser Val Tyr His Ala Asp Ile Pro Lys Trp Tyr Gln Lys Pro Asp Tyr
260 265 270
Asn Phe Phe Glu Thr Tyr Lys Ser Tyr Arg Arg Leu Asn Pro Ser Gln
275 280 285
Pro Phe Tyr Ile Leu Lys Pro Gln Met Pro Trp Glu Leu Trp Asp Ile
290 295 300
Ile Gln Glu Ile Ser Ala Asp Leu Ile Gln Pro Asn Pro Pro Ser Ser
305 310 315 320
Gly Met Leu Gly Ile Ile Ile Met Met Thr Leu Cys Asp Gln Val Asp
325 330 335
Ile Tyr Glu Phe Leu Pro Ser Lys Arg Lys Thr Asp Val Cys Tyr Tyr
340 345 350
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355 360 365
Leu Leu Phe Glu Lys Asn Met Val Lys His Leu Asn Glu Gly Thr Asp
370 375 380
Glu Asp Ile Tyr Leu Phe Gly Lys Ala Thr Leu Ser Gly Phe Arg Asn
385 390 395 400
Ile Arg Cys

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<212> PRT
<213> mouse
<400> 6
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1 5 10 15
Phe Leu Leu Phe Ala Ile Ile Cys Val Trp Lys Lys Gly Ser Asp Tyr
20 25 30
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35 40 45
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50 55 60
Lys Gln Asp Pro Lys Glu Gly Val Gln Ile Leu Ser Tyr Pro Arg Val
65 70 75 80
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Glu Trp Glu Gly Tyr Leu Pro Lys Glu Thr Phe Arg Thr Lys Ala Gly
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195 200 205
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Leu Lys Asp Ser Leu Tyr Thr Glu Gly Ile Leu Ile Leu Trp Asp Pro
245 250 255
Ser Val Tyr His Ala Asp Ile Pro Gln Trp Tyr Gln Lys Pro Asp Tyr
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275 280 285
Pro Phe Tyr Ile Leu Lys Pro Gln Met Pro Trp Glu Leu Trp Asp Ile
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305 310 315 320
Gly Met Leu Gly Ile Ile Ile Met Met Thr Leu Cys Asp Gln Val Asp
325 330 335
Ile Tyr Glu Phe Leu Pro Ser Lys Arg Lys Thr Asp Val Cys Tyr Tyr
340 345 350
His Gln Lys Phe Phe Asp Ser Ala Cys Thr Met Gly Ala Tyr His Pro
355 360 365
Leu Leu Phe Glu Lys Asn Met Val Lys His Leu Asn Glu Gly Thr Asp
370 375 380
Glu Asp Ile Tyr Leu Phe Gly Lys Ala Thr Leu Ser Gly Phe Arg Asn
385 390 395 400
Asn Arg Cys

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体とを組み合わせて用いてサンドイッチ酵素免疫測定(ELISA)法を行うことを含む、ヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出方法。
【請求項2】
(1)ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を固定化した固相にヒトα2,6シアル酸転移酵素を含む試料を接触させて上記抗体にヒトα2,6シアル酸転移酵素を結合させる工程:及び(2)上記工程(1)で結合したヒトα2,6シアル酸転移酵素にヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を反応させて、結合したヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出する工程を含む、請求項1に記載のヒトα2,6シアル酸転移酵素の検出方法。
【請求項3】
ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体。
【請求項4】
ヒト由来の試料に含まれるヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定することを含む、肝細胞癌の診断方法。
【請求項5】
ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を用いてヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定する、請求項4に記載の肝細胞癌の診断方法。
【請求項6】
ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体とを組み合わせて用いてサンドイッチ酵素免疫測定(ELISA)法を行うことによってヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定する、請求項4又は5に記載の肝細胞癌の診断方法。
【請求項7】
(1)ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を固定化した固相にヒトα2,6シアル酸転移酵素を含む試料を接触させて上記抗体にヒトα2,6シアル酸転移酵素を結合させる工程:及び(2)上記工程(1)で結合したヒトα2,6シアル酸転移酵素にヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体を反応させて、結合したヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出する工程によってヒトα2,6シアル酸転移酵素を検出又は測定する、請求項4から6の何れかに記載の肝細胞癌の診断方法。
【請求項8】
ヒト由来の試料が血清、血漿あるいは胆汁である、請求項4から7の何れかに記載の肝細胞癌の診断方法。
【請求項9】
ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のSer-Ser-Ala-Gly-Ser-Leu-Lys-Ser-Ser-Gln-Leu-Gly-Arg-Glu-Ile(配列番号1)、又はAsn-Ser-Gln-Leu-Val-Thr-Thr-Glu-Lys-Arg-Phe-Leu-Lys-Asp-Ser-Leu(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体と、ヒトα2,6シアル酸転移酵素のアミノ酸配列中のCys-Asp-Gln-Val-Asp-Ile-Tyr-Glu-Phe-Leu-Pro-Ser-Lys-Arg-Lys-Thr-Asp-Val(配列番号3)で表されるアミノ酸配列を認識することができる抗体とを少なくとも含む、肝細胞癌の診断キット。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−322373(P2007−322373A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156167(P2006−156167)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度科学技術試験研究による国立大学法人北海道大学との委託契約「タンパク質分解酵素による糖転移酵素機能の修飾と医薬への応用」、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(399032282)株式会社 免疫生物研究所 (14)
【Fターム(参考)】