説明

肝臓代謝を改善するための組成物および診断方法

健康な肝臓代謝を維持することを目的とし、かつ体重減少による間接的ではないメタボリックシンドロームについての処置を開発する必要性がある。本発明は、特に脂肪肝と関連における肝臓代謝をサポートおよび改善するためのホエイタンパク質を含む組成物を提供する。該組成物は、Caおよび健康増進成分、例えばプロバイオティクスおよびプレバイオティクスをさらに含み得る。該組成物は、食品、健康食品、栄養補助剤または薬剤の形態で存在することができる。さらに、有効なバイオマーカーおよびサンプルマトリクスの選択の複雑性から、脂肪肝およびメタボリックシンドロームに対する特異的なバイオマーカーを見出す特別な必要性がある。本発明はまた、メタボロームプロファイルに基づいて脂肪肝を決定するための診断方法にも関する。統計学的モデル化方法は、該バイオマーカーを同定するためにメタボロームプロファイルにて使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、肝臓代謝、特に脂肪肝との関連において、サポートおよび改善するためのホエイタンパク質を含む組成物に関する。さらに、本発明は、メタボロームのプロファイルに基づいて脂肪肝を決定するための診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術
腹部の肥満は、メタボリックシンドロームの進行と密接に関係する。体重減少は、現在、メタボリックシンドロームを低下させると知られる数少ない有効な処置のなかの一つである。しかし、メタボリックシンドロームは常に肥満が原因というわけではない。また一方、全ての肥満者がメタボリックシンドロームを発症しているとも限らない。メタボリックシンドロームの発症における脂肪肝の重要性が、近年理解されてきたにすぎない。
【0003】
肝臓における脂肪蓄積は、メタボリックシンドロームを発症する個体と発症していない個体とを区別する重要な特徴であることが示唆されてきた(Kotronen、A. and Yki-Jaervinen、H. Fatty Liver. A Novel Component of the metabolic Syndrome、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2007;(online Aug. 9、2007)。肥満となった時点で、該肝臓は、インシュリン耐性となり、主要な心臓脈管のリスクファクター、例えばC反応性タンパク質(CRP)、超低密度リポタンパク質(VLDL)およびプラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-1(PAI-1)を過剰産生する(Yki-Jaervinen、H. Fat in the liver and insulin resistance、Ann Med. 2005;37(5):347-356)。現在のところ、体重減少によるインスリン耐性の改善は、依然として非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)についての治療の基礎である。さらに、肝臓の脂肪蓄積を予防および処置する手段は制限されている。また、この脂肪肝を制御するメカニズムについて判っていることは比較的わずかしかない。結果として、分子レベルでの脂肪肝の複雑性を十分に理解するための、ならびに有効かつ関連のある手段および脂肪肝の形成および/または発生を制御、軽減、緩和または予防するための特定化合物および/または薬剤を見出すための継続的な必要性が依然として存在している。
【0004】
カルシウムと組み合わせたホエイタンパク質が、食事誘導性肥満モデルにおいて体重および脂肪組織増幅を減衰させることが判っている(Pilvi、T.K.、Korpela、R.、Huttunen、M.、Vapaatalo、H.、Mervaala、E.M.、High-calcium diet with whey protein attenuates body-weight gain in high-fat-fed C57B1/6J mice、Br. J. Nutition、007、98: 900-907)。いくつかの試験が、体重管理のために、例えばカルシウムと組み合わせたホエイタンパク質に関して行われており、体脂肪を低減する可能性または食後に食欲の「スイッチング・オフ」により低体重を維持する可能性を示している。エネルギー制限下で体重減少を促進することがなく、また結果的に肝臓脂肪の低下に対する有益な効果を示すことのいずれもない、食事用カルシウムと組合せたホエイタンパク質に関する提示を、従来技術は全く提案していない。
【0005】
いくつかの脂質代謝改善剤は当分野ではよく知られている、例えばグリセロ糖脂質(Nisshin Sugar Manufacturing Co Ltd、JP 2005314256)、ダイズタンパク質の酵素消化生成物(Fuji Oil Co Ltd、WO2003026685)およびミルク由来の塩基性タンパク質または塩基性ペプチド画分(Snow Brand Milk Prod.、JP 2002212097)などである。かかる薬剤および該薬剤を含有する食品および飲料は、その利点に関する証拠が明白でないまま、生活習慣関連疾患、例えば脂肪肝、脂質異常症、高コレステロール血症、動脈硬化、肥満等の予防および緩和に有用であることが提案されている。
【0006】
また、脂質代謝に関与する遺伝子発現を改善するための有効な成分として3種の分枝鎖アミノ酸であるイソロイシン、ロイシンおよびバリンを含む薬剤が、特許公開公報WO 2007/069744(Ajinomoto Co.、Inc.)に記述されている。さらに、WO2006/070873 (Ajinomoto、Co.、Inc.)には、アディポネクチンインデューサーか、またはロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、システイン、アラニンおよびその混合物から選択されたアミノ酸を含むアディポネクチン分泌プロモーターを含む、低アディポネクチン症、脂質異常症、高血圧、血管症、脂肪肝、肝線維症、または肥満の予防的または治療的効果を示す食品または飲料品が記述されている。
【0007】
JP 2004300114 (Fuji Oil Co.、Japan)には、エンドプロテアーゼまたはエキソプロテアーゼの存在下でダイズを分解することおよび疎水性樹脂により処理することにより得られたオリゴペプチド混合物が記述されており、これは肝細胞に由来するアポリポタンパク質Bの分泌を強く制御する。該公報によれば、該混合物は、例えば、肥満、脂肪肝、アテローム硬化症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、糖尿病、高血圧、慢性腎炎、肝硬変、および閉塞性黄疸等を処置および予防する際の使用について提案されている。
【0008】
脂質は、エネルギー貯蔵庫としての働きに加えてシグナル伝達分子および構造分子として重要な役割をもつ非常に多様性のある分子である。肝臓に蓄積する様々な脂質類を同定することは、肝臓のインスリン耐性の複雑なプロセスを理解するために重要である。Puriらは、ヒトにおけるNAFLDでは、トリアシルグリセリド(TAG)およびジアシルグリセリド(DAG)のレベルは増加したが、一方でホスファチジルコリンの全量が低下したことを示した(Puri P、Baillie RA、Wiest MM、Mirshahi F、Choudhury J、Cheung O、Sargeant C、Contos MJ、Sanyal AJ.、A lipidomic analysis of nonalcoholic fatty liver disease、Hepatology、2007、46 (4) 1081-1090]。特に、TAGおよびDAGと共にセラミドの蓄積は、脂肪肝の発症を示すと思われる。
【0009】
TAGとDAG、ジアシルホスホグリセロールおよび特定のセラミド(CER)類の上方調節ならびにスフィンゴミエリン(SM)の下方調節は、ob/obマウスにおいて見られた(Yetukuri、L. Katajamaa、M.、Medina-Gomez、G.、Seppaenen-Laakso、T.、Vidal-Puig、A.、Oresic、M.、Bioinformatics strategies for lipidomics analysis: characterization of obesity related hepatic steatosis、BMC Systems Biol.、2007、1:12)。さらに、遺伝子的に肥満インシュリン耐性ob/obマウスモデルを用いるこれらの初期の試験は、いかなる作用メカニズムをも示さず、また脂質代謝調査の実験モデルはヒトには類似しているとはいえないものである。
【0010】
メタボリックシンドロームの処置および予防を開発するための必要性がある。この処置および予防は、体重減少による間接的な処置ではなく、健康な肝臓代謝を維持するために為されるべきである。従って、肝臓代謝を改善すること、およびメタボリックシンドロームの発症を予防することを目的とする脂肪肝の直接的な処置を開発することが必要である。
【0011】
さらに、有効なバイオマーカーおよびサンプルマトリクスの選択の複雑性から、脂肪肝およびメタボリックシンドロームについての特異的なバイオマーカーを見出す特別な必要がある。また、例えば肝臓生検などの不必要な侵襲的サンプル採取を必要としないバイオマーカーを開発する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(発明の概要)
本発明の目的は、脂肪肝の予防および/または処置のためのホエイタンパク質を含む組成物を提供することである。さらに、本発明の別の目的は、脂肪肝に関与するメカニズムおよび要となる代謝産物およびその変化を分子レベルで十分に理解すること、ならびに脂肪肝についての特異的な処置およびバイオマーカーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、脂肪肝の予防および/または処置のためのホエイタンパク質を含む組成物を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、肝臓代謝をサポートおよび改善するための方法を提供するものであって、該方法はかかる処置が必要な対象にホエイタンパク質を含んでいる組成物を投与することを含む。
【0015】
またさらに、本発明は、対象における脂肪肝を診断する方法を提供するものであって、該方法は、該対象から採取した身体サンプル中の肝臓の代謝に関与する少なくとも一つの代謝産物の量を決定することを含み、これにより該代謝産物の異常な量が肝臓代謝の状態を示すものである。
【0016】
本発明は、体重減少による間接的な処置ではなく、肝臓の脂質代謝の改善を目的とする脂肪肝のための処置を提供する。
【0017】
脂肪肝および健康な肝臓の脂質代謝についてのバイオマーカーもまた提供する。該バイオマーカーは、血液、血清または血漿から測定することができ、肝臓を生検する必要はない。
【0018】
該開示したバイオマーカーは、肝臓代謝の完全な描出(picture)を提供する。肝臓代謝は、複雑なメカニズムであり、該バイオマーカーは、それでも肝臓代謝の状態に関する詳細な描出を提供しなければならない。本明細書に開示した診断方法は、まさにこの正確な描出を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、肥満コントロール、体重減少したもの(カゼイン=CPIおよびホエイ+Ca=WPI)およびやせ型コントロールマウス(n=10/グループ)に関する最終の体重および体脂肪を示す。棒線は平均±SEM値を示す。共通の文字を含まない平均は異なる、p<0.05.
【図2】図2は、各グループ(やせ型コントロール;肥満;体重減少(カゼイン= CPI);体重減少(ホエイ+Ca= WPI))についてのマウス肝臓におけるメタボロームのプロファイルに対するPLS/DAスコアプロットを示す。
【図3】図3は、PLS/DAのローディング(loading)。A.LV1のローディングに基づく脂質ランキング上位および脂質ランキング下位の10種。B.LV2のローディングに基づく脂質ランキング上位および脂質ランキング下位の10種。
【図4】図4は、やせ型および肥満グループ間の最高のレベル比の10種の代謝産物および最低のレベル比の10種の代謝産物についての倍数変化を示す。
【図5】図5は、WPIおよびCPIグループと比較して、上方制御および下方制御された代謝産物の上位15種を示す。
【図6】図6は、血清中のメタボロームのプロファイルに対するPLS/DAスコアプロットを示す[やせ型コントロール;肥満;体重減少(カゼイン = CPI);体重減少(ホエイ+Ca = WPI)]。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、健康な肝臓代謝を改善および維持するための、ならびに脂肪肝の処置および/または予防において有用である、ホエイタンパク質を含む組成物を提供する。脂肪肝は、肥満およびメタボリックシンドロームに密接に関連しており、即ちまたインスリン耐性およびII型糖尿病にも関連している。従って、脂肪肝の処置はメタボリックシンドロームに罹患している患者において有用である。メタボリックシンドロームは、従来は該患者の体重減少を目的とするプログラムまたは医薬物により処置されてきた。本発明の組成物は、肝臓代謝の改善に向かうが体重減少を目的としない処置を可能にする。従って、該組成物は、脂肪肝およびメタボリックシンドロームに罹患している正常な体重の患者またはやせ型患者にも有用である。
【0021】
本発明の組成物は、好ましくはカルシウムも含有できる。ホエイタンパク質およびカルシウムの組合せ物は、脂肪肝の該処置に特に有用であることが見出された。該組成物は、さらに他の健康増進成分および健康維持成分、例えばプロバイオティクスおよびプレバイオティクスを含んでよい。
【0022】
本発明は、ホエイタンパク質食が肝臓代謝産物プロファイリングを顕著に改善するという驚くべき知見を基にしている。このメタボロームのプロファイルの改善は、該ホエイタンパク質食が肝臓の健康に直接作用することを示す。改善されたメタボロームのプロファイルは、脂肪肝の該処置および予防に非常に重要である。従って、本発明は、肝臓の健康な代謝を回復させるため、および維持するための方法を提供する。
【0023】
健康な肝臓代謝は、メタボリックシンドロームの予防および処置において重要である。該処置は肝臓の脂質代謝に直接関与し、体重減少を目的とするものではないため、本発明は全てのメタボリックシンドロームに罹患している患者のための処置を提供する。すなわち、肥満ではないがメタボリックシンドロームに罹患している対象グループを、本明細書に示した方法により処置することができる。
【0024】
本発明の組成物は、肝臓の代謝産物のプロファイルを改善する。そのため、該脂質代謝を、特にかかる処置の前および期間中追跡できることは重要である。このため、本発明はまた肝臓脂質代謝を追跡するための方法も提供する。
【0025】
本発明の別の態様は、身体サンプルに由来するメタボロームバイオマーカーを用いて肝臓代謝を追跡することである。即ち、対象における脂肪肝を診断する方法を提供するものであって、該方法には、該対象から採取した身体サンプル中の肝臓代謝に関与する少なくとも一つの代謝産物の量を決定することが含まれ、該代謝産物の異常な量により肝臓代謝の状態が示される。好ましくは、該身体サンプルは血液サンプルであり、そしていくつかの代謝産物の量が同時に決定される。驚くべきことに、肝臓代謝(脂肪肝)を、生検用サンプル採取の必要性なしに血液サンプルから単離した血清から追跡かつ追尾し得ることが判った。それ故、血液サンプルに由来するメタボロームバイオマーカーを測定することにより脂肪肝の状態を決定するための方法が提供される。本明細書に示した方法は、脂肪肝を決定するため、または該処置中の疾患の進行を追跡するために使用できる。
【0026】
該メタボロームバイオマーカーは、脂質(lipidomic)プロファイル、水溶性代謝産物プロファイル、または脂質代謝と水溶性代謝産物プロファイルとの組み合わせを集積することにより確立され得る。
【0027】
メタボロームプロファイルとは、非水溶性(脂質)および水溶性代謝産物の大規模な試験である。該メタボロームプロファイルは、例えばエレクトロスプレーイオン化(ESI(+/-))、質量分析(MS)、質量分析と連結した液体クロマトグラフィー(LC/MS)および高速飛行時間型質量分析計と連結した包括的二次元ガスクロマトグラフィー(GCxGC-TOF)などの技術により得ることができる。通常、代謝産物間の関連性は多変数方法を特徴とする。これは、「脂質プロファイル」、「水溶性代謝産物プロファイル」または「メタボロームプロファイル」(即ち、脂質および水溶性の代謝産物の組合せ)を得るために、一つのサンプルから数個またはさらに多くの代謝産物を同時に分析することができる。これらの結果は、統計学的モデル構築方法を用いて脂肪肝に特有の代謝のプロファイルを同定するために使用され得る。
【0028】
一次代謝産物は、代謝産物の選択されたセットであり、TCAサイクルおよびペントースリン酸経路のようなエネルギー代謝経路において重要な代謝産物である。
【0029】
脂質および水溶性代謝産物のプロファイルの組合せは、脂肪肝についての正確かつ信頼性のあるバイオマーカーを提供する。
【0030】
驚くべきことに、体重減少食のタンパク質源およびカルシウム含量を調節することにより、包括的な脂質および一次代謝産物プロファイルが有意に改善され得ることが本発明にて判った(実施例2)。さらに、ホエイタンパク質およびカルシウムは、体重および脂肪減少を有意に促進し、エネルギー制限中の脂肪吸収を低下した(実施例1、図1)。
【0031】
さらに驚くべきことに、体重減少は、肝臓のトリアシルグリセロール、リン脂質およびセラミド含量における有意な変化に関する明白な提示により肝臓の脂質プロファイルを改善したことが示された。該体重減少がホエイタンパク質食を伴って起こる場合、該肝臓代謝産物プロファイルの改善は、ホエイタンパク質を用いない体重減少よりもより顕著であった。
【0032】
高脂肪食誘導性の肥満と関連のある肝臓脂質プロファイルにおける主要な変化は、TAGの増加した量、ならびに主要なリン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンなどの低下した量であった(実施例2、図3A)。TAG類のいくつかは、やせ型のグループと比較して肥満グループで10〜20倍も増加した。また、特定のセラミドは、倍数変化により計算された最も高い増加を示す種類の中の一つであった。
【0033】
本願の知見から、ホエイタンパク質食による体重減少またはホエイタンパク質食によらない体重減少が、TAGの低下したレベルおよびスフィンゴミエリン、コレステロールエステルおよびホスファチジルセリンの増加したレベルに関連することが示された。体重減少グループを肥満グループと最も良好に区別した代謝産物の変化は、特定のTAGおよびセラミド類の低下ならびにスフィンゴミエリン、コレステロールエステルおよびホスファチジルセリンの増加であった(図3B)。
【0034】
しかしながら、該体重減少がホエイタンパク質食(ホエイ+Ca= WPI)に伴い起こる場合、ホスファチジルエタノールアミンおよびスフィンゴミエリンのような数類のリン脂質類のレベルは増加し、TAGおよび糖分解代謝産物はコントロール食(CPI)時の体重減少と比べて低下した(図5)。
【0035】
ホエイ+Ca (WPI) 処置は一次代謝を有意に調節した。体重減少グループ間の代謝産物レベルの直接比較から、驚くべきことにWPI食による体重減少は、TCAサイクルおよびペントースリン酸経路の代謝産物のレベル増加と関連することが明らかとなった。また、WPI食はホスファチジルエタノールアミンおよびスフィンゴミエリンのような数種のリン脂質類のレベルを増加させ、コントロール食(CPI)での体重減少と比較してTAGおよび糖分解代謝産物を低下した(図5)。
【0036】
驚くべきことに、ホエイ+Ca(WPI)食は、血清代謝産物プロファイルに対する顕著な効果もまた示した(実施例3、図6)。すなわち、特異的生理学的状態の包括的な代謝のプロファイリングおよびモデル構築を行うのに有効な非侵襲的方法に関する強力な示唆が存在する。肝臓の生検サンプルの採取を必要としない方法が、ここでは「非侵襲的な」方法とみなされる。例えば、血液サンプルは、ここでは非侵襲的サンプル採取方法と考えられる。血液サンプルを、日常的な健康診断中に採取でき、また任意の医療機関において実施できる。
【0037】
本発明において、「ホエイタンパク質」とは、ホエイから得られたタンパク質、ホエイから得られたペプチド画分、ホエイから得られたタンパク質単離物、ホエイから得られたタンパク質加水分解物、ホエイ成分および/またはその組合せ物またはその混合物を言う。ホエイタンパク質は、ホエイから単離され得る球状タンパク質の収集物であり、牛乳から製造されたチーズの副生成物である。通常、β-ラクトグロブリン(〜65%)、α-ラクトアルブミン(〜25%)、および血清アルブミン(〜8%)の混合物である。ホエイタンパク質は、必須アミノ酸および非必須アミノ酸の双方を高レベルにて含有する。
【0038】
工業規模でいくつかの方法が、ホエイタンパク質を多く含む製品を製造するため、ホエイタンパク質をホエイから除去するため、ならびに主要なホエイタンパク質および少数のホエイタンパク質を精製するために利用できる。ホエイから得られたタンパク質単離物は、通常ウシ血清アルブミン、α-ラクトグロブリン、β-ラクトグロブリン、κ-カゼインフラグメント、ラクトフェリン等を含む。
【0039】
本発明により、ホエイタンパク質を含む組成物は、食品、健康食品および薬物の形態で存在し得る。さらに、組成物および用途は、例えば日々の食事の便利な一部分または栄養補助食品として摂取できる形態で製造され得る。
【0040】
従って、本発明の組成物は、例えば錠剤、カプセル剤または粉末の形態で経口的に投与され得る。さらに、本発明の該組成物は、食品、または例えば乳製品または医薬品等の栄養補助食品として経口的に投与され得る。
【0041】
用語「食料品」とは、固体、ゼリーまたは液体で存在できるあらゆる消耗品に及ぶこと、そして本発明の組成物を、単独でまたは従来の食料品または成分と組合せて使用することにより製造される調理済食品および製品の両方に及ぶことが意図される。食料品は、例えば乳業または飲料業の製品であってよい。
【0042】
従って、本発明の組成物を、食品または医薬品の製造中に食料品または医薬品に添加することができる。本発明の組成物はまた、最終食品に添加することもできる。目的の食料品は、このようにして脂肪肝およびまたメタボリックシンドロームに対して所望の効果を示す。
【0043】
食品、食材および/または医薬品、ならびに動物飼料の各形態は、特に限定されない。好適な食料品および/または栄養製品の例示には、乳製品、ドリンク、ジュース、スープまたは小児用食品が挙げられる。
【0044】
本発明の組成物および製品は、主としてヒトの成人および小児に使用するために適している。該製品の正の効果はまた、動物、特にペットおよび家畜にも有効である。これらの例には、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジおよび家禽に有効である。
【0045】
下記実施例は本発明を説明するものである。この実施例は、如何なる形態においても特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0046】
実施例1. 体重および脂肪含量
8週齢の雄C57Bl/6Jマウス(n=40、Harlan、Horst、The Netherlands)を、標準的な実験動物研究所内でゲージ内に5匹を、6.30 a.m.から6.30 p.m.まで照明をあて、温度22±1℃にて飼育した。マウスには食事および水道水を自由に摂取させた。正常食での馴化期間の1週間後(Harlan Tekland 2018、Harlan Holding、Inc、Wilmington、DE、USA)、30匹のマウス(25.5±0.3 g)を、高脂肪食(脂肪に由来するエネルギー 60%;タンパク質に由来するエネルギー 23.4%、炭水化物に由来するエネルギー 26.6%、脂肪に由来するエネルギー 35.3%、繊維に由来するエネルギー 6.5%;タンパク質= Alacid 714 酸カゼイン、NZMP、Auckland、New Zealand)により体重を増加させた。残り10匹のマウスは試験期間中に正常食(不断給餌)を継続させた(やせ型コントロールグループ)。高脂肪食で14週間の体重増加期間後、該マウスの1グループ(肥満グループ、n=10)を屠殺し、残りのマウスにはエネルギー制限食を7週間摂取させた。エネルギー制限期間中、該マウスには、該マウスが不断給餌中に摂食した70%のエネルギーを与えた。エネルギー制限期間の開始時に、体重が同等のマウスを、2つのグループ(WPIおよびCPI)に分けた。WPIグループは、1.8% CaCO3およびホエイタンパク質単離物(Alacen(商標登録)895、NZMP、Auckland、New Zealand)に由来する全てのタンパク質 (18%のエネルギー)を含む高脂肪食(タンパク質23.1%、炭水化物26.2%、脂肪35.0%、繊維6.5%)を摂食した。該CPlグループは、体重増加期間と同じ高脂肪食(脂肪からのエネルギーの60%;Alacid 714 タンパク質23.4%、炭水化物26.6%、脂肪35.3%、繊維6.5%)を用いて継続させた。
【0047】
該体重を、体重増加期間中、週毎にモニターし、エネルギー制限期間中に1週間に2回モニターした。食餌の消費量を毎日モニターした。体脂肪含量を、体重増加期間およびエネルギー制限期間の最後に二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA、Lunar PIXImus、GE Healthcare、Chalfont St. Giles、UK)により分析した。
【0048】
結果:ホエイタンパク質およびカルシウムは、体重および脂肪の減少を促進し、エネルギー制限期間中の脂肪吸収を低下させた。体重増加期間の終了時に、高脂肪食マウスは、食事コントロールマウスよりも有意に高い体重であった(41.5±1.0 g vs. 34.3±1.3 g、p<0.001)(図1)。肥満マウスもまた、やせ型コントロールよりも有意により多くの脂肪組織を有した(43.1±1.0% vs. 25.5±1.0、p<0.001)。7週間のエネルギー制限により、WPIグループの体重はやせ型コントロールのレベルまで低下した(p<0.001 vs. 肥満 および p>0.05 vs やせ型)が、しかし体重の減少はCPIグループにおいては統計学的に有意ではなかった。また、WPIはCPI食での体重減少よりも多く脂肪体重量が減少した。
【実施例2】
【0049】
実施例2. メタボロームのプロファイル
サンプル調製:該処置期間の終了時に、マウスをCO2/O2 (95%/5%)により失神させて、断頭した。肝臓を取り出して生理食塩水で洗浄し、拭き取り乾燥させ、秤量した。該組織サンプルは液体窒素中で凍結させ、アッセイするまで-80℃で貯蔵した。
【0050】
脂質分析からの脂質は、脂質マップ(Lipid Maps)(http://www.lipidmaps.org)に従って名付けられる。例えば、16:0脂肪酸鎖を有するリゾホスファチジルコリンはモノアシル−グリセロホスホコリン、例えばPCho(16:0/0:0)と名付けられた。脂肪酸組成が決定されなかった場合において、炭素および二重結合の全ての数を記した。例えば、ホスファチジルコリン類のGPCho(16:0/20:4)はGPCho(36:4)として表示される。しかし、GPCho(36:4)は他の分子類、例えばGPCho(20:4/16:0)またはGPCho(18:2/18:2)も示し得る。
【0051】
脂質代謝(Lipidomic):肝臓組織サンプル(n=10/グループ)、GPCho(17:0/17:0)、GPEtn(1p:0/17:0)(グリセロホスホエタノールアミン)、GPCho(17:0/0:0)、Cer(d18:1/17:0) (セラミド)およびTG(17:0/17:0/17:0) (トリアシルグリセロール)を含有する内部標準混合物(10μl)、ならびにクロロホルム:メタノール(2:1)(200μl)を、ガラス球を用いるボールミルを用いてエッペンドルフチューブ(2 ml)内でホモジネートした。塩化ナトリウム溶液(0.15 M、50μl)を添加し、該サンプルを2分間ボルテックスにより攪拌した。1時間抽出後に、該サンプルを3分間10000 rpmで遠心分離を行い、最下層のアリコート(100μl)をガラスインサート(glass inserts)に採取し、GPCho(16:1/16:1-D6)、GPCho(16:1/0:0-D3)およびTG(16:0/16:0/16:0-13C3)を含有する混合物(10μl)と共に混合した。
【0052】
肝臓組織抽出物を、粒子(1.7μm)のAcquity UPLCTM BEH C18 1 × 50 mmカラムを備えたAcquity UPLCTM systemから該サンプルを導入してQ-Tof プライマー質量分析により試験した。カラムの温度は50℃であった。該溶媒系は、水(1% 1M NH4Ac、0.1% HCOOH) および アセトニトリル/イソプロパノール(5:2、1% 1M NH4Ac、0.1% HCOOH)からなり、該流速は0.200 ml/分であった。化合物を、陽イオンモード(ESI+)においてエレクトロスプレーイオン化を用いて検出した。データを、0.2sのスキャン時間にてm/z 300-1200で収集した。イオン源(source)および脱溶媒和温度は各々120℃および250℃であった。
【0053】
データは、MZmine software version 0.60 (Katajamaa and Oresic、2005)を用いて処理し、代謝産物を内部スペクトルライブラリーまたはタンデム質量分析を用いて同定した(Yetukuri et al.、2007)。
【0054】
一次代謝産物:凍結した肝臓組織(n=10/グループ)(20mg)をエッペンドルフチューブ中で秤量し、メタノール(-80℃)(200μl)および13C標識した内部標準物(10μl)を添加した。サンプルを、ガラスビーズ(0.5−0.75 mm)を用いてMicro Dismembrator S (Sartorius、Germany)により3000 rpm、3分間にて均質化した。均質化したサンプルを、直ぐに80℃で3分間煮沸して、さらに10000rpmで5分間行った。上清を回収し、窒素流下で乾燥するまで蒸発させた。サンプルを超純水(100μl)中で再構成した。
【0055】
該肝臓抽出物を、リン化合物およびTCAサイクル化合物の定量分析のためにHPLC-MS/MS方法で分析した。該システムは、高いpHで行うHT-Alliance HPLC (Waters、Milford、MA)により構成された。該分析物を、ポストカラムASRS Ultra II 2mm イオンサプレッサー (Dionex、Sunnyvale、CA)と組合せた陰イオン交換クロマトグラフィーにより分離し、電子スプレー陰イオンモードにて操作するQuattro Micro三連四重極型質量分析計(Waters、Milford、MA)で検出した。分析用カラムは、IonPac AS11 (2 x 250 mm、Dionex、Sunnyvale、CA)およびガードカラムIonPac AG11 (2 x 50 mm、Dionex、Sunnyvale、CA)であった。流速は250 μl/分であり、注入量は5μlであった。カラムの温度は35℃であり、自動サンプル採取機は10℃であった。水(99−52%)と300 mM NaOH (1.0−48%)のグラジエント混合液を使用した。
【0056】
該化合物を、至適感受性および選択性について多重反応検出(Multiple Reaction Monitoring)(MRM)モードで検出した。酵母流加培養から得た13C標識した代謝産物の少量のアリコートを内部標準物として使用した。ヘキソースリン酸(グルコース-6-リン酸(G6P)、フルクトース-6-リン酸 (F6P)、マンノース-6-リン酸(M6P)および6-グルコース-1-リン酸(6G1P))、ペントースリン酸(リボース-5-リン酸(R5P) および リボース-5-リン酸(Ri5P))、フルクトースビスホスフェート(FBP)、グリセレート-2-ホスフェート(G2P)および3-ホスホグリセレート(3PG)、ホスホエノールピルベート(PEP)、6-ホスホグルコネート(6PG)、サクシネート(SUC)、マレエート(MAL)、α-ケトグルタレート(AKG)、オキサロ酢酸(OXA)、シトレート(CIT)、イソシトレート(ICI)、グリオキシレート(GLY)およびピルベート(PYR)を定量測定した。
【0057】
データを、MassLynx 4.1 ソフトウェアで処理して、内部較正曲線を12C分析物および13C標識アナログの応答に基づいて計算した。
【0058】
データ分析:部分最小二乗法判別解析 (PLS/DA)およびPLS分析を、脂質代謝および一次代謝産物のデータに関するクラスタリングおよび回帰についてのモデル構築方法として利用した。PLS/DAは、データセットとクラス構成要素における変動に相関するパターンの認識手法である。得られる予測モデルは、最大の分離(「区別」)に焦点を置く潜在変数(LV)を与える。連続ブロック相互検証方法(Contiguous blocks cross-validation)およびQ2スコアを使用して該モデルを開発した。VIP(該予測における変数重要性)値を計算して、特定グループのクラスター化のために最も重要な分子種類を同定した。多変量解析は、Matlab version 7.2 (Mathworks、Natick、MA)およびPLS Toolbox version 4.0 Matlab package (Eigenvector Research、Wenatchee、WA)を用いて行った。選択した分子種類のレベル間の比較を両側t-検定を用いて行った。
【0059】
代謝産物と血液グルコースとの相関は、連続ブロック相互検証方法を用いるPLS回帰分析を用いて行った。
【0060】
結果:該脂質および一次代謝産物プロファイルは、食事誘導性肥満および体重減少により有意に変化した。脂質プロファイルには、391種の同定した脂質種が含まれ、該一次代謝産物分析により13種の代謝産物(G6P、F6P、M6P、FBP、3PG、R5P、SUC、MAL、CIT、PYR、PEP、6PG、FUM)を定量した。脂質および一次代謝産物データを組合せたPLS-DA分析から、該グループ間の顕著な違いが明らかとなった(図2)。特に、第一の潜在変数(LV1)は、体重の差違に関連した変化を明らかにし、一方で第二の潜在変数(LV2)に従う該差違は、体重減少および食事の効果に対してより顕著であった。ホエイ+Ca(WPI)食の効果は、体重減少自体の効果よりも明らかにより強力であり、やせ型コントロールにより近いグループとした。しかしながら、該処置は、やせ型コントロールとは異なる注目すべき代謝変化をもたらした。
【0061】
肥満はTAGの量を増加させ、主要なリン脂質のレベルを低下させた。高脂肪食誘導性肥満と関連のある主要な変化は、TAGの増加した量、ならびに主要なリン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリン(図3A)の低下した量であった。数種のTAG類は、やせ型のグループと比較して肥満グループにて10〜20倍も増加した。また、特定のセラミドは最も高い増加を示す種類の中の一つであった。肥満誘導性脂肪肝は、代謝産物の低下した量ほど関連しなかった。最大の負の倍数変化は、ピルベート(PYR)およびリボース-5-リン酸(R5P)、続いて特定のスフィンゴミエリンおよびその他リン脂質種であった。
【0062】
体重減少は、TAGの低下したレベル、ならびにスフィンゴミエリン、コレステロールエステルおよびホスファチジルセリンの増加したレベルに関連があった。該肥満と体重減少グループを最良に区別した代謝産物の変化は、特定のTAGおよびセラミド類における低下、ならびにスフィンゴミエリン、コレステロールエステルおよびホスファチジルセリンの増加であった(図3 B)。
【0063】
ホエイ+Ca(WPI)処置は、一次代謝を有意に調節した。驚くべきことに、体重減少グループ間の代謝産物レベルの直接比較から、WPI食による体重減少は、TCAサイクルおよびペントースリン酸経路の代謝産物のレベル増加と関連することが明らかとなった。また、WPI食も、コントロール食(CPI)に対する体重減少と比較してホスファチジルエタノールアミンおよびスフィンゴミエリンのようなリン脂質類の数種類のレベルを増加させ、TAGおよび糖分解代謝産物のレベルを低下させた(図5)。
【実施例3】
【0064】
実施例3.血清のメタボロームのプロファイル
サンプル調製:血清サンプルを、等量の内部標準(Avanti Polar Lipidsからの、GPCho(17:0/0:0)、GPCho(17:0/17:0)、GPEtn(17:0/17:0)、GPGro(17:0/17:0)[rac]、Cer(d18:1/17:0)、GPSer(17:0/17:0)およびGPA(17:0/17:0)、ならびにLarodan Fine ChemicalからのMG(17:0/0:0/0:0)[rac]、DG(17:0/17:0/0:0)[rac] および TG(17:0/17:0/17:0))を含有する内部標準混合物のアリコート(10μl)を添加して分析し、そして0.05 M 塩化ナトリウム(10 μl)を血清サンプル(10μl)に添加し、該脂質をクロロホルム/メタノール(2:1、100 μl)で抽出した。ボルテックスにかけた後(2分間)、置き(1時間)、遠心分離(10000 RPM、3分)を行い、この最下位層を分離して、3つの標識した標準脂質を含有する標準混合物(10μl)を該抽出物に添加した。該標準溶液は、10μg/ml (クロロホルム:メタノール2:1中)のGPCho(16:0/0:0-D3)、GPCho(16:1/16:1-D6)およびTG(16:0/16:0/16:0-13C3)を含み、全てのものはLarodan Fine Chemicalsから入手したものである。LC/MS分析のための該サンプル等級定(order)をランダム化により決定した。
【0065】
脂質抽出物を、Acquity Ultra Performance LC(商標登録)と組み合わせたWaters Q-Tof プライマー質量分析で分析した。50℃に維持した該カラムを、1.7μm粒子を有するAcquity UPLCTM BEH C18 10×50 mmであった。2成分溶媒系は、A. 水 (1% 1M NH4Ac、0.1% HCOOH)および B. LC/MS 等級(Rathburn)のアセトニトリル/イソプロパノール(5:2、1% 1M NH4Ac、0.1% HCOOH)を含む。グラジエントは、65%A/35%Bから開始して、6分間で100%のBに達し、その後7分間維持した。5分間の再平衡化ステップを含めて全ての実行時間は18分であった。流速は0.200 ml/分であり、注入量は0.75μlであった。サンプルオーガナイザーの温度は10℃に設定した。
【0066】
脂質プロファイリング、データ処理および脂質の同定を、実施例2と同様の方法で実施した。
【0067】
GCxGC-TOFによる水溶性代謝産物の分析
水溶性代謝産物の広範囲のスクリーニングを、高速飛行時間型質量分析計(GCxGC-TOF)と連動させた包括的二次元ガスクロマトグラフィーにより行った(Welthagen W, Shellie R, Spranger J, Ristow M, Zimmermann R, Fiehn O, Comprehensive two-dimensional gas chromatography-time-of-flight mass spectrometry (GCxGC-TOF) for high resolution metabolomics: biomarker discovery on spleen tissue extracts of obese NZO compared to lean C57BL/6 mice. Metabolomics 2005;1:65-73)。使用した機器は、Agilent 6890N GC(Agilent Technologies, USA)およびCombiPAL オートサンプラー(CTC Analytics AG, Switzerland)を備えた Leco Pegasus 4D GCxGC-TOFであった。モジュレータ、第二オーブンおよび飛行時間型質量分析計は、Leco 社(USA.)からのものである。GCを、1.5 ml/分の一定流量でキャリアーガスとしてヘリウムを用いるスプリットモード(1:20)において動作させた。この第一GCカラムは、相対的に非極性RTX-5カラム(10m x 0.18 mm x 0.20 μm)、第二カラムは極性BPX-50(1.10 m x 0.10 mm x 0.10 μm)であった。温度プログラムは次のとおりであった:開始50℃で1分−> 280℃、7℃/分、1分。第二オーブンを、第一のオーブン温度を超える+30℃に設定した。二次分離時間を3秒に設定した。使用した質量範囲は、40から600amuであり、データ収集速度は100スペクトル/秒である。商業用質量スペクトロメトリーライブラリー(Palisade Complete 600K)を、代謝産物を同定するために使用した。
【0068】
結果:血清(UPLC/MS (ESI+)から、129種の代謝産物を同定し(GCxGC-TOF platform)、537種の脂質を同定した。脂質および一次代謝産物データのPLS-DA分析から、グループ間で顕著な差違が明らかになり、図6に示したとおり血清代謝産物プロファイルに対するホエイ+Ca(WPI)食の顕著な効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪肝の予防および/または処置のためのホエイタンパク質を含む組成物。
【請求項2】
該脂肪肝の予防および/または処置が、1以上の下記の肥満、メタボリックシンドローム、II型糖尿病およびインスリン耐性と関連がある、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該組成物がさらにカルシウムを含有する、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
該組成物がさらにプロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスを含む、請求項1〜3いずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
該組成物が機能性食品の形態である、請求項1〜4いずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
該機能性食品が乳製品、ドリンク、ジュース、スープまたは小児用食品の形態にある、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
該組成物が健康増進用自然食品の形態にある、請求項1〜4いずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
該健康増進用自然食品が、ピル、錠剤、粉末または混合物である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
肝臓代謝をサポートおよび改善するための方法であって、かかる処置が必要な対象にホエイタンパク質を含む組成物を投与することを含む、方法。
【請求項10】
対象における脂肪肝を診断する方法であって、該対象から採取した血液サンプル中の肝臓代謝に関与する少なくとも一つの代謝産物の量を決定することを含み、それにより該代謝産物の異常な量が肝臓代謝の状態を示す、方法。
【請求項11】
該複数の代謝産物の量が同時に決定される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
該代謝産物が、脂質プロファイル、水溶性代謝産物プロファイル、または脂質および水溶性代謝産物の組合せたプロファイルを収集することにより確立されることを特徴とする、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
該統計学的モデル構築方法が、該代謝産物の異常量を同定するために収集されたプロファイルに使用されることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
該プロファイルが、例えば質量スペクトロメトリーと連結されたガスまたは液体クロマトグラフィーなどの技術を用いて収集されることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項15】
該代謝産物が、血液サンプルから単離した血清または血漿サンプルから測定されることを特徴とする、請求項10〜14いずれか一項記載の方法。
【請求項16】
該方法が、該疾患の処置中の脂肪肝の進行を追跡するために使用されることを特徴とする、請求項10〜15いずれか一項記載の方法。
【請求項17】
該処置が、請求項1に記載の組成物をそれが必要な患者に投与することを含むことを特徴とする、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−509249(P2011−509249A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541075(P2010−541075)
【出願日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050796
【国際公開番号】WO2009/087263
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(500185416)ヴァリオ・リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】Valio Ltd.
【Fターム(参考)】