説明

肝臓疾患マーカー、その測定方法、装置及び医薬品の検定方法

【課題】血中の逸脱酵素であるAST、ALTの測定値を必要とせず、代謝物(低分子化合物)の測定だけで、各種の肝臓疾患を特定可能とする。
【解決手段】肝臓疾患マーカーとして、血液中の代謝物である低分子化合物のいずれかのみ、又は、同じく低分子化合物のみの組合せを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓疾患マーカー、その測定方法、装置及び医薬品の検定方法に係り、特に、各種肝臓疾患の患者を健常者と識別してスクリーニング可能な肝臓疾患マーカー、その測定方法、装置及び該肝臓疾患マーカーを用いた医薬品の検定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓疾患は、薬剤性肝炎、A型、B型、C型などのウイルス性肝炎、肝硬変、肝臓がん、非アルコール性脂肪肝疾患など多様であり、また無症状ウイルスのキャリヤも存在する。特にC型肝炎ウイルス(HCV)感染者の7割は、慢性的な肝臓の炎症のため、除々に正常な肝細胞が失われ、肝臓が線維化して、肝硬変に進行し、さらには肝臓がんまで発展する。C型慢性肝炎患者の10−15%、肝硬変患者の80%に肝臓がんが発生することが報告されている。C型肝炎は、症状も無く肝硬変、肝臓がんと進行し、肝臓の機能が極度に低下して倦怠感や黄疸、意識障害など様々な障害がおこるが、この段階では現在有効な治療法はない。したがって、肝臓の機能が悪化する前に、なるべく早く症状の進行を診断し、インターフェロン投与などの治療などを施すことが必要である。日本では、C型肝炎キャリヤは200万人であり、その後、自覚症状が無いまま疾患が進行し、最終的に40万人が肝疾患で死亡すると推定されている。肝硬変になる前にC型肝炎キャリヤであることが判明すれば、そのうちの70%(28万人)がインターフェロン等の投与によって治癒すると言われている。しかしながら、肝臓病の診断は、数多くの検査を受けなければならず、時間やコストもかかる。また受診できる機関が限られるため、未受診者が多い。現在、各種の肝障害を正確かつ迅速に特定する診断法は未だ確立されていない。
【0003】
また最近問題となっている非アルコール性脂肪肝疾患では、肝硬変、肝がんへと進行する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と、良好な経過をたどる単純脂肪肝(SS)が存在することが知られている(非特許文献1)。欧米の成人の20%が非アルコール性脂肪肝、4%がNASHと見積もられている。NASHは、早期に発見し食事療法などを行い、肝硬変や肝がんになる前に疾患の進行を止める必要があるが、SSとNASHの区別は、有効なバイオマーカーが存在せず、肝生検によって診断せざるを得なかった(非特許文献2)。
【0004】
一般に肝臓疾患が疑われると、問診、視診、触診とともに血中のAST、ALT、γ−GTP、アルカリフォスファターゼ(AL−P)、コリンエステラーゼ(ChE)、ビリルビンなどの肝機能マーカーを測定する。これらの生化学検査値に異常があった場合は、B型やC型肝炎ウイルス検査、超音波検査、X線、CTなどの画像診断が行われる。がんの診断には、血中のAFP、PIVKA−II、CEAなどのタンパク質の腫瘍マーカーを測定する。さらには、肝硬変、肝臓がん、非アルコール性脂肪肝炎など正確な診断が必要な場合は、腹腔鏡検査や肝生検を行う(非特許文献3)。
【0005】
このように肝臓病を特定するには、多くの検査を受けなければならず、診断がつくまでに何日も費やす。また腹腔鏡検査や肝生検は、患者に肉体的な苦痛を与える。さらに肝生検は、患者を危険に曝す。また肝生検は、1−3週間の入院が必要であり、病態のチェックなどのために肝生検を頻繁に行うことはできない。また肝生検は、ごく微小の組織しか採取しないため、病変組織から採取できなかった場合は、正確な診断ができない。さらに従来の肝臓疾患の診断法では、多くの検査が必要でありコストも高い。さらに診断は専門医でなければ行うことはできず、不足している医療関係者に負担を強いる。したがって、患者に肉体的、精神的、金銭的な負担がかからず、迅速で、正確かつ簡便な肝臓疾患の特定方法が強く望まれている。
【0006】
他方、キャピラリ電気泳動(capillary electrophoresis, CE)−質量分析(mass spectrometry,MS)(CE−MS)法による細胞内の代謝物質の網羅的な測定方法は、非特許文献4に記載され、キャピラリ電気泳動−飛行時間型質量分析(time-of-flight mass spectrometry,TOFMS)(CE−TOFMS)の方法論およびこの方法を用いてグルタチオンの枯渇を示すオフタルミン酸バイオマーカーを発見した詳細は、非特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Fernie, A.R., et al. Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 5, 763-769, 2004.
【非特許文献2】Younossi, Z.M., et al. Obes. Surg. 18, 1430-1437, 2008.
【非特許文献3】Callewaert, N., et al. Nat. Med. 10, 429-434, 2004.
【非特許文献4】Soga, T., Ohashi, Y., Ueno, Y., Naraoka, H., Tomita, M., and Nishioka, T., “Quantitative Metabolome Analysis Using Capillary Electrophoresis Mass Spectrometry”, J. Proteome Res. 2. 488-494, 2003.
【非特許文献5】Soga, T., Baran, R., Suematsu M., Ueno, Y., Ikeda, S., Sakurakawa T., Kakazu, Y., Ishikawa, T., Robert, M., Nishioka, T., Tomita, M., “Differential Metabolomics Reveals Ophthalmic Acid As An Oxidative Stress Biomarker Indicating Hepatic Glutathione Consumption”, J. Biol. Chem. 281, 16768-16776, 2006.
【非特許文献6】Soga, T., et al. J. Biol. Chem. 281, 16768-16776, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでに発明者らは、肝炎、肝硬変、肝がんなど多くの肝障害患者の血液測定によって、各肝炎患者の血清中で著しく増加する物質を発見し、それらがγ−Glu−Xペプチド類(注:Xはアミノ酸を示す)であることを同定した。さらに血清中の肝機能マーカーであるASTとALTの値とγ−Glu−Xペプチド類を用いて多重ロジスティック回帰モデルによる多変量解析を行うことにより、各種の肝炎患者を他と高精度に区別することに成功した(出願時未公開のPCT/JP2009/069950)。
【0009】
本発見により、血液中のγ−Glu−Xペプチド類の濃度およびAST、ALTの値を測定することによって、健常者、薬剤性肝障害、無症状B型肝炎キャリヤ、無症状C型肝炎キャリヤ、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、肝臓がん患者を迅速に診断することが可能になった。
【0010】
しかし、血液中のγ−Glu−Xペプチド類の濃度は、1mM以下である場合がほとんどであり、高速液体クロマトグラフィ−質量分析計(LC−MS/MS)の多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring, MRM)法などの高感度な測定法でないと検出できなかった。またASTとALTの値とγ−Glu−Xペプチド類を用いて多重ロジスティック回帰分析を用いて選んだバイオマーカーによる各種の肝臓疾患の判別の精度を、受信者動作特性曲線(receiver operating curve, ROC曲線)によって評価したところ、B型慢性肝炎のROC曲線以下の面積(the area under the ROC, AUC)は0.859、C型慢性肝炎のAUCは0.811であり、他の疾患に比べて、診断精度が劣っていた。またγ−Glu−Xペプチド類に加えて、血中のAST、ALTも測定しなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者らは、各種の肝臓疾患および健常者の血液をCE−TOFMS(非特許文献6)で網羅的に測定し、血液中に高濃度に存在している代謝物を用いて、多重ロジスティック回帰分析を行い、各種の肝臓疾患を区別するバイオマーカーを発見した。
【0012】
即ち、本発明は、血液中の代謝物である低分子化合物のいずれかのみ、又は、同じく低分子化合物のみの組合せであることを特徴とする肝臓疾患マーカーを提供するものである。
【0013】
又、前記の肝臓疾患マーカーであって、メチオニンスルホキシド(Methionine sulfoxide)、Asn、Tyr、サルコシン(Sarcosine)、N,N−ジメチルグリシン(N,N-Dimethylglycine)、N−アセチルオルニチン(N-Acetylornithine)、インドール−3−アセトアミド(Indole-3-acetamide)、グルコサミン(Glucosamine)、Phe、ホモアルギニン(Homoarginine)、Pro、クレアチン(Creatine)、Val、クレアチニン(Creatinine)、Glu、ヒポキサンチン(Hypoxanthine)、5−オキソプロリン(5-Oxoproline)、Lys、タウリン(Taurine)、ヒドロキシプロリン(Hydroxyproline)、キヌレニン(Kynurenine)、N−γ−エチルグルタミン(N-γ-Ethylglutamine)、Ile+Leu、Gly−Gly、Glnのいずれか、又は、クレアチン、Glu、メチオニンスルホキシド、Phe、ホモアルギニン、5−メトキシ−3−インドールアセテート(5-Methoxy-3-indoleaceate)の組合せであることを特徴とする健常者識別用の肝臓疾患マーカーを提供するものである。
【0014】
又、前記の肝臓疾患マーカーであって、グリセロホスホリルコリン(Glycerophsphorylcholine)、Gln、Gly−Gly、キヌレニン、Glu、グルコサミン、Met、His、メチオニンスルホキシド、N−γ−エチルグルタミン、オルニチン(Ornithine)、Asn、Ile+Leu、インドール−3−アセトアミド、ピペコレート(Pipecolate)、N,N−ジメチルグリシン、Tyr、Trp、Gly、ホモアルギニン、Ser、γ−ブチロベタイン(γ-Butyrobetaine)のいずれか、又は、トリメチルアミンN−オキシド(Trimethylamine N-oxide)、N,N−ジメチルグリシン、クレアチニン、Ile+Leu、オルニチン、グリセロホスホリルコリンの組合せであることを特徴とする単純脂肪肝(SS)識別用の肝臓疾患マーカーを提供するものである。
【0015】
又、前記の肝臓疾患マーカーであって、His、Ser、Gly−Gly、Gly、ピペコレート、オルニチン、グリセロホスホリルコリン、ホモアルギニン、インドール−3−アセトアミド、Asn、γ−ブチロベタイン、Lys、Arg、Phe、グルコサミン、キヌレニン、Thr、Met、グアニドアセテート(Guanidoacetate)、タウリン、N−アセチルオルニチン、カルニチン(Carnitine)、シトルリン(Citrulline)のいずれか、又は、Ala、Ser、5−オキソプロリン、ピペコレート、カルニチン、ホモアルギニンの組合せであることを特徴とする非アルコール性脂肪肝炎(NASH)識別用の肝臓疾患マーカーを提供するものである。
【0016】
又、前記の肝臓疾患マーカーであって、5−メトキシ−3−インドールアセテート、シトルリン、グリセロホスホリルコリン、α−アミノアジぺート(α-Aminoadipate)、N,N−ジメチルグリシン、オルニチン、N−アセチルオルニチン、ベタイン(Betaine)、3−メチルヒスチジン(3-Methylhistidine)、N−γ−エチルグルタミン、トリメチルアミンN−オキシド、メチオニンスルホキシド、1−メチルニコチンアミド(1-Methylnicotinamide)、Met、Phe、Tyr、カルニチン、γ−ブチロベタイン、グルコサミン、ホモアルギニン、キヌレニン、クレアニチン、Thr、Asn、5−オキソプロリンのいずれか、又は、α−アミノアジペート、N−アセチルオミシン(N-Acetylomithine)、5−メトキシ−3−インドールアセテートの組合せであることを特徴とする薬剤性肝障害(DI)識別用の肝臓疾患マーカーを提供するものである。
【0017】
又、前記の肝臓疾患マーカーであって、Val、α−アミノアジペート、インドール−3−アセトアミド、γ−ブチロベタイン、His、Trp、グアニドアセテート、Ile+Leu、Tyr、サルコシン、カルニチン、1−メチルニコチンアミド、3−メチルヒスチジン、Gln、クレアチニン、Lys、Alaのいずれか、又は、クレアチニン、Val、Ile+Leu、Asn、Gly−Gly、Phe、Argの組合せであることを特徴とする無症状B型肝炎キャリヤ(AHB)識別用の肝臓疾患マーカーを提供するものである。
【0018】
又、前記の肝臓疾患マーカーであって、Tyr、サルコシン、γ−ブチロベタイン、メトホルミン(Metformin)、Trp、1−メチルニコチンアミド、α−アミノアジテート、N,N−ジメチルグリシン、プソドペレチエリン(Pseudopelletierine)、メチオニンスルホキシド、Lys、アセチルコリン(Acetylcholine)、ピペリジン(Piperidine)、His、Ile+Leu、Val、クレアチニン、ベタイン、Ala、Thr、タウリン、Phe、グアニドアセテート、ピペコレート、Ser、ヒドロキシプロリン、Pro、キヌレニンのいずれか、又は、サルコシン、クレアチニン、Ile+Leu、アセチルコリン、3−メチルヒスチジン(3-Methylhistidine)の組合せであることを特徴とする無症状B型慢性肝炎(CHB)識別用の肝臓疾患マーカーを提供するものである。
【0019】
又、前記の肝臓疾患マーカーであって、Arg、タウリン、Asp、Ser、Gly、カルニチン、シトルリン、ベタイン、5−メトキシ−3−インドールアセテート、His、γ−ブチロベタイン、ヒポキサンチン、クレアチン、Tyr、Valのいずれか、又は、Gly、トリメチルアミンN−オキシド、タウリン、Ile+Leu、Asn、オルニチン、Glu、プソイドペレチエリン、インドール−3−アセトアミド、N−γ−エチルグルタミン(N-γ-Ethylglutamine)、グルコサミン、Tyrの組合せであることを特徴とする無症状C型肝炎キャリヤ(AHC)識別用の肝臓疾患マーカーを提供するものである。
【0020】
又、前記の肝臓疾患マーカーであって、メチオニンスルホキシド、Met、Glu、グルコサミン、Gln、グリセロホスホリルコリン、Asn、Phe、Lys、Pro、ヒポキサンチン、グアニドアセテート、キヌレニン、ピペコレート、5−メトキシ−3−インドールアセテート、メトホルミンのいずれか、又は、トリメチルアミンN−オキシド、クレアチニン、Pro、グアニドアセテート、ベタイン、Thr、タウリン、メトホルミン、ヒドロキシプロリン、クレアチン、Asp、ヒポキサンチン、1−メチルニコチンアミド、Gln、Glu、Met、His、メチオニンスルホキシド、3−メチルヒスチジン、N−アセチルオルチニン、Arg、シトルリン、Tyr、5−メトキシ−3−インドールアセテート、グリセロホスホリルコリンの組合せであることを特徴とするC型慢性肝炎(CHC)識別用の肝臓疾患マーカーを提供するものである。
【0021】
又、前記の肝臓疾患マーカーであって、シトルリン、オルニチン、N,N−ジメチルグリシン、Tyr、タウリン、1−メチルニコチンアミド、N−γ−エチルグルタミン、N−アセチルオルニチン、ホモアルギニン、グアニドアセテートのいずれか、又は、Gly、トリメチルアミンN−オキシド、タウリン、Ile+Leu、Asn、オルニチン、Glu、プソイドペレチエリン、インドール−3−アセトアミド、N−γ−エチルグルタミン、グルコサミン、Tyrの組合せであることを特徴とする肝硬変(CIR)識別用の肝臓疾患マーカーを提供するものである。
【0022】
又、前記の肝臓疾患マーカーであって、ジメチルグリシン、シトルリン、アセチルオルニチン、トリメチルアミンN−オキシド、ホモアルギニン、ベタイン、2AB、オルニチン、Tyr、Lys、3−メチルヒスチジン、クレアチニン、5−オキソプロリンのいずれか、又は、トリメチルアミンN−オキシド(Trimethylamine N−Oxide)、Pro、ベタイン、タウリン、メトホルミン、ヒドロキシプロリン、オルニチン、Asp、ヒポキサンチン、1−メチルニコチンアミド、γ−ブチロベタイン(γ−Butyrobetaine)、Lys、His、メチオニンスルホキシド、Phe、N−アセチルオルニチン、Arg、シトルリン、ホモアルギニン、Trp、5−メトキシ−3−インドールアセテートの組合せであることを特徴とする肝臓がん(HCC)識別用の肝臓疾患マーカーを提供するものである。
【0023】
本発明は、又、前記の肝臓疾患マーカーを測定することを特徴とする肝臓疾患マーカーの測定方法を提供するものである。
【0024】
又、サンプルから分析に適した試料を作成する手段と、試料中の前記の肝臓疾患マーカーを測定するための分析手段と、を備えたことを特徴とする肝臓疾患マーカーの測定装置を提供するものである。
【0025】
又、医薬品の投与前及び投与後に採取された哺乳動物の血液において、前記の肝臓疾患マーカーの濃度を測定する工程と、前記測定の結果を、前記医薬品の投与前の血液と投与後の血液とで比較する工程と、を含むことを特徴とする医薬品の検定方法を提供するものである。
【0026】
又、哺乳動物において、医薬品を投与された一以上の個体からなる第1の群から採取された血液、及び、前記医薬品を投与されていない一以上の個体からなる第2の群から採取された血液について、前記の肝臓疾患マーカーの濃度を測定する工程と、第1の群と第2の群との間で、測定された前記肝臓疾患マーカーの濃度を比較する工程と、を含むことを特徴とする医薬品の検定方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、血液中の幾つかの代謝物質をのみを例えばCE−TOFMSで測定することによって、健常者、単純脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎、薬剤性肝障害、無症状B型肝炎キャリヤ、無症状C型肝炎キャリヤ、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、肝硬変、肝細胞がん患者を高精度(AUC:0.930−0.994)で診断することが可能になった。また本発明は、血中の逸脱酵素であるAST、ALTの測定値は必要とせず、代謝物(低分子化合物)の測定だけで、各種の肝臓疾患を特定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】健常者及び各種肝臓疾患患者の血清中の代謝物質の濃度のヒートマップ
【図2】各肝臓疾患のROC(受信者動作特性)曲線とAUC(曲線下面積)の例を示す図
【図3】ロジスティック回帰モデルと各代謝物の健常者(C)に対する診断寄与の例を示す図
【図4】同じく単純脂肪肝(SS)に対する診断寄与を示す図
【図5】同じく非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に対する診断寄与を示す図
【図6】同じく薬剤性肝障害(DI)に対する診断寄与を示す図
【図7】同じくB型キャリヤ(AHB)に対する診断寄与の例を示す図
【図8】同じくB型慢性肝炎(CHB)に対する診断寄与の例を示す図
【図9】同じくC型キャリヤ(AHC)に対する診断寄与の例を示す図
【図10】同じくC型慢性肝炎(CHC)に対する診断寄与の例を示す図
【図11】同じく肝硬変(CIR)に対する診断寄与の例を示す図
【図12】同じく肝臓がん(HCC)に対する診断寄与の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0030】
各種肝炎患者を区別する血液バイオマーカーを発見するため、健常者(control:C)35名、単純脂肪肝(SS)9名、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)11名、薬剤性肝障害(drug induced liver injury:DI)31名、無症状B型肝炎キャリヤ(asymptomatic hepatitis B carrier:AHB)8名、無症状C型肝炎キャリヤ(asymptomatic hepatitis C carrier:AHC)8名、B型慢性肝炎(chronic hepatitis B carrier:CHB)10名、C型慢性肝炎(chronic hepatitis C carrier:CHC)33名、肝硬変(CIR)17名、肝臓がん(hepatocellular carcinoma:HCC)33名、合計195名の血清を測定して、キャピラリー電気泳動−飛行時間型質量分析(CE−TOFMS)法を用いて、血中の低分子化合物を測定し、53種類の物質を同定、定量した。
【0031】
1.血清から代謝物質の抽出
健常者および各種肝炎患者から採取した血清(40μl)を標準物質入りのメタノール400μlに入れ、酵素を失活させ、代謝の亢進を止めた。120μlの超純水、400μlのクロロホルムを加えた後、4℃で5分間、4600gで遠心分離した。静置後、分離した水−メタノール相300μlを分画分子量5kDaの遠心限外ろ過フィルターを通過し、除タンパクした。ろ液を凍結乾燥後、Milli−Q水20μlを加え、それをCE−TOFMS測定に供した。
【0032】
2.キャピラリー電気泳動−質量分析装置(CE−TOFMS)による血清中の代謝物測定
CE−TOFMSを用いて、健常者および肝炎患者の血清中の低分子代謝産物を一斉に測定した。
【0033】
CE−TOFMS分析条件(非特許文献6)
a.キャピラリー電気泳動(CE)の分析条件
キャピラリーには、フューズドシリカキャピラリー(内径50μm、外径350μm、全長100cm)を用いた。緩衝液には、1Mギ酸(pH約1.8)を用いた。印加電圧は、+30kV、キャピラリー温度は20℃で測定した。試料は、加圧法を用いて50mbarで3秒間(約3nl)注入した。
【0034】
b.飛行時間型質量分析計(TOFMS)の分析条件
正イオンモードを用い、イオン化電圧は4kV、フラグメンター電圧は75V、スキマー電圧は50V、OctRFV電圧は125Vに設定した。乾燥ガスには窒素を使用し、温度300℃、圧力10psigに設定した。シース液は50%メタノール溶液を用い、質量較正用にレゼルピン(m/z 609.2807)を0.5μMとなるよう混入し10μl/minで送液した。レゼルピン(m/z 609.2807)とメタノールのアダクトイオン(m/z83.0703)の質量数を用いて、得られた全てのデータを自動較正した。
【0035】
各種肝臓疾患患者および健常者の血清中の各代謝物の定量結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
3.肝障害バイオマーカーの探索および評価
図1に健常者と各種肝臓疾患患者の血清中の代謝物質をCE−TOFMSを用いて測定した結果を示す。図の上の方にクラスタリングされたグルコサミン(Glucosamine)、メチオニンスルホキシド(Methionine Sulfoxide)、インドール−3−アセトアミド(Indole 3 - acetamide)などは、健常者に比べ、肝臓疾患患者で顕著に増加する傾向があり、反対に、Gly−Gly、Asn、Glnなどは肝臓疾患患者で減少した。また各疾患に対して各代謝物の変動は様々であった。
【0038】
各代謝物とも健常者の濃度の平均値で各疾患患者の濃度の平均値の比を算出後、ピアソン相関(Pearson Correlation)を用いて系統樹を作成した。
【0039】
図1、表1のように、各疾患によって、各代謝物の血中濃度が異なっているため、これらの成分の値を用いれば、各疾患を分けられるはずである。そこで、各肝臓疾患を区別するためのバイオマーカーの選定を目的に多変量解析手法の多重ロジスティック回帰分析を行った。結果を図2、得られた予測精度を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
また、多重ロジスティック回帰分析の結果が、偶然今回用いたデータだけで精度よく予測できただけでなく、同じ施設の別の症例や他の施設の症例でも高精度に分離が可能かを評価するため、各症例を、重複を許してランダムに抽出し、仮想的に作ったデータセットで多重ロジスティック回帰分析を行い、AUC値のばらつきを調べた(ブートストラップ試験)。この試験を疾患ごとに200回ずつ繰り返した結果、AUC値の平均値が大きく悪化しているものもなく、標準偏差も小さな値であり、最初の解析で得られた多重ロジスティック回帰が偶然良い結果を出していた可能性を否定する結果となった。この結果も合わせて表2に示す。また、各モデルの変数やオッズ比を表3、表4に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
また図3にロジスティック回帰モデルと各代謝物が各肝臓疾患の特定を、どの程度の精度でできるか示す。
【0045】
多重ロジスティック回帰分析では、目的変数である比率pに対して、k個の説明変数x1、x2、x3、…、xkを使って、
ln(p/1−p)=b0+b11+b22+b33+ … +bkk ・・・(1)
というpの回帰式を求めるが、表3、表4中のパラメータの値が、(1)式のb0、b1、…bkに入る具体的な値となる。切片は、定数項(b)の値を指す。
【0046】
また、症例ごとに確率を計算するときは、例えば単純脂肪肝SSのグループでは、表中の切片の値24.2をb0、トリメチルアミンN−オキシド(Trimethylamine N- oxide)の値−0.64をb1、N,N−ジメチルグリシン(N , N - Dimethylglycine)の値3.49をb2、…、グリセロホスホリルコリン(Glycerophsphorylcholine)の値−0.39をb6とし、トリメチルアミンN−オキシドの定量値をx1、N,N−ジメチルグリシンの定量値をx2、…、グリセロホスホリルコリンの定量値をx6に代入して具体的な値を出す。推定したパラメータの標準誤差及び95%信頼区間も表中に示す。
【0047】
また、説明変数xは、ステップワイズ変数選択法の変数増減法によって選択する。これは変数が0の状態からスタートして、変数の追加と除去を繰り返し、多重ロジスティック回帰分析に必要な変数の組み合わせを探す方法である。P<0.25を満たす変数を変数のうちでP値が最小のものを追加し、P>0.25を満たす変数のうちでP値が最大のものを除去する。変数を除去する処理は、全ての変数が有意になるまで行い、有意な変数だけが残った時点で、変数を追加する処理に切り替わる。
【0048】
これらの解析結果から、健常者(C)も含めてすべての種類の肝炎患者を非常に高い精度(AUC 0.930以上)で選択的に区別できるバイオマーカー候補が見つかった(図2および表2)。例えば、NASHを他の肝臓疾患および健常者から識別するバイオマーカーはAla、Ser、5−オキソプロリン(5-oxoproline)、ピペコレート(Pipecolate)、カルニチン(Carnitine)、ホモアルギニン(Homoarginine)であり(表3)、特にオッズ比の高いホモアルギニンの濃度が、NASHを他の肝臓疾患と区別することに寄与していることが判明した。
【0049】
他の肝臓疾患も同様に多重ロジスティック回帰分析を行うことによって、表3、表4に示した幾つかの代謝物を用いることによって、AUC 0.930以上で各疾患を高精度に区別することが可能である。
【0050】
図3に多重ロジスティック回帰分析(MLR)および個々の代謝物によるAUC値を示した。例えば健常者の場合は、予想通り多重ロジスティック回帰分析(MLR)が最も高く0.994であるが、次にメチオニンスルホキシド(methionine sulfoxide)(AUC 0.887)、Asn(AUC 0.785)、Tyr(AUC 0.783)と続き、26位のGln(AUC 約0.65)までの代謝物が、その物質一個で健常者と他の肝臓疾患を有意に区別することが可能であった。図3中の有意差はマン−ホイットニー(Man-Whitney)検定を用い、***はP値<0.001、**はP値<0.01、*はP値<0.05を示す。
【0051】
同様に他の疾患も、多重ロジスティック回帰分析(MLR)が最も高いAUC値を示したが、個々の代謝物を用いても、他の疾患と区別することが可能である。
【0052】
本発明による血清中の低分子代謝物質による診断法は、単純脂肪肝(SS)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、薬剤性肝障害(DI)、B型キャリヤ(AHB)、C型キャリヤ(AHC)、B型慢性肝炎(CHB)、C型慢性肝炎(CHC)、肝硬変(CIR)、肝臓がん(HCC)、肝硬変(cirrhosis)などの各種の肝障害および健常者の診断が可能である。
【0053】
多重ロジスティック回帰分析では、幾つかの代謝物の組み合わせの例を記したが、それらに特定されるわけではなく、有意差がある代謝物質などに置き換えて診断することも可能である。
【0054】
また今回は血清中の代謝物の測定に、キャピラリー電気泳動―質量分析(CE−MS)法を用いたが、高速液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、チップLCや、チップCE、それらに質量分析計(MS)を組み合わせたGC−MS、LC−MS、CE−MS法、各種のMS単独の測定法、NMR法、代謝物質を蛍光物質やUV吸収物質に誘導体化してから測定する方法、抗体を作成してELISA法などで測定するなど、測定法にこだわらず、あらゆる分析法で測定することが可能である。
【0055】
本発明に係る医薬品の検定方法は、哺乳動物において、その医薬品が投与された哺乳動物から採取された血液と、投与されていない哺乳動物から採取された血液について、本発明のマーカーの濃度を測定する方法のことである。なお、この検定方法に用いられる血液を採取する哺乳動物は特に制限がないが、上記マーカーのうち少なくとも一つがその血液中に存在する哺乳動物であることが好ましく、マウスやラットなどのげっ歯類や、ヒト、サル、犬であることが、より好ましい。
【0056】
ここで、医薬品の肝臓疾患に対する治療薬としての有効性を検定する場合、医薬品の適用となる対象疾病は、肝臓疾患マーカーの使用対象となる疾病と同様である。
【0057】
なお、本発明に係る検定方法の目的は、肝臓疾患に対する治療薬として医薬品の有効性を検定することであるが、具体的には、様々な局面で用いられる。以下に、代表的な使用例を述べるが、本発明の検定方法は、これらの例に限定されない。
【0058】
(1)治療薬としての有効性の検定
以下に、肝炎に対する使用例を述べるが、本発明の検定方法は、これらの例に限定されない。
【0059】
(1−1)特定個体における薬効検定
例えば、本発明の検定方法を用い、ある肝炎治療薬が、特定の患者の肝炎を治療するのに有効であるかどうか、判定することができる。まず、肝炎に罹患した患者に肝炎治療薬を投与する前後で、その患者から血液を採取する。続いて、その血液において、肝炎診断マーカーの濃度を測定する。こうして得られた血液中のマーカー濃度を、肝炎治療薬の投与前後で比較する。この時、肝炎治療薬投与後の血液中マーカー濃度が、投与前と比較して有意に低下していれば、肝炎治療薬がその患者の肝炎を治療するのに有効であると判断できる。
【0060】
(1−2)一般的な薬効検定
さらに、本発明の検定方法を複数のヒト個体に適用することにより、その医薬品の、肝炎治療薬としての一般的な有効性を検定することも可能である。
【0061】
例えば、肝炎を患った複数のヒトにおいて、肝炎治療薬の投与前後で肝炎診断マーカーの濃度を比較することにより、その物質の治療薬としての普遍的効果を調べることができる。
【0062】
あるいは、別態様として、2つの群の間で医薬品としての効果を比較してもよい。まず、肝炎に罹患している患者を2つの群に分ける。一方の群の患者には肝炎治療薬を投与し、もう一方の群の患者にはその治療薬を投与しないか、またはプラセボを投与する。これらの2つの群の患者から血液を採取する。続いて、その血液において、肝炎診断マーカーの濃度を測定する。さらに、この測定により得られた、血液中のマーカー濃度を、2つの群の間で比較する。
【0063】
なお、「群」は一個体しか含まなくても、複数の個体を含んでもよく、2つの群の個体数が同じであっても、異なっていてもよい。測定は、同じ群の個体から採取した血液をプールし、その血液中のマーカー濃度を測定してもよいが、各個体の血液において別々にマーカー濃度を測定することが好ましい。
【0064】
医薬品の投与の前後や投与の有無といった、複数の血液を含むグループ間でのマーカー濃度の比較は、一血液ずつを対にして比較しても、同じグループに属する複数の血液におけるマーカー濃度の積算値や平均値をグループ間で比較してもよい。この比較は当業者に周知のいずれの統計学的方法を用いて行うことができる。このように比較した結果、治療薬の投与後において、投与前と比較して血液中マーカー濃度が有意に低下していたり、治療薬の投与群において、非投与群と比較して有意に低下していたりすれば、その治療薬が肝炎の治療に有効であると判断できる。また、低下の度合いによって、どの程度の有効性を有するかも判断できる。
【0065】
このように、肝炎治療薬としての一般的な有効性を検定することによって、肝炎治療薬のスクリーニングを行うことができる。また、複数の肝炎治療薬を用い、各肝炎治療薬の異なる濃度について治療効果を調べ、濃度に依存した薬効の違いを比較することにより、各肝炎治療薬の強さを調べることも可能である。
【0066】
上述したように、本発明の肝臓疾患マーカーは、肝臓疾患治療用医薬品の検定あるいは疾病の診断などに用いることができる。その時、複数のマーカーを用いることによって、検定精度や診断精度を上げることができる。また、本発明のマーカー以外の検定方法や診断方法を組み合わせても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明で発見した血液中の代謝物は、各種の肝障害患者の迅速なスクリーニング法として有用であるばかりでなく、マウス、ラット、サル、イヌなどの実験動物の各種の肝障害を把握するマーカーとして使用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液中の代謝物である低分子化合物のいずれかのみ、又は、同じく低分子化合物のみの組合せであることを特徴とする肝臓疾患マーカー。
【請求項2】
請求項1に記載の肝臓疾患マーカーであって、
メチオニンスルホキシド(Methionine sulfoxide)、Asn、Tyr、サルコシン(Sarcosine)、N,N−ジメチルグリシン(N,N-Dimethylglycine)、N−アセチルオルニチン(N-Acetylornithine)、インドール−3−アセトアミド(Indole-3-acetamide)、グルコサミン(Glucosamine)、Phe、ホモアルギニン(Homoarginine)、Pro、クレアチン(Creatine)、Val、クレアチニン(Creatinine)、Glu、ヒポキサンチン(Hypoxanthine)、5−オキソプロリン(5-Oxoproline)、Lys、タウリン(Taurine)、ヒドロキシプロリン(Hydroxyproline)、キヌレニン(Kynurenine)、N−γ−エチルグルタミン(N-γ-Ethylglutamine)、Ile+Leu、Gly−Gly、Glnのいずれか、又は、
クレアチン、Glu、メチオニンスルホキシド、Phe、ホモアルギニン、5−メトキシ−3−インドールアセテート(5-Methoxy-3-indoleaceate)の組合せであることを特徴とする健常者識別用の肝臓疾患マーカー。
【請求項3】
請求項1に記載の肝臓疾患マーカーであって、
グリセロホスホリルコリン(Glycerophsphorylcholine)、Gln、Gly−Gly、キヌレニン、Glu、グルコサミン、Met、His、メチオニンスルホキシド、N−γ−エチルグルタミン、オルニチン(Ornithine)、Asn、Ile+Leu、インドール−3−アセトアミド、ピペコレート(Pipecolate)、N,N−ジメチルグリシン、Tyr、Trp、Gly、ホモアルギニン、Ser、γ−ブチロベタイン(γ-Butyrobetaine)のいずれか、又は、
トリメチルアミンN−オキシド(Trimethylamine N-oxide)、N,N−ジメチルグリシン、クレアチニン、Ile+Leu、オルニチン、グリセロホスホリルコリンの組合せであることを特徴とする単純脂肪肝(SS)識別用の肝臓疾患マーカー。
【請求項4】
請求項1に記載の肝臓疾患マーカーであって、
His、Ser、Gly−Gly、Gly、ピペコレート、オルニチン、グリセロホスホリルコリン、ホモアルギニン、インドール−3−アセトアミド、Asn、γ−ブチロベタイン、Lys、Arg、Phe、グルコサミン、キヌレニン、Thr、Met、グアニドアセテート(Guanidoacetate)、タウリン、N−アセチルオルニチン、カルニチン(Carnitine)、シトルリン(Citrulline)のいずれか、又は、
Ala、Ser、5−オキソプロリン、ピペコレート、カルニチン、ホモアルギニンの組合せであることを特徴とする非アルコール性脂肪肝炎(NASH)識別用の肝臓疾患マーカー。
【請求項5】
請求項1に記載の肝臓疾患マーカーであって、
5−メトキシ−3−インドールアセテート、シトルリン、グリセロホスホリルコリン、α−アミノアジぺート(α-Aminoadipate)、N,N−ジメチルグリシン、オルニチン、N−アセチルオルニチン、ベタイン(Betaine)、3−メチルヒスチジン(3-Methylhistidine)、N−γ−エチルグルタミン、トリメチルアミンN−オキシド、メチオニンスルホキシド、1−メチルニコチンアミド(1-Methylnicotinamide)、Met、Phe、Tyr、カルニチン、γ−ブチロベタイン、グルコサミン、ホモアルギニン、キヌレニン、クレアニチン、Thr、Asn、5−オキソプロリンのいずれか、又は、
α−アミノアジペート、N−アセチルオミシン(N-Acetylomithine)、5−メトキシ−3−インドールアセテートの組合せであることを特徴とする薬剤性肝障害(DI)識別用の肝臓疾患マーカー。
【請求項6】
請求項1に記載の肝臓疾患マーカーであって、
Val、α−アミノアジペート、インドール−3−アセトアミド、γ−ブチロベタイン、His、Trp、グアニドアセテート、Ile+Leu、Tyr、サルコシン、カルニチン、1−メチルニコチンアミド、3−メチルヒスチジン、Gln、クレアチニン、Lys、Alaのいずれか、又は、
クレアチニン、Val、Ile+Leu、Asn、Gly−Gly、Phe、Argの組合せであることを特徴とする無症状B型肝炎キャリヤ(AHB)識別用の肝臓疾患マーカー。
【請求項7】
請求項1に記載の肝臓疾患マーカーであって、
Tyr、サルコシン、γ−ブチロベタイン、メトホルミン(Metformin)、Trp、1−メチルニコチンアミド、α−アミノアジテート、N,N−ジメチルグリシン、プソドペレチエリン(Pseudopelletierine)、メチオニンスルホキシド、Lys、アセチルコリン(Acetylcholine)、ピペリジン(Piperidine)、His、Ile+Leu、Val、クレアチニン、ベタイン、Ala、Thr、タウリン、Phe、グアニドアセテート、ピペコレート、Ser、ヒドロキシプロリン、Pro、キヌレニンのいずれか、又は、
サルコシン、クレアチニン、Ile+Leu、アセチルコリン、3−メチルヒスチジン(3-Methylhistidine)の組合せであることを特徴とする無症状B型慢性肝炎(CHB)識別用の肝臓疾患マーカー。
【請求項8】
請求項1に記載の肝臓疾患マーカーであって、
Arg、タウリン、Asp、Ser、Gly、カルニチン、シトルリン、ベタイン、5−メトキシ−3−インドールアセテート、His、γ−ブチロベタイン、ヒポキサンチン、クレアチン、Tyr、Valのいずれか、又は、
Gly、トリメチルアミンN−オキシド、タウリン、Ile+Leu、Asn、オルニチン、Glu、プソイドペレチエリン、インドール−3−アセトアミド、N−γ−エチルグルタミン(N-γ-Ethylglutamine)、グルコサミン、Tyrの組合せであることを特徴とする無症状C型肝炎キャリヤ(AHC)識別用の肝臓疾患マーカー。
【請求項9】
請求項1に記載の肝臓疾患マーカーであって、
メチオニンスルホキシド、Met、Glu、グルコサミン、Gln、グリセロホスホリルコリン、Asn、Phe、Lys、Pro、ヒポキサンチン、グアニドアセテート、キヌレニン、ピペコレート、5−メトキシ−3−インドールアセテート、メトホルミンのいずれか、又は、
トリメチルアミンN−オキシド、クレアチニン、Pro、グアニドアセテート、ベタイン、Thr、タウリン、メトホルミン、ヒドロキシプロリン、クレアチン、Asp、ヒポキサンチン、1−メチルニコチンアミド、Gln、Glu、Met、His、メチオニンスルホキシド、3−メチルヒスチジン、N−アセチルオルチニン、Arg、シトルリン、Tyr、5−メトキシ−3−インドールアセテート、グリセロホスホリルコリンの組合せであることを特徴とするC型慢性肝炎(CHC)識別用の肝臓疾患マーカー。
【請求項10】
請求項1に記載の肝臓疾患マーカーであって、
シトルリン、オルニチン、N,N−ジメチルグリシン、Tyr、タウリン、1−メチルニコチンアミド、N−γ−エチルグルタミン、N−アセチルオルニチン、ホモアルギニン、グアニドアセテートのいずれか、又は、
Gly、トリメチルアミンN−オキシド、タウリン、Ile+Leu、Asn、オルニチン、Glu、プソイドペレチエリン、インドール−3−アセトアミド、N−γ−エチルグルタミン、グルコサミン、Tyrの組合せであることを特徴とする肝硬変(CIR)識別用の肝臓疾患マーカー。
【請求項11】
請求項1に記載の肝臓疾患マーカーであって、
ジメチルグリシン、シトルリン、アセチルオルニチン、トリメチルアミンN−オキシド、ホモアルギニン、ベタイン、2AB、オルニチン、Tyr、Lys、3−メチルヒスチジン、クレアチニン、5−オキソプロリンのいずれか、又は、
トリメチルアミンN−オキシド(Trimethylamine N−Oxide)、Pro、ベタイン、タウリン、メトホルミン、ヒドロキシプロリン、オルニチン、Asp、ヒポキサンチン、1−メチルニコチンアミド、γ−ブチロベタイン(γ−Butyrobetaine)、Lys、His、メチオニンスルホキシド、Phe、N−アセチルオルニチン、Arg、シトルリン、ホモアルギニン、Trp、5−メトキシ−3−インドールアセテートの組合せであることを特徴とする肝臓がん(HCC)識別用の肝臓疾患マーカー。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の肝臓疾患マーカーを測定することを特徴とする肝臓疾患マーカーの測定方法。
【請求項13】
サンプルから分析に適した試料を作成する手段と、
試料中の請求項1乃至11のいずれかに記載の肝臓疾患マーカーを測定するための分析手段と、
を備えたことを特徴とする肝臓疾患マーカーの測定装置。
【請求項14】
医薬品の投与前及び投与後に採取された哺乳動物の血液において、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の肝臓疾患マーカーの濃度を測定する工程と、
前記測定の結果を、前記医薬品の投与前の血液と投与後の血液とで比較する工程と、
を含むことを特徴とする医薬品の検定方法。
【請求項15】
哺乳動物において、医薬品を投与された一以上の個体からなる第1の群から採取された血液、及び、前記医薬品を投与されていない一以上の個体からなる第2の群から採取された血液について、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の肝臓疾患マーカーの濃度を測定する工程と、
第1の群と第2の群との間で、測定された前記肝臓疾患マーカーの濃度を比較する工程と、
を含むことを特徴とする医薬品の検定方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−232164(P2011−232164A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102579(P2010−102579)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】