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肝臓線維化抑制剤
説明

肝臓線維化抑制剤

【課題】新規の肝臓線維化抑制剤の提供。
【解決手段】リコカルコンA(Licochalcone A)を有効成分とする肝臓線維化抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の肝臓線維化抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓は、正常状態から、慢性肝炎及び肝硬変を経て肝がんへと移行することが知られており、これら移行過程のいずれかを遅らせることで、病態の進行を抑制することが重要となる。例えば、投薬によって肝硬変の進行を遅らせるために従来は、インターフェロンやグリチルリチン製剤が使用されている(非特許文献1及び2参照)。
【0003】
一方、慢性肝炎は、肝臓の線維化を経て肝硬変、肝がんへと進行することが知られている。これに対して、近年の研究によって、肝星細胞(Hepatic Stellate Cell)が肝臓の線維化に関与することが明らかとなっている。肝星細胞は、肝臓の類洞壁をなす内皮細胞と肝細胞(肝実質細胞)との隙間(ディッセ (Disse)腔)に存在し、脂肪とビタミンAを血中から取り込んで貯蔵する機能を有する。そして、休止状態から活性化状態に移行することで、脂肪が消失し、筋線維芽細胞様に形態が変化して増殖すると共に、コラーゲンを盛んに産生する。肝星細胞では、抗炎症サイトカインであるTGF−β等によるコラーゲンの産生と、MMP13(マトリックスメタロプロテイナーゼ(Matrix−metalloproteinase)13)等によるコラーゲンの分解とで、コラーゲン量のバランスが保たれているが、慢性肝炎では、このバランスが崩れることでコラーゲンが過剰に蓄積され、肝星細胞が線維化すると考えられる。したがって、肝星細胞の線維化を抑制する手法は、肝臓の線維化、すなわち肝硬変の進行抑制に極めて有効であると考えられる
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A long-term glycyrrhizin injection therapy reduces hepatocellular carcinogenesis rate in patients with interferon-resistant active chronic hepatitis C: a cohort study of 1249 patients., Ikeda K, Arase Y, Kobayashi M, Saitoh S, Someya T, Hosaka T, Sezaki H, Akuta N, Suzuki Y, Suzuki F, Kumada H., Dig Dis Sci. 2006 Mar;51(3):603-9.
【非特許文献2】Long-term outcome after interferon therapy in elderly patients with chronic hepatitis C., Arase Y, Ikeda K, Suzuki F, Suzuki Y, Saitoh S, Kobayashi M, Akuta N, Someya T, Koyama R, Hosaka T, Sezaki H, Kobayashi M, Kumada H., Intervirology. 2007;50(1):16-23.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、肝硬変の進行抑制、肝がんの予防には、肝臓の線維化抑制が重要であり、新規の線維化抑制剤の開発が強く望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、新規の肝臓線維化抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、甘草(Licorice)由来の成分として知られるリコカルコンA(Licochalcone A)が、肝臓線維化抑制作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、上記課題を解決するため、
本発明は、リコカルコンA(Licochalcone A)を有効成分とする肝臓線維化抑制剤を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規の肝臓線維化抑制剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1における電気泳動後の撮像データである。
【図2】試験例1における電気泳動後の撮像データである。
【図3】実施例2におけるMMP13(マトリックスメタロプロテイナーゼ13)プロモーターの活性の測定結果を示すグラフである。
【図4】実施例3におけるCOL1A2(I型コラーゲンのα2鎖)プロモーターの活性の測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例4における培養後の肝星細胞の撮像データであり、(a)はLicoA(リコカルコンA)を使用した場合、(b)はGA(グリチルレチン酸)を使用した場合、(c)はGL(グリチルリチン)を使用した場合、(d)はDMSO(N,N−ジメチルスルホキシド)を使用した場合の、それぞれの撮像データである。
【図6】実施例5における薬剤投与後のマウスの肝臓の撮像データであり、(a)は四塩化炭素(CCl)及びLicoAを8週間投与した場合、(b)はCClを8週間投与し、この間、LicoAを後半の4週間投与した場合、(c)はCClを8週間投与した場合の、それぞれの撮像データである。
【図7】図6の撮像データから算出した、組織全面に占める線維化組織面の割合を示すグラフであり、(a)はCCl及びLicoAを8週間投与した場合、(b)はCClを8週間投与し、この間、LicoAを後半の4週間投与した場合、(c)はCClを8週間投与した場合を、それぞれ示す。
【図8】実施例5における薬剤投与後のマウスの血清中のトランスアミナーゼ値の測定結果を示すグラフであり、(a)はCCl及びLicoAを8週間投与した場合、(b)はCClを8週間投与し、この間CMCを前半の4週間、LicoAを後半の4週間それぞれ投与した場合、(c)はCCl及びCMCを8週間投与した場合を、それぞれ示す。
【図9】試験例2における、LicoAの投与方法と血清中濃度との関係を投与後の時間ごとに示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の肝臓線維化抑制剤(以下、「線維化抑制剤」と略記する)は、リコカルコンA(Licochalcone A、以下、「LicoA」と略記する)を有効成分とする。かかる線維化抑制剤は、肝星細胞(Hepatic Stellate Cell)を主因とする肝臓の線維化を抑制する。
【0011】
LicoAは、マメ科カンゾウ属の多年生植物の一種である甘草(Licorice)からの油性抽出物中に含まれ、下記式(1)で表される。
LicoAは、抗菌性を有することが知られており、近年は、抗マラリア活性を有する化合物として知られているが、肝臓線維化抑制作用を有することは、これまでに全く知られていない。
【0012】
【化1】

【0013】
本発明の線維化抑制剤の製剤形態は特に限定されず、目的に応じて錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、細粒剤、液剤(水薬等)等の経口剤;吸入剤、座剤、注射剤、貼付剤、スプレー剤、軟膏等の非経口剤等から適宜選択すればよい。これら製剤形態の線維化抑制剤は、いずれも公知の方法で製造できる。
【0014】
線維化抑制剤を経口剤等の製剤形態とする場合には、これら製剤の製造で通常使用される各種添加剤を配合してもよい。前記添加剤としては、賦形剤、滑沢剤、可塑剤、界面活性剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、安定剤、矯味剤、着色剤、香料等が例示できる。
前記添加剤は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0015】
前記賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、果糖、デキストリン、デンプン、食塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、無水ケイ酸、カオリン等が例示できる。
【0016】
前記滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルク、トウモロコシデンプン、マクロゴール等が例示できる。
【0017】
前記可塑剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン類、トリアセチン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル等が例示できる。
【0018】
前記結合剤としては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロースエステル、ポリビニルピロリドン、水飴、甘草エキス、トラガント、単シロップ等が例示できる。
前記崩壊剤としては、デンプン、カンテン、カルメロースカルシウム、カルメロース、結晶セルロース等が例示できる。
前記湿潤剤としては、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0019】
前記矯味剤としては、白糖、ハチミツ、サッカリンナトリウム、ハッカ、ユーカリ油、ケイヒ油等が例示できる。
前記着色剤としては、酸化鉄、β−カロチン、クロロフィル、水溶性食用タール色素等が例示できる。
前記香料としては、レモン油、オレンジ油、dl−又はl−メントール等が例示できる。
【0020】
線維化抑制剤を吸入剤、注射剤、貼付剤、スプレー剤、軟膏等、非経口剤の製剤形態とする場合には、使用できる溶媒として、注射用蒸留水、無菌の非水性溶媒、懸濁剤等が例示できる。非水性溶媒又は懸濁剤の基剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、オリーブ油、コーン油、オレイン酸エチル等が好ましいものとして例示できる。
【0021】
さらに、線維化抑制剤を貼付剤等、非経口剤の製剤形態とする場合には、有効成分等の各成分と基剤との混合物を、布、紙、プラスチックフィルム等に薄く塗布すれば良い。
【0022】
本発明の線維化抑制剤には、本発明の効果を妨げない範囲内で、上記成分以外の薬学上許容される任意成分を、必要に応じて適宜配合しても良い。
前記任意成分としては、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤等が例示できる。
【0023】
本発明の線維化抑制剤は、経口投与及び非経口投与のいずれでも投与できるが、非経口投与とすることが好ましく、注射剤として投与することが特に好ましい。
【0024】
線維化抑制剤の投与量は、患者の年齢、症状等により適宜調節することが好ましい。経口投与の場合には、通常、成人一人一日あたり、LicoAの量として、0.5mg〜2.0gであることが好ましい。非経口投与の場合にも、通常、成人一人一日あたり、LicoAの量として、0.5mg〜2.0gであることが好ましい。
本発明の線維化抑制剤は、所定量を一日に一回又は複数回に分けて投与される。
【0025】
LicoAは、公知の方法に従って合成することができ、また、甘草(Licorice)から抽出することもできる。
LicoAを合成した場合には、反応終了後、常法により必要に応じて後処理を行い、生成物を取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は二つ以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、生成物を取り出せばよい。また、取り出した生成物は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は二つ以上組み合わせて一回以上行うことで、精製してもよい。
さらに、LicoAは、甘草を破砕等の加工後に、水及び有機溶媒の二層系から公知の方法に従って抽出することでも得られる。この時、適宜必要に応じて、得られた抽出成分を上記と同様の後処理、取り出し、精製に供してもよい。
LicoAとしては、市販品を使用してもよい。
【0026】
肝星細胞は、休止状態から活性化状態へと移行することで、線維化され得るものとなる。
そして、LicoAは、実施例で後述するように、活性化状態にある肝星細胞の線維化を抑制する。この時、LicoAは、マトリックスメタロプロテイナーゼ13(Matrix−metalloproteinase 13、以下、「MMP13」と略記する)の発現を促進してコラーゲンの分解を促進すると共に、I型コラーゲンのα2鎖(以下、「COL1A2」と略記する)の発現を抑制してコラーゲンの産生を抑制することで、コラーゲンの過剰な蓄積を抑制すると考えられる。
また、LicoAは、肝星細胞に対する休止状態から活性化状態への移行を抑制する。
これら作用により、本発明の線維化抑制剤は、肝臓の線維化を抑制する。
【実施例】
【0027】
以下、具体的に実施例を挙げ、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において単位「M」は「モル/L」を意味する。また、各薬剤の皮下投与及び腹腔内投与は、注射器を使用して行った。
【0028】
<活性化状態の肝星細胞におけるMMP13のmRNA発現に対するLicoAの作用の確認>
[実施例1]
(肝星細胞の分離、及び活性化状態の肝星細胞の培養)
マウスの肝臓からプロナーゼ及びコラゲナーゼ灌流法によって肝星細胞を分離した。
次いで、分離した肝星細胞をプラスティックディッシュに播種し、液体培地である10%のウシ胎児血清(FCS)を含むダルベッコMEM(DMEM)溶液中で、37℃で7日間培養することで、肝星細胞を休止状態から活性化状態へと移行させた。さらに、血清成分の影響を極力除くため、血清濃度を10%から0.1%へと変更して24時間培養した。
次いで、
(1−a)LicoAを濃度が2.5μMとなるように
(1−b)グリチルレチン酸(Glycyrrhetinic acid、以下、「GA」と略記する)を濃度が5μMとなるように
(1−c)グリチルリチン(Glycyrrhizin、以下、「GL」と略記する)を濃度が5μMとなるように
(1−d)N,N−ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と略記する)を濃度が0.4%となるように
それぞれ別々に培養物に添加し、さらに37℃で24時間培養した。なお、これら培養サンプルは、添加した薬剤(LicoA等)ごとに3個ずつ作製した(n=3)。
【0029】
(MMP13に対応する配列の検出)
次いで、培養した活性化状態の肝星細胞からRNAを精製し、以降、常法にしたがって、cDNAを作製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法でcDNAを増幅させた後、これを2%アガロースゲル電気泳動に供して、MMP13に対応する配列を検出した。この時の泳動結果の撮像データを図1に示す。
【0030】
<休止状態の肝星細胞におけるMMP13のmRNA発現に対するLicoAの作用の確認>
[試験例1]
(肝星細胞の分離、休止状態の肝星細胞の培養、及びMMP13に対応する配列の検出)
肝星細胞播種後の7日間の培養に代えて、同じ温度での24時間の培養を行うことで、肝星細胞を休止状態のままとし、活性化状態へ移行させなかったこと以外は、実施例1と同様に培養し、MMP13に対応する配列を検出した。この時の泳動結果の撮像データを図2に示す。なお、培養サンプルは、添加した薬剤(LicoA等)ごとに2個ずつ作製した(n=2)。
【0031】
図1から明らかなように、活性化状態の肝星細胞において、LicoAを使用した場合には、DMSOを使用した場合(コントロール)よりも、MMP13に対応するバンドが濃くなっており、MMP13のmRNA発現が促進されたことを確認できた。一方、GA及びGLを使用した場合には、DMSOを使用した場合と大きな違いは認められなかった。このように、LicoAは、MMP13の発現を促進し、活性化状態の肝星細胞の線維化抑制作用を有することが確認できた。
一方、図2から明らかなように、休止状態の肝星細胞において、LicoAを使用した場合には、DMSOを使用した場合(コントロール)よりも、MMP13に対応するバンドが薄くなっており、MMP13のmRNA発現が抑制されたことを確認できた。一方、GA及びGLを使用した場合には、DMSOを使用した場合と大きな違いは認められなかった。肝星細胞のここでの休止状態は、活性化直前、すなわち肝障害初期の状態と言うこともできる。そして、肝障害初期にMMP13が増加すると、肝障害の憎悪が認められることが知られているので、休止状態でLicoAがMMP13のmRNA発現を抑制したことは、LicoAが肝障害初期に肝障害憎悪に対する抑制作用を有することが示唆される。
【0032】
<活性化状態の肝星細胞におけるMMP13プロモーターの活性の確認>
[実施例2]
(活性化状態の肝星細胞の分離、及び活性化状態の肝星細胞へのMMP13プロモーターの導入)
四塩化炭素(以下、「CCl」と略記する)の投与によって肝硬変を生じさせたラットより分離及び確立された活性化状態の肝星細胞株(CFSC−8B cells)を用いた。
前記株化活性化肝星細胞をプラスティックディッシュに播種し、液体培地である10%のFCSを含むDMEM溶液中で、37℃で48時間培養した。さらに、液体培地中に、MMP13プロモーターとホタルルシフェラーゼ遺伝子とを結合させたプラスミドのリン酸カルシウム共沈物を添加し、5時間培養後、グリセロールショックにより、これら肝星細胞に前記プラスミドを導入した。
次いで、0.1%のFCSを含むDMEMと交換し、
(2−a)LicoAを濃度が2.5μMとなるように
(2−b)GAを濃度が5μMとなるように
(2−c)GLを濃度が5μMとなるように
(2−d)グリチルレチン酸モノグルクロナイド(Glycyrrhetinic Acid Mono−Glucuronide、以下、「MGA」と略記する)を濃度が5μMとなるように
(2−e)DMSOを濃度が0.4%となるように
それぞれ別々に培養物に添加し、さらに37℃で48時間培養した。なお、これら培養サンプルは、添加した薬剤(LicoA等)ごとに3個ずつ作製した(n=3)。
【0033】
(MMP13プロモーターの活性測定)
次いで、培養終了後の肝星細胞について、常法に従い、ルシフェラーゼのアッセイを行い、MMP13プロモーターの活性を測定した。この時の測定結果を図3に示す。図3のグラフ中、縦軸はDMSOを使用した場合(コントロール)の活性を100%とした時の、各薬剤を使用した場合の活性(%)を示す。
【0034】
図3から明らかなように、活性化状態の肝星細胞において、LicoAを使用した場合には、DMSOを使用した場合(コントロール)に対して、MMP13プロモーターの活性が2倍以上となっており、MMP13の発現が促進されたことを確認できた。一方、GA、GL及びMGAを使用した場合には、DMSOを使用した場合と大きな違いは認められなかった。
【0035】
<活性化状態の肝星細胞におけるCOL1A2プロモーターの活性の確認>
[実施例3]
(活性化状態の肝星細胞の分離、活性化状態の肝星細胞へのCOL1A2プロモーターの導入、及びCOL1A2プロモーターの活性測定)
常法に従い、COL1A2プロモーターとホタルルシフェラーゼ遺伝子とを結合させたプラスミドを作製した。そしてこのプラスミドを、MMP13プロモーターとホタルルシフェラーゼ遺伝子とを結合させたプラスミドに代えて使用し、さらに、薬剤としてGL及びMGAを使用しなかったこと以外は、実施例2と同様に培養し、COL1A2プロモーターの活性を測定した。この時の測定結果を図4に示す。図4のグラフ中、縦軸はDMSOを使用した場合(コントロール)の活性を100%とした時の、各薬剤を使用した場合の活性(%)を示す。なお、培養サンプルは、添加した薬剤(LicoA等)ごとに2〜3個ずつ作製した(n=2〜3)。
【0036】
図4から明らかなように、活性化状態の肝星細胞において、LicoAを使用した場合には、DMSOを使用した場合(コントロール)に対して、COL1A2プロモーターの活性は半分以下となっており、COL1A2の発現が抑制されたことを確認できた。一方、GAを使用した場合には、DMSOを使用した場合と大きな違いは認められなかった。
【0037】
活性化状態の肝星細胞において、LicoAは、実施例2から明らかなように、MMP13プロモーターの活性を向上させて、MMP13の発現を促進し、コラーゲンの分解を促進する。さらに、実施例3から明らかなように、COL1A2プロモーターの活性を抑制して、COL1A2の発現を抑制し、コラーゲンの産生を抑制する。このようにLicoAは、活性化状態の肝星細胞において、コラーゲンの過剰な蓄積を抑制する作用を有しており、これにより、肝星細胞の線維化を抑制する。
【0038】
<休止状態の肝星細胞に対するLicoAの作用の確認>
[実施例4]
(肝星細胞の分離及び培養)
実施例1と同様の方法で、マウスの肝臓から肝星細胞を分離した。
また、10%のFCSを含むDMEM溶液に、
(4−a)濃度が2.5μMとなるようにLicoAを溶解させた液体培地
(4−b)濃度が20μMとなるようにGAを溶解させた液体培地
(4−c)濃度が20μMとなるようにGLを溶解させた液体培地
(4−d)濃度が0.4%となるようにDMSOを溶解させた液体培地
をそれぞれ調製した。
次いで、分離した休止状態の肝星細胞をプラスティックディッシュに播種し、前記液体培地中で、それぞれ37℃で7日間培養した。
【0039】
(培養後の肝星細胞の観察)
次いで、培養した肝星細胞において、Monoclonal Anti−Actin,alpha−smooth muscleを用いた免疫蛍光染色によりα平滑筋アクチン(α−smooth muscle actin、以下、「αSMA」と略記する)を染色し、共焦点レーザー顕微鏡(「510meta」、Carl Zeiss社製)で画像を観察して、蛍光シグナルを検出することで、αSMAの発現の有無、発現の程度を確認した。αSMAは、筋線維芽細胞の指標として知られており、ここでは、肝星細胞の休止状態から活性化状態への移行の指標とした。この時の撮像データを図5に示す。図5中、(a)はLicoAを使用した場合((4−a))、(b)はGAを使用した場合((4−b))、(c)はGLを使用した場合((4−c))、(d)はDMSOを使用した場合((4−d))の、それぞれの撮像データである。
【0040】
図5から明らかなように、DMSOを使用した場合(コントロール、(d))には、αSMAが多量に検出され、αSMAによる細胞骨格の構築を確認できたのに対し、脂肪はほとんど確認できなかった。
一方、LicoAを使用した場合((a))には、αSMAがほとんど検出されず、αSMAによる細胞骨格の構築を確認できなかったのに対し、脂肪の残存を確認できた。GAを使用した場合((b))、GLを使用した場合((c))も同様であった。これらの蛍光シグナルは、一次抗体の除去で消失することから、免疫反応が特異的であることが判った。
以上のように、LicoAは、肝星細胞の休止状態から活性化状態への移行時に特徴的な、脂肪の消失、及び筋線維芽細胞様への形態変化を抑制しており、肝星細胞に対する休止状態から活性化状態への移行抑制作用を有しており、肝星細胞の線維化抑制作用を有することが確認できた。
【0041】
<肝臓に対するLicoAの作用の確認>
[実施例5]
(マウスの肝障害誘導と薬剤投与)
下記手順に従って、CClが投与されたマウスの肝星細胞に対するLicoAの作用を確認した。
すなわち、マウスに対して、
(5−a)8週間に渡って、1回の投与量を1mL/kgとして週に2回(合計16回)CClを皮下投与すると共に、この間並行して、1回の投与量を30mg/kgとして週に3回(合計24回)、LicoA0.5%カルボキシメチルセルロース(以下「CMC」と略記する)懸濁液を腹腔内投与した。
また、別のマウスに対して、
(5−b)8週間に渡って、1回の投与量を1mL/kgとして週に2回(合計16回)CClを皮下投与すると共に、この間並行して、前半の4週間は週に3回(合計12回)、後述するLicoA投与時に相当する用量の0.5%CMCを腹腔内投与し(すなわち、LicoAは投与しない。以下、同様。)、続く後半の4週間は1回の投与量を30mg/kgとして週に3回(合計12回)、LicoA0.5%CMC懸濁液を腹腔内投与した。
また、別のマウスに対して、
(5−c)8週間に渡って、1回の投与量を1mL/kgとして週に2回(合計16回)CClを皮下投与すると共に、この間並行して、週に3回(合計24回)、LicoA投与時に相当する用量の0.5%CMCを腹腔内投与した。
なお、使用したマウスは、それぞれの投与パターンごとに5〜6匹とした(n=5〜6)。
【0042】
(肝臓の観察)
上記のように8週間に渡って飼育したマウスから肝臓を切り出して切片を作製し、これをアザン(Azan)染色して、光学顕微鏡(「AX70」、OLYMPUS社製)を使用して画像を観察し、肝臓の線維化の程度を調べた。この時の撮像データを図6に示す。図6中、(a)はCCl及びLicoAを8週間投与した場合((5−a))、(b)はCClを8週間投与し、この間、LicoAを後半の4週間投与した場合((5−b))、(c)はCClを8週間投与した場合((5−c))の、それぞれの撮像データである。
さらに、前記撮像データから、組織全面に占める線維化組織面の割合(面積%)を算出した。結果を図7に示す。図7中、(a)はCCl及びLicoAを8週間投与した場合((5−a))、(b)はCClを8週間投与し、この間、LicoAを後半の4週間投与した場合((5−b))、(c)はCClを8週間投与した場合((5−c))を、それぞれ示す。すなわち、(a)〜(c)の符号は、図6及び7で共通している。
【0043】
(血清中のトランスアミナーゼ値の測定)
上記のように8週間に渡って飼育したマウスから血液を採取し、血清中のトランスアミナーゼ値を測定した。ここでは、トランスアミナーゼとして、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(以下、「AST」と略記する)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(以下、「ALT」と略記する)の値を測定した。結果を図8に示す。図8中、(a)はCCl及びLicoAを8週間投与した場合((5−a))、(b)はCClを8週間投与し、この間、LicoAを後半の4週間投与した場合((5−b))、(c)はCClを8週間投与した場合((5−c))を、それぞれ示す。すなわち、(a)〜(c)の符号は、図6〜8で共通している。
【0044】
図6及び7から明らかなように、(a)の場合には、(c)の場合に対して肝臓の線維化が有意に抑制され、(b)の場合よりもその効果が高かった。すなわち、肝障害発生の初期からLicoAを投与することで、肝臓の高い線維化抑制効果が得られた。
また、図8において、(a)の場合には、(b)及び(c)の場合よりもトランスアミナーゼ値が低い傾向にあった。これらトランスアミナーゼ(AST、ALT)は、肝実質細胞が破壊されることで血中に漏出するが、(a)の場合には、これが抑制されることを示唆しており、図6及び7の結果と整合していた。
【0045】
<LicoAの投与方法と血清中濃度との関係の確認>
[試験例2]
(ラットへのLicoAの投与)
下記手順に従って、ラットにおけるLicoAの投与方法と血清中濃度との関係を確認した。
すなわち、ラットに対して、
(T2−a)濃度が60mg/mLとなるように、LicoAのオリーブオイル懸濁液を調製し、LicoAの投与量が200mg/kgとなるように、この懸濁液を腹腔内投与した。
また、別のラットに対して、
(T2−b)濃度が60mg/mLとなるように、LicoA0.5%CMC懸濁液を調製し、LicoAの投与量が200mg/kgとなるように、この懸濁液を腹腔内投与した。
また、別のラットに対して、
(T2−c)LicoAを200mg/kgの投与量で経口投与した。
【0046】
(LicoAの血清中濃度の測定)
次いで、ラットから所定の時間ごとに血液を採取し、LicoAの血清中濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の手法を用いて測定した。結果を図9に示す。なお、図9のグラフ中、横軸の経過時間「0(分)」は、LicoAの投与時を意味する。
【0047】
図9から明らかなように、腹腔内投与によって、LicoAの血清中濃度が速やかに上昇することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、医療分野で慢性肝炎、肝硬変及び肝がんの治療に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リコカルコンA(Licochalcone A)を有効成分とする肝臓線維化抑制剤。

【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103925(P2013−103925A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250746(P2011−250746)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000170358)株式会社ミノファーゲン製薬 (16)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】