説明

肝臓脂肪蓄積抑制剤、脂肪肝改善剤、及びそれらの医薬組成物

【課題】肝臓への脂肪蓄積を抑制及び/または改善することで、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患、肝硬変や肝炎、肝癌への進展を予防及び改善に有効に使用できる肝臓脂肪蓄積抑制剤、脂肪肝改善剤を提供する。
【解決手段】肝臓脂肪蓄積抑制剤、脂肪肝改善剤の有効成分として、ブルーベリー葉の粉砕物、搾汁、あるいはその抽出成分を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然の植物成分を有効成分とする肝臓脂肪蓄積抑制剤、脂肪肝改善剤、及びそれらの医薬組成物としての用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年日本では、食生活の欧米化に伴い脂肪や炭水化物をはじめとするカロリー摂取量が年々増加し、さらに運動不足の傾向が強まっており、このため、体内に余分な脂肪が蓄積し、その脂肪が要因となり種々の疾病を惹起した患者が多数報告されている。食物として摂取する脂肪の大半はトリグリセリドである。当該トリグリセリド は体内においてエネルギー源として使われるものの、余分なものは肝臓や脂肪組織に蓄積する。また、食事による脂肪摂取だけでなく、炭水化物等を過剰に摂取すると、肝臓においてトリグリセリド合成が亢進し、血中トリグリセリド値が上昇する。その後過剰のトリグリセリド値は肝臓に蓄積し、脂肪肝の原因となる。脂肪肝が慢性的になると肝細胞に繊維化が起こり、さらに肝繊維化が進むと類洞周辺の血流が低下し、肝細胞の低栄養化および懐死が進行するといった悪循環が起こり、肝炎、肝硬変へと進行、さらには肝癌へと進展する。従って、肝臓への脂肪の蓄積を抑制することは脂肪肝の発症を抑制し、ひいては肝硬変や肝炎、並びに肝癌への進展を予防及び改善することにつながる。
【0003】
ところで現在、種々の天然由来機能性成分の探索が進められており、肝臓トリグリセリド濃度低下作用を有する天然由来の成分として、様々な素材が報告されている。非特許文献1では、茶が肝臓トリグリセリド濃度低下作用を有することが開示されている。また一方で、非特許文献1では、茶種による肝臓トリグリセリド濃度低下作用の差異についても検討されており、結論として茶種によりその作用は異なることが報告されている。このことから、植物種によって肝臓トリグリセリド濃度低下作用に違いがあることがうかがわれる。
【0004】
また、非特許文献2ではブルーベリー葉のエタノール抽出物をラットに摂食させることによって、ラットの血漿トリグリセリド濃度が低下することが報告されている。しかし、当該文献では肝臓における脂肪蓄積抑制作用については言及されていない。非特許文献3において、ラットに大豆イソフラボンを投与すると、血漿トリグリセリド濃度は低下するものの、肝臓のトリグリセリド濃度に変化は認められないことが報告されていることからも、血漿トリグリセリド濃度低下作用を示す物質が、必ずしも肝臓のトリグリセリド濃度を低下する作用を発揮するとは言えない。
【非特許文献1】Yang M et al., "Green, oolong and black tea extracts modulate lipid metabolism in hyperlipidemia rats fed high-sucrose diet." J Nutr Biochem. 12:14-20. (2001)
【非特許文献2】Cignarella A et al., "Novel lipid-lowering properties of vassinium myrtillus L. leaves a traditional antidiabetic treatment, in several models of rat dyslipidaemia: a comparison with ciprofibrate." Thrombosis Research. 84:311-322. (1996)
【非特許文献3】Isabelle et al., "Role of soy isoflavones in the hypotriglyceridemic effect of soy protein the rat " Journal of Nutritional Biochemistry. 13:671-677 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、天然の植物成分に由来する肝臓脂肪蓄積抑制剤、特に肝臓への脂肪蓄積を抑制して脂肪肝の発症を抑制するために用いられる肝臓脂肪蓄積抑制剤を提供することを目的とする。
【0006】
また本発明は、脂肪肝改善剤、特に脂肪肝を改善して肝障害の発生を予防するために用いられる脂肪肝改善剤を提供することを目的としている。
【0007】
さらに本発明は、肝臓脂肪蓄積抑制作用を有し、肥満、高脂血症または耐糖能異常などの症状や病態を有する患者に対して、肝臓への脂肪蓄積を抑制するため及び/または脂肪肝の発症を抑制するために用いられる植物由来の医薬組成物、ならびに脂肪肝改善作用を有し、非アルコール性脂肪性肝疾患の患者に対して、脂肪肝を改善するため及び/または肝障害を予防するために用いられる植物由来の医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解消すべく、ブルーベリー葉について、in vivo試験によって肝臓機能への影響を検討した結果、驚くべきことに、ブルーベリー葉に肝臓への脂肪蓄積抑制作用があり、これより脂肪肝の発症が抑制できること、またブルーベリー葉に脂肪肝を改善する作用があり、これにより肝障害の進展が予防できることを見出し、かかるブルーベリー葉を用いることにより上記目的を達成することができることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成するにいたったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の態様を有することを特徴とする。
項1:ブルーベリー葉加工処理物を有効成分とする肝臓脂肪蓄積抑制剤。
項2:ブルーベリー葉加工処理物が、ブルーベリー葉の粉砕物、搾汁及び抽出物よりなる群から選択される少なくとも1つである、項1記載の肝臓脂肪蓄積抑制剤。
項3:ブルーベリー葉抽出物がブルーベリー葉の熱水抽出物である、項1記載の肝臓脂肪蓄積抑制剤。
項4:脂肪肝の発症を抑制するために用いられる、項1記載の肝臓脂肪蓄積抑制剤。
項5:肥満、高脂血症および耐糖能異常のうち、少なくとも1つの症状または病態を有する患者に対して、肝臓への脂肪の蓄積を抑制するために用いられる、項1、2、3、及び4のいずれかに記載する肝臓脂肪蓄積抑制剤を含む医薬組成物。
項6:ブルーベリー葉加工処理物を有効成分とする脂肪肝改善剤。
項7:ブルーベリー葉加工処理物が、ブルーベリー葉の粉砕物、搾汁及び抽出物よりなる群から選択される少なくとも1つである、項6記載の脂肪肝改善剤。
項8:ブルーベリー葉抽出物がブルーベリー葉の熱水抽出物である、項7記載の脂肪肝改善剤。
項9:非アルコール性脂肪性肝疾患の患者に対して、脂肪肝改善と肝障害進展予防のために用いられる、項6、7、8、及び9のいずれかに記載する脂肪肝改善剤を含む医薬組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブルーベリー葉の加工処理物、例えばブルーベリー葉の粉砕物、搾汁及び/又は抽出物等を有効成分とする肝臓脂肪蓄積抑制剤によれば、肝臓のトリグリセリド濃度を低下することにより肝臓への脂肪の蓄積を抑制することができる。さらに、本発明の肝臓脂肪蓄積抑制剤によれば、肝臓のトリグリセリド濃度を低下することにより脂肪肝への進展およびその発症を抑制することができる。このため、本発明の肝臓脂肪蓄積抑制剤は、肝臓トリグリセリド濃度が高値を示す確度の高いヒト、特に肥満、高脂血症または耐糖能異常の少なくとも1つの症状や病態を有する患者に対して、肝臓トリグリセリド濃度を低下させて肝臓への脂肪の蓄積を抑制するために有効に用いることができる。
【0011】
さらに、本発明の脂肪肝改善剤は、非アルコール性脂肪性肝疾患に対して、肝臓に蓄積した脂肪を低減して脂肪肝を改善するために有効に用いることができ、さらに肝障害への進展を抑制することができる。このため、本発明の肝臓脂肪蓄積抑制剤、および脂肪肝改善剤は、上述の作用に基づいて、さらに肝硬変、肝炎及び肝癌への進展を予防しまた改善する作用を有する。
【0012】
本発明において有効成分として使用するブルーベリー葉の加工処理物は、後述する反復投与毒性試験(実験例5)で示すように、ラットへの亜急性毒性における血液及び組織の異常が認められないことから安全であり、肥満、高脂血症または耐糖能異常を有する患者、ならびに非アルコール性脂肪性肝疾患の患者に対しても長期に亘って安心して投与することができる。なお、本発明の肝臓脂肪蓄積抑制剤、脂肪肝改善剤、及びそれらの医薬組成物は、上記疾病の患者以外にも、肝臓脂肪蓄積抑制、脂肪肝発症抑制、肝障害進展予防を目的として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一般にブルーベリーは、ツツジ科(Ericaceae)スノキ属(Vaccinium)サイアノココス節(Cyanococcus)に分類される、落葉性あるいは常緑性の、低木性(または半高木性)の果樹である。ブルーベリーはおよそ6種類からなるが、果樹園芸上重要な種は、(1)ハイブッシュブルーベリー(Highbush blueberry, Vaccininum corymbosum.L)、(2)ラビットアイブルーベリー(Rabbiteye blueberry, V.ashei Reade)、(3)ローブッシュブルーベリー(Lowbush blueberry, V.angstifolium MichauxV.myrtilloides Aition)の3つである。
【0014】
本発明のブルーベリー葉として用いられるブルーベリーは、その種類や原産地を特に制限するものではなく、いずれも使用することができるが、本発明の薬理機能の点からラビットアイブルーベリーが望ましい。
【0015】
本発明で用いるブルーベリー葉は、その薬理機能及び食感の観点から、萌芽して紅葉前までのブルーベリー青葉が望ましい。この時期のブルーベリー葉(青葉)は、肝臓脂肪蓄積抑制作用、脂肪肝発症抑制作用、脂肪肝改善作用、肝障害進展予防作用を示すばかりでなく、紅葉した葉が有する苦味がなく、熱水抽出時の風味においてすぐれている。
【0016】
本発明においてブルーベリー葉は、葉を採取後加工処理した加工処理物として用いる。加工処理物としては、ブルーベリー葉の粉砕物(生、乾燥物)、搾汁、任意の溶媒による抽出物を用いることができるが、本発明の薬理機能及び加工容易性から葉の粉砕物、抽出物が望ましい。
【0017】
乾燥粉砕物は、ブルーベリー葉を乾燥した後粉砕するか、または葉を細く切断した後に乾燥することによって調製する。乾燥には、本発明の薬理効果を損なわない範囲であれば特に制限はなく、真空凍結乾燥、熱風乾燥、遠赤外線乾燥、減圧乾燥、マイクロ波減圧乾燥、及び過熱蒸気乾燥等を広く用いることができる。好ましくは、成分変化の少ない真空凍結乾燥である。真空凍結乾燥条件は、原料葉の状態によって異なるので特定できないが、例えば生葉をそのまま乾燥する際、凍結温度は−30℃〜−20℃、乾燥温度は−30〜30℃、乾燥時間は15時間〜24時間の範囲が望ましい。
【0018】
ブルーベリー葉の抽出物は、葉をそのまま、もしくは破砕物とした後、抽出操作に供するか、また乾燥後、必要に応じて粉砕し、しかる後抽出操作に供することによって調製することができる。また葉の搾汁も、上記抽出原料として使用することができる。なお、かかる葉の搾汁は、必要に応じて、濃縮または乾燥した後に抽出操作に供してもよい。
【0019】
抽出溶媒には、水、エタノールおよびこれらの混合液が安全上望ましいが、抽出溶媒を完全留去して、ブルーベリー葉を抽出物の乾燥粉末として調製する場合には、メタノールやブタノールのごとき低級アルキルアルコール、あるいはアセトン、DMSOのごとき溶媒も使用することができる。また種々の溶媒を組み合わせた多段階抽出も可能である。
【0020】
抽出温度は特に制限されないが、例えば抽出溶媒が水の場合、例えば20〜100℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは80〜100℃を挙げることができる。
【0021】
得られた抽出物は、必要に応じて、ろ過または遠心分離などの操作により固形物を除去する。次の工程で行われる操作に応じては、抽出物をそのまま用いるか、または溶媒を留去して一部濃縮もしくは乾燥して用いてもよい。また得られた抽出物は、濃縮もしくは乾燥後、さらに適正な溶媒、例えば、非溶解性溶媒で洗浄精製して用いても、またこれを更に適当な溶媒に溶解若しくは懸濁して用いることもできる。さらに本発明においては、例えば、得られた溶媒抽出液を、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段に供して、ブルーベリー葉の乾燥抽出物として使用することもできる。
【0022】
このようにして得られるブルーベリー葉の加工処理物は、後述の実験例で示すように、肝臓脂肪蓄積抑制作用(表3及び表7及び表12参照)、脂肪肝発症抑制作用(図1及び図2及び図3参照)、及び脂肪肝改善作用(表15及び表16及び図4参照)を有している。具体的には、表3及び表7及び表12からわかるように、ブルーベリー葉の加工処理物を投与していないラット被験群に比して、当該処理物を投与したラット被験群は、肝臓トリグリセリド濃度が低下している。また、図1及び図2及び図3からわかるように、ブルーベリー葉の加工処理物を投与していないラット被験群に比して、当該処理物を投与したラット被験群は、細胞質中に脂肪滴を豊富に有する肝細胞、いわゆる脂肪変性を起した肝細胞が少ない。肝細胞内脂肪滴の大部分はトリグリセリドであることから、ブルーベリー葉の加工処理物は、その肝臓トリグリセリド濃度低下作用に基づいて、肝臓の脂肪蓄積を抑制し、また脂肪肝の発症を抑制するものと考えられる。
【0023】
よって本発明は、前述するブルーベリー葉の加工処理物を有効成分とする肝臓脂肪蓄積抑制剤を提供するものである。本発明の肝臓脂肪蓄積抑制剤に含まれるブルーベリー葉の加工処理物の割合は、当該製剤が上述する肝臓脂肪蓄積抑制作用を発揮する限り特に制限されず、ブルーベリー葉の加工処理物を100%の割合で含有するものであってもよい。
【0024】
また、表15及び表16からわかるように、B6.V-Lepob/J(ob/ob)雄マウスにおいて、ブルーベリー葉の加工処理物を投与した群は、投与していない群と比較して、肝臓トリグリセリド濃度が有意に低下し、脂肪変性を示す肝細胞の割合が有意に減少している。また、図4に示す肝臓組織標本に示されるように、この変化は門脈域周辺の肝細胞に顕著であることから、食餌から吸収され門脈によって肝組織に運び込まれたブルーベリー葉の加工処理物中の成分が作用していることが示唆される。なお、当該B6.V-Lepob/J(ob/ob)雄マウスは肥満モデル動物として知られ、脂肪肝を呈している(Yahagi N et al., "Absence of sterol regulatory element-binding protein-1 (SREBP-1) ameliorates fatty livers but not obesity or Insulin resistance in Lepob/Lepob mice." J. Biol. Chem. 2002, 227:19353-57.)。このことから、ブルーベリー葉は脂肪肝を改善する作用を有していることがわかる。
【0025】
よって本発明は、前述するブルーベリー葉の加工処理物を有効成分とする脂肪肝改善剤を提供するものである。当該脂肪肝改善剤に含まれるブルーベリー葉の加工処理物の割合は、当該製剤が前述する脂肪肝改善作用を発揮する限り特に制限されず、ブルーベリー葉の加工処理物を100%の割合で含有するものであってもよい。
【0026】
本発明の肝臓脂肪蓄積抑制剤、脂肪肝改善剤は、上記ブルーベリー葉の加工処理物(特に粉砕物、搾汁、もしくは抽出物)を単独で、固体または液体状で利用することもできるが、これに薬学上許容される担体または添加剤を配合して、固体又は液体状の医薬組成物として調製することもできる。
【0027】
本発明の医薬組成物は、その形態に特に制限はないが、経口に適した形態であることが好ましい。例えば、経口投与用固体組成物(固形医薬製剤)としては、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤等の形態を、また経口投与用液状組成物(液状医薬製剤)としては、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤などの形態をとることができる。これらの製剤には、有効成分に加えて、剤形に応じて、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色料、矯味矯臭剤、pH調整剤等を適宜配合することができ、常法に従って製剤化することができる。
【0028】
また本発明の医薬組成物には、有効成分であるブルーベリー葉、及び前記担体または添加剤に加えて、ビタミン等の他の機能性成分が含まれていてもよい。医薬組成物の有効成分の組成比は、使用目的等によって異なるので特定はできないが、後述の有効投与量を基準値として、適宜調整可能である。
【0029】
本発明の医薬組成物の有効投与量は、投与法、投与期間、患者の病態、年齢、性別、投与目的、その他の条件に応じて広範囲から選択できる。例えば、本発明の医薬組成物を、肝臓脂肪蓄積抑制を目的として用いる場合の体重60kgのヒトに対する1回投与あたりの量としては、ブルーベリー葉の乾燥重量に換算して約250〜4000mg、好ましくは約500〜2000mgの範囲を挙げることができる。また、本発明の医薬組成物を、脂肪肝改善を目的として用いる場合の体重60kgのヒトに対する1回投与あたりの量としては、ブルーベリー葉の乾燥重量に換算して約500〜8000mg、好ましくは約1000〜4000mgの範囲を挙げることができる。
【0030】
本発明の医薬組成物の投与時期及び期間は、有効成分が植物起源の安全で副作用の少ないブルーベリー葉であることから特に制限はない。
【0031】
また、本発明の医薬組成物を投与する対象の患者は、本発明がその患者の症状や病態の改善に奏効し、その効果を有効に享受できる哺乳類(好ましくはヒト)であれば特に制限されない。
【0032】
具体的には、本発明の医薬組成物を、肝臓脂肪蓄積抑制を目的として用いる場合、好ましくは肥満、高脂血症および耐糖能異常の少なくとも1つの症状や病態を有する患者を対象として投与することができる。
【0033】
なお、ここで肥満患者とは、 Body Mass Index (BMI) (体重(kg)/身長(m)2)が25%以上の人をいい、高脂血症患者とは、血液中の脂質が正常値を超えて高値を示している状態の人を言う。これには、(1)高コレステロール血症(血液中の総コレステロール値が高い:220mg/dL以上)、(2)高LDLコレステロール血症(コレステロールの担体である血中低比重リポ蛋白(LDL)が高い:140mg/dL以上)、(3)低HDLコレステロール血症(血中の、いわゆる「善玉コレステロール」であるHDLが少ない:40mg/dL未満)、(4)高トリグリセリド血症 (血中のトリグリセリドが高い:150mg/dL以上)の患者が含まれる。また、耐糖能異常患者とは、糖尿病あるいはそれに近い状態の人を指し、インスリンの働きがうまくいかないために血糖が上昇しやすい状態の人をいう。日本糖尿病学会の診断基準によると「空腹時血糖値が110mg/dl以上あるいは糖負荷試験(75gのブドウ糖を服用)の2時間値が140mg/dl以上である場合は耐糖能異常である」と判断されている。
【0034】
また本発明の医薬組成物を、脂肪肝改善を目的として用いる場合は、非アルコール性脂肪性肝疾患の患者を対象として投与することが効果的である。
【0035】
患者について脂肪肝を発症しているか否かは、当業界の技術常識に基づいて画像診断学的な側面から行うことができる。一般に、腹部超音波検査診断や画像診断等で、全ての肝小葉の30%以上の領域にわたって肝細胞に著名な脂肪滴の蓄積性変化がみられ、そのほかに顕著な形態学的異常が認められない場合に脂肪肝発症と判断することができる。従って、脂肪肝改善作用は、肝細胞の脂肪滴蓄積性変化を指標として、改善効果を検討することが可能である。
【0036】
また、本発明における肝障害進展予防作用は、前述するように肝機能を評価する指標値として広く使用されている値であって、血液肝機能検査で慣用されているアラニントランスアミナーゼ(ALT)、ラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、および総ビリルビン(TB)の値から定法に従って評価することができる(高久史麿、尾形悦郎、黒川清、矢崎義雄編、新臨床内科学第8版、p804-805 (2002年)(医学書院))。なお、肝障害とは、上記のALT、LDH、ALPおよびTBのうちいずれか少なくとも1つの値が正常値を超えて上昇している状態を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の肝臓脂肪蓄積抑制剤は、工業的にはあまり利用されていないブルーベリー葉の加工処理物を有効成分とし、肝臓への脂肪蓄積や、その慢性的な蓄積により惹起される脂肪肝、及びそれに伴い発症する肝硬変や肝炎、肝癌の発症予防及び改善に有効に利用することができるものである。特にこれは、天然の食用植物に由来する成分を有効成分とするものであるため、医薬品や長期にわたって服用される飲食物としても安全に用いることができる。
【0038】
本発明の肝臓脂肪蓄積抑制剤、脂肪肝改善剤並びに本発明のブルーベリー葉の加工処理物を有効成分とする医薬組成物は、肥満、高脂血症、耐糖能異常患者、非アルコール性脂肪性肝疾患の患者に対する予防的医薬品及び/または肝機能改善薬として、広く利用することができ、長期に亘り安心して服用できる日常薬としての利用性が高い。
【実施例】
【0039】
以下、調製例および実験例を用いて本発明をより詳細に説明する。但し、本発明はこれらの調製例および実験例によって制限されるものではない。なお、下記において「%」は特に言及しないかぎり、「W/W%」を意味する
<調製例>
調製例1 ブルーベリー葉凍結乾燥粉末(試料1)の調製
ラビットアイブルーベリー種のホームベルの9月採取の生葉(青葉)を、−30℃で凍結したのち、真空凍結乾燥機(日本ドライフーズ株式会社)により、最高棚温65℃、最終品温40℃、乾燥時間25時間の条件で真空凍結乾燥した。次いで、粉砕機を用いてこれを粉砕し、1.0mmスクリーンを通過させることにより、ブルーベリー葉の凍結乾燥粉末(試料1)を得た。
【0040】
調製例2 ブルーベリー葉熱水抽出物(試料2)の調製
調製例1に従って調製したラビットアイブルーベリー種のホームベル葉の凍結乾燥粉末物に、1g/30mlになるように95℃の蒸留水を加え、ホットプレート付きマグネチックスターラー(東京理化器械株式会社 商品名:MAGMETIC STIRRER RCH−3)で保温しながら30分撹拌した。その後、氷冷し粗熱をとってから50mlファルコンチューブに分注し3,000rpm、10分間遠心を行い、上清を回収した。次いでこの上清を真空凍結乾燥処理して、ブルーベリー葉の熱水抽出物(乾燥品)(試料2)を得た。
【0041】
<実験例>
ブルーベルー葉の加工処理物の肝臓に対する作用を調べるために、上記で調製した試料1および試料2を用いて下記の実験を行った。
【0042】
実験例1 ブルーベリー葉凍結乾燥粉末の肝臓への脂肪蓄積抑制作用
<実験>
調製例1で調製したブルーベリー葉凍結乾燥粉末(試料1)を用いて、表1に示す組成の給餌飼料を調製した。被検給餌飼料は、ラットの一般飼料成分に、試料1を1.0および3.0%の配合割合となるように添加混合して調製した。コントロール給餌飼料は、試料1を添加しない一般飼料で調製した。
【0043】
【表1】

【0044】
被験動物として、実験前の一定期間、CE−2粉末飼料(日本クレア株式会社より購入)で飼育したSprague−Dawley系雄ラットを用いた。Sprague−Dawley系雄ラット(5週齢、初体重170g前後)を上記各飼料投与群3群に群分けした。群分け時の群間の平均体重には統計学的な有意差はなかった。
【0045】
前述する給餌飼料を、被験動物に30日間摂取させた(各飼料投与群7〜8匹ずつ)。飼料と水は実験期間中自由に与え、毎日、体重と摂食量を測定した。なお、飼育温室は23℃に調節し、明期8:00〜20:00、暗期20:00〜8:00とした。
【0046】
摂食期間終了後、エーテル麻酔下に開腹し、下部大静脈より採血し、放血致死させた後、肝臓を摘出した。採血した血液は、株式会社エスアールエルに依頼して脂質濃度測定検査を行い、血中のトリグリセリドおよび総コレステロール濃度を測定した。また摘出した肝臓は重量を測定し、下記の方法に従って脂質濃度測定および病理組織化学的検査を行った。
【0047】
(1)肝臓の脂質濃度測定(トリグリセリド、総コレステロール、遊離コレステロール)
Folchらの方法に従って、肝臓から脂質を抽出し(Folch et al., “A simple method for the isolation and purification of total lipids from animal tissues”J Biol Chem [226] 497-509 (1957))、Fletcher法に従ってトリグリセリド濃度を、またSperry&Webb法に従って総コレステロールと遊離コレステロールの濃度を測定した(Fukuda et al.,“A comparison of the metabolism of cis, cis-, cis, trans/trans, cis- and trans/trans-9,12-octadecadienoic acids in rat liver”Nutr Res [13] 779-786 (1995))。測定値は、全て一元分散分析を行い、有意差はScheffe法により検定(p<0.05)した。
【0048】
(2)病理組織化学的検査
(2-1) 肝臓組織のヘマトキシリン・エオジン染色
採取した肝臓を10%緩衝ホルマリン液にて固定し、次いで定法に従ってパラフィンブロックを作成した。これを薄切して肝臓切片を作成した後、ヘマトキシリン及びエオジン溶液で染色した(HE染色)。
【0049】
(2-2) 肝臓切片の脂肪滴の計測
肝臓切片の面積とそれに含まれる脂肪滴の面積を、画像解析装置Image-Pro Plus(株式会社日本ローパー社)を用いて計測し、肝臓切片に占める脂肪滴の割合を算出した。
【0050】
<結果>
実験前後のラットの体重、摂食量、肝臓重量を表2に、血清脂質濃度及び肝臓脂質濃度を表3に示す。また、肝臓切片に占める脂肪滴の割合を表4に、HE染色結果の代表的な画像を図1に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2よりわかるように、被験動物の体重および摂食量に対して試料1の影響は観察されなかった。このことから、試料1〔ブルーベリー葉(凍結乾燥粉末)〕は動物の成長に影響しないことが確認された。一方、肝臓重量は試料1の添加量に依存して低下した。
【0053】
【表3】

【0054】
表3よりわかるように、血清中の総コレステロール値は試料1を3%の割合で摂取させることにより低下した。一方、血清中のトリグリセリド値に対して試料1の影響は観察されなかった。
【0055】
また、肝臓のトリグリセリド濃度は、試料1の1および3%の摂取により、それぞれ10.0%および46.8%低下し、特に3%の摂取により顕著に低下することが認められた。肝臓の総コレステロール濃度は試料1を1および3%の割合で摂取させることにより、それぞれ6.8%および21.0%低下し、特に3%の摂取により顕著に低下することが認められた。
【0056】
【表4】

【0057】
表4および図1からわかるように、肝臓切片に占める脂肪滴の割合は試料1を3%の割合で摂取させることにより顕著に減少した。
【0058】
実験例2 ブルーベリー葉凍結乾燥粉末及びクロロゲン酸の肝臓への脂肪蓄積抑制作用
試料1およびクロロゲン酸(SIGMA社製)を用いて、表5に示す組成の給餌飼料を調製した。被検給餌飼料1および2は、ラットの一般飼料成分に、それぞれ試料1を3.0%およびクロロゲン酸粉末を0.075%の割合で添加混合して調製した。コントロール給餌飼料は、試料1およびクロロゲン酸を添加しない一般飼料で調製した。
【0059】
【表5】

【0060】
被験動物として、実験前の一定期間、CE−2粉末飼料(日本クレア株式会社より購入)で飼育したSprague−Dawley系雄ラットを用いた。Sprague−Dawley系雄ラット(5週齢、初体重165g前後)を上記飼料投与群3群に群分けした。群分け時の群間の平均体重には統計学的な有意差はなかった。前述する給餌飼料を、被験動物に30日間摂取させた(各飼料群5匹ずつ)。
【0061】
実験例1と同様に、摂取期間終了後、採血し、放血致死させた後に肝臓を摘出した。採血した血液は、株式会社エスアールエルに依頼して、血清中の脂質(トリグリセリド、総コレステロールおよびHDLコレステロール)濃度を測定し、下式に従って動脈硬化指数を算出した。
【0062】
【数1】

【0063】
また、実験例1と同様にして、摘出した肝臓の重量を測定して、肝臓脂質濃度、脂肪滴測定、およびHE染色を行った
実験前後のラットの体重、摂食量、肝臓重量の結果を表6に、血清脂質濃度及び肝臓脂質濃度の検査結果を表7に示す。また、肝臓切片に占める脂肪滴の割合を表8に、HE染色結果の代表的な画像を図2に示す。
【0064】
【表6】

【0065】
表6よりわかるように、体重および摂食量に対して試料1およびクロロゲン酸の影響は観察されなかった。このことから、ブルーベリー葉(凍結乾燥粉末)およびクロロゲン酸は動物の成長に影響を与えないことが確認された。肝臓重量は試料1の摂取により低下したが、クロロゲン酸による影響は観察されなかった。
【0066】
【表7】

【0067】
表7よりわかるように、血清各種脂質濃度に及ぼす試料1およびクロロゲン酸の影響は観察されなかった。
【0068】
また、肝臓トリグリセリド濃度は試料1及びクロロゲン酸の摂取により、それぞれ47.4%及び28.4%の低下を示し、特に試料1の摂取により顕著に低下することが認められた。肝臓総コレステロール濃度は試料1及びクロロゲン酸の摂取により、それぞれ16.7%及び9.9%の低下を示し、特に試料1の摂取により高い低下効果が認められた。
【0069】
【表8】

【0070】
表8および図2に示すように、肝臓切片に占める脂肪滴の割合は試料1およびクロロゲン酸の摂食により、有意に減少した。
【0071】
実験例3 ブルーベリー葉凍結乾燥粉末及び熱水抽出物の肝臓への脂肪蓄積抑制作用
調製例1で調製したブルーベリー葉凍結乾燥粉末(試料1)を用いて、表9に示す組成の給餌飼料を調製した。具体的には、当該被検給餌飼料は、ラットの一般飼料成分に、試料1を3.0%の配合割合となるように添加混合して調製した。コントロール給餌飼料は、試料1を添加しない一般飼料で調製した。また、調製例2で調製したブルーベリー葉熱水抽出物(試料2)を、100mg/mlの濃度となるように蒸留水に溶解して、試料2の溶解液を調製した。
【0072】
【表9】

【0073】
被験動物として、実験前の一定期間、CE−2粉末飼料(日本クレア株式会社より購入)で飼育したSprague−Dawley系雄ラットを用いた。Sprague−Dawley系雄ラット(5週齢、初体重162g前後)を3群(コントロール群、ブルーベリー葉凍結乾燥粉末群、ブルーベリー葉熱水抽出物群)に群分けした。群分け時の群間の平均体重には統計学的な有意差はなかった。

表10に示すように、前述する給餌飼料を、各群の被験動物に14日間摂取させた(各群9匹ずつ)。また、ブルーベリー葉熱水抽出物群には、試料2の溶解液を、14日間経口投与した。一方、コントロール群およびブルーベリー葉凍結乾燥粉末群には蒸留水を経口投与した。
【0074】
【表10】

【0075】
実験前後のラットの体重、摂食量、肝臓重量の結果を表11に、血清脂質濃度及び肝臓脂質濃度の検査結果を表12に示す。また、肝臓切片に占める脂肪滴の割合を表13に、HE染色結果の代表的な画像を図3に示す。
【0076】
【表11】

【0077】
表11に示すように、体重および摂食量に対して試料1および試料2の影響は観察されなかった。肝臓重量は試料1の摂取により低下する傾向が観察されたが、試料2による影響は観察されなかった。
【0078】
【表12】

【0079】
表12に示すように、血清各種脂質濃度に対して試料1の明確な影響は観察されなかった。
【0080】
一方、肝臓トリグリセリド濃度は試料1および試料2の摂取により、それぞれ55.1%および44.2%低下し、特に試料1の摂取により低下する傾向が認められた。肝臓の総コレステロール濃度は試料1および試料2の摂取により、それぞれ27.3%および24.6%の顕著な低下が認められた。
【0081】
【表13】

【0082】
表13および図3に示すように、肝臓切片に占める脂肪滴の割合は、試料1および試料2の摂取により、それぞれ40.7%および52.1%の顕著な低下が認められた。
【0083】
実験例4 ブルーベリー葉凍結乾燥粉末の肝臓への脂肪肝改善作用
試料1を用いて、前記表9に示す組成の給餌飼料を調製した。被検給餌飼料は、マウスの一般飼料成分に、試料1を3.0重量%の配合割合となるように添加混合して調製した。コントロール給餌飼料は、試料1を添加しない一般飼料で調製した。
【0084】
被験動物として、実験前の一定期間、CE−2粉末飼料(日本クレア株式会社より購入)で飼育したB6.V-Lepob/J(ob/ob)雄マウス(日本チャールス・リバー株式会社より購入)を用いた。当該マウスは、脂肪肝を有する肥満モデル動物である。B6.V-Lepob/J(ob/ob)雄マウス(7週齢、初体重40g前後)を2群に群分けした。群分け時の群間の平均体重には統計学的な有意差はなかった。前述する給餌飼料を、各群の被験動物に31日間摂取させた(各群7匹ずつ)。
【0085】
実験前後のマウスの体重、肝臓重量の結果を表14に、血清脂質濃度及び肝臓脂質濃度の検査結果を表15に示す。また、肝臓切片に占める脂肪滴の割合を表16に、HE染色結果の代表的な画像を図4に示す。
【0086】
【表14】

【0087】
表14に示すように、実験例1〜3と同様に、体重に対して試料1の摂取による影響は観察されなかった。このことから、ブルーベリー葉(凍結乾燥粉末)は動物の成長に影響を与えないことが確認された。これに対して、肝臓重量は試料1の摂取により顕著に低下することが認められた。
【0088】
【表15】

【0089】
表15に示すように、血清中のトリグリセリド、総コレステロールおよびHDLコレステロールに対して試料1摂取の影響は観察されなかったが、動脈硬化指数は試料1の摂取により有意に低下した。
【0090】
また、肝臓の総コレステロール濃度に対する試料1摂取の影響は観察されなかったものの、トリグリセリド濃度は試料1の摂取により15.1%もの顕著な低下が認められた。
【0091】
【表16】

【0092】
表16および図4からわかるように、肝臓切片に占める脂肪滴の割合は、試料1の摂取により21.2%もの顕著な低下が認められた。
【0093】
以上の実験から、本発明のブルーベリー葉には肝臓に蓄積された脂肪(トリグリセリド)を減少させる作用があり、脂肪肝の改善に有効であることが示唆された。
【0094】
上記の実験例1〜4から、本発明のブルーベリー葉の加工処理物(粉砕物及び抽出物)、並びにブルーベリー葉に含まれるクロロゲン酸は、肝臓の脂肪蓄積を防ぎ、また蓄積を低減する作用を有しており、脂肪肝の予防や改善に対して優れた素材であることが示唆された。
【0095】
実験例5 反復投与毒性試験
被検動物として、実験前の一定期間、CE−2粉末飼料(九動株式会社より購入)で飼育したSprague-Dawley系雌雄ラットを用いた。雌雄ラット(5週齢、初体重オス131〜133g、メス111〜112g)をそれぞれ2群に群分けした。群分け時の群間の平均体重には統計学的な有意差はなかった。被検動物には、前述する被検給餌飼料(ブルーベリー葉添加)及びコントロール給餌飼料(ブルーベリー葉非添加)を1ヶ月に亘って投与した。
【0096】
また、投与期間中、ラットを一日絶食させ、尿を採取した。
【0097】
投与期間終了後、絶食下でラットを屠殺し、血液、肝臓、心臓、肺、腎臓、脾臓を採取した。血液は生化学的指数及び血球の性状検査に供し、各種臓器は重量測定後、病理組織学的検査に供した。
【0098】
尿は、尿タンパク質、尿ブドウ糖、尿ウロビリノーゲンを測定した。
【0099】
血液は、総タンパク質、アルブミン/グロブリン比、アルブミン、トリグリセリド、総コレステロール、尿素窒素、クレアチニン、ナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム、無機リン酸、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、アラニントランスアミナーゼ、アルカリフォスファターゼ、血小板A、血液像、血色素量、赤血球数、白血球数、ヘマトクリット、MCV、MHC、MCHCの測定を株式会社エスアールエルに依頼した。
【0100】
各種臓器は10%緩衝ホルマリン液にて固定した。次いで、定法に従ってパラフィンブロックを作製し、薄切して各種臓器切片を作製した後、ヘマトキシリン及びエオジン溶液で染色した。
【0101】
実験前後のラット体重、摂食量、各種臓器重量の結果を表17に、血液検査結果を表18に、尿検査結果を表19にそれぞれ示す。各種臓器の病理組織学検査の画像を図5−9に示す。
【0102】
【表17】

【0103】
【表18】

【0104】
【表19】

【0105】
表17に示すように、終体重は、ブルーベリー葉凍結乾燥粉末投与群によりオスで減少したが、摂食量に及ぼす影響は観察されなかった。
【0106】
表18に示すように、総タンパク質及びアルブミンはブルーベリー葉凍結乾燥粉末投与群によりメスで増加した。赤血球数はブルーベリー葉凍結乾燥粉末投与群によりオスで増加した。しかし、ブルーベリー葉凍結乾燥粉末投与による各種血液パラメーターの異常はいずれの群においても認められなかった。
【0107】
また、表18中肝機能障害の指標であるALT値及びALP値は、ブルーベリー葉凍結乾燥粉末未投与群と比較し、ブルーベリー葉凍結乾燥粉末投与群において低値を示した。この結果よりブルーベリー葉が肝臓保護作用を有することが示唆された。
【0108】
表19に示すように、尿パラメーターに及ぼすブルーベリー葉凍結乾燥粉末投与による影響は観察されなかった。
【0109】
図5−9に示すように、各種臓器の病理学的検査の結果、ブルーベリー葉凍結乾燥粉末投与による組織および細胞の形態学的異常は認められなかった。
【0110】
以上の反復投与毒性試験の結果からわかるように、ブルーベリー葉投与による毒性は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】実験例1に用いたラット肝臓の病理組織学検査の画像を示す図である。
【図2】実験例2に用いたラット肝臓の病理組織学検査の画像を示す図である。
【図3】実験例3に用いたラット肝臓の病理組織学検査の画像を示す図である。
【図4】実験例4に用いたマウス肝臓の病理組織学検査の画像を示す図である。
【図5】反復投与毒性試験に用いたラット肝臓の病理組織学検査の画像を示す図である。
【図6】反復投与毒性試験に用いたラット心臓の病理組織学検査の画像を示す図である。
【図7】反復投与毒性試験に用いたラット肺の病理組織学検査の画像を示す図である。
【図8】反復投与毒性試験に用いたラット腎臓の病理組織学検査の画像を示す図である。
【図9】反復投与毒性試験に用いたラット脾臓の病理組織学検査の画像を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブルーベリー葉加工処理物を有効成分とする肝臓脂肪蓄積抑制剤。
【請求項2】
ブルーベリー葉加工処理物が、ブルーベリー葉の粉砕物、搾汁及び抽出物よりなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1記載の肝臓脂肪蓄積抑制剤。
【請求項3】
ブルーベリー葉抽出物がブルーベリー葉の熱水抽出物である、請求項1記載の肝臓脂肪蓄積抑制剤。
【請求項4】
脂肪肝の発症を抑制するために用いられる、請求項1記載の肝臓脂肪蓄積抑制剤。
【請求項5】
肥満、高脂血症、および耐糖能異常のうち、少なくとも1つの症状または病態を有する患者に対して、肝臓への脂肪の蓄積を抑制するために用いられる、請求項1乃至4のいずれかに記載する肝臓脂肪蓄積抑制剤を含む医薬組成物。
【請求項6】
ブルーベリー葉加工処理物を有効成分とする脂肪肝改善剤。
【請求項7】
ブルーベリー葉加工処理物が、ブルーベリー葉の粉砕物、搾汁及び抽出物よりなる群から選択される少なくとも1つである、請求項6記載の脂肪肝改善剤。
【請求項8】
ブルーベリー葉抽出物がブルーベリー葉の熱水抽出物である、請求項7記載の脂肪肝改善剤。
【請求項9】
非アルコール性脂肪性肝疾患の患者に対して、脂肪肝改善と肝障害進展予防のために用いられる、請求項6乃至9のいずれかに記載する脂肪肝改善剤を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−189631(P2008−189631A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28582(P2007−28582)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(392001933)雲海酒造株式会社 (11)
【出願人】(504224153)国立大学法人 宮崎大学 (239)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【出願人】(391011700)宮崎県 (63)
【出願人】(306024609)財団法人宮崎県産業支援財団 (23)
【Fターム(参考)】