説明

肝障害抑制剤

【課題】 長期に亙って安全且つ簡便に投与し得、肝炎、肝硬変、脂肪肝等の種々の肝障害の発生を効果的に抑制し得る肝障害抑制剤の提供。
【解決手段】 ドナリエラ[Dunaliella salina (Dunal) Teodoresco]藻体の乾燥粉末を用いた、ドナリエラを含有してなる肝障害抑制剤。本肝障害抑制剤の経口投与により、四塩化炭素による肝障害等の肝障害が効果的に抑制され、血漿中におけるALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)及びAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の含有量の上昇が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝障害の発生を抑制するための肝障害抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肝炎、肝硬変、脂肪肝等の肝障害は、様々な原因により引き起こされる。
【0003】
例えば肝炎は、A、B、C、D、E型等のウイルス性肝炎のほか、四塩化炭素、キノコ中毒等によるもの、肺炎などに併発する肝炎などがある。また、肝炎ウイルスの感染や多量の飲酒などにより、肝細胞の壊死をきたし線維化が進展して、肝障害が長く続くと肝硬変となる。肝炎は、肝硬変、肝癌へと進展するおそれがある。アルコールの摂取その他の原因で肝臓の脂肪が著しく増加すると、脂肪肝となる。
【0004】
特開平8−283158号公報(特許文献1)には、著名な肝機能の低下抑制および改善効果を有するものとして、2−〔2−〔3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジル〕メチルスルフィニル〕ベンツイミダゾール(ランソプラゾール)が挙げられている。
【0005】
しかしながら、より安全且つ簡便に投与し得、肝障害発生の抑制に効果のある肝障害抑制剤についての要望は強い。
【特許文献1】特開平8−283158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、長期に亙って安全且つ簡便に投与し得、種々の肝障害の発生を効果的に抑制し得る肝障害抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の肝障害抑制剤は、ドナリエラを含有してなるものである。
【0008】
本発明の肝障害抑制剤は、ドナリエラ藻体の乾燥物を用いたものとすることができる。ドナリエラ藻体の乾燥物自体であってもよく、ドナリエラ藻体の乾燥物に一般的な処理を加えたものであってもよい。
【0009】
上記本発明の肝障害抑制剤は、四塩化炭素による肝障害を抑制するものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の肝障害抑制剤は、長期に亙って安全且つ簡便に経口投与し得、肝癌等の発癌自体を効果的に抑制し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明におけるドナリエラ(Dunaliella)は、緑藻類オオヒゲマワリ目に属し、例えば、Dunaliella parva、Dunaliella primolecta、Dunaliella salina (Dunal) Teodoresco、Dunaliella terti、Dunaliella tertiolecta、Dunaliella bardawil等を挙げることができる。本発明に最も適しているのは、Dunaliella salina (Dunal) Teodorescoである。
【0012】
本発明の肝障害抑制剤は、例えば、ドナリエラ藻体の乾燥粉末等の乾燥物を、各種固体、半流動体、又は液体中に分散又は溶解させて用いることができる。
【0013】
本発明の肝障害抑制剤の成人に対する投与量は、ドナリエラ藻体の乾燥物を規準とした場合、1日当り0.1乃至10g程度が適当である。
【0014】
本発明の肝障害抑制剤における経口投与の形態に特に限定はないが、好ましくは、栄養食品、栄養補助食品、粉末、顆粒剤、錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、又は飲料用液体の形態である。
【0015】
また種々の形態を形成する上で、各種賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、可塑剤等を適宜用いることができる。
【0016】
賦形剤の例としては、糖類(乳糖,白糖,ブドウ糖,マンニトール),デンプン(バレイショ,コムギ,トウモロコシ),無機物(炭酸カルシウム,硫酸カルシウム,炭酸水素ナトリウム,塩化ナトリウム),結晶セルロース,植物末(カンゾウ末,ゲンチアナ末)等を挙げることができる。
【0017】
結合剤の例としては、デンプンのり液,アラビアゴム,ゼラチン,アルギン酸ナトリウム,メチ/レセルロース(MC),エチルセルロース(EC),ポリビニルピロリドン(PVP),ポリビニルアルコール(PVA),ヒドロキシプロピルセルロース(HPC),カルポキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。
【0018】
崩壊剤の例としては、デンプン,寒天,ゼラチン末,結晶セルロース,CMC・Na,CMC・Ca,炭酸カルシウム,炭酸水素ナトリウム,アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0019】
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム,タルク,水素添加植物油,マクロゴール,シリコーン油等を挙げることができる。
【0020】
コーティング剤の例としては、糖衣(白糖,HPC,セラック),膠衣(ゼラチン,グリセリン,ソルビトール),フイルムコーティング〔ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC),EC,HPC,PVP〕,腸溶性コーティング〔ヒドロキシプロビルメチルセルロースフタレート(HPMCP),セルロースアセテートフタレート(CAP)〕等を挙げることができる。
【0021】
着色剤の例としては、水溶性食用色素,レーキ色素)等を挙げることができる。矯味剤の例としては、乳糖,白糖,ブドウ糖,マンニトール)等を挙げることができる。矯臭剤の例としては、芳香性精油類),光線遮断剤(酸化チタン)等を挙げることができる。可塑剤の例としては、フタル酸エステル類,植物油,ポリエチレングリコール)等を挙げることができる。
【実施例】
【0022】
四塩化炭素による急性の肝障害に対するドナリエラの抑制作用試験
【0023】
被験物質
ドナリエラ[Dunaliella salina (Dunal) Teodoresco]の乾燥粉末を、Tween80[和光純薬工業社製の界面活性剤 Polyoxyethylene(20)Sorbitan Monooleate]の2%w/w水溶液に溶解させた。
【0024】
肝障害誘発物質
四塩化炭素を50%w/wの濃度でオリーブ油(和光純薬工業社製)に溶解させた。
【0025】
供試動物
ICRマウス(雄、体重24±2g)10匹を、対照群5匹とドナリエラ投与群5匹の2群に分けた。
【0026】
飼料
飼料(LabDiet[商品名]の齧歯類及びモルモット用飼料 PMI Nutrition International社製)と水は自由摂取とした。
【0027】
試験方法
対照群とドナリエラ投与群の各マウスに、上記のオリーブ油に溶解させた四塩化炭素を、0.1ml/kgの割合で1回経口投与した。
【0028】
ドナリエラ投与群の各マウスには、上記水溶液に溶解させたドナリエラを、1000mg/kgの割合で、四塩化炭素投与の前14日間(1日1回)と投与後4時間後及び8時間後に経口投与した。
【0029】
四塩化炭素投与の24時間後に、ALTとASTの測定のために全マウスを屠殺した。
【0030】
日立社製の自動アナライザー(7050モデル)を使用して、ALT及びASTをUV法によって測定し、対照群とドナリエラ投与群を比較することにより、ドナリエラ投与群におけるALT及びASTの抑制作用について評価した。
【0031】
その結果、表1に示されるように、ドナリエラ投与群においては、ALTは対照と比較して29%抑制され、ASTは対照と比較して27%抑制され、ドナリエラ投与は肝障害抑制に顕著な作用を有することが示された。
【0032】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナリエラを含有してなる肝障害抑制剤。
【請求項2】
ドナリエラ藻体の乾燥物を用いたものである請求項1記載の肝障害抑制剤。
【請求項3】
四塩化炭素による肝障害を抑制する請求項1又は2記載の肝障害抑制剤。

【公開番号】特開2006−213613(P2006−213613A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25980(P2005−25980)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(596120326)株式会社サン・クロレラ (8)
【Fターム(参考)】