説明

股部を有する衣類

【課題】一枚の身生地と股布からなる極めて簡単な構成で、接合箇所が少なく着用感に優れ美しい下半身のシルエットを実現できる股部を有する衣類を提供する。
【解決手段】少なくとも腹部2、臀部3および股部4を覆う形状に裁断された伸縮性を有する一枚の身生地1からなる股部を有する衣類である。股部2に開口部14を形成し、その開口部14を塞ぐ股布16を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロングガードル、ショートガードル、ショーツ、スパッツなど身体に密着して着用される股部を有する衣類に関し、さらに詳しくは、1枚の身生地と股布で構成される体型補整のためのガードルやショーツなどに適する股部を有する衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、主として腹部や臀部、大腿部などの下半身を美しく補整して造形する股部を有する衣類の1つにガードルがある。そのガードルは、脚部の長いロングタイプと脚部の短いショートタイプがあり、伸縮性生地を用いて、腹部を覆う前身頃と臀部を覆う後身頃と大腿部を覆う左右両脚部および股部とで構成されている。
【0003】
そして、前身頃の正面中央部に伸びないか又は伸びの少ない腹部当て布を設けて腹部の膨出を押さえて補整すると共に、臀部下部の後中心部近傍から脇方向に向かって斜め上向きに裏打ち布をガードル本体の裏側に設けてヒップを下方から持ち上げヒップアップさせてプロポーションのとれた美しい下半身を造形するガードルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3101799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のものは、前脇部と腹部との縫製、前脇部と裏打ち布との縫製、臀部と裏打ち布との縫製、臀部と臀部の縫製、腹部と股部の縫製など各部材を縫製することによって仕上げられており、多くの縫製作業が必要で手間と時間を要するばかりでなく、各部材は引っ張り応力の異なる生地との縫製によって皺の発生や装着時の違和感の原因となる。また、縫着部が肌に当たってゴロつき感が生じると共に、裏打ち布の部分と裏打ち布の存在しない部分との境界に厚みの相違による段差が生じ、その段差がアウターに反映し、アウターの外側から段差が見えてしまい、不体裁で着用者の外観を著しく低下させるという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決することを課題として研究開発されたもので、一枚の身生地と股布からなる極めて簡単な構成で、接合箇所が少なく着用感に優れ美しい下半身のシルエットを実現できる股部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決し、その目的を達成する手段として、本発明は、少なくとも腹部、臀部および股部を覆う形状に裁断された伸縮性を有する一枚の身生地からなる股部を有する衣類であって、股部に開口部を形成し、その開口部を塞ぐ股布を取り付けたことを特徴とする股部を有する衣類を開発し、採用した。
【0008】
また、本発明では、上記のように構成した股部を有する衣類において、前記身生地の両側縁を内方に折り返して前身頃で接合してあることを特徴とする股部を有する衣類、および前記身生地の両側縁を外方に折り返して後身頃で接合してあることを特徴とする股部を有する衣類、および前記身生地は、所定の部位に樹脂を付与または樹脂シートを熱接着して伸びを拘束するようにしてあることを特徴とする股部を有する衣類、および前記開口部は、平面略舌片形状に形成されていることを特徴とする股部を有する衣類、および前記股布は、開口部より一回り大きい同形状の伸縮生地で、裏面から当てて取り付けてあることを特徴とする股部を有する衣類を開発し、採用した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、一枚の身生地と股布とで構成されていることから、構造が極めて簡単になり、着用した時の伸縮バランスが均一になって履き心地がよくなる。また、接合箇所が少なくて厚くならず肌への悪影響がなくなる。さらに、開口部で股部が薄くなり、臀部に良く馴染み違和感がなくなって着用感が良い。
請求項2記載の発明によれば、身生地の両側縁を前身頃で接合して伸びを抑えてあるから、腹部の贅肉の膨出を抑えて腹部のラインを美しく補整してスマートな体型に造形できる。
請求項3記載の発明によれば、身生地の両側縁を後身頃で接合して伸びを抑えてあるから、腰部や臀部の贅肉の膨出を抑えて腰部から臀部にかけてのラインを美しく補整してスマートな体型に造形できる。
請求項4記載の発明によれば、所定の部位に樹脂を付与または樹脂シートを熱接着して伸びを拘束してあるから、当該部位の伸びが抑制され膨出を抑えてラインを美しく補整できる。
請求項5記載の発明によれば、開口部が平面略舌片形状に形成されているから、股布での塞ぎが簡単で確実にできる。
請求項6記載の発明によれば、股布は開口部より一回り大きい同形状の伸縮生地で、裏面から当てて取り付けてあるから、取り付け易くなると共に、股部は薄くて臀部にフィットし、違和感や締め付け感や窮屈感がなくなって着用感が良い。
【0010】
以下に、本発明の第1実施の形態をセミ・ロングガードルの例で説明するが、ロングタイプ、ショートタイプのものであっても良いのは勿論のことである。図1は身生地の展開平面図、図2はガードルの斜視図、図3はガードルの底面図である。図4は図3のA−A線断面図である。
【0011】
1はポリウレタン繊維やナイロン繊維などでパワーネット、サテンネット、ツーウェイトリコットなどの伸縮性を有する経編地からなる一枚の身生地である。この身生地1は、腹部2、臀部3、股部4、左右両脚部5,5を覆う形状に裁断された幅の広い左右対称形状の一連の一枚生地で構成されている。この身生地1には、所定の部位、例えば、腹部2や臀部3などに樹脂を付与または樹脂シートを熱接着することにより伸びを拘束する部分が施されている。
【0012】
身生地1の正面中央部には、小円状のライン6a−6b−6cのくり抜き孔6が形成されてあり、そのくり抜き孔6の下端6a、6cから下方に向かって幅広くなる逆V字状の切込み部7を設け、その切込み部7の両側縁を左右両脚部5,5の内側縁5a,5aに形成されている。
【0013】
8は身生地1の両側縁の略中間部に、内方に向かって横J字状のライン8a−8b−8cからなる切欠部である。この切欠部8,8の上半分には前身頃9の正面中央部に位置する腹部当て布10,10が上下端から徐々に外方に向かって膨らみ中間部で最大膨出部になる側縁11,11に形成してある。また、下半分には前記左右両脚部5,5の内側縁5a,5aと接合する外側縁5b,5bを側縁11,11より外方に突出した状態で形成してある。
【0014】
このように構成された身生地1は、図1の展開状態から側縁11,11を内方に折り返して腹部当て布10,10を前身頃9の中央部になるように互いに重ね合わせ、一方の腹部当て布10に塗着されたホットメルト接着剤や接着シート12で他方の腹部当て布10と接合した後、上端部の一部をミシン縫着して取り付けてある。
【0015】
その後、一方の横J字状の切欠部8を、くり抜き孔6の右側に合致させると共に、他方の横J字状の切欠部8をくり抜き孔6の左側に合致させ、さらに左右両脚部5,5の外側縁5b、5bに塗着されたホットメルト接着剤や接着シート13,13を内側縁5a,5aに合わせて接着し、上下端部をミシン縫着して取り付けてある。
【0016】
この時、股部4には横J字状の切欠部8と,円形状のくり抜き孔6との合致によって平面略舌片状の開口部14が形成される。すなわち、図3に示すように、8a−8b−8cラインからなる一方の横J字状の切欠部8を前身頃9の右側に、8d−8e−8fラインからなる他方の横J字状の切欠部8を前身頃9の左側に左右対称になるように配置し、6a−6b−6cラインからなる小円状のくり抜き孔6を後身頃15に配置することにより舌片状の開口部14が略平面状に形成される。
【0017】
そして、開口部14に伸縮性生地で、開口部14より一回り大きな平面略舌片状の股布16を裏面側から当て、裏面周縁部のホットメルト接着剤や接着シート17で股部4に接合すると共に、周縁部の一部をミシン縫着して取り付けてある。
【0018】
このように構成された第1実施形態のガードル1の作用、効果を説明すると、一枚の身生地1の両側縁11,11を内方に折り返して前身頃9の正面中央部で左右の腹部当て布10、10が重ねられホットメルト接着剤や接着シート12で接合してあるから、伸びを抑えられ、腹部の贅肉の膨出を抑えて補整効果が発揮できる。また、所定の部位に、樹脂を付与または樹脂シートを熱接着することにより当該部位の伸びを拘束でき補整することができる。さらに、一連で一枚の身生地1で構成されているから、着用した時の伸縮バランスが均一になって履き心地がよくなる。さらに、接合部が少なくかつ接合部が厚くならないので肌への悪影響がない。
【0019】
また、股部4にはくり抜き孔6と切欠部8、8を合致させることにより、平面略舌片状の開口部14が形成され、その開口部14に伸縮性生地の股布16をホットメルト接着剤や接着シート17で接合し、周縁の一部をミシン縫着して塞ぎ、重合する部分は周縁部だけであるから、股部4は股布16だけの一重状態となり、臀部の割れ目に沿ってフィットし易く、通気性に優れ蒸れを防ぐことができ、締め付け感や窮屈感がなくなり快適な着心地となる。また、股布16は熱溶着または接着剤17の接合と共に部分的にミシン縫着されてあるから、繰り返し行われる洗濯によっても外れたりすることがなくなる。
【0020】
つぎに、図5、図6に示すのは本発明の第2実施形態を示しており、上記第1実施の形態と異なるのは、身生地1の正面中央部に形成されている切込み部7の形状を逆V字状から逆U字状に変わった点と、身生地1の両側縁11,11を前身頃9で接合していたのが後身頃15で接合する点に変わっただけであり、その他の構造には相違するところはない。したがって、第1実施の形態と同一の部分には同一の符号が付してある。
【0021】
この第二実施の形態にしたがえば、後身頃15の背面中央部で側縁11,11が重なって接合されており伸縮性を抑えられてあるから、腰部およびや臀部の膨出を押さえ補整を行うことができ、下半身を美麗なシルエットにできる利点がある。
【0022】
以上、本発明の主要な実施の形態について説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、例えば、ロングガードルやショートガードルあるいはショーツなどでもよく、要するに発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、ロングガードル、ショートガードル、ショーツ、スパッツなど身体に密着して着用される衣料に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態の身生地の展開平面図である。
【図2】第1実施形態のガードルの前面斜視図である。
【図3】第1実施形態のガードルの底面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】第2実施形態の身生地の展開平面図である。
【図6】第2実施形態のガードルの後面背面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 身生地
2 腹部
3 臀部
4 股部
9 前身頃
14 開口部
15 後身頃
16 股布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも腹部、臀部および股部を覆う形状に裁断された伸縮性を有する一枚の身生地からなる股部を有する衣類であって、股部に開口部を形成し、その開口部を塞ぐ股布を取り付けたことを特徴とする股部を有する衣類。
【請求項2】
前記身生地の両側縁を内方に折り返して前身頃で接合してあることを特徴とする請求項1に記載の股部を有する衣類。
【請求項3】
前記身生地の両側縁を外方に折り返して後身頃で接合してあることを特徴とする請求項1に記載の股部を有する衣類。
【請求項4】
前記身生地は、所定の部位に樹脂を付与または樹脂シートを熱接着して伸びを拘束するようにしてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の股部を有する衣類。
【請求項5】
前記開口部は、平面略舌片形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の股部を有する衣類。
【請求項6】
前記股布は、開口部より一回り大きい同形状の伸縮生地で、裏面から当てて取り付けてあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の股部を有する衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−223173(P2008−223173A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63708(P2007−63708)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000138554)株式会社ユタックス (18)
【Fターム(参考)】