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肥大型心筋症(HCM)治療における使用のためのペルヘキシリン
説明

肥大型心筋症(HCM)治療における使用のためのペルヘキシリン

本発明は、肥大型心筋症の治療における使用のためのペルヘキシリン、またはこの薬学的に許容される塩および前記HCMを治療するためにペルヘキシリン、またはこの薬学的に許容される塩の有効量を必要とする動物に投与することを含む、HCMの治療方法に関する。本発明はさらに、HCMまたはこの兆候の治療に有効な一以上の他の化合物とともにペルヘキシリンを同時に使用する、または同時に投与することを含む、HCM治療用の治療プログラムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物対象、特にヒトにおける肥大型心筋症(HCM)治療に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
解明されていない心臓肥大で特徴付けられる、肥大型心筋症は、最もよくある遺伝性心臓疾患である(罹患率〜0.2%)。HCMの臨床症状は、症状が全くない場合から、呼吸困難、胸の痛み、動悸、および失神にまで至る;HCMが最初に表れるのが、突然の心臓死であることさえある。HCM患者にみられるこれらの症状のいくばくかの原因となる左室流出路閉塞は、薬物治療および外科的中隔心筋切除術またはアルコール中隔アブレーションのような治療介入(intervention)に適している。しかしながら、呼吸困難が主に拡張機能障害によるものと思われる、閉塞がないHCM患者の相当数の治療においては、今のところあまり進展がない。これらの患者に広く用いられている負の時間変力物質(negative chrono−inotropes)(例えば、ベータ−ブロッカー、ベラパミル、ジソピラミド)の利益を支持する証拠は、新規の治療を確認する意図をもって、限定的にHCMの根底にあるメカニズムをより理解することを要求する。
【0003】
HCMは、心臓の収縮タンパク質(例えば、β−ミオシン重鎖、心臓ミオシン−結合タンパク質−C、α−トロポミオシン、心臓トロポニンTおよびI)をコードする遺伝子中に見出された400を超える変異を有する、摂動した(perturbed)サルコメアの疾患である。HCMが原因の変異は、サルコメアCa2+感受性、ATPase活性、および筋細胞収縮のエネルギー「張力損失」を増加させる。これらの生物物理学的結果により、HCMの病態生理学が少なくとも一部は過剰なサルコメアのエネルギー消費に起因しているという案が導き出されてきた。この案を支持するように、動物およびヒト疾患の双方において、心筋のエネルギー異常がHCMと関係している。実際、このエネルギー欠乏の機能的役割と一致して、LV弛緩(エネルギー要求的過程)がHCMにおいて異常であることが観察されている。
【0004】
ペルヘキシリン(2−(2,2−ジシクロヘキシルエチル)ピペリジン)は、遊離脂肪酸代謝からよりエネルギー効率がよいグルコースへ心臓での代謝をシフトすることができることによって原理的には作用する、抗狭心症薬として知られている。
【0005】
国際公開第2005/087233号は、慢性心不全(chronic heart failure (CHF))の治療用のペルヘキシリンの使用を開示しており、ここで、CHFは虚血の初期に誘発される影響の結果であり、またはCHFは初期の非虚血性の誘発因子の結果である。
【発明の概要】
【0006】
発明の要約
本発明の第一形態によれば、HCMを治療するためにペルヘキシリン、またはこの薬学的に許容される塩の有効量を必要とする動物に投与することを含む、肥大型心筋症(HCM)の治療方法が提供される。動物は好ましくは哺乳類であり、最も好ましくはヒトである。
【0007】
治療されるHCMは、閉塞性HCMまたは非閉塞性HCMでありうる。
【0008】
本発明の他の実施形態によれば、ペルヘキシリン、またはこの薬学的に許容される塩が、HCMの治療における使用のために提供される。
【0009】
本発明のさらに他の実施形態によれば、HCMまたはこの兆候の治療に有効な一以上の他の化合物、例えば、ベラパミルのようなカルシウムチャネル遮断薬またはベータブロッカーとともにペルヘキシリンまたはこの薬学的に許容される塩を同時に使用する、または同時に投与することを含む、HCM治療用の治療プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、HCMの心臓エネルギー状態におけるエネルギー欠乏に対する原因としての働きを確立し、ペルヘキシリンの影響を評価するために行った試験のフローチャートである。
【図2】図2A〜2Dは、HCM対コントロールの基本データを表わす。より詳細には、図2Aはピーク酸素消費(ピークVO2)結果を表わす。図2Bは、拡張期心室充満の結果(nTTPF,心拍に対して平均化された最大拡張到達時間(normalized for heart rate Time To Peak Filling))を示し、また、PCr/ATP比(心臓のエネルギー状態の尺度)がHCM患者ではコントロールに比べて低いことを示す。図2Cは、HCM患者の31P心臓スペクトルの例であり、この際、ポイントCは、リンコイルの中心、VOI;関心領域のボクセル(voxel of interest)を示し、2,3−DPGは2,3−ジホスホグリセレート;PDEはホスホジエステル;PCrはクレアチンリン酸を示し;α,β,γは3つのATPのリン酸核を示し、nTTPF(LVの能動的弛緩速度の尺度)はコントロールにおける運動時には実質的に変化しないが、HCM患者では異常に遅延することを示す。そして、図2Dは、心筋のエネルギー結果(PCr/γATP比)を示し、また、運動能力(ピークVO)がコントロールに対してHCM患者において低くなっていることを示す。
【図3】図3Aおよび3Bはそれぞれピーク酸素消費(ピークVO2)、p=0.003および心筋エネルギーの(PCr/γATP比)、p=0.003におけるプラセボおよびペルヘキシリンの影響を表し、この際p値はペルヘキシリンおよびプラセボ反応間の有意な差を表す。ピークVO(運動能力)は、ペルヘキシリン(図3A)で増加する。ペルヘキシリンは、PCr/ATP比(心臓のエネルギー状態)を向上させるが、プラセボ群ではこれは変化なかった(図3B)。図3Cおよび3Dは、それぞれプラセボ群(3C)およびペルヘキシリン群(3D)におけるnTTPF変化、p=0.03を表し、この際、p値はペルヘキシリンおよびプラセボ反応間での有意な差を表す。プラセボ群において、nTTPF(LVの能動的弛緩速度の尺度)は、基準でおよび処置の間、異常に延びていた。健常なコントロールにおける反応を点線で示す。ペルヘキシリンによって(図3D)健常なコントロール(点線によって示される)において見られるのと同程度の反応に正常化する。図3Eおよび3Fは、(息切れの)NYHAスコアが、ペルヘキシリン投与で低下(向上)し(3E)、心不全で生存しているミネソタアンケートスコア(Minnesota living with heart failure questionnaire score)はペルヘキシリン投与で低下した(=クオリティオブライフが向上した)(3F)ことを示す。
【図4】図4は、HCMの病態生理学におけるエネルギー欠乏の原因に対する働きを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明の一実施形態において、ペルヘキシリンは塩の形態、好ましくはマレイン酸塩の形態で存在する。ペルヘキシリンは、治療的な、しかし非毒性の血漿ペルヘキシリンレベルを達成するために合わせた投与量で用いることができる(Kennedy JA,Kiosoglous AJ,Murphy GA,PeIIe MA,Horowitz JD.“Effect of perhexiline and oxfenicine on myocardial function and metabolism during low−flow ischemia/reperfusion in the isolated rat heart”,J Cardiovasc Pharmacol 2000;36(6):794−801)。通常の患者に対する典型的な投与量は、1日当たり100mg〜300mgであるが、ペルヘキシリン代謝が遅い患者には、より少ない投与量が適当であろう。
【0012】
ペルヘキシリン化合物の塩のような薬学的に許容される製剤もまた、本発明において用いることができる。また、薬剤は投与に都合の良いいかなる方法でも製剤化することができ、よって、一以上の薬学的に許容される担体または賦形剤とともに混合物の形態で従来の方法における薬剤の使用もまた本発明の範囲内に含まれる。好適には、製剤中の他の成分と混合可能であるという意味で担体は「許容される」べきであり、その受容者に有害であってはいけない。薬剤は経口、口腔、非経口、静脈内または直腸投与用に製剤化することができる。追加的に、または代替的に、薬剤は錠剤、カプセル、シロップ、エリキシル剤のような従来の形態または他の公知の経口投与形態で製剤化してもよい。
【0013】
ペルヘキシリンは、患者の遺伝子型に基づいて異なって代謝されることが知られている、(+)−ペルヘキシリンおよび(−)−ペルヘキシリンの2つのエナンチオマーの形態として存在する。心臓および肝由来のCPT−1の双方の阻害において観察される非定型動力学は、CPT−1の筋および肝アイソフォーム双方に対するペルヘキシリンの各エナンチオマーの異なる阻害親和性によるものであり、(+)−および(−)−ペルヘキシリンが心臓および肝組織における標的酵素に対して異なる選択性を示すことがさらに提案されてきた。
【0014】
本発明によれば、ペルヘキシリンはラセミ混合物(通常エナンチオマーの50:50混合物)または、(+)−ペルヘキシリンおよび(−)−ペルヘキシリンエナンチオマーのうちどちらか、あるいは2つのエナンチオマーのどんな比での混合物として用いることができる。
【0015】
各エナンチオマーの相対的薬力学的活性に基づいて、ペルヘキシリンのラセミ調製物に対する血漿中の特定のエナンチオマー標的濃度範囲に基づいて、またはキラル調製物に対する標的濃度を見出すことによって治療的薬物モニタリングを用いることができる。
【0016】
記載したように、治療の好適な対象はヒトである。しかしながら、治療は獣医学的なものであってもよい。例えば、ネコHCMに罹患しているネコの治療が考えられる。
【0017】
本発明を以下の非限定的例によって説明する。
【実施例】
【0018】
実施例
試験は、HCMの心臓エネルギー状態におけるエネルギー欠乏に対する原因としての働きを確立し、ペルヘキシリンの影響を評価するために行った。
【0019】
試験は、サウスバーミンガム研究倫理委員会(South Birmingham Research Ethics Committee)によって支援され、研究はヘルシンキ宣言(the Declaration of Helsinki)において要約された原則を順守している。すべての実験の参加者に書面のインフォームドコンセントを提供した。試験は最低3か月持続して(minimum 3 months duration)、無作為、二重盲検、プラセボでコントロールされた並行群形式で行った。図1は、試験のフローチャートを示す。予め設定された一次エンドポイント(primary end point)は、ピーク酸素消費(ピークVO)であった。予め設定された二次エンドポイントは、症状(symptomatic status)、安静時心筋エネルギー(PCr/γ−ATP比)および安静時および運動時の拡張機能(nTTPF)であった。同じ年齢および性別の33人のコントロールをHCM患者の基本データとの比較のために集めた。すべてのコントロールは通常のECGおよび心エコー図(LVEF≧55%)を有し、心血管疾患の既往歴および症状がなかった。
【0020】
ハートホスピタル(The Heart Hospital)、ユニバーシティカッレジロンドン病院、ロンドンおよびクイーンエリザベスホスピタル(Queen Elizabeth Hospital)、バーミンガム、UKにおいて、2006〜2008年の間に、専用心筋症クリニックから患者を集めた。試験対象患者基準は、ピークVOの減少があり(年齢および性別から予測される75%未満)、安静時に顕著なLVOT閉塞がない(勾配(gradient)<30mmHg)、洞律動における(in sinus rhythm)18〜80歳の症候性HCM患者(主な兆候は息切れ)であった。除外基準は、心外膜冠動脈疾患の存在、異常な肝機能試験、アミオダロンまたは選択的セロトニン再取り込み阻害薬との併用(ペルヘキシリンとの相互作用の可能性のため)、末梢神経障害および妊娠の可能性がある女性であった。ペルヘキシリンは抗−糖尿病治療においてそのような患者において減少させる必要がある血漿グルコースの低下をもたらすので、糖尿病患者もまた試験の盲検性を維持するために除外した。これらの参加基準を満たした46人の同意した患者が試験で集められた。
【0021】
患者は以下の複数の試験および評価を受けた。
【0022】
心肺運動試験
各試験の前に較正したSchiller CS−200 Ergo−Spiroエクササイズマシンを用いて行われた。被験者は肺活量測定を行い、これは、同時呼気分析とともに標準的傾斜プロトコールを用いた症候限界性直立トレッドミル試験に続けて行われた(Bruce RA,McDonough JR.Stress testing in screening for cardiovascular disease.Bull N Y Acad Med 1969;45(12):1288−1305.;Davies NJ,Denison DM.The measurement of metabolic gas exchange and minute volume by mass spectrometry alone.Respir Physiol 1979;36(2):261−267)。ピーク酸素消費(ピークVO2)を運動の間に達成された最も高いVO2として規定し、ml/min/kgで表わした。
【0023】
症状(symptomatic status)の評価
全てのHCM患者は、心不全で生存しているミネソタアンケートスコア(Minnesota living with heart failure questionnaire score)を記入し、またNYHAクラスでも評価した。
【0024】
経胸壁心エコー
Vivid7心エコー装置(GE Healthcare)および2.5−MHzトランスデューサーを用いて左側臥位で参加者に対して心エコーを行った。安静時のスキャンは標準的な4室短軸径(apical 4−chamber)および2室短軸径(apical 2−chamber)で得た。LV体積は2方向(biplane)心エコーによって求め、LVEFは修正された(modified)シンプソンの公式から求めた(Lang RM, Bierig M,Devereux RB et al.Recommendations for chamber quantification:a report from the American Society of Echocardiography’s Guidelines and Standards Committee and the Chamber Quantification Writing Group, developed in conjunction with the European Association of Echocardiography,a branch of the European Society of Cardiology. J Am Soc Echocardiogr 2005;18(12):1440−1463.)。脈波ドップラーサンプル体積(Pulse wave doppler sample volume)を安静時のLVOTO勾配を評価するために用いた。
【0025】
核医学的心室造影
拡張期充満は、安静時および自転車エルゴメーター上での段階的な半直立運動の間に標準的な技術を用いて平衡R−波ゲート血液プールシンチグラフィによって評価した(Atherton JJ,Moore TD,LeIe SS et al.Diastolic ventricular interaction in chronic heart failure.Lancet 1997;349(9067):1720−1724;LeIe SS,Macfarlane D,Morrison S,Thomson H,Khafagi F,Frenneaux M.Determinants of exercise capacity in patients with coronary artery disease and mild to moderate systolic dysfunction Role of heart rate and diastolic filling abnormalities.Eur Heart J 1996;17(2):204−212)。秒あたりの拡張終期カウント(EDC/s)を単位としてピーク左室充満速度およびミリ秒でのR−R間隔で正規化された(normalised for R−R interval)最大拡張到達時間(nTTPF)を安静時および運動時(予備心拍数の50%)に測定した。心拍数が高いときの拡張期充満のこれらの放射性核種測定の妥当性は、これまでに確立されてきた(Atherton et al.and LeIe et al.,上記参照)。
【0026】
31P心臓磁気スペクトロスコピー(MRS)
ビボにおける心筋エネルギー学は3−Teslaフィリップス社Achieva 3TスキャナーでMRSを用いて測定した(Shivu GN,Abozguia K,Phan TT,Ahmed I,Henning A,Frenneaux M.(31)P magnetic resonance spectroscopy to measure in vivo cardiac energetics in normal myocardium and hypertrophic cardiomyopathy:Experiences at 3T.Eur J Radiol 2008)。Java核磁気共鳴ユーザーインターフェイスv3.0(jMRUI)を分析に用いた(Naressi A,Couturier C,Castang I,de Beer R,Graveron−Demilly D.Java−based graphical user interface for MRUI,a software package for quantitation of in vivo/medical magnetic resonance spectroscopy signals.Comput Biol Med 2001;31(4):269−286)参照)。心臓のエネルギー論状態の尺度であるPCr/γ−ATP比を決定するためにPCrおよびγ−ATPピークを用いた(Neubauer S, Krahe T,Schindler R et al.31 P magnetic resonance spectroscopy in dilated cardiomyopathy and coronary artery disease.Altered cardiac high−energy phosphate metabolism in heart failure.Circulation 1992;86(6):1810−1818)。参加者の臨床状態を知らない分析者によってデータは分析された。クラメルラオ比(Carmeo−Rao ratio)をノイズ比に対するシグナルを評価するために用いた。HCM患者の心臓31P MRSスペクトルの典型的な例を図2Cに示す。
【0027】
治療介入(Intervention)
基礎試験に続いて、ペルヘキシリン(n=25)またはプラセボ(n=21)100mgODのどちらかを投与するために患者を二重盲検法で無作為化した。血清ペルヘキシリンレベルを薬物開始後1および4週間後に得た。投与量の調整は、治療レベルを達成し、薬物毒性を避けるために、血清レベルにしたがって内容を知らされていない医師による助言を受けた。観察者の盲検性が維持されていることを確かにするために、内容を知らされていない観察者によって、同様の投与量の調整が、無作為に割り当てられたプラセボ投与患者に対してもなされた。試験の最後に、前述したように患者を再度評価した。
【0028】
統計分析
Windows版SPSS ver.15.0およびMicrosoft Office Excel 2007を用いてデータを解析し、平均±標準偏差(SD)として表した。変数が通常に分布している場合には独立(unpaired)スチューデントのt検定(両側)によって、データが一般的に分布していない場合には、マン・ホイットニーのU検定によって、ペルヘキシリンおよびプラセボ基本データ間の連続型変数の比較を決定した。処置後にペルヘキシリン対プラセボ群における相違の有意性を評価するために、共変量として基本値(baseline value)を用いたANCOVAを行った。一次エンドポイントに対して、90%の検出力(power)および5%確率(probability)で、プラセボ群に対して、3ml/kg/minのピークVO2における変化を検出するために、必要とされるサンプルサイズは44である。検出力90%およびp値<0.05である心臓PCr/ATP比における5%変化を同定するためには30人の患者が必要となるであろう。0.99の検出力、5%確率である、nTTPFにおける25%以上の変化を検出するためには、40人の患者が必要となるであろう。したがって、脱落を含めて50人を研究し、これらのうち32人がMRS試験に参加するであろう。
【0029】
参加者の特性および処置を下記表1に示す。VO2はピーク酸素消費を示し、ACEはアンジオテンシン変換酵素を示し、ARBはアンジオテンシンII受容体阻害薬を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
基本データ(HCM対コントロール)
全てのHCM患者およびコントロールの臨床特性および心肺運動試験結果を表1に示す。グループは、年齢および性別に対して非常に一致していた。投薬使用(ベータブロッカーおよび/またはカルシウムチャネルブロッカー)によってコントロールと比較してHCM群では心拍数が低かった。
【0032】
安静時の心臓PCr/γATP比は、コントロールよりHCM患者で低く(1.28±0.01対2.26±0.02,p<0.0001)(図2AおよびB参照)、ベータブロッカー治療を受けている患者を除いた後でもそのままであった(p<0.0001)。安静時、LV弛緩の感受性マーカーであるnTTPFは、HCM患者およびコントロールで同じであった(0.17±0.002対0.18±0.003秒,p=0.44)。最大下運動(予備心拍数の50%が達成される作業負荷で)の間、コントロールでは比較的一定であった(0.18±0.003秒から0.16±0.002秒、[δnTTPF=−0.02±0.003秒])が、患者群では増大した(0.17±0.002から0.34±0.002秒、[δnTTPF=+0.17±0.002sec])p<0.0001)(図2C)。このパターンはベータブロッカーを服用している患者を除外した後でも維持され、コントロールから有意に相違したままであった(p<0.0001)。患者はコントロールと比較して明らかな運動制限を示した(23±0.12対38±0.24ml/kg/min,p<0.0001)(図2D)。
【0033】
無作為化、二重盲検、プラセボでコントロールされた並行群
ペルヘキシリンおよびプラセボ群は非常に一致した(表1参照)。プラセボ投与の一人の患者だけが低コンプライアンスにより試験を完了しなかった。副作用は、処置の最初の1週間の間の、ペルヘキシリン群における一過性の吐き気(n=3)および目まい(n=2)、ならびにプラセボ群における一過性の吐き気(n=2)および頭痛(n=1)に限定された。試験の間に死亡した人はいなかった。
【0034】
心筋エネルギー論
PCr/γATP比は、プラセボ(1.29±0.01から1.23±0.01)と比較して、ペルヘキシリン投与で増加した(1.27±0.02から1.73±0.02)、p=0.003(図3A参照)。PCrおよびγATPに対する平均クラメル−ラオ比は、それぞれ7.5%および10.8%であった。分析からクラメル−ラオ比>20である3人の患者を含めた後でも、PCr/γATP比におけるペルヘキシリンの効果は有意なままであった(p=0.02)。
【0035】
拡張期心室充満
プラセボ群では治療前後で運動の間nTTPFが同じように延びた(それぞれ0.17±0.004から0.35±0.005[δnTTPF 0.18±0.006秒]および0.23±0.006から0.35±0.005秒[δnTTPF 0.12±0.006秒])のに対し、ペルヘキシリン群では、安静時および運動時で同様にnTTPFにおいて治療で実質的に向上し(0.19±0.003から0.19±0.004秒[δnTTPF 0.00±0.003秒])、ペルヘキシリンおよびプラセボ反応間でp=0.03であった(図3Bおよび3C参照)。
【0036】
症状
ペルヘキシリン群でプラセボ群より多くの患者がNYHA分類において改善し(67パーセント対30パーセント)、悪化したのはより少なかった(8パーセント対20パーセント)(p<0.001)。心不全で生存しているミネソタアンケートスコア(Minnesota living with heart failure questionnaire score)は、ペルヘキシリン群において改善を示し(スコアが低下し)(36.13±0.94から28±0.75まで)、プラセボ群において変化しなかった(p<0.001)(図3Dおよび3E参照)。
【0037】
運動能力(ピーク酸素消費)
基準値でのピークVO2はペルヘキシリンおよびプラセボ群において同じであった(表1)。処置後、ピークVO2は、プラセボ群において−1.23ml/kg/分低下し(23.56±0.27から22.32±0.27ml/kg/分まで)、ペルヘキシリン群では2.09ml/kg/分増加した(22.2±0.2から24.29±0.2ml/kg/分まで),p=0.003(図3F参照)。
【0038】
結果の議論
試験により症候性HCMの患者が安静時の心臓エネルギー欠乏(PCr/γATP比の減少)を表わすことが示される。この欠陥は、運動時のエネルギー要求的初期拡張LV能動的弛緩の遅延(nTTPFの延長)を伴った。代謝調節剤のペルヘキシリンは、顕著な心筋エネルギー増強をもたらした。HCMの病態生理学においてエネルギー欠乏の原因となる役割を支持するものとして、運動時のHCMの特徴的「矛盾した」nTTPF−延長の正常化を引き起こすことによってこのエネルギー増強がもたらされた。これらの生化学的、生理学的向上は、既に至適薬物治療を受けている症候性HCM患者における顕著な主観的(NYHA分類およびQoLスコア)および客観的(VO2)臨床的利点として現れた(図4参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥大型心筋症(HCM)の治療における使用のためのペルヘキシリン、またはこの薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記ペルヘキシリンが薬学的に許容される塩の形態である、請求項1に記載の使用のためのペルヘキシリン。
【請求項3】
前記ペルヘキシリンがマレイン酸エステルの形態である、請求項2に記載の使用のためのペルヘキシリン。
【請求項4】
前記HCMを治療するためにペルヘキシリン、またはこの薬学的に許容される塩の有効量を必要とする動物に投与することを含む、HCMの治療方法。
【請求項5】
前記動物が哺乳類である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳類がヒトである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記哺乳類がネコである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
HCMまたはこの兆候の治療に有効な一以上の他の化合物とともにペルヘキシリンを同時に使用する、または同時に投与することを含む、HCM治療用の治療プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−526792(P2012−526792A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510371(P2012−510371)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050770
【国際公開番号】WO2010/131033
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.WINDOWS
【出願人】(506305481)ハート メタボリクス リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】HEART METABOLICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】46 Northgate, Prince Albert Road, London NW8 7EG United Kingdom
【Fターム(参考)】