説明

肥料配送用コンテナ装置

【課題】 粉状或は粒状の肥料を安全かつ迅速に、また作業者に負担を掛けることなく施肥機等に移載できるし、産業廃棄物を排出しないのでコストの削減と資源保護にもなり、またコンテナから必要量を移載することも可能な肥料配送用コンテナ装置を提供する。
【解決手段】 コンテナ11を傾転する移載手段1は基台2と、基台2の一側に軸支され、油圧シリンダ6により起伏可能な可動支持台4と、基台2の一側に設けたホッパー3とから構成してある。可動支持台4に接離可能に搭載するコンテナ11はコンテナ本体12と、コンテナ本体12の一側面に設けられ、ホッパー3に向けて開口する開閉可能な排出口13Aとから構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状或いは粒状の肥料を運搬し、配送先で容易に、かつ安全に分配機等に移載することができるようにした肥料配送用コンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農家が使用する肥料は肥料メーカーから組合を経由して各農家に配送しているが、この肥料の配送には合成繊維を編成したシートで形成した通称フレコンパックと呼ばれる大型袋を使用するか、或いはポリエチレン等の合成樹脂製の小型袋を使用し、消費量の多い農家にはフレコンパックで配送し、消費量の少ない農家には小型袋で配送している。そして、農家は配送されたフレコンパックや小型袋から肥料をプランター等の施肥機に移載している。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、肥料を収容したフレコンパックは重量が500kgにもなるため、肥料を施肥機等に移載する場合は、クレーンやユニックでフレコンパックを吊上げた状態にしてパックシュータや分配機を取着し、作業者がフレコンパックの下側に入り込んでフレコンパックを刃物で開封して肥料を落下させるという作業を行っている。しかし、この作業は作業者がフレコンパックの下側で作業を行うことから、吊り下げが確実でないとフレコンパックが落下するといった事態や作業者が飛散する肥料を被るといった危険性がある。また、フレコンパックは一旦開封したら、収容している肥料の全量がホッパー等に落下するため、必要量だけを供給することができないという欠点がある。
【0004】
また、小型袋でも肥料を収容した重量は20kgあり、特に施肥量の多い作物の場合には1日に約300〜500袋もの数を扱うことから、過大な労働力が要求されているし、農作業者の高齢化、少子化が進む中では身体的に大きな負担になっている。
【0005】
更に、一旦開封したフレコンパック及び小型袋は再使用できないために産業廃棄物として処理しなければならず、処理費が毎年発生することは農産物のコスト削減の障害でもあるし、資源保護の観点からも何らかの解決が必要である。
【0006】
本発明は上述した従来技術の諸欠点に鑑みなされたもので、粉状或は粒状の肥料を安全かつ迅速に、また作業者に負担を掛けることなく施肥機に移載することができるし、産業廃棄物を排出しないのでコストの削減と資源保護にもなり、またコンテナから必要量を移載することも可能な肥料配送用コンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために構成された請求項1に係る本発明の手段は、移載手段と、該移載手段に接離可能に搭載され、傾転することにより収容した肥料を排出するコンテナとからなり、前記移載手段は基台と、該基台の一側に軸支され、駆動手段により起伏可能な可動支持台と、該可動支持台又は基台の一側に設けたホッパーとから構成し、前記コンテナはコンテナ本体と、該コンテナ本体の一側面に設けられ、前記ホッパーに向けて開口する開閉可能な排出口とから構成したことにある。
【0008】
また、請求項2に係る本発明の手段は、移載手段と、該移載手段に接離可能に搭載され、傾転することにより収容した肥料を排出するコンテナとからなり、前記移載手段は基台と、該基台の一側に回動可能に軸支したコンテナ支持体と、該コンテナ支持体又は基台の一側に設けたホッパーと、前記基台に配設され、前記コンテナを傾転させる傾転手段とから構成し、前記コンテナはコンテナ本体と、該コンテナ本体の一側面に設けられ、前記ホッパーに向けて開口する開閉可能な排出口とから構成してある。
【0009】
また、前記基台又はホッパーに、前記コンテナから排出される肥料を外部に排出するコンベア手段を着脱可能に設けるとよい。
【0010】
更に、前記可動支持台に、前記コンテナから排出する肥料を前記ホッパーに誘導する肥料誘導体を設けるとよい。
【0011】
また、前記基台の一側に、転倒防止体を設けるとよい。
【0012】
また、前記コンテナは折畳み可能に構成したものであるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)肥料を収容したコンテナを移載手段により傾斜させるだけで肥料を施肥機等に移載することができるから、従来のフレコンパックは不要にできて肥料の移載作業を安全に、かつ迅速に効率良く行うことができる。
(2)作業者に身体的負担がないので、高齢化と少子化を迎えた営農家にとって極めて有用である。
(3)コンテナの傾斜角度を制御することにより、必要量だけの肥料を移載することができる。
(4)移載手段を構成する基台に転倒防止体を設けたから、傾転したコンテナの重心移動による転倒を確実に防止し、作業の安全性を確保することができる。
(5)フレコンパック等の産業廃棄物を排出しないので、コストの削減と資源保護に資することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。図1乃至図3は第1の実施の形態を示す。図において、1は移載手段、2は該移載手段1を構成し、鋼材からなる基台を示し、該基台2は前後に長方形の枠体2Aと、該枠体2Aの四隅に設けた支持脚2B、2B、・・と、該支持脚2B、2B間に架設した縦連結材2C、2Cと、前側支持脚2B、2B間に架設した前連結材2Dと、縦連結材2C、2C間に架設した補強材2E、2Eとから構成してある。
【0015】
3は前記基台2の長手方向一側である前端に設けたホッパーで、該ホッパー3は鋼材で横長四角形に形成した支持枠体3Aと、上縁が後下りに傾斜し、下側面が下窄まりに傾斜した平面略四角形のホッパー本体3Bと、該ホッパー本体3Bの下端に形成され、閉止板3Cによって開閉可能な排出口3Dとから構成してある。
【0016】
4は基台2上に設けた可動支持台を示す。該可動支持台4は、鋼材によって基台2と略同形の長方形に形成した可動枠体4Aと、該可動枠体4A内に前後方向に架設した補強材4B、4Bと、可動枠体4Aの前端に立設した略冂字状のコンテナ受け体4Cとから側面略倒置L字状に構成してある。そして、補強材4B、4Bの下面に突設した連結片4Dを基台2の前連結材2Dに設けた支持軸4Eに連結することにより、可動支持台4は基台2の前端寄りの位置で矢示イ、ロ方向に回動可能に軸支されている。
【0017】
5は前記コンテナ受け体4Cの外側に設けられ、後述するコンテナ11から排出される肥料をホッパー3に確実に落下させるための肥料誘導体で、該肥料誘導体5は平面略ハ字状に、かつ下側が内向きに傾斜した状態で前方に突出する一対の側板5A、5Aと、該側板5A、5Aの先端に下側を内向きに傾斜させて連結した前板5Bと、該前板5Bに略冂状に形成した流出口5Cと、前板5Bに対面して内向きに傾斜する後板5Dとから構成してある。なお、肥料誘導体は、例えば織布或いは合成樹脂製シートによって筒状に形成し、可動支持台4のコンテナ受け体4Cに係着してもよい。
【0018】
6、6は可動支持台4を起伏させる駆動手段としての一対の油圧シリンダを示し、該一対の油圧シリンダ6、6は基台2の縦連結材2C、2C間に架設した受け材6Aと可動支持台4の補強材4Bとの間に連結してある。そして、該油圧シリンダ6が伸縮することにより、可動支持台4は支持軸4Eを中心にして矢示イ、ロ方向に起伏し、コンテナ11を約40度の角度まで傾斜させるようになっている。
【0019】
なお、油圧シリンダ6に代えて可逆モータとギアで構成した駆動手段、エアポンプとエアバッグで構成した駆動手段、或はスクリュウジャッキからなる駆動手段を用いてもよい。
【0020】
7はホッパー3に排出した肥料を分配機側に搬出するためのスクリューコンベアで、該スクリューコンベア7は下端側がホッパー3の排出口3Dに連通したガイド筒7Aと、該ガイド筒7A内に回転可能に設けたスクリュー7Bと、ガイド筒7Aの上端側に設けられ、該スクリュー7Bを回転駆動するモータ7Cとから構成してある。そして、スクリューコンベア7はホッパー3の支持体3Aに着脱可能に設けてある。なお、スクリューコンベアに替えてバケットコンベアを用いてもよい。
【0021】
本実施の形態に係る移載手段1は上述の構成からなるが、次に、可動支持台4に接離可能に搭載するコンテナ11について説明する。12は該コンテナ11を構成するコンテナ本体で、該コンテナ本体12は長方形のパレット部12Aと、該パレット部12Aの外縁に立設した前面部12B、後面部12C(但し、図示せず。)及び一対の側面部12D、12Dとから上方が開放した従来のコンテナと同様の箱型に構成してあり、各前面部12B、後面部12C、側面部12Dは下端をパレット部12Aに内側に回動可能に軸支することにより折畳み可能に構成してある。
【0022】
なお、コンテナ本体12は鋼材と金網で構成してあるから、コンテナ本体12に肥料を収容する場合、合成樹脂製シートで箱型に形成した収容袋をコンテナ11に内装する。収容袋は使い捨ても可能であるが、資源保護の観点から密閉可能な開口部を形成したものにして繰り返し使用可能にするとよい。また、コンテナ本体には、鋼材で形成した箱型枠部内に合成樹脂製パネルを内張りして構成することにより、収容袋を使用しないタイプのものを用いてもよい。
【0023】
13は前記コンテナ本体12の前面部12Bの下部に設けた排出口で、該排出口13は、前面部12Bに形成した開口部13Aと、コンテナ本体12に上下方向に摺動可能に設けられ、該開口部13Aを開閉するシャッター13Bとから構成してある。
【0024】
本実施の形態に係る肥料配送用コンテナ装置は上述の構成からなるが、次にその作用について説明する。移載手段1はトラックに搭載し、収容袋を内装したコンテナ11を可動支持台4に搭載する。そして、肥料工場で肥料を充填したコンテナ11はトラックにより流通経路を経て農家に配送する。
【0025】
農家では、トラックに搭載した状態でコンテナ11のホッパー3にスクリューコンベア7を立設し、図示しない分配機に供給する状態に設定する。そして、コンテナ11のシャッター13Bを引き上げて排出口13の開口部13Aを開放し、収容袋を開封した後、油圧シリンダ6を始動して可動支持台4を序々に起立させ、傾斜するコンテナ11内から肥料を肥料誘導体5を介してホッパー3に流入させる。ホッパー3内の肥料はスクリューコンベア7によって上昇させ、分配機等に供給する。
【0026】
上述の如く、本実施の形態によれば、肥料をコンテナ11によって農家に輸送し、トラックに搭載した状態で可動支持台4により傾斜させたコンテナ11から肥料をホッパー3に排出し、分配機に移載するようにしたから、従来技術と比較して作業効率を格段に高めることができる。また、従来技術のフレコンパックの使用を無くしたから危険な作業を皆無にすることができる。
【0027】
更に、従来は肥料の配送毎にフレコンパックを産業廃棄物として処理していたが、フレコンパックの費用及びこれを廃棄処分する費用を実質的に無くすことができるし、資源保護の問題も解決することができる。
【0028】
次に、図4は第2の実施の形態を示す。なお、本実施の形態及び後述する他の実施の形態において第1の実施の形態の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して援用し、その詳細は省略する。本実施の形態の特徴とするところは、ホッパー21を基台2に替えて可動支持台4に設けたことにある。該ホッパー21は平面略ハ字状に、かつ下側が内向きに傾斜した状態で前方に突出する一対の側板21A、21Aと、該側板21A、21Aの先端に下側が内向きに傾斜して連結した前板21Bと、該前板21Bに略冂状に形成した流出口(但し、図示せず。)とから構成してある。そして、流出口に連通した状態で上記ホッパー21にスクリューコンベア7が着脱可能に設けてある。
【0029】
また、22、22は基台2の前側支持脚2B、2B設けた一対の転倒防止体を示す。該転倒防止体22、22は略三角形の金属板からなり、一辺側を支持脚2Bに軸支して矢示ハ方向に回動可能に設けることにより、使用時には基台2から前方に突出するようにしてある。
【0030】
本実施の形態では、第1の実施の形態と異なって基台2の前方にホッパー支持体3Aを突設していない。そこで、上記転倒防止体22、22を基台2に設け、移載作業時には基台2の前方に突出した状態で接地させておくことにより、傾転したコンテナ11内の肥料が前方に流動して重心が前方に急に移動し、可動支持台4が起き上って基台2が転倒する危険を防止するものである。
【0031】
本実施の形態によれば、可動支持台4にホッパー21を設けたから、コンテナ11からの肥料の供給を速やかに行うことができるし、移載手段の小型化と軽量化を図ることができる。また、基台2に転倒防止体22、22を設けたから、コンテナ11を傾転させても安全性を確保することができる。
【0032】
次に、図5及び図6は第3の実施の形態を示す。図において、31は移載手段、32は該移載手段31を構成し、基台2の一側に回動可能に軸支したコンテナ支持体を示す。該コンテナ支持体32は鋼材を四角形の枠状に組んだコンテナ支持部32Aと、該コンテナ支持部32Aの前後方向に架設した一対の補強材32B、32B(但し、図示せず。)と、コンテナ支持部32Aの先端から直角に起立した略冂字状のコンテナ受け部32Cと、コンテナ支持部32Aから下方に突設した連結片32Dとから構成してある。そして、前記補強材32B、32Bを基台2に設けた支持軸32Eに連結することにより、可動支持台4と同様に回動可能になっている。
【0033】
33は基台2とコンテナ11との間に配置した傾転手段としてのエアバッグを示す。該エアバッグ33は上下両面33A、33Bは平坦面に形成し、側面33Cは先端側33Cに対して後端側33Cが上下方向に伸縮し、また後面33Dも上下方向に伸縮するように形成することにより、エアバッグ33は楔状に膨張してコンテナ11を傾転させるようになっている。そして、エアバッグ33にはエア供給管34を介して図示しないエアポンプから加圧空気を吹き込むようにしてある。なお、エアバッグ33は例えば配送用トラックのブレーキ制動用空気圧縮機によって膨張させる構成にすることができる。
【0034】
本実施の形態によれば、コンテナ支持体32及びエアバッグ33を用いることにより、コンテナ11を直接傾転させる構成にしたから、第1の実施の形態に係る移載手段1より構成を簡略化できるし、軽量化することができる。また、油圧機器の操作に比べて操作性が容易である。
【0035】
なお、エアバッグ33に替えて油圧シリンダを基台2に配設し、コンテナ11を直接傾転させるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1乃至図3は本考案の第1の実施の形態に係り、図1は肥料配送用コンテナ装置の一部を破断した側面図である。
【図2】移載手段の平面図である。
【図3】コンテナを傾斜させた状態を示す側面図である。
【図4】第2の実施の形態に係る肥料配送用コンテナ装置の移載手段の斜視図である。
【図5】図5及び図6は第3の実施の形態に係り、図5は肥料配送用コンテナ装置の側面図である。
【図6】コンテナを傾斜させた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1、31 移載手段
2 基台
3、21 ホッパー
4 可動支持台
6 油圧シリンダ(駆動手段)
7 スクリューコンベア(コンベア手段)
11 コンテナ
12 コンテナ本体
13 排出口
22 転倒防止体
32 コンテナ支持体
33 エアバッグ(傾転手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移載手段と、該移載手段に接離可能に搭載され、傾転することにより収容した肥料を排出するコンテナとからなり、前記移載手段は基台と、該基台の一側に軸支され、駆動手段により起伏可能な可動支持台と、該可動支持台又は基台の一側に設けたホッパーとから構成し、前記コンテナはコンテナ本体と、該コンテナ本体の一側面に設けられ、前記ホッパーに向けて開口する開閉可能な排出口とから構成してなる肥料配送用コンテナ装置。
【請求項2】
移載手段と、該移載手段に接離可能に搭載され、傾転することにより収容した肥料を排出するコンテナとからなり、前記移載手段は基台と、該基台の一側に回動可能に軸支したコンテナ支持体と、該コンテナ支持体又は基台の一側に設けたホッパーと、前記基台に配設され、前記コンテナを傾転させる傾転手段とから構成し、前記コンテナはコンテナ本体と、該コンテナ本体の一側面に設けられ、前記ホッパーに向けて開口する開閉可能な排出口とから構成してなる肥料配送用コンテナ装置。
【請求項3】
前記基台又はホッパーに、前記コンテナから排出される肥料を外部に排出するコンベア手段を着脱可能に設けてあることを特徴とする請求項1又は2記載の肥料配送用コンテナ装置。
【請求項4】
前記可動支持台に、前記コンテナから排出する肥料を前記ホッパーに誘導する肥料誘導体を設けてあることを特徴とする請求項1又は2記載の肥料配送用コンテナ装置。
【請求項5】
前記基台の一側に、転倒防止体を設けてあることを特徴とする請求項1又は2記載の肥料配送用コンテナ装置。
【請求項6】
前記コンテナは折畳み可能に構成してある請求項1又は2記載の肥料配送用コンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−131308(P2007−131308A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324044(P2005−324044)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(593203619)北海道セイカン工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】