説明

肥満、真性糖尿病及び耐糖能異常を伴う疾患の治療用薬剤

【課題】副作用を生じさせずに、肥満、真正糖尿病及び耐糖能異常を伴う他の疾患の経口治療に使用される、有効な抗体ベースの薬剤、並びに固体状の前記薬剤の製造方法の提供。
【解決手段】本発明に係る、真正糖尿病及び耐糖能異常と関連する他の疾患の治療用の経口治療薬剤中に、ホメオパシー技術に基づき、複数回の連続希釈及び外的処理によって得られた、活性型のインシュリン受容体β−サブユニットと反応する抗体を含有させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な薬剤の提供に関し、詳細には、肥満、真正糖尿病及び耐糖能異常を伴う他の疾患の有効な治療及び予防に使用可能な薬剤の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術においては、肥満、真正糖尿病及び耐糖能異常に伴う他の疾患の治療用の薬剤が公知である。例えば、Register of Medicinal Drugs of Russiaの、“Encyclopedia of the Drugs”,14th edition,Moscow,Register of Medicinal Drugs(RMD),2006,pp.223−226.pp.329−332,P.510,P.731(非特許文献1)を参照。
【0003】
しかしながら、かかる薬の使用は、特に寛容が生じるため、安定的な効果が長期的に得られず、更に副作用を伴うことも考えられる。
【0004】
有効成分及び薬理学的に許容できる添加剤を含有する乾燥粉末成分をプレスすることを含んでなる固体状の経口薬を得る方法も公知である(RU2203054C2、A61K9/20、2003)(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、かかる方法は抗体を含有する薬剤の製造には適していない。なぜなら、それらは注入用の液体製剤として調製されるものであり、生物学的利用能を発揮させるために非経口的に投与されるものだからである。
【特許文献1】RU2203054C2号公報
【非特許文献1】“Encyclopedia of the Drugs”,14th edition,Moscow,Register of Medicinal Drugs(RMD),2006,pp.223−226.pp.329−332,P.510,P.731
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、副作用を生じさせずに、肥満、真正糖尿病及び耐糖能異常を伴う他の疾患の経口治療に使用される、有効な抗体ベースの薬剤、並びに固体状の前記薬剤の製造方法の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明に係る、真正糖尿病及び耐糖能異常と関連する他の疾患の治療用の経口治療薬剤中に、ホメオパシー技術に基づき、複数回の連続希釈及び外的処理によって得られた、活性型のインシュリン受容体β−サブユニットと反応する抗体を含有させることにより解決される。
【0008】
詳細には、上記の薬剤(薬物)は、活性型のインシュリン受容体のβ−サブユニットと反応するモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、天然型若しくは野生型抗体を含有する。
【0009】
更に、上記の薬剤は、活性型のインシュリン受容体のβ−サブユニットと反応する抗体の様々なホメオパシー希釈剤の混合物を含有する。
【0010】
上記の課題はまた、真正糖尿病及び耐糖能異常に関連した他の疾患の治療用の、本発明に係る固体状の経口投与用薬剤の製造方法によっても解決される。詳細には当該方法は、流動ベッドにおいて、潅注された有効量の担体と、ホメオパシー技術に基づく複数の連続希釈による抗体濃度の減少と外的処理との組み合わせにより得られた、活性型のインシュリン受容体β−サブユニットと反応する抗体のアルコール水溶液中希釈液を、薬理学的に許容できる添加剤と共に混合し、直接乾燥プレスによって、35℃を超えない温度で乾燥することを含んでなる、前記方法。
【0011】
この方法においては、150〜250μmの粒度を有するラクトースが、固体状の薬剤の製造用の担体として用いられる。
【0012】
鋭意研究の結果、経口投与に用いられ、インシュリン受容体β−サブユニットと反応する抗体を、主にホメオパシー技術に基づいて連続希釈及び外的処理によって調製した薬剤を使用することにより、肥満、真正糖尿病などに特異的な糖代謝障害において、インシュリン受容体β−サブユニットにより媒介される生理的プロセスに対する効果が修飾され、本発明に係る薬剤の治療効果が高まることを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従って調製される薬剤は、特異的な薬理活性及び高い効果によって特徴づけられる新規な抗体ベースの薬剤であり、副作用の欠如、高純度及び低コストといった効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の薬剤の調製法を、以下に記す。
【0015】
ヒトインシュリン受容体β−サブユニットの断片(タンパク質配列のデータベースであるSwissprotの、No.P06213,http://www.ncbi.hlm.nih.gov/sites/entrez/viewer.fcgi?db=protein&val=33112647)であって、3つのアミノ酸残基長以上のもの、特にC末端断片(aa1366〜1382:GGKKNGRILTLPRSNPS)を用いて、実験動物の免疫原とし、ポリクローナル抗体の調製、又はハイブリドーマ技術を用いた組換えモノクローナル及びポリクローナル抗体の調製を行った。得られた抗体を、アフィニティークロマトグラフィで精製した。様々な断片の混合物を、免疫原として用いてもよい。
【0016】
免疫方法及びモノクローナル抗体の調製方法は、例えば、Immunological methods/Edited by G.Frimel,Moscow,Medicina,1987,p9−33に記載されている。
【0017】
天然型の抗体の調製方法は、“Natural antibodies to low−molecular compounds” M.A.Myagkova,Moscow,MGUL,2001(ISBN5−8135−0058−8),pp.70−114に記載されている。
【0018】
組換え型の抗体の調製方法は、Laffly E.,Sodoyer R. Hum.Antibodies.Monoclonal and recombinant antibodies,30 years after,2005,Vol.14,N1−2,pp.33−55に記載されている
【0019】
単離された抗体を、複数回の連続希釈によってその濃度を減少させ、ホメオパシー技術に従って、例えばそれらを、通常であれば機械的な外的処理に供して強化する(Homeopathic medicinal drugs.Guidelines on description and manufacturing.V.Shvabe,Moscow,1967,pp.12−38、又はG.Keller,Homeopathy,Moscow,Medicina,2000,part 1,pp.37−40を参照)。上記の一定の濃度減少(希釈系列の作成)は、開始物質(抗体)1体積部を、9体積部(10倍(D)希釈の場合)の、又は99体積部(100倍(C)希釈の場合)の、又は999体積部(1000倍希釈の場合)の中性溶剤−蒸留水及び/又は70%エチルアルコールと共に連続的な希釈系列を調製することによりなされ、当該処理は、各々の希釈液ごとに別々の容器を用いて、得られた各希釈液を複数回にわたり垂直的に振盪し、所望の希釈液を得ることにより行われる。
【0020】
上記の濃度減少の操作において、超音波、電磁又は他の物理的な影響力を用いて、外的処理を行ってもよい。
【0021】
薬剤による治療効果を改善するため、様々なホメオパシー希釈液の混合物を使用してもよい。
【0022】
得られた水溶液中又はアルコール溶液中の希釈液を液体剤形として用いて、身体への経口投与用(ドロップの形態で)、又はその後の固体状の経口投与用製剤の調製を行ってもよい。
【0023】
流動ベッド中(例えばHuttlin Pilotlabタイプ、Huttlin社製)における、固体状の経口治療用の投与形態の調製においては、上記の技術に従って、インシュリン受容体のβ−サブユニットと反応する活性型抗体をアルコール水溶液中に希釈(好ましくは100倍希釈系列)することによって調製された、150〜250μmの粒度を有する、中性物質、すなわちラクトース(乳糖)の顆粒を流動ベッド中で潅流し、35℃を超えない温度で同時に乾燥する操作を行う。
【0024】
適切に秤量された、調製済みの「飽和」ラクトースをミキサーに充填し、全ローディング重量に対して10.0〜15.0%で添加した微結晶性セルロースと混合する。次いで、「不飽和」ラクトースを全ローディング量の0.8〜1.2%で、及びステアリン酸マグネシウムを30〜80質量%で、混合物(濃度の減少によっても治療効果を低下させることなく、コストを減少させ、錠剤の製薬工程を簡便にし、迅速化する場合には、活性化型抗体のアルコール水溶液中希釈液)に添加し、それらを均一に撹拌する。
【0025】
得られた均一な乾燥混合物を、直接乾燥プレス機(例えばタブレット成形機Korsch−XL400)に供給し、約150〜500mgの錠剤として成形する。
【実施例】
【0026】
実施例1:
患者K(62歳で、第3度の肥満(BMI36))。インシュリン非依存性糖尿病を長期にわたり患っていた。彼は、血糖降下薬(過去1ヶ月、10mg/日のグリベンクラミド)の投与を受けていた。グリベンクラミドの摂取により、周期的に低血糖が生じ、その患者は頭痛、めまいなどを催した。1日2回、5つのドロップを、経口投与により、ウサギ抗インシュリン受容体β−サブユニットポリクローナル抗体(ホメオパシー希釈液C12+C30+C200の混合物)との組み合わせで、グリベンクラミドを投与した。低血糖の症状は4週にわたる治療の間見られず、グルコース耐性が正常化された。1.5ヵ月の治療の後、患者はグリベンクラミドの摂取を止めたが、血糖値は正常範囲に維持されていた。ボディーマスインデックスは33以下に減少した。抗体ベースの薬物療法の継続を推奨した。
【0027】
実施例2:
患者M(46歳)。急激な疲労感を患っていた。検査の結果、第2度の肥満であった。インシュリン受容体β−サブユニットと反応する単クローン抗体を含有する、強化された抗体ホメオパシー希釈液C30を飽和させた錠剤を、1日3回、1錠ずつ服用することを勧告した。6週間にわたり薬剤投与を行った結果、7%の体重減少及び身体的な寛容性の向上がもたらされた
【0028】
実施例3:
患者K(36歳)。不眠症、接触の増加、呼吸困難を患っていた。検査の結果、第3度の肥満(BMI41kg/m)であった。抗インシュリン受容体β−サブユニット抗体(ホメオパシー希釈剤C12+C30+C200の混合物)を含有する錠剤2錠を1日2回摂取することにより、食欲が正常化し、4週以内にBMIが最高36kg/m2にまで減少した。
【0029】
実施例4:
患者D(43歳)。肥満治療を受けていた。食事療法の効果が出ないと不満を言った。インシュリン受容体β−サブユニットに対する抗体を含有するホメオパシー希釈剤C200を、4回/日、錠剤1錠の投与量で5週間投与を行った結果、患者の体重を10%減少させることができた。
【0030】
実施例5:
活性型のウサギ抗インシュリン受容体β−サブユニットポリクローナル抗体(ホメオパシー希釈液C12+C30+C200の混合物)を含有する薬剤の水溶液による抗糖尿病活性を、ストレプトゾトシンにより誘導された糖尿病に罹患する非近交系雄ラットを用いてモデル実験を行った。50日間にわたり、ネズミ1匹あたり2.5mL/kgの投与量で、当該薬剤を胃内に投与した。インシュリン(12単位/kg/日のアクトラピドHM、皮下)及びグリベンクラミド(MP Biomedical社製、1骨あたり8mg/kg/日の投与量)を参照用の薬剤として用いた。その結果、参照用の薬剤のうちの1つを上回る顕著な薬理活性が示された。治療7日目において、血液及び尿中の糖濃度が著しく減少し、グルコース耐性も正常化していた。14日目に、これらのパラメータはほとんど正常値となった。50日間にわたる治療において、薬効が持続された。インシュリン及びグリベンクラミドの投与により、上述したパラメータに対して、様々な程度における抗糖尿病効果が示されたが、その効果の程度は、インシュリン受容体βサブユニットと反応する活性型抗体の投与を受けている動物群と比較し、顕著に低かった。
【0031】
実施例6:
患者M(15歳)。1型真正糖尿病と診断。罹患期間は7年。インシュリン治療(長期インシュリン薬)の有効性が低いため、ヒトのインシュリン受容体β−サブユニットと反応する、活性型マウスモノクローナル抗体(ホメオパシー希釈剤C12+C30+C200の混合物)を含有する錠剤を、2回/日、口中で溶解させて摂取するよう勧告した。2週間にわたる治療の後、インシュリン治療の効果が大幅に向上し、それにより、インシュリン投与量が0.5単位/kg/日から0.3単位/kg/日まで減少した。更にインシュリンの投与量は0.1単位/kg/日まで減少した(3ヵ月後)。
【0032】
実施例7:
患者S(53歳、BMI30)。8年間にわたりインシュリン非依存性真正糖尿病に罹患し、糖尿病による足損傷を受けている。右脚の親指を1年前に切断している。患者は、切断された右脚の足指の潰瘍が治癒しない(1.5ヵ月)と不満を言った。ウサギ抗ヒトインシュリン受容体β−サブユニットポリクローナル抗体(ホメオパシー希釈剤D6+C30+C50の混合物)を含有する錠剤を、1日1回、1錠の投与量で患者に摂取させた(錠剤は口内で溶解)。3週後、潰瘍の治癒プロセスが観察され、インシュリン耐性が減少した。患者は引き続き3ヵ月間薬を飲み続け、その結果血糖症が安定化した。患者は顕著な体重減少(IMTが28に減少)を自覚した。
【0033】
実施例8:
患者Z(72歳)。非代償性(subcompensated)インシュリン非依存性真正糖尿病に罹患。ヒトインシュリン受容体β−サブユニットと反応する組換えヒト抗体のホメオパシー希釈剤C30を、3回/日、1錠剤ずつ経口摂取することを勧告した。7日後に高血糖が改善され、2週後に血糖値が正常化し、身体的な寛容性が改善された。
【0034】
実施例9:
患者D(8歳)。5歳からI型真正糖尿病であると診断されている。疾患が急速に進行した。血糖値が20mmol/Lとなったとき、患者に30単位/日の投与量で、ヒト組換えインシュリンを投与した。インシュリン受容体β−サブユニットのC末端断片と反応する、ウサギポリクローナル抗体(ホメオパシー希釈液C12+C30+C200の混合物)を、2回/日、2錠ずつ服用する(錠剤は口内で溶解させる)ことを推奨した。なお、同じ投与量でインシュリン投与を継続させた。治療3日目において、血糖値が15.5mmol/Lに減少し、治療2週目においては血糖値が正常化し、安定な状態が維持された。これらの改善により、10単位/日以下による治療開始から3ヵ月後に、インシュリン投与量の減少が可能となった。治療の継続を勧告した。
【0035】
実施例10:
患者A(51歳)。長期間、彼女は腎症、神経症、皮膚病及び網膜症を伴う、非代償性の1型真正糖尿病のため、内分泌医による診断を受けていた。インシュリン治療に加えて、インシュリン受容体β−サブユニットと反応するヤギポリクローナル抗体(ホメオパシー希釈液C12+C30+C200の混合物)を超低濃度で、1錠剤ずつ、3回/日服用させた(錠剤は口内で溶解させる)。2週間後、皮膚の痒み及びタンパク尿症が著しく減少(0.4g/Lから0.1g/L)し、脚の皮膚潰瘍がほとんど治癒した。患者は、健康状態の改善、呼吸困難の減少、動作能力の向上を自覚した。インスリン注射の量を減少させるため、更に治療を行うことを推奨した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満、真正糖尿病及び耐糖能異常に関連する他の疾患の治療用の経口投与用薬剤であって、活性型のインシュリン受容体β−サブユニットと反応する抗体を含有し、ホメオパシー技術に基づく反復的な連続希釈、及び外的処理により調製される、前記薬剤
【請求項2】
活性型のインシュリン受容体β−サブユニットと反応するモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、天然型若しくは野生型抗体を含有する、請求項1記載の薬剤。
【請求項3】
活性型のインシュリン受容体β−サブユニットと反応する抗体の、様々なホメオパシー希釈液の混合物を含有する、請求項1記載の薬剤。
【請求項4】
真正糖尿病及び耐糖能異常に関連する他の疾患の治療用の固体状の経口投与用薬剤の製造方法であって、流動ベッドにおいて、潅注された有効量の担体と、ホメオパシー技術に基づく複数の連続希釈による抗体濃度の減少と外的処理との組み合わせにより得られた、活性型のインシュリン受容体β−サブユニットと反応する抗体のアルコール水溶液中希釈液を混合し、直接乾燥プレスによって、35℃を超えない温度で乾燥することを含んでなる、前記方法。
【請求項5】
150〜250μmの粒度を有するラクトースが担体として用いられる、請求項4記載の固体状の経口投与用薬剤の製造方法。

【公表番号】特表2009−539827(P2009−539827A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514226(P2009−514226)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/RU2007/000288
【国際公開番号】WO2007/149010
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(508278712)
【Fターム(参考)】