説明

肥満の治療

本発明は、食欲抑制および体重調節のためのペプチドおよびその医薬組成物を提供する。好ましいペプチドは、カルシトニンアナログであり、好ましくは、該ペプチドをよりアミリン様にするために特異的なアミノ酸変化を伴うカルシトニンアナログである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、Nozer M. Mehtaらによって2009年1月22日に出願された米国仮出願第61/205,750号、標題「肥満の治療」(その開示は出典明示によって本明細書の一部とされる)の優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、食欲抑制のためのペプチド(およびそれを含有する医薬組成物)、およびヒトを包含する感受性温血動物における体重超過状態または肥満を治療および/または予防するためのそれらの使用に関する。特に、本発明は、ある特定のカルシトニンアナログに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の背景
体重超過状態または肥満は、心血管疾患、高血圧および糖尿病などの多くの疾患の周知の危険因子である。さらに、多くの人々の全般的な幸福において、外見が重要な役割を果たす。体重超過状態は、また、個人の所望の身体活動に参加できる能力を減少または制限しうる。
【0004】
一般的な治療および予防計画は、種々のダイエット(食事制限ダイエットを包含する)、体重減少プログラムおよびエクササイズを包含し、それらの成功の程度は様々であり、多くの人々にとって十分に証明されていない。先行技術において、多数の医薬組成物が試みられ、時折、望ましくない重大な副作用を伴った。
【0005】
しばしば摂取量減少に付随する自然の食欲増加によって、所望の食物摂取量の減少は困難になる。このことは、食物摂取量の減少を含む計画に対する、重大な患者の不順守をもたらす。かくして、当該分野において、安全かつ有効な食欲抑制に対する要望がある。
【0006】
カルシトニンは、食欲を抑制することが知られるが、強力な骨抗再吸収剤である。したがって、体重調節計画におけるより一般的な使用にとって望ましくない骨に対するカルシトニンの影響のために、食欲抑制剤としてのその使用は制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、有意な食欲抑制活性を保持するが、カルシトニンよりも効力の弱い骨抗再吸収剤であるカルシトニンアナログを提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、食欲抑制剤としての使用のための新規なペプチド(およびそれを含有する医薬組成物)を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、食欲を抑制する方法を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、体重超過状態および/または肥満を治療および/または予防する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1の具体例において、本発明は、そのアミノ酸配列がサケまたはウナギカルシトニンのいずれかのアミノ酸配列に対し少なくとも84パーセントの同一性を有するペプチドであって、該ペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基がサケ カルシトニンおよびウナギ カルシトニンの両方の対応するアミノ酸残基とは相違し、かつ、ヒト アミリンの対応するアミノ酸残基と同一であるペプチドを提供する。
【0012】
別の具体例において、本発明は、そのアミノ酸配列が配列番号1に対して少なくとも93パーセント同一であるペプチドであって、該ペプチドがウナギまたはサケ カルシトニンあるいはヒト アミリンではないペプチドを提供する。
【0013】
別の具体例において、本発明は、そのアミノ酸配列が配列番号2に対して少なくとも93パーセント同一であるペプチドであって、該ペプチドがウナギまたはサケ カルシトニンあるいはヒト アミリンではないペプチドを提供する。
【0014】
別の具体例において、本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドであって、
(i)残基26がアスパラギンまたはアスパラギン酸であってもよく、
(ii)残基29がセリンまたはアラニンであってもよく、
(iii)残基30がグリシンではないか、または残基32がプロリンではない、ペプチドを提供する。
【0015】
別の具体例において、本発明は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。
【0016】
別の具体例において、本発明は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。
【0017】
別の具体例において、本発明は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドであって、
(i)残基25がアスパラギンまたはアスパラギン酸であってもよく、
(ii)残基28がセリンまたはアラニンであってもよく、
(iii)残基29がグリシンではないか、または残基31がプロリンではない、ペプチドを提供する。
【0018】
別の具体例において、本発明は、16位のロイシンを欠くことを除き、配列番号3に示されるアミノ酸配列(かくして、配列番号5をもたらす)を有するペプチドを提供する。
【0019】
別の具体例において、本発明は、16位のロイシンを欠くことを除き、配列番号4に示されるアミノ酸配列(かくして、配列番号6をもたらす)を有するペプチドを提供する。
【0020】
別の具体例において、本発明は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。
【0021】
別の具体例において、本発明は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。
【0022】
別の具体例において、本発明は、配列番号12に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。
【0023】
別の具体例において、本発明は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。
【0024】
別の具体例において、本発明は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。
【0025】
別の具体例において、本発明は、本明細書中に記載の本発明のペプチドのいずれか、および医薬上許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
別の具体例において、本発明は、体重超過状態または肥満を治療または予防する方法であって、かかる予防または治療が必要な患者に、食欲を抑制するのに有効な量の本明細書中に記載の本発明のペプチドのいずれか(またはその医薬組成物)を投与することを含む方法を提供する。
【0027】
別の具体例において、本発明は、食欲を抑制する方法であって、かかる抑制が必要な患者に、有効量の本明細書中に記載の本発明のペプチドのいずれか(またはその医薬組成物)を投与することを含む方法を提供する。
【0028】
別の具体例において、本発明は、糖尿病を治療する方法であって、かかる治療が必要な患者に、治療上有効量の本明細書中に記載の本発明のペプチドのいずれか(またはその医薬組成物)を投与することを含む方法を提供する。
【0029】
別の具体例において、本発明は、糖尿病を治療する方法であって、かかる治療が必要な患者に、治療上有効量の本明細書中に記載の本発明のペプチドのいずれか(またはその医薬組成物)を投与することを含む方法を提供する。
【0030】
性別、年齢および身長などの多くの因子を考慮して、体重に対する正常範囲の当該分野で承認された多くの基準がある。本明細書中に示される治療または予防計画が必要な患者は、承認された標準値を超える体重を有する患者、または遺伝、環境因子または他の承認された危険因子のために、一般的な集団よりも体重超過または肥満になる危険性が高い患者を包含する。本発明にしたがって、本発明は、体重調節が治療の一態様である糖尿病の治療に用いられうることが意図される。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「パーセント同一性」なる語は、所定のアミノ酸が付加的な置換(付加的なアミノ酸以外)で修飾されるか否かを問わず、アミノ酸配列に言及する。例えば、システインは、この目的において、アセチルシステインと同一とみなされる。同様に、この目的において、別のシステインとジスルフィド架橋を形成したシステインは、かかる架橋を形成していないシステインと同一とみなされる。「パーセント同一性」なる語は、また、ペプチドサイズにおける相違を意図する。例えば、33残基のペプチドと(その1つの付加的なアミノ酸を除き)同一である34残基のペプチドは、本明細書中で、該33残基のペプチドと97パーセント同一であるとみなされる。
【0032】
複数のシステイン残基を有するペプチドがしばしば、2つのかかるシステイン残基間にジスルフィド架橋を形成することは、当業者に明らかであろう。本明細書中に示されるかかるペプチドは全て、1以上のかかるジスルフィド架橋を含んでいてもよいものと定義される。
【0033】
当該分野において、DavalintideおよびPramlintideとして知られるペプチドは、本発明の範囲から除外される。
【0034】
別記しないかぎり、本発明の活性な化合物の好ましい投与量は、治療目的および予防目的の両方において同一である。所望の投与量は、下記により詳細に論じるが、投与様式によって異なる。
【0035】
別記する場合または文脈から明らかな場合を除き、本明細書中で、投与量は、医薬賦形剤、希釈剤、担体または他の成分によって影響されない活性化合物の重量を示すが、本明細書の実施例に示されるとおり、かかる付加的な成分は、所望により含まれる。ペプチド活性剤のデリバリーのために製薬産業において一般に使用されるいずれの投与形態(カプセル、錠剤、注射など)も、本明細書中での使用に適当であり、「賦形剤」、「希釈剤」または「担体」なる語は、該産業において、典型的に、かかる投与形態において活性成分と一緒に含まれるような非活性成分を包含する。好ましい経口投与形態は、下記でより詳細に論じるが、本発明の活性剤を投与する排他的な様式とみなされるべきではない。
【0036】
本発明の他の特徴および利益は、添付の図面を参照する特定の好ましい具体例の下記の非限定的な記載から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明のペプチド(配列番号3)と組み換えサケ カルシトニンのcAMP応答を比較するバイオアッセイ由来のデータを示すグラフである。
【図2】図2は、ビーグル犬研究において、配列番号3によって提供される食物消費に対する影響 対 プラセボおよび2つの既知の食欲抑制剤によって提供される食物消費に対する影響を示すグラフである。
【図3】図3は、ビーグル犬研究において、配列番号3によって提供される体重に対する影響 対 プラセボおよび2つの既知の食欲抑制剤によって提供される体重に対する影響を示すグラフである。
【図4】図4は、T47D細胞上のカルシトニン受容体への結合を測定するアッセイにおいて、サケ カルシトニンと比較した本発明の3つのペプチドのカルシトニン様特性を示すグラフである。本発明の3つのペプチドは、UGP269(配列番号12)、UGP271(配列番号13)およびUGP281(配列番号14)である。
【図5】図5は、注射計画の開始後7および14日目にて、プラセボ、UGP269(配列番号12)、またはUGP271(配列番号13)のいずれかの同じ投与量で毎日注射したラットによる相対的体重変化を示すグラフである。
【図6】図6は、注射計画の開始後7および14日目にて、プラセボ、サケ カルシトニン、UGP271(配列番号13)、またはUGP281(配列番号14)のいずれかの同じ投与量で毎日注射したラットによる相対的体重変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の好ましい具体的態様の詳細な記載
本発明の好ましいペプチドは、サケおよびウナギ カルシトニンのいずれかと有意なアミノ酸同一性を有する。好ましくは、少なくとも84%同一性があり、いくつかの具体例において、ウナギまたはサケ カルシトニンに対して87%、90%、93%または96%もの同一性がある。好ましくは、本発明のペプチドの骨に対する効果を(サケまたはウナギ カルシトニンの骨に対する効果と比べて)減少させる目的で、サケ カルシトニンおよびウナギ カルシトニンの両方と比べて、少なくとも1つのアミノ酸が修飾される。
【0039】
いくつかの具体例において、サケおよびウナギ カルシトニンの16位のロイシンが欠失して、31−アミノ酸ペプチドをもたらす。該欠失は、おそらく、天然サケまたはウナギ カルシトニンと比べて、その結果得られるペプチドの腎臓および破骨細胞結合能を望ましく減少させると予想される。
【0040】
本発明のペプチドは、遊離酸形態で存在していてもよいが、C末端アミノ酸がアミド化されていることが好ましい。発明者らは、かかるアミド化が該ペプチドの有効性および/またはバイオアベイラビリティーに寄与しうると予測する。
【0041】
好ましい具体例において、本発明のペプチドは、サケまたはウナギ カルシトニンのロイシン−16を含んでも、含まなくても、アミノ酸がサケおよびウナギの両方のカルシトニンの対応するアミノ酸と異なる1〜5位を有しうる。本明細書中で使用される場合、「サケまたはウナギ カルシトニンの対応するアミノ酸」なるフレーズは、該フレーズが使用されて論じられている本発明のペプチドと同じアミノ酸位置番号(そのアミノ末端に対して)を有するサケまたはウナギのいずれかのカルシトニンのアミノ酸残基を意味する(但し、該フレーズがロイシン−16が欠失された具体例において使用される場合、サケまたはウナギ カルシトニンの「対応する」アミノ酸番号は、本発明のペプチドにおける15を越えるいずれかの位置番号よりも1位置大きい)。
【0042】
本発明のペプチドがウナギおよびサケの両方のカルシトニンと異なる好ましい位置は、例えば、8、11、27、30および32位である。天然のサケまたはウナギ カルシトニンと比較して、ロイシン−16が欠失した本発明のペプチドにおいて、上記の好ましい位置変化は、8、11、26、29および/または31である(天然のサケまたはウナギ カルシトニンの8、11、27、30および/または32位に対応する)。これらの好ましい位置の1以上または他の位置における変化は、該変化がなければ該ペプチドがもたらすであろう、食欲抑制および/または体重超過状態または肥満の治療に関して望ましくない、骨に対する該ペプチドの効果を減少させると考えられる。
【0043】
理論に縛られるものではないが、本発明のペプチドによって提供される食欲抑制は、本発明のペプチドのアミリン受容体への結合によって媒介されると考えられる。かくして、好ましい具体例において、本発明のペプチドは、アミリン受容体のスーパーアゴニストである一方で、カルシトニン受容体に対する結合が減少していることが望ましい。好ましい具体例において、本発明のペプチドがサケおよび/またはウナギ カルシトニンの対応する位置と異なる位置は、好ましくは、問題の位置にてヒトアミリンの対応するアミノ酸を利用する。「ヒトアミリンの対応するアミノ酸」なるフレーズは、本明細書中で使用される場合、議論されている本発明のペプチドのアミノ酸番号と同じヒトアミリンのアミノ酸番号を意味する(但し、議論されている本発明のペプチドのアミノ酸残基番号が24より大きい場合、ヒトアミリンの「対応する」アミノ酸残基は、本発明のペプチドのアミノ酸番号より5大きい)。例えば、本発明のアミノ酸24は、ヒトアミリンのアミノ酸番号24に対応するが、本発明のアミノ酸25は、ヒトアミリンのアミノ酸番号30に対応する。ロイシン−16が削除された本発明の具体例において、本発明とヒトアミリン間の「対応する」番号は、最初の15残基にわたって同一であり、本発明のペプチドの残基16−23(ヒトアミリンの残基17−24に対応する)で1つ異なり、本発明のペプチドの残基番号24(ヒトアミリンの残基30に対応する)で開始する6個が異なる。
【0044】
本発明の1のペプチド、配列番号3のペプチドは、ウナギまたはサケ カルシトニンが30位および32位に有するアミノ酸残基の代わりに、30位にアスパラギンおよび32位にチロシンを有する(アミリンのアスパラギン−35およびチロシン−37に対応する)。他の点では、好ましいペプチド配列番号3は、該ペプチドをよりアミリン様にする30および32位以外の全ての位置で、サケ カルシトニンと同じアミノ酸配列を有する。本発明の別の好ましい例によると、配列番号3はチロシン−32でアミド化される。
【0045】
商標SYMLINの下で市販されているプラムリンチド(Pramlintide)は、凝集物形成(アミリンに伴う問題である)を妨害するような、アミリンと異なるアミリンアナログである。したがって、本発明は、プラムリンチドが本明細書中でアミリンを利用するのと同じ方法で利用されうることを意図する。同様に、エルカトニン(elcatonin)(ウナギ カルシトニンのアナログ)は、本明細書中でウナギ カルシトニンが利用されるのと同じ方法で利用されうる。
【0046】
本発明の別のペプチドは、配列番号4に示され、27位にバリンを含むことを除き、配列番号3と同様である。バリン−27は、配列番号4をよりアミリン様にする(すなわち、ヒトアミリンにおけるバリン−32に対応する)。バリン−27はまた、配列番号4をウナギ カルシトニン(サケ カルシトニンとは対照的に)により近似させ、ウナギ カルシトニンもまた、27位にバリンを有する。
【0047】
別の具体例において、本発明のペプチドは、ロイシン−16を欠失することを除き、配列番号3および配列番号4と同一でありうる。
【0048】
別の具体例において、本発明のペプチドは、配列番号7または配列番号8に示されるアミノ酸配列を有しうる。
【0049】
比較を容易にするために、天然のサケおよびウナギ カルシトニンのアミノ酸配列を各々、配列番号9または配列番号10に示す。ヒトアミリンのアミノ酸配列を配列番号11に示す。
【0050】
いくつかの具体例において、上記のペプチドのN末端側を最初のアミノ酸の正電荷を減少させるように修飾する。例えば、アセチルまたはプロピオニル基は、システイン−1において置換されていてもよい。図6に説明するように、改善された有効性は、かかるアセチル置換によって達成される。正電荷を減少させる別の方法は、限定するものではないが、ポリエチレングリコールに基づくPEG化、またはN末端でのグルタミン酸もしくはアスパラギン酸などの別のアミノ酸の付加を包含する。別法では、上記のペプチドのN末端への他のアミノ酸の付加は、望ましくは、カルシトニン受容体によるシグナル伝達を減少させうる。かかる付加的なアミノ酸は、限定するものではないが、リジン、グリシン、ホルミルグリシン、ロイシン、アラニン、アセチルアラニン、およびジアラニルを包含する。
【0051】
いくつかの具体例において、上記のペプチドは、所定のアミノ酸残基、ヒトアミリンの対応するアミノ酸の置換によってさらに修飾されうる。
【0052】
本発明のペプチドの組み換え的生産は、当該分野で知られている他の技術よりも費用効率が高いと考えられるが、これらの他の技術もまた使用されうる。好ましくは、本発明のペプチドは、C末端でアミド化されているが、遊離酸形態もまた意図される。本発明のペプチドのアミド化バージョンを製造するための好ましい技術は、前駆体(所望のアミド化産物のC末端アミノ基の代わりにグリシンを有する)を、例えば、米国特許第4,708,934号ならびに欧州特許公開第0308067号および第0382403号に記載される反応において前駆体がアミド化産物に変換される既知の技術にしたがって、ペプチジルグリシンアルファ−アミド化モノオキシゲナーゼの存在下に反応させることである。組み換え的生産は、前駆体、および該前駆体のサケ カルシトニンへの変換を触媒する酵素の両方にとって好ましい。かかる組み換え的生産は、前駆体のアミド化産物への変換についてさらに記載するBiotechnology、Vol.11(1993)pp. 64-70において議論されている。そこに報告される組み換え産物は、天然サケ カルシトニンと、ならびに溶液および固相化学ペプチド合成を用いて生産されるサケ カルシトニンと同一である。アミド化産物の生産は、また、Consalvoら、米国特許公開第2006/0127995号、Millerら、米国特許公開第2006/0292672号、Rayら、2002、Protein Expression and Purification、26: 249-259、およびMehta、2004、Biopharm. International、July、pp. 44-46によって示されるプロセスおよびアミド化酵素を用いて達成されうる。
【0053】
好ましいアミド化ペプチドの生産は、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼを用いて溶性融合蛋白質としてイー・コリ(E. coli)においてグリシン−伸長前駆体を生産することによって、または米国特許第6,103,495号に記載される技術にしたがって該前駆体を直接発現させることによって進行しうる。かかるグリシン伸長前駆体は、C末端以外は所望のアミド化産物と同一の分子構造を有する(該産物は−X−NHで終わるが、該前駆体は−X−glyで終わり、ここに、Xは該産物のC末端アミノ酸残基である)。上記刊行物に記載されるアルファ−アミド化酵素は、前駆体の生産物への変換を触媒する。該酵素は、好ましくは、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において、上記の文献Biotechnology and Biopharmに記載されるように、組み換え的に生産される。
【0054】
本発明のペプチド活性剤の遊離酸形態は、「前駆体」上のC末端グリシンを含まず、その代わりに該前駆体が最終ペプチド産物であり、アミド化工程を必要としないことを除き、同様に生産されうる。
【0055】
患者の処置
本発明のペプチドは、患者中の該ペプチドの血清レベルを5〜500ピコグラム/ミリリットル、好ましくは10〜250ピコグラム/ミリリットルに維持するのに十分な投与量で投与されることが好ましい。該血清レベルは、当該分野で既知のラジオイムノアッセイ技術によって測定されうる。担当医師は、患者の応答をモニターしてもよく、次いで、個々の患者の代謝および応答を説明するために幾分投与量を変化させてもよい。
【0056】
他の送達方法を用いてもよいが、本発明のペプチドは、好ましくは、例えば、米国特許第6,086,018号または米国特許公報第2009/0317462号に示されるように、当該分野で既知の方法において経口送達用に処方される。本発明による1の好ましい経口投与形態を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
該型の経口投与形態において達成可能なバイオアベイラビリティーは、1投与形態あたり、たった100−2000マイクログラムの活性ペプチド(該実施例において、配列番号3)、好ましくは200−800マイクログラムを用いて、上記の好ましい血液レベルを達成するのに十分であると予測される。該型の経口処方および活性成分の濃度を用いる場合、1日あたり200〜4000マイクログラム(他の全ての成分の重量を除く)の活性ペプチドの投与量、好ましくは1日あたり400〜1600マイクログラムの投与量は、おそらく標的血液レベルを達成する。
【0059】
これらの量は、1日1回の投与または複数回の投与によって提供されうる。投与される活性剤にかかわらず、単一投与形態(例えば、単一のカプセルまたは錠剤)は、ペプチド活性剤、pH低下剤および吸収促進剤の同時放出をよく提供するので、単一投与形態を各投与に用いることが好ましい。該酸が該ペプチド活性剤の放出に近い時間に放出されると、該酸は、該活性剤に対する望ましくない蛋白質分解攻撃をよく減少させることができるので、これが非常に望ましい。
【0060】
ほぼ同時の放出は、本発明の全ての成分を単一の丸薬またはカプセルとして投与することによってよく達成される。しかしながら、本発明は、また、例えば、全ての成分の必要量を一緒に提供するように一緒に投与されうる2以上の錠剤またはカプセルのなかで必要量の活性成分を分けることも包含する。「医薬組成物」なる語は、本明細書中で使用される場合、限定するものではないが、1以上の錠剤またはカプセル(または他の投与形態)が所定の投与に薦められるか否かにかかわらず、患者への特定の投与に適当な完全な投与量を含む。
【0061】
本発明によるペプチドは、また、投与様式間で通常の投与量変更を用いて、当該産業における他の一般的な技術によって送達されてもよい。例えば、注射による投与の場合、1日あたり5〜100マイクログラムの投与量範囲(好ましくは、1日あたり10〜50マイクログラム、最も好ましくは1日あたり15〜35マイクログラム)の投与量範囲が好ましい。
【0062】
注射用医薬組成物において、本発明のペプチド活性剤は、好ましくは、10マイクログラム/mL〜100マイクログラム/mLの濃度で配合される。
【0063】
理論に縛られるものではないが、作用機序は、レプチン(leptin)を含むと考えられる。いくつかの具体例において、レプチンは、本発明の医薬組成物に加えられてもよく、または別個に提供されてもよい。
【0064】
効力データ
本発明のアミノ酸置換がサケ カルシトニンを、カルシトニン受容体に対する結合アフィニティーが小さい(または、カルシトニン受容体を望ましくなく活性化することができない)アナログに変換したかどうかを試験するために、アミノ酸配列が配列番号3に示されるペプチドを、そのcAMP応答(カルシトニン受容体活性化のインジケーター)をサケ カルシトニンのcAMP応答と比較するバイオアッセイに付した。図1に示されるように、データは、天然のサケ カルシトニンよりも、本発明のカルシトニンアナログ(配列番号3)がカルシトニン受容体に結合した場合の効力が望ましく弱いことを示唆する。
【0065】
食物摂取量に対するペプチド配列番号3の効果は、ビーグル犬を用いるプラセボ対照試験において調べられた。ペプチド配列番号3、ならびにサケ カルシトニン(sCT)およびPYY(3−36)NHは、経口送達用腸溶性被覆カプセル中に処方された。該カプセルは、また、プロテアーゼを阻害し、該ペプチドの吸収を促進する賦形剤を含有した。プラセボカプセルは、該ペプチドを含有せず、同じ賦形剤を含有した。投与期間前、中および後に、食物および水の摂取量、ならびに該イヌの体重を毎日モニターした。イヌは、毎日8時間、既知の量の食物に接近可能にし、水を無制限に提供した。図2に示されるように、等しい投与量で、配列番号3およびsCTは、投与した週の間中、食物摂取量を有意に減少させたが、一方、PYYはより小さい効果を示した。プラセボを与えられたイヌの食物摂取量は、変化しないままであった。
【0066】
図3に示されるように、配列番号3およびsCTを与えられたイヌは、投与期間中、小さいが、有意な体重減少を示したが、一方、同じ投与量のPYYを服用したイヌは、体重にほとんど変化がなかった(1日あたり0.05%)。プラセボカプセルを与えられたイヌは、わずかな体重増加を示した。
【0067】
最終的に、投与期間中、水の摂取量も減少したが、それは、食物摂取量の減少よりも少量であった。投与後1週間の洗浄期間において、食物および水の両方の摂取量は、投与前のレベルに戻った。
【0068】
図1−3は、配列番号3が骨再吸収阻害ペプチドsCTの効力に匹敵する効力で、食物消費量を減少させることによって、摂食行動に影響を及ぼす可能性を示す証拠を提供する。
【0069】
同様に、図4は、UGP269(配列番号12)、UGP271(配列番号13)およびUGP281(配列番号14)が、カルシトニン受容体に対し、サケ カルシトニンよりも小さい結合アフィニティーを有することを示す。
【0070】
図5および6は、UGP269(配列番号12)、UGP271(配列番号13)およびUGP281(配列番号14)による体重調節における良好な有効性を示す。図6は、UGP281(配列番号14)のシステイン−1におけるアセチル基による実質的な効力増強の証拠を提供する。
【0071】
本発明は、特定の具体例に関連して記載しているが、多くの他の変更および修飾および他の使用が当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、本明細書中における特定の開示によって制限されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのアミノ酸配列がサケまたはウナギ カルシトニンのいずれかのアミノ酸配列に対し少なくとも84パーセントの同一性を有するペプチドであって、該ペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基がサケ カルシトニンおよびウナギ カルシトニンの両方の対応するアミノ酸残基とは相違し、かつ、ヒト アミリンの対応するアミノ酸残基と同一であるペプチド。
【請求項2】
そのアミノ酸配列が配列番号1に対して少なくとも93パーセント同一であるペプチドであって、ウナギまたはサケ カルシトニンあるいはヒト アミリンではないペプチド。
【請求項3】
該ペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基がサケ カルシトニンおよびウナギ カルシトニンの両方の対応するアミノ酸残基とは相違し、かつ、ヒト アミリンの対応するアミノ酸残基と同一である、請求項2記載のペプチド。
【請求項4】
そのアミノ酸配列が配列番号2に対して少なくとも93パーセント同一であるペプチドであって、ウナギまたはサケ カルシトニンあるいはヒト アミリンではないペプチド。
【請求項5】
該ペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基がサケ カルシトニンおよびウナギ カルシトニンの両方の対応するアミノ酸残基とは相違し、かつ、ヒト アミリンの対応するアミノ酸残基と同一である、請求項4記載のペプチド。
【請求項6】
配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドであって、
(i)残基26がアスパラギンまたはアスパラギン酸であってもよく、
(ii)残基29がセリンまたはアラニンであってもよく、
(iii)残基30がグリシンではないか、または残基32がプロリンではない、ペプチド。
【請求項7】
残基30がグリシンではなく、かつ、残基32がプロリンではない、請求項6記載のペプチド。
【請求項8】
残基30がアスパラギンである、請求項6記載のペプチド。
【請求項9】
残基32がチロシンである、請求項6記載のペプチド。
【請求項10】
残基30がアスパラギンであり、残基32がチロシンである、請求項6記載のペプチド。
【請求項11】
残基26がアスパラギンであり、残基29がセリンである、請求項6記載のペプチド。
【請求項12】
残基26がアスパラギンであり、残基29がセリンである、請求項8記載のペプチド。
【請求項13】
残基26がアスパラギンであり、残基29がセリンである、請求項9記載のペプチド。
【請求項14】
残基26がアスパラギンであり、残基29がセリンである、請求項10記載のペプチド。
【請求項15】
残基27がバリンである、請求項6〜14のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項16】
配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項17】
配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項18】
配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドであって、
(i)残基25がアスパラギンまたはアスパラギン酸であってもよく、
(ii)残基28がセリンまたはアラニンであってもよく、
(iii)残基29がグリシンではないか、または残基31がプロリンではない、ペプチド。
【請求項19】
残基29がグリシンではなく、かつ、残基31がプロリンではない、請求項18記載のペプチド。
【請求項20】
残基29がアスパラギンである、請求項18記載のペプチド。
【請求項21】
残基31がチロシンである、請求項18記載のペプチド。
【請求項22】
残基29がアスパラギンであり、残基31がチロシンである、請求項18記載のペプチド。
【請求項23】
残基25がアスパラギンであり、残基28がセリンである、請求項18記載のペプチド。
【請求項24】
残基25がアスパラギンであり、残基28がセリンである、請求項20記載のペプチド。
【請求項25】
残基25がアスパラギンであり、残基28がセリンである、請求項21記載のペプチド。
【請求項26】
残基25がアスパラギンであり、残基28がセリンである、請求項22記載のペプチド。
【請求項27】
残基26がバリンである、請求項18〜26のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項28】
配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項29】
配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項30】
配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項31】
配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項32】
配列番号12に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項33】
配列番号13に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項34】
配列番号14に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項記載のペプチドおよび医薬上許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項36】
体重超過状態または肥満を治療または予防する方法であって、かかる予防または治療が必要な患者に、食欲を抑制するのに有効な量の請求項1〜34のいずれか1項記載のペプチドを投与することを含む方法。
【請求項37】
食欲を抑制する方法であって、かかる抑制または治療が必要な患者に、請求項1〜34のいずれか1項記載のペプチドを投与することを含む方法。
【請求項38】
体重超過状態または肥満を治療または予防する方法であって、かかる予防または治療が必要な患者に、食欲を抑制するのに有効な量の請求項35記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項39】
食欲を抑制する方法であって、かかる抑制または治療が必要な患者に、食欲を抑制するのに有効な量の請求項35記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項40】
糖尿病を治療する方法であって、かかる治療が必要な患者に、治療上有効量の請求項35記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項41】
糖尿病を治療する方法であって、かかる治療が必要な患者に、治療上有効量の請求項1〜34のいずれか1項記載のペプチドを投与することを含む方法。
【請求項42】
ペプチド中の1番目のシステインがその正電荷を減少するように修飾されている、請求項1〜34のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項43】
N末端アミノ酸がリジン、グリシン、ホルミルグリシン、ロイシン、アラニンおよびアセチルアラニンからなる群から選択される、請求項1〜34のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項44】
食欲の抑制、体重超過状態または肥満の予防または治療、または糖尿病の治療法であって、請求項42または43に記載のペプチドまたは該ペプチドを含有する医薬組成物を患者に投与することを含む方法。
【請求項45】
請求項42または43に記載のペプチドおよび医薬上許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−515794(P2012−515794A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548156(P2011−548156)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/021872
【国際公開番号】WO2010/085700
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(503195300)ユニジーン・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド (17)
【Fターム(参考)】