説明

肥満を治療するための薬理学的シャペロン

【課題】正常なメラノコルチン4受容体(MC4R)活性を促進する方法、及びMC4Rのタンパク質の折畳み及び/又はプロセッシングに影響する変異を有するMC4Rの活性の促進方法を提供する。
【解決手段】細胞表面のMC4Rの活性増加が有益である状態を有する、例えば肥満の個体において、MC4Rに有効な量の薬理学的シャペロンの投与によって治療する方法。MC4Rの活性を促進する薬理学的シャペロン。細胞表面でMC4Rの活性を促進するために、小胞体(ER)におけるMC4Rの折畳みを促進する薬理学的シャペロンを同定するためのスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正常なメラノコルチン4受容体(MC4R)活性を促進する方法、及びMC4Rのタンパク質の折畳み及び/又はプロセッシングに影響する1又は複数の変異を有するMC4Rの活性の促進に関する。本発明は、細胞表面のMC4Rの活性増加が有益である状態(例えば、肥満のような)である個体を、MC4Rに対して有効な量の薬理学的シャペロンの投与によって治療する方法を提供する。本発明は、MC4Rの活性を促進するMC4R薬理学的シャペロンを供給する。本発明は、細胞表面でMC4Rの活性を促進するために、小胞体(ER)におけるMC4Rの折畳みを促進する薬理学的シャペロンを同定するためのスクリーニング方法をさらに提供する。
【0002】
[関連優先権の相互参照]
本出願は、2005年6月3日に出願された米国特許出願第60/687,648号、2006年5月12日に出願された同第60/799,968号、そして2006年6月2日に出願され、まだ割り当てられていない他の1つからの優先権を主張し、各々その全体は参照により本明細書において援用される。
【背景技術】
【0003】
肥満
肥満は体重の障害の中で最も一般的なものを表わし、西欧諸国において最も重要な栄養障害であり、推定罹患率は中年集団の30%〜50%にわたる。太り過ぎ及び肥満のアメリカ人の数は1960年以来、速度を落とすことなく、増加し続けた。今日、成人アメリカ人の64.5パーセント(約1億2700万人)は、太り過ぎ又は肥満として分類される。毎年、肥満により米国において少なくとも300,000人が死亡し、肥満によるアメリカの成人医療費は総計およそ1000億ドルまでになる(米国肥満学会)。
【0004】
肥満は、高血圧、糖尿病(2型)、高脂血症、心臓疾患、高血圧症、卒中、胆嚢疾患、乳癌、前立腺癌及び結腸癌のような状態を発症するの個人のリスクを増加させる(例えば、Nishina, P. M. et al, 1994, Metab. 43: 554-558;Grundy, S. M. &Barnett, J. P., 1990, Dis. Mon. 36: 641-731を参照)。米国において、太り過ぎ又は肥満の発生が、カフカス系アメリカ人と比較して、アフリカ系アメリカ人及びスペイン系アメリカ人ような人種/民族的マイノリティー集団中でより高い比率で生じる。女性及びマイノリティー集団内の社会経済的地位の低い人は、特に太り過ぎ及び肥満の影響を受けやすいようである。この傾向は成人に限定されない。子ども(6〜11才)のおよそ30.3パーセントは太り過ぎであり、15.3パーセントは肥満である。若者(12〜19才)に関しては、30.4パーセントは太り過ぎであり、15.5パーセントは肥満である。成人の間で一般的な糖尿病、高血圧症及び他の肥満関連の成人病は、今や子ども及び若年層においてよりありふれたものになった。貧弱な食習慣及び不活動性は、青少年における肥満の増加に寄与すると報告されている。
【0005】
さらに、小児肥満症を発症するためのリスクファクターは、太り過ぎの親を持つこと、又は子どもの体重に無関心な親、多大な供給量によるエネルギー摂取量の増加、座ってばかりいるライフスタイルの増加及び移動に関する活動(学校又はバス停留所へ歩いて行くこと)の低下、高レベルの怒り/フラストレーションを伴う気質を有していること(そのことによって、親は、子供のかんしゃくを鎮めるために追加の食物及びカロリーを与えてしまう);ダウン症候群であること、母親の妊娠肥満度指数(BMI)、及び長子の地位(肥満率を増加させる)を含む。
【0006】
成人における肥満の診断に使用された1つの手法は、個人のBMI(身長に対する体重の測定)の計算である(Garrow and Webster, International Journal of Obesity 1985; 9:147-153)。BMIが25〜29.9の個人は太り過ぎであるが、BMIが30以上は肥満の指標となる。子どもについては、BMIは性特異的及び年齢特異的である(Pietrobelli et al, Journal of Pediatrics 1998; 132:204-210)。
【0007】
成人期における肥満の発症についてのリスクファクターは、貧弱な食餌(高カロリー、低栄養素);身体活動の欠如;様々なシフトでの労働;禁煙、まれな遺伝病のような或る特定の病状の発症、及びホルモン失調(甲状腺機能低下、クッシング病及び多嚢胞性卵巣症候群ような);或る特定の薬剤(ステロイド及びいくつかの抗うつ薬);人種又は民族的マイノリティー(特に女性のマイノリティー)であること;社会経済的地位の低さ;年齢(20〜55才でリスクが増加)、妊娠;及び退職(スケジュール変更のため)を含む。
【0008】
メラノコルチン4受容体及び肥満
メラノコルチン4受容体(MC4R)は、体重の調節に関わっている(Graham et al, Nat. Genetics 1997; 17: 273-4)。MC4Rは食物摂取量に影響を及ぼす視床下部を含む脳で発現している。MC4R活性に影響する多数の変異が発見され、多数が早発(幼年期)肥満を含む肥満に関係している(Nijenhuis et al., J. Biol. Chem. 2003, 278:22939-45; Branson et al.,New Eng. J. Med. 2003, 348:1096-1103; Gu et al., Diabetes 1999, 48:635-39;Farooqi et al., New Eng. J. Med 2003, 348:1085-95; Tao et al., Endocrinology2003, 144:4544-51)。
【0009】
最新の治療
最新の抗肥満薬は、限定的な有効性及び多数の副作用を有する(Crowley, V. E., Yeo, G. S. & O'Rahilly, S., Nat. Rev. DrugDiscov. 2002; 1, 276-86)。肥満の世界規模での蔓延にともない、この領域では十分な治療法の開発に対する差し迫った必要性がある。近年、食欲、身体エネルギー消費、及び脂肪量蓄積の調節に関するホルモン及びニューロペプチドが、潜在的な抗肥満薬として現れた(McMinn, J. E., Baskin, D. G. & Schwartz, M. W., Obes Rev 2000;1:37-46; Drazen, D. L. & Woods, S. C, Curr Opin Clin Nutr Metab Care 2003;6:621-629)。しかしながら、現在のところ、これらのペプチドは非経口的投与を必要とする。肥満を制御するための、長期間にわたる毎日の注射の可能性(肥満は慢性症状なので)はあまり望ましくなく、これらの薬剤の使用は限定される。
【0010】
分子シャペロンは適切なタンパク質の折畳みを安定化する
タンパク質は細胞質で合成され、新規合成タンパク質は大部分は折畳まれていない状態で小胞体(ER)の内腔へ分泌される。一般に、タンパク質の折畳みは、自己集合の原則によって支配される。新しく合成されたポリペプチドは、アミノ酸配列に基づいたこれらの未変性コンフォメーションへと折畳まれる(Anfinsen et al., Adv. Protein Chem. 1975; 29:205- 300)。周囲温度及び高タンパク濃度の組合せが凝集の過程を刺激し、通常は疎水性コアに埋没したアミノ酸が、隣接するアミノ酸と非特異的に相互作用するので、in vivoではタンパク質の折畳みは複雑である。この問題を回避するために、タンパク質の折畳みは、シャペロンと呼ばれる特殊なタンパク質群によって通常は促進され、シャペロンは折畳まれていないタンパク質が未変性コンフォメーションへと再び折畳まれるように、このタンパク質に結合することによって新生ポリペプチド鎖が凝集するのを防ぐ(Hartl, Nature 1996; 381:571-580)。
【0011】
内在性の分子シャペロンは、実質的にはすべての型の細胞及びほとんどの細胞内コンパートメントに存在する。いくつかは、タンパク質の輸送に関与し、熱ショック及びグルコース飢餓のようなストレス下で細胞が生存することを可能にする(Gething et al., Nature 1992; 355:33-45; Caplan, Trends Cell. Biol.1999; 9:262-268; Lin et al., Mol. Biol. Cell. 1993; 4:109-1119; Bergeron etal., Trends Biochem. Sci. 1994; 19:124-128)。内在性のシャペロンの中で、BiP(免疫グロブリン重鎖結合タンパク質、Grp78)は、最も特徴が明らかにされたERのシャペロンである(Haas, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 1991; 167:71-82)。他のシャペロンのように、BiPは、成熟を通じてER中の多くの分泌タンパク質及び膜タンパク質と相互作用する。新生タンパク質の折畳みが円滑に進む場合、この相互作用は通常は弱く一時的である。一旦、天然タンパク質コンフォメーションが達成されれば、分子シャペロンはもはやタンパク質と相互作用しない。折畳まれないタンパク質、集合しないタンパク質、又は適切に糖鎖が付加しないタンパク質へのBiP結合は安定するようになり、通常ER関連分解経路によってタンパク質の分解がもたらされる。この過程は、適切に折畳まれ集合したタンパク質のみがさらなる成熟のためにERから輸送されることを保証して、ERにおける「品質管理」システムとして役立ち、不適切に折畳まれたタンパク質は、後の分解のために保存される(Hurtley et al., Annu. Rev. Cell. Biol. 1989; 5:277-307)。熱力学的タンパク質の折畳み過程及びERの品質管理システムの非効率的な共同作用のために、新生(変異してない)タンパク質のごく一部分のみが機能的なコンフォメーションへ折畳まれるようになり、うまくERから放出される。
【0012】
特異的な酵素阻害因子に由来した薬理学的シャペロンは変異酵素を助け、野生型酵素を促進する
リソゾーム貯蔵障害(LSD)関連酵素の低分子阻害因子は、変異酵素の折畳み及び活性の両方を助けることができ、野生型酵素の折畳み及び活性を促進することができることが、以前に示されている(米国特許番号6,274,597;同第6,583,158号;同第6,589,964号;同第6,599,919号;及び同第6,916,829号を参照、すべて参照により本明細書において組み入れられる)。特に、LSD関連変異酵素の特異的な拮抗的阻害因子であるグルコース及びガラクトースの低分子誘導体の投与は、変異酵素のin vitro及びin vivoの安定性を効果的に増加させ、変異酵素活性を促進することが発見された。この戦略を支持する元の理論は以下のとおりである:変異酵素タンパク質はER中で誤って折畳まれるので(Ishii et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 1996; 220: 812-815)、酵素タンパク質は、正常な輸送経路(ER→ゴルジ体→エンドソーム→リゾソーム)中で滞り、急速に分解される。したがって、変異タンパク質がERの品質管理システムから円滑に脱け出すことを促進するために、変異タンパク質の正確な折畳みを安定化する化合物は、活性部位に特異的なシャペロンとして役立つだろう。酵素阻害因子は触媒中心をふさぎ、培養細胞及び動物において酵素コンフォメーションの安定化をもたらす。酵素の活性部位に結合するので、これらの特異的なシャペロンは「活性部位特異的なシャペロン(ASSC)」と呼ばれた。
【0013】
変異酵素を助けることに加えて、ASSCは、組換体の野生型酵素のER分泌及び活性を促進する。ASSCは、過剰発現された野生型酵素の折畳みを促進し、さもなくば、酵素の過剰発現及び過剰生産がERの能力を上回り、タンパク質の凝集及び分解をもたらすので、ERの品質管理システムで滞る。したがって、ERから抜け出すのに適切なコンフォメーションの酵素を安定化するために、折畳みの間に安定した酵素の分子コンフォメーションを誘導する化合物は、「シャペロン」として役立つ。上に言及されたように、酵素については、1つのそのような化合物は、酵素の拮抗阻害剤であると予想外に判明した。
【0014】
シャペロンによる他のタンパク質の促進
LSDに加えて、多くの種々の疾患は、今や非天然タンパク質コンフォメーションを採ることによって引き起こされる「コンフォメーション的な疾患」として認識され、ER中のタンパク質の停滞及びタンパク質の最終分解をもたらすかもしれない(Kuznetsov et al., N. Engl. J. Med. 1998; 339:1688-1695; Thomas etal., Trends Biochem. Sci 1995; 20:456-459; Bychkova et al., FEBS Lett. 1995;359:6-8; Brooks, FEBS Lett. 1997; 409:115-120)。
【0015】
例えば、低分子合成化合物は腫瘍抑制因子タンパク質p53の変異型のDNA結合ドメインを安定化し、それによって、タンパク質が活性のあるコンフォメーションを維持することを可能にすることが発見された(Foster et al., Science 1999; 286:2507-10)。受容体の合成は、低分子受容体アンタゴニスト及びリガンドによって助けられることが示された(Morello et al., J Clin. Invest. 2000; 105: 887-95; Petaja-Repoet al., EMBO J. 2002; 21 :1628-37)。膜チャンネルタンパク質及び他の細胞膜トランスポーターの薬理学的補助(rescue)でさえチャンネル遮断薬又は基質を使用して実証された(Rajamani etal., Circulation 2002; 105:2830-5; Zhou et al., J Biol. Chem. 1999;274:31123-26; Loo et al., J. Biol. Chem. 1997; 272: 709-12; Pedemonte et al.,J. Clin. Inves. 2005; 115: 2564-71)。
【0016】
当該技術分野において、特に、MC4R変異に関連及び非関連の両方のMC4Rタンパク質機能の欠損に取り組む必要性が残る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本明細書において記述されるように、本発明は、メラノコルチン4受容体(MC4R)をコードする遺伝子に折畳み変異を有する被験体において、又は野生型MC4R活性の増加が有益な被験体において、MC4Rの活性を促進する(例えば肥満の治療のための)方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
1つの実施の形態では、本発明は、MC4R発現細胞を有効量の薬理学的シャペロンに接触させることによって、細胞内におけるMC4Rポリペプチドの折畳みを、機能的なコンフォメーションへと促進する方法を提供する。MC4Rの細胞内における折畳みの促進は、例えば視床下部のニューロンの細胞表面上での発現増強をもたらし、摂食衝動を減少させ、したがって、過食症のような過食障害の治療に有用である。
【0019】
1つの実施の形態では、MC4Rポリペプチドは野生型MC4Rポリペプチドであり、例えば、配列番号2、配列番号4、配列番号6又は配列番号8に示される配列がある。
【0020】
別の実施の形態では、MC4Rポリペプチドは変異MC4Rポリペプチドである。この実施の形態では、変異ポリペプチドは、細胞内におけるMC4Rポリペプチドの折畳みの減少又は不適切な折畳みをもたらす1つ又は複数の変異を含む。例示的な変異は、以下のとおりである:P78L、R165Q、R165W、I125K、C271Y、T11A、A175T、I316L、I316S、I317T、N97D、G98R、N62S、C271R、S58C、N62S、N97D、Y157S、I102S、L106P、L250Q、Y287X、P299H、S58C、コドン211でのCTCT、及びコドン244でのTGAT挿入。
【0021】
1つの実施の形態では、薬理学的シャペロンはMC4Rアンタゴニストである。他の実施の形態では、薬理学的シャペロンはMC4Rアゴニストである。他の実施の形態では、薬理学的シャペロンはMC4R部分アゴニスト及び/又はインバースアゴニストである。
【0022】
本発明は、MC4Rポリペプチドの細胞表面の発現を促進する方法も提供する。この方法は、MC4R発現細胞を有効量の薬理学的シャペロンと接触させることを含む。本発明のこの実施の形態は、野生型MC4Rポリペプチド及び変異MC4Rポリペプチドの両方に関し、薬理学的シャペロンはMC4Rポリペプチドの細胞内の折畳みを促進する方法について上記されている。
【0023】
本発明はまた、MC4Rポリペプチドのためのシャペロンを同定するスクリーニング方法であって、MC4Rポリペプチドを発現する細胞を含む反応混合物へ試験化合物を接触させること、試験化合物の存在下で、反応混合物中のMC4Rポリペプチドの安定性、活性、及び/又は細胞表面の局在性を検出すること、並びに上記試験化合物の存在下におけるMC4Rポリペプチドの安定性、活性、及び/又は細胞表面の局在性を、上記試験化合物の非存在下におけるMC4Rポリペプチドの安定性、活性、及び/又は細胞表面の局在性と比較することによって、MC4Rポリペプチドのためのシャペロンを同定するスクリーニング方法を提供し、ここで試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下において、促進された安定性、活性及び/又は細胞表面の局在性の検出により、試験化合物がMC4Rポリペプチドのためのシャペロンであることが示される。
【0024】
このスクリーニング方法の1つの実施の形態では、MC4Rポリペプチドは、配列番号2、4、6及び8から成る群から選択されたアミノ酸配列を含む。
【0025】
このスクリーニング方法の別の実施の形態では、MC4Rポリペプチドは、MC4Rポリペプチドの誤った折畳みに関連した変異を含む。具体的な実施の形態では、誤った折畳みの変異は、P78L、R165Q又はR165W、I125K、C271Y、T11A、A175T、I316L、I316S、I317T、N97D、G98R、N62S、C271R、S58C、N62S、N97D、Y157S、I102S、L106P、L250Q、Y287X、P299H、S58C、コドン211でのCTCT又はコドン244でのTGAT挿入の1つ又は複数の変化である。
【0026】
1つの実施の形態では、反応混合物は細胞に基づく。他の実施の形態では、反応混合物は無細胞系である。
【0027】
1つの実施の形態では、このスクリーニング方法は、例えば細胞表面上のMC4Rポリペプチドの活性を検出することをさらに含む。他の実施の形態では、このスクリーニング方法は、cAMP活性化によって測定される。
【0028】
本発明は、詳細な記述及び実施例への参照によって、さらに理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
[詳細な記述]
本発明は、小分子が変異MC4Rポリペプチド及び野生型MC4Rポリペプチドのタンパク質の折畳み及びプロセッシングを助け、ニューロンの細胞表面上のタンパク質安定性を促進し、そして空腹及び過食を減少させることが確認される発見に関する。薬理学的シャペロンは、MC4Rタンパク質に特異的に結合し、変異MC4R又は野生型MC4Rの機能的なコンフォメーションを誘導又は安定化させる。したがって本発明は、細胞表面の野生型MC4Rの発現増強と同様に、変異MC4Rを特異的に助けることができる。したがって、MC4Rの補助又はMC4Rの安定性若しくは活性の増加が望ましいような障害の治療に、例えば太り過ぎ又は肥満に、MC4Rに対する薬理学的シャペロンは使用することができる。
【0030】
本発明は、ヒトへの薬理学的シャペロンの投与が、野生型タンパク質の活性レベルの意味のある増加をもたらしたという発見に一部分基づいている。この発見は、ERにおける適切なタンパク質の折畳みを促進する薬理学的シャペロンの能力についての理解と組み合わせて、正確なタンパク質輸送及び有意に増加したタンパク質活性を導き、特にヒト被験体において、疾患、障害又は症状を、転換又は改善するのに十分なタンパク質活性を達成する能力を有利に提供する。この現象は、「化学的なシャペロン」と呼ばれる、すべてのタンパク質の発現を増加させるように通常は働く化合物を使用する方法とは対照的に、特定の薬理学的シャペロンによって特異的に結合されたタンパク質に高度に特異的である。
【0031】
特定の実験結果は本発明の基礎となる:薬理学的シャペロンは、薬理学的シャペロンの投与後に、低用量ではヒトにおける内在性の野生型タンパク質活性を正常の約120%、正常の130%、及び正常の145%、並びに高用量では正常の150%、及び185%に増加させた(実施例7及び図12を参照)。in vivoにおける増加のこのレベルは、薬理学的シャペロンに曝露され続ける組織培養物中の細胞による結果からは、予測できなかった。例えば、米国特許第6,274,597号には、薬理学的シャペロンのデオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)と共にin vitroで培養された正常リンパ芽球のα−ガラクトシダーゼA(α−GalA)活性が、30%増加したことが記述されている。生理的な除去過程が正常なタンパク質に対する薬理学的シャペロンの効果をin vivoで弱めると予想されるだろうという予想を考えると、薬理学的シャペロンが野生型タンパク質活性の有意な増加をもたらすであろうことは予想されなかった。米国特許第6,274,597号の実施例10には、薬理学的シャペロンで1週間治療されたトランスジェニックマウスにおける変異酵素の活性の増加が記述されている。しかしながら、これらの実験は、助けられたタンパク質の野生型でない変異型に関するものであり、マウスで行なわれたので、結果はヒトにおける野生型タンパク質に対して観察された結果の予測又は示唆ではなかった。
【0032】
薬理学的シャペロンが、in vivoにおける野生型タンパク質の活性レベルを少なくとも20〜25%まで、すなわち、特に少なくとも約50%まで(1.5倍、正常の150%)ではなく、少なくとも正常の1.2倍又は120%、又は30%まで(1.3倍、正常の130%)、及び40%まで(1.4倍、正常の140%)増加させるかもしれないと予想する根拠はなかった。さらに、本明細書において例示されるように、被験体へのDGJの投与はα−Gal Aの用量依存的な増加をもたらした。この特別な効果は薬理学的シャペロンの力価測定に起因し、開示された活性増加又は野生型タンパク質増加の達成のため、既にタンパク質の変異型を助ける既存の技術に従って実証されている。したがって、本発明は、野生型タンパク質の活性レベルを増加させる変異タンパク質の活性を助けるために発見された、薬理学的シャペロンの用量を規定量で力価測定することを提供する。
【0033】
定義
本発明の文脈内、及び各々の用語が使用される場合での具体的な文脈中での、本明細書において通常使用される用語は、当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本発明の組成物及び方法、並びにそれらの作成法及び使用法を記述する際に当業者に追加指導を提供するために、或る特定の用語は、以下で又は本明細書の他の部分で検討される。
【0034】
本明細書において使用されるように、用語「薬理学的シャペロン」、又は時には「特異的な薬理学的シャペロン」(「SPC」)は、MC4Rと特異的に結合し、1つ又は複数の以下の効果を有する分子を指す:(i)タンパク質の安定した分子コンフォメーションの形成の促進;(ii)ERから他の細胞位置、好ましくは本来の細胞位置へのタンパク質の適切な輸送の促進、すなわちタンパク質のER関連分解の防止;(iii)コンフォメーション的に不安定な、すなわち誤って折畳まれるタンパク質の凝集の防止;(iv)タンパク質の、少なくとも部分的な野生型の機能、安定性、及び/又は活性を修復又は促進;及び/又は(v)MC4Rを有する細胞の表現型又は機能の改善。したがって、MC4Rに対する薬理学的シャペロンは、MC4Rの適切な折畳み、輸送、非凝集及び活性をもたらす、MC4Rと結合する分子である。本明細書において使用されるように、この用語は、BiPのような内在性シャペロン、又はグリセロール、DMSO、若しくは重水(すなわち化学的シャペロン)のような、様々なタンパク質に対する非特異的シャペロン活性が実証された非特異的薬剤を指さない(Welch et al., Cell Stress and Chaperones 1996; 1(2): 109-115; Welch et al., Journal ofBioenergetics and Biomembranes 1997; 29(5) :491-502;米国特許第5,900,360号;米国特許第6,270,954号;及び米国特許第6,541,195号を参照)。それには、特異的結合分子、例えば特異的な薬理学的シャペロン(上に説明された)、阻害剤又はアンタゴニスト、及びアゴニストが含まれる。
【0035】
本明細書において使用されるように、用語「特異的に結合する」は、MC4Rとの薬理学的シャペロンの相互作用、具体的には、薬理学的シャペロンとの接触に直接関与するMC4Rのアミノ酸残基による相互作用を指す。関連タンパク質又は非関連タンパク質の総括的な群に対してではなく、MC4Rに対してシャペロン効果を発揮するために、薬理学的シャペロンは、標的タンパク質(ここではMC4R)に特異的に結合する。任意の所定のMC4R薬理学的シャペロンと相互作用するMC4Rのアミノ酸残基は、MC4Rリガンド結合ドメイン(すなわち天然リガンドMSHを結合するドメイン)、又は任意の他のMC4R「活性部位」(例えばGタンパク質結合ドメイン)内にあってもよいし、又はなくてもよい。特異的結合は、ルーチンの結合分析又は構造研究(例えば共結晶化、NMR等)によって評価することができる。MC4RのMSHリガンド結合ドメインのアミノ酸の例は、Phe284及びTyr268(例えば、配列番号2を参照配列として使用)を含むが、これらに限定しない。
【0036】
1つの非限定実施形態では、薬理学的シャペロンはMC4Rの阻害剤又はアンタゴニストである。他の非限定実施形態では、薬理学的シャペロンはMC4Rのアゴニストである。さらに他の実施形態では、薬理学的シャペロンは混合アゴニスト/アンタゴニストである。本明細書において使用されるように、用語「アンタゴニスト」はタンパク質と結合し、MC4Rの活性を部分的に又は完全に遮断、阻害、減少、又は中和する任意の分子を指す。用語「アゴニスト」は、タンパク質と結合し、MC4Rの活性を少なくとも部分的に増加、促進、修復、又は模倣する任意の分子を指す。以下で説明されるように、そのような分子がMC4Rでは知られている。
【0037】
本明細書において使用されるように、用語「MC4Rのコンフォメーション的な安定性を促進する」又は「MC4Rのコンフォメーション的な安定性を増加する」は、MC4Rに特異的な薬理学的シャペロンと接触しない細胞(好ましくは同一の細胞型、又は例えば初期の同一の細胞)におけるMC4Rに比べて、MC4Rに対する特異的な薬理学的シャペロンと接触した細胞において、機能的なコンフォメーションを取り入れたMC4Rの量又は比率が増加することを指す。1つの実施形態では、細胞はコンフォメーション的な変異MC4Rを発現しない。他の実施形態では、細胞は、例えばコンフォメーション的な変異MC4Rポリペプチドをコードする、変異MC4Rポリヌクレオチドを発現する。
【0038】
本明細書において使用されるように、用語「MC4Rの輸送を促進する」又は「MC4Rの輸送を増加する」は、MC4Rに特異的な薬理学的シャペロンと接触しない細胞(好ましくは同一の細胞型、又は例えば初期の同一の細胞)におけるMC4Rの輸送効率に比べて、MC4Rに特異的な薬理学的シャペロンと接触した細胞において、MC4Rの細胞膜への輸送効率が増加することを指す。
【0039】
本明細書において使用されるように、用語「MC4Rの活性を促進する」又は「MC4Rの活性を増加する」は、本明細書において記述されるように、MC4Rに特異的な薬理学的シャペロンと接触しない細胞(好ましくは同一の細胞型、又は例えば初期の同一の細胞)におけるMC4Rの活性に比べて、MC4Rに特異的な薬理学的シャペロンと接触した細胞において、MC4Rの活性が増加することを指す。
【0040】
本明細書において使用されるように、用語「MC4Rレベルを促進する」又は「MC4Rレベルを増加する」は、MC4Rに特異的な薬理学的シャペロンと接触しない細胞(好ましくは同一の細胞型、又は例えば初期の同一の細胞)中のMC4Rのレベルに比べて、MC4Rに特異的な薬理学的シャペロンと接触した細胞中のMC4Rのレベルが増加することを指す。
【0041】
用語「適切なコンフォメーションを安定化する」は、MC4Rの薬理学的シャペロンが野生型MC4Rタンパク質のコンフォメーションと機能的に同一の変異MC4Rタンパク質のコンフォメーションを誘導又は安定化する能力を指す。用語「機能的に同一の」は、コンフォメーションにおける小さな変化があってもよい(ほとんどすべてのタンパク質は、生理的な状態でいくつかのコンフォメーション的な柔軟性を示す)が、コンフォメーション的な柔軟性は、野生型タンパク質のものよりも多い又は少ない程度に、(1)タンパク質凝集、(2)小胞体に関連する分解経路を介した除去、(3)タンパク質機能、例えばリガンドの結合能及び/又はアデニリルシクラーゼ活性の活性化能の損傷、及び/又は(4)細胞内の不適当な輸送、例えば細胞膜への局在性をもたらさないことを意味する。
【0042】
用語「安定した分子コンフォメーション」は、薬理学的シャペロンにより誘導された、少なくとも部分的な、細胞における野生型の機能を提供するタンパク質(すなわちMC4R)のコンフォメーションを指す。例えば、変異MC4Rの安定した分子コンフォメーションは、MC4Rが誤って折畳まれ、分解される代わりに、野生型MC4RのようにERから脱出し、細胞膜に輸送されるものである。さらに、変異したMC4Rの安定した分子コンフォメーションは、完全又は部分的なMC4R活性、例えば、同種の生理的なGタンパク質によって促進されたcAMP産出のためのアデニリルシクラーゼ活性化活性も有してもよい。しかしながら、安定した分子コンフォメーションは、野生型タンパク質の機能的属性をすべて有する必要はない。
【0043】
用語「MC4R活性」は、細胞中の野生型MC4Rの正常な生理機能を指す。例えば、アゴニストによる結合の際に、MC4Rは、Gタンパク質のGαsとの相互作用、及びアデニル酸シクラーゼの活性化を通してシグナル伝達を行なう(例えば、VanLeeuwen et al., J Biol. Chem. 2003; 18: 15935-40を参照)。これは、cAMPの細胞内蓄積及びプロテインキナーゼA(PKA)の活性化をもたらす。そのような機能性は当該技術分野において既知の任意の方法によって検査することができる。例えば、α−MSH、β−MSH、γ−MSHリガンド、若しくはMC4Rに対する125I −[Nle4,D−Phe7]α−MSHアゴニストの結合分析、又はアデニリルシクラーゼ活性化分析の使用若しくはルシフェラーゼレポーター遺伝子分析を、細胞内cAMPの増加を測定するために使用することができる。環状AMP蓄積分析は当該技術分野において既知である(例えば、VanLeeuwen et al., J Biol. Chem. 2003; 18: 15935-40を参照)。
【0044】
「MC4R」は、配列番号1(ヒト;GenBankアクセッション番号BC069172);配列番号3(ヒト;GenBankアクセッション番号NM_005912);配列番号5(ラット;GenBankアクセッション番号NM_013099);又は配列番号7(マウス;GenBankアクセッション番号NM_016977)の、いずれか1つの中に示される配列があるヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドを指す。
【0045】
「MC4Rポリペプチド」は、配列番号2(ヒト;GenBankアクセッション番号AAI01803);配列番号4(ヒト;GenBankアクセッション番号NM_005912);配列番号6(ラット;GenBankアクセッション番号NM_013099);又は配列番号8(マウス;GenBankアクセッション番号AF201662)に示されるアミノ酸配列、及び配列番号2、4、6又は8のいずれか1つと同一の機能及びリガンド結合親和性があるMC4Rポリペプチドをコードする任意の他のアミノ酸配列を指す。
【0046】
用語「野生型MC4R」は、MC4Rをコードするヌクレオチド(配列番号1、3、5及び7)配列、及び上述のヌクレオチド配列(ヒトMC4R−GenBankアクセッション番号AAI01803;ヒトMC4R−GenBankアクセッション番号NM_005912;ラットMC4R−GenBankアクセッション番号NM_013099;及びマウスMC4R−GenBankアクセッション番号AF201662)によってコードされたポリペプチド(配列番号2、4、6及び8)配列、並びに正常な個体における対立遺伝子変異のような、ER中の機能的なコンフォメーションを達成する能力、細胞内の適切な局在性を達成する能力、及び野生型の活性を示す能力(例えばcAMP蓄積のMC4R刺激)を有するMC4Rポリペプチドをコードする任意の他のヌクレオチド配列(上述のポリペプチド配列と同一の機能特性及び結合親和性を有する)を指す。
【0047】
本明細書において使用されるように、用語「変異MC4R」は、変化したMC4Rアミノ酸配列をもたらす遺伝的変異を含む遺伝子から翻訳されたMC4Rポリペプチドを指す。1つの実施形態では、変異は、野生型MC4Rと比較した場合に、ERに通常は存在する条件下では未変性コンフォメーションをとらないか、又は野生型MC4Rと比較して、安定性若しくは活性の減少を示すMC4Rタンパク質をもたらす。この種の変異は、本明細書において「コンフォメーション的な変異」と呼ばれ、そのような変異を有するタンパク質は、「コンフォメーション的な変異体」と呼ばれる。このコンフォメーションをとらないと、MC4Rタンパク質は、タンパク質輸送系の正常経路により細胞中又は細胞外環境の本来の位置へ輸送されるのではなく、分解又は凝集がもたらされる。いくつかの態様において、変異は、タンパク質の非効率的発現をもたらすように、MC4Rコード遺伝子の非コード部分に生じてもよい(例えば転写効率、スプライシング効率、mRNAの安定性等に影響する変異)。野生型の発現レベルを促進することによって、MC4Rの薬理学的シャペロンの投与は、MC4Rのコンフォメーション的な変異体の変種と同様に、そのような非効率的なタンパク質発現に起因する障害を改善することができる。
【0048】
例示的な変異体(参照として配列番号2のポリペプチドを使用する)としては、P78L、R165Q、及びR165Wが挙げられる。他のMC4R変異体としては、I125K、C271Y、T11A、A175T、I316L、I316S、I317T、N97D、G98R、N62S、C271R、S58C、N62S、N97D、Y157S、I102S、L106P、L250Q、Y287X、P299H、S58C、コドン211でのCTCT、及びコドン244でのTGAT挿入が挙げられる。さらに、他のMC4R変異体(参照として再び配列番号2を使用する)としては、以下の表1に記載されるものが挙げられる。
【0049】
或る特定の検査は、タンパク質の属性(実際のin vivoの活性に相当するか、又は相当しなくてもよい)を評価してもよく、しかしそれにもかかわらず、タンパク質機能性の適切な代理であり、そのような検査における野生型の挙動は、本発明のタンパク質の折畳みの補助又は促進技法を支持する証拠を実証する。本発明に従うそのような1つの活性は、小胞体から細胞膜までの機能的なMC4Rの適切な輸送である。
【0050】
用語「内在性の発現」及び「内在的に発現された」は、MC4R欠損に関連した疾患又は障害を有していないか若しくは有する疑いのない、ドミナントネガティブ変異体の過剰発現がないか、又は変えてしまう(例えば発現、活性又は安定性を阻害する)MC4R核酸配列中又はMC4Rポリペプチド配列中の変異のような他の欠損(例えば肥満)のない個体の細胞中のMC4Rの正常な生理的な発現を指す。この用語は、健康な個体で通常は発現される細胞又は細胞型中のMC4Rの発現も指し、健康な個体ではMC4Rが発現されない細胞又は細胞型(例えば腫瘍細胞)におけるMC4Rの発現は含まない。
【0051】
本明細書において使用されるように、用語「輸送の効率」は、変異タンパク質が小胞体から細胞内、細胞膜、又は細胞外環境の本来の位置へ輸送される能力を指す。
【0052】
用語「治療上の有効な用量」及び「有効な量」は、適切な細胞位置で既に発現されているタンパク質の阻害をせずに(アンタゴニストの場合)、又は適切な細胞部位からのタンパク質のリガンドを介した受容体の内部移行の誘導をせずに(アゴニストの場合)、ERにおけるタンパク質プロセシングを促進し(機能的なコンフォメーションを可能にする)、標的タンパク質の活性を促進して、被験体における治療反応をもたらすのに十分な量を指す。治療反応は、使用者(例えば臨床医)が、上述の症状及び代用臨床マーカーを含む、治療に対する有効な反応として認識する任意の反応であってもよい。したがって一般に、治療反応は、疾患又は障害、例えば肥満又は過食症の1つ又は複数の症状の、改良又は抑制となるだろう。
【0053】
語句「薬学的に許容可能な」は、ヒトに投与された場合、生理的許容性があり、典型的には有害反応を起こさない分子的実体及び組成物を指す。好ましくは、本明細書において使用されるように、用語「薬学的に許容可能な」は、動物及びより詳細にはヒトでの使用のために、連邦又は州政府の監督官庁によって承認された、又は米国薬局方若しくは他の一般に認識された薬局方でリストされたことを意味する。用語「キャリア」は、化合物が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤又はビヒクルを指す。そのような薬学的キャリアは水及び油のような無菌の液体になり得る。水又は水性の食塩水並びに水性のデキストロース及びグリセロール溶液は、好ましくはキャリアとして、特に注射溶液用に用いられる。適切な薬学的キャリアは、E. W. Martinによる「レミントンの薬学(Remington'sPharmaceutical Sciences)」の第18版又は他の版に記述されている。
【0054】
用語「約」及び「ほぼ」は、測定の本質又は精度が与えられて測定された、量に対して許容できる程度の誤差を一般には意味する。誤差の典型的で例示的な程度は、規定の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、及びより好ましくは5%以内にある。或いは、特に生物学的システムにおいて、用語「約」及び「ほぼ」は、規定の値の10倍以内、好ましくは5倍以内、及びより好ましくは2倍以内にある値を意味してもよい。本明細書において、特に明記しない限り、与えられた数量は近似であり、はっきりと明言されない場合、用語「約」又は「ほぼ」が暗示されることを意味する。
【0055】
本明細書において使用されるように、用語「単離された」は、参照された物質が、それが通常発見される環境から摘出されることを意味する。したがって、単離された生体試料は、細胞成分(すなわち、物質が発見又は生産される細胞の構成要素)のない状態でありえる。核酸分子の場合には、単離された核酸は、PCR産物、ゲル上のmRNAのバンド、cDNA、又は制限断片を含んでいる。他の実施形態では、単離された核酸は、好ましくは発見されるであろう染色体から切り出され、より好ましくは染色体に発見された場合は、単離された核酸分子に含まれる遺伝子の上流又は下流に位置する非調節性領域、非コード領域、又は他の遺伝子には結合していない。さらに他の実施形態では、単離された核酸は1つ又は複数のイントロンを欠失している。単離された核酸は、プラスミド、コスミド、人工染色体等に挿入された配列を含む。したがって、具体的な実施形態では、組換核酸は単離された核酸である。単離されたタンパク質は、他のタンパク質若しくは核酸、又は両方に結合してもよく、それが膜に結合するタンパク質である場合は、細胞中で又は細胞膜と結合する。単離された細胞器官、細胞又は組織は、それが生物中に発見される解剖学上の部位から摘出される。単離された材料は精製されてもよいが、精製される必要はない。
【0056】
本明細書において使用されるように、用語「精製された」は、無関係な材料(すなわち汚染物)を減少又は除去する条件下で単離された、MC4R核酸又はポリペプチドのような物質を指す。例えば、精製されたタンパク質には、好ましくは実質的に細胞中で結合している他のタンパク質又は核酸はない。本明細書において使用されるように、用語「実質的にない」は、物質の分析試験の文脈において、操作上使用される。好ましくは、実質的に混入物のない精製された物質は、少なくとも50%純粋、より好ましくは、少なくとも90%純粋、及びさらにより好ましくは、少なくとも99%純粋である。純度は、従来の手段(例えばクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、イムノアッセイ、組成分析、生物学的検定法、及び当該技術分野において既知の他の方法)によって評価することができる。
【0057】
用語「Me」はメチルを意味し、用語「Et」はエチルを意味し、用語「Ac」はアセチルを意味する。
【0058】
特に示されていなければ、用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。好ましいハロ基は、フルオロ、クロロ及びブロモである。
【0059】
特に示されていなければ、用語「アルキル」は、直鎖、分岐鎖、若しくは環状部分(縮合及び架橋した二環式及びスピロ環式部分を含む)、又は当該部分の組合せを有する飽和した一価の炭化水素ラジカルを含む。アルキル基が環状部分を有するためには、この基が少なくとも3つの炭素原子を有している必要がある。
【0060】
特に示されていなければ、用語「シクロアルキル」は、アルキルが上記のようなものである環状アルキル部分を含む。用語「シクロアルキル」の使用は、「アルキル」という用語を非環状部分に限定するものとして構築されるものではない。
【0061】
特に示されていなければ、用語「アルケニル」は、アルキルが上記のようなものであり、上記アルケニル部分のE異性体及びZ異性体が含まれる少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するアルキル部分が含まれる。
【0062】
特に示されていなければ、用語「アルキニル」は、アルキルが上記のようなものである少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有するアルキル部分を含む。
【0063】
特に示されていなければ、用語「アルコキシ」は、アルキルが上記のようなものであるO−アルキル基である。
【0064】
特に示されていなければ、用語「アリール」は、1つの水素の除去による、芳香族炭化水素由来の有機ラジカル(例えば、フェニル又はナフチル)を含む。
【0065】
特に示されていなければ、用語「4〜10員環の複素環」は、複素環基がその環系において4〜10個の原子を有し、それぞれO、S及びNから選択された1〜4つのヘテロ原子を含む芳香族基及び非芳香族基を含むが、但し当該基の環が2つの隣接するO又はS原子を含まない。非芳香族複素環基は、その環系において4つの原子だけを有する基を含むが、芳香族複素環基は、その環系において少なくとも5つの原子を有する必要がある。複素環基はベンゾ縮合環系を含む。4員環の複素環基の例はアゼチジニル(アゼチジンに由来)。5員環の複素環基の例はチアゾリルであり、10員環の複素環基の例はキノリニルである。非芳香族複素環基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H−インドリル及びキノリジニルである。芳香族複素環基の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルである。スピロ部分も本定義の範囲内に含まれ、これは1−オキサ−6−アザ−スピロ[2.5]オクト−6−イルを含む。上記に列挙された群に由来するような上述の基は、そのようなものが可能である場合、C結合又はN結合であり得る。例えば、ピロール由来の基は、ピロール−1−イル(N結合)又はピロール−3−イル(C結合)であり得る。さらに、イミダゾール由来の基は、イミダゾール−1−イル(N結合)又はイミダゾール−3−イル(C結合)であり得る。
【0066】
特に示されていなければ、語句「薬学的に許容可能な塩(複数可)」は、本発明の方法に使用した化合物に存在し得る酸性基又は塩基性基の塩を含む。自然状態で塩基性である化合物は、様々な無機酸及び有機酸により、多種多様な塩を形成することができる。そのような塩基性化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩を調製するのに使用することができる酸は、非毒性の酸付加塩、すなわち薬学的に許容可能な陰イオンを含む塩、例えば酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、ディスリエート(dislyate)、エストレート、エシレート、エチルコハク酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩(gluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ムシン酸塩(mucate)、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボネート(embonate))、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクトウロン酸塩(polygalacturonate)、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩(subacetate)、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩(teoclate)、トシル酸塩、トリエトヨウ化物(triethiodode)、及び吉草酸塩等を形成するものである。単一化合物が、2つ以上の酸性部分又は塩基性部分を含み得るので、そのような化合物は単一化合物におけるモノ、ジ、又はトリ塩を含み得る。
【0067】
メラノコルチン4受容体
メラノコルチン(MC)受容体は、二次メッセンジャーの環状AMP(cAMP)の産生を活性化する、7回膜貫通ドメインGタンパク質共役型受容体スーパーファミリーの一員である。現在までに、MC1R、MC2R、MC3R、MC4R及びMC5Rの単離された5つのMC受容体がある。MC2Rは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)のための受容体である。ヒトMC4Rは、332アミノ酸長である。
【0068】
メラノコルチン4受容体(MC4R)は、体重の調節に関与している(Graham et al, Nat. Genetics 1997; 17: 273-4)。MC4Rは食物摂取量に影響を及ぼす視床下部を含む脳において発現している。MC4Rを介するシグナル伝達は、食欲不振誘発性神経経路を刺激する。MC4R欠損マウスは、高血糖及び高インスリン血症を伴う遅発性肥満を発症する。1つのMC4R対立遺伝子を欠損するマウス(ヘテロ接合体)は、野生型マウス及びホモ接合体欠損マウスの間の体重である。ヒトにおいては、MC4Rの欠損は肥満の最も一般的な単一遺伝子性の形態である(Farooqi et al., New Engl. J. Med. 2003; 348: 1085-95)。内在性のMC4Rのアンタゴニストであるアグーチ関連タンパク質(AgRP)を過剰発現するトランスジェニックマウスは、非トランスジェニックの同腹子と比較して、体重増加、飼料消費の増加及び体長の増加を示した(Ollman et al., Science 1997; 278: 135-37)。
【0069】
ヒトMC4R遺伝子において、大半は肥満の個体に発見される多数の変異が同定され、フレームシフト、ナンセンス及びミスセンス突然変異を含んでいた(Nijenhuis et al., J. Biol. Chem. 2003; 278: 22939-45)。少なくとも2つの研究者のグループが、MC4Rが肥満の個体の約5%において変異していることを確認した。MC4R変異キャリアは、過食症及び高インスリン血症であり、平均以上の骨ミネラル密度を有し、適正なBMIの対照被験体よりも速く直線的に成長することが実証された。Farooqi et al.は、変異MC4R受容体のシグナル伝達特性も肥満の重症度と関連することを見出した。
【0070】
数人の著者は、早発型肥満のMC4Rの遺伝学に対する理解についての最近の進歩の総説をまとめた(例えばFarooqi IS, O'Rahilly S, Int J Obes (Lond), 2005 Oct, 29(10),1149-52; Govaerts C, Srinivasan S, Shapiro A, Zhang S, Picard F, Clement K,Lubrano-Berthelier C, Vaisse C, Peptides, 2005 Oct, 26(10), 1909-19; Tao YX, Mol Cell Endocrinol, 2005 Jul 15, 239(1-2), 1-14; Farooqi IS, O'Rahilly S, AnnuRev Med, 2005, 56, 443-58を参照)。例えば、重症の早発型肥満である1人の患者において、受容体二量体化によって引き起こされるドミナントネガティブ効果に起因して、MC4R変異の常染色体の優性遺伝様式が発見された(Biebermann H, Krude H, Elsner A, Chubanov V, Gudermann T, Gruters A,Diabetes, 2003 Dec, 52(12),2984-8)。
【0071】
現在までに同定されたほとんどの変異が非保存的なアミノ酸置換であるので、いくつかの変異を有するMC4Rに対して機能喪失が期待される。このことは、肥満個体において発見されたいくつかのMC4Rに対して実証された。さらに、多くの変異は細胞表面でのMC4R発現の減少に関連している(Gu et al., Diabetes 1999, 48: 635-39; Nijenhuis et al.,上記参照)。例えば、11個のMC4Rミスセンス突然変異のスクリーンニングにおいて、それらは肥満の個体においてのみ発見され、MC4RのN末端領域の外側に位置する(それはリガンド結合に関与しない)ものであり、10個のMC4Rミスセンス突然変異は、野生型MC4Rと比較して、標識されたα−メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)のリガンドである125I−[Nle4,D−Phe7]α−MSHへの、細胞表面での、より低い特異的結合を示した(Nijenhuis et al.,上記参照、ページ22941において)。表1中で以下に示されるように、変異体中でリガンドへの親和性は、大部分は野生型受容体と同様だったので、特異的結合の減少は細胞表面の発現の低下を反映するとことがわかった(nM+/−標準誤差でのIC50値)。
【0072】
【表1】

【0073】
より高い結合親和性を有する2つの変異(L250Q及びT112M)でさえ、飽和結合実験によれば、より低い細胞表面の発現を実証した。さらに、α−MSH結合に際して、全ての変異は、減少した最大反応(アデニリルシクラーゼ分析を使用して測定される受容体活性化)を実証した。特に、Nijenhuis et al.は、免疫細胞化学的なデータの結果から、P78L、R165Q及びR165W変異体は発現されるが、細胞内に留まると結論を下した。
【0074】
追加研究によって、I125K;C271Y;T11A(A434G);A175T;I316L;N97D;N62S;及びC271RのMC4R変異が同定された(Farooqi et al., New Eng. J. Med. 2003; 348; 1085-95)。cAMPと反応するルシフェラーゼレポーター遺伝子分析を使用するin vitroでの評価で、これらの変異のすべては、活性の減少又は無活性を示した。しかしながら、このグループは、3つの変種のV103I;I251L;及びT112Mは、MC4Rシグナル伝達に対して効果がないことを発見した。幼年期に関連した変異、すなわち早発型肥満は、S58C、N62S、Y157S、C271Y、P78L、G98Rであり、リガンド結合の減少(S58C、N62S、Y157S、C271Y)、又はリガンド非結合(P78L、G98R)のいずれかをもたらし、[Nle4,D−Phe7]α−MSHに刺激されたcAMP生産において比例した悪化も実証された(Tao et al., Endocrinology 2003; 144(10): 4544-51)。
【0075】
最終的な研究で、MC4R;I251L(A1144C);F51L(T544C);M200V(A991G);T5T(C408T)における変異体が同定された(Branson et al., New Eng. J. Med. 2003; 348: 1096-1103)。
【0076】
肥満に加えて、MC4Rは過食症にも関与する。精神障害の診断及び統計マニュアル−編集(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders- Text Revision)(DSM−IV−TR(商標)、第4版)によれば、過食症は、異常に大量の食物の摂取し、行動に対するコントロール欠如感を抱く再発性の症状を意味する。469人の白人の肥満被験体についての1つの研究において、肥満被験体のうちのわずかな割合のみが過食症と診察されたが、MC4R変異を有する肥満被験体がすべて過食症と診察されたことが明らかになった(Branson et al.,上記参照)。
【0077】
MC4Rの構造及びリガンド結合
内在性のメラノコルチンアゴニストは配列His−Phe−Arg−Trpを含み、メラノコルチン受容体分子の認識及び刺激にとって重要である。MC4Rリガンド結合の分子的な決定因子が、リガンドの大規模なアレイの使用による1つの研究において決定された(Nickolls et al., Pharmacol Exp Ther 2003; 304(3):1217-27)。膜貫通(TM)ドメイン7(TM7)におけるリガンド相互作用の可能性のある部位としてのPhe284を同定するために、受容体の分子モデリングが使用された。Phe284のアラニンへの変異は、L−Pheを含むペプチドの結合親和性及び結合能力を最大71倍まで減少させたが、D−Pheを含む直鎖状ペプチドの結合には影響しなかった。このデータは、α−MSHのPhe7とPhe284との間の疎水的相互作用と一致していた。次に、上記されたような肥満と関連づけられる、TM3(I137T)における天然に存在する変異の効果が検討された。この変異は、環状で堅いペプチドの親和性及び能力を減少させたが、より柔軟なペプチドでは減少させず、受容体の三次構造上の変異の間接的な効果と一致している。MC3Rに対するMC4Rへのリガンド選択性を支持する残基も決定された。MC3R(フェニルアラニン)に相当する残基へのMC4RのIle125(TM3)の変異は、MC4R選択的リガンドの親和性及び効能を選択的に減少させた。この効果は、逆のMC3Rの変異のF157Iにより正確に反映された。この効果の大きさは、この遺伝子座が主に重要ではないことを示す。しかしながら、イソロイシン/フェニルアラニン変異がAsp122の配向性に影響し得ることが提案され、リガンド結合親和性の主要決定因子であると同定された。
【0078】
他の研究者は、別のMC4Rアゴニストの選択性だけではなく、内在性のMC4Rアンタゴニストのアグーチタンパク質との選択的な相互作用にTyr268が必要であると決定した(Oosterom et al., J Biol. Chem. 2001; 276(2):931-6)。アグーチタンパク質は、通常は皮膚において発現されるMC4Rの天然アンタゴニストである(Kiefer et al., Biochemistry 1997; 36: 2084-2090)。
【0079】
MC4Rアゴニスト及びMC4Rアンタゴニスト
本発明によれば、MC4Rアゴニスト及びMC4Rアンタゴニストは、本明細書における図1〜図8及び図10に示された化合物を含んでおり、さらに実施例3及び実施例4で以下に記述した。
【0080】
MC4Rの天然アゴニスト(リガンド)は、α−MSH、ACTH、β−MSH、及びγ−MSHを含む(最高の親和性から最低の親和性の順に)。現在までに記述されたアゴニスト及びアンタゴニストを含む他のMC4Rリガンドは、主にペプチド(米国特許第6,060,589号)及び環状ペプチドアナログ(Mazur et al.による米国特許第6,613,874号)である。一連のMC4Rペプチドアゴニストも設計された(Sun et al., Bioorg Med Chem 2004; 12(10):2671-7)。さらに、Nijenhuis et al.(Peptides 2003; 24(2):271-80)は、MC4Rに対して選択的なメラノコルチンアンタゴニスト化合物の開発及び評価を記述した。Ac−Nle−Gly−Lys−D−Phe−Arg−Trp−Gly−NH(2)(配列番号9)と規定された1つの化合物は、MC3R及びMC5Rと比較して、MC4Rに対する選択性がそれぞれ90倍及び110倍であり、最も選択的なMC4R化合物であることが発見された。その後の修飾により、34倍のMC4R/MC3R選択性及び109倍のMC4R/MC5R選択性を有する選択的なMC4Rアンタゴニストである化合物Ac−Nle−Gly−Lys−D−Nal(2)−Arg−Trp−Gly−NH(2)(配列番号10)を得た。両方の化合物はin vivoで活性があり、血液脳関門を通過した。さらに、米国特許第6,054,556号及び同第5,731,408号は、環状構造を有するラクタムヘプタペプチドである、MC4Rに対するアゴニスト及びアンタゴニストのファミリーを記述する。
【0081】
他の高親和性のMC4Rアンタゴニストは、Grieco et al.(J Med Chem 2002; 24:5287-94)に記述されている。これらの環状アンタゴニストは、既知の高親和性アンタゴニストSHU9119(Ac−Nle4−[Asp5−His6−DNal(2’)7−Arg8−Trp9−Lys10]−NH(2))(配列番号11)に基づいて設計された。SHU9119アナログは、非従来のアミノ酸により位置6(His)で修飾された。位置6でChe置換を含む1つの化合物は、MC3Rに対して100倍の選択性の高親和性MC4Rアンタゴニスト(IC50=0.48nM)である。位置6でCpe置換を伴う別の化合物は、さらにMC3Rを超える200倍の選択性の高親和性MC4Rアンタゴニスト(IC50=0.51nM)であった。コンフォメーション的に制限されたアミノ酸を有する位置6で修飾される環状ペプチドのコンフォメーション的な特性を検討するために、分子モデリングを使用した。さらにGrieco et al., Peptides 2006; 27(2):472-81を参照。
【0082】
いくつかの非ペプチドMC4Rリガンドは、米国で公表されたDyck et al.による特許出願第2003/0158209号、及びBriner etal.による同第2004/082590号で開示された。さらに、Renhowe et al.による米国特許第6,638,927号には、小低分子量グアニドベンズアミドが特異的なMC4Rアゴニストと記述した。Richardson et al.は、MC4Rのアゴニストである新規アリルピペリジンを記述した(J Med Chem 2004; 47(3):744-55)。Yu et al.による米国特許番号6,979,691号及びMaguireによる同第6,699,873号は、さらにMC4Rと選択的に結合する非ペプチド化合物を記述する。
【0083】
Basu et al.による国際公開特許第WO99/55679号は、MC1R及びMC4Rへの低(マイクロモル)親和性、アラキドン酸により誘導された皮膚炎症の減少、並びに体重及び食物摂取量の減少を示すイソキノリン誘導体(低分子非ペプチド化合物)を開示する。
【0084】
Nargund et al.による国際公開特許第WO99/64002号は、さらに、肥満、糖尿病及び性機能不全のような疾患及び障害の治療に有用なメラノコルチン受容体アゴニストとして、スピロピペリジン誘導体を開示する。
【0085】
他の非ペプチドMC4Rアンタゴニストが記述されている。したがって、米国で公表されたEisingerによる特許出願第2003/0176425号及び同第2003/0162819号は、MC4Rアンタゴニスト又はMC4Rアゴニストとして、それぞれ新規の1,2,4−チアジアゾール及び1,2,4−チアジアゾリウム誘導体を開示する。これらの出願は、肥満を治療するためのこれらの化合物の使用も開示する。
【0086】
メラノコルチン受容体のいくつかのアンタゴニストは、競合的なアンタゴニストであること、すなわちリガンドとの結合を競合することが実証された。例えば、メラノコルチンのアンタゴニストであるアグーチシグナル伝達タンパク質(ASIP)は、hMC1Rで観察された競合的な拮抗作用と一致する特性、及び他の受容体で観察されたより複雑な挙動を有することが示された(Yang et al., Mol. Endocrinology 1997; 11(3): 274-280)。同様に、ACTH(MC2Rに対する天然リガンド)はα−MSH、β−MSH、又はγ−MSHによる結合に対して優位となることができない(Abdel-Malek et al., Cell. Mol. Life Sci. 2001; 48: 434-41)。
【0087】
他のMC4R結合化合物は、以下に記載される:Bednarek and Fong, Exp Opn Ther Patents 2004; 14: 327-36; Ujjainwallaet al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2005;15(18):4023-8; 国際公開特許第WO03/07949号(Merck); 国際公開特許第WO03/61660号(Eli Lilly); 国際公開特許第WO03/09847号(Amgen); 国際公開特許第WO03/09850号(Amgen); 国際公開特許第WO03/31410号(Neurocrine Biosciences); 国際公開特許第WO03/94918号(Neurocrine Biosciences); 国際公開特許第WO03/68738号(Neurocrine Biosciences); 国際公開特許第WO03/92690号(Procter and Gamble); 国際公開特許第WO03/93234号(Procter and Gamble); 国際公開特許第WO03/72056号(Chiron); 国際公開特許第WO03/66597号(Chiron); 国際公開特許第WO03/66587号(Chiron); 国際公開特許第WO03/66587号(Chiron); 国際公開特許第WO02/67869号(Merck); 国際公開特許第WO02/68387号(Merck); 国際公開特許第WO02/00259号(Taisho); 国際公開特許第WO02/92566号(Taisho); Tran et al, Bioorg Med Chem Lett. 2006 (印刷より前の電子出版); Pontillo et al., Bioorg Med Chem Lett. 2005;15(23):5237-40; Pontillo et al., Bioorg MedChem Lett. 2005;15(10):2541-6;Pontillo et al., Bioorg Med Chem Lett. 2004;14(22):5605-9; Cheung et al., Bioorg Med Chem Lett. 2005; 15(24):5504-8; Yan et al., Bioorg Med ChemLett. 2004; 15(20): 4611-4;Hsiung et al., Endocrinology. 2005 Dec;146(12):5257-66; 及びTodorovic et al., Peptides. 2005Oct;26(10):2026-36。
【0088】
本発明で特許請求された方法における使用のために検討される特定のMC4R非ペプチドアゴニスト又はアンタゴニストが、Sebhat et al., J Med Chem 2002; 45: 4589 (化合物1及び6); Richardson et al., J Med Chem. 2004; 47: 744 (化合物2); Arasasingham et al., J Med Chem. 2003; 46: 9 (化合物3); Millennium Pharmaceuticalsによる国際公開特許第WO02/062766号(化合物4); Pedemonte et al., J. Clin. Inves. 2005; 115: 2564-71(化合物5); Tran et al., Bioorg Med Chem Lett.. 2005; 15: 3434-38(化合物7); Xi et al., Bioorg Med Chem Lett.. 2004; 14: 377-81(化合物8); Vos et al., J Med Chem. 2004; 47: 1602-04(化合物9); Pan et al., Bioorg Med Chem Lett. 2003; 11: 185(化合物10); Marsilje et al., Bioorg Med Chem Lett. 2004. 14: 3721(化合物11); Ujjainwalla et al., Bioorg Med Chem Lett. 2003; 133: 4431(化合物12); Nickolls et al., J Pharmacol Exp Therap. 2005; 313: 1281-1288(化合物13〜17); Schioth et al., Biophys Biochem Res Comm. 2003; 399-405(化合物18); Benoit et al., J. Neurosci. 2000; 20: 3442-48(化合物19及び20); Vos et al., Bioorg Med Chem Lett. 2006; 15: 2302(化合物21); Tucci et al., Bioorg Med Chem Lett 2005; 15: 4389(化合物22); Pontillo et al., Bioorg Med Chem Lett. 2005; 15: 4615-18(化合物23); Chaki et al., J Pharmacol Exp Ther. 2003; 304: 818(化合物24); Chaki et al., Pharmacol Biochem Behav. 2005; 82: 621(化合物25)に記載されている。
【0089】
上記された化合物1、2、5、6、8、10、12、13〜17、及び19はMC4Rアゴニストであり、化合物3、4、7、9、11、18、及び20はMC4Rアンタゴニストである。
【0090】
本発明で特許請求された方法における使用のために検討される特定のMC4Rペプチドアンタゴニストは、Ac−Cys−Glu−His−D−(2’)Nal−Arg−Trp−Gly−Cys−Pro−Pro−Lys−Asp−NH(2)(配列番号12)、Ac−Cys−Nle−Arg−His−D−(2’)Nal−Arg−Trp−Gly−Cys−NH(2)(配列番号13)、Ac−Cys−Glu−His−D−Phe(3,4−ジ−Cl)−Arg−Trp−Gly−Cys−Pro−Pro−Lys−Asp−NH(2)(配列番号14)、Ac−Nle−c[Asp−Che−DNal(2’)−Arg−Trp−Lys−NH(2)(配列番号15)、Ac−Nle−c[Asp−Cpe−DNal(2’)−Arg−Trp−Lys−NH(2)(配列番号16)、シクロ(1−6)−suc−His−DPhe−Arg−Trp−Lys−NH(2)(配列番号17)、及びAc−DArg[Cys−Glu−His−DPhe−Arg−Trp−Cys]−NH(2)(配列番号18)である。
【0091】
天然に存在しない側鎖及びペプチド模倣分子を有する、ペプチドに基づいたアゴニスト及びアンタゴニストが検討される。例えば米国特許第5,650,489号を参照;さらに、米国特許第6,090,912号、特にセクション5.5を参照。例えば、化合物18〜20の側鎖及び図16で示された化合物クラスの側鎖は天然に存在しない。
【0092】
MC4Rは、リガンドを介した受容体の内部移行を行うことが示された(Gao et al., J Pharmacol Exp Ther 2003; 307(3):870-7)。内在性のMC4Rを発現するGT1−7細胞を、アゴニストのα−メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)へ前曝露すると、α−MSHの2回目の曝露に対してはcAMP形成障害をもたらした(Shinyama et al., Endocrinology 2003; 144(4):1301-14)。これはアンタゴニストの投与では見られなかった。リガンドに誘導された内部移行は、C末端セグメントと3番目の細胞内ループとの間にある、セリン残基又はスレオニン残基のリン酸化がきっかけとなって、Gタンパク質共役型受容体で起きる。リン酸化はβアレスチンの結合を促進し、リゾソームによる内部移行及び分解のための受容体を標的とする。最近のデータは、アトラクチン様タンパク質(ALP)の細胞質尾部がMC4RのC末端ドメインと結合することを実証している(Yeo et al., Biochem. J. 2003; 376)。したがって、細胞表面上のMC4Rの安定性を増加させるシャペロンは、表面上の受容体の半減期が短いと、特に有益である。
【0093】
ERにおけるMC4Rポリペプチドと可逆的に結合するアゴニストであるシャペロンは、受容体の内部移行を誘導しないであろうことがさらに予想される。同様に、シャペロン化合物がアンタゴニストである場合、一旦受容体が細胞表面に存在すれば、シャペロン化合物は受容体活性を抑制しないであろうことが予想される。
【0094】
治療法
本発明は、肥満、又は肥満の発症に対してリスクファクターを有するような、MC4R安定性の減少に関連した症状を治療する方法であって、MC4Rの安定性及び/又は活性を促進するシャペロンをそのような治療を必要とする被験体へ投与することによる方法、をさらに提供する。治療される個体は、MC4Rの折畳み及びプロセッシングに影響するMC4Rの変異を示さないが、例えばニューロンにおけるMC4R安定性の増加により利益を得るような個体となり得る。治療される個体は、MC4Rタンパク質の折畳み及びプロセッシングに影響し、ニューロンにおけるMC4R安定性の減少を示すMC4Rの変異を有することもできる。
【0095】
製剤、用量及び投与
MC4Rに対する特異的な薬理学的シャペロン(すなわち、上記されるような、又は以下で示されるような本発明のスクリーニング方法によって同定されるような、MC4Rアゴニスト、MC4Rアンタゴニスト、若しくは他のMC4Rを結合する化合物)は、薬学的に許容可能なキャリアと共に医薬組成物に有利に製剤化される。シャペロンは、MC4R細胞表面の発現若しくは細胞表面への輸送の減少に関する肥満、又は他の障害の治療に対する有効成分又は治療剤として規定されてもよい。
【0096】
以下で説明されるように、有効成分(薬理学的シャペロン)の濃度は、望ましい用量及び投与レジメンに依存する。有効成分の例示的な用量範囲は、1日当たり約0.01mg/kg体重〜約250mg/kg体重;1日当たり約1mg/kg〜約100mg/kg;又は1日当たり約10mg/kg〜約75mg/kgである。
【0097】
治療上有効な化合物は、標準製剤化で被験体へ提供することができ、賦形剤、滑沢剤、希釈剤、香味料、着色剤、緩衝剤及び崩壊剤のような任意の薬学的に許容可能な添加剤も含んでいてもよい。標準製剤は当該技術分野において既知である。例えば、レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(第20版,MackPublishing Company, 2000)を参照。この製剤は、治療用シャペロンの血液脳関門の通過を可能にする任意の経路による投与に有用な用量単位で生産されてもよい。例示的な経路は、経口経路、非経口経路、口腔粘膜経路、鼻腔内経路、吸入経路、又は経皮的経路を含む。非経口経路は、静脈内投与、細動脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、脳室内投与、鞘内投与、及び頭蓋内投与を含む。
【0098】
1つの実施形態では、MC4Rの薬理学的シャペロン、特に本明細書の図1〜図8及び図10において示されたものは、固形の経口投薬形式で製剤化される。経口投与のために(例えば低分子に対して)、医薬組成物は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えばジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)のような、薬学的に許容可能な賦形剤を伴う従来の手段によって調製された、錠剤又はカプセルの形式を採用してもよい。錠剤は、当該技術分野において既知の方法によってコーティングされていてもよい。経口投与のための液状製剤は、例えば溶液、シロップ剤又は懸濁液の形式を採用してもよく、又は、それらは使用前に構成のための乾燥製品として水又は他の適切なビヒクルと共に提供されてもよい。そのような液状製剤は、懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は硬化食用脂);乳化剤(例えばレシチン又はアラビアゴム);非水性のビヒクル(例えばアーモンドオイル、油状エステル、エチルアルコール又は分留植物油);及び防腐剤(例えばパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、又はソルビン酸)のような薬学的に許容可能な添加剤を伴う従来の手段によって調製されていてもよい。上記製剤は、さらに必要に応じて、緩衝塩、香味料、着色剤及び甘味剤を含んでもよい。
【0099】
別の実施形態では、MC4Rシャペロンは非経口的投与のために製剤化される。シャペロンは注入によって(例えばボーラス注射又は連続的な注入によって)非経口的投与のために製剤化されてもよい。注射のための製剤は、追加防腐剤を伴う単位用量形式、例えばアンプル又は多用量容器で提供されてもよい。組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクルにおいて、懸濁液、溶液又はエマルジョンとしての形式をとってもよく、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤のような調合薬剤を含んてもよい。或いは、有効成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば滅菌発熱性物質除去水)による構成のための粉末形式であってもよい。
【0100】
以前に記述された製剤に加えて、シャペロンは持効性製剤としても製剤化されてもよい。そのような長期作用性製剤は、移植(例えば皮下に又は筋肉内に)、又は筋肉内注射によって投与されてもよい。したがって、例えば化合物は、適切な高分子材料又は疎水性材料(例えば許容できる油中のエマルジョンとして)若しくはイオン交換樹脂で、又は難溶性誘導体として、例えば難溶性塩類として、製剤化されてもよい。
【0101】
別の実施形態では、シャペロンは小胞、特にリポソーム中で送達することができる。
【0102】
別の実施形態では、シャペロンは制御された放出方法で送達することができる。例えば、治療剤は、ポリ−乳酸/グルタミン酸(PLGA)のようなポリマーマトリックス中でポンプによる継続的な静脈内注入を用いて、コレステロールと有効成分(シラスティックR(SilasticR)(商標);Dow Corning(ミシガン州ミッドランド);米国特許第5,554,601号を参照)との混合物を含むペレット中で、皮下移植又は経皮貼布によって、投与することができる。
【0103】
併用療法。医薬組成物は、さらに候補化合物と組み合わせて他の生物活性物質を含んでいてもよい。実施例は、シブトラミン、オルリスタット(ゼニカル(Xenical)(登録商標))、レプチン、神経ペプチドY、コレシストキニン又はGLP−1含むが、これらに限定しない。
【0104】
MC4R薬理学的シャペロンのためのスクリーニング分析
本発明は、MC4Rポリペプチドの安定性、活性、及び/又は細胞表面の局在性を調節する候補シャペロン化合物を同定する方法をさらに提供する。1つの実施形態では、本発明は、MC4Rタンパク質に対するシャペロンを同定する方法を提供し、その方法は、MC4Rタンパク質又はその断片に、標識又は無標識の試験化合物を接触させること、及びMC4Rタンパク質又はその断片に結合した試験化合物量を測定することを含む。このことは、例えば、
(a)細胞が試験化合物との接触に対して反応することを可能にするのに十分な期間で、第1の細胞を試験化合物と接触させること、
(b)工程(a)で接触した細胞中で(又は細胞表面上で)、MC4Rポリペプチド(又はリガンド結合ドメインを含むその断片)のコンフォメーション的な安定性、活性、及び/又は細胞表面局在性を決定すること、及び
(c)工程(b)において決定されたMC4Rポリペプチドの安定性、活性、及び/又は細胞表面の局在性を、試験化合物と接触していない対照細胞におけるMC4Rポリペプチドの安定性、活性、及び/又は細胞表面局在性と比較すること
により達成することができ、試験化合物との接触に反応した第1の細胞におけるMC4Rポリペプチドの安定性、活性、及び/又は細胞表面の局在性の検出可能な変化と、試験化合物と接触していない対照細胞におけるMC4Rポリペプチドの安定性レベルとの比較は、試験化合物が、MC4Rポリペプチドの安定性を調節し、MC4Rの安定性又は活性の減少に関連した障害の治療のための候補化合物であることを示す。
【0105】
この細胞は、非内在性の野生型MC4R若しくは変異MC4Rで形質転換された宿主細胞、又は変異MC4R及び野生型MC4Rを含む、内在的なMC4Rを発現する細胞のいずれかであり得る。そのような細胞は、上記された内在的にMC4Rを発現する、GT1−7細胞のような「肥満ニューロン」(これらはMacKenzie et al., Current Medicinal Chemistry - Immunology,Endocrine & Metabolic Agents 2004; 4: 113-117に記述されている)、又はBlondet et al., J Biochem 2004; 135: 541-546及び以下の実施例で記述されるHEK293細胞のような、タグを付けた正常MC4R又は変異MC4Rを発現する形質転換細胞を含む。
【0106】
別の実施形態では、本発明は、MC4Rタンパク質に対するシャペロンを同定する方法を提供し、その方法は、MC4Rタンパク質を含む細胞又は細胞膜画分に標識試験化合物を接触させること、及び細胞又は細胞膜画分へ結合した標識試験化合物量の測定を含む。
【0107】
多数のハイスループットスクリーニング(HTS)法は、多くの(例えば何百、何千、何万の)試験化合物をMC4Rへの結合について同時にスクリーニングするために使用することができる。試験化合物は、低分子の有機分子又は無機分子(好ましくは)、ペプチド又はポリペプチド(抗体、抗体フラグメント又は他の免疫特異的な分子を含む)、オリゴヌクレオチド分子(アプタマーのような)、ポリヌクレオチド分子、又はキメラ若しくはその誘導体であり得るが、これらに限定しない。MC4Rポリペプチドに特異的に結合する候補シャペロンである試験化合物を、細胞に基づいた分析及び/又は無細胞分析を用いて、同定することができる。近年開発されている自動化分析のいくつかの方法は、短期間で何万もの化合物の試験を可能にする(例えば米国特許第5,585,277号、同第5,679,582号及び同第6,020,141号を参照)。例えば、1つのグループは、非ぺプチジルGタンパク質共役型受容体にバイアスのかかったライブラリの反復指向性スクリーニングを介して、MC4Rアゴニストの1つのアリールピペラジンの同定を報告した(Richardson et al., J Med Chem 2004; 47(3):744-55)。そのようなHTS法は、例えばマイクロアレイにおいて、特に有用である。
【0108】
スクリーニングについては、同定され得る精製化合物のクラスは、低分子(すなわち分子量で約2キロダルトン(kD)未満、及びより好ましくは分子量で約1kD未満である有機分子又は無機分子)を含むが、これらに限定されない。これらは化合物ライブラリの構成要素である。
【0109】
本明細書において用いられるように、用語「リード化合物」は、MC4Rアンタゴニスト若しくはMC4Rアゴニストの主要なスクリーンニングから選択された、野生型MC4Rタンパク質若しくは変異MC4Rタンパク質自体のタンパク質コンフォメーションの安定化に有効であるかもしれない、又は適切な医薬化合物を生成するためにさらなる開発によって修飾されてもよい分子的実体を指す。
【0110】
化合物ライブラリ。十分に立証された薬理活性がある高純度の低分子有機リガンド及びペプチドアゴニストのライブラリは、シグマアルドリッチから入手可能である(LOPAC LIBRARY(商標)及びLIGAND−SETS(商標))。さらに、シグマアルドリッチから入手可能なものはレアケミカルズ(Rare Chemicals)のアルドリッチライブラリであり、植物抽出物及び微生物培養抽出物を含む、100,000超の低分子化合物の多様なライブラリである。他の化合物ライブラリは、トライポス(Tripos)(LeadQuest(登録商標))及びティム・テック(TimTech)(キナーゼ修飾因子を標的としたライブラリを含む)から入手可能である。
【0111】
本発明に従ってスクリーニングするのに適した種類の化合物ライブラリを提供するか、又は提供している他の企業は以下のものである:3-Dimensional Pharmaceuticals, Inc.; Advanced ChemTech; AbinitioPharmaSciences; Albany Molecular; Aramed Inc.; Annovis, Inc. (旧Bearsden Bio, Inc.); ASINEX; AVANTImmunotherapeutics; AXYS Pharmaceuticals; Bachem; Bentley Pharmaceuticals;Bicoll Group; Biofor Inc.; BioProspect Australia Limited; Biosepra Inc.; CadusPharmaceutical Corp.; Cambridge Research Biochemicals; Cetek Corporation;Charybdis Technologies, Inc.; ChemBridge Corporation; ChemDiv, Inc.; ChemGenicsPharmaceuticals Inc.; ChemOvation Ltd.; ChemStar, Ltd.; Chrysalon; ComGenex,Inc.; Compugen Inc.; Cytokinetics; Dextra Laboratories Ltd.; Discovery PartnersInternational Inc.; Discovery Technologies Ltd.; Diversa Corporation; DovetailTechnologies, Inc.; Drug Discovery Ltd.; ECM Pharma; Galilaeus Oy; JanssenPharmaceutica; Jerini Bio Tools; J-Star Research; KOSAN Biosciences, Inc.; KPPharmaceutical Technology, Inc.; Lexicon Genetics Inc.; Libris Discovery;MicroBotanica, Inc.; MicroChemistry Ltd.; MicroSource Discovery Systems, Inc.;Midwest Bio-tech Inc.; Molecular Design & Discovery; MorphoSys AG; Nanosyn,Inc.; Ontogen Corporation; Organix, Inc.; Pharmacopeia, Inc.; PherinPharmaceuticals; Phytera, Inc.; PTRL East, Inc.; REPLICor Inc.; RSP Amino AcidAnalogues, Inc.; Sanofi-Synthelab(現Sanofi-Aventis)Pharmaceuticals; Sequitur, Inc.; Signature BioScience Inc.; SpectrumInfo Ltd.; Talon Cheminformatics Inc.; Telik, Inc.; Tera BiotechnologyCorporation; Tocris Cookson; Torrey Pines Institute for Molecular Studies;Trega Biosciences, Inc.; 及びWorldMolecules/MMD。
【0112】
さらに、ハーバードメディカルスクールによって管理されている化学及び細胞生物学学会(the Institute of Chemistry and Cell Biology)(ICCB)が、スクリーニングのための天然産物ライブラリを含む以下の化学ライブラリを提供している:Chem Bridge DiverSet E(16,320個の化合物)、バイオネット(Bionet)1(4,800個の化合物)、セレップ(CEREP)(4,800個の化合物)、メイブリッジ(Maybridge)1(8,800個の化合物)、メイブリッジ2(704個の化合物)、ピークデール(Peakdale)1(2,816個の化合物)、ピークデール2(352個の化合物)、ChemDiv Combilab and International(28,864個の化合物)、混合商業用プレート(Mixed Commercial Plate)1(352個の化合物)、混合商業用プレート2(320個の化合物)、混合商業用プレート3(251個の化合物)、混合商業用プレート4(331個の化合物)、ChemBridgeマイクロフォーマット(50,000個の化合物)、商業用多様性セット(Commercial Diversity Set)1(5,056個の化合物)、NCIコレクション:構造的多様性セット(Structural Diversity Set)、バージョン2(1,900個の化合物)、機構的多様性セット(Mechanistic Diversity Set)(879個の化合物)、オープンコレクション1(90,000個の化合物)、オープンコレクション2(10,240個の化合物)、既知の生物活性コレクション:NINDSカスタムコレクション(1,040個の化合物)、ICCB Bioactives 1(489個の化合物)、SpecPlusコレクション(960個の化合物)、ICCB Discretesコレクション。以下のICCB化合物が、ICCB(Harvard)及び他の共同研究機関の化学者から個別に回収された:ICCB1(190個の化合物)、ICCB2(352個の化合物)、ICCB3(352個の化合物)、ICCB4(352個の化合物)。天然産物の抽出物:NCI海洋性抽出物(352個のウェル)、有機分画−NCI植物抽出物及び菌抽出物(1,408個のウェル)、フィリピンの植物抽出物1(200個のウェル)、ICCB−ICG多様性指向合成(DOS)コレクション、DDS1(DOS多様性セット)(9600個のウェル)。
【0113】
広く多様な化合物ライブラリよりむしろより集中的な化合物ライブラリを生成するのに利用可能な数多くの技法が存在する。Chemical Computing Group, Inc.(モントリオール)がハイスループット薬剤設計への新たなアプローチを有するソフトウェアを開発した。この企業の方法は、ハイスループットスクリーニング(HTS)の実験データを使用して、確率論的なQSAR(定量的構造活性相関)モデルを作製し、これを仮想コンビナトリアルライブラリにおける構成ブロックを選択するのに使用する。これは、標準的な回帰分析の代わりの統計評価に基づいている。
【0114】
さらに、ArQule, Inc.(マサチューセッツ州ウォバーン)は、化学化合物のハイスループットで自動化された生成を実行するため、及びリード化合物の最適化(lead optimization)に十分な量で、既知の構造を有し高純度のこれらの化合物を送達するための技術も統合した。この企業のAMAP(商標)(自動化分子アセンブリプラント)は、化合物発見のそれぞれの段階でハイスループットな化学合成を行う。
【0115】
同様の化合物が、化合物の選択的な「チェリーピッキング」のために、オンラインデータベース上又はCD−ROM上に提供されることが多い。例えば、AbInitio PharmaSciences; ActiMol; Aral Biosynthetics; ASDIBiosciences; Biotechnology Corporation of America; Chembridge; ChemDiv; FloridaCenter-Heterocyclic Compounds; Microsource /MSDI; NorthStar; Peakdale; TexasRetaining Group; Zelinsky Institute; Advanced ChemTech; Ambinter; AnalytiConDiscovery; Aurora Fine Chemicals; Biofocus; Bionet /Key; Comgenex; KeyOrganics; LaboTest; Polyphor; SPECS and Biospecs; 及びBharaviLaboratoriesを参照されたい。
【0116】
マイクロアレイ
1つの実施形態では、MC4Rシャペロンに対するHTSスクリーニングは、マイクロアレイを使用する。
【0117】
タンパク質アレイ。タンパク質アレイは、例えば、ガラス、膜、マイクロタイターウェル、マススペクトロメータープレート、及びビーズ又は他の粒子から選択される、様々な表面上で固定化されたタンパク質を用いる、固相の結合分析システムである。これらのアレイを用いる結合分析は、非常にパラレルであり、しばしば小型化される。それらの利点は、迅速であり、自動化することができ、高感度であり、試薬の使用において経済的であり、単一の実験から豊富なデータを提供するということである。
【0118】
自動化マルチウェルフォーマットは最も高度に発展したHTSシステムである。自動化96ウェルプレート又は384ウェルプレートに基づいたスクリーニングシステムが、最も広く用いられるものである。プレートに基づいたスクリーニングシステムにおける最新の傾向は、反応ウェルの容量をより一層減少させ、1枚のプレート当たりのウェルの密度を増加させること(1枚のプレート当たり、96ウェルから384ウェルへ、1,536ウェルへ)である。この傾向は、スループットの増加、スクリーニングされる化合物当たりのバイオ試薬コストの劇的な減少、及び自動化により制御される必要のあるプレート数の減少をもたらす。HTSのために用いることができるタンパク質アレイの説明については、例えば、米国特許第6,475,809号;同第6,406,921号;及び同第6,197,599号;及び国際公開特許第WO00/04389号及び国際公開特許第WO00/07024号を参照。
【0119】
アレイの構築については、MC4R又はその断片のソースは、野生型又は変異型にかかわらず、組換型タンパク質のための細胞に基づいた発現系、天然ソースからの精製、無細胞翻訳系によるin vitroでの生産、及びMC4Rペプチドを作るための合成法を含むことができる。捕獲アレイ及びタンパク質機能分析については、多くの場合、MC4Rポリペプチドは正確に折畳まれ機能的であるということである。例えば、組換型タンパク質が細菌から変性条件下で抽出される場合、常に前記の状態であるとは限らず、他の方法(天然タンパク質の単離、無細胞合成)では、一般に機能性を保持する。しかしながら、変性タンパク質のアレイは、タンパク質が適切なコンフォメーションへ折畳まれないにもかかわらず、シャペロンは恐らく変異タンパク質に結合するので、シャペロンをスクリーニングするのにそれでもなお有用となり得る。
【0120】
使用される固定化法は、異なる特性のMC4Rポリペプチド(例えば、野生型、変異型、全長、部分長の断片、親水性、疎水性等)に好ましくは適用可能であり、ハイスループット及び自動化に受け入れ可能であり、通常はシャペロン結合能力の保持と両立する。MC4Rタンパク質固定化については、共有結合法又は非共有結合法の両方を使用することができる。共有結合のための基板は、例えばアミノ基含有シラン試薬又はアルデヒド基含有シラン試薬(テレケム(Telechem))でコートされたスライドグラスを含む。Versalinx(商標)システム(プロリンクス(Prolinx))では、可逆的な共有結合カップリングは、フェニルジボロン酸で誘導体化されたタンパク質と支持体表面上で固定化されたサリチルヒドロキサム酸との間の相互作用によって達成される。安定した結合を提供する共有結合カップリングの方法は、一連のタンパク質に適用することができる。未修飾のタンパク質の非共有結合は、三次元のポリアクリルアミドゲルに基づいたHydroGel(商標)(パーキンエルマー(PerkinElmer))のような多孔質構造内に生じる。
【0121】
細胞に基づいたアレイ。細胞に基づいたアレイは、対象となるサンプルにおける試験化合物への細胞応答の測定のための流体装置の使用と合わせた細胞培養の技法、培養された細胞で望ましい効果を誘導する分子の同定ためのサンプルのスクリーニング、及び新規であり望ましい特性を伴う細胞集団の選択及び同定を組み合わせる。ハイスループットスクリーニング(HTS)は、固定された細胞上で、蛍光標識抗体、生物学的リガンド又は候補シャペロン及び/又は核酸ハイブリダイゼーションプローブを使用して、又は生細胞上で、マルチカラーの蛍光指示薬及びバイオセンサーを使用して行なうことができる。固定細胞又は生細胞スクリーニングの選択は、必要とされる特異的な細胞に基づく分析に依存する。
【0122】
当該技術分野において既知である、単一細胞及び複数細胞に基づいた多数のアレイ技術がある。マイクロパターン化アレイ(例えば、PCT国際公開特許第WO97/45730号及びPCT国際公開特許第WO98/38490号に記述される)、及びマイクロ流体アレイのような、最近開発された技法は、細胞に基づいた比較分析のための有益な手法を提供する。トランスフェクトされた細胞のマイクロアレイは、定義されたcDNAを過剰発現する細胞のクラスターを含むアレイであることを特徴とする、相補的な技術である。発現ベクターにクローニングされた相補的なDNAは、顕微鏡用スライドに対してプリントされ、脂質トランスフェクション試薬及び接着哺乳動物細胞の追加後に使用可能なアレイになる(Bailey et al., Drug Discov. Today 2002; 7(18Suppl): S113-8)。細胞に基づいたアレイは、例えば、Beske, Drug Discov. Today 2002; 7(18 Suppl): S131-5; Sundberg et al., Curr. Opin. Biotechnol. 2000; 11: 47-53;Johnston et al., Drug Discov. Today 2002; 7: 353-63;米国特許第6,406,840号及び同第6,103,479号、及び、米国で公表された特許出願第2002/0197656号に詳細に記述される。リガンド依存性イオンチャネルの調節因子のためのスクリーニングに特異的に使用される、細胞に基づいた分析については、Mattheakis et al., Curr. Opin. Drug Discov. Devel. 2001; 1: 124-34;及び Baxter et al., J. Biomol. Screen. 2002; 7: 79-85を参照。
【0123】
検出可能な標識。スクリーニング分析を使用して候補MC4Rシャペロンのような分子を検出するために、本明細書の他の部分において記述されるように、機能分析を未標識分子の追跡に使用することができる。対象となる分子(例えば、低分子、抗体、又はポリヌクレオチドプローブ)、又は対象となる分子のライブラリも、物理的性質又は化学的性質により、対象となる分子の存在を示す役目をする原子(例えば、放射性核種)、検出可能な分子(例えば、フルオレセイン)、又は複合体により、検出可能なように標識することができる。分子が、検出可能な産物を生産するように基質に作用する「レポーター」分子(例えば、酵素のような生体分子)に共有結合される場合、検出可能なように標識することもできる。本発明での使用に適切である検出可能な標識は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的的手段、化学的手段によって検出可能な任意の組成物も含む。本発明に有用な標識は、標識されたアビジン又はストレプトアビジン結合物による染色のためのビオチン、磁気ビーズ(例えば、ダイナビーズ(Dynabeads)(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、リサミン(lissamine)、フィコエリトリン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、AmershamからのFluorX、Molecular ProbesからのSyBR Green I及びII等)、放射性同位元素標識物(例えば、3H、125I、35S、14C又は32P)、酵素(例えば、加水分解酵素、特にアルカリフォスファターゼ、エステラーゼ及びグリコシダーゼのようなホスファターゼ、又は酸化還元酵素、特に西洋ワサビペルオキシダーゼのようなペルオキシダーゼ等)、基質、コファクター、阻害剤、化学発光基、色原体剤、及びコロイド金ビーズ又は色ガラスビーズ又はプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)のような比色定量標識を含むが、これらに限定されない。そのような標識の使用を記述する特許の例は、米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号;及び同第4,366,241号を含む。
【0124】
そのような標識を検出する手段は、当業者に既知である。例えば、放射標識物及び化学発光標識物は、感光性フィルム又はシンチレーションカウンターを使用して検出することができる。蛍光マーカーは、放出された光(例えば蛍光標示式細胞分取(FACS)におけるように)を検出する光検知器を使用して検出することができる、酵素による標識は、酵素に基質を提供すること、及び例えば、基質に対しての酵素の作用によって産生された有色の反応産物を検出することによって検出することができる。
【0125】
安定性、局在性及び活性分析
以前に示されたように、MC4Rの促進された安定性は、細胞のMC4Rポリペプチドの増加の測定によって、又は細胞表面への輸送の増加の決定によって、例えば、細胞表面の発現の増加で決定されたように、又はMC4R活性の増加の決定によって決定することができる。上述の各々を評価するための非限定的な例示的な方法が以下に述べられる。
【0126】
MC4R細胞内安定性の決定。細胞内のMC4Rタンパク質レベルを決定する方法は、当該技術分野において既知である。そのような方法は、ウェスタンブロッティング、免疫沈降後のウェスタンブロッティング(IPウェスタン)、又はタグを付けたMC4Rタンパク質を使用する免疫蛍光法を含む。
【0127】
MC4R輸送の決定。生合成経路によってタンパク質の輸送を評価することは、例えば、グリコシダーゼと共に35Sで標識された受容体タンパク質によるパルス−チェイス実験を使用することで、又は輸送中にタンパク質の修飾を決定する間接免疫蛍光法又は直接免疫蛍光法によって達成される。これらの方法及び他の方法は、例えば、「細胞生物学の最新のプロトコル(Current Protocols in Cell Biology)」(2001;John Wiley & Sons)に記述される。
【0128】
タンパク質の輸送の低下を検出する方法は、当該技術分野において既知である。例えば、ゴルジ体中のN型糖鎖が付加したタンパク質及び/又はO型糖鎖が付加したタンパク質のために、グリコシダーゼ処理及び免疫沈降を組み合わせた放射標識タンパク質を使用するパルス−チェイス代謝標識は、タンパク質がゴルジ中で十分な糖鎖付加を受けているかどうか、又はタンパク質ががさらなる糖鎖付加のためのゴルジへの輸送の代わりにERに保持されているかどうか検出するために、使用することができる。
【0129】
視覚的に細胞の局在を検出する高感度な方法は、蛍光タンパク質又は蛍光抗体を使用する蛍光顕微鏡も含む。例えば、対象となるMC4Rタンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質でタグを付けることができ、固定細胞及び生細胞のこれらのタンパク質の運命(fate)を検討するために、その後マルチカラー低速度撮影顕微鏡検査及び電子顕微鏡法を行なう。タンパク質輸送における蛍光画像化の使用の総説については、Watson et al, Adv Drug Deliv Rev 2005; 57(1):43-61を参照。タンパク質の細胞内の共局在性のための共焦点顕微鏡の使用の説明については、Miyashita et al., Methods Mol Biol. 2004; 261:399-410を参照。
【0130】
蛍光相関分光法(FCS)は、単一分子解像及びリアルタイム解像が可能な、超高感度及び非侵襲性の検出方法である(Vukojevic et al., Cell Mol Life Sci 2005; 62(5): 535-50)。SPFI(単一粒子蛍光画像化)は、小さな蛍光性の粒子で選択的に標識された個々の分子を可視化するために、蛍光の高感度性を使用する(Cherry et al., Biochem Soc Trans 2003; 31(Pt5): 1028-31)。脂質ラフト内のタンパク質の局在性については、Latif et al., Endocrinology 2003; 144(11): 4725-8を参照。生細胞画像化の総説については、Hariguchi(Cell Struct Funct 2002; 27(5):333-4)を参照。
【0131】
蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)顕微鏡も生理学的条件下でタンパク質の構造及び局在性を研究するために使用される(Periasamy, J Biomed Opt 2001; 6(3): 287-91)。
【0132】
細胞膜に存在するタンパク質については、それらが膜上に存在するかどうかを検出するために、それほど高感度でない分析を使用することができる。そのような方法は、固定細胞の免疫組織化学、又は放射性同位元素で標識されたリガンド(例えば125I)を使用した全細胞の標識を含む。
【0133】
MC4R細胞表面の発現の決定。一旦候補化合物が同定されたならば、次の工程は、候補化合物が、細胞表面に輸送されるMC4R量を促進することができるかどうかを決定することである。多数の分析は、細胞表面の受容体発現を定量的に評価するために使用することができる。例えば、放射性リガンド結合分析(例えば125I−MSHを使用)は、MC4Rを発現する全細胞又は細胞膜画分への結合のいずれかを決定するために使用することができる。1つの例示的な方法の説明については、米国で公表された出願第2003/0176425号を参照;Chhajlani, Peptides. 1996;17(2):349-51も参照。さらに、標識抗体又は標識されたMC4R(例えばFLAGタグを付けたMC4R)のいずれかを使用する蛍光抗体染色法も使用されてもよい。他の既知の方法は蛍光標示式細胞分取(FACS)であり、細胞表面マーカーに対する標識抗体を使用して、細胞の集団を選別又は識別する。さらに、Nijenhuis et al.,(上記参照)を参照。
【0134】
MC4R活性の増加の決定。MC4R活性は、例えば、cAMP活性化/蓄積分析を使用して(例えば、VanLeeuwen et al., J Biol Chem 2003; 18: 15935-40を参照)、又はcAMPによって活性化された1つ又は複数の遺伝子の転写の増加の測定によって、又はルシフェラーゼのようなレポーター遺伝子をcAMP応答エレメント(CRE)へ操作可能なように結合することでレポーター遺伝子の発現を測定することによって(例えば、Lee et al., Eur J Biochem 2001; 268(3):582-91を参照)、決定することができる。さらに、MC4Rがメラニン保有細胞におけるTNF−α分泌を刺激することも知られている。したがって、候補化合物に対するMC4R活性は、TNF−α分泌の測定で評価することができる(例えば、Ignar et al., Peptides 2003 May;24(5):709- 16を参照)。
【0135】
最後に、メラニン保有細胞は、メラノコルチンアゴニスト及びメラノコルチンアンタゴニストに対して迅速で高感度なバイオアッセイを提供する。この方法は、吸光度の変化により決定された、α−MSHによって誘導された色素果粒の分散の測定に基づく(Quillan et al., PNAS U.S.A. 1995; 92: 2894;及びPotenza et al., Pigment Cell Res 1992; 5: 372)。
【0136】
分子生物学的定義
本発明に従って、当該技術分野内での、従来の分子生物学、微生物学及び組換型DNA技法の利用があってもよい。通常これらの技法は、スクリーニング分析で使用される野生型MC4R又は変異MC4Rを発現する組換え細胞の生産に有用である。そのような技法は、文献中で完全に説明される。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis著「分子クローニング:実験手引き書(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第2版(1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, New York(本明細書において「Sambrook et al.,1989」);「DNAクローニング:実際的なアプローチ(DNA Cloning: A PracticalApproach)」Volumes I and II(D.N.Glover ed. 1985);「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」(M.J. Gait ed. 1984);「核酸ハイブリダイぜーション(NucleicAcid Hybridization)」(B.D. Hames & S.J. Higgins eds.(1985));「転写及び翻訳(TranscriptionAnd Translation)」(B.D. Hames & SJ. Higgins, eds. (1984));「動物細胞の培養(Animal Cell Culture)」(R.I. Freshney, ed. (1986));「固定化された細胞及び酵素(Immobilized Cells And Enzymes)」(IRL Press, (1986));B. Perbal著「分子クローニングの実際的な手引書(A Practical Guide To Molecular Cloning)」(1984);F.M. Ausubel et al. (eds.)「分子生物学の最新の手順(Current Protocols in Molecular Biology)」JohnWiley & Sons, Inc. (1994);及び入手可能な場合には、それぞれの最新版を参照。
【0137】
用語「宿主細胞」は、任意の方法で、選択、修飾、形質転換、成長、使用、又は操作した、細胞による望ましい物質の生産(例えば遺伝子、DNA配列、RNA配列、タンパク質又は酵素の細胞による発現)のための、任意の生物の任意の細胞を意味する。本発明によれば、宿主細胞は、変異MC4R又は野生型MC4R核酸及びMC4Rポリペプチドを発現するために修飾される。宿主細胞は、さらにスクリーニング又は他の分析のために使用することができる。本発明で使用される例示的な宿主細胞は、HEK293細胞、COS細胞、及びCHO細胞である。
【0138】
「組換DNA分子」は分子生物学的操作を受けたDNA分子である。
【0139】
本明細書におけるMC4Rポリヌクレオチドは、天然調節(発現制御)配列により隣接されてもよいし、又はプロモーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)及び他のリボソーム結合部位配列、エンハンサー、応答エレメント、サプレッサー、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5’非コード領域、3’非コード領域等を含む異種配列を結合させてもよい。核酸も、当該技術分野において既知の多くの手段により修飾されてもよい。そのような修飾の非限定的な例は、メチル化、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドの1つ又は複数のアナログへの置換、並びに例えば荷電していない結合(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバミン酸等)及び荷電した結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)のようなヌクレオチド間の修飾を含む。ポリヌクレオチドは、例えば、タンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジン等)、インターカレーター(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート化剤(例えば金属、放射性金属、鉄、酸化金属等)、及びアルキル化剤ような1つ又は複数の追加の共有結合する部分を含んでもよい。ポリヌクレオチドは、メチルホスホトリエステル結合、エチルホスホトリエステル結合、又はアルキルホスホロアミド化結合の形成により誘導体化されてもよい。さらに、本明細書におけるポリヌクレオチドも、検出可能なシグナルを提供することができる標識により直接的又は間接的に修飾されてもよい。例示的な標識は、放射性同位元素、蛍光性分子、ビオチン等を含んでいる。核酸も、例えばこの分子の使用に関連した分子生物学的操作を促進するために、部位特異的変異誘発によって、1つ又は複数の塩基で変えられてもよい。
【0140】
MC4R RNA又はMC4Rポリペプチドような、「コード配列」又は発現産物を「コードする」配列は、発現された場合、RNA又はポリペプチドの生産をもたらすヌクレオチド配列であり、例えば、MC4Rヌクレオチド配列は、MC4Rポリペプチド(タンパク質)のためのアミノ酸配列をコードする。タンパク質のためのコード配列は、開始コドン(通常ATG)及び終止コドンを含んでもよい。
【0141】
用語「遺伝子」(「構造遺伝子」とも呼ばれる)は、1つ又は複数のMC4Rタンパク質のすべて又は一部を含むアミノ酸の特定の配列をコードするか又はこの配列に相当するDNA塩基配列を意味し、例えばMC4R遺伝子が発現する条件を決定するプロモーター配列のような調節性のDNA配列を含んでもよいし、又は含んでなくてもよい。
【0142】
用語「発現する」及び「発現」は、核酸配列からのアミノ酸配列産生の文脈に使用された場合、MC4R遺伝子又はMC4RのDNA配列における情報が現れるようになることを可能にするか、又は引き起こすことを意味し、例えば、対応するMC4R遺伝子又はMC4RのDNA配列の転写及び翻訳に関与する細胞機能の活性化によって、MC4Rタンパク質を生産することが明らかになる。MC4Rタンパク質のような「発現産物」を形成するために、DNA配列は、細胞中で、又は細胞により発現される。発現産物自体、例えば結果として生じるタンパク質も、細胞によって「発現された」と表現されてもよい。発現産物は、細胞内、細胞外、又は分泌されるものとしてと特徴づけることができる。本発明によれば、MC4Rはニューロンの細胞表面で発現される。
【0143】
用語「細胞内」は、細胞の内部にあるものを意味する。用語「細胞外」は、細胞の外部にあるものを意味する。細胞上又は細胞内部のどこかから、物質が細胞の外部で有意な測定値に現われる場合、この物質は細胞で「分泌される」。
【0144】
用語「異種の」は、一緒に天然に存在しないエレメントの組合せを指す。例えば、異種のDNAは、細胞中又は細胞の染色体部位に天然にはないDNAを指す。好ましくは、異種のDNAは細胞に対して外来の遺伝子を含む。異種の発現調節エレメントは、天然において操作可能なように結合したエレメントというよりも、異なる遺伝子に操作可能なように結合させたエレメントである。本発明の文脈では、対象となるタンパク質をコードする遺伝子は、クローニング又は発現のために挿入されるベクターDNAに対して異種であり、発現されるそのようなベクター(例えば大腸菌細胞)を含む宿主細胞に対して異種である。
【0145】
用語「形質転換」は、DNA(すなわち、MC4Rポリペプチドをコードする核酸)が周囲の培地から宿主細胞へ導入される過程を指す。
【0146】
用語「形質導入」は、原核生物の宿主細胞(例えば、細菌ウイルス又はバクテリオファージ経由で、原核生物の宿主細胞)への、DNA(すなわち、MC4Rポリペプチドをコードする核酸)の導入を指す。導入されたDNA又はRNAを受け取り発現する、原核生物又は真核生物の宿主細胞は、「形質転換した」又は「形質導入された」ものであり、「形質転換体」又は「クローン」である。宿主細胞へ導入されるDNA又はRNAは、宿主細胞と同一の属若しくは種の細胞、又は異なる属若しくは種の細胞、又は合成配列を含む、任意のソースから入手することができる。
【0147】
用語「組換えにより操作された細胞」は、対象となる核酸、すなわちMC4Rポリペプチドをコードする核酸を、トランスフェクション、形質転換又は形質導入を含む任意の適切な方法によって、発現又は過剰発現するように操作された任意の原核生物又は真核生物の細胞を指す。この用語は、通常はその遺伝子産物を発現しない細胞、又は最適水準以下で遺伝子産物を発現する細胞中の核酸の内在性の活性化も含む。
【0148】
用語「トランスフェクション」は、細胞の中への外来の(すなわち、外部又は細胞外の)核酸の導入を意味する。「外来の」核酸は、宿主細胞に対する遺伝子、DNA配列、又はRNA配列を含んでおり、その結果、宿主細胞はDNAを複製し、望ましい物質(典型的には導入された遺伝子又は配列によってコードされたタンパク質又は酵素)を生産するために導入された遺伝子又は配列を発現する。導入された遺伝子(すなわちMC4Rポリペプチドをコードする核酸)又は配列も、「クローン化」遺伝子又は配列と呼んでもよいし、細胞の遺伝的機構によって使用される開始配列、終止配列、プロモーター配列、シグナル配列、分泌配列又は他の配列ような調節又は制御の配列を含んでもよい。遺伝子又は配列は、機能を持たない配列又は未知の機能の配列を含んでもよい。DNAは、導入されたDNA又はRNAを受け取り発現する宿主細胞に、染色体外のエレメントとして、又は染色体の組み込みによってのいずれかで導入されてもよい。
【0149】
使用される宿主細胞に依存して、形質転換又はトランスフェクションは、そのような細胞に適切な標準技術を使用して行われる。Sambrook et al., 1989(上記参照)のセクション1.82中に記述されているように、塩化カルシウムを使用するカルシウム処理は、実質的な細胞壁バリアを含んでいる細菌細胞に通常は使用される。Chung及びMiller(NucleicAcids Res. 1988, 16:3580)に記述されているように、形質転換のための他の方法はポリエチレングリコール/DMSOを使用する。さらに別の方法はエレクトロポレーションと呼ばれる技術の使用である。或いは、ウイルスベクターが使用される場合、宿主細胞は対象となる遺伝子を含むウイルスで感染する場合がある。
【0150】
用語「ベクター」、「クローニングベクター」及び「発現ベクター」は、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば、転写及び翻訳)を促進するように、DNA配列又はRNA配列(例えば、MC4R遺伝子)を宿主細胞へ導入することができるビヒクルを意味する。ベクターはプラスミド、ファージ、ウイルス等を含み、それらは当該技術分野において既知である。
【0151】
「プロモーター配列」は、細胞においてRNAポリメラーゼの結合及び下流(3’方向)のコード配列の転写開始を可能にするDNA制御領域である。本発明を定義する目的のために、プロモーター配列は、転写開始部位により3’末端で結合し、バックグラウンド以上の検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な塩基又はエレメントの最少数を含む上流(5’方向)へと及ぶ。プロモーター配列内では、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)に加えて転写開始部位も見られる。
【0152】
RNAポリメラーゼがmRNAへコード配列を転写する場合、コード配列は、細胞の転写調節配列及び翻訳調節配列に「制御下で」、又は「操作可能なように結合」し、その後トランスRNAスプライシングされ(それがイントロンを含んでいる場合)、コード配列によりコードされたタンパク質に翻訳される。
【0153】
1つ又は複数の上記で列挙された構成要素を含む適切なベクターの構築は、標準のライゲーション技術を用いる。単離されたプラスミド又はDNA断片は切断され、調整され、必要とされるプラスミドを生成するのに望ましい形式で再ライゲーションされる。
【0154】
構築されたプラスミド中での正確な配列を確認するための分析について、ライゲーション混合物はバクテリア菌株を形質転換するために使用され、適切な場合に、成功した形質転換体はアンピシリン耐性又はテトラサイクリン耐性によって選択される。形質転換体からのプラスミドは調製され、制限酵素消化によって分析され、及び/又はSanger et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA1977, 74:5463-5467)又はMessing et al.(Nucleic Acids Res. 1981, 9:309)の方法、又はMaxamet al.(Methods in Enzymology 1980, 65:499)の方法によってシークエンスされる。宿主細胞は本発明の上記の発現ベクターにより形質転換され、利用されるプロモーターに対して適切に修飾された従来の培養液において培養される。
【実施例】
【0155】
本発明は、以下に提示された実施例によってさらに記述される。そのような実施例の使用は例示のみであり、本発明又は任意の例示された用語の範囲及び意味を全く限定しない。同様に、本発明は、本明細書において記述された任意の特定の好ましい実施形態についても限定しない。実際は、本発明の多くの修飾及び変更は、本明細書を読む際に当業者に明らかになり、その精神及び範囲から逸脱せずに行うことができる。したがって、本発明は、請求項に対し権利が与えられる相当物の十分な範囲と共に添付された特許請求の範囲の用語によってのみ限定するものである。
【0156】
実施例1:MC4R折畳み変異体を発現する細胞株の生成
いくつかのMC4R変異体がMC4Rのコンフォメーション的な欠損をもたらすかどうか決定するために、様々な変異体を含むMC4R核酸を、HEK−293T及びCOS−7細胞へトランスフェクトし、それらの細胞表面の発現及び活性を評価した。細胞表面の発現の減少又は消失が観察される細胞株は、MC4Rポリペプチドの細胞内での存在及び/又は細胞内の位置を決定するために、さらに評価される。
【0157】
方法
MC4R変異体の発生。野生型のMC4RをコードするcDNA(例えば、配列番号1を参照)が当該技術分野で既知の技法(例えば、PCR、部位特異的な変異誘発)を使用して修飾され、ヌクレオチド変化を含む変異体MC4RのcDNAが生じ、これにより例えば、以下のMC4R変異ポリペプチドの1つが得られる:P78L、R165Q、R165W、I125K、C271Y、T11A、A175T、I316L、I316S、I317T、N97D、G98R、N62S、C271R、S58C、N62S、N97D、Y157S、I102S、L106P、L250Q、Y287X、P299H、S58C、コドン211でのCTCT、及び/又はコドン244でのTGAT挿入。そのような変異体は、Blondet et al.(J Biochem (Tokyo) 2004; 135(4):541-6)に記載されるようにGFP等の蛍光タグと融合させるか、又はVanLeeuwenet al.(J. Biol. Chem. 2003; 278: 15935-15940)に記載されるようにFLAGでタグ付けさせるか、又はルシフェラーゼ等の酵素でタグ付けさせてもよい。
【0158】
細胞培養及びトランスフェクション
そのような変異MC4R核酸は、製造者の説明書に従って、適切な発現ベクター(例えば、pCDNA3.1)(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバード)にクローニングされる。細胞のトランスフェクションは、LipofectAMINE(Invitrogen)を使用して遂行され、安定的にトランスフェクションされたクローン細胞株は、ネオマイシンアナログのG418に対する耐性によって選択される。
【0159】
簡潔には、HEK−293T及びCOS−7細胞を、10%ウシ胎仔血清、100単位/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシン(Invitrogen)を追加したダルベッコ変法イーグル培地(グルタミン含有;Invitrogen)中で維持する。細胞を、5%CO2を含む加湿空気中で37℃でインキュベートする。細胞は通常、トランスフェクションした日で70〜80%の密集度である。
【0160】
GFPタグが付けられたMC4R。緑色蛍光タンパク質(GFP)cDNAは、BD Biosciences(カリフォルニア州サンホセ)又はClontech(カリフォルニア州パロアルト)から入手可能である。GFPを、製造者の説明書に従って、C末端の終止コドンを除去したヒトMC4RのC末端にインフレームで融合する。その後、MC4R−GFPキメラ融合タンパク質構築物は上記のようにトランスフェクトされる。ルシフェラーゼ構築物が、同様に用いられる。
【0161】
MC4R変異体の局在性の検出。細胞表面局在性を決定する結合実験は、以前に記述された条件を使用して行なわれる(Yang et al., J Biol Chem 1997; 272: 23000-23010)。簡潔には、2×105cpmの125I−NDP−MSH(Amersham Biosciences、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を、放射性同位元素で標識されていないリガンドのNDP−MSH、AgRP 87−132、又はAgRP 110−117と組み合わせて使用する。結合反応は、培地を除去し0.2%ウシ血清アルブミンを含む最小必須培地で細胞を2度洗浄することで終了させる。その後、細胞を0.2Nの水酸化ナトリウムで溶解し、溶解物中の放射能を分析計数器で定量する。非特異的結合は、10−6Mの非標識リガンドの存在下で、結合した125I標識量の測定によって決定される。さらに、実施例4中に以下で記述されているように、FACSを使用することができる。特異的結合は、結合した放射能の合計から非特異的に結合した放射能を引いて計算する。最大結合(Bmax)は、式Bmax=[NDP−MSH特異的結合]/([NDP−MSH]/(Kd+[NDP−MSH]))を使用して計算することができる。Ki=IC50/1+リガンド濃度/Kd。
【0162】
MC4R変異体に蛍光性のタグを付ける場合、共焦点顕微鏡はタグを付けたMC4Rの細胞内移動をモニタリングするために使用される(Blondet et al., J Biochem 2004;135: 541-546;又はGao et al., J Pharmacol Exp Ther 2003; 307(3):870-7)。簡潔には、細胞は実験前に24〜48時間チャンバーカバーグラス中で増殖させる。適切な処理の後に、細胞を冷PBSにより洗浄し、20分間ホルマリン中で固定し、LSM 510 METAレーザー走査顕微鏡(Carl Zeiss、ニューヨーク州ソーンウッド)で観察した。GFPの蛍光は、488nmのアルゴン/クリプトンレーザーを使用して励起し、500〜550nmのバンドパスフィルターで検出した。赤色のシグナルは、543nmのHeNeレーザーで励起し、蛍光は565〜615のバンドパスフィルターで検出される。
【0163】
デジタルで得た画像を、Scion Image Beta 4.02を使用して定量する。元の緑色蛍光共焦点画像はグレイスケールに変換され、中央値フィルターリングが行なわれる。各々のピクセルは、0(黒色)〜255(白色)にわたる強度値が割り当てられる。細胞表面の蛍光強度及び合計の細胞蛍光強度は、手動で対応する領域を選択した後に測定される。MC4R−GFPの細胞内分布は、細胞表面の蛍光強度と合計の細胞蛍光強度の比率として表現される。比率の減少は受容体の内部移行を示す。
【0164】
これらの方法を使用して、シャペロンを介した補助の候補となる、MC4Rの折畳み変異体が同定される。
【0165】
実施例2:MC4Rアゴニスト及びMC4Rアンタゴニストの構造
可能性のあるMC4Rアゴニスト及びMC4Rアンタゴニストは、公表された特許参照及び参照文献の総説に基づいて選択された(特に、Bednarek及びFong, Exp. Opn. TherapeuticPatents 2004; 14(3): 327-326及び国際公開特許第WO02/062766号)。本明細書において記述された化合物を選択するのに使用される基準は、入手可能であれば、公表されたIC50データ、in vivoの動物データ、及び生体利用率データ(例えば、薬物動態学)を含む。
【0166】
a) 図1のアゴニストの合成(化合物1)
THIQとして知られる、この化合物の選択は、以下のデータに基づいた。
【0167】
【表2】

【0168】
この分子の合成(11工程)は、図3中で示されたスキームに基づいて行なわれた。
【0169】
b) 図2のアゴニストの合成(化合物2)
化合物2と呼ばれる、この既知の化合物の選択は、以下のデータに基づいた。
【0170】
【表3】

【0171】
この分子の合成(11工程)は、図4中で示されたスキームに基づいて行なわれた。
【0172】
c) 図5のアンタゴニストの合成(化合物3)
この化合物は、Arasasingham(J Med Chem 2003, 46: 9-11)によって報告されたαMSH/MC4Rデータに基づいて選択された。この化合物の合成は図7中に要約され、そこに記述された方法に従って行なわれた。
【0173】
d) 図6のアンタゴニストの合成(化合物4)
この化合物は、Millennium PharmaceuticalsによるPCT国際公開特許第WO02/062766号中に記述されるデータ及び合成法に基づいて、選択及び合成され、合成スキームは図8中に要約される。この化合物の生物活性は、シンチレーション近接解析を使用して、国際公開特許第WO02/062766号中に報告されている。
【0174】
簡潔には、合成は以下の方法を使用して達成された。1,3−ジアミノプロパン(Acros、27.7g、0.374mmol)を、1,2−ジクロロベンゼン(Acros、200ml)中のチオサリチル酸(Acros、20g、0.130mmol)に加え、この混合物を4時間170℃まで加熱する。60℃への冷却に際して、メタノール(50ml)を加え、反応物は室温で一晩撹拌し、生成した黄色の結晶性固体を回収しエーテルで洗浄し、9gの純生成物を得た。
【0175】
2−メトキシ−5−ニトロベンジルブロマイド(Fluka、1.86g、7.559mmol)を、室温でメタノール(60ml)中の2−(1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)ベンゼンチオール(1g、5.201mmol)へ加え、濃縮のため12時間維持し、エーテル(10ml)を加え、生成した淡黄色の針状物を回収し、エーテルで洗浄し、1.28gの純生成物を得た。
【0176】
実施例3:低温又は化学的なシャペロンの使用による、誤って折畳まれたMC4Rの補助
低温(熱による補助)及びDMSOのような一般的な化学的シャペロンの両方が変異タンパク質の折畳みを修復することが知られているので、野生型MC4R及び様々なMC4Rの折畳み変異体の細胞表面の発現が、WT MC4R及び変異MC4Rを有する細胞で評価され、それらの細胞は30℃で又は1%DMSOと共に培養された。
【0177】
方法
細胞及びトランスフェクション。HEK293細胞を、3HA及びVenus(増強黄色緑色蛍光タンパク質;EYFP)の二重タグを付けた、野生型(WT)hMC4R又はS58C;N62S;R165W;R165Q、及びP299HのhMC4R変異体で一時的にトランスフェクションした。
【0178】
低温分析。WT細胞及びトランスフェクションされた細胞を、MC4R細胞表面の発現評価の前に、12時間、30℃又は37℃でインキュベートした。増加は以下を使用して決定した:
増加=[(30℃での表面の発現%−37℃での表面の発現%)/37℃での表面の発現%]×100。
【0179】
化学的シャペロン分析:WT細胞及び一時的にトランスフェクションされた細胞を、MC4R細胞表面の発現評価の前に、12時間、1%DMSOが存在するか又は存在しない状態でインキュベートした。
【0180】
FACS分析。FACS分析は、抗HA.11一次抗体(マウス、1:1000の希釈)、及びAlexa647を結合した二次抗体(ヤギ抗マウス、1:1000希釈)希釈物により細胞を蛍光標識した後に行なった。生細胞(ヨウ化プロピディウム陰性)を、以下の関連する2つの集団へ選別した。
P4:YFP陽性細胞の合計(MC4R発現の合計の代表)
P5:YFP及びAlexa647の両方に対して陽性の細胞のパーセント(Alexa及びYFP陽性細胞)/(YFP陽性細胞+Alexa及びYFP陽性細胞)(細胞表面の発現の代表)
【0181】
結果
MC4Rの細胞表面の発現。WT細胞の表面の発現のうちの基礎的な表面の発現は90%に達する。変異体のどれも、125I標識NDP−α−MSHの結合によって検出されるような細胞表面上のMC4Rを発現しなかった(データ示さず)。FACSによって分析した場合、WT MC4Rでトランスフェクションした細胞と比較すると、すべての変異体は表面の発現の有意な減少を示した(データ示さず)。WT 3HA−hMC4R−Venus細胞の約90%は、MC4R(P5)の表面の発現を示したが、変異体での基礎的な表面の発現は、N62S、R165W、R165Q、及びP299Hについては12%〜18%の間であった。S58Cは約40%の表面の発現を示す。
【0182】
熱による補助。5つの変異体はすべて、表2において以下のように、MC4R(P5)の細胞表面の発現の増加を示した。
【0183】
【表4】

【0184】
化学的なシャペロン:細胞表面の発現の有意な促進は、1%のDMSOの存在下では検出されなかった。
【0185】
実施例4:MC4R薬理学的シャペロンの使用による、誤って折畳まれたMC4Rの補助
図5(化合物3)及び図6(HBr塩;化合物4)中にそれぞれ示されたMC4Rアンタゴニスト化合物は、S58C;N62S;R165Q;Rl65W;及びP299HのMC4R変異体を有する細胞でのシャペロン活性について評価された。
【0186】
方法
薬理学的シャペロン分析。簡潔には、上記の各々のMC4R変異体(実施例3中に記述されているようにトランスフェクションされた)を持つ細胞を、1.0μM及び10μMの濃度でアンタゴニスト化合物の各々と共に12時間培養し、上記されるような蛍光励起細胞分取分析を使用して、MC4Rの細胞表面の発現について評価した。細胞表面の発現レベルは、処理及び基礎的条件で比較される。増加パーセントは以下に従って決定される:増加=[(表面の発現(処理有り)%−表面の発現(処理無し)%)/表面の発現(処理無し)%]×100。
【0187】
MC4R活性の分析。Molecular Devices(全細胞分析;カタログ番号R8044)からのCatch Point cAMP蛍光分析キットを使用して、各々のアンタゴニストの存在下又は非存在下で、cAMPの蓄積を、MC4RアゴニストのNDP−MSH(10−7M)による処理に対するMC4R変異体のS58C、N62S、R165W、及びP299Hについて評価した。対照は、未処理のもの又はNDP−MSHのみを処理されたものであった。
【0188】
結果
薬理学的シャペロンによる補助。下記表3において示されるように、両方のアンタゴニストは、用量依存効果により、1.0μM及び10μM濃度の両方で、MC4R変異体のR165W、S58C、及びR165Qの表面の発現を増加させることができた。上に示されるように、変異体における基礎的な表面の発現は、N62S、R165W、R165Q、及びP299Hについては12%〜18%の間であった。S58Cは約40%の表面の発現を示す。予想外に、10μMの各々の化合物の処理により、野生型MC4Rを発現する細胞と同一のレベルまで、MC4R R165Wの細胞表面の発現を戻すことができた。
【0189】
変異体のN62Sについては、変異MC4Rの細胞表面の発現における有意なパーセント増加は、10μM濃度の両方の化合物で観察されたが、1.0μMではいずれの化合物でも効果は見られなかった。図5において示された化合物はより効力があり、すなわち、図6において示される化合物でよりも、多くの細胞表面の発現が観察された。
【0190】
変異体のP299Hについては、図6において示される化合物は、1.0μM又は10μMのいずれも変異受容体の細胞表面の発現の回復に効果がなく、図5において示される化合物10μMで、わずかな効果のみが観察された。
【0191】
【表5】

【0192】
これらの結果は、細胞表面の発現を回復させるように薬理学的シャペロンとして作用するMC4Rアンタゴニストが低濃度で接触した場合、MC4Rの折畳み変異体を「助ける」ことができることを実証する。
【0193】
最後に、Pedemonte et al., J Clin. Inves. 2005; 115: 2564-71に記述されていたビスアミノチアゾール化合物(図9)は、変異体のS58C(31.25%の増加)及びR165W(28.95%の増加)に対するわずかな効果を実証した。
【0194】
MC4R活性。図11中に示されるように、MC4Rを介するシグナル伝達の回復は、10μMの両方のアンタゴニストによる処理の後に、S58C及びR165WにおいてhMC4R WTと同一の程度まで観察された。MC4R変異体のN62Sにおいても、シグナル伝達能力はより少ない程度に回復した。P299Hの変異がGタンパク質結合に対して必要なドメイン中にあるので、予想通りに、シグナル伝達はP299Hにおいて回復されなかった。
【0195】
実施例5:変異MC4Rの安定性及び活性を回復させるか、又は野生型MC4Rの安定性を増加させるMC4Rシャペロンのためのスクリーニング
本実施例は、MC4Rの誤って折畳まれた変異体若しくは野生型の細胞表面発現及び/又はMC4Rの活性の増強ためのMC4Rシャペロン化合物に対するスクリーニング方法を記述する。
【0196】
方法
変異体MC4R又は野生型MC4Rのトランスフェクション。実施例1において記述されるように、折畳み/輸送MC4R変異体の同定が達成される。そのような折畳みの変異MC4R及び/又は野生型MC4Rのトランスフェクションは、上記されるように、又はELISAのようなイムノアッセイ及びFACS分析を含む、タンパク質の細胞表面の発現検出のための当該技術分野において既知の任意の方法の使用によって達成される。
【0197】
シャペロン投与。様々な濃度のシャペロン試験化合物をMC4R野生型発現細胞又は折畳み変異型発現細胞の培養物又はアレイに加える。それから、細胞表面に輸送されるMC4Rの活性に加えて、MC4Rの細胞局在を求める。例えば、以下のものに記載されるようなピペラジン系化合物、ピペリジン系化合物、1,4−ジアザパン系化合物、グアニジン系化合物、又は他の試験化合物をスクリーニングする:Bednarek及びFong, Exp Opn Ther Patents 2004;14: 327-36; Ujjainwalla et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2003; 13: 4431-4435、国際公開特許第WO03/07949号、国際公開特許第WO03/61660号、国際公開特許第WO03/09847号、国際公開特許第WO03/09850号、国際公開特許第WO03/31410号、国際公開特許第WO03/94918号、国際公開特許第WO03/68738号、国際公開特許第WO03/92690号、国際公開特許第WO03/93234号、国際公開特許第WO03/72056号、国際公開特許第WO03/66597号、国際公開特許第WO03/66587号、国際公開特許第WO03/53927号、国際公開特許第WO02/67869号、国際公開特許第WO02/68387号、国際公開特許第WO03/68738号、国際公開特許第WO02/00259号、国際公開特許第WO02/92566号、国際公開特許第WO02/81443号、国際公開特許第WO02/81430号、及び国際公開特許第WO02/80896号。
【0198】
細胞表面へのMC4Rの輸送の検出。化合物で処理したMC4R発現細胞の細胞における局在性及び/又は細胞表面の局在性の検出が、未処理の細胞と比較して、上記されるように達成される。
【0199】
cAMP蓄積の測定によるMC4R活性の検出。トランスフェクションの48時間後に、細胞をPBSで1回洗浄し、その後0.02%EDTA(Sigma)を含むPBSでプレートから剥がした。剥がした細胞を遠心分離によって採取し、0.5mMのIBMX、2mMのHEPES(pH7.5)(IBMX緩衝液)を含むハンクス平衡塩溶液(Invitrogen)で再懸濁する。IBMXの取り込みを可能にする15分間37℃のインキュベーション後に、0.4mlの細胞懸濁液(約5×105細胞/ml)を、様々な濃度のアゴニスト(例えば、[Nle4−D−Phe7]−MSH(NDP−MSH)、α−MSH)を含む0.1mlのIBMX緩衝液、又は他のシャペロン候補又は10μMのホルスコリンに加える。続いて、cAMP蓄積を可能にするために15分間37℃で、細胞をインキュベートする。5%トリクロロ酢酸を0.5ml加えることによって活性を終了させ、溶解細胞から放出されたcAMPをcAMP 125Iシンチレーション近接解析システム(Amersham Biosciences)によって分析する。EC50値は、GraphPad Prismソフトウェア(勾配変化のある法面によるシグモイド用量応答曲線を適合させた非線形回帰分析を使用)を使用して、95%の信頼区間で計算する。
【0200】
実施例6:α−ガラクトシダーゼAの酵素活性の安全性、耐容性、薬物動態学及び効果を評価するための単回用量DGJの投与
本実施例は、健康なボランティアにおけるDGJの安全性、耐容性、薬物動態学、及びα−ガラクトシダーゼA(α−Gal A)の酵素的活性効果を評価するためのDGJの1日2回の経口投与の無作為二重盲検プラセボ対照第I相試験を記述する。
【0201】
試験計画及び継続期間。この試験は、経口投与後のDGJの安全性、耐容性、薬物動態学、及びα−Gal Aの酵素的活性効果を評価するための、ヒト初投与単一施設第I相無作為二重盲検1日2回用量プラセボ対照試験である。この試験は、7日間連続して50mg又は150mgの用量のDGJ又はプラセボを1日2回、経口で投与された8人の被験体(6人は活性物及び2人はプラセボ)の2つのグループを検査し、7日間の追跡訪問が付随した。被験体を、投薬前14時間から投薬後24時間まで処理施設に収容した。食事はスケジュールによって制御され、被験体は薬剤投与4時間後に歩行可能な(abulatory)ままであった。
【0202】
1日目及び7日目の血漿中のDGJについて、薬物動態パラメーターを計算した。さらに、尿に排泄された(投与の12時間後)DGJの累積率を計算した。投薬が始まる前及びさらに試験中の100時間、150時間、336時間に、白血球(WBC)におけるα−Gal A活性を計算した。
【0203】
試験集団。被験体は、一般社会の構成員から成る19〜50歳(包括的)の健康で、特定の組織に属していない、非喫煙男性ボランティアであった。
【0204】
安全性及び耐容性の評価。安全性は、バイタルサイン、臨床検査パラメーター(血清化学、血液学及び尿検査)、ECG、身体検査の評価によって、及び治療期間の間に有害事象を記録することによって決定された。
【0205】
薬物動態学のサンプリング。投与前、並びに投与0.25時間後、0.5時間後、0.75時間後、1時間後、1.5時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後及び12時間後に、血液サンプル(各々10mL)をEDTAを含む血液採取チューブに回収した。血液サンプルを氷浴で冷却し、できるだけ早く冷却下で遠心分離機にかけた。血漿サンプルを2つの小分けに分割し、分析の間20±10℃で保存した。試験終了時に、サンプルはすべて分析のために、MDSファーマ・サービス(MDS Pharma Services)分析実験室(リンカーン)へ運んだ。DGJの投与後1日目及び7日目に、最初の12時間の腎臓クリアランスを決定するために、各々の被験体からDGJ分析用の尿総排出量を集めた。
【0206】
WBCのα−GAL A酵素活性のサンプリング。投与前並びに投与100時間、150時間、及び336時間後に、血液サンプル(各々10mL)をEDTAを含む血液採取チューブに回収し、WBCを抽出した。上記されるように、サンプルを処理し、WBCのα−Gal A酵素活性レベルを決定した。
【0207】
統計分析。臨床検査評価、健康診断、有害事象、ECGモニタリング及びバイタルサイン評価を含む安全性データは、処理グループ及び回収の時点によって要約された。記述的統計(相加平均、標準偏差、中央値、最小及び最大)も、ベースラインに対する差と同様に、定量的安全性データのために計算された。頻度数は質的安全性データの分類のために収集された。
【0208】
有害事象は、MedDRAバージョン7.0ディクショナリーを使用してコードされ、有害事象が報告される被験体数及び報告された有害事象数に対する処理によって要約された。報告者が用いた(verbatim)用語、コードされた用語、処理グループ、重症度、及び処理との関係を含む、被験体による有害事象データのリストが提供された。併用薬及び病歴を処理によりリストした。
【0209】
薬物動態パラメーターは、記述的統計(相加平均、標準偏差、変動係数、サンプルサイズ、最小、最大及び中央値)を使用して、処理グループにより要約された。
【0210】
結果
プラセボ処理した被験体では有害事象(AE)はなく、DGJ 50mgを1日2回又はDGJ 150mgを1日2回を投与された後にAEを示した被験体はなかった。用量50mgを1日2回及び150mgを1日2回、健康な男性被験体のこのグループに投与したとき、DGJは安全であり十分に許容されるように思われた。
【0211】
投与後に、臨床検査の正常範囲からの偏差が生じたが、どれも臨床的有意であるとは判断されなかった。試験経過を通じて調べられた任意のパラメーターの中に、臨床的に関連する平均データの移行はなかった。臨床的に関連する異常は、いかなるバイタルサイン、ECG、又は身体検査パラメーター中にも生じなかった。
【0212】
薬物動力学的評価。以下の表は、試験の間に得られた薬物動態学のデータを要約する。
【0213】
【表6】

【0214】
DGJの薬物動態学は、すべての被験体及びすべての用量レベルで十分に特徴付けられた。平均では、ピークの濃度は、すべての用量レベルでおよそ3時間で生じた。用量を50mgから150mgに増加した場合、DGJのCmaxは用量に比例する様式で増加した。
【0215】
平均の排出半減期(t1/2)は、1日目に、50mg及び150mgの用量レベルにおいては同等だった(2.5時間対2.4時間)。
【0216】
投与後12時間の間にわたって排泄されたDGJの平均のパーセンテージは、50mg及び150mgの用量レベルで、1日目にそれぞれ16%及び42%であり、7日目にそれぞれ48%及び60%まで増加した。
【0217】
α−ガラクトシダーゼA(α−Gal A)酵素活性。試験の間に得られたα−Gal A酵素活性データを図1中に示す。DGJは、1日2回の50mg又は1日2回の150mgの用量で、被験体におけるWBCのα−Gal A酵素活性を阻害しなかった。さらに、健康なボランティアにおいて、DGJはWBCのα−Gal A活性の用量依存的な増加傾向を引き起こした。α−Gal A酵素活性は、プラセボ、1日2回の50mgのDGJ、及び1日2回の150mgのDGJを投与した被験体のWBCで測定した。プラセボはWBCのα−Gal A酵素活性に効果がなかった。プラセボに反応した酵素活性の変化は、臨床的に有意ではなかった。1日2回の50mgのDGJ及び1日2回の150mgのDGJの両方は、正規化されたWBCのα−Gal A酵素活性を増加させた。1日2回の50mgのDGJに応じて、WBCのα−Gal A酵素活性は、投与後100時間、150時間、及び336時間で、それぞれ投与前レベルの120%、130%、及び145%まで増加した。1日2回の150mgのDGJに応じて、WBCのα−Gal A酵素活性は、投与後100時間、150時間、及び336時間で、それぞれ投与前レベルの150%、185%、及び185%まで増加した。
【0218】
本発明は、本明細書において記述された具体的な実施形態による範囲で限定するものではない。実際は、本明細書において記述されるものに加えて、本発明の様々な修飾は、上述の説明及び添付の図から当業者に明らかになるだろう。そのような修飾は、添付された請求項の範囲内にあるように意図される。
【0219】
特許、特許出願、出版物、製品説明、及びプロトコルを、本出願の全体にわたって引用し、すべての目的のために、それらの開示の全体を参照により本明細書において援用する。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】Sebhat(2002, J Med Chem, 45, 4589-4593)によって報告された、ラット及びヒトのメラノコルチン4受容体のアゴニスト(化合物1)を示す図である。
【図2】Richardson(2004, J Med Chem 47, 744-755)によって報告された、ヒトMC4Rのアゴニスト(化合物2)を示す図である。
【図3】化合物1の合成スキームを示す図である。
【図4】化合物2の合成スキームを示す図である。
【図5】Arasasingham(2003, J Med Chem 46, 9-11)によって報告された、MC4Rのアンタゴニスト(化合物3)を示す図である。
【図6】MC4Rのアンタゴニスト(化合物4)を示す図である。この化合物の生物活性はシンチレーション近接解析を使用して、国際公開特許第WO02/062766号で報告される。
【図7】化合物3の合成スキームを示す図である。
【図8】化合物4の合成スキームを示す図である。
【図9】Pedemonte et al.(J. Clin. Inves. 2005; 115:2564-71)に記述された、ビスアミノチアゾール化合物(化合物5)を示す図である。
【図10A】以下に記述される化合物6〜11を示す図である。
【図10B】以下に記述される化合物12〜16を示す図である。
【図10C】以下に記述される化合物17〜20を示す図である。
【図10D】以下に記述される化合物21〜25を示す図である。
【図11】リガンドアゴニストで処理したMC4R変異体、アンタゴニストシャペロンで処理したMC4R変異体、及びアンタゴニストシャペロンで処理しなかったMC4R変異体におけるMC4Rシグナル伝達分析を示す図である。
【図12】50mgの1−デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)を1日2回(三角)、150mgのDGJを1日2回(四角)又はプラセボ(白丸)を投与された、正常で健康なボランティアからの白血球における、平均α−ガラクトシダーゼA活性を示す図である。
【図13】化合物1、2、6、7及び12〜17に基づいた化合物クラスの構造を示す図である。
【図14】化合物3、9、10、11及び21に基づいた化合物クラスの構造を示す図である。
【図15】化合物4、8、24及び25に基づいた化合物クラスの構造を示す図である。
【図16】化合物18〜20に基づいた化合物クラスの構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MC4Rポリペプチドの活性を促進する方法であって、MC4Rを発現する細胞を、MC4R活性を増加させるのに有効な量で、MC4Rポリペプチドに結合する薬理学的シャペロンと接触させることを含む方法。
【請求項2】
前記MC4Rポリペプチドが、野生型MC4Rポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MC4Rポリペプチドが、配列番号2、配列番号4、配列番号6、及び配列番号8から成る群から選択される配列を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記MC4Rポリペプチドが、変異体MC4Rポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記変異体MC4Rポリペプチドが、MC4Rポリペプチドの誤った折畳みに関連した変異を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記変異体MC4Rポリペプチドが、P78L、R165Q、R165W、I125K、C271Y、T11A、A175T、I316L、I316S、I317T、N97D、G98R、N62S、C271R、S58C、N62S、N97D、Y157S、I102S、L106P、L250Q、Y287X、及びP299Hから成る群より選択される変異を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記変異体MC4Rポリペプチドが、R165Q、R165W、S58C、N62S、又はP299Hである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記薬理学的シャペロンが、MC4Rアンタゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記MC4Rアンタゴニストが、図5又は図6の中に示される構造を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記MC4Rポリペプチドが機能的なコンフォメーションへ折畳まれるように、前記薬理学的シャペロンが該MC4Rポリペプチドに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薬理学的シャペロンによって促進された活性が、アデニリルシクラーゼの活性化である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
MC4Rポリペプチドの細胞表面の発現を促進する方法であって、MC4Rを発現する細胞を、MC4R細胞表面の発現を増加させるのに有効な量で、MC4Rポリペプチドに結合する薬理学的シャペロンと接触させることを含む方法。
【請求項13】
前記MC4Rポリペプチドが機能的なコンフォメーションへ折畳まれる場合に、前記薬理学的シャペロンが該MC4Rポリペプチドから分離する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記MC4Rポリペプチドが、野生型MC4Rポリペプチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記MC4Rポリペプチドが、配列番号2、配列番号4、配列番号6、及び配列番号8から成る群から選択される配列を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記MC4Rポリペプチドが、変異体MC4Rポリペプチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記変異体MC4Rポリペプチドが、前記MC4Rポリペプチドの誤った折畳みに関連した変異を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記変異体MC4Rポリペプチドが、P78L、R165Q、R165W、I125K、C271Y、T11A、A175T、I316L、I316S、I317T、N97D、G98R、N62S、C271R、S58C、N62S、N97D、Y157S、I102S、L106P、L250Q、Y287X、及びP299Hから成る群より選択される変異を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記変異体MC4Rポリペプチドが、R165Q、R165W、S58C、N62S、又はP299Hである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記薬理学的シャペロンが、MC4Rアンタゴニストである、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記MC4Rアンタゴニストが、図5又は図6の中に示される構造を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
MC4Rポリペプチドの安定性の増加を必要とする個体を治療する方法であって、該MC4Rポリペプチドに結合する薬理学的シャペロンを、安定性を増加させるのに有効な量で、個体に投与することを含む方法。
【請求項23】
前記薬理学的シャペロンが、図5又は図6の中に示される構造を有するMC4Rアンタゴニストである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記薬理学的シャペロンが、前記MC4Rポリペプチドの細胞膜への輸送を増加させる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記個体が、肥満又は肥満になることに対するリスクがある、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記個体が、肥満に関連するMC4R遺伝子における変異を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記薬理学的シャペロンが、薬学的に許容可能なキャリア中で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記MC4Rポリペプチドが、野生型MC4Rポリペプチドである、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記MC4Rポリペプチドが、変異体MC4Rポリペプチドである、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
MC4Rのための薬理学的シャペロンを同定する方法であって、
(a)MC4Rポリペプチドへの試験化合物の結合を可能にする反応混合物の条件で、該MC4Rポリペプチドを発現する細胞又は細胞抽出液を含む反応混合物に試験化合物を接触させること、
(b)前記試験化合物の存在下で、前記反応混合物中の前記MC4Rポリペプチドの安定性、活性、又は細胞表面の局在性を検出すること、並びに
(c)前記試験化合物の存在下における前記MC4Rポリペプチドの安定性、活性、又は細胞表面の局在性を、該試験化合物の非存在下におけるMC4Rポリペプチドの安定性、活性、又は細胞表面の局在性と比較すること
を含み、ここで該試験化合物の非存在下と比較して、該試験化合物の存在下において、促進された安定性、活性又は細胞表面の局在性の検出により、該試験化合物が該MC4Rのための薬理学的シャペロンであることが示される方法。
【請求項31】
前記MC4Rポリペプチドが、野生型MC4Rポリペプチドである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記MC4Rポリペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記MC4Rポリペプチドが、変異体MC4Rポリペプチドである、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記MC4Rポリペプチドが、該MC4Rポリペプチドの誤った折畳みに関連した変異を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
配列番号2に示される前記野生型のMC4Rポリペプチド配列に対して、前記MC4Rの誤った折畳みの変異が、P78L、R165Q、R165W、I125K、C271Y、T11A、A175T、I316L、I316S、I317T、N97D、G98R、N62S、C271R、S58C、N62S、N97D、Y157S、I102S、L106P、L250Q、Y287X、P299H、及びS58Cから成る群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記反応混合物が、細胞に基づく、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記反応混合物が、無細胞系である、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞表面にあるMC4Rポリペプチドの活性を検出することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
検出された前記活性が、cAMP活性化である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記薬理学的シャペロンが、図13の中に示される構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記薬理学的シャペロンが、図14の中に示される構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記薬理学的シャペロンが、図15の中に示される構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記薬理学的シャペロンが、図16の中に示される構造を有する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−67626(P2013−67626A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−243680(P2012−243680)
【出願日】平成24年11月5日(2012.11.5)
【分割の表示】特願2008−514960(P2008−514960)の分割
【原出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(507170099)アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド (21)
【出願人】(508155929)ユニヴェルシテ ドゥ モントリオール (2)
【Fターム(参考)】