説明

肥満症罹患患者を治療するための経口用医薬組成物

本発明は肥満症罹患患者を治療するための経口用医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
オルリスタットは以下の式で表される治療用抗肥満薬に属する有効成分の一つである。
【化1】

【0002】
オルリスタットは肥満度指数(body mass index(BMI))が30 kg/m2以上の肥満症罹患患者、又は関連する危険因子を持つBMIが28 kg/m2以上の肥満患者を治療するために低カロリー食事療法と併せて投与される。
【0003】
オルリスタットは技術的観点から見ると、安定性にいくらか問題がある物質である;この点について、有効成分オルリスタットは融点が低く(約44℃)、水や湿気の存在下で急速に加水分解される。ICH条件下(25℃、相対湿度65%)での原材料の安定性試験では7日間の保存後、15%の有効成分の分解が見られる。
【0004】
さらに、分解は温度と直接比例している;温度40℃及び相対湿度75%では分解は40%を超える。
【0005】
前述の分解を克服するため、1984年6月18日に出願された米国特許第4,598,089号に記述されたように、ソフトカプセル中の処方が開発された。この特許では有効成分がトリグリセリド混合物NEOBEE M-5に溶解され、その後ソフトゼラチンカプセル中に配合された。
【0006】
その後、1998年1月6日に出願された米国特許第6,004,996号には、湿度を調節でき且つオルリスタットを分解できない安定剤を賦形剤として含有する顆粒/丸薬における処方が記述された。この処方は希釈剤、界面活性剤及び崩壊剤等の賦形剤を含有する。
【0007】
1999年8月10日に出願された米国特許第6,358,522号には、増粘剤や乳化剤と共にオルリスタットを含む粉末やチュアブル錠の形での処方が記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,598,089号
【特許文献2】米国特許第6,004,996号
【特許文献3】米国特許第6,358,522号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は石油から得られた飽和炭化水素混合物に可溶化されたオルリスタットに基づく製剤処方に関する。これらの物質は新油性のため水を含まず、そのためオルリスタットは容易にその中に可溶化される。その後、得られたオルリスタット溶液にイオン性、非イオン性、又は両性界面活性剤を添加する。
【発明の効果】
【0010】
驚くべきことに、こうして得られた処方製剤は優れたin vitro溶解特性を示し、安定であることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は有効成分としてオルリスタットを含む肥満症治療のための高度に安定な医薬品に関する。
【0012】
オルリスタットは、石油から得られた製薬上許容可能な飽和炭化水素混合物中に、有効成分対溶媒比が1:0.5〜1:10、好ましくは1:1〜1:2で可溶化される。
【0013】
適した鉱油はパラフィン油、軽パラフィン油、ヨーロッパ薬局方に記載されているLiquid Paraffin及びParaffin Light Liquidである。ヨーロッパ薬局方に記載されているParaffin Hard製品も蝋状のコンシステンシーを有しているものの、単独でも又は他のパラフィン系オイルと混合された状態でも、オルリスタットを可溶化するのに優れた能力を持つ。
【0014】
鉱油Paraffin Liquidの相対密度は0.82〜0.89である。
【0015】
鉱油Paraffin Light Liquidの相対密度は0.810〜0.875である。
【0016】
製品Paraffin Hardの融点は50〜61℃である。
【0017】
石油から得られた飽和炭化水素混合物中のオルリスタット溶液には、さらに一種以上のイオン性、非イオン性又は両性界面活性剤が、有効成分対界面活性剤比が1:0.001〜1:1、好ましくは1:0.01〜1:0.05で追加される。
【0018】
適した界面活性剤の例として、ラウリル硫酸ナトリウム、Tween 20、60、80、アルキルアミドベタイン及びリン脂質の、単独で又は混合での使用が挙げられる。本発明の実施に有効な他の界面活性剤として以下のものが挙げられる。マクロゴルグリセロールリシノリエート、マクロゴルグリセロールヒドロキシステアレート、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート81、ポリソルベート85、ラウリルアルコールポリエタノリエート、大豆、トウモロコシ又は卵レシチン、60、70、80、90及び95%ホスファチジルコリン、そして80、90及び100%水素化ホスファチジルコリンへ精製されたレシチン。
【0019】
界面活性剤を含有するパラフィン系オイル中の有効成分溶液はソフトカプセル又はハードゼラチンカプセルの中に入れることができる。
【0020】
本発明のいくつかの純粋な実施例を、調製した製品の相対溶解度及び安定性データと共に以下に記述する。
【実施例1】
【0021】
ソフトカプセル
有効成分:
オルリスタット 120,000 mg
フィルの賦形剤:
軽パラフィン油 280,140 mg
ラウリル硫酸ナトリウム 2,805 mg
シェルの賦形剤:
ゼラチン 132,800 mg
グリセロール 77,200 mg
二酸化チタン 6,200 mg
カプセルの特性: 10 oval D
調製方法
フィルの調製
0.350 kgの軽パラフィン油をステンレス鋼容器に入れ、回転式パドルでゆっくり撹拌しながら、0.0035 kgのラウリル硫酸ナトリウムを添加した。界面活性剤が完全に溶解するまで撹拌し続けた。こうして得られた溶液にオルリスタット(0.15 kg)を添加し、完全に溶解するまでゆっくり撹拌した。
【0022】
こうして得られた溶液を脱気し、真空下に保持した。
【0023】
シェルの調製
9.41 kgの純水を、加熱ジャケット及び撹拌機を装備した容器に入れ、温度を80℃に調整した。
【0024】
激しく撹拌しながらグリセロール(6.76 kg)及びゼラチン(12.65 kg)を暖めた水に添加し、完全に溶解させた。
【0025】
こうして得られたゼラチン/グリセロール/水溶液は温度80℃に調整しながら、真空下に保持した。
【0026】
次いで、強力撹拌機でグリセロール(0.59 kg)中に二酸化チタン(0.59 kg)を分散させることによって調製した着色料をこの溶液に添加した。
【0027】
グリセロール中の二酸化チタン分散液を、ゼラチン/グリセロール/水溶液に温度を常に80℃に維持しながら着色料が分散するように添加した。
【0028】
カプセル化
カプセル化装置を使用して、二つの適切なホッパーの中にコーティング剤を入れ、コーティングを形成させるように60℃でラミネーターを通過させた。
【0029】
適切なローラーを通してシートを成形し、403.0 mgのオルリスタット溶液を二つのゼラチンシートの間に適切な注入針で注入した。
【0030】
乾燥
こうして調製されたカプセルを回転式乾燥管内に入れ、予備乾燥した後、1〜2日間、21〜22℃及び相対湿度20%の温度管理戸棚の適したラックの上に置いた。
【0031】
溶解度試験
in vitroで次の方法に従って溶解プロファイルを明らかにした:
・方法:USP
・装置:Paddle II
・溶媒:リン酸バッファー pH 6.9
・容量:900 ml
・回転速度:100 回転/分
・温度:37℃
【表1】

【0032】
ソフトカプセル中のオルリスタットを基にした製剤を25℃相対湿度60%、30℃相対湿度70%、そして40℃相対湿度75%条件下でICH安定性試験にかけ、優れた有効成分の安定性を示した。
【0033】
有効成分の力価は、移動相として70:30メタノール:水を使用し、Lichrosphere RP8カラム125x4mm、5mcm(Merck)、波長210 nmでHPLC Diode Array MD1510を用いた分析で測定した。
【表2】

【実施例2】
【0034】
ソフトカプセル
有効成分:
オルリスタット 120,000 mg
フィルの賦形剤:
パラフィン油 263,000 mg
Tween 80 20,000 mg
カプセルの賦形剤:
ゼラチン 132,800 mg
グリセロール 77,200 mg
酸化鉄 6,200 mg
カプセルの特性: 10 oval D
調製方法
フィルの調製
パラフィン油(0.263 kg)を計量し、ステンレス鋼容器に入れ、回転式パドルでゆっくり撹拌しながら、Tween 80(0.020 kg)を添加し溶解した。界面活性剤が完全に溶解するまで撹拌し続けた。
【0035】
こうして得られた溶液にオルリスタット(0.12 kg)を添加し、ゆっくり撹拌しながら溶解した。
【0036】
こうして得られた溶液を脱気し、真空下に保持した。
【0037】
カプセルの調製
9.41 kgの純水を、加熱ジャケット及び撹拌機を装備した容器に入れ、温度を80℃に調整した。
【0038】
こうして加熱した水に、激しく撹拌しながらグリセロール(6.76 kg)及びゼラチン(12.65 kg)を加え溶解した。
【0039】
このようにして得られたゼラチン/グリセロール/水溶液は真空下に保持し、温度は80℃に調整した。
【0040】
強力撹拌機で酸化鉄(0.59 kg)をグリセロール(0.59 kg)中に分散させることによって調製した着色料をこの溶液に添加した。
【0041】
グリセロール中の酸化鉄分散液を、ゼラチン/グリセロール/水溶液に温度を80℃に維持しながら着色料が分散するように添加した。
【0042】
カプセル化
カプセル化装置を使用して、二つの適切なホッパーの中にコーティング剤を入れ、コーティングを形成させるように60℃でラミネーターを通過させた。
【0043】
適切なローラーを通過させてシートを成形し、403.0 mgのオルリスタット溶液を二つのゼラチンシートの間に適切な注入針で注入した。
【0044】
乾燥
既に調整されたカプセルを回転式乾燥管内に入れ、予備乾燥した後、1〜2日間、21〜22℃及び相対湿度20%の温度管理戸棚の適したラックの上に置いた。
【実施例3】
【0045】
ハードゼラチンカプセル
有効成分:
オルリスタット 120,000 mg
賦形剤:
Paraffin Liquid 100,000 mg
Paraffin Hard 60,000 mg
ホスファチジルコリン(80) 20,000 mg
カプセル:サイズ00乳白色、平均質量118 mg±7.0 mg
調製方法
調製
Paraffin Liquid(10.000 kg)及びParaffin Hard(6.000 kg)を計量し、ステンレス鋼容器に入れ、回転式パドルでゆっくり撹拌しながら、温度70℃で融解させた。そしてホスファチジルコリン(2.000 kg)を添加し融解させた。温度を30℃に調整しながら、ホスファチジルコリンが完全に溶解するまで撹拌を続けた。
【0046】
こうして得られた溶液にオルリスタット(12.00 kg)を添加し、ゆっくり撹拌しながら溶解した。
【0047】
カプセル化
液体分注能を備えたハードカプセル充填機を使用して、液体を、サイズ00、フィルが質量300 mg/cpsになるように、ハードゼラチンカプセル中に分注した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油から得られた製薬上許容可能な飽和炭化水素混合物で可溶化されたオルリスタットを有効成分として含み、かつ一種以上の界面活性剤を含むことを特徴とする、肥満症罹患患者治療のための経口用医薬組成物。
【請求項2】
飽和炭化水素混合物がパラフィン油又は軽パラフィン油である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
飽和炭化水素混合物がヨーロッパ薬局方で特定される製品Paraffin Light Liquid(相対密度0.810〜0.875)である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
飽和炭化水素混合物がヨーロッパ薬局方で特定される製品Paraffin Liquid(相対密度0.82〜0.89)である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
飽和炭化水素混合物がヨーロッパ薬局方で特定される製品Paraffin Hard(融点50〜61℃)である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
飽和炭化水素混合物が、パラフィン油、軽パラフィン油、Paraffin Light Liquid、Paraffin Liquid及びParaffin Hardからなる群から選択される2又は3の製品の、あらゆる可能な量的な組み合わせにおける、様々な割合の混合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
界面活性剤がイオン性、非イオン性又は両性である、単独の界面活性剤又は混合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウム単独又は他の界面活性剤との混合物である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
界面活性剤がTween 20、60、80群及びそれらの混合物から選択される請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
界面活性剤がアルキルアミドベタイン群及びそれらの混合物から選択される請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
界面活性剤又は界面活性剤混合物が、マクロゴルグリセロールリシノリエート、マクロゴルグリセロールヒドロキシステアレート、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート81、ポリソルベート85、ラウリルアルコールポリエタノリエート、大豆、トウモロコシ又は卵レシチン、60、70、80、90及び95%ホスファチジルコリン、そして80、90及び100%水素化ホスファチジルコリンへ精製されたレシチンからなる群より選択される請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
ソフトカプセルに封入された請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ハードゼラチンカプセルに封入された請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
オルリスタットと、溶媒として働く飽和炭化水素混合物の比が1:0.5〜1:10である請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
オルリスタットと、溶媒として働く飽和炭化水素混合物の比が1:1〜1:2である請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
有効成分溶液対界面活性剤の比が1:0.001〜1:1である請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
有効成分溶液対界面活性剤の比が1:0.01〜1:0.05である請求項15に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−539137(P2010−539137A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524504(P2010−524504)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062165
【国際公開番号】WO2009/034171
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510066455)マダー エス.アール.エル. (1)
【Fターム(参考)】