肥満細胞活性化の阻害用組成物を製造するためのエル・カゼイ株の使用
本発明は、アレルギー及びいくつかの自己免疫疾患のような肥満細胞に関係する慢性又は急性の疾患の予防及び治療の分野に関する。より具体的には、本発明は、エル・カゼイ株及び/又はビー・ブレベ株を含有するプロバイオティクスの、肥満細胞活性化を阻害するための使用に関する。本発明は、該プロバイオティクスを製造するために用いることができる細菌株を同定するためのスクリーニング方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満細胞が関与する慢性又は急性の疾患(例えば、アレルギー疾患及びいくつかの自己免疫疾患)の予防及び治療の分野に関する。より具体的には、本発明は、肥満細胞活性化を阻害するためのプロバイオティクス(probiotics)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満細胞は、アレルギーにおける主要な演者(player)として周知である。アレルギー反応は、主にIgE抗体に依存する。肥満細胞は、高親和性IgE受容体(FcεRI)を発現し、該受容体の一部は、インビボにおいてIgE抗体により占められている。FcεRIは、IgE抗体への多価アレルゲンの結合に際して細胞表面で凝集すると、肥満細胞活性化を導く活性化シグナルを伝達する。活性化された肥満細胞は、種々の炎症性分子を放出及び分泌する。これらには、肥満細胞顆粒に貯蔵された予め形成されていた血管作動性アミン及び酵素(Miller及びPemberton, 2002)、新たに形成された脂質由来のプロスタグランジン、トロンボキサン及びロイコトリエン(Triggianiら, 1995)、新たに転写されたサイトカイン(Galliら, 1991)、成長因子及びケモカイン(Kaplan, 2001)が含まれる。これらのメディエイターは広範囲の生物学的効果を有する。これらは、血管透過性を増大させ、平滑筋の収縮をトリガーし、多数の炎症性細胞を誘引して活性化する。全体として、これらは協力して数分以内に急性反応を生じ、その後数時間内に遅延反応、数日で慢性反応、数カ月で組織リモデリングを生じる。
【0003】
肥満細胞は、IgE受容体だけでなくIgG受容体(FcγR)も発現する(Benhamouら, 1990; Daeronら, 1980)。これらには、活性化受容体(マウスにおけるFcγRIIIA、ヒトにおけるFcγRIIA)及び抑制性受容体(どちらの種でもFcγRIIB)が含まれる。活性化FcγRは、IgG免疫複合体により凝集すると、FcεRIと同じ生物学的応答をトリガーする(Daeronら, 1992; Hazenbosら, 1996; Latourら, 1992)。FcγRIIBは、免疫複合体によりFcεRI又は活性化FcγRと共凝集すると、IgE-又はIgG-誘導肥満細胞活性化をネガティブに調節する(Daeronら, 1995a; Daeronら, 1995b)。最近、自己免疫性関節炎(Leeら, 2002)及び脳炎(Robbie-Ryanら, 2003)のマウスモデルにおいて、肥満細胞が、IgG依存性組織特異的自己免疫性炎症で重要な役割を演じていることが明らかになった。これら病状の臨床上の発現は、実際、肥満細胞欠損マウスでみられなかった。更に、これら疾患の病因は、肥満細胞上の活性化FcγRと抑制性FcγRとの比、及びIgG抗体によるそれらの係合(engagement)に決定的に依存する(Nigrovicら, 2007; Robbie-Ryanら, 2003)。
【0004】
炎症における役割に加えて、肥満細胞は、微生物と相互作用し、病原体に対する防御に貢献していると最近では理解されている。これらは、実質的にすべての組織、特に、外部環境との界面にある組織(皮膚、舌、胃、腸、肺など)に存在する。これらはToll様受容体(TLR)、並びに細菌及び微生物起源の可溶性分子(エンドドキシン、CpGヌクレオチド、ペプチドグリカン及びリポペプチドを含む)との相互作用を可能にする他の受容体を発現する。リガンドが結合すると、これら受容体のほとんどは、これもまた炎症誘導性メディエイターの分泌を導くシグナルを伝達できる(Arockら, 1998)。また、肥満細胞は細菌を食菌することができる(Arockら, 1998)。細菌感染における肥満細胞の防御的役割は、盲腸結紮及び穿孔により誘導された腹膜炎のマウスモデルにおいて劇的に証明された:ほとんどの野生型マウスはこの攻撃後に発症する重篤な腹膜炎を生き延びるが、ほとんどの肥満細胞欠損マウスは死亡する(Shelleyら, 2003; Supajaturaら, 2001)。
【0005】
上記のデータに基づいて、肥満細胞は、現在、自然免疫系の細胞として見られているが、FcRを発現するので、抗体による適応免疫に含まれせることもできる。このように、これらは自然免疫及び適応免疫によく適合し、互いに出会い干渉する。したがって、本発明者らは、肥満細胞における自然免疫と適応免疫の間のクロストーク(cross-talk)の可能性について調べた。具体的には、本発明者らは、プロバイオティクスがIgE-及びIgG-誘導肥満細胞活性化に干渉するかどうか、どのように干渉するかを研究することを選択した。
【0006】
いくつかのプロバイオティクス株は、或る種のアレルギーを含むいくつかの炎症性疾患に対して有益な効果を有することが既に記載されている。しかし、現在までに発表された実験は全て、アレルギー又は他の炎症性疾患に至る免疫応答の誘導に焦点が当てられている。例えば、Kimらは、オボアルブミンによる最初の感作の2週間前に開始した7週間にわたるマウスへのプロバイオティクス細菌の経口投与が、このモデルにおいてアレルギー性応答の誘導を抑制することを記載している(Kimら, 2005)。
【0007】
しかし、アレルギー性応答のような免疫応答は、2つの期、すなわち誘導期と応答期とに分けることができる。現在までに、応答期(肥満細胞の活性化を必要とする)に対するプロバイオティクス株の効果については何も知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
下記の実験の部で例証されるように、発明者らは、驚くべきことに、いくつかのプロバイオティクスが肥満細胞の活性化を阻害でき、そのことにより自己免疫疾患及びアレルギーを含む或る種のヒト炎症性疾患に対する防御効果を有することを証明した。重要なことには、本発明者らが得た結果は、これらプロバイオティクスが、既に感作された対象者又は自己免疫疾患を既に発症した対象者においてさえ、病原性免疫応答を予防することができることを示している。このことは、これらプロバイオティクスについての新たな治療的な可能性を開く。なぜなら、炎症性疾患を既に発症した患者が、下記で説明する本発明により治療され得るからである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
よって、本発明の第1の観点は、肥満細胞活性化の阻害用組成物の製造のための、エル・カゼイ(L. casei)株及び/又はビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)株の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
臨床状況及び投与経路に依存して、本発明により製造される組成物は、IgE-及び/又はIgG-誘導肥満細胞活性化を阻害することができる。よって、これらは、抗原の存在下での抗体による肥満細胞活性化を含む任意の炎症発現を予防、緩和及び/又は治療するために用いることができる。
【0011】
特に、IgE-誘導活性化を阻害する場合、これら組成物は、アレルギー又はアレルギー発現を予防、緩和及び/又は治療するために用いることができる。本明細書で考慮されるアレルギーは、肥満細胞に結合し、特異抗原を認識すると肥満細胞の活性化をトリガーするIgE抗体により引き起こされる。重要なことには、これら組成物は、抗原に対して既に感作された対象者、及び該抗原に対してアレルギー性であると既に診断された対象者においてさえ、アレルギー発現(例えば喘息、鼻炎又は花粉症、アレルギー性皮膚炎、アナフィラキシーショックなど)を予防、治療又は緩和するために用いることができる。例えば、花粉症に長年罹患している人が、本発明により製造される組成物を摂取することにより症状の再発を予防することができる。莫大な数の抗原がアレルギーを引き起こし、アレルギーは多様な臨床症状で現れる。頻繁にアレルギーの原因となる抗原の非限定的な例としては、ダニ(例えばDer p 2)、ゴキブリ抗原、カバノキ花粉(例えばBet V 1)、草本花粉、動物の体毛鱗屑抗原(例えばネコ:Fel d 1)、蜂毒(例えばホスホリパーゼ)のような環境アレルゲン、又は乳(特に牛乳)、ピーナツ、エビ、大豆、卵、穀類製品、果実などの食物アレルゲンが挙げられる。状況及び個体に依存して、臨床症状は局所的(例えばアレルギー性鼻炎、結膜炎又は耳炎がそうである)、領域的(例えば喘息、皮膚炎、胃腸の問題及びクインケ浮腫)、又は全身的(例えばアナフィラキシーショック)であり得る。上記の機構に基づかないが、アレルギーとして不正に定義される病理も時にある。例えば遅延型過敏性反応がそうである。
【0012】
本発明により得られる組成物がIgG誘導肥満細胞活性化を阻害する場合、該組成物は、例えばリウマチ性関節炎、脳脊髄炎、多発性硬化症、水泡性類天疱瘡、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、セリアック病、クローン病、妊娠性類天疱瘡、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン-バレー症候群(GBS、急性炎症性脱髄性多発神経炎、急性持発性多発根神経炎、急性持発性多発神経炎及びランドリー下行性麻痺ともよばれる)、橋本病、持発性血小板減少性紫斑病、川崎病、エリテマトーデス、重症筋無力症、眼球クローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、視神経炎、オード(Ord's)甲状腺炎、天疱瘡、ライター症候群、シェーグレン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られる)及びヴェゲナー肉芽腫症のような自己免疫疾患の予防、緩和又は治療に有利に用いることができる。重要なことには、そして本発明による組成物がこれら疾患の応答期に対して効果を有するので、自己免疫疾患に既に罹患している患者は、これら組成物の利益を享受することができる。抗体による肥満細胞活性化に依存する他の任意の自己免疫疾患も、本発明により得られる組成物により予防又は治療することができる。
【0013】
本発明に従って製造される組成物は、2型糖尿病を予防、緩和及び/又は治療するために用いることもできる。なぜなら、腸フローラに由来するLPSが、最近、2型糖尿病の転帰をもたらし易い慢性炎症を生じると報告されたからである(Caniら, 2007)。
【0014】
好ましい実施形態において、本発明に従って用いられるエル・カゼイ株は、エル・カゼイ亜種パラカゼイ(L. casei ssp. paracasei)であり、例えばCNCM (Collection Nationale de Culture de Microorganismes、25 rue du Docteur Roux, Paris)に、1994年12月30日に番号I-1518で寄託された株である。
別の実施形態において、本発明に従って用いられるビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)株は、CNCMに、1999年5月31日に番号I-2219で寄託された株である。
【0015】
本発明の特定の実施形態によると、エル・カゼイ株を用いて製造される組成物は、食品サプリメント及び/又は機能性食品である。本明細書において、「食品サプリメント」とは、食品に通常使用される化合物からつくられるが、錠剤、散剤、カプセル剤、頓服水剤又は食物とは通常は関連しない他の任意の形態であり、健康に有益な効果を有する製品をいう。「機能性食品」とは、これもまた健康に有益な効果を有する食物である。特に、食品サプリメント及び機能性食品は、疾患、例えば慢性疾患に対して生理的効果(防御的又は治療的)を有し得る。
【0016】
本発明に従って製造される特定の組成物は発酵乳製品である。
本発明に従って得られる組成物は、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属及びストレプトコッカス(Streptococcus)属から選択される少なくとも1種の他の細菌株、例えばストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)及びラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)からなる群より選択される少なくとも1種の細菌株も含むことができる。
【0017】
別の実施形態によると、本発明に従って製造される組成物は医薬品である。
本発明によると、細菌、特にエル・カゼイ細菌は、生存していてもしていなくてもよい細菌全体(whole bacteria)の形態で用いることができる。例えば、照射されたエル・カゼイ全体を用いることができる。或いは、細菌は、細菌溶解液の形態又は細菌画分の形態で用いることができる;この使用に適する細菌画分は、例えばIgE-誘導肥満細胞活性化を阻害する特性を、例えば下記の実験の部に開示されるアッセイの1つを行うことにより、試験することで選択することができる。細菌画分は、鼻及び副鼻腔の粘膜、肺などを標的とする製剤で特に好ましい。
【0018】
好ましい実施形態において、本発明に従って得られる組成物は、肥満細胞と、細菌、細菌溶解液及び/又は細菌画分(おそらく部分的に分解されている)との直接接触を可能にするように処方される。
【0019】
エル・カゼイ及び(より少ない程度ではあるが)ビー・ブレベの肥満細胞活性化の阻害に対する効果は、他の細菌株を用いてもおそらく観察され得る。細菌株(特に既知のプロバイオティクスの細菌株)のライブラリーを、肥満細胞活性化を阻害できる更なる株を同定するためにスクリーニングするべきである。
【0020】
よって、本発明は、肥満細胞活性化(特に抗体による活性化)の阻害用組成物、とりわけアレルギー、自己免疫疾患及び2型糖尿病から選択される疾患の予防、緩和又は治療用組成物を製造するために用いることができる細菌株を同定するスクリーニング方法にも関する。
【0021】
本発明による方法の第1の変形例(第1の方法)によると、上記方法は、以下の工程:
(a)肥満細胞を、スクリーニングする細菌と少なくとも1時間インキュベートする工程;
(b)前記細菌を取り出す任意の工程;
(c)肥満細胞に活性化剤を加える工程;及び
(d)肥満細胞の活性化を測定する工程
を含む。
【0022】
必要であれば、工程b)とc)の間、及び工程c)とd)の間に洗浄工程を行う。
上記方法において、工程(c)で用いられる活性化剤は、例えば、PMA、イオノマイシンのようなカルシウムイオノフォア、LPS、タプシガルジン、予め形成されたIgG/抗原複合体又はこれらの2種以上の混合物であり得る。
【0023】
本発明による方法の第2の変形例(第2の方法)によると、上記方法は、以下の工程:
(a)肥満細胞を、スクリーニングする細菌と少なくとも1時間インキュベートする工程;
(b)前記細菌を取り出す任意の工程;
(c)肥満細胞をIgE抗体とインキュベートする工程;
(d)肥満細胞に特異抗原を加える工程;及び
(e)肥満細胞の活性化を測定する工程
を含む。
再び、必要であれば、上記方法の工程の間に洗浄工程を行うことができる。
【0024】
肥満細胞の活性化は、例えば、下記の実験の部に記載される技術の1つにより、すなわち、肥満細胞により放出されるベータ-ヘキソサミニダーゼ及び/又はTNF-アルファのレベルを測定することにより測定することができる。もちろん、当業者は、他の任意の肥満細胞活性化マーカー、例えばGalliら(Nature immunol. 2005)により記載されるマーカーを用いることもできる。
【0025】
用いる活性化剤の性質及び量に依存して、また測定工程(d)又は(e)で用いる技術にも依存して、肥満細胞は、活性化剤(第1の方法の工程(c)において)又は特異抗原(第2の方法の工程(d)において)と、数分間(例えば5〜30分間)又はより長い時間(数時間まで)インキュベートされる。例えば、肥満細胞顆粒中に存在する化合物(例えばベータ-ヘキソサミニダーゼ)の測定には、数分間のインキュベーションしか要しないが、サイトカイン(例えばTNF-アルファ)を測定する場合には、工程C)のインキュベーションは少なくとも1時間(1〜5時間)継続しなければならない。
肥満細胞により放出又は分泌される他の任意の生成物及び/又は肥満細胞活性化に伴う任意の細胞変化を測定してもよい。
【0026】
図面及び下記の実験の部で本発明をさらに説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0027】
図面の説明
図1a:骨髄由来肥満細胞(BMMC)の表現型。
BMMCを0℃にて10分間、10μg/mlの2.4G2とプレインキュベートして、抗体の非特異結合を予防した。次いで、これらを0℃にて30分間、10μg/mlのFITC抗マウスFcεRIアルファ、又は333ng/mlのPE抗マウスCD19、又は133ng/mlのPE抗マウスCD11b、又は100ng/mlのPE抗マウスLy-6G、又は200ng/mlのAPC抗マウスFcεRIアルファとインキュベートし、洗浄した。細胞蛍光をフローサイトメトリーにより評価した。
【0028】
図1b:BMMCによるTLRタンパク質の発現。
BMMCを0℃にて10分間、10μg/mlの2.4G2とプレインキュベートして、抗体の非特異結合を予防した。次いで、これらを0℃にて30分間、2μg/mlのマウスTLR4/MD2に対するビオチン化モノクローナル抗体、又は2μg/mlのマウスTLR2に対するビオチン化モノクローナル抗体とインキュベートし、洗浄した。その後、これらを0℃にて30分間、2μg/mlのアビジン、ニュートラアビジン、R-フィコエリスリンコンジュゲートとインキュベートし、洗浄した。細胞蛍光をフローサイトメトリーにより評価した。
【0029】
図1c:BMMCによるTLR転写産物の発現
RNAを、BMMCから、RNeasy Miniキットを用いて抽出し、オリゴdTおよびAMV逆転写酵素を用いて逆転写した。得られたcDNAを、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、MD2、MyD88、CD14およびGAPDHに特異的なプライマーを用いるPCRにより分析した。増幅したフラグメントを2%アガロースでの電気泳動に付した。
【0030】
図2a:プロバイオティクスに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを37℃にて20分間、PBS、10-7M PMA+10-6Mイオノマイシン又は1000細菌/細胞の比の照射細菌に曝露した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
図2b:プロバイオティクスに曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを37℃にて3時間、PBS、10-7M PMA+10-6Mイオノマイシン又は1000細菌/細胞の比の照射細菌に曝露した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0031】
図3a:感作及びAgでの攻撃の前にプロバイオティクスに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートした。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0032】
図3b:感作及びAgでの攻撃の前にプロバイオティクスに曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートした。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0033】
図4a:感作及びAgでの攻撃の前に生エル・カゼイに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は0.5、5、50細菌/細胞の比の生菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0034】
図4b:感作及びAgでの攻撃の前に生エル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は0.5、5、50細菌/細胞の比の生菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0035】
図5:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露した腹膜細胞由来肥満細胞(PCMC)からのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
PCMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートした。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0036】
図6a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したラット好塩基性白血病細胞(RBL)からのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
RBL細胞を37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートした。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0037】
図6b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したRBLによるTNF-α分泌。
RBL細胞を37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートした。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0038】
図7:PMA-イオノマイシンでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて3時間、10-7M PMA+10-6Mイオノマイシンで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0039】
図8a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露し、細菌の非存在下で3時間インキュベートしたBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて0又は3時間、細菌の非存在下でインキュベートし、37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0040】
図8b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露し、細菌の非存在下で種々の期間インキュベートしたBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて0又は24時間、細菌の非存在下でインキュベートし、37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示される濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0041】
図9:エル・カゼイに曝露したBMMCのヨウ化プロピジウム(PI)/アネキシンV標識。
BMMCを37℃にて一晩、PBS、250ng/mlのスタウロスポリン又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを0℃にて30分間、0.5μg/mlのPI及び0.5μlのアネキシンV-APC (BD Biosciences)とインキュベートした。細胞蛍光を、フローサイトメトリーにより評価した。
【0042】
図10a:エル・カゼイに曝露したBMMCによるFcεRI発現。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを0℃にて10分間、10μg/mlの2.4G2とインキュベートして、抗体の非特異結合を予防し、0℃にて30分間、10μg/mlのFITC抗マウスFcεRIアルファとインキュベートし、洗浄した。細胞蛍光を、フローサイトメトリーにより評価した。
【0043】
図10b:エル・カゼイに曝露したBMMCへのIgE結合。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを0℃にて30分間、30μg/mlのFITC標識Fab'2ヤギ抗マウスとインキュベートし、洗浄した。細胞蛍光をフローサイトメトリーにより評価した。
【0044】
図11a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに種々の期間曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを、PBSと37℃にて4時間、又は1000細菌/細胞の比で照射細菌と37℃にて1、2、3、4時間プレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0045】
図11b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに種々の期間曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを、PBSと37℃にて4時間、又は1000細菌/細胞の比の照射細菌と37℃にて1、2、3、4時間プレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0046】
図12:感作及びAgでの攻撃の前にメンブレンで隔てたエル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌と、トランスウェルの存在下又は非存在下でプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0047】
図13a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したTLR-2/TLR-4-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
野生型マウス及びTLR-2/TLR-4-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0048】
図13b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したTLR-2/TLR-4-欠損BMMCによるTNF-α分泌。
野生型マウス及びTLR-2/TLR-4-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0049】
図14a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したMyD88-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
野生型マウス及びMyD88-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0050】
図14b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したMyD88-欠損BMMCによるTNF-α分泌。
野生型マウス及びMyD88-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0051】
図15a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したNOD2-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
野生型マウス及びNOD2-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0052】
図15b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したNOD2-欠損BMMCによるTNF-α分泌。
野生型マウス及びNOD2-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0053】
図16:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したFcγRIIB-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
野生型マウス及びFcγRIIB-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて4時間、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0054】
図17a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおける細胞内シグナル伝達タンパク質の発現及びリン酸化。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを0、3、10又は30分間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃し、溶解した。細胞溶解液を、SDS-PAGEに続く抗-pLAT、抗-LAT、抗-pPLCγ1、抗-PLCγ1、抗-pERK、抗-ERK、抗-pAkt、抗-Aktを用いるウェスタンブロッティングにより分析した。
【0055】
図17b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおける転写因子活性化。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを0、3、10又は30分間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃し、溶解した。細胞溶解液を、SDS-PAGEに続く抗-pNFκB、抗-NFκB、抗-pIκBα、抗-IκBαを用いるウェスタンブロッティングにより分析した。
【0056】
図18:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおけるカルシウム流入。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらに、室温にて30分間、5μMのカルシウム指示色素Fluo3AMを負荷し、3回洗浄し、37℃にて10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。細胞刺激に際する細胞蛍光の変動をフローサイトメトリーにより評価した。
【0057】
図19:エル・カゼイはヒト好塩基球活性化を阻害する。
健常ドナーからの赤血球除去血球を、一晩、PBS若しくは漸増数の照射エル・カゼイ(A)、又はPBS若しくは1000個の照射エル・カゼイ/細胞(B)とインキュベートし、抗ヒトIgE抗体のF(ab')2フラグメントとインキュベートした。FcεRI+、CD203+細胞と同定される好塩基球をゲート通過させ、通過した細胞において、刺激の前後でCD203の発現をモニターした。PBS又はエル・カゼイで処理した群からのデータのp値(スチューデントのt検定)を示す。
【0058】
図20:生エル・カゼイは、IgE-及びIgG-誘導腹膜細胞由来肥満細胞(PCMC)活性化を阻害する。
PCMCを一晩、PBS又は100細菌/細胞の比の生エル・カゼイとインキュベートした。次いで、肥満細胞をIgEで感作し、抗原で攻撃するか(A)、又は予め形成されたIgG免疫複合体で攻撃した(B)。β-ヘキソサミニダーゼを刺激の20分後に上清中で測定した。
【0059】
図21:生エル・カゼイは、骨髄由来肥満細胞(BMMC)活性化を誘導しない。IgE及び抗原(A、C)又は生エル・カゼイ(B、D)で刺激したBMMCによる、β-ヘキソサミニダーゼ放出(A、B)及びTNF-α生成(C、D)。BMMCは、IgEで感作し抗原で攻撃したか、又は異なる細菌/細胞比でインキュベートした。β-ヘキソサミニダーゼ及びTNF-αをそれぞれ刺激の20分後及び3時間後に上清中で測定した。
【0060】
図22:生エス・サーモフィラスは、IgE-誘導BMMC活性化を阻害しない。BMMCを一晩、PBS、生エス・サーモフィラス又は生エル・カゼイと、100細菌/細胞の比でインキュベートした。次いで、肥満細胞をIgEで感作し、抗原で攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ(A)及びTNF-α(B)をそれぞれ刺激の20分後及び3時間後に上清中で測定した。
【0061】
図23:生エル・カゼイ由来代謝産物は、IgE-誘導BMMC活性化を阻害しない。
PBS又は生エル・カゼイを一晩、培地とインキュベートし、遠心分離した。上清を0.2μmメンブレンでろ過し、細菌ペレット又は生菌を、一晩、BMMCとインキュベートした。次いで、肥満細胞をIgEで感作し、抗原で攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ(A)及びTNF-α(B)をそれぞれ刺激の20分後及び3時間後に上清中で測定した。
【0062】
図24:生エル・カゼイによるIgE-誘導BMMC活性化の阻害は、細胞と細菌との直接の接触を必要とする。
BMMCを一晩、PBS又は生エル・カゼイと、通常のウェル(A、C)又は二重チャンバートランスウェル(孔サイズ:0.4μm)(B、D)中でインキュベートした。次いで、肥満細胞をIgEで感作し、抗原で攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ(C、D)及びTNF-α(A、B)をそれぞれ刺激の20分後及び3時間後に上清中で測定した。
【0063】
図25:生エル・カゼイは、BMMCにおけるIgE-誘導カルシウム応答を阻害する。BMMCを一晩、PBS又は100細菌/細胞の比の生エル・カゼイとインキュベートし、IgEで感作した。次いで、肥満細胞に、Fluo-3を負荷し(A)又は負荷せずに(B)、抗原で攻撃した。相対的な細胞内Ca2+濃度を時間の関数としてフローサイトメトリーによりモニターした(A)。β-ヘキソサミニダーゼ放出を刺激の20分後に上清中で測定した(B)。
【0064】
図26:生エル・カゼイは、BMMCにおけるIgE-誘導細胞内シグナル伝達を阻害する。BMMCを一晩、PBS又は100細菌/細胞の比の生エル・カゼイとインキュベートした。次いで、肥満細胞をIgEで感作し、示した時間、抗原で攻撃した。細胞溶解液を電気泳動し、示した抗体と共にウェスタンブロッティングに付した。
【0065】
図27:生エル・カゼイは、PMA及びイオノマイシン-誘導BMMC活性化を阻害する。BMMCを一晩、PBS又は100細菌/細胞の比の生エル・カゼイとインキュベートし、PMA+イオノマイシンで刺激した。β-ヘキソサミニダーゼ(A)及びTNF-α(B)をそれぞれ刺激の20分後及び3時間後に上清中で測定した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(a)骨髄由来肥満細胞(BMMC)の表現型、(b)BMMCによるTLRタンパク質の発現、(c)BMMCによるTLR転写産物の発現を示す。
【図2】(a)プロバイオティクスに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)プロバイオティクスに曝露したBMMCによるTNF-α分泌
【図3】(a)感作及びAgでの攻撃の前にプロバイオティクスに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にプロバイオティクスに曝露したBMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図4】(a)感作及びAgでの攻撃の前に生エル・カゼイに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前に生エル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図5】感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露した腹膜細胞由来肥満細胞(PCMC)からのβ-ヘキソサミニダーゼ放出を示す。
【図6】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したラット好塩基球性白血病(RBL)からのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したRBLによるTNF-α分泌を示す。
【図7】PMA-イオノマイシンでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図8−1】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露し、細菌の非存在下で3時間インキュベートしたBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出を示す。
【図8−2】(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露し、細菌の非存在下で種々の期間インキュベートしたBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出を示す。
【図9】エル・カゼイに曝露したBMMCのヨウ化プロピジウム(PI)/アネキシンV標識を示す。
【図10】(a)エル・カゼイに曝露したBMMCによるFcεRI発現、(b)エル・カゼイに曝露したBMMCへのIgE結合を示す。
【図11】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに種々の期間曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに種々の期間曝露したBMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図12】感作及びAgでの攻撃の前にメンブレンで隔てたエル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図13】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したTLR-2/TLR-4-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したTLR-2/TLR-4-欠損BMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図14】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したMyD88-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したMyD88-欠損BMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図15】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したNOD2-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したNOD2-欠損BMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図16】感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したFcγRIIB-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出を示す。
【図17】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおける細胞内シグナル伝達タンパク質発現及びリン酸化、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおける転写因子活性化を示す。
【図18】感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおけるカルシウム流入を示す。
【図19】エル・カゼイはヒト好塩基球活性化を阻害することを示す。
【図20】生エル・カゼイは、IgE-及びIgG-誘導腹膜細胞由来肥満細胞(PCMC)活性化を阻害することを示す。
【図21】生エル・カゼイは、骨髄由来肥満細胞(BMMC)活性化を誘導しないことを示す。
【図22】生エス・サーモフィラスは、IgE-誘導BMMC活性化を阻害しないことを示す。
【図23】生エル・カゼイ由来代謝産物は、IgE-誘導BMMC活性化を阻害しないことを示す。
【図24】生エル・カゼイによるIgE-誘導BMMC活性化の阻害は、細胞と細菌との直接の接触を必要とすることを示す。
【図25】生エル・カゼイは、BMMCにおけるIgE-誘導カルシウム応答を阻害することを示す。
【図26】生エル・カゼイは、BMMCにおけるIgE-誘導細胞内シグナル伝達を阻害することを示す。
【図27】生エル・カゼイは、PMA及びイオノマイシン-誘導BMMC活性化を阻害することを示す。
【実施例】
【0067】
実施例
下記の実験は、以下の材料及び方法を用いて行った。
細胞培養物
大腿骨の骨髄細胞を回収し、10% FCS、0.2% 2-メルカプトエタノール、100IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを補ったOpti-MEM + GlutaMAX-I (完全Opti-MEM)、及びマウスIL-3を分泌するX63トランスフェクタントの4%上清(Dr. P. Dubreuil, Institut de Cancerologie et d'Immunologie, Marseille, France)中で培養した。培養物を、ペレット化した細胞を新鮮な培養培地に3×105/mlの濃度で再懸濁することにより、3日ごとに継代した。
【0068】
腹膜細胞は、2mlのRPMI 1640をi.p.注射したマウスから回収した。これらを、1×106/mlで、マウスSCFを分泌するCHOトランスフェクタントの4%上清(Dr. P. Dubreuil)を補った完全Opti-MEM中に播種した。24時間後に、非接着細胞を除去し、新鮮な培養培地を接着細胞に加えた。3日後、非接着細胞及びトリプシン-SDTAを用いて回収した接着細胞を採集し、ペレット化し、新鮮な培養培地に3×105/mlの濃度で再懸濁した。同じ手順を週に2回繰り返した。3〜9週間経過した培養物を実験に用いた。培養試薬は、Invitrogen Life Technologiesから入手した。
【0069】
ラット好塩基性白血病細胞は、10% FCS、100IU/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補ったRPMI 1640+GlutaMAX-I中で培養した。
Raw 264.7細胞は、10% FCS、100IU/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補ったDMEM+GlutaMAX-I中で培養した。
【0070】
細胞プレインキュベーション
細胞は、細菌、PBS又はスタウロスポリンと、10% FCSを補ったOpti-MEM+GlutaMAX-I及びマウスIL-3を分泌するX63トランスフェクタントの4%上清中でプレインキュベートした。
【0071】
細胞感作
細胞は、IgE抗-DNPを用いて、10% FCS及び4% Hepesを補ったRPMI 1640+GlutaMAX-I中で感作した。
【0072】
細胞刺激
細胞は、細菌、PMA/イオノマイシン又はDNP-BSAを用いて、10% FCS及び4% Hepesを補ったRPMI 1640+GlutaMAX-I中で刺激した。
【0073】
細胞標識
細胞を、2.4G2及びビオチン、PE、FITC、APC-標識抗体と、0.2% FCSを補ったPBS中でインキュベートした。
細胞を、PI/アネキシンV-APCと、結合バッファー(BD Biosciences)中でインキュベートした。
細胞を、Fluo3AMと、0.2%プルロニックを補ったRPMI 1640+GlutaMAX-I中でインキュベートした。
【0074】
実施例1:照射ラクトバチルス・カゼイによるBMMCのIgE-誘導活性化の阻害
用いたモデル細胞は、マウス骨髄由来肥満細胞(BMMC)であり、この細胞におけるFcεRI、FcγRIIIA及びFcγRIIBの発現を確認した。これらは幹細胞因子受容体kit(CD117)も発現するが、マクロファージ(Mac1)マーカー、B細胞(CD19)マーカー、顆粒球(GR1)マーカーは発現しない(図1a)。BMMCは、利用可能な抗体での間接免疫蛍光による評価では、膜TLR-2もTLR-4も検出可能に発現しなかった(図1b)が、RT-PCR分析による評価では、TLR-1、2、4、5、6、MD-2、MyD88及びCD14をコードする転写産物を含んでいた(図1c)。IgE抗体で感作し、特異抗原で攻撃すると、BMMCはβ-ヘキソサミニダーゼを放出し、TNF-αを分泌する。
【0075】
5つの細菌株を、肥満細胞活性化に対する効果について試験した:
− CNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, 25 rue du Docteur Roux, Paris)に、1994年12月30日に番号I-1518で寄託されたラクトバチルス・カゼイ亜種パラカゼイ、本明細書の実施例では「エル・カゼイ」と表示する;
− ラクトバチルス・パラカゼイDN-114 120;
− CNCMに、1999年5月31日に番号I-2219で寄託されたビフィドバクテリウム・ブレベ;
− ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum) DSM 9843;及び
− CNCMに、2002年1月24日に番号I-2273で寄託されたストレプトコッカス・サーモフィラス。
【0076】
これら細菌を、先ず、肥満細胞を活性化する能力について試験した。この目的のために、細菌を照射に付し、PBSに再懸濁し、BBMCとインキュベートした(1000細菌/細胞)。20分間又は3時間インキュベートしたとき、試験した6つの細菌株はいずれも、BMMCからのそれぞれβ-ヘキソサミニダーゼの放出又はTNF-αの分泌を誘導しなかった(図2a及び2b)。
【0077】
次いで、本発明者らは、BMMCの細菌への予めの曝露が、肥満細胞のその後のIgE-誘導生物学的応答に影響するかを調べた。BMMCと一晩インキュベートすると(1000照射細菌/細胞の比で)、いくつかの株が、β-ヘキソサミニダーゼの放出及びTNF-αの分泌を共に阻害することを本発明者らは見出した。他の株は阻害しなかった。1つの株であるエル・カゼイが、他の細菌より著しく効率的であった(図3a及び3b)。同じ条件下で、生エル・カゼイはまた肥満細胞活性化を阻害し、より低い細菌/細胞比で匹敵する阻害を誘導した(図4a及び4b)。実務上の理由から、その後の実験では照射細菌を用いた。得られた結果を下記に示す。
【0078】
A.エル・カゼイ誘導阻害の全般的な特徴
1.エル・カゼイは、BMMC及び実験室で開発された初代奨膜タイプ成熟肥満細胞の新規なモデル(Malbecら, 2007)において、IgE誘導応答に等しく影響を与えた(図5)が、株化した腫瘍肥満細胞RBL-2H3の応答には影響しなかった(図6a及び6b);
2.エル・カゼイは、BMMCのIgE-誘導応答だけでなく、PMA+イオノマイシン-誘導応答も阻害した(図7)。このことにより、エル・カゼイが、膜抗体受容体及び細胞内シグナル伝達の初期段階を迂回する非特異的活性化を阻害することが証明された;
3.阻害は一過性であった(図8a及び8b);
4.エル・カゼイは、肥満細胞の生存性を低下させなかった(図9);
5.エル・カゼイは、BMMCによるFcεRIの発現をわずかに低下させ、IgE抗体によるFcεRIの感作は影響されなかった。
【0079】
B.阻害が生じる実験条件
1.エル・カゼイとの予めのインキュベーションによる肥満細胞応答の阻害は、時間依存性である(図11aおよび11b);
2.阻害は、エル・カゼイ上清中に存在する可溶性産物では説明できないようであり、これは乳酸により誘導されなかった;
3.この知見を支持するように、インキュベーションの間エル・カゼイとBMMCとを0.4μmトランスウェルメンブレンで分離した場合、阻害が妨げられた。このことは、細胞と細菌との間の直接接触が必要であることを示している(図12)。
【0080】
C.エル・カゼイによる肥満細胞活性化の阻害に関与する機構
1.エル・カゼイは、a)TLR-2/TLR-4-欠損マウス(図13a及び13b)、b)MyD88-欠損マウス(図14a及び14b)、c)NOD2-欠損マウス(図15a及び15b)、及びd)FcγRIIB-欠損マウス(図16)に由来するBMMCのIgE-誘導応答を、wtマウスからのBMMCの応答と同程度に効率的に阻害した;
2.エル・カゼイは、ウェスタンブロッティングによる評価では、いくつかのシグナル伝達分子の発現を低下させた(図17);
3.エル・カゼイは、早期及び後期のFcεRI-依存性リン酸化事象を共に阻害した(図17);
4.エル・カゼイは、NF-κBリン酸化を亢進したが、NFκBの核移行に必要なIκB分解を低下させた(図17);
5.エル・カゼイは、Ca2+の細胞内濃度のIgE-誘導増加及びイオノマイシン-誘導増加を共に大きく阻害した(図18)。
【0081】
これら結果は、肥満細胞をエル・カゼイに数時間曝露することが、転写因子の活性化及びCa2+応答を導くFcεRIシグナル伝達だけなく、FcεRIを迂回する活性化シグナル(PMA+イオノマイシン)にも影響を及ぼしたことを示す。結果として、IgE-誘導肥満細胞分泌応答(脱顆粒及びサイトカイン分泌の両方)が著しく阻害された。
【0082】
実施例2:エル・カゼイによるIgE-誘導インビボ応答の阻害
エル・カゼイのインビボ効果は、主に、強制栄養法によりエル・カゼイに曝露したマウスにおいて調べる。先ず、受動局所又は全身アナフィラキシーを阻害する能力についてエル・カゼイを調べる。次いで、エル・カゼイ強制栄養に付されたマウスからのIgE-感作回腸セグメントによる肥満細胞メディエイターの抗原誘導放出を阻害する能力についてエル・カゼイを調べる。最後に、アレルギー(アレルギー性喘息及び食物アレルギー)のマウスモデル及び実験室で確立した自己免疫炎症性疾患(リウマチ性関節炎、脳脊髄炎)のモデルで、エル・カゼイ強制栄養の結果を調べる。
【0083】
実施例3:インビトロでのヒト肥満細胞及び好塩基球に対する照射エル・カゼイの効果
健常ヒトドナーからの赤血球除去血球を、マウス肥満細胞についてと同様の条件下でエル・カゼイに曝露し、IgEを介する刺激への応答を調べる。
図19に示す結果は、エル・カゼイがヒト好塩基球活性化を阻害することを証明している。
【0084】
実施例4:ヒトにおけるアレルギー及び自己免疫に対するエル・カゼイの効果
Actimel(登録商標)又はプラシーボを与えられた健常群及びアレルギー患者群を、臨床試験に含める。自己免疫疾患(リウマチ性関節炎、多発性硬化症又は水泡性類天疱瘡)の患者も、別の群に含め、2型糖尿病の患者も含める。
【0085】
実施例5:目的とする新たなプロバイオティクスの探索
マルチウェルプレートにおける自動化インビトロアッセイを、プロバイオティクスの大きなライブラリーをスクリーニングするために確立する。このスクリーニングにより可能性のある目的とする新たなプロバイオティクスが明らかになれば、それらをエル・カゼイについてと同じ実験手順を用いて調べる。
【0086】
実施例6:肥満細胞活性化に対する生エル・カゼイの効果
実施例1に記載したものと同じ実験を、照射細菌の代わりに生エル・カゼイを用いて行った。図20〜27に示す結果は、照射細菌を用いて肥満細胞について観察された効果が、生エル・カゼイを用いても観察されることを示している。
【0087】
【表1−1】
【表1−2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満細胞が関与する慢性又は急性の疾患(例えば、アレルギー疾患及びいくつかの自己免疫疾患)の予防及び治療の分野に関する。より具体的には、本発明は、肥満細胞活性化を阻害するためのプロバイオティクス(probiotics)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満細胞は、アレルギーにおける主要な演者(player)として周知である。アレルギー反応は、主にIgE抗体に依存する。肥満細胞は、高親和性IgE受容体(FcεRI)を発現し、該受容体の一部は、インビボにおいてIgE抗体により占められている。FcεRIは、IgE抗体への多価アレルゲンの結合に際して細胞表面で凝集すると、肥満細胞活性化を導く活性化シグナルを伝達する。活性化された肥満細胞は、種々の炎症性分子を放出及び分泌する。これらには、肥満細胞顆粒に貯蔵された予め形成されていた血管作動性アミン及び酵素(Miller及びPemberton, 2002)、新たに形成された脂質由来のプロスタグランジン、トロンボキサン及びロイコトリエン(Triggianiら, 1995)、新たに転写されたサイトカイン(Galliら, 1991)、成長因子及びケモカイン(Kaplan, 2001)が含まれる。これらのメディエイターは広範囲の生物学的効果を有する。これらは、血管透過性を増大させ、平滑筋の収縮をトリガーし、多数の炎症性細胞を誘引して活性化する。全体として、これらは協力して数分以内に急性反応を生じ、その後数時間内に遅延反応、数日で慢性反応、数カ月で組織リモデリングを生じる。
【0003】
肥満細胞は、IgE受容体だけでなくIgG受容体(FcγR)も発現する(Benhamouら, 1990; Daeronら, 1980)。これらには、活性化受容体(マウスにおけるFcγRIIIA、ヒトにおけるFcγRIIA)及び抑制性受容体(どちらの種でもFcγRIIB)が含まれる。活性化FcγRは、IgG免疫複合体により凝集すると、FcεRIと同じ生物学的応答をトリガーする(Daeronら, 1992; Hazenbosら, 1996; Latourら, 1992)。FcγRIIBは、免疫複合体によりFcεRI又は活性化FcγRと共凝集すると、IgE-又はIgG-誘導肥満細胞活性化をネガティブに調節する(Daeronら, 1995a; Daeronら, 1995b)。最近、自己免疫性関節炎(Leeら, 2002)及び脳炎(Robbie-Ryanら, 2003)のマウスモデルにおいて、肥満細胞が、IgG依存性組織特異的自己免疫性炎症で重要な役割を演じていることが明らかになった。これら病状の臨床上の発現は、実際、肥満細胞欠損マウスでみられなかった。更に、これら疾患の病因は、肥満細胞上の活性化FcγRと抑制性FcγRとの比、及びIgG抗体によるそれらの係合(engagement)に決定的に依存する(Nigrovicら, 2007; Robbie-Ryanら, 2003)。
【0004】
炎症における役割に加えて、肥満細胞は、微生物と相互作用し、病原体に対する防御に貢献していると最近では理解されている。これらは、実質的にすべての組織、特に、外部環境との界面にある組織(皮膚、舌、胃、腸、肺など)に存在する。これらはToll様受容体(TLR)、並びに細菌及び微生物起源の可溶性分子(エンドドキシン、CpGヌクレオチド、ペプチドグリカン及びリポペプチドを含む)との相互作用を可能にする他の受容体を発現する。リガンドが結合すると、これら受容体のほとんどは、これもまた炎症誘導性メディエイターの分泌を導くシグナルを伝達できる(Arockら, 1998)。また、肥満細胞は細菌を食菌することができる(Arockら, 1998)。細菌感染における肥満細胞の防御的役割は、盲腸結紮及び穿孔により誘導された腹膜炎のマウスモデルにおいて劇的に証明された:ほとんどの野生型マウスはこの攻撃後に発症する重篤な腹膜炎を生き延びるが、ほとんどの肥満細胞欠損マウスは死亡する(Shelleyら, 2003; Supajaturaら, 2001)。
【0005】
上記のデータに基づいて、肥満細胞は、現在、自然免疫系の細胞として見られているが、FcRを発現するので、抗体による適応免疫に含まれせることもできる。このように、これらは自然免疫及び適応免疫によく適合し、互いに出会い干渉する。したがって、本発明者らは、肥満細胞における自然免疫と適応免疫の間のクロストーク(cross-talk)の可能性について調べた。具体的には、本発明者らは、プロバイオティクスがIgE-及びIgG-誘導肥満細胞活性化に干渉するかどうか、どのように干渉するかを研究することを選択した。
【0006】
いくつかのプロバイオティクス株は、或る種のアレルギーを含むいくつかの炎症性疾患に対して有益な効果を有することが既に記載されている。しかし、現在までに発表された実験は全て、アレルギー又は他の炎症性疾患に至る免疫応答の誘導に焦点が当てられている。例えば、Kimらは、オボアルブミンによる最初の感作の2週間前に開始した7週間にわたるマウスへのプロバイオティクス細菌の経口投与が、このモデルにおいてアレルギー性応答の誘導を抑制することを記載している(Kimら, 2005)。
【0007】
しかし、アレルギー性応答のような免疫応答は、2つの期、すなわち誘導期と応答期とに分けることができる。現在までに、応答期(肥満細胞の活性化を必要とする)に対するプロバイオティクス株の効果については何も知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
下記の実験の部で例証されるように、発明者らは、驚くべきことに、いくつかのプロバイオティクスが肥満細胞の活性化を阻害でき、そのことにより自己免疫疾患及びアレルギーを含む或る種のヒト炎症性疾患に対する防御効果を有することを証明した。重要なことには、本発明者らが得た結果は、これらプロバイオティクスが、既に感作された対象者又は自己免疫疾患を既に発症した対象者においてさえ、病原性免疫応答を予防することができることを示している。このことは、これらプロバイオティクスについての新たな治療的な可能性を開く。なぜなら、炎症性疾患を既に発症した患者が、下記で説明する本発明により治療され得るからである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
よって、本発明の第1の観点は、肥満細胞活性化の阻害用組成物の製造のための、エル・カゼイ(L. casei)株及び/又はビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)株の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
臨床状況及び投与経路に依存して、本発明により製造される組成物は、IgE-及び/又はIgG-誘導肥満細胞活性化を阻害することができる。よって、これらは、抗原の存在下での抗体による肥満細胞活性化を含む任意の炎症発現を予防、緩和及び/又は治療するために用いることができる。
【0011】
特に、IgE-誘導活性化を阻害する場合、これら組成物は、アレルギー又はアレルギー発現を予防、緩和及び/又は治療するために用いることができる。本明細書で考慮されるアレルギーは、肥満細胞に結合し、特異抗原を認識すると肥満細胞の活性化をトリガーするIgE抗体により引き起こされる。重要なことには、これら組成物は、抗原に対して既に感作された対象者、及び該抗原に対してアレルギー性であると既に診断された対象者においてさえ、アレルギー発現(例えば喘息、鼻炎又は花粉症、アレルギー性皮膚炎、アナフィラキシーショックなど)を予防、治療又は緩和するために用いることができる。例えば、花粉症に長年罹患している人が、本発明により製造される組成物を摂取することにより症状の再発を予防することができる。莫大な数の抗原がアレルギーを引き起こし、アレルギーは多様な臨床症状で現れる。頻繁にアレルギーの原因となる抗原の非限定的な例としては、ダニ(例えばDer p 2)、ゴキブリ抗原、カバノキ花粉(例えばBet V 1)、草本花粉、動物の体毛鱗屑抗原(例えばネコ:Fel d 1)、蜂毒(例えばホスホリパーゼ)のような環境アレルゲン、又は乳(特に牛乳)、ピーナツ、エビ、大豆、卵、穀類製品、果実などの食物アレルゲンが挙げられる。状況及び個体に依存して、臨床症状は局所的(例えばアレルギー性鼻炎、結膜炎又は耳炎がそうである)、領域的(例えば喘息、皮膚炎、胃腸の問題及びクインケ浮腫)、又は全身的(例えばアナフィラキシーショック)であり得る。上記の機構に基づかないが、アレルギーとして不正に定義される病理も時にある。例えば遅延型過敏性反応がそうである。
【0012】
本発明により得られる組成物がIgG誘導肥満細胞活性化を阻害する場合、該組成物は、例えばリウマチ性関節炎、脳脊髄炎、多発性硬化症、水泡性類天疱瘡、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、セリアック病、クローン病、妊娠性類天疱瘡、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン-バレー症候群(GBS、急性炎症性脱髄性多発神経炎、急性持発性多発根神経炎、急性持発性多発神経炎及びランドリー下行性麻痺ともよばれる)、橋本病、持発性血小板減少性紫斑病、川崎病、エリテマトーデス、重症筋無力症、眼球クローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、視神経炎、オード(Ord's)甲状腺炎、天疱瘡、ライター症候群、シェーグレン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られる)及びヴェゲナー肉芽腫症のような自己免疫疾患の予防、緩和又は治療に有利に用いることができる。重要なことには、そして本発明による組成物がこれら疾患の応答期に対して効果を有するので、自己免疫疾患に既に罹患している患者は、これら組成物の利益を享受することができる。抗体による肥満細胞活性化に依存する他の任意の自己免疫疾患も、本発明により得られる組成物により予防又は治療することができる。
【0013】
本発明に従って製造される組成物は、2型糖尿病を予防、緩和及び/又は治療するために用いることもできる。なぜなら、腸フローラに由来するLPSが、最近、2型糖尿病の転帰をもたらし易い慢性炎症を生じると報告されたからである(Caniら, 2007)。
【0014】
好ましい実施形態において、本発明に従って用いられるエル・カゼイ株は、エル・カゼイ亜種パラカゼイ(L. casei ssp. paracasei)であり、例えばCNCM (Collection Nationale de Culture de Microorganismes、25 rue du Docteur Roux, Paris)に、1994年12月30日に番号I-1518で寄託された株である。
別の実施形態において、本発明に従って用いられるビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)株は、CNCMに、1999年5月31日に番号I-2219で寄託された株である。
【0015】
本発明の特定の実施形態によると、エル・カゼイ株を用いて製造される組成物は、食品サプリメント及び/又は機能性食品である。本明細書において、「食品サプリメント」とは、食品に通常使用される化合物からつくられるが、錠剤、散剤、カプセル剤、頓服水剤又は食物とは通常は関連しない他の任意の形態であり、健康に有益な効果を有する製品をいう。「機能性食品」とは、これもまた健康に有益な効果を有する食物である。特に、食品サプリメント及び機能性食品は、疾患、例えば慢性疾患に対して生理的効果(防御的又は治療的)を有し得る。
【0016】
本発明に従って製造される特定の組成物は発酵乳製品である。
本発明に従って得られる組成物は、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属及びストレプトコッカス(Streptococcus)属から選択される少なくとも1種の他の細菌株、例えばストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)及びラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)からなる群より選択される少なくとも1種の細菌株も含むことができる。
【0017】
別の実施形態によると、本発明に従って製造される組成物は医薬品である。
本発明によると、細菌、特にエル・カゼイ細菌は、生存していてもしていなくてもよい細菌全体(whole bacteria)の形態で用いることができる。例えば、照射されたエル・カゼイ全体を用いることができる。或いは、細菌は、細菌溶解液の形態又は細菌画分の形態で用いることができる;この使用に適する細菌画分は、例えばIgE-誘導肥満細胞活性化を阻害する特性を、例えば下記の実験の部に開示されるアッセイの1つを行うことにより、試験することで選択することができる。細菌画分は、鼻及び副鼻腔の粘膜、肺などを標的とする製剤で特に好ましい。
【0018】
好ましい実施形態において、本発明に従って得られる組成物は、肥満細胞と、細菌、細菌溶解液及び/又は細菌画分(おそらく部分的に分解されている)との直接接触を可能にするように処方される。
【0019】
エル・カゼイ及び(より少ない程度ではあるが)ビー・ブレベの肥満細胞活性化の阻害に対する効果は、他の細菌株を用いてもおそらく観察され得る。細菌株(特に既知のプロバイオティクスの細菌株)のライブラリーを、肥満細胞活性化を阻害できる更なる株を同定するためにスクリーニングするべきである。
【0020】
よって、本発明は、肥満細胞活性化(特に抗体による活性化)の阻害用組成物、とりわけアレルギー、自己免疫疾患及び2型糖尿病から選択される疾患の予防、緩和又は治療用組成物を製造するために用いることができる細菌株を同定するスクリーニング方法にも関する。
【0021】
本発明による方法の第1の変形例(第1の方法)によると、上記方法は、以下の工程:
(a)肥満細胞を、スクリーニングする細菌と少なくとも1時間インキュベートする工程;
(b)前記細菌を取り出す任意の工程;
(c)肥満細胞に活性化剤を加える工程;及び
(d)肥満細胞の活性化を測定する工程
を含む。
【0022】
必要であれば、工程b)とc)の間、及び工程c)とd)の間に洗浄工程を行う。
上記方法において、工程(c)で用いられる活性化剤は、例えば、PMA、イオノマイシンのようなカルシウムイオノフォア、LPS、タプシガルジン、予め形成されたIgG/抗原複合体又はこれらの2種以上の混合物であり得る。
【0023】
本発明による方法の第2の変形例(第2の方法)によると、上記方法は、以下の工程:
(a)肥満細胞を、スクリーニングする細菌と少なくとも1時間インキュベートする工程;
(b)前記細菌を取り出す任意の工程;
(c)肥満細胞をIgE抗体とインキュベートする工程;
(d)肥満細胞に特異抗原を加える工程;及び
(e)肥満細胞の活性化を測定する工程
を含む。
再び、必要であれば、上記方法の工程の間に洗浄工程を行うことができる。
【0024】
肥満細胞の活性化は、例えば、下記の実験の部に記載される技術の1つにより、すなわち、肥満細胞により放出されるベータ-ヘキソサミニダーゼ及び/又はTNF-アルファのレベルを測定することにより測定することができる。もちろん、当業者は、他の任意の肥満細胞活性化マーカー、例えばGalliら(Nature immunol. 2005)により記載されるマーカーを用いることもできる。
【0025】
用いる活性化剤の性質及び量に依存して、また測定工程(d)又は(e)で用いる技術にも依存して、肥満細胞は、活性化剤(第1の方法の工程(c)において)又は特異抗原(第2の方法の工程(d)において)と、数分間(例えば5〜30分間)又はより長い時間(数時間まで)インキュベートされる。例えば、肥満細胞顆粒中に存在する化合物(例えばベータ-ヘキソサミニダーゼ)の測定には、数分間のインキュベーションしか要しないが、サイトカイン(例えばTNF-アルファ)を測定する場合には、工程C)のインキュベーションは少なくとも1時間(1〜5時間)継続しなければならない。
肥満細胞により放出又は分泌される他の任意の生成物及び/又は肥満細胞活性化に伴う任意の細胞変化を測定してもよい。
【0026】
図面及び下記の実験の部で本発明をさらに説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0027】
図面の説明
図1a:骨髄由来肥満細胞(BMMC)の表現型。
BMMCを0℃にて10分間、10μg/mlの2.4G2とプレインキュベートして、抗体の非特異結合を予防した。次いで、これらを0℃にて30分間、10μg/mlのFITC抗マウスFcεRIアルファ、又は333ng/mlのPE抗マウスCD19、又は133ng/mlのPE抗マウスCD11b、又は100ng/mlのPE抗マウスLy-6G、又は200ng/mlのAPC抗マウスFcεRIアルファとインキュベートし、洗浄した。細胞蛍光をフローサイトメトリーにより評価した。
【0028】
図1b:BMMCによるTLRタンパク質の発現。
BMMCを0℃にて10分間、10μg/mlの2.4G2とプレインキュベートして、抗体の非特異結合を予防した。次いで、これらを0℃にて30分間、2μg/mlのマウスTLR4/MD2に対するビオチン化モノクローナル抗体、又は2μg/mlのマウスTLR2に対するビオチン化モノクローナル抗体とインキュベートし、洗浄した。その後、これらを0℃にて30分間、2μg/mlのアビジン、ニュートラアビジン、R-フィコエリスリンコンジュゲートとインキュベートし、洗浄した。細胞蛍光をフローサイトメトリーにより評価した。
【0029】
図1c:BMMCによるTLR転写産物の発現
RNAを、BMMCから、RNeasy Miniキットを用いて抽出し、オリゴdTおよびAMV逆転写酵素を用いて逆転写した。得られたcDNAを、TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、MD2、MyD88、CD14およびGAPDHに特異的なプライマーを用いるPCRにより分析した。増幅したフラグメントを2%アガロースでの電気泳動に付した。
【0030】
図2a:プロバイオティクスに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを37℃にて20分間、PBS、10-7M PMA+10-6Mイオノマイシン又は1000細菌/細胞の比の照射細菌に曝露した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
図2b:プロバイオティクスに曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを37℃にて3時間、PBS、10-7M PMA+10-6Mイオノマイシン又は1000細菌/細胞の比の照射細菌に曝露した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0031】
図3a:感作及びAgでの攻撃の前にプロバイオティクスに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートした。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0032】
図3b:感作及びAgでの攻撃の前にプロバイオティクスに曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートした。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0033】
図4a:感作及びAgでの攻撃の前に生エル・カゼイに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は0.5、5、50細菌/細胞の比の生菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0034】
図4b:感作及びAgでの攻撃の前に生エル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は0.5、5、50細菌/細胞の比の生菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0035】
図5:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露した腹膜細胞由来肥満細胞(PCMC)からのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
PCMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートした。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0036】
図6a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したラット好塩基性白血病細胞(RBL)からのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
RBL細胞を37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートした。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0037】
図6b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したRBLによるTNF-α分泌。
RBL細胞を37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートした。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0038】
図7:PMA-イオノマイシンでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて3時間、10-7M PMA+10-6Mイオノマイシンで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0039】
図8a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露し、細菌の非存在下で3時間インキュベートしたBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて0又は3時間、細菌の非存在下でインキュベートし、37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0040】
図8b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露し、細菌の非存在下で種々の期間インキュベートしたBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて0又は24時間、細菌の非存在下でインキュベートし、37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示される濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0041】
図9:エル・カゼイに曝露したBMMCのヨウ化プロピジウム(PI)/アネキシンV標識。
BMMCを37℃にて一晩、PBS、250ng/mlのスタウロスポリン又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを0℃にて30分間、0.5μg/mlのPI及び0.5μlのアネキシンV-APC (BD Biosciences)とインキュベートした。細胞蛍光を、フローサイトメトリーにより評価した。
【0042】
図10a:エル・カゼイに曝露したBMMCによるFcεRI発現。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを0℃にて10分間、10μg/mlの2.4G2とインキュベートして、抗体の非特異結合を予防し、0℃にて30分間、10μg/mlのFITC抗マウスFcεRIアルファとインキュベートし、洗浄した。細胞蛍光を、フローサイトメトリーにより評価した。
【0043】
図10b:エル・カゼイに曝露したBMMCへのIgE結合。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを0℃にて30分間、30μg/mlのFITC標識Fab'2ヤギ抗マウスとインキュベートし、洗浄した。細胞蛍光をフローサイトメトリーにより評価した。
【0044】
図11a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに種々の期間曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
BMMCを、PBSと37℃にて4時間、又は1000細菌/細胞の比で照射細菌と37℃にて1、2、3、4時間プレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0045】
図11b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに種々の期間曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを、PBSと37℃にて4時間、又は1000細菌/細胞の比の照射細菌と37℃にて1、2、3、4時間プレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0046】
図12:感作及びAgでの攻撃の前にメンブレンで隔てたエル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌と、トランスウェルの存在下又は非存在下でプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0047】
図13a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したTLR-2/TLR-4-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
野生型マウス及びTLR-2/TLR-4-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0048】
図13b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したTLR-2/TLR-4-欠損BMMCによるTNF-α分泌。
野生型マウス及びTLR-2/TLR-4-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0049】
図14a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したMyD88-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
野生型マウス及びMyD88-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0050】
図14b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したMyD88-欠損BMMCによるTNF-α分泌。
野生型マウス及びMyD88-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0051】
図15a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したNOD2-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
野生型マウス及びNOD2-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0052】
図15b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したNOD2-欠損BMMCによるTNF-α分泌。
野生型マウス及びNOD2-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを3時間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。TNF-αの分泌を、L929バイオアッセイを用いて評価した。
【0053】
図16:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したFcγRIIB-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出。
野生型マウス及びFcγRIIB-欠損マウスからのBMMCを、37℃にて4時間、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを37℃にて20分間、示した濃度のDNP-BSAで攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ放出を、酵素比色アッセイを用いて評価した。
【0054】
図17a:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおける細胞内シグナル伝達タンパク質の発現及びリン酸化。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを0、3、10又は30分間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃し、溶解した。細胞溶解液を、SDS-PAGEに続く抗-pLAT、抗-LAT、抗-pPLCγ1、抗-PLCγ1、抗-pERK、抗-ERK、抗-pAkt、抗-Aktを用いるウェスタンブロッティングにより分析した。
【0055】
図17b:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおける転写因子活性化。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらを0、3、10又は30分間、10ng/mlのDNP-BSAで攻撃し、溶解した。細胞溶解液を、SDS-PAGEに続く抗-pNFκB、抗-NFκB、抗-pIκBα、抗-IκBαを用いるウェスタンブロッティングにより分析した。
【0056】
図18:感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおけるカルシウム流入。
BMMCを37℃にて一晩、PBS又は1000細菌/細胞の比の照射細菌とプレインキュベートし、3回洗浄した。次いで、これらを37℃にて1時間、1μg/mlのIgE抗-DNPで感作し、3回洗浄した。その後、これらに、室温にて30分間、5μMのカルシウム指示色素Fluo3AMを負荷し、3回洗浄し、37℃にて10ng/mlのDNP-BSAで攻撃した。細胞刺激に際する細胞蛍光の変動をフローサイトメトリーにより評価した。
【0057】
図19:エル・カゼイはヒト好塩基球活性化を阻害する。
健常ドナーからの赤血球除去血球を、一晩、PBS若しくは漸増数の照射エル・カゼイ(A)、又はPBS若しくは1000個の照射エル・カゼイ/細胞(B)とインキュベートし、抗ヒトIgE抗体のF(ab')2フラグメントとインキュベートした。FcεRI+、CD203+細胞と同定される好塩基球をゲート通過させ、通過した細胞において、刺激の前後でCD203の発現をモニターした。PBS又はエル・カゼイで処理した群からのデータのp値(スチューデントのt検定)を示す。
【0058】
図20:生エル・カゼイは、IgE-及びIgG-誘導腹膜細胞由来肥満細胞(PCMC)活性化を阻害する。
PCMCを一晩、PBS又は100細菌/細胞の比の生エル・カゼイとインキュベートした。次いで、肥満細胞をIgEで感作し、抗原で攻撃するか(A)、又は予め形成されたIgG免疫複合体で攻撃した(B)。β-ヘキソサミニダーゼを刺激の20分後に上清中で測定した。
【0059】
図21:生エル・カゼイは、骨髄由来肥満細胞(BMMC)活性化を誘導しない。IgE及び抗原(A、C)又は生エル・カゼイ(B、D)で刺激したBMMCによる、β-ヘキソサミニダーゼ放出(A、B)及びTNF-α生成(C、D)。BMMCは、IgEで感作し抗原で攻撃したか、又は異なる細菌/細胞比でインキュベートした。β-ヘキソサミニダーゼ及びTNF-αをそれぞれ刺激の20分後及び3時間後に上清中で測定した。
【0060】
図22:生エス・サーモフィラスは、IgE-誘導BMMC活性化を阻害しない。BMMCを一晩、PBS、生エス・サーモフィラス又は生エル・カゼイと、100細菌/細胞の比でインキュベートした。次いで、肥満細胞をIgEで感作し、抗原で攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ(A)及びTNF-α(B)をそれぞれ刺激の20分後及び3時間後に上清中で測定した。
【0061】
図23:生エル・カゼイ由来代謝産物は、IgE-誘導BMMC活性化を阻害しない。
PBS又は生エル・カゼイを一晩、培地とインキュベートし、遠心分離した。上清を0.2μmメンブレンでろ過し、細菌ペレット又は生菌を、一晩、BMMCとインキュベートした。次いで、肥満細胞をIgEで感作し、抗原で攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ(A)及びTNF-α(B)をそれぞれ刺激の20分後及び3時間後に上清中で測定した。
【0062】
図24:生エル・カゼイによるIgE-誘導BMMC活性化の阻害は、細胞と細菌との直接の接触を必要とする。
BMMCを一晩、PBS又は生エル・カゼイと、通常のウェル(A、C)又は二重チャンバートランスウェル(孔サイズ:0.4μm)(B、D)中でインキュベートした。次いで、肥満細胞をIgEで感作し、抗原で攻撃した。β-ヘキソサミニダーゼ(C、D)及びTNF-α(A、B)をそれぞれ刺激の20分後及び3時間後に上清中で測定した。
【0063】
図25:生エル・カゼイは、BMMCにおけるIgE-誘導カルシウム応答を阻害する。BMMCを一晩、PBS又は100細菌/細胞の比の生エル・カゼイとインキュベートし、IgEで感作した。次いで、肥満細胞に、Fluo-3を負荷し(A)又は負荷せずに(B)、抗原で攻撃した。相対的な細胞内Ca2+濃度を時間の関数としてフローサイトメトリーによりモニターした(A)。β-ヘキソサミニダーゼ放出を刺激の20分後に上清中で測定した(B)。
【0064】
図26:生エル・カゼイは、BMMCにおけるIgE-誘導細胞内シグナル伝達を阻害する。BMMCを一晩、PBS又は100細菌/細胞の比の生エル・カゼイとインキュベートした。次いで、肥満細胞をIgEで感作し、示した時間、抗原で攻撃した。細胞溶解液を電気泳動し、示した抗体と共にウェスタンブロッティングに付した。
【0065】
図27:生エル・カゼイは、PMA及びイオノマイシン-誘導BMMC活性化を阻害する。BMMCを一晩、PBS又は100細菌/細胞の比の生エル・カゼイとインキュベートし、PMA+イオノマイシンで刺激した。β-ヘキソサミニダーゼ(A)及びTNF-α(B)をそれぞれ刺激の20分後及び3時間後に上清中で測定した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(a)骨髄由来肥満細胞(BMMC)の表現型、(b)BMMCによるTLRタンパク質の発現、(c)BMMCによるTLR転写産物の発現を示す。
【図2】(a)プロバイオティクスに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)プロバイオティクスに曝露したBMMCによるTNF-α分泌
【図3】(a)感作及びAgでの攻撃の前にプロバイオティクスに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にプロバイオティクスに曝露したBMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図4】(a)感作及びAgでの攻撃の前に生エル・カゼイに曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前に生エル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図5】感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露した腹膜細胞由来肥満細胞(PCMC)からのβ-ヘキソサミニダーゼ放出を示す。
【図6】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したラット好塩基球性白血病(RBL)からのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したRBLによるTNF-α分泌を示す。
【図7】PMA-イオノマイシンでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図8−1】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露し、細菌の非存在下で3時間インキュベートしたBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出を示す。
【図8−2】(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露し、細菌の非存在下で種々の期間インキュベートしたBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出を示す。
【図9】エル・カゼイに曝露したBMMCのヨウ化プロピジウム(PI)/アネキシンV標識を示す。
【図10】(a)エル・カゼイに曝露したBMMCによるFcεRI発現、(b)エル・カゼイに曝露したBMMCへのIgE結合を示す。
【図11】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに種々の期間曝露したBMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに種々の期間曝露したBMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図12】感作及びAgでの攻撃の前にメンブレンで隔てたエル・カゼイに曝露したBMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図13】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したTLR-2/TLR-4-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したTLR-2/TLR-4-欠損BMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図14】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したMyD88-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したMyD88-欠損BMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図15】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したNOD2-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したNOD2-欠損BMMCによるTNF-α分泌を示す。
【図16】感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したFcγRIIB-欠損BMMCからのβ-ヘキソサミニダーゼ放出を示す。
【図17】(a)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおける細胞内シグナル伝達タンパク質発現及びリン酸化、(b)感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおける転写因子活性化を示す。
【図18】感作及びAgでの攻撃の前にエル・カゼイに曝露したBMMCにおけるカルシウム流入を示す。
【図19】エル・カゼイはヒト好塩基球活性化を阻害することを示す。
【図20】生エル・カゼイは、IgE-及びIgG-誘導腹膜細胞由来肥満細胞(PCMC)活性化を阻害することを示す。
【図21】生エル・カゼイは、骨髄由来肥満細胞(BMMC)活性化を誘導しないことを示す。
【図22】生エス・サーモフィラスは、IgE-誘導BMMC活性化を阻害しないことを示す。
【図23】生エル・カゼイ由来代謝産物は、IgE-誘導BMMC活性化を阻害しないことを示す。
【図24】生エル・カゼイによるIgE-誘導BMMC活性化の阻害は、細胞と細菌との直接の接触を必要とすることを示す。
【図25】生エル・カゼイは、BMMCにおけるIgE-誘導カルシウム応答を阻害することを示す。
【図26】生エル・カゼイは、BMMCにおけるIgE-誘導細胞内シグナル伝達を阻害することを示す。
【図27】生エル・カゼイは、PMA及びイオノマイシン-誘導BMMC活性化を阻害することを示す。
【実施例】
【0067】
実施例
下記の実験は、以下の材料及び方法を用いて行った。
細胞培養物
大腿骨の骨髄細胞を回収し、10% FCS、0.2% 2-メルカプトエタノール、100IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを補ったOpti-MEM + GlutaMAX-I (完全Opti-MEM)、及びマウスIL-3を分泌するX63トランスフェクタントの4%上清(Dr. P. Dubreuil, Institut de Cancerologie et d'Immunologie, Marseille, France)中で培養した。培養物を、ペレット化した細胞を新鮮な培養培地に3×105/mlの濃度で再懸濁することにより、3日ごとに継代した。
【0068】
腹膜細胞は、2mlのRPMI 1640をi.p.注射したマウスから回収した。これらを、1×106/mlで、マウスSCFを分泌するCHOトランスフェクタントの4%上清(Dr. P. Dubreuil)を補った完全Opti-MEM中に播種した。24時間後に、非接着細胞を除去し、新鮮な培養培地を接着細胞に加えた。3日後、非接着細胞及びトリプシン-SDTAを用いて回収した接着細胞を採集し、ペレット化し、新鮮な培養培地に3×105/mlの濃度で再懸濁した。同じ手順を週に2回繰り返した。3〜9週間経過した培養物を実験に用いた。培養試薬は、Invitrogen Life Technologiesから入手した。
【0069】
ラット好塩基性白血病細胞は、10% FCS、100IU/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補ったRPMI 1640+GlutaMAX-I中で培養した。
Raw 264.7細胞は、10% FCS、100IU/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補ったDMEM+GlutaMAX-I中で培養した。
【0070】
細胞プレインキュベーション
細胞は、細菌、PBS又はスタウロスポリンと、10% FCSを補ったOpti-MEM+GlutaMAX-I及びマウスIL-3を分泌するX63トランスフェクタントの4%上清中でプレインキュベートした。
【0071】
細胞感作
細胞は、IgE抗-DNPを用いて、10% FCS及び4% Hepesを補ったRPMI 1640+GlutaMAX-I中で感作した。
【0072】
細胞刺激
細胞は、細菌、PMA/イオノマイシン又はDNP-BSAを用いて、10% FCS及び4% Hepesを補ったRPMI 1640+GlutaMAX-I中で刺激した。
【0073】
細胞標識
細胞を、2.4G2及びビオチン、PE、FITC、APC-標識抗体と、0.2% FCSを補ったPBS中でインキュベートした。
細胞を、PI/アネキシンV-APCと、結合バッファー(BD Biosciences)中でインキュベートした。
細胞を、Fluo3AMと、0.2%プルロニックを補ったRPMI 1640+GlutaMAX-I中でインキュベートした。
【0074】
実施例1:照射ラクトバチルス・カゼイによるBMMCのIgE-誘導活性化の阻害
用いたモデル細胞は、マウス骨髄由来肥満細胞(BMMC)であり、この細胞におけるFcεRI、FcγRIIIA及びFcγRIIBの発現を確認した。これらは幹細胞因子受容体kit(CD117)も発現するが、マクロファージ(Mac1)マーカー、B細胞(CD19)マーカー、顆粒球(GR1)マーカーは発現しない(図1a)。BMMCは、利用可能な抗体での間接免疫蛍光による評価では、膜TLR-2もTLR-4も検出可能に発現しなかった(図1b)が、RT-PCR分析による評価では、TLR-1、2、4、5、6、MD-2、MyD88及びCD14をコードする転写産物を含んでいた(図1c)。IgE抗体で感作し、特異抗原で攻撃すると、BMMCはβ-ヘキソサミニダーゼを放出し、TNF-αを分泌する。
【0075】
5つの細菌株を、肥満細胞活性化に対する効果について試験した:
− CNCM(Collection Nationale de Culture de Microorganismes, 25 rue du Docteur Roux, Paris)に、1994年12月30日に番号I-1518で寄託されたラクトバチルス・カゼイ亜種パラカゼイ、本明細書の実施例では「エル・カゼイ」と表示する;
− ラクトバチルス・パラカゼイDN-114 120;
− CNCMに、1999年5月31日に番号I-2219で寄託されたビフィドバクテリウム・ブレベ;
− ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum) DSM 9843;及び
− CNCMに、2002年1月24日に番号I-2273で寄託されたストレプトコッカス・サーモフィラス。
【0076】
これら細菌を、先ず、肥満細胞を活性化する能力について試験した。この目的のために、細菌を照射に付し、PBSに再懸濁し、BBMCとインキュベートした(1000細菌/細胞)。20分間又は3時間インキュベートしたとき、試験した6つの細菌株はいずれも、BMMCからのそれぞれβ-ヘキソサミニダーゼの放出又はTNF-αの分泌を誘導しなかった(図2a及び2b)。
【0077】
次いで、本発明者らは、BMMCの細菌への予めの曝露が、肥満細胞のその後のIgE-誘導生物学的応答に影響するかを調べた。BMMCと一晩インキュベートすると(1000照射細菌/細胞の比で)、いくつかの株が、β-ヘキソサミニダーゼの放出及びTNF-αの分泌を共に阻害することを本発明者らは見出した。他の株は阻害しなかった。1つの株であるエル・カゼイが、他の細菌より著しく効率的であった(図3a及び3b)。同じ条件下で、生エル・カゼイはまた肥満細胞活性化を阻害し、より低い細菌/細胞比で匹敵する阻害を誘導した(図4a及び4b)。実務上の理由から、その後の実験では照射細菌を用いた。得られた結果を下記に示す。
【0078】
A.エル・カゼイ誘導阻害の全般的な特徴
1.エル・カゼイは、BMMC及び実験室で開発された初代奨膜タイプ成熟肥満細胞の新規なモデル(Malbecら, 2007)において、IgE誘導応答に等しく影響を与えた(図5)が、株化した腫瘍肥満細胞RBL-2H3の応答には影響しなかった(図6a及び6b);
2.エル・カゼイは、BMMCのIgE-誘導応答だけでなく、PMA+イオノマイシン-誘導応答も阻害した(図7)。このことにより、エル・カゼイが、膜抗体受容体及び細胞内シグナル伝達の初期段階を迂回する非特異的活性化を阻害することが証明された;
3.阻害は一過性であった(図8a及び8b);
4.エル・カゼイは、肥満細胞の生存性を低下させなかった(図9);
5.エル・カゼイは、BMMCによるFcεRIの発現をわずかに低下させ、IgE抗体によるFcεRIの感作は影響されなかった。
【0079】
B.阻害が生じる実験条件
1.エル・カゼイとの予めのインキュベーションによる肥満細胞応答の阻害は、時間依存性である(図11aおよび11b);
2.阻害は、エル・カゼイ上清中に存在する可溶性産物では説明できないようであり、これは乳酸により誘導されなかった;
3.この知見を支持するように、インキュベーションの間エル・カゼイとBMMCとを0.4μmトランスウェルメンブレンで分離した場合、阻害が妨げられた。このことは、細胞と細菌との間の直接接触が必要であることを示している(図12)。
【0080】
C.エル・カゼイによる肥満細胞活性化の阻害に関与する機構
1.エル・カゼイは、a)TLR-2/TLR-4-欠損マウス(図13a及び13b)、b)MyD88-欠損マウス(図14a及び14b)、c)NOD2-欠損マウス(図15a及び15b)、及びd)FcγRIIB-欠損マウス(図16)に由来するBMMCのIgE-誘導応答を、wtマウスからのBMMCの応答と同程度に効率的に阻害した;
2.エル・カゼイは、ウェスタンブロッティングによる評価では、いくつかのシグナル伝達分子の発現を低下させた(図17);
3.エル・カゼイは、早期及び後期のFcεRI-依存性リン酸化事象を共に阻害した(図17);
4.エル・カゼイは、NF-κBリン酸化を亢進したが、NFκBの核移行に必要なIκB分解を低下させた(図17);
5.エル・カゼイは、Ca2+の細胞内濃度のIgE-誘導増加及びイオノマイシン-誘導増加を共に大きく阻害した(図18)。
【0081】
これら結果は、肥満細胞をエル・カゼイに数時間曝露することが、転写因子の活性化及びCa2+応答を導くFcεRIシグナル伝達だけなく、FcεRIを迂回する活性化シグナル(PMA+イオノマイシン)にも影響を及ぼしたことを示す。結果として、IgE-誘導肥満細胞分泌応答(脱顆粒及びサイトカイン分泌の両方)が著しく阻害された。
【0082】
実施例2:エル・カゼイによるIgE-誘導インビボ応答の阻害
エル・カゼイのインビボ効果は、主に、強制栄養法によりエル・カゼイに曝露したマウスにおいて調べる。先ず、受動局所又は全身アナフィラキシーを阻害する能力についてエル・カゼイを調べる。次いで、エル・カゼイ強制栄養に付されたマウスからのIgE-感作回腸セグメントによる肥満細胞メディエイターの抗原誘導放出を阻害する能力についてエル・カゼイを調べる。最後に、アレルギー(アレルギー性喘息及び食物アレルギー)のマウスモデル及び実験室で確立した自己免疫炎症性疾患(リウマチ性関節炎、脳脊髄炎)のモデルで、エル・カゼイ強制栄養の結果を調べる。
【0083】
実施例3:インビトロでのヒト肥満細胞及び好塩基球に対する照射エル・カゼイの効果
健常ヒトドナーからの赤血球除去血球を、マウス肥満細胞についてと同様の条件下でエル・カゼイに曝露し、IgEを介する刺激への応答を調べる。
図19に示す結果は、エル・カゼイがヒト好塩基球活性化を阻害することを証明している。
【0084】
実施例4:ヒトにおけるアレルギー及び自己免疫に対するエル・カゼイの効果
Actimel(登録商標)又はプラシーボを与えられた健常群及びアレルギー患者群を、臨床試験に含める。自己免疫疾患(リウマチ性関節炎、多発性硬化症又は水泡性類天疱瘡)の患者も、別の群に含め、2型糖尿病の患者も含める。
【0085】
実施例5:目的とする新たなプロバイオティクスの探索
マルチウェルプレートにおける自動化インビトロアッセイを、プロバイオティクスの大きなライブラリーをスクリーニングするために確立する。このスクリーニングにより可能性のある目的とする新たなプロバイオティクスが明らかになれば、それらをエル・カゼイについてと同じ実験手順を用いて調べる。
【0086】
実施例6:肥満細胞活性化に対する生エル・カゼイの効果
実施例1に記載したものと同じ実験を、照射細菌の代わりに生エル・カゼイを用いて行った。図20〜27に示す結果は、照射細菌を用いて肥満細胞について観察された効果が、生エル・カゼイを用いても観察されることを示している。
【0087】
【表1−1】
【表1−2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満細胞活性化の阻害用組成物の製造のための、ラクトバチルス・カゼイ(エル・カゼイ)株及び/又はビフィドバクテリウム・ブレベ(ビー・ブレベ)株の使用。
【請求項2】
IgE-誘導肥満細胞活性化の予防用組成物の製造のための請求項1に記載の使用。
【請求項3】
アレルギー又はアレルギー発現の予防、緩和又は治療用組成物の製造のための請求項2に記載の使用。
【請求項4】
IgG-誘導肥満細胞活性化の予防用組成物の製造のための請求項1に記載の使用。
【請求項5】
自己免疫疾患の予防、緩和又は治療用組成物の製造のための請求項4に記載の使用。
【請求項6】
2型糖尿病の予防、緩和又は治療用組成物の製造のための請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記エル・カゼイ株がエル・カゼイ亜種パラカゼイ株である請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記エル・カゼイ株が、CNCMに、1994年12月30日に番号I-1518で寄託された株である請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記ビフィドバクテリウム・ブレベ株が、CNCMに、1999年5月31日に番号I-2219で寄託された株である請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物が食品サプリメント及び/又は機能性食品である請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が発酵乳製品である請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属及びストレプトコッカス属から選択される少なくとも1種の他の細菌株をさらに含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、ストレプトコッカス・サーモフィラス及びラクトバチルス・ブルガリカスからなる群より選択される少なくとも1種の細菌株を含む請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が医薬品である請求項1〜9、12及び13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記細菌が生菌で用いられる請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記細菌が死滅した細胞全体で用いられる請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記組成物が前記細菌の細菌溶解液又は細菌画分を含む請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記組成物が、該組成物の摂取が肥満細胞と該組成物に含まれる細菌、細菌溶解液及び/又は細菌画分との直接接触を導くように処方されている請求項1〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
(a)肥満細胞を、スクリーニングする細菌と少なくとも1時間インキュベートする工程;
(b)前記細菌を取り出す任意工程;
(c)肥満細胞に活性化剤を加える工程;及び
(d)肥満細胞の活性化を測定する工程
を含んでなる、抗体による肥満細胞の活性化を阻害する組成物の製造に用いることができる細菌株を同定するためのスクリーニング方法。
【請求項20】
工程(c)で用いられる活性化剤が、予め形成されたIgG/抗原複合体、カルシウムイオノフォア、LPS、PMA、イオノマイシン、タプシガルジン及びこれらの2種以上の混合物からなる群より選択される請求項19に記載のスクリーニング方法。
【請求項21】
(a)肥満細胞を、スクリーニングする細菌と少なくとも1時間インキュベートする工程;
(b)前記細菌を取り出す任意工程;
(c)肥満細胞をIgE抗体とインキュベートする工程;
(d)肥満細胞に特異抗原を加える工程;及び
(e)肥満細胞の活性化を測定する工程
を含んでなる、抗体による肥満細胞の活性化を阻害する組成物の製造に用いることができる細菌株を同定するためのスクリーニング方法。
【請求項22】
工程(d)又は(e)が、肥満細胞により放出されるベータ-ヘキソサミニダーゼ及び/又はTNF-アルファ、及び/又は肥満細胞により放出又は分泌される任意の生成物、及び/又は肥満細胞活性化に伴う任意の細胞変化のレベルを測定することにより行われる請求項19〜21のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項1】
肥満細胞活性化の阻害用組成物の製造のための、ラクトバチルス・カゼイ(エル・カゼイ)株及び/又はビフィドバクテリウム・ブレベ(ビー・ブレベ)株の使用。
【請求項2】
IgE-誘導肥満細胞活性化の予防用組成物の製造のための請求項1に記載の使用。
【請求項3】
アレルギー又はアレルギー発現の予防、緩和又は治療用組成物の製造のための請求項2に記載の使用。
【請求項4】
IgG-誘導肥満細胞活性化の予防用組成物の製造のための請求項1に記載の使用。
【請求項5】
自己免疫疾患の予防、緩和又は治療用組成物の製造のための請求項4に記載の使用。
【請求項6】
2型糖尿病の予防、緩和又は治療用組成物の製造のための請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記エル・カゼイ株がエル・カゼイ亜種パラカゼイ株である請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記エル・カゼイ株が、CNCMに、1994年12月30日に番号I-1518で寄託された株である請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記ビフィドバクテリウム・ブレベ株が、CNCMに、1999年5月31日に番号I-2219で寄託された株である請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物が食品サプリメント及び/又は機能性食品である請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が発酵乳製品である請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属及びストレプトコッカス属から選択される少なくとも1種の他の細菌株をさらに含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、ストレプトコッカス・サーモフィラス及びラクトバチルス・ブルガリカスからなる群より選択される少なくとも1種の細菌株を含む請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が医薬品である請求項1〜9、12及び13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記細菌が生菌で用いられる請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記細菌が死滅した細胞全体で用いられる請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記組成物が前記細菌の細菌溶解液又は細菌画分を含む請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記組成物が、該組成物の摂取が肥満細胞と該組成物に含まれる細菌、細菌溶解液及び/又は細菌画分との直接接触を導くように処方されている請求項1〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
(a)肥満細胞を、スクリーニングする細菌と少なくとも1時間インキュベートする工程;
(b)前記細菌を取り出す任意工程;
(c)肥満細胞に活性化剤を加える工程;及び
(d)肥満細胞の活性化を測定する工程
を含んでなる、抗体による肥満細胞の活性化を阻害する組成物の製造に用いることができる細菌株を同定するためのスクリーニング方法。
【請求項20】
工程(c)で用いられる活性化剤が、予め形成されたIgG/抗原複合体、カルシウムイオノフォア、LPS、PMA、イオノマイシン、タプシガルジン及びこれらの2種以上の混合物からなる群より選択される請求項19に記載のスクリーニング方法。
【請求項21】
(a)肥満細胞を、スクリーニングする細菌と少なくとも1時間インキュベートする工程;
(b)前記細菌を取り出す任意工程;
(c)肥満細胞をIgE抗体とインキュベートする工程;
(d)肥満細胞に特異抗原を加える工程;及び
(e)肥満細胞の活性化を測定する工程
を含んでなる、抗体による肥満細胞の活性化を阻害する組成物の製造に用いることができる細菌株を同定するためのスクリーニング方法。
【請求項22】
工程(d)又は(e)が、肥満細胞により放出されるベータ-ヘキソサミニダーゼ及び/又はTNF-アルファ、及び/又は肥満細胞により放出又は分泌される任意の生成物、及び/又は肥満細胞活性化に伴う任意の細胞変化のレベルを測定することにより行われる請求項19〜21のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8−1】
【図8−2】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8−1】
【図8−2】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2011−505349(P2011−505349A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535473(P2010−535473)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003690
【国際公開番号】WO2009/068997
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(501474748)インスティティ・パスツール (27)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【住所又は居所原語表記】28,rue du Docteur Roux,F−75724 Paris Cedex 15 FRANCE
【出願人】(500223925)
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003690
【国際公開番号】WO2009/068997
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(501474748)インスティティ・パスツール (27)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【住所又は居所原語表記】28,rue du Docteur Roux,F−75724 Paris Cedex 15 FRANCE
【出願人】(500223925)
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
【Fターム(参考)】
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