説明

育児用防寒具およびその着用方法

【課題】保育者、乳幼児共に着用可能であり、着用時、本体下方からの冷気の侵入を防ぎつつファッション性に優れた育児用防寒具およびその着用方法を提供する。
【解決手段】ほぼ左右対称型である本体を保育者の脇の下を通し乳幼児と共に包み込むように着用する育児用防寒具1であって、突出した乳幼児部から保育者の腰部にかけての余分な布地を畳み込み、帯状に形成された本体下方左右部5,6をそれぞれ保育者のウエスト部後方にまわして係止して育児用防寒具を着用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抱っこ具を用いて抱っこしている保育者と抱っこされた乳幼児のための育児用防寒具およびその着用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抱っこ具を用いて乳幼児と外出する際の育児用防寒具としては、図11に示されたように本体上方左右部に取り付けられた専用クリップ15を用い抱っこ具に装着させて乳幼児のみを防寒させる乳幼児用ケープ14がある。このような乳幼児用ケープ14の中には本体下方中央部にスリットを有し、本体下方左右両端部およびスリットに係止具16を設け、本体下方部を使用状況に応じて筒型もしくは乳幼児の脚を覆うようにズボン型に変形させる機能を有するものもある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、保育者と乳幼児共に着用できるものとしては図12に示されたように乳幼児分のスペースを確保するべく補助布であるダッカー18が主に線ファスナーによって取り付けられた通称ママコート17がある。ダッカー18の多くは子どもが乳幼児期を過ぎ抱っこする必要の無くなった場合に取り外し可能であり、ダッカー18を取り外してしまえばママコート17は通常のコートとして使用できる。そして、このようなママコート17には図13に示されたようにダッカー18の内側に乳幼児の脚を入れ保温するための専用ポケット19が取り付けられているものも多い(例えば特許文献2参照)。
【0004】
更に、古来よりある通称かめのこと呼ばれるおんぶ用防寒具を現代風に改良し、着脱の手間を省くべく紐による結び留めに代わって他の係止具を採用したものや保育者側の防寒や保育者の主に胸元の体形隠しのために袖無しスモックに近いデザインにしたもの(以下スモック型おんぶ用防寒具とする。)もある。そしてこれらはしばしば乳幼児のおんぶ時のみならず抱っこ時にも使用可能とされている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
一方、抱っこ具に関して考察する。昨今、図14に示されたように保育者の肩に肩紐21を掛け乳幼児を支えるタイプの抱っこ具20に代わり、図15に示されたように保育者のウエスト部に腰ベルト23をまわして保育者の肩と腰に乳幼児の体重を分散させるタイプの腰ベルト付抱っこ具22が人気である。このタイプの更なる利点は抱っこされた乳幼児の脚が大きく開くこととなり乳幼児期に罹患しやすい股関節脱臼の予防につながることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−3084号公報
【特許文献2】特開2006−104590号公報
【特許文献3】特開2010−1573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような特許文献1に示された乳児用ケープ14や特許文献2に示されたママコート17等従来の育児用防寒具においては、乳幼児を抱っこした状態で使用するという性質上、抱っこされた乳幼児に被さった布地がそのまま垂れ下がり、これにより育児用防寒具下方の開きは大きくなり冷気の侵入は免れない。更には突出した乳幼児部から垂れ下がったままの布地により全体のシルエットの横幅は不必要に大きくなりファッション性は著しく損なわれている。
【0008】
特許文献1に示された乳幼児用ケープ14においては、乳幼児のみの防寒を目的としており保育者は別に防寒せねばならない。そして気温の寒暖等により着脱の必要が生じた際、保育者と乳幼児の二人分の手間がかかり更には手荷物も増えることとなる。その結果、保育者は着脱の必要な場合でもつい面倒になり乳幼児の体温調節に差し障る事態になりがちである。
【0009】
また、特許文献2に示されたママコート17においては、乳幼児の脚の保温のためダッカー18に専用ポケット19が内蔵されているものもあるが、前述のとおり昨今主流の腰ベルト付抱っこ具22を使用時には乳幼児の脚は大きく開き対応できない。
【0010】
特許文献3に示されたスモック型おんぶ用防寒具を抱っこ時に使用するにおいては、保育者が更なる防寒のため上着を着用の際に乳幼児側の体温調節の必要が生じた場合、スモック型おんぶ用防寒具の着脱が困難になる。
【0011】
従来のいかなる育児用防寒具にも共通の問題点としては、保育者、乳幼児別々の体温調節が不可能または困難なことである。
【0012】
本発明は以上に述べた現状を打開し、全く新しい観点からなる保育者と乳幼児のための育児用防寒具およびその着用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために本発明は直截的かつ単純明快に防寒できるように、保育者の脇の下を通り、突出した抱っこされた乳幼児部から保育者の腰部にかけて、本体が保育者および乳幼児の身体にフィットするように構成されたことを特徴とする育児用防寒具である。ほぼ左右対称型の布地からなる本体であり、前記本体上方部は抱っこ具を用いて抱っこしている保育者と抱っこされた乳幼児双方を包み込み乳幼児側において重ね合わさる幅を有し、下方右部および下方左部は帯状に形成されており、前記帯状右部および帯状左部はそれぞれ保育者と乳幼児双方を包み込んでから保育者のウエスト部後方にて係止することが可能な長さを有し、着用時、帯状右部または帯状左部を挿通するための通し穴を備えた育児用防寒具である。
【0014】
更に本発明は、本体を保育者の後方から脇の下に通し前面の抱っこされた乳幼児と共に包み込むようにして係止させ、突出した乳幼児部から保育者の腰部にかけての余分な布地を畳み込み、帯状に形成された下方右部および下方左部をそれぞれ保育者のウエスト部後方にまわして係止する育児用防寒具の着用方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、従来のあらゆる育児用防寒具の有する様々な問題点を根本的に解決したものである。
【0016】
請求項1記載の発明によれば、本体は保育者、乳幼児共に着用するので更なる防寒の必要のない限りはこのひとつで済む。また、着用時、保育者と乳幼児の密着感の高まりにより双方の精神的安定感も生まれる。更には育児中のみならず、妊娠中の大きくなった腹部により上着の前面合わせ部が閉まらなくなった場合にも適応できる。
【0017】
また、請求項1記載の発明によれば、乳幼児側を更に防寒させたい場合には、本体上下部共しっかりと保育者および乳幼児の身体にフィットするので、本体着用前、乳幼児側にブランケット等を挟んでも落下の心配はない。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、前面乳幼児側は布地が重なるため保育者側より暖かく、保育者側に更なる防寒の必要が生じた際、保育者が手持ちの上着を羽織ることができる。更に本体は袖または肩紐等を備えていないことから、保育者が上着を羽織ったままの状態で本体の着脱が可能であり、保育者、乳幼児別々の体温調節が容易になる。
【0019】
また、請求項2記載の発明によれば、突然の雨天時等乳幼児の頭部を更に保護したい場合、内側になった上方右部または上方左部をずらし乳幼児の頭部を完全に覆うことができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、 着用時抱っこされた乳幼児の頭部に位置する本体の上方部は丸みのある輪郭で形成されており、この丸みのある輪郭で形成された上方部により乳幼児の頭部を冷気から保護することができ、且つ乳幼児が眠ってしまった場合に頭部を支えることができる。更に授乳の際には充分な目隠しとして機能する。また、乳幼児の頭部や保育者の胸元を外気に触れさせたい場合には、図4に示されたように丸みのある輪郭で形成された本体上方部を折り返し着用することもできる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、突出した乳幼児部から保育者腰部にかけての余分な布地を畳み込み、帯状右部および帯状左部をそれぞれ、保育者のウエスト部後方にまわして係止し着用するので、図2、3に示されたように本体下方部は保育者および乳幼児の身体にフィットし、冷気の侵入をほぼ完全に防ぎつつスマートなシルエットが実現する。また着用時、本体前面下方部は左右の布地が切り込んだ形に重なることにより、いかなる抱っこ具を装着時にも乳幼児の脚はほぼ完全に包まれつつ保育者の運動の妨げにならない。更にはファッションデザイン性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の育児用防寒具の一実施例を示す平面図。
【図2】同着用状態を示す斜視図。
【図3】同着用状態を示す右側面図。
【図4】同着用状態を示す斜視図。
【図5】図1に示されたものを裏側にして持った着用方法を示す正面図。
【図6】同着用方法を示す斜視図。
【図7】同着用方法を示す後方斜視図。
【図8】同着用方法を示す背面図。
【図9】体躯の細い保育者の着用状態を示す図。
【図10】体躯の大きな保育者の着用状態を示す図。
【図11】従来の乳児用ケープの着用状態を示す斜視図。
【図12】従来のママコートの着用状態を示す斜視図。
【図13】図12において専用ポケットを示す斜視図。
【図14】一般的な抱っこ具の装着状態を示す斜視図。
【図15】腰ベルト付抱っこ具の装着状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の育児用防寒具を実施するための最良の形態を図1に基づいて説明する。
【0024】
図1に示されたように育児用防寒具すなわち本体1はほぼ左右対称型を基本としている。本体1上方部2、3、4は抱っこ具を用いて抱っこしている保育者と抱っこされた乳幼児双方を包み込み、乳幼児側において重ね合わさる幅を有し、下方右部および下方左部は帯状に形成されており、前記帯状右部5および帯状左部6はそれぞれ、保育者と乳幼児双方を包み込んでから保育者のウエスト部後方にて係止することが可能な長さを有し、着用時、帯状右部5を挿通するためのスリット状の通し穴7を備えている。なお、図示された前記実施例のように帯状右部および帯状左部はその先端部が細くなるように形成されているものに限らず、ボタンやバックル等係止具を備えていても良い。
【0025】
本体1上方部2、3、4は三つの山型の輪郭で形成されており、うち上方右部2および上方左部3はそれぞれ上方中央部4から続き上端部に向かい左右端にかけて丸みのある輪郭で繋がっている。上方中央部4の輪郭は上方右部2および上方左部3に比べなだらかな山型の輪郭で形成されている。これにより着用時保育者の脇の下に位置する部分が切り込んだ形になり、前面で山型に重なった上方右部2および上方左部3を折り返す際、折り返し部分の左右両端を美しく保つことができる。また、上方中央部4の有する緩やかな山型の輪郭により、着用時保育者背面の衣服との摩擦により本体1後方の脱落を防ぐことができる。
【0026】
本体1の下端は直線状に形成されており、上方右部2および上方左部3のそれぞれ丸みを持って入り込んだ部分である右側凹部10および左側凹部11からそれぞれ左右下端に向かう直線状部と形成され、帯状右部5および帯状左部6となる。このようにして帯状右部5および帯状左部6は先端になるほど細く形成されるので、体躯の大きな保育者が着用の際、帯状右部5および帯状左部6が短くなっていても結びやすい。
【0027】
右側凹部10および左側凹部11はそれぞれ、着用時、帯状右部5および帯状左部6が引っ張られ加えられる力を分散するべく曲線で形成されている。
【0028】
スリット状の通し穴7は着用時、帯状右部5が円滑に通されるべく左斜め上に向かって配されている。また、帯状右部5が通された際の通し穴7の変形による開きを最小限に抑え、且つ通し穴7自体の強度を保つべく穴の両端が鳩目状になる形で形成されている。
【0029】
本体上方部の係止方法としては、表側の上方右部2の上方中央部4寄りからやや右肩上がりに、例えば帯状の面ファスナーループ型8が配されている。一方、上方左部3の裏側に、その輪郭に沿って、例えば円形の面ファスナーフック型9が複数箇所任意の位置に配されている。任意の位置としては上方左部3の最上端から最左端の間が望ましい。なお、前記実施例に限らず面ファスナーフック型9は面ファスナーループ型8同様帯状に形成されたものでも良いし、面ファスナーループ型8は面ファスナーフック型9同様複数箇所に配されたものでも良い。更に言うなれば他の係止具を配されていても良い。
【0030】
本体左右上端部に対称的に右側印12および左側印13が設けられていると、着用時、すみやかに保育者の背中中心に本体の中心を合わせることが可能になる。
【0031】
本体1の素材としては、伸縮性、保温性に富んだものが好ましい。また本体1は一枚の布地に限らず表地および裏地の二枚の布地を縫い合わせたものでも良い。
【0032】
上述の育児用防寒具すなわち本体1の着用方法を図5〜図8に基づいて説明する。
【0033】
図5に示されたように、抱っこ具を用いて縦に乳幼児を抱っこした保育者は本体1を背中側にまわし、右手に上方右部2を、左手に上方左部3を持つ。この時右側印12および左側印13を目視で合わせるようにして本体1中心が保育者の背中中心に位置するように調整する。
【0034】
次に上方右部2で乳幼児を覆うようにして被せ、上方左部3を更にその上に被せる。そして保育者および乳幼児の体躯に合わせ、内側になった上方右部2に配されている面ファスナーループ型8の任意の位置に面ファスナーフック型9のいずれかで係止させる。この時、乳幼児の頭部に位置する本体上端まわりのサイズ調整には面ファスナーフック型9の選択を、保育者、乳幼児双方の胴まわりのサイズ調整には面ファスナーループ型8の係止位置を以て行い、その組み合わせにより微妙なサイズ調整が可能である。
【0035】
そして図6に示されたように、帯状右部5をスリット状通し穴7に通し左手に持つ。次に図7に示されたように帯状左部6を右手に持ち保育者のウエスト位置まで持ち上げるようにして外側になった上方左部3の余分な布地を畳み込むようにする。
【0036】
最後に図8に示されたように帯状右部5および帯状左部6を保育者のウエスト部後方にて結んで係止する。
【0037】
本発明の育児用防寒具すなわち本体1を脱ぐ場合にはこれと逆の手順を行う。
【0038】
なお、体躯の細い保育者が着用する際は図9に示されたように、上方左部3の端部を矢印Aの方向に引き下げ、面ファスナーフック型9の選択をより上位置のものにすることで本体上端まわりのサイズを小さくすることができる。また上方左部3全体を矢印Bの方向に引き寄せ、面ファスナーループ型8の選択位置をより深くすることで保育者、乳幼児双方の胴まわりのサイズを小さくすることができる。
【0039】
体躯の大きな保育者が着用する際は図10に示されたように、上方左部3の端部を矢印Aと逆方向に引き上げ、面ファスナーフック型9の選択をより下位置のものにすることで本体上端まわりのサイズを大きくすることができる。また上方左部3全体を矢印Bと逆方向に緩ませ、面ファスナーループ型8の選択位置をより浅くすることで保育者、乳幼児双方の胴まわりのサイズを大きくすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1:育児用防寒具(本体)
2:上方右部
3:上方左部
4:上方中央部
5:帯状右部
6:帯状左部
7:通し穴
8:面ファスナーループ型
9:面ファスナーフック型
10:右側凹部
11:左側凹部
12:右側印
13:左側印
14:乳児用ケープ
15:専用クリップ
16:係止具
17:ママコート
18:ダッカー
19:専用ポケット
20:抱っこ具
21:肩紐
22:腰ベルト付抱っこ具
23:腰ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保育者と乳幼児のための育児用防寒具において、着用時、保育者の脇の下を通り抱っこされた乳幼児部から保育者の腰部にかけて本体下方部が保育者および乳幼児の身体にフィットするように構成されたことを特徴とする育児用防寒具。
【請求項2】
ほぼ左右対称型の布地からなる本体であり、前記本体上方部は抱っこ具を用いて抱っこしている保育者と抱っこされた乳幼児双方を包み込み乳幼児側において重ね合わさる幅を有し、下方右部および下方左部は帯状に形成されており、前記帯状右部および帯状左部はそれぞれ、保育者と乳幼児双方を包み込んでから保育者のウエスト部後方にて係止することが可能な長さを有し、着用時、帯状右部または帯状左部を挿通するための通し穴を備えた請求項1記載の育児用防寒具。
【請求項3】
着用時、抱っこされた乳幼児の頭部に位置する本体が、丸みのある輪郭で形成された上方部を有する請求項1または請求項2記載の育児用防寒具。
【請求項4】
本体を保育者の後方から脇の下に通し前面の抱っこされた乳幼児と共に包み込むように係止させ、突出した乳幼児部から保育者の腰部にかけて外側になった余分な布地を畳み込み、帯状に形成された下方右部および下方左部をそれぞれ保育者のウエスト部後方にまわして係止させる育児用防寒具の着用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−36123(P2013−36123A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170737(P2011−170737)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【特許番号】特許第5027327号(P5027327)
【特許公報発行日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(711007448)
【Fターム(参考)】