説明

育毛剤及び化粧水

【課題】本発明は、種々の形態の禿、薄毛等に対して、短期間で育毛効果を実感できる育毛剤を提供することを目的とする。また、栄養成分、保湿剤等の薬剤や種々の生薬等の配合に起因するべとつき等、使用感を低下することなく、さっぱりした使用感を示す安価な育毛剤を提供することを目的とする。さらに本発明は、肌のシミ、特に老齢性のシミを低減する化粧水を提供することを目的とする。
【解決手段】水又はアルコールによるトウガラシの抽出成分と水又はアルコールとが所定の割合で含まれる育毛剤及び化粧水であって、
前記所定の割合が、0.6mg〜13.0mgのトウガラシを初期温度40℃の水又はアルコール1000mlに浸漬し、0.5〜48時間放置して得られる割合であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は育毛剤に係り、特に、微量のトウガラシの抽出成分を含む育毛剤及び化粧水であって、発毛・育毛効果に優れ、かつ皮膚刺激性を抑えた安全性の高い育毛剤及び化粧水に関する。
【背景技術】
【0002】
トウガラシのエキスは、血行促進作用を有することから、種々の生薬や薬剤、栄養成分等と配合された育毛剤がよく知られている。
【0003】
例えば、乾燥したコノテガシワ125g、トウガラシ5.0g、センブリ5.0g及びアロエ160gを1000mlのエタノール(43%)水溶液で抽出した抽出液を用いた発毛促進剤が知られている(特許文献1)。また、生薬成分としてトウガラシ140gと、桑白皮、側柏葉等1470gの混合生薬を6000mlの50%エタノールで抽出した抽出液を用いた塗布用養毛剤等が開示されている(特許文献2)。これらの育毛剤において、トウガラシは育毛剤の主成分というよりは、どちらかというと、補助的成分として用いられている。
【0004】
また、通常、育毛剤中のトウガラシ抽出成分濃度は、アルコール液1000mlに対し5〜30g程度の割合で抽出する場合が一般的であり、人によっては、使用し続けると塗布部に炎症を起こす場合があることから、刺激や炎症をを緩和する薬剤を添加したり、あるいは塗布回数や塗布量を制限する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−45069
【特許文献2】特許2878597
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、10年ほど前に自身の健康診断で中性脂肪の値が高いことが分かり、これを下げるにはトウガラシを飲み続けるのがよいとの話を聞いて、トウガラシの水溶液を飲み始めたのが、本発明の契機となったのである。この水溶液は、トウガラシを水に浸漬させて、その成分を抽出しただけのものであり、このときのトウガラシ成分の濃度は、胃を刺激せずに服用可能な濃度で、微量の一味トウガラシを水に1日程度浸漬して成分を抽出した液である。
この抽出液を飲み続けると徐々に体調も良くなり、以来、トウガラシ抽出液を服用している。
【0007】
最近、トウガラシは血行を改善し育毛作用があることを耳にし、服用の際に、試しに自分の薄くなった頭に同じ抽出液を塗布してみた。刺激を感ずることがなく、またさっぱりした使用感があったので、毎日数回、塗布をしつづけたところ、20日程度で何となく見た目の感じが変わり、1ヶ月経過時には人からも声をかけられるようになり、発毛・育毛効果があることを実感した。
【0008】
以上のごとくして、トウガラシ抽出液は、その成分が極微量であれば、他に薬剤、栄養成分等を加えなくても高い発毛・育毛効果を有することが分かった。そこで、かかる知見を基に、トウガラシ抽出成分の濃度と育毛効果との関係を見いだすべく、若い人や年配の男性及び女性、30〜40年前に若禿げになった人や最近禿げ始めた人、円形脱毛症の人等、種々の形態の禿・薄毛の悩みを持つ被験者を探して、育毛剤を試してもらうことにより育毛効果を確信し、本発明の完成に至ったのである。
また、トウガラシ抽出液を使用し続けるうちに、頭部にあった老人性色素班がいつの間にか目立たなくなっていることが分かり、美白効果があることが分かった。
【0009】
すなわち、本発明は、種々の形態の禿、薄毛等に対して、短期間で発毛・育毛効果を実感できる育毛剤を提供することを目的とする。また、栄養成分、保湿剤等の薬剤や種々の生薬等の配合に起因するべとつき等、使用感を低下することなく、さっぱりした使用感を示す安価な育毛剤を提供することを目的とする。さらに、本発明は、肌のシミ、特に老齢性のシミを低減する化粧水を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の育毛剤は、水又はアルコールによるトウガラシの抽出成分と水又はアルコールとが所定の割合で含まれる育毛剤であって、
前記所定の割合が、0.6mg〜13.0mgのトウガラシを初期温度40℃の水又はアルコール1000mlに浸漬し、0.5〜48時間放置して得られる割合であることを特徴とする。
【0011】
すなわち、従来の育毛剤のように、種々の生薬、栄養成分、化学物質等を添加する必要はなく、単に、トウガラシの水又はアルコールによる抽出液だけであっても、抽出成分濃度を極めて小さな範囲とすることにより、高い発毛・育毛効果を発揮することができる。かかる低濃度で高い育毛効果を奏するという事実は、従来の常識を覆すものであり、驚くべきものである。しかも、トウガラシ成分が低濃度であることから、長期にわたって、毎日複数回使用しても、塗布部に発赤等の炎症を起こすことはなく、また、さっぱりした使用感の安全性の高い育毛剤である。
又、本発明の化粧水は、水又はアルコールによるトウガラシの抽出成分と水又はアルコールとが所定の割合で含まれる化粧水であって、
前記所定の割合が、0.6mg〜13.0mgのトウガラシを初期温度40℃の水又はアルコール1000mlに浸漬し、0.5〜48時間放置して得られる割合であることを特徴とする。
【0012】
ここで、本発明のトウガラシは、通常、赤トウガラシの果実を乾燥したものが用いられるが、これに限ることはなく、例えば沖縄のシマトウガラシの果実を乾燥したものを用いてもよい。
また、トウガラシ成分の抽出には、蒸留水が好適に用いられるが、エタノール等のアルコールを用いても良い。アルコールとして、泡盛等の酒類を用いることができるが、この場合蒸留酒が好ましく、10〜50度程度のものが好適である。アルコールは、特に柑橘類の抽出に好適に用いられる。
【0013】
なお、本発明の育毛剤及び化粧水は、最終的に、水又はアルコールとトウガラシ抽出成分とに上記した所定の量関係が維持されれば良く、抽出時に多量のトウガラシを用いてトウガラシ成分濃度の高い抽出液を作っておき、後でそれを所定の関係に希釈して育毛剤又は化粧水としても良い。この場合は、より高い生産性で製造することができる。
【0014】
なお、トウガラシの抽出成分には、種々のカプサイシンの他に、ビタミン類やミネラル等が含まれ、上記したような低濃度で従来にない効果が得られる事実がどの成分又は割合に起因しているか現在のところ不明であるが、後述するように、分析のため多量のトウガラシを用いた実験では、少なくともカプサイシンは検出されている。
【0015】
さらに、本発明の育毛剤は、柑橘類の水又はアルコール抽出成分を含むのが好ましく、細毛を太くする等の効果がより向上する傾向にある。ここで、柑橘類としては、シークワーサー、タンカン、キンカン等が用いられるが、これらに限定するものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の育毛剤は、上述したように、トウガラシ抽出成分をごく微量しか含ない、従来にない特異な育毛剤であるが、従来の育毛剤と比べて優れた発毛・育毛作用を有するとともに、特に女性の場合には、抜け毛量が短期間で大きく減少する。なお、これらの効果は温度が高いほど顕著になる傾向があり、春〜秋の暖かい季節であれば、1ヶ月〜2ヶ月の短期間で、発毛、太毛化を実感することができる。
【0017】
トウガラシ抽出成分が極めて微量であることから、毎日、多数回多量に使用しても、皮膚に発赤、炎症等を起こすことはない。従って、毎日、多数回使用することにより効果的に育毛作用を発揮させることができるが、毎日1〜2回使用し続けることにより、抜け毛の抑制、発毛、育毛効果が実感できる。特に、就寝前の使用が効果的である。また、炎症抑制等のための薬剤等を添加する必要がないことから、さっぱりした使用感が得られ、連続した使用を躊躇させるものではない。
また、本発明の化粧水は、美肌効果を有し、肌にできるシミ、特に老人性色素班の脱色に効果があり、使用開始後2〜3ヶ月程度でシミが薄くなってほとんど目立たなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
トウガラシ(エスビー食品株式会社製一味唐からし)を0.6mg、及び13.0mgを沸騰後40℃に冷却した水1000mlに漬け、撹拌して沈降させた後、30分及び48時間放置し、トウガラシ成分の抽出を行った。なお、放置している間、水は加熱していない。その後、この溶液をろ過しトウガラシ固形分を取り除き、スプレー容器につめて、種々の濃度のトウガラシ成分を含有するトウガラシ抽出液を作製した。
【0020】
このようにして作製したサンプルを育毛剤として20名の薄毛・禿の悩みをもつ人(30歳代から80歳代まで)に1〜3ヶ月間試用し続けてもらった。使用方法、頻度は、1日1〜5回、1回あたり男性でスプレ回数1〜2回、女性で4〜6回程度、頭全体(若しくは薄毛の部分)にスプレーし、指先で軽く擦り込んで馴染ませるようにしてもらった。また、必要に応じて、化粧水として用いてもらった。
【0021】
試験結果は次の通りである。すなわち、最も高濃度の13mg/48時間のサンプルでも、育毛剤として用いた場合は、1〜3ヶ月、毎日連続して使用しても刺激や炎症を気にする被験者はなく、安全性に問題はなかった。その一方で、化粧水として用いた場合には、かゆみを感じる被験者が1人いた。また、0.6mg/30分のサンプルも13mg/48時間のサンプルも育毛効果にほとんど違いは観られなかった。20名のうち19名のいずれの被験者は1ヶ月前後で何らかの改善があったとの実感をもっていた。残りの1名は、育毛効果が感じられるまで2.5ヶ月程度かかった。また、肌に老人性色素班がある被験者では、シミが薄くなっていることがわかった。
改善内容を分類するとだいたい以下の通りである。
【0022】
(グループA) 頭頂部全体が禿げ、周辺部だけに毛が残っている被験者
こののグループは、40歳代後半から80歳代までの人たち全てが、今まで何らかの育毛剤を試してみたが効果がなく、ほとんどあきらめている人たちである。
このグループの被験者でも、2週間〜1ヶ月前後で、頭頂部全体で産毛の発毛が観られ、特に側頭部の毛の生え際で顕著であった。その後も、側頭部の細い毛にコシが現れ、根元から太くなっている感触が得られた。
また、ある被験者(83歳、男性)は、禿げた部分に1cmx3〜4mm程度の茶色のシミやこめかみ部に直径1cm程度のシミ(老人性の色素班)があったが、3ヶ月経過後には、ほとんど気がつかない程度に薄くなっていることが分かった。また、別の被験者(53歳、男性)の場合、吹き出物の後の1cmx3cm程度のくすみや耳下から首にかけての茶色のくすみが1ヶ月程度でほとんど分からなくなっていた。すなわち、本実施例のトウガラシ抽出液は、育毛剤のみならず、美白効果を有する化粧水等に用いることができることが分かった。
【0023】
(グループB) 前頭部のみはげ上がり、頭頂部が薄い被験者
このグループは、育毛効果が特に顕著に現れたグループで、塗布開始後、早い人で1週間、その他は2週間程度で、抜け毛がめっきり少なくなるのが分かった。また、禿げた部分では産毛の発毛が観られた。
1ヶ月程度で、フワーッとして髪全体にコシがでてくるのが実感された。また、見た目も、頭全体が黒っぽく感じられるようになった。なお、女性被験者の場合で、育毛剤の使用を停止すると、2〜3日で髪のコシがなくなり、頭頂部や分け目が薄くなって見えるようになる例があった。また、円形脱毛症の被験者は3週間程度で、発毛が観られた。
【0024】
(グループC) 頭頂部が薄くなっている被験者
このグループの被験者は、グループBと同様に、抜け毛がなくなり、1ヶ月経過後には、髪の根元の太くなったように感じられ、髪全体にコシがでてくるのが実感された。さらに、髪の成長が速くなったように感じられた。
【0025】
(グループD) 額の生え際等を含め全体として薄毛(女性を含む)の被験者
使用開始から1週間〜2週間で抜け毛がなくなり、また、額の生え際で産毛の増加しているのが観られた。1ヶ月程度で、頭全体が黒っぽく感じられるようになった。また、眉毛が濃くなる被験者もあった。
また、女性被験者(52歳)の場合、耳の横にあったシミが2ヶ月程度でいつの間にか薄くなっていた例や、鼻から右頬にかけてあった1cmx3cmの焦茶色のしみが1.5月程度で2つ薄いしみ(直径5mmと1cm)になった例(54歳、女性)があった。
以上の通り、本実施例のトウガラシ抽出液は、短期のうちに発毛・育毛効果を発揮するとともに、老人性色素班等のシミを脱色する効果があることが分かる。
【0026】
(比較例1)
実施例1と同様にして、トウガラシ(5g)をエタノール(50%)1000mlに漬け込み、2週間放置して、エタノール抽出液中のトウガラシ成分濃度を、特許文献1に記載の割合と概略同一としたトウガラシ抽出液を作製した。
このトウガラシ抽出液は、臭いが強く、また皮膚を刺激するため、このままでは育毛剤として使用を継続するのは困難であった。
【0027】
なお、トウガラシ抽出液中のトウガラシ成分の濃度測定を日本食品分析センター(本部東京都渋谷区元代々木町52−1)に依頼した。測定法は高速液体クロマトグラフ法で、トウガラシ成分のカプサイシンの検出限界は0.1mg/100ml=1ppm)である。検出限界との関係から、測定用サンプルとして、実際のトウガラシ抽出液よりも遙かに多量のトウガラシを用いて抽出液を作製した。すなわち、実際の量(最小0.6mg、最大13.0mg)に対し約3300倍〜150倍程度に相当する量のトウガラシ(2g)を水1000mlに浸漬し、30分及び48時間放置したサンプル100ml(サンプル1、サンプル2)を用いて測定を行った。
【0028】
多量のトウガラシを用いた作製したサンプルであっても、いずれもトウガラシ成分の検出はできず、検出限界(0.1mg:1ppm)以下であることが分かった。すなわち、カプサイシン濃度は、最大でも、それぞれ、3.0x10−ppm、6.5x10−pm以下と極めて微量であり、育毛効果や美白効果を示す原因が何か現在のところ不明であるが、以上のように極めて低濃度のトウガラシ抽出水溶液が高い効果を発揮することが分かる。
一方、比較例1のサンプルは,6ppm(0.6mg/100ml)のカプサイシンが検出された。
【実施例2】
【0029】
トウガラシ(エスビー食品株式会社製一味唐からし)を1.8mg、生のシークワーサー3個を水1000ml及び泡盛(25度)1000mlの液に24時間漬け、トウガラシ成分及び柑橘類の抽出を行った。その後、この溶液をろ過し固形分を取り除いて、スプレー容器に詰めて育毛剤を作製した。
【0030】
このようにして作製した育毛剤を、6名の被験者に依頼して、実施例1と同様にして、育毛効果を調べた。
結果は、実施例1に比べて、毛がより太くなったり、成長が早まる傾向にあったが、その他は、実施例1と同様であった。なお、シークワーサーの代わりに、月桃や生姜を用いて同様に試してみたが、これらを加えた効果は特に観られなかった。
【0031】
なお、以上の実施例では、トウガラシの抽出液をそのまま育毛剤や化粧水として用いたが、本発明の割合であれば、多量のトウガラシを用いて予め高濃度の抽出液を作製しておき、これを所定の濃度に希釈して用いても良い。
【0032】
また、本発明の育毛剤は、気温が高いほど、効果がより一層高くなる傾向にあり、毎日少なくとも就寝時に使用するのが好ましい。また、上述したように、水又はアルコールのトウガラシ抽出液のみで十分育毛効果を奏するものであるが、必要に応じて、本発明の効果を損ねることのない範囲で、薬剤等を添加しても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水又はアルコールによるトウガラシの抽出成分と水又はアルコールとが所定の割合で含まれる育毛剤であって、
前記所定の割合が、0.6mg〜13.0mgのトウガラシを初期温度40℃の水又はアルコール1000mlに浸漬し、0.5〜48時間放置して得られる割合であることを特徴とする育毛剤。
【請求項2】
前記抽出成分はカプサイシンを含むことを特徴とする請求項1に記載の育毛剤
【請求項3】
前記抽出液による柑橘類の抽出成分を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の育毛剤。
【請求項4】
水によるトウガラシの抽出成分と水とが所定の割合で含まれる化粧水であって、
前記所定の割合が、0.6mg〜13.0mgのトウガラシを初期温度40℃の水1000mlに浸漬し、0.5〜48時間放置して得られる割合であることを特徴とする化粧水。

【公開番号】特開2010−241716(P2010−241716A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91330(P2009−91330)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(509097323)
【出願人】(509097334)
【Fターム(参考)】