説明

育毛剤

【課題】 精製されたプロアントシアニジンを用いた育毛剤よりも育毛効果が大きく、十分な育毛効果を有する育毛剤を提供する。
【解決手段】 植物体から抽出された植物体抽出物を有効成分とする育毛剤であって、上記有効成分として、プロアントシアニジンとプロアントシアニジン以外の成分とを含有しており、プロアントシアニジン以外の成分を、固形分中に、10質量%以上含有させた。好ましくは、植物体として松樹皮を用いることにより、効果の高い育毛剤を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体から抽出された抽出物(植物体抽出物)を有効成分とする育毛剤であって、上記植物体抽出物は、プロアントシアニジンとプロアントシアニジン以外の成分とを含有している育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プロアントシアニジンは、植物界において広く分布しているフラバン−3−オールを構成単位とする単純縮合型タンニンであり、近年になってプロアントシアニジンの頭髪に関する作用が明らかにされ、その用途が提案されつつある。
【0003】
特に、プロアントシアニジンの育毛効果については、分子構造の特定などにより、関与する有効成分が明らかとなってきている。
【特許文献1】特開昭59−101413号公報
【特許文献2】国際公開第96/000561号パンフレット
【特許文献3】特開2000−201650号公報
【特許文献4】特開2001−131027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1〜4に記載の精製されたプロアントシアニジンは、一定の育毛効果が認められるものの、その育毛効果は十分ではないという問題点があった。つまり、更に効果の高い育毛剤が望まれている。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、精製されたプロアントシアニジンを用いた育毛剤よりも育毛効果が大きく、十分な育毛効果を有する育毛剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、育毛効果を有する植物体抽出物について鋭意検討した。その結果、プロアントシアニジンだけでなく、プロアントシアニジン以外の成分をも含有させた場合に、優れた育毛効果が得られることを見出した。さらに、植物体抽出物のうち、樹皮抽出物(特に松樹皮抽出物)を用いれば、極めて優れた育毛効果があることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の育毛剤は、植物体から抽出された植物体抽出物を有効成分とする育毛剤であって、上記有効成分として、プロアントシアニジンとプロアントシアニジン以外の成分とを含有しており、上記プロアントシアニジン以外の成分は、植物体抽出物の固形分中に、10質量%以上含まれていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の育毛剤は、上記構成に加えて、上記植物体は樹皮である。つまり、樹皮抽出物を有効成分とする。
【0009】
さらに、好ましい本発明の育毛剤は、上記構成に加えて、上記植物体は松樹皮である。つまり、松樹皮抽出物を有効成分とする。
【0010】
また、本発明の育毛剤は、好ましくは、オリゴメリック・プロアントシアニジンが、植物体抽出物の固形分中に、20質量%以上含まれている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プロアントシアニジン以外の成分は育毛効果を有し、プロアントシアニジンとプロアントシアニジン以外の成分とが共存することにより、極めて高い育毛効果が得られる。その結果、精製されたプロアントシアニジンを用いた育毛剤よりも育毛効果が大きく、十分な育毛効果を有する育毛剤を提供することができる。さらにいえば、プロアントシアニジンの純度を高めることなく、高い効果を有する育毛剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の育毛剤について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、特許請求の範囲の記載における範囲内で、種々の変更が可能である。
【0013】
(植物体抽出物)
本発明の育毛剤は、植物から抽出された植物体抽出物を有効成分とする。まず、植物体抽出物について説明する。
【0014】
本発明において、植物体抽出物を得るための植物体には、プロアントシアニジンを含む植物体を用いる。そのような植物体としては、例えば、植物の葉、樹皮、種子、果物の皮、果物の種などが挙げられ、具体例としては、ブドウの種、松の樹皮、ピーナッツの皮、イチョウ葉、ニセアカシアの果実、コケモモの果実、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根、日本の緑茶などが挙げられる。本発明においては、そのような植物体として、樹皮を用いるのが好ましく、松樹皮を用いるのがさらに好ましい。特に、フランス海岸松の樹皮を用いるのが好ましい。
【0015】
(植物体抽出物の調製方法)
以下、植物体として松樹皮を用いた方法を例に、植物体抽出物(つまり松樹皮抽出物)の調製方法について説明する。
【0016】
抽出に用いることが可能な松樹皮としては、例えば、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮が挙げられる。
【0017】
本発明においては、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮を用いて、抽出物を得るのが好ましい。フランス海岸松からの抽出物は、プロアントシアニジン(特にOPC)とプロアントシアニジン以外の成分とを含有しており、下記実施例に示すように、育毛効果が高いからである。
【0018】
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、プロアントシアニジン、有機酸、ならびにその他の生理活性成分などを含有し、その主要成分であるプロアントシアニジン(特にOPC)には、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。
【0019】
松樹皮抽出物は、上記の松樹皮を溶媒で抽出して得られる。ここで用いることができる溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、含水有機溶媒(含水エタノールといった含水アルコール)が挙げられる。水を溶媒に用いる場合には、温水または熱水を用いてもよい。抽出に用いる有機溶媒としては、食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブタン、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンが挙げられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合せて用いてもよい。特に、熱水、含水エタノール、および含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0020】
松樹皮からプロアントシアニジンを抽出する方法は、特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0021】
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0022】
超臨界流体抽出法は、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程および目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程からなる。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0023】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、超臨界流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはケトン類を2〜20W/V%程度添加し、得られた抽出流体で超臨界流体抽出を行うことによって、OPC、カテキン類(後述)などの目的とする被抽出物の抽出流体に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的に松樹皮抽出物を得る方法である。
【0024】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点;抽出流体が残留しないという利点;および溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0025】
また、松樹皮からの抽出は、上記の方法以外でもよく、例えば、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などの方法で行ってもよい。
【0026】
松樹皮からの抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0027】
抽出の具体例について説明すれば、まず、フランス海岸松の樹皮1kgを、塩化ナトリウムの飽和溶液3Lに入れ、100℃にて30分間抽出し、抽出液を得る(抽出工程)。その後、抽出液を濾過し、得られる不溶物を塩化ナトリウムの飽和溶液500mLで洗浄し、洗浄液を得る(洗浄工程)。この抽出液と洗浄液とを合わせて、松樹皮の粗抽出液を得る。
【0028】
次いで、この粗抽出液に酢酸エチル250mLを添加して分液し、酢酸エチル層を回収する工程を5回行う。回収した酢酸エチル溶液を合わせて、無水硫酸ナトリウム200gに直接添加して脱水する。その後、この酢酸エチル溶液を濾過し、濾液を元の5分の1量になるまで減圧濃縮する。濃縮された酢酸エチル溶液を2Lのクロロホルムに注ぎ、攪拌して得られる沈殿物を濾過により回収する。その後、この沈殿物を酢酸エチル100mLに溶解した後、再度1Lのクロロホルムに添加して沈殿させる操作を2回繰り返す洗浄工程を行う。この方法により、例えば、2〜4量体のOPCを20質量%以上含み、プロアントシアニジン以外の成分を10質量%以上含有する、約5gの松樹皮抽出物を得ることができる。
【0029】
本発明においては、育毛剤の安全性の観点から、松樹皮をエタノールまたは水、これらの混合物等を用いて、より好ましくは加温しながら松樹皮からプロアントシアニジンを抽出することが好ましい。
【0030】
なお、溶媒による抽出後、吸着性の樹脂(ダイアイオンHP−20、Sephadex−LH20、キチン)などや限外濾過膜を用いれば、プロアントシアニジンとプロアントシアニジン以外の成分とを分取すること、および、プロアントシアニジンとプロアントシアニジン以外の成分との混合比を調整することが可能となる。
【0031】
(プロアントシアニジン)
次に、プロアントシアニジンについて説明する。プロアントシアニジンは、各種植物中に存在する縮合または重合(以下、縮重合という)したタンニンであり、フラバン−3−オールまたはフラバン−3,4−ジオールを構成単位として縮重合した化合物群である。これらは、酸処理によりシアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジンなどのアントシアニジンを生成することから、その名称が与えられている。
【0032】
プロアントシアニジンは、ポリフェノール類の一種で、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果物の皮もしくは種の部分に集中的に含まれている。プロアントシアニジンは、具体的には、ブドウの種、松の樹皮、ピーナッツの皮、イチョウ葉、ニセアカシアの果実、コケモモの果実などに含まれている。また、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根、日本の緑茶にも、プロアントシアニジンが含まれることが知られている。
【0033】
プロアントシアニジンは、ヒトの体内では、生成することのできない物質である。また近年になって、プロアントシアニジンの中でも、重合度が低いプロアントシアニジン、特に重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)が、抗酸化作用に優れていることが報告されている。本発明では、この重合度が2〜4の縮重合体を、オリゴメリック・プロアントシアニジン(oligomeric proanthocyanidin)という。オリゴメリック・プロアントシアニジン(以下、適宜「OPC」と記す)は、抗酸化作用のほか、チロシナーゼ、コラゲナーゼやエラスターゼ、ヒアルロニダーゼ等の酵素反応を阻害する効果や、血流の改善効果を有することが知られている。
【0034】
本発明の育毛剤に用いるプロアントシアニジンには、例えば、樹皮、果実もしくは種子の粉砕物、またはこれらの抽出物のような、食品原料となり得る原料由来のプロアントシアニジンを使用することができる。
【0035】
(プロアントシアニジン以外の成分)
次に、プロアントシアニジン以外の成分について説明する。プロアントシアニジン以外の成分については、用いる植物体によって異なる。よって、ここでは、植物体として松樹皮を用いた場合を例にして説明する。
【0036】
松樹皮は、プロアントシアニジンの中でもOPCに富むため、プロアントシアニジンの原料として好ましく用いられる。しかし、松樹皮には、プロアントシアニジンだけでなく、プロアントシアニジン以外の成分も含まれている。例えば、プロアントシアニジンを植物体より抽出する工程により、様々な有機酸やフラボノイドも抽出される。そのような有機酸やフラボノイドは、プロアントシアニジン以外の成分である。そのような有機酸やフラボノイドとしては、例えば、カフェー酸、フマル酸、キナ酸、没食子酸、バニリン酸、フェルラ酸、並びにカテキン類などが挙げられる。このようなプロアントシアニジンと共に抽出される、有機酸、フラボノイド、および有機酸とフラボノイドとの混合物は、それ自体で育毛効果を発揮する。
【0037】
プロアントシアニジン以外の成分として代表的な成分は、カテキン類が挙げられる。カテキン(catechin)類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称であり、プロアントシアニジンの構成単位である。カテキン類としては、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレートなどが知られている。天然物からは、狭義のカテキンといわれている(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、ならびに(+)−カテキンまたはガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。カテキン類は、通常単独では水溶性が乏しく、その生理活性が低いが、OPCや他の植物中に見られる有機酸の存在下では水溶性が増すと同時に、活性化する性質があり、OPCとともに投与することで効果的に作用する。なお、カテキン類は、植物体抽出物に、5質量%以上含有されていることが好ましい。
【0038】
(含有量)
次に、本発明の育毛剤において、プロアントシアニジン、プロアントシアニジン以外の成分、および植物体抽出物の好ましい含有量(配合量)について説明する。
【0039】
本発明の育毛剤において、プロアントシアニジンは、植物体抽出物(例えば樹皮抽出物または松樹皮抽出物)の固形分中に、20質量%以上、好ましくは30質量%、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上含まれているのが良い。
【0040】
なお、育毛剤全体に対して、プロアントシアニジンの配合量の下限値は、0.002質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.45質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3.5質量%以上とするのが良い。また、育毛剤全体に対して、プロアントシアニジンの配合量の上限値は、30質量%以下、好ましくは10質量%以下とするのが良い。
【0041】
また、本発明の育毛剤において、OPCは、植物体抽出物(例えば樹皮抽出物または松樹皮抽出物)の固形分中に、20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上含まれているのが良い。OPCを高含有すると、経皮投与によって投与部の血流改善効果が得られ、育毛効果を更に高めることができるからである。
【0042】
なお、育毛剤全体に対して、OPCは、0.002質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.25質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上含まれているのが良い。
【0043】
本発明の育毛剤において、プロアントシアニジン以外の成分は、植物体抽出物(例えば樹皮抽出物または松樹皮抽出物)の固形分中に、10質量%以上、好ましくは20質量%以上含まれているのが良い。他の成分との組み合わせによっては、プロアントシアニジン以外の成分が、植物体抽出物(例えば樹皮抽出物または松樹皮抽出物)の固形分中に、50質量%以上含まれていても良い場合もある。プロアントシアニジン以外の成分が10質量%未満である場合は、10質量%以上含む場合と比べ、育毛効果が低下する。つまり、プロアントシアニジン以外の成分を含有させることにより、よりすぐれた育毛効果を発揮する。
【0044】
また、育毛剤全体に対して、プロアントシアニジン以外の成分は、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2.5質量%以上含まれているのが良い。
【0045】
また、植物体抽出物の量(換言すれば、プロアントシアニジンとプロアントシアニジン以外の成分とを合わせた量)は、育毛剤全体に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2.5質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上とするのが良い。
【0046】
このように、本発明の育毛剤は、上記のような植物体抽出物を用いているため、プロアントシアニジン以外の成分でもプロアントシアニジンだけと同等の育毛作用を得ることができる。さらに、プロアントシアニジンとプロアントシアニジン以外の成分とを含む物を用いることにより、プロアントシアニジンだけでは得ることのできない高い育毛作用を有する育毛剤を調製することができる。
【0047】
(投与量)
次に、本発明の育毛剤の投与量について説明する。成人1人当り1回の投与において、育毛剤の好ましい投与量は、投与された育毛剤に含まれる植物体抽出物の量(プロアントシアニジンとプロアントシアニジン以外の成分とを合わせた量)を基準に決定すればよい。具体的には、成人1人当り1回の投与において、経皮投与される植物体抽出物の量の下限値は、0.1mg以上、好ましくは1mg以上とするのがよく、経皮投与される植物体抽出物の量の上限値は、600mg以下、好ましくは300mg以下とするのがよい。
【0048】
(育毛剤)
まず、育毛剤の剤型について説明する。育毛剤の剤型は、プロアントシアニジンを含有する植物体抽出物を、有効成分として配合することができる剤型であれば、どのようなものでもよい。例えば、適当な外用剤の基剤と配合して、液状または固体状の育毛剤とすることが挙げられる。
【0049】
液状または固体状の育毛剤としては、例えば、ヘヤーリキッド、ヘヤートニック、ヘヤーローション、軟膏、ヘヤクリーム、エアーゾルなどの剤型とすることが挙げられる。もちろん、各々好適な基剤にプロアントシアニジンを添加した後、常法により製造することができる。
【0050】
育毛剤に用いられる基剤としては、外用剤に通常使用されている基剤、例えば、精製水、エタノール、多価アルコール類、油脂等が挙げられる。多価アルコールとしては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等があげられる。油脂類としては椿油、ホホバ油、オリーブ油、スクワラン、サフラワー油、マカデミアナッツ油、乳化剤の大豆水添レシチン等が挙げられる。
【0051】
本発明の育毛剤においては、必要に応じて、添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、香料、界面活性剤、殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消炎剤、清涼剤、保湿剤、ビタミン類、生薬エキスなどが挙げられる。
【0052】
香料としては、通常、化粧料等に使うような香料を用いることができる。
【0053】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、モノオレイン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリン、ポリオキシエチレン還元ラノリン、N−アセチルグルタミンイソステアリルエステルなどが挙げられる。
【0054】
殺菌剤としては、例えば、ヒノキチオール、トリクロサン、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、イソプロピルメチルフェノール、アズレン、サリチル酸、ジンクピリチオンなどが挙げられる。
【0055】
酸化防止剤として、エリソルビン酸、BHAなどがあげられる。
【0056】
紫外線吸収剤としては、ジヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、メラニン、パラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルエステル、シノキサート、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルエステル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、酸化チタンなどの金属酸化物微粒子などが挙げられる。
【0057】
消炎剤としては、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン等があげられる。清涼剤としては、トウガラシチンキ、1−メントール等があげられる。保湿剤としては、ピロリドンカルボン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、シルクペプチド等があげられる。ビタミン類としては、ビタミンEおよびその誘導体、ニコチン酸ベンジル、D−パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、ビオチン、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、ビタミンAおよびその誘導体等があげられる。生薬エキスとしては、センブリエキス、ニンジンエキス、アロエエキス等が挙げられる。
【0058】
固体状剤型の基剤としては、ワセリン、固形パラフィン、植物油、鉱物油、ラノリン、ろう類、マクロゴールなどが挙げられる。
【0059】
なお、必要により、乳化剤、低級アルコールなどを育毛剤に添加してもよい。乳化剤としては、例えばレシチンが挙げられる。低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げて、本発明を説明する。なお、本発明は、下記実施例の記載により制限されない。
【0061】
(実施例1:成分の分離)
松樹皮抽出物(商品名:フラバンジェノール、株式会社東洋新薬)を用いて、プロアントシアニジンとその他の成分とを、下記の方法にて分離した。なお、ここで用いた松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを70質量%、カテキンを10質量%含有する抽出物であり、OPCについては40質量%含有している。
【0062】
まず、水で膨潤させたセファデックスLH−20(アマシャムバイオテック株式会社製)25mLをカラム(15×300mm)に充填し、50mLのエタノールで洗浄した。次に、100mgの松樹皮抽出物を2mLのエタノールに溶解させ、その溶液をカラムに通液して、プロアントシアニジン等の成分をLH−20に吸着させた。次に、100〜80%(V/V)エタノール−水混合溶媒でグラジエント溶出させ、10mLずつ分取した。
【0063】
なお、上記分取の際には、カテキン(Rf値:0.8)およびプロアントシアニジンB−2(Rf値:0.6)の標品を指標として、各画分中のカテキンおよびプロアントシアニジンの有無を、薄層クロマトグラフィー(TLC)により検出した。このTLCにより、プロアントシアニジンよりも先に流出する画分(プロアントシアニジン以外の成分を含む画分)と、プロアントシアニジンを含む画分とを検出することができる。なお、TLCの展開条件および検出方法は下記の通りである。
・TLC:シリカゲルプレート(Merck&CO.,Inc.製)
・展開溶媒:ベンゼン/蟻酸エチル/蟻酸(2/7/1)
・検出試薬:硫酸およびアニスアルデヒド硫酸
・サンプル量:各10μL
次に、TLCにより、カテキンおよびその他の成分の溶出が完了したことを確認後、300mLの50%(V/V)水−アセトン混合溶媒を通液し、カラムに吸着した残りの吸着物を溶出させた。
【0064】
上記方法により、プロアントシアニジン含有画分(画分1)と、プロアントシアニジン非含有画分(画分2)とを得た。つまり、プロアントシアニジン非含有画分には、プロアントシアニジン以外の成分(カテキンおよびその他の成分)が含まれている。そして、プロアントシアニジン含有画分には、2量体以上のプロアントシアニジンが含まれている。
【0065】
各溶出画分を凍結乾燥し、乾燥質量を測定したところ、100mgに対して99.2mgであり、ほぼ全量回収されていることを確認した。よって、この操作を繰り返して、画分1(3.9g)および画分2(1.8g)の乾燥粉末を得た。
【0066】
次に、200mgの画分1を用いて、再度同様にしてセファデックス−LH20にて分離を行い、プロアントシアニジン以外の成分、OPC画分、5量体以上のプロアントシアンジン画分を取得して、乾燥質量を測定した。なお、2量体のOPCの標品(プロアントシアニジンB−2(Rf値:0.6))と、4量体のOPCの標品(シンナムタンニンA2(Rf値:0.2))とを用いたTLCにより、それら画分は取得した。それら画分の乾燥質量は、OPC画分が101mg、5量体以上のプロアントシアニジン画分が83mg、プロアントシアニジン以外の成分が10mgであった。よって、OPC画分と5量体以上の画分との合計から、画分1のプロアントシアニジン含有量は95質量%(OPCは52質量%)であることが分かった。
【0067】
また、画分2については、TLCにより、プロアントシアニジンは検出されなかった。よって、画分2には、画分1および2に分離する前の松樹皮抽出物に含まれていた全ての量のカテキンが含まれていると考えられる。つまり、画分2(1.8g)に対して、0.57gのカテキンが含まれおり、画分2には、カテキンが約30質量%含まれているものと考えられる。なお、ここでいうカテキン量「0.57g」は、画分1および2の合計(3.9g+1.8g=5.7g)の10%から算出した値である。
【0068】
(実施例2:育毛試験試料の調製)
上記にて得られた各画分の乾燥粉末を下記表1に記載の質量で混合し、各混合物をそれぞれ50容量%エタノール水溶液に溶解させて、試料1〜5を調製した。なお、陽性対照としてミノキシジルを含有する試料(試料6)を、陰性対照として何も添加しないエタノール水溶液(試料7)を調製した。これら試料1〜7の処方等について、表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
(実施例3:育毛効果の評価)
上記の調製した試料1〜試料7の育毛効果を、次のような方法で評価した。
【0071】
まず、7週齢のC3Hマウス(日本チャールズリバー株式会社)42匹を、基本飼料(MF飼料、オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間馴化した。次に、マウスの背部をバリカンおよびシェーバーで刈り取り、剃毛後に1群6匹の7群に分けた。そして、それら群別に試料1〜試料7を塗布して、試料1〜7の育毛効果を評価した。具体的には、1日1回、0.2mLの各試料をガラス棒にて均一に塗布する操作を、2週間行った。その後、塗布開始から2週間後の各マウスを写真撮影し、画像処理装置(NIHImage)を用いて、背部皮膚全面積に対する発毛部の面積の割合(発毛率)を算出した。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
表2の結果から、試料2は、試料1と同等の育毛活性(育毛効果)があることが分かる。つまり、プロアントシアニジン以外の成分のみからなる画分(画分2)のみを含む試料(試料2)が、植物体抽出物中のプロアントシアニジンを95質量%以上含む画分(画分1)のみを含む試料(試料1)と同等の育毛活性を有し、プロアントシアニジン以外の成分(画分2)が一定の育毛効果を有していることが分かる。
【0074】
また、画分1と画分2との両方を含む試料(試料3、試料4、試料5)のうち、試料4は、試料1および2と同等程度の育毛活性を示すことが分かる。試料4は、画分1および2の乾燥粉末の添加量が計0.2gであり、他の試料(試料1〜3および試料5)よりも添加された乾燥粉末の量が少ない。それにもかかわらず、試料4は、試料1および2と同等程度の育毛活性を示すことから、画分1と画分2とを組み合わせることにより、育毛活性の増強が可能であることが分かる。つまり、プロアントシアニジンと、一定量のプロアントシアニジン以外の成分とを含有させることにより、育毛効果を高めることができる。
【0075】
さらに、表2によれば、画分1と画分2との両方を含む試料のうち、試料3および試料5は、試料1および試料2よりも高い育毛活性を示していることと、試料6と同等の育毛活性を示していることとが分かる。
【0076】
上記結果によれば、プロアントシアニジンを含有する植物体抽出物において、プロアントシアニジンと、プロアントシアニジン以外の成分とを含有させることで、より高い育毛効果を得られる植物体抽出物となることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の育毛剤は、植物体から抽出された植物体抽出物を有効成分とする育毛剤であって、上記植物体抽出物は、プロアントシアニジンとプロアントシアニジン以外の成分とを含有しており、上記プロアントシアニジン以外の成分は、植物体抽出物(例えば樹皮抽出物または松樹皮抽出物)の固形分中に、10質量%以上含まれている。このような育毛剤は、育毛効果が高く、有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体から抽出された植物体抽出物を有効成分とする育毛剤であって、
上記有効成分として、プロアントシアニジンとプロアントシアニジン以外の成分とを含有しており、
上記プロアントシアニジン以外の成分は、植物体抽出物の固形分中に、10質量%以上含まれていることを特徴とする育毛剤。
【請求項2】
上記植物体は、樹皮であることを特徴とする請求項1に記載の育毛剤。
【請求項3】
上記植物体は、松樹皮であることを特徴とする請求項1に記載の育毛剤。
【請求項4】
オリゴメリック・プロアントシアニジンが、植物体抽出物の固形分中に、20質量%以上含まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の育毛剤。


【公開番号】特開2007−308374(P2007−308374A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190490(P2004−190490)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】