説明

育毛剤

【課題】育毛に関連するサイトカイン遺伝子、例えば、線維芽細胞増殖因子−7遺伝子および血管上皮細胞増殖因子遺伝子の発現促進剤とそれを含む育毛剤の提供。
【解決手段】6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリンや6−アミノ−2−チオメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリン等で代表されるシクロブチルプリン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、毛包を構成する外毛根鞘細胞等の毛包上皮系細胞、毛乳頭細胞等によって、発毛し、成長することが知られている。そして、発毛および毛髪の成長には、前記外毛根鞘細胞、毛乳頭細胞等から産生されるサイトカインが、重要な働きをしていることが知られている(非特許文献1〜5)。
【0003】
前記サイトカインとして、例えば、線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等が知られている。前記FGF−7は、ケラチノサイト増殖因子(KGF)ともいわれる。前記FGF−7は、毛径を増大する太毛化因子であり(特許文献1および非特許文献1)、成長期の毛乳頭細胞で発現すること(非特許文献2)、マウスの器官培養でヒゲの成長を促進すること(非特許文献3)が報告されている。前記VEGFは、前記外毛根鞘細胞における発現促進により、毛密度および毛径が増大することが報告されている(非特許文献4)。
【0004】
前記FGF−7の発現促進物質としては、アデノシン(特許文献1および非特許文献1)、ローヤルゼリーに含まれる糖タンパク質(特許文献2)等が知られており、前記VEGFの発現促進物質としては、前記糖タンパク質(特許文献2)等が知られている。具体的には、前記アデノシンの投与により、FGF−7の発現が促進されると、毛径が増大すること(特許文献1および非特許文献1)、女性型脱毛が改善すること(非特許文献5)が報告されている。また、前記糖タンパク質の投与により、男性型脱毛症および薄毛が改善することが報告されている(特許文献2)。このため、前記FGF−7およびVEGFは、育毛剤のスクリーニング用マーカーとして、利用されている。
【0005】
そして、近年、発毛および毛髪の成長に有効な新たな成分の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/044205号公報
【特許文献2】特開2003−192541号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】飯野ら、2007年、J.Invest.Dermatol.、Vol.127、p.1318−1325
【非特許文献2】RosenquistおよびMartin、1996年、Developmental Dynamics、Vol.205、p.379−386
【非特許文献3】岩渕およびGoetinck、2006年、Mechanisms of Development、Vol.123、p.831−841
【非特許文献4】矢野ら、J.Clin.Invest.、2001年、Vol.107、No.4、p.409−417
【非特許文献5】大浦ら、2008年、J.Dermatol.、Vol.35、p.763−767
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、育毛効果の高い、新たな育毛剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の育毛剤は、下記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物を含むことを特徴とする。
【化1】

前記一般式(1)中、
は、ハロゲノ基、アルキル基、アルキルチオ基、チオ基(チオール基)、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキニル基またはシアノ基であり、
は、ハロゲノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオ基(チオール基)またはアルキルチオ基であり、
は、水素原子、ハロゲノ基、アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシフェニル基またはカルバモイル基であり、
およびRは、同一であるかまたは異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲノ基、カルボキシル基、アルキル基、アシル基、カルバモイル基、アシルオキシ基、ヒドロキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ハロアルキル基またはホスホノオキシアルキル基であり、
がアミノ基かつXが水素原子である場合は、RおよびRは、ヒドロキシアルキル基以外の原子または置換基であり、
前記X、X、X、RおよびRにおいて、前記アルキル基、前記アルキルチオ基、前記チオ基(チオール基)、前記ヒドロキシ基、前記アルコキシ基、前記アルキニル基、前記アミノ基、前記ヒドロキシフェニル基、前記カルバモイル基、前記カルボキシル基、前記アシル基、前記アシルオキシ基、前記ヒドロキシアルキル基、前記アシルオキシアルキル基、前記アルコキシアルキル基および前記ホスホノオキシアルキル基は、それぞれの一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、育毛に関連するサイトカイン遺伝子、例えば、線維芽細胞増殖因子−7遺伝子および血管上皮細胞増殖因子遺伝子等の発現を促進できる。このため、本発明の育毛剤は、育毛効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1における、FGF−7遺伝子の発現測定結果を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例2における、VEGF遺伝子の発現測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の育毛剤は、前記一般式(1)において、前記Xが、クロロ基またはチオメトキシ基であるのが好ましい。
【0013】
本発明の育毛剤は、前記一般式(1)において、前記Xが、アミノ基であるのが好ましい。
【0014】
本発明の育毛剤は、前記一般式(1)において、前記Xが、水素原子、ハロゲノ基またはアルコキシ基であるのが好ましい。
【0015】
本発明の育毛剤は、前記一般式(1)において、前記RおよびRが、ヒドロキシメチル基であるのが好ましい。
【0016】
本発明の育毛剤は、前記一般式(1)において、前記Xが、クロロ基またはチオメトキシ基であり、前記Xが、アミノ基であり、前記Xが、水素原子であり、前記RおよびRが、ヒドロキシメチル基であるのが好ましい。
【0017】
本発明の育毛剤は、前記シクロブチルプリン誘導体が、6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリンもしくは6−アミノ−2−チオメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリンであるのが好ましい。
【0018】
本発明の線維芽細胞増殖因子−7遺伝子の発現促進剤および血管内皮細胞増殖因子遺伝子の発現促進剤は、それぞれ、前記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物を含むことを特徴とする。なお、本発明の線維芽細胞増殖因子−7遺伝子の発現促進剤および血管内皮細胞増殖因子遺伝子の発現促進剤において、前記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物は、本発明の育毛剤と同様である。
【0019】
つぎに、本発明について、さらに詳しく説明する。
【0020】
本発明において、育毛は、例えば、育毛、発毛の促進および脱毛の予防の少なくとも一つを意味する。育毛の対象は、例えば、頭髪、まつ毛等が挙げられる。
【0021】
本発明において、ハロゲノ基とは、特に限定されないが、例えば、フルオロ基(フッ素原子)、クロロ基(塩素原子)、ブロモ基(臭素原子)およびヨード基(ヨウ素原子)等が挙げられる。なお、前記ハロゲノ基とは、置換基としてのハロゲン原子の名称である。
【0022】
本発明において、アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられ、アルキルアミノ基、アルコキシ基等のアルキル基を構造中に含む基においても同様である。本発明において、前記アルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルキル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0023】
本発明において、アルキルチオ基としては、特に制限されないが、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基等が挙げられる。本発明において、前記アルキルチオ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルキルチオ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0024】
本発明において、チオ基(チオール基)は、例えば、水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記チオ基(チオール基)における置換基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、tert−ブチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、メトキシメチル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基、ピクシル基等が挙げられる。
【0025】
本発明において、ヒドロキシ基は、例えば、異性化し、オキソ基(=O)として存在してもよく、水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記ヒドロキシ基における置換基としては、酸で脱保護することが可能なものを含み、特に制限されないが、例えば、メチル基、tert−ブチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、メトキシメチル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基、ピクシル基等が挙げられる。
【0026】
本発明において、アルコキシ基としては、特に制限されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。本発明において、前記アルコキシ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルコキシ基における置換基としても、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0027】
本発明において、アルキニル基としては、特に制限されないが、例えば、下記一般式(2)で表される置換基(式中のRは、水素原子または直鎖もしくは分枝アルキル基)等が挙げられ、具体的には、例えば、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。本発明において、前記アルキニル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルキニル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0028】
【化2】

【0029】
本発明において、アミノ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アミノ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;アセチル基、エチルカルボニル等の炭素数が1〜6のアルキルカルボニル基;炭素数が1〜6のアルキルスルホニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数が1〜6のアルコキシカルボニル基;フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基;フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等のアリールスルホニル基;ベンジルカルボニル基等の炭素数が7〜10のアラルキルカルボニル基;ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基等のアラルキル基;オキシカルボニル基;tert−ブチルオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基;アリルオキシカルボニル基;フルオレニルメチルオキシカルボニル基;トリフルオロアセチル基;ホルミル基等が挙げられる。これらの置換基は、1〜3個のハロゲノ基、ニトロ基等で置換されていてもよい。その具体例としては、例えば、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−クロロベンジルオキシカルボニル基、m−クロロベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0030】
本発明において、カルボキシル基は、例えば、水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記カルボキシル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、tert−ブチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、メトキシメチル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基、ピクシル基等が挙げられる。
【0031】
本発明において、アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ、アシル基を構造中に含む基(アシルオキシ基、アルカノイルオキシ基等)においても同様である。また、本発明において、アシル基の炭素数にはカルボニル炭素を含み、例えば、炭素数1のアシル基とはホルミル基を指すものとする。本発明において、前記アシル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アシル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0032】
本発明において、カルバモイル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記カルバモイル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;アセチル基、エチルカルボニル等の炭素数が1〜6のアルキルカルボニル基;炭素数が1〜6のアルキルスルホニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数が1〜6のアルコキシカルボニル基;フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基;フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等のアリールスルホニル基;ベンジルカルボニル基等の炭素数が7〜10のアラルキルカルボニル基;ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基等のアラルキル基;オキシカルボニル基;tert−ブチルオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基;アリルオキシカルボニル基;フルオレニルメチルオキシカルボニル基;トリフルオロアセチル基;ホルミル基等が挙げられる。これらの置換基は、1〜3個のハロゲノ基、ニトロ基等で置換されていてもよい。その具体例としては、例えば、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−クロロベンジルオキシカルボニル基、m−クロロベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0033】
本発明において、アシルオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、3−クロロブチリルオキシ基等が挙げられる。本発明において、前記アシルオキシ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アシルオキシ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基が挙げられる。
【0034】
本発明において、ヒドロキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。本発明において、前記ヒドロキシアルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記ヒドロキシアルキル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0035】
本発明において、アシルオキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、前記アシルオキシ基で置換した前記アルキル基等が挙げられる。前記アシルオキシアルキル基としては、例えば、アセトキシエチル基、プロピオニルオキシエチル基、ブタノイルオキシエチル基、3−クロロブチリルオキシエチル基等が挙げられる。本発明において、前記アシルオキシアルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アシルオキシアルキル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0036】
本発明において、アルコキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基等が挙げられる。本発明において、前記アルコキシアルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルコキシアルキル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0037】
本発明において、ハロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、前記ハロゲノ基で置換した前記アルキル基等が挙げられる。前記ハロアルキル基としては、具体的には、例えば、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロブチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、フルオロメチル基、トリフルオロエチル基等が挙げられる。
【0038】
本発明において、ホスホノオキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ホスホノオキシメチル基、ホスホノオキシエチル基、ホスホノオキシプロピル基等が挙げられる。本発明において、前記ホスホノオキシアルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記ホスホノオキシアルキル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0039】
本発明において、ヒドロキシフェニル基は、例えば、ヒドロキシ基が、異性化し、オキソ基(=O)として存在してもよく、水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記ヒドロキシフェニル基における置換基としては、酸で脱保護することが可能なものを含み、特に制限されないが、例えば、メチル基、tert−ブチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、メトキシメチル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基、ピクシル基等が挙げられる。
【0040】
本発明の育毛剤は、前述のように、前記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物を含むことを特徴とする。
【化3】

【0041】
前記一般式(1)中の前記Xは、ハロゲノ基、アルキル基、アルキルチオ基、チオ基(チオール基)、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキニル基またはシアノ基であり、好ましくは、ハロゲノ基またはチオ基(チオール基)である。
【0042】
前記Xが前記ハロゲノ基である場合、前記ハロゲノ基としては、特に制限されないが、例えば、フルオロ基(フッ素原子)、クロロ基(塩素原子)、ブロモ基(臭素原子)およびヨード基(ヨウ素原子)等が挙げられ、好ましくは、クロロ基(塩素原子)である。
【0043】
前記Xが前記アルキル基である場合、前記アルキル基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アルキル基等が挙げられる。前記アルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基である。また、前記アルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が、任意の置換基に置換されていてもよい。アルキル基における前記置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアルキル基における置換基等が挙げられる。
【0044】
前記Xが前記アルキルチオ基である場合、前記アルキルチオ基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アルキルチオ基等が挙げられる。前記アルキルチオ基としては、具体的には、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基等が挙げられ、好ましくは、メチルチオ基である。前記アルキルチオ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルキルチオ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアルキルチオ基における置換基等が挙げられる。
【0045】
前記Xが前記チオ基(チオール基)である場合、前記チオ基(チオール基)は、例えば、水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記チオ基(チオール基)における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のチオ基(チオール基)における置換基等が挙げられ、好ましくは、アルキル基である。前記チオ基(チオール基)は、具体的には、例えば、チオメトキシ基が好ましい。
【0046】
前記Xが前記アミノ基である場合、前記アミノ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が、任意の置換基に置換されていてもよい。アミノ基における前記置換基としては、特に制限されず、例えば、前述のアミノ基における置換基等が挙げられる。前記Xがアミノ基である場合は、例えば、XおよびXがともにハロゲノ基であるか、XおよびXがともにアルコキシ基であるか、または、Xがヒドロキシ基であり、Xがハロゲノ基であり、かつ、RおよびRがともにアシルオキシアルキル基であるのが好ましい。
【0047】
前記Xが前記ヒドロキシ基である場合、前記ヒドロキシ基は、例えば、異性化し、オキソ基(=O)として存在してもよく、水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記ヒドロキシ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のヒドロキシ基における置換基等が挙げられる。
【0048】
前記Xが前記アルコキシ基である場合、前記アルコキシ基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アルコキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルコキシ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアルコキシ基における置換基等が挙げられる。
【0049】
前記Xが前記アルキニル基である場合、前記アルキニル基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アルキニル基等が挙げられる。前記アルキニル基としては、具体的には、例えば、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。前記アルキニル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルキニル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアルキニル基における置換基等が挙げられる。
【0050】
前記一般式(1)中のXは、ハロゲノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオ基(チオール基)またはアルキルチオ基であり、好ましくは、アミノ基である。
【0051】
前記Xが前記ハロゲノ基である場合、前記ハロゲノ基としては、特に制限されないが、例えば、フルオロ基(フッ素原子)、クロロ基(塩素原子)、ブロモ基(臭素原子)、ヨード基(ヨウ素原子)等が挙げられ、好ましくは、クロロ基(塩素原子)である。
【0052】
前記Xが前記アミノ基である場合、前記アミノ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が、任意の置換基に置換されていてもよい。前記アミノ基における前記置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアミノ基における置換基等が挙げられる。
【0053】
前記Xが前記ヒドロキシ基である場合、前記ヒドロキシ基は、例えば、異性化し、オキソ基(=O)として存在してもよく、水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記ヒドロキシ基における前記置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のヒドロキシ基における置換基等が挙げられる。
【0054】
前記Xが前記アルコキシ基である場合、前記アルコキシ基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アルコキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルコキシ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアルコキシ基における置換基等が挙げられる。
【0055】
前記Xが前記チオ基(チオール基)である場合、前記チオ基(チオール基)は、例えば、水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記チオ基(チオール基)における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のチオ基(チオール基)における置換基等が挙げられる。
【0056】
前記Xが前記アルキルチオ基である場合、前記アルキルチオ基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アルキルチオ基等が挙げられる。前記アルキルチオ基としては、具体的には、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基等が挙げられ、好ましくは、メチルチオ基である。前記アルキルチオ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルキルチオ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアルキルチオ基における置換基等が挙げられる。
【0057】
前記一般式(1)中のXは、水素原子、ハロゲノ基、アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシフェニル基またはカルバモイル基であり、好ましくは、水素原子、ハロゲノ基またはアルコキシ基である。
【0058】
前記Xが前記ハロゲノ基である場合、前記ハロゲノ基としては、特に制限されず、例えば、フルオロ基(フッ素原子)、クロロ基(塩素原子)、ブロモ基(臭素原子)およびヨード基(ヨウ素原子)等が挙げられる。
【0059】
前記Xが前記アルキル基である場合、前記アルキル基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アルキル基等が挙げられる。前記アルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基である。また、前記アルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が、任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルキル基における前記置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアルキル基における置換基等が挙げられる。
【0060】
前記Xが前記アルキルチオ基である場合、前記アルキルチオ基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アルキルチオ基等が挙げられる。前記アルキルチオ基としては、具体的には、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基等が挙げられる。前記アルキルチオ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルキルチオ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアルキルチオ基における置換基等が挙げられる。
【0061】
前記Xが前記アミノ基である場合、前記アミノ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アミノ基における前記置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアミノ基における置換基等が挙げられる。
【0062】
前記Xが前記ヒドロキシ基である場合、前記ヒドロキシ基は、例えば、異性化し、オキソ基(=O)として存在してもよく、水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記ヒドロキシ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のヒドロキシ基における置換基等が挙げられる。
【0063】
前記Xが前記アルコキシ基である場合、前記アルコキシ基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アルコキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルコキシ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアルコキシ基における置換基等が挙げられる。
【0064】
前記Xが前記ヒドロキシフェニル基である場合、前記ヒドロキシフェニル基内のヒドロキシ基は、例えば、異性化し、オキソ基(=O)として存在してもよく、水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記ヒドロキシフェニル基における置換基としては、酸で脱保護することが可能なものを含み、特に制限されないが、例えば、前述のヒドロキシフェニル基における置換基等が挙げられる。
【0065】
前記Xが前記カルバモイル基である場合、前記カルバモイル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記カルバモイル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のカルバモイル基における置換基等が挙げられる。前記水素原子が置換基に置換されたカルバモイル基としては、具体的には、例えば、前述の置換カルバモイル基等が挙げられる。
【0066】
前記一般式(1)中のRおよびRは、同一であるかまたは異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲノ基、カルボキシル基、アルキル基、アシル基、カルバモイル基、アシルオキシ基、ヒドロキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ハロアルキル基またはホスホノオキシアルキル基であり、好ましくは、ヒドロキシアルキル基である。
【0067】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記ハロゲノ基である場合、前記ハロゲノ基としては、特に制限されないが、例えば、フルオロ基(フッ素原子)、クロロ基(塩素原子)、ブロモ基(臭素原子)およびヨード基(ヨウ素原子)等が挙げられる。
【0068】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記カルボキシル基である場合、前記カルボキシル基は、例えば、水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記カルボキシル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のカルボキシル基における置換基等が挙げられる。
【0069】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記アルキル基である場合、前記アルキル基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖もしくは分枝アルキル基等が挙げられる。前記アルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基である。また、前記アルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が、任意の置換基に置換されていてもよい。アルキル基における前記置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアルキル基における置換基等が挙げられる。
【0070】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記アシル基である場合、前記アシル基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖または分枝アシル基等が挙げられる。前記アシル基としては、具体的には、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。また、前記アシル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。アシル基における前記置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアシル基における置換基等が挙げられる。
【0071】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記カルバモイル基である場合、前記カルバモイル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記カルバモイル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のカルバモイル基における置換基等が挙げられる。前記水素原子が置換基に置換されたカルバモイル基としては、具体的には、例えば、前述の置換カルバモイル基等が挙げられる。
【0072】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記アシルオキシ基である場合、前記アシルオキシ基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖または分枝アシルオキシ基等が挙げられる。前記アシルオキシ基としては、具体的には、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、3−クロロブチリルオキシ基等が挙げられる。また、前記アシルオキシ基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アシルオキシ基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアシルオキシ基における置換基等が挙げられる。
【0073】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記ヒドロキシアルキル基である場合、前記ヒドロキシアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖または分枝ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。前記ヒドロキシアルキル基としては、具体的には、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられ、好ましくは、ヒドロキシメチル基である。また、前記ヒドロキシアルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記ヒドロキシアルキル基における前記置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のヒドロキシアルキル基における置換基等が挙げられる。
【0074】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記アシルオキシアルキル基である場合、前記アシルオキシアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が2〜8の直鎖または分枝アシルオキシアルキル基等が挙げられる。前記アシルオキシアルキル基としては、例えば、前記アシルオキシ基で置換した前記アルキル基等が挙げられる。前記アシルオキシアルキル基としては、具体的には、例えば、アセトキシエチル基、プロピオニルオキシエチル基、ブタノイルオキシエチル基、3−クロロブチリルオキシエチル基等が挙げられる。また、前記アシルオキシアルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アシルオキシアルキル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアシルオキシアルキル基における置換基等が挙げられる。
【0075】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記アルコキシアルキル基である場合、前記アルコキシアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が2〜8の直鎖または分枝アルコキシアルキル基等が挙げられる。前記アルコキシアルキル基としては、具体的には、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基等のアルコキシ基で置換した前記アルキル基等が挙げられる。また、前記アルコキシアルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記アルコキシアルキル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のアルコキシアルキル基における置換基等が挙げられる。
【0076】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記ハロアルキル基である場合、前記ハロアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖または分枝ハロアルキル基等が挙げられる。前記ハロアルキル基としては、具体的には、例えば、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロブチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、フルオロメチル基、トリフルオロエチル基等の前記ハロゲノ基で置換したアルキル基等が挙げられる。
【0077】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記ホスホノオキシアルキル基である場合、前記ホスホノオキシアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数が1〜8の直鎖または分枝ホスホノオキシアルキル基等が挙げられる。前記ホスホノオキシアルキル基としては、具体的には、例えば、ホスホノオキシメチル基、ホスホノオキシエチル基、ホスホノオキシプロピル基等が挙げられる。また、前記ホスホノオキシアルキル基は、例えば、その一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。前記ホスホノオキシアルキル基における置換基としては、特に制限されないが、例えば、前述のホスホノオキシアルキル基における置換基等が挙げられる。
【0078】
なお、Xがアミノ基かつXが水素原子である場合は、RおよびRは、ヒドロキシアルキル基以外の原子または置換基である。
【0079】
本発明において、前記シクロブチルプリン誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物は、前記一般式(1)において、例えば、前記Xが、クロロ基またはチオメトキシ基であり、前記Xが、アミノ基であり、前記Xが、水素原子であり、前記RおよびRが、ヒドロキシメチル基であってもよい。このようなシクロブチルプリン誘導体としては、例えば、6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリンもしくは6−アミノ−2−チオメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリン等が挙げられる。
【0080】
本発明において、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体の理論上可能なすべての互変異性体もしくは立体異性体は、本発明の範囲内である。
【0081】
本発明において、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体の塩としては、特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩等の脂肪族アミン塩;N,N−ジベンジルエチレンジアミン等のアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等の複素環芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩、リジン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等のアミノ酸塩;塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩等が挙げられる。また、本発明において、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体の溶媒和物もしくは水和物も、本発明の範囲内である。
【0082】
以下、本明細書においては、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物を総称して、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体ということもある。
【0083】
前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。
【0084】
<製造例1>
前記Xがハロゲノ基の場合、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記(a)および(b)工程を含む製造方法等が挙げられる。
【0085】
(a)まず、Basacchiらの方法(G.S.Basacchi,A.Braitman,C.W.Cianci,J.M.Clark,A.K.Field,M.E.Hagen,D.R.Hockstein,M.F.Malley,T.Mitt,W.A.Slusarchyk,J.E.Sundeen,B.J.Terry,A.V.Tuomari,E.R.Weaver,M.G.Young and R.Zahler,J.Med.Chem.,1991,34,1415)等により、下記一般式(3)に示すシクロブタノール誘導体を合成する。
【0086】
(b)つぎに、前記シクロブタノール誘導体に、下記一般式(4)で表されるプリン誘導体(Haloはハロゲノ基)を反応させ、さらに、前記Xの置換基に応じた置換反応を実施し、下記一般式(5)で表される前記Xがハロゲノ基である化合物(Haloはハロゲノ基)を得る。前記プリン誘導体の反応に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、トルエン、ジクロルメタン等が挙げられ、好ましくは、THFである。そして、前記プリン誘導体の反応温度としては、特に制限されないが、例えば、30〜100℃の範囲が挙げられ、好ましくは、45〜55℃の範囲である。また、前記プリン誘導体の反応時間としては、特に制限されないが、例えば、5〜50時間の範囲であり、好ましくは、12〜18時間の範囲である。前記Xの置換基に応じた置換反応における前記置換基としては、前述のXの置換基であれば、特に制限されない。また、前記Xの置換基に応じた置換反応における溶媒、反応温度および反応時間は、前記置換基により適宜設定でき、特に制限されない。例えば、前記Xの置換基がアミノ基の場合には、前記プリン誘導体の反応後に、アンモニアで飽和したメタノールを反応させてもよい。なお、これらの反応前には、例えば、官能基RおよびRに対する保護反応を適宜実施し、反応後には、脱保護反応、脱水反応等の反応を適宜実施してもよい。
【0087】
下記工程反応式1に、前記(b)工程のスキームを示す。
(工程反応式1)
【化4】

【0088】
本製造例により製造されるシクロブチルプリン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、下記化学式(6)に示す6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリン(C1114ClN)等が挙げられる。
【化5】

【0089】
<製造例2>
前記シクロブチルプリン誘導体の製造方法において、前記Xは、前記製造例1のように、最初から導入してもよいが、例えば、前記製造例1のような方法が困難である場合等には、目的のXとは別の置換基をカップリング反応後にXに変換してもよい。例えば、前記Xがアルキルチオ基の場合、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下の工程を含む製造方法等が挙げられる。下記工程反応式2に、本製造例のスキームを示す。なお、下記工程反応式2において、Haloは、ハロゲノ基であり、Rは、アルキル基である。
(工程反応式2)
【化6】

【0090】
まず、製造例1の製造方法を用いて、前記Xがハロゲノ基である前記一般式(7)で表される化合物を得る。そして、前記化合物を、溶媒存在下で、チオアルキル化剤と反応させ、前記一般式(8)で表される化合物(Rはアルキル基)を得る。前記チオアルキル化剤としては、特に制限されないが、例えば、チオメトキシドナトリウム、チオエトキシドナトリウム、チオフェノキシドナトリウム等が挙げられ、好ましくは、チオメトキシドナトリウムである。前記溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1、4−ジオキサン等が挙げられ、好ましくは、DMFである。そして、前記反応温度としては、特に制限されないが、例えば、10〜80℃の範囲が挙げられ、好ましくは、15〜25℃の範囲である。また、前記反応時間としては、特に制限されないが、例えば、10〜48時間の範囲であり、好ましくは、12〜18時間の範囲である。なお、前記反応前には、例えば、官能基RおよびRに対する保護反応を適宜実施し、前記反応後には、脱保護反応、脱水反応等の反応を適宜実施してもよい。
【0091】
本製造例により製造されるシクロブチルプリン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、下記化学式(9)に示す6−アミノ−2−チオメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリン(C1217S)等が挙げられる。
【化7】

【0092】
前記シクロブチルプリン誘導体の製造方法は、例えば、前記製造例の工程に加えて、さらに、各工程で得られた反応生成物の分離工程、精製工程等の他の工程を含んでいてもよい。前記分離工程および前記精製工程としては、特に制限されず、例えば、カラムクロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー等の従来公知の方法を適宜用いることができる。このように、前記シクロブチルプリン誘導体は、工業的に生産可能であり、かつ低分子であるため、安価に安定して供給できる。
【0093】
本発明において、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体の塩、溶媒和物もしくは水和物の製造方法としては、特に制限されず、前述の製造方法例等により得られたシクロブチルプリン誘導体等を用いて、従来公知の方法を適宜使用できる。
【0094】
本発明の育毛剤において、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体の含有量は、特に制限されないが、例えば、5〜200mmol/Lであり、好ましくは、10〜100mmol/Lである。
【0095】
本発明の育毛剤は、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体に加えて、さらに、他の成分を含んでもよい。前記成分としては、特に制限されず、例えば、育毛効果を有する成分等、従来公知の成分が挙げられる。前記育毛効果を奏する成分としては、例えば、アデノシン、ミノキシジル、サイクロスポリン、パナックスジンセンエキス、β−グリチルレチン酸、ソフォラ抽出エキス、パントテニールエチルエーテル、l−メントール等が挙げられる。
【0096】
本発明の育毛剤の使用方法は、特に制限されないが、例えば、頭皮等の皮膚または毛髪等の毛への塗布または散布が挙げられる。本発明の育毛剤は、例えば、1日あたり、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体を、頭皮100cmあたり0.001〜0.05mg投与することが好ましく、より好ましくは、頭皮100cmあたり0.01〜0.03mgである。また、本発明の育毛剤は、例えば、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体を、例えば、1日1〜3回に分けて投与することが好ましい。
【0097】
本発明の育毛剤の製品形態は、例えば、化粧品であってもよいし、医薬部外品であってもよいし、医薬品であってもよい。
【0098】
前記化粧品の剤型は、例えば、液状、ジェル、乳液、クリーム、軟膏等が挙げられ、特に制限されない。前記化粧品の形態は、特に制限されず、例えば、トニック、ヘアクリーム、ムース、シャンプー、リンス、クリーム、ジェル、乳液、化粧水、パック等を採用できる。また、前記化粧品の組成は、特に制限されず、例えば、前記一般式(1)で表されるシクロブチルプリン誘導体に加えて、他の成分を含んでもよい。前記成分としては、特に制限されないが、例えば、水性成分、油性成分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、各種薬剤等が挙げられる。
【0099】
前記水性成分としては、例えば、水等が挙げられる。前記油性成分としては、例えば、高級飽和脂肪酸、固形パラフィン、流動パラフィン、シリコーン油、スクワラン、モノオレイン酸グリセリル、オリーブ油、高級アルコール等が挙げられる。前記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。前記保湿剤としては、例えば、グリセリン、ヒアルロン酸、プロピレングリコール、マルチトール、アテロコラーゲン、乳酸ナトリウム等が挙げられる。前記増粘剤としては、例えば、マルメロ粘質物、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム等が挙げられる。前記防腐剤としては、例えば、サリチル酸等が挙げられる。前記各種薬剤としては、例えば、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、ビタミンEアセテート、センブリ抽出物、塩化カルプロニウム、アセチルコリン誘導体等の血管拡張剤;セリン、メチオニン、アルギニン等のアミノ酸類;ビタミンB、ビタミンEもしくはその誘導体、ビオチン、パントテン酸もしくはその誘導体等のビタミン類;ニコチン酸、ニコチン酸メチル、ニコチン酸トコフェロール等のニコチン酸エステル類;セファランチン等の皮膚機能亢進剤;エストラジオール等の女性ホルモン剤;グリチルレチン酸もしくはその誘導体等の消炎剤;ヒノキチオール、ヘキサクロロフェン、ベンザルコニウムクロリド、ビチオノール等の抗菌剤;メントール等の清涼剤;亜鉛もしくはその誘導体;乳酸もしくはそのアルキルエステル、クエン酸等の有機酸類等が挙げられる。
【0100】
前記化粧品の製造方法は、前記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体を用いる以外は、例えば、従来公知の方法を採用できる。前記化粧品は、例えば、前記剤型、形態等に応じた、従来公知の方法で使用できる。
【0101】
前記医薬部外品の剤型、形態、組成、成分、製造方法および使用方法は、特に制限されず、例えば、前述の化粧品と同様である。
【0102】
前記医薬品の投与方法は、例えば、経皮投与が挙げられる。前記医薬品の剤型としては、特に制限されないが、例えば、液剤、ローション剤等が挙げられる。また、前記医薬品は、経口的または非経口的に投与可能である。経口的に投与する場合、前記医薬品の剤型としては、特に限定されないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤等が挙げられる。非経口的に投与する場合、前記医薬品の剤型としては、特に限定されないが、例えば、注射剤、ローション剤、坐剤等が挙げられる。また、前記医薬品の組成は、特に制限されず、前記育毛剤以外に、例えば、賦形剤、吸収促進剤、乳化剤、安定化剤、防腐剤等の各種添加剤等を含んでもよい。また、前記医薬品は、通常用いられる製剤化技術等により製造可能である。
【0103】
前記医薬品において、前記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体の投与量は、例えば、剤形、投与方法、対象疾患、投与する患者等により適宜設定でき、特に制限されない。
【0104】
本発明の育毛剤は、例えば、ヒトまたは非ヒトの哺乳類動物等の動物に使用できる。前記非ヒトの哺乳類動物は、特に制限されないが、例えば、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ等が挙げられる。
【0105】
本発明の育毛剤は、発毛促進、育毛促進および脱毛予防からなる群から選択される少なくとも一つの効果を有する。前記発毛促進効果としては、例えば、成長期誘導効果等の発毛誘導、毛密度の増加等の効果が挙げられる。前記育毛促進効果としては、例えば、太毛化、成長期延長等の効果が挙げられる。前記太毛化とは、一般に、例えば、毛根の矮小化によるうぶ毛化の抑制により、毛径が維持または増大することをいう。前記脱毛予防効果としては、例えば、5α−レダクターゼ阻害等の効果が挙げられる。本発明の育毛剤は、例えば、発毛剤、脱毛予防剤ということもできる。
【0106】
本発明の育毛剤は、例えば、発毛促進、育毛促進および脱毛予防等に影響する効果を有するのが好ましい。前記効果としては、例えば、毛包等を構成する細胞の活性化等が挙げられる。前記細胞としては、特に制限されないが、例えば、毛乳頭細胞、毛母細胞、外毛根鞘細胞、内毛根鞘細胞等が挙げられる。本発明の育毛剤は、例えば、前記細胞の活性化により、育毛に関連する因子の発現を促進するのが好ましい。前記因子としては、例えば、線維芽細胞増殖因子−7(以下、「FGF−7」または「KGF」という場合もある。)、血管内皮細胞増殖因子(以下、「VEGF」という場合もある。)、インスリン様増殖因子(IGF−1)、インスリン等のサイトカインが挙げられ、好ましくは、FGF−7またはVEGFである。
【0107】
本発明の育毛方法は、前記本発明の育毛剤を、皮膚または毛に投与することを特徴とする。前記毛としては、例えば、前述の頭髪、まつ毛等が挙げられる。前記育毛方法は、前記本発明の育毛剤を投与すること以外は、何ら制限されない。前記投与方法としては、特に制限されず、例えば、塗布、噴霧、貼付等が挙げられる。前記育毛方法において、前記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体の投与量は、例えば、剤形、投与方法、毛の生育状態、投与する動物等により適宜設定でき、特に制限されない。前記動物としては、例えば、前述の動物等が挙げられる。前述のように、前記本発明の育毛剤は、例えば、発毛促進、育毛促進および脱毛予防からなる群から選択される少なくとも一つの効果を有する。したがって、本発明の育毛方法は、例えば、発毛方法、脱毛予防方法ということもできる。
【0108】
本発明の育毛剤は、前述のように、前記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体を含み、前記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体は、例えば、FGF−7またはVEGFの発現を促進することから、FGF−7発現促進剤またはVEGF発現促進剤として使用できる。なお、前記FGF−7発現促進剤およびVEGF発現促進剤の形態、使用方法等は、前記本発明の育毛剤と同様である。
【実施例】
【0109】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例により限定および制限されない。
【0110】
(実施例1)
本例では、前記化学式(6)に示す6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリン(C1114ClN、以下、「2−Cl−C.OXT−A」という。)が、不死化ヒト毛乳頭細胞におけるFGF−7遺伝子の発現に与える影響を調べた。
【0111】
[2−Cl−C.OXT.Aの合成]
前記2−Cl−C.OXT.Aは、以下の工程1〜3により合成した。なお、本例において、H NMRおよび13C NMRスペクトルは、UltrashieldTM 400 Plus FT NMR System(BRUKER社製)を用いて測定した。ケミカルシフトは、δで表し、カップリング定数(J)は、Hzで表した。融点は、微量融点測定装置MP−500D(ヤナコ機器開発研究所製)により測定した。元素分析は、2400 Series II CHNS/O(Perkin Elmer社製)を用いて測定した。高分解能質量分析は、APEX IV mass spectrometer(BRUKER社製)を用い、エレクトロスプレイイオン化質量分析(ESI−MS)法により測定した。
【0112】
(工程1:シス−トランス−2,3−ビス(ベンゾイルオキシメチル)−1−シクロブタノールの合成)
本例において、シス−トランス−2,3−ビス(ベンゾイルオキシメチル)−1−シクロブタノールは、前記Basacchiらの方法(G.S.Basacchi,A.Braitman,C.W.Cianci,J.M.Clark,A.K.Field,M.E.Hagen,D.R.Hockstein,M.F.Malley,T.Mitt,W.A.Slusarchyk,J.E.Sundeen,B.J.Terry,A.V.Tuomari,E.R.Weaver,M.G.Young and R.Zahler,J.Med.Chem.,1991,34,1415)に基づき、以下のようにして合成した。まず、トランス−2,3−ビス(ベンゾイルオキシメチル)−1−シクロブタノン 14.00g(41.40mmol)を、乾燥THF350mLに溶解し、窒素気流下で−78℃に冷却した。冷却後、撹拌しながら、1mmol/LのLS−セレクトリドTHF溶液42mLを前記溶液に滴下し、2時間後、さらに酢酸6mLを滴下した。この溶液を、室温に戻るまで静置後、20mLに濃縮した。前記濃縮液に、トルエン250mLおよび水100mLを加え、分液ロート中で震盪した。得られた有機層を水100mLで洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。乾燥後、ろ過により固形物を除き、ろ液を20mLに濃縮した。この濃縮液(残渣液)を、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー法により分離し、あめ状のシス−トランス−2,3−ビス(ベンゾイルオキシメチル)−1−シクロブタノール(10.15g、収率72%)を得た。
【0113】
(工程2:2,6−ジクロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ベンゾイルオキシメチル)シクロブチル]プリンの合成)
つぎに、前記シス−トランス−2,3−ビス(ベンゾイルオキシメチル)−1−シクロブタノール(5.20g、15.28mmol)および2,6−ジクロロプリン(4.33g、22.9mmol)を、THF100mLに溶解し、氷冷下、トリフェニルフォスフィリン(7.87g、30mmol)を添加した。添加後、さらに、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(5.9mL、30mmol)を加え、一晩、50℃に保持した。この溶液を濃縮した後、残渣液を、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー法により分離し、下記化学式(10)に示す2,6−ジクロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ベンゾイルオキシメチル)シクロブチル]プリンの白い結晶(4.44g、収率57%)を得た。
【0114】
【化8】

【0115】
以下に、この化合物の物性値を示す。
【0116】
Mp 146.8−147.4℃,MS m/z=510,512,514(M).HR−MS.calcd.for C2520Cl:510.0862.Found;510.0846.Anal.calcd.for C2520Cl・0.3HO.C;58.11,H;4.02,N;10.84.Found.C;57.79,H;3.94,N;10.87.
【0117】
(工程3:6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリンの合成)
前記2,6−ジクロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ベンゾイルオキシメチル)シクロブチル]プリン(3.73g、7.29mmol)を、MeOH50mLに懸濁し、アンモニアで飽和させた。この溶液を、200mLの鋼鉄製封菅内で、一晩、100℃に加熱した。加熱終了後、溶液を氷冷し、エバポレーターを用いて減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣に水50mLを加え、CHCl30mLで2度洗浄した。洗浄後、水層を採取し、10mLに濃縮し、前記化学式(6)に示す6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリン(2−Cl−C.OXT−A)の白い結晶(1.49g、72%)を得た。
【0118】
以下に、この化合物の物性値を示す。
【0119】
H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 8.25(1 H,s),7.68(2 H,br s),4.63(1 H,dd,J 5.2 and 4.6),4.53−4.60(2 H,m),3.46−3.56(4 H,m),2.72−2.82(1 H,m),2.38−2.46(1 H,m),2.14(1 H,dd,J 19.2 and 9.6),2.03−2.12(1 H,m);13C NMR(100MHz,DMSO−d):δ 156.7,152.6,150.4,140.2,118.0,63.5,61.4,47.6,47.3,33.0,29.4.Mp 172−173.5℃.Anal.calcd.for C1114ClN・0.2HO.C;45.98,H;5.05,N;24.37.Found.C;45.83,H;5.01,N;24.23.
【0120】
[FGF−7発現測定]
まず、前記不死化ヒト毛乳頭細胞を、特開平11−89565号公報記載の方法に基づいて作製した。
【0121】
つぎに、ウシ胎児血清(FBS)無添加のDMEM(インビトロジェン社製)に、所定濃度(50および100μmol/L)になるように、前記2−Cl−C.OXT−Aを添加し、実施例のサンプルを調製した。また、前記DMEMに前記FBSを10v/v%となるように添加し、FBS−DMEM培地を調製した。
【0122】
そして、24ウェルプレートに、前記不死化ヒト毛乳頭細胞を3×10細胞/ウェルとなるように播種し、前記FBS−DMEM培地を用いて、37℃、5%COの条件下で、3日間培養した。培養後、前記培地を除去し、PBSを用いて、各ウェルを洗浄した。洗浄後、速やかに、各ウェルに前記実施例のサンプルを加え、同条件下で、2時間培養した(n=4)。
【0123】
培養後、各ウェル中の細胞を回収し、MagNA Pure LC mRNAアイソレーションキットI(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)の細胞溶解液を用いて、細胞を溶解した。得られた細胞溶解液を、自動核酸精製装置(商品名:MagNA Pure LC、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)に供し、mRNA液20μLを得た。前記mRNA液7μLを逆転写反応に供した。なお、前記逆転写反応において、逆転写酵素は、SuperScriptII(インビトロジェン社製)を用いた。合成したcDNA液100μLのうち5μLを鋳型とし、リアルタイムPCR装置(商品名:ライトサイクラー、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いてリアルタイムPCRを行い、FGF−7遺伝子の発現量(F)を測定した。そして、内部標準因子として、G3PDH遺伝子の発現量(G)を同時に測定した。なお、前記リアルタイムPCRにおいて、蛍光色素として、SYBR(登録商標)Green(モルキュラープローブ社製)を用い、プライマーとして、下記配列のプライマーを用いた。
【0124】
(プライマー)
FGF−7用プライマー
フォワードプライマー(配列番号1)
5’−catgaacacccggagcactac−3’
リバースプライマー(配列番号2)
5’−cactgtgttcgacagaagagtcttc−3’
G3PDH用プライマー
フォワードプライマー(配列番号3)
5’−gagtcaacggatttggtcgt−3’
リバースプライマー(配列番号4)
5’−tgggatttccattgatgaca−3’
【0125】
陰性コントロールとして、前記2−Cl−C.OXT−A無添加の前記DMEM(陰性コントロールサンプル)を用いて、同様にして、前記FGF−7遺伝子の発現量および前記G3PDH遺伝子の発現量を測定した。さらに、陽性コントロールとして、前記2−Cl−C.OXT−Aに代えて、所定濃度(50および100μmol/L)のアデノシンを添加した前記DMEM(陽性コントロールサンプル)を用いて、同様にして、前記FGF−7遺伝子および前記G3PDH遺伝子の発現量を測定した。
【0126】
各サンプルについて、前記FGF−7遺伝子および前記内部標準遺伝子(G3PDH遺伝子)の発現量を下記式(1)に代入し、前記内部標準遺伝子で補正した前記FGF−7遺伝子の発現量を求めた。そして、前記陰性コントロールサンプルの前記FGF−7遺伝子の補正発現量を100%として、前記実施例サンプルおよび前記陽性コントロールサンプルの前記FGF−7遺伝子の補正発現量の相対値(%)を求めた。これらを、各サンプルの前記FGF−7遺伝子の相対発現量(%)として、比較した。
FGF−7遺伝子の補正発現量(%)=100×F/G ・・・(1)
F=FGF−7遺伝子発現量
G=G3PDH遺伝子発現量
【0127】
図1に、前記2−Cl−C.OXT−Aまたは前記アデノシン存在下で培養した不死化ヒト毛乳頭細胞における、前記FGF−7遺伝子の相対発現量(%)を示す。図1において、縦軸は、前記FGF−7遺伝子の相対発現量(%)であり、各バーは、左から順に、前記陰性コントロールサンプル、前記アデノシン(50および100μmol/L)を含む前記陽性コントロールサンプル、前記2−Cl−C.OXT−A(50および100μmol/L)を含む前記実施例サンプルの結果である。また、図1において、アスタリスクは、前記陰性コントロールサンプルと、前記実施例サンプルまたは前記陽性コントロールサンプルとの間における有意差(p<0.01)が認められたことを示す。図1に示すように、前記2Cl−C.OXT−Aによれば、前記陽性コントロールサンプルのアデノシンと同様に、前記不死化ヒト毛乳頭細胞において、前記FGF−7遺伝子の発現が促進された(p<0.01)。また、50μmol/Lの濃度では、前記陽性コントロールサンプルのアデノシンが、前記2−Cl−C.OXT−Aに対して、有意差を示したが(P<0.01)、100μmol/Lの濃度では、両者間に有意差はなかった。このことから、前記2−Cl−C.OXT−Aは、最終的なポテンシャルは、前記アデノシンと同程度であることがわかった。
【0128】
(実施例2)
本例では、前記実施例1の2−Cl−C.OXT−Aが、不死化ヒト外毛根鞘細胞におけるVEGF遺伝子の発現に与える影響を調べた。
【0129】
[不死化ヒト外毛根鞘細胞の作製]
まず、不死化ヒト外毛根鞘細胞を、特開2000−89号公報記載の方法に基づいて作製した。
【0130】
[VEGF発現測定]
基礎培地(商品名:EpiLife(登録商標)−KG2培地、カスケード・バイオロジクス社製)に、所定濃度(50および100μmol/L)になるように、前記2−Cl−C.OXT−Aを添加し、実施例のサンプルを調製した。
【0131】
前記不死化ヒト毛乳頭細胞に代えて、前記不死化ヒト外毛根鞘細胞を用い、前記FBS−DMEM培地に代えて、前記基礎培地に添加剤(商品名:EDGS、カスケード・バイオロジクス社製)を全量加えた培地を用い、前記FGF−7遺伝子に代えて、前記VEGF遺伝子を測定し、前記FGF用プライマーに代えて、下記VEGF用プライマーを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、遺伝子の発現量を測定し、相対発現量(%)を算出した。
【0132】
(プライマー)
VEGF用プライマー
フォワードプライマー(配列番号5)
5’−cttgctgctctacctcca−3’
リバースプライマー(配列番号6)
5’−tgttgtgctgtaggaagc−3’
【0133】
図2に、前記2−Cl−C.OXT−Aまたは前記アデノシン存在下で培養した前記不死化ヒト外毛根鞘細胞における、前記VEGF遺伝子の相対発現量(%)を示す。図2において、縦軸は、前記VEGF遺伝子の相対発現量(%)であり、各バーは、左から順に、前記陰性コントロールサンプル、前記アデノシン(50および100μmol/L)を含む前記陽性コントロールサンプル、前記2−Cl−C.OXT−A(50および100μmol/L)を含む前記実施例サンプルの結果である。また、図2において、アスタリスクが1つは、前記陰性コントロールサンプルと前記実施例サンプルまたは前記陽性コントロールサンプルとの間における有意差が、有意水準p<0.05で認められたことを示し、アスタリスクが2つは、前記有意差が、有意水準p<0.01で認められたことを示す。図2に示すように、前記2−Cl−C.OXT−Aによれば、前記陽性コントロールのアデノシンと同様に、前記不死化ヒト外毛根鞘細胞において、前記VEGF遺伝子の発現が促進された。また、50μmol/Lの濃度では、前記陽性コントロールのアデノシンが、前記2−Cl−C.OXT−Aに対して有意差を示したが、100μmol/Lの濃度では、両者間に有意差はなかった。このことから、前記2−Cl−C.OXT−Aは、最終的なポテンシャルは、前記アデノシンと同程度であることがわかった。
【0134】
前記実施例1および実施例2に示すように、前記一般式(1)に示すシクロブチルプリン誘導体は、毛乳頭細胞における前記FGF−7遺伝子の発現を促進し、外毛根鞘細胞における前記VEGF遺伝子の発現を促進することが示された。
【0135】
(実施例3)
本例では、前記化学式(9)に示す6−アミノ−2−チオメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリン(C1217S、以下、「2−SMe−C.OXT−A」という。)を合成した。なお、前記化学式(9)において、SMeは、メチルチオ基である。
【0136】
[2−SMe−C.OXT−Aの合成]
本例では、前記実施例1と同様にして、前記工程1〜3を行い、6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリン(2−Cl−C.OXT−A)を合成した。そして、前記2−Cl−C.OXT−Aを用いて、さらに下記工程4〜6を実施し、前記2−SMe−C.OXT.Aを合成した。なお、本例では、前記実施例1と同様にして、各化合物を測定した。
【0137】
(工程4:6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(トリフェニルメトキシメチル)シクロブチル]プリンの合成)
前記6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリン(170.4mg、0.60mmol)溶液、トリチルクロライド(501.8mg、1.80mmol)、トリエチルアミン(0.4mL)および4−ジメチルアミノピリジン(11.6mg、0.06mmol)をDMF2.0mLに溶解させ、室温で一晩撹拌した。撹拌開始12時間後、得られた黄濁液を、氷水に加え、酢酸エチルで抽出した。この有機抽出物を、飽和塩化アンモニウム溶液および水で洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。溶媒留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記化学式(11)に示す6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(トリフェニルメトキシメチル)シクロブチル]プリンの白い結晶(273.9mg、収率59%)を得た。なお、下記化学式(11)において、Trは、トリチル基である。
【0138】
【化9】

【0139】
以下に、この化合物の物性値を示す。
【0140】
H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.91(1 H,s),7.15−7.41(30 H,m),5.70(2 H,br s),4.73(1 H,dd,J 17.2 and 9.2),3.70(1 H,dd,J 10.0 and 4.8),3.18−3.30(4 H,m),2.87−2.90(1 H,m),2.53−2.67(1 H,m),2.20−2.33(2 H,m).
【0141】
(工程5:6−アミノ−2−チオメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(トリフェニルメトキシメチル)シクロブチル]プリンの合成)
前記6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(トリフェニルメトキシメチル)シクロブチル]プリン(92.2mg、0.12mmol)およびチオメトキシドナトリウム(84.1mg、1.20mmol)をDMF3.1mLに溶解し、110℃で3.5時間加熱した。加熱終了後、減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣を酢酸エチルで抽出した。得られた有機抽出物を、水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:ヘキサン=1:1)により精製し、下記化学式(12)に示す6−アミノ−2−チオメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(トリフェニルメトキシメチル)シクロブチル]プリンの黄色味を帯びた結晶(66.3mg、収率71%)を得た。なお、下記化学式(12)において、SMeは、メチルチオ基であり、Trは、トリチル基である。
【0142】
【化10】

【0143】
以下に、この化合物の物性値を示す。
【0144】
H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.68(1 H,s),7.14−7.41(30 H,m),5.43(2 H,br s),4.74(1 H,dd,J 17.6 and 8.8),3.18−3.33(4 H,m),2.90−3.03(1 H,m),2.53−2.65(1 H,m),2.33−2.48(2 H,m),2.29(3 H,s).
【0145】
(工程6:2−SMe−C.OXT−Aの合成)
前記6−アミノ−2−チオメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(トリフェニルメトキシメチル)シクロブチル]プリン(65.0g、0.08mmol)を、ギ酸1.7mLおよびジエチルエーテル1.7mLの混合液に溶解し、室温で15分間撹拌した。撹拌終了後、この混合液を酢酸エチルに溶解し、抽出した。得られた有機抽出物を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。有機溶媒留去後、残渣を薄層クロマトグラフィー(ジクロロメタン:エタノール=5:1)により精製し、前記化学式(9)に示す2−SMe−C.OXT−A(6−アミノ−2−チオメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリン)の黄色味を帯びた結晶(9.4mg、収率38%)を得た。
【0146】
以下に、この化合物の物性値を示す。
【0147】
H NMR(400MHz,MeOH−d):δ 8.04(1 H,s),4.64(1 H,dd,J 17.6 and 8.8),3.62−3.87(4 H,m),2.85−3.00(1 H,m),2.54(1 H,s),2.42−2.61(2 H,m),2.18−2.24(1 H,m);13C NMR(100MHz,MeOH−d):δ167.5,165.5,155.2,138.9,118.2,64.1,62.2,48.6,33.5,29.3,28.2,13.1.Mp 209.4−211.0℃.HRMS(ESI)Calcd for C1217NaOS[M+Na]:318.0995.Found 318.1052.
【0148】
(実施例4)
本例では、下記化学式(13)に示す9−[トランス−トランス−2,3−ビス(アセチルオキシメチル)シクロブチル]グアニンを合成した。
【0149】
【化11】

【0150】
なお、前記化学式(13)に示す9−[トランス−トランス−2,3−ビス(アセチルオキシメチル)シクロブチル]グアニンは、公知の方法により適宜合成できる。具体的には、例えば、下記化学式(14)に示すC.OXT−G(2−アミノ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]−3H−プリン−6−オン、すなわち9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]グアニン)を、アセトニトリル溶媒中、トリエチルアミンおよび4−ジメチルアミノピリジンの存在下、無水酢酸でアセチル化して得ることができる。この合成方法は、例えば、特開平03−047169号公報、米国特許第5153352号公報(US5153352A)、および欧州特許出願公開第0366059号明細書(EP0366059A2)に記載されている。また、前記化学式(14)のC.OXT−G(2−アミノ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]−3H−プリン−6−オン、すなわち9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]グアニン)も、公知の方法により適宜合成可能であり、例えば、前記特開平03−047169号公報、米国特許第5153352号公報(US5153352A)、および欧州特許出願公開第0366059号明細書(EP0366059A2)に合成法が記載されている。
【0151】
【化12】

【0152】
(実施例5)
本例では、下記化学式(15)に示す8−ブロモ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(アセチルオキシメチル)シクロブチル]グアニンを合成した。
【0153】
【化13】

【0154】
まず、前記化学式(13)で表される9−[トランス−トランス−2,3−ビス(アセチルオキシメチル)シクロブチル]グアニン175mg(0.5mmol)を酢酸3.5mLに溶かし、さらに酢酸ナトリウム175mgを加えて溶かした。この溶液を、A液とする。一方、N−ブロムコハク酸イミド110mg(0.62mmol)を酢酸2mLに溶かした。この溶液をB液とする。前記A液に、撹拌しながらB液を滴下した。この混合溶液を室温で30分放置し、さらに4℃で一晩放置した。その後、溶媒を減圧下で留去し、残渣を酢酸エチル20mLと水10mLの混液に溶かした。この混合液から水層を分離し、有機層を濃縮し、結晶を析出させた。また、分離した水層からも結晶を析出させた。前記有機層および水相から析出した結晶を、それぞれろ過により採取し、乾燥させて、前記化学式(15)に示す8−ブロモ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(アセチルオキシメチル)シクロブチル]グアニンを、収量154mg(0.40mmol、収率80%)で得た。
【0155】
以下に、この化合物の物性値を示す。
【0156】
FT−MS m/z=450、452(M+Na);H NMR(400MHz,DMSO−d):δ10.76(1H,br s),6.48(2H,br s),4.58(1H,m),4.21(3H,d,J=7.2Hz),4.07(3H,d,J=6.0Hz),3.42(1H,m),2.81(1H,m),2.35(1H,m),2.22(1H,m),2.02(3H,s),1.92(3H,s)
【0157】
(実施例6)
下記化学式(16)で表される8−ブロモ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]グアニンを合成した。
【0158】
【化14】

【0159】
前記化学式(15)で表される8−ブロモ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(アセチルオキシメチル)シクロブチル]グアニン39mg(0.091mmol)を、2mol/Lアンモニアメタノール溶液5mLに溶かし、25℃で1日放置した。この溶液を濃縮し、前記化学式(16)で表される8−ブロモ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]グアニンを、やや黄色みがかった結晶として得た。収量は、21mg(0.061mmol,収率67%)であった。
【0160】
以下に、この化合物の物性値を示す。
【0161】
FT−MS m/z=366、368(M+Na);H NMR(400MHz,DMSO−d):δ8.52(1H,br s),6.47(2 H,br s),4.60(2H,m),4.50(1H,t,J=5.2Hz),3.59(2H,t,J=5.6Hz),3.43(2H,t,J=4.8Hz),3.25(1H,m),2.57(1H,q,J=10.0Hz),2.26(1H,m),2.02(1H,m).
【0162】
(実施例7)
下記化学式(17)で表される2−アミノ−6,8−ジクロル−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(アセチルオキシメチル)シクロブチル]プリンを合成した。
【0163】
【化15】

【0164】
まず、前記化学式(15)で表される8−ブロモ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(アセチルオキシメチル)シクロブチル]グアニン154mg(0.4mmol)およびテトラエチルアンモニウムクロリド150mgを、アセトニトリル5mLに溶かした。この溶液に、さらにN,N−ジメチルアニリン0.16mL(1.3mmol)およびオキシ塩化リン0.7mL(7.7mmol)を加え、室温で30分放置後、100℃で30分加熱還流して反応させた。その後、前記反応溶液を氷水中に滴下し、15分間撹拌した後、クロロホルムで目的物を抽出した。前記クロロホルム層を、5%炭酸水素ナトリウム水、および水で洗浄後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で分離し、前記化学式(17)で表される2−アミノ−6,8−ジクロル−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(アセチルオキシメチル)シクロブチル]プリンを白色結晶として得た。収量は86mg(0.21mmol、収率53%)であった。
【0165】
以下に、この化合物の物性値を示す。
【0166】
FT−MS m/z=424,426,428(M+Na);H NMR(400MHz,CDCl):δ5.16(2H,br s),4.70(1H,m),4.35(2H,d,J=6.4Hz),4.17(2H,m),3.62(1H,m),2.89(1H,m),2.52(1H,m),2.33(1H,m),2.10(3H,s),2.02(3H,s).
【0167】
(実施例8)
下記化学式(18)で表される2−アミノ−6,8−ジメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリンを合成した。
【0168】
【化16】

【0169】
まず、前記化学式(17)で表される2−アミノ−6,8−ジクロル−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(アセチルオキシメチル)シクロブチル]プリン75mg(0.186mmol)を、メタノール6mLに懸濁させた。この懸濁液に、さらに23%ナトリウムメトキシド0.5mLを加えて撹拌し、前記原料化合物(17)をメタノールに溶解させた。この溶液を60℃で一晩加熱し、反応させた。反応後、前記溶液を酢酸で中和し、濃縮後、シリカゲルカラム(酢酸エチル:メタノール=12:1)で分離し、溶媒を留去した。得られた残渣を酢酸エチルから結晶化(再結晶)し、前記化学式(18)で表される2−アミノ−6,8−ジメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリンを、白色結晶として得た。収量は、34.4mg(0.111mmol、収率60%)であった。
【0170】
以下に、この化合物の物性値を示す。
【0171】
FT−MS m/z=310(M+H);H NMR(400MHz,DMSO−d):δ4.44−4.55(3H,m),3.99(3H,s),3.88(3H,s),3.52(2H,t,J=6.0Hz),3.40(2H,t,J=5.2Hz),3.01(1H,m),2.31(1H,m),2.20(1H,m),1.98(1H,m).
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明によれば、例えば、線維芽細胞増殖因子−7遺伝子および血管上皮細胞増殖因子遺伝子の発現を促進できる。このため、本発明の育毛剤は、育毛効果に優れる。したがって、本発明は、例えば、医療、美容等の分野に有用であり、幅広い分野に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物を含むことを特徴とする育毛剤。
【化17】

前記一般式(1)中、
は、ハロゲノ基、アルキル基、アルキルチオ基、チオ基(チオール基)、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキニル基またはシアノ基であり、
は、ハロゲノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオ基(チオール基)またはアルキルチオ基であり、
は、水素原子、ハロゲノ基、アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシフェニル基またはカルバモイル基であり、
およびRは、同一であるかまたは異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲノ基、カルボキシル基、アルキル基、アシル基、カルバモイル基、アシルオキシ基、ヒドロキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ハロアルキル基またはホスホノオキシアルキル基であり、
がアミノ基かつXが水素原子である場合は、RおよびRは、ヒドロキシアルキル基以外の原子または置換基であり、
前記X、X、X、RおよびRにおいて、前記アルキル基、前記アルキルチオ基、前記チオ基(チオール基)、前記ヒドロキシ基、前記アルコキシ基、前記アルキニル基、前記アミノ基、前記ヒドロキシフェニル基、前記カルバモイル基、前記カルボキシル基、前記アシル基、前記アシルオキシ基、前記ヒドロキシアルキル基、前記アシルオキシアルキル基、前記アルコキシアルキル基および前記ホスホノオキシアルキル基は、それぞれの一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。
【請求項2】
前記一般式(1)において、前記Xが、クロロ基またはチオメトキシ基である請求項1記載の育毛剤。
【請求項3】
前記一般式(1)において、前記Xが、アミノ基である請求項1または2記載の育毛剤。
【請求項4】
前記一般式(1)において、前記Xが、水素原子、ハロゲノ基またはアルコキシ基である請求項1から3のいずれか一項に記載の育毛剤。
【請求項5】
前記一般式(1)において、前記RおよびRが、ヒドロキシメチル基である請求項1から4のいずれか一項に記載の育毛剤。
【請求項6】
前記一般式(1)において、
前記Xが、クロロ基またはチオメトキシ基であり、
前記Xが、アミノ基であり、
前記Xが、水素原子であり、
前記RおよびRが、ヒドロキシメチル基である、請求項1から5のいずれか一項に記載の育毛剤。
【請求項7】
前記シクロブチルプリン誘導体が、6−アミノ−2−クロロ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリンもしくは6−アミノ−2−チオメトキシ−9−[トランス−トランス−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]プリンである請求項1から6のいずれか一項に記載の育毛剤。
【請求項8】
下記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物を含むことを特徴とする線維芽細胞増殖因子−7遺伝子の発現促進剤。
【化18】

前記一般式(1)中、
は、ハロゲノ基、アルキル基、アルキルチオ基、チオ基(チオール基)、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキニル基またはシアノ基であり、
は、ハロゲノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオ基(チオール基)またはアルキルチオ基であり、
は、水素原子、ハロゲノ基、アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシフェニル基またはカルバモイル基であり、
およびRは、同一であるかまたは異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲノ基、カルボキシル基、アルキル基、アシル基、カルバモイル基、アシルオキシ基、ヒドロキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ハロアルキル基またはホスホノオキシアルキル基であり、
がアミノ基かつXが水素原子である場合は、RおよびRは、ヒドロキシアルキル基以外の原子または置換基であり、
前記X、X、X、RおよびRにおいて、前記アルキル基、前記アルキルチオ基、前記チオ基(チオール基)、前記ヒドロキシ基、前記アルコキシ基、前記アルキニル基、前記アミノ基、前記ヒドロキシフェニル基、前記カルバモイル基、前記カルボキシル基、前記アシル基、前記アシルオキシ基、前記ヒドロキシアルキル基、前記アシルオキシアルキル基、前記アルコキシアルキル基および前記ホスホノオキシアルキル基は、それぞれの一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。
【請求項9】
下記一般式(1)に表されるシクロブチルプリン誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物を含むことを特徴とする血管内皮細胞増殖因子遺伝子の発現促進剤。
【化19】

前記一般式(1)中、
は、ハロゲノ基、アルキル基、アルキルチオ基、チオ基(チオール基)、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキニル基またはシアノ基であり、
は、ハロゲノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオ基(チオール基)またはアルキルチオ基であり、
は、水素原子、ハロゲノ基、アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシフェニル基またはカルバモイル基であり、
およびRは、同一であるかまたは異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲノ基、カルボキシル基、アルキル基、アシル基、カルバモイル基、アシルオキシ基、ヒドロキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ハロアルキル基またはホスホノオキシアルキル基であり、
がアミノ基かつXが水素原子である場合は、RおよびRは、ヒドロキシアルキル基以外の原子または置換基であり、
前記X、X、X、RおよびRにおいて、前記アルキル基、前記アルキルチオ基、前記チオ基(チオール基)、前記ヒドロキシ基、前記アルコキシ基、前記アルキニル基、前記アミノ基、前記ヒドロキシフェニル基、前記カルバモイル基、前記カルボキシル基、前記アシル基、前記アシルオキシ基、前記ヒドロキシアルキル基、前記アシルオキシアルキル基、前記アルコキシアルキル基および前記ホスホノオキシアルキル基は、それぞれの一つ以上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもよい。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−246377(P2011−246377A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120143(P2010−120143)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】