説明

育苗移植用連続集合鉢体およびその製造方法

【課題】増長部分を折り畳んだり、あるいは切り込みを入れることなく連結片を延長可能とし、もって株間間隔の拡大に安全かつ確実に対応できる育苗移植用連続集合鉢体を提供する。
【解決手段】薄膜10を展開することにより形成される六角筒状の個別鉢体1を連結片2にて接続して連続体3となし、該連続体3を重ね合せると共に、前記重ね合せた連続体3の相互間を水溶性接着剤にて貼着した連続集合鉢体4において、前記個別鉢体1を2枚の薄膜10A,10Bを貼合せて形成する共に、該個別鉢体の両側に薄膜10A,10Bの延長片12(12A,12B)を設け、この延長片12A,12Bを個別鉢体1の側面に沿って折返して、隣接する個別鉢体1の相互間で前記延長片12A,12Bの端部同士を非水溶性接着剤にて貼着し(貼着部13)、連結片2の長さを個別鉢体1の一側面の幅の7倍長とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、野菜、花卉等の作物の育苗、移植に用いられる育苗移植用連続集合鉢体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の育苗移植用連続集合鉢体は、従来一般には、紙または紙のような薄膜を展開することにより形成される四角または六角筒状の個別鉢体を連結片にて接続して連続体となし、該連続体を重ね合せると共に、前記重ね合せた連続体の相互間を水溶性接着剤にて貼着した構造となっている(例えば、特許文献1参照)。このような育苗移植用連続集合鉢体によれば、保管時に圧扁状態として、使用時に展開することでハニカム状に多数の個別鉢体が密に集合した状態で出現し、個別鉢体に栽培土を充填してこれに播種することにより集中的に多数の苗を育成できる。また、この連続集合鉢体は、育苗時の潅水で水溶性接着剤が退化するので、所定日数育苗した後、一端を引くと、重ね合せた連続体の相互間が分離して一列に引出し可能となり、例えば、特許文献2に記載されるような接地型の簡易移植機を用いて、苗の植付けを効率的に行うことができるようになる。
【0003】
ところで、上記した従来一般の連続集合鉢体(六角筒状)によれば、密に集合させる必要上、連結片の長さが個別鉢体の一側面の幅と同等に設定されており、上記特許文献2に記載されるような簡易移植機を用いて連続的に苗を植付けようとすると、その株間間隔は連結片の長さによって制限され、育苗作物の種類によっては株間間隔が狭すぎて、その利用を断念せざるを得ない場合が生じる。
【0004】
そこで、例えば、特許文献3には、連結片に個別鉢体の一側面の幅より長い増長部分を設け、この増長部分を折畳んで相互に水溶性接着剤にて貼着すると共に、前または後側の個別鉢体の側面に水溶性接着剤にて貼着した連続集合鉢体が開示され、また、特許文献4には、連結片または個別鉢体に所定形状の切り込みを設けて、連結片を前記切り込みを介して伸長可能とした連続集合鉢体が開示されている。
【特許文献1】特公昭58−11817号公報
【特許文献2】特開平5−308822号公報
【特許文献3】特開平8−205687号公報
【特許文献4】特開平7−123869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に開示された連続集合鉢体(六角筒状)によれば、連結片の増長部分の折畳み部分への潅水の浸透が不足し、育苗中における水溶性接着剤の退化が不十分となって、移植時に連結片の折畳み部分が円滑に分離、伸長せず、連結片の長さ、すなわち株間間隔にバラツキが生じ易い、という問題があった。また、連結片の増長部分を折畳んで相互に接着剤により貼着しなければならないことに加え、この折畳み部分を個別鉢体に貼着しなければならないため、製造が面倒になり、製造コストが高くなる、という問題もあった。一方、特許文献4に開示された連続集合鉢体によれば、移植作業のために個別鉢体を一列に引出す際、切り込み部分のエッジに応力が集中して切断し易い、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、増長部分を折り畳んだり、あるいは切り込みを入れることなく連結片を延長可能とし、もって株間間隔の拡大に安全かつ確実に対応できると共に、コスト低減に寄与する育苗移植用連続集合鉢体とその製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、育苗移植用連続集合鉢体としての第1の発明は、紙または紙のような薄膜を展開することにより形成される四角または六角筒状の個別鉢体を連結片にて接続して連続体となし、該連続体を重ね合せると共に、前記重ね合せた連続体の相互間を水溶性接着剤にて貼着した育苗移植用連続集合鉢体において、前記個別鉢体を2枚の薄膜を貼合せて形成し、該個別鉢体の両側に設けた前記薄膜の延長片を、前記個別鉢体の側面に沿って折返して該側面に水溶性接着剤にて貼着すると共に、隣接する個別鉢体の相互間で前記延長片の端部同士を非水溶性接着剤にて貼着することにより前記連結片を形成したことを特徴とする。
【0008】
また、育苗移植用連続集合鉢体としての第2の発明は、紙または紙のような薄膜を展開することにより形成される四角または六角筒状の個別鉢体を連結片にて接続して連続体となし、該連続体を重ね合せると共に、前記重ね合せた連続体の相互間を水溶性接着剤にて貼着した育苗移植用連続集合鉢体において、前記個別鉢体を2枚の薄膜を貼合せて形成し、該個別鉢体の半数の両側に設けた前記薄膜の延長片を、前記個別鉢体の側面に沿って折返して該側面に水溶性接着剤にて貼着すると共に、該個別鉢体に隣接して配置された、延長片を有しない個別鉢体に前記延長片の端部を非水溶性接着剤にて貼着して連結片を形成したことを特徴とする。
【0009】
上記のように構成した育苗移植用連続集合鉢体においては、個別鉢体に設けた薄膜の延長片を個別鉢体の側面に沿って折返して貼着するだけなので、育苗中の潅水によって水溶性接着剤が十分に退化し、移植に際して連結片が円滑に分離、伸長する。
【0010】
上記課題を解決するため、育苗移植用連続集合鉢体の製造方法としての第1の方法発明は、上記第1の発明の製造を行うもので、帯状薄膜の2枚を非水溶性接着剤にて貼合せて、両側に薄膜の延長片を有する個別鉢体を形成する第1工程と、前記延長片を個別鉢体の側面に沿って折返すと共に、該延長片を個別鉢体の側面に水溶性接着剤にて貼着する第2工程と、前記個別鉢体を並列させ、隣接する個別鉢体の相互間で前記延長片の端部同士を非水溶性接着剤にて貼着して連結片を形成し連続体を得る第3工程と、前記連続体を重ね合せて相互に水溶性接着剤にて貼着する第4工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するため、育苗移植用連続集合鉢体の製造方法としての第2の方法発明は、上記第2の発明の製造を行うもので、帯状薄膜の2枚を非水溶性接着剤にて貼合せて、両側に薄膜の延長片を有する第1の個別鉢体と前記延長片を有しない第2の個別鉢体とを形成する第1工程と、前記延長片を第1の個別鉢体の側面に沿って折返すと共に、該延長片を第1の個別鉢体の側面に水溶性接着剤にて貼着する第2工程と、前記第1の個別鉢体と前記第2の個別鉢体とを並列させ、前記第1の個別鉢体の延長片の端部を前記第2の個別鉢体に貼着して連結片を形成し連続体を得る第3工程と、前記連続体を重ね合せて相互に水溶性接着剤にて貼着する第4工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
このように構成した育苗移植用連続集合鉢体の製造方法においては、連結片の増長部分を折畳む必要がないので、工程が簡素化される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る育苗移植用連続集合鉢体によれば、個別鉢体に設けた薄膜の延長片を個別鉢体の側面に沿って折返して貼着するだけなので、育苗中の潅水によって水溶性接着剤が十分に退化し、移植に際して連結片が円滑に分離、伸長し、結果として所望の株間間隔を安定して確保することができる。
【0014】
また、本発明に係る育苗移植用連続集合鉢体の製造方法によれば、連結片の増長部分を折畳む必要がないので、工程が簡素化され、製造コストが低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1および図2は、本発明の第1実施形態としての育苗移植用連続集合鉢体を示したものである。本第1実施形態は、六角筒状の個別鉢体1を多数集合させたもので、各個別鉢体1は連結片2により接続されている。これら個別鉢体1と連結片2とによって形成された一連の連続体3は、個別鉢体1が1/2 ピッチずれるように水溶性接着剤を介して重ね合され、これによって個別鉢体1を密に集合させた連続集合鉢体4が形成されている。なお、図1,2では、理解を助けるため、個別鉢体1と連結片2との間隔および連続体3の各層の間隔を開けて示しているが、これらの間には、実際には図示を略す水溶性接着剤が介在している。
【0017】
上記個別鉢体1は、2枚の薄膜10(10A,10B)を貼り合せて形成されている。この2枚の薄膜10の貼り合せには非水溶性接着剤が用いられており、所定間隔で貼着した左右2箇所の貼着部11の内側部分が個別鉢体1として提供されるようになっている。一方、連結片2は、個別鉢体1の両側に設けられた、前記薄膜10の延長片12(12A,12B)の端部同士を非水溶性接着剤にて貼着(貼着部13)することにより形成されている。前記延長片12のうち、一端側の延長片12Aは一方の薄膜10Aに、他端側の延長片12Bは他方の薄膜10Bにそれぞれ設けられており、各延長片12A,12Bは、個別鉢体1の側面に沿って相互に逆方向へ折返され、かつ各個別鉢体1の側面に対して水溶性接着剤により貼着されている。各延長片12はまた、隣接する個別鉢体1の中間部位に前記貼着部13が位置するようにその長さが設定されており、これにより連結片2は、個別鉢体1の一側面の幅のほぼ7倍の長さを有するものとなっている。
【0018】
上記連続体3は、所定長さごとに180度反転(転回)して重ね合されている。この場合、連続体3相互の連結部分では、図1、2に示されるように、上側の連続体3の端部に位置する個別鉢体1に付随する延長片12の先端部に形成した折返し部12aと、下側の連続体3の端部に位置する個別鉢体1に付随する延長片12の先端部に形成した余長部12bとが、非水溶性接着剤による貼着部14により連結される。
【0019】
このように構成された連続集合鉢体4は、図2に示されるように圧扁状態で保管および提供され、この状態で連続体3の積層方向へ引き伸ばすと、図1に示すように多数の個別鉢体1がハニカム状に展開し、所定の大きさの連続集合鉢体4が出現する。育苗に際しては、この連続集合鉢体4を展開状態で育苗箱(図示略)内にセットし、各個別鉢体1に栽培土を充填してこれに播種する。そして、所定日数育苗すると、この育苗中の灌水で、薄膜10の延長片12と個別鉢体1の側面との間の水溶性接着剤および連続体3の相互間の水溶性接着剤が退化する。したがって、育苗後の移植に際し、連続集合鉢体4を構成する連続体3の一端を引くと、図3に示すように連続体3が一列に引出され、これによって効率のよい植付けが可能になる。この場合、連結片2の長さは、個別鉢体1の一側面の幅のほぼ7倍長となり、広い株間間隔を必要とする作物の栽培に有効に対応できる。本実施形態においては特に、個別鉢体1、連結片2を形成するための貼着部11、13、14の貼合面が、連続体3の引出し方向と平行となっているので(図3)、引張力に対するせん断応力は十分な大きさとなり、植付け時における連続体3の引出しが安定する。
【0020】
上記連続集合鉢体4を製造するには、先ず、図4(A)に示すように、2枚の薄膜10A,10Bを所定幅だけ重ねて左右方向にずらして配置し、その重ね合せ部の両端部を非水溶性接着剤にて貼着して前記貼着部11とし、該貼着部11より外側の部分を前記延長片12A,12Bとする。次に、各延長片12A,12Bを、前記貼着部11の内縁に設定した折込線Lを支点に相互に逆方向へ折返し、同図(B)に示すように、各延長片12A,12Bを、前記貼着部11の間に形成される扁平状態の個別鉢体1の側面に水溶性接着剤を介して接合する。この時、各延長片12A,12Bの延長端部(自由端部)は扁平状態の個別鉢体1の両端から側方へ所定距離だけ延出し、図示のような折畳み状態の中間体15が得られる。その後は、同図(C)に示すように、前記中間体15を所定数並列して配置し、隣接する中間体15の相互間で延長片12の端部同士を非水溶性接着剤にて貼着する(貼着部13)。これによって一連の連続体3が得られ、その後、連続体3を1枚おきに180度反転(転回)させながら所要数水溶性接着剤を介して積層する。
【0021】
ここで、上記薄膜10の材種は任意であるが、少なくとも育苗期間中は耐腐性を有するものを選択するものとする。一般に育苗期間は、40日前後であるが、長ネギ、玉ネギなどの場合は40〜90日あるいはそれ以上となる。40日前後の耐腐性を有する材種としては、例えば植物繊維紙に防腐剤または殺菌剤を塗布または混抄した紙や天然パルプに合成繊維を混抄した合成繊維紙などがある。また、40〜90日あるいはそれ以上の耐腐性を有する材種としては、薬剤で合成繊維混抄紙を処理して湿潤強度を大とした耐腐紙や、非腐食性の不織シート、天然パルプを薬剤処理した紙または合成繊維混抄紙を殺菌剤等の耐腐性薬剤で処理した紙などがある。
【0022】
また、上記した接着剤の種類も任意であり、水溶性接着剤としては、例えばポリビニールアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキサイド等の化学合成物、あるいはアラビアゴム、糊精、カルボキシメチルセルロース等の天然物を用いることができる。また、非水溶性接着剤としては、例えばポリ酢酸ビニールエマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ホットメルト等の化学合成物を用いることができる。
【0023】
図5は、上記連続集合鉢体4(六角筒状)を工業的に製造する場合の1つの実施形態を示したもので、この場合は、予め幅広の薄膜(原紙)が巻かれた上・下一対の原紙ロール20,20が用意される。各原紙ロール20から引出された原紙21は、スリッター22に導かれて所定幅の上・下帯状薄膜23,24に裁断され、これら上・下帯状薄膜23,24は製筒ロール25に所定幅だけ重なる位置関係で送られる。この時、下側の帯状薄膜24の上面には、製筒ロール25の前段に配置した鉢体糊付装置26によって非水溶性接着剤が所定の間隔(前記貼着部11の間隔…図4(A))で2条塗布され、これにより上・下帯状薄膜23,24の重合部分は、製筒ロール25を通過する間に非水溶性接着剤により貼り合わされる。すなわち、上・下帯状薄膜23,24の間には、前記個別鉢体1として提供される空洞部が形成される。
【0024】
上記製筒ロール25を通過した、貼合状態の上・下帯状薄膜23,24は、折込線付与装置27、折込糊付装置28および折畳装置29を順に経て折畳ロール30に送られる。そしてこの間、折込線付与装置27によって前記貼着部11の内縁に沿って折込線L(図4(A)参照)が付与され、折込糊付装置28によって上・下帯状薄膜23,24の重合部の両面に水溶性接着剤が塗布され、折畳装置29によって上・下帯状薄膜23,24の非重合部(薄膜10A,10Bの延長片12A,12Bに相当)が前記折込線Lを支点に折返され、折畳ロール30によって圧扁される。この結果、前記中間体15(図4(B)参照)と同じ断面形状を有する折畳み帯状体31が得られる。
【0025】
上記折畳み帯状体31は並列して複数流れており、次の連結糊付装置32において、並列する折畳み帯状体31の一方の非重合部の先端部に非水溶性接着剤が塗布される。そして、この並列する複数の折畳み帯状体31は、その側端部がわずか重なる状態で連結ロール33に送られ、これにより複数の折畳み帯状体31が相互に非水溶性接着剤により連結され(前記延長片12の端部同士の連結に相当)、幅広の折畳み板状体34となる(図4(C)参照)。なお、前記折畳み板状体34の側端部には、前記連続体3の連結に必要な折返し部12aと余長部12b(図1、2参照)に相当する部分が形成されている。
【0026】
次に、上記折畳み板状体34は、積層糊付装置35に導かれ、糊付ロール35aによって折畳み板状体34の上面に水溶性接着剤が塗布されると共に、糊付ノズル35bによって折畳み板状体34の端部の折返し部12aに相当する部分に非水溶性接着剤が塗布される。次いで、折畳み板状体34は、ロータリーカッタ36によって所定の幅(個別鉢体1の高さに相当)に切断され、これによって前記連続体3が形成される。そして、この連続体3は、次の反転機37によって一枚おきに180度反転されて、積層貼合装置38へ送られ、これにより連続体3は相互に水溶性接着剤を介して積層貼着され、これにて本連続集合鉢体4は完成する。
【0027】
なお、図示を略すが、上記した積層糊付装置35には、折畳み板状体34の送り量を検出する装置が設けられており、所定枚数の折畳み板状体34がロータリーカッタ36へ送られると、糊付ロール35aが上昇し、一枚の連続体3の幅(個別鉢体1の高さ)に相当する分だけ、折畳み板状体34の上面に水溶性接着剤を塗布しなようになっている。これにより、積層貼合装置38で所定枚数の連続体3が積層貼着されるようになり、連続集合鉢体4として1冊ずつ取出すことが可能になる。
【0028】
ここで、上記第1実施形態においては、2枚の薄膜10(10A,10B)として同幅(同長)のものを用いて所定幅だけずらして重ね合せ、互いに重ね相手となる薄膜に延長片12(12A,12B)を設けるようにしたが、本発明は、一方の薄膜だけに延長片12A,12Bを設けて、これに個別鉢体1の形成に必要な最小限の長さとした他方の薄膜を貼り合せるようにしてもよい。
【0029】
図6及び図7は、本発明の第2実施形態としての育苗移植用連続集合鉢体を示したものである。本第2実施形態は、第1実施形態と同じく六角筒状の個別鉢体1を多数集合させたもので、各個別鉢体1が連結片2により接続されている点、これら個別鉢体1と連結片2とによって形成された一連の連続体3が、個別鉢体1が1/2 ピッチずれるように水溶性接着剤を介して重ね合されている点、これにより個別鉢体1を密に集合させた連続集合鉢体4が形成されている点は、第1実施形態と同様である。したがって、ここでは、図1および2に示した部分と同一部分には同一符号を付すこととする。
【0030】
本第2実施形態において、連続体3は、両側に2枚の薄膜10(10A,10B)の延長片12(12A,12B)を有する、上記第1実施形態と全く同じ形態の個別鉢体(以下、これを第1の個別鉢体という)1と両側に前記延長片12を有しない個別鉢体(以下、これを第2の個別鉢体という)41とを交互に配列してなっている。第2の個別鉢体41は、2枚の薄膜40(40A,40B)を貼り合せて形成されているが、各薄膜40A,40Bには、非水溶性接着剤による貼着部42の形成に必要な糊付代43が設けられているだけで、前記延長片12に相当するものは省略されている。一方、連結片2は、第1の個別鉢体1の両側に設けられた、前記薄膜10の延長片12(12A,12B)の端部を前記第2の個別鉢体41の糊付代43に非水溶性接着剤にて貼着(貼着部44)することにより形成されている。この場合、前記延長片12は、第1の個別鉢体1の側面に沿って折返され、かつ各個別鉢体1の側面に対して水溶性接着剤により貼着されている点は第1の実施形態と同様であり、したがって連結片2は、個別鉢体1の一側面の幅のほぼ4倍の長さを有するものとなっている。本第2実施形態において、前記連続体3の積層形態は第1実施形態と同様であり、連続体3は、1枚おきに180度反転して重ね合され、これによって本連続集合鉢体4が形成されている。なお、連続体3の折返し部には、別途短尺の連結補助片45が配設されている。
【0031】
このように構成された連続集合鉢体4の作用は、第1実施形態と同じであり、育苗中の灌水で、薄膜10の延長片12と第1の個別鉢体1の側面との間の水溶性接着剤および連続体3の相互間の水溶性接着剤が退化するので、育苗後の移植に際し、連続集合鉢体4を構成する連続体3の一端を引くと、図8に示すように連続体3が一列に引出され、これによって効率のよい植付けが可能になる。この場合、連結片2の長さは、個別鉢体1、41の一側面の幅のほぼ4倍長となり、広い株間間隔を必要とする作物の栽培に有効に対応できる。
【0032】
また、本連続集合体4を製造する方法も、第1実施形態における場合と基本的に同じであり、両側に薄膜10の延長片12を有する第1の個別鉢体1と前記延長片を有しない第2の個別鉢体41とを別途形成し、前記延長片12を第1の個別鉢体1の側面に沿って折返すと共に、該延長片12を第1の個別鉢体1の側面に水溶性接着剤にて貼着する。そして、前記第1の個別鉢体1と前記第2の個別鉢体41とを並列させて、前記第1の個別鉢体1の延長片12の端部を前記第2の個別鉢体41の糊付代43に非水溶性接着剤にて貼着して連結片2を形成し、連続体3を得、しかる後、前記連続体3を重ね合せて相互に水溶性接着剤にて積層貼着する。
【0033】
図9および図10は、本発明の第3実施形態としての育苗移植用連続集合鉢体を示したものである。本第3実施形態は、四角筒状の個別鉢体51を多数集合させたもので、各個別鉢体51は連結片52により接続されている。これら個別鉢体51と連結片52とによって形成された一連の連続体53は、個別鉢体51の一側面の幅だけ重なるように折り返されて、その相互間が水溶性接着剤にて貼着されている。また、各連続体53は、相互に水溶性接着剤を介して重ね合され、これにより個別鉢体51を密に集合させた連続集合鉢体54が形成されている。なお、図では、理解を助けるため、個別鉢体51と連結片52との間隔および連続体53の各層の間隔を開けて示しているが、これらの間には、実際には図示を略す水溶性接着剤が介在している。
【0034】
上記個別鉢体1は、図11(A)にも示されるように、2枚の薄膜60(60A,60B)を貼り合せて形成されている。この2枚の薄膜60の貼り合せには非水溶性接着剤が用いられており、所定間隔で貼着した左右2箇所の貼着部61の内側部分が個別鉢体51として提供されるようになっている。一方、連結片52は、個別鉢体51の両側に設けられた、前記薄膜60の延長片62(62A,62B)の端部同士を非水溶性接着剤にて貼着(貼着部63)することにより形成されている。前記延長片62のうち、一端側の延長片62Aは一方の薄膜60Aに、他端側の延長片62Bは他方の薄膜60Bにそれぞれ設けられており、各延長片62A,62Bは、個別鉢体51の側面に沿って相互に逆方向へ折返され、かつ各個別鉢体51の側面に対して水溶性接着剤により貼着されている。各延長片62はまた、隣接する個別鉢体51の中間部位に前記貼着部63が位置するようにその長さが設定されており、これにより連結片52は、個別鉢体1の一側面の幅のほぼ5倍の長さを有するものとなっている。
【0035】
上記連続体53は、1枚おきに180度反転して重ね合されている。この場合、連続体53相互の連結部分では、図9、10に示されるように、上側の連続体53の端部に位置する個別鉢体51に付随する延長片62の先端部に形成した余長部62aと、下側の連続体53の端部に位置する個別鉢体51に付随する延長片62の先端部に形成した余長部62bとが、非水溶性接着剤による貼着部64により連結される。
【0036】
このように構成された連続集合鉢体54は、図10に示されるように圧扁状態で提供され、この状態で連続体53の積層方向へ引き伸ばすと、図9に示すように多数の四角筒状の個別鉢体51が格子状に展開し、所定の大きさの連続集合鉢体54が出現する。この連続集合鉢体54を展開状態で育苗箱(図示略)内にセットする点は第1実施形態と同じであり、育苗中の灌水で、薄膜60の延長片62と個別鉢体51の側面との間の水溶性接着剤および連続体53の相互間の水溶性接着剤が退化する。したがって、育苗後の移植に際し、連続集合鉢体54を構成する連続体53の一端を引くと、連続体53が一列に引出され、これによって効率のよい植付けが可能になる。この場合、連結片52の長さは、個別鉢体51の一側面の幅のほぼ5倍長となり、広い株間間隔を必要とする作物の栽培に有効に対応できる。
【0037】
本連続集合体54を製造する方法は、第1実施形態における場合と基本的に同じであり、両側に薄膜60の延長片62を有する個別鉢体51を形成した後、図11(A)に示すように、前記延長片62を個別鉢体51の側面に沿って折返すと共に、該延長片62を個別鉢体51の側面に水溶性接着剤にて貼着し、延長片62の端部同士を貼着部63により貼着して連結片52を形成する。次に、図11(B)に示すように、並列して配置された個別鉢体51の相互間で、個別鉢体51が一側面の幅だけ重なるように連結片52を折り返すと共に、その相互間を水溶性接着剤にて貼着し、連続体53を形成する。その後は、連続体53を1枚おきに180反転させながら重ね合せて相互に水溶性接着剤にて積層貼着する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態である育苗移植用連続集合鉢体(六角筒)の構造を模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示した育苗移植用連続集合鉢体の圧扁状態を示す模式図である。
【図3】図1に示した育苗移植用連続集合鉢体の引出し状態を示す模式図である。
【図4】図1に示した育苗移植用連続集合鉢体の製造工程を概略的に示す模式図である。
【図5】図1に示した育苗移植用連続集合鉢体を工業的に製造する際の加工手順を示す模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態である育苗移植用連続集合鉢体(六角筒)の構造を模式的に示す平面図である。
【図7】図6に示した育苗移植用連続集合鉢体の圧扁状態を示す模式図である。
【図8】図6に示した育苗移植用連続集合鉢体の引出し状態を示す模式図である。
【図9】本発明の第3実施形態である育苗移植用連続集合鉢体(四角筒)の構造を模式的に示す平面図である。
【図10】図9に示した育苗移植用連続集合鉢体の圧扁状態を示す模式図である。
【図11】図9に示した育苗移植用連続集合鉢体の製造工程の途中段階を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1、41、51 個別鉢体
2、52 連結片
3、53 連続体
4、54 連続集合鉢体
10(10A,10B)、 60(60A,60B) 薄膜
11、61 個別鉢体の貼着部
12(12A,12B)、62(62A,62B) 延長片
13、63 延長片の貼着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙または紙のような薄膜を展開することにより形成される四角または六角筒状の個別鉢体を連結片にて接続して連続体となし、該連続体を重ね合せると共に、前記重ね合せた連続体の相互間を水溶性接着剤にて貼着した育苗移植用連続集合鉢体において、前記個別鉢体を2枚の薄膜を貼合せて形成し、該個別鉢体の両側に設けた前記薄膜の延長片を、前記個別鉢体の側面に沿って折返して該側面に水溶性接着剤にて貼着すると共に、隣接する個別鉢体の相互間で前記延長片の端部同士を非水溶性接着剤にて貼着することにより前記連結片を形成したことを特徴とする育苗移植用連続集合鉢体。
【請求項2】
紙または紙のような薄膜を展開することにより形成される四角または六角筒状の個別鉢体を連結片にて接続して連続体となし、該連続体を重ね合せると共に、前記重ね合せた連続体の相互間を水溶性接着剤にて貼着した育苗移植用連続集合鉢体において、前記個別鉢体を2枚の薄膜を貼合せて形成し、該個別鉢体の半数の両側に設けた前記薄膜の延長片を、前記個別鉢体の側面に沿って折返して該側面に水溶性接着剤にて貼着すると共に、該個別鉢体に隣接して配置された、延長片を有しない個別鉢体に前記延長片の端部を非水溶性接着剤にて貼着して連結片を形成したことを特徴とする育苗移植用連続集合鉢体。
【請求項3】
帯状薄膜の2枚を非水溶性接着剤にて貼合せて、両側に薄膜の延長片を有する個別鉢体を形成する第1工程と、前記延長片を個別鉢体の側面に沿って折返すと共に、該延長片を個別鉢体の側面に水溶性接着剤にて貼着する第2工程と、前記個別鉢体を並列させ、隣接する個別鉢体の相互間で前記延長片の端部同士を非水溶性接着剤にて貼着して連結片を形成し連続体を得る第3工程と、前記連続体を重ね合せて相互に水溶性接着剤にて貼着する第4工程とを含むことを特徴とする育苗移植用連続集合鉢体の製造方法。
【請求項4】
帯状薄膜の2枚を非水溶性接着剤にて貼合せて、両側に薄膜の延長片を有する第1の個別鉢体と前記延長片を有しない第2の個別鉢体とを形成する第1工程と、前記延長片を第1の個別鉢体の側面に沿って折返すと共に、該延長片を第1の個別鉢体の側面に水溶性接着剤にて貼着する第2工程と、前記第1の個別鉢体と前記第2の個別鉢体とを並列させ、前記第1の個別鉢体の延長片の端部を前記第2の個別鉢体に貼着して連結片を形成し連続体を得る第3工程と、前記連続体を重ね合せて相互に水溶性接着剤にて貼着する第4工程とを含むことを特徴とする育苗移植用連続集合鉢体の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−180778(P2006−180778A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377906(P2004−377906)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000231981)日本甜菜製糖株式会社 (58)
【Fターム(参考)】