肺の区域診断のための方法及びシステム
対象肺区画の状態を診断するための、最小限に侵襲的なシステム及び方法が提供される。対象肺区画を隔離することのできるカテーテルを用い、側副換気、圧力、流量及び容量のうちの1つ又はそれ以上を測定することによって、過膨張、コンプライアンス、酸素摂取量を含む気体交換、側副路の方向性、血流及び単位肺容量当たりの血流のような状態を評価することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、呼吸器医学に関するものであり、さらに詳細には、隔離された肺区画における肺の状態及び機能の評価の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肺は、複数の気管支肺区画を含み、本明細書では以下「肺区画」と呼ぶが、それらは、「裂」と呼ばれる2層の臓側胸膜の陥入した折返し(infolded reflections)によって互いに分離されている。肺区画を分離している裂は、通常、不浸透性であり、肺区画は、区画内に開口している上気道を通ってのみ空気を取り入れ放出する。特定の肺小葉内の区画は、細気管支内Martin通路(Martin’s channel)、Lambertの気管支−肺胞通路、Kohnの肺胞内孔などのような周知の側副経路を通って互いに連通することできるが、そのような通路は、一般に、肺区画を分離する不浸透性の裂を貫通しているとは考えられていない。しかしながら、最近の研究では、葉間の裂は常に完全ではなく、そのため、肺の小葉部は接続することがあり、側副空気流又は小葉間の側副換気を提供することがあることを示している。特筆すべきは、そのような肺区画間の側副経路の存在が気腫の患者において顕著に増大していることである。
【0003】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療における最近の進歩のため、側副換気に対する関心が高まっている。種々のCOPD治療は、この疾患及び供給気管支の閉塞による消耗性過膨張を減少させ、その領域を低容量に維持するために、閉じ込められた空気を除去することを伴う。これらのアプローチを導く概念は、気腫の肺部の吸引性及び/又は閉塞性(absorption)の無気肺は、組織を除去する必要なしに肺容量を減少させることができるということである。そのような種類のCOPD治療の1つは、肺容量を減少させるためにカテーテルに基づくシステムを用いる気管支内容量減少(EVR,Endobronchial Volume Reduction)である。光ファイバーによる可視化及び特殊カテーテルを用いて、医師は、選択的に患部肺の一区域又は複数区域を虚脱させる。その後、その区域が再膨張するのを防止するために、閉塞ステントが肺区域内に配置される。
【0004】
図1A〜図1Cは、患者の右肺RLの右肺上葉RULを対象とするそのようなEVR手法の一例を示す。ここでは、右肺上葉RULが過膨張である。カテーテル2が、気管Tを通って、右肺上葉RULに供給する肺の通路内に進められる。右肺上葉RULは、次に、図1Bに示されるように容量を減少させられ、栓、弁、又は閉塞ステント4が肺の通路内に設置され、右肺上葉RULの容量を減少させる。しかしながら、図1Cに示されるように、右肺上葉RULを右肺中葉RML及び/又は右肺下葉RLLと接続する側副路CHが存在している場合がある。その結果、時間が経つと、側副路CHを通じての補給のせいで右肺上葉RULが再拡張又は再過膨張するため、EVRの成功は、ほんの一時的なものになることがある。場合によっては、側副路CHを介して近接の肺葉から引き込まれる空気のため、所望の容量減少は不可能なことがある。
【0005】
図2A〜図2Bは、右肺RL内の側副路CHを概略的に示す。図2Aは、右肺上葉RUL、右肺中葉RML及び右肺下葉RLLの間の種々の肺葉間側副路CHを示す。図2Bは、肺葉内の個々の肺区域(例えば、S、S1、S2)を接続する肺葉内又は区域間の側副路CHを示す。これらの区域間側副路は、肺区画の各々の末梢が互いに連通することを可能にするものであり、Martin通路,Kohnの孔、Lambertの通路のような周知の側副路を含む。
【0006】
区画間の側副換気を測定する方法は、側副換気に対する抵抗(Rcoll)を測定することであった。側副路を通過する定常流(Qcoll)とその前後での圧力降下の間の関係の評価が、側副換気に対する抵抗(Rcoll)を測定する直接的方法である。多くの研究者が過去にこのアプローチを用いることを試みてきたが、この測定を行う最も単純で多用途の方法は最初にHilpertによって記載された(Hilpert P. Kollaterale Ventilation Habilitationsschirift, aus der Medizinischen. Tubingen, West Germany:Tubingen Universitatsklinik,1970年。 学位論文)。この方法は、図3A〜図3Cに概略的に示され、図3Bに示されるような一定流量の空気Qcollを対象領域又は封鎖された対象区画CSに注入することを含む。Qcollは、流れ発生器5によって、末梢気道に押し込まれて区画CSを封鎖する隔離カフ7を有する二腔管隔離カテーテル6を通して供給される。Qcollが、隔離カテーテル6の一方の管を通して注入される一方、図3Cに示されるように、気道閉塞の部位における空気圧Pbが他方の管を通して測定される。定常状態の下で、PbをQcollで割った比率は、側副換気に対する抵抗の定量的測定値を提供し、これは、側副路内の抵抗Rcoll及び側副路とカテーテル6の遠位端との間の隔離された区画の小気道内の抵抗Rsawを含む。この技術は、実験ツールとしてはある程度有用ではあるが、実験的に重大な制限があり、その臨床的使用は患者に追加的なリスクをもたらす。すなわち、肺の患部に一定の空気流を与えることは、適切に行われない場合、危険であることもある。たとえば、嚢胞性肺気腫がある場合、圧力が胞を拡大するか又は新しい胞を作り出す可能性、或いは、過膨張又は気胸の増大を引き起こす可能性がある。
【0007】
Hilpertの方法よりも患者に与えるリスクが相対的により少ない他の方法が、WoolcockとMacklemによって記載されている(Woolcock,A.J及びP.T.Macklem.Mechanical factors influencing collateral ventilation in human, dog, and pig lungs.J.Appl.Physiol.30:99−115ページ、1971年)。この方法は、対象の肺区域に押し込まれたカテーテル越しに空気塊を急速に注入することを伴い、閉塞された区域が側副路を通って周囲の肺へと流れ込むにつれて圧力が降下する速度は、側副換気についての時定数τcoll(空気塊の注入によって作り出された圧力変化が初期値の約37%まで下がるのに要する時間)によって支配される。ここでは、Rcollは、τcolと対象区域のコンプライアンスCSと間の比率として間接的に測定される。しかしながら、この方法を用いたRcollの計算は、閉塞区域内と周囲の肺における均質性を含む、幾つかの不確かな仮定に高度に依存している。
【0008】
側副換気を評価するための前述の方法は、多くの欠点があると思われる。Woolcock及びMacklemの方法は、患者が呼吸している場合、又はその肺区画がすでに治療の対象となっている状況と同様の場合には、側副換気を評価するには一般に不適切である。上記の方法で得られた側副換気についての値は、一般に、正常なヒトの肺では10-1から10+2cmH2O/(ml/s)であり、気腫を患っているヒトの肺ではおよそ10-3から10-1cmH2O/(ml/s)である。
【0009】
区画間の側副換気の存在はまた、対象肺区画の隔離と、それに続くヘリオックス(21%O2/79%He)又は他のトレーサガスの導入によっても評価される。対象区域内でトレーサガスが検出されることは、ガスが周囲の肺から対象肺区域へと流入するのを可能にする側副路の存在を示唆する。この技術は、側副流の量又は側副抵抗の定量化を提供しない。
【0010】
切除され収縮した肺における区画間側副換気の存在を検出する実験的な試みは、分離した近隣の肺部分を同時に封鎖しながら、肺にカニューレを挿入し、封鎖し、空気を吹き込むことに依る。膨張する近隣部分は、空気の流入を可能にする側副路を有することが判定。このような技術は、ヒト被験者に直接適用することができない。
【0011】
米国特許出願2003/0228344 A1は、対象とする肺区画に供給する気道内に設置される一方向弁を記載する。一方向弁は、空気をその区画から出すことはできるが、その区画の中に入れることができない。最終的に無気肺(隔離された肺区画からの気体の損失)が観察される場合、その肺区画には側副路(少なくとも隣接の肺区画から対象の肺区画への気体の流入を可能にするもの)がないと診断される。無気肺が観察されない場合、周囲の区画から対象の肺区画への空気の流入を可能にする側副路が存在すると推定される。この特許出願に記載されている技術は、側副路を介した気体の流入を受ける肺区画を概して同定するが、側副換気の量又は側副抵抗の値を定量化することはできない。
【0012】
これらの理由のため、肺区画間の側副換気及び/又は側副抵抗を評価するための直接的で正確、単純、且つ最小限に侵襲的な方法が所望される。側副換気の検出及び測定に加えて、過膨張の判定、気体交換、典型的には酸素摂取量の測定、側副路の方向性(対象の肺区画の中に入るのか外に出るのか)の判定、対象の肺区画における血流及び/又は単位当たりの肺容量に対する血流の評価などを含む、肺区画の診断のためのその他の技術が所望される。これらの目標うちの少なくとも幾つかは、以下に記述する発明によって達成されることになる。
【発明の開示】
【0013】
肺区画の過膨張の程度、肺区画のコンプライアンス、肺区画内の酸素摂取量の値といった肺区画内の気体交換の効率、隣接の肺区画間の側副流路の方向性、及び肺区画内の血流及び/又は単位容量当たりの血流の流量又は程度を含む、個々の肺区画の状態及び機能の定性的及び定量的に評価するための、最小限に侵襲的な方法、システム及び装置が提供される。この方法、システム及び装置は一般に、診断プロトコルを実施するために、生きている患者の肺内の対象肺区画にアクセスすること、これを隔離すること、及び少なくとも部分的に閉塞することに依る。典型的には、患者の肺は、気管気管支樹を通して、対象肺区画に供給する、典型的には供給気管支(feeding bronchus)と呼ばれる気道に向かってカテーテルを前進させることによって、アクセスされる。気道は通常、拡張可能な閉塞部材、典型的にはカテーテル上のバルーンによって閉塞され、カテーテルを用いて、又は通じて、患者に最小限のリスクしか与えない方法で種々の測定を行うことができる。
【0014】
本発明の方法、システム及び装置は、患者を診断することを可能にし、その診断情報を治療の選択肢の選択の際に用いることを可能にする。例えば、過膨張、コンプライアンス、酸素摂取量、血流、及び/又は単位肺容量当たりの血流の判定は、一般に特定の肺区画の健康に関係する。肺内の他の肺区画と同じくらいに健康か、又はそれ以上に健康と思われる肺区画は一般に、治療、特に、吸引、無気肺又は両方の組合せのいずれかによる対象肺区画の閉塞及び容量減少に依る治療の対象にはならないものである。側副換気及び/又は側副路を通る流れの方向の判定は、閉塞に依る肺容量減少の成功の直接の予測指標である。閉塞時に、側副路を通る流れが、空気をトータルで対象肺区画に入り込ませるようであれば、そのような治療の成功は見込みがない。
【0015】
本発明の第一の態様では、典型的には側副路が存在しない場合に、肺区画の過膨張の程度を判定するための方法が提供される。肺区画は、典型的には、その区画に供給する上気道に設置されたバルーン又は他の拡張可能な閉塞要素を有するカテーテルによって閉塞される。患者が正常な呼吸を続けるとき、空気は、その区画から放出され、カテーテルを通過して、典型的には隔離された肺区画へと空気が戻るのを阻止する一方向弁又は他の構造体を通過して、外へ出て行く。肺区画から放出される空気の総量が初期閉塞時から測定され、測定された空気の総量は肺区画の過膨張の程度に正比例する。通常、図13に示されるように、放出される空気の量は、初期閉塞時から、肺内の過剰容量が周囲の肺区画の外圧によって虚脱されたことを示唆する、区画から放出される空気の流れが実質的に停止するまで測定される。区画から放出される空気の流量は、典型的には、例えば従来の任意の流れ測定装置を用いて監視されるので、いつ空気の流れが実質的に停止したかの判定を行うことができる。典型的には、空気容量は、単純に気流の測定値を積分することによって算定される。過膨張の程度を直接判定するためのこの方法は、隣接の肺区画からその肺区画に空気流を入らせる側副流路を有する肺区画においては、通常あまり正確ではないということが理解される。従って、側副流路が存在する場合、図14に示されるように、放出される空気の量は、初期閉塞時から、区画から放出される空気の流れが定常状態に達するまで測定することができ、ここで、観察される定常状態流は、隣接する肺区画からその肺区画に入る平均側副空気流を表す。その結果、周囲の肺区画の外圧によって閉塞された肺区画内で虚脱された過剰容量の程度を特徴付けるために、側副換気による空気の流量を、その区画から放出される空気の流量から差し引くことができる。図15は、測定される過剰空気容量が、複数の側副抵抗(Rcoll)測定値によって特徴付けられる様々な度合いの側副換気に依存していることを例示している。側副換気は、高いRcoll値、すなわちRcoll>100では、事実上存在せず、3桁小さいRcoll値、すなわちRcoll<0.1でほぼ完全となるが、0.1<Rcol<100の広い範囲で実質的な容量減少が依然として生じ得る。例えば、Rcoll=1で、約50%の容量減少が予期されるので、過膨張の全体としての程度は、測定された過剰容量の大まかに2倍になる。従って、側副路が存在していても、Rcollが既知の場合、過膨張の程度は依然として、測定された過剰空気容量から間接的に判定できることが理解される。側副路の方向性を判定するための方法は、後述する。
【0016】
本発明の第二の態様では、図16に示されるように、隔離された肺区画の特性圧力容量曲線を測定することによって、隔離された肺区画のコンプライアンスを判定するための方法が提供される。隔離された肺の容量の変化を測定する方法は、上述されている。弾性反跳圧力は、隔離された肺区画内の圧力変化と胸腔内圧における変化との差から得られることになる。隔離された肺区画の圧力は典型的には、その区画に戻る空気の進入を閉塞している間に、例えばカテーテルの内側の管腔と連通する任意の従来の圧力センサを用いて監視される。胸腔内圧は典型的には、例えば被験者の食道内に置かれた食道バルーンカテーテルと連通する任意の従来の圧力センサを用いて監視される。通常、圧力及び放出される空気の量は、初期閉塞時から、肺の過剰容量が周囲の肺区画の外圧によって虚脱されたことを示唆する、区画から放出される空気の流れが実質的に停止するか又は定常状態に達するまで測定される。
【0017】
本発明の第三の態様では、隔離された肺区画からの酸素摂取の速度を判定するための方法が提供される。対象の肺区画は、典型的には、空気を区画から放出することはできるが、空気が区画に戻って進入するのを実質的に阻止するか又は閉塞するカテーテルによって、閉塞される。カテーテルを通って対象肺区画から出る空気流が止まった後、その区画内に残っている空気の圧力を経時的に測定することができる。気体容量又は圧力が減少するのは血液との酸素の交換を介してのみなので、空気圧の減少は、肺区画における酸素消費の尺度又は値を表す。
【0018】
典型的には、肺区画を閉塞することは、その肺区画に供給する気道においてカテーテル上のバルーン又は他の拡張可能な閉塞構造体を拡張させることを含む。カテーテルは典型的には、空気を区画から放出することはできるが、空気が区画に進入するのを阻止又は妨害する一方向弁を含む。空気圧は典型的には、カテーテル上の変換器で測定される。酸素摂取量を判定するこれらの方法は、隣接の肺区画から対象の肺区画内に空気が流れることを許容する側副路を有する肺区画に対しては、正確性に欠けるか、或いは適用できないことが理解される。
【0019】
本発明の第四の態様では、対象肺区画と隣接の肺区画との間を連通する側副路の方向性は、接続する上気道を通って出入りする流れがないように対象の肺区画を隔離することを含む。隔離された肺区画内の圧力は、複数の呼吸サイクルにわたって測定され、圧力の上昇は、側副路が存在すること、及びそれらの通路が、隣接の区画から対象区画への気体の流入より、対象区画から隣接の区画への気体の流出に対して高い抵抗を有することを示している。そのような通路は、時間が経つと正味で空気を流入させることになる。逆に、複数の呼吸サイクルにわたっての隔離された肺区画内の圧力の減少は、側副路が存在し、流入より流出に対して低い抵抗を有することを示している。そのような通路は、時間が経つと対象肺区画から正味で空気を流出させることになる。
【0020】
対象の肺区画を隔離することは、典型的には、対象肺区画に通じる気道内でカテーテル上のバルーンのような閉塞構造体を拡張させることを含む。圧力は典型的には、カテーテル上の変換器で測定される。側副流路の存在及び方向性を判定するための方法は、上述の過膨張の測定方法及び酸素摂取量の判定方法の適用性を判断することを含む、多くの目的に対して有用である。この方法はまた、対象肺区画の閉塞及び隔離に依る肺容量減少処置が成功する見込みがあるかどうかを判断するためにも有用である。そのような閉塞に基づくプロトコルは一般に、対象肺区画に側副流路がない患者、又は側副流路が流出より流入に対し高い抵抗を有する患者に適している。空気の流入に対してより低い抵抗を有する側副流路を有するような患者においては、対象肺区画の閉塞は、隣接の肺区画から空気が入るので、その区画の再膨張を防げないことが理解される。
【0021】
本発明の第五の態様では、対象肺区画内の血流及び/又は単位肺容量当たりの血流は、最初に肺区画を隔離することによって評価することができる。マーカが体循環に注入され、このマーカは、迅速に肺内に放出されるように低い溶解度を有する。マーカが、典型的には10〜15秒かけて血中で平衡分布に達すると、その肺区画においてマーカの第1の濃度が測定され、肺の別の部分(又は隔離された区画以外の肺全体)においてマーカの第2の濃度が測定される。次に、第1の濃度と第2のマーカ濃度が比較される。対象肺区画内の気体濃度が肺の残りの部分よりも低いということは、対象肺区画の方が循環血液との気体の交換効率が低いことを示し、これはさらに、対象肺区画が罹患している可能性があること、及び肺の容量減少又は他の療法を受ける候補となる可能性があることを示す。反対に、その肺区画でのマーカの気体濃度が肺の残りの部分でのマーカ濃度と少なくとも同じ高さであれば、対象の肺区画が肺の残りの部分よりも罹患している可能性は低いこと、及び治療プロトコルから利益を得る可能性が低いことを示す。
【0022】
マーカは、無呼吸中に平均肺容量で注入されることが好ましい。好ましいマーカは、六フッ化硫黄を含み、第2の濃度は肺のどの区画でも測定できるが、多くの場合、肺の残りの部分から呼出される気体から測定される。前の試験プロトコルと同様に、肺が側副路を通って隣接の区画からその肺に入る空気流で損なわれる場合、肺の血流の測定は正確性に欠けるか、場合によっては適用できないことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
特に肺の残りの部分から隔離されている対象肺区画又は区域において、肺の状態及び機能を定性的及び定量的に評価するための、最小限に侵襲的な方法、システム及び装置が提供される。図4A〜図4Dは、本発明の種々の診断プロトコルを行うために用いられるシステムを示し、気管気管支樹を通して治療又は隔離の対象となる肺区画である対象領域CSの供給気管支B(上気道)に向かって進めることのできるカテーテル10を含む。カテーテル10は、少なくとも1つの内側を貫通する管腔を有するシャフト12と、その遠位端の近傍に取り付けられた閉塞部材14とを含む。カテーテル10の閉塞部材14は、カテーテルの全長にわたって延びているカテーテル内部の管腔だけが封鎖部の遠位の気道と連通するように、カテーテルシャフト12と気管支の壁との間の領域を封鎖するように適合される。封鎖又は隔離は、カテーテル10の遠位の先端部に取り付けられた膨張可能な部材のような閉塞部材14の使用によって達成することができる。代替的には、カテーテルの先端部は広がった端部を有していてもよく、或いは、それ以外の方法で、拡張又は膨張することなく気道内を封鎖するように適合されていてもよい。
【0024】
患者の身体の外部のカテーテル10の反対側の端部に、一方向弁16、流れ測定装置18又は/及び圧力センサ20が直列又は他の方式でカテーテルの内部管腔と連通できるように設置される。一方向弁16は、大気から対象区画CSに空気が入るのを防ぐが、対象区画CSから大気への空気の自由な移動を可能にする。対象の隔離区画CSを肺の残りの部分と接続する側副路が存在しない場合、図4A〜図4Bに示されるように、対象区画の過剰容量が周囲の肺区画の外圧によって虚脱されると、患者の正常な呼吸の吸気中に隔離区画CSがカテーテル管腔から空気を引き入れようとしても成功しないことになる。ゆえに、呼気中に、空気はカテーテル管腔に戻らない。側副路が存在する場合、図4C〜図4Dに示されるように、各呼吸の吸気段階の間に、追加量の空気、すなわち側副路CHを通って隣接区画Cから移動する空気が、隔離された区画CSに常に供給可能であり、これが吸気の間に隔離された区画CSの容量の拡張を可能にするので、その結果、呼気の際に、カテーテル管腔及び側副路CHを通る、隔離された区画CSから大気への空気の移動が生じる。このように、空気は、各呼気の際にカテーテル管腔を通って放出され、流れ測定装置18上で正の空気流として記録されることになる。カテーテル管腔を通るこの正の空気流は、対象の区画CSで生じる側副換気が存在するかどうかの指標を提供する。他の実施形態において、一方向弁は、遠位端又はその近傍を含むカテーテル上の他の位置に設置することができることが理解される。
【0025】
図4A〜図4Dのシステムは、対象区画CSの酸素摂取速度を、肺の他の部分又は肺の残りの全部分における速度との比較において判定するために用いることができる。肺を、閉塞部材14の膨張によって隔離し、収縮させる。例えば、流れ測定装置18によって検出される流れがゼロ(0)に達することによって示されるように、収縮が実質的に停止した後で、対象肺区画内の圧力の減少速度を経時的に監視することができる。圧力センサ20で示されるような圧力が減少する速度は、対象区画CSにおける酸素摂取量に正比例するので、その区画の単位気体容量当たりの血流に正比例する。
【0026】
図4A〜図4Dのシステムは、対象肺区画と近隣の肺区画との間の側副路を通る流れの方向性を判定するのに役立つよう変更することができる。特に、カテーテル10を、管腔を通る流れが阻止されるか、又は管腔が全く存在しないように変更することができる。それで、閉塞部材14は、空気が接続する上気道を通ってその区画に入ることも出て行くこともないように、対象の肺区画CSを完全に閉塞することになる。対象肺区画は、カテーテルによって完全に閉塞され、圧力の変化が複数の呼吸サイクルにわたって監視される。圧力センサ20によって圧力の上昇が測定された場合、隣接の区画から対象肺区画への空気の正味での流入があり、これは、側副流路が存在し、これらの流路内の側副抵抗は呼気の間より吸気の間の方が低いと考えられる。反対に、圧力減少が観察される場合、吸気の間より呼気の間のほうが大きい抵抗を有する側副路が存在する。
【0027】
対象肺区画と近隣肺区画との間の側副路の存在及び方向性の判定は、治療処置の決定だけでなく、本発明に従って行われるいずれの診断手法が適切かを決定するためにも有用な情報である。対象肺区画への空気の進入又はそこからの損失のいずれかを許容する側副路の存在はまた、診断される肺区画内で一定の空気容量を維持することに依る、本明細書に記載の他の診断手法に対する禁忌を示すことにもなる。
【0028】
図4A〜図4Dのシステムは、対象肺区画の過膨張の程度及びコンプライアンスを判定するために用いられることもできる。
【0029】
本発明の第六の態様では、対象肺区画の健康を評定するための最小限に侵襲的な方法は、区画の単位気体容量当たりの血流を判定することに依る。隔離カテーテル10を用いて、他の診断プロトコルとの関連で一般に上述されたように閉塞部材14を配置することによって、対象の肺区画CSが隔離される。六フッ化ナトリウムのような低い血中溶解度を有するマーカ物質が、典型的には無呼吸中に平均肺容量で体循環に注入される。六フッ化ナトリウムは適切なマーカの一例であるが、他の低溶解度の気体を用いることもできる。マーカの血中濃度が平衡に達するのに十分な時間の後、典型的には10秒から15秒後に、典型的にはカテーテル10の管腔を介して、隔離された肺区画からの気体がサンプリングされる。呼出された空気中で測定される、肺の他の部分、典型的には肺の残りの部分におけるマーカの濃度も判定される。対象肺区画で測定されるマーカの濃度が、肺の他の部分及び/又は残りの全部分で示される濃度と同じか、それより高いということは、対象肺区画において単位気体容量当たりの血流が損なわれていないということ、及びその対象肺区画は治療的介入に適した候補になる可能性が低いことを示す。反対に、測定されたマーカの単位気体容量当たりの血流が肺の他の部分に比べて顕著に低い場合、対象とする肺容量は、治療に適した候補になると考えられる。
【0030】
他の実施形態では、図5A〜図5D及び図6に図示されるように、カテーテル10は、アキュムレータ又は特殊容器22に接続される。容器22は、気流に対する抵抗が非常に低く、限定はされないが、例えば伸展性の(compliant)袋又はたるんだ捕集袋のようなものである。容器22は、カテーテル10の外部端部又は遠位端24及びその中を貫通して延びる内部管腔に、特殊容器22の内部が内部管腔とだけと連通するような方式で接続される。呼吸の際に、図5A〜5Bに図示されるように側副路が存在しない場合には特殊容器22は拡張しない。対象区画CSは、空気が非対象区画Cに出入りするように、隔離バルーン14によって封鎖される。呼吸の際に、図5C〜図5Dに図示されるように副側路が存在する場合、特殊容器22の容量は、最初の呼気の間に側副路CHを介して封鎖された区画CSによって受け入れられた空気流のいくらかの部分がカテーテル管腔を通って外部の特殊容器22の中に呼出されるので、最初は上昇する。特殊容器22の性質は、特殊容器22が側副路CHの動力学に最小限の影響しか与えないように選択され、特に、膨張に抵抗しないような極めて非弾性の特殊容器22である。側副換気に対する抵抗が呼気中より吸気中の方が小さいという仮定の下では、側副路CHを通って封鎖された区画CSに移動する空気の容量が呼気中より吸気中に大きくなり、その結果、追加の空気容量が呼気中にカテーテル管腔から特殊容器22へと通されるため、特殊容器22の容量は、引き続く各呼吸サイクルの間中、上昇し続けることになる。肺区画CSの側副流を測定するこの技術は、無限大のコンプライアンスを有するもう1つの肺区画又は肺葉をその人の肺に付け加えることと等価であり、付け加えられる区画は外部に付加される。
【0031】
随意に、図6に図示されるように、流れ測定装置18又は/及び圧力センサ20を含めることができる。流れ測定装置18及び/又は圧力センサ20は、(矢印で示されるように)カテーテルシャフト12に沿ったどの位置にでも、カテーテル管腔と連通するように配置されることができる。一緒に使用される場合、流れ測定装置18及び圧力センサ20は直列に設置することができる。一方向弁16も、流れ測定装置18及び/又は圧力センサ20と直列に設置することができる。流れ測定装置18は、特殊容器22の代わりに設置されてもよく、又は特殊容器22と隔離された肺区画との間、限定はされないが典型的にはカテーテルと専用容器との接合地点に設置されて、特殊容器に出入りする空気流量を測定してもよく、従って、流量の積分により、カテーテル管腔を通って封鎖された区画CSから/へ流れる空気の容量の測定値が提供されることが理解できる。
【0032】
流れの測定は、限定されるものではないが、流れ測定装置18を使って直接的に流れを測定する、及び/又は圧力センサ20で圧力を測定することによって間接的に流れを測定するなど種々の形式をとることができ、且つ、流れ測定装置18と共に一方向弁16を使用して又は使用せずに、及び外部特殊容器22を使用して又は使用せずに、カテーテルシャフト12に沿ったどこの位置でも測定することができることを理解することができる。
【0033】
対象肺区画の側副換気の存在を判定することに加えて、本発明の方法によって側副換気の程度を定量化することができる。一実施形態では、側副喚起の程度は、側副システムを通る抵抗Rcollに基づいて定量化される。Rcollは、次式
に基づいて決定され、ここでRcollは側副路の抵抗を構成し、Rsawは小気道の抵抗を特徴づけ、
及び
は図4A〜図4Dの描写と同様の方法で対象肺区画を隔離するカテーテルによって測定された平均圧力及び平均流れを表わす。
【0034】
単純化のために、及び原理の証明を実行する手段として、図7A〜図7Bは、対象肺区画CSの単純化された側副システムの図式表示を示す。単一の弾性区画30は、対象肺区画CSを表し、区画30とチャンバ32との間のいかなる空気の通過も防ぐように、チャンバ32の内側にしっかりと配置される。チャンバ32は、大気に対して様々な陰圧となるように調圧することができ、これは胸郭内圧Pplを表す。肺の中の対象肺区画CSを表す弾性区画30は、通路40を通って大気環境に連通する。さらに、弾性区画30はまた、肺の対象区画CSの側副路CHを表す側副通路41を通じても大気環境に連通する。
【0035】
カテーテル34は、図7A〜図7Bに図示されるように、通路40を通って前進可能である。カテーテル34は、シャフト36と、その中を貫通する内部管腔37と、その遠位端近傍に取り付けられた閉塞部材38とを含む。カテーテル34は、カテーテル34の全長にわたって延びているカテーテル34の内部の管腔37だけが区画30と大気との間を直接連通することができるようにカテーテルシャフト36と通路40とを封鎖するために、特別に装備されている。カテーテル34の反対側には、カテーテルの内部管腔37内の圧力及び流れを測定するために、流れ測定装置42及び圧力センサ44が直列に設置される。流れ測定装置42の隣に配置される一方向弁48は、一方向のみ、すなわち区画30から大気への方向のみに空気を通過させる。流れ測定装置42、圧力センサ装置44及び一方向弁48は、カテーテル管腔の全長に沿ってどこにでも設置することができ、限定はされないが、典型的にはカテーテルシャフト36の近位端に設置される。区画30内部の圧力を測定することは、限定はされないが、圧力センサ44をカテーテルの内部管腔37に接続するなどの、様々な方式で達成することができることが理解されるべきである。例えば、これは、カテーテル34の全長にわたって延びる、封鎖に対して遠位の気道に連通するカテーテル34内部の分離した管腔に圧力センサ44を接続することによって、達成することもまたできる。
【0036】
区画30は、常時、Rsawを表すカテーテルの内部管腔37及び/又はRcollを表す側副路41のいずれかを介してのみ大気と連通することができる。従って、吸気中は、図7Aに図示されるように、Pplは次第に陰圧になり、空気は、側副路41のみを介して区画30に入るはずである。他方、呼気中は、図7Bに図示されるように、空気は、側副路41及びカテーテルの内部管腔37を介して出ることができる。
【0037】
図8A〜図8Cは、吸気段階及び呼気段階の間に図7A〜図7Bのシステムから取得される測定値を示す。図8Aは、側副路41を通る流れQcollを反映する側副流れ曲線50を示す。図8Bは、流れ測定装置42を通る流れQfmを反映するカテーテル流れ曲線52を示す。吸気中は、空気は側副路41をのみを通じて流れ、空気は流れ測定装置42を通じては流れないが、それは一方向弁48がそのような流れを妨げるからである。それゆえ、図8Aは、負の側副流れ曲線50を示し、図8Bは、平坦なゼロ値のカテーテル流れ曲線52を示す。呼気中は、図8Aの正の側副流れ曲線50によって示されるように、吸気中に対象区画CSに入る空気の量と比べて少ない量の空気が側副通路41を通って大気へと流れ戻るが、図8Bの正のカテーテル流曲線52よって示されるように、残りの量の空気はカテーテルの管腔37を通って流れて大気に戻る。
【0038】
吸気及び呼気中に流れる空気の容量は、流れ曲線50、52の下の面積によって定量化することができる。吸気中に側副路41を介して対象区画30に入る空気の総容量V0は、図8Aの側副流れ曲線50の下の着色面積によって表わされることができる。空気の総容量V0は、V0=V1+V2で表わすことができ、ここで、V1は、呼気中に側副路41を介して放出される空気の容量(側副流れ曲線50の下のV3と表示された灰色の面積で示される)に等しく、V2は、カテーテルの内部管腔37を介して放出される空気の容量(図8Bのカテーテル流れ曲線52の下のV4と表示された着色面積で示される)に等しい。
【0039】
以下の厳密な数学的誘導は、これらの説明と式1で示される関係の妥当性を例証する。
【0040】
質量保存は、短期の定常状態において、吸気中に対象区画30に入る空気の容量は呼気中に同じ対象区画30を出る空気の容量に等しくなければならないということを示すので、それゆえ、
である。さらに、完全な呼吸サイクル(Tresp)の間に側副路のみを介して対象区画に出入りする空気の平均流量は
として求められ、ここで、Tresp分のV2は、Trespの間に側副路41を介して対象区画30に入り、異なる通路を通って大気に戻る空気の正味の流量を表す。従って、V2は、Trespの間に側副路41を介して対象区画30に入る空気の総容量V0の一部分を占めるため、V0は、同様に、V1及びV2によって
と定義されることができ、ここで、V1は、側副路41を介して対象区画30に入り、同じ通路を通って大気に戻る空気の量を表す。結果的に、式4のV0を式3に代入すると、
が求められ、式5のV1を式4の右辺に代入した後に、式2のV0を式4の左辺に代入する
となる。さらに、Trespの間に流量計42で測定される空気の平均流量は、
で表わされ、ここで、式6のV4を式7に代入すると、
が得られる。
【0041】
オーム法則は、定常状態において
であることを示し、ここで、
は、Rcollで表わされる抵抗性の側副路を通る
の連続的な通過を維持するために必要とされる対象区画の平均膨張圧を表わす。1回のTresp内の流れ及び圧力の信号(図8C)の目視検査は、吸気段階の間は空気がカテーテルの内部管腔37を介して隔離された区画30に出入りしないため、吸気時の間はPbはPsに相当することを示す。しかしながら、呼気中は、弁が大気圧に開放された状態で測定されるのでPb=0であるが、Psは依然として、呼気段階中にRsawで表わされる長いカテーテルの内部管腔37を通るQfmの通過によって生じる抵抗圧力損失に打ち勝たなければならないので、
は、
よりも
だけ大きい(less negative)。従って、
であり、式9のPsを式10に代入し、その後
について解くと、
となる。さらに、式8の
を式11に代入すると
が得られ、式12を
で割ると、最終的に
となり、ここで式13の絶対値は、元々は式1で示された前述の関係へと戻る。
【0042】
図7A〜図7Bに示されるシステムは、図9A〜図9Cに示される単純な回路モデルによって表わすことができる。CSで表わされる隔離された区画30に閉じ込められた肺胞の空気貯蔵容量は、コンデンサ素子60で示される。カテーテルの内部管腔37を介した肺胞から大気までの圧力勾配(Ps−Pb)は、小気道抵抗Rsawによって引き起こされ、これは抵抗器64によって表される。側副路を通る肺胞から大気までの圧力勾配は、側副流に対する抵抗Rcollによって生成され、これは抵抗器62によって表される。
【0043】
従って、隔離された区画30の弾性が、吸気活動中にRcollのみを越えて得られ、かつ呼気中にRsaw及びRcollを通って大気に戻される空気の容量の原因である。呼吸中の圧力変化は、呼吸サイクルの間の胸腔内の変動する陰圧の胸腔内圧を表わす、可変の圧力源Pplによって誘起される。理想ダイオード66は、吸気中は閉じ、呼気中に開く、一方向弁48を表わす。その結果、図10A〜図10Bに示されるように、流量計によって測定される流れ(Qfm)は、呼気中は正であり、吸気中はゼロであり、一方、圧力センサで記録される圧力(Pb)は、吸気中は負であり、呼気中はゼロである。
【0044】
図7A〜図7B及び図9A〜図9Cで図示される側副システムの計算モデルの実施による式1及び式8の評価により、図11A〜図11Dに示されるグラフの比較が得られる。図11Aは、平均Qfmの絶対値(
)及び平均Qcollの絶対値
(
)を示し、図11Bは、Rcollの関数として
と共にプロットされたモデルパラメータRcoll+Rsawを示す。その値は、Rsawを1cmH2O/(ml/s)で一定に保ちながら、異なる値のRcollを用いて生成されたコンピュータ生成データの個々の実現(realization)を表す。図11Aは、
及び
の絶対値を示し、図11Cは、Rsawの関数として
と共にプロットされたモデルパラメータRcoll+Rsawを示す。その値は、Rcollを1cmH2O/(ml/s)で一定に保ちながら、異なる値のRsawを用いて生成されたコンピュータ生成データの個々の実現を表す。図11A〜図11Bから、
のときに流れが最大になり、Rcollが「顕在的側副路」又は「側副路なし」のいずれかの極限に近づくにつれてゼロに向かって減少することは極めて明らかである。従って、測定された流れQfmが小さいことは、非常に小さい側副路と非常に大きい側副路の両方を意味し、それゆえ、Rcoll+Rsawが
として決定されない限りは、側副換気の存在に関して明快な判定ができない。この理由は、RcollがRsawに比べて非常に小さい場合、側副路を介して対象区画に入った気体容量の全てが同じ通路を介して出て行き、隔離された区画が空になるときに小気道を介して大気へと移動する気体容量はほとんどないためである。しかしながら、測定される圧力Pbは、それに応じて変化し、流れ測定を有効に正規化するので、その結果、側副路の大きさと側副換気の正しい程度に一意的に関連付けられる正確な表示であるRcoll+Rsawが得られる。
【0045】
同様に、図11C〜図11Dは、図11A〜図11Bを補うものであり、測定された流れQfmが、どのように、RsawがRcollよりしだいに大きくなるにつれてゼロに向かって減少し続け、さらに、RsawがRcollに比べて無視できるようになるにつれて極大に向かうかを示す。RsawがRcollに比べて非常に小さい場合、側副路を介して対象区画に入る気体容量の実質的に全てが小気道を介して大気に戻り、隔離された区画が空になるときに側副路を介して大気に戻る気体容量はほとんど残されない。それゆえ、
の決定は、その背後にあるRcollとRsawとの間の関係に関わらず、Rcoll+Rsawの正確な表示となる。健康なヒトでは、肺の小葉部分に供給する側副路による連通の抵抗、従ってRcollは、その部分に供給する気道の抵抗Rsawの何倍もの大きさ(10〜100倍)である(Inners 1979年、Smith 1979年、Hantos 1997年、Suki 2000年)。そのため、正常な個体では、RcollはRsawよりずっと大きく、側副流が予期される傾向はほとんどない。しかしながら、疾患においては、この限りではない(Hogg 1969年、Terry 1978年)。肺気腫においては、RsawがRcollを超えることがあり、それにより、空気は側副路を介して優先的に流れることになる。
【0046】
それゆえ、上述のモデル及び数学的関係は、側副換気が低度、中度又は高度であるという評価を下すこと、又は側副換気が臨床的閾値の上か下かという判定などの、患者の対象肺区画の側副換気の程度を示す方法を提供するために用いられることができる。いくつかの実施形態では、この方法はまた、Rcollを表わす値を生成するなど、側副換気の程度を定量化する。このような抵抗値は、その肺区画についての側副路の全体としての幾何学径を示す。層流を仮定して、ポアズイユの法則に基づくと、
であり、ここで、ηは空気の粘性率を示し、Lは側副路の長さを示し、rは側副路の半径を示す。半径の4乗に依存することは、側副通路の長さにかかわらず、幾何学的空間の指標が側副換気を支配することを可能にする。
【0047】
図12Aは、側副換気の程度を定量化する方法を生成するために用いられる2区画モデルを示し、これは、a)区域の側副流に対する抵抗Rcollを判定すること、b)区域のコンプライアンスCSの状態を判定すること、及びc)区域の過膨張の程度qSを判定することを含む。ここでも、CSは、対象の区画又は区域のコンプライアンスを特徴付ける。CLは、その肺葉の残りの部分のコンプライアンスを表わす。Rcollは、側副空気流に対する抵抗を記述する。図12Bは、電子的回路等価モデルを提供する。この例では、t=t1の時点で、およそ5〜10mlのHe(qhe)のような100%不活性ガスが注入される。ある時間の後、例えば1分後、圧力(Ps)及びHeの分率
が測定される。
【0048】
図12A〜図12Bに示されるシステムの動力学的挙動は、時定数τcollによって記述することができる。
【0049】
t1=30sの時点で、既知の一定量の不活性ガス(qhe:5〜10mlの100%He)を対象区画CSに迅速に注入し、その間、肺葉の残りの部分は閉塞されたままとし、対象区域で圧力(Ps)及びヘリウムの分率
をおよそ1分間(T=60s)にわたって測定する。図12C〜図12Eは、結果として得られた、対象区画CS及び残りの肺葉CLにおける容量、圧力及び気体濃度の時間変化を示す。式16〜21は、2つの別個の時間t1及びt2における肺の容量、圧力及び気体濃度の数学的表示を示す。
【0050】
結果として、以下の方法を区画又は区域の各々に対して独立して実行することができる。1)区域の過膨張の程度を評価する、2)区域のコンプライアンスの状態を判定する、3)区域の側副連通を算定する。
区域の過膨張
【0051】
対象区域の過膨張の程度qS(0)は、式16をqS(0)について解き、その後、式20をqS(t1)について適切に解いた後に、式20から誘導されたqS(t1)を式16にを代入することによって
として、求めることができる。
区域のコンプライアンス
【0052】
対象区域のコンプライアンスの状態CSは、単にCSについて式18を解くことによって
として求めることができる。
区域の側副抵抗
【0053】
肺における側副システム抵抗を定量的に判定するための直接的方法は、上述した。一方、以下の計算は、区域の側副抵抗を決定するための間接的方法を提供する。
【0054】
肺葉の残りの部分のコンプライアンスCLは、CLについて式19を解き、その後、CSに式23を代入することによって求めることができる。従って、
である。
【0055】
結果として、側副流/換気に対する抵抗は、式15をRcollについて解き、その後、式15に式23のCS及び式25のCLを代入することによって、
として代替的に求めることができ、ここで、Ceffは、式15で定義されるような有効コンプライアンスである。
全ての容量の相互牽制のための有用な追加的計算
【0056】
肺葉の残りの部分の過膨張の程度、従ってqL(0)は、式17をqL(0)について解き、その後、式21をqS(t2)+qL(t2)について適切に解いた後に、式17に式21から誘導されたqS(t2)+qL(t2)を代入することによって求めることができる。従って、
である。
【0057】
式26は、臨床手法の最後の時点での全ての容量の相互牽制(check and balance)のための追加的な方法を提供する。
【0058】
前述の発明は、理解を明確にするために図式及び例によって詳細に説明されているが、様々な代替、修正、及び等価物を用いることができることが明らかであり、前述の説明を、付随の特許請求の範囲によって定義される発明の範囲を制限するものと捉えるべきでないことは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1A】患者の右肺の右肺上葉を対象とするEVR手法の例を示す。
【図1B】患者の右肺の右肺上葉を対象とするEVR手法の例を示す。
【図1C】患者の右肺の右肺上葉を対象とするEVR手法の例を示す。
【図2A】右肺の例示的な側副路を概略的に示す。
【図2B】右肺の例示的な側副路を概略的に示す。
【図3A】対象区画に一定の陽圧の空気を供給する方法を概略的に示す。
【図3B】対象区域に一定の陽圧の空気を供給する方法を概略的に示す。
【図3C】対象区域に一定の陽圧の空気を供給する方法を概略的に示す。
【図4A】カテーテルが対象区画に供給する気管支に向かって進められる、最小限に侵襲的な方法の実施形態を示す。
【図4B】カテーテルが対象区画に供給する気管支に向かって進められる、最小限に侵襲的な方法の実施形態を示す。
【図4C】カテーテルが対象区画に供給する気管支に向かって進められる、最小限に侵襲的な方法の実施形態を示す。
【図4D】カテーテルが対象区画に供給する気管支に向かって進められる、最小限に侵襲的な方法の実施形態を示す。
【図5A】アキュムレータに接続されたカテーテルの実施形態を示す。
【図5B】アキュムレータに接続されたカテーテルの実施形態を示す。
【図5C】アキュムレータに接続されたカテーテルの実施形態を示す。
【図5D】アキュムレータに接続されたカテーテルの実施形態を示す。
【図6】アキュムレータに接続されたカテーテルの実施形態を示す。
【図7A】対象肺区画の単純化された側副システムの図式表示を示す。
【図7B】対象肺区画の単純化された側副システムの図式表示を示す。
【図8A】図7A‐図7Bのシステムから取得される測定値を示す。
【図8B】図7A‐図7Bのシステムから取得される測定値を示す。
【図8C】図7A‐図7Bのシステムから取得される測定値を示す。
【図9A】図7A‐図7Bのシステムを表わす回路モデルを示す。
【図9B】図7A‐図7Bのシステムを表わす回路モデルを示す。
【図9C】図7A‐図7Bのシステムを表わす回路モデルを示す。
【図10A】図7A‐図7Bのシステムから取得される測定値を示す。
【図10B】図7A‐図7Bのシステムから取得される測定値を示す。
【図11A】図7A‐図7B及び図9A図‐9Bに示される側副システムの計算モデルから得られるグラフィック比較を示す。
【図11B】図7A‐図7B及び図9A図‐9Bに示される側副システムの計算モデルから得られるグラフ比較を示す。
【図11C】図7A‐図7B及び図9A図‐9Bに示される側副システムの計算モデルから得られるグラフ比較を示す。
【図11D】図7A‐図7B及び図9A図‐9Bに示される側副システムの計算モデルから得られるグラフ比較を示す。
【図12A】側副換気の程度を定量化する方法を生成するために用いられる2区画モデルを示す。
【図12B】電気回路等価モデルを示す。
【図12C】結果として得られた、対象肺区画及び肺葉の残り部分の容量、圧力及び気体濃度における時間変化を示す。
【図12D】結果として得られた、対象肺区画及び肺葉の残り部分の容量、圧力及び気体濃度における時間変化を示す。
【図12E】結果として得られた、対象肺区画及び肺葉の残り部分の容量、圧力及び気体濃度における時間変化を示す。
【図13】側副路が存在しない場合の、隔離された区画からの測定された流量及び放出された容量を経時的に示すグラフである。
【図14】側副路が存在する場合の、隔離された区画からの空気の、測定された流量、減少した過剰容量、及び測定された側副抵抗を経時的に示すグラフである。
【図15】隔離された肺区画における側副抵抗と過剰容量の減少との間の関係を示すグラフである。
【図16】隔離された肺葉における弾性反跳圧力の変化と容量変化との間の関係を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、呼吸器医学に関するものであり、さらに詳細には、隔離された肺区画における肺の状態及び機能の評価の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肺は、複数の気管支肺区画を含み、本明細書では以下「肺区画」と呼ぶが、それらは、「裂」と呼ばれる2層の臓側胸膜の陥入した折返し(infolded reflections)によって互いに分離されている。肺区画を分離している裂は、通常、不浸透性であり、肺区画は、区画内に開口している上気道を通ってのみ空気を取り入れ放出する。特定の肺小葉内の区画は、細気管支内Martin通路(Martin’s channel)、Lambertの気管支−肺胞通路、Kohnの肺胞内孔などのような周知の側副経路を通って互いに連通することできるが、そのような通路は、一般に、肺区画を分離する不浸透性の裂を貫通しているとは考えられていない。しかしながら、最近の研究では、葉間の裂は常に完全ではなく、そのため、肺の小葉部は接続することがあり、側副空気流又は小葉間の側副換気を提供することがあることを示している。特筆すべきは、そのような肺区画間の側副経路の存在が気腫の患者において顕著に増大していることである。
【0003】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療における最近の進歩のため、側副換気に対する関心が高まっている。種々のCOPD治療は、この疾患及び供給気管支の閉塞による消耗性過膨張を減少させ、その領域を低容量に維持するために、閉じ込められた空気を除去することを伴う。これらのアプローチを導く概念は、気腫の肺部の吸引性及び/又は閉塞性(absorption)の無気肺は、組織を除去する必要なしに肺容量を減少させることができるということである。そのような種類のCOPD治療の1つは、肺容量を減少させるためにカテーテルに基づくシステムを用いる気管支内容量減少(EVR,Endobronchial Volume Reduction)である。光ファイバーによる可視化及び特殊カテーテルを用いて、医師は、選択的に患部肺の一区域又は複数区域を虚脱させる。その後、その区域が再膨張するのを防止するために、閉塞ステントが肺区域内に配置される。
【0004】
図1A〜図1Cは、患者の右肺RLの右肺上葉RULを対象とするそのようなEVR手法の一例を示す。ここでは、右肺上葉RULが過膨張である。カテーテル2が、気管Tを通って、右肺上葉RULに供給する肺の通路内に進められる。右肺上葉RULは、次に、図1Bに示されるように容量を減少させられ、栓、弁、又は閉塞ステント4が肺の通路内に設置され、右肺上葉RULの容量を減少させる。しかしながら、図1Cに示されるように、右肺上葉RULを右肺中葉RML及び/又は右肺下葉RLLと接続する側副路CHが存在している場合がある。その結果、時間が経つと、側副路CHを通じての補給のせいで右肺上葉RULが再拡張又は再過膨張するため、EVRの成功は、ほんの一時的なものになることがある。場合によっては、側副路CHを介して近接の肺葉から引き込まれる空気のため、所望の容量減少は不可能なことがある。
【0005】
図2A〜図2Bは、右肺RL内の側副路CHを概略的に示す。図2Aは、右肺上葉RUL、右肺中葉RML及び右肺下葉RLLの間の種々の肺葉間側副路CHを示す。図2Bは、肺葉内の個々の肺区域(例えば、S、S1、S2)を接続する肺葉内又は区域間の側副路CHを示す。これらの区域間側副路は、肺区画の各々の末梢が互いに連通することを可能にするものであり、Martin通路,Kohnの孔、Lambertの通路のような周知の側副路を含む。
【0006】
区画間の側副換気を測定する方法は、側副換気に対する抵抗(Rcoll)を測定することであった。側副路を通過する定常流(Qcoll)とその前後での圧力降下の間の関係の評価が、側副換気に対する抵抗(Rcoll)を測定する直接的方法である。多くの研究者が過去にこのアプローチを用いることを試みてきたが、この測定を行う最も単純で多用途の方法は最初にHilpertによって記載された(Hilpert P. Kollaterale Ventilation Habilitationsschirift, aus der Medizinischen. Tubingen, West Germany:Tubingen Universitatsklinik,1970年。 学位論文)。この方法は、図3A〜図3Cに概略的に示され、図3Bに示されるような一定流量の空気Qcollを対象領域又は封鎖された対象区画CSに注入することを含む。Qcollは、流れ発生器5によって、末梢気道に押し込まれて区画CSを封鎖する隔離カフ7を有する二腔管隔離カテーテル6を通して供給される。Qcollが、隔離カテーテル6の一方の管を通して注入される一方、図3Cに示されるように、気道閉塞の部位における空気圧Pbが他方の管を通して測定される。定常状態の下で、PbをQcollで割った比率は、側副換気に対する抵抗の定量的測定値を提供し、これは、側副路内の抵抗Rcoll及び側副路とカテーテル6の遠位端との間の隔離された区画の小気道内の抵抗Rsawを含む。この技術は、実験ツールとしてはある程度有用ではあるが、実験的に重大な制限があり、その臨床的使用は患者に追加的なリスクをもたらす。すなわち、肺の患部に一定の空気流を与えることは、適切に行われない場合、危険であることもある。たとえば、嚢胞性肺気腫がある場合、圧力が胞を拡大するか又は新しい胞を作り出す可能性、或いは、過膨張又は気胸の増大を引き起こす可能性がある。
【0007】
Hilpertの方法よりも患者に与えるリスクが相対的により少ない他の方法が、WoolcockとMacklemによって記載されている(Woolcock,A.J及びP.T.Macklem.Mechanical factors influencing collateral ventilation in human, dog, and pig lungs.J.Appl.Physiol.30:99−115ページ、1971年)。この方法は、対象の肺区域に押し込まれたカテーテル越しに空気塊を急速に注入することを伴い、閉塞された区域が側副路を通って周囲の肺へと流れ込むにつれて圧力が降下する速度は、側副換気についての時定数τcoll(空気塊の注入によって作り出された圧力変化が初期値の約37%まで下がるのに要する時間)によって支配される。ここでは、Rcollは、τcolと対象区域のコンプライアンスCSと間の比率として間接的に測定される。しかしながら、この方法を用いたRcollの計算は、閉塞区域内と周囲の肺における均質性を含む、幾つかの不確かな仮定に高度に依存している。
【0008】
側副換気を評価するための前述の方法は、多くの欠点があると思われる。Woolcock及びMacklemの方法は、患者が呼吸している場合、又はその肺区画がすでに治療の対象となっている状況と同様の場合には、側副換気を評価するには一般に不適切である。上記の方法で得られた側副換気についての値は、一般に、正常なヒトの肺では10-1から10+2cmH2O/(ml/s)であり、気腫を患っているヒトの肺ではおよそ10-3から10-1cmH2O/(ml/s)である。
【0009】
区画間の側副換気の存在はまた、対象肺区画の隔離と、それに続くヘリオックス(21%O2/79%He)又は他のトレーサガスの導入によっても評価される。対象区域内でトレーサガスが検出されることは、ガスが周囲の肺から対象肺区域へと流入するのを可能にする側副路の存在を示唆する。この技術は、側副流の量又は側副抵抗の定量化を提供しない。
【0010】
切除され収縮した肺における区画間側副換気の存在を検出する実験的な試みは、分離した近隣の肺部分を同時に封鎖しながら、肺にカニューレを挿入し、封鎖し、空気を吹き込むことに依る。膨張する近隣部分は、空気の流入を可能にする側副路を有することが判定。このような技術は、ヒト被験者に直接適用することができない。
【0011】
米国特許出願2003/0228344 A1は、対象とする肺区画に供給する気道内に設置される一方向弁を記載する。一方向弁は、空気をその区画から出すことはできるが、その区画の中に入れることができない。最終的に無気肺(隔離された肺区画からの気体の損失)が観察される場合、その肺区画には側副路(少なくとも隣接の肺区画から対象の肺区画への気体の流入を可能にするもの)がないと診断される。無気肺が観察されない場合、周囲の区画から対象の肺区画への空気の流入を可能にする側副路が存在すると推定される。この特許出願に記載されている技術は、側副路を介した気体の流入を受ける肺区画を概して同定するが、側副換気の量又は側副抵抗の値を定量化することはできない。
【0012】
これらの理由のため、肺区画間の側副換気及び/又は側副抵抗を評価するための直接的で正確、単純、且つ最小限に侵襲的な方法が所望される。側副換気の検出及び測定に加えて、過膨張の判定、気体交換、典型的には酸素摂取量の測定、側副路の方向性(対象の肺区画の中に入るのか外に出るのか)の判定、対象の肺区画における血流及び/又は単位当たりの肺容量に対する血流の評価などを含む、肺区画の診断のためのその他の技術が所望される。これらの目標うちの少なくとも幾つかは、以下に記述する発明によって達成されることになる。
【発明の開示】
【0013】
肺区画の過膨張の程度、肺区画のコンプライアンス、肺区画内の酸素摂取量の値といった肺区画内の気体交換の効率、隣接の肺区画間の側副流路の方向性、及び肺区画内の血流及び/又は単位容量当たりの血流の流量又は程度を含む、個々の肺区画の状態及び機能の定性的及び定量的に評価するための、最小限に侵襲的な方法、システム及び装置が提供される。この方法、システム及び装置は一般に、診断プロトコルを実施するために、生きている患者の肺内の対象肺区画にアクセスすること、これを隔離すること、及び少なくとも部分的に閉塞することに依る。典型的には、患者の肺は、気管気管支樹を通して、対象肺区画に供給する、典型的には供給気管支(feeding bronchus)と呼ばれる気道に向かってカテーテルを前進させることによって、アクセスされる。気道は通常、拡張可能な閉塞部材、典型的にはカテーテル上のバルーンによって閉塞され、カテーテルを用いて、又は通じて、患者に最小限のリスクしか与えない方法で種々の測定を行うことができる。
【0014】
本発明の方法、システム及び装置は、患者を診断することを可能にし、その診断情報を治療の選択肢の選択の際に用いることを可能にする。例えば、過膨張、コンプライアンス、酸素摂取量、血流、及び/又は単位肺容量当たりの血流の判定は、一般に特定の肺区画の健康に関係する。肺内の他の肺区画と同じくらいに健康か、又はそれ以上に健康と思われる肺区画は一般に、治療、特に、吸引、無気肺又は両方の組合せのいずれかによる対象肺区画の閉塞及び容量減少に依る治療の対象にはならないものである。側副換気及び/又は側副路を通る流れの方向の判定は、閉塞に依る肺容量減少の成功の直接の予測指標である。閉塞時に、側副路を通る流れが、空気をトータルで対象肺区画に入り込ませるようであれば、そのような治療の成功は見込みがない。
【0015】
本発明の第一の態様では、典型的には側副路が存在しない場合に、肺区画の過膨張の程度を判定するための方法が提供される。肺区画は、典型的には、その区画に供給する上気道に設置されたバルーン又は他の拡張可能な閉塞要素を有するカテーテルによって閉塞される。患者が正常な呼吸を続けるとき、空気は、その区画から放出され、カテーテルを通過して、典型的には隔離された肺区画へと空気が戻るのを阻止する一方向弁又は他の構造体を通過して、外へ出て行く。肺区画から放出される空気の総量が初期閉塞時から測定され、測定された空気の総量は肺区画の過膨張の程度に正比例する。通常、図13に示されるように、放出される空気の量は、初期閉塞時から、肺内の過剰容量が周囲の肺区画の外圧によって虚脱されたことを示唆する、区画から放出される空気の流れが実質的に停止するまで測定される。区画から放出される空気の流量は、典型的には、例えば従来の任意の流れ測定装置を用いて監視されるので、いつ空気の流れが実質的に停止したかの判定を行うことができる。典型的には、空気容量は、単純に気流の測定値を積分することによって算定される。過膨張の程度を直接判定するためのこの方法は、隣接の肺区画からその肺区画に空気流を入らせる側副流路を有する肺区画においては、通常あまり正確ではないということが理解される。従って、側副流路が存在する場合、図14に示されるように、放出される空気の量は、初期閉塞時から、区画から放出される空気の流れが定常状態に達するまで測定することができ、ここで、観察される定常状態流は、隣接する肺区画からその肺区画に入る平均側副空気流を表す。その結果、周囲の肺区画の外圧によって閉塞された肺区画内で虚脱された過剰容量の程度を特徴付けるために、側副換気による空気の流量を、その区画から放出される空気の流量から差し引くことができる。図15は、測定される過剰空気容量が、複数の側副抵抗(Rcoll)測定値によって特徴付けられる様々な度合いの側副換気に依存していることを例示している。側副換気は、高いRcoll値、すなわちRcoll>100では、事実上存在せず、3桁小さいRcoll値、すなわちRcoll<0.1でほぼ完全となるが、0.1<Rcol<100の広い範囲で実質的な容量減少が依然として生じ得る。例えば、Rcoll=1で、約50%の容量減少が予期されるので、過膨張の全体としての程度は、測定された過剰容量の大まかに2倍になる。従って、側副路が存在していても、Rcollが既知の場合、過膨張の程度は依然として、測定された過剰空気容量から間接的に判定できることが理解される。側副路の方向性を判定するための方法は、後述する。
【0016】
本発明の第二の態様では、図16に示されるように、隔離された肺区画の特性圧力容量曲線を測定することによって、隔離された肺区画のコンプライアンスを判定するための方法が提供される。隔離された肺の容量の変化を測定する方法は、上述されている。弾性反跳圧力は、隔離された肺区画内の圧力変化と胸腔内圧における変化との差から得られることになる。隔離された肺区画の圧力は典型的には、その区画に戻る空気の進入を閉塞している間に、例えばカテーテルの内側の管腔と連通する任意の従来の圧力センサを用いて監視される。胸腔内圧は典型的には、例えば被験者の食道内に置かれた食道バルーンカテーテルと連通する任意の従来の圧力センサを用いて監視される。通常、圧力及び放出される空気の量は、初期閉塞時から、肺の過剰容量が周囲の肺区画の外圧によって虚脱されたことを示唆する、区画から放出される空気の流れが実質的に停止するか又は定常状態に達するまで測定される。
【0017】
本発明の第三の態様では、隔離された肺区画からの酸素摂取の速度を判定するための方法が提供される。対象の肺区画は、典型的には、空気を区画から放出することはできるが、空気が区画に戻って進入するのを実質的に阻止するか又は閉塞するカテーテルによって、閉塞される。カテーテルを通って対象肺区画から出る空気流が止まった後、その区画内に残っている空気の圧力を経時的に測定することができる。気体容量又は圧力が減少するのは血液との酸素の交換を介してのみなので、空気圧の減少は、肺区画における酸素消費の尺度又は値を表す。
【0018】
典型的には、肺区画を閉塞することは、その肺区画に供給する気道においてカテーテル上のバルーン又は他の拡張可能な閉塞構造体を拡張させることを含む。カテーテルは典型的には、空気を区画から放出することはできるが、空気が区画に進入するのを阻止又は妨害する一方向弁を含む。空気圧は典型的には、カテーテル上の変換器で測定される。酸素摂取量を判定するこれらの方法は、隣接の肺区画から対象の肺区画内に空気が流れることを許容する側副路を有する肺区画に対しては、正確性に欠けるか、或いは適用できないことが理解される。
【0019】
本発明の第四の態様では、対象肺区画と隣接の肺区画との間を連通する側副路の方向性は、接続する上気道を通って出入りする流れがないように対象の肺区画を隔離することを含む。隔離された肺区画内の圧力は、複数の呼吸サイクルにわたって測定され、圧力の上昇は、側副路が存在すること、及びそれらの通路が、隣接の区画から対象区画への気体の流入より、対象区画から隣接の区画への気体の流出に対して高い抵抗を有することを示している。そのような通路は、時間が経つと正味で空気を流入させることになる。逆に、複数の呼吸サイクルにわたっての隔離された肺区画内の圧力の減少は、側副路が存在し、流入より流出に対して低い抵抗を有することを示している。そのような通路は、時間が経つと対象肺区画から正味で空気を流出させることになる。
【0020】
対象の肺区画を隔離することは、典型的には、対象肺区画に通じる気道内でカテーテル上のバルーンのような閉塞構造体を拡張させることを含む。圧力は典型的には、カテーテル上の変換器で測定される。側副流路の存在及び方向性を判定するための方法は、上述の過膨張の測定方法及び酸素摂取量の判定方法の適用性を判断することを含む、多くの目的に対して有用である。この方法はまた、対象肺区画の閉塞及び隔離に依る肺容量減少処置が成功する見込みがあるかどうかを判断するためにも有用である。そのような閉塞に基づくプロトコルは一般に、対象肺区画に側副流路がない患者、又は側副流路が流出より流入に対し高い抵抗を有する患者に適している。空気の流入に対してより低い抵抗を有する側副流路を有するような患者においては、対象肺区画の閉塞は、隣接の肺区画から空気が入るので、その区画の再膨張を防げないことが理解される。
【0021】
本発明の第五の態様では、対象肺区画内の血流及び/又は単位肺容量当たりの血流は、最初に肺区画を隔離することによって評価することができる。マーカが体循環に注入され、このマーカは、迅速に肺内に放出されるように低い溶解度を有する。マーカが、典型的には10〜15秒かけて血中で平衡分布に達すると、その肺区画においてマーカの第1の濃度が測定され、肺の別の部分(又は隔離された区画以外の肺全体)においてマーカの第2の濃度が測定される。次に、第1の濃度と第2のマーカ濃度が比較される。対象肺区画内の気体濃度が肺の残りの部分よりも低いということは、対象肺区画の方が循環血液との気体の交換効率が低いことを示し、これはさらに、対象肺区画が罹患している可能性があること、及び肺の容量減少又は他の療法を受ける候補となる可能性があることを示す。反対に、その肺区画でのマーカの気体濃度が肺の残りの部分でのマーカ濃度と少なくとも同じ高さであれば、対象の肺区画が肺の残りの部分よりも罹患している可能性は低いこと、及び治療プロトコルから利益を得る可能性が低いことを示す。
【0022】
マーカは、無呼吸中に平均肺容量で注入されることが好ましい。好ましいマーカは、六フッ化硫黄を含み、第2の濃度は肺のどの区画でも測定できるが、多くの場合、肺の残りの部分から呼出される気体から測定される。前の試験プロトコルと同様に、肺が側副路を通って隣接の区画からその肺に入る空気流で損なわれる場合、肺の血流の測定は正確性に欠けるか、場合によっては適用できないことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
特に肺の残りの部分から隔離されている対象肺区画又は区域において、肺の状態及び機能を定性的及び定量的に評価するための、最小限に侵襲的な方法、システム及び装置が提供される。図4A〜図4Dは、本発明の種々の診断プロトコルを行うために用いられるシステムを示し、気管気管支樹を通して治療又は隔離の対象となる肺区画である対象領域CSの供給気管支B(上気道)に向かって進めることのできるカテーテル10を含む。カテーテル10は、少なくとも1つの内側を貫通する管腔を有するシャフト12と、その遠位端の近傍に取り付けられた閉塞部材14とを含む。カテーテル10の閉塞部材14は、カテーテルの全長にわたって延びているカテーテル内部の管腔だけが封鎖部の遠位の気道と連通するように、カテーテルシャフト12と気管支の壁との間の領域を封鎖するように適合される。封鎖又は隔離は、カテーテル10の遠位の先端部に取り付けられた膨張可能な部材のような閉塞部材14の使用によって達成することができる。代替的には、カテーテルの先端部は広がった端部を有していてもよく、或いは、それ以外の方法で、拡張又は膨張することなく気道内を封鎖するように適合されていてもよい。
【0024】
患者の身体の外部のカテーテル10の反対側の端部に、一方向弁16、流れ測定装置18又は/及び圧力センサ20が直列又は他の方式でカテーテルの内部管腔と連通できるように設置される。一方向弁16は、大気から対象区画CSに空気が入るのを防ぐが、対象区画CSから大気への空気の自由な移動を可能にする。対象の隔離区画CSを肺の残りの部分と接続する側副路が存在しない場合、図4A〜図4Bに示されるように、対象区画の過剰容量が周囲の肺区画の外圧によって虚脱されると、患者の正常な呼吸の吸気中に隔離区画CSがカテーテル管腔から空気を引き入れようとしても成功しないことになる。ゆえに、呼気中に、空気はカテーテル管腔に戻らない。側副路が存在する場合、図4C〜図4Dに示されるように、各呼吸の吸気段階の間に、追加量の空気、すなわち側副路CHを通って隣接区画Cから移動する空気が、隔離された区画CSに常に供給可能であり、これが吸気の間に隔離された区画CSの容量の拡張を可能にするので、その結果、呼気の際に、カテーテル管腔及び側副路CHを通る、隔離された区画CSから大気への空気の移動が生じる。このように、空気は、各呼気の際にカテーテル管腔を通って放出され、流れ測定装置18上で正の空気流として記録されることになる。カテーテル管腔を通るこの正の空気流は、対象の区画CSで生じる側副換気が存在するかどうかの指標を提供する。他の実施形態において、一方向弁は、遠位端又はその近傍を含むカテーテル上の他の位置に設置することができることが理解される。
【0025】
図4A〜図4Dのシステムは、対象区画CSの酸素摂取速度を、肺の他の部分又は肺の残りの全部分における速度との比較において判定するために用いることができる。肺を、閉塞部材14の膨張によって隔離し、収縮させる。例えば、流れ測定装置18によって検出される流れがゼロ(0)に達することによって示されるように、収縮が実質的に停止した後で、対象肺区画内の圧力の減少速度を経時的に監視することができる。圧力センサ20で示されるような圧力が減少する速度は、対象区画CSにおける酸素摂取量に正比例するので、その区画の単位気体容量当たりの血流に正比例する。
【0026】
図4A〜図4Dのシステムは、対象肺区画と近隣の肺区画との間の側副路を通る流れの方向性を判定するのに役立つよう変更することができる。特に、カテーテル10を、管腔を通る流れが阻止されるか、又は管腔が全く存在しないように変更することができる。それで、閉塞部材14は、空気が接続する上気道を通ってその区画に入ることも出て行くこともないように、対象の肺区画CSを完全に閉塞することになる。対象肺区画は、カテーテルによって完全に閉塞され、圧力の変化が複数の呼吸サイクルにわたって監視される。圧力センサ20によって圧力の上昇が測定された場合、隣接の区画から対象肺区画への空気の正味での流入があり、これは、側副流路が存在し、これらの流路内の側副抵抗は呼気の間より吸気の間の方が低いと考えられる。反対に、圧力減少が観察される場合、吸気の間より呼気の間のほうが大きい抵抗を有する側副路が存在する。
【0027】
対象肺区画と近隣肺区画との間の側副路の存在及び方向性の判定は、治療処置の決定だけでなく、本発明に従って行われるいずれの診断手法が適切かを決定するためにも有用な情報である。対象肺区画への空気の進入又はそこからの損失のいずれかを許容する側副路の存在はまた、診断される肺区画内で一定の空気容量を維持することに依る、本明細書に記載の他の診断手法に対する禁忌を示すことにもなる。
【0028】
図4A〜図4Dのシステムは、対象肺区画の過膨張の程度及びコンプライアンスを判定するために用いられることもできる。
【0029】
本発明の第六の態様では、対象肺区画の健康を評定するための最小限に侵襲的な方法は、区画の単位気体容量当たりの血流を判定することに依る。隔離カテーテル10を用いて、他の診断プロトコルとの関連で一般に上述されたように閉塞部材14を配置することによって、対象の肺区画CSが隔離される。六フッ化ナトリウムのような低い血中溶解度を有するマーカ物質が、典型的には無呼吸中に平均肺容量で体循環に注入される。六フッ化ナトリウムは適切なマーカの一例であるが、他の低溶解度の気体を用いることもできる。マーカの血中濃度が平衡に達するのに十分な時間の後、典型的には10秒から15秒後に、典型的にはカテーテル10の管腔を介して、隔離された肺区画からの気体がサンプリングされる。呼出された空気中で測定される、肺の他の部分、典型的には肺の残りの部分におけるマーカの濃度も判定される。対象肺区画で測定されるマーカの濃度が、肺の他の部分及び/又は残りの全部分で示される濃度と同じか、それより高いということは、対象肺区画において単位気体容量当たりの血流が損なわれていないということ、及びその対象肺区画は治療的介入に適した候補になる可能性が低いことを示す。反対に、測定されたマーカの単位気体容量当たりの血流が肺の他の部分に比べて顕著に低い場合、対象とする肺容量は、治療に適した候補になると考えられる。
【0030】
他の実施形態では、図5A〜図5D及び図6に図示されるように、カテーテル10は、アキュムレータ又は特殊容器22に接続される。容器22は、気流に対する抵抗が非常に低く、限定はされないが、例えば伸展性の(compliant)袋又はたるんだ捕集袋のようなものである。容器22は、カテーテル10の外部端部又は遠位端24及びその中を貫通して延びる内部管腔に、特殊容器22の内部が内部管腔とだけと連通するような方式で接続される。呼吸の際に、図5A〜5Bに図示されるように側副路が存在しない場合には特殊容器22は拡張しない。対象区画CSは、空気が非対象区画Cに出入りするように、隔離バルーン14によって封鎖される。呼吸の際に、図5C〜図5Dに図示されるように副側路が存在する場合、特殊容器22の容量は、最初の呼気の間に側副路CHを介して封鎖された区画CSによって受け入れられた空気流のいくらかの部分がカテーテル管腔を通って外部の特殊容器22の中に呼出されるので、最初は上昇する。特殊容器22の性質は、特殊容器22が側副路CHの動力学に最小限の影響しか与えないように選択され、特に、膨張に抵抗しないような極めて非弾性の特殊容器22である。側副換気に対する抵抗が呼気中より吸気中の方が小さいという仮定の下では、側副路CHを通って封鎖された区画CSに移動する空気の容量が呼気中より吸気中に大きくなり、その結果、追加の空気容量が呼気中にカテーテル管腔から特殊容器22へと通されるため、特殊容器22の容量は、引き続く各呼吸サイクルの間中、上昇し続けることになる。肺区画CSの側副流を測定するこの技術は、無限大のコンプライアンスを有するもう1つの肺区画又は肺葉をその人の肺に付け加えることと等価であり、付け加えられる区画は外部に付加される。
【0031】
随意に、図6に図示されるように、流れ測定装置18又は/及び圧力センサ20を含めることができる。流れ測定装置18及び/又は圧力センサ20は、(矢印で示されるように)カテーテルシャフト12に沿ったどの位置にでも、カテーテル管腔と連通するように配置されることができる。一緒に使用される場合、流れ測定装置18及び圧力センサ20は直列に設置することができる。一方向弁16も、流れ測定装置18及び/又は圧力センサ20と直列に設置することができる。流れ測定装置18は、特殊容器22の代わりに設置されてもよく、又は特殊容器22と隔離された肺区画との間、限定はされないが典型的にはカテーテルと専用容器との接合地点に設置されて、特殊容器に出入りする空気流量を測定してもよく、従って、流量の積分により、カテーテル管腔を通って封鎖された区画CSから/へ流れる空気の容量の測定値が提供されることが理解できる。
【0032】
流れの測定は、限定されるものではないが、流れ測定装置18を使って直接的に流れを測定する、及び/又は圧力センサ20で圧力を測定することによって間接的に流れを測定するなど種々の形式をとることができ、且つ、流れ測定装置18と共に一方向弁16を使用して又は使用せずに、及び外部特殊容器22を使用して又は使用せずに、カテーテルシャフト12に沿ったどこの位置でも測定することができることを理解することができる。
【0033】
対象肺区画の側副換気の存在を判定することに加えて、本発明の方法によって側副換気の程度を定量化することができる。一実施形態では、側副喚起の程度は、側副システムを通る抵抗Rcollに基づいて定量化される。Rcollは、次式
に基づいて決定され、ここでRcollは側副路の抵抗を構成し、Rsawは小気道の抵抗を特徴づけ、
及び
は図4A〜図4Dの描写と同様の方法で対象肺区画を隔離するカテーテルによって測定された平均圧力及び平均流れを表わす。
【0034】
単純化のために、及び原理の証明を実行する手段として、図7A〜図7Bは、対象肺区画CSの単純化された側副システムの図式表示を示す。単一の弾性区画30は、対象肺区画CSを表し、区画30とチャンバ32との間のいかなる空気の通過も防ぐように、チャンバ32の内側にしっかりと配置される。チャンバ32は、大気に対して様々な陰圧となるように調圧することができ、これは胸郭内圧Pplを表す。肺の中の対象肺区画CSを表す弾性区画30は、通路40を通って大気環境に連通する。さらに、弾性区画30はまた、肺の対象区画CSの側副路CHを表す側副通路41を通じても大気環境に連通する。
【0035】
カテーテル34は、図7A〜図7Bに図示されるように、通路40を通って前進可能である。カテーテル34は、シャフト36と、その中を貫通する内部管腔37と、その遠位端近傍に取り付けられた閉塞部材38とを含む。カテーテル34は、カテーテル34の全長にわたって延びているカテーテル34の内部の管腔37だけが区画30と大気との間を直接連通することができるようにカテーテルシャフト36と通路40とを封鎖するために、特別に装備されている。カテーテル34の反対側には、カテーテルの内部管腔37内の圧力及び流れを測定するために、流れ測定装置42及び圧力センサ44が直列に設置される。流れ測定装置42の隣に配置される一方向弁48は、一方向のみ、すなわち区画30から大気への方向のみに空気を通過させる。流れ測定装置42、圧力センサ装置44及び一方向弁48は、カテーテル管腔の全長に沿ってどこにでも設置することができ、限定はされないが、典型的にはカテーテルシャフト36の近位端に設置される。区画30内部の圧力を測定することは、限定はされないが、圧力センサ44をカテーテルの内部管腔37に接続するなどの、様々な方式で達成することができることが理解されるべきである。例えば、これは、カテーテル34の全長にわたって延びる、封鎖に対して遠位の気道に連通するカテーテル34内部の分離した管腔に圧力センサ44を接続することによって、達成することもまたできる。
【0036】
区画30は、常時、Rsawを表すカテーテルの内部管腔37及び/又はRcollを表す側副路41のいずれかを介してのみ大気と連通することができる。従って、吸気中は、図7Aに図示されるように、Pplは次第に陰圧になり、空気は、側副路41のみを介して区画30に入るはずである。他方、呼気中は、図7Bに図示されるように、空気は、側副路41及びカテーテルの内部管腔37を介して出ることができる。
【0037】
図8A〜図8Cは、吸気段階及び呼気段階の間に図7A〜図7Bのシステムから取得される測定値を示す。図8Aは、側副路41を通る流れQcollを反映する側副流れ曲線50を示す。図8Bは、流れ測定装置42を通る流れQfmを反映するカテーテル流れ曲線52を示す。吸気中は、空気は側副路41をのみを通じて流れ、空気は流れ測定装置42を通じては流れないが、それは一方向弁48がそのような流れを妨げるからである。それゆえ、図8Aは、負の側副流れ曲線50を示し、図8Bは、平坦なゼロ値のカテーテル流れ曲線52を示す。呼気中は、図8Aの正の側副流れ曲線50によって示されるように、吸気中に対象区画CSに入る空気の量と比べて少ない量の空気が側副通路41を通って大気へと流れ戻るが、図8Bの正のカテーテル流曲線52よって示されるように、残りの量の空気はカテーテルの管腔37を通って流れて大気に戻る。
【0038】
吸気及び呼気中に流れる空気の容量は、流れ曲線50、52の下の面積によって定量化することができる。吸気中に側副路41を介して対象区画30に入る空気の総容量V0は、図8Aの側副流れ曲線50の下の着色面積によって表わされることができる。空気の総容量V0は、V0=V1+V2で表わすことができ、ここで、V1は、呼気中に側副路41を介して放出される空気の容量(側副流れ曲線50の下のV3と表示された灰色の面積で示される)に等しく、V2は、カテーテルの内部管腔37を介して放出される空気の容量(図8Bのカテーテル流れ曲線52の下のV4と表示された着色面積で示される)に等しい。
【0039】
以下の厳密な数学的誘導は、これらの説明と式1で示される関係の妥当性を例証する。
【0040】
質量保存は、短期の定常状態において、吸気中に対象区画30に入る空気の容量は呼気中に同じ対象区画30を出る空気の容量に等しくなければならないということを示すので、それゆえ、
である。さらに、完全な呼吸サイクル(Tresp)の間に側副路のみを介して対象区画に出入りする空気の平均流量は
として求められ、ここで、Tresp分のV2は、Trespの間に側副路41を介して対象区画30に入り、異なる通路を通って大気に戻る空気の正味の流量を表す。従って、V2は、Trespの間に側副路41を介して対象区画30に入る空気の総容量V0の一部分を占めるため、V0は、同様に、V1及びV2によって
と定義されることができ、ここで、V1は、側副路41を介して対象区画30に入り、同じ通路を通って大気に戻る空気の量を表す。結果的に、式4のV0を式3に代入すると、
が求められ、式5のV1を式4の右辺に代入した後に、式2のV0を式4の左辺に代入する
となる。さらに、Trespの間に流量計42で測定される空気の平均流量は、
で表わされ、ここで、式6のV4を式7に代入すると、
が得られる。
【0041】
オーム法則は、定常状態において
であることを示し、ここで、
は、Rcollで表わされる抵抗性の側副路を通る
の連続的な通過を維持するために必要とされる対象区画の平均膨張圧を表わす。1回のTresp内の流れ及び圧力の信号(図8C)の目視検査は、吸気段階の間は空気がカテーテルの内部管腔37を介して隔離された区画30に出入りしないため、吸気時の間はPbはPsに相当することを示す。しかしながら、呼気中は、弁が大気圧に開放された状態で測定されるのでPb=0であるが、Psは依然として、呼気段階中にRsawで表わされる長いカテーテルの内部管腔37を通るQfmの通過によって生じる抵抗圧力損失に打ち勝たなければならないので、
は、
よりも
だけ大きい(less negative)。従って、
であり、式9のPsを式10に代入し、その後
について解くと、
となる。さらに、式8の
を式11に代入すると
が得られ、式12を
で割ると、最終的に
となり、ここで式13の絶対値は、元々は式1で示された前述の関係へと戻る。
【0042】
図7A〜図7Bに示されるシステムは、図9A〜図9Cに示される単純な回路モデルによって表わすことができる。CSで表わされる隔離された区画30に閉じ込められた肺胞の空気貯蔵容量は、コンデンサ素子60で示される。カテーテルの内部管腔37を介した肺胞から大気までの圧力勾配(Ps−Pb)は、小気道抵抗Rsawによって引き起こされ、これは抵抗器64によって表される。側副路を通る肺胞から大気までの圧力勾配は、側副流に対する抵抗Rcollによって生成され、これは抵抗器62によって表される。
【0043】
従って、隔離された区画30の弾性が、吸気活動中にRcollのみを越えて得られ、かつ呼気中にRsaw及びRcollを通って大気に戻される空気の容量の原因である。呼吸中の圧力変化は、呼吸サイクルの間の胸腔内の変動する陰圧の胸腔内圧を表わす、可変の圧力源Pplによって誘起される。理想ダイオード66は、吸気中は閉じ、呼気中に開く、一方向弁48を表わす。その結果、図10A〜図10Bに示されるように、流量計によって測定される流れ(Qfm)は、呼気中は正であり、吸気中はゼロであり、一方、圧力センサで記録される圧力(Pb)は、吸気中は負であり、呼気中はゼロである。
【0044】
図7A〜図7B及び図9A〜図9Cで図示される側副システムの計算モデルの実施による式1及び式8の評価により、図11A〜図11Dに示されるグラフの比較が得られる。図11Aは、平均Qfmの絶対値(
)及び平均Qcollの絶対値
(
)を示し、図11Bは、Rcollの関数として
と共にプロットされたモデルパラメータRcoll+Rsawを示す。その値は、Rsawを1cmH2O/(ml/s)で一定に保ちながら、異なる値のRcollを用いて生成されたコンピュータ生成データの個々の実現(realization)を表す。図11Aは、
及び
の絶対値を示し、図11Cは、Rsawの関数として
と共にプロットされたモデルパラメータRcoll+Rsawを示す。その値は、Rcollを1cmH2O/(ml/s)で一定に保ちながら、異なる値のRsawを用いて生成されたコンピュータ生成データの個々の実現を表す。図11A〜図11Bから、
のときに流れが最大になり、Rcollが「顕在的側副路」又は「側副路なし」のいずれかの極限に近づくにつれてゼロに向かって減少することは極めて明らかである。従って、測定された流れQfmが小さいことは、非常に小さい側副路と非常に大きい側副路の両方を意味し、それゆえ、Rcoll+Rsawが
として決定されない限りは、側副換気の存在に関して明快な判定ができない。この理由は、RcollがRsawに比べて非常に小さい場合、側副路を介して対象区画に入った気体容量の全てが同じ通路を介して出て行き、隔離された区画が空になるときに小気道を介して大気へと移動する気体容量はほとんどないためである。しかしながら、測定される圧力Pbは、それに応じて変化し、流れ測定を有効に正規化するので、その結果、側副路の大きさと側副換気の正しい程度に一意的に関連付けられる正確な表示であるRcoll+Rsawが得られる。
【0045】
同様に、図11C〜図11Dは、図11A〜図11Bを補うものであり、測定された流れQfmが、どのように、RsawがRcollよりしだいに大きくなるにつれてゼロに向かって減少し続け、さらに、RsawがRcollに比べて無視できるようになるにつれて極大に向かうかを示す。RsawがRcollに比べて非常に小さい場合、側副路を介して対象区画に入る気体容量の実質的に全てが小気道を介して大気に戻り、隔離された区画が空になるときに側副路を介して大気に戻る気体容量はほとんど残されない。それゆえ、
の決定は、その背後にあるRcollとRsawとの間の関係に関わらず、Rcoll+Rsawの正確な表示となる。健康なヒトでは、肺の小葉部分に供給する側副路による連通の抵抗、従ってRcollは、その部分に供給する気道の抵抗Rsawの何倍もの大きさ(10〜100倍)である(Inners 1979年、Smith 1979年、Hantos 1997年、Suki 2000年)。そのため、正常な個体では、RcollはRsawよりずっと大きく、側副流が予期される傾向はほとんどない。しかしながら、疾患においては、この限りではない(Hogg 1969年、Terry 1978年)。肺気腫においては、RsawがRcollを超えることがあり、それにより、空気は側副路を介して優先的に流れることになる。
【0046】
それゆえ、上述のモデル及び数学的関係は、側副換気が低度、中度又は高度であるという評価を下すこと、又は側副換気が臨床的閾値の上か下かという判定などの、患者の対象肺区画の側副換気の程度を示す方法を提供するために用いられることができる。いくつかの実施形態では、この方法はまた、Rcollを表わす値を生成するなど、側副換気の程度を定量化する。このような抵抗値は、その肺区画についての側副路の全体としての幾何学径を示す。層流を仮定して、ポアズイユの法則に基づくと、
であり、ここで、ηは空気の粘性率を示し、Lは側副路の長さを示し、rは側副路の半径を示す。半径の4乗に依存することは、側副通路の長さにかかわらず、幾何学的空間の指標が側副換気を支配することを可能にする。
【0047】
図12Aは、側副換気の程度を定量化する方法を生成するために用いられる2区画モデルを示し、これは、a)区域の側副流に対する抵抗Rcollを判定すること、b)区域のコンプライアンスCSの状態を判定すること、及びc)区域の過膨張の程度qSを判定することを含む。ここでも、CSは、対象の区画又は区域のコンプライアンスを特徴付ける。CLは、その肺葉の残りの部分のコンプライアンスを表わす。Rcollは、側副空気流に対する抵抗を記述する。図12Bは、電子的回路等価モデルを提供する。この例では、t=t1の時点で、およそ5〜10mlのHe(qhe)のような100%不活性ガスが注入される。ある時間の後、例えば1分後、圧力(Ps)及びHeの分率
が測定される。
【0048】
図12A〜図12Bに示されるシステムの動力学的挙動は、時定数τcollによって記述することができる。
【0049】
t1=30sの時点で、既知の一定量の不活性ガス(qhe:5〜10mlの100%He)を対象区画CSに迅速に注入し、その間、肺葉の残りの部分は閉塞されたままとし、対象区域で圧力(Ps)及びヘリウムの分率
をおよそ1分間(T=60s)にわたって測定する。図12C〜図12Eは、結果として得られた、対象区画CS及び残りの肺葉CLにおける容量、圧力及び気体濃度の時間変化を示す。式16〜21は、2つの別個の時間t1及びt2における肺の容量、圧力及び気体濃度の数学的表示を示す。
【0050】
結果として、以下の方法を区画又は区域の各々に対して独立して実行することができる。1)区域の過膨張の程度を評価する、2)区域のコンプライアンスの状態を判定する、3)区域の側副連通を算定する。
区域の過膨張
【0051】
対象区域の過膨張の程度qS(0)は、式16をqS(0)について解き、その後、式20をqS(t1)について適切に解いた後に、式20から誘導されたqS(t1)を式16にを代入することによって
として、求めることができる。
区域のコンプライアンス
【0052】
対象区域のコンプライアンスの状態CSは、単にCSについて式18を解くことによって
として求めることができる。
区域の側副抵抗
【0053】
肺における側副システム抵抗を定量的に判定するための直接的方法は、上述した。一方、以下の計算は、区域の側副抵抗を決定するための間接的方法を提供する。
【0054】
肺葉の残りの部分のコンプライアンスCLは、CLについて式19を解き、その後、CSに式23を代入することによって求めることができる。従って、
である。
【0055】
結果として、側副流/換気に対する抵抗は、式15をRcollについて解き、その後、式15に式23のCS及び式25のCLを代入することによって、
として代替的に求めることができ、ここで、Ceffは、式15で定義されるような有効コンプライアンスである。
全ての容量の相互牽制のための有用な追加的計算
【0056】
肺葉の残りの部分の過膨張の程度、従ってqL(0)は、式17をqL(0)について解き、その後、式21をqS(t2)+qL(t2)について適切に解いた後に、式17に式21から誘導されたqS(t2)+qL(t2)を代入することによって求めることができる。従って、
である。
【0057】
式26は、臨床手法の最後の時点での全ての容量の相互牽制(check and balance)のための追加的な方法を提供する。
【0058】
前述の発明は、理解を明確にするために図式及び例によって詳細に説明されているが、様々な代替、修正、及び等価物を用いることができることが明らかであり、前述の説明を、付随の特許請求の範囲によって定義される発明の範囲を制限するものと捉えるべきでないことは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1A】患者の右肺の右肺上葉を対象とするEVR手法の例を示す。
【図1B】患者の右肺の右肺上葉を対象とするEVR手法の例を示す。
【図1C】患者の右肺の右肺上葉を対象とするEVR手法の例を示す。
【図2A】右肺の例示的な側副路を概略的に示す。
【図2B】右肺の例示的な側副路を概略的に示す。
【図3A】対象区画に一定の陽圧の空気を供給する方法を概略的に示す。
【図3B】対象区域に一定の陽圧の空気を供給する方法を概略的に示す。
【図3C】対象区域に一定の陽圧の空気を供給する方法を概略的に示す。
【図4A】カテーテルが対象区画に供給する気管支に向かって進められる、最小限に侵襲的な方法の実施形態を示す。
【図4B】カテーテルが対象区画に供給する気管支に向かって進められる、最小限に侵襲的な方法の実施形態を示す。
【図4C】カテーテルが対象区画に供給する気管支に向かって進められる、最小限に侵襲的な方法の実施形態を示す。
【図4D】カテーテルが対象区画に供給する気管支に向かって進められる、最小限に侵襲的な方法の実施形態を示す。
【図5A】アキュムレータに接続されたカテーテルの実施形態を示す。
【図5B】アキュムレータに接続されたカテーテルの実施形態を示す。
【図5C】アキュムレータに接続されたカテーテルの実施形態を示す。
【図5D】アキュムレータに接続されたカテーテルの実施形態を示す。
【図6】アキュムレータに接続されたカテーテルの実施形態を示す。
【図7A】対象肺区画の単純化された側副システムの図式表示を示す。
【図7B】対象肺区画の単純化された側副システムの図式表示を示す。
【図8A】図7A‐図7Bのシステムから取得される測定値を示す。
【図8B】図7A‐図7Bのシステムから取得される測定値を示す。
【図8C】図7A‐図7Bのシステムから取得される測定値を示す。
【図9A】図7A‐図7Bのシステムを表わす回路モデルを示す。
【図9B】図7A‐図7Bのシステムを表わす回路モデルを示す。
【図9C】図7A‐図7Bのシステムを表わす回路モデルを示す。
【図10A】図7A‐図7Bのシステムから取得される測定値を示す。
【図10B】図7A‐図7Bのシステムから取得される測定値を示す。
【図11A】図7A‐図7B及び図9A図‐9Bに示される側副システムの計算モデルから得られるグラフィック比較を示す。
【図11B】図7A‐図7B及び図9A図‐9Bに示される側副システムの計算モデルから得られるグラフ比較を示す。
【図11C】図7A‐図7B及び図9A図‐9Bに示される側副システムの計算モデルから得られるグラフ比較を示す。
【図11D】図7A‐図7B及び図9A図‐9Bに示される側副システムの計算モデルから得られるグラフ比較を示す。
【図12A】側副換気の程度を定量化する方法を生成するために用いられる2区画モデルを示す。
【図12B】電気回路等価モデルを示す。
【図12C】結果として得られた、対象肺区画及び肺葉の残り部分の容量、圧力及び気体濃度における時間変化を示す。
【図12D】結果として得られた、対象肺区画及び肺葉の残り部分の容量、圧力及び気体濃度における時間変化を示す。
【図12E】結果として得られた、対象肺区画及び肺葉の残り部分の容量、圧力及び気体濃度における時間変化を示す。
【図13】側副路が存在しない場合の、隔離された区画からの測定された流量及び放出された容量を経時的に示すグラフである。
【図14】側副路が存在する場合の、隔離された区画からの空気の、測定された流量、減少した過剰容量、及び測定された側副抵抗を経時的に示すグラフである。
【図15】隔離された肺区画における側副抵抗と過剰容量の減少との間の関係を示すグラフである。
【図16】隔離された肺葉における弾性反跳圧力の変化と容量変化との間の関係を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺区画の過膨張の程度を判定するための方法であって、
前記肺区画を、該区画から放出される全ての空気がカテーテルを通過するように前記カテーテルで閉塞し、
前記区画から放出される空気の総量を、初期閉塞時から該区画から出る流れが実質的に停止するまで測定する、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記閉塞するステップが、前記肺区画に通じる気道において前記カテーテル上の閉塞構造体を拡張するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空気の総量を測定するステップが、袋内に前記空気を収集するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記空気の流れが実質的に停止する時点を判定するために、前記区画からの空気流の流量を測定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
隔離された肺区画と血液との間の気体交換を判定するための方法であって、
前記肺区画を、空気を該区画から放出することはできるが該区画の中に入れることができないカテーテルで閉塞し、
前記カテーテルを通る前記区画からの空気流が止まった後に、該区画内の気体圧力を測定し、気体圧力の変化が該肺区画における気体交換の尺度である
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記閉塞するステップが、前記肺区画に通じる気道において前記カテーテル上の閉塞構造体を拡張するステップを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カテーテルが、空気を前記区画から放出することはできるが該区画の中に入れることはできない一方向弁を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記気体圧力が前記カテーテル上の変換器で測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
肺区画に連通する側副路の方向性を判定する方法であって、
前記肺区画を、接続する気道を通って出入りする流れがないように隔離し、
前記隔離された肺区画内の圧力を複数の呼吸サイクルにわたって測定する
ステップを含み、
圧力の上昇は、前記側副路が流入より流出に対して高い抵抗を有することを示し、圧力の減少は、該側副路が流入より流出に対して低い抵抗を有することを示すことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記肺区画を隔離するステップが、該肺区画に通じる気道においてカテーテル上の閉塞構造体を拡張するステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力がカテーテル上の変換器で測定されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
肺区画内の血流を評価するための方法であって、
前記肺区画を隔離し、
血中溶解度が低く、前記肺内に放出されるマーカを体循環に注入し、
前記マーカの全身濃度が平衡に達した後に、前記肺区画における前記マーカの第1の濃度及び前記肺の別の部分における前記マーカの第2の濃度を測定し、
前記区画における前記マーカ濃度と前記肺の他の部分のマーカ濃度を比較し、気体濃度が低いほど血液潅流が少ないことを示す、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記マーカが、無呼吸中に平均肺容量で注入されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マーカが、六フッ化硫黄であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の濃度が肺の残りの部分から呼出される気体中で測定されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
肺区画のコンプライアンスを判定するための方法であって、
隔離された肺区画の特性圧力容量曲線を測定し、
前記測定された特性圧力容量曲線の傾きに基づいてコンプライアンスを判定する
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
特性圧力容量曲線を測定する前記ステップが、隔離された肺区画における圧力変化と胸腔内圧の変化との差を判定し、隔離された肺区画における対応する容量変化を測定するステップを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記隔離された肺区画の前記圧力変化が、前記肺区画に対して開口するカテーテルによって又は通じて測定されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記胸腔内圧の変化が食道バルーンカテーテルによって測定されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
気体交換を判定するための方法。
【請求項21】
気体圧力の減少が血液による酸素摂取量の尺度として検出されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項22】
気体圧力の上昇が血液からの二酸化炭素放出の尺度として検出されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項1】
肺区画の過膨張の程度を判定するための方法であって、
前記肺区画を、該区画から放出される全ての空気がカテーテルを通過するように前記カテーテルで閉塞し、
前記区画から放出される空気の総量を、初期閉塞時から該区画から出る流れが実質的に停止するまで測定する、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記閉塞するステップが、前記肺区画に通じる気道において前記カテーテル上の閉塞構造体を拡張するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空気の総量を測定するステップが、袋内に前記空気を収集するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記空気の流れが実質的に停止する時点を判定するために、前記区画からの空気流の流量を測定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
隔離された肺区画と血液との間の気体交換を判定するための方法であって、
前記肺区画を、空気を該区画から放出することはできるが該区画の中に入れることができないカテーテルで閉塞し、
前記カテーテルを通る前記区画からの空気流が止まった後に、該区画内の気体圧力を測定し、気体圧力の変化が該肺区画における気体交換の尺度である
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記閉塞するステップが、前記肺区画に通じる気道において前記カテーテル上の閉塞構造体を拡張するステップを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カテーテルが、空気を前記区画から放出することはできるが該区画の中に入れることはできない一方向弁を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記気体圧力が前記カテーテル上の変換器で測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
肺区画に連通する側副路の方向性を判定する方法であって、
前記肺区画を、接続する気道を通って出入りする流れがないように隔離し、
前記隔離された肺区画内の圧力を複数の呼吸サイクルにわたって測定する
ステップを含み、
圧力の上昇は、前記側副路が流入より流出に対して高い抵抗を有することを示し、圧力の減少は、該側副路が流入より流出に対して低い抵抗を有することを示すことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記肺区画を隔離するステップが、該肺区画に通じる気道においてカテーテル上の閉塞構造体を拡張するステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力がカテーテル上の変換器で測定されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
肺区画内の血流を評価するための方法であって、
前記肺区画を隔離し、
血中溶解度が低く、前記肺内に放出されるマーカを体循環に注入し、
前記マーカの全身濃度が平衡に達した後に、前記肺区画における前記マーカの第1の濃度及び前記肺の別の部分における前記マーカの第2の濃度を測定し、
前記区画における前記マーカ濃度と前記肺の他の部分のマーカ濃度を比較し、気体濃度が低いほど血液潅流が少ないことを示す、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記マーカが、無呼吸中に平均肺容量で注入されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マーカが、六フッ化硫黄であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の濃度が肺の残りの部分から呼出される気体中で測定されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
肺区画のコンプライアンスを判定するための方法であって、
隔離された肺区画の特性圧力容量曲線を測定し、
前記測定された特性圧力容量曲線の傾きに基づいてコンプライアンスを判定する
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
特性圧力容量曲線を測定する前記ステップが、隔離された肺区画における圧力変化と胸腔内圧の変化との差を判定し、隔離された肺区画における対応する容量変化を測定するステップを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記隔離された肺区画の前記圧力変化が、前記肺区画に対して開口するカテーテルによって又は通じて測定されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記胸腔内圧の変化が食道バルーンカテーテルによって測定されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
気体交換を判定するための方法。
【請求項21】
気体圧力の減少が血液による酸素摂取量の尺度として検出されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項22】
気体圧力の上昇が血液からの二酸化炭素放出の尺度として検出されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A−8B−8C】
【図9A−9B−9C−10A−10B】
【図11A−11B】
【図11C−11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C−12D−12E】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A−8B−8C】
【図9A−9B−9C−10A−10B】
【図11A−11B】
【図11C−11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C−12D−12E】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2009−501568(P2009−501568A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521660(P2008−521660)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/027478
【国際公開番号】WO2007/009086
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(507160458)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/027478
【国際公開番号】WO2007/009086
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(507160458)
【Fターム(参考)】
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