肺拡散能(DLco)測定装置
【課題】軽量小型かつ動作が確実な肺拡散能(DLco)測定装置を得る。
【解決手段】本発明による肺の拡散能(DLco)を測定する装置は、患者に対しDLco検査ガス2を制御して供給するのに使用する、電気機械的に作動する弁装置17を取り付けた主流超音波フローおよびモル質量センサ8と、肺胞容量の決定に必要なトレーサーガス濃度の算定に使用する副流モル質量センサ26と、および副流COセンサ27と、を備える。主流モル質量センサ8、または副流モル質量センサ26によってHe濃度を測定する。CO濃度は、副流COセンサ27によって測定する。肺胞容積およびCO拡散は、吸気から呼気にわたるHeおよびCO濃度の減少を測定することによって決定する。
【解決手段】本発明による肺の拡散能(DLco)を測定する装置は、患者に対しDLco検査ガス2を制御して供給するのに使用する、電気機械的に作動する弁装置17を取り付けた主流超音波フローおよびモル質量センサ8と、肺胞容量の決定に必要なトレーサーガス濃度の算定に使用する副流モル質量センサ26と、および副流COセンサ27と、を備える。主流モル質量センサ8、または副流モル質量センサ26によってHe濃度を測定する。CO濃度は、副流COセンサ27によって測定する。肺胞容積およびCO拡散は、吸気から呼気にわたるHeおよびCO濃度の減少を測定することによって決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺の拡散能(DLco)を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DLcoの測定は、大部分の肺機能検査所で一般的に実施されている。DLcoはガスの血液内への拡散率(速度)を量表示したものである。酸素の拡散率は直接測定できないため、一酸化炭素(CO)を使用する。DLco測定を行うために2種類のガスの混合気を使用する。第1検査ガス(CO)により拡散率を測定する。第2検査ガスにより肺胞容積を測定する。この目的のため、数種類の不活性ガスを使用することができる。多くの事例ではヘリウム(He)あるいはCH4 を用いる。1回呼吸DLco検査の手順は、米国胸部疾患協会により標準化されているが、これによれば患者は検査ガスの最大吸気を行う必要がある。一般的に用いられる検査ガス混合気は、N2 中に0.3%CO、10%He、21%O2 を含んでいる。COは有毒であるため、COレベルは極めて低くなければならない。最大吸気の後、患者は約10秒間、息を止めなければならない。この間にCOは血中に拡散し、不活性ガス(例えばHe)は肺内で平衡状態に達する。息を止めるブレスホールドに続いて急速な呼気を行う。この呼気の間にHeとCOの濃度を測定する。ヘリウム濃度測定は肺胞容積の算定に使用する。CO濃度は拡散の量表示に使用する。吸気量・呼気量は適切なフローセンサあるいは容積スパイロメータによって測定する。
【0003】
特許文献1は、肺活量計、とくに、超音波肺活量計について記載している。
特許文献2は、ガスおよびガス混合気のモル質量を決定する方法および装置について記載している。
非特許文献1は、脈動超音波エアフローメーターの設計および構造について記載している。
非特許文献2は、超音波呼吸分析について記載している。
非特許文献3は、1回呼吸一酸化炭素拡散能検査のための標準技術に対する提案を記載している。
【特許文献1】欧州特許第597060号明細書
【特許文献2】欧州特許第653919号明細書
【非特許文献1】Ch. Buess, R. Pietsch, W. Guggenbuhl, E.A.Koller, Design and construction of a pulsed ultrasonic air flowmeter, IEEE Trans. Biomed. Eng.,33(8): 768-774, August 1986
【非特許文献2】Ch. Buess, R. Burger, W. Guggenbuhl, Ultrasonic respiration analysis. In IEEE/EMBS 13th Annual Conference, pages 1597-1598, November 1991
【非特許文献3】Single-breath carbon monoxide diffusing capacity (Transfer Factor). Recommendations for a standard technique-1995 Update. Am J Resprire Crit Care Med, Vol 152, pp.2185-2198, 1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在使用されているほとんどの機器は比較的大型で、定期的にすべてのセンサを較正する必要がある。DLcoを測定するためには、以下のセンサが利用可能でなければならない、すなわち、吸気・呼気量測定のためのフローセンサもしくは容積スパイロメータ、COセンサ、および不活性ガスセンサ(例えばヘリウムセンサ)が利用可能でなければならない。通常、ガスセンサは、副流装置内に設置されているが、そこには本流からの検査ガスの僅かな部分が流れ込んで副流ガスセンサに供給される。これらのガスセンサは通常定期的に較正する必要があるが、それぞれの測定あるいは一連の測定の前に自動的に較正を行うシステムもある。
【0005】
DLcoガス供給のための弁装置は、検査装置におけるさらなる重要な構成要素である。弁装置は以下の操作を実行しなければならない。すなわち、1)検査の開始時に、患者が自由に呼吸できるようにする、2)明確に規定された吸気時点で、即座にDLcoガス混合気に切り替える、3)息止め(ブレスホールド)期中は吸気・呼気を禁止する、4)息止め期が過ぎたら弁を開いて自由に呼気できるようにする。現行のシステムでは、異なる多様なタイプの弁装置を使用しているが、ほとんどのシステムは、空気圧で制御する弁、いわゆる「バルーンバルブ」、「クッションバルブ」に基づくものを使用している。
【0006】
本発明の課題は、軽量小型かつ動作が確実な肺拡散能(DLco)測定装置を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明肺拡散能測定装置は、患者に対しDLco検査ガスを制御して供給するのに使用する、電気機械的に作動する弁装置を取り付けた主流超音波フローおよびモル質量センサと、肺胞容量の決定に必要なトレーサーガス濃度の算定に使用する副流モル質量センサと、および副流COセンサと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
以下、図面につき本発明の好適な実施例を説明する。
図1はDLco測定装置の線図的説明図を示す。この説明図の上部には、電気機械的に動作する弁装置を有するフローセンサを示す。データ取得および制御機構を下部に示す。
【0009】
このDLco測定装置は、上記特許文献1,2および非特許文献1,2に詳細に記載されている超音波フローセンサに基づいている。フローセンサは、人間工学的な取手7と、超音波変換器のエンクロージャ8と、フローチューブホルダ6と、マウスピース付きの交換可能なフローチューブ5から成る。フローセンサの頂部において、電動モータ11を、適切なハウジング10内に取り付ける。モータの軸12は、左側に示した弁装置から容易にかつ機械的に分離できるよう構成する。軸12を介してモータは、弁装置をフローチューブ9の端部に対して接近または離間移動する摺動(スライド)機構を作動させることができる。摺動機構の「閉鎖」位置では、部分19(軟質ゴム、例えばシリコーンで形成する)はフローチューブの端部に直接接触する。部分18は、一方向弁17、およびフローチューブに接触する部分19のためのホルダである。一方向弁は軟質ゴムの円盤で形成する。部分17、18、19の組立体は弁装置から簡単に取り外すことができる。したがって、患者の呼気に直接触れるこれら部分の交換やクリーニングが容易となる。部分16は、撓むことができるが、移動する一方向弁に対するDLcoガス供給源の接続を気密にする。DLcoガスは、弁装置に接続する標準的な可撓ホース15によって供給する。DLcoガス供給ホース内で、他の小径のチューブ14を、可撓部分13を介してフローチューブ9の端部の中心に位置する先端部20に接続する。先端部20を介して、ガスを、制御装置内の副流ガスアナライザに供給する。チューブ14は、通常のプラスチックチューブ、または水蒸気を平衡化する特殊なチューブで形成することができる。
【0010】
図2は、弁装置の「開放」位置および「閉鎖」位置を示す。
【0011】
フローセンサおよび弁組立体よりなる装置全体は軽量で、患者によって保持され、あるいは代わりに適切なスタンドに取り付けることができる。DLco検査ガス2は、ホース15を介して装置に供給する。副流ガス3は小さいチューブ14を介してアナライザに供給する;センサは、ケーブル4を介して制御装置に接続し、このケーブル4は、フローセンサおよび弁装置の双方を制御するのに必要なすべての電力ラインおよび信号ラインを含む。
【0012】
図1の下部に示す制御装置は、DLco検査ガスを患者に供給する供給(デマンド)弁22と、空気圧サブシステム24と、フローチューブの端部で得たガスサンプルを分析する副流ガスアナライザサブシステム25と、、および制御ユニット23とにより構成する。制御ユニット23は、空気圧サブシステム24、副流ガスアナライザサブシステム25、および弁を一体に設けたフローセンサ(図の上部に示す)に接続する。制御ユニットは、弁を作動させ、また副流ガスアナライザ装置のポンプを制御しており、超音波フローおよびモル質量センサからデータを抽出(サンプリング)し、また副流ガスアナライザ装置からのデータを制御しまた抽出(サンプリング)する。この制御装置は、インタフェース28を介して評価ユニット(例えばPC)とのやりとりを行う。DLcoガスを流入ポート26に供給し、副流ガスは流出ポート27を介して排出する。
【0013】
弁装置のポート20で抽出(サンプリング)したガスは、チューブ13,14を介して副流フローおよびモル質量センサ26、次いで副流COセンサ27に送給し、最終的に、副流フローを駆動するのにポンプを使用した空気圧サブシステム24に送給する。
【0014】
副流COセンサシステムは、COセンサのO2 および/またはCO2 に対する横感度を補正するために、O2 および/またはCO2 センサを付加的に含んでもよい。CO2 センサは、ヘリウム濃度算定に使用するモル質量測定の際に、CO2の影響を補正するために使用することもできる。主流および副流の両フローならびにモル質量センサにおけるガスフローは、以下の式[数1]を使用して算定する。
【数1】
【0015】
ただし、Fはガスフローの速度であり、t1およびt2は、それぞれ上流および下流方向の移行時間を表し、kはフローセンサの機械的寸法に依存する定数である。
【0016】
モル質量は以下の式[数2]で算出される:
【数2】
【0017】
ただし、Mはモル質量、Tは音伝達経路に沿う平均温度、Rは気体(ガス)定数、κは気体(ガス)の比熱(Cp/Cv)の係数、kはセンサの機械的寸法に依存する定数、そしてt1 ,t2 は移行時間を表す(特許文献2参照)。温度Tは、音伝達経路に沿う1回または数回の温度測定によって決定でき;温度Tは、温度測定と数学的モデルを組合せることにより決定でき;あるいは温度Tは、定数値に設定されることができる(例えば摂氏零度に)。
【0018】
その作動原理によれば、超音波フローセンサのフロー信号およびモル質量信号は時間的に整列させる。主流フロー測定と副流モル質量測定の時間的整列(アラインメント)を行うためには、米国特許出願第60/717700号明細書に記載した技術を適用することができる。
【0019】
DLcoの測定を行うためには、以下の手順を実行する:検査に先立ち、ホース15をDLco検査ガスでフラッシュ洗浄する。弁装置は患者が室内の空気を呼吸できる「開放」位置にセットする。患者は深い呼気の吐き出しすなわち、呼出(こしゅつ)を行う。呼出の終了時に、弁装置が閉鎖する。患者は、DLco検査ガスの迅速な深い吸気を行う。患者は10秒間息を止める(ブレスホールド)。弁装置は「閉鎖」位置にあるので、患者は息を止めているブレスホールド中は呼出できない。10秒間のブレスホールド終了時に弁装置を開き、患者が呼出できるようにする。検査全体にわたって、ガスはポート20で抽出(サンプリング)され、副流ガスセンサおよびモル質量センサに送給される。10秒間息を止めているブレスホールド期間中は、ガスのサンプリングを一時的に停止することができる。
【0020】
DLco値の計算するために、以下のパラメータを計算する:
1.吸気・呼気量は、超音波フローセンサのフロー信号から時間軸に関してフローを積分することで決定する。
2.息を止めるブレスホールド後の呼気中に含まれるCOガス濃度は、COセンサによって決定する。COセンサは、吸入する室内空気(0%CO)、および検査の開始時における吸気で得られるDLcoガス混合気によって較正することができる。さらに、COセンサは、付加的に設けたO2ガスセンサの信号を使用してO2 横感度を修正することができる。
3.息を止めるブレスホールド後の呼気中ヘリウム濃度は、副流超音波モル質量センサによって決定する。モル質量はヘリウム濃度を直接的には決定しないので、数学的モデルおよび/または付加的に設けたO2 および/またはCO2 副流センサの測定値を使用して、他のガス成分の影響を考慮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるDLco測定装置の線図的説明図である。
【図2】図1に示すDLco測定装置における弁装置の「開放」位置および「閉鎖」位置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
2 DLco検査ガス
3 副流ガス
4 ケーブル
5 フローチューブ
6 フローチューブホルダ
7 取手
8 エンクロージャ
9 フローチューブ
10 ハウジング
11 電動モータ
12 モータの軸
13 可撓部分
14 小径のチューブ
15 可撓ホース
16 可撓部分
17 一方向弁
18 ホルダ
19 フローチューブ接触部分
20 チューブの先端部
22 供給(デマンド)弁
23 制御ユニット
24 空気圧サブシステム
25 副流ガスアナライザサブシステム
26 副流フローおよびモ
ル質量センサ
27 副流COセンサ
28 インタフェース
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺の拡散能(DLco)を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DLcoの測定は、大部分の肺機能検査所で一般的に実施されている。DLcoはガスの血液内への拡散率(速度)を量表示したものである。酸素の拡散率は直接測定できないため、一酸化炭素(CO)を使用する。DLco測定を行うために2種類のガスの混合気を使用する。第1検査ガス(CO)により拡散率を測定する。第2検査ガスにより肺胞容積を測定する。この目的のため、数種類の不活性ガスを使用することができる。多くの事例ではヘリウム(He)あるいはCH4 を用いる。1回呼吸DLco検査の手順は、米国胸部疾患協会により標準化されているが、これによれば患者は検査ガスの最大吸気を行う必要がある。一般的に用いられる検査ガス混合気は、N2 中に0.3%CO、10%He、21%O2 を含んでいる。COは有毒であるため、COレベルは極めて低くなければならない。最大吸気の後、患者は約10秒間、息を止めなければならない。この間にCOは血中に拡散し、不活性ガス(例えばHe)は肺内で平衡状態に達する。息を止めるブレスホールドに続いて急速な呼気を行う。この呼気の間にHeとCOの濃度を測定する。ヘリウム濃度測定は肺胞容積の算定に使用する。CO濃度は拡散の量表示に使用する。吸気量・呼気量は適切なフローセンサあるいは容積スパイロメータによって測定する。
【0003】
特許文献1は、肺活量計、とくに、超音波肺活量計について記載している。
特許文献2は、ガスおよびガス混合気のモル質量を決定する方法および装置について記載している。
非特許文献1は、脈動超音波エアフローメーターの設計および構造について記載している。
非特許文献2は、超音波呼吸分析について記載している。
非特許文献3は、1回呼吸一酸化炭素拡散能検査のための標準技術に対する提案を記載している。
【特許文献1】欧州特許第597060号明細書
【特許文献2】欧州特許第653919号明細書
【非特許文献1】Ch. Buess, R. Pietsch, W. Guggenbuhl, E.A.Koller, Design and construction of a pulsed ultrasonic air flowmeter, IEEE Trans. Biomed. Eng.,33(8): 768-774, August 1986
【非特許文献2】Ch. Buess, R. Burger, W. Guggenbuhl, Ultrasonic respiration analysis. In IEEE/EMBS 13th Annual Conference, pages 1597-1598, November 1991
【非特許文献3】Single-breath carbon monoxide diffusing capacity (Transfer Factor). Recommendations for a standard technique-1995 Update. Am J Resprire Crit Care Med, Vol 152, pp.2185-2198, 1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在使用されているほとんどの機器は比較的大型で、定期的にすべてのセンサを較正する必要がある。DLcoを測定するためには、以下のセンサが利用可能でなければならない、すなわち、吸気・呼気量測定のためのフローセンサもしくは容積スパイロメータ、COセンサ、および不活性ガスセンサ(例えばヘリウムセンサ)が利用可能でなければならない。通常、ガスセンサは、副流装置内に設置されているが、そこには本流からの検査ガスの僅かな部分が流れ込んで副流ガスセンサに供給される。これらのガスセンサは通常定期的に較正する必要があるが、それぞれの測定あるいは一連の測定の前に自動的に較正を行うシステムもある。
【0005】
DLcoガス供給のための弁装置は、検査装置におけるさらなる重要な構成要素である。弁装置は以下の操作を実行しなければならない。すなわち、1)検査の開始時に、患者が自由に呼吸できるようにする、2)明確に規定された吸気時点で、即座にDLcoガス混合気に切り替える、3)息止め(ブレスホールド)期中は吸気・呼気を禁止する、4)息止め期が過ぎたら弁を開いて自由に呼気できるようにする。現行のシステムでは、異なる多様なタイプの弁装置を使用しているが、ほとんどのシステムは、空気圧で制御する弁、いわゆる「バルーンバルブ」、「クッションバルブ」に基づくものを使用している。
【0006】
本発明の課題は、軽量小型かつ動作が確実な肺拡散能(DLco)測定装置を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明肺拡散能測定装置は、患者に対しDLco検査ガスを制御して供給するのに使用する、電気機械的に作動する弁装置を取り付けた主流超音波フローおよびモル質量センサと、肺胞容量の決定に必要なトレーサーガス濃度の算定に使用する副流モル質量センサと、および副流COセンサと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
以下、図面につき本発明の好適な実施例を説明する。
図1はDLco測定装置の線図的説明図を示す。この説明図の上部には、電気機械的に動作する弁装置を有するフローセンサを示す。データ取得および制御機構を下部に示す。
【0009】
このDLco測定装置は、上記特許文献1,2および非特許文献1,2に詳細に記載されている超音波フローセンサに基づいている。フローセンサは、人間工学的な取手7と、超音波変換器のエンクロージャ8と、フローチューブホルダ6と、マウスピース付きの交換可能なフローチューブ5から成る。フローセンサの頂部において、電動モータ11を、適切なハウジング10内に取り付ける。モータの軸12は、左側に示した弁装置から容易にかつ機械的に分離できるよう構成する。軸12を介してモータは、弁装置をフローチューブ9の端部に対して接近または離間移動する摺動(スライド)機構を作動させることができる。摺動機構の「閉鎖」位置では、部分19(軟質ゴム、例えばシリコーンで形成する)はフローチューブの端部に直接接触する。部分18は、一方向弁17、およびフローチューブに接触する部分19のためのホルダである。一方向弁は軟質ゴムの円盤で形成する。部分17、18、19の組立体は弁装置から簡単に取り外すことができる。したがって、患者の呼気に直接触れるこれら部分の交換やクリーニングが容易となる。部分16は、撓むことができるが、移動する一方向弁に対するDLcoガス供給源の接続を気密にする。DLcoガスは、弁装置に接続する標準的な可撓ホース15によって供給する。DLcoガス供給ホース内で、他の小径のチューブ14を、可撓部分13を介してフローチューブ9の端部の中心に位置する先端部20に接続する。先端部20を介して、ガスを、制御装置内の副流ガスアナライザに供給する。チューブ14は、通常のプラスチックチューブ、または水蒸気を平衡化する特殊なチューブで形成することができる。
【0010】
図2は、弁装置の「開放」位置および「閉鎖」位置を示す。
【0011】
フローセンサおよび弁組立体よりなる装置全体は軽量で、患者によって保持され、あるいは代わりに適切なスタンドに取り付けることができる。DLco検査ガス2は、ホース15を介して装置に供給する。副流ガス3は小さいチューブ14を介してアナライザに供給する;センサは、ケーブル4を介して制御装置に接続し、このケーブル4は、フローセンサおよび弁装置の双方を制御するのに必要なすべての電力ラインおよび信号ラインを含む。
【0012】
図1の下部に示す制御装置は、DLco検査ガスを患者に供給する供給(デマンド)弁22と、空気圧サブシステム24と、フローチューブの端部で得たガスサンプルを分析する副流ガスアナライザサブシステム25と、、および制御ユニット23とにより構成する。制御ユニット23は、空気圧サブシステム24、副流ガスアナライザサブシステム25、および弁を一体に設けたフローセンサ(図の上部に示す)に接続する。制御ユニットは、弁を作動させ、また副流ガスアナライザ装置のポンプを制御しており、超音波フローおよびモル質量センサからデータを抽出(サンプリング)し、また副流ガスアナライザ装置からのデータを制御しまた抽出(サンプリング)する。この制御装置は、インタフェース28を介して評価ユニット(例えばPC)とのやりとりを行う。DLcoガスを流入ポート26に供給し、副流ガスは流出ポート27を介して排出する。
【0013】
弁装置のポート20で抽出(サンプリング)したガスは、チューブ13,14を介して副流フローおよびモル質量センサ26、次いで副流COセンサ27に送給し、最終的に、副流フローを駆動するのにポンプを使用した空気圧サブシステム24に送給する。
【0014】
副流COセンサシステムは、COセンサのO2 および/またはCO2 に対する横感度を補正するために、O2 および/またはCO2 センサを付加的に含んでもよい。CO2 センサは、ヘリウム濃度算定に使用するモル質量測定の際に、CO2の影響を補正するために使用することもできる。主流および副流の両フローならびにモル質量センサにおけるガスフローは、以下の式[数1]を使用して算定する。
【数1】
【0015】
ただし、Fはガスフローの速度であり、t1およびt2は、それぞれ上流および下流方向の移行時間を表し、kはフローセンサの機械的寸法に依存する定数である。
【0016】
モル質量は以下の式[数2]で算出される:
【数2】
【0017】
ただし、Mはモル質量、Tは音伝達経路に沿う平均温度、Rは気体(ガス)定数、κは気体(ガス)の比熱(Cp/Cv)の係数、kはセンサの機械的寸法に依存する定数、そしてt1 ,t2 は移行時間を表す(特許文献2参照)。温度Tは、音伝達経路に沿う1回または数回の温度測定によって決定でき;温度Tは、温度測定と数学的モデルを組合せることにより決定でき;あるいは温度Tは、定数値に設定されることができる(例えば摂氏零度に)。
【0018】
その作動原理によれば、超音波フローセンサのフロー信号およびモル質量信号は時間的に整列させる。主流フロー測定と副流モル質量測定の時間的整列(アラインメント)を行うためには、米国特許出願第60/717700号明細書に記載した技術を適用することができる。
【0019】
DLcoの測定を行うためには、以下の手順を実行する:検査に先立ち、ホース15をDLco検査ガスでフラッシュ洗浄する。弁装置は患者が室内の空気を呼吸できる「開放」位置にセットする。患者は深い呼気の吐き出しすなわち、呼出(こしゅつ)を行う。呼出の終了時に、弁装置が閉鎖する。患者は、DLco検査ガスの迅速な深い吸気を行う。患者は10秒間息を止める(ブレスホールド)。弁装置は「閉鎖」位置にあるので、患者は息を止めているブレスホールド中は呼出できない。10秒間のブレスホールド終了時に弁装置を開き、患者が呼出できるようにする。検査全体にわたって、ガスはポート20で抽出(サンプリング)され、副流ガスセンサおよびモル質量センサに送給される。10秒間息を止めているブレスホールド期間中は、ガスのサンプリングを一時的に停止することができる。
【0020】
DLco値の計算するために、以下のパラメータを計算する:
1.吸気・呼気量は、超音波フローセンサのフロー信号から時間軸に関してフローを積分することで決定する。
2.息を止めるブレスホールド後の呼気中に含まれるCOガス濃度は、COセンサによって決定する。COセンサは、吸入する室内空気(0%CO)、および検査の開始時における吸気で得られるDLcoガス混合気によって較正することができる。さらに、COセンサは、付加的に設けたO2ガスセンサの信号を使用してO2 横感度を修正することができる。
3.息を止めるブレスホールド後の呼気中ヘリウム濃度は、副流超音波モル質量センサによって決定する。モル質量はヘリウム濃度を直接的には決定しないので、数学的モデルおよび/または付加的に設けたO2 および/またはCO2 副流センサの測定値を使用して、他のガス成分の影響を考慮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるDLco測定装置の線図的説明図である。
【図2】図1に示すDLco測定装置における弁装置の「開放」位置および「閉鎖」位置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
2 DLco検査ガス
3 副流ガス
4 ケーブル
5 フローチューブ
6 フローチューブホルダ
7 取手
8 エンクロージャ
9 フローチューブ
10 ハウジング
11 電動モータ
12 モータの軸
13 可撓部分
14 小径のチューブ
15 可撓ホース
16 可撓部分
17 一方向弁
18 ホルダ
19 フローチューブ接触部分
20 チューブの先端部
22 供給(デマンド)弁
23 制御ユニット
24 空気圧サブシステム
25 副流ガスアナライザサブシステム
26 副流フローおよびモ
ル質量センサ
27 副流COセンサ
28 インタフェース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺の拡散能(DLco)を測定する装置において、患者に対しDLco検査ガスを制御して供給するのに使用する、電気機械的に作動する弁装置を取り付けた主流超音波フローおよびモル質量センサと、肺胞容量の決定に必要なトレーサーガス濃度の算定に使用する副流モル質量センサと、および副流COセンサと、を備えたことを特徴とする肺拡散能測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、患者の呼気に直接触れる装置のすべての部分、例えばフローチューブ、DLco検査ガスを送給する一方向弁を、廃棄処分あるいはクリーニングの目的で容易に交換できるようにした装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、ガスサンプリングポートおよびDLcoガス送給のための一方向弁装置を、単独の簡易に交換できる部分で構成した装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、主流フロー信号と、副流モル質量信号および副流ガスセンサ信号のうち少なくとも一方の信号と、の間に生ずる時間の遅延を、これら各種信号の主流モル質量測定値に対する相関関係によって決定する装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、付加的に設けた副流O2センサおよび/または副流CO2 センサを使用して、COセンサに存在する可能性のあるO2 および/またはCO2 に対する横感度を修正する装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、COセンサおよび随意に設けたO2 センサのうち少なくとも一方は、酸化ジルコニウム測定技術に基づくものとした装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、患者間の相互感染を完全に防ぐために細菌フィルタをフローチューブの前部に取り付けた装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、弁装置を通して適切な機能的残気量(FRC)検査ガス混合気を吸気し、かつ副流モル質量センサを用いたトレーサーガス濃度測定によりFRCを計算することによって、一回呼吸FRC測定に使用する装置。
【請求項9】
請求項7に記載の装置において、可動弁組立体に付加的な一方向弁を追加して設け、患者が通常の一方向弁を経て機能的残気量(FRC)検査ガス混合気を吸気できるようにし、および付加的な一方向弁を経て呼気させ、また、副流モル質量センサを使用してFRCの計算に必要なトレーサーガス濃度を決定することによって、複数回呼吸FRCの測定に付加的に使用する装置。
【請求項1】
肺の拡散能(DLco)を測定する装置において、患者に対しDLco検査ガスを制御して供給するのに使用する、電気機械的に作動する弁装置を取り付けた主流超音波フローおよびモル質量センサと、肺胞容量の決定に必要なトレーサーガス濃度の算定に使用する副流モル質量センサと、および副流COセンサと、を備えたことを特徴とする肺拡散能測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、患者の呼気に直接触れる装置のすべての部分、例えばフローチューブ、DLco検査ガスを送給する一方向弁を、廃棄処分あるいはクリーニングの目的で容易に交換できるようにした装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、ガスサンプリングポートおよびDLcoガス送給のための一方向弁装置を、単独の簡易に交換できる部分で構成した装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、主流フロー信号と、副流モル質量信号および副流ガスセンサ信号のうち少なくとも一方の信号と、の間に生ずる時間の遅延を、これら各種信号の主流モル質量測定値に対する相関関係によって決定する装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、付加的に設けた副流O2センサおよび/または副流CO2 センサを使用して、COセンサに存在する可能性のあるO2 および/またはCO2 に対する横感度を修正する装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、COセンサおよび随意に設けたO2 センサのうち少なくとも一方は、酸化ジルコニウム測定技術に基づくものとした装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、患者間の相互感染を完全に防ぐために細菌フィルタをフローチューブの前部に取り付けた装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、弁装置を通して適切な機能的残気量(FRC)検査ガス混合気を吸気し、かつ副流モル質量センサを用いたトレーサーガス濃度測定によりFRCを計算することによって、一回呼吸FRC測定に使用する装置。
【請求項9】
請求項7に記載の装置において、可動弁組立体に付加的な一方向弁を追加して設け、患者が通常の一方向弁を経て機能的残気量(FRC)検査ガス混合気を吸気できるようにし、および付加的な一方向弁を経て呼気させ、また、副流モル質量センサを使用してFRCの計算に必要なトレーサーガス濃度を決定することによって、複数回呼吸FRCの測定に付加的に使用する装置。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2007−83033(P2007−83033A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−248472(P2006−248472)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(506310197)エンデーデー メディツィンテヒニーク アーゲー (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248472(P2006−248472)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(506310197)エンデーデー メディツィンテヒニーク アーゲー (2)
【Fターム(参考)】
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