説明

肺炎マイコプラズマの増幅および検出

【課題】オリゴヌクレオチドを使用して、肺炎マイコプラズマの核酸を検出および同定する方法も提供する。
【解決手段】ORF6LP1、ORF6LP2、ORF6LeftPCR、ORF6RP1、ORF6RP2、およびORF6RightPCRのターゲット結合配列からなる群から選択されたターゲット結合配列と、任意選択の増幅反応に必要な配列とからなるオリゴヌクレオチドを使用して肺炎マイコプラズマの核酸を検出および同定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器サンプルもしくは他の患者検体、または培養物サンプル中の肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)の有無を判定する方法に関する。この方法は、好ましくは、鎖置換増幅(SDA)、好熱性鎖置換増幅(tSDA)、または蛍光実時間tSDAのうちの1つの技術を使用し、核酸プライマ−を用いて、ORF6遺伝子内のターゲット配列を特異的に増幅させるものである。
【背景技術】
【0002】
肺炎マイコプラズマは、大部分がヒトの気道にいる病原であり、気管支炎、咽頭炎、および非定型肺炎を引き起こし得る。この細菌は、年長児童および若年成人に最もよく感染する。肺炎マイコプラズマを診断するための標準的臨床検査法には、培養法および血清学的方法が含まれる。両方の方法は欠点を有し、肺炎マイコプラズマは選好性であり、培養に1〜3週間を要する一方で、血清学的方法は感度が鈍く、非特異的である。肺炎マイコプラズマを検出するための核酸増幅法は、速さと感度および特異性の向上という利点をもたらす可能性を秘めている。
【0003】
非特許文献1に記載されているような物理的地図の作成、および非特許文献2に記載されているような完全なゲノムの配列決定が、肺炎マイコプラズマについて行われている。肺炎マイコプラズマの宿主細胞への接着に数種のマイコプラズマ膜タンパク質が関与することは知られている。これらには、P1、HMW1、およびHMW3タンパク質、ならびにORF6遺伝子の40kDaおよび90kDaの発現産物が含まれ、これらのすべてが互いに会合して膜貫通型のタンパク質複合体になっている(非特許文献3、4、5、6)。ORF6遺伝子は、P1接着タンパク質遺伝子の両側に位置する2つのオープンリーディングフレームの一方である。肺炎マイコプラズマゲノムのこの領域については、ORF4−ORF5/P1−ORF6の順をなすオペロン様機構が提唱されている(非特許文献7)。3950bpのORF6遺伝子は、肺炎マイコプラズマゲノム全体で合計8回繰り返される1900bpの反復性要素(RepMP5)を含んでいる(非特許文献8)。ORF6遺伝子はこの生物において重要であるので、肺炎マイコプラズマの病原性に特異的な診断用試験を開発するために潜在的に有用なターゲットになる。またこのようなアッセイ用のターゲットとしてORF6遺伝子内のRepMP5要素を選択することにも、肺炎マイコプラズマゲノム内の一つの複製配列をターゲットにして実現できるものより感度を高められるという利点を有する。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,547,861号
【特許文献2】米国特許第5,648,211号
【特許文献3】米国特許第5,846,726号
【特許文献4】米国特許第5,919,630号
【特許文献5】米国特許第5,928,869号
【特許文献6】米国特許第5,958,700号
【特許文献7】米国特許第5,935,791号
【特許文献8】米国特許第6,054,279号
【特許文献9】米国特許第6,130,047号
【特許文献10】米国特許出願第09/590,061号
【特許文献11】米国特許出願第09/602,996号
【特許文献12】EP0 678 582
【特許文献13】米国特許第5,470,723号
【特許文献14】米国特許出願第09/626,855号
【特許文献15】米国特許出願第09/626,354号
【特許文献16】米国特許出願第09/708,208号
【特許文献17】EP0 684 315
【特許文献18】米国特許出願第09/573,242号
【特許文献19】EP0 624 643
【特許文献20】米国特許第5,270,184号
【特許文献21】ヨーロッパ特許出願公開番号0 869 187 A2
【特許文献22】米国特許第5,928,907号
【特許文献23】米国特許出願第09/196,123号
【特許文献24】米国特許出願第09/574,031号
【非特許文献1】Wenzel, et al., 1988, Nucl. Acids Res. 16: 8323-8336
【非特許文献2】Himmelreich, et al., 1996, Nucl. Acids Res. 24: 4420-4449
【非特許文献3】Sperker, et al., 1991, Mol. Microbiol. 5: 299-306
【非特許文献4】Layh-Schmitt, 1993, Zentralbl Bakteriol 278: 287-295
【非特許文献5】Layh-Schmitt, et al., 1999, FEMS Microbiol. Lett. 174: 143-149
【非特許文献6】Layh-Schmitt, et al., 2000, Microbiol. 146: 741-747
【非特許文献7】Su, et al., 1987, Infect. Immun. 55: 3023-3029
【非特許文献8】Ruland, et al., 1994, J. Bacteriol. 176: 5202-5209
【非特許文献9】G. Walker, et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:392-396
【非特許文献10】G. Walker, et al., 1992, Nucl. Acids Res. 20:1691-1696
【非特許文献11】1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2267-2268
【非特許文献12】1990, J. Mol. Biol. 215:403-410
【非特許文献13】1993, Nature Genetics 3:266-272
【非特許文献14】1997, Nuc. Acids Res. 25:3389-3402
【非特許文献15】1992, Science 256:1443-1445; 1993, Proteins 17:49-61
【非特許文献16】1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2267-2268
【発明の開示】
【0005】
核酸の増幅は、特定のターゲット配列の迅速な検出を可能にする有力な技術であり、したがって、肺炎マイコプラズマを迅速に検出し、同定するための有望な技術である。本発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、核酸の増幅および肺炎マイコプラズマの検出に適用できる。
【0006】
本明細書では次のように以下の用語を定義する。増幅プライマーとは、ターゲット配列とのハイブリダイゼーション後にプライマーを伸長させることによってターゲット配列を増幅するためのプライマーである。増幅プライマーとは、通常約10〜75ヌクレオチド長、好ましくは約15〜50ヌクレオチド長である。SDA用増幅プライマーの全長は、通常約25〜50ヌクレオチドである。SDA増幅プライマー(ターゲット結合配列)の3’末端が、ターゲット配列の3’末端でハイブリダイズされる。ターゲット結合配列とは、約10〜25ヌクレオチド長であり、増幅プライマーにハイブリダイゼーション特異性を与える。SDA増幅プライマーは、ターゲット結合配列の5’側に制限エンドヌクレアーゼに対する認識部位をさらに含む。非特許文献9および非特許文献10に記載されているように、この認識部位は、この認識部位が半修飾(hemimodify)されている場合にDNA二鎖の一本鎖にニックを入れる制限エンドヌクレアーゼに対するものである。制限エンドヌクレアーゼ認識部位の5’側のヌクレオチド(「テール」)は、SDAの際に増幅プライマーの残りにニックが入り、入れ替えられるときにポリメラーゼ再プライミング(repriming)部位として機能する。テールヌクレオチドのこの再プライム機能は、SDA反応を維持し、一つのターゲット分子からの多数のアンプリコンの合成を可能にする。テールは、通常約約10〜25ヌクレオチド長である。その長さおよび配列は、遺伝的には重要ではなく、ごく普通に選択し、改変することができる。ターゲットの末端に特殊配列を必要としない増幅方法では、ターゲット結合配列は、そのターゲット特異性を決定するプライマー部分であるので、増幅プライマーは一般に、本質的にターゲット結合配列からなる。たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する本発明によるターゲット配列の増幅では、ここで述べた増幅プライマーのターゲット結合配列からなる増幅プライマーを使用する。ニッキング可能な制限エンドヌクレアーゼ部位およびSDAテールのほかに、ターゲットに付加されている特殊配列を必要とする増幅方法(たとえば、自己持続型配列複製(Self−Sustained Sequence Replication、3SR)、核酸配列に基づく増幅(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification、NASBA)、転写に基づく増幅系(Transcription−Based Amplification System、TAS)、またはローリングサークル増幅(Rolling Circle Amplification、RCA)用のRNAポリメラーゼプロモーター)では、プライマーのハイブリダイゼーション特異性を変更せずにオリゴヌクレオチドを調製する慣例の方法を使用して、必要となる特殊配列をターゲット結合配列に連結すればよい。
【0007】
バンパープライマーまたは外部プライマーとは、等温増幅反応でプライマー伸長産物を置換するのに使用されるプライマーである。バンパープライマーは増幅プライマーより上流でターゲット配列にアニールして、バンパープライマーの伸張が下流の増幅プライマーおよびその伸長産物に置き換わるようにする。
【0008】
用語「ターゲット」または「ターゲット配列」とは、増幅しようとする核酸配列を指す。このような用語には、増幅しようとする元の核酸配列、増幅しようとする元の核酸配列の相補的な第二鎖、および増幅反応によって生成された、元の配列のどちらかの鎖のコピーが含まれる。これらのコピーは、増幅プライマーがハイブリッドする配列のコピーを含んでいるので、増幅可能なターゲットとして働く。
【0009】
増幅反応の際に生成されたターゲット配列のコピーは、増幅産物、増幅体(amplimer)、またはアンプリコンと呼ぶ。
【0010】
用語「伸長産物」とは、ターゲット配列を鋳型として使用して、プライマーをハイブリダイズし、ポリメラーゼでプライマーを伸長させて生成したターゲット配列のコピーを指す。
【0011】
用語「種特異的」とは、生物体の1つの種または関連する種の群に対しての検出、増幅、またはオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションを指し、同属の他の種または異なる属の種に対しての実質的な検出、増幅、またはオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションを除く。
【0012】
用語「アッセイプローブ」とは、核酸を検出または同定しやすくするのに使用する任意のオリゴヌクレオチドを指す。以下で述べる検出プローブ、検出用プライマー、捕捉プローブ、シグナルプライマー、およびレポータープローブは、アッセイプローブの例である。
【0013】
シグナルプライマーは、ターゲット中の相補配列とハイブリダイズする3’ターゲット結合配列を含み、ターゲットに対して相補性でない5’テール配列(アダプター配列)をさらに含む。アダプター配列は、その相補配列が以下で述べるレポータープローブの3’末端とハイブリダイズするように選択された、間接的に検出可能なマーカーである。シグナルプライマーは、その少なくとも一部分が、増幅プライマーのハイブリダイゼーション部位より下流のターゲット配列とハイブリダイズされる。シグナルプライマーは、ポリメラーゼによって増幅プライマーの伸長と同様の方法で伸長される。増幅プライマーの伸長によって、ターゲットの増幅に依存した方法でシグナルプライマーの伸長産物は置換され、5’アダプター配列、下流のターゲット結合配列、および隣接する(flanking)SDA増幅プライマーとのハイブリダイゼーションに特異的な3’結合配列を含む1本鎖産物が生成する。この隣接する増幅プライマーのハイブリダイゼーションおよび伸長、ならびにその後のニッキングおよび伸長によって、ターゲットが増幅された指標として検出できるアダプター配列の相補物を含む増幅産物が生成する。
【0014】
本発明によるレポータープローブは、検出用オリゴヌクレオチドとして機能し、好ましくは少なくとも1つの供与体/消光剤の色素対、すなわち、蛍光供与色素と供与体フルオロフォア用消光剤の標識を含む。この標識は、ターゲット配列と直接にハイブリダイズされないレポータープローブ中の配列または構造(レポーター部分)に結合している。レポーター部分の3’側のレポータープローブ配列が選択され、シグナルプライマーアダプター配列の相補物とハイブリダイズされる。一般に、レポータープローブの3’末端は、ターゲット配列に対して有意な相補性をもつ配列を含まない。上述のアダプター配列の相補物を含む増幅産物が存在すれば、この増幅産物がそこでレポータープローブの3’末端とハイブリダイズされる。アダプター相補配列の3’末端からプライミング(priming)および伸長を行うと、レポーター部位相補物の形成が可能になる。この形成がレポーター部分を2本鎖にし、それによってレポータープローブの標識を検出できるようになり、ターゲットの増幅があったことが示される。
【0015】
用語「アンプリコン」とは、増幅プライマー対の片方または両方の伸長を通して生成された増幅反応産物を指す。使用された両方のプライマーがターゲット配列とハイブリダイズされれば、アンプリコンは、指数関数的に増幅された核酸を含む。あるいは、使用されたプライマーの片方がターゲット配列とハイブリダイズされなければ、アンプリコンは、直線的な増幅によって生成される。したがって、この用語は、本明細書では総称として使用し、指数関数的に増幅された核酸の存在を暗示しない。
【0016】
本発明は、肺炎マイコプラズマ中に見られるターゲット配列の増幅に使用できるオリゴヌクレオチドプライマーを提供する。より詳細には、このターゲット配列は、ORF6遺伝子区域を含む。この増幅プライマーは、tSDAやPCRなどでの高められた温度で効率よく特異性の高い増幅を行うために設計しているが、通常のSDA、3SR、TAS、NASBA、またはRCAなど、それより低い温度の増幅反応でも有用である。増幅産物を検出するには、ターゲットに特異的なシグナルプライマーの相補物とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドレポータープローブを使用する。
【0017】
本発明のオリゴヌクレオチドは、培養した生物体の同一性を確認するための手段として培養後に使用できる。あるいは、本発明のヌクレオチドは、知られている増幅法を用いて、ヒトまたは動物の臨床検体中の肺炎マイコプラズマを検出および同定するのに使用することもできる。どちらの例でも、本発明のオリゴヌクレオチドおよびアッセイ法によって、肺炎マイコプラズマと他の微生物を迅速に識別する手段が提供され、実施者は、習慣的に利用している以前からの手順に頼ることなく、この微生物を迅速に確認できるようになる。感染に関与する特定の病原体をこのように迅速に確認することによって、適切な処置の決定に使用できる情報が短時間で得られる。
【0018】
配列の概要
配列番号1〜2は、ORF6遺伝子内配列の増幅用に上流プライマーとして使用するオリゴヌクレオチド配列である。配列番号3〜4は、ORF6遺伝子内配列の増幅用に下流プライマーとして使用するオリゴヌクレオチド配列である。配列番号5〜6は、SDA増幅用に上流バンパープライマーとして使用するオリゴヌクレオチド配列である。配列番号7〜8は、SDA増幅用に下流バンパープライマーとして使用するオリゴヌクレオチド配列である。配列番号9〜10は、ORF6遺伝子内配列の増幅および検出用のシグナルプライマー配列である。配列番号11は、前記シグナルプライマーのいずれかと共に使用した場合、ORF6遺伝子内配列の検出用に設計されたレポータープローブ用の配列となる。配列番号12は、ORF6遺伝子内配列のPCR増幅用に上流プライマーとして使用するオリゴヌクレオチド配列である。配列番号13は、ORF6遺伝子内配列のPCR増幅用に下流プライマーとして使用するオリゴヌクレオチド配列である。
【0019】
本発明の様々な目的、有利点、および新規な特徴は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読めば容易に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、核酸増幅反応で肺炎マイコプラズマに対する特異性を示すオリゴヌクレオチド、すなわち増幅プライマーおよびシグナルプライマーに関する。また本発明のオリゴヌクレオチドを使用して、肺炎マイコプラズマの核酸を検出および同定する方法も提供する。好ましい方法は、SDA、tSDA、または均一系実時間蛍光(homogeneous real time fluorescent)tSDAを使用するものである。これらの方法は、特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、2000年6月8日出願の特許文献10、および2000年6月23日出願の特許文献11などの参照文献から当分野の技術者に知られており、これらの開示を特に参照により本明細書に組み込む。
【0021】
本発明のプライマーは、Genbank受入れ番号NC000912で照会されるM129株から得たORF6遺伝子配列データの解析に基づいて設計した。表1に示すように、ORF6遺伝子内のいくつかのターゲット領域にかかるPCRプライマーを、肺炎マイコプラズマに対する特異性について評価した。8種の肺炎マイコプラズマ基準株に由来するPCR産物の配列解析によって、選択されたターゲット領域内の配列保存を評価して、ターゲット領域の相同性を実証した。PCRで増幅されたORF6ターゲット領域内で2種のSDA系を設計した。tSDAでの使用向けに開発したプライマーを表1に示す。得られたアンプリコンを増幅および検出するためのシグナルプライマーおよびレポータープローブも示す。増幅プライマー中の制限エンドヌクレアーゼ認識部位の例(BsoBI)を太字で示し、ターゲット結合配列をイタリック体で示す。増幅プライマーのターゲット結合配列は、そのターゲット特異性を決める。
【0022】
【表1】

【0023】
核酸がハイブリダイズされるには完全な相補性を要しないので、ここで開示するプローブおよびプライマー配列は、肺炎マイコプラズマに特異的なプローブおよびプライマーとしての有用性を損なうことなく、ある程度改変できることが理解されよう。当技術分野で知られているように、ハイブリダイゼーション条件を調整(すなわち、ハイブリダイゼーションpH、温度、または緩衝液の塩含有量の調整)して、厳密性を強くまたは緩くすることによって、相補的および部分的に相補的な核酸配列をハイブリダイズすることができる。開示する配列のこのような僅かな改変、および肺炎マイコプラズマに対する特異性を維持するために必要なハイブリダイゼーション条件の調整は、ごく普通の実験を必要とするだけであり、当業者にとって技術的範囲内のことである。
【0024】
ここで開示するプライマーを使用して生成した増幅産物は、たとえば図2および図3に示すように、臭化エチジウムで染色したポリアクリルアミドまたはアガロースゲル上で、特有の大きさによって検出すればよい。あるいは、増幅されたターゲット配列は、検出可能な標識の付いたオリゴヌクレオチドであるアッセイプローブによって検出してもよい。一実施形態では、少なくとも1種のタグ付きアッセイプローブを使用すると、ハイブリダイゼーション(検出プローブ)、非特許文献10に記載されているようなハイブリダイゼーションおよび伸長(検出用プライマー)、または特許文献12に記載されているようなハイブリダイゼーション、伸長、および2本鎖形態への変換(シグナルプライマー)によって、増幅されたターゲット配列を検出することができる。
【0025】
増幅されたターゲットを検出するために好ましい実施形態の概略図を図1に示す。この実施形態では、シグナルプライマーの5’テール配列は、ターゲットとハイブリダイズしない配列(アダプター配列)からなる。アダプター配列は、異なる3’ターゲット結合配列を有する様々なシグナルプライマーでも同じものになるように選択できる間接的に検出可能なマーカーである(すなわち、「万能」5’テール配列)。配列番号9および10を有するオリゴヌクレオチドは、本発明の増幅プライマーと併せると、肺炎マイコプラズマ生物を検出するシグナルプライマーとして特に有用である。アッセイプローブは、本発明のシグナルプライマーのアダプター配列相補物とハイブリダイズする一つのレポータープローブ配列であることが好ましい。配列番号11の配列を有するオリゴヌクレオチドは、本発明のシグナルプライマーと共に肺炎マイコプラズマの検出に使用する場合にレポータープローブとして特に有用である。あるいは、アッセイプローブは、増幅プライマーの間にあるターゲット中の配列とハイブリダイズするように選択することもできる。別の実施形態では、増幅プライマーまたはそのターゲット結合配列をアッセイプローブとして使用してもよい。
【0026】
アッセイプローブの検出可能な標識は、ターゲットの核酸が存在する指標として直接または間接的に検出できる部分である。標識を直接に検出するには、当技術分野で知られているように、アッセイプローブに放射性同位体を付け、オートラジオグラフィーによって検出するか、または蛍光部分を付け、蛍光によって検出することができる。あるいは、追加の試薬を要する標識を付けて、それを検出可能にすることによって、アッセイプローブを間接的に検出してもよい。間接的に検出できる標識には、たとえば、化学発光剤、可視反応産物を生じる酵素、および標識された特定の結合相手(たとえば、抗体または抗原/ハプテン)に結合させることによって検出できるリガンド(たとえばハプテン、抗体、または抗原)が含まれる。リガンドは、リガンド−標識オリゴヌクレオチド(捕捉プローブ)を固相上に固定化して、その検出を容易にするためにも有用である。特に有用な標識には、ビオチン(標識されたアビジンまたはストレプトアビジンへの結合によって検出可能)、および西洋ワサビペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼなどの酵素(酵素の基質を加えて、着色された反応産物を生成することによって検出可能)が含まれる。このような標識をオリゴヌクレオチドに加え、またはそのような標識に含ませる方法は、当技術分野でよく知られており、そのような方法のいずれもが本発明での使用に適している。
【0027】
使用することのできる特異的検出法の例には、特許文献13に記載されているように、増幅した産物を、ビオチン標識捕捉プローブおよび酵素結合検出プローブを使用して検出する化学発光法が含まれる。これら2種のアッセイプローブを、(2本の増幅プライマーの結合部位間にある)ターゲット配列のアッセイ領域中の異なる部位とハイブリダイズした後、ストレプトアビジンをコートしたマイクロタイタプレート上にこの複合体を捕捉プローブによって捕捉し、化学発色シグナルを発色させ、照度計で読み取る。増幅産物を検出する別の代替法として、特許文献12に記載されているようなシグナルプライマーをSDA反応に含めてもよい。増幅産物を検出するさらに別の代替法では、シグナルプライマーは、ターゲット配列とハイブリダイズされない配列、すなわちアダプター配列を含んでいてもよい。この実施形態では、図1に示すように、標識が結合しているレポータープローブとアダプター配列の相補物とをハイブリダイズすることができる。シグナルプライマーのどちらの実施形態でも、SDAの際に、ターゲットの増幅に応じる形で第2の増幅産物が生成するので、ターゲットが増幅された指標として検出することもできる。
【0028】
市販する都合上、核酸の特異的検出および同定用の増幅プライマーをキットの形で包装してもよい。通常、そのようなキットは、少なくとも1組の増幅プライマーを含んでいる。ターゲットに特異性のある増幅プライマーと共に、核酸の増幅反応を実施するための試薬、たとえば緩衝液、追加のプライマー、ヌクレオチド三リン酸、酵素などが含まれていてもよい。本発明の方法の特定の実施形態を行うための説明書を任意選択で同梱して、キットの各成分を共有の容器中に一緒に包装する。他の任意選択の成分、たとえば、アッセイプローブとしての使用に適する標識付きオリゴヌクレオチド、および/または標識を検出する試薬もしくは手段がキット中に含まれてもよい。
【0029】
本発明では、生物体の呼吸器パネル用の必要な成分を提供する目的でこのようなキットを構成してもよい。そのような呼吸器パネルには、百日咳菌(Bordetella pertussis)、レジオネラ菌(Legionella pneumophila)、肺炎マイコプラズマ、およびクラミジア科の生物に加え、呼吸器感染を引き起こし得る他の微生物が含まれる。したがって、このような呼吸器パネルキットは、その呼吸器パネルの各生物体に特異的な核酸配列を増幅するプライマーを含むことになる。百日咳菌、レジオネラ菌、およびクラミジア科生物を増幅および検出するのに有用なプライマー、バンパー、シグナルプライマー、およびレポータープローブはそれぞれ、2000年7月27日出願の同時係属の特許文献14、2000年7月27日出願の同時係属の特許文献15、および2000年11月8日出願の同時係属の特許文献16に記載されており、これらの開示を特に参照により本明細書に組み込まれる。使用時には、このような呼吸器パネルキットでは、生物毎に別々の増幅反応、または1種または複数の複合増幅反応を行うことができ、パネルの各生物体の有無を示す結果が得られる。
【0030】
増幅プライマーのターゲット結合配列によって、オリゴヌクレオチド上に種間ハイブリダイゼーション特異性が付与されるので、増幅反応に種特異性がもたらされる。したがって、本発明の増幅プライマーのターゲット結合配列は、PCR、通常のSDA(本質はtSDAと同じものであるが、中温性(mesophilic)酵素を使用してより低い温度で実施する反応スキーム)、3SR、NASBA、TAS、およびRCAなど、他の核酸増幅プロトコルでも有用である。詳細には、プライマーとターゲット配列との周期的な特異的ハイブリダイゼーション、ターゲット配列を鋳型として使用してのプライマーの伸長、およびターゲット配列に由来する増幅産物の分離もしくは置換を利用するどんな増幅プロトコルでも、本発明のターゲット結合配列を用いてよい。特殊な非ターゲット結合配列を必要としない増幅法(たとえばPCR)については、増幅プライマーは、表1に挙げた増幅プライマーのターゲット結合配列から本質的になるといえる。
【0031】
オリゴヌクレオチドの種特異性を変更することなく、ここで開示するターゲット結合配列に、選択された増幅反応を行うために必要な他の配列を任意選択で加えてもよい。例として、特異的な増幅プライマーが、SDA反応の際にニックが入る、制限エンドヌクレアーゼBsoBIの認識部位を含んでいてもよい。BsoBI認識部位の代わりに、それだけに限らないが特許文献17で開示されている認識部位を含む他のニッキング可能な制限エンドヌクレアーゼ認識部位を用いてもよいことは当分野の技術者にわかるであろう。認識部位は、tSDAの条件下で増幅反応を行ってもよいように好熱性制限エンドヌクレアーゼに対するものであることが好ましい。同様に、増幅プライマーのテール配列(制限エンドヌクレアーゼ認識部位の5’側)は一般に決定的なものではないが、SDAに使用する制限部位、ならびにそれ自体のターゲット結合配列または他のプライマーのいずれかとハイブリダイズされる配列は避けるべきである。したがって、ある種のSDA用増幅プライマーは、3’ターゲット結合配列と、そのターゲット結合配列の5’側のニッキング可能な制限エンドヌクレアーゼ認識部位と、制限エンドヌクレアーゼ認識部位の5’側の約10〜25ヌクレオチド長のテール配列とからなる。ニッキング可能な制限エンドヌクレアーゼ認識部位およびテール配列は、SDA反応に必要な配列である。2000年5月18日出願の特許文献18に記載されているように、ある種のSDA用増幅プライマーは、制限酵素認識部位の5’側および3’側の両方に位置するターゲット特異的配列からなっていてよい。この設計では、ターゲット特異的ハイブリダイゼーションの効率が上がることもある。他の増幅反応(たとえば3SR、NASBA、TAS、およびRCA)については、増幅プライマーは、ターゲット結合配列と、選択された増幅反応に必要な追加の配列(たとえば、上述のようなSDAに必要な配列、または3SRではRNAポリメラーゼによって認識されるプロモーター)とからなっていてよい。本発明のターゲット結合配列をSDA以外の増幅法に適合させるには、化学合成など、増幅プライマーを調製する型通りの方法、および選択された増幅反応向けのよく知られている構造上必要なものを用いる。したがって、本発明のターゲット結合配列は、型通りの生成、スクリーニング、および最適化法だけを使用し、様々な増幅反応の形で、肺炎マイコプラズマ生物に特異的なターゲット増幅および検出に容易に適合させることができる。
【0032】
SDAでは、バンパープライマーは、下流の種特異的増幅プライマーに置き代わるように機能するので、種特異性にとって必須でない。バンパープライマーが、伸長したときに増幅プライマーおよびその伸長産物に置き代わるよう、増幅プライマーより上流のターゲットとハイブリダイズされることだけが必要である。したがって、バンパープライマーの特殊配列は、一般に決定的に重要ではなく、バンパープライマーが伸長して増幅プライマー伸長産物を置換できるくらいに増幅プライマーの結合部位に近いどんな上流ターゲット配列に由来していてもよい。バンパープライマー配列中のターゲットとの時折のミスマッチ、または非ターゲット配列との若干の交差ハイブリダイゼーションは、バンパープライマーを特定のターゲット配列にハイブリダイズすることができるままである限り、増幅効率にマイナスの影響を及ぼさない。
【0033】
本発明のプライマーを使用する増幅反応では、非特許文献10で教示されているように、チミンを組み込んでもよく、あるいは、たとえば特許文献19で教示されているように、後続の増幅反応の相互混入を低減するために、この反応のTTPを完全または部分的に2’−デオキシウリジン5’−三リン酸で代用してもよい。dU(ウリジン)は、増幅産物に組み込み、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)での処理によって切り取ることができる。このような塩基部位は、増幅産物を後続の増幅反応で増幅不能にする。UDGは、新たに生成した増幅産物中のdUが切り取られないよう、後続の増幅を行う前にDNAグリコシラーゼ阻害剤(UGI)で不活化する。
【0034】
SDAは、プライマーの伸長、半修飾制限エンドヌクレアーゼ認識/切断部位のニッキング、1本鎖伸長産物の置換、プライマーと伸長産物(または元のターゲット配列)のアニーリング、およびプライマーのその後の伸長が反応ミックス中で並行して起こる等温核酸増幅法である。これは、反応の温度サイクル特性のために反応の各ステップが別々の相またはサイクルで起こるPCRとは対照的である。SDAは、1)制限エンドヌクレアーゼによってヘミホスホロチオアートの形のその2本鎖認識/切断部位の非修飾鎖にニックが入れられること、および2)ある特定のポリメラーゼによってニック箇所で複製を開始し、下流の鋳型でない鎖を置換できることに基づいている。温度を高く(約95℃)して最初のインキュベーションを行って、2本鎖のターゲット配列を変性させプライマーのアニーリングに備えた後、後続の新たに合成された鎖の重合および置換を一定温度で行う。ターゲット配列の各新規コピーの生成は、次の5ステップ、1)元のターゲット配列または前に重合してはずされた1本鎖伸長産物に増幅プライマーを結合させる、2)α−チオデオキシヌクレオシド三リン酸(α−チオdNTP)を組み込みながら、5’−3’エキソヌクレアーゼ欠損ポリメラーゼによってプライマーを伸長させる、3)半修飾2本鎖制限部位にニックを入れる、4)ニック部位から制限酵素を解離させる、および5)下流の新規合成鎖をはずしながら、5’−3’エキソヌクレアーゼ欠損ポリメラーゼによってニックの3’末端側から伸長させるからなる。ニックから伸長させることによって、別のニッキング可能な制限部位が再生されるので、ニッキング、重合、および置換が一定温度で並行して連続的に起こる。1組の増幅プライマーを使用し、その各々を2本鎖ターゲット配列の2本鎖の一方とハイブリダイズする場合、増幅は指数関数的になる。これは、センス鎖およびアンチセンス鎖が後続の回の増幅で逆プライマーに対する鋳型として働くからである。1本の増幅プライマーを使用する場合、1本の鎖だけがプライマー伸長用の鋳型として働くので、増幅は直線的になる。α−チオdNTPが組み込まれたときにその2本鎖認識/切断部位にニックを入れる制限エンドヌクレアーゼの例は、HincII、HindII、AvaI、NciI、およびFnu4HIである。これらの制限エンドヌクレアーゼおよび必要なニッキング活性を示す他の酵素はすべて、通常のSDAでの使用に適する。しかし、これらの酵素は比較的熱不安定性であり、約40℃で活性を失う。
【0035】
SDAによる増幅のターゲットは、ターゲット配列を切断しないエンドヌクレアーゼで制限して、大きい核酸を断片にして調製することができる。しかし、一般に、非特許文献10および特許文献20(特に参照により本明細書に組み込む)に記載されているように、その制限エンドヌクレアーゼの認識/切断部位がSDA反応でのニッキング用に選択されたターゲット核酸を生成することが好ましい。簡潔に述べれば、ターゲット配列が2本鎖であれば、4つのプライマーをそれにハイブリダイズする。そのプライマーのうちの2つ(S1およびS2)はSDA増幅プライマーであり、もう2つ(B1およびB2)は外部プライマーまたはバンパープライマーである。S1およびS2は、ターゲット配列に隣接する2本鎖核酸の反対側の鎖に結合する。B1およびB2は、S1およびS2のターゲット配列5’側(すなわち上流)にそれぞれ結合する。次いで、3種のデオキシヌクレオシド三リン酸、および少なくとも1種の修飾デオキシヌクレオシド三リン酸(たとえば2’−デオキシアデノシン5’−O−(1−チオ酸リン酸)、「dATPαS」)の存在下、エキソヌクレアーゼ欠損ポリメラーゼを使用して、4つすべてのプライマーを同時に伸長させる。そのためS1およびS2の伸長産物は、B1およびB2が伸長することによって元のターゲット配列鋳型からはずされる。このはずされた1本鎖の増幅プライマー伸長産物は、逆の増幅プライマーおよびバンパープライマーが結合するターゲットとして働く(たとえば、S1の伸長産物は、S2およびB2を結合する)。伸長および置換の次の繰返しによって、半修飾制限エンドヌクレアーゼ認識/切断部位を各末端に有する2本の2本鎖核酸断片が得られる。これらの断片は、SDAによる増幅に適する基質である。SDAでは、ターゲット生成反応の個々のステップが並行して連続的に起こり、SDAの制限酵素でニックを入れるのに必要な認識/切断配列を末端に有するターゲット配列が生成される。ターゲット生成反応では、SDA反応の構成要素がすべてすでに存在しているので、ターゲット配列は、自動的に生成し、SDA反復反応に連続的に加わり、増幅される。
【0036】
SDA反応に別の反応の増幅産物が相互混入しないようにするため、増幅反応を阻害することなく、SDA増幅されたDNAに、dTTPの代わりとしてdUTPを組み込んでもよい。次いで、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)処理によって、このウラシル修飾した核酸を特異的に認識させ、不活化することができる。したがって、前の反応中にdUTPがSDA増幅されたDNAに組み込まれていれば、後続のSDA反応物はどれも、2本鎖ターゲットを増幅する前にUDG処理することができ、予め増幅された反応物からのどんなdU含有DNAも増幅不可能になる。後続の反応で増幅しようとする標的DNAがdUを含んでいなければ、UDG処理による影響を受けない。次いで、ターゲットを増幅する前に、UGI処理によってUDGを阻害することができる。あるいは、UDGを熱で不活化してもよい。tSDAでは、反応そのものに高めの温度(≧50℃)を利用して、UDGの不活化およびターゲットの増幅を並行して行うことができる。
【0037】
SDAには、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いたポリメラーゼが必要であり、このポリメラーゼによって、2本鎖核酸の1本鎖ニック箇所で重合を開始し、ニックの下流の鎖をはずしながら、ニックの入っていない鎖を鋳型として使用し新たな相補鎖を生成する。ポリメラーゼは、拘束されていない3’−OHにヌクレオチドを付加して伸長を行わなければならない。SDA反応を最適にするためには、ポリメラーゼに高いプロセッシング力をもたせ、増幅できるターゲット配列の長さを極限まで拡大することも望ましい。プロセッシング力の高い(highly processive)ポリメラーゼは、伸長産物の解離および合成終結の前に、新しい鎖をかなりの長さに重合させることができる。指数関数的な増幅反応では、置換活性によってターゲットを追加のコピーの合成に利用できるようになり、2回目の増幅プライマーのハイブリダイズ先となり得る1本鎖伸長産物が生成されるので、置換活性は、この増幅反応に必須である。反応を永続させ、後続の回のターゲット増幅を開始できるようにするのはニッキングであるので、制限酵素のニッキング活性も、重要性の高いものである。
【0038】
tSDAは、SDAで使用される酵素よりも高温で活性が保たれるポリメラーゼおよび制限エンドヌクレアーゼを代わりに用い、本質的には非特許文献9および10に記載されている通常のSDAのように行う。当然、反応温度は、代用する酵素に適するより高い温度に合わせ、HincII制限エンドヌクレアーゼ認識/切断部位は、選択されたエンドヌクレアーゼに相応する制限エンドヌクレアーゼ認識/切断部位に取り替えることになる。また、Walker等とは対照的に、実施者は、酵素がその変性温度で十分に安定であれば、最初の変性ステップの前に、酵素を反応混合物に含めてもよい。tSDAでの使用に好ましいエンドヌクレアーゼは、BsrI、BstNI、BsmAI、BslI、およびBsoBI(New England BioLabs)、BstOI(Promega)である。tSDA用に好ましいポリメラーゼは、Bca(Panvera)およびBst(New England Biolabs)である。
【0039】
さらに、gp32などのDNA結合タンパク質を反応混合物中に含めて、より長い核酸ターゲット(たとえば、約100塩基対より長い核酸分子)の増幅向けにSDAおよびtSDA反応を強化してもよい。この技術は、特許文献21のその記述全体を通して、当分野の技術者に知られている。
【0040】
均一系実時間蛍光tSDAは、tSDAの変更形態である。この形態では、蛍光をターゲット依存的に消光させて弱める検出用オリゴヌクレオチドを使用する。検出用オリゴヌクレオチドは、ターゲットが存在しない場合に蛍光が消光するように連結された供与体/受容体色素対を含む。分子内で塩基対が形成されている検出用オリゴヌクレオチドの二次構造が、ターゲット配列存在下で変性(unfolding)または線状化すると、色素間の距離が広がり、蛍光の消光が弱まる。塩基対が形成されているこの二次構造の変性は、通常、二次構造の配列と相補鎖とが分子間で塩基対を形成して、二次構造が少なくとも部分的に崩壊するものである。この二次構造は、十分な長さの相補鎖の存在下では完全に線状になる。好ましい実施形態では、制限エンドヌクレアーゼ認識部位(RERS)は、二次構造と相補鎖との分子間塩基対合によってRERSも2本鎖になり制限エンドヌクレアーゼによる切断が可能になるように2種の色素間に存在する。制限エンドヌクレアーゼによる切断は、供与体および受容体色素を別々の核酸断片に分離し、さらに消光が弱まる一因となる。どちらの実施形態でも、蛍光パラメーター(たとえば、供与体蛍光強度の増加、受容体蛍光強度の低下、または変性前後の蛍光比率)の関連のある変化をターゲット配列が存在する指標としてモニターする。供与体蛍光強度の変化は、一般に受容体蛍光強度の変化よりも大きいので、これをモニターすることが好ましい。蛍光寿命の変化など、他の蛍光パラメーターをモニターしてもよい。オリゴヌクレオチドの切断は、二本鎖DNAの両方の鎖のホスホジエステル結合が破壊されるか、または1本鎖DNAのホスホジエステル結合が破壊されることを指す。これは、二本鎖DNAの2本鎖の一方のホスホジエステル結合だけが破壊されることを指すニック切断とは対照的である。
【0041】
均一系実時間蛍光tSDA用の検出用オリゴヌクレオチドは、ターゲット配列とハイブリダイズされる1本鎖の5’もしくは3’側部分(ターゲット結合配列)と、ターゲット結合配列に隣接する、分子内に塩基対が形成された2次構造とを含んでよい。好ましい実施形態では、図1に示すように、検出用オリゴヌクレオチドは、ターゲット配列とハイブリダイズしない1本鎖5’もしくは3’側部分を含むレポータープローブである。1本鎖5’もしくは3’側部分はむしろ、シグナルプライマーのアダプター配列の相補物とハイブリダイズする(アダプター相補物結合配列)。レポータープローブの別の特徴は、このハイブリダイズ部分が分子内に塩基対が形成されている二次構造に隣接していることである。本発明の検出用オリゴヌクレオチドは、二次構造の分子内に塩基対が形成されている時には供与体の蛍光が消光し、二次構造の変性または線状化によって蛍光の消光が弱まるように検出用オリゴヌクレオチドに結合させた供与体/受容体色素対をさらに含む。
【0042】
均一系実時間蛍光tSDA用の本発明の検出ヌクレオチドは、プライマーの伸長またはハイブリダイゼーション向けに選択された反応条件下で、分子内に塩基対が形成された二次構造の配列を含む。一つの実施形態では、この二次構造は、ターゲット結合配列の少なくとも一部分が1本鎖3’もしくは5’テールを形成するように検出用オリゴヌクレオチドのターゲット結合配列に隣接して位置していてもよい。好ましい実施形態では、図1に示すように、二次構造が、アダプター相補物結合配列の少なくとも一部分が1本鎖3’もしくは5’テールを形成するように検出用レポータープローブオリゴヌクレオチドのアダプター相補物結合配列に隣接して位置していてもよい。本明細書で使用する用語「ターゲット結合配列に隣接する」または「アダプター相補物結合配列に隣接する」とは、ターゲット/アダプター相補物結合配列の全部または部分が、ターゲット/アダプター相補物とのハイブリダイゼーションに利用できる5’もしくは3’テールの形で1本鎖のままであることを意味する。すなわち、二次構造は、ターゲット/アダプター相補物結合配列の全部を含まない。ターゲット/アダプター相補物結合配列の一部分は、二次構造の分子内塩基対合に関与していてもよく、これには、二次構造の分子内塩基対合に関与した最初の配列の全部または部分が含まれるが、その相補配列にまでは及ばないことが好ましい。たとえば、二次構造がステムループ構造(たとえば「ヘアピン」)であり、検出用オリゴヌクレオチドのターゲット/アダプター相補物結合配列が1本鎖3’テールとして存在する場合、ターゲット/アダプター相補物結合配列は、ステムの最初のアームの全体または部分、任意選択でループの全体または部分にわたって伸長していてよい。しかし、ターゲット/アダプター相補物結合配列は、ステムの分子内塩基対合に関与する配列の2番目のアームまで伸長していないことが好ましい。すなわち、ターゲット/アダプター相補物とハイブリダイズすることのできる二次構造の分子内塩基対合に両方の配列が関与することを避けることが望ましい。検出用オリゴヌクレオチド二次構造の分子内塩基対合部分のミスマッチは、ターゲット存在下での蛍光の変化の規模を縮小し得るが、アッセイの感度を問題としなければ許容される。1本鎖テールのターゲット/アダプター相補物結合配列でのミスマッチも許容されるが、同様にアッセイの感度および/または特異性を低下させることがある。しかし、二次構造およびターゲット/アダプター相補物結合配列の両方での完全な塩基対合によって反応に支障をきたさないことが本発明の特徴である。ハイブリダイゼーションに関与する配列の完全な一致は、反応速度論にマイナスの影響を及ぼすことなく、アッセイの特異性を向上させる。
【0043】
本発明の検出用オリゴヌクレオチドレポータープローブは、増幅反応物に加えると、図1に示すように、ハイブリダイゼーションおよび伸長によって2本鎖の形に変換される。またポリメラーゼによる鎖の置換では、二次構造が変性または線状化し、相補鎖が合成されてそれが2本鎖の形に変換される。RERSが存在する場合、これも2本鎖になり、制限エンドヌクレアーゼによって切断可能になる。ポリメラーゼによる鎖置換活性によって二次構造が変性または線状化するにつれて、供与体および受容体色素間の距離が拡大し、それによって供与体蛍光の消光が弱まる。供与体または受容体色素の蛍光における関連した変化は、ターゲット配列が増幅された指標としてモニターまたは検出することができる。RERSの切断では、2本鎖の第2の増幅産物が、それぞれに2種の色素の一方が結合している2個の別々の断片になることによって、一般に蛍光の変化の規模がさらに拡大する。これらの断片は、反応溶液中に不自由なく拡散でき、供与体/受容体色素対間の距離がさらに拡大する。供与体蛍光強度の増大または受容体蛍光強度の低下をターゲットの増幅が起こっているまたは起こった指標として検出および/またはモニターすることができるが、供与体/受容体色素対の近接に影響される他の蛍光パラメーターをモニターしてもよい。供与体または受容体の蛍光強度の変化を供与体および/または受容体の蛍光強度比率の変化として検出してもよい。たとえば、蛍光強度の変化は、a)二次構造の線状化もしくは変性後の供与体フルオロフォア蛍光、および線状化もしくは変性前の検出用オリゴヌクレオチドの供与体フルオロフォア蛍光の比率の増加、またはb)線状化もしくは変性後の受容体色素蛍光、および線状化もしくは変性前の検出用オリゴヌクレオチドの受容体色素蛍光の比率の減少として検出することができる。
【0044】
本発明の検出用オリゴヌクレオチドは、SDAだけでなく、他のプライマー伸長増幅法(たとえば、PCR、3SR、TAS、またはNASBA)のアンプリコンを検出する用途に適合させてもよいことは言うまでもない。たとえば、PCR増幅プライマーと、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠く鎖置換用DNAポリメラーゼ(たとえば、PromegaのSequencing Grade Taq、またはNew England BioLabsのexo- Ventもしくはexo- Deep Vent)をPCRで使用することによって、これらの方法をPCRでの使用に適合させることができる。シグナルプライマーは、少なくとも部分的にPCR増幅プライマーより下流にあるターゲットとハイブリダイズされ、検出用オリゴヌクレオチドレポータープローブとのハイブリダイゼーションおよびそれに続く伸長後にはずされ、2本鎖にされる。PCRでは、RERSの切断というよりニック切断を引き起こし得る修飾デオキシヌクレオシド三リン酸が通常は存在しないので、任意選択で任意のRERSを選択して、検出用オリゴヌクレオチド中に使用してもよい。温度循環がPCRによる増幅の特徴であるので、制限エンドヌクレアーゼは、増幅の終点検出に向けてプライマーをアニールし、伸長させる最終サイクルの後、低温で加えることが好ましい。しかし、PCR反応の高温相を通して活性なままである好熱性制限エンドヌクレアーゼならば、増幅の間じゅう存在して、実時間アッセイが可能になるはずである。SDA系のように、色素対の分離によって、蛍光の消光が弱まり、ターゲットが増幅された指標として働く強度などの蛍光パラメーターが変化する。
【0045】
検出用オリゴヌクレオチドが変性または線状化した結果である蛍光の変化は、反応中の選択された終点で検出することができる。しかし、二次構造は、ハイブリダイゼーションまたはプライマーの伸長と並行して線状化するので、蛍光の変化は、反応を起こしながら、すなわち「実時間」でモニターすることもできる。この均一系実時間アッセイ形態を使用して、最初のターゲット存在量についての半定量的または定量的情報を得てもよい。たとえば、(ターゲット増幅の一部としての、または非増幅検出法での)変性または線状化反応中に蛍光強度が変化した時点の比率は、最初のターゲットレベルの指標である。その結果、ターゲット配列の最初のコピーが多く存在していればそれだけ、供与体蛍光は選択された閾値に迅速に到達する(すなわち、より短時間で陽性になる)。受容体蛍光の減少も同様に、選択された最小値に到達するのに要する時間としての陽性が検出されるまでの時間が短い。その上、反応過程の蛍光パラメーターの変化速度は、最初に含まれるターゲット量の少ないサンプルよりも、最初に含まれるターゲット量の多いサンプルの方が迅速である(すなわち、蛍光曲線の傾きが急になる)。これらの測定または他の測定は、当技術分野で知られている限りでは(たとえば特許文献22、1998年11月20日出願の特許文献23、および2000年5月19日に出願された特許文献24、これらをすべて参照により特に本明細書に組み込む)、ターゲットが存在する指標として行っても、またはターゲットが増幅された指標として行ってもよい。最初のターゲット量は、実験結果と既知の量のターゲットでの結果とを比較することによって通常は決定される。
【0046】
本発明の方法による、選択されたターゲット配列の有無についてのアッセイは、溶液中で行っても固相上で行ってもよい。検出用オリゴヌクレオチドがプライマーとして機能する実時間または終点均一系アッセイは、通常は溶液中で行う。本発明の検出用オリゴヌクレオチドを使用するハイブリダイゼーションアッセイは、(たとえば均一系実時間アッセイとして)溶液中で行ってもよいが、ターゲットの実時間または終点検出については固相アッセイにも特によく適合する。固相アッセイでは、当技術分野で知られている方法を利用し、内部または末端の標識を介して検出用オリゴヌクレオチドを固相(たとえばビーズ、膜、または反応容器)上に固定化すことができる。たとえば、ビオチン標識検出用オリゴヌクレオチドは、適切なハイブリダイゼーション条件下でターゲットに曝されたときに蛍光の変化が得られるアビジン改変固相上に固定化することができる。このようにしてターゲットを捕捉すると、サンプルからターゲットを分離しやすくなり、シグナルの検出またはアッセイの他の側面を妨害することのあるサンプル中の基質を除去することが可能になる。使用できる固相系の一例は、当技術分野で知られているものなどのアレイフォーマットである。
【0047】
(実施例)
以下の実施例は、ここで記載した本発明の特定の実施形態を例示するものである。当分野の技術者には言うまでもないことであるが、様々な変更および修正が可能であり、記載した本発明の範囲内であると意図される。
【実施例1】
【0048】
ORF6の肺炎マイコプラズマ特異性
ORF6遺伝子の肺炎マイコプラズマに対する特異性を判定するために、配列番号12および配列番号13のプライマーを用いて、数種の肺炎マイコプラズマ株から得たDNAのPCR増幅を行った。簡潔に述べれば、PCR条件は以下のとおり、配列番号12および配列番号13のプライマー各10μM、dATP、dTTP、dCTP、およびdGTP各200nM、AmpliTAQ DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer)5単位、1:10希釈のATCCの保存生物(organism stock)1μlを、1×AmpliTAQ緩衝液を含む50μlの反応体積とした。PCRは、MJ Research PTC−200 Peltier Thermal Cyclerにおいて、95℃で5分間の1サイクルに続いて95℃で45秒、52℃で45秒、72℃で60秒の35サイクルからなる温度循環条件で行った。各PCR産物9μlを1μlの添加色素と混合し、アガロースゲル電気泳動法によって分析した。100bpラダー(GibcoBRL)ゲルマーカーを使用して、産物の大きさを推定した。98ボルトで約45分間、ゲル上で泳動を行った。図2は、8種の肺炎マイコプラズマATCC株のPCR増幅から得た産物の1%アガロースゲル分析の結果を示している。表1は、試験した株と、図2の標識されたバンドに対応するバンドの同定を示す。
【0049】
【表2】

【0050】
どの場合でも、529bpのPCR産物(ORF6増幅ターゲット領域)が観察され、8種すべての肺炎マイコプラズマ株にORF6遺伝子が存在することが実証された。
【0051】
系統が肺炎マイコプラズマと同類である種にORF6遺伝子の相同体が存在するかを判定するために、上述の条件下で配列番号12および配列番号13のプライマーを使用するPCRによって、4種の他のマイコプラズマ種から得たDNAを増幅した。図3に示すように、1.5%アガロースゲルでの電気泳動によってPCR産物を分析した。この分析の結果を表2に要約する。肺炎マイコプラズマ陽性対照(ATCC29342)だけが予想サイズの529bpで得られ、配列番号12および配列番号13のORF6プライマーがこの種に特有であることが示された。
【0052】
【表3】

【実施例2】
【0053】
配列の整列
実施例1で得られたPCR産物の配列決定を行い、MegAlignソフトウェアプログラム(DNAStar)を使用して、8種のORF6配列の整列をコンパイルした。
【0054】
配列番号12および配列番号13のプライマーにより固定されたORF6領域の2つのSDA系を設計した。図4は、ORF6ターゲット領域に対するSDA系1オリゴヌクレオチドターゲット結合配列である配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、および配列番号9を整列させて示している。配列番号5に意図的にミスマッチを導入(CをTで置換した)して、配列番号1との相互作用を回避した。図5は、ORF6ターゲット領域に対するSDA系2オリゴヌクレオチドターゲット結合配列である配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、および配列番号10を整列させて示している。これらのオリゴヌクレオチドのターゲット結合領域内にはミスマッチがない。
【0055】
これらの整列物は、評価した肺炎マイコプラズマの全株に対して、両方のORF6 SDA系用のオリゴヌクレオチドターゲット結合配列内の相同性を示した。
【実施例3】
【0056】
ORF6遺伝子用に設計されたSDA系
ORF6ターゲット配列用の前述した2つのSDA系を含むオリゴヌクレオチドの特異性を評価するために、当技術分野でよく知られている(非特許文献11、12、13、14)Basic Local Alignment Search Tool(「BLAST」)を使用して、核酸配列の相同性を評価した。BLASTNを使用して、ヌクレオチド照会配列をヌクレオチド配列データベースと対照した。BLASTNプログラムは、照会核酸配列と、好ましくは核酸配列データベースから得た試験配列とで類似する区域、すなわちここでは「高得点区域対」と呼ぶものを同定することによって相同配列を特定する。その多くが当技術分野で知られている得点行列によって高得点区域対を同定(すなわち整列)することが好ましい。使用する得点行列(scoring matrix)は、Blosum62行列(非特許文献15)であることが好ましい。BLASTNプログラムは、同定された高得点区域対すべての統計的有意性を評価し、好ましくは、相同性百分率など、使用者が指定した有意性の閾値を満たす区域を選択する。高スコア区域対の統計的有意性は、Karlin(非特許文献16)の統計的有意性の式を使用して評価することが好ましい。
【0057】
BLASTN分析は、ORF6 SDA系1(配列番号5〜配列番号7)および2(配列番号6〜配列番号8)それぞれの左右のバンパーを包含するターゲット配列を使用して、GenBankデータベースで行った。結果を分析すると、肺炎マイコプラズマ遺伝子由来の配列としか有意な相同性が示されなかった。このような結果は、ORF6 SDA系1および2を含むオリゴヌクレオチドが肺炎マイコプラズマに特異的であることを実証するものである。
【0058】
本発明を若干詳細に述べてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、当分野の技術者にわかる変更を添えてもよい。本発明の様々な特徴は、以下の特許請求の範囲で述べる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による鎖置換増幅(SDA)反応における、肺炎マイコプラズマ核酸ORF6遺伝子のターゲット配列の検出を示す図である。
【図2】図2(図2A−2D)は、肺炎マイコプラズマ核酸ORF6遺伝子ターゲット配列のPCR増幅に配列番号12および13を使用した場合に、529bpの増幅産物が生成されたことを示す図である。
【図3】図3(図3A−3B)は、系統が肺炎マイコプラズマと同類である生物体の核酸のPCR増幅に配列番号12および13を使用した場合に、交差反応性がなかったことを示す図である。
【図4】数種の肺炎マイコプラズマ株に由来するORF6遺伝子のSDA増幅における、配列番号1、3、5、7、および9のターゲット結合配列を並べて示す図である。
【図5】数種の肺炎マイコプラズマ株に由来するORF6遺伝子のSDA増幅における、配列番号2、4、6、8、および10のターゲット結合配列を並べて示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ORF6LP1(配列番号1)、ORF6LP2(配列番号2)、ORF6LeftPCR(配列番号12)、ORF6RP1(配列番号3)、ORF6RP2(配列番号4)、およびORF6RightPCR(配列番号13)のターゲット結合配列からなる群から選択されたターゲット結合配列と、任意選択の増幅反応に必要な配列とからなることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前期増幅反応に必要な配列が制限エンドヌクレアーゼによってニッキング可能な制限エンドヌクレアーゼ認識部位であることを特徴とする請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
ORF6LP1(配列番号1)、ORF6LP2(配列番号2)、ORF6RP1(配列番号3)、およびORF6RP2(配列番号4)からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
ORF6ADPT1(配列番号9)、配列番号9に相補的な核酸、ORF6ADPT2(配列番号10)、および配列番号10に相補的な核酸からなる群から選択されることを特徴とするオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドが間接的に検出可能なマーカーを含むことを特徴とする請求項4に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記間接的に検出可能なマーカーがアダプター配列であることを特徴とする請求項5に記載の核酸。
【請求項7】
a)ORF6LP1(配列番号1)、ORF6LP2(配列番号2)、およびORF6LeftPCR(配列番号12)からなる群から選択されたターゲット結合配列、および任意選択の増幅反応に必要な配列からなる第1のプライマーと、
b)ORF6RP1(配列番号3)、ORF6RP2(配列番号4)、およびORF6RightPCR(配列番号13)のターゲット結合配列からなる群から選択されたターゲット結合配列、および任意選択の増幅反応に必要な配列からなる第2のプライマーとを含むことを特徴とする増幅プライマーの対。
【請求項8】
増幅反応に必要な配列が、制限エンドヌクレアーゼによってニッキング可能な制限エンドヌクレアーゼ認識部位であることを特徴とする請求項7に記載の増幅プライマーの対。
【請求項9】
前記第1のプライマーがORF6LP1(配列番号1)であり、前記第2のプライマーがORF6RP1(配列番号3)であることを特徴とする請求項8に記載の増幅プライマーの対。
【請求項10】
前記第1のプライマーがORF6LP2(配列番号2)であり、前記第2のプライマーがORF6RP2(配列番号4)であることを特徴とする請求項8に記載の増幅プライマーの対。
【請求項11】
a)ORF6LP1(配列番号1)、ORF6LP2(配列番号2)、およびORF6LeftPCR(配列番号12)からなる群から選択された1または2以上のプライマー、
b)ORF6RP1(配列番号3)、ORF6RP2(配列番号4)、およびORF6RightPCR(配列番号13)からなる群から選択された1または2以上のプライマー、
c)ORF6ADPT1(配列番号9)、配列番号9に相補的な核酸、ORF6ADPT2(配列番号10)、および配列番号10に相補的な核酸からなる群から選択された1または2以上のシグナルプライマー
を含むことを特徴とするキット。
【請求項12】
前記1または2以上のシグナルプライマーが間接的に検出可能なマーカーを含むことを特徴とする請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記間接的に検出可能なマーカーがアダプター配列であることを特徴とする請求項12に記載のキット。
【請求項14】
配列番号11のレポータープローブをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のキット。
【請求項15】
e)レジオネラ菌に特異的な核酸配列の増幅に特異的なプライマーの対、
f)百日咳菌に特異的な核酸配列の増幅に特異的なプライマーの対、
g)クラミジア感染の指標となる核酸配列の増幅に特異的なプライマーの対
をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のキット。
【請求項16】
サンプル中の肺炎マイコプラズマの有無を検出する方法であって、
a)核酸増幅反応において、前記第1のプライマーがORF6LP1(配列番号1)であり、前記第2のプライマーがORF6RP1(配列番号3)である核酸プライマーの対を用いて前記サンプルを処理すること、
b)増幅された核酸産物があれば検出することを含む方法であり、増幅された産物は肺炎マイコプラズマ生物が存在する指標となることを特徴とする方法。
【請求項17】
前記核酸増幅反応が鎖置換増幅(SDA)反応であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記増幅された核酸産物とORF6ADPT1(配列番号9)からなるシグナルプライマーとをハイブリダイズすることによって、前記増幅された核酸産物を間接的に検出することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記SDA反応が好熱性鎖置換増幅(tSDA)反応であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記tSDA反応が均一系蛍光実時間tSDA反応であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
サンプル中の肺炎マイコプラズマの有無を検出する方法であって、
a)核酸増幅反応において、第1のプライマーがORF6LP2(配列番号2)であり、第2のプライマーがORF6RP2(配列番号4)である核酸プライマーの対を用いて前記サンプルを処理すること、
b)増幅された核酸産物があれば検出することを含む方法であり、増幅された産物の検出は肺炎マイコプラズマ生物が存在する指標となることを特徴とする方法。
【請求項22】
前記核酸増幅反応が鎖置換増幅(SDA)反応であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記増幅された核酸産物とORF6ADPT2(配列番号10)からなるシグナルプライマーとをハイブリダイズすることによって、前記増幅された核酸産物を間接的に検出することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記SDA反応が好熱性鎖置換増幅(tSDA)反応であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記tSDA反応が均一系蛍光実時間tSDA反応であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
肺炎マイコプラズマのターゲット核酸配列を増幅する方法であって、
a)核酸に、
i)ORF6LP1(配列番号1)、ORF6LP2(配列番号2)、およびORF6LeftPCR(配列番号12)のターゲット結合配列からなる群から選択された第1の増幅プライマー、および任意選択の増幅反応に必要な配列と、
ii)ORF6RP1(配列番号3)、ORF6RP2(配列番号4)、およびORF6RightPCR(配列番号13)のターゲット結合配列からなる群から選択された第2の増幅プライマー、および任意選択の増幅反応に必要な配列と、をハイブリダイズさせること、ならびに
b)ハイブリダイズされた第1および第2の増幅プライマーをターゲット核酸配列上で伸長させ、それによってターゲット核酸配列を増幅すること、を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
シグナルプライマーとのハイブリダイゼーションによってターゲット核酸を間接的に検出することをさらに含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
シグナルプライマーが、ORF6ADPT1(配列番号9)およびORF6ADPT2(配列番号10)からなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
増幅反応に必要な配列が、鎖置換増幅の際に制限エンドヌクレアーゼによってニッキングされる、制限エンドヌクレアーゼに対する認識部位であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
ポリメラーゼ連鎖反応によってターゲット核酸を増幅することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記SDA反応が好熱性鎖置換増幅(tSDA)反応であることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記tSDA反応が均一系蛍光実時間tSDA反応であることを特徴とする請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−60901(P2009−60901A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231464(P2008−231464)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【分割の表示】特願2002−583925(P2002−583925)の分割
【原出願日】平成14年4月11日(2002.4.11)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】