説明

肺癌におけるEML4とALKの融合のためのFISHアッセイ

提供する方法および組成物は、EML4とALKとの間の染色体の逆位を検出するFISHアッセイを行うことに関する。本明細書に記載するFISHアッセイは、治療戦略の決定と同様に、診断および予後診断の目的で有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年2月12日出願の米国仮出願番号61/065,422の「肺癌におけるEML4とALKの融合のためのFISHアッセイ」の35 U.S.C. § 119(e)に基づく利益を主張し、ここに参照によって全体に組み込まれる。
【0002】
政府利害関係
本研究は、米国立衛生研究所により、助成金番号1RO1CA114465-01に基づいて一部支援がなされた。米国政府は本発明に権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、EML4遺伝子およびALK遺伝子が関係する第2染色体上の逆位を試験するFISHアッセイに属する。本アッセイは、肺癌の診断および予後診断の応用例を有する。
【背景技術】
【0004】
未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)は、元来、ALKのC末端キナーゼドメインおよび多様な遺伝子産物のN末端部からなる融合タンパク質の生産をもたらす染色体転座から発見された(Morris et al., Science, 1994, 263:1281-1284)。ALK遺伝子が関係する転座は、未分化リンパ腫の40−60%で同定されたが(Falini et al., Am J Pathol, 1998, 153: 875-886)、それらは、B細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、および筋線維芽細胞腫などのいくつかの珍しい悪性腫瘍でも発見された(Gascoyne et al., Blood, 2003, 102: 2568-2573; Griffin et al., Cancer Res, 1999, 59: 2776-2780; Lawrence et al., Am J Pathol, 2000, 157: 377-384)。ヌクレオフォスミン(NPM)は、最も共通したALKの融合パートナーであるが(転座の80%)、少なくとも6つの他の融合パートナーが同定された(Amin et al., Blood, 2007, 110: 2259-2267)。全長ALKの発現は、主神経組織の発生時に制限されるが、いくつかの珍しい悪性腫瘍もまたその遺伝子を発現する(Falini et al., Am J Pathol, 1998, 153:875-886; Iwahara et al., Oncogene, 1997, 14: 439-449; Lamant et al., Am J Pathol, 2000, 156:1711-1721)。ALKが関係する遺伝子融合は、ALKチロシンキナーゼの恒常的な活性化を頻繁にもたらす。ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)、STAT3、ホスホリパーゼγ、および細胞外シグナル制御キナーゼ1/2(ERK1/2)を含む、ALKキナーゼ活性の多様な下流ターゲットが同定された(Amin et al., Blood, 2007, 110: 2259-2267)。
【0005】
ALK遺伝子と棘皮動物微小管結合タンパク質様4(EML4)の融合が、日本人の非小細胞肺癌(NSCLC)のサブセットで最近検出された(Soda et al., Nature, 2007, 448: 561-566)。EML4−ALK融合の頻度は、日本人の非小細胞肺癌では6.7%(5/75)であることがわかった。EML4−ALK融合が、男女ともに、非喫煙者または現喫煙者から、腺癌および有棘細胞癌で検出され、EGFRまたはK−Ras変異で相互排他的であった。さらに、EML4−ALKは、3T3細胞およびBa/F3モデルで癌化していた(Soda et al., Nature, 2007, 448:561-566)。
【発明の概要】
【0006】
本明細書には、EML4およびALKが関係する染色体逆位の検出のための、FISHアッセイを行う方法および組成物が記載される。EML4−ALKの染色体逆位を検出する蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイに少なくとも部分的に基づく、非小細胞肺癌(NSCLC)の診断および予後診断の方法、およびALKキナーゼ活性を阻害する組成物を用いる、EML4−ALKの逆位の発現によって特徴づけられる疾患の処置方法もまた含まれる。本発明のさらなる側面は、NSCLCの対象を、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物で処置すべきかを決定する方法に関し、かかる対象がEML4−ALKの染色体逆位を示すかという分析に少なくとも部分的に基づく。EML4−ALKの染色体逆位を検出するFISHアッセイに用いるプローブ、およびかかるFISHアッセイを行うためのキットも記載する。
【0007】
本発明の側面は、染色体調製物内においてEML4−ALKの逆位を同定するFISHアッセイを行うための方法に関し、ハイブリダイゼーション条件下で、染色体調製物と第一の核酸プローブおよび第二の核酸プローブを含むプローブセットとを接触させること、ここで、第一のプローブは第一の標識を有し、非逆位型の第一の染色体にハイブリダイズ可能であり、第二のプローブは第一の標識と異なる第二の標識を有し、非逆位型の第二の染色体にハイブリダイズ可能であって、(i)第一および第二の染色体が逆位および融合を起こした場合、第一および第二のプローブは、第一および第二の両標識が単一のシグナルとして現れるように、逆位および融合を介して形成した派生染色体にハイブリダイズする一方で、(ii)第一および第二の染色体が逆位および融合を起こさなかった場合、第一および第二のプローブは、2つのシグナルが検出されるように、それぞれの染色体にハイブリダイズする、;第一および第二のプローブのハイブリダイゼーションパターンを検出すること;および第一および第二のプローブが派生染色体上に現れるか、またはそれぞれ第一および第二の染色体上に別々に現れるかをパターンから決定し、それによってEML4−ALKの逆位の存在または非存在を決定すること、を含む。いくつかの態様では、各核酸プローブは、逆位と関連する切断点(breakpoint)の5Mb、2Mbまたは1Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である。
【0008】
いくつかの態様では、EML4−ALKの逆位の存在または非存在を決定する方法は、ハイブリダイゼーション条件下で、染色体調製物と、RP11−667I6の配列と少なくとも80%の配列同一性を含み、第一の標識を有し、かつ第一の染色体にハイブリダイズ可能な第一の核酸プローブ、および、RP11−100C1の配列と少なくとも80%の配列同一性を含み、第一の標識と異なる第二の標識を有し、かつ第二の染色体にハイブリダイズ可能な第二のプローブとを接触させること、ここで、(i)第一および第二の染色体が逆位および融合を起こした場合、第一および第二のプローブは、第一および第二の両標識が単一のシグナルとして現れるように、逆位および融合を介して形成した派生染色体にハイブリダイズする一方で、(ii)第一および第二の染色体が逆位および融合を起こさなかった場合、第一および第二のプローブは、2つのシグナルが検出されるように、それぞれの染色体にハイブリダイズする、;第一および第二のプローブのハイブリダイゼーションパターンを検出すること、;および第一および第二のプローブが派生染色体上に現れるか、またはそれぞれ第一および第二の染色体上に別々に現れるかをパターンから決定し、それによってEML4−ALKの逆位の存在または非存在を決定すること、に関係する。いくつかの態様では、第一の核酸プローブは、RP11−667I6であって標識を有し、かつ第二の核酸プローブは、RP11−100C1であって第二の標識を有する。
【0009】
本明細書は、対象から生物学的試料を単離すること、その試料から染色体調製物を産出すること、EML4−ALKの逆位の存在または非存在を同定するために、その染色体調製物でFISHを行うこと、およびその染色体調製物がEML4−ALKの逆位を含む場合に、対象がNSCLCを有すると決定することを含む、対象のNSCLCを診断する方法をさらに記載する。いくつかの態様では、各核酸プローブは、逆位と関連する切断点の5Mb、2Mbまたは1Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である。ある態様では、第一の核酸プローブは、RP11−667I6の配列と少なくとも80%の配列同一性および第一の標識を有し、かつ第二の核酸プローブは、RP11−100C1の配列と少なくとも80%の配列同一性および第二の標識を有する。本発明の側面は、FISH解析の結果に基づいて、不良、中間または良好の予後を示す対象の分類方法を含む。NSCLCの診断および/または予後診断のいくつかの態様では、NSCLCは腺癌である。NSCLCの診断および/または予後診断の他の態様では、NSCLCは有棘細胞癌である。
【0010】
本発明の側面は、NSCLCの対象をALKキナーゼ活性を阻害する組成物で処置すべきかを決定する方法にさらに関係し、その方法は、対象から生物学的試料を単離すること、その試料から染色体調製物を産出すること、EML4−ALKの逆位の存在または非存在を同定するために、その染色体調製物でFISHを行うこと、およびその染色体調製物がEML4−ALKの逆位を含む場合に、対象をALKキナーゼ活性を阻害する組成物で処置すべきと決定することに関係する。いくつかの態様では、その方法は、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物で対象を処置することにさらに関係する。いくつかの態様では、EGFRインヒビターも対象に投与される。いくつかの態様では、各核酸プローブは、逆位と関連する切断点の5Mb、2Mbまたは1Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である。いくつかの態様では、第一の核酸プローブは、RP11−667I6の配列と少なくとも80%の配列同一性および第一の標識を有し、第二の核酸プローブは、RP11−100C1の配列と少なくとも80%の配列同一性および第二の標識を有する。いくつかの態様では、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物は、NVP−TAE684またはPF−02341066などのキナーゼインヒビターである。いくつかの態様では、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物は、ALKの発現をノックダウンする剤を含む。ある態様では、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物は、アンチセンスRNA、RNAi、リボザイム、抗体、小分子、ペプチド、アプタマーまたはそれら組み合わせのいずれかである。
【0011】
本発明の側面は、EML4とALKとの間の染色体逆位を検出するための核酸プローブをさらに含む。いくつかの態様では、核酸プローブは標識を有し、EML4が逆位を起こさなかった場合、プローブは非逆位型のEML4染色体にハイブリダイズし、EML4が逆位を起こした場合、プローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、EML4染色体にハイブリダイズする。いくつかの態様では、核酸プローブは、標識を有し、ALKが逆位を起こさなかった場合、プローブは非逆位型のALK染色体にハイブリダイズし、ALKが逆位を起こした場合、プローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、ALK染色体にハイブリダイズする。いくつかの態様では、各核酸プローブは、逆位と関連する切断点の5Mb、2Mbまたは1Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である。いくつかの態様では、プローブは、RP11−667I6の配列の少なくとも80%の配列同一性を含み、標識を有する。いくつかの態様では、プローブは、RP11−100C1の配列と少なくとも80%の配列同一性を含み、標識を有する。
【0012】
本明細書は、染色体調製物内においてEML4−ALKの逆位を同定するためのキットをさらに記載し、そのキットは、第一の核酸プローブであって、そのプローブは標識を有し、EML4が逆位を起こさなかった場合、プローブは非逆位型のEML4染色体にハイブリダイズし、かつEML4が逆位を起こした場合、プローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、EML4染色体にハイブリダイズする、前記第一の核酸プローブ;第二の核酸プローブであって、そのプローブは標識を有し、ALKが逆位を起こさなかった場合、プローブは非逆位型のALK染色体にハイブリダイズし、かつALKが逆位を起こした場合、プローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、ALK染色体にハイブリダイズする、前記第二の核酸プローブ;染色体調製物内においてEML4−ALKの逆位を同定するFISHアッセイを行うための第一および第二のプローブの使用についての説明書(instruction)、を含む。
【0013】
いくつかの態様では、各核酸プローブは、逆位と関連する切断点の5Mb、2Mbまたは1Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である。いくつかの態様では、キットはDAPIなどのDNA対比染色剤をさらに含む。いくつかの態様では、キットはハイブリダイゼーションバッファー、封入剤(mounting media)、およびコントロールスライドを含む。
【0014】
本発明のさらなる側面は、EML4−ALKの逆位を有すると診断された対象の、EML4−ALKの逆位の発現によって特徴づけられる疾患の、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物を対象に投与する処置方法に関係する。いくつかの態様では、疾患は非小細胞肺癌などの癌である。ある態様では、非小細胞肺癌は、腺癌または有棘細胞癌である。
【0015】
いくつかの態様では、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物は、NVP−TAE684またはPF−02341066などのキナーゼインヒビターを含む。いくつかの態様では、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物は、アンチセンスRNA、RNAi、リボザイム、またはそれら組み合わせのいずれかなどのALKの発現をノックダウンする剤を含む。いくつかの態様では、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物は、抗体、小分子、ペプチド、アプタマーまたはそれら組み合わせのいずれかを含む。本明細書に記載の、EML4−ALKの逆位を有すると診断された対象の、EML4−ALKの逆位の発現によって特徴づけられる疾患を処置する方法は、エルロチニブ(Erlotinib)、ゲフィチニブ(Gefitinib)、またはAG1478などのEGFRインヒビターの投与も含むことができる。本明細書に記載の方法は、化学療法剤の投与も含んでもよい。いくつかの態様では、複数のALKキナーゼインヒビターおよび/またはEGFRインヒビターおよび/または化学療法剤が投与される。いくつかの態様では、EML4−ALKの逆位を有すると診断された対象において、EML4−ALKの逆位の発現によって特徴づけられる疾患を処置する方法が、本明細書に記載の診断方法を用いてEML4−ALKの逆位を有すると診断された対象に適用される。いくつかの態様では、対象はEGFR変異を有すると診断される。
【0016】
対象は、いくつかの態様では、手術および/または放射線治療を受けてもよい。
本発明の側面は、EML4−ALKの逆位を発現する細胞で、細胞をALKキナーゼ活性を阻害する組成物と接触させることにより、ALKキナーゼ活性を阻害することに関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1は、NSCLCの細胞株および腫瘍でのEML4−ALKを示す。図1Aは、エクソンアレイを用いる肺癌の細胞株でのALK融合遺伝子の検出を示す。83種の肺癌の細胞株のスクリーニングで(80/83NSCLC)、エクソンアレイは、H3122およびH2228細胞株が、他の81の細胞株と比較して、ALKのエクソン20〜29に対応する#80〜140のALKプローブについて、有意に高いシグナル(log2差)を有していたことを示した。プローブは、標識強度に基づいて、非反応プローブ(薄い陰影(light shade))、低強度プローブ(中間の陰影(intermediate shade))および高強度プローブ(濃い陰影(dark shade))の3つのカテゴリーに割り当てられた。高強度プローブのみが、切断点の検出に使用された。
【図1B】図1Bは、NSCLCの細胞株および腫瘍におけるEML4−ALK融合のRT−PCR検出を示す。プライマーセット2は、H3122、H2228、およびDFCI032細胞株からEML4−ALK融合遺伝子を増幅するが、A549株からは増幅しない。プライマーセット1および2は、8種の原発性NSCLCからもEML4−ALK融合を検出した。H3122細胞はポジティブコントロールとして、A549はネガティブコントロールとして役立つ。
【図1C】図1Cは、NSCLCでの4つの異なるEML4−ALK変異体の模式的な図を示す。
【0018】
【図2】図2は、FISHを用いたEML4−ALKの検出を示す。図2Aは、ALK(矢印)およびEML(矢頭)のシグナルが別々に見える野生型PC−9細胞株を示す。図2Bは、EML4−ALKの融合シグナル(矢印)が小さな染色体外断片(矢印)に見えるH2228細胞株を示す。図2Cは、染色体の一つがEML4−ALK融合シグナルを黄色で示す(矢印)DFCI032細胞株を示す。図2Dは、図2Cに示すDFCI032細胞株を樹立するために使用した胸水を有する患者の腫瘍から得られたFFPE標本から、EML4−ALKについての間期FISHを示す。腫瘍は、EML4−ALK融合シグナル(矢印)について、ヘテロ接合性である。
【0019】
【図3A】図3は、NSCLCの細胞株を含むEML4−ALKの成育に対するNVP−TAE684の効果を示す。図3Aは、表示濃度のTAE−684で処理したNSCLC細胞を表すグラフを示す。生存可能な細胞が、処理72時間後に測定された。生存可能な細胞の割合が、未処理のコントロールと相対的に示される。A549(KRAS G12S);PC9(EGFR 欠失E746_A750);H2228(EML4−ALK 変異体3);H3122(EML4−ALK 変異体1);DFCI032(EML4−ALK 変異体1)。
【図3B】図3Bは、無処理(左バー)および0.1μM NVP−TAE684で72時間処理した後(右バー)のサブG1フラクションのFACS解析を示す。TAE−684処理に続く顕著なアポトーシスは、H3122細胞株でのみ観察される。
【図3C】図3Cは、0.1μM NVP−TAE684の72時間処理に続くPARPのウェスタンブロット解析を示す。Aでの細胞成育に対するTAE−684の効果と一致して、89kDaの切断PARP産物が、H3122細胞株でのみ観察される。
【0020】
【図4】図4は、野生型およびEML4−ALKポジティブNSCLCの細胞株でのNVP−TAE684処理に続くウェスタンブロット解析を示す。全ALKおよびリン酸化ALKは、EML4−ALKポジティブ細胞株(H3122、H2228、DFCI032)のみで検出されるが、野生型コントロール(PC−9)では検出されない。H3122およびDFCI032細胞株では、ALKポジティブのバンドは変異体1(矢印1)の予測分子量(117kDa)に対応する〜115kDaで移動し、H2228では、バンドは変異体3(矢印3)の予測分子量(90/91kDa)にも対応する〜90kDaで移動する。ALKリン酸化は、すべての細胞株において、0.1μM NVP−TAE684処理後(6時間)完全に阻害される。Akt、STAT3、およびERK1/2のリン酸化は、NVP−TAE684でH3122およびH2228細胞株で減少するが、DFCI032およびPC−9株においては、変化しないままである。すべての細胞株は、PTENの存在を示す。α−チューブリンが、ローディングコントロールとして使用される。
【0021】
【図5】図5は、NSCLCの細胞株におけるALK遺伝子の異なる部位の発現レベルを、エクソンアレイを用いて示す。非反応プローブは、薄い陰影で示され、低強度プローブは中間の陰影で示され、高強度プローブは濃い陰影で示される。図5Aは、H2228細胞株において、エクソンアレイが3’末端に位置するALKプローブについて、残り83種の細胞株と比較して有意に高いシグナルを検出したことを示す。図5Bは、H2228株と類似してH3122細胞株において、ALKの3’末端において有意に高いシグナルが見られたことを示す。図5Cは、HCC2935細胞株では、異なるALKプローブについては、シグナルに違いが無いことを示す。
【0022】
【図6】図6は、EML4−ALKの検出に使用するFISHアッセイの図解を示す。野生型の標本では、ALKおよびEML4のシグナルは、第2染色体に別々に見られる。(inv(2)(p23.3p21)の逆位を通してEML4とALKが融合した場合、個々の両シグナルは融合し、単一のシグナルを形成する。
【0023】
【図7】図7は、核酸プローブを含み、およびFISHアッセイでのそれらの使用についての説明書を含むキットを示す。
【0024】
詳細な説明
本発明の側面は、EML4とALKをまとめる異常な染色体の逆位を検出する方法および組成物に関する。本発明は、少なくとも部分的に、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイが、EML4−ALKの逆位をもたらす染色体逆位を検出するために使用され得ることの発見に関する。非小細胞肺癌(NSCLC)におけるこの染色体逆位の罹患率は、本明細書に記載のFISHアッセイの診断および予後診断への適用をもたらした。EML4−ALKの逆位の検出のためのFISHアッセイの使用は、かかる遺伝子融合を示す対象の適切な処置戦略の決定することの適用性も有する。EML4−ALKの逆位を検出するFISHアッセイの使用のためのプローブ、かかるプローブを産出する方法、およびかかるプローブを含むキットが、本明細書にさらに記載される。
【0025】
本発明は、その適用において続く記載に係る、または図に示される構成の詳細および成分の配置に限定されない。本発明は、他の態様および様々な方法での実践または実行が可能である。また、本明細書で使用する専門語および用語は、記載の目的であり、限定としてみなされるべきではない。本明細書の、「包含する(including)」、「含む(comprising)」または「有する(having)」、「含有する(containing)」、「関係する(involving)」およびそれらのバリエーションの使用は、その後に列挙する項目、および追加項目と同様に、それらに相当するものを包含することを意味する。
【0026】
本発明の側面は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションの使用に関する。本明細書で使用するように、「蛍光インサイチュハイブリダイゼーション」または「FISH」は、染色体上の特定のDNA配列にハイブリダイズする標識核酸プローブの使用によって、染色体上の特定のDNA配列を検出、または局在化する方法を言及する。本明細書で使用するように、「核酸プローブ」は、染色体上の特定のDNA配列を認識してハイブリダイズする核酸(DNA、RNA、PNAなど)配列を言及する。FISHは多様な研究応用例があるが、ある応用例では、染色体の逆位を検出する能力に属する。本明細書で使用されるように、「染色体の逆位」は、染色体のセグメントが端々逆転する再構成を言及する。逆位は、野生型または正常な細胞では通常起こらない2つの遺伝子間での融合が生じ、癌などの障害を引き起こす可能性がある。したがって、細胞中の染色体逆位の検出は、癌などの障害を示すものになり得る。
【0027】
未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子に関係する染色体の逆位は、複数のタイプの癌で検出され、6つの異なる遺伝子との融合に関係し得る(Amin et al., Blood, 2007, 110:2259-2267)。これら逆位において、ALKのC末端キナーゼドメインは、様々な遺伝子のN末端領域と融合する(Morris et al., Science, 1994, 263:1281-1284)。近年、ALK遺伝子が棘皮動物微小管結合タンパク質様4(EML4)遺伝子と融合する染色体の逆位が、日本人のNSCLC患者で検出された(Soda et al., Nature, 2007, 448: 561-566)。染色体の逆位、またはEML4とALKとの間の融合は、本明細書ではEML4−ALKとして言及される。本明細書の例の部門で提示するデータは、EML4−ALKの融合は、アメリカ人および韓国人のNSCLC患者においても広まっていることを明らかにする。
【0028】
本発明の側面は、EML4−ALKの染色体逆位の存在検出におけるFISHの使用に関する。本明細書に記載の方法は、ハイブリダイゼーション条件下で、染色体調製物と第一の核酸プローブおよび第二の核酸プローブを含むプローブセットを接触させること、ここで、第一のプローブは第一の標識を有し、非逆位型の第一の染色体にハイブリダイズ可能であり、第二のプローブは第一の標識と異なる第二の標識を有し、非逆位型の第二の染色体にハイブリダイズ可能であって、(i)第一および第二の染色体が逆位および融合を起こした場合、第一および第二のプローブは、第一および第二の両標識が単一のシグナルとして現れるように、逆位および融合を介して形成した派生染色体にハイブリダイズする一方で、(ii)第一および第二の染色体が逆位および融合を起こさなかった場合、第一および第二のプローブは、2つのシグナルが検出されるように、それぞれの染色体にハイブリダイズする、;第一および第二のプローブのハイブリダイゼーションパターンを検出すること;および第一および第二のプローブが派生染色体上に現れるか、またはそれぞれ第一および第二の染色体上に別々に現れるかをパターンから決定し、それによってEML4−ALKの逆位の存在または非存在を決定すること、を含む。
【0029】
複数の異なるアプローチが、本発明と適合性のあるプローブセットを設計するために使用され得ることは、認められるべきである。いくつかの態様において、核酸プローブは、「融合プローブ」として記載されてもよい。これら態様では、第一のプローブは標識を有し、EML4が逆位を起こさなかった場合、プローブはEML4を含む非逆位型の染色体にハイブリダイズし、かつEML4が逆位を起こした場合、プローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、EML4を含む染色体にハイブリダイズする。第二の核酸プローブは第一の標識と異なる第二の標識を有し、ALKが逆位を起こさなかった場合、プローブは非逆位型のALK染色体にハイブリダイズし、かつALKが逆位を起こした場合、プローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、ALK染色体にハイブリダイズする。EML4とALKが逆位によって融合しなかった野生型の染色体調製物において、第一および第二のプローブは、それぞれの非逆鋳型の染色体領域にハイブリダイズし、2つの別々のシグナルが検出される。EML4とALKが逆位によって融合した異常な染色体調製物において、第一および第二のプローブは、第一および第二の両標識が単一のシグナルとして現れるように、逆位および融合を介して形成した派生染色体にハイブリダイズする。
【0030】
他の態様では、「ブレークアパート(break-apart)」プローブは、本発明と適合性でもある。これら態様では、第一のプローブは標識を有し、逆位切断点付近の非逆位型の染色体にハイブリダイズ可能である。第二のプローブは、第一のプローブと異なる標識を有し、逆位切断点の反対側の同一染色体領域とハイブリダイズ可能である。染色体が異常な逆位を起こさなかった正常な野生型の染色体の調製物では、2つのプローブは、隣接のシグナルまたは単一のシグナルとして検出されるだろう。染色体が逆位および融合を起こした異常な染色体の調製物では、2つのシグナルが、染色体の逆位による分離のために、別々のシグナルとして離れて検出されるだろう。EML4またはALKのいずれのブレークアパートプローブも、本発明に適合性がある。
【0031】
いくつかの態様では、FISHアッセイで使用される核酸プローブは、オークランド小児病院研究所のBAC PACリソースセンター(BPRC)(Oakland、CA)から入手可能なBAC(バクテリア人工染色体)クローンから産生される。本明細書で使用するように、「BAC」は、大腸菌細胞においてDNA断片をクローニングするために使用されるベクターを言及する。BACは、典型的には50〜300kbのDNAインサートを含有する。他の態様では、FISHアッセイに使用する核酸プローブは、フォスミドから産生され得る。本明細書で使用されるように、「フォスミド」は、細菌のF−プラスミドに基づくクローニングベクターを言及する。ある態様では、プローブは、ともにプールした複数のフォスミドから産生される。FISHアッセイのための最適プローブの長さは、経験的に決定する必要があるかもしれないことは、認められるべきである。いくつかの態様では、プローブの長さは、80〜150kbpの間である。大きなDNA断片の他の供給源もFISHアッセイのためのプローブ産生に、したがって、本発明の方法と適合性があるであろうことは、さらに認められるべきである。より小さなDNA断片も本発明の方法と適合性があり、いくつかの態様では、(フォスミドについて上述するように)ともにプールされる。
【0032】
本発明の側面によると、核酸プローブは、タグまたは標識によって標識される。いくつかの態様では、FISHアッセイに使用するタグまたは標識は、フルオロフォアとも言及される蛍光タグまた蛍光標識である。核酸を標識するいずれの適切な技法が本発明と適合性があり、当業者によって理解されるであろう。いくつかの態様では、核酸プローブは標準プロトコルに従って、ニックトランスレーションを介して標識される。他の態様では、核酸プローブは標準プロトコルに従って、ランダムプライミングを介して標識される。さらなる態様では、核酸プローブは標準プロトコルに従って、末端標識を介して標識される。核酸プローブを標識するために使用されるいずれのタグまたは標識は、本発明と適合性があることは、認められるべきである。いくつかの態様では、タグは限定されることなく、Abbott Molecular(Des Plaines、IL)からすべて入手可能なSpectrumRed-dUTP、SpectrumGreen-dUTP、SpectrumGreen-11-dUTP、およびSpectrumOrange-dUTPから選択される。いくつかの態様では、プローブは、ビオチンまたはジゴキシゲニンで標識されてもよい。
【0033】
いくつかの態様では、核酸プローブは、逆位と関連する切断点の5Mb、2Mb、1Mbまたは1Mb以下の内に位置する領域で、非逆位型の染色体にハイブリダイズ可能である。ALKおよびEML4は、12メガベース離れて第2染色体のショートアームに両方位置しており、5’から3’の方向性は反対にある。2つの異なるEML4−ALK融合の変異体が以前に特徴づけられ、両方ともEML4遺伝子のエクソン1〜13(変異体1)またはエクソン1〜20(変異体2)と融合するALKのエクソン20〜29に関係する(Soda et al., Nature, 2007, 448: 561-566)。変異体3(EML4のエクソン6がALKのエクソン20と融合する)は、選択的にスプライシングする33bpの断片(エクソン7a)を組み込ませるために、融合体のEML4部分のスプライシングを変化させる。本明細書に記載される融合遺伝子の変異体4は、EML4コドン1〜569(エクソン15)を、ALKのコドン1078〜1621に融合する。EML4−ALK融合の変異体1では、切断点は、EML4のエクソン13の3.6kb下流であり、ALKのエクソン21の297bp上流である。EML4−ALK融合の変異体2では、切断点は、EML4のエクソン20の545bp下流およびALKのエクソン21の232bp上流に位置する。EML4−ALK融合の変異体3および4では、正確な切断点はまだ決定されていない。しかしながら、特異的な変異体の切断点は、当業者によって決定され得る。
【0034】
複数のプローブが、本発明と適合性があることは、認められるべきである。プローブは、UCSCゲノムデータベースウェブサイトを通じて利用可能であるように、公に利用可能なヒトゲノム配列データと同様に、逆位の切断点およびEML4−ALK融合変異体の配列データに関して、本明細書で提供される情報に基づいて設計可能である。さらなるEML4−ALK融合の変異体が存在するかもしれないことも、認められるべきである。本明細書に記載のプローブおよびアッセイは、すべての可能なEML4−ALKの変異体、およびこれら変異体を同定する方法を包含する。いくつかの態様では、EML4−ALKの逆位を認識するように設計したプローブは、すべてのEML4−ALKの逆位の変異体を認識するだろう。他の態様では、EML4−ALKの逆位を認識するように設計したプローブは、1または複数のEML4−ALKの逆位の変異体を認識するかもしれない。
【0035】
いくつかの態様では、ALKの3’末端にハイブリダイズする核酸プローブおよびEML4の5’末端にハイブリダイズする核酸プローブは、EML4−ALKの逆位を検出するためのFISHに使用される。いくつかの態様では、ALKの3’末端にハイブリダイズする核酸プローブは、BACクローンRP11−100C1から産生され、標識を有する。いくつかの態様では、ALKの3’末端にハイブリダイズする核酸プローブは、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のRP11−100C1との配列同一性を含む。いくつかの態様では、EML4の5’末端にハイブリダイズする核酸プローブは、BACクローンRP11−667I6から産生され、標識を有する。
いくつかの態様では、EML4の5’末端にハイブリダイズする核酸プローブは、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のRP11−667I6との配列同一性を含む。RP11−100C1およびRP11−667I6は両方とも、オークランド小児病院研究所のBAC PACリソースセンター(BPRC)(Oakland、CA)から入手可能である。
【0036】
本発明の側面によると、FISHは染色体調製物上で、RP11−100C1の配列と少なくとも80%の配列同一性を含む第一のプローブおよびRP11−667I6の配列と少なくとも80%の配列同一性を含む第二のプローブなどの、蛍光標識をしたプローブを用いて行われる。FISHは、当業者に知られた標準技法に従って行われる(Lee et al., Chromosoma, 2000, 109:381-389)。いくつかの態様では、FISHを行うための試料調整は、自家蛍光の減少およびスライド上に試料を乗せることに関係する。いくつかの態様では、試料は、固定および処理した組織、凍結試料、スライド上の試料、またはパラフィン包埋の試料からなる。試料調整の側面は、米国特許公報US2006/0199213およびUS2005/0100944でさらに考察され、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0037】
FISHアッセイは、核酸プローブと染色体上の特異的なDNA配列との間のハイブリダイゼーションの検出に頼っている。本明細書で使用される「ハイブリダイゼーション」は、二本鎖分子の形成のための、二本のDNAまたはRNA相補鎖の結合過程、またはそれらのハイブリッドを言及する。ハイブリダイゼーションの工程は、1、2、または複数のプローブに関係してもよい。ハイブリダイゼーション条件は、種々のプローブについて経験的に決定される必要があることは、認められるだろう。ハイブリダイゼーション条件は、当業者に知られるように、高ストリンジェンシーから低ストリンジェンシーの条件の範囲を生じて変動し得る。温度、塩濃度、ホルムアミド濃度、およびデキストラン硫酸などの他の成分(米国特許公報US2005/0100944で考察)を限定することなく含む複数の因子が、ハイブリダイゼーションを至適化するために、経験的に操作され得る。これら因子および他の条件は、与えられたプローブおよび試料についてのハイブリダイゼーションシグナルを至適化するために、ハイブリダイゼーションの工程中および続く洗浄工程中に変動し得る。インサイチュハイブリダイゼーションの一般的な条件は、Leitch et al., In Situ Hybridization: a practical guide, Oxford BIOS Scientific Publishers, Microscopy handbooks v. 27 (1994)で、考察される。プローブ検出について、より高いストリンジェンシー条件は、一般的にはより低いバックグラウンドシグナルをもたらすが、感度もまた減少し得る。いくつかの態様では、高ストリンジェンシー条件は、0.1×SSPE、0.1%SDS、65℃からなり、中ストリンジェンシー条件は、0.2×SSPE、0.1%SDS、50℃からなり、低ストリンジェンシー条件は、1×SSPE、0.1%SDS、50℃からなる(米国特許公報US2006/0199213で考察)。これら条件の多数の可能なバリエーション、および数々のバッファーおよび塩を含む多数の他の成分が、本発明と適合性があるだろう。
【0038】
FISHアッセイでの正のハイブリダイゼーションシグナルは、蛍光顕微鏡を通じて、核酸プローブに付随するタグの可視化によって検出される。いくつかの態様では、第一の核酸プローブは、SpectrumRed-dUTPなどの蛍光タグで標識される一方で、第二の核酸プローブは、SpectrumGreen-dUTPなどの異なる蛍光タグで標識される。EML4とALKとの間の染色体の逆位がなかった染色体調製物中では、2つの蛍光シグナルが、赤色および緑色のシグナルとして、別々に検出されるだろう。EML4とALKとの間の染色体の逆位があった染色体調製物中では、2つの蛍光シグナルは併合し、単一の黄色のシグナルとして検出されるだろう。したがって、遺伝子融合は、逆位に伴う2つのシグナルの近接、および2つの蛍光シグナルの併合による異なる色彩の検出によって示される。
【0039】
いくつかの態様では、FISHアッセイは、テスト試料およびコントロール試料に関係するだろう。いくつかの態様では、コントロール試料は、野生型または正常な染色体調製物であってもよい一方で、テスト試料は、EML4とALKとの間の染色体逆位の存在が疑われる試料であってもよい。テスト試料およびコントロール試料は、同一のプローブで処理され、プローブの局在および蛍光シグナルが、コントロール試料とテスト試料との間で比較されるだろう。コントロール試料が野生型または正常な染色体調製物である態様では、テスト試料中のプローブおよびコントロール試料中のプローブでの類似の局在および蛍光シグナルは、テスト試料はEML4−ALKの逆位を含まないことを示す一方で、テスト試料中のプローブおよびコントロール試料中のプローブでの局在および蛍光シグナルの違いは、テスト試料はEML4−ALKの逆位を含むことを示す。他の態様では、コントロール試料は、EML4−ALKの逆位を含むことが知られている試料であってもよい。これらの態様では、テスト試料のプローブおよびコントロール試料のプローブでの類似の局在および蛍光シグナルは、テスト試料はEML4−ALKの逆位を含むことを示す一方で、テスト試料中のプローブおよびコントロール試料中のプローブでの局在および蛍光シグナルの違いは、テスト試料はEML4−ALKの逆位を含まないことを示す。
【0040】
本発明の側面は、例えば、対象から細胞試料または組織試料を得て、かかる試料をEML4−ALKの逆位の存在についてアッセイすることによって、対象における癌の発症、進行または退行を診断またはモニタリングする方法を含む。本明細書で使用されるように、「癌」の用語は、身体臓器およびシステムの正常な機能を妨害するかもしれない、細胞の制御されない成育を言及し、原発性および転移性の腫瘍を含む。原発性腫瘍、または最初の部位から転移し、生命の維持に必要な臓器に接種する癌は、発症した臓器の機能的悪化を介して、最終的には対象の死をもたらす。転移腫瘍は、原発性腫瘍の部位とは異なり、原発性腫瘍から身体の他の部位への癌細胞の播種に起因する癌細胞または癌細胞の集団である。転移腫瘍は、最終的には対象の死をもたらすかもしれない。
【0041】
いくつかの態様では、請求する発明の側面によって、診断または処置される対象は、肺癌を伴う対象である。肺癌は、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を包含する。肺癌の症例約80%の原因である非小細胞肺癌は、有棘細胞癌(類表皮癌とも呼ばれる)、大細胞癌、腺癌、多形性、カルチノイド腫瘍、唾液腺癌、および未分類の細胞種を限定することなく含む、複数のタイプの癌を包含する。本発明の側面は、NSCLCの全カテゴリーを包含する。いくつかの態様では、NSCLCは腺癌である。他の態様では、NSCLCは有棘細胞癌である。
【0042】
対象は、癌を有する疑いがあってもなくてもよい。症状の発症は、対象の症状と関連する、生理学的な変化または特徴の開始である。かかる変化は、生理学的な症候によって証明されてもよく、または臨床的に無症候である。例えば、癌の発症は、その時点で臨床的な症候が明らかでないかもしれないが、癌に関する生理学的特徴が対象に存在するかもしれない期間を伴ってもよい。症状の進行は発症に続き、臨床的な症候の増加によって特徴づけられても、そうでなくてもよい、その症状の生理学的特徴の前進である。対照的に、症状の退行は、おそらく平行して症候の減少を伴う症状の生理学的特徴の減少であり、処置に起因してもよく、または病状の自然回復であってもよい。
【0043】
非癌細胞または非癌組織には存在しないEML4−ALK融合などの癌に関連する遺伝子融合の存在は、対象における癌のマーカーとして特定される。癌の症状の発症は、かかる特定されたマーカーが以前に存在しなかった対象試料中で、かかるマーカーの出現によって示されてもよい。例えば、癌のマーカーが対象由来の第一の試料に存在しないと決定された場合、癌のマーカーがその対象由来の第二または続く試料中で存在するとの決定は、その対象での癌の発症の指標になる。癌に関連するマーカーのいくつかの例では、転移腫瘍に対して原発性腫瘍中で差次的に発現してもよく、そのため、対象試料中の選択した癌関連ポリペプチドの同定に基づいて、疾患のステージおよび/または診断レベルを確立することができる。
【0044】
単一の組織タイプにおける異なるタイプの癌は、異なる癌関連マーカーを発現するかもしれない。かかるバリエーションは、癌特異的診断および続く患者の特異的な症状にあわせた処置を可能とするかもしれない。これら発現の差は、癌関連マーカーの差次的発現に基づいて、医師が癌を診断することを可能とし、差次的マーカーに基づいて特異的な処置を選択および投与することを可能とする。EML4−ALKの逆位などの癌関連マーカーの単離および同定は、当業者がこの癌関連マーカーの発現によって特徴づけられる障害の診断をすることを可能とする。
【0045】
本発明の側面は、EML4−ALKの逆位の検出のためのFISHアッセイの使用を通じて、NSCLCの診断に関する。いくつかの態様では、NSCLCの診断方法は、対象から生物学的試料を単離すること、その試料から染色体調製物を産出すること、EML4−ALKの逆位の存在または非存在を同定するために、その染色体調製物でFISHを行うこと、およびその染色体調製物がEML4−ALKの逆位を含む場合に、対象がNSCLCを有すると決定することを含む。EML4−ALKの逆位の検出のためのFISHアッセイの使用によって、NSCLCと診断された対象は、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物の投与によって処置されてもよい。いくつかの態様では、EGFRインヒビターまたは他の治療を含む組成物も投与されてもよい。
【0046】
本明細書で使用するように、「生物学的試料」の用語は、生物体全体または組織、細胞または成分部分のサブセットを言及してもよい。「生物学的試料」はまた、生物体全体または組織、細胞、成分部分から調製したホモジネート、ライセート、または抽出物、またはそれら画分または部分を言及してもよい。いくつかの態様では、生物学的試料は、肺組織由来の試料だろう。いくつかの態様では、生物学的試料はインビボであってもよい。他の態様では、生物学的試料はインビトロであってもよい。いくつかの態様では、生物学的試料は細胞株、細胞培養物、または細胞懸濁液であってもよい。好ましくは、生物学的試料はDNAの量およびタイプ、および/または試料が由来する親細胞に存在する発現産物に対応する。生物学的試料は、ヒトの対象またはヒト以外の対象由来になり得る。染色体調製物は、標準プロトコルに従って、生物学的試料から調製される。いくつかの態様では、FISHを行うために使用される試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本である。
【0047】
いくつかの態様では、EML4−ALKの逆位の存在または非存在を検出するFISH解析の結果は、NSCLCの診断に使用されるだろう。他の態様では、EML4−ALKの逆位の存在または非存在を同定するFISH解析の結果は、FISH解析の結果に基づいて、不良、中間または良好のNSCLCの予後を示す対象の分類に使用されるだろう。NSCLCの診断または予後診断のためのEML4−ALKの逆位を検出するFISH解析の実行は、他のマーカー、または他の診断または予後診断アッセイの分析と併用してもよいと認められるべきである。いくつかの態様では、他のアッセイが、染色体逆位の分子的基盤のさらなる確認のために、またはさらなる分析のために、FISHアッセイと併用して、または続いて行われてもよい。例えば、どのEML4−ALK融合の変異体が生物学的試料中に存在するかを検証または確認するために、PCRまたはRT−PCRが、生物学的試料で行われてもよい。いくつかの態様では、ALKキナーゼ活性を測定するアッセイの実行も、EML4−ALKの逆位を含むと疑われる、または含むと知られている生物学的試料で行われてもよい。
【0048】
いくつかの態様では、テスト試料はNSCLCまたは前癌性の症状を有する対象由来の試料であってもよい一方で、コントロール試料は癌を含まない、および/または前癌性の症状がない細胞または対象由来の試料であってもよい。これら態様では、コントロール試料ではなく、テスト試料でのEML4−ALKの逆位の検出は、テスト試料はNSCLCまたは前癌性の症状を有する対象に由来したことを示すかもしれない。いくつかの態様では、コントロール試料は、EML4−ALKの逆位を示すNSCLCまたは前癌性の症状を有すると知られている細胞または対象に由来する試料であってもよい。これらの態様では、テスト試料およびコントロール試料でのEML4−ALKの逆位の検出は、テスト試料はNSCLCまたは前癌性の症状を有する対象に由来したことを示すかもしれない。いくつかの態様では、コントロール試料は、EML4−ALKの逆位を含む、または含まないNSCLCの細胞株であってもよい。
【0049】
本発明のいくつかの側面によれば、対象(例えば、NSCLC患者)は、すべてではない場合に、少なくともいくつかの癌細胞でEML4−ALK融合を発現する疾患(例えば、NSCLC)を有する場合、その対象はALKキナーゼ活性を阻害する組成物での処置の候補として、同定されてもよい。したがって、いくつかの態様では、対象(例えば、NSCLC患者)はEML4−ALK融合の存在について試験され、存在の場合には、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物での処置の候補として同定される。EML4−ALK間融合のいずれの検出も、この遺伝子融合の可能性のあるいずれの変異体をも包含し、ALKキナーゼ活性のインヒビターで処置する指標とみなされてもよいことは、認められるべきである。いくつかの態様では、すべてではない場合に、少なくともいくつかの癌細胞でEML4−ALK融合を示す疾患(例えば、NSCLC)を有する対象(例、NSCLC患者)は、ALKキナーゼ活性を阻害する1または2以上の組成物を含む処置を、推薦または処方されてもよい。
【0050】
本明細書で使用されるように、「対象」の用語は、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物または動物を言及する。ヒト以外の哺乳動物は、家畜動物、ペット、実験動物、およびヒト以外の霊長類を含む。ヒト以外の対象は、限定なしに特別に、ニワトリ、ウマ、雌牛、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ミンク、およびウサギを含む。本発明のいくつかの態様では、対象は患者である。本明細書で使用するように、「患者」は、医師または他の医療従事者を受診した、それらからアドバイスを受けた、またはそれらから処方箋または他の推薦を受けた者を含む、医師または他の医療従事者の世話を受ける対象を言及する。患者は典型的には、NSCLCを有する、または有するリスクがある対象である。
【0051】
「処置」または「処置する」の用語は、症状(例えば、NSCLC)の予防、寛解、防止または治癒を意図する。症状(例えば、NSCLC)開始後の処置は、症状および/または関連する症候を減少、寛解または一斉に除去する、または悪化することから防止することを目的とする。症状(例えば、NSCLC)開始前の対象の処置(すなわち、予防処置)は、症状にかかるリスクを減少すること、および/または症状にかかった場合に重症度を和らげることを目的とする。本明細書で使用するように、「防止」の用語は、対象が障害にかかるであろう確立の減少をもたらす、症状(例えば、NSCLC)にかかるリスクのある対象の予防処置、およびすでに確立した障害のさらなる発達の阻害を言及する。
【0052】
本発明の側面は、ALKキナーゼ活性を阻害する1または2以上の組成物と細胞を接触させることによって、EML4−ALKの逆位を発現する細胞でのALKキナーゼ活性を阻害することに関係する。ALKキナーゼ活性を阻害する組成物は、EML4−ALKの逆位を有すると診断された対象で、EML4−ALKの逆位の発現によって特徴づけられる疾患(例えば、NSCLC)の処置に使用することができる。ALKキナーゼ活性を阻害する組成物は、ALKおよび/またはALKキナーゼ活性の発現(例えば、転写、翻訳、および/または安定性)を阻害してもよいことは、認められるべきである。インヒビターは、ALKを阻害する特異的なALKキナーゼインヒビターまたは非特異的なインヒビター(例えば、非特異的キナーゼインヒビター)またはマルチターゲットインヒビターであってもよい。ALKキナーゼのインヒビターが開発され、前臨床モデルで検討された。初期の研究は、WHI−P154(IC50 〜5μM)、ピリドン(スタウロスポリンのIC50 0.15〜0.78μM)などのALKインヒビターを用いて、またはHSP90インヒビターとともに行われた(Li et al., Med Res Rev, 2007, Aug 10, Epub ahead of print)。その後に、ジアミノまたはアミノピリミジンなどのより強力で特異的なALKインヒビターが開発された。これらは、NVP−TAE684およびPF−02341066などのALKキナーゼ活性のジアミノおよびアミノピリミジンインヒビターを含む(Galkin et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 2007, 104:270-275; Zou et al., Cancer Res, 2007, 67:4408-4417)。これら両インヒビターは、良好な生物学的利用能を有し、それらはALKキナーゼ活性およびNPM−ALKポジティブのリンパ腫細胞の成育を、低ナノモル範囲(Karpas299細胞で、NVP−TAE684およびPF−02341066それぞれ2〜5nMおよび26nMのIC50)で阻害する。PF−02341066は、現在第I相臨床開発中の、METおよびALKの両方のインヒビターである。本明細書に記載の方法は、EML4−ALKの逆位を示す対象におけるNSCLCの処置のための、ALKキナーゼ活性を阻害するいずれのキナーゼインヒビターの使用も包含する。いくつかの態様では、キナーゼインヒビターは、NVP−TAE684である(Galkin et al., Proc Natl Acad Sci., 2007, 104(1):270-5)。他の態様では、キナーゼインヒビターは、PF−02341066である(Christensen et al., Mol Cancer Ther, 2007, 6(12 Pt 1):3314-22)。ALKキナーゼ活性の下流ターゲットは、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)、STAT3、ホスホリパーゼγ、および細胞外シグナル制御キナーゼ1/2(ERK1/2)を含む(Amin et al., Blood, 2007, 110:2259-2267)。いくつかの態様では、すべてではない場合に、少なくともいくつかの癌細胞でEML4−ALK融合を示す疾患(例えば、NSCLC)を有する対象(例えば、NSCLC患者)は、下流シグナル伝達経路の成分を阻害する1または2以上の組成物を含む処置を推薦または処方されてもよい。
【0053】
いくつかの態様では、ALKキナーゼの活性を阻害する組成物は、小分子、ペプチド、アプタマー、または抗体であってもよい。他の態様では、ALKキナーゼの活性を阻害する組成物は、ALKの発現をノックダウンする剤であってもよい。本明細書で使用されるように、ALKの発現をノックダウンする剤は、ALKの発現を阻害可能ないずれの分子または組成物になり得る。例えば、それはRNAi、アンチセンスRNA、リボザイム、または他の適した分子、またはそれら組み合わせのいずれかであろう。NPM−ALK含有モデルでの、ALKのshRNAノックダウンを使用する研究は、成育阻害およびアポトーシスを示し、ALK阻害が潜在的に有効な治療戦略であるかもしれないことを示唆した(Piva et al., Blood, 2006, 107:689-697)。
【0054】
当該技術分野で既知の多様な遺伝子ノックダウンの戦略は、遺伝子発現(例えば、ALK発現)を阻害するために使用することができる。例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、miRNA、および他の当該技術分野で既知の小分子干渉核酸に基づく分子を含む、RNA干渉(RNAi)および/またはマイクロRNA(miRNA)経路を使用する遺伝子ノックダウン戦略が使用されてもよい。ALK発現をノックダウンする方法、およびALK発現のノックダウンに適した分子の例が、米国特許公報20080279870、20080090776および20050005314から参照によって組み込まれる。さらに、当業者はALK配列(GenBank identifier NM_004304)に基づいて、過度の実験なしにALK発現ノックダウンのためのコンストラクトを設計することができるであろう。ある態様では、ベクターに基づくRNAi様式(例えば、shRNAまたはshRNAmir発現コンストラクト)が、細胞で遺伝子(例えば、ALK)の発現を減少させるために使用される。いくつかの態様では、本発明の治療上の組成物は、shRNAなどの低分子干渉核酸を発現する単離プラスミドベクター(例えば、当該技術分野で既知または本明細書で開示された単離プラスミドベクターのいずれか)を含む。単離プラスミドは、小分子干渉核酸(例えば、shRNA)をコードする遺伝子に、操作可能となるように結合した腫瘍特異的プロモーターを含んでもよい。ある場合には、単離プラスミドベクターは、個体に感染することが可能なウイルスに収められている。代表的なウイルスは、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、および当該技術分野で既知および本明細書で開示される他のものを含む。
【0055】
siRNAに基づくオリゴヌクレオチドおよび/または改変したsiRNAに基づくオリゴヌクレオチドなどの、広範囲のRNAiに基づく様式が、細胞で遺伝子の発現を阻害するために利用できるであろう。改変したsiRNAに基づくオリゴヌクレオチドは、効力、ターゲットへの親和力、安全性のプロファイル、および/または、例えば細胞内分解に対して抵抗性または部分的に抵抗性にするために安定性を改変するように修飾したものである。例えば、ヌクレアーゼ分解に対する抵抗性、結合親和力、および/または取り込みを増加させるために、ホスホロチオエートなどの修飾を、オリゴヌクレオチドにすることができる。加えて、疎水化および生物共役化は、siRNAの運搬およびターゲッティングを増強し(De Paula et al., RNA. 13(4):431-56, 2007)、リボ−ジフルオロトルイル(ribo-difluorotoluyl)ヌクレオチドのsiRNAは、遺伝子発現抑制活性を維持する(Xia et al., ASC Chem. Biol. 1(3):176-83, (2006))。無修飾siRNAよりS1ヌクレアーゼ分解に抵抗性のある、アミド結合オリゴリボヌクレオシドのsiRNAが、産生された(Iwase R et al. 2006 Nucleic Acids Symp Ser 50: 175-176)。加えて、糖部2’位およびリン酸ジエステル結合でのsiRNAの修飾は、有効性の失うことなく血清安定性を向上させる(Choung et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 342(3):919-26, 2006)。遺伝子(例えば、ALK遺伝子)の発現阻害に使用することができる他の分子は、遺伝子、RNA転写物、またはタンパク質を対象にするセンスおよびアンチセンス核酸(一本鎖または二本鎖)、リボザイム、ペプチド、DNAザイム、ペプチド核酸(PNA)、三重らせん体形成オリゴヌクレオチド、抗体、およびアプタマーおよびそれらの修飾型を含む。アンチセンスおよびリボザイムの抑制戦略は、遺伝子産物の発現を減少させることにより、または、変異部位で変異転写物を切断することにより、腫瘍表現型の逆転をもたらした(Carter and Lemoine Br. J. Cancer. 67(5):869-76, 1993; Lange et al., Leukemia. 6(11):1786-94, 1993; Valera et al., J. Biol. Chem. 269(46):28543-6, 1994; Dosaka-Akita et al., Am. J. Clin. Pathol. 102(5):660-4, 1994; Feng et al., Cancer Res. 55(10):2024-8, 1995; Quattrone et al., Cancer Res. 55(1):90-5, 1995; Lewin et al., Nat Med. 4(8):967-71, 1998)。リボザイムはまた、変異遺伝子の遺伝子発現阻害およびターゲットトランススプライシングによる変異矯正の両方の手段として提案された(Sullenger and Cech Nature 371(6498):619-22, 1994; Jones et al., Nat. Med. 2(6):643-8, 1996)。リボザイム活性は、例えば、タンパク質または促進性オリゴヌクレオチドに結合する非特異的な核酸の使用によって増大する(Herschlag et al., Embo J. 13(12):2913-24, 1994; Jankowsky and Schwenzer Nucleic Acids Res. 24(3):423-9,1996)。マルチターゲットリボザイム(結合型またはショットガン型)は、リボザイムの遺伝子抑制効率を向上させる手段として示唆された(Ohkawa et al., Nucleic Acids Symp Ser. (29):121-2, 1993)。
【0056】
三重らせん体アプローチは、配列特異的遺伝子抑制についても研究された。三重らせん体形成オリゴヌクレオチドは、ある場合には、配列特異的な方法で結合することがわかった(Postel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88(18):8227-31, 1991; Duval-Valentin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89(2):504-8, 1992; Hardenbol and Van Dyke Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93(7):2811-6, 1996; Porumb et al., Cancer Res. 56(3):515-22, 1996)。同様に、ペプチド核酸は、遺伝子発現を阻害することが示された(Hanvey et al., Antisense Res. Dev. 1(4):307-17, 1991; Knudsen and Nielson Nucleic Acids Res. 24(3):494-500, 1996; Taylor et al., Arch. Surg. 132(11):1177-83, 1997)。副溝結合ポリアミドは、配列特異的な方法でDNAターゲットに結合することができ、したがって、DNAレベルでの抑制のための有用な小分子を代表しているかもしれない(Trauger et al., Chem. Biol. 3(5):369-77, 1996)。加えて、ドミナントネガティブ変異ペプチドおよび抗体を用いて、タンパク質レベルでの干渉により、抑制が得られた(Herskowitz Nature 329(6136):219-22, 1987; Rimsky et al., Nature 341(6241):453-6, 1989; Wright et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86(9):3199-203, 1989)。ある場合には、抑制戦略は、タンパク質の随伴する減少はなく、RNAレベルの減少をもたらした一方で、他ではRNAの減少は、タンパク質の減少に反映した。利用可能である多様な一連の抑制戦略は、興味の対象となるタンパク質(例えば、ALKポリペプチド)をターゲットするために選択され得るDNAアプタマーおよび/またはRNAアプタマーの使用を含む。
【0057】
本発明の側面は、PTEN、EGFRまたはRasなどの他の遺伝子の発現状態に関係なく、EML4−ALK融合によって特徴づけられる癌の処置に関すると認められるべきである。いくつかの態様では、EGFRインヒビター(例えば、EGFR活性、発現など、またはそれら組み合わせのいずれかのインヒビター)も、対象に推薦、処方、または投与される。いくつかのEGFRインヒビターの非限定例は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、およびAG1478を含む。いくつかの態様では、化学療法剤も、対象に推薦、処方、および/または投与される。化学療法剤は、アルキル化剤、核酸(例えば、DNA)損傷剤、または他の適した化学療法剤であってもよい。いくつかの態様では、化学療法剤は、白金に基づく化合物(例えば、シスプラチンまたは関連化合物)である。いくつかの態様では、1または2以上のEGFRインヒビター、1または2以上のALKキナーゼインヒビターおよび/または1または2以上の化学療法剤の組み合わせが、EML4−ALK融合に関連する症状(例えば、NSCLC)を有すると同定された対象に、推薦、処方、および/または投与されてもよい。
【0058】
いくつかの態様では、EML4−ALKの逆位を有すると診断された対象は、EGFR変異を有するとも診断される。ある態様では、EGFR変異は活性化変異である。本明細書で使用されるように、EGFRの活性化変異は、野生型EGFRと比較して活性の増加をもたらすいずれのEGFR変異である。例えば、EGFRの活性化変異は、EGFRの恒常的活性をもたらすかもしれない。いくつかの態様では、EGFRシグナルの増加と関連する癌は、細胞外ドメイン内に欠失があるEGFRの変異型を発現していてもよい。ある態様では、変異型のEGFRは、EGFRvIIIである。ある態様では、EGFRシグナル活性の増加を生じる変異は、EGFRシグナルの増加を起こすEGFRの細胞外ドメイン(例えば、細胞外ドメインをコードするEGFR遺伝子の一部)での点変異、欠失、挿入、複製、逆位または他の変異のいずれか、またはそれら組合せのいずれかによって生じてもよい。EGFRシグナルの増加をもたらす変異は、EGFRの細胞内ドメイン内であってもまたよい(例えば、欠失、点変異、挿入、複製、逆位など、またはそれら組合せのいずれか)。EML4−ALKの逆位およびEGFR変異を両方有すると診断された対象は、ALKキナーゼ活性および/またはEGFRキナーゼ活性を阻害する、1または2以上の組成物の投与を介して処置されてもよい。いくつかの態様では、対象は手術および/または放射線治療も受ける。
【0059】
いくかの態様では、処置される疾患は癌である。癌細胞は、正常な成育制御の喪失が原因で、異常に分裂および複製する細胞である。癌細胞は、ほとんど常に、少なくとも一つの遺伝子変異から生じる。「腫瘍(tumor)」の用語は、文字通りに「新たな成育」を意味する新生物(neoplasm)と通常等しく、「癌(cancer)」と互換的に使用される。「新生物の障害(neoplastic disorder)」は、細胞の増殖、特に新生物に関連するいずれかの障害である。「新生物」は、その出現を始めた発癌性因子を取り除いた後に、持続して増殖する組織の異常な集団である。良性および悪性の二つのタイプの新生物がある。ほとんどすべての良性腫瘍は、被包性および非侵襲性である。対照的に、悪性腫瘍はほとんど被包性ではないが、隣接する組織に、浸潤性の破壊的成育によって侵入する。この浸潤性の成育は、最初の腫瘍とは非連続的な部位に腫瘍細胞を移植することを伴う。本発明の方法は、本明細書に記載される他の各腫瘍と同様に、肉腫、細胞種、線維種、白血病、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、神経芽腫、横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫、および神経膠腫を限定せずに含むヒトの新生物の障害の処置に使用できる。
【0060】
本明細書で使用される「癌」は、身体臓器およびシステムの正常な機能を干渉する細胞の制御されない成育を言及する。最初の部位から転移し、臓器に接種する癌は、発症した臓器の機能的悪化を介して、最終的には対象の死をもたらす。白血病などの造血性の癌は、対象中の正常な造血性のカウンターパートを打ち負かすことができ、そのため(貧血、血小板減少症、および好中球減少症の形で)究極的には死の原因となる造血不全をもたらす。
【0061】
転移腫瘍は、原発性腫瘍の部位とは異なり、原発性腫瘍から身体の他の部位への癌細胞の播種に起因する癌細胞の領域である。原発性腫瘍の集団の診断時に、対象は転移腫瘍の存在についてモニタリングされてもよい。転移腫瘍は、特異的な症候のモニタリングに加えて、核磁気共鳴画像(MRI)スキャン、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、血液および血小板数、肝臓機能調査、胸部X線、および骨スキャンの単独の使用または併用によって、もっともよく検出される。
【0062】
癌は、限定せずに、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳および中枢神経系癌、乳癌、子宮頚癌、絨毛癌、結腸および直腸癌、結合組織癌、消化器系の癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭および首の癌、胃癌、上皮内腫瘍、腎癌、喉頭癌、白血球、肝癌、肺癌(例えば、小細胞および非小細胞)、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、神経芽腫、口腔癌(例えば、唇、下、口、および咽頭)、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、腎癌、呼吸器系の癌、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、泌尿器系の癌を、他の細胞種および肉腫と同様に含む。いくつかの態様では、非小細胞肺癌(NSCL)が、処置または診断される癌である。
【0063】
ある側面では、癌を有する対象に本発明の組成物を投与することに関係し、癌を処置する方法が提供される。「癌を有する対象」は、癌と診断された対象である。いくつかの態様では、対象は固形腫瘤によって特徴づけられる癌のタイプを有する。存在する場合、固形腫瘤は、原発性腫瘤であってもよい。原発性腫瘤は、組織の正常な細胞から、変換に起因する癌細胞の組織での成育を言及する。ほとんどの場合、原発性腫瘤は、視覚的および触診の方法を通じて発見され得る嚢胞の存在によって、もしくは形状、手触りまたは組織の重量の不規則性によって、同定される。
【0064】
しかしながら、いくつかの原発性腫瘍は触知できなく、X線(例えば、マンモグラフィー)などの医用画像の技法を通して、または針穿刺吸引によってのみ検出可能である。これら後者の技法の使用は、早期検出でより一般的である。組織内での癌細胞の分子および表現型の分析は、通常、癌が組織に対して内因性であるか、または病変はもう一つの部位からの転移が原因であるかを確認するだろう。
【0065】
本明細書で使用されるように、「癌医薬」は、癌の処置を目的として対象に投与される剤を言及する。本明細書で使用されるように、「癌の処置」は、癌の発生を防止すること、癌の症候を減少すること、および/または確立した癌の成育を阻害することを含む。他の側面では、癌医薬は、癌発生のリスクを減少させる目的で、癌発生のリスクにある対象に投与される。様々なタイプの癌の処置のための医薬が本明細書に記載される。癌医薬は、化学療法剤、免疫療法剤、癌ワクチン、ホルモン療法、および生物学的応答修飾因子などのカテゴリーを包含する。癌医薬は、対象中の腫瘍または癌の負荷(すなわち、癌または腫瘍細胞の数)を減少するよりもむしろ、癌の症候を減少させるために、対象に投与する剤も含む。この後者のタイプの癌医薬の一つの例は、正常な範囲内で赤血球および/または血小板レベルを維持するために、癌を有する対象にする輸血である。例として、かかる輸血の非存在下では、正常なレベル以下の血小板の癌患者は、止血不能の出血のリスクにある。
【0066】
癌医薬は、癌の処置を目的とした外科手術または放射線療法のいずれも言及しない。 本発明の多様な側面によると、いくつかの型のALKキナーゼ活性および/またはEGFRキナーゼ活性を阻害する組成物および癌医薬は、癌の処置を目的とした外科手術および/または放射線療法の後に投与されてもよい。手術および放射線照射は、まだ一般的に種々の癌を処置するために使用されている。ある場合には、手術は癌発生のリスクを減少させる予防方法にも使用される。この後者の手術の使用例として、乳癌発生のリスクのある対象、例えば、乳癌に対して家族性の傾向がある者は、その疾患の発生リスクを減少させるために、乳房の除去(すなわち、乳房切除)を時々受ける。そのうえ、例の部門に記載するように、EML4−ALKの逆位の試験を受けた複数の患者は、NSCL細胞種の外科的除去を受けた、または受ける予定である。
【0067】
そのうえ、本発明の方法は、ALKキナーゼ活性および/またはEGFRキナーゼ活性を阻害する組成物とともに、1以上の癌医薬の使用を包含するように意図される。例として、適切な場合には、ALKキナーゼ活性および/またはEGFRキナーゼ活性を阻害する組成物は、化学療法剤および免疫療法剤の両方とともに投与されてもよい。代わりに癌医薬は、癌を有する、または癌発生のリスクのある対象を処置する目的で一つの対象にすべて投与される、免疫療法剤と癌ワクチン、または化学療法剤と癌ワクチン、または化学療法剤、免疫療法剤および癌ワクチンを包含してもよい。
【0068】
本明細書で使用されるように、化学療法剤とは、癌細胞を直接ターゲットする化学的および生物学的な剤である。これら剤のいくつかは、持続生存に依存する癌細胞の細胞活性を阻害するように機能する。化学療法剤のカテゴリーは、アルキル化/アルカロイドの剤、代謝拮抗剤、ホルモンまたはホルモン類似体、および数々の抗悪性腫瘍剤を含む。
【0069】
本発明による使用できる化学療法剤の例は、限定せずに、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シタラビンHCl、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、エストラムスチンリン酸エステルナトリウム、エトポシド(VP16−213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5−FU)、フルタミド、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンアルファ−2a、アルファ−2b、リュープロリド酢酸塩(LHRH放出因子類似体)、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ、ミトタン(op’−DDD)、ミトキサントロンHCl、オクトレオチド、プリカマイシン、プロカルバジンHCl、ストレプトゾシン、タモキシフェンクエン酸塩、チオグアニン、チオテパ、ビンブラスチン硫酸塩、アムサクリン(m−AMSA)、アザシチジン、エリスロポエチン、ヘキサメチルメラミン(HMM)、インターロイキン2、ミトグアゾン(メチル−GAG、メチルグリオキサールビス−グアニルヒドラゾン、MGBG)、ペントスタチン(2’デオキシコホルマイシン)、セムスチン(メチル−CCNU)、テニポシド(VM−26)およびビンデシン硫酸塩を含む。
【0070】
ホルモン療法は、本明細書に開示する癌の処置方法と併用してもよい、もう一つの治療アプローチである。ホルモン療法は、癌を有する、または癌を有するリスクがある対象の処置における、ホルモンまたはホルモンの代替物および誘導体の使用を言及する。例は、エストロゲン療法、例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール(例えば、乳癌および前立腺癌)、抗エストロゲン療法、例えば、タモキシフェン(例えば、乳癌)、プロゲスチン療法、例えば、メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール(例えば、乳癌および子宮内膜癌)、アンドロゲン遮断、例えば、フルタミドなどの抗アンドロゲン物質(例えば、前立腺癌)、副腎ステロイドを含む副腎皮質ステロイド(例えば、リンパ性白血病およびリンパ腫)、合成グルココルチコイド療法、例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、およびデキサメタゾン(例えば、乳癌およびいくつかの中枢神経系腫瘍)、アンドロゲン、例えば、フルオキシメステロン(例えば、乳癌)、合成テストステロン類似体、アロマターゼインヒビター、例えば、アミノグルテチミド(例えば、乳癌)、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト、例えば、リュープロリド(例えば、前立腺癌)、ソマトスタチン類似体、例えば、オクトレオチド(例えば、胃癌および膵癌)を含む。
【0071】
生物学的応答修飾因子とは、癌細胞の直接の細胞毒性によることよりもむしろ、対象の癌に対する応答を変化させる剤である。例は、サイトカイン、例えば、I型インターフェロン(αおよびβ)、II型インターフェロン(γ)、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−1αおよびIL−1β)、およびTNFαおよびTNF−β、もしくは造血系増殖因子、例えば、エリスロポエチン、GM−CSF、およびG−CSFを含む。
【0072】
本発明の組成物は、有効量で投与されてもよい。有効量とは、医学的に望ましい結果の供給に十分な本発明組成物の投与量である。有効量は、処置される特定の症状(例えば、NSCLC)の発症を遅らせること、進行を阻害すること、発症または進行を一斉に停止することに必要な量を意味する。有効量は、症状(例えば、NSCLC)の1または2以上の兆候または症候を減少させる量であってもよい。対象に投与される場合、有効量は処置される特定の症状(例えば、NSCLC)、症状の重症度、対象それぞれのパラメーターであって、年齢、健康状態、大きさおよび体重を含むもの、併用する処置、処置の頻度、および投与方法に当然依存するだろう。これら因子は、当業者に周知であり、ただの日常的な実験に取り組まれることができる。
【0073】
本発明組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の対象、組成物、および投与方法について、望ましい治療上の応答に達するのに効果的な本発明組成物の量を得るために変動し得る。選択される投与量レベルは、特定の組成物の活性、投与経路、処置される症状の重症度、症状、および処置される対象の前病歴に依存する。しかしながら、望まれる治療上の労力に達するのに必要な量より低い組成物の投与量から始めること、および望まれる効果を達成するまで徐々に投与量を増加することは、当該技術分野の範囲である。いくつかの態様では、低い投与量が、単一の組成物より、複数の組成物の組み合わせに要求されるであろう(例えば、異なるキナーゼを阻害する組成物と併用するALKキナーゼを阻害する組成物)。同様に低い投与量が、シングルターゲットインヒビターより、1以上のキナーゼを阻害するマルチターゲットインヒビターに要求される。
【0074】
本発明の組成物は、いずれの適した経路によっても対象に投与され得る。例えば、組成物は経口的に投与でき、舌下に、直腸に、非経口的に、大槽内に、膣内に、腹腔内に、(粉末、軟膏、または液滴によって)局所的および経皮的に、頬側に、または経鼻的に投与することも含む。本明細書で使用される「非経口的」投与の用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、乳房内、眼内、眼球後部、肺内、くも膜下腔内、皮下および関節内の注射および注入を含む、消化管経由以外の投与方法を言及する。例えば、脳内、腹腔内、脾膜下、または角膜内などの身体に本発明組成物を包埋することを含む、外科的移植も意図される。
【0075】
本発明組成物の局所的投与の投薬形態は、本明細書に記載されるように、粉末、噴霧、軟膏、および吸入薬を含む。組成物は、薬学的に許容可能な担体およびいずれの必要とする保存剤、バッファー、または要求されるかもしれない噴霧剤(propellant)とともに、無菌条件下で混合される。
【0076】
非経口的注射のための本発明の医薬組成物は、無菌の注射可能な溶液または分散液中へ、使用直前に再調整するための無菌粉末と同様に、薬学的に許容可能な無菌の水性または非水性溶液、分散液、懸濁液、またはエマルジョンを含む。適した水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および同様のものなど)およびそれらの適した混合物、植物油(オリーブ油など)、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを含む。例えば、レシチンなどのコーティング剤、分散液の場合には要求される粒径の維持、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。
【0077】
これら組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントも含むことができる。例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノール、および同様なものの多様な抗細菌および抗真菌剤を含むことにより、微生物作用の予防は保証される。糖、食塩、および同様のものなどの等張剤を含むことも望ましいかもしれない。注射可能な医薬剤形の持続的な吸収は、ステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどの吸収を遅らせる剤を含むことにより、起こすことができる。
【0078】
ある場合には、組成物の効果を延長させるために、皮下または筋肉内注射からの組成物の吸収を遅らせることが望ましい。難水溶性の結晶性または非結晶性物質の液状懸濁液の使用によって、この結果は達成される。組成物の吸収率は、したがって溶解率に依存し、次には結晶の大きさおよび結晶形に依存するかもしれない。代わって、非経口的に投与する組成物形態の遅延した吸収は、油性ビヒクル中に組成物を溶解または懸濁させることによって達成される。
【0079】
注射可能なデポの形態は、ポリ乳酸−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に組成物のマイクロエンカプセルマトリックスを形成することによって作られる。ポリマーに対する組成物の比率、およびに利用される特定のポリマーの性質に依存して、組成物の放出率が調節される。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(アンヒドライド)を含む。デポ注射製剤は、身体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョンに、薬物を封入することによって調製される。
例えば、細菌保持またはウイルス保持フィルターを通して濾過することにより、または使用直前に滅菌水または無菌注射媒体中に溶解または分散可能な無菌固形組成物の剤形での滅菌剤を組み込むことによって、注射可能な製剤を滅菌することができる。
【0080】
本発明は、本発明医薬組成物の経口投与の方法を提供する。経口固形投薬形態は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990 (Mack Publishing Co. Easton Pa. 18042)の89章に一般的に記載される。経口投与のための固形投与形態は、カプセル、錠剤、ピル、粉末、トローチまたはロゼンジ、カシェ、ペレット、および顆粒を含む。また、リポソーム被包またはプロテイノイド被包が(例えば、米国特許番号4,925,673で報告されるプロテイノイドマイクロスフィア)、本組成物の調製に使用することができる。当該技術分野で知られるように、リポソームは一般的に、リン脂質または他の脂質物質に由来する。リポソームは、水性媒体に分散する単層または多層状の液晶水和物によって形成される。リポソームを形成可能な、無毒性で、生理学的に許容可能な、および代謝可能な脂質のいずれかが使用される。リポソーム形態の本組成物は、本発明の組成物に加えて、安定剤、保存剤、賦形剤、および同様のものを含有する。好ましい脂質は、天然および合成両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成する方法は、当該技術分野で既知である。例えば、Prescott, Ed., Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press, New York, N.Y. (1976), p 33, et seqを参照。リポソーム被包は、多様なポリマーで誘導体化されたリポソームを含んでもよい(例えば、米国特許番号5,013,556)。一般的に、製剤は本発明の組成物、および胃の中での分解に対して保護および腸の中での生物学的に活性な物質の放出を可能とする不活性成分を含む。
【0081】
かかる固形投薬形態では、組成物は少なくとも1の不活性で、薬学的に許容可能な賦形剤または担体と混合、または含むように化学修飾される。賦形剤または担体は、好ましくは(a)タンパク質分解の阻害、および(b)胃または腸からの血流中への取り込みを可能とする。ある態様では、賦形剤または担体は、本発明組成物の取り込み、組成物の全体的な安定性、および/または身体での組成物の循環時間を増加する。賦形剤および担体は、例えば、クエン酸ナトリウム、または無水リン酸水素カルシウム、および/または(a)第三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムなどの無機塩、およびFAST-FLO(登録商標)、EMDEX(登録商標)、STA-RX 1500(登録商標)、EMCOMPRESS(登録商標)およびAVICEL(登録商標)などの市販の希釈剤と同様に、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、セルロース、修飾デキストラン、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または増量剤、(b)例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ガム類(例えば、アルギン酸、アカシア)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、およびスクロースなどの結合剤、(c)グリセロールなどの保湿剤、(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸、炭酸ナトリウム、デンプンに基づく市販の崩壊剤を含むデンプン、EXPLOTAB(登録商標)、グリコール酸ナトリウムデンプン、AMBERLITE(登録商標)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラアミロペクチン、ゼラチン、橙皮、カルボキシメチルセルロース、天然海綿、ベントナイト、不溶解性カチオン交換樹脂、および寒天、カラヤまたはトラガントなどの粉末ガム類などの崩壊剤、(e)パラフィンなどの溶液遅延剤、(f)第四級アンモニウム化合物もしくはオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸などの脂肪酸などの吸収促進剤、(g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、アニオン性界面活性剤であって、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムを含むもの、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムをなどのカチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤であって、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50および60、モノステアリンサングリセロール、ポリソルベート40、60、65および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含むもの、などの湿潤剤、(h)カオリンおよびベントナイト粘度などの吸収剤、(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリテトラフルオロエチレン(PTET)、流動パラフィン、植物油、ワックス、CARBOWAX(登録商標)4000、CARBOWAX(登録商標)6000、ラウリル硫酸マグネシウム、およびそれら混合物などの潤滑剤、(j)デンプン、タルク、焼成シリカ、およびケイアルミン酸水和物を含む、調製時に薬剤の流動性を向上させ、圧縮時に再構成を援助する流動促進剤。カプセル、錠剤、およびピルの場合には、投薬形態はバッファーも含むことができる。
【0082】
同様のタイプの固体組成物は、高分子ポリエチレングリコールなどと同様にラクトースまたは乳糖などの賦形剤を用いて、軟および硬ゼラチンカプセルの充填剤として利用できる。
錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、および顆粒の固形投与形態は、腸溶性コーティングおよび製剤技術分野で既知である他のコーティングなどのコーティングおよびシェルで調製することができる。それらは任意に、乳白剤(opacifying agent)を含むことができ、任意に遅らせる方法で、活性成分を腸管の一部のみに、または優先的に解放する組成物にもなり得る。代表的な物質は、EUDRAGIT(登録商標)として入手可能な物質などのpH感受性の溶解度を有するポリマーを含む。使用可能な包埋する組成物の例は、ポリマー物質およびワックスを含む。
【0083】
適切な場合、本発明の組成物は、1または2以上の上述の賦形剤と、マイクロカプセルの形態にすることができる。経口投与用の液体投与形態は、薬学的に許容可能なエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤を含む。本発明の組成物に加えて、液体投与形態は、例えば、水または他の溶媒などの当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3− ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、およびそれら混合物などの、可溶化剤および乳化剤を含有することができる。
【0084】
不活性希釈剤のほかに、経口組成物は、そのような、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、着色料、香料、および芳香剤などのアジュバントも含むことができる。経口組成物は処方され、さらに飲料などの食用の製品を含むことができる。本発明の組成物に加えて、懸濁液は、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、トラガント、およびそれら混合物などの懸濁剤を含有することができる。
【0085】
本発明組成物の肺送達もまた、本明細書で意図される。組成物は、吸引しながら哺乳動物の肺へ送られ、それにより肺の上皮層から血流へのトラバースを促進する。Adjei et al., Pharmaceutical Research 7:565-569 (1990);Adjei et al., International Journal of Pharmaceutics 63:135-144 (1990) (leuprolide acetate);Braquet et al., Journal of Cardiovascular Pharmacology 13 (suppl.5): s.143-146 (1989)(endothelin-1);Hubbard et al., Annals of Internal Medicine 3:206-212 (1989)(a1-antitrypsin);Smith et al., J. Clin. Invest. 84:1145-1146 (1989) (a1-proteinase); Oswein et al., "Aerosolization of Proteins," Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II, Keystone, Colorado, March, 1990 (recombinant human growth hormone);Debs et al., The Journal of Immunology 140:3482-3488 (1988) (interferon-g and tumor necrosis factor a)、およびPlatz et al., 米国特許番号5,284,656(顆粒球コロニー刺激因子)を参照。
【0086】
限定せずに、当業者によく知られているネブライザー、定量噴霧式吸入器、および粉末吸入器を含む、治療薬の肺送達のために設計された広範囲の機械装置が、本発明の実践での使用について意図される。ある本発明の実践に適した市販装置のある特定の例は、Mallinckrodt, Inc.(St. Louis, MO)製のULTRAVENT(登録商標)ネブライザー、Marquest Medical Products(Englewood, CO)製のACORN II(登録商標)ネブライザー、Glaxo Inc.(Research Triangle Park, N.C)製のVENTOL(登録商標)定量噴霧式吸入器、およびFisons Corp.(Bedford, MA)製のSPINHALER(登録商標)粉末吸入器である。
【0087】
かかるすべての装置は、本発明組成物の投薬に適した製剤の使用を要求する。典型的には、各製剤は、利用する装置のタイプに特異的であり、治療に有用な希釈剤、アジュバント、および/または担体に加えて、適切な噴霧剤物質の使用に関係する。末端の肺への最も効果的な送達のために、組成物は、好ましくは10mm以下の平均粒径で、最も好ましくは0.5〜5mmで、粒子の形態に調製してもよい。
【0088】
担体は、トレハロース、マンニトール、キシリトール、スクロース、ラクトース、およびソルビトールなどの炭水化物を含む。製剤に使用する他の成分は、DPPC、DOPE、DSPCおよびDOPCなどの脂質、天然または合成界面活性剤、ポリエチレングリコール(阻害剤自体を誘導体化するその使用から離れても)、サイクロデキストランなどのデキストラン、胆汁酸塩、および他の関連するエンハンサー、セルロースおよびセルロース誘導体、およびアミノ酸を含む。
加えて、リポソーム、マイクロカプセルまたはマイクロスフィア、複合体、包接錯体(inclusion complex)、または他のタイプの担体の使用が意図される。
【0089】
噴射や超音波のネブライザーいずれかの使用に適した製剤は、典型的には、mL当たりの溶液につき、約0.1〜25mgの生物学的活性のタンパク質濃度で水に溶解した本発明の組成物を含む。製剤は、バッファーおよび単糖も含むことができる(例えば、タンパク質の安定化および浸透圧の調節のために)。ネブライザー製剤は、エアロゾルを形成する溶液の噴霧によって起こる、インヒビター組成物の表面誘導の凝集を減少または防止するための界面活性剤を含有することができる。
【0090】
一般的に、定量噴霧式吸入器で使用する製剤は、界面活性剤の助けを借りて噴霧剤に懸濁した本発明の組成物を含有する微粉末を含む。
噴霧剤は、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、またはそれらの組み合わせを含む、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、または炭化水素などの、この目的のために利用するいずれの従来物質になり得る。適切な界面活性剤は、トリオレイン酸ソルビタン、大豆レシチンを含む。オレイン酸は、界面活性剤としても有用になり得る。
粉末吸入器から投薬するための製剤は、本発明の組成物を含有する乾燥微粉末を含み、装置から粉の拡散を容易にする量(例えば、製剤の重量の50〜90%)のラクトース、ソルビトール、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはキシリトールなどの増量剤を含むことができる。
【0091】
本発明組成物の鼻腔内送達もまた、意図される。鼻腔内送達は、肺において製品を蒸着を必要とせずに、鼻に治療薬を投与後、血流への組成物の通過を直接可能にする。鼻腔内送達のための製剤は、デキストランまたはサイクロデキストランのものが含まれる。他の粘膜を通る輸送を介しての送達もまた、意図される。
【0092】
直腸または膣投与のための組成物は、好ましくは本発明の組成物と、室温で固体であるが体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔内で溶けて活性化合物を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックスなどの適切な非刺激性賦形剤または担体とを混合することにより、調製され得る坐剤である。
【0093】
EML4−ALK融合の検出のために、染色体調製物でFISHアッセイを行うためのキットも、本発明の範囲内にある。かかるキットの例は、核酸プローブのセットを含んでもよく、第一のプローブは標識を有し、EML4が逆位を起こさなかった場合、そのプローブはEML4を含む非逆位型の染色体にハイブリダイズし、かつEML4が逆位を起こした場合、そのプローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、EML4を含む染色体にハイブリダイズし、第二の核酸プローブは標識を有し、ALKが逆位を起こさなかった場合、そのプローブは非逆位型のALKを含む染色体にハイブリダイズし、かつALKが逆位を起こした場合、そのプローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、ALKを含む染色体にハイブリダイズする。キットは、染色体調製物でEML4−ALKの逆位を同定する蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイを行うための第一および第二のプローブの使用についての説明書を、さらに含んでもよい。キットは、癌患者由来の染色体調製物で、EML4−ALK融合の陽性同定がNSCLCの陽性診断を示す、診断目的の説明書をさらに含んでもよい。キットは、癌患者由来の染色体調製物でのEML4−ALK融合の陽性同定が、患者をALKキナーゼ活性を阻害する組成物で処置すべきであることを示す説明書をさらに含んでもよい。
【0094】
いくつかの態様では、キットはDAPIなどのDNA対比染色剤をさらに含んでもよい。いくつかの態様では、キットはハイブリダイゼーションバッファーおよび/または洗浄バッファーを限定することなく含む、試薬およびバッファーをさらに含んでもよい。いくつかの態様では、キットは封入剤および/またはコントロールスライドをさらに含んでもよい。
【0095】
他の態様では、本発明のキットは、癌または前癌性症状の治療計画を決定するために有用であるかもしれない。例えば、生物学的試料は、NSCLCを有する対象から摂取してもよく、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物への応答をインビトロで試験してもよい。インビトロアッセイに対する陽性応答は、対象がALKキナーゼ活性を阻害する組成物のインビボでの投与に応答するであろうという、正の指標としてとられてもよい。かかるキットの例では、ALKキナーゼ活性を阻害する1または2以上の組成物、および生物学的試料がALKキナーゼ活性を阻害する組成物での処置に応答するかを決定するために、組成物を生物学的試料で試験するための説明書を含む。
【0096】
本発明のキットは、癌の処置に有用であってもよい。かかるキットの例は、ALKキナーゼ活性を阻害する1または2以上の組成物、および癌の処置のための1または2以上の組成物の使用についての説明書を含んでもよい。本発明の側面は、本明細書に記載する1または2以上のインヒビターでの同時処置に関する。したがって、本発明の側面は、本明細書に記載される2またはそれ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)インヒビターの組み合わせを含む、キットまたは組成物に関する。
【0097】
本発明のキットは、本明細書に開示するいずれの生物学的または化学的メカニズムへの関与のための組成物使用の記載を含む。キットは、症状の徴候に対抗するように、病理を処置する活動条件の記載を、さらに含むことができる。すなわち、キットは本明細書で考察する組成物の使用の記載を含む。キットは、2またはそれ以上の本発明組成物の組み合わせの使用についての説明書、または本発明組成物および癌の処置についての治療計画を決定するため、または癌の処置について示される1または2以上の他の化合物の組み合わせの使用についての説明書を含むことができる。説明書はまた、以前に記載された適した技法のいずれかによって組成物を投与するために提供されてもよい。
【0098】
本明細書に記載されるキットはまた、1または2以上の容器を含んでもよく、組成物および以前に記載された他の成分を含んでもよい。キットはまた、ある場合には、本発明の組成物を混合、希釈、および/または投与または適用のための説明書を含んでもよい。キットはまた、試料中で、またはかかる処置の必要な対象に、成分を混合、希釈または投与するための容器と同様に、1または2以上の溶媒、界面活性剤、保存剤および/または希釈剤(例えば、生理食塩水(0.9%NaCl)または5%デキストロース)とともに他の容器を含むことができる。
【0099】
キットの組成物は、例えば、液状の溶液または乾燥粉末として、いずれかの適した形態として提供されてもよい。提供される組成物が乾燥粉末である場合、組成物は適した溶媒の添加によって再構成されてもよく、提供もまたされてもよい。組成物の液状形態が使用される態様では、液状形態は濃縮またはすぐに使用可能な状態であってもよい。溶媒は、組成物および使用方法または投与方法に依存するだろう。薬物組成物のための適した溶媒は、例えば、以前に記載されたように周知であり、文献で利用可能である。溶媒は、組成物および使用方法または投与方法に依存するだろう。
【0100】
本発明による有用なキットの例が、図7に示される。キット(11)は、核酸プローブセット(17および19)およびそれら使用の説明書(21)などの成分を収容する容器(15)を示す。
【0101】
本発明は、続く例によってさらに説明され、さらに限定すると解釈されるべきではない。本出願を通じて引用されるすべての参照(参考文献、交付済み特許、公開済み特許出願、および係属中の特許出願を含む)の内容全体が、これに明確に参照によって本明細書に組み込まれる。
【0102】

例1
肺癌におけるEML4−ALKの逆位およびALKキナーゼ阻害に対する感受性
染色体2pの逆位に起因するEML4−ALK融合遺伝子が、〜7%の日本人の非小細胞肺癌(NSCLC)において最近検出された。この遺伝的変化も、インビトロおよびインビボで癌化させていた。米国人(n=138)および韓国人(n=167)の患者由来のNSCLC(n=305)における、およびNSCLC細胞株(n=83)におけるEML4−ALKの頻度が、現在の研究で検討された。EML4−ALKの4種の異なる変異体が、8人(3%)のNSCLC(米国人のNSCLC患者から2/138(1.5%)、韓国人患者から6/167(3.6%))、および3/83(3.6%)のNSCLC細胞株において、RT−PCRを用いて検出された。すべてのEML4−ALK含有腫瘍および細胞株は腺癌であり、未または軽(10パック年(pack years)以下)タバコ喫煙者であるNSCLC患者で、現在/元喫煙者と比較してより頻繁に発生した(6%対1%;p=0.049)。非常に特異的なALKキナーゼインヒビターであるNVP−TAE684の有効性は、EML4−ALKの逆位があるNSCLC細胞株で検討された。3種の細胞培養株のすべてにおいてALKのリン酸化が阻害されたにもかかわらず、3種の細胞株のうち1種の成育のみが、H3122がNVP−TAE684によって阻害され、これは顕著なアポトーシスを伴った。他の2種のEML4−ALK含有細胞株においては、H3122とは異なり、ALKのリン酸化阻害は、ALK、STAT3またはERK1/2リン酸化阻害をもたらさないか、部分的にのみもたらした。これらの研究は、ALK阻害剤は、EML4−ALKの逆位を抱える肺癌のサブセットのための潜在的に効果的な治療であり、さらに臨床開発を支援するかもしれないことを示唆する。
【0103】
材料と方法
細胞株および腫瘍
肺癌細胞株(80種のNSCLC、2種の中皮腫、および1腫の神経内分泌腫瘍株)は、ATCC(Manassas, VA)から購入され、またはJohn D. Minna博士およびAdi F. Gazdar博士(UT Southwestern, Dallas, TX)より受け取った(表1)。ダナ・ファーバー癌研究所で、2種の追加のNSCLC細胞株(DFCI024、DFCI032)が、未処置の喫煙未経験の女性NSCLC患者の胸水から樹立された。
【0104】
NSCLC腫瘍標本(n=305)は、RNA抽出に十分な材料が入手可能である外科的切除から回収した。癌のステージ分類は、IASLCステージ分類ガイドラインに従って行われた。腫瘍は、2004WHO分類システムによって分類した。70%以上の腫瘍細胞含量のある凍結腫瘍組織が、さらなる分析に使用された。加えて、手術前ネオアジュバント治療を受けた患者、手術から1月以内に死亡した患者、二重の原発性肺癌のある患者、胸水または胸膜播種のある患者、および不完全な切除を受けた、または縦隔リンパ節郭清を受けなかった患者の腫瘍組織は、研究から除外された。 標本の大部分(n=167)が、1995〜2007年の間に韓国のサムスンメディカルセンターで回収された一方で(韓国人コホート)、残りの標本(n=138)は、マサチューセッツ州ボストンのブリッガム女性病院で回収され(米国人コホート)、以前に公表された(14〜16)。
【0105】
腫瘍および細胞株標本は、急速冷凍され、−80℃で保存された。RNAは、Trizol(Invitrogen, Carlsbad、CA)で抽出され、Rneasy Mini Kit (Qiagen、Valencia、CA)で精製された。0.5〜1μgの全RNAは、QuantiTect逆転写キット(Qiagen, Valencia, CA)でのcDNA合成に使用された。
【表1】

【表2】

【表3】

【0106】
エクソンアレイ試験
肺癌細胞株におけるALKの転座をスクリーニングするために、これら細胞株由来のmRNAから以前に産出した現存のAffymetrix HuEx-1.0 Exon Array (Affymetrix, Santa Clara, CA)のデータを使用した。プローブが全転写物の3’末端に制限されている典型的なmRNA発現アレイとは異なり、HuEx-1.0アレイはヒトゲノムのすべての既知および予測されたエクソンに位置するプローブを含有するように設計された。ALK遺伝子の転座は、3’末端(キナーゼドメイン)におけるより高い発現で、異なるレベルの発現量が切断点の5’側と3’側のエクソンとの間で生じると考えられた。全プローブについてのアレイのノーマライズおよびバックグラウンド補正を行った後、分析はALK遺伝子(参照配列NM_004304)にユニークに位置する104のプローブに制限した。その遺伝子全域のプローブの応答特性の違いを補正するために、全試料について、プローブ強度値は他の野生型標本全域の平均プローブ強度で割った。各細胞株について、切断点である可能性の最も高い位置は、5’と3’とのプローブサブセット間の平均発現量の最大偏差を与えるプローブとして算定された。各推測切断点についての有意水準が、単純両側t検定を用いて計算された。
【0107】
RT−PCRおよび変異分析
EML4−ALKのRT−PCR解析については、EML4−ALKを最初に記載した論文で使用した同一のプライマー配列(プライマーセット1)が用いられた(9)。プライマーセット1では、フォワードプライマーはEML4のエクソン13に位置する一方で、リバースプライマーはALKのエクソン20に位置する。EML4−ALK融合は、EML4のエクソン6とALKのエクソン19との間でも起こり得る(変異体3)(Mano H. 未発表)。ここで、プライマーは、プライマーセット1では失敗するため、EML4のエクソン3におけるフォワードプライマー(5’-taccagtgctgtctcaattgcagg- 3’) (配列番号3)を有し、プライマーセット1と同一のリバースプライマーを使用する追加のプライマーセット(プライマーセット2)を使用した。PCR増幅は、製造元のガイドラインに基づいて、JumpStart Taq酵素(Sigma, St. Louis, MO)を用いて行った。得られたPCR産物は、アガロースゲル電気泳動を用いて分析した。
【0108】
NSCLC腫瘍については、KRasまたはEGFRの遺伝子型同定は、RT−PCRに基づくSURVEYOR-WAVE変異分析(17)を用いて行い、その後、陽性標本の配列決定、またはRT−PCR産物の直接の配列決定を行った。DFCI032細胞株の変異分析は、EGFR、KRas、B−Raf、PIK3CA、およびHer2における既知の変異を抱える特異的なエクソンについてのプライマーとともに、ゲノムDNAに基づくSURVEYOR-WAVE分析を用いて行った。
【0109】
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション
バクテリア人工染色体(BAC)RP11−667I6およびRP11−100C1(オークランド小児病院研究所、Oakland、CA)を、それぞれEML4遺伝子およびALK遺伝子のプローブとして使用した。BACクローンは、クロラムフェニコールを含有するLB寒天プレート状にそれぞれストリークし、37℃、オーバーナイトで生育させた。各BACクローン由来の一つのコロニーが選択され、TB中で37℃、オーバーナイトで生育させ、確立した手法を用いてBAC DNAを抽出した。
【0110】
中期FISHのためのスライドは、標準の細胞遺伝学的な手法を用いて調製した。パラフィン包埋スライドは、60℃のホットプレート上にオーバーナイトでインキュベートし、その後室温でそれぞれ2分間、2回キシレン処理に曝した。組織は、その後100mMトリス塩基/50mM EDTA(pH7.0)中に100℃で45分間置き、室温で5〜10分間1×PBSですすいだ後、150mLのDigest-All(Zymed, San Francisco, CA)で37℃、20分間の処理を2度した。スライドは、室温で5〜10分間1×PBSですすぎ、その後室温で1分間、10%ホルマリン中で固定した。最後に、組織は70%、90%、および100%の一連のエタノールでそれぞれ2分間脱水した。
【0111】
RP11−100C1 BAC DNA(1μg)は、製造元の推薦プロトコルを用いて、ニックトランスレーションによってspectrum red dUTP(Vysis, Des Plains, IL)で標識し、1μgのRP11−667I6BAC DNAは、ニックトランスレーションによってspectrum green-11-dUTP(Vysis, Des Plains, IL)で標識した。プローブは、50μgのCot-1 DNAと組み合わせ、エタノール沈殿し、および20μlの50%ホルムアミド含有hybrizolに再懸濁した。プローブは、標準のFISH手順に従って(18)、ハイブリダイズおよび洗浄した。
【0112】
ALKキナーゼインヒビター
NVP−TAE684は、強力で特異的なALKキナーゼインヒビターであり、ダナ・ファーバー癌研究所のN. Gray博士によって合成された(12、19、20)。NVP−TAE684は、特許で公開されている手順に従って合成し、得られた化合物の構造および純度は、液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレー質量分析(LC−MS)および核磁気共鳴(NMR)を用いて確認した。
【0113】
細胞増殖および成育アッセイ
成育および成育阻害は、メトキシテトラゾリウム塩(MTS)アッセイによって評価した。生存細胞の数を決定するための比色法であるこのアッセイは、細胞による3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルフォフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)の、細胞培養培地中に可溶なホルマザン産物への生体内還元に基づき、分光測定で検出可能である。NSCLC細胞は72時間の処理に曝し、実験あたりに使用した細胞の数を経験的に決定した。全実験ポイントは、6から12のウェルで設定し、全実験は少なくとも3回繰り返した。データは、Windows(登録商標)用GraphPad Prism version 3.00を用いて図示された(GraphPadインターネットサイトで利用可能なGraphPad Software)。曲線は、S字用量反応とともに非線形回帰モデルを用いてフィットさせた。
【0114】
抗生物質およびウェスタンブロッティング
以前に特定した条件下で成育した細胞は、製造元のガイドラインに基づいて、Cell Lysis Buffer(Cell Signaling Technologies, Danvers, MA)を用いて溶解した。細胞溶解後、ライセートは4℃、16,000×gで10分間遠心分離した。上清が続く手順に使用された。ウェスタンブロット解析は、SDS/PAGE電気泳動およびニトロセルロース膜への転写によって分離した後に行った。免疫ブロッティングは、抗体製造元の推薦に従って行った。 抗体の結合は、増強化学発光システムを用いて検出した(Perkin Elmer, Boston, MA)。 抗ALK、抗リン酸化ALK(Tyr−1604)、抗リン酸化Akt(Ser−473)、抗Akt、抗STAT3、抗リン酸化STAT3(Tyr705)、抗PTEN、および抗PARP抗体は、Cell Signaling Technology (Danvers, MA)から得られた。全ERK1/2およびリン酸化ERK1/2(pT185/pY187)抗体は、Biosource International (Camarillo, CA)から購入した。抗α−チューブリン抗体は、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。
【0115】
蛍光標識細胞分取分析
細胞は回収し、少なくとも1時間(または実験の準備が整うまで)40%エタノールで固定した。固定した細胞は、0.5mLの500mg/mL RNaseAで、37℃、45分間処理し、69mmol/Lヨウ化プロピジウム(38mMクエン酸ナトリウム中)で、少なくとも30分間、暗所で室温にて染色した。染色細胞は、ModFit(Verity Software House, Topsham, ME)およびCellQuest(Becton Dickinson, San Jose, CA)プログラムの両方を用いて、Becton Dickinson蛍光標識細胞分取器中でDNA含量について分析した。
【0116】
結果
NSCLC細胞株におけるEML4−ALK融合遺伝子の同定
83種の肺癌細胞株のパネル(表1)を潜在的なALKの転座について迅速にスクリーニングするために、以前にこれら細胞株由来のmRNAから産生した現存のAffymetrix HuEx-1.0 Exon Arrayデータを使用した。ALK遺伝子の転座は、3’末端(キナーゼドメイン)におけるより高い発現で、異なるレベルの発現量が切断点の5’側と3’側のエクソンとの間で生じると考えられた。各細胞株について、切断点である可能性の最も高い位置は、5’と3’とのプローブサブセット間の平均発現量の最大偏差を与えるプローブとして算定された。
【0117】
この方法を用いて、ALK遺伝子において統計学的に有意な切断点を有する2種の細胞株、H3122およびH2228が同定された(p<0.001)(図1Aおよび図5)。使用したアルゴリズムは、切断点の位置または方向を考慮しなかったが、両試料の推測ALK切断点は、ALK遺伝子における保存されたエクソン20の切断点と非常に近く、両試料中で、発現は5’末端より3’末端でより高かった。RT−PCRを用いて、融合遺伝子産物の存在は、H3122およびH2228の両方で確認されたが、他の81種の細胞株においては確認されなかった。H3122においては、RT−PCRプライマーセット1(EML4のエクソン13におけるフォワードプライマー、ALKのエクソン21におけるリバースプライマー)は、〜250bpの産物を産生した一方で、H2228細胞株では、プライマーセット2(EML4のエクソン3でのフォワードプライマー、ALKのエクソン21におけるリバースプライマー)は、〜450bpの産物を産生した(図1B)。RT−PCRの結果は、サンガー塩基配列決定法によって確認し、H3122におけるEML4−ALKの変異体1およびH2228における変異体3の存在を示した。他の融合変異体には存在しない選択的にスプライシングした33bp断片(エクソン7a)が、この細胞株において検出された(図1C、表2)。H3122およびH2228の両細胞株は、腺癌の組織診断のある女性NSCLC患者から樹立し、およびH2228細胞株は喫煙の未経験者由来であるため、スクリーニングは、これらのダナ・ファーバー癌研究で確立した臨床的特徴とともに、NSCLC細胞株におけるEML4−ALKの存在について行った。DFCI024およびDFCI032の2種の細胞株が同定され、両方とも腺癌のある化学療法未処置の喫煙未経験者由来であった。両細胞株は、EGFRおよびKrasについて野生型であった。プライマーセット2を用いるRT−PCRで、EML4−ALK融合遺伝子が、DFCI032細胞株で検出された(図1B)。したがって、すべてあわせて、EML4−ALKの逆位が、3/83(3.6%)のNSCLC細胞株で検出された。
【0118】
表2 融合変異体3で検出された選択的にスプライシングしたEML4のエクソン7aについての配列
【数1】

【0119】
NSCLC腫瘍によけるEML4−ALK
米国人(n=138)および韓国人(n=167)起源の患者由来のNSCLC(n=305)腫瘍は、EML4−ALK融合遺伝子について、RT−PCRを用いてスクリーニングされた。融合遺伝子の発現は、プライマーセット1で、4種の腫瘍において検出された(図1B)。2種の腫瘍は、〜250bpの大きさのRT−PCR産物を有していた一方で、他の2種は、〜450bpの大きさの産物を有していた。〜250bpのRT−PCR産物を有する腫瘍は、変異体1の融合遺伝子を有することをサンガー塩基配列決定法で確認した一方で、より大きな産物の腫瘍は、以前に公表されていない変異体の融合遺伝子(以後、変異体4と命名)を有していた。変異体4の融合遺伝子は、EML4コドン1−569がALKのコドン1078−1621に融合する(図1C、表3)。腫瘍はプライマーセット2でもスクリーニングされ、追加4種の腫瘍が、遺伝学的変化に陽性と検出された(図1B)。これらすべては、変異体3のEML4−ALKを含有することがサンガー塩基配列決定法によって確認された。選択的にスプライシングしたEML4のエクソン7aは、すべての腫瘍においても存在したので、この発見はH2228細胞株だけに限定していなかったことを示唆する。腫瘍は、結腸腺癌由来の9種の肺転移腫瘍も含み、興味深いことに、これらの一つは、変異体1のEML4−ALK融合遺伝子を含んでいた。
【0120】
表3 RT−PCRプライマーセット1でのEML4−ALK変異体4の配列
【数2】

【0121】
EML4−ALK融合遺伝子は、305人中8人(3%)のNSCLC腫瘍で検出された(図4)。6つの陽性(6/167; 3.6%)が、韓国人患者由来の腫瘍で検出された一方で、2つ(2/138(1.5%))が、米国人患者由来のNSCLCで検出された。EML4−ALKの頻度は、男性(2%)に対して女性(4%)でより高かった。EML4−ALKを含有するNSCLCのNSCLC患者は、野生型腫瘍の患者(61.9歳)より若い年齢中位数(55.9歳)を有していた。EML4−ALK陽性腫瘍の全8種は、腺癌であった。さらに、融合遺伝子は、喫煙者由来の腫瘍(1%;2/184)と比較して、制限された喫煙歴(<10パック年)の患者でより頻繁に(6%;4/69)有意に(p=0.049;表4)検出された。EML4−ALKの逆位の患者2人からは、喫煙情報が入手不可能であった。患者1人由来の腫瘍は、EML4−ALK融合遺伝子とともに、同時発生的EGFRキナーゼドメイン変異(エクソン19欠失)を有していた。この患者は、手術を単独で処置され、EGFRチロシンキナーゼインヒビターであるゲフィチニブまたはエルロチニブのどちらでも処置されなかった。8種の腫瘍は、いずれも同時発生的K−Ras変異を含んでいなかった。
【0122】
【表4】

【0123】
FISHを用いるEML4−ALK融合遺伝子の検出
RT−PCRおよび長距離ゲノムPCRは、細胞株および/または新鮮腫瘍標本からEML4−ALK融合遺伝子の検出に適用可能な方法である。しかしながら、大多数の臨床的NSCLC腫瘍試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本であり、いずれの方法もFFPEからEML4−ALKの逆位を検出するのには実現可能ではない。加えて、現在利用可能なALKのための蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)プローブは、小さな染色体の逆位を検出するのに十分な解像度を有しないかもしれないブレークアパートプローブである(Vysis LSI ALK dual color, break apart rearrangement probe, Vysis Inc.)。したがって、既知の5’側のEML4切断点(緑色)および既知の3’側のALK切断点(赤色)にハイブリダイズするFISHプローブが設計された。野生型ゲノムの場合には、プローブは2つの別々のドットに可視化する一方で、逆位および融合の場合には(いずれの変異体でも)、ドットは単一のシグナル(黄色)に併合するはずである(図5)。
【0124】
FISHプローブは、最初にEML−ALK融合遺伝子のある、またはないNSCLC細胞株を用いて検討した。野生型細胞株PC−9(図3A)およびA549においては、プローブのシグナルは、2つの別々のドットで見られた。DFCI032(図3C)およびH3122においては、プローブは、染色体対の1つでEML4のALKへの融合を検出した一方で、他の対は野生型シグナルを示した。興味深いことに、H2228細胞株においては、EML4−ALK融合遺伝子は、小さな染色体外断片において検出された(図3B)。FISH法は細胞株においてEML4−ALK融合を検出可能であったので、次にその方法がFFPE標本に使用できるかを調査した。胸水がDFCI032細胞株を樹立するのに使用された患者からの診断の時点に得られたFFPE腫瘍標本が検討された。このFFPE腫瘍標本においては、間期の核におけるEML4−ALK融合が、明確に検出された(図3D)。
【0125】
EML4−ALK融合遺伝子含有NSCLC細胞株におけるALKキナーゼ活性の阻害
EML4−ALK融合遺伝子を記載する最初の研究においては、ALKキナーゼインヒビター(WHI−154)は、融合癌化したBa/F3モデルで成育阻害を誘導することが示された(9)。したがって、融合遺伝子を保有するNSCLC細胞株におけるALKキナーゼインヒビターの効果を試験した。非常に特異的なALKキナーゼインヒビターであるNVP−TAE684が調べられた(12)。
【0126】
NVP−TAE684は、H3122細胞株のみ成育を有意に阻害する一方で(IC50 〜10nM)、他の2種のEML4−ALK含有細胞株であるH2228およびDCI032は、EGFR変異(PC−9;欠失E746_A750)またはK−Ras変異(A549;G12S)を含むものと同様にその阻害剤に抵抗性(IC50 1〜10μM)であることがわかった(図3A)。NVP−TAE684処置はまた、蛍光標識細胞分取(FACS)によって(図3B)、または切断PARPのウェスタン解析によって検出されたように(図3C)、H3122細胞株のみで顕著なアポトーシスをもたらした。成長停止またはアポトーシスは、TAE684処理後に他の細胞株においては観察されなかった。
【0127】
EML4−ALK含有細胞株の3種中1種のみの成育がTAE−684によって阻害された理由を特定するために、ALKのリン酸化および下流シグナル伝達タンパク質に及ぼす影響を検討した。全ALKおよびリン酸化ALKの両方が、すべてのEML4−ALK陽性細胞株(H3122、H2228、およびDFCI032)において存在していたが、EGFR変異のPC−9細胞株においては非存在であった(図4)。0.1μM NVP−TAE684処置後、リン酸化ALKの完全な下方制御が、EML4−ALK陽性細胞の全3種で観察された。しかしながら、これはH3122細胞株においてのみ、Akt、STAT3およびERK1/2リン酸化の実質的な阻害を伴った。H2228細胞株においては、いくつかだが完全ではないAktおよびERK1/2リン酸化の阻害があった一方で、これらはDFCI032細胞株では変化していなかった。これら発見を説明するEGFR、Kras、B−Raf、HER2またはPIK3CAの同時発生的変異は、この細胞株においては検出されなかった(データ非表示)。さらに、DFCI032細胞株は、PTENを発現した(図4)。融合遺伝子におけるALKキナーゼドメイン配列の変化は、H2228またはDFCI032からは検出されなかった(データ非表示)。
【0128】
考察
本研究では、NSCLC細胞株および異なる民族的背景のNSCLC患者由来の原発性腫瘍におけるEML4−ALKの逆位の頻度を特徴づけた。EML4−ALK融合遺伝子は、米国人のNSCLC患者より韓国人において、腺癌および制限されたタバコ煙暴露の患者においてより頻繁に、3%のNSCLC標本において検出された。興味深いことに、これら同時の臨床病理学的な特徴は(女性、アジアの民族性、制限されたタバコ喫煙)、NSCLCにおけるEGFRキナーゼドメイン変異を予測することが示された(21)。したがって、本研究は、アジア人患者と比較してコーカサス人種由来の、およびタバコ未喫煙者または軽喫煙者由来のNSCLCにおける遺伝学的差異についてさらなる証拠を提供する。さらに、以前に処置していない肺腺癌のある女性未喫煙者から樹立した細胞株(DFCI032)を含む3種のNSCLC細胞株において、EML4−ALKが検出された。EML4−ALKの転座のあるこれら細胞株の1種は(H3122)、非常に感受性であり、ALKキナーゼインヒビター(NVP−TAE684)処置後に、顕著なアポトーシスを起こすこともわかった。H3122細胞株における発見は、この細胞株において、ALKキナーゼが決定的な生存シグナル経路を単独で調節する癌遺伝子依存性の現象であることを示唆する。ALK阻害は、これらシグナル経路のすべての阻害および続くアポトーシスを起こす。これは、EGFR変異NSCLCに類似する(22、23)。
【0129】
遺伝学的に定義された肺癌患者のサブセットにおける分子標的治療の使用は、効果的な治療戦略として出現している。例として、10〜30%のNSCLCは、EGFRキナーゼドメインに活性化変異を含有し、60〜80%のEGFR変異の患者は、EGFRキナーゼインヒビターであるゲフィチニブまたはエルロチニブで処置後、劇的なX線検査の応答を得る(21、24)。同様に、EGFR変異NSCLC細胞株は、EGFR野生型細胞株と比較して、インビトロでゲフィチニブに非常に感受性であり、EGFR変異NSCLC細胞株のみが、ゲフィチニブ処理後のアポトーシスを起こす(22、25、26)。本研究からの発見は、少なくとも腫瘍がEML4−ALK融合遺伝子を含むNSCLC患者のサブセットに、ALK阻害が有効な治療戦略であるかもしれないことを実証する。さらに、大多数の成人組織においては、ALKは通常発現していないので、特異的なALK阻害剤は忍容性が良好かもしれない。ALK阻害剤が臨床開発を経るように、それらはEML4−ALK融合遺伝子のあるNSCLC患者においても検討されるべきである。我々は、FFPE標本からEML4−ALKの逆位を検出するのに使用され得るFISHアッセイも開発した。これは、ALKキナーゼインヒビターの臨床研究のために、適切なNSCLC患者の同定を容易にする。
【0130】
EML4−ALKの逆位がある3種のNSCLC細胞株が同定されたが、3種の細胞株すべてにおいてALKリン酸化の阻害があったにもかかわらず、3種中1種のみがTAE684によって成育が阻害された(図3および4)。これは、EGFR変異NSCLCとは全く異なっており、大部分のEGFR変異NSCLC細胞株はゲフィチニブまたはエルロチニブにインビトロで感受性である(22、27〜29)。これら差異は臨床的に有意であるかもしれず、ALKインヒビターは単独でEML4−ALKの逆位があるNSCLC患者のサブセットに効果的かもしれないことを示唆する。DFCI032においては、ALK阻害は、下流シグナル伝達タンパク質の阻害を起こさなかった一方で(図4)、H2228においては、AKT、STAT3およびERK1/2リン酸化の部分的阻害のみが、NVP−TAE684で観察された(図4)。DFCI032またはH2228は両方とも、FISHで調べられるように、すべての細胞においてEML4−ALKの転座を含有する(データ非表示)。DFCI032およびH2228細胞において、このALKの阻害と下流シグナル伝達タンパク質の阻害との間のずれの背後にあるメカニズムは依然不明である。DFCI032およびH2228細胞株は、NSCLCにおいて一般に変異する既知の癌遺伝子のいずれにおいても同時発生的変異を含んでいなく、これら知見の可能な説明としてPTEN発現を失ってもいなかった(30)。代わりに、これら細胞株は他のチロシンキナーゼの同時活性化を含んでおり、NVP−TAE684では阻害されないかもしれない平行する生存シグナル伝達をもたらしている(31、32)。近年、EGFR変異NSCLCにおけるゲフィチニブ抵抗性のメカニズムとして、MET増幅が記載された。EGFR変異およびMET増幅を含有するHCC827 GR細胞株において、 METおよびEGFR両方の阻害は、成育阻害およびAktリン酸化阻害に重要であった(31)。EGFRの阻害単独またはMETの阻害単独は、HCC827 GR細胞の成育阻害も、Aktのリン酸化も試験した試料中ではもたらさなかった。DFCI032およびH2228のさらなる研究は、それらが他の同時発生的に活性化したキナーゼも含有するか特定するのに役立つかもしれない。かかる研究はうまくいけば、NVP−TAE684とともに、さらなる有効な併用戦略の同定をもたらすだろう。興味深いことに、同時発生的なEGFR活性化変異は、NSCLC腫瘍標本の8種中1種において、EML4−ALKの逆位とともに検出された。EGFRキナーゼインヒビター単独またはALKキナーゼインヒビター単独の有効性におけるこれら2つの同時発生的変異の臨床的重要性は不明である。しかしながら、変異EGFRおよびEML4−ALKは両方とも発癌性であり、Aktシグナル伝達を活性化するので、EGFRインヒビターおよびALKインヒビターの併用戦略は、この腫瘍の成育を阻害するのにおそらく効果的であるだろう。
【0131】
【表5】

【表6】

【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色体調製物内においてEML4−ALKの逆位を同定する蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイを行うことを含む方法であって、
(a)ハイブリダイゼーション条件下で、染色体調製物と第一の核酸プローブおよび第二の核酸プローブを含むプローブセットとを接触させること、
ここで、第一のプローブは第一の標識を有し、非逆位型の第一の染色体にハイブリダイズ可能であり、第二のプローブは第一の標識と異なる第二の標識を有し、非逆位型の第二の染色体にハイブリダイズ可能であって、(i)第一および第二の染色体が逆位および融合を起こした場合、第一および第二のプローブは、第一および第二の両標識が単一のシグナルとして現れるように、逆位および融合を介して形成した派生染色体にハイブリダイズする一方で、(ii)第一および第二の染色体が逆位および融合を起こさなかった場合、第一および第二のプローブは、2つのシグナルが検出されるように、それぞれの染色体にハイブリダイズする、
(b)第一および第二のプローブのハイブリダイゼーションパターンを検出すること、および
(c)第一および第二のプローブが派生染色体上に現れるか、またはそれぞれ第一および第二の染色体上に別々に現れるかをパターンから決定し、それによってEML4−ALKの逆位の存在または非存在を決定すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
各プローブが、逆位と関連する切断点の5Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各プローブが、逆位と関連する切断点の2Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各プローブが、逆位と関連する切断点の1Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
EML4−ALKの逆位の存在または非存在を決定する方法であって、
(a)ハイブリダイゼーション条件下で、染色体調製物と、RP11−667I6の配列と少なくとも80%の配列同一性を含み、第一の標識を有し、かつ第一の染色体にハイブリダイズ可能な第一の核酸プローブ、および、RP11−100C1の配列と少なくとも80%の配列同一性を含み、第一の標識と異なる第二の標識を有し、かつ第二の染色体にハイブリダイズ可能な第二のプローブを含むプローブセットとを接触させること、
ここで、(i)第一および第二の染色体が逆位および融合を起こした場合、第一および第二のプローブは、第一および第二の両標識が単一のシグナルとして現れるように、逆位および融合を介して形成した派生染色体にハイブリダイズする一方で、(ii)第一および第二の染色体が逆位および融合を起こさなかった場合、第一および第二のプローブは、2つのシグナルが検出されるように、それぞれの染色体にハイブリダイズする、
(b)第一および第二のプローブのハイブリダイゼーションパターンを検出すること、および
(c)第一および第二のプローブが派生染色体上に現れるか、またはそれぞれ第一および第二の染色体上に別々に現れるかをパターンから決定し、それによってEML4−ALKの逆位の存在または非存在を決定すること、
を含む、前記方法。
【請求項6】
第一の核酸プローブが、RP11−667I6であって標識を有し、かつ第二の核酸プローブが、RP11−100C1であって第二の標識を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
対象の非小細胞肺癌を診断する方法であって、
(a)対象から生物学的試料を単離すること、
(b)該試料から染色体調製物を産出すること、
(c)EML4−ALKの逆位の存在または非存在を同定するために、該染色体調製物での蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)解析を行うこと、および
(f)該染色体調製物がEML4−ALKの逆位を含む場合に、該対象が非小細胞肺癌を有すると決定すること、
を含む、前記方法。
【請求項8】
各プローブが、逆位と関連する切断点の5Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各プローブが、逆位と関連する切断点の2Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各プローブが、逆位と関連する切断点の1Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第一の核酸プローブが、RP11−667I6の配列と少なくとも80%の配列同一性を含み、第一の標識を有し、かつ第二の核酸プローブが、RP11−100C1の配列と少なくとも80%の配列同一性を含み、第二の標識を有する、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
FISH解析の結果に基づいて、不良、中間または良好の予後を示す対象を分類することをさらに含む、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
非小細胞肺癌が腺癌である、請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
非小細胞肺癌が有棘細胞癌である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
非小細胞肺癌の対象を、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物で処置すべきかを決定する方法であって、該方法は、
(a)対象から生物学的試料を単離すること、
(b)該試料から染色体調製物を産出すること、
(c)EML4−ALKの逆位の存在または非存在を同定するために、該染色体調製物で蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)解析を行うこと、および
(f)該染色体調製物がEML4−ALKの逆位を含む場合に、対象をALKキナーゼ活性を阻害する組成物で処置すべきと決定すること、
を含む、前記方法。
【請求項16】
ALKキナーゼ活性を阻害する組成物で、対象を処置することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
各プローブが、逆位と関連する切断点の5Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
各プローブが、逆位と関連する切断点の2Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各プローブが、逆位と関連する切断点の1Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第一の核酸プローブが、RP11−667I6の配列と少なくとも80%の配列同一性を含み、第一の標識を有し、かつ第二の核酸プローブが、RP11−100C1の配列と少なくとも80%の配列同一性を含み、第二の標識を有する、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ALKキナーゼ活性を阻害する組成物が、キナーゼインヒビターを含む、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
キナーゼインヒビターが、NVP−TAE684である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
キナーゼインヒビターが、PF−02341066である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
ALKキナーゼ活性を阻害する組成物が、ALKの発現をノックダウンする剤を含む、請求項15〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ALKキナーゼ活性を阻害する組成物が、アンチセンスRNA、RNAi、リボザイム、またはそれら組み合せを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ALKキナーゼ活性を阻害する組成物が、抗体、小分子、ペプチド、アプタマー、またはそれら組み合せを含む、請求項15〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
対象にEGFRインヒビターを投与することをさらに含む、請求項15〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
EML4とALKとの間の染色体逆位を検出するための核酸プローブであって、該核酸プローブは標識を有し、EML4が逆位を起こさなかった場合、プローブはEML4を含む非逆位型の染色体にハイブリダイズし、かつEML4が逆位を起こした場合、プローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、EML4を含む染色体にハイブリダイズする、前記プローブ。
【請求項29】
請求項28の核酸プローブを含み、さらに、標識を有する第二のプローブを含む組成物であって、ここで第二のプローブは、ALKが逆位を起こさなかった場合、第二のプローブはALKを含む非逆位型の染色体にハイブリダイズし、かつALKが逆位を起こした場合、第二のプローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、ALKを含む染色体にハイブリダイズする、前記プローブを含む組成物。
【請求項30】
逆位と関連する切断点の5Mb内に位置する領域で、非逆位型の染色体にハイブリダイズ可能である、請求項28に記載のプローブ。
【請求項31】
逆位と関連する切断点の2Mb内に位置する領域で、非逆位型の染色体にハイブリダイズ可能である、請求項30に記載のプローブ。
【請求項32】
逆位と関連する切断点の1Mb内に位置する領域で、非逆位型の染色体にハイブリダイズ可能である、請求項31に記載のプローブ。
【請求項33】
第二のプローブが、逆位と関連する切断点の5Mb内に位置する領域で、非逆位型の染色体にハイブリダイズ可能である、請求項29に記載の組成物。
【請求項34】
第二のプローブが、逆位と関連する切断点の2Mb内に位置する領域で、非逆位型の染色体にハイブリダイズ可能である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
第二のプローブが、逆位と関連する切断点の1Mb内に位置する領域で、非逆位型の染色体にハイブリダイズ可能である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
プローブが、RP11−667I6の配列と少なくとも80%の配列同一性を含み、標識を有する、請求項28に記載のプローブ。
【請求項37】
プローブが、RP11−100C1の配列と少なくとも80%の配列同一性を含み、標識を有する、請求項29に記載の組成物
【請求項38】
EML4とALKとの間の染色体逆位を検出するための核酸プローブであって、該核酸プローブは標識を有し、ALKが逆位を起こさなかった場合、プローブはALKを含む非逆位型の染色体にハイブリダイズし、かつALKが逆位を起こした場合、プローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、ALKを含む染色体にハイブリダイズし、ここで該プローブはRP11−100C1の配列と少なくとも80%の配列同一性を含む、前記プローブ。
【請求項39】
染色体調製物内においてEML4/ALKの逆位を同定するためのキットであって、
(a)第一の核酸プローブであって、該プローブは標識を有し、EML4が逆位を起こさなかった場合、該プローブは非逆位型のEML4を含む非逆位型の染色体にハイブリダイズし、かつEML4が逆位を起こした場合、該プローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、EML4を含む染色体にハイブリダイズする、前記第一の核酸プローブ;
(b)第二の核酸プローブであって、該プローブは標識を有し、ALKが逆位を起こさなかった場合、該プローブは非逆位型のALKを含む非逆位型の染色体にハイブリダイズし、かつALKが逆位を起こした場合、該プローブは逆位を介して形成した派生染色体にハイブリダイズするように、ALKを含む染色体にハイブリダイズする、前記第二の核酸プローブ;
(c)染色体調製物内においてEML4−ALKの逆位を同定する蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイを行うための該第一および第二のプローブの使用についての説明書、
を含む、前記キット。
【請求項40】
各プローブが、逆位と関連する切断点の5Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
各プローブが、逆位と関連する切断点の2Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項40に記載のキット。
【請求項42】
各プローブが、逆位と関連する切断点の1Mb内に位置する領域で、非逆位型の各染色体にハイブリダイズ可能である、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
DNA対比染色剤をさらに含む、請求項39〜42のいずれか一項に記載のキット。
【請求項44】
DNA対比染色剤がDAPIである、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
ハイブリダイゼーションバッファーをさらに含む、請求項39〜44のいずれか一項に記載のキット。
【請求項46】
封入剤をさらに含む、請求項39〜45のいずれか一項に記載のキット。
【請求項47】
コントロールスライドをさらに含む、請求項39〜46のいずれか一項に記載のキット。
【請求項48】
EML4−ALKの逆位を有すると診断された対象における、EML4−ALKの逆位の発現によって特徴づけられる疾患を処置する方法であって、ALKキナーゼ活性を阻害する組成物を対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項49】
疾患が癌である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
癌が、非小細胞肺癌である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
非小細胞肺癌が、腺癌である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
非小細胞肺癌が、有棘細胞癌である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
ALKキナーゼ活性を阻害する組成物が、キナーゼインヒビターを含む、請求項48〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
キナーゼインヒビターが、NVP−TAE684である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
キナーゼインヒビターが、PF−02341066である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
ALKキナーゼ活性を阻害する組成物が、ALKの発現をノックダウンする剤を含む、請求項48〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
ALKキナーゼを阻害する組成物が、アンチセンスRNA、RNAi、リボザイム、またはそれら組み合せを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ALKキナーゼ活性を阻害する組成物が、抗体、小分子、ペプチド、アプタマーまたはそれら組み合わせのいずれかを含む、請求項48〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
EGFRインヒビターを投与することをさらに含む、請求項48〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
EGFRインヒビターが、エルロチニブである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
EGFRインヒビターが、ゲフィチニブである、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
EGFRインヒビターが、AG1478である、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
化学療法剤を投与することをさらに含む、請求項48〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
複数のALKキナーゼインヒビターおよび/またはEGFRインヒビターおよび/または化学療法剤が投与される、請求項48〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
対象が、請求項1に記載の方法を用いて、EML4−ALKの逆位を有すると診断される、請求項48〜63のいずれか一項の方法。
【請求項66】
対象が、EGFR変異を有すると診断される、請求項59〜65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
対象が、手術を受ける、請求項48〜66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
対象が、放射線治療を受ける、請求項48〜67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
EML4−ALKの逆位を発現する細胞においてALK活性を阻害する方法であって、該細胞とALKキナーゼ活性を阻害する組成物とを接触させることを含む、前記方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−511949(P2011−511949A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546779(P2010−546779)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/000879
【国際公開番号】WO2009/102446
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(501368643)ザ・ブリガーム・アンド・ウーメンズ・ホスピタル・インコーポレーテッド (10)
【出願人】(510219659)ダナ−ファーバー キャンサー インスティテュート (1)
【氏名又は名称原語表記】DANA−FARBER CANCER INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】44 Binney Street Bp 372 A Boston,MA 02115,United States of America
【Fターム(参考)】