説明

肺癌の治療標的としてのNMU−GHSR1b/NTSR1発癌シグナル伝達経路

本発明は、患者由来の生体試料中のニューロメジンU(NMU)遺伝子の発現レベルを決定することによって肺癌の予後を評価するための方法およびキットに関する。本方法および本キットは、非小細胞肺癌(NSCLC)の予後の評価にとって特に望ましい。さらに本発明は、NMUタンパク質と、成長ホルモン分泌促進物質受容体1b(GHSR1b)およびニューロテンシン受容体1(NTSR1)のヘテロ二量体との結合を阻害する化合物を検出することによって、癌、特に肺癌の治療薬剤をスクリーニングする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年4月20日に出願された米国特許仮出願第60/793,977号の恩典を主張し、その内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、生物科学の分野、より具体的には癌研究の分野に関する。特に本発明は、ニューロメジンU(NMU)遺伝子が肺癌の予後マーカーとして役立つという発見によって達成された、肺癌の予後を評価または判定する方法に関する。さらに本発明は、肺癌の予後を評価または判定するために使用することができるキットに関する。さらに本発明は、NMUタンパク質に結合することが知られていた成長ホルモン分泌促進物質受容体1b(GHSR1b)およびニューロテンシン受容体1(NTSR1)がヘテロ二量体複合体を形成するという発見に基づいた、癌、特に肺癌の治療薬剤を同定および/またはスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
肺癌は、世界的に見て癌による死亡の最も一般的な原因の一つであり、非小細胞肺癌(NSCLC)はそのような症例のほぼ80%を占める(Greenlee R.T. et al. (2001) CA Cancer J. Clin. 51: 15-36)。肺癌の発症および進行に関連した多くの遺伝的変化が報告されているが、詳細な分子機序は依然として不明である。この10年の間に、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、およびビノレルビンを含む、新たに開発された細胞毒性薬が出現し、進行性NSCLC患者に複数の治療選択肢が提供されるようになった。しかし、新しい治療法はそれぞれ、シスプラチンに基づく従来の治療と比較して、わずかな延命効果を提供できるに過ぎない(Schiller J.H. et al. (2002) N. Engl. J. Med. 10;346: 92-8)。したがって、分子標的薬剤、抗体、および癌ワクチンのような新しい治療戦略が切望されている。
【0004】
cDNAマイクロアレイ上で数千の遺伝子の発現レベルを系統的に解析することは、発癌経路に関与する未知の分子を同定するための有効なアプローチである。そのような遺伝子およびそれらの産物は、新規の治療および診断を開発するための潜在的標的として調べることができる(Kikuchi T. et al. (2003) Oncogene 10;22: 2192-205;Kato T. et al. (2005) Cancer Res. 65: 5638-46;Ishikawa N. et al. (2005) Cancer Res. 65: 9176-84)。本発明者らは、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションにより癌組織37例から腫瘍細胞を濃縮した後に、23,040の遺伝子を含むcDNAマイクロアレイ上でNSCLC細胞のゲノムワイドな発現プロファイルを解析することによって、肺癌の診断および治療のための潜在的分子標的を同定した(Kikuchi T. et al. (2003) Oncogene 10;22: 2192-205)。各遺伝子産物の生物学的および臨床病理学的重要性を検証するため、本発明者らは、臨床肺癌材料の腫瘍組織マイクロアレイ解析を行った(Ishikawa et al. (2004) Clin. Cancer Res. 10: 8363-70;Ishikawa et al. (2005) Cancer Res. 65: 5638-46;Furukawa et al. (2005) Cancer Res. 65: 7102-10)。これらの研究の過程において、ニューロメジンU(NMU)をコードする遺伝子(GenBankアクセッション番号NM_006681;SEQ ID NO:1および2)が、原発性NSCLCにおいて過剰発現されることが頻繁に認められた。
【0005】
NMUは、最初にブタ脊髄から単離された神経ペプチドである。これは平滑筋において強力な活性を有し(Minamino et al. (1985) Biophys. Res. Commun. 130: 1078-85;Minamino et al. (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 156: 355-60;Domin et al. (1986) Biochem. Biophys. Res. Commun. 140: 1127-34;Domin et al. (1988) J. Biol. Chem. 264: 20881-5;Conlon et al. (1988) J. Neurochem. 51: 988-91;O'Harte et al. (1991) Peptides 12: 809-12;Kage et al. (1991) Regul. Pept. 33: 191-8;Austin et al. (1994) J Mol Endocrinol. 12: 257-63;Fujii et al. (2000) J. Biol. Chem. 275: 21068-74)、哺乳動物種において、NMUは主に胃腸管および中枢神経系に分布している(Minamino et al. (1985) Biochem. Biophys. Res. Commun. 130: 1078-85;Howard et al. (2000) Nature 406: 70-4;Funes et al. (2002) Peptides 23: 1607-15)。NMUの末梢での活性には、平滑筋の刺激、腸におけるイオン輸送の変化、および摂食の調節が含まれる(Howard et al. (2000) Nature 406: 70-4)。
【0006】
NMUタンパク質のC末端アスパラギンアミド構造およびC末端ヘプタペプチドコアは、平滑筋細胞におけるその収縮活性に必須である(Austin et al. (1995) J. Mol. Endocrinol. 14: 157-69;Westfall et al. (2002) J. Pharmacol. Exp. Ther. 301: 987-92)。最近の諸研究により、NMUが視床下部レベルで作用して食物摂取を抑制することが示されており、したがって、このタンパク質は摂食および体重の生理的調節因子である可能性がある(Maggi et al. (1990) Br. J. Pharmacol. 99: 186-8;Howard et al. (2000) Nature 406: 70-4;Ivanov et al. (2002) Endocrinology 143: 3813-21;Wren et al. (2002) Endocrinology 143: 4227-34;Hanada et al. (2004) Nat. Med. 10: 1067-73)。NMUはまた、いくつかの種類のヒト腫瘍において発現することも報告されている(Steel et al. (1988) Endocrinology 122: 270-82;Shetzline et al. (2004) Blood 104: 1833-40;Euer et al. (2005) Oncol. Rep. 13: 375-87)。
【0007】
神経ペプチドは、パラクリン因子およびオートクリン因子として末梢で機能して、多様な生理的過程を調節するとともに、神経系において神経伝達物質または神経調節物質として作用する。一般に、神経ペプチドの結合によりシグナル伝達を媒介する受容体は、ペプチドが7回膜貫通ドメインを有するGタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーである。NMUに対する2種類の公知の受容体であるNMU1R(FM3/GPR66)およびNMU2R(FM4)は、対応する公知のリガンドがそれぞれグレリン(GHRL)およびニューロテンシン(NTS)である成長ホルモン分泌促進物質受容体(GHSR)およびニューロテンシン受容体1(NTSR1)といった、その他の神経ペプチド受容体と高度の相同性を示す。これら2つの受容体はそれぞれ、ロドプシンGPCRファミリーのその他のメンバーと同様に、高度に保存されたモチーフを含む7回膜貫通推定αヘリックスドメインを有する(Fujii et al. (2000) J. Biol. Chem. 275: 21068-74;Howard et al. (2000) Nature 406: 70-4;Funes et al. (2002) Peptides 23: 1607-15)。
【0008】
癌治療のための新規の分子標的の同定および特徴づけが近年促進されていることにより、新しい種類の抗癌剤の開発に関する多大な関心が喚起されている(Kelly et al. (2001) J. Clin. Oncol. 19: 3210-8;Schiller et al. (2002) N. Engl. J. Med. 346: 92-8)。癌治療のための分子標的薬の開発に進展は見られたものの、反応する腫瘍型の範囲およびそのような治療の有効性は、依然として極めて限定的である(Ranson M. et al. (2002) J. Clin. Oncol. 20: 2240-50;Blackledge G & Averbuch S. (2004) Br. J. Cancer 90: 566-72)。したがって、悪性細胞に対して高度に特異的であり、かつ副作用をほとんどまたは全く引き起こさない新規の抗癌剤の開発が、当技術分野において早急に必要である。このような目的に対する強力な戦略は、発現プロファイル情報に基づいた癌細胞における上方制御遺伝子のスクリーニングと、ハイスループット機能解析とを組み合わせることである。本発明者らによる機能解析のアプローチには、RNAi技術を用いた機能喪失表現型の試験、遺伝子産物が増殖および細胞移動性に及ぼす影響の調査、遺伝子産物と相互作用するタンパク質の同定、ならびに数百の臨床試料から調製された組織マイクロアレイの解析が挙げられる(Kononen J. et al. (1998) Nat. Med. 4:844-7;Sauter G. et al. (2003) Nat. Rev. Drug Discov. 2: 962-72)。
【0009】
本発明者らは、そのような技術を遂行することにより、NMU遺伝子が臨床NSCLC試料および細胞株の大部分において過剰発現されていることを示すことができた(WO 2004/031413)。さらに、内因性NMUを過剰発現するNSCLC細胞の増殖が、抗NMU抗体およびNMUに対するsiRNAによって阻害され得ること;NMUが、神経ペプチドGPCRである成長ホルモン分泌促進物質受容体1b(GHSR1b)およびNTSR1に結合すること;NMUリガンド-受容体系が、ヒトフォークヘッドボックス(forkhead box)M1(FOXM1)を活性化すること;ならびにNMUに加えて、GHSR1、NTSR1、およびFOXM1もNSCLC細胞において過剰発現されることが明らかになった(WO 2004/031413)。
【0010】
GHSRは、ヒトにおいて下垂体成長ホルモンの放出および食欲を刺激し得る近年同定された28アミノ酸ペプチドであるGHRLの、公知の受容体である(Kojima et al. (1999) Nature 402: 656-60;Kim et al. (2001) Clin. Endocrinol. 54: 759-768;Lambert et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. 98: 4652-7;Petersenn et al. (2001) Endocrinology 142: 2649-59)。GHRLの受容体であることが知られている2つの転写物、すなわちGHSR1aおよびGHSR1bのうち、GHSR1bのみの過剰発現がNSCLCの組織および細胞株で検出された。NSCLCにおいて、GHRLは、試験した細胞株において有意に発現していなかった。したがって本発明者らは、GHSR1bは、GHRLではなくNMUへの結合を介して、肺腫瘍において増殖促進機能を有し得ると推測した。興味深いことに、GHRL遺伝子、およびGHSR1a遺伝子ではなくGHSR1b遺伝子は、その増殖がオートクリン様式で脱アシルGHRLによって調節される赤白血病HEL細胞において過剰発現されることが報告された(Vriese et al. (2005) Endocrinology 146: 1514-22)。
【0011】
NTSR1は、多くの中枢機能および末梢機能を実行する脳および胃腸のペプチドであるNTSの3種類の受容体のうちの1つである(Heasley et al. (2001) Oncogene 20: 1563-9)。NTSはドーパミンの伝達および下垂体ホルモンの分泌を調節し、脳においては体温降下作用および鎮痛作用を発揮する一方で、消化管および心血管系においては末梢ホルモンとして機能する。NTSが、SCLCを含むいくつかのヒト癌において産生および分泌されることも報告されている(Heasley et al. (2001) Oncogene 20: 1563-9)。本発明者らは、調べたNSCLC細胞株15例のうち4例においてNTSの発現を検出したが、NTSの発現パターンは、NMUの発現パターンともNTSR1の発現パターンとも必ずしも一致しなかった。したがって、NTSは、NSCLCのほんの一部において、NTSR1またはその他の受容体を介してNSCLCの増殖に寄与し得ると想定された。
【0012】
受容体のヘテロ二量体化は、GPCRのリガンド結合親和性およびシグナル伝達効果の両方に寄与することが示されている(Bouvier (2001) Nat. Rev. Neurosci. 2: 274-86;Devi (2001) Trends Pharmacol. Sci 22: 532-7)。ヘテロ二量体は、種々のリガンド/伝達物質の受容体によって形成され得る;例えば、アンジオテンシンおよびブラジキニンに対するGPCR(AbdAlla et al. (2000) Nature 407: 94-8)、ドーパミンおよびアデノシンに対するGPCR(Gines et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 8606-11)、またはオピオイドおよびアドレナリン性リガンドのGPCR(Rocheville et al. (2000) Science 288: 154-7)。さらに、GHSR1aとGHSR1bの同時発現によりGHSR1aのシグナル伝達能力が弱まることが報告されており、これによって、GHSR1bが受容体ヘテロ二量体化を介してGHSR1aと相互作用する可能性が示唆される(Chan et al. (2004) Mol. Cell Endocrinol. 214: 81-95)。
【0013】
フォークヘッド遺伝子ファミリーのメンバーであるFOXM1は、いくつかの種類のヒト癌において過剰発現されることが知られていた(Teh et al. (2002) Cancer Res. 62: 4773-80;van den Boom et al. (2003) Am. J. Pathol. 163: 1033-43;Kalinichenko et al. (2004) Genes Dev. 18: 830-50)。ショウジョウバエで最初に同定された「フォークヘッド」遺伝子ファミリーは、保存された100アミノ酸のDNA結合モチーフを有する転写因子を含み、細胞の成長、増殖、分化、寿命、および形質転換に関与する遺伝子の発現の調節において重要な役割を果たすことが示されている。ヒト骨肉腫細胞株U2OSを用いたアッセイの報告から、内因性FOXM1によって媒介される肝細胞DNA複製の促進が、CCND1およびCCNA1の発現増加と関連していることが実証された(Wang et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 11468-73)。この報告から、これらのサイクリン遺伝子がFOXM1転写因子の転写標的である可能性、ならびにFOXM1が、細胞分裂に必須のおよび有糸分裂の終了に必須の遺伝子の転写ネットワークを制御することが示唆された。
【発明の開示】
【0014】
発明の開示
本発明に従って、肺癌患者の予後を評価または判定する方法を提供する。具体的には、患者に由来する喀痰または血液などの生体試料中のニューロメジンU(NMU)遺伝子の発現レベルを決定し、該遺伝子の対照(発現)レベルと比較する。本明細書において、予後良好対照レベルと比較して該遺伝子の発現レベルが増加していることにより、患者の予後不良、すなわち生存率不良が示される。そのような増加は、例えば、対照レベルより少なくとも10%高いことがある。本発明の方法は、非小細胞肺癌(NSCLC)の予後の評価または判定に特に適している。
【0015】
本発明の態様において、生体試料中のNMU遺伝子の発現レベルは、NMU mRNAの量またはNMUタンパク質の量もしくは活性を検出することにより、決定することができる。例えば、NMU mRNAの量は、例えばDNAアレイ上での、プローブと該mRNAとのハイブリダイゼーションにより、決定することができる。あるいは、NMUタンパク質の量は、抗NMUタンパク質抗体を用いることにより、検出することができる。
【0016】
さらに、評価の精度を向上させるために、その他の肺癌関連遺伝子の発現レベルもまた、本発明において決定することができる。
【0017】
さらに、本発明の一局面に従って、肺癌患者の予後を評価または判定するためのキットを提供する。具体的には、キットは、NMU遺伝子の発現レベルと相関するNMU mRNAの量またはNMUタンパク質の量もしくは活性を検出するための試薬を含む。本発明の好ましい一局面によれば、キットは、NMUタンパク質に対する抗体を含む。
【0018】
加えて、本発明は、成長ホルモン分泌促進物質受容体1b(GHSR1b)およびニューロテンシン受容体1(NTSR1)からなるヘテロ二量体による、シグナル伝達を阻害する化合物を同定またはスクリーニングする方法を提供する。具体的には、本方法は、(1) GHSR1bおよびNTSR1のヘテロ二量体またはその機能的等価物を、試験化合物の存在下でNMUタンパク質と接触させる段階;(2) ヘテロ二量体およびNMUタンパク質によるシグナル伝達を検出する段階;ならびに(3) ヘテロ二量体およびNMUタンパク質によるシグナル伝達を阻害する試験化合物を選択する段階によって行う。そのような方法によって同定またはスクリーニングされた化合物は、肺癌、特にNSCLCの治療または予防に有用であると考えられる。
【0019】
本発明の一局面によれば、生細胞の表面上に発現されたヘテロ二量体を本方法において使用する。
【0020】
ヘテロ二量体が生細胞の表面上に発現された場合、ヘテロ二量体およびNMUタンパク質によるシグナル伝達は、例えば以下により検出される:
(a) 細胞内のcAMPの濃度を検出すること;
(b) アデニル酸シクラーゼの活性化を検出すること;
(c) プロテインキナーゼA(PKA)の活性化を検出すること;
(d) FOXM1、GCDH、CDK5RAP1、LOC134145、およびNUP188を含む、NMU標的遺伝子の発現を検出すること;
(e) リガンド誘導性内部移行を含む、ヘテロ二量体の細胞内局在の変化を検出すること;
(f) 細胞増殖、形質転換、または細胞の任意の他の発癌表現型を検出すること;ならびに
(g) 細胞のアポトーシスを検出すること。
【0021】
本発明のこれらおよびその他の目的および特徴は、添付の図面および実施例と併せて以下の詳細な説明を読むことによって、より十分に明らかになるであろう。しかし、本発明の前述の概要および以下の詳細はいずれも好ましい態様のものであって、本発明または本発明のその他の代替的な態様を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0022】
発明の詳細な説明
ゲノムワイドなcDNAマイクロアレイを用いた、本発明者らによる以前の研究に従って、非小細胞肺癌(NSCLC)において特異的に上方制御される遺伝子としてニューロメジンU(NMU)が同定された(WO 2004/031413)。NMUに対するsiRNAでNSCLC細胞を処理すると、NMUの発現が抑制されるばかりでなく、細胞の増殖もまた阻害されることが示された(WO 2004/031413)。これと一致して、内因性NMUを過剰発現するNSCLC細胞の増殖も、抗NMU抗体によって有意に阻害された(WO 2004/031413)。さらに、2つのGタンパク質共役受容体、すなわち成長ホルモン分泌促進物質受容体1b(GHSR1b)およびニューロテンシン受容体1(NTSR1)もまた、NSCLC細胞において過剰発現されることが認められ、それぞれ個々にNMUと相互作用することが確認された(WO 2005/090603)。
【0023】
NMUに関するさらなる研究を通して、NMUに対するsiRNAをトランスフェクトしたNSCLC細胞のサブG1率が有意に増加することから、オートクリンNMUシグナル伝達経路の遮断がアポトーシスを誘導し得ることが示唆された。本発明者らはまた、例えば、NMUを培地中に添加すると、COS-7細胞の増殖が用量依存的な様式で促進された;および抗NMU抗体を培養液中に添加すると、おそらくNMU活性の中和により、NMUによって増強されるこの細胞増殖が阻害されたなど、発癌におけるこの経路の重要性を支持するその他の証拠を見出した。さらに、NMUを内因的に過剰発現するNSCLC細胞の増殖も、抗NMU抗体によって有意に阻害された。NMUの発現は、インビトロアッセイにおいて細胞浸潤の有意な促進をもたらした。
【0024】
加えて、本発明者らは、NMU発現がNSCLC患者の予後不良と有意に関連していることを新たに発見した。組織マイクロアレイ実験によって得られた臨床病理学的証拠から、NMUを発現している腫瘍を有するNSCLC患者は、NMU発現が陰性である患者よりも短い癌特異的生存期間を示すことが実証された。インビトロアッセイおよびインビボアッセイによって得られた結果から、過剰発現されたNMUは重要な増殖因子である可能性が高く、オートクリン様式で機能して、癌細胞浸潤と関連している可能性があること、およびNMU-受容体増殖促進経路を標的化する分子のスクリーニングが、肺癌を治療または予防するための有望な治療アプローチとなるはずであることが強く示唆された。NMUは分泌タンパク質であり、本発明者らが解析に用いた臨床NSCLC試料の大部分は、発癌の早期および手術可能期の患者に由来したため、NMUはまた、ファイバースコープ経気管支生検(TBB)または血液検査と併用して、早期肺癌の診断用のバイオマーカーとして、および肺癌細胞の高度悪性表現型の指標として役立つ可能性がある。
【0025】
さらに、本発明の研究により、受容体GHSR1bおよびNTSR1は個々にNMUと相互作用するばかりでなく、互いに相互作用して、NMU受容体として機能するヘテロ二量体複合体を形成することが明らかになった。本発明者らによる実験によると、NMUを発現する癌細胞株および臨床NSCLCの大部分はまたGHSR1bおよびNTSR1も発現しており、よってこれらのリガンド-受容体相互作用が、NSCLCにおけるNMUの増殖促進活性の中核を成す経路に関与していることが示される。GHSR1bおよびNTSR1はまた、NMUの増殖および浸潤作用を試験するために用いたCOS-7細胞においても発現され、得られたデータから、発癌に対するこれら2つの受容体の重要性が実証された。
【0026】
さらに、この受容体は、NMU(またはNMU-25)の結合に際して、二次メッセンジャーcAMPの生成を誘導して、転写因子および細胞周期調節因子を含む下流遺伝子を活性化することが示された。cAMPレベルの上昇は一般に、プロテインキナーゼA(PKA)を活性化するアデニル酸シクラーゼの活性化により観察された。GHRLは、最高10 mMまでの濃度で試験した場合に、NMU1R発現細胞に結合する125I標識ラットNMUと置き換わらないことが報告されている(Kojima et al. (1999) Nature 402: 656-60)。しかし、NSCLC細胞において、GHRLまたはNTSは、NMU誘導性cAMP産生を競合的に阻害した。さらに、本出願において、2つの神経ペプチドGPCR、すなわちGHSR1bおよびNTSR1の内部移行およびヘテロ二量体化を支持する生化学的および生理学的証拠が提供される(実施例;結果(5))。これらの結果から、2つの公知のNMU受容体、すなわちNMU1RおよびNMU2Rとは機能が全く異なるGHSR1b-NTSR1ヘテロ二量体を介した経路によって、NMUがNSCLC細胞増殖を促進することが個別に示される。これまでの報告および本発明者らによって新たに得られた結果を考慮すると、NMUは、GsサブファミリーのGタンパク質と共役しているGHSR1b/NTSR1ヘテロ二量体への結合を介して、cAMP/PKAシグナル伝達経路の活性化を通して、NSCLC細胞の増殖に影響を及ぼすことが示される。
【0027】
加えて、GHSR、NTSR1、またはそれらの下流遺伝子の1つであるフォークヘッドボックスM1(FOXM1)に対するsiRNAでNSCLC細胞を処理することにより、それらの遺伝子の発現およびNSCLC細胞の増殖が抑制されること、ならびに癌細胞においてアポトーシスが誘導されることが実証された。cAMP応答エレメント(CRE)結合タンパク質によるFOXM1遺伝子の転写調節を予測するため、コンピュータ予測プログラムを用いて、推定転写開始配列(TSS)の1-kb上流の領域内でCRE様配列をスクリーニングし、この領域が3つのCRE様エレメントを含むことを見出した。さらに、ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイから、CRE様配列のうちの2つが、NMU刺激後のFOXM1プロモーター活性の効果的な増大に必須であることが示唆されたことに留意されたい(未発表データ)。PKAによってリン酸化されたCRE結合タンパク質は、FOXM1発現の調節に直接関与し得ると推測される。
【0028】
要約すると、本発明者らは、それぞれ個々にNMUに結合することが知られていたGHSR1bおよびNTSR1が、全体としてNMUの機能的受容体として役立つGPCRヘテロ二量体を形成することを発見した。さらに、NMUおよびこの新たに明らかになったヘテロ二量体が、大半の肺癌において過剰発現されるばかりでなく、転写因子であるFOXM1を含む種々の下流遺伝子を活性化するオートクリン増殖促進経路に必須であることが発見された。したがって、NMUリガンド-受容体シグナル伝達経路を標的化することは、肺癌患者の治療のための有用な新規の治療戦略であり、すなわち、NMUおよびその下流分子を、新規の治療薬および診断マーカーを開発するための標的として用いることができる。
【0029】
I. 定義
本明細書で使用する「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という語は、特記しない限り「少なくとも1つの」を意味する。
【0030】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は本明細書で互換的に用いられ、アミノ酸残基の重合体を指す。この用語は、天然アミノ酸重合体ばかりでなく、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体などの修飾残基または非天然残基であるアミノ酸重合体にも適用される。
【0031】
「アミノ酸」という用語は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、および細胞内で翻訳後に修飾されたアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリン)である。「アミノ酸類似体」という語句は、天然アミノ酸と同じ基本化学構造(α炭素が水素、カルボキシ基、アミノ基、およびR基に結合している)を有するが、修飾されたR基または修飾された骨格を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン、スルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)を指す。「アミノ酸模倣体」という語句は、一般的なアミノ酸とは異なる構造を有するが、同様の機能を有する化学物質を指す。
【0032】
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB生化学命名法委員会(Biochemical Nomenclature Commission)の推奨する、一般に知られている3文字記号または1文字記号により言及され得る。
【0033】
「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、および「核酸」という用語は、特記しない限り互換的に用いられ、アミノ酸と同様に、一般に是認されている1文字コードにより言及される。
【0034】
特記しない限り、本明細書で使用する技術的および科学的用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先する。
【0035】
II. 肺癌の予後を評価する方法
本発明によって、NMU発現がNSCLC患者の予後不良と有意に関連していることが新たに発見された(図1を参照されたい)。したがって、本発明は、患者の生体試料中のNMU遺伝子の発現レベルを検出する段階;検出された発現レベルを対照レベルと比較する段階;および予後不良(生存率低下)の指標として、対照レベルに対する発現レベルの増加を判定する段階による、肺癌患者、特にNSCLC患者の予後を評価または判定する方法を提供する。
【0036】
本明細書において、「予後」という用語は、症例の性質および症状によって示される、起こり得る疾患転帰に関する予測、および疾患からの回復の見込みを指す。したがって、好ましくない、負の、不良な予後は、処置後におけるより低い生存期間または生存率により定義される。反対に、正の、好ましい、または良好な予後は、処置後における高い生存期間または生存率により定義される。
【0037】
本発明の文脈において、「予後の評価(または判定)」という語句は、肺癌の進行、特にNSCLCの再発、転移拡散、および疾患再発の予測および尤度解析を包含することが意図される。予後を評価または判定する本発明の方法は、治療的介入、病期分類などの診断基準、ならびに腫瘍性疾患の転移または再発に関する疾患のモニタリングおよび監視を含む、治療様式に関する判断において臨床的に用いられることが意図される。
【0038】
本方法に用いられる患者由来の生体試料は、NMU遺伝子が試料中で検出できる限りにおいて、評価される対象に由来する任意の試料であってよい。好ましくは、生体試料は肺細胞(肺から得られた細胞)を含む。さらに、生体試料には、喀痰、血液、血清、または血漿などの体液が含まれる。さらに、試料は組織から精製された細胞であってもよい。生体試料は、処置前、処置中、および/または処置後を含む種々の時点で患者から得ることができる。
【0039】
本発明によって、患者由来の生体試料中で測定されたNMU遺伝子の発現レベルが高いほど、処置後の寛解、回復、および/または生存率に関する予後はより悪く、臨床転帰が不良である可能性はより高いことが示された。したがって、本発明の方法によれば、比較に用いられる「対照レベル」は、例えば、処置後にNSCLCの良好なまたは正の予後を示した個体または個体の集団における、任意の種類の処置前に検出されたNMU遺伝子の発現レベルであってよく、これは本明細書において「予後良好対照レベル」と称する。あるいは、「対照レベル」は、処置後にNSCLCの不良なまたは負の予後を示した個体または個体の集団における、任意の種類の処置前に検出されたNMU遺伝子の発現レベルであってよく、これは本明細書において「予後不良対照レベル」と称する。「対照レベル」は、単一の参照集団に由来する単一の発現パターンであるか、または複数の発現パターンに由来する。したがって、対照レベルは、疾患状態(予後良好または予後不良)が判明しているNSCLC患者または該患者の集団における、任意の種類の処置前に検出されたNMU遺伝子の発現レベルに基づいて、決定することができる。疾患状態が判明している患者群におけるNMU遺伝子の発現レベルの基準値を用いることが好ましい。基準値は、当技術分野において公知の任意の方法によって得ることができる。例えば、平均値±2 S.D.または平均値±3 S.D.の範囲を、基準値として用いることができる。
【0040】
対照レベルは、疾患状態(予後良好または予後不良)が判明している肺癌患者(対照または対照群)から、任意の種類の処置前にあらかじめ回収され保存されていた試料を用いて、試験生体試料と同時に決定することも可能である。
【0041】
あるいは、対照レベルは、対照群からあらかじめ回収され保存されていた試料中のNMU遺伝子の発現レベルを解析することにより得られた結果に基づいて、統計的方法により決定することもできる。さらに、対照レベルは、以前に試験された細胞に由来する発現パターンのデータベースであってもよい。さらに、本発明の一局面に従って、生体試料中のNMU遺伝子の発現レベルを、複数の参照試料から決定される複数の対照レベルと比較することができる。患者由来の生体試料の組織型と類似の組織型に由来する参照試料から決定された対照レベルを用いることが好ましい。
【0042】
本発明によって、NMU遺伝子の発現レベルが予後良好対照レベルと類似していることにより、患者の予後がより好ましいことが示され、NMU遺伝子の発現レベルが予後良好対照レベルに対して増加していることにより、処置後の寛解、回復、生存率、および/または臨床転帰に関する予後がより好ましくなく不良であることが示される。一方、NMU遺伝子の発現レベルが予後不良対照レベルに対して減少していることにより、患者の予後がより好ましいことが示され、該発現レベルが予後不良対照レベルと類似していることにより、処置後の寛解、回復、生存率、および/または臨床転帰に関する予後がより好ましくなく不良であることが示される。
【0043】
生体試料中のNMU遺伝子の発現レベルは、該発現レベルが対照レベルと1.0倍、1.5倍、2.0倍、5.0倍、10.0倍、またはそれ以上異なる場合に、変化していると見なすことができる。あるいは、生体試料中のNMU遺伝子の発現レベルは、該発現レベルが対照レベルと比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、またはそれ以上増加または減少している場合に、変化していると見なすことができる。
【0044】
試験生体試料と対照レベルとの間の発現レベルの差は、対照、例えばハウスキーピング遺伝子に対して正規化することができる。例えば、β-アクチン、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素、およびリボソームタンパク質P1をコードするポリヌクレオチドを含む、癌性細胞と非癌性細胞との間で発現レベルが異ならないことが判明しているポリヌクレオチドを用いて、NMU遺伝子の発現レベルを正規化することができる。
【0045】
発現レベルは、当技術分野において周知の技法を用いて、患者由来の生体試料中の遺伝子転写物を検出することによって、決定することができる。本発明の方法によって検出される遺伝子転写物には、mRNAおよびタンパク質などの転写産物および翻訳産物が含まれる。
【0046】
例えば、NMU遺伝子の転写産物は、ハイブリダイゼーション、例えば該遺伝子転写物に対するNMU遺伝子プローブを用いるノーザンブロットハイブリダイゼーション解析により、検出することができる。検出は、チップ上またはアレイ上で行うことができる。アレイの使用は、NMU遺伝子を含む複数の遺伝子の発現レベルを検出するのに好ましい。別の例として、NMU遺伝子に特異的なプライマーを用いる逆転写に基づくポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)のような、増幅に基づく検出法を、この検出に使用することができる(実施例を参照されたい)。NMU遺伝子に特異的なプローブまたはプライマーは、NMU遺伝子の全配列(SEQ ID NO:1)を参照することにより、従来の技法を用いて設計および調製することができる。例えば、実施例で使用したプライマー(SEQ ID NO:7および8;ならびにSEQ ID NO:43および44)を、RT-PCRによる検出に使用することができるが、本発明はそれに限定されない。
【0047】
具体的には、本発明の方法に用いられるプローブまたはプライマーは、ストリンジェントな条件下、中程度にストリンジェントな条件下、または低ストリンジェントな条件下で、NMU遺伝子のmRNAとハイブリダイズする。本明細書で使用する「ストリンジェントな(ハイブリダイゼーション)条件」という語句は、プローブまたはプライマーがその標的配列とはハイブリダイズするが、その他の配列とはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、異なる状況下では異なる。より長い配列の特異的ハイブリダイゼーションは、短い配列よりも高い温度で観察される。一般に、ストリンジェントな条件の温度は、所定のイオン強度およびpHにおける特定の配列の融解温度(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmとは、平衡状態で、標的配列に相補的なプローブの50%が標的配列とハイブリダイズする(所定のイオン強度、pH、および核酸濃度における)温度である。標的配列は一般に過剰に存在するため、Tmでは、平衡状態でプローブの50%が占有される。典型的に、ストリンジェントな条件とは、pH7.0〜8.3において塩濃度がナトリウムイオン約1.0 M未満、典型的にはナトリウムイオン(または他の塩)約0.01〜1.0 Mであり、短いプローブまたはプライマー(例えば、10〜50ヌクレオチド)に関しては、温度が少なくとも約30℃、より長いプローブまたはプライマーに関しては少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によって達成することもできる。
【0048】
あるいは、本発明の評価のために翻訳産物を検出することもできる。例えば、NMUタンパク質の量を決定することができる。翻訳産物としてタンパク質の量を決定する方法には、NMUタンパク質を特異的に認識する抗体を用いる免疫測定法が含まれる。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってよい。さらに、断片がNMUタンパク質への結合能を保持する限りにおいて、抗体の任意の断片または修飾物(例えば、キメラ抗体、scFv、Fab、F(ab')2、Fvなど)を検出に用いることもできる。タンパク質を検出するためのこのような種類の抗体を調製する方法は、当技術分野において周知であり、本発明において任意の方法を使用して、そのような抗体およびその等価物を調製することができる。
【0049】
NMU遺伝子の発現レベルをその翻訳産物に基づいて検出する別の方法として、NMUタンパク質に対する抗体を用いた免疫組織化学的解析により、染色強度を観察することができる。すなわち、強力な染色が観察されることにより、NMUタンパク質の存在の増加が示され、それと同時にNMU遺伝子の発現レベルが高いことが示される。免疫組織化学的解析の試験材料として、好ましくはNSCLC組織を使用することができる。
【0050】
さらに、翻訳産物は、その生物活性に基づいて検出することもできる。具体的には、NMUタンパク質はGHSR1bおよびNTSR1に結合することが知られており、したがって生体試料中のNMU発現タンパク質によりGHSR1bまたはNTSR1への結合能を測定することによって、NMU遺伝子の発現レベルを検出することができる。さらに、NMUタンパク質は細胞増殖活性を有することが知られている。したがって、そのような細胞増殖活性を指標として用いて、NMU遺伝子の発現レベルを決定することもできる。例えば、GHSR1bおよびNTSR1を発現する細胞を調製し、生体試料の存在下で培養し、次に増殖速度を検出することにより、または細胞周期もしくはコロニー形成能を測定することにより、生体試料の細胞増殖活性を決定することができる。
【0051】
さらに、評価の精度を向上させるために、NMU遺伝子の発現レベルに加えて、その他の肺細胞関連遺伝子、例えばNSCLCにおいて差次的に発現することが知られている遺伝子の発現レベルもまた、決定することができる。そのようなその他の肺細胞関連遺伝子には、WO 2004/031413およびWO 2005/090603に記載されている遺伝子が含まれる。
【0052】
本方法に従ってNSCLCの予後に関して評価される患者は、好ましくは哺乳動物であり、これにはヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシが含まれる。
【0053】
III. NSCLCの予後を評価するためのキット
本発明は、NSCLCの予後を評価または判定するためのキットを提供する。具体的には、本キットは、以下の群より選択され得る、患者由来の生体試料中のNMU遺伝子の発現を検出するための少なくとも1つの試薬を含む:
(a) NMU遺伝子のmRNAを検出するための試薬;
(b) NMUタンパク質を検出するための試薬;および
(c) NMUタンパク質の生物活性を検出するための試薬。
【0054】
NMU遺伝子のmRNAを検出するのに適した試薬には、NMU mRNAの一部に対する相補的配列を有するオリゴヌクレオチドなどの、NMU mRNAに特異的に結合するか、またはNMU mRNAを同定する核酸が含まれる。このような種類のオリゴヌクレオチドは、NMU mRNAに特異的なプライマーおよびプローブによって例証される。このような種類のオリゴヌクレオチドは、当技術分野において周知の方法に基づいて調製することができる。必要に応じて、NMU mRNAを検出するための試薬を固体基質上に固定化することができる。さらに、NMU mRNAを検出するための2つ以上の試薬をキットに含めることもできる。
【0055】
一方、NMUタンパク質を検出するのに適した試薬には、NMUタンパク質に対する抗体が含まれる。該抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってよい。さらに、断片がNMUタンパク質への結合能を保持する限りにおいて、抗体の任意の断片または修飾物(例えば、キメラ抗体、scFv、Fab、F(ab')2、Fvなど)を試薬として用いることもできる。タンパク質を検出するためのこのような種類の抗体を調製する方法は、当技術分野において周知であり、本発明において任意の方法を使用して、そのような抗体およびその等価物を調製することができる。さらに、直接連結または間接標識技法により、抗体をシグナル発生分子で標識することができる。標識、抗体を標識する方法、およびその標的への抗体の結合を検出する方法は当技術分野において周知であり、任意の標識および方法を本発明のために使用することができる。さらに、NMUタンパク質を検出するための2つ以上の試薬をキットに含めることもできる。
【0056】
さらに、NMUタンパク質の生物活性を検出するのに適した試薬には、GHSR1b、NTSR1、またはこの2つのタンパク質のヘテロ二量体複合体、ならびにGHSR1bおよびNTSR1を発現する細胞が含まれる。例えば、生体試料中の発現NMUタンパク質によるGHSR1bまたはNTSR1への結合能を測定することによって、NMUタンパク質の生物活性を検出することができる。あるいは、GHSR1bおよびNTSR1を発現する細胞を試薬として用いる場合には、例えば、生体中の発現NMUタンパク質に起因する細胞増殖活性を測定することによって、生物活性を決定することができる。例えば、患者由来の生体試料の存在下で細胞を培養し、次に増殖速度を検出することにより、または細胞周期もしくはコロニー形成能を測定することにより、生体試料の細胞増殖活性を決定することができる。必要に応じて、NMU mRNAを検出するための試薬を固体基質上に固定化することができる。さらに、NMUタンパク質の生物活性を検出するための2つ以上の試薬をキットに含めることもできる。
【0057】
キットは、上記の試薬のうちの2つ以上を含み得る。さらに、キットは、NMU遺伝子に対するプローブまたはNMUタンパク質に対する抗体を結合させるための固体基質および試薬、細胞を培養するための培地および容器、陽性および陰性の対照試薬、ならびにNMUタンパク質に対する抗体を検出するための二次抗体を含み得る。例えば、予後良好または予後不良な患者から得られた組織試料は、有用な対照試薬として役立ち得る。本発明のキットは、緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用説明書を備えた包装封入物(例えば、文書、テープ、CD-ROMなど)を含む、商業上の観点および使用者の観点から望ましいその他の材料をさらに含んでもよい。これらの試薬などは、ラベルを貼った容器中に含まれ得る。適切な容器としては、瓶、バイアル、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成され得る。
【0058】
本発明の一態様として、試薬がNMU mRNAに対するプローブである場合には、該試薬を多孔性ストリップなどの固体基質上に固定化して、少なくとも1つの検出部位を形成させることができる。多孔性ストリップの測定または検出領域は、それぞれが核酸(プローブ)を含む複数の部位を含み得る。検査ストリップはまた、陰性および/または陽性対照用の部位を含み得る。あるいは、対照部位は、検査ストリップとは別のストリップ上に位置してもよい。任意で、異なる検出部位は異なる量の固定化核酸を含んでよい、すなわち、第1検出部位ではより大量の固定化核酸を、および以降の部位ではより少量の固定化核酸を含んでよい。試験試料を添加すると、検出可能なシグナルを呈する部位の数により、試料中に存在するNMU mRNAの量の定量的指標が提供される。検出部位は、適切に検出可能な任意の形状で構成することができ、典型的には、検査ストリップの幅全体にわたる縞またはドットの形状である。
【0059】
IV. NMUシグナル伝達経路を阻害する化合物の同定
本発明によって、NMUタンパク質に結合することがそれぞれ知られていたGHSR1bおよびNTSR1が、全体としてNMU受容体として機能するヘテロ二量体複合体を形成することが見出された。さらに、NMUタンパク質は、新たに発見されたGHSR1bおよびNTSR1のヘテロ二量体複合体への結合を介して機能する、癌細胞浸潤と関連する可能性のある重要な増殖因子であることが強く示唆された。したがって、NMUタンパク質およびこのヘテロ二量体によるシグナル伝達を阻害する化合物は、NSCLCの増殖促進経路を阻害するために用いることができ、肺癌、特にNSCLCを治療または予防するための薬剤として役立ち得る。よって、本発明は、NMUタンパク質とGHSR1bおよびNTSR1からなるヘテロ二量体とによるシグナル伝達を阻害する化合物を同定する方法を提供する。具体的には、本方法は以下の段階を含む:
(1) GHSR1bおよびNTSR1のヘテロ二量体を、試験化合物の存在下でNMUタンパク質と接触させる段階;
(2) ヘテロ二量体およびNMUタンパク質によるシグナル伝達を検出する段階;ならびに
(3) ヘテロ二量体およびNMUタンパク質によるシグナル伝達を阻害する試験化合物を選択する段階。
【0060】
本方法に用いるタンパク質、すなわちGHSR1b、NTSR1、およびNMUのアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:4、6、および2として示される。
【0061】
本発明の一局面に従って、ヘテロ二量体およびNMUタンパク質の機能的等価物を、本方法において該各タンパク質として用いることもできる。本明細書において、タンパク質の「機能的等価物」とは、そのタンパク質と等価な生物活性を有するポリペプチドである。すなわち、GTSR1bおよびNTSR1へのNMUタンパク質の結合能を保持する任意のポリペプチドを、本発明の方法においてNMUタンパク質の機能的等価物として用いることができる。一方、NMUタンパク質に対する結合能、およびGTSR1bとヘテロ二量体複合体を形成する能力を保持する任意のポリペプチドを、NTSR1の機能的等価物として用いることができ;NMUタンパク質に対する結合能、およびNTSR1とヘテロ二量体複合体を形成する能力を保持する任意のポリペプチドを、GTSR1bの機能的等価物として用いることができる。そのような機能的等価物には、これらのタンパク質のそれぞれの結合部位を含む断片が含まれる。例えば、以下に記載する実施例においてヘテロ二量体複合体に結合することが示されたNMUタンパク質断片「NMU-25」を、NMUタンパク質の機能的等価物として用いることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0062】
加えて、そのような機能的等価物には、各タンパク質の天然アミノ酸配列に対して1つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、または挿入されたものも含まれる。あるいは、ポリペプチドは、各タンパク質の配列と少なくとも約80%の相同性(配列同一性とも称する)を有するアミノ酸配列を含むものであってよい。他の態様において、ポリペプチドは、各タンパク質をコードする遺伝子の天然ヌクレオチド配列と(上記の)ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0063】
一般に、タンパク質中の1つまたは複数のアミノ酸の修飾は、タンパク質の機能に影響しないことが知られている。当業者は、単一のアミノ酸または少数のアミノ酸を変化させる、アミノ酸配列に対する個々の付加、欠失、挿入、または置換は、「保存的修飾」であり、タンパク質の変化により類似の機能を有するタンパク質が生じることを認識すると考えられる。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野において周知である。例えば、以下の8群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:
(1) アラニン(A)、グリシン(G);
(2) アスパラギン酸(d)、グルタミン酸(E);
(3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
(4) アルギニン(R)、リジン(K);
(5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
(6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
(7) セリン(S)、スレオニン(T);および
(8) システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照されたい)。
【0064】
そのような保存的修飾ポリペプチドは、本発明のタンパク質に含まれる。しかしながら、本方法に適用可能なタンパク質はこれらに限定されず、互いに対する結合能、およびヘテロ二量体を形成するタンパク質に関しては、もう一方のタンパク質のそれぞれとヘテロ二量体を形成する能力を保持する限りにおいて、非保存的修飾物もまた含まれ得る。さらに、修飾タンパク質は、これらのタンパク質の多型変種、種間相同体、および対立遺伝子を排除しない。
【0065】
上記の修飾に加えて、タンパク質は、その結合能および/またはヘテロ二量体複合体を形成する能力を保持する限りにおいて、その他の物質とさらに連結させることができる。使用可能な物質には、ペプチド、脂質、糖および糖鎖、アセチル基、天然および合成ポリマーなどが含まれる。このような種類の修飾は、付加的な機能を付与するため、またはタンパク質を安定化させるために行うことができる。
【0066】
本発明の方法に用いるタンパク質は、従来の精製法により天然タンパク質として天然から、または選択されたアミノ酸配列に基づいた化学合成により、得ることができる。例えば、この合成に採用できる従来のペプチド合成法には、以下のものが含まれる:
(i) Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966;
(ii) The Proteins, Vol. 2, Academic Press, New York, 1976;
(iii) ペプチド合成(日本語)、丸善、1975;
(iv) ペプチド合成の基礎と実験(日本語)、丸善、1985;
(v) 医薬品の開発続、第14巻(ペプチド合成)(日本語)、広川書店、1991;
(vi) WO99/67288;および
(vii) Barany G. & Merrifield R.B., Peptides Vol. 2, 「Solid Phase Peptide Synthesis」, Academic Press, New York, 1980, 100-118。
【0067】
あるいは、ポリペプチドを生成するための任意の公知の遺伝子工学的方法を採用して、タンパク質を得ることもできる(例えば、Morrison J. (1977) J. Bacteriology 132: 349-51;Clark-Curtiss & Curtiss (1983) Methods in Enzymology (Wu et al. 編) 101: 347-62)。例えば、最初に、目的のタンパク質を発現可能な形態で(例えば、プロモーターを含む調節配列の下流に)コードするポリヌクレオチドを含む適切なベクターを調製し、適切な宿主細胞に形質転換し、次に宿主細胞を培養してタンパク質を生成する。タンパク質はまた、インビトロ翻訳系を採用して、インビトロで生成することもできる。
【0068】
本明細書において、ヘテロ二量体およびNMUによるシグナル伝達は、ヘテロ二量体とNMUとの間の結合として、またはヘテロ二量体とNMUとの結合後に起こる任意の変化を含むヘテロ二量体活性化として、検出することができる。したがって、化合物によるシグナル伝達の阻害は、化合物の存在下で、ヘテロ二量体とNMUとの間の結合またはヘテロ二量体活性化を検出することにより、検出することができる。本発明の結合を阻害する化合物を同定する方法として、当業者にとって周知の多くの方法を用いることができる。そのような同定は、例えば細胞系において、インビトロアッセイ系として行うことができる。より具体的には、最初に、ヘテロ二量体複合体またはNMUタンパク質のいずれか一方を支持体に結合させ、そこへもう一方のタンパク質を試験化合物とともに接触させる。次に、混合物をインキュベートし、洗浄し、支持体に結合しているもう一方のタンパク質を検出および/または測定する。
【0069】
タンパク質を結合させるために使用できる支持体の例には、アガロース、セルロース、およびデキストランなどの不溶性多糖類;ならびにポリアクリルアミド、ポリスチレン、およびシリコンなどの合成樹脂が含まれる;好ましくは、上記の材料から調製された市販のビーズおよびプレート(例えば、マルチウェルプレート、バイオセンサーチップなど)を用い得る。ビーズを用いる場合には、それらをカラムに充填してもよい。あるいは、磁気ビーズの使用もまた当技術分野において公知であり、これは、磁性によって、ビーズ上に結合しているタンパク質を容易に単離できるようにする。
【0070】
支持体へのタンパク質の結合は、化学結合および物理的吸着などの慣行的方法に従って行うことができる。あるいは、タンパク質は、タンパク質を特異的に認識する抗体を介して支持体に結合させてもよい。さらに、支持体へのタンパク質の結合は、アビジンとビオチンの組み合わせのような相互作用分子によって行うこともできる。
【0071】
タンパク質間の結合は、緩衝剤がタンパク質間の結合を阻害しない限りにおいて、限定されないが、例えばリン酸緩衝剤およびTris緩衝剤などの緩衝剤中で行われる。
【0072】
本発明において、表面プラズモン共鳴現象を使用するバイオセンサーを、結合したタンパク質を検出または定量するための手段として用いることもできる。このようなバイオセンサーを用いると、ごく微量のポリペプチドのみを用いて、標識を行わずに、タンパク質間の相互作用を表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することができる(例えば、BIAcore、Pharmacia)。したがって、BIAcoreなどのバイオセンサーを用いて、ヘテロ二量体複合体とNMUタンパク質との間の結合を評価することが可能である。
【0073】
あるいは、ヘテロ二量体複合体またはNMUタンパク質のいずれか一方を標識することができ、結合したタンパク質の標識を用いて、該結合したタンパク質を検出または測定することもできる。具体的には、タンパク質の一方をあらかじめ標識した後に、標識したタンパク質を試験化合物の存在下でもう一方のタンパク質と接触させ、続いて洗浄後に、結合したタンパク質を標識に従って検出または測定する。
【0074】
本発明の方法におけるタンパク質の標識には、放射性同位体(例えば、3H、14C、32P、33P、35S、125I、131I)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ)、蛍光物質(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン)、およびビオチン/アビジンなどの標識物質を用いることができる。タンパク質を放射性同位体で標識する場合、検出または測定は液体シンチレーションにより行うことができる。あるいは、酵素で標識したタンパク質は、酵素の基質を添加して、呈色などの基質の酵素的変化を吸光光度計で検出することにより、検出または測定することができる。さらに、蛍光物質を標識として用いる場合には、蛍光光度計を用いて、結合したタンパク質を検出または測定することができる。
【0075】
さらに、本発明の同定法における結合は、ヘテロ二量体またはNMUタンパク質に対する抗体を用いて、検出または測定することもできる。本発明において、ヘテロ二量体に対する抗体は、ヘテロ二量体を抗原として用いて調製することができる。あるいは、調製された抗体がヘテロ二量体を認識する限りにおいて、ヘテロ二量体を形成するタンパク質のいずれか一方、すなわちGTSR1bまたはNTSR1を抗原として用いることもできる。例えば、支持体上に固定化されたNMUタンパク質を試験化合物およびヘテロ二量体と接触させた後、混合物をインキュベートし、洗浄し、ヘテロ二量体に対する抗体を用いて検出または測定を行うことができる。あるいは、ヘテロ二量体を支持体上に固定化してもよく、NMUタンパク質に対する抗体を抗体として用いてもよい。
【0076】
本発明のスクリーニングにおいて抗体を用いる場合には、抗体を上記の標識物質のうちの1つで標識し、標識物質に基づいて検出または測定することが好ましい。あるいは、ヘテロ二量体またはNMUタンパク質に対する抗体を一次抗体として用いて、標識物質で標識した二次抗体によって検出してもよい。さらに、本発明のスクリーニングにおいてタンパク質に結合した抗体は、プロテインGまたはプロテインAカラムを用いて検出または測定することもできる。
【0077】
あるいは、本発明の同定法の別の態様においては、細胞を利用するツーハイブリッドシステムを用いることができる(「MATCHMAKERツーハイブリッドシステム」、「哺乳動物MATCHMAKERツーハイブリッドアッセイキット」、「MATCHMAKERワンハイブリッドシステム」(Clontech);「HybriZAPツーハイブリッドベクターシステム」(Stratagene);参考文献「Dalton and Treisman, Cell (1992) 68: 597-612」、「Fields and Sternglanz, Trends Genet (1994) 10: 286-92」)。ツーハイブリッドシステムでは、例えば、NMUタンパク質をSRF結合領域またはGAL4結合領域と融合させ、酵母細胞で発現させる。NMUタンパク質に結合するヘテロ二量体複合体をVP16またはGAL4転写活性化領域と融合させ、試験化合物の存在下で同じく酵母細胞で発現させる。あるいは、ヘテロ二量体をSRF結合領域またはGAL4結合領域と融合させ、NMUをVP16またはGAL4転写活性化領域と融合させてもよい。試験化合物がヘテロ二量体複合体とNMUタンパク質との間の結合を阻害しない場合には、この2つの結合によりレポーター遺伝子が活性化され、陽性クローンが検出され得る。レポーター遺伝子としては、HIS3遺伝子のほかに、例えばAde2遺伝子、lacZ遺伝子、CAT遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子などを用いることができる。
【0078】
本発明の態様において、GHSR1bおよびNTSR1からなるヘテロ二量体複合体は、生細胞の表面上に発現され得る。これらのタンパク質は天然で細胞表面上に発現されるため、A549およびLC319などの細胞をスクリーニングに使用することが可能である。あるいは、発現ベクターを用いて、これらのタンパク質をコードする遺伝子を適切な細胞(例えば、COS-7)に導入して、これらのタンパク質を細胞の表面上に発現させてもよい。細胞表面上にヘテロ二量体を発現する細胞を用いてスクリーニングすることにより、ヘテロ二量体と反応する化合物の同定ばかりでなく、細胞環境における受容体活性を調節する化合物の特徴づけも可能になり、これは薬学的目的のための候補化合物のスクリーニングにとって有益な局面である。
【0079】
タンパク質が生細胞の表面上に発現される場合、ヘテロ二量体およびNMUによるシグナル伝達は、腫瘍細胞増殖の促進をもたらすオートクリンおよびパラクリンシグナル伝達を検出する方法によって検出することができる(Heasley, Oncogene (2001) 20: 1563-9)。例えば、化合物によるシグナル伝達の阻害は以下により検出することができる:
(1) リガンド誘導性内部移行を含むポリペプチドの細胞内局在の変化を検出すること(Vandenbulcke F, et al. (2000) J. Cell Sci. 113: 2963-75;Lenkei Z, et al. (2000) J. Histochem. Cytochem. 48: 1553-63;Camina JP, et al. (2004) Endocrinology ;145:930-40. Epub: (2003) as doi: 10.1210/en. 2003-0974;例えば、蛍光標識された受容体タンパク質の使用;例えば、CyHer5E受容体内部移行アッセイ蛍光色素(GE Healthcare)での標識);
(2) 細胞内のcAMPの濃度変化を検出すること(例えば、FDSS(機能性薬物スクリーニングシステム(浜松ホトニクス))またはFLIPR(蛍光画像プレートリーダー(Molecular Devices))を用いるアッセイ;Kojima M, et al. (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 276: 435-8;Howard AD, et al. (2000) Nature 406: 70-4;Fujii R, et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:21068-74;および蛍光の変化を検出する、蛍光標識プローブを用いる方法(Pozzan T. et al. (2003) Eur. J. Biochem. 270: 2343-52));
(3) アデニル酸シクラーゼの活性化の変化を検出すること;
(4) プロテインキナーゼA(PKA)の活性化の変化を検出すること;
(5) FOXM1、GCDH、CDK5RAP1、LOC134145、およびNUP188を含む、NMU標的遺伝子の発現の変化を検出すること;
(6) 細胞増殖、形質転換、または細胞の任意の他の発癌表現型の変化を検出すること;
(7) 細胞のアポトーシスの状態の変化を検出すること;
(8) ヘテロ二量体とGタンパク質との間の相互作用の変化を検出すること(例えば、FLIPRを用いるアッセイ;Kojima M, et al. (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 276: 435-8;Howard AD, et al. (2000) Nature 406: 70-4;Fujii R, et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:21068-74);
(9) ホスホリパーゼCまたはその下流経路の活性化の変化を検出すること(Heasley LE. (2001) Oncogene 20: 1563-9);
(10) Raf、MEK、ERK、およびプロテインキナーゼD(PKD)を含むいくつかのキナーゼの活性化をもたらすプロテインキナーゼカスケードの活性化の変化を検出すること(Heasley LE. (2001) Oncogene 20: 1563-9);
(11) Src/Tec/Bmxファミリーのチロシンキナーゼのメンバーの活性化の変化を検出すること;
(12) RasおよびRhoファミリーのメンバーの活性化、MAPファミリーのJNKメンバーのうちの1つのメンバーの調節、またはアクチン細胞骨格の再構築の変化を検出すること(Heasley LE. (2001) Oncogene 20: 1563-9);ならびに
(13) ヘテロ二量体活性化によって媒介される任意のシグナル複合体の活性化の変化を検出すること。
【0080】
さらに、ハイスループットスクリーニング(HTS)を行って、NMUシグナル伝達経路を阻害する化合物を同定することもできる。例えば、そのような化合物に関するHTSは、Gタンパク質共役受容体を標的化する化合物を同定するHTSと類似の方法によって行うことができる(Eglen R.M. (2005) Frontiers is Drug Design & Discovery 1: 97-111)。GHSR1bおよびNTSR1のヘテロ二量体におけるHTSに関しては具体的に、(i) シス作用性エンハンサーエレメント、遺伝子発現を促進する結合パートナーによって標的化されるDNA配列モチーフ(例えば、アデニル酸シクラーゼ、FOXM1、GCDH、CDK5RAP1、LOC134145、NUP188、ホスホリパーゼC、Raf、MEK、ERK、PKDなどのプロモーター)、およびレポーター遺伝子の上流を用いて操作された発現系を使用するレポーター遺伝子アッセイによって;(ii) 二次メッセンジャーアッセイによって(例えば、cAMPを二次メッセンジャーとして(Pozzan T. et al. (2003) Eur. J. Biochem. 270: 2343-52));または(iii) cAMP、イノシトールリン脂質などの蓄積として、シグナル強度変化を測定することができる。しかしながら、Gタンパク質を標的化する化合物のスクリーニングとは異なり、GHSR1b/NTSR1を発現する細胞をNMUで処理しても細胞内Ca2+レベルは変化しなかったため、Ca2+をNMUシグナル伝達経路のシグナル伝達の変化の指標として用いることはできない。
【0081】
一般的に、シグナル強度変化に関するそのような測定は、マイクロタイタープレート方式(例えば、FLIPR、FDSSなど)を用いて行う。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0082】
あるいは、画像処理に基づく解析系によるHTSによって、細胞タンパク質再分布を測定して、ヘテロ二量体およびNMUによるシグナル伝達を阻害する化合物を同定することもできる。受容体(ヘテロ二量体)へのNMUの結合を介したヘテロ二量体の活性化により、受容体の再分布が起こることが知られている。例えば、天然ヘテロ二量体またはヘテロ二量体と融合させたエピトープタグを認識する抗体を用いる免疫染色技法により、固定細胞を試験することによって、ヘテロ二量体の再分布を検出することができる(試験化合物で処理するかまたは試験化合物とともにインキュベートした細胞を、試験化合物による処理またはインキュベーションを行っていない細胞と比較する)。あるいは、標識ヘテロ二量体、例えば適切な蛍光タンパク質(例えば、CypHer5、GFP)で標識されたヘテロ二量体を発現するクローン細胞を使用し、自動化共焦点システムによるモニタリングおよび画像処理アルゴリズムによる解析を可能にする標識の再分布を検出して、ヘテロ二量体およびNMUの転位に関する測定を行うこともできる。
【0083】
任意の試験化合物、例えば細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物の産物、海洋生物からの抽出物、植物抽出物、精製タンパク質または粗タンパク質、ペプチド、非ペプチド化合物、合成低分子化合物、および天然化合物を、本発明のスクリーニング法に用いることができる。本発明の試験化合物は、(1) 生物学的ライブラリー、(2) 扱うことが空間的に可能な並列した固相または液相ライブラリー、(3) デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法、(4) 「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、および(5) アフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法を含む、当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多くのアプローチのいずれかを用いて入手することもできる。アフィニティークロマトグラフィー選択を用いる生物学的ライブラリー法はペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の低分子ライブラリーに適用可能である(Lam (1997) Anticancer Drug Des. 12: 145-67)。分子ライブラリーを合成する方法の例は、当技術分野において見出すことができる(DeWitt et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6909-13;Erb et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422-6;Zuckermann et al. (1994) J. Med. Chem. 37: 2678-85;Cho et al. (1993) Science 261: 1303-5;Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059;Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061;Gallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37: 1233-51)。化合物のライブラリーは、溶液中に提示してもよく(Houghten (1992) Bio/Techniques 13: 412-21を参照されたい)、またはビーズ(Lam (1991) Nature 354: 82-4)、チップ(Fodor (1993) Nature 364: 555-6)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,571,698号;第5,403,484号、および第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al. (1992), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865-9)、もしくはファージ(Scott and Smith (1990) Science 249: 386-90;Devlin (1990) Science 249: 404-6;Cwirla et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6378-82;Felici (1991) J. Mol. Biol. 222: 301-10;米国特許出願第2002103360号)上に提示してもよい。本発明の同定法に従って細胞またはタンパク質に曝露する試験化合物は、単一の化合物または化合物の組み合わせであってよい。本方法において化合物の組み合わせを用いる場合、化合物は、連続してまたは同時に接触させることができる。
【0084】
本発明の同定法によって単離された化合物は、GHSR1bおよびNTSR1からなるヘテロ二量体とNMUタンパク質との相互作用を阻害する化合物であり、したがって、例えばNSCLCなどの細胞増殖性疾患に起因する疾患を治療または予防するための候補薬剤である。本発明の方法によって得られた化合物の構造の一部が、付加、欠失、および/または置換によって変換された化合物も、本発明の同定法によって得られる化合物に含まれる。過剰発現される遺伝子、すなわちGHSR1b、NTSR1、またはNMU遺伝子の機能を抑制するのに効果的な化合物は、臨床的有用性を有すると見なされ、動物モデルまたは被験者において、癌細胞増殖を妨げるその能力についてさらに試験することができる。
【0085】
V. NSCLCを治療または予防するための化合物のスクリーニング
「IV. NMUシグナル伝達経路を阻害する化合物の同定」の項目において上記で説明した通り、NMUタンパク質とGHSR1bおよびNTSR1からなるヘテロ二量体とによりシグナル伝達を阻害する化合物は、NSCLCの増殖促進経路を阻害することができ、肺癌を治療または予防するための薬剤として役立ち得る。よって、本発明は、上記で詳述したように、NMUタンパク質およびヘテロ二量体によるシグナル伝達を阻害する化合物を同定することにより、NSCLCを治療または予防するために使用できる化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【0086】
必要に応じて、本発明の方法によって同定またはスクリーニングされた化合物を、活性成分として該化合物を含む薬学的組成物に製剤化することができる。障害を治療および/または予防するために、化合物を薬学的組成物として患者に直接投与してもよいし、または従来の製剤化方法に従って化合物を製剤化してもよい。例えば、必要に応じて、本発明のポリペプチドを、経口、直腸、経鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣内、もしくは非経口(筋肉内、皮下、静脈内、腫瘍内を含む)投与、または吸入もしくは吹送による投与に適した形態に製剤化することができる。したがって、本発明は、該化合物に加えて、任意の薬学的に許容される賦形剤または担体を含む薬学的組成物を包含する。「薬学的に許容される」という語句は、その物質が不活性であることを示し、薬物の希釈剤または媒体として用いられる従来の物質を含む。適切な賦形剤およびそれらの製剤は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed. (1980) Mack Publishing Co., ed. Oslo et alに記載されている。
【0087】
そのような薬学的組成物は、ヒト、ならびにマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、サル、ヒヒ、およびチンパンジーを含む任意の他の哺乳動物、特に商業上重要な動物または家畜において、障害を治療および/または予防するために用いることができる。
【0088】
薬学的組成物は、薬学的有効量の活性成分(本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を含む。化合物の「薬学的有効量」とは、ヘテロ二量体複合体とNMUタンパク質の結合が重要な役割を果たす障害を治療および/または予防するのに十分な量である。薬学的有効量の例は、それによって障害が治療または予防されるように患者に投与した場合に、ヘテロ二量体とNMUとの間の相互作用を減少させるのに必要な量であってよい。相互作用の減少は、例えば、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、75%、80%、90%、95%、99%、または100%の減少であってよい。あるいは、薬学的有効量は、対象において、NSCLCの大きさ、有病率、または転移能の減少をもたらす量であってよい。さらに、薬学的組成物を予防的に適用する場合、「薬学的有効量」とは、NSCLCの発生を遅延させるかもしくは妨げる、またはNSCLCの臨床症状を軽減する量であってよい。
【0089】
本発明の方法によって同定された化合物のそのような薬学的有効量を決定するためのNSCLCの評価は、組織病理学的診断を含む標準的な臨床プロトコルを用いて、または慢性咳嗽、嗄声、喀血、体重減少、食欲不振、息切れ、喘鳴、気管支炎もしくは肺炎の反復的な発作、および胸痛などの症候性異常の同定により、行うことができる。
【0090】
使用する用量は、対象の年齢および性別、処置する障害の詳細、ならびにその重症度を含む、いくつかの要因に依存する。投与経路もまた、状態およびその重症度に応じて変わる可能性がある。しかし、同定された化合物の有効な用量範囲の決定は、特に本明細書に提供する詳細な開示を踏まえて、十分に当業者の能力の範囲内である。化合物の薬学的または予防的有効量(用量)は、最初に、細胞培養アッセイおよび/または動物モデルから推定することができる。
【0091】
同定された化合物を含む薬学的組成物は、必要に応じて、物質が該化合物のインビボ阻害作用を阻害しない限りにおいて、活性成分として任意の他の治療物質を含んでもよい。製剤は、特に上記した成分に加えて、問題となっている製剤の種類を考慮して、当技術分野において通常のその他の薬剤を含んでもよいことが理解されるべきである。
【0092】
本発明の1つの態様において、同定された化合物を含む薬学的製剤は、癌、特にNSCLCの病的状態を治療するのに有用な物質を含む製品およびキットに含めることができる。製品は、化合物のいずれかの、ラベル付き容器を含み得る。適切な容器には、瓶、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成され得る。容器上のラベルは、その組成物が、疾患の1つまたは複数の状態を治療または予防するために用いられることを示すべきである。ラベルはまた、投与に関する指示などを示してもよい。
【0093】
同定された化合物を含む薬学的組成物を含むキットは、上記の容器に加えて、薬学的に許容される希釈剤を収容する第2の容器を任意に含んでよい。キットは、その他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用説明書を備えた包装封入物を含む、商業上の観点および使用者の観点から望ましいその他の材料をさらに含んでもよい。
【0094】
薬学的組成物は、必要に応じて、活性成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含み得るパックまたはディスペンサー装置中にあってもよい。パックは、例えば、ブリスターパックのように金属またはプラスチックのホイルを含み得る。パックまたはディスペンサー装置は、投与に関する説明書を伴ってもよい。
【0095】
以下に、実施例を参照しながら本発明を詳細に説明する。しかし、そこで説明する材料、方法などは、本発明の局面を例証するに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものでは全くない。したがって、そこで説明するものと類似のまたは等価な材料、方法などを、本発明の実施または試験において用いることができる。
【0096】
実施例
1.実験手順
(1)細胞株および臨床組織試料
本明細書において使用したヒト肺癌細胞株は以下の通りである:15種類のNSCLC(A549、NCI-H23、NCI-H358、NCI-H522、NCI-H1435、NCI-H1793、LC174、LC176、LC319、PC3、PC9、PC14、SK-LU-1、RERF-LC-AI、およびSK-MES-1);ならびに4種類のSCLC(SBC-3、SBC-5、DMS114、およびDMS273)。全ての細胞を、10%ウシ胎仔血清(FCS)を添加した適切な培地で増殖させ、5% CO2を含む加湿空気雰囲気中、37℃で維持した。
【0097】
インフォームドコンセントを得た37人の患者から事前に37例の原発性NSCLC試料を得た(Kikuchi et al. (2003) Oncogene 22: 2192-205)。手術を受けた患者から、15例のさらなる原発性NSCLC、7例のADC、および8例のSCCを隣接正常肺組織とともに得た。
【0098】
合計326例のホルマリン固定原発性NSCLC(I〜IIIa期)、より詳しくは、224例のADC、86例のSCC、13例の大細胞癌(LCC)、および3例の腺扁平上皮癌(ASC)、ならびに隣接正常肺組織試料を患者から得た。患者から得た剖検材料(17個体)由来の進行性SCLC試料(IV期)もまた、この研究に用いた。全ての臨床材料の使用は、施設内研究倫理委員会(Institutional Research Ethics Committee)の承認を得た。
【0099】
(2)半定量的RT-PCR分析
トリゾール試薬(Life Technologies, Inc.)を製造元のプロトコルに従って用いて、培養細胞および臨床組織から全RNAを抽出した。抽出RNAおよび正常ヒト組織ポリ(A)RNAを、DNase I(Nippon Gene)で処理し、オリゴ(dT)20プライマーおよびスーパースクリプトII逆転写酵素(Invitrogen)を用いて逆転写した。以下の合成遺伝子特異的プライマーおよびβアクチン(ACTB)特異的プライマーを内部対照として用いて、半定量RT-PCR実験を実施した:
NMU
5’-TGAAGAGATTCAGAGTGGACGA-3’ (SEQ ID NO: 7)および
5’-ACTGAGAACATTGACAACACAGG-3’ (SEQ ID NO: 8);
NMU1R
5’-AAGAGGGACAGGGACAAGTAGT-3’ (SEQ ID NO: 9)および
5’-ATGCCACTGTTACTGCTTCAG-3’ (SEQ ID NO: 10);
NMU2R
5’-GGCTCTTACAACTCATGTACCCA-3’ (SEQ ID NO: 11)および
5’-TGATACAGAGACATGAAGTGAGCA-3’ (SEQ ID NO: 12);
GHSR1a
5’-TGGTGTTTGCCTTCATCCT-3’ (SEQ ID NO: 13)および
5’-GAATCCCAGAAGTCTGAACA-3’ (SEQ ID NO: 14);
GHSR1b
5’-CTTGGGACACCAACGAGTG-3’ (SEQ ID NO: 15)および
5’-AGGACCCGCGAGAGAAAGC-3’ (SEQ ID NO: 16);
NTSR1
5’-GGTCTGTGGCTGTGACTGAA-3’ (SEQ ID NO: 17)および
5’-GTTTGAGCTGTGAGGGCTGT-3’ (SEQ ID NO: 18);
GHRL
5’-TGAGCCCTGAACACCAGAGAG-3’ (SEQ ID NO: 19)および
5’-AAAGCCAGATGAGCGCTTCTA-3’ (SEQ ID NO: 20);
NTS
5’-TCTTCAGCATGATGTGTTGTGT-3’ (SEQ ID NO: 21)および
5’-TGAGAGATTCATGAGGAAGTCTTG-3’ (SEQ ID NO: 22);
FOXM1
5’-CCCTGACAACATCAACTGGTC-3’ (SEQ ID NO: 23)および
5’-GTCCACCTTCGCTTTTATTGAGT-3’ (SEQ ID NO: 24);
注釈付けられていない転写物(クローンIMAGE:3839141、mRNA)
5’-AAAAAGGGGATGCCTAGAACTC-3’ (SEQ ID NO: 25)および
5’-CTTTCAGCACGTCAAGGACAT-3’ (SEQ ID NO: 26);
GCDH
5’-ACACCTACGAAGGTACACATGAC-3’ (SEQ ID NO: 27)および
5’-GCTATTTCAGGGTAAATGGAGTC-3’ (SEQ ID NO: 28);
CDK5RAP1
5’-CAGAGATGGAGGATGTCAATAAC-3’ (SEQ ID NO: 29)および
5’-CATAGCAGCTTTAAAGAGACACG-3’ (SEQ ID NO: 30);
LOC134145
5’-CCACCATAACAGTGGAGTGGG-3’ (SEQ ID NO: 31)および
5’-CAGTTACAGGTGTATGACTGGGAG-3’ (SEQ ID NO: 32);
NUP188
5’-CTGAATACAACTTCCTGTTTGCC-3’ (SEQ ID NO: 33)および
5’-GACCACAGAATTACCAAAACTGC-3’ (SEQ ID NO: 34);
CCNA2
5’-AAATAGAGCGTGAAGATGCCCT-3’ (SEQ ID NO: 35)および
5’-GGCAGCTGGCATCATTAATACTT-3’ (SEQ ID NO: 36);
CCNB1
5’-GGGTTCTTGTTTTATATACCTGGC-3’ (SEQ ID NO: 37)および
5’-GAATTATGGCAGCAATCACAAG-3’ (SEQ ID NO: 38);
CCND1
5’-CTGGATGTTGTGTGTATCGAGAG-3’ (SEQ ID NO: 39)および
5’-GTCTTCTGCTGGAAACATGCCG-3’ (SEQ ID NO: 40);ならびに
ACTB
5’-GAGGTGATAGCATTGCTTTCG-3’ (SEQ ID NO: 41) および
5’-CAAGTCAGTGTACAGGTAAGC-3’ (SEQ ID NO: 42)。
【0100】
増幅の対数期内での生成物強度を確保するために、PCR反応をサイクル数に関して最適化した。
【0101】
(3)ノーザンブロット解析
ヒト多組織ブロット(BD Biosciences Clontech)をNMUの32P標識PCR産物とハイブリダイズさせた。以下のプライマーを用いて、NMUの完全長cDNAをRT-PCRによって調製した:
5’-CGCGGATCCGCGATGCTGCGAACAGAGAGCTG-3’ (SEQ ID NO: 43) および
5’-CCGCTCGAGCGGAATGAACCCTGCTGACCTTC-3’ (SEQ ID NO: 44)。
【0102】
供給元の推奨に従って、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、および洗浄を実施した。増感スクリーンによるブロットのオートラジオグラフィを室温で72時間実施した。
【0103】
(4)ウェスタンブロッティング
細胞を、プロテアーゼインヒビターカクテルセットIII(CALBIOCHEM)含有RIPA緩衝剤(50mM Tris-HCl(pH8.0)、150mM NaCl、1% NP-40、0.5% Na-デオキシコール酸塩、0.1% SDS)で溶解させた。タンパク質試料をSDSポリアクリルアミドゲルで分離し、Hybond-ECLニトロセルロースメンブレン(GE Healthcare Bio-sciences)上にエレクトロブロットした。ブロットを、ウサギポリクローナル抗NMU抗体(Alpha Diagnostic International)、マウスモノクローナル抗FLAG M2抗体(Sigma-Aldrich Co.)、ヤギポリクローナル抗NTSR1抗体(Santa Cruz Biotechnology, Inc.)、およびウサギポリクローナル抗GHSR抗体(当初はペプチドGVEHENGTDPWDTNEC(SEQ ID NO: 60)に対して産生されたもの)とともにインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ(GE Healthcare Bio-sciences)と結合した二次抗体を用いて、抗原-抗体複合体を検出した。ECLウェスタンブロッティング検出試薬(GE Healthcare Bio-sciences)によって、タンパク質バンドを可視化した。
【0104】
(5)免疫組織化学および組織マイクロアレイ
臨床試料(各々がパラフィンブロックに包埋された正常肺組織、NSCLC、およびSCLC)中のNMU、GHSR1b、またはNTSR1タンパク質の存在を調べるために、切片をENVISION+キット/西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(DakoCytomation)で染色した。具体的には、NMU(Alpha Diagnostic International)、GHSR1b(当初はペプチドGGSQRALRLSLAGPILSLC(SEQ ID NO: 45)に対して産生されたもの)、またはNTSR1(Santa Cruz Biotechnology, Inc.)のいずれかに対するポリクローナル抗体を、内因性ペルオキシダーゼおよびタンパク質を阻害した後に添加し、二次抗体としてのHRP標識抗ウサギIgGおよび抗ヤギIgGとともに切片をインキュベートした。発色基質を添加し、試料をヘマトキシリンで対比染色した。
【0105】
腫瘍組織マイクロアレイを、以前に公表されたように構築した(Kononen et al. (1998) Nat. Med. 4: 844-7; Chin et al. (2003) Mol. Pathol. 56: 275-9;Callagy et al. (2003) Diagn. Mol. Pathol. 12: 27-34; Callagy et al. (2005) J. Pathol. 205: 388-96)。試料採取用の組織領域を、スライド上の対応するHE染色切片との視覚的な位置合わせにもとづいて選択した。ドナー腫瘍ブロックから取った3つ、4つ、または5つの組織中心(直径0.6mm、高さ3〜4mm)を、組織マイクロアレイヤ(tissue microarrayer)(Beecher Instruments)を用いて、レシピエントのパラフィンブロックに入れた。正常組織の中心を各々の症例から打ち抜いた。得られたマイクロアレイ用ブロックの5μm切片を免疫組織化学的解析に用いた。臨床経過観察データの予備知識なしに3人の別々の研究者により、NMU、GHSR1b、またはNTSR1陽性を、染色強度にもとづいて、陰性または陽性として評価した。評価者が別個に陽性と判断した症例のみを陽性と認めた。
【0106】
(6)統計解析
腫瘍特異的生存曲線を、手術日からNSCLCに関連した死亡時点または最終経過観察まで、算出した。該当する変数ごとにカプラン-マイヤー曲線を算出した。患者サブグループ間の生存期間の差を、ログランク検定を用いて解析した。
【0107】
(7)免疫細胞化学的解析
培養細胞をPBS(-)で2回洗浄し、4% パラホルムアルデヒド溶液中室温で60分間固定し、さらに0.1% TritonX-100含有PBS(-)を1.5分間透過させた。一次抗体反応に先立ち、細胞をブロッキング溶液(PBS(-)中、3% BSA)で60分間覆って、非特異的抗体結合を阻害した。続いて該細胞を、ヒトNMUタンパク質に対する抗体とともにインキュベートした。内因性NMUを明らかにするために、ローダミン(Cappel)を結合したヤギ抗ウサギ二次抗体で抗体を染色し、顕微鏡(DP50;OLYMPUS)で観察した。
【0108】
(8)RNA干渉アッセイ
ベクターに基づくRNA干渉(RNAi)系であるpsiH1BX3.0は、哺乳動物細胞においてsiRNA合成を誘導することが本発明者らによって以前に確認されている(Suzuki et al. (2003) Cancer Res. 63: 7038-41;Suzuki et al. (2005) Cancer Res. 65: 11314-25;Kato et al. (2005) Cancer Res. 65: 5638-46;Furukawa et al. (2005) Cancer Res. 65: 7102-10)。10μgのsiRNA発現ベクターを、30μlのリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて、NSCLC細胞株A549およびLC319(いずれもNMU、GHSR1b、NTSR1、およびFOXM1を内因的に過剰発現する)にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、適切な濃度のジェネテシン(G418)の存在下で5日培養し、その後、細胞数および生存率をギムザ染色および三つ組MTTアッセイによって測定した。RNAi用合成オリゴヌクレオチドの標的配列は以下の通りであった:
対照1(EGFP:増強緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、オワンクラゲ(Aequorea victoria)GFP変異体)、
5’-GAAGCAGCACGACTTCTTC-3’ (SEQ ID NO: 46);
対照2(ルシフェラーゼ:フォチヌス ピラリス(Photinus pyralis)ルシフェラーゼ遺伝子)、
5’-CGTACGCGGAATACTTCGA-3’ (SEQ ID NO: 47);
対照3(スクランブル:5Sおよび16S rRNAをコードするミドリムシ(Euglena gracilis)葉緑体遺伝子)、
5’-GCGCGCTTTGTAGGATTCG-3’ (SEQ ID NO: 48);
siRNA-NMU (si-NMU), 5’-GAGATTCAGAGTGGACGAA-3’ (SEQ ID NO: 49);
siRNA-GHSR-1 (si-GHSR-1), 5’-CCTCTACCTGTCCAGCATG-3’ (SEQ ID NO: 50);
siRNA-GHSR-2 (si-GHSR-2), 5’-GCTGGTCATCTTCGTCATC-3’ (SEQ ID NO: 51);
siRNA-NTSR1-1 (si-NTSR1-1), 5’-GTTCATCAGCGCCATCTGG-3’ (SEQ ID NO: 52);
siRNA-NTSR1-2 (si-NTSR1-2), 5’-GGTCGTCATACAGGTCAAC-3’ (SEQ ID NO: 53); および
siRNA-FOXM1 (si-FOXM1), 5’-GCAGCAGAAACGACCGAAT-3’ (SEQ ID NO: 54)。
【0109】
RNAi系を実証するために、COS-7細胞に一過的にトランスフェクトした対応する標的遺伝子の発現が、個々の対照siRNA(EGFP、ルシフェラーゼ、およびスクランブル)によって減少することを、半定量的RT-PCRを用いてまず確認した。対照siRNAではなく各々のsiRNA(si-NMU、si-GHSR1、si-NTSR1-1、si-NTSR1-2、およびsi-FOXM1)による、NMU、GHSR1、NTSR1、およびFOXM1の発現の下方制御を、このアッセイに使用した細胞株において半定量的RT-PCRによって確認した。
【0110】
(9)フローサイトメトリー
細胞を5×105細胞/100mmディッシュの密度で蒔き、siRNA発現ベクターをトランスフェクトし、適切な濃度のジェネテシンの存在下で培養した。トランスフェクションの4日後、培地をジェネテシン無添加培地と置き換えた。細胞をさらに24時間インキュベートした後、トリプシン処理し、PBSに回収し、70% 冷エタノールで30分間固定した。100μg/ml RNase(Sigma-Aldrich Co.)で処理した後、細胞を、PBS中50μg/mlのヨウ化プロピジウム(Sigma-Aldrich Co.)で染色した。フローサイトメトリーをBecton Dickinson FACSCaliburで行い、Cell Questソフトウェア (Becton Dickinson Biosciences)で解析した。細胞周期のG0/G1期、S期、およびG2/M期にある核の割合、ならびにサブG1集団の割合を、ゲートされていない(ungated)少なくとも20,000個の細胞から決定した。
【0111】
(10)NMU発現COS-7トランスフェクタント
NMU発現安定トランスフェクタントを標準プロトコルに従って確立した。上記したプライマーセットを用いるRT-PCRによって、NMUの全コード領域を増幅した。生成物をBamHIおよびXhoIで消化し、NMUタンパク質のC末端のc-myc-His-エピトープ配列(LDEESILKQE-HHHHHH(SEQ ID NO: 55))を含むpcDNA3.1-myc/His A(+)ベクター(Invitrogen)の適切な部位にクローニングした。製造元の指示に従ってFuGENE6トランスフェクション試薬(Roche Diagnostics)を用い、内因性NMU発現を避けて、COS-7細胞に、NMU(pcDNA3.1-NMU-myc/His)、NMUのアンチセンス鎖(pcDNA3.1-アンチセンス)、またはモック(mock)プラスミド(pcDNA3.1)のいずれかを発現しているプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、10% FCSおよびジェネテシン(0.4mg/ml)を含むDMEM中で14日間培養し、次に個々のコロニー50個をトリプシン処理し、限界希釈アッセイによって安定したトランスフェクタントをスクリーニングした。各クローンでのNMUの発現を、RT-PCR、ウェスタンブロッティング、および免疫染色によって決定した。
【0112】
(11)細胞増殖およびコロニー形成アッセイ
安定的にNMUを発現するCOS-7トランスフェクタントを、6ウェルプレート(5×104細胞/ウェル)に播種し、10% FCSおよび0.4mg/mlジェネテシンを含む培地中に24、48、72、96、120、および144時間維持した。各時点で、セルカウンティングキット(WAKO)を用いてMTTアッセイによって細胞の増殖を評価した。144時間目にコロニーを計数した。実験はすべて三度行った。NMU-25とCOS-7細胞との相互作用を、フローサイトメトリー解析によって検討した。具体的には、サブコンフルエントな細胞を細胞解離溶液(Sigma-Aldrich Co.)に回収してDMEMに懸濁した。次に、1×106細胞/マイクロチューブをアッセイ緩衝剤(10mM MgCl2、2mM EDTA、および0.1% BSAを含むPBS(-))で洗浄し、細胞を、アッセイ緩衝剤中0.5〜10μMローダミン標識NMU-25ペプチド(NMU-25ローダミン;Phoenix Pharmaceuticals, Inc.)とともに室温で2時間インキュベートした。その後、細胞をアッセイ緩衝剤で2回洗浄した。
【0113】
ローダミン標識NMU-25に結合した細胞集団を検出するために、Becton Dickinson FACSCaliburを用いてフローサイトメトリーを行い、Cell Questソフトウェアで解析した。NMU発現プラスミドまたは偽プラスミドを一過的にトランスフェクトしたLC319細胞を用いて、NSCLC細胞に対するNMUの増殖作用も試験した。細胞を10% FCSおよびジェネテシン(1mg/ml)含有RPMI中で18日間培養し、コロニーを計数した。
【0114】
(12)マトリゲル浸潤アッセイ
NMU発現プラスミドまたはモックプラスミドを一過的にトランスフェクトしたCOS-7細胞を増殖させて、10% ウシ胎仔血清含有DMEM中でほぼコンフルエントな状態にした。細胞をトリプシン処理によって回収し、続いて血清またはプロテアーゼ阻害剤を添加していないDMEMで洗浄した。細胞を1×105細胞/mlでDMEMに懸濁した。細胞懸濁液の調製に先立ち、マトリゲルマトリックス(Becton Dickinson Labware)の乾燥層を、室温で2時間、DMEMで再水和した。10% ウシ胎仔血清を含むDMEM(0.75ml)を24ウェルマトリゲルインベージョンチャンバーの各々の下側のチャンバーに添加し、0.5ml(5×104細胞)の細胞懸濁液を上側チャンバーの各インサートに添加した。インサートのプレートを37℃で22時間インキュベートした。インキュベーション後、チャンバーを処理し、供給元(Becton Dickinson)の指示通りに、マトリゲル被覆インサートを介して浸潤している細胞を固定してギムザ染色した。
【0115】
(13)抗NMU抗体によるオートクリンアッセイおよび細胞増殖阻害
哺乳動物細胞の増殖におけるNMUのオートクリン機能を確認するために、COS-7細胞を、最終濃度が0.3〜15μMであるNMU(NMU-25;Sigma-Aldrich Co.)の25アミノ酸ポリペプチドの活性型を含む培地で培養した。同一濃度のBSAを対照とした。ペプチド/タンパク質を48時間毎に6日間にわたって添加した。144時間の時点で、MTTおよびコロニー形成アッセイによって細胞増殖を評価した。
【0116】
次に、抗NMU抗体(ウサギポリクローナル抗NMU-25抗体;Phoenix Pharmaceuticals, Inc.)が、NMU-25の受容体に対するNMU-25の結合を阻害することによって、細胞増殖に対するNMUの作用を無効にし得るかどうかについて調べた。COS-7細胞を、3μMのNMU-25および0.5〜7.5μM濃度の抗NMU抗体を含む培地で培養した。NMUを内因的に発現するNSCLC細胞の増殖を抑制する抗NMU抗体の能力を確認するために、0.5〜7.5μM濃度の抗NMU抗体を含む培地でLC319細胞またはA549細胞を4日間培養した。NMUをほとんど発現しないLC176細胞を、同一条件下で、このアッセイの対照として用いた。細胞の生存率をMTTアッセイによって評価した。各実験は三度実施した。
【0117】
(14)リガンド-受容体結合アッセイ
NSCLC細胞上の内因性候補受容体に対するNMU-25の結合を確認するために、GHSR1bおよびNTSR1を発現するがNMU1RおよびNMU2Rは発現しないLC319およびPC14細胞を用いて、受容体-リガンド結合アッセイを実施した。具体的には、このアッセイの24時間前に、トリプシン処理した細胞を黒色の壁部と透明な底部とを有する96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。培地を除去し、競合物としての10倍過剰非標識NMU-25ペプチドを添加して、または添加せずに、細胞をCy5標識NMU-25ペプチド(1μM)とともにインキュベートした。このプレートを37℃24時間暗所でインキュベートした後に、8200 Cellular Detectionシステム(Applied Biosystems)で走査して、各細胞の表面に結合したCy5蛍光プローブの量を定量した。
【0118】
(15)内部移行受容体の免疫細胞化学
NMU-25とその候補受容体であるGHSR1bおよびNTSR1との会合を調べるために、以下の実験を実施した。以下のプライマーを用いて、各受容体遺伝子の全コード領域をRT-PCRによって増幅した:
GHSR1b
5’-GGAATTCCATGTGGAACGCGACGCCCAGCGAA-3’ (SEQ ID NO: 56)および5’-CGCGGATCCGCGGAGAGAAGGGAGAAGGCACAGGGA-3’ (SEQ ID NO: 57)、ならびに
NTSR1
5’-GGAATTCCATGCGCCTCAACAGCTCCGCGCCGGGAA-3’ (SEQ ID NO: 58)および 5’-CGCGGATCCGCGGTACAGCGTCTCGCGGGTGGCATTGCT-3’ (SEQ ID NO: 59)。
【0119】
生成物をEcoRIおよびBamHIで消化して、p3XFLAG-CMV10ベクター(Sigma-Aldrich Co.)の適切な部位にクローニングした。上記したようにFuGENE 6 トランスフェクション試薬を用いて、FLAGタグ化GHSR1bまたはNTSR1発現プラスミドをCOS-7細胞にトランスフェクトした。内部移行アッセイに供した細胞をNMU-25(10μM)に120分間曝露した。次に、細胞を4% パラホルムアルデヒド溶液を用いて37℃で15分間固定し、PBS(-)で洗浄した。試料を0.1% TritonX-100含有PBS(-)で10分間インキュベートし、続いてPBS(-)で洗浄した。一次抗体反応に先立ち、細胞をCAS-BLOCK(ZYMED Laboratories Inc.)とともに10分間インキュベートして、非特異的抗体結合を阻害した。次に、細胞を、ウサギポリクローナル抗GHSR抗体ならびにヤギポリクローナル抗NTSR1抗体の両方とともにインキュベートした。 抗体を、Alexa Fluor 488(Molecular Probes)に結合した抗ウサギ二次抗体およびAlexa Fluor 594(Molecular Probes)に結合した抗ヤギ二次抗体の両方で染色した。DNAを4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色した。共焦点顕微鏡(TCS SP2 AOBS; Leica Microsystems)を用いて、像の観察および評価を行った。
【0120】
(16)蛍光リガンドによるNMUの内部移行調査
LC319細胞を10% FCS含有DMEM中で増殖させた。細胞をPBS(-)で洗浄し、0.1% BSA含有DMEM中37℃で10分間プレインキュベートした。次に、細胞を、0.1% BSA含有DMEM中でAlexa Fluor 594標識NMU-25ペプチドとともに、種々の時間にわたってインキュベートした。インキュベーション終了時、細胞を、氷冷PBS(-)で3回洗浄し、最初に氷上で5分間、次に室温で15分間にわたり、4% パラホルムアルデヒド溶液で固定した。細胞を洗浄し、DAPIで処理した。共焦点顕微鏡(TCS SP2 AOBS; Leica Microsystems)を用いて、像の観察および評価を行った。63×/1.4対物レンズを用いて、0.25μmの間隔で光学切片を撮像した。
【0121】
(17)受容体二量化の検出
培養細胞を氷冷PBS(-)で2回洗浄し、5mM ジチオビス[スクシンイミジルプロピオナート](DSP)(PIERCE)とともにPBS(-)中で60分間氷上でインキュベートした。Trisの最終濃度を50mMとする停止溶液(1M Tris、pH7.5)とともに氷上で15分間インキュベートすることで、この反応を停止させた。次に、細胞を氷冷PBS(-)で2回洗浄し、プロテアーゼ阻害剤(プロテアーゼインヒビターカクテルセットIII; Calbiochem)を含む氷冷Tx/G緩衝剤(50mM Tris-Cl pH7.4中、300mM NaCl、1% Triton X-100、10% グリセロール、1.5mM MgCl2、1mM CaCl2、および10mM ヨードアセトアミド)中、氷上で60分間溶解させた。非特異的ジスフィルド結合を妨げるために、ヨードアセトアミドを、タンパク質製剤に用いる各緩衝剤に含めた。次に、溶解物を4℃にて15,000rpmで15分間遠心し、上清を抗FLAG M2アガロース親和性ビーズ(Sigma-Aldrich Co.)とともに、4℃で一晩インキュベートした。免疫沈降物(細胞表面受容体を含む)を回収し、TBST緩衝剤(20mM Tris-Cl(pH7.6)中、150mM NaCl、0.05% Tween-20)で3回洗浄し、非還元レムリ(Laemmli)試料緩衝剤で溶離した。この溶液をSDS-PAGEに供し、一次抗体としてのマウスモノクローナル抗FLAG M2抗体、ヤギポリクローナル抗NTSR1抗体、またはウサギポリクローナル抗GHSR抗体と、抗原-抗体複合体を検出するためのrec-プロテインG-ペルオキシダーゼ複合体(ZYMED Laboratories, Inc.)とを用いたウェスタンブロット解析によって、受容体タンパク質を検出した。
【0122】
(18)cAMPレベルの測定
トリプシン処理したLC319、REF-LC-AI、NCI-H358、およびSK-MED-1細胞を96ウェルマイクロタイタープレート(5.0×104細胞)に播種し、10% FCSを添加した適切な培地で24時間培養した後、アッセイの20分前に培地を無血清/1mM IBMX(イソブチルメチルキサンチン)に変えた。次に、細胞を個々の濃度のペプチド(NMU-25、GHRL、またはNTS)とともに20分間インキュベートし、細胞のcAMPレベルをcAMP EIAシステム(GE Healthcare Bio-sciences)を用いて測定した。
【0123】
(19)細胞内Ca2+動員アッセイ
トリプシン処理したLC319細胞を、アッセイの24時間前に、ポリ-D-リジンで被覆された黒色壁部および透明底部を有する384ウェルのマイクロタイタープレート(1.0×104細胞/ml)に播種した。蛍光画像プレートリーダー(FLIPR; Molecular Devices)上での検出に先立ち、細胞にアッセイバッファー(ハンクス緩衝塩溶液、20mM HEPES、2.5mM プロベネシド)中4μMのFluo-3-AM蛍光指示染料を1時間取り込ませ、アッセイバッファーで3回洗浄し、次に室温で10分間インキュベートした。個々の濃度のペプチド(NMU-25、GHSR、またはNTS)処理後に、Ca2+放出の蛍光データを、最初の65秒は1秒間隔、その後の300秒は3秒間隔で、リアルタイムで収集した。基準を上回る蛍光の最大変化を測定して、個々のペプチド刺激に対する細胞の応答を決定した。
【0124】
(20)cDNAマイクロアレイによるNMUの下流遺伝子の同定
NMUに対するsiRNA(si-NMU)またはルシフェラーゼ(LUC;対照siRNA)のいずれかをLC319細胞にトランスフェクトした。記述されたように、トランスフェクションの0、6、12、24、36、48、および60時間後に、mRNAを抽出し、Cy5染料またはCy3染料で標識し、32,256個の遺伝子を含むcDNAマイクロアレイスライド上への同時ハイブリダイゼーションに供した(Kakiuchi et al. (2003) Mol. Cancer Res. 1: 485-99;Kakiuchi et al. (2004) Hum. Mol. Genet. 13: 3029-43;Ochi et al. (2004) Int. J. Oncol. 24: 647-55)。データの正規化後に、カットオフ値よりも高いシグナルを有する遺伝子をさらに解析した。NMU発現の減少に基づいて強度が有意に減少した遺伝子を、SOMクラスター解析(Kohonen (1990) Proceedings of the IEEE 78: 1464-80)を用いて最初に選択した。遺伝子特異的プライマーを有するマイクロアレイハイブリダイゼーションに使用したLC319細胞由来の同一mRNAの半定量的RT-PCR実験を用いて、NMUの候補下流遺伝子の確認を行った。
【0125】
2.結果
(1)肺腫瘍および正常組織のNMU
NSCLC用の治療薬剤および/または診断マーカーを開発するための新規の標的分子を探索するために、最初に、cDNAマイクロアレイによって解析したNSCLC37例のうち50%よりも多くで5倍高い発現を示した遺伝子をスクリーニングした。スクリーニングした23,040個の遺伝子のうち、試験したNSCLCにおいて頻繁に過剰発現していることでNMU転写産物が同定され、かつ試験したさらなるNSCLCの大半の症例でNMU発現の増大も確認された。さらに、試験したNSCLC細胞株15株のうちの13株、および試験した小細胞型肺癌(SCLC)細胞株4株の全てにおいて、NMUの上方制御が観察された。NMU cDNAをプローブとして用いるノーザンブロッティングでは、試験した15種類の正常ヒト組織のうち脳および胃のみにおいて、非常に弱いバンドとして0.8kb転写産物を同定した。組織マイクロアレイシステムを用いて、臨床肺癌においてもNMU発現を調べた。細胞質の陽性染色は、外科的に切除されたNSCLCの68%(220/326)、およびSCLCの82%(14/17)で観察されたが、試験した正常肺細胞はいずれも染色が見られなかった。NMU陽性の腫瘍を有するNSCLC患者は、腫瘍がNMU陰性である患者に比べて、短い癌特異的生存期間を示すことが見出された(ログランク検定でp=0.036)(図1)。
【0126】
(2)NSCLC細胞の増殖に対するNMUの作用
NMUが肺癌細胞の増殖および生存にとって不可欠であるかどうかを評価するために、3種類の異なる対照プラスミド(EGFP、ルシフェラーゼ(LUC)、およびスクランブル(SCR)のsiRNA)に加えて、NMUに対するsiRNAを発現するプラスミド(si-NMU)を設計して構築した。si-NMU発現プラスミドをA549細胞およびLC319細胞にトランスフェクトして、内因性NMUの発現を抑制した。si-NMUをトランスフェクトした細胞内のNMU転写産物の量は、3種類の対照siRNAのいずれかをトランスフェクトした細胞と比較して、有意に減少した。さらに、si-NMUのトランスフェクションも、MTTアッセイおよびコロニー形成アッセイによって各々測定した細胞生存率およびコロニー数の有意な減少をもたらした。この増殖抑制の分子機序をさらに調べるために、NSCLC細胞にsi-NMUをトランスフェクトした後にフローサイトメトリーを実施して、si-NMUをトランスフェクトしたLC319細胞のサブG1率(45.6%)が、si-EGFPをトランスフェクトした細胞のサブG1率(11.2%)よりも有意に大きいことを発見した。
【0127】
(3)NMUのオートクリン増殖促進作用
腫瘍形成におけるNMUの潜在的役割を開示するために、NMU(pcDNA3.1-NMU-myc/His)またはNMUの相補鎖(pcDNA3.1-アンチセンス)を発現するように設計されたプラスミドを調製した。これら2種類のプラスミドの各々をCOS-7細胞にトランスフェクトし、抗NMU抗体を用いた免疫細胞化学的染色によって、NMUタンパク質の発現をその細胞質およびゴルジ構造で確認した。
【0128】
哺乳動物細胞の増殖に対するNMUの作用を決定するために、NMUを安定的に発現するCOS-7由来転写産物のコロニー形成アッセイを実施した。抗NMU抗体を用いる免疫細胞化学的解析によって、培地中90%を上回るCOS-7細胞内にNMUタンパク質を検出した。外因性NMU(COS-7-NMU-1、-2、および-3)を発現する独立した3種類のCOS-7細胞株を確立し、それらの増殖を、アンチセンス鎖または偽ベクター(COS-7-AS-1および-2;ならびにCOS-7-mock)のいずれかをトランスフェクトした対照細胞の増殖と比較した。NMUの発現レベルに応じて、3種類のCOS-7-NMU細胞全ての増殖が有意な度合いで促進された。また、COS-7-NMU細胞が対照細胞よりも大きなコロニーを形成する傾向が著しかった。さらに、コロニー形成アッセイを実施して、NMUが肺癌細胞(LC319)の増殖促進因子として作用し得るかどうかを調べた。ジェネテシン耐性コロニーの数は、偽ベクターをトランスフェクトした細胞と比較して、正常転写産物に対応するcDNA(pcDNA3.1-NMU-myc/His)のセンス鎖をトランスフェクトしたLC319細胞を含むディッシュにおいて、有意に増加した。
【0129】
NMU陽性腫瘍を有する肺癌患者が、腫瘍がNMU陰性である患者と比べてより短い癌特異的生存期間を示すことが組織マイクロアレイ上での免疫組織化学的解析によって明らかになったことから、COS-7-NMU細胞を用いたマトリゲル浸潤アッセイを実施した。マトリゲルを介したCOS-7-NMU細胞の浸潤が、偽プラスミドをトランスフェクトした対照細胞と比較して、有意に高められたことから、NMUもまた肺癌細胞の極めて悪性の表現型の一因となり得ることが示唆される。
【0130】
続いて、市販の活性NMU-25、すなわちアミノ酸25個のポリペプチドを用いて、オートクリンアッセイを実施した。NMU-25が細胞増殖に影響を及ぼすかどうかを調べるために、COS-7細胞を、培地中での最終濃度0.3〜15μMで、NMU-25またはウシ血清アルブミン(BSA)(対照)のいずれかとともにインキュベートした。NMU-25ととともにインキュベートされたCOS-7細胞は、対照と比較して、MTTアッセイおよびコロニー形成アッセイの両方で用量依存的に細胞増殖の増大を示した。フローサイトメトリーによって、ローダミン標識NMU-25ペプチドが用量依存的にCOS-7細胞の表面に結合したことを検出した。結果は、COS-7の細胞表面上の受容体に対するNMU-25の結合によってNMUの増殖促進作用が媒介された可能性が高いことを示唆している。その後、抗NMU抗体(0.5〜7.5μM)を、3μMのNMU-25を含む培地で培養したCOS-7細胞の増殖を抑制し得るかどうかについて調べた。予想通りに、3μMのNMU-25の添加によって生ずる増殖の増大は、7.5μMの抗NMU抗体を添加することで無効になり、COS-7細胞の生存率がNMU-25なしで培養された細胞の生存率とほぼ等しくなった。
【0131】
次に、高レベルの内因性NMU発現を示した2種類の肺癌細胞株、すなわちLC319およびA549の増殖に対する、抗NMU抗体(0.5〜7.5μM)の作用を検討した。両細胞株の増殖は、これらの細胞株の培地に抗NMU抗体を添加することによって用量依存的に抑制された(それぞれp<0.0001およびp=0.0002;各ペアードt検定)。一方、ほとんど検出不可能なレベルでNMUを発現するLC176細胞の増殖は、影響を受けなかった。これらのデータは、NMUが、NSCLC細胞の増殖のためのオートクリン/パラクリン増殖因子として機能することを示す。
【0132】
(4)増殖促進経路におけるNMUの受容体としてのGHSR1/NTSR1
2種類の既知のNMU受容体、すなわちNMU1R(FM3/GPR66)およびNMU2R(FM4)は、エネルギーホメオスタシスにおいて重要な役割を果たす(Fujii et al. (2000) J. Biol. Chem. 275: 21068-74; Howard et al. (2000) Nature 406: 70-4;Funes et al. (2002) Peptides 23: 1607-15)。NMU1Rは、多くのヒト末梢組織に存在している(Fuji et al. (2000) J. Biol. Chem. 275: 21068-74;Howard et al. (2000) Nature 406 : 70-4;Funes et al. (2002) Peptides 23 : 1607- 15)が、NMU2Rは、脳内にのみ位置する。NMU1R遺伝子およびNMU2R遺伝子がNSCLC内で発現して増殖促進作用に関与するかどうかを調べるために、これらのNMU受容体の発現を、半定量的RT-PCR実験によって、正常ヒト脳および肺、NSCLC細胞株、ならびに臨床組織において解析した。NMU1RおよびNMU2Rのいずれの発現も、試験した細胞株または臨床試料のいずれでも検出されなかったが、NMU1Rは肺で発現し、NMU2Rは脳で発現した。このことは、NMUが肺癌細胞内の他の受容体との相互作用によって、その増殖促進作用を媒介する可能性があることを示唆している。
【0133】
NMU1RおよびNMU2Rは、もともとは既知の神経ペプチドGPCRの相同体として単離された。NMU1Rおよび/またはNMU2Rに対して、ある程度の相同性を有する未知のNMU受容体は、シグナル伝達経路に関与していると推測されている。したがって、候補NMU受容体を探索するためにBLASTプログラムを用いた。本発明者らの発現プロファイルデータにおけるNSCLC遺伝子の相同性および発現パターンによって、GHSR1b(GenBankアクセッション番号NM_004122;SEQ ID NO: 3および4)ならびにNTSR1(GenBankアクセッション番号NM_002531;SEQ ID NO: 5および6)を優良な候補として選んだ。
【0134】
GHSRは、1a型および1b型という2種類の転写産物を有する。ヒトGHSRの1a型cDNAは、Gタンパク質共役受容体の典型的特徴である7回膜貫通ドメインを有する366個のアミノ酸からなる予測されたポリペプチドをコードする。個々のイントロンがそのオープンリーディングフレームを、膜貫通ドメイン1〜5および6〜7をコードする2つのエクソンに分け、GHSR1aをイントロンを含有するGPCRのクラスに配置する。1b型は、5回膜貫通ドメインを有する289個のアミノ酸からなるポリペプチドをコードする単一エクソンから転写される非スプライスmRNA変異体である。
【0135】
変異体の各々に特異的であるプライマーを用いる半定量的RT-PCR分析にもとづいて、GHSR1a型がNSCLCにおいて発現されないことが示された。一方、GHSR1bおよびNTSR1は、いくつかのNSCLC細胞株において相対的に高レベルで発現したが、正常肺では発現しなかった。GHSR1b産物は、NMU1Rに対して46%相同であることを示しており、NTSR1はNMU1Rに対して47%相同である418個のアミノ酸をコードする。上記したようにNMUのオートクリン増殖促進作用について試験したCOS-7細胞が、GHSR1bおよびNTSR1の両方を内因的に発現することを、半定量的RT-PCR解析によって確認した。さらに、326例のNSCLC組織からなる組織マイクロアレイを用いて、抗GHSR1bおよび抗NTSR1ポリクローナル抗体による免疫組織化学的解析を実施した。326例のうち、218例(67%)がGHSR1b染色について陽性であり、217例がNTSR1に対して陽性であった(67%)。GHSR1bまたはNTSR1の発現パターンは、それらの腫瘍でのNMU発現と有意に一致した(それぞれ、カイ2乗=68および79;p<0.0001および<0.0001)。
【0136】
NSCLC細胞上の内因性GHSR1bおよびNTSR1に対するNMU-25の結合を調べるために、NMU-25(1μM)で処理したLC319細胞およびPC14細胞を用いるレセプター-リガンド結合アッセイを実施した。Cy5標識NMU-25は、2種類の新規受容体(GHSR1bおよびNTSR1)の両方を内因的に発現するこれら2種類の細胞株の表面に結合することが検出されたが、NMU1Rおよび/またはNMU2Rは検出不可能であった。結合活性が用量依存的に増大し、競合物として10倍過剰非標識NMU-25を添加しても阻害されなかったことから、これらの細胞に対するNMU-25の特異的相互作用が示唆される。
【0137】
生物活性を有する、GPCRに対するリガンドは、それらの同族受容体に特異的に結合して、第2のメッセンジャー、例えば細胞内Ca2+および/または環状アデノシン一リン酸(cAMP)レベルの増加を生ずることが報告されている。したがって、これら第2のメッセンジャーの誘導に関するNMUの機能を、LC319細胞において、LC319細胞とGHSR1b/NTSR1との相互作用により決定した。培地中の最終濃度が3〜100μMであるNMU-25の存在下で細胞を回収した場合に、Ca2+流入の増強ではなくcAMP生成の増強が、GHSR1bおよびNTSR1の両方を発現するLC319細胞において用量依存的にNMU-25により検出された。
【0138】
結果は、NMU-25が、おそらくはNSCLC細胞内の機能的GHSR1b/NTSR1を介して、NMU-25関連シグナル伝達経路を活性化したことを示した。この作用は、同一量のGHRLおよびNTS、すなわちGHSR/NTSR1に対する既知のリガンドの添加が、cAMP産生を増強させなかったことから、NMU-25に特異的と思われた。一方、GHRLによる処理ではなくNTSによる処理は、これまでの報告(Kojima et al. (1999) Nature 402: 656-60;Heasley et al. (2001) Oncogene 20: 1563-9;Petersenn et al. (2001) Endocrinology 142: 2649-59)と同様、LC319細胞の細胞内Ca2+の動員応答を生じた。これにより、哺乳動物細胞でのGHSR1bおよび/またはNTSR1のリガンド依存性および多様性のある生理学的機能が示唆される。
【0139】
次に、NMU受容体の相互作用の生物学的意義を、GHSRまたはNTSR1に対するsiRNA(si-GHSR-1、si-NTSR1-1、およびsi-NTSR1-2)を発現するように設計されたプラスミドを用いて、肺癌形成について検討した。これらのプラスミドのいずれかをA549細胞またはLC319細胞にトランスフェクトすることで、上記3種類の対照siRNAのいずれかを含む細胞と比較して、内因性受容体の発現を抑制した。受容体の発現の減少にもとづいて、A549細胞およびLC319細胞は細胞生存率およびコロニー数の有意な減少を示した。これらの結果は、GHSR1bおよびNTSR1との相互作用によって、NMUが肺癌の発達および/または進行に非常に重要な役割を果たす場合があり得ることを、強力に支持している。
【0140】
(5)NMUとの結合後のGHSR1b/NTSR1受容体の内部移行
NMU-GHSR1b/NTSR1シグナル伝達の制御に関与する機序を決定するために、GHSR1b/NTSR1を、NMUに曝露された場合にそれが内部移行するかどうかについて、NMU-25刺激後の2種類の受容体の細胞内分布の共焦点顕微鏡観察を通して、検討した。COS-7細胞へのそれらの導入後、NMU-25の曝露を伴わない条件下では、GHSR1bおよびNTSR1受容体は主に原形質膜に共に配置された。しかし、いったんNMU-25が細胞培養物に添加されると、2種類の受容体はいずれも同時に内部移行し、時間依存的に小胞様構造を優勢に形成した。同様に、GHSR1bおよびNTSR1の両方を内因的に過剰発現するLC319細胞では、NMU刺激がこれら2種類の受容体の同時内部移行を誘発した。内因的および外因的に発現された受容体の両方をモニターすることで得られた結果は、NMUにより誘発される同時内部移行と同様にGHSR1bとNTSR1との間の物理的相互作用を示唆している。
【0141】
NMUがその受容体への結合の後に内部移行するかどうかをさらに確認するために、NMUの内部移行を、Alexa Fluor 594標識NMU-25(NMU-25 Alexa594)を用いて、共焦点顕微鏡によって調べた。細胞表面上でのGPCRに対するアゴニストの結合は、受容体媒介エンドサイトーシスを開始させることが一般に知られている。このプロセスの間に、受容体は、リゾソーム分解またはリゾソームの再利用をもたらす複数の細胞内経路を介して、細胞表面へ送られる(Bohm et al. (1997) Biochem. J. 322: 1-18;Koenig et al. (1997) Trends Pharmacol. Sci. 18: 276-87)。一方、全てのGPCRリガンドがそれらの受容体とともに内部移行するかどうかについては、ほとんど知られていない。神経ペプチドの場合、リガンドは通常、その受容体とともに内部移行する(Ghinea et al. (1992) J. Cell Biol. 118: 1347-58;Grady et al. (1995) Mol. Biol. Cell 6: 509-24;Vandenbulcke et al. (2000) J. Cell. Sci. 113: 2963-75)。xz投影およびyz投影は、NMU-25-Alexa594が細胞内に取り込まれることを示した。15分間のインキュベーションの後、内部移行リガンドが、細胞の細胞質のより周辺の部分で、ドット状に、または一様ではないクラスター状に集中した。それとは対照的に、45分間のインキュベーションの後、核に近い細胞の中心部でクラスターを形成した小さなスポット内に、蛍光が集中した。これらの結果は、小エンドソーム様細胞器官を介して進行するNTSの内部移行、および核を取り巻く細胞のコアに内部移行リガンドが蓄積することを示す以前の報告と類似している(Austin et al. (1995) J. Mol. Endocrinol. 14: 157-69;Faure et al. (1995) J. Neurosci. 15: 4140-7)。
【0142】
(6)GHSR1bおよびNTSR1の機能的な受容体二量体化
GHSR1bとNTSR1との間の直接的な会合を検討するために、FLAGタグ化GHSR1bおよびFLAGタグ化NTSR1のいずれかまたは両方を一過的にCOS-7細胞で発現させた(図2Aは、一過的GHSR1b発現のデータを示し、図2Bは両方の受容体の発現を示す)。COS-7細胞は、GHSR1bおよびNTSR1の両方が内因的に発現するが、NMUは発現しないことを、半定量的RT-PCR分析によって確認した。架橋剤とともにプレインキュベートした細胞溶解物を、抗FLAG抗体、抗NTSR1抗体、または抗GHSR抗体によって免疫沈降した。以下のタンパク質の共沈を検出した:GHSR1b単量体(約30kDa)、NTSR1単量体(約45kDa)、GHSR1b/NTSR1ヘテロ二量体(約70〜75kDa)、GHSR1bホモ二量体(約60〜65kDa)、およびNTSR1ホモ二量体(約90〜95kDa)(図2)。空ベクター(偽)を、陰性対照としてCOS-7細胞にトランスフェクトした場合、そのような種は検出されなかった。FLAGタグ化NTSR1のみを発現する細胞と両方のFLAGタグ化受容体(NTSR1およびGHSR1b)を同時発現する細胞とで、同様な結果が観察された。これらの結果は、GHSR1bとNTSR1との相互作用を確認し、GHSR1b/NTSR1ヘテロ二量体の存在を示唆している。
【0143】
シグナル伝達レベルで、GHSR1bおよびNTSR1の活性化およびヘテロ二量体化の機能的重要性をさらに確認するために、半定量RT-PCR分析によって検出されるように2種類の受容体の種々の発現パターンを示す肺癌細胞株で、NMU-25による用量依存的な細胞内cAMP産生を検討した(図3A〜図3D)。高レベルで両方の受容体を発現するLC319細胞では、NMU-25による処理は顕著かつ再現可能なcAMP蓄積をもたらした(図3A)。両方の受容体を低レベルで発現するRERF-LC-AI細胞は、NMU-25刺激に応答して、有意ではないが低いcAMP産生を示した(図3B)。いずれか一方の受容体を発現するNCI-H358およびSK-MES-1細胞では、検出可能なcAMP産生が見られなかった(図3Cおよび図3D)。
【0144】
(7)NMUの下流遺伝子の同定
NMUシグナル伝達経路をさらに解明するために、NMUに対するsiRNA(si-NMU)またはLUCに対するsiRNA(対照siRNA)を、NMUを過剰発現するLC319細胞にトランスフェクトし、si-NMUをトランスフェクトした細胞内で下方制御された遺伝子を、32,256個の遺伝子を含むcDNAマイクロアレイを用いてスクリーニングした。この方法により、NMU抑制に従って発現が有意に減少した70個の遺伝子を、自己組織化マップ(SOM)クラスタ解析(Kohonen (1990) Proceedings of the IEEE 78: 1464-80)を実施して、選択した。半定量的RT-PCR分析により、si-NMUをトランスフェクトしたLC319細胞で、候補転写産物の時間依存的に減少が確認されたが、LUCの対照siRNAをトランスフェクトしたものでは確認できなかった。肺癌細胞株でのNMU発現の誘導に応じたこれらの遺伝子のトランス活性化も評価して、最終的に6個の候補NMU標的遺伝子、すなわちFOXM1、GCDH、CDK5RAP1、LOC134145、NUP188、および注釈付けされていない一転写産物(クローンIMAGE: 3839141)を同定した。
【0145】
これら選択された6個の遺伝子のうち、FOXM1のmRNAレベルが臨床肺癌症例において有意に上昇したことが認められ、かつNMUならびに2種類の受容体であるNTSR1およびGHSR1bの発現パターンとの良好な一致が見られた。そのため、さらなる解析のためにFOXM1に焦点をあてた。NMUリガンド-受容体シグナル伝達によるFOXM1の発現を実証するために、NTSR1およびGHSR1bを発現するLC319細胞を、培地中での最終濃度が25μMのNMU-25またはBSA(対照)の存在下で培養して、NMU処理細胞内でのFOXM1の発現の増強を確認した。次に、肺癌細胞の増殖及び生存に関して、NMUシグナル伝達経路でのFOXM1活性化の生物学的有意性を、FOXM1に対するsiRNA(si-FOXM1)を発現するように設計されたプラスミドを用いて検討した。A549細胞またはLC319細胞にsi-FOXM1をトランスフェクトすることで、3種類の対照siRNAのいずれかを含む細胞と比較して、内在性FOXM1の発現が抑制された。FOXM1の発現の減少に応じて、A549細胞およびLC319細胞は細胞生存率およびコロニー数の有意な減少を示した。
【0146】
FOXM1は、転写因子として機能し、かついくつかのサイクリンの発現を活性化させることが報告されている(Wang et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 11468-73;Wang et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 16881-6)。このことから、si-NMUをトランスフェクトした肺癌LC319細胞でのサイクリンの発現を検討して、トランスフェクション後に時間依存的な様式でサイクリンB1(CCNB1)およびサイクリンA2(CCNA2)の減少が検出されたが、サイクリンD1(CCND1)では検出されなかった。さらに、半定量RT-PCR分析によって、FOXM1と2つのサイクリン(CCNB1およびCCNA2)との間の遺伝子発現の良好な相関関係が臨床肺癌試料で検出され、このことはNMU/FOXM1が肺癌細胞においてCCNB1およびCCNA2をトランス活性化するという仮説を単独で支持する。これらの結果は、NMUが、GHSR1b/NTSR1ヘテロ二量体との相互作用およびその下流標的(例えばFOXM1)へ引き続く活性化を介して、肺癌細胞の増殖に有意に影響を及ぼし得ることを示している。
【0147】
産業上の利用可能性
本発明によって、NMU発現とNSCLC患者の不良な予後との有意な関連性が明らかになった。この発見をもとに、本発明は、患者由来の生体試料中のNMU遺伝子の発現レベルを検出することによって、肺癌、とりわけNSCLCの予後を評価または判定する方法およびキットを提供する。本発明は、組織試料採取の慣例的な手段のみを用いて、NSCLCの予後の評価を可能にする。
【0148】
さらに、本発明は、NMUタンパク質とGHSR1bおよびNTSR1のヘテロ二量体(GPCRヘテロ二量体)との結合を阻害する化合物を検出することで、癌、とりわけ肺癌の治療薬剤または予防薬剤を同定またはスクリーニングする方法に関連する。本発明によれば、NMUおよび新たに明らかにされたGPCRヘテロ二量体(NMUの機能的受容体)は、大多数の肺癌で過剰発現するだけではなく、FOXM1を含む種々の下流遺伝子を活性化するオートクリン増殖促進経路にとっても不可欠である。したがって、本スクリーニング方法は、肺癌の治療および予防のための新規の治療戦略の開発に有望でありうる。
【0149】
本明細書において報告されたデータは、NSCLCの包括的な理解を増し、新規の診断戦略の開発を容易にし、さらに治療薬および予防薬剤用の分子標的の同定のための手がかりを提供する。そのような情報は、発癌のより深い理解に貢献し、かつNSCLCの診断、治療、および究極的には予防のための新規の戦略を開発するための指標を提供する。
【0150】
本明細書において引用された全ての刊行物、データベース、配列、特許、および特許出願は、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0151】
本発明を、具体的な態様を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更および改変をその範囲内でなし得ることが当業者には明らかであり、その境界および範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】原発性肺癌および細胞株におけるNMU発現を示すグラフを表す。NSCLC患者における、NMU発現による腫瘍特異的生存率を決定するために、カプラン-マイヤー解析を行った(ログランク検定によりp = 0.036)。
【図2】GHSR1b/NTSR1ヘテロ二量体の特徴、およびNMUの同族受容体としての同時内部移行を示す、免疫沈降の結果を表す。FLAGタグ化GHSR1bを一過性に発現するCOS-7細胞、ならびにFLAGタグ化GHSR1bおよびNTSR1の両方を同時発現するCOS-7細胞由来の細胞溶解物を、抗FLAG抗体で免疫沈降させ、SDS-PAGEに供し、次に抗FLAG抗体(A)、抗NTSR1抗体(B)、または抗GHSR抗体(C)を用いて免疫ブロットした。矢印は、受容体の単量体、ヘテロ二量体、およびホモ二量体を示す。分子量(kDa)マーカーを個々のパネルの左側に示す。抗FLAG抗体により検出された非特異的免疫反応性タンパク質バンドをアスタリスクで示す。
【図3】肺癌細胞株におけるGHSR1b/NTSR1の発現レベルとNMU-25による細胞内cAMP産生との間の関係を示す実験結果を表す。LC319細胞(A)、RERF-LC-AI細胞(B)、NCI-H358細胞(C)、およびSK-MES-1細胞(D)における受容体の発現レベルを、半定量的RT-PCR解析により検出した。個々の細胞株における、NMU-25処理(3〜50μM)による細胞内cAMP産生の用量反応曲線を示す。実験はすべて三度行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、肺癌患者の予後を評価する方法:
(1) 該患者から採取された生体試料中のニューロメジンU(NMU)遺伝子の発現レベルを検出する段階;
(2) 検出された発現レベルを対照レベルと比較する段階;および
(3) (2)の比較に基づいて患者の予後を判定する段階。
【請求項2】
肺癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
対照レベルが予後良好対照レベルであり、該対照レベルと比較して発現レベルが増加していることにより、予後不良と判定される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
増加が対照レベルより少なくとも10%高い、請求項3記載の方法。
【請求項5】
その他の肺癌関連遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
以下からなる群より選択されるいずれか1つの方法によって発現レベルを決定する、請求項1記載の方法:
(a) NMU遺伝子のmRNAを検出すること;
(b) NMUタンパク質を検出すること;および
(c) NMUタンパク質の生物活性を検出すること。
【請求項7】
プローブとNMU遺伝子の遺伝子転写物とのハイブリダイゼーションを検出することにより、発現レベルを決定する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ハイブリダイゼーションの段階がDNAアレイ上で行われる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
NMUタンパク質に対する抗体の結合をNMU遺伝子の発現レベルとして検出することにより、発現レベルを決定する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
生体試料が喀痰または血液を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
以下からなる群より選択される試薬を含む、肺癌患者の予後を評価するためのキット:
(a) NMU遺伝子のmRNAを検出するための試薬;
(b) NMUタンパク質を検出するための試薬;および
(c) NMUタンパク質の生物活性を検出するための試薬。
【請求項12】
試薬がNMUタンパク質に対する抗体である、請求項11記載のキット。
【請求項13】
以下の段階を含む、NMUタンパク質と成長ホルモン分泌促進物質受容体1b(GHSR1b)およびニューロテンシン受容体1(NTSR1)からなるヘテロ二量体とによるシグナル伝達を阻害する化合物を同定する方法:
(1) GHSR1bおよびNTSR1のヘテロ二量体、またはその機能的等価物を、試験化合物の存在下でNMUタンパク質と接触させる段階;
(2) ヘテロ二量体およびNMUタンパク質によるシグナル伝達を検出する段階;ならびに
(3) ヘテロ二量体およびNMUタンパク質によるシグナル伝達を阻害する試験化合物を選択する段階。
【請求項14】
ヘテロ二量体が生細胞の表面上に発現される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
以下からなる群より選択されるいずれか1つの方法によって、ヘテロ二量体およびNMUタンパク質によるシグナル伝達を検出する、請求項14記載の方法:
(a) 細胞内のcAMPの濃度を検出すること;
(b) アデニル酸シクラーゼの活性化を検出すること;
(c) プロテインキナーゼA(PKA)の活性化を検出すること;
(d) FOXM1、GCDH、CDK5RAP1、LOC134145、およびNUP188を含む、NMU標的遺伝子の発現を検出すること;
(e) リガンド誘導性内部移行を含む、ヘテロ二量体の細胞内局在の変化を検出すること;
(f) 細胞増殖、形質転換、または細胞の任意の他の発癌表現型を検出すること;ならびに
(g) 細胞のアポトーシスを検出すること。
【請求項16】
以下の段階を含む、NSCLCを治療または予防するための候補化合物をスクリーニングする方法:
(1) 請求項13記載の方法により、NMUタンパク質とGHSR1bおよびNTSR1からなるヘテロ二量体とによるシグナル伝達を阻害する化合物を同定する段階;ならびに
(2) 段階(1)において同定された化合物を、NSCLCを治療または予防するための候補化合物として決定する段階。
【請求項17】
ヘテロ二量体が生細胞の表面上に発現される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
以下からなる群より選択されるいずれか1つの方法によって、ヘテロ二量体およびNMUタンパク質によるシグナル伝達を検出する、請求項17記載の方法:
(a) 細胞内のcAMPの濃度を検出すること;
(b) アデニル酸シクラーゼの活性化を検出すること;
(c) プロテインキナーゼA(PKA)の活性化を検出すること;
(d) FOXM1、GCDH、CDK5RAP1、LOC134145、およびNUP188を含む、NMU標的遺伝子の発現を検出すること;
(e) リガンド誘導性内部移行を含む、ヘテロ二量体の細胞内局在の変化を検出すること;
(f) 細胞増殖、形質転換、または細胞の任意の他の発癌表現型を検出すること;ならびに
(g) 細胞のアポトーシスを検出すること。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2009−536516(P2009−536516A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548902(P2008−548902)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【国際出願番号】PCT/JP2007/058893
【国際公開番号】WO2007/123247
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】