説明

肺腺癌予後診断マーカー

【課題】肺腺癌の再発に関与するタンパク質を検出することにより、肺腺癌の予後における再発リスクを予測する方法、及び該予測方法に用いるキットを提供すること。
【解決手段】被検者由来の生体試料において、デルタ3,5-デルタ2,4-ジエノイル-CoA イソメラーゼ(Delta3,5-delta2,4-dienoyl-CoA isomerase)、アネキシンA2(Annexin A2)、アルデヒド デヒドロゲナーゼ(Aldehyde dehydrogenase)、ペプチジル−プロリル シス−トランス イソメラーゼA (Peptidyl-prolyl cis-trans isomerase A)、インオーガニック ピロホスファターゼ2(Inorganic pyrophosphatase 2)、トロポミオシン ベータ鎖(Tropomyosin beta chain)、プロテアソーム サブユニット ベータタイプ2(Proteasome subunit beta type 2)、及びエロンゲーション ファクター2(Elongation factor 2)からなる群より選ばれる少なくとも1つのタンパク質の修飾体の発現量を測定する工程(工程A)、被検者由来の生体試料における前記タンパク質の発現量を基準値と比較する工程(工程B)、ならびに前記発現量の比較により変動を認める場合に被検者は肺腺癌の再発リスクが高いと判定する工程(工程C)を含む、肺腺癌の再発予測方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺腺癌の再発予測方法に関する。さらに詳しくは、肺腺癌の再発に関連するタンパク質を検出する工程を含む肺腺癌の再発予測方法、ならびに該タンパク質の抗体を含有する肺腺癌再発予測用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
肺癌は、日本国内においては年間約5万人程度が死亡し、癌の死亡症例数としては、男性では1位、女性では胃がんに次いで2位の、完治が非常に困難な疾患である。肺癌は、大きく分けて小細胞癌と非小細胞癌に分類され、後者はさらに腺癌(以下、肺腺癌という)、扁平上皮癌、大細胞癌、腺扁平上皮癌などの組織型に分類される。これらのうち、症例数として最も多いのが肺腺癌であるが、一般にこの型の癌は特に再発例が多く、たとえ早期ステージのI期で外科的治療を実施しても肺、あるいは他の臓器への転移を認め、死亡するケースが多いのが特徴である。従って、肺癌の治療成績を上げるには、肺腺癌患者において予後の良、不良を見極めることが非常に重要となる。
【0003】
臨床における肺腺癌の診断は、主として画像診断を中心とした方法(胸部レントゲン検査、CT検査、PET検査等)にて発見された肺癌について、気管支鏡検査での病巣部組織採取による生検、あるいは穿刺吸引細胞診により組織型等を詳細に調べるのが一般的である。また、血清を試料とした体外診断薬の腫瘍マーカーとしては、CEA、SLX、CA-125等が現在、臨床で用いられている。しかし、これらのマーカーは、肺癌に対する特異性や感度でさえ十分とは言えない。また、臨床上、肺腺癌であることが診断できても、治療戦略策定に最も重要な、手術切除後の予後を予測する情報を得ることは不可能な状況にある。
【0004】
ヒトゲノム配列の解読を終了した今日、ここで明らかとなったデータベースを基盤として、疾患プロテオミクスの研究が盛んに実施されている。この研究では、例えばヒトの生体内で産生される多くのタンパク質の発現プロファイルを作製し、複数のプロファイルを比較することで、ある状態において特異的に発現変動するタンパク質を見出すことができる。このプロテオミクス解析を用いることにより、疾患により特異的に変動するマーカーや、創薬のターゲットとなる疾患関連因子を探索することが可能と考えられる。そこで、タンパク質のプロファイルの方法として、ウェスタンブロット法やイムノアッセイ等の免疫検定法を用いることに加えて(特許文献1参照)、二次元電気泳動法、SELDI法、液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせたLC−MS法等が開発され、現在、疾患の解析に用いられている(特許文献2参照)。
【特許文献1】WO01/011372号パンフレット
【特許文献2】特開2006−53113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これまでの研究では、例えば血清や組織をサンプルとして、健常人と癌疾患患者を比較した腫瘍マーカーの探索であったり、またサンプルのタンパク質を予めプロテアーゼで処理して消化断片ペプチドとした後に、高感度なLC−MS法にて解析したりする報告例が殆どであり、臨床上必要な予後に関わるタンパク質の探索や、翻訳後修飾を含めたタンパク質のプロテオミクス解析を実施した報告例は少なく、有効な候補タンパク質も見出されていない。
【0006】
本発明の課題は、肺腺癌の再発に関与するタンパク質を検出することにより、肺腺癌の予後における再発リスクを予測する方法、及び該予測方法に用いるキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決する為に検討を重ねた結果、翻訳後修飾を含めたタンパク質のプロファイルが作製可能な蛍光ディファレンスゲル二次元電気泳動法(2D-DIGE法)を用いて、早期肺腺癌と診断され、かつ、予後状態が良又は不良の患者由来サンプルを解析することにより、肺腺癌の予後の良、不良により発現量が変動する、複数の予後予測マーカータンパク質を見出し、さらにこれらのタンパク質のうちの多くについては、翻訳後修飾された特定の修飾体であることを合わせて見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)被検者由来の生体試料において、デルタ3,5-デルタ2,4-ジエノイル-CoA イソメラーゼ(Delta3,5-delta2,4-dienoyl-CoA isomerase)、アネキシンA2(Annexin A2)、アルデヒド デヒドロゲナーゼ(Aldehyde dehydrogenase)、ペプチジル−プロリル シス−トランス イソメラーゼA (Peptidyl-prolyl cis-trans isomerase A)、インオーガニック ピロホスファターゼ2(Inorganic pyrophosphatase 2)、トロポミオシン ベータ鎖(Tropomyosin beta chain)、プロテアソーム サブユニット ベータタイプ2(Proteasome subunit beta type 2)、及びエロンゲーション ファクター2(Elongation factor 2)からなる群より選ばれる少なくとも1つのタンパク質の修飾体の発現量を測定する工程(工程A)、被検者由来の生体試料における前記タンパク質の発現量を基準値と比較する工程(工程B)、ならびに前記発現量の比較により変動を認める場合に被検者は肺腺癌の再発リスクが高いと判定する工程(工程C)を含む、肺腺癌の再発予測方法、
(2)前記のタンパク質の修飾体に対する抗体を含有してなる、肺腺癌の再発予測用キット、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法により、サンプル中の予後予測マーカータンパク質を検出することにより、サンプル提供者の肺腺癌の再発リスクの高低を判定することができる。このリスクに基づき、サンプル提供者の手術後の的確なフォローが可能となり、臨床における肺腺癌の治療成績の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、タンパク質の発現量を測定する工程(工程A)、及び、測定された発現量を対照者と被検者間で比較する工程(工程B)を含む、肺腺癌の再発を予測する方法であって、前記タンパク質が特定の修飾型タンパク質であるということに大きな特徴を有する。このようなタンパク質は、早期肺腺癌と診断され、かつ、予後状態が良好である患者と予後状態が不良である患者の発現量の差を解析することにより見出されたものであり、この見出されたタンパク質を用いることにより、肺腺癌の再発リスク予測が可能となる。なお、本明細書において「予後状態が良好」とは、癌組織切除後から4年を越えて肺腺癌を原発とする再発癌を認めない状態のことを、「予後状態が不良」とは、癌組織切除後から4年以内に肺腺癌を原発とする再発癌が認められる状態のことをいう。
【0011】
<肺腺癌の再発に関連する予後予測マーカータンパク質>
本発明で用いる肺腺癌の再発に関連する予後予測マーカータンパク質は、表1に示すアネキシンA2(Annexin A2)、アルデヒド デヒドロゲナーゼ(Aldehyde dehydrogenase)、ペプチジル−プロリル シス−トランス イソメラーゼA (Peptidyl-prolyl cis-trans isomerase A)、デルタ3,5-デルタ2,4-ジエノイル-CoA イソメラーゼ(Delta3,5-delta2,4-dienoyl-CoA isomerase)、インオーガニック ピロホスファターゼ2(Inorganic pyrophosphatase 2)、トロポミオシン ベータ鎖(Tropomyosin beta chain)、プロテアソーム サブユニット ベータタイプ2(Proteasome subunit beta type 2)、及びエロンゲーション ファクター2(Elongation factor 2)から選ばれるタンパク質の修飾体である。これらのタンパク質は、未修飾体ではなくその修飾体の発現量が肺腺癌の予後と関連していることが見出されたものである。かかる修飾型タンパク質の個々の同定は、MALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化法)型質量分析計、ESI(エレクトロスプレイイオン化法)型質量分析計等を用いる公知のタンパク質同定法等に従って行うことができ、NCBI及びSWISS Protのような公知のデータベースを参照することにより、該タンパク質の分子量、等電点、構成アミノ酸等の情報も得ることができる。これらのタンパク質の中では、デルタ3,5-デルタ2,4-ジエノイル-CoA イソメラーゼ、又はアネキシンA2 が、マーカーとして特に好ましい。また、マーカーとしては表1に示すタンパク質群のうち特に限定されないが、肺腺癌の予後予測の正確性を最適にするような組み合わせで複数のタンパク質を選択することもできる。
【0012】
本発明における修飾型タンパク質における修飾の態様は特に限定されないが、翻訳後の修飾、例えば、リン酸化、糖鎖付加、アセチル化、ヒドロキシル化、アミド化等が好ましく、この修飾により、未修飾型のタンパク質と比較して等電点が理論値から乖離しているものが好ましい。等電点の乖離の程度は、酸性側若しくは塩基性側に0.1以上シフトしていることが好ましく、0.5以上シフトしていることがさらに好ましい。
【0013】
表2に示すタンパク質は、表1とは異なり、分子量、等電点共に未修飾体の理論値と一致した、修飾体と想定されないタンパク質での発現量が肺腺癌の予後と関連していることが見出されたものである。これらのタンパク質の中では、ミトコンドリア インナー メンブレン プロテイン( Mitochondrial inner membrane protein ) が、マーカーとして特に好ましい。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
表1及び2において、「Protein name」は一般的なタンパク質の名称を意味している。また、「Change」は、予後良症例の該当タンパク質発現量に対する、予後不良症例での変化であり、その変化の倍率は「Ratio」の欄に示した。「Accession No.」の欄における「Swiss Prot」及び「UniProt」欄は、Swiss Prot及びUniProtデータベースに登録されている登録IDである。また、表1における「Detection on 2D-DIGE gel」における「Acidic form」、「Basic form」は、それぞれの等電点が酸性側、塩基性側にシフトしたものであることを意味し、「High MW form」、「Low MW form」はそれぞれの分子量が高分子量、低分子量にシフトしたものであることを意味する。これらは、何らかの修飾基の付加、或いは特定のアミノ酸配列の消失などによる翻訳後修飾に起因する変化である。
【0017】
本発明では、前記した予後予測マーカータンパク質である修飾型タンパク質の発現量を指標にして、被検者の肺腺癌の再発予測を行う。即ち、本発明の肺腺癌の再発予測方法は、被検者由来の生体試料において、表1に示される少なくとも1つの修飾型タンパク質の発現量を測定する工程(工程A)、被検者由来の生体試料における前記タンパク質の発現量を対照者における発現量と比較する工程(工程B)、ならびに前記発現量の比較により変動を認める場合に被検者は肺腺癌の再発リスクが高いと判定する工程(工程C)を含む。
【0018】
<肺腺癌の再発に関連するタンパク質発現量の測定方法>
まず、被検者由来の生体試料を採取し、該試料から細胞抽出液を抽出する。生体試料としては、特に限定はないが、肺組織、細胞、体液、尿、及びその他生体由来のタンパク質抽出液からなる群より選択される1種であることが好ましい。なお、生体試料の採取方法や細胞抽出方法は特に限定はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0019】
次に、得られた細胞抽出液における上記の修飾型タンパク質の発現量を測定する。タンパク質の発現量を測定する方法としては、測定対象のタンパク質が表1に示されるものであれば特に限定はなく、例えば、測定対象のタンパク質を特異的に認識できる抗体を用いることができる。このような抗体は当業者に周知の方法により作製することができる。しかし、異なる蛍光標識を用いて高感度に多くの修飾型タンパク質を検出できることから、2D-DIGE法を用いることが好ましい。また、測定されるタンパク質は、表1に示されるタンパク質の少なくとも1つであればよく、なかでも、体液中に存在する可能性が高いことから、デルタ3,5-デルタ2,4-ジエノイル-CoA イソメラーゼ、又はアネキシンA2が好ましい。
【0020】
2D−DIGE法とは、例えば、等電点と分子量というタンパク質の有する2つの物性面から分離を行う方法であれば特に制限されるものではなく、一般的には、まずキャピラリーゲルや市販のストリップゲルなどを分離媒体として等電点電気泳動を行い、泳動を終了したゲルを第2の平面状のSDS−ポリアクリルアミドゲルによって、等電点電気泳動の展開方向に対して直角の方向に電気泳動を行う方法である。かかる方法によりタンパク質の等電点と分子量が明確になるため、翻訳後の修飾、例えば、リン酸化、糖鎖付加、アセチル化、ヒドロキシル化、アミド化等が行われたことが明らかになる。
【0021】
<肺腺癌の再発に関連するタンパク質発現量の比較方法/再発リスクの判定>
上記により得られた試料の測定対象のタンパク質の発現量について、対照者の生体試料における、測定対象のタンパク質の発現量から算出した値を「基準値」とし、被検者の生体試料における前記タンパク質の発現量と比較する。そして、発現量の比較により変動を認める場合、即ち、前記基準値より高いか、あるいは低い場合には肺腺癌の再発の危険性が高いと診断とする。このとき「対照者」とは、健常人のほか、早期肺腺癌(病期がステージ1A期もしくは同1B期)と診断され、肺腺癌組織が切除された患者において、予後状態が良好である患者も含むものとする。
【0022】
<肺腺癌の再発予測を行うためのキット>
本発明の別の態様では、肺腺癌の再発予測を行うためのキットが提供される。
【0023】
本発明のキットには、表1に示される修飾型タンパク質の発現量を検出することができるものであれば全て含まれる。具体的には、表1に示される修飾型タンパク質を認識できる抗体を含有するキットが挙げられ、サンプル中のタンパク質を検出する際に抗体を用いる検出方法であれば(例えば、ELISAなど)、前記キットを用いることができる。なお、表1に示される修飾型タンパク質が検出されるのであれば、表1に示される修飾型タンパク質以外のタンパク質も前記抗体により同時に検出されることがあってもよく、本発明のキットは、肺腺癌の再発予測の1次スクリーニング用としても利用することが可能である。
【0024】
本発明のキットを用いて、対照者と被検者のサンプル中に存在する肺腺癌の再発に関連する測定対象のタンパク質の発現量を測定して、両者の発現量に有意差が生じた場合には、被検者の将来的な肺腺癌の再発の危険性を予測し、肺腺癌の再発の疑いがある者の肺腺癌再発の診断を行うことができる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、実施例は本発明をより良く理解するために例示するものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されることを意図するもの
ではない。
【0026】
<試料>
試料は、画像診断、及び病理組織診断により早期肺腺癌(病期がステージ1A期若しくは同1B期)と診断された16名の患者より、治療を目的として外科的に切除された肺腺癌の組織を用いた。予後良、不良の群分けは、癌組織切除の4年間以上の臨床経過フォローにより、肺腺癌を原発とする再発癌を認めなかった症例を予後良、認めた症例を予後不良とした。この群分けにより、16名の患者は、予後良12症例、予後不良4症例であった。なお、切除された組織は、解析用として病変部を含む部分を採取したのち、直ちに凍結し、解析を実施するまで−80℃にて保存した。
【0027】
<サンプルの調製>
凍結した肺腺癌組織は、凍結した状態で約5mgを採取し、組織洗浄液〔プロテアーゼ阻害剤カクテルComplete Mini(ロッシュ・ダイアグノスティックス社製)1錠/10mL(1×濃度)、及びPefabloc SC protector(ロッシュ・ダイアグノスティックス社製)5μL/mLを含む10mmol/L リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.4(以下、PBS)〕200μL中で解凍した。溶液中の組織片を手術用ハサミを用いて氷浴上で冷やしながら細切した後、ボルテックスミキサーで1分間攪拌し、4℃、14,000×gにて3分間遠心を行い、上清を除去した。沈殿した細切組織に、さらに上記組織洗浄液200μLを添加し、ボルテックスミキサーで30秒間攪拌後、4℃、14,000×gにて3分間遠心を行い、上清を除去した。こうして組織に含まれる血清成分などの混入物が除去された細切組織の沈殿物に、lysis緩衝液(30mmol/L トリス塩酸、2mol/L チオ尿素、7mol/L 尿素、4%CHAPS、1×濃度Complete Mini、5μL/mL Pefabloc SC protector、pH8.0)200μLを添加し、Sample Grinding Kit(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて、同説明書に従って処理を行い、細胞抽出液を調製した。細胞抽出液中に含まれるタンパク質の濃度は、Advanced protein assay reagent(Cytoskeleton社製)を用いたBradford法により定量を行った。この際、bovine gamma-globulinを標準タンパク質としたProtein Assay Kit I(バイオ・ラッドラボラトリーズ社製)を使用した。
【0028】
<二次元電気泳動>
抽出液中に含まれるタンパク質の発現プロファイルには、二次元電気泳動法を応用した蛍光ディファレンスゲル電気泳動用装置(2D-DIGE法、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて実施した。なお、タンパク質の蛍光標識法には、全ての還元したシステイン残基に蛍光分子Cy3またはCy5を導入する、飽和蛍光標識法を用いた。本標識法、及び2D-DIGE法については、文献(Jun X.Y. et al., Proteomics 2, 1682-1698 (2002)、Joanne S. et al., Proteomics 3, 1181-1195, (2003))に、その詳細が記されているが、本発明における実施例の実験デザイン概略図を図2に、またその詳細を以下に記す。
【0029】
飽和蛍光標識法によるタンパク質の蛍光標識は、1枚の二次元電気泳動用ゲル当たり、Cy3及びCy5の各蛍光標識サンプルが、ともに5μgの等量混合物となるよう実験をデザインして実施した。前述の通り調製した組織抽出サンプルについて、タンパク質5μgを含む容量を1.5mLマイクロチューブに分取し、これにlysis緩衝液を添加して9μLに容量調整した。この溶液に、2mmol/L Tris(2-carboxyethyl)-phosphine hydrochloride(PIERCE)溶液1μLを添加し、37℃、1時間、遮光条件にて還元処理を行った後、予めdimethylformamide(DMF)にて調製した2nmol/μLのCy3またはCy5試薬(GEヘルスケアバイオサイエンス)2μLを加えて混合し、37℃、30分間にてカップリング反応を行った。その後、2×サンプル緩衝液(2%IPG buffer pH3-10NL(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)、130mmol/L dithiothreitol(DTT)を含む1×サンプル緩衝液(2mol/L チオ尿素、7mol/L尿素、4%CHAPS))12μLを添加して反応を停止させ、これを蛍光標識サンプル溶液とした。なお、2D-DIGE法の解析において、Cy3標識タンパク質は内部標準サンプルとするため、解析する全サンプルの組織抽出液をタンパク質量として等量に混合したものを使用し、Cy5標識タンパク質は、各患者由来の解析サンプルそれぞれを用いて、調製した。
【0030】
Cy3及びCy5標識タンパク質、各5μgを含むサンプルを混合し、膨潤緩衝液(1%IPG buffer pH3-10NL、13mmol/L DTTを含む1×サンプル緩衝液)にて最終容量450μLと調整した後、IPGストリップホルダーに同溶液を注ぎ、次いでImmobiline DryStrip、pH3-10NL、24cm(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)をセットした後、IPGphor(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて、一次元目のタンパク質分離である等電点電気泳動(Rehydration: 20℃、12時間、500V 1時間、1,000V 1時間、6,000V 90,000Vhr)を遮光条件にて行った。
【0031】
等電点電気泳動が終了したImmobiline DryStripを、平衡化緩衝液(6mol/L 尿素、0.1mol/L トリス塩酸、30%グリセロール、2%Sodium Dodecyl Sulfate(SDS)、0.5%DTT、pH8.0)10mLに浸して、遮光条件で15分間緩やかに攪拌した後、予め作製した24×21cmのSDS−ポリアクリルアミドゲルに上部にセットした。なお、本ゲルはLaemmli法(Laemmli U.K., Nature 227, 680-685 (1970))に従って作製した12.5%の分離ゲル単層のみからなるゲルとし、ゲル支持体としては分離された蛍光タンパク質をそのまま検出できるよう、低蛍光ガラス板を用いて作製した。Immobiline DryStripを0.75%アガロース溶液(ブロモフェノールブルー(BPB)色素含有)を用いて固定した後、電気泳動槽Ettan DALT twelve(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にて電気泳動を行った。なお、この際に電気泳動用緩衝液として、陰極用には1×緩衝液(25mmol/L トリス塩酸塩、192mmol/L グリシン、0.1%SDS)を、陽極用には同緩衝液の2倍濃度の、2×緩衝液を用いた。サンプルをアプライした二次元電気泳動用ゲルを最大12枚までセットした後、1.5W/ゲルで約16時間、20℃にて電気泳動を行い、BPB色素がゲルの下部(陽極側)から溶出したところで電気泳動を停止させた。ゲルを泳動槽より取り出した二次元電気泳動後のゲルは、蛍光スキャナーTyphoon 9200(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて、Cy3(励起波長532nm/検出波長580BP30)、Cy5(同633nm/670BP30)それぞれの電気泳動像を検出した。なお、本2D-DIGE法における解析において、各サンプルにつき4枚の二次元電気泳動像(4×16サンプル、合計64枚のゲル画像)を取得し、以下に記す解析を実施した。
【0032】
<二次元電気泳動像の処理>
検出された2D-DIGE法における二次元電気泳動像は、ImageQuant TL (GEヘルスケアバイオサイエンス社製)ソフトウェアにて、まずバックグランドのノイズ除去処理を行った。ここで、全64枚の電気泳動像を詳細に確認し、各サンプル4枚のゲル画像のうち、最も分離が悪い1枚を除いて、解析対象を各サンプルにつき3枚(n=3、合計48枚)とした。次に、全てのゲル画像について、共通した範囲の酸性部分と塩基性部分を選択して切り抜き(図3)、これらの画像を2D-DIGE解析専用ソフトウェアであるDeCyder(バージョン6.5、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に転送した。なお、ゲル画像の酸性高分子量部分の除去は、比較的多く存在する、高発現量の細胞構成タンパク質のスポットを効果的に除去することを意味する。
【0033】
DeCyderソフトでは、まず全ゲル画像からタンパク質のスポットを検出する操作を行い、ここで各サンプル当たり、酸性及び塩基性領域を合わせて2,000個以上の解析対象スポットを得た。次に、ここで得られた、内部標準サンプルのCy3蛍光検出画像を確認し、これらの中から分離が比較的良好なゲル1枚を選出して、マスターゲルに設定した。このマスターゲルで検出された、Cy3蛍光標識内部標準サンプルのゲル画像における検出スポットを基準として、全ゲルのCy3蛍光検出画像におけるスポットと位置補正(マッチング)を行った。全てのゲルにおいてマッチングが完了した後、これらのゲル画像中の各サンプル由来Cy5蛍光画像から、検出タンパク質の濃度を示すスポットの蛍光強度を、Cy3内部標準サンプルの蛍光強度にて標準化処理された値のリストとして出力した。
【0034】
<検出スポットの統計学的解析>
信頼性の高い結果を得るため、前記の標準化蛍光強度のリストより、まずゲル間で検出されなかった割合(アピアランス)の多いスポットを、解析対象から除外した。ここでの除外基準は、アピアランスが70%を満たさないものと設定した。この基準をクリアしたスポット、合計1,075スポットについて、値が欠測値となったものは、k-nearest-neighbor法(k=10)にて統計学的に発生させた値で補完し、ランダムフォレスツ法の統計学的解析により、もとのサンプルの臨床背景である予後良、不良群を有意に区別できる能力を有するもの、上位30スポットを出力した。この抽出されたスポットについて、再度2D-DIGEゲルの画像を詳細に検証し、分離不十分で他のスポットと重複して蛍光強度が計算されているもの、あまりにも蛍光強度が小さくてバックグランドの蛍光強度の影響が大きいもの等、信頼性が十分に確保できないスポットを除外して、最終的にタンパク質を同定するスポット16個を絞り込んだ。
【0035】
これら16個のスポットについて、肺腺癌予後良群と不良群間における各発現量の増減とその変動比率についてまとめたものを表1及び2に示した。ここで抽出されたスポットは、発現量として、群間比較でいずれも1.2倍以上の差を認めるものであった。
【0036】
<タンパク質同定用サンプルの調製>
肺腺癌組織の2D-DIGE法の解析において、予後の相違により発現差を認めた16個のスポットについて、質量分析計を用いた方法にてタンパク質の同定を行った。この分析に供するサンプルは、以下に示すゲル内消化法により調製した。
【0037】
まず、タンパク質同定用のサンプルとして、500μgのタンパク質を含む肺腺癌組織抽出液を、Ettan DIGE簡易マニュアル(DeCyder version 6.0対応版、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)記載の方法を参考とし、前記の飽和蛍光標識法と同じ要領にて、Cy3蛍光標識した。このサンプルについて、前記と同様に二次元電気泳動を行った後、蛍光スキャナーによってCy3蛍光イメージを取得した。この二次元電気泳動像をImage Quant TLソフトウェアからDeCyderへ転送し、このソフトウェアにて、同定を行うスポットのゲル上での位置の確認を行い、それぞれのXY座標の位置データを取得した。次に、ゲルをEttan spot picker(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にセットし、同XY座標データの位置に該当するゲルを2.0mm径の大きさで採取し、厚さ1mmの円柱形のゲル片として回収した。このゲル片を100μLの60%アセトニトリルを含む100mmol/L 重炭酸アンモニウム溶液にて強く振盪しながら10分間、4回洗浄を行った後、100μLのアセトニトリル中でさらに5分間振盪した。同溶液を除去し、遠心エバポレーターにて完全に乾燥させた後、20μLの0.1%RapiGest SF(Waters社製)を含む50mmol/L 重炭酸アンモニウム溶液にて37℃、10分間膨潤させた。過剰な溶液を除き、遠心エバポレーターにて再度乾燥処理を行った後、200ngのリシルエンドペプチダーゼ(Acromobacter protease I(Lys-C)、和光純薬社製)を含む1mmol/L トリス塩酸緩衝液pH8.5、20μLを添加して、氷浴上に45分間、静置した。ゲルに浸み込まなかった溶液を除去した後、さらに20μLの1mmol/Lのトリス塩酸緩衝液、pH8.5を添加し、37℃にて16時間以上、インキュベーションした。酵素消化反応後、本溶液を新しいチューブに移し、さらに残ったゲル片に50μLの60%アセトニトリル溶液を添加し、15分間振盪した溶液を加え、これを合わせることで、タンパク質消化ペプチドの回収液とした。本溶液を遠心エバポレーターにて完全に乾燥させた後、ProteoMass Guanigination Kit(シグマ−アルドリッチ社製)を用いて、ペプチドに含まれる全てのリシン残基をホモアルギニンに変換し、遠心エバポレーターにて乾燥した消化ペプチドサンプルを得た。
【0038】
ここで得たサンプルを材料に、MALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化法)型質量分析計、及びESI(エレクトロスプレイイオン化法)型質量分析計を用いたタンパク質の同定を行った。その詳細については、以下に記述する。
【0039】
<タンパク質の同定(MALDI型質量分析計)>
MALDI型質量分析計を用いたタンパク質同定は、生成した複数のペプチド断片の各質量からタンパク質を同定するpeptide mass fingerprinting(PMF)法と、検出された幾つかのペプチドについて内部のアミノ酸配列を想定しタンパク質を同定するMS/MS ion search法(MS/MS解析)の、2つの方法を用いて行った。
【0040】
MALDI型質量分析計による解析では、まず前述のゲル内消化サンプルを4μLの0.2%トリフルオロ酢酸に再溶解し、これを文献(Johan G. et al., Anal. Chem. 73, 434-438 (2001))に記載されたThin layer法にて、マトリックス試薬α-Cyano-4-hydroxycinnamic Acid(CHCA)を用いて、MALDI型質量分析用ターゲットプレート、MTP AnchorChip 600/384 TF(Bluker-Daltonics社製)へアプライし、このプレートをMALDI-TOF/TOF型質量分析計Ultraflex II(Bluker-Daltonics社製)にセット後、測定を行った。測定は、PMF法ではリフレクトロンモードによるMS測定を行ったデータを用い、MS/MS解析では、MS測定の結果比較的イオン強度が大きいもの数本のピークを対象に、LIFTモードにて測定を行ったデータを用いた。ここで得られたMS及びMS/MS測定データは、MASCOTソフトウェア(Matrix Science社製)にてデータベース検索を行い、タンパク質を決定した。
【0041】
<タンパク質の同定(ESI型質量分析計)>
ESI型質量分析計を用いたタンパク質同定は、液体クロマトグラフィー(LC)と質量分析計を接続した測定機器を用いて、複数のペプチドのMS/MS解析を行うことにより、同定を行った。
【0042】
まず、前述のゲル内消化サンプルを20μLの0.1%ギ酸、0.01%TFAの溶液に再溶解した後、逆相カラムであるHiQ sil C18W(内径0.2mm×長さ100mm、ケーワイエーテクノロジーズ社製)を接続したナノフローLCシステム、DiNA(ケーワイエーテクノロジーズ社製)へアプライした。0.1%ギ酸、0.01%TFAの溶液にて、流速200nL/minでフローさせた後、0.1%ギ酸、0.01%TFAを加えたアセトニトリル溶液のリニアグラジエントにて分画し、順次溶出したペプチドを、連結したESI型質量分析計、Q-tof ultima(Waters社製)にてMS/MS測定を行った。ここで得られたMS/MS測定データは、MALDI型質量分析計の測定と同様、MASCOTソフトウェアのMS/MS ion searchにてデータベース検索を行い、タンパク質を決定した。
【0043】
<肺腺癌予後予測マーカー>
上記の方法にて同定された16個のタンパク質について、表1及び2に記した。MALDI型質量分析計、及びESI型質量分析計にて決定された16個のタンパク質のうち、5個はaldehyde dehydrogenaseであり、また3個はtropomyosinのそれぞれ異なるアイソタイプであった。ここで見出されたタンパク質のNCBI及びSWISS Protのデータベース上のアミノ酸配列から想定される分子量及び等電点と、二次元電気泳動の泳動位置(図1)から算定された肺腺癌予後マーカーとしたタンパク質のそれらとを比較したところ、大きく乖離するものが16個中、12個見出され(表1)、これらのタンパク質を本発明では肺腺癌予後予測マーカーとして用いることができる修飾型タンパク質とした。なお、かかるタンパク質は、生体内で翻訳後修飾を受けていることが知られており、さらに一部のものについては、例えば細胞内の情報伝達におけるリン酸化のように、翻訳後修飾がそのタンパク質の機能に大きく関わることが明らかとなっている。ここで乖離の認めた12個のタンパク質は、いずれも翻訳後修飾を受けた結果、その分子量、或いは等電点がシフトし、二次元電気泳動では想定した位置と異なるところに泳動されたものであることが強く示唆された。 例えば、図1のスポット番号1B1023で示される、デルタ3,5-デルタ2,4-ジエノイル-CoA イソメラーゼ(Delta3,5-delta2,4-dienoyl-CoA isomerase)はこれまでの報告などからリン酸化修飾を受けることが知られている。そのアミノ酸配列から想定される等電点はpI 8.5であるが、今回の二次元電気泳動像から観察されたその修飾体は、等電点は約pI 6.4であり、酸性側へシフトしていた。このことは、このタンパク質が、リン酸化等の修飾を受けていることを示唆するものである。また、スポット番号1B0816で示されるアネキシンA2(Annexin A2)は、リン酸化やアセチル化の修飾を受けることが知られている。そのアミノ酸配列から想定される等電点はpI 7.6であるが、今回の二次元電気泳動像から観察されたその修飾体は、等電点は約pI 6.6であり、酸性側へシフトしていた。このことは、このタンパク質がリン酸化等の修飾を受けていることを示唆するものである。
【0044】
なお、本発明で見出された代表例として、2つのマーカーにおける、2D-DIGEゲル上での肺腺癌患者の予後不良例(4症例)と予後良症例(12症例)との発現分布を、図4に示した。各マーカーにおける肺がん組織中の発現量は、予後良症例、及び不良症例によって大きく異なることがわかる。したがって、これらマーカーの発現量を比較することにより、予後良、不良の2群を判別することが可能となる。
【0045】
二次元電気泳動での解析では、タンパク質における2つの物理的性質である分子量と等電点によって、高い分解能で分離することが可能である。この泳動像プロファイルの比較は、特定の翻訳後修飾形における発現量を直接比較することになる。さらに、蛍光標識と二次元電気泳動を組み合わせた2D-DIGE法は、試料の量が十分確保できない場合でも、高感度にタンパク質のプロファイルを作製することができる。本発明では、これらの特徴を生かして、臨床上必要とされる肺腺癌の予後を予測するマーカーを見出した。ここでのマーカーは、特定の翻訳後修飾形の発現量の増減についても、マーカーの探索の対象としており、これは、例えば特許文献1に報告されている、肺腺癌のリンパ節転移に関わるマーカー探索の方法では為しえない。また、ここで見出された肺腺癌予後予測マーカーは、文献(Guoan C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 13537-13542, 2003) に報告されている、肺腺癌患者の生存率から発現変動するタンパク質を従来の二次元電気泳動法(銀染色法にて検出)で探索したタンパク質と重複せず、新規なものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の方法により、サンプル提供者が将来的に肺腺癌を再発するリスクの高低を判定することができる。このリスクに基づきサンプル提供者は肺腺癌再発の予防措置を講じることができ、また、肺腺癌の再発が疑われるサンプル提供者は、肺腺癌の再発を診断されるべき蓋然性が高く、早期に治療を開始することができるため、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、表1及び2に示されるタンパク質の2D-DIGE法における二次元電気泳動にて、肺腺癌組織抽出タンパク質を展開し、タンパク質を検出した泳動像二次元電気泳動像を示す図である。なお、ゲル内に示されるタンパク質スポット番号は、表1及び2に示すタンパク質スポット番号に相当する。
【図2】図2は、本発明の実験デザインの概略を示す図である。
【図3】図3は、二次元電気泳動により取得した蛍光ゲルイメージを解析用に処理したゲルの一例を示す図である。なお、解析に用いる際に、酸性低分子領域、及び塩基性領域を切り抜いた。
【図4】図4は、本発明で見出されたマーカーについて、2D-DIGEゲル上での肺腺癌患者の予後不良例(4症例)と予後良症例(12症例)における発現分布を比較した一例を示す図であり、(A)はTropomyosin alpha-3 chain、(B)はAldehyde dehydrogenaseに関する図である。なお、各プロットは、それぞれの患者サンプルにおけるn=3の測定の平均値を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者由来の生体試料において、デルタ3,5-デルタ2,4-ジエノイル-CoA イソメラーゼ(Delta3,5-delta2,4-dienoyl-CoA isomerase)、アネキシンA2(Annexin A2)、アルデヒド デヒドロゲナーゼ(Aldehyde dehydrogenase)、ペプチジル−プロリル シス−トランス イソメラーゼA (Peptidyl-prolyl cis-trans isomerase A)、インオーガニック ピロホスファターゼ2(Inorganic pyrophosphatase 2)、トロポミオシン ベータ鎖(Tropomyosin beta chain)、プロテアソーム サブユニット ベータタイプ2(Proteasome subunit beta type 2)、及びエロンゲーション ファクター2(Elongation factor 2)からなる群より選ばれる少なくとも1つのタンパク質の修飾体の発現量を測定する工程(工程A)、被検者由来の生体試料における前記タンパク質の発現量を基準値と比較する工程(工程B)、ならびに前記発現量の比較により変動を認める場合に被検者は肺腺癌の再発リスクが高いと判定する工程(工程C)を含む、肺腺癌の再発予測方法。
【請求項2】
修飾体が、分子量及び/又は等電点が理論値から乖離する修飾型タンパク質である、請求項1記載の予測方法。
【請求項3】
測定方法が二次元電気泳動法である、請求項1又は2記載の予測方法。
【請求項4】
生体試料が肺組織、細胞、体液、尿、及びその他生体由来のタンパク質抽出液からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3いずれか記載の予測方法。
【請求項5】
タンパク質がデルタ3,5-デルタ2,4-ジエノイル-CoA イソメラーゼ(Delta3,5-delta2,4-dienoyl-CoA isomerase)である、請求項1〜4いずれか記載の予測方法。
【請求項6】
タンパク質がアネキシンA2(Annexin A2)である、請求項1〜4いずれか記載の予測方法。
【請求項7】
デルタ3,5-デルタ2,4-ジエノイル-CoA イソメラーゼ(Delta3,5-delta2,4-dienoyl-CoA isomerase)、アネキシンA2(Annexin A2)、アルデヒド デヒドロゲナーゼ(Aldehyde dehydrogenase)、ペプチジル−プロリル シス−トランス イソメラーゼA (Peptidyl-prolyl cis-trans isomerase A)、インオーガニック ピロホスファターゼ2(Inorganic pyrophosphatase 2)、トロポミオシン ベータ鎖(Tropomyosin beta chain)、プロテアソーム サブユニット ベータタイプ2(Proteasome subunit beta type 2)、及びエロンゲーション ファクター2(Elongation factor 2)からなる群より選ばれる少なくとも1つのタンパク質の修飾体に対する抗体を含有してなる、肺腺癌の再発予測用キット。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−210355(P2009−210355A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52480(P2008−52480)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【出願人】(000192903)神奈川県 (65)
【Fターム(参考)】