説明

肺高血圧治療のための吸入可能製剤およびその使用方法

本発明は哺乳動物(例えばヒト)の肺高血圧を治療するための吸入可能製剤を目的とし、製剤はアンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシン受容体遮断薬、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、もしくは血管拡張薬、またはそれらのあらゆる組合せを含むがこれらに限定されない、少なくとも1つの血圧降下薬を含む。本発明の製剤は、溶液または懸濁液であることができ、好ましくは噴霧化による投与に適する。本発明は、肺高血圧に罹患している哺乳動物を治療するための方法およびキットも目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺高血圧を治療するための吸入可能製剤、およびヒトを含む哺乳類における肺高血圧を治療する方法に関する。本発明の製剤は血圧降下薬を含み、ここで、血圧降下薬は、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(「ACEI」)、アンギオテンシン受容体遮断薬(「ARB」)、ベータアドレナリン遮断薬(「ベータ遮断薬」)、カルシウムチャンネル遮断薬、もしくは血管拡張薬、またはそれらのあらゆる組合せを含んでいてもよい。本発明の製剤は噴霧化による投与に適しているのが好ましい。本発明は、本発明の製剤を含む肺高血圧治療のための、包装済みのキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
肺高血圧(pulmonary hypertension)は、肺動脈(心臓から肺に通じる血管)の血圧が正常レベルを超えて上昇する肺の障害である。治療をしないままでいると、肺高血圧は命を脅かすことがある。肺高血圧の症状には、極めて軽度の労作での息切れ、疲労、胸部痛、めまい発作失神、およびその他の症状が含まれる。肺高血圧は誤診されることが多く、正確に診断された頃には末期にまで進行してしまっていることも多い。さらに、肺高血圧は従来慢性で不治であり、生存率は低かった。
【0003】
知られた原因がなく肺高血圧が発症する場合は、原発性肺高血圧(PPH)と呼ばれる。PPHの知られていない原因は多い。
【0004】
肺高血圧の原因が分かっている場合は、二次性肺高血圧(SPH)と呼ばれる。SPHの一般的な原因には、数ある中で、呼吸障害、気腫、気管支炎、および慢性閉塞性肺疾患がある。その他稀な原因として、強皮症、CREST症候群、もしくは全身性エリテマトーデスのような炎症性または膠原血管性の疾患がある。心室と動脈との中隔の欠損のように、余分な血液の肺を経由した短絡を起こす先天性心臓疾患、慢性肺性血栓塞栓症(肺動脈での古い血栓)、HIV感染、肝臓疾患、およびフェンフルラミンおよびデクスフェンフルラミンのようなダイエット薬もまた、肺高血圧の原因である。
【0005】
アンギオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin−converting enzyme inhibitor)(ACEI)は、高血圧(高い血圧)およびうっ血性心不全の治療に用いられる薬物である。この薬物は、心臓発作で損傷を受けた心臓にかかる緊張を緩和するのにも用いられる。ACEIは、タンパク質のアンギオテンシンIを、血管を収縮させ体液の停留を促進して血圧を上昇させるタンパク質であるアンギオテンシンIIに変換する手助けをする酵素の産生を遮断する。ACEIは、また、血管を弛緩させることで血圧の降下を助け、酸素に富む血液がより多く心臓に届くようにする。カプトプリル(Capoten)、ラミプリル(Altace)、およびエナリプリル(Vasoted)は、一般的に用いられるACE阻害薬である。
【0006】
アンギオテンシン受容体阻害薬(angiotensin receptor blocker)(ARB)(アンギオテンシンII受容体作用薬とも呼ばれる)、例えばロサルタン(Cozaar)およびバルサルタン(Diovan)は、細胞表面の受容体からアンギオテンシンIIをはずすことにより血圧を降下させる。ARBは副作用が少ないため、より安価なACEI阻害薬の代替薬として用いられる。
【0007】
ベータアドレナリン遮断薬、あるいはベータ遮断薬(beta−blocker)は、高血圧の治療に用いられる。ベータ遮断薬は、また、狭心症(胸部痛)を緩和し、心臓発作を起こした患者のさらなる心臓発作の防止を助けるのに用いられる。ベータ遮断薬は、不規則な心拍を正しくし、偏頭痛を予防し、振せんを治療するためにも用いられる。ベータ遮断薬は競合的阻害薬であり、神経系統におけるベータアドレナリン受容体に対する刺激ホルモンの作用を妨げる。ベータ遮断薬は、ベータ1、およびベータ2で知られる2つの異なるグループにさらに分類することができる。ベータ1遮断薬は主に心臓に作用し、ベータ2遮断薬は主に気管支組織の受容体に作用する。ほとんどのベータ遮断薬は非特異性であり、すなわちベータ1およびベータ2両者の作用を有する。
【0008】
カルシウムチャンネル遮断薬(calcium−channel blocker)は、現在、高血圧、胸部痛、および不規則な心拍のコントロールに用いられる。カルシウムチャンネル遮断薬は、カルシウムが心筋内および血管壁内へ通過する速度を緩めることにより、血管を弛緩させる。血管が弛緩すると、血液はその血管を通ってより容易に流れるようになり、その結果血圧は降下する。
【0009】
血管拡張薬(vasodilator)は、血管壁の筋肉に直接作用して血管を広げる(拡張する)医薬品である。血管拡張薬は、高血圧の治療に用いられる。この薬物は、動脈を広げることで、血液をより流れやすくして血圧を低下させる。高血圧の病状は、心臓および動脈に負荷をかけ次第に永久的な損傷に導く可能性があるため、高血圧をコントロールすることは重要である。治療をしなければ、高血圧により心臓発作、心不全、脳卒中、または腎不全の危険性が増加する。血管拡張薬の例として、プロスタサイクリンおよびその類似体が含まれる。
【0010】
プロスタサイクリン、およびプロスタサイクリン類似体のような血管拡張薬、ならびにジルチアゼム(Cardizem)またはニフェジピン(Procardia)のようなカルシウムチャンネル遮断薬を全身的に投与すると、患者によっては肺血管の抵抗が低下することが示されている。例えば、血管拡張薬のエポプロステノール(Flolan)またはプロスタサイクリンを静脈に継続して注入すると、原発性肺高血圧患者の運動能力、生活の質、血行力学、および長期間生存を向上させることが見出されている。エポプロステノールは、強力な短時間作用型の血管拡張薬であり、血管内皮による血小板凝集の阻害薬である。
【0011】
しかし、プロスタサイクリンを継続的に静脈投与するのは、肺高血圧の治療としては決して理想的ではない。なぜなら、この薬物はほんの限られた供給量しか入手できず、大変高価であり、また、最良の管理を行うにはプロスタサイクリンの静脈投与による治療を、技術、設備、および投与量範囲によく通じた特殊化した総合施設で開始する必要があるからである。
【0012】
さらに、プロスタサイクリンの静脈投与を続けると、顎痛、悪心、および食欲不振を含む、重大な副作用が患者に生じ、ならびに長期のカテーテル導入および送達システムの衰弱から、不自由および潜在的な危険性が生じる。さらに、この薬剤は、全身的に送達されても薬剤のほんの数パーセントしか実際に肺系統に吸収されないため、高用量を投与しなければならない。
【0013】
肺高血圧の治療に、エポプロステノールまたはプロスタサイクリン類似体のトレプロスチニルナトリウムを、注入により投与することができる。しかし、送達は全身性であり、肺に局限しない。したがって、薬物を高用量で投与しなければならないが、実際に肺に到達するのは数パーセントに過ぎない。
【0014】
カルシウムチャンネル遮断薬は、肺の血管収縮を緩和することができ、PPHの患者の約20パーセントを延命できることも示されている。Rich S、Kaufmann E、Levy PS著、「The effect of high doses of calcium−channel blockers on survival in primary pulmonary hypertension」、N Engl J Med 1992年、327巻、76〜81頁は、本明細書に参照として組み入れられる。急性の血行動態応答の徴候を示す患者では、カルシウムチャンネル遮断薬の経口投与で長期治療を行うと、持続性の血行動態応答が生まれ、生存率が上昇する。しかし、経口投与では肺に対する局所作用を生じないため、高用量を投与しなければならず、おそらく不必要に全身作用を生じることになる。さらに、長期間にわたり高用量を経口投与すると、患者によっては好ましくない副作用を生じることがある。
【0015】
したがって、高血圧を治療する改善された方法が必要である。
【発明の開示】
【0016】
(発明の概要)
本明細書で提供される製剤は、病状、障害、または疾病の1つまたは複数の症状を治療し、防止し、および/または改善するために用いられる。本明細書で用いられるように、治療とは病状、障害、または疾病の1つまたは複数の症状を改善するか、そうでなければ有用に変えるあらゆる方法を意味する。治療は、また、本明細書においては製剤のあらゆる薬剤学的または医学的使用を包含する。本明細書で用いられるように、特定の製剤を投与して特定の障害の症状を改善することは、永久的または一時的、継続的または過渡的な、製剤の投与に起因または関連する可能性のあるあらゆる軽減を意味する。本明細書で用いられるように、「治療上有効な量」とは、病状、障害、または疾病の1つまたは複数の症状を治療し、防止し、および/または改善するのに十分な薬物の量を意味する。これはまた、産業上および/または法的基準に基づいた、安全で許容できる量の薬物を含むことができる。
【0017】
選択できる1つの実施形態では、本明細書で提供される製剤は、ある個体の呼吸障害の1つまたは複数の症状を治療し、防止し、および/または改善するために用いられる。他の選択できる実施形態では、本発明は、肺高血圧または他の関連する障害の1つまたは複数の症状を治療し、予防し、および/または改善するための製剤を提供する。
【0018】
ある好ましい実施形態では、本発明は哺乳動物(例えばヒト)の肺高血圧の治療用の製剤を提供し、この場合製剤は吸入による投与に適する。本発明の製剤は、噴霧化による投与に適しているのが好ましい。本発明の製剤は、治療上有効な量の血圧降下薬を含む。本製剤の使用に適する血圧降下薬(hypertension reducing agent)は、ACEI、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、もしくは血管拡張薬、またはそれらのあらゆる組合せを含む。選択できる1つの実施形態では、本発明の製剤は、2つまたはそれ以上の血圧降下薬の組合せを含む。
【0019】
本発明の製剤は、製剤が吸入に適する限り、溶液として、または水性懸濁液として提供することができる。本製剤は滅菌されていることが好ましい。他の実施形態では、本発明の製剤は安定である。さらに、製剤のpHレベルを調整するために、緩衝剤を添加することができる。その上、本発明の製剤は、抗菌性の保存剤を含むことができる。あるいは、本明細書の製剤は、保存剤を含まなくてもよい。1つの実施形態では、本発明の製剤は、あらゆる診断または程度の肺高血圧の治療に適する。
【0020】
本発明は、動物またはヒトを含む哺乳動物の肺高血圧を治療する方法にも関する。1つの実施形態では、本発明の方法は、本発明の製剤を、必要とする哺乳動物に投与するステップを含む。1つの実施形態では、本発明の方法は、肺高血圧の治療に有用であるかまたは関連のある別の治療または薬剤を投与するステップをさらに含む。このような治療および/または薬剤は、例えば、抗凝固薬および利尿薬を含む。
【0021】
さらに、本発明は哺乳動物の肺高血圧を治療するためのキットを目的とする。1つの実施形態では、本発明のキットは本発明の製剤を含む。他の実施形態では、キットの製剤は予め計量され、予め混合され、予め包装されている。他の選択できる実施形態では、キットは製剤を投与するための説明書をさらに含む。
【0022】
本発明の他の実施形態、特徴および利点については、以下の発明の詳細な説明に照らせば、当業者には明らかであろう。
(発明の詳細な説明)
本明細書で用いられるように、「アンギオテンシン変換酵素阻害薬」または「ACEI」という用語は、アンギオテンシン変換酵素の酵素活性を阻害する任意の医薬品を意味する。本明細書での使用に適するACEIには、ベナゼプリル(benazepril)、カプトプリル(captopril)、エナラプリル(enalapril)、フォシノプリル(fosinopril)、リシノプリル(lisinopril)、モエキシプリル(moexipril)、ペリンドプリル(perindopril)、キナプリル(quinapril)、ラミプリル(ramipril)、トランドラプリル(trandolapril)、ならびにこれらのプロドラッグ、塩および異性体が含まれるがこれらに限定されない。
【0023】
本明細書で用いられるように、「アンギオテンシン受容体遮断薬」、「ARB」または「アンギオテンシンII受容体作用薬」という用語は、多数の組織で認められる受容体へのアンギオテンシンIIの結合を選択的に遮断する任意の医薬品を意味する。本明細書での使用に適するARBには、カンデサルタン(candesartan)、エプロサルタン(eprosartan)、イルベサルタン(irbesartan)、ロサルタン(losartan)、オルメサルタン(olmesartan)、テルミサルタン(telmisartan)、バルサルタン(valsartan)、ならびにこれらのプロドラッグ、塩および異性体が含まれるがこれらに限定されない。
【0024】
本明細書で用いられるように、「ベータアドレナリン遮断薬」または「ベータ遮断薬」という用語は、体内におけるベータアドレナリン作動性物質を遮断する任意の医薬品を意味する。例えば、ベータ遮断薬は、自律(不随意)神経系の「交感神経」部および心筋の活性化における主要な薬剤である、ベータアドレナリン作動性物質アドレナリン(エピネフリン)を遮断することがある。本明細書での使用に適するベータ遮断薬には、アセブトロール(acebutolol)、アテノロール(atenolol)、ベタキソロール(betaxolol)、ビソプロロール(bisoprolol)、カルテオロール(carteolol)、カルベジロール(carvedilol)、エ
スモロール(esmolol)、ラベタロール(labetalol)、メトプロロール(metoprolol)、ナドロール(nadolol)、オクスプレノロール(oxprenolol)、ペンブトロール(penbutolol)、ピンドロール(pindolol)、プロプラノロール(propranolol)、ソタロール(sotalol)、チモロール(timolol)、ならびにこれらのプロドラッグ、塩および異性体が含まれるがこれらに限定されない。
【0025】
本明細書で用いられるように、「カルシウムチャンネル遮断薬」という用語は、心筋細胞および動脈の筋肉細胞へのカルシウム流入を遅延させるまたは遮断する任意の医薬品を意味する。本明細書での使用に適するカルシウムチャンネル遮断薬には、アムロジピン(amlodipine)、ベプリジル(bepridil)、ジルチアゼム(diltiazem)、フェロジピン(felodipine)、フルナリジン(flunarizine)、イスラジピン(isradipine)、ニカルジピン(nicardipine)、ニフェジピン(nifedipine)、ニモジピン(nimodipine)、ベラパミル(verapamil)、ならびにこれらのプロドラッグ、塩および異性体が含まれるがこれらに限定されない。
【0026】
本明細書で用いられるように、「血管拡張薬」という用語は、血管の拡張を引き起こす任意の医薬品を意味する。本明細書での使用に適する血管拡張薬には、アデニン(adenine)、アルギニン(arginine)、ドキサゾシン(doxazosin)、塩酸ヒドララジン(hydralazine hydrochloride)、二硝酸イソソルビド(isosorbide dinitrate)、一硝酸イソソルビド(isosorbide mononitrate) ミノキシジル(minoxidil)、ニコチネート(nicotinates)、ニトログリセリン(nitroglycerin)、フェントラミン(phentolamine)、プラゾシン(prazosin)、テラゾシン(terazosin)、ならびにこれらのプロドラッグ、塩および異性体が含まれるがこれらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用される血管拡張薬には、イロプロスト、トレプロスチニルなどのプロスタサイクリン(prostacyclin)(エポプロステノール)やプロスタサイクリン類似体を含むプロスタグランジン(prostaglandin)(エイコサノイド)、ならびにこれらのプロドラッグ、塩および異性体も含まれる。さらに本明細書では、PGE−1;PGE−2;PGF−2α;PGA−1;PGB−1;PGD−2;PGE−M;PGF−M;PGH−2;PGI−2;19−ヒドロキシ−PGA−1;19−ヒドロキシ−PGB−1;PGA−2;PGB−2;19−ヒドロキシ−PGA−2;19−ヒドロキシ−PGB−2;PGB−3;PGF−1α;15−メチル−PGF−2α;16,16−ジメチル−DELTA.sup.2−PGE−1メチルエステル;15−デオキシ−16−ヒドロキシ−16−メチル−PGE−1メチルエステル;16,16−ジメチル−PGE−2;11−デオキシ−15−メチル−PGE−1;16−メチル−18,18,19,19−テトラヒドロカルバサイクリン;(16RS)−15−デオキシ−16−ヒドロキシ−16−メチル−PGE−1メチルエステル;(+)−4,5−ジデヒドロ−16−フェノキシ−α−テトラノール−PGE−2メチルエステル;11−デオキシ−11a,16,16−トリメチル−PGE−2;(+)−11a,16a,b−ジヒドロキシ−1,9−ジオキソ−1−(ヒドロキシメチル)−16−メチル−トランス−プロステン;9−クロロ−16,16−ジメチル−PGE−2;アルボプロスチル;イロプロスト;CL15.347:およびこれらの天然プロスタグランジンの半合成もしくは合成誘導体、または血管拡張薬として作用できる任意の誘導体もしくは任意のプロスタグランジン類似体、を含む種々のプロスタグランジン、ならびにこれらのプロドラッグ、塩および異性体を含むがこれらに限定されない。
【0028】
本明細書で用いられるように、「血圧降下薬」という用語は、任意のACEI、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、血管拡張薬、または噴霧化など経口吸入を介して肺高血圧を治療することができる任意の他の化合物を意味する。血圧降下薬の上記リストには米国の診療では現在使用が認可されていないものや将来的に認可されるものが含まれるということが判明している。
【0029】
本明細書で用いられるように、「肺高血圧」という用語は、原発性(primary)もしくは二次性(secondary)肺高血圧、肺動脈高血圧、肺静脈高血圧、呼吸器系の障害もしくは低体温に関連する肺高血圧、慢性の血栓症もしくは塞栓症に起因する肺高血圧、または肺血管系に直接影響を与える障害に起因する肺高血圧を含むがこれらに限定されない、肺高血圧の任意の型、診断、レベルまたは段階を意味する。
【0030】
「肺高血圧」という用語は、肺炎、外傷、吸引もしくは吸入傷害、肺における脂肪塞栓、肺のアシドーシス炎症、成人呼吸促迫症候群、急性肺水腫、急性高山病、心臓手術後、急性肺高血圧、新生児持続性肺高血圧、周生期吸引症候群、硝子膜症、急性肺血栓塞栓症、へパリン−プロトミン反応、敗血症、喘息発作重積状態もしくは低酸素状態(医原性低酸素状態を含む)および他の型の可逆性肺血管収縮、に起因する障害などの急性肺血管収縮によって特徴づけられる他の呼吸障害をさらに含む。このような肺障害は、種々の白血球サブクラスを含む非常在性細胞種の肺への遊走に関連した障害を含む肺の炎症によっても特徴づけられる。
【0031】
選択できる1つの実施形態では、本発明の製剤は、血圧降下薬の薬剤として許容できる誘導体を含んでもよい。本明細書で用いられるように、上記化合物の薬剤として許容できる誘導体には、これらの塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、酸、塩基、溶媒和物、水和物またはプロドラッグが含まれるがこれらに限定されない。上記誘導体は、上記誘導体化に対する既知の方法を用いて当業者によって容易に調製され得る。生成される上記誘導体は、実質的な毒作用がなく動物またはヒトに投与され得る。
【0032】
適切な「薬剤として許容できる塩」には、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩などの無機塩基を含む塩、あるいは例えば、アミン塩(メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩など)、塩基性アミノ酸塩(アルギニン塩、リシン塩など)、テトラアルキルアンモニウム塩などの有機塩基を含む塩、あるいは例えば、肺血圧降下薬が液媒体内で可溶性を維持し、または液体媒体、好ましくは水性媒体内で調製され、かつ/もしくは有効に投与されることを可能にする他の塩の型、といった従来から使用される毒作用のない塩が含まれる。上記塩は、例えば対応する酸および塩基からもしくは塩の置換による、従来の製法によって調製され得る。
【0033】
例えば、選択できる1つの実施形態である血圧降下薬は、遊離塩基の型で、または塩の型(例えば、薬剤として許容できる塩として)で用いられ得る。適切な薬剤として許容できる塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩などの無機酸付加塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、琥珀酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩などの有機酸付加塩;アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などの酸性アミノ酸を含む塩;ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機塩基性塩;ならびにリシン塩、アルギニン塩などの塩基性アミノ酸を含む塩が含まれる。これらの塩は、場合によっては、水和物またはエタノール溶媒和物でもよい。
【0034】
エーテルの例として、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテルなどの低級アルキルエーテルや;オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテルなどの中級または高級アルキルエーテル、を例とするアルキルエーテル、;オレイルエーテル、リノレニルエーテルなどの不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテルなどの低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテルなどの低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテルなどのヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテルなどの低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;フェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジ−メトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテルなどの任意に置換されたアリールエーテル;ならびにベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテルなどのアリール(低級)アルキルエーテル、あるいは肺血圧降下薬が液体媒体内で可溶性を維持し、または液体媒体、好ましくは水性媒体内で調製され、かつ/もしくは有効に投与されることを可能にする他のエーテル型、が含まれてもよいがこれらに限定されない。
【0035】
エステルの例として、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステルなどの低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステルなどの低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステルなどの低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステルなどのヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステルなどの低級アルコキシ(低級)アルキルエステル、の脂肪族エステル;例えば、フェニルエステル、トシルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジ−メトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステルなどの任意に置換されたアリールエステル;ならびにベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステルなどのアリール(低級)アルキルエステル、あるいは肺血圧降下薬が液体媒体内で可溶性を維持し、または液体媒体、好ましくは水性媒体内で調製され、かつ/もしくは有効に投与されることを可能にする他のエステル型、が含まれてもよいがこれらに限定されない。
【0036】
さらに、本明細書で提供される製剤および方法において使用される血圧降下薬は、キラル中心を含んでもよい。該キラル中心は、(R)もしくは(S)のどちらかの配置、またはそれらの混合であってもよい。したがって、本明細書で提供される製剤において使用される化合物は、鏡像異性的に純粋でもよいし、または立体異性もしくはジアステレオ異性の混合物でもよい。本明細書で提供される化合物のキラル中心はin vivoでエピマー化され得ることを理解すべきである。したがって、(R)型を有する化合物の投与は、in vivoでエピマー化される化合物では、(S)型を有する化合物の投与と等価であることを、当業者は認識することになる。
【0037】
本発明は、肺高血圧を治療するための吸入可能な製剤を提供する。ここで、該製剤は肺高血圧の治療を目的とした血圧降下薬の治療上有効な量を含み、該血圧降下薬は、ACEI、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬もしくは血管拡張薬、またはこれらの任意の組合せである。
【0038】
本発明は、部分的には肺高血圧を治療するためのACEI、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬または血管拡張薬における既知の全身性高血圧に対する降圧作用を前提とする。本発明の製剤は、血圧降下薬の送達が全身送達とは対照的に利用者の肺系統に限局されると考えられることから、肺高血圧治療のための従来の手段を上回る改善を示すと考えられる。限局性療法により、生体利用効率が亢進され得るとともに、有効性が高まり、かつ/または治療効果が延長され得ると考えられる。本製剤は、生体利用効率の上昇に起因して、含有する血圧降下薬はより低用量であるにもかかわらず、肺高血圧を効果的に治療する可能性がある。さらに、限局性療法を施す結果、より低用量の投与によって副作用が低下し、低浸襲性もしくは時間のかかる全身送達法によって患者の不快感や不便さが減少し得ると考えられる。
【0039】
本発明の1つの実施形態では、血圧降下薬の治療上有効な量は、約0.001mg/ml〜約20mg/mlのACEI、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、血管拡張薬、またはこれらの任意の組合せを含んでもよい。選択できる実施形態では、血圧降下薬の治療上有効な量は、約0.008mg/ml〜約15.0mg/mlを含んでもよい。またそれは以下の中間範囲、すなわち、約0.001mg/ml〜約0.50mg/ml;約0.51mg/ml〜約1.00mg/ml;約1.01mg/ml〜約1.50mg/ml;約1.51mg/ml〜約2.00mg/ml;約2.51mg/ml〜約3.00mg/ml;約3.01mg/ml〜約3.50mg/ml;約3.51mg/ml〜約4.00mg/ml;約4.01mg/ml〜約4.50mg/ml;約4.51mg/ml〜約5.00mg/ml;約5.01mg/ml〜約5.50mg/ml;約5.51mg/ml〜約6.00mg/ml;約6.01mg/ml〜約6.50mg/ml;約6.51mg/ml〜約7.00mg/ml;約7.01mg/ml〜約7.50mg/ml;約7.51mg/ml〜約8.00mg/ml;約8.01mg/ml〜約8.50mg/ml;約8.51mg/ml〜約9.00mg/ml;約9.01mg/ml〜約9.50mg/ml;約9.51mg/ml〜約10.00mg/ml;約10.01mg/ml〜約10.50mg/ml;約10.51mg/ml〜約11.00mg/ml;約11.01mg/ml〜約11.50mg/ml;約11.50mg/ml〜約12.00mg/ml;約12.00mg/ml〜約12.51mg/ml;約12.51mg/ml〜約13.00mg/ml;約13.01mg/ml〜約13.50mg/ml;約13.51mg/ml〜約14.00mg/ml;約14.01mg/ml〜約14.50mg/ml;約14.51mg/ml〜約15.00mg/mlを含んでもよい。
【0040】
本発明の選択できる1つの実施形態では、血圧降下薬の治療上有効な量は、以下の中間範囲、すなわち、約0.001mg/ml〜約1.0mg/ml;約0.005mg/ml〜約1.0mg/ml;約0.01mg/ml〜約1.0mg/ml;約0.05mg/ml〜約0.1mg/ml;約0.05mg/ml〜約0.5mg/mlを含んでもよい。
【0041】
本発明の他の選択できる実施形態では、血圧降下薬の治療上有効な量は、以下の中間量、すなわち、約0.001mg/ml〜約1.25mg/ml;約1.25mg/ml〜約1.50mg/ml;約1.50mg/ml〜約1.75mg/ml;約1.75mg/ml〜約2.00mg/ml;約2.0mg/ml〜約2.25mg/ml;約2.25mg/ml〜約2.50mg/ml;約2.50mg/ml〜約2.75mg/ml;約2.75mg/ml〜約3.00mg/ml;約3.0mg/ml〜約3.25mg/ml;約3.25mg/ml〜約3.50mg/ml;約3.50mg/ml〜約3.75mg/ml;約3.75mg/ml〜約4.00mg/ml;約4.0mg/ml〜約4.25mg/ml;約4.25mg/ml〜約4.50mg/ml;約4.50mg/ml〜約4.75mg/ml;約4.75mg/ml〜約5.00mg/ml;約5.0mg/ml〜約5.25mg/ml;約5.25mg/ml〜約5.50mg/ml;約5.50mg/ml〜約5.75mg/ml;約5.75mg/ml〜約6.00mg/ml;約6.0mg/ml〜約6.25mg/ml;約6.25mg/ml〜約6.50mg/ml;約6.50mg/ml〜約6.75mg/ml;約6.75mg/ml〜約7.00mg/ml;約7.0mg/ml〜約7.25mg/ml;約7.25mg/ml〜約7.50mg/ml;約7.50mg/ml〜約7.75mg/ml;約7.75mg/ml〜約8.00mg/ml;約8.0mg/ml〜約8.25mg/ml;約8.25mg/ml〜約8.50mg/ml;約8.50mg/ml〜約8.75mg/ml;約8.75mg/ml〜約9.00mg/ml;約9.0mg/ml〜約9.25mg/ml;約9.25mg/ml〜約9.50mg/ml;約9.50mg/ml〜約9.75mg/ml;約9.75mg/ml〜約10.00mg/mlを含む、約0.001〜約10mg/mlの血圧降下薬を含んでもよい。
【0042】
ある実施形態では、本発明の製剤は、肺血圧降下薬の治療上有効な量を含む吸入可能な溶液である。好ましくは、本発明の吸入可能な溶液は噴霧化を介する投与に適する。本発明の製剤は、水性懸濁液として提供されてもよい。ある実施形態では、本発明の製剤は、水性懸濁液中において治療上有効な量の肺血圧降下薬を含む。
【0043】
本明細書で提供される製剤は、水と、1種あるいは複数種の薬剤として許容できる塩、アルコール、グリコールまたはこれらの任意の混合物、を含有する生理食塩水とを含んでもよいがこれらに限定されない、投与上、生理学的に許容できる任意の薬理学的に適した液体を含んでもよい。ある実施形態において、本発明の製剤は水を含有する。本製剤に使用される水は、吸入薬における使用に対して適用可能な規制要件を満たすか、上回るべきである。米国薬局方によって定められた「注入用滅菌水」または「吸入用滅菌水」に対する仕様は、本発明の製剤を調製するための使用に適した水の例である。
【0044】
選択できる1つの実施形態では、本発明の製剤は、保存剤、懸濁化剤、湿潤剤、等張化剤および/または希釈剤を含んでもよい。本明細書で提供される製剤は、約0.01%〜約90%、または約0.01%〜約50%、または約0.01%〜約25%、または約0.01%〜約10%、または約0.01%〜約5%の鼻腔内に投与する際に生理学的に許容できる1種もしくは複数種の薬理学的に適切な懸濁液を含んでもよい。本明細書で使用される薬理学的に適切な液体には、ヒドロキシル基と、または他の極性基とを含有する化合物を含むがこれらに限定されない極性溶媒が含まれるがこれらに限定されない。溶媒には、水と、またはエタノールやイソプロパノールに加え、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコールを含むグリコールなどのアルコールとが含まれるがこれらに限定されない。極性溶媒には、水と、1種あるいは複数種の薬剤として許容できる塩を含む生理食塩水と、アルコールと、グリコールと、またはこれらの混合物と、を含むがこれらに限定されないプロトン性溶媒も含まれる。選択できる1つの実施形態では、本製剤に使用される水は、吸入薬での使用に対して適用可能な規制要件を満たすか、上回るべきである。
【0045】
滅菌または十分な抗菌保存は、本製剤の一部として提供されてもよい。本発明の特定の製剤は経口投与を意図しているために、病原体が存在しないことが好ましい。滅菌された液体懸濁液の利点は、濁液製剤が鼻腔内に投与される際、個人への汚染物質進入の可能性を低下させ、それにより日和見感染の機会を低下させる点である。滅菌状態を得るために考えられる処理として、当該技術で既知である任意の適切な滅菌工程が含まれてもよい。ある実施形態では、原薬(例えば、フルチカゾン)は滅菌条件下で製造され、滅菌環境下で微粒子化され、そして滅菌条件下で混和および包装が実施される。選択できる実施形態では、本発明の製剤は滅菌濾過され、例えば鼻内噴霧器で用いられる滅菌された単位用量の製剤を提供する単位用量のバイアルを含むバイアルに充填されてもよい。各単位用量のバイアルは、滅菌されていてもよく、他のバイアルまたは次回の投与を汚染することなく適切に投与される。選択できる1つの実施形態では、本製剤中の1種あるいは複数種の成分は、蒸気、γ線によって滅菌され、あるいは必要に応じて滅菌されたステロイド粉末や他の滅菌成分を用いたり混和することによって調製されてもよい。さらに、同製剤は、滅菌条件下で調製および処理が施されても、または包装の前後に滅菌されてもよい。
【0046】
滅菌に加え、または滅菌の代わりに、本発明の製剤中は、細菌汚染の可能性を最小限に抑えるために、薬剤として許容できる保存剤を含んでもよい。さらに、薬剤として許容できる保存剤を、製剤の安定性を亢進させるために本製剤中に使用してもよい。しかし、治療される組織が刺激物質に敏感であるため、吸入上の安全性を目的として保存剤を選択しなければならないことを留意すべきである。本明細書での使用に適する保存剤には、フェニルエチルアルコール、塩化ベンザルコニウムもしくは安息香酸、または安息香酸ナトリウム、フェニルエチルアルコールなどの安息香酸塩を含む、溶媒を病原性粒子による汚染から保護するものが含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、本製剤で使用される保存剤は塩化ベンザルコニウムである。特定の実施形態では、本明細書における製剤は、約0.001重量%〜約10.0重量%の塩化ベンザルコニウム、または約0.01(v/w)%からのフェニルエチルアルコールを含む。保存剤は、約0.001重量%〜約1重量%、好ましくは約0.002重量%〜約0.02重量%、より好ましくは0.02重量%の量で存在してもよい。
【0047】
本明細書で提供される製剤は、約0.001%〜約90%、もしくは約0.001%〜約50%、もしくは約0.001%〜約25%、もしくは約0.001%〜約10%、もしくは約0.001%〜約1%の1種あるいは複数種の乳化剤、湿潤剤、または懸濁化剤もまた含有してもよい。本明細書で使用される上記薬剤には、ポリエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルビン酸塩80)、ポリソルビン酸塩20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルビン酸塩65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノ−オレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、を含むがこれらに限定されないポリオキシエチレンソルビタン脂肪エステルまたはポリソルビン酸塩;レシチン;アルギン酸;アルギン酸ナトリウム;アルギン酸カリウム;アルギン酸アンモニウム;アルギン酸カルシウム;プロパン−1,2−アルギン酸ジオール;寒天;カラギーナン;ローカストビーンガム;グアールガム;トラガカント;アカシア;キサンタンガム;カラヤガム;ペクチン;アミド化ペクチン;アンモニウムフォスファチド;微結晶性セルロース;メチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース;エチルメチルセルロース;カルボキシメチルセルロース;脂肪酸のナトリウム、カリウムおよびカルシウム塩;脂肪酸のモノ−およびジ−グリセリド;脂肪酸のモノ−およびジ−グリセリドの酢酸エステル;脂肪酸のモノ−およびジ−グリセリドの乳酸エステル;脂肪酸のモノ−およびジ−グリセリドのクエン酸エステル;脂肪酸のモノ−およびジ−グリセリドの酒石酸エステル;脂肪酸のモノ−およびジ−グリセリドのモノ−およびジアセチル酒石酸エステル;脂肪酸のモノ−およびジ−グリセリドの混合酢酸および酒石酸エステル;脂肪酸のスクロースエステル;スクログリセリド;脂肪酸のポリグリセロールエステル;ヒマシ油が重縮合した脂肪酸のポリグリセロールエステル;脂肪酸のプロパン−1,2−ジオールエステル;ナトリウムステアロイル−2ラクチレート;カルシウムステアロイル−2−ラクチレート;ステアロイル酒石酸塩;ソルビタンモノステアレート;ソルビタントリステアレート;ソルビタンモノラウレート;ソルビタンモノオレエート;ソルビタンモノパルミテート;キラヤ抽出物;大豆油の二量体化脂肪酸のポリグリセロールエステル;酸化重合した大豆油;およびペクチン抽出物、が含まれるがこれらに限定されない。
【0048】
本製剤は、約0.001%〜約90%、または約0.001%〜約50%、または約0.001%〜約25%、または約0.001%〜約10%、または約0.001%〜約1%の薬理学的に適切な1種あるいは複数種の賦形剤および添加剤をさらに含有してもよい。賦形剤および添加剤は、一般に何らかの薬理学的活性をもたず、または少なくとも何らかの望ましくない薬理学的活性をもたない。これらの濃度は、選択される薬剤によって変化することがあるが、これらの薬剤の有無、またはその濃度は、本発明の本質的特徴ではない。賦形剤および添加剤には、界面活性剤、モイスチャー、安定剤、錯化剤、抗酸化剤、または当該技術で既知の他の添加剤が含まれる場合があるがこれらに限定されない。錯化剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはこれのジナトリウム塩のような塩、クエン酸、ニトリロ三酢酸およびこれらの塩など、が含まれるがこれらに限定されない。他の実施形態では、特に本明細書で提供される懸濁液製剤において、錯化剤はナトリウムエデト酸塩である。1つの実施形態では、その組成物は、ナトリウムエデト酸塩を約0.05mg/ml〜約0.5mg/ml、または約0.1mg/ml〜約0.2mg/mlの濃度で含有する。さらに、例えば本発明の製剤は、粘膜の乾燥を阻害し、刺激を予防するために、約0.001重量%〜約5重量%の保湿剤を含んでもよい。例えば、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールまたはこれらの混合物を含む、薬剤として許容できるあらゆる種類の保湿剤が利用できる。
【0049】
本明細書で提供される製剤は、本製剤成分のいずれかの溶解度を上昇させるために、約0.001%〜約90%、または約0.001%〜約50%、または約0.001%〜約25%、または約0.001%〜約10%の1種あるいは複数種の溶媒または共溶媒をさらに含んでもよい。本明細書で使用される溶媒または共溶媒には、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール、を含むアルコールなどの、水酸化溶媒(hydroxylated solvent)や他の薬剤として許容できる極性溶媒が含まれるがこれらに限定されない。他の実施形態では、本発明の製剤は、当該技術で既知の1種あるいは複数種の従来の希釈剤を含んでもよい。好ましい希釈剤は精製水である。
【0050】
本製剤の等張性を調節するため、等張化剤(または浸透圧調整剤)を添加してもよい。同剤には塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化亜鉛、塩化カルシウムまたはこれらの混合物が含まれてもよいがこれらに限定されない。他の浸透圧調整剤は、マンニトール、グリセロール、およびブドウ糖またはこれらの混合物をさらに含有してよいがこれらに限定されない。選択できる実施形態では、本製剤は約0.01重量%〜約10重量%、または1重量%〜約6重量%を含んでもよい。選択できる1つの実施形態では、本発明の製剤は等張である。
【0051】
本明細書における特定の実施形態では、本発明の製剤は約2.0〜約8.0のpHを有する。好ましくは、本製剤のpHは約3.0〜約6.0で、好ましくはpHが約3.0〜約4.0である。本発明の製剤は、製剤を所望のpHに維持するために、任意でpH緩衝液を含む。本明細書での使用に適する緩衝液には、クエン酸/リン酸塩、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸塩、バルビタール、ホウ酸塩、ブリトンロビンソン、カコジル酸塩、クエン酸塩、コリジン、ギ酸塩、マレイン酸塩、マクイルベイン、リン酸塩、Prideaux−Ward、琥珀酸塩、クエン酸塩−リン酸塩−ホウ酸塩(Teorell−Stanhagen)、ベロナール酢酸塩、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、ビス−トリス(ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン)、ADA(N−(2−アセトアミド)−2−イミノ二酢酸)、ACES(N−(カルバモイルメチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−N、N’−ビス(2−エタンスルホン酸))、MOPSO(3−(N−モルホリノ)−2ヒドロキシプロパンスルホン酸)、ビス−トリスプロパン(1、3−ビス(トリス(ヒドロキシ−メチル)メチルアミノ)プロパン)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)、TES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(N−(2ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)、DIPSO(3−(N,N−ビス(2ヒドロキシエチル)アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、MOBS(4−(N−モルホリノ)ブタンスルホン酸)、TAPSO(3−(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TRIZMAO(トリス(ヒドロキシメチルアミノメタン)、HEPPSO(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸))、POPSO(ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸))、TEA(トリエタノールアミン)、EPPS(N−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン−N’−(3−プロパンスルホン酸)、TRICINE(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、GLY−GLY(グリシルグリシン)、BICINE(N,N−ビス(2ヒドロキシエチル)グリシン)、HEPBS(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(4ブタンスルホン酸))、TAPS(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸)、AMPD(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール)、および/または当業者が知っている任意の他の緩衝液が含まれるがこれらに限定されない。
【0052】
選択できる1つの実施形態では、本発明の製剤は安定である。本明細書で用いられるように、本明細書で提供される製剤の安定性は、所定の温度における、例えばフルチカゾンといった原薬の初期量の80%、85%、90%または95%を超える量が製剤中に存在する期間でみる。例えば、本明細書で提供される製剤は、約15℃〜約30℃で保存され、少なくとも1、2、12、18、24または36カ月の期間、安定性が維持され得る。また製剤は、25℃で1、2、12、18、24または36カ月を超える期間保存された後、それを必要とする対象者への投与に適当であり得る。さらに、他の選択できる実施形態では、アレニウスの反応速度論を用いると、約15℃〜約30℃の間で1、2、12、18、24または36カ月を超える期間、製剤を保存した後で、原薬(例えば、フルチカゾン)において初期量の80%を超える、または85%を超える、または90%を超える、または95%を超える量が残存する。
【0053】
本明細書で用いられるように、「長期保存」期間中には組成が安定であるという記述は、その組成が、25℃で1、2または3カ月を超える使用期間、あるいは5℃で1、2または3年を超えるもしくはそれに相当する保存期間となる推定の保存寿命を有している場合に、それを必要とする対象者への投与に適することを意味する。本明細書における特定の実施形態では、アレニウスの反応速度論を用いた場合、>80%または>85%または>90%または>95%と推定される気管支拡張薬が、上記保存後に残存する。
【0054】
本発明の製剤は、種々の方法、好ましくは吸入によって投与可能である。例えば、本製剤は、吸入器、例えば計量式吸入器またはドライパウダー吸入器、注入器、ネブライザーまたは他の従来から既知の吸入可能な医薬品を投与する任意の方法を介してそれを必要とする個人に投与可能である。好ましくは、本発明の製剤は噴霧化によって投与される。選択できる1つの実施形態では、本発明の製剤は、血圧降下薬、またはこれらの塩またはエステルを、少なくとも1種の適切な高圧ガスと、または界面活性剤もしくは複数の界面活性剤の混合物とともに、別々に含む加圧型エアロゾルを介して投与することができる。従来より知られている任意の高圧ガスが使用できる。
【0055】
特定の実施形態では、組成物は噴霧化を介して投与される。噴霧化されたエアロゾルの投与は、小児および老人集団を含む特定の対象集団では、吸入用ドライパウダーの使用と同時が好ましい。
【0056】
本明細書では、本明細書で提供される組成物およびネブライザーを含む組合せがさらに提供される。同組合せは、ネブライザーの使用のための説明書を含む他の成分を任意に含有するキットとして梱包され得る。いずれのネブライザーも本明細書で提供されるキットおよび方法における使用を意図したものである。特に本明細書で使用されるネブライザーは、高圧ガスを含有しない、本明細書で提供される組成物を含む液体製剤を噴霧化する。ネブライザーは、圧縮空気、超音波、または振動を含むがこれらに限定されない当業者に知られるいずれかの方法によって噴霧を生成することがある。ネブライザーは、さらに内部バッフルを有してもよい。内部バッフルは、ネブライザーの筐体とともに、固着によって噴霧から選択的に大きな液滴を除去し、液滴が貯蔵容器に戻ることを可能にする。したがって、生成される微細なエアロゾルの液滴は、空気/酸素の吸入によって肺に飛沫同伴される。
【0057】
本明細書で用いられるように、噴霧化された溶液とは、空気中に分散されてエアロゾルを形成する溶液のことを意味する。したがって、噴霧化された溶液は、エアロゾルの特定の形態である。本明細書で用いられるように、ネブライザーは、肺への吸入のために極めて微細な液滴を生成できる器具である。この器具内で噴霧化する液体または溶液は、圧縮空気、超音波、または振動オリフィスを含むがこれらに限定されない当業者に知られる方法によって霧状の液滴に微粒子化され、大規模に分布する。ネブライザーは、例えば、器具の筐体といっしょに、固着によって大きな液滴を霧から選択的に除去するバッフルをさらに含んでもよい。したがって、肺に吸入された噴霧は微細なエアロゾルの液滴を含有する。
【0058】
選択できる1つの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、噴霧化を介する上記治療が必要な対象への投与を意図したものである。高圧ガスを含有しない液体製剤を噴霧化するネブライザーは、本明細書で提供される組成物での使用に適する。ネブライザーは、例えばPari GmbH(シュタルンベルク、ドイツ)、DeVilbiss Healthcare(ミドルセックス州ヘストン、英国)、Healthdyne、VitalSigns、Baxter、Allied Health Care、Invacare、Hudson、Omron、Bremed、AirSep、Luminscope、Medisana、Siemens、Aerogen、Mountain Medical、Aerosol Medical Ltd.(エセックス州コルチェスター、英国)、AFP Medical(ウォリックシャー州ラグビー、英国)、Bard Ltd.(サンダーランド、英国)、Carri−Med Ltd.(ドーキング、英国)、Plaem Nuiva(ブレシア、イタリア)、Henleys Medical Supplies(ロンドン、英国)、lntersurgical(バークシャー州、英国)、Lifecare Hospital Supplies(レイエス(Leies)、英国)、Medic−Aid Ltd.(ウェストサセックス州、英国)、Medix Ltd.(エセックス州、英国)、Sinclair Medical Ltd.(サリー州、英国)、ならびにその他多数から入手できる。
【0059】
本明細書で使用されるネブライザーには、ジェットネブライザー(オプションとして圧縮機と併せて販売)、超音波ネブライザーなどが含まれるがこれらに限定されない。本明細書で使用される典型的なジェットネブライザーには、Pari LC plus/ProNeb、Pari LC plus/ProNeb Turbo、Pari LC plus/Dura Neb 1000&2000、Pari LC plus/Walkhaler、Pari LC plus/Pari Master、Pari LC star、Omron CompAir XL Portable Nebulizer System(NE−CI8およびJetAir使い捨て式ネブライザー)、Omron CompAir Elite Compressor Nebulizer System(NE−C21およびElite Air再利用式ネブライザー)、Pari LC PlusまたはProneb Ultra圧縮機を備えるPari LC Starネブライザー、Pulmo−aide、Pulmo−aide LT、Pulmo−aide traveler、Invacare Passport、Inspiration Healthdyne 626、Pulmo−Neb Traverier、DeVilbiss 646、Whisper Jet、Acorn 11、Misty−Neb、Allied aerosol、Schuco Home Care、Lexan Plasic Pocet Neb、SideStream Hand Held Neb、Mobil Mist、Up−Draft、Up−Draft 11、T Up−Draft、ISO−NEB、AVA−NEB、Micro Mist、PulmoMateが含まれる。本明細書で使用される典型的な超音波ネブライザーには、MicroAir、UltraAir、Siemens Ultra Nebulizer 145、CompAir、Pulmosonic、Scout、5003 Ultrasonic Neb、5110 Ultrasonic Neb、5004 Desk Ultrasonic Nebulizer、Mystique Ultrasonic、Luminscope’s Ultrasonic Nebulizer、Medisana Ultrasonic Nebulizer、Microstat Ultrasonic Nebulizer、MABISMist Hand Held Ultrasonic Nebulizerが含まれる。本明細書で使用される他のネブライザーには、5000 Electromagnetic Neb、5001 Electromagnetic Neb 5002 Rotary Piston Neb、Lumineb I Piston Nebulizer 5500、Aeroneb’Portable Nebulizer System、Aerodose”Inhaler、AeroEclipse Breath Actuated Nebulizerが含まれる。
【0060】
噴霧化を介した投与のための肺血圧降下薬を含む医薬品組成物が提供される。組成物は滅菌濾過され、ネブライザー内で用いられて適切に噴霧化される滅菌された単位用量の製剤を供給する単位用量のバイアルを含むバイアルに充填されてもよい。各々の単位用量のバイアルが滅菌されており、他のバイアルまたは次回の投与を汚染することなく、適切に噴霧化され得る。
【0061】
単位用量のバイアルは、形成−充填−密封の機械において、または当業者に知られる任意の他の適切な方法によって形成され得る。同バイアルは、これらの処理において適切に用いられるプラスチック材料から作られてもよい。例えば、単位用量のバイアルを調製するためのプラスチック材料には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルが含まれるがこれらに限定されない。1つの実施形態では、同プラスチック材料は低密度ポリエチレンである。
【0062】
他の選択できる実施形態では、本発明のシステムは約0.1〜約5.0ml、または約0.5ml〜約5.0ml、または約1.0ml〜約5.0ml;または約0.1ml〜約3.0ml、または約0.1ml〜約2.0ml、または約0.5ml〜約2.0ml、または約1ml、または約1.5ml、または約2.0ml、または約2.5ml、または約3.0ml、または約3.5ml、または約4.0ml、または約4.5ml、または約5.0ml、または約0.1ml〜約2.25ml、または約1.0ml〜約2.0ml、または約2.0ml〜約2.4mlの治療上有効な量の1種あるいは複数種の肺血圧降下薬の単回単位用量を含む、予備混合され、予備計量された水性の吸入溶液を予め充填している1種あるいは複数種の調剤容器を包含する。
【0063】
噴霧化によって投与される薬剤は、肺高血圧の治療における主要な役割を担い得る。しかしながら、噴霧化療法の考えられる欠点は、毎日施されなければならない回数および各治療にかかる時間の総量である。例えば、ある人は1日当たり4回分の吸入溶液の噴霧化による投与を受けるよう要求され得る。いくつかの例では、各ネブライザーによる治療は、充填容量2.5mlの気管支拡張薬を送達するのに約15分以上かかるが、その時間量は使用されるネブライザーの型に応じて変化し得る。噴霧化療法に対する時間要求は負担となる可能性があり、個人にとって1日に必要な用量を省いてしまう原因となり得る。処方される投与計画に従わないことが影響して個人の状態を危うくしかねない。
【0064】
選択できる1つの実施形態では、本発明の1種あるいは複数種の肺血圧降下薬の吸入溶液の容量は、約0.1ml〜約2.25ml、または約0.1ml〜約2ml、または約1ml〜約2ml、または約1.5ml〜約2ml、好ましくは約1ml、約1.5ml、約2.0ml、または約2.25mlであり、これらの充填容量に関して臨床試験または他の試験は実施されていないが、上記容量によって個人は各々の噴霧化治療でのより少ない時間でより多くの薬物(例えば、1種あるいは複数種の肺血圧降下薬)の投与を受けることができるため、該用量は従来のネブライザーの充填容量の溶液(例えば2.5mlまたは3.0mlの充填容量)と比較してより有用であると考えられる。さらに、本発明の充填容量によって、ネブライザー治療による合併症への一般的な対処が最小限に抑えられ、さらにネブライザーの寿命を延ばすことができる。
【0065】
選択できる1つの実施形態では、本発明の上記の充填容量において、各々の噴霧化治療の時間が従来のネブライザー治療(例えば2.5mlもしくは3mlの充填容量)に対して少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%以上短縮され得る。他の選択できる実施形態では、本発明の充填容量において、各噴霧化治療が、従来のネブライザー治療(例えば2.5mlもしくは3.0mlの充填容量)から約12分、10分、9分、8分、6分、5分、4分、3分、それより少ない時間まで短縮され得る。治療完了までの時間を短縮するということは、個人らが処方される投与計画により従いやすくなり、処方される薬物から最適な利益を得ることを意味する。
【0066】
従来のネブライザー治療に関するもう1つの考えられる欠点は、投与中の薬物の損失である。従来のネブライザーの溶液は、吸入溶液の約2.5ml以上の充填容量を含む。例えば、2.5ml以上を含む吸入溶液を噴霧化する際、治療後、ネブライザーシステム内に約0.7mlの溶液が残存するが、その量は使用されるネブライザーの型に応じて変化し得る。これらの例では、個人は吸入薬の処方量または適量の投与を受けていない。例えば、1日に各治療後にネブライザーシステム内に残存する薬物に起因して、個人によっては処方される薬物の1日量の内の約2.1ml、またはそれ以上を受けることができない。
【0067】
本発明の1種あるいは複数種の肺血圧降下薬の吸入溶液の充填容量では、従来の吸入溶液(例えば2.5mlまたは3mlの充填容量)と比較した場合、治療後にネブライザーシステム内に残存する溶液量が減少することになると考えられる。ネブライザーシステム内に残存する溶液がより少ないということは、各治療中の個人への薬物(例えば、1種あるいは複数種の肺血圧降下薬)がより多く投与されることを意味する。選択できる1つの実施形態では、各治療後にネブライザーシステム内に残存する溶液量は、本発明の1種あるいは複数種の肺血圧降下薬の吸入溶液における、例えば2.5mgアルブテロールおよび0.5mg臭化イプラトロピウムを含む吸入溶液であるが、0.50ml未満、または0.30ml未満、または0.20ml未満または0.10ml未満または0.05ml未満であり得る。
【0068】
効果的なネブライザー治療のために重要な要素は、薬物の肺深部への透過を確実にするための深吸気と、および肺における薬物の良好な保持を確実にするための安定した息止めとである。
約0.1ml〜約2.0mlの充填容量の吸入溶液をネブライザー中に投与することは、例えば治療中に個人の深呼吸の努力による治療効果を最適化するとともに個人の息止めの努力による治療効果を最適化することになると考えられる。このことは治療時間の短縮や溶液中の1種あるいは複数種の肺血圧降下薬における濃度上昇に起因している。
【0069】
したがって、選択できる1つの実施形態では、本発明は患者ケアを促進し、投薬ミスを低下させ、ネブライザー治療の時間を短縮し、噴霧化療法の効率および有効性を改善し、または肺高血圧を患う個人の治療上のコンプライアンスを高める方法である。選択できる1つの実施形態では、該方法は、本発明の約0.1ml〜約2.0mlの吸入溶液をネブライザーのチャンバ内に入れる工程を含んでもよい。ネブライザーのチャンバに付随するマウスピースまたはフェースマスクを備えるネブライザー。マウスピースまたはフェースマスクは、個人の口または顔の近くに位置する。個人がマウスピースまたはフェースマスク内で呼吸する間、吸入溶液は霧状の形態で、ネブライザーチャンバからマウスピースまたはフェースマスクを通って個人へと通り抜ける。個人は、噴霧化治療が終了するまで、マウスピースまたはフェースマスク中に呼吸し続ける。これは約12分、11分、10分、9分、8分、7分、6分、5分、4分または3分かかる場合がある。選択できる実施形態では、少なくとも実質上すべての噴霧がネブライザーチャンバから除かれる時点で噴霧化治療は終了する。これは約12分、11分、10分、9分、8分、7分、6分、5分、4分または3分かかる場合がある。本発明の選択できる1つの実施形態では、1種あるいは複数種の各容器中の吸入溶液の用量は、1日当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、または8回にわたって噴霧化によって投与される場合がある。
【0070】
他の選択できる実施形態では、本発明のシステム/キットは、吸入溶液を用いることで慢性閉塞性肺疾患に関連する気管支痙攣が軽減できることを示すラベルをさらに含む場合がある。選択できる1つの実施形態では、ラベルは1種あるいは複数種の各容器中の吸入溶液に関係する有効性、用量、投与、禁忌および有害反応データを含む表示を含んでもよい。禁忌データは、1種あるいは複数種の各容器中の吸入溶液が吸入溶液中に含有される成分のいずれかに過敏性を有するヒトに対して禁忌であることを示すデータを含んでもよい。
【0071】
用量および投与データは、1種あるいは複数種の各容器中の吸入溶液の推奨用量が1日当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回または8回、噴霧化によって投与される場合があることを示すデータをさらに含んでもよい。
【0072】
選択できる実施形態では、本発明は、気管支痙攣を含む肺高血圧に関連する症状の軽減において使用される手段をさらに含んでもよい。該手段は、ラベルの形態、書面での指示、または表示を組み込んだ他の任意の形態をとってもよい。該手段は、肺高血圧に関連する症状を有する患者は、単一バイアル中に1種または複数種の肺血圧降下薬の治療上有効な量の単位用量を含有する、少なくとも1種類の包装済みで、滅菌され、予備混合され、予備計量され、かつ/またはBACを含まない吸入溶液によって治療可能であることを示す表示を含む場合がある。ネブライザー内での噴霧化に適する吸入溶液。該器具は、患者における前記症状を治療するのに吸入溶液を利用するための指示を与える表示をさらに含むことがある。
【0073】
本発明の吸入製剤は、原発性肺高血圧、二次性高血圧、および表1に示されるような特にクラスI−IVを含むがこれらに限定されない「肺高血圧」(該用語は本明細書で定義される)を治療するために用いられ得る。例えば、本発明の製剤は、呼吸器系の障害および/もしくは低酸素血症に関連する肺高血圧における1種あるいは複数種の以下の症状、すなわち慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、睡眠障害呼吸;肺胞低換気障害;高所慢性暴露;新生児肺疾患;および肺胞−毛細血管異形成、を治療、または改善するために用いられ得る。表1に示される情報は、例示目的にすぎない。それは本発明の範囲の限定を意図したものではない。
【0074】
【表1】

【0075】
本発明の製剤は、1種または複数種の肺血圧降下薬を含んでもよい。1つの実施形態では、本発明の製剤は、ACEI、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬または血管拡張薬のうちの1つ、またはこれらの任意の組合せを含む。該組合せは、本明細書における肺血圧降下薬のいずれか1種を明確に除外してもよい。選択できる実施形態では、本発明の製剤は、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬または血管拡張薬と組み合わせたACEIを含む。他の実施形態では、本発明の製剤は、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬または血管拡張薬と組み合わせたARBを含む。さらに他の実施形態では、本発明の製剤は、カルシウムチャンネル遮断薬または血管拡張薬と組み合わせたベータ遮断薬を含む。さらに他の実施形態では、本発明の製剤は、カルシウムチャンネル遮断薬および血管拡張薬を含む。本明細書における選択できる実施形態では、本発明は、少なくとも3種類の、ACEI、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬または血管拡張薬のいずれかの組合せを含む。
【0076】
さらに、本発明の製剤は、1種あるいは複数種の他の薬剤または治療とともに施されてもよい。例えば、本製剤は、血栓症を予防するのに推奨され、かつ原発性肺高血圧患者の寿命を延ばすことが判明しているワルファリン(クマジン)などの抗凝固薬(anticoagulant)とともに投与されてもよい。肺高血圧患者は、停滞した肺血流、拡張した右心室、静脈不全および相対的な運動不足が原因で血栓塞栓症になる傾向がある。
【0077】
さらに、本発明の製剤は、右心不全および原発性肺高血圧患者において好ましい急性血行力学的効果をもたらすことが判明しているジゴキシン(ラノキシン)などの変力作用薬(inotropic agent)と併せてまたは組み合わせて投与されてもよい。短時間に非経口で投与される変力作用薬はまた、本発明の製剤とともに投与されてもよい。さらに、低酸素症は強力な肺血管収縮原であることから、本発明の製剤は、低酸素症患者の生存を延長させることで知られる低流量酸素補給療法(low-flowsupplemental oxygen therapy)と組み合わせて投与されてもよい。
【0078】
さらに、本発明の製剤は、肺高血圧および右心室不全患者における容量負荷を低下させるのに有用な低塩食および/または利尿薬(diuretic)と組み合わせて投与されてもよい。しかしながら、過度の利尿およびさらなる心拍出量の低下は避けるべきである。
【0079】
本発明は、動物やヒトを含む哺乳類において肺高血圧を治療する方法をさらなる目的とする。1つの実施形態では、血圧降下薬の治療上有効な量がそれを要する哺乳類に投与される。選択できる実施形態では、本発明の製剤は、予備計量や予備混合が施され、さらに包装済みである。1つの実施形態では、本発明の方法における製剤は、約0.01mg/ml〜約20mg/mlのACEI、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬もしくは血管拡張薬のうちの少なくとも1つ、または任意のこれらの組合せを含む。選択できる実施形態では、製剤は滅菌され、かつ/または、安定である。他の実施形態では、製剤は保存剤を含有しない。
【0080】
他の選択できる実施形態では、本発明の方法は、治療上有効な量の血圧降下薬を含む吸入溶液を、この吸入溶液はジェットネブライザー、超音波ネブライザー、呼吸作動型ネブライザーなどを含むがこれらに限定されないネブライザーを介して投与されるのだが、それを要する哺乳類に投与する工程を含む。好ましくは、該ネブライザーは十分な空気流を伴う空気圧縮機に接続されるジェットネブライザーである。マウスピースまたは適切なフェースマスクを備えたネブライザーである。
【0081】
本発明は、哺乳類における肺高血圧を治療するためのシステムおよび/またはキットをさらなる目的とする。ある実施形態では、本発明のキットは、治療上有効な量の肺血圧降下薬を含む製剤を含む。選択できる実施形態では、製剤は、予備計量や予備混合が施され、かつ/または包装済みである。好ましくは、吸入溶液は滅菌されている。
【0082】
本発明のシステムおよび/またはキットは、利用者のコンプライアンスを促すことを意図した使用説明書をさらに含んでもよい。本明細書で用いられる使用説明書は、任意のラベル、インサート(充填物)などに言及し、そして包装材料の1箇所あるいは複数箇所の表面に置かれるか、または使用説明書は別紙で提供されるか、またはそれらの任意の組合せとして提供されてもよい。例えば、1つの実施形態では、本発明のシステムおよび/またはキットは、本発明の製剤を投与するための使用説明書を含む。1つの実施形態では、使用説明書は、本発明の製剤が肺高血圧治療に適することを示す。該使用説明書は、用量に関する使用説明書と同様にネブライザーを介した投与用の使用説明書をさらに含んでもよい。
【0083】
肺高血圧の薬物療法に対する非厳守および投薬ミスは、重要な問題であり得る。これらの問題は、肺高血圧患者に、1種または複数種の肺血圧降下薬を含む包装済みで、予備混合され、予備計量された、吸入可能な製剤を提供することによって著しく軽減できる。この方法によってこれらの化合物を提供することにより、一層便利になり、適切な用量を調製する際の混乱が排除されるために肺高血圧治療が容易になる。
【0084】
選択できる1つの実施形態では、本発明は、包装済みで、予備混合され、予備計量され、かつ/または単位用量で治療上有効な量の1種あるいは複数種の血圧降下薬を提供することによって上記問題を克服し得る。選択できる1つの実施形態では、本発明は1種または複数種の充填済み容器を含む。治療上有効な量の1種あるいは複数種の肺血圧降下薬を含む単一の単位用量の水溶液を各々含む1種あるいは複数種の容器。上記の方法で吸入溶液を提供することにより、治療上適切な用量を得るために上記薬物を希釈する、または混合させる必要を除く。さらに、特別な調局での調合も不要であり、故に投薬ミスの可能性が低下する。さらに、予備混合され、使用準備が整った状態で吸入溶液を提供する場合、交差汚染のリスクが低下し、薬物の浪費が減少する。
【0085】
本発明の他の特徴は、従来の肺高血圧治療と比較して、改善された利用者のコンプライアンスや生活の質を含む。任意の肺高血圧治療のコンプライアンスのレベルが利用者の動機づけや治療を施す個人の技量に部分的に依存する一方で、それとは対照的に治療実施の容易さや治療受診の望ましさなどの因子を制御することによってコンプライアンスの改善が可能である。
【0086】
本発明は、肺高血圧に対して便利、迅速かつ信頼できる治療を提供し、従来の肺高血圧治療を上回る改善を明確に示す。また、本発明は、肺高血圧治療に対する1種あるいは複数種の肺血圧降下薬の治療上有効な量の単一の単位用量を含む予備混合され、予備計量された吸入溶液を含む1種あるいは複数種の調剤容器を提供することにより、利用者のコンプライアンスを促すように設計されている。上記容器は肺高血圧を治療する方法において利用されてもよいし、あるいは容器は同治療用のシステムおよび/またはキットに組み込まれてもよい。
【0087】
他の実施形態では、本発明は、1種あるいは複数種の充填済み調剤容器(各容器は予備混合され、予備計量された吸入溶液を含む)を組織化しかつ格納するためのシステムおよび/またはキットを提供する。1種あるいは複数種の肺血圧降下薬における治療上有効な量の単一の単位用量を含む吸入溶液。上記システムおよび/またはキットは、包装済みの形態で上記容器を提供してもよい。1種あるいは複数種の容器は、LDPEなどの半透性プラスチックを含むがこれらに限定されないプラスチックを含んでもよい。この容器は、例えば手でタブをねじり切って容器が開くように、握りやすいタブ様のハンドルを含んだ、Twist−Flex(商標)の上端部を、さらに含んでもよい。Twist−Flex(商標)の上端部は、溶液の容易な調剤が可能になり、漏れが防止され、上端部もしくはそれに類するものを切断するかはぎとることによって、容器を開ける必要性がなくなることから、二次汚染が減少するという点で有利である。選択できる1つの実施形態では、容器の設計は米国特許第317715号、第296869号、第289609号、または第275732号(本明細書において参照として援用される)において例示される設計と実質上合致する。1種あるいは複数種の半透性の単一の単位用量の容器は、ホイルが環境汚染物質や光に対する防護障壁を提供するように、アルミホイルポーチ内に予備包装されてもよい。上記障壁は、吸入溶液の保存寿命および安定性を改善する。
【0088】
他の選択できる実施形態では、本発明は、肺高血圧を患う患者に適する包装済みの吸入システムおよび/またはキットを含む。このシステムおよび/またはキットは、(a)1種もしくは複数種の肺血圧降下薬の治療上有効な量の単一あるいは複数の単位用量;(b)肺高血圧用治療として該単位用量を使用するための投与に関する使用説明書;および(c)1種もしくは複数種の肺血圧降下薬の単一あるいは複数の単位用量を充填済みの調剤容器を含む。
【0089】
本発明の製剤は、必要に応じた成分の溶解度を得るために、本明細書で記載される成分を周囲温度もしくは高温で十分に混合させることにより、任意の従来の方法で製造され得る。
【0090】
包装材料や本明細書で提供される製剤を含有する製品は、肺高血圧と関連する疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状の治療、予防あるいは改善にとって有用であり得る。上記製品は、肺高血圧と関連する疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状の治療、予防あるいは改善に対して、その組成が使用される点を示すラベルをさらに含んでもよい。
【0091】
選択できる1つの実施形態では、本明細書で提供される製品は包装材料を含有する。製剤の包装に用いられる包装材料は当業者には周知である。製剤の包装材料の例には、ブリスター包装、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、そして選択される製剤および投与や治療に関して意図する様式に適する任意の包装材料が含まれるがこれらに限定されない。
【0092】
(実施例)
本明細書における実施例1〜4は、本発明の製剤および方法を例示する、しかし限定しない、ことを目的に提供される示唆的な実施例である。これらに対して、製剤を得る、もしくは最適化するための特定の組成への変更を行ってもよく、またはその必要がある場合があるという理解とともに提示される。以下の示唆的な実施例に対する上記変更は、必要があれば、当業者にとって標準的かつ理解可能であり、本発明を限定するのに用いられるものではない。
【0093】
示唆的な実施例1〜4は、肺高血圧を患う個人への噴霧化を介する投与に適するであろう。製剤は滅菌されていてもよい。これらの製剤の目的は、肺血圧降下薬を必要とする哺乳類(例えばヒト)への限局的送達を提供することにある。
【0094】
【表2】

【0095】
実施例1は、ACEIのエナラプリルを含有する製剤の示唆的な実施例である。張度を調節するために塩化ナトリウムが溶液に添加されてもよいし、また溶液のpHを調節するために水酸化ナトリウムが添加されてもよい。実施例1の溶液は、当業者に知られる方法によって調製され得る。
【0096】
【表3】

【0097】
実施例2は、ベータ遮断薬のアテノロールを含有する製剤の示唆的な実施例である。張度を調節するために塩化ナトリウムが溶液に添加されてもよいし、また溶液のpHを調節するために水酸化ナトリウムおよびクエン酸が添加されてもよい。
実施例2の溶液は、当業者に知られる方法によって調製され得る。
【0098】
【表4】

【0099】
実施例3は、懸濁液の形態における血管拡張薬のエポプロステノールを含有する製剤の示唆的な実施例である。Span85は乳化剤として添加されてもよい。実施例3の懸濁液は、当業者に知られる方法によって調製され得る。
【0100】
【表5】

【0101】
実施例4は、血管拡張薬のエポプロステノールを含む製剤の示唆的な実施例である。張度を調節するために塩化ナトリウムが溶液に添加されてもよいし、また溶液のpHを調節するために水酸化ナトリウムおよびクエン酸が添加されてもよい。実施例4の溶液は、当業者に知られる方法によって調製され得る。
【0102】
本明細書における図面および添付書類は、単に例示を目的に提示される。これらは本発明の範囲の限定を意図するものではない。さらに、本明細書で記載される実施形態に対する種々の変更および改良は当業者にとっては自明であることは理解されるべきである。上記の変更および改良は、本発明の技術思想および範囲から逸脱することなく、かつ発明に付随する利点を減ずることなく実行可能である。故に、上記の変更および改良は添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。さらに、本発明は、本明細書に記載される因子または工程を適切に包含しても、これらで構成されていても、またはこれらで本質的に構成されていてもよい。また、本明細書に適切に記載される発明は、本明細書で特別に開示されない任意の因子または工程を含有してもよいし、これらが存在しないで実施されてもよい。さらに、本明細書で記載される1つあるいは複数の工程は、別の工程と同時に実行されてもよい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺高血圧治療のための吸入可能製剤であって、治療上有効な量の血圧降下薬を含み、前記肺血圧降下薬はACEI、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、または血管拡張剤の少なくとも1つであり、それを必要とする哺乳動物に対して吸入による投与に適する製剤。
【請求項2】
噴霧化による投与に適する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記肺血圧降下薬を約0.001mg/mlから約20mg/ml含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記肺血圧降下薬を約0.1mg/mlから約15mg/ml含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
前記肺血圧降下薬を約1mg/mlから約10mg/ml含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項6】
前記製剤が溶液である、請求項2に記載の製剤。
【請求項7】
前記溶液が滅菌されている、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記溶液が等張である、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記溶液のpHが約3から約8である、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
前記溶液が緩衝液を含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記緩衝液が、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびクエン酸からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記製剤が水性懸濁液である、請求項2に記載の製剤。
【請求項13】
前記懸濁液が滅菌されている、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記懸濁液が乳化剤を含む、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記懸濁液が等張である、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記製剤が保存剤を含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項17】
前記製剤が保存剤を含まない、請求項2に記載の製剤。
【請求項18】
前記ACEIが、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、およびトランドラプリルからなる群の少なくとも1つである、請求項2に記載の製剤。
【請求項19】
前記ARBが、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、およびバルサルタンからなる群の少なくとも1つである、請求項2に記載の製剤。
【請求項20】
前記ベータ遮断薬が、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、カルベジロール、エスモロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、およびチモロールからなる群の少なくとも1つである、請求項2に記載の製剤。
【請求項21】
前記カルシウムチャンネル遮断薬が、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、フルナリジン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、およびベラパミルからなる群の少なくとも1つである、請求項2に記載の製剤。
【請求項22】
前記血管拡張薬が、アデニン、アルギニン、ドキサゾシン、塩酸ヒドララジン、二硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド、ミノキシジル、ニコチネート、ニトログリセリン、フェントラミン、プラゾシン、およびテラゾシンからなる群の少なくとも1つである、請求項2に記載の製剤。
【請求項23】
前記血管拡張薬が1つまたは複数のプロスタグランジンを含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項24】
前記プロスタグランジンがプロスタサイクリンまたはその類似体である、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
前記製剤が原発性肺高血圧の治療に適する、請求項2に記載の製剤。
【請求項26】
前記製剤が二次性肺高血圧の治療に適する、請求項2に記載の製剤。
【請求項27】
哺乳動物の肺高血圧を治療する方法であって、前記哺乳動物に治療上有効な量の血圧降下薬を含む製剤を投与するステップを含み、前記血圧降下薬がACEI、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、または血管拡張薬の少なくとも1つであり、前記製剤が吸入による投与に適する方法。
【請求項28】
前記製剤が噴霧化によって前記哺乳動物に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記製剤がジェットネブライザー、超音波ネブライザー、または呼吸作動型ネブライザーによって前記哺乳動物に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記製剤が予め計量され、予め混合され、予め包装されている、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記製剤が前記血圧降下薬を約0.05mg/mlから約15mg/ml含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記製剤が滅菌され、かつ安定である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記哺乳動物に抗凝固薬を投与するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物に変力作用薬を投与するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物に低流量酸素補給療法を行うステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物に利尿薬を投与するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記哺乳動物に低塩食を投与するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
哺乳動物の肺高血圧を治療するためのキットであって、治療上有効な量の血圧降下薬を含む予め包装された製剤を含み、前記血圧降下薬がACEI、ARB、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、または血管拡張薬の少なくとも1つであり、前記製剤がそれを必要とする哺乳動物に対して吸入により投与するのに適するキット。
【請求項39】
前記製剤が予め包装されている、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記製剤に関する説明書をさらに含む、請求項38に記載のキット。
【請求項41】
肺高血圧の治療のための吸入可能製剤であって、約0.2〜10.0mg/mlのエナラプリラート、(s−1−[N−(1−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニル]−L−プラリン脱水物、約2.0〜10.0mg/mlの塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、および水を含み、それを必要とする哺乳動物に対して噴霧化による投与に適する吸入可能製剤。
【請求項42】
肺高血圧の治療のための吸入可能製剤であって、約1.0〜10.0mg/mlのアテノロール、(ベンゼンアセトアミド、4−[2−ヒドロキシ−3−(1−メチルエチル)アミノプロポキシ])、約2.0〜10.0mg/mlの塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、および水を含み、それを必要とする哺乳動物に対して噴霧化による投与に適する吸入可能製剤。
【請求項43】
肺高血圧の治療のための吸入可能製剤であって、約0.1〜3.0mg/mlのエポプロステノール、約0.2〜2.0mg/mlのスパン85、および水を含み、それを必要とする哺乳動物に対して噴霧化による投与に適する吸入可能製剤。
【請求項44】
肺高血圧の治療のための吸入可能製剤であって、約0.1〜10.0mg/mlのトレプロスチニルナトリウム、約2.0〜10.0mg/mlの塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、クエン酸、および水を含み、それを必要とする哺乳動物に対して噴霧化による投与に適する吸入可能製剤。
【請求項45】
前記製剤が水性懸濁液である、請求項41から44に記載の製剤。
【請求項46】
前記懸濁液が滅菌されている、請求項45に記載の製剤。
【請求項47】
前記懸濁液のpHが約3から約8である、請求項46に記載の製剤。
【請求項48】
前記懸濁液が等張である、請求項47に記載の製剤。
【請求項49】
前記製剤が保存剤を含む、請求項48に記載の製剤。
【請求項50】
前記製剤が保存剤を含まない、請求項49に記載の製剤。

【公表番号】特表2007−519604(P2007−519604A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516000(P2006−516000)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006629
【国際公開番号】WO2005/000270
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】