説明

肺高血圧症の治療のためのロフルミラスト

本発明は、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又は両者の製剤学的に認容性の塩を、肺高血圧の処置のために用いる使用に関する。更に本発明は、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又は両者の製剤学的に認容性の塩と組み合わせて、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩を、肺高血圧症の処置のために用いる使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロフルミラスト、その製剤学的に認容性の塩、それらのN−オキシド並びにこれらのN−オキシドの製剤学的に認容性の塩を、肺高血圧症の予防的処置又は治療的処置のために用いる使用に関する。
【0002】
更に、本発明は、ロフルミラスト、その製剤学的に認容性の塩、それらのN−オキシド並びにこれらのN−オキシドの製剤学的に認容性の塩とPDE5インヒビターとの組合せ物、並びにこれらの組合せ物を含有する医薬組成物、組み合わせ製品及びキット、及び係る組合せ物を肺高血圧症の処置に用いる使用に関する。
【0003】
発明の背景
国際特許出願WO9837894号において、ホスホジエステラーゼインヒビターとアデニル酸シクラーゼアゴニスト又はグアニル酸シクラーゼアゴニストとの組合せ物は、とりわけ肺高血圧症の処置のために開示されている。国際特許出願WO9509636号において、肺高血圧症の処置方法において、被験体に、環状ヌクレオチド、ホスホジエステラーゼインヒビター、窒素酸化物前駆体、窒素酸化物供与体及び窒素酸化物類似体からなる群から選択される薬剤の有効量を気管内もしくは気管支内で投与し、それにより肺血管抵抗を低下させることを含む方法が開示されている。Cardiovasc.Rev&Rep 2002;23,pp274−279において、Martin R.Wilkins他は、肺高血圧症の処置におけるホスホジエステラーゼインヒビターの使用を再考している。Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 288:L103−L115,2005において、cAMPホスホジエステラーゼインヒビターが、低酸素肺血管リモデリングにおけるプロスタサイクリン類似体の効果を増強することが記載されている。Current Opinion in Investigational Drugs 2005 6(3),pp283−288において、Wang D他は、抗高血圧性治療のためにPDE4インヒビターを使用する新たな試みを記載している。Current Opinion in Investigational Drugs 2002 3(8)において、Peid Pは、ロフルミラストがインビボでロフルミラスト−N−オキシドへと代謝されて、それら両者の化合物は、殆どの試験条件において同様の挙動を示すことを記載している。国際特許出願WO03070279号において、PDE4インヒビターを含有する経口剤形(専ら例としては、ロフルミラストを含む組成物)であって、PDE4インヒビターの使用を通じて治療可能もしくは予防可能なあらゆる疾病、例えばCOPDの治療及び予防のための経口剤形が開示されている。
【0004】
肺高血圧症(PH)は、休息時の平均肺動脈圧(PAP)>25mmHg又は運動時の平均肺動脈圧>30mgHgによって定義される。2004年に欧州心臓学会議によって刊行された肺高血圧症の診断と治療における最新のガイドライン(Eur Heart J 25:2243−2278;2004)によれば、PHの臨床形は、(1)肺動脈高血圧(PAH)、(2)左心疾病に関連するPH、(3)肺呼吸性疾病及び/又は低酸素状態に関連するPH、(4)慢性血栓病及び/又は塞栓病によるPH、(5)他の起源(例えばサルコイドーシス)のPHとして分類される。グループ(1)は、例えば突発性かつ家族性のPAHに並んで、結合組織疾患(例えば強皮症、CREST)、先天性の全身ないし肺シャント、門脈圧亢進症、HIV、薬物及び毒物(例えば食欲不振誘発物)の摂取の状況下でのPAHを含んでいる。COPDにおいて生ずるPHは、グループ(3)に属していた。小さい(500μm未満の直径の)肺細動脈の筋化は、PAHの生理学的な共通項(グループ1)として広く認められているが、COPD又は血栓病及び/又は塞栓病に基づくような他のPHの形においても起こりうる。PHにおける他の病理解剖学的特徴は、(筋)線維芽細胞又は平滑筋細胞の移動及び増殖と細胞外マトリクスの過剰発生とに基づく血管内膜の肥厚、内皮損傷及び/又は内皮増殖、及び血管周囲炎症性の細胞浸潤である。共に、遠位の肺動脈血管系のリモデリングは、増強された肺血管抵抗、続発性の左心不全及び死を引き起こす。経口による抗凝固薬、利尿薬、ジゴキシン又は酸素の供給のようなバックグラウンド療法とより一般的な措置は、依然として最新のガイドラインに列記されている一方で、これらの対応策は、肺動脈リモデリングの原因又はメカニズムを妨害することは期待されない。幾らかのPAH患者は、Ca++アンタゴニスト、特に血管拡張薬に急激に反応を示すものの恩恵を得ることもある。過去十年間にわたり開発された革新的な治療的試みは、分子異常、特に増強されたエンドセリン−1形成、低減されたプロスタサイクリン(PGI2)発生、そしてPAH血管系におけるeNOS活性障害を考慮していた。ETA受容体を介して作用するエンドセリン−1は、肺動脈性の平滑筋細胞にとって有糸分裂促進性であり、かつ急激な血管収縮を誘発する。経口用のETA/ETB−アンタゴニストであるボセンタンは、該化合物が平均PAP、PVR又は6分間歩行テストのような臨床エンドポイントで改善が裏付けられた後に、最近になって欧州と米国においてPAHの治療のために承認された。しかしながら、ボセンタンは肝酵素を増やし、かつ常用の肝臓テストが義務づけられている。近年において、選択的なETAアンタゴニスト、例えばシタキセンタン又はアンブリセンタンは、綿密な調査段階にある。
【0005】
PAHの管理におけるもう一つの戦略としては、不足したプロスタサイクリンをPGI2類似体、例えばエポプロステノール、トレプロスチニル、経口のベラプロスト又はイロプロストによって置き換えることが浮上している。プロスタサイクリンは、血管性の平滑筋細胞の過剰の有糸分裂促進に歯止めをかけて、cAMP発生の増大に作用する働きがある。静脈内のプロスタサイクリン(エポプロステノール)は、突発性の肺高血圧症における生存率並びに運動能を著しく高め、北米と幾つかの欧州の国々で1990年代半ばに承認されている。しかしながら、その短い半減期のゆえに、エポプロステノールは、連続的な静注を介して投与する必要があり、それは可能であっても心地よいものではなく、煩雑かつ費用のかかるものである。更に、プロスタサイクリンの全身作用のため不利な事象が頻繁に起こる。代替的なプロスタサイクリン類似体は、トレプロスチニル(これは最近になって米国でPAH治療のために承認され、そしてそれは連続的な皮下注入を介して送達される)及びベラプロスト(これは初めての生物学的に活性かつ経口で活性のPGI2類似体であり、日本でPAHの治療のために承認されている)である。その治療プロフィールは、他の形態の肺高血圧症と比較して突発性のPAHを伴う患者においてより好ましいとされ、ベラプロスト投与後の全身性の血管拡張に結びついた副作用とトレプロスチニル治療下の点滴部位での局所的な痛みが頻繁にある。プロスタサイクリン類似体であるイロプロストの吸入経路を介した投与は、欧州において近年に承認された。その運動能と血行動態パラメータに対する有利な作用は、好適な機器から1日あたり6〜12コースの吸入を含むかなり高頻度の投与と均衡を保つべきである。
【0006】
肺動脈高血圧で報告されるような内皮での窒素酸化物形成の障害の機能的な結果は、肺動脈性の平滑筋細胞において発現されるホスホジエステラーゼ−5(PDE5)の選択的インヒビターによって克服することができる。従って、選択的PDE5インヒビターであるシルデナフィルは、肺の血行動態及び運動能をPAHにおいて改善することが裏付けられた。
【0007】
これらの新規の治療の殆どは、主として平滑筋細胞機能に向けたものであるが、肺血管線維芽細胞、内皮細胞の他にも、血管周囲マクロファージとTリンパ球が、肺高血圧症の進行に寄与することが考えられる。
【0008】
前記の種々の治療的試みにもかかわらず、肺高血圧症において疾病負荷を改善する医学的必要性は高い。従って本発明の課題は、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための医薬組成物であって、前記の欠点の幾つかもしくは全てを克服した医薬組成物を利用可能にすることである。
【0009】
発明の開示
肺高血圧症の処置は、驚くべきことに、式1.1
【化1】

の化合物もしくはその製剤学的に認容性の塩及び/又は式1.2
【化2】

の化合物もしくはその製剤学的に認容性の塩を使用することによって達成できる。
【0010】
式1.1の化合物は、国際一般名称(INN)でロフルミラスト[3−シクロプロピル−メトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリジ−4−イル)ベンザミド]を有する。
【0011】
式1.2の化合物は、ロフルミラスト−N−オキシド[3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリジン−4−イル)ベンザミド]である。
【0012】
ロフルミラスト、その製剤学的に認容性の塩及びそのN−オキシドの製造並びにPDE4インヒビターとしてのこれらの化合物の使用は、国際特許出願WO9501338号に記載されている。
【0013】
式1.1及び式1.2の化合物の"製剤学的に認容性の塩"という用語の範囲内に含まれる塩は、遊離塩基と好適な有機酸もしくは無機酸とを反応させるか、又は該酸と好適な有機塩基もしくは無機塩基とを反応させることによって一般的に製造される無毒の化合物の塩を指す。薬学で慣用に使用される製剤学的に認容性の無機酸及び有機酸のそれが特に挙げられる。これらの好適な塩は、特に、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、D−グルコン酸、安息香酸、2−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、エンボン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又は1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のような酸との水溶性及び水不溶性の付加塩である。塩基との製剤学的に認容性の塩の一例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、チタン塩、アンモニウム塩、メグルミン塩又はグアニジニウム塩を挙げることができる。
【0014】
式1.1及び式1.2の化合物並びにそれらの製剤学的に認容性の塩は、それらの製剤学的に認容性の溶媒和物の形、特にその水和物の形で存在してもよいと解されるべきである。
【0015】
本願で使用される表現"肺高血圧症"は、種々の形の肺高血圧症を含む。この関連で挙げることができる制限されない例は、突発性の肺動脈高血圧症;家族性の肺動脈高血圧症;膠原血管病、先天性の全身ないし肺シャント、門脈圧亢進症、HIV感染、薬物もしくは毒物に関連する肺動脈高血圧症;甲状腺疾患、糖原病、ゴシェ病、遺伝性出血性毛細管拡張症、異常ヘモグロビン症、骨髄増殖性疾患もしくは脾臓除去術に関連する肺高血圧症;肺毛細血管腫症に関連する肺動脈高血圧症;新生児の持続性肺高血圧症;慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、低酸素状態により引き起こされる肺胞性低換気疾患、低酸素状態により引き起こされる睡眠障害性呼吸もしくは高標高への慢性的な暴露に関連する肺高血圧症;異常発生に関連する肺高血圧症;並びに遠位の肺動脈の塞栓性の閉塞による肺高血圧症である。
【0016】
用語"有効量"とは、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための式1.1の化合物もしくは式1.2の化合物の治療学的に有効な量を指す。組合せ療法の場合には、用語"有効量"は、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置についての治療学的に有効である組み合わせ相手同士の量の合計を指す。
【0017】
"患者"は、ヒトと他の哺乳動物の両方を含む。
【0018】
ここで、ロフルミラストは、ラットにおいて低酸素状態もしくはモノクロタリンによって誘発された慢性肺高血圧症において、肺動脈血圧(PAP)と、右心室肥厚と、遠位筋化とを、全身の動脈圧と心拍数に影響を及ぼさずに低下させることが判明した。
【0019】
このように、本発明の第一の一態様は、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド並びにロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物を、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための医薬組成物の製造のために用いる使用である。
【0020】
第二の一態様において、本発明は、患者において肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置をするための方法において、それを必要とする前記患者に、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0021】
前記のように、本願で使用される表現"肺高血圧症"は、種々の形の肺高血圧症を含む。従って、本発明のもう一つの態様は、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物を、突発性の肺動脈高血圧症;家族性の肺動脈高血圧症;膠原血管病、先天性の全身ないし肺シャント、門脈圧亢進症、HIV感染、薬物もしくは毒物に関連する肺動脈高血圧症;甲状腺疾患、糖原病、ゴシェ病、遺伝性出血性毛細管拡張症、異常ヘモグロビン症、骨髄増殖性疾患もしくは脾臓除去術に関連する肺高血圧症;肺毛細血管腫症に関連する肺動脈高血圧症;新生児の持続性肺高血圧症;慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、低酸素状態により引き起こされる肺胞性低換気疾患、低酸素状態により引き起こされる睡眠障害性呼吸もしくは高標高への慢性的な暴露に関連する肺高血圧症;異常発生に関連する肺高血圧症;並びに遠位の肺動脈の塞栓性の閉塞による肺高血圧症の群から選択される肺高血圧症の形の予防的処置もしくは治療的処置のための医薬組成物の製造のために用いる使用である。
【0022】
更なるもう一つの態様においては、本発明は、患者における、肺高血圧症の形の予防的処置もしくは治療的処置のための方法において、それを必要とする前記患者に、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の有効量を投与することを含み、その際、肺高血圧症の症状発現が、突発性の肺動脈高血圧症;家族性の肺動脈高血圧症;膠原血管病、先天性の全身ないし肺シャント、門脈圧亢進症、HIV感染、薬物もしくは毒物に関連する肺動脈高血圧症;甲状腺疾患、糖原病、ゴシェ病、遺伝性出血性毛細管拡張症、異常ヘモグロビン症、骨髄増殖性疾患もしくは脾臓除去術に関連する肺高血圧症;肺毛細血管腫症に関連する肺動脈高血圧症;新生児の持続性肺高血圧症;慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、低酸素状態により引き起こされる肺胞性低換気疾患、低酸素状態により引き起こされる睡眠障害性呼吸もしくは高標高への慢性的な暴露に関連する肺高血圧症;異常発生に関連する肺高血圧症;並びに遠位の肺動脈の塞栓性の閉塞による肺高血圧症の群から選択される方法に関する。
【0023】
ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれの製剤学的に認容性の塩は、治療が必要な患者に、当該技術分野で利用できる一般に許容される任意の投与様式で投与することができる。適当な投与様式の概略的な例は、経口、静脈内、経鼻、非経口、経皮及び直腸内での送達並びに吸引による投与である。ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれかの製剤学的に認容性の塩の最も好ましい投与様式は、経口である。もう一つの好ましい実施態様においては、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれかの製剤学的に認容性の塩は、静脈内注入又は注射によって投与される。更なる一実施態様においては、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれの製剤学的に認容性の塩は、吸入によって投与される。
【0024】
典型的に、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれかの製剤学的に認容性の塩は、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれかの製剤学的に認容性の塩と、少なくとも1種の製剤学的に認容性の助剤とを組み合わせて含有する医薬組成物の形態で投与される。
【0025】
該医薬組成物は、自体公知の方法及び当業者に公知の方法によって製造される。医薬組成物として、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれかの製剤学的に認容性の塩は、それ自体でか、又は有利には少なくとも1種の製剤学的に認容性の助剤と組み合わせてか、のいずれかで、例えば錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、カプレット剤、坐剤、エマルジョン剤、懸濁液剤、ゲル剤又は液剤の形態で使用され、その際、有効化合物の含有率は、有利には、0.1〜99.9質量%、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは20〜80質量%であり、かつ助剤の適切な選択によって、有効化合物及び/又は所望の作用開始に正確に適合された医薬品投与形(例えば除放形又は腸溶形)を達成することができる。
【0026】
当業者はその専門知識により所望の医薬品製剤に適した助剤に精通している。製剤学的に認容性の助剤として、医薬組成物の製造に適していることが知られる任意の助剤を使用することができる。その例は、これらに制限されないが、溶剤、賦形剤、分散剤、乳化剤、溶解剤、ゲル形成剤、軟膏基剤、酸化防止剤、保存剤、安定剤、担体、充填剤、結合剤、増粘剤、錯形成剤、崩壊剤、緩衝剤、透過促進剤、ポリマー、滑沢剤、被覆剤、噴射剤、浸透圧調整剤、界面活性剤、着色剤、フレーバー、甘味料及び色素を含む。特に、所望の配合及び所望の投与様式に適した型の助剤が使用される。
【0027】
ロフルミラスト及びロフルミラスト−N−オキシドの好適な剤形は、国際特許出願WO0370279号に記載されている。
【0028】
またロフルミラスト又はロフルミラスト−N−オキシドは、エーロゾルの形で投与することもでき、その際、固体、液体又は混合組成のエーロゾル粒子は0.5〜10μm、有利には2〜6μmの直径を有する。エーロゾルの発生は、例えば圧力駆動のジェット噴霧器又は超音波噴霧器によるか、噴射剤駆動の定量噴霧式エーロゾルによるか、又は吸入カプセルからの微粉化有効化合物の噴射剤不使用の投与によって実施できる。
【0029】
使用される吸入系に依存して、有効化合物の他に該投与形は付加的に所望の助剤、例えば噴射剤(例えば定量噴霧式エーロゾルの場合にFrigen)、界面活性剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、フレーバー又は増量剤(例えば粉末吸入器の場合にラクトース)又は、適宜更なる有効化合物を含有する。
【0030】
吸入の目的のために、多くの装置を利用でき、それを用いて最適な粒度を有するエーロゾルを発生させ、かつ患者にできる限り正しい吸入技術を使用して投与できる。アダプタ(スペーサ、エキスパンダ)及び洋ナシ型容器(例えばNebulator(登録商標)、Volumatic(登録商標))並びに計量供給エーロゾルのための、特に粉末吸入器の場合に吹き付け噴霧(puffer spray)を放出する自動装置(Autohaler(登録商標))を使用する他に、種々の技術的解決策(例えばDiskhaler(登録商標)、Rotadisk(登録商標)、Turbohaler(登録商標)又はEP0505321号に記載される吸入器)が利用でき、それを用いて有効化合物の最適な投与を達成できる。
【0031】
有効化合物の最適用量は、患者の体重、年齢及び全身状態並びにその患者の有効化合物に対する応答挙動に相関して変化しうることは当業者に知られている。
【0032】
3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)を経口投与する場合に、日用量(成人患者について)は、有利には一日一回投与によって、50〜1000μgの範囲内、有利には50〜500μgの範囲内、より有利には250〜500μgの範囲内である。
【0033】
3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)を静脈内投与する場合に、日用量(成人患者について)は、50〜500μgの範囲内、有利に150〜300μgの範囲内である。
【0034】
肺高血圧症の治療のために、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド又はロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩を、PDE5インヒビター又はそれらの製剤学的に認容性の塩と組み合わせて投与してもよい。
【0035】
本発明によりロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド又はロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩と組み合わせて使用できるPDE5インヒビターの制限されない例を、以下の第1表に示す。
【0036】
第1表:
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
従って本発明の更なる対象は、以下のものである:
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩の量と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩の量とを含み、第一の量と第二の量とが、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための有効量を成す組成物。
【0040】
本発明のもう一つの態様は、前記の組成物を、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置において用いる使用を提供する。
【0041】
本発明の更なるもう一つの態様は、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド並びにロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物を、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩と組み合わせて、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための医薬組成物、組み合わせ製品又はキットの製造のために用いる使用を提供する。
【0042】
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド又はロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩とは、同時に、連続的にもしくは別々に投与することができる。これを行うために、組み合わされる有効化合物を、単独の製剤(医薬組成物)に、又は別々の製剤(組み合わせ製品又はキット)に製剤化することができる。
【0043】
従って、本発明の更なる一態様によれば、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の量と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩とを含み、その際、第一の量と第二の量とが、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための有効量を成し、かつ少なくとも1つの製剤学的に認容性の助剤を含む医薬組成物が提供される。
【0044】
前記の医薬組成物は、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド又はロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩を、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩と混合して投与するために提供し、従って単一製剤として表される。
【0045】
選択的に、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシドもしくはロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩とは、別々の製剤として表されてよく、その際、これらの製剤の少なくとも1つは、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシドもしくはロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩を含み、かつ少なくとも1つは、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩を含む。
【0046】
こうして更に以下のものが提供される:
成分(A)ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の量;(B)PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩の量を含む組み合わせ製品であって、第一の量と第二の量とが、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための有効量を成し、かつ成分(A)と(B)のそれぞれは、少なくとも1つの製剤学的に認容性の助剤と混合して配合される組み合わせ製品。
【0047】
成分(A)ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の量を、少なくとも1つの製剤学的に認容性の助剤と混合して含む医薬製剤;(B)PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩の量を、少なくとも1つの製剤学的に認容性の塩と混合して含む医薬製剤を含むキットであって、第一の量と第二の量とが一緒になって、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための有効量を成すキット。
【0048】
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド又はロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩とPDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩との同時の投与は、肺高血圧症の治療を必要とする患者に、本発明による医薬組成物を、1つの剤形において、例えば単一のカプセル剤、錠剤もしくは注射において投与することによって達成することができる。
【0049】
組み合わせ製品並びにキットの成分(A)及び(B)は、肺高血圧の処置の経過において連続的にもしくは別々に投与することができる。
【0050】
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド又はロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩とPDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩との連続的もしくは別々の投与は、肺高血圧症の治療を必要とする患者に、本発明による組み合わせ製品もしくはキットの成分(A)と(B)を、(複数の)別々の剤形において、例えば別々のカプセル剤、錠剤もしくは注射において投与することによって達成することができる。
【0051】
選択的に、成分(A)と(B)の一方を、錠剤又はカプセル剤として製剤化し、そして他方の成分を、例えば注射又は吸入による投与のために製剤化することができる。
【0052】
連続的な投与は、本発明による組み合わせ製品もしくはキットの成分(A)と(B)の投与の間に短期間(例えば、一方の錠剤をもう一方の後に嚥下するのに必要な時間)を含む。
【0053】
別々の投与は、本発明による組み合わせ製品もしくはキットの成分(A)と(B)の投与の間に比較的短期間と比較的長時間の両者を含む。
【0054】
しかしながら、本発明の目的のためには、少なくとも1種の成分は、他の成分が治療される患者に依然として作用を有する間に投与される。本発明の好ましい一実施態様においては、治療される患者に対する作用は、相乗作用である。
【0055】
ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩とPDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩との組み合わせ投与は、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品もしくはキットのいずれの形においても、肺高血圧症の効果的な治療をもたらし、かつ有利な一実施態様においてはそれぞれの剤を単独で使用することが優れている。更に、特に好ましい一実施態様においては、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩又はロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩との組み合わせ投与は、肺高血圧症の治療について相乗的作用を示す。
【0056】
本願で使用される場合に、用語"相乗的"とは、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド又はロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩とを、本発明による医薬組成物か、組み合わせ製品か、又はキットのいずれかの形で組み合わせることで、肺高血圧症の治療について、それらの個々の作用の合計から予測されるより大きな効果を有することを指す。本発明の実施態様の相乗的作用は、肺高血圧症の治療に予測されない付加的な利点を含む。係る付加的な利点は、これらに制限されないが、組合せ物の1種以上の有効化合物に必要な用量の低下、組合せ物の1種以上の有効化合物の副作用の軽減、又は肺高血圧症の治療が必要な患者に対する1種以上の有効化合物のより高い許容性の付与を含む。
【0057】
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド又はロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩とを組み合わせて投与することは、また、別々の投与に必要な回数を低減させるのに有用であり、こうして肺高血圧症の治療が必要な患者のコンプライアンスを潜在的に向上させることがある。
【0058】
本発明の更なる一態様は、本発明による医薬組成物、医薬組合せ物又はキットを、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置用の薬剤の製造のために用いる使用である。
【0059】
本発明のなおも更なる一態様は、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置をするための方法において、それを必要とする患者に、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の量と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩とを含み、その際、第一の量と第二の量とが一緒になって、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための有効量を成し、かつ少なくとも1つの製剤学的に認容性の助剤を含む医薬組成物を投与することを含む方法である。
【0060】
本発明のもう一つの態様は、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置をするための方法において、それを必要とする患者に、成分(A)ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の量、(B)PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩の量を含み、その際、第一の量と第二の量とが一緒になって、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための有効量を成し、成分(A)と(B)のそれぞれが、少なくとも1つの製剤学的に認容性の助剤と混合して製剤化されており、かつ成分(A)と(B)とが連続的にもしくは別々に投与される組み合わせ製品を投与することを含む方法である。
【0061】
既に上述のように、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品及びキットにおいて有用に使用できるPDE5インヒビターの制限されない例を、第1表に列記する。
【0062】
本発明の一実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットにおいて使用されるPDE5インヒビターは、シルデナフィル(CAS番号139755−83−2)、タダラフィル(CAS番号171596−29−5)、バルデナフィル(CAS番号224785−90−4)、UK−343664(CAS番号215297−27−1)、UK−357903(CAS番号247580−98−9)、UK−371800(CAS番号247582−13−4)、アバナフィル(CAS番号330784−47−9)、ベミナフィル(BEMINAFIL)(CAS番号566906−50−1)、ダサンタフィル(DASANTAFIL)(CAS番号405214−79−1)、ウデナフィル(CAS番号268203−93−6)、BMS−341400(CAS番号405214−79−1)及びこれらの化合物の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される。
【0063】
本発明の一実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットで使用されるPDE5インヒビターは、シルデナフィル又はその製剤学的に認容性の塩である。
【0064】
本発明のもう一つの実施態様においては、シルデナフィルの製剤学的に認容性の塩は、シルデナフィルのヘミクエン酸塩、クエン酸塩又はメシル酸塩である。
【0065】
本発明のもう一つの実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットで使用されるPDE5インヒビターは、タダラフィル又はその製剤学的に認容性の塩である。
【0066】
本発明のもう一つの実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットで使用されるPDE5インヒビターは、バルデナフィル又はその製剤学的に認容性の塩である。
【0067】
本発明のもう一つの実施態様においては、バルデナフィルの製剤学的に認容性の塩は、バルデナフィルの一塩酸塩もしくは二塩酸塩である。
【0068】
本発明のもう一つの実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットで使用されるPDE5インヒビターは、UK−343664又はその製剤学的に認容性の塩である。
【0069】
本発明のもう一つの実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットで使用されるPDE5インヒビターは、UK−357903又はその製剤学的に認容性の塩である。
【0070】
本発明のもう一つの実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットで使用されるPDE5インヒビターは、UK−371800又はその製剤学的に認容性の塩である。
【0071】
本発明のもう一つの実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットで使用されるPDE5インヒビターは、アバナフィル又はその製剤学的に認容性の塩である。
【0072】
本発明のもう一つの実施態様においては、アバナフィルの製剤学的に認容性の塩は、アバナフィルのベシル酸塩である。
【0073】
本発明のもう一つの実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットで使用されるPDE5インヒビターは、ベミナフィル又はその製剤学的に認容性の塩である。
【0074】
本発明のもう一つの実施態様においては、ベミナフィルの製剤学的に認容性の塩は、ベミナフィルのナトリウム塩又はエタノールアミン塩である。
【0075】
本発明のもう一つの実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットで使用されるPDE5インヒビターは、ダサンタフィル又はその製剤学的に認容性の塩である。
【0076】
本発明のもう一つの実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットで使用されるPDE5インヒビターは、ウデナフィル又はその製剤学的に認容性の塩である。
【0077】
本発明のもう一つの実施態様においては、本発明による医薬組成物、組み合わせ製品又はキットで使用されるPDE5インヒビターは、BMS−341400又はその製剤学的に認容性の塩である。
【0078】
第1表中に列記されたPDE5インヒビターの製造、好適な剤形及び用量範囲に関する付加的な情報は、以下の特許/特許出願:EP0463756号、W02004072079号、EP1097711号、EP0967214号、EP1049695号、W003011262号、EP0740668号、W09849166号、EP1073658号、W09954333号、EP1219609号、W09955708号、W00224698号、W00027848号及びEP1165521号に見出すことができる。
【0079】
PDE5インヒビターの"製剤学的に認容性の塩"は、前記の例に限定されるものではない。その用語は、これらの化合物の非毒性の塩を指す。これらの製剤学的に認容性の塩は、一般に、遊離塩基と好適な有機もしくは無機の酸とを反応させるか、又は酸と好適な有機もしくは無機の塩基とを反応させることによって製造される。薬学で慣用に使用される製剤学的に認容性の無機酸及び有機酸のそれが特に挙げられる。これらの好適な塩は、特に、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、D−グルコン酸、安息香酸、2−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、エンボン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又は1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のような酸との水溶性及び水不溶性の付加塩である。塩基との製剤学的に認容性の塩の一例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、チタン塩、アンモニウム塩、メグルミン塩又はグアニジニウム塩を挙げることができる。
【0080】
PDE5インヒビター及びそれらの製剤学的に認容性の塩は、それらの製剤学的に認容性の溶媒和物の形、特にそれらの水和物の形で存在してもよいと解されるべきである。
【0081】
組合せ物の投与様式、剤形及び用量:
本発明による組合せ物は、治療が必要な患者に、当該技術分野で利用できる一般に許容される任意の投与様式で投与することができる。適当な投与様式の概略的な例は、経口、静脈内、経鼻、非経口、経皮及び直腸内での送達並びに吸引による投与である。
【0082】
経口投与のためには、錠剤、被覆錠剤(糖剤)、丸剤、カシェ剤、カプセル剤(カプレット剤)、顆粒剤、液剤、エマルジョン剤及び懸濁液剤が、例えば適している。特に、前記の製剤は、例えば腸溶形、速放形、遅延放出形、反復投与放出形、持続放出形又は徐放形であるように適合させることができる。前記の剤形は、例えば錠剤の被覆によって、異なる条件(例えばpH条件)下に崩壊する層により分離された幾つかのコンパートメントに錠剤を分けることによって、又は有効化合物と生分解性ポリマーとを組み合わせることによって得ることができる。
【0083】
吸入による投与は、有利にはエーロゾルを用いることによってなされる;固体、液体又は混合組成のエーロゾル粒子は0.5〜10μm、有利には2〜6μmの直径を有する。エーロゾルの発生は、例えば圧力駆動のジェット噴霧器又は超音波噴霧器によるか、噴射剤駆動の定量噴霧式エーロゾルによるか、又は吸入カプセルからの微粉化有効化合物の噴射剤不使用の投与によって実施できる。
【0084】
使用される吸入系に依存して、有効化合物の他に該投与形は付加的に所望の助剤、例えば噴射剤(例えば定量噴霧式エーロゾルの場合にFrigen)、界面活性剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、フレーバー又は増量剤(例えば粉末吸入器の場合にラクトース)又は、適宜更なる有効化合物を含有する。
【0085】
吸入の目的のために、多くの装置を利用でき、それを用いて最適な粒度を有するエーロゾルを発生させ、かつ患者にできる限り正しい吸入技術を使用して投与できる。アダプタ(スペーサ、エキスパンダ)及び洋ナシ型容器(例えばNebulator(登録商標)、Volumatic(登録商標))並びに計量供給エーロゾルのための、特に粉末吸入器の場合に吹き付け噴霧(puffer spray)を放出する自動装置(Autohaler(登録商標))を使用する他に、種々の技術的解決策(例えばDiskhaler(登録商標)、Rotadisk(登録商標)、Turbohaler(登録商標)又はEP0505321号に記載される吸入器)が利用でき、それを用いて有効化合物の最適な投与を達成できる。
【0086】
ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれの製剤学的に認容性の塩及び/又はPDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩及び少なくとも1つの製剤学的に認容性の助剤を含有する医薬組成物(製剤)は、当業者に公知のようにして、例えば溶解、混合、造粒、糖剤製造、湿式粉砕、乳化、カプセル化、閉じ込め又は凍結乾燥の方法によって製造することができる
製剤学的に認容性の助剤として、医薬組成物(製剤)の製造に適していることが知られる任意の助剤を使用することができる。その例は、これらに制限されないが、溶剤、賦形剤、分散剤、乳化剤、溶解剤、ゲル形成剤、軟膏基剤、酸化防止剤、保存剤、安定剤、担体、充填剤、結合剤、増粘剤、錯形成剤、崩壊剤、緩衝剤、透過促進剤、ポリマー、滑沢剤、被覆剤、噴射剤、浸透圧調整剤、界面活性剤、着色剤、フレーバー、甘味料及び色素を含む。特に、所望の配合及び所望の投与様式に適した型の助剤が使用される。
【0087】
静脈内投与のためには、有利には溶液(例えば滅菌溶液、等張性溶液)が使用される。
【0088】
本発明による組合せ物の好ましい投与様式は、特定の組み合わせ相手に依存する。
【0089】
前記のように、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれかの製剤学的に認容性の塩は、種々の形態で投与することができる。これらの形態には、例えば液状、半固形及び固形の投与形、例えば液状溶液(例えば注入可能な溶液及び浸剤を作りうる溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸剤、粉剤、リポソーム又は坐剤が含まれる。有利な形態は、意図される投与様式と組み合わせ相手に依存する。
【0090】
ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれかの製剤学的に認容性の塩の最も好ましい投与様式は、経口である。もう一つの好ましい実施態様においては、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれかの製剤学的に認容性の塩は、静脈内注入又は注射によって投与される。更なる一実施態様においては、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれの製剤学的に認容性の塩は、吸入によって投与される。
【0091】
本発明による組合せ物で使用されるPDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩は、当該技術分野で利用できる認められた任意の投与様式で投与することもできる。PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩の好ましい投与様式は、経口である。
【0092】
シルデナフィルのクエン酸塩は、シルデナフィルの経口投与のために好ましい塩であるが、他の製剤学的に認容性の塩を使用してもよい。シルデナフィルは、吸入によって投与することもできる。吸入による投与のために好ましいシルデナフィルの製剤は、エーロゾルネブライザもしくはアトマイザで使用するためのシルデナフィルメシル酸塩の水性製剤を含む。
【0093】
本発明による組合せ療法の部分として、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれかの製剤学的に認容性の塩と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩は、単独療法に慣用のオーダーで投薬され、その際、恐らくは、個々の作用であって、互いに良い影響を及ぼしかつ強化する作用のため、ロフルミラスト、ロフルミラスト−N−オキシド又はいずれかの製剤学的に認容性の塩と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩との組合せ投与においてそれぞれの用量を通常と比較して低下させることができる。
【0094】
前記のように、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)を経口投与する場合に、日用量(成人患者について)は、有利には一日一回投与によって、50〜1000μgの範囲内、有利には50〜500μgの範囲内、より有利には250〜500μgの範囲内である。3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリジ−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)を静脈内投与する場合に、日用量(成人患者について)は、1日あたり50〜500μgの範囲で、有利には1日あたり150〜300μgの範囲である。
【0095】
ヒトの患者への経口及び非経口の投与のためには、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩の日用量レベル(成人患者について)は、通常は、1〜500mgの範囲内、有利には1〜200mgの範囲内、より有利には1〜100mgの範囲内(単独投与もしくは分けた投与において)である。
【0096】
PDE5インヒビターであるタダラフィル、バルデナフィル及びシルデナフィルの場合に、その日用量レベル(成人患者について)は、有利には100mgまで、より有利には50mgまで、より有利には20mgまで(単独投与もしくは分けた投与において)である。
【0097】
シルデナフィルの場合に、肺高血圧症の治療のために最近承認された用量は、一日三回で20mgのシルデナフィル(シルデナフィルクエン酸塩を含有する経口錠剤の形で)である。
【0098】
第2表:好ましい組み合わせ
【表4】

【0099】
【表5】

【0100】
薬理学
ラットにおける低酸素状態もしくはモノクロタリンによって誘発された慢性肺高血圧症での、PDE4インヒビターであるロフルミラストによる、肺動脈血圧(PAP)と、右心室肥厚と、遠位筋化の低下
目的
薬理学的調査の目的は、ロフルミラストを0.5mgkg-1-1及び1.5mgkg-1-1で経口投与することによってもたらされる、ラットにおける平均PAPとRV/LV+S比における増大並びに慢性的な低酸素状態もしくはモノクロタリン(MCT)により誘発される遠位の細動脈筋化の増大に対する効果を特徴付けることであった。ラットにおける低酸素状態もしくはMCTにより誘発される肺高血圧症は、肺血管リモデリングを基礎とする慢性肺高血圧症を改善する調査薬の効力を調査するために広く認められた動物モデルを表す。MCT設定において、ロフルミラストを、予防的及び治療的な範例の両方において投与した。
【0101】
動物
実験は、国別仕様と国際仕様を遵守した機関内ガイドラインに従って成体の雄のWistarラット(200〜250g)で実施した。
【0102】
慢性低酸素肺高血圧症
ラットを、通風チャンバ(500リットル容量、Flufrance、フランス・カシャン在)中で慢性低酸素状態(10%O2)に曝した。低酸素環境を確立するために、該チャンバを、室内空気と窒素の混合物でフラッシングし、そしてそのガスを再循環させた。チャンバ内の環境を、酸素アナライザ(Oxiquant M、EnviTeC−Wismar、ドイツ)を用いてモニタリングした。二酸化炭素を、自己指示性の(self−indicating)ソーダ石灰顆粒によって除去した。過剰の湿分を、再循環回路の冷却によって防止した。チャンバ温度を、22〜24℃に保持した。チャンバを、一日おきに1時間にわたり解放し、ケージを掃除して、餌と水の供給を補充した。常酸素の対照ラットは、同じ部屋で同一の明暗サイクルで保った。慢性低酸素に曝したラットを、無作為に3つのグループ(1グループあたり8〜10頭の動物)に割り当てた:第一のグループは、ロフルミラストを0.5mgkg-1-1で受けている、第二のグループは、ロフルミラストを1.5mgkg-1-1で受けている、第三のグループは、ビヒクル(メトセル)を受けている。低酸素に曝していないグループを、対照群として供した。ロフルミラスト又はビヒクルを、低酸素への暴露15日間にわたって強制栄養によって一日一回投与した。
【0103】
モノクロタリン(MCT)に誘導される肺高血圧症
ラットを、無作為に、3つのグループ(それぞれのグループに8〜10頭の動物)に割り当てた:それぞれ0.5mgkg-1-1及び1.5mgkg-1-1を受けた2つのグループと、ビヒクルを受けた1つのグループ。予防的処理の範例において、ロフルミラスト又はビヒクルを、MCTの単独の皮下注入(60mgkg-1)直後に開始して21日間にわたり強制栄養によって一日一回与えた。MCTを受けていないグループを、対照群として供した。
【0104】
治療的試みにおいては、ラットをMCT(60mg/kg、皮下)後21日間にわたり未処置とし、次いで無作為に2つのグループに分けた。21日目から42日目において、一方のグループは、ロフルミラスト(1.5mg/kg/d)を経口で受け、もう一方のグループは、ビヒクルを受けている。
【0105】
肺高血圧症の評価
治療期間の最後に、ラットをナトリウムペントバルビタール(60mg/kg、腹腔内)で麻酔した。ポリビニル製カテーテルを右頚静脈中に導入し、右心室を通じて肺動脈中に押し入れた。もう一つのポリエチレン製カテーテルを、右頸動脈中に挿入した。肺動脈血圧(PAP)と全身動脈血圧(SAP)を測定した後に、胸郭を開き、左肺を直ちに取りだして、液体窒素中で凍結させた。心臓を解剖し、右心室肥厚インデックス(右心室自由壁質量を、中隔と左心室自由壁の質量の和で除した比率;RV/LV+S)の計算のために秤量した。右肺を、膨張状態でホルマリン緩衝液により固定した。決まり切った処理とパラフィン埋包の後に、各肺葉からの複数の切片をヘモトキシリンとエオシンで染色した。各ラットにおいて、60の肺胞内動脈を解析し、筋化の程度の評価のために筋肉性(完全もしくは部分的に)又は非筋肉性として分類した。更に、肺胞内の完全に筋化した動脈を評価して、内側壁厚を測定し、それは以下のように計算され、表現される:インデックス(%)=(外径−内径)/外径×100%。
【0106】
統計分析
データは、平均±SEMとして表現される。2つのグループ間の比較のために、ノンパラメトリックのマン・ホイットニー検定を使用した。MCT注入後に様々な回数でデータを比較すること又は様々な治療グループを比較することは、ノンパラメトリックのクラスカル・ウォリス検定を使用し、有意差がある場合にダン検定を引き続き行った。グループ間での肺血管筋化の程度を比較するために、血管を非筋肉性、部分筋肉性もしくは完全筋肉性として順序的分類をした後に、ノンパラメトリックのマン・ホイットニー検定又はクラスカル・ウォリス検定を使用した。
【0107】
結果
慢性低酸素性の肺高血圧症の発生に対するロフルミラストの作用
15日間にわたり慢性低酸素状態に曝したラットは、右心室肥厚と関連した肺高血圧症を発生し、それは平均肺動脈血圧(平均PAP)及びRV/LV+S比の増加によって反映されている。選択的PDE4インヒビターであるロフルミラストは、慢性低酸素状態により増強された平均PAPを、0.5mgkg-1-1と1.5mgkg-1-1の両方で(ビヒクルに対してp<0.05)、用量に依存した様式で低下させた(第3表)。全身動脈血圧と心拍数は、その処置計画によっても影響なく保持された。並行して、持続的な低酸素状態の後のRV/LV+Sの増加は、ロフルミラストによって、0.5mgkg-1-1と比較して1.5mgkg-1-1といったより高い程度にまで後退した(第3表)。
【0108】
遠位の肺細動脈の増大した筋化は、PAP増大と右心室肥厚の原因となることがある。ロフルミラストは、有意に(p<0.001)、15日間にわたる慢性低酸素状態によって増強された遠位の筋化を、0.5mgkg-1-1と比較して1.5mgkg-1-1といったより高い効力で低減させた(第3表)。
【0109】
第3表:ロフルミラストがもたらす、ラットにおける慢性低酸素状態に誘導される肺動脈高血圧症での、肺動脈の血行動態と遠位の肺動脈の筋化に対する作用
【表6】

【0110】
MCTに誘導される肺高血圧症の発生に対するロフルミラストの作用
モノクロタリンは、ラットにおいて重度の肺高血圧症をもたらし、それは21日後での平均PAP、RV/LV+Sの実質的な増加と遠位の肺細動脈の筋化によって特徴付けられる。ロフルミラストは、平均PAPと右心室肥厚を、0.5mgkg-1-1(ビヒクルに対してp<0.05)に対して1.5mgkg-1-1といったより高い効力で低下させた(第4表)。これらの肺循環の血行動態パラメータの改善は、選択的PDE4インヒビターにより引き起こされる、遠位の肺細動脈の筋化における用量依存性で、有意な(p<0.001)低下によって補完される(第4表)。
【0111】
第4表:ロフルミラストがもたらす、ラットにおけるモノクロタリン(MCT)に誘導される肺動脈高血圧症での、肺動脈の血行動態と遠位の肺動脈の筋化に対する作用
【表7】

【0112】
治療的試みにおいて、経口でのロフルミラスト(1.5mg/kg/d)又はビヒクルを、MCTの後21日目に開始して、すなわち肺血管リモデリングと、結果的に増強されたPAP及び右心室肥厚が現れた時に投与した。もう3週間後(すなわち42日目に)に、PAPを測定し、そしてラットを屠殺してから、RV/LV+S比と遠位の肺動脈の筋化を評価した。
【0113】
第5表:経口でのロフルミラスト(1.5mg/kg/d)がもたらす、21日目に始まる、ラットにおけるモノクロタリン(MCT)に誘導される肺動脈高血圧症での血行動態と遠位の肺動脈の筋化とに対する作用
【表8】

【0114】
予想されるように、肺動脈血圧(PAP)と右心室肥厚(RV/LV+S)比は、ビヒクルグループにおいて21日目から42日目までで更に増大した。しかしながら、21日目からのロフルミラストでの処置は、PAPとRV/LV+S比を42日目で、それらの21日目での値を超えて減少させた。これらの血行動態的な知見は、ロフルミラストによる遠位の肺動脈の筋化の歴然とした減少によって引き起こされたのだと考えられる。殊に、これらの細動脈の70%までが、ビヒクルグループの21日目並びに42日目で完全に筋化された。21日目からのロフルミラストは、有意に、完全に筋化された細動脈の割合を、42日目で>50%だけ低下させた。ビヒクルグループにおいて、MCT後21日目に51±3%に増大し、42日目には52±4%で持続した完全に筋化された肺細動脈の内側壁厚インデックス[(外径−内径)/外径×100%として計算される]は、ロフルミラスト(21日目から)によって42日目に18±2%へと大きく低下した。重要なことには、42日目で完全に閉塞された細動脈の比率は、ロフルミラストを21日目を受けたラットにおいて、ビヒクルグループにおける21日目(50±1%)もしくは42日目(66±3%)と比較してかなり低くなった(30±5%)。遠位の肺動脈壁中の平滑筋細胞の増殖細胞核抗原(PCNA)は、MCT後に存在するが、ロフルミラスト(1.5mg/kg/d)グループにおいてはなくなっており、そのことは、PDE4インヒビターが効果的に、インビボで肺動脈平滑筋細胞の増殖を阻害することを示している。治療的試みにおいては、生存率は、ロフルミラスト(1.5mg/kg/d)によって大きく改善された。一方、ビヒクルグループにおける39頭のラットのうち21頭(54%)は、42日目まで生存しており、ロフルミラストグループにおける24頭のラットのうち、17頭(71%)の動物が42日目に生存していた。ラットにおける、MCTに誘発される肺血管リモデリングと続発性の肺動脈高血圧症の範例においてひとまとめにして考えると、治療的プロトコールの後のロフルミラスト(1.5mg/kg/d)の投与は、先に存在する肺血管リモデリング、ひいては肺動脈高血圧症の部分的後退に作用する。
【0115】
まとめ
ロフルミラストは、用量依存的に、ラットにおける低酸素状態もしくはモノクロタリンにより誘発された慢性肺高血圧症を改善するが、一方で、全身動脈血圧と心拍数は影響がないまま保持された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド並びにロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物を、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための医薬組成物の製造のために用いる使用。
【請求項2】
請求項1記載の使用であって、医薬組成物が、肺高血圧症の予防的処置用である使用。
【請求項3】
請求項1記載の使用であって、医薬組成物が、肺高血圧症の治療的処置用である使用。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の使用であって、化合物が、ロフルミラスト及びロフルミラストの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される使用。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか1項記載の使用であって、化合物が、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される使用。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか1項記載の使用であって、化合物がロフルミラストである使用。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれか1項記載の使用であって、化合物がロフルミラスト−N−オキシドである使用。
【請求項8】
患者において肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置をするための方法において、それを必要とする前記患者に、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、肺高血圧症の処置が予防的処置である方法。
【請求項10】
請求項8記載の方法において、肺高血圧症の処置が治療的処置である方法。
【請求項11】
請求項8から10までのいずれか1項記載の方法であって、化合物が、ロフルミラスト及びロフルミラストの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される方法。
【請求項12】
請求項8から10までのいずれか1項記載の方法であって、化合物が、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される方法。
【請求項13】
請求項8から10までのいずれか1項記載の方法であって、化合物がロフルミラストである方法。
【請求項14】
請求項8から10までのいずれか1項記載の方法であって、化合物がロフルミラスト−N−オキシドである方法。
【請求項15】
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド並びにロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物を、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩と組み合わせて、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための医薬組成物、組み合わせ製品又はキットの製造のために用いる使用。
【請求項16】
ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の量と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩の量と、少なくとも1つの製剤学的に認容性の助剤とを含み、第一の量と第二の量とが一緒になって、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための有効量を成す組成物。
【請求項17】
成分(A)ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の量;(B)PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩の量を含む組み合わせ製品であって、第一の量と第二の量とが一緒になって、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための有効量を成し、かつ成分(A)と(B)のそれぞれは、少なくとも1つの製剤学的に認容性の助剤と混合して配合される組み合わせ製品。
【請求項18】
成分(A)ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の量を、少なくとも1つの製剤学的に認容性の助剤と混合して含む医薬製剤と、(B)PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩の量を、少なくとも1つの製剤学的に認容性の塩と混合して含む医薬製剤とを含むキットであって、第一の量と第二の量とが一緒になって、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための有効量を成すキット。
【請求項19】
請求項16から18までのいずれか1項記載の医薬組成物、組み合わせ製品又はキットであって、肺高血圧症の処置が予防的処置である医薬組成物、組み合わせ製品又はキット。
【請求項20】
請求項16から18までのいずれか1項記載の医薬組成物、組み合わせ製品又はキットであって、肺高血圧症の処置が治療的処置である医薬組成物、組み合わせ製品又はキット。
【請求項21】
請求項16から20までのいずれか1項記載の医薬組成物、組み合わせ製品又はキットであって、化合物が、ロフルミラスト及びロフルミラストの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される医薬組成物、組み合わせ製品又はキット。
【請求項22】
請求項16から20までのいずれか1項記載の医薬組成物、組み合わせ製品又はキットであって、化合物が、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される医薬組成物、組み合わせ製品又はキット。
【請求項23】
請求項16から20までのいずれか1項記載の医薬組成物、組み合わせ製品又はキットであって、化合物がロフルミラストである医薬組成物、組み合わせ製品又はキット。
【請求項24】
請求項16から20までのいずれか1項記載の医薬組成物、組み合わせ製品又はキットであって、化合物がロフルミラスト−N−オキシドである医薬組成物、組み合わせ製品又はキット。
【請求項25】
請求項16から24までのいずれか1項記載の医薬組成物、組み合わせ製品又はキットであって、PDE5インヒビターが、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、UK−343664、UK−357903、UK−371800、アバナフィル、ベミナフィル、ダサンタフィル、ウデナフィル、BMS−341400並びにこれらの化合物の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される医薬組成物、組み合わせ製品又はキット。
【請求項26】
肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置をするための方法において、それを必要とする患者に、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の量と、PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩と、少なくとも1つの製剤学的に認容性の助剤とを含み、その際、第一の量と第二の量とが一緒になって、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための有効量を成す医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項27】
肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置をするための方法において、それを必要とする患者に、成分(A)ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される化合物の量と、(B)PDE5インヒビターもしくはそれらの製剤学的に認容性の塩の量とを含み、その際、第一の量と第二の量とが一緒になって、肺高血圧症の予防的処置もしくは治療的処置のための有効量を成し、成分(A)と(B)のそれぞれが、少なくとも1つの製剤学的に認容性の助剤と混合して製剤化されており、かつ成分(A)と(B)とが連続的にもしくは別々に投与される組み合わせ製品を投与することを含む方法。
【請求項28】
請求項15、26又は27のいずれか1項記載の方法又は使用であって、肺高血圧症の処置が予防的処置である方法又は使用。
【請求項29】
請求項15、26又は27のいずれか1項記載の方法又は使用であって、肺高血圧症の処置が治療的処置である方法又は使用。
【請求項30】
請求項15、26、27、28又は29のいずれか1項記載の方法又は使用であって、化合物が、ロフルミラスト及びロフルミラストの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される方法又は使用。
【請求項31】
請求項15、26、27、28又は29のいずれか1項記載の方法又は使用であって、化合物が、ロフルミラスト−N−オキシド及びロフルミラスト−N−オキシドの製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される方法又は使用。
【請求項32】
請求項15、26、27、28又は29のいずれか1項記載の方法又は使用であって、化合物がロフルミラストである方法又は使用。
【請求項33】
請求項15、26、27、28又は29のいずれか1項記載の方法又は使用であって、化合物がロフルミラスト−N−オキシドである方法又は使用。
【請求項34】
請求項15及び26から33までのいずれか1項記載の方法又は使用であって、PDE5インヒビターが、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、UK−343664、UK−357903、UK−371800、アバナフィル、ベミナフィル、ダサンタフィル、ウデナフィル、BMS−341400並びにこれらの化合物の製剤学的に認容性の塩からなる群から選択される方法又は使用。
【請求項35】
請求項1から15又は26から34までのいずれか1項記載の方法又は使用であって、肺高血圧症が、突発性の肺動脈高血圧症;家族性の肺動脈高血圧症;膠原血管病、先天性の全身ないし肺シャント、門脈圧亢進症、HIV感染、薬物もしくは毒物に関連する肺動脈高血圧症;甲状腺疾患、糖原病、ゴシェ病、遺伝性出血性毛細管拡張症、異常ヘモグロビン症、骨髄増殖性疾患もしくは脾臓除去術に関連する肺高血圧症;肺毛細血管腫症に関連する肺動脈高血圧症;新生児の持続性肺高血圧症;慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、低酸素により引き起こされる肺胞性低換気疾患、低酸素により引き起こされる睡眠障害性呼吸もしくは高標高への慢性的な暴露に関連する肺高血圧症;異常発生に関連する肺高血圧症;並びに遠位の肺動脈の塞栓性の閉塞による肺高血圧症の群から選択される肺高血圧症の形態を表す方法又は使用。
【請求項36】
請求項1から15又は26から34までのいずれか1項記載の方法又は使用であって、肺高血圧症が、突発性の肺動脈高血圧症;家族性の肺動脈高血圧症;膠原血管病、先天性の全身ないし肺シャント、門脈圧亢進症、HIV感染、薬物もしくは毒物に関連する肺動脈高血圧症;甲状腺疾患、糖原病、ゴシェ病、遺伝性出血性毛細管拡張症、異常ヘモグロビン症、骨髄増殖性疾患もしくは脾臓除去術に関連する肺高血圧症;肺毛細血管腫症に関連する肺動脈高血圧症;新生児の持続性肺高血圧症;間質性肺疾患、低酸素により引き起こされる肺胞性低換気疾患、低酸素により引き起こされる睡眠障害性呼吸もしくは高標高への慢性的な暴露に関連する肺高血圧症;異常発生に関連する肺高血圧症;並びに遠位の肺動脈の塞栓性の閉塞による肺高血圧症の群から選択される肺高血圧症の形態を表す方法又は使用。
【請求項37】
請求項35又は36記載の方法又は使用であって、肺高血圧症が突発性の肺動脈高血圧症を表す方法又は使用。
【請求項38】
請求項35又は36記載の方法又は使用であって、肺高血圧症が家族性の肺動脈高血圧症を表す方法又は使用。
【請求項39】
請求項35記載の方法又は使用であって、肺高血圧症が、慢性閉塞性肺疾患と関連する肺高血圧症を表す方法又は使用。
【請求項40】
請求項35又は36記載の方法又は使用であって、肺高血圧症が、膠原血管病、先天性の全身ないし肺シャント、門脈圧亢進症、HIV感染、薬物もしくは毒物に関連する肺動脈高血圧症を表す方法又は使用。
【請求項41】
請求項35又は36記載の方法又は使用であって、肺高血圧症が、甲状腺疾患、糖原病、ゴシェ病、遺伝性出血性毛細管拡張症、異常ヘモグロビン症、骨髄増殖性疾患もしくは脾臓除去術に関連する肺高血圧症を表す方法又は使用。

【公表番号】特表2008−536888(P2008−536888A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507056(P2008−507056)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061557
【国際公開番号】WO2006/111495
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(507229021)ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (90)
【氏名又は名称原語表記】Nycomed GmbH
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2, D−78467 Konstanz, Germany
【Fターム(参考)】