説明

胃−食道逆流および化学療法誘発嘔吐の予防および治療のための、ショウガおよびエキネシアの親油性抽出物を含む組成物

本発明は、食道逆流および化学療法誘発嘔吐の予防および治療に有用な、超臨界条件下に二酸化炭素を用いて抽出することにより得られるショウガおよびエキネシアの親油性抽出物を組み合わせて含んでなる組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の要旨
本発明は、食道逆流および化学療法誘発嘔吐の予防および治療に有用な、ショウガ(Zingiber officinale)およびエキネシア(Echinacea angustifolia)の親油性抽出物を組み合わせて含んでなる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
胃腸管の癌は、癌の2番目に一般的な癌の形態であり、この領域が侵された場合の死亡の2番目の原因である。食道および胃癌は先進工業国においてあまり一般的ではないが、かなり致死的である。
【0003】
これらの2つの腫瘍について多くの寄与的原因が確認されており、それらは例えばアルコール依存であり、喫煙、硝酸塩を多量に含む食事、および/または、胃および食道における粘膜障壁を破壊する産物または習慣と組み合わされることが多い。異なる大陸からの集団におけるある微量元素の欠乏(プランマー・ヴィンソンおよびパターソン・ケリー症候群)および食習慣の試験に続いて、食習慣および生活様式を変更することにより、および医薬または食事産物を用いることにより、前記寄与的原因による胃および食道の癌の発病を防止するための試行が成された。前記寄与的原因の多くは取り除かれたが、食道腫瘍の主要な原因の一つである食事および/または裂孔ヘルニアを伴うことが多い胃-食道逆流を患っている人々の数の増加により、世界的発生率は増加した。肥満者において一般的である慢性的逆流および上皮の胃粘膜化生(バレット食道)のほぼ常において、食道の遠位部分において異型性立方上皮により腺癌が発現され、50%を超える場合において悪性化する。
【0004】
従って、この疾患の発生率を低下させることが非常に重要である。
【0005】
その結果、逆流を減少させることができる、特に胃内容排出を調整することにより逆流を減少させることができる薬剤に対して研究が向けられている。特に、見込まれる薬剤は予防的観点から長年持続的に摂取しなくてはならない、または消化要求に応じて断続的に摂取しなくてはならないので、研究者は、耐容性の優れた自然の運動促進を開発しようとしている。
【0006】
しかしながら、胃内容排出を調整するために近年用いられてきた多くの薬剤は、中枢神経系(CNS)に影響を与える重大な副作用を呈する、または発癌作用を有するので、市場から回収された、または回収されようとしている。胃-食道逆流は、最近は、プロトンポンプ阻害剤(ラニチジン、-プラゾールまたは単純制酸剤)、酵素、種々の消化薬、およびドンペリドンなどの運動促進剤のような薬剤のカクテルを用いて治療されている。しかしながら、プロトンポンプ阻害剤を長期間使用すると、重大な消化の問題が生じることが多い。
【0007】
その結果、今では、新しい治療法に研究が向けられている。
【発明の概要】
【0008】
発明の説明
超臨界条件下に二酸化炭素を用いて抽出することによりいずれも得られるショウガおよびエキネシアの親油性抽出物を含む組合せが、驚くべき運動促進および制吐作用を有し、消化機能は変化させず、食道逆流の寄与的原因である胃が重い感覚および吐き気を取り除き、従って、食道逆流および化学療法誘発嘔吐の予防および治療において有用であることが、今回発見された。
【0009】
すなわち、本発明は、食道逆流および化学療法誘発嘔吐の予防および治療のための、
a) ショウガの親油性抽出物、および
b) エキネシアの親油性抽出物
を含んでなる組成物に関する。
【0010】
より詳しくは、本発明によれば、本出願人により出願された特許EP 464298に報告されているように、超臨界条件下に二酸化炭素を用いて抽出することによりエキネシアの親油性抽出物が調製される。ショウガの親油性抽出物は、粉砕根から出発して同じ条件下に抽出することもできる。
【0011】
種々の方法で処理されたジンジャーの根および根茎(ショウガ)が、特にアジアおよび中東において、スパイスとして、および、消化不良、鼓腸、下痢および咳嗽を治療する、および程度は低いが、炎症から粘膜を保護する、尿失禁を治療する等のための従来の医薬において用いられる。
【0012】
ショウガの親油性抽出物中に存在する活性成分は、主に、ジンジェロールからなり(通常、10〜15%の濃度で存在する)、これは、抗ディスペプシア、吐き気防止および嘔吐防止活性を有し、乗り物酔い、おくび、消化不良、疝痛、嘔吐、ディスペプシアおよび、胃および結腸痛の治療に有用である。しかしながら、最近の臨床試験は、従来法により調製されたショウガの親油性抽出物は、ジンジェロールの良く知られてた化学的不安定性を考慮すると活性が低いことを示し、従って、米国薬局方は、信頼性あるエビデンスの欠如故に、その植物に起因する特性を完全に再検討することを勧めている。従来法により調製されたショウガの親油性抽出物中に含まれるジンジェロールは迅速に分解し、ショウガオールおよび、効能を欠く他の酸化産物のような一連の化合物を生じさせる。これらの矛盾するデータの一部の原因は、通常用いられる抽出物中の活性成分の不安定性である。しかしながら、本発明で用いられる抽出物は、明確に定義される超臨界条件下に二酸化炭素を用いて安定化および調製される親油性抽出物である。
【0013】
エキネシアの根および地上部の親油性抽出物は、カンナビノイド受容体との相互作用と共に、鎮痛および抗炎症特性、吐き気止めおよび抗嘔吐作用を有するポリ不飽和酸のイソブチルアミドの存在により特徴付けらえる。本発明による組合せは、驚く程著しい運動促進および抗ディスペプシア効果を有し、消化機能は変化させず、食道逆流の寄与的原因である胃の重い感覚および吐き気を取り除く。従って、この組合せを、食道逆流および化学療法誘発嘔吐の予防および治療において有用に用いることができる。
【0014】
本発明の組成物は胃を空にすることを促進するが、その作用は、治療したどの患者においても個々の成分については示されることがないので、高度に潜在的で全く予想されない効果である。実際、前述したように、エキネシアのアルキルアミドの投与は、胃および腸の内容排出を、促進するのではなく遅延させることが観察された。
【0015】
好ましい局面によれば、本発明の組成物は、2つの成分を以下の重量範囲で含む:
a) ショウガの親油性抽出物:1〜25mg、および
b) エキネシアの親油性抽出物:1〜10mg。
【0016】
特に好ましい局面によれば、組成物は、2つの成分を以下の重量範囲で含む:
a) ショウガの親油性抽出物:12.5mg、および
b) エキネシアの親油性抽出物:5mg。
【0017】
好ましい局面によれば、本発明の組成物は、EP 464298に記載の方法により調製されるエキネシアの親油性抽出物を含み、イソブチルアミド、特にドデカ-2E,4E,8Z,10Z-テトラエン酸イソブチルアミドの含量が25〜50%であることを特徴とする。
【0018】
好ましい局面によれば、ショウガの親油性抽出物およびエキネシアの親油性抽出物は、月見草油のようなω3/ω6ポリ不飽和脂肪酸に富む植物油中に処方される。
【0019】
さらなる局面によれば、本発明の組成物は、有用なまたは相補的作用を有する他の物質と共に投与してよい。
【0020】
ヒトにおいて活性であると分かった投与量は、1回あたり、ショウガの親油性抽出物1〜25mgおよびエキネシアの親油性抽出物1〜10mg;特に、1回あたり、ショウガの親油性抽出物12.5mgおよびエキネシアの親油性抽出物5mgであり、夕食毎に摂取する、または治療すべき疾患に別の方法で適合させる。
【0021】
本発明の組合せは、「Remington’s Pharmaceutical Handbook」, Mack Publishing Co., N.Y., USAに記載されているような従来法に従って、処方される。特に、本発明の組成物は、経口投与を意図した親油性成分のための従来の処方技術に従って処方され、主に、胃内で迅速に分散するように設計された油分用のソフトゼラチンもしくはセルロースカプセルまたは舌下錠剤として処方される。親油性型は、ω-3脂肪酸に富む油分を使用し、これが有効成分の迅速な吸収を促進して、活性成分を分散させる。経口製剤の例は、錠剤、糖衣錠、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、およびセルロースカプセルである。
【0022】
以下の実施例により、さらに、本発明を説明する。
【0023】
(実施例1) ソフトゼラチンカプセル
単位組成:
ショウガの親油性抽出物 12.5mg
エキネシアの親油性抽出物 5mg
大豆レシチン 10mg
月見草油 150mg
(実施例2) ハードゼラチンカプセル
単位組成:
ショウガの親油性抽出物 12.5mg
エキネシアの親油性抽出物 5mg
大豆レシチン 10mg
微結晶セルロース 200mg
トウモロコシでんぷん 50mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
二酸化珪素 2mg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界条件下に二酸化炭素を用いて抽出することにより得られる
a)ショウガの親油性抽出物、および
b)エキネシアの親油性抽出物
を含んでなる組成物。
【請求項2】
2つの成分を以下の重量範囲で含む、請求項1に記載の組成物:
a)ショウガの親油性抽出物:1〜25mg、および
b)エキネシアの親油性抽出物:1〜10mg。
【請求項3】
2つの成分を以下の重量範囲で含む、請求項1または2に記載の組成物:
a)ショウガの親油性抽出物:12.5mg、および
b)エキネシアの親油性抽出物:5mg。
【請求項4】
イソブチルアミドの含量が25〜50%であるエキネシアの親油性抽出物を含む、前記請求項に記載の組成物。
【請求項5】
経口投与するための、前記請求項に記載の組成物。
【請求項6】
ソフトゼラチンカプセルまたはハードゼラチンカプセルとしての、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
胃を空にすることを促進し、食道逆流および化学療法誘発嘔吐の予防および治療するのに有用な組成物の調製のための、超臨界条件下に二酸化炭素を用いて抽出することにより得られる
a)ショウガの親油性抽出物、および
b)エキネシアの親油性抽出物
の使用。

【公表番号】特表2012−515715(P2012−515715A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545686(P2011−545686)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000204
【国際公開番号】WO2010/083967
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】