説明

胃ろう用コネクター及びアダプター等を有する胃ろう用コネクター

【課題】適度の注入速度と所要時間で注入でき、取り扱いが簡単でかつ注入速度が速いことによる不都合がない胃ろう用コネクター等の提供。
【解決手段】本発明の胃ろう用コネクターIは、該コネクター本体1の一端に、胃ろうアダプターに接続するためのアダプター挿入部2を有し、また他端には栄養剤バッグの取出部31を系合し得るバッグ接続部3を有する。該接続部3の内壁面9にはねじ山4を有しており、更に該接続部3の奥部には同心円状に嵌合壁7を設けて接続部内壁9との間に嵌合溝6を形成し、該嵌合溝6には、接続部3の接続口11に栄養剤バッグの取出口31をねじ込んで取り付ける。接続部は一体化してもよい。本発明の胃ろう用コネクターには、アダプター及び栄養剤バッグを取り付けて使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃ろう用コネクター及びアダプター等を有する胃ろう用コネクターに関し、更に詳しくは、本発明は、適度の注入速度と所要時間で注入でき、取り扱いが簡単でかつ注入速度が速いことによる不都合がない胃ろう用コネクター及びアダプター等を有する胃ろう用コネクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病気やけがで口から食事ができない患者は、例えば、高カロリーの点滴により栄養を補うことが行われてきたが、近年、胃ろう造設術を用いて胃ろうチューブを取り付けることが行われるようになった。この胃ろう造設術は、具体的には、図9に示される胃ろうボタン15を設置する際、胃の中まで糸を通した針を刺し、この針の糸を口から入れた内視鏡でつかんで口まで引き出し、引き出した糸に胃ろう用カテーテルを結びつけ、ついで腹側から糸を引っ張り、胃の中に留置することにより行われる(例えば、特許文献1参照)。この胃ろう用カテーテル(又は胃ろうチューブ、胃ろうボタン等ともいう。)に栄養剤を注入する際は、液状の濃厚栄養剤をバッグに入れ替え後、高い位置に吊るして固定し、ここから自然落下を利用して注入する方法が、一般的に行われていた。バッグは、図8に示される如き栄養剤バッグが知られている。しかし、この方法は、(イ)バッグや容器を吊るすために高い位置にフック等を設ける必要があり、また専用の注入台が必要である等の場所を考慮する必要がある。(ロ)一回の注入に時間(1〜2時間)がかかり、介助者の時間的制約が大きい。(ハ)注入速度が早いと下痢や不快感が現れる。(ニ)わき漏れがおきる。(ホ)胃・食道への逆流が起きやすい、などの問題があり、介護・看護の現場では改善が要望されていた。最近、液体の濃厚栄養剤を寒天化することにより、胃・食道への逆流を防止しまた下痢の防止に有効である旨の報告がなされているが、栄養剤の寒天化には時間的手間が極めて大きいという問題があるばかりでなく不均一化して有効に寒天化し難いという問題がり、普及するには今一つ改善の余地がある。
【非特許文献1】NPO法人 PEGドクターズネットワーク(http://www.peg.ne.jp/eiyou/peg/about.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明者は、前述のような患者に対して経口栄養剤である半固形栄養剤を胃ろう用栄養剤として利用する際、図7に示されるような胃ろうボタン接続部13、チューブ12及び栄養剤注入部40又は42を有する胃ろう用アダプターIIやIIIが用いられており、このような胃ろう用アダプターにおいて、その端部に有する栄養剤注入部40又は42の注入口に注射用シリンジを挿入して注入することを試み、その結果、前述の問題点の大部分について解決することができた。しかしながら、前述のような注射用シリンジで半固形栄養剤を注入する場合には、依然として、わき漏れ、下痢・不快感等が改善されていないことがわかり、この点についてさらに検討し、図8に示される如き、半固形栄養剤の充填されているバッグ30を、本発明の胃ろう用コネクターIを介して胃ろうチューブに接続してみたところ、ほとんどわき漏れが起きないことはもちろんのこと、注入場所を必要としない、注入時間が5〜10分程度に短縮することができ、しかも患者如何により自分で注入することができる、下痢が起こらないばかりか不快感が少ない等の患者側のメリットが大きいという優れた効果を奏することがわかった。さらに介護・看護をする側の立場からみても、毎食時における注入時間の制限がなくなり、注入を途中で止め、再度注入するなどの再利用が可能となることを見出し、ここに本発明をなすに至った。
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、適度の注入速度と所要時間で注入でき、取り扱いが簡単でかつ注入速度が速いことによる不都合がない胃ろう用コネクター及びアダプター等を有する胃ろう用コネクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の各発明によってそれぞれ達成される。
(1)一端にアダプター挿入部と他端に栄養剤取出部を系合し得る接続部を有する胃ろう用コネクターであって、該接続部の奥部には同心円状に嵌合壁を設けて接続部内壁との間に嵌合溝を形成し、更に前記接続部内壁面にはねじ山を有することを特徴とする胃ろう用コネクター。
(2)前記第1項に記載の胃ろう用コネクターのアダプター挿入部とアダプターの栄養剤注入部とを接続して一体化したことを特徴とする胃ろう用コネクター。
(3)前記第2項に記載のアダプターを有する胃ろう用コネクターの栄養剤取出部と係合し得る接続部と栄養剤取出部とを接続し一体化したことを特徴とする胃ろう用コネクター組立体。
(4)胃ろう用アダプターの栄養剤注入部に代えて前記第1項に記載の胃ろう用コネクターを接続したことを特徴とする胃ろう用コネクター。
(5)前記第4項に記載の胃ろう用コネクターと栄養剤取出部とを接続したことを特徴とする胃ろう用コネクター。
(6)前記第5項に記載の胃ろう用コネクター組立体の胃ろうボタン接続部に蓋を有することを特徴とする胃ろう用コネクター組立体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、一端にアダプター挿入部と他端に栄養剤取出部を系合し得る接続部を有する胃ろう用コネクターであって、該接続部の奥部には同心円状に嵌合壁を設けて接続部内壁との間に嵌合溝を形成し、更に前記接続部内壁面にはねじ山を有することにより、適度の注入速度と所要時間で注入でき、取り扱いが簡単でかつ注入速度が速いことによる不都合がない、即ち(a)注入速度が早いと下痢や不快感が現れる。(b)わき漏れがおきる。(c)胃・食道への逆流が起きやすい、などの不都合がないという非常に優れた効果を奏するものである。また本発明の第2項に記載の発明は、前記第1項に記載の胃ろう用コネクターのアダプター挿入部とアダプターの栄養剤注入部とを接続して一体化したことにより、特に適度の注入速度と所要時間で注入でき、取り扱いが簡単でかつ注入速度が速いという優れた効果を奏するものである。更に本発明の第3項に記載の発明の組立体は、前記第2項に記載のアダプターを有する胃ろう用コネクターの栄養剤取出部と係合し得る接続部と栄養剤取出部とを接続し一体化したことにより、胃ろうボタンに直接アダプターの端部にある胃ろうボタン接続部を接続するのみでよく、栄養剤バッグの接続をきわめて簡単に行うことができ、したがって取り扱いが簡単かつ迅速に行えると共に注入速度を所望の速度に調節することができるという優れた効果を奏するものである。更にまた本発明の第4項に記載の発明は、胃ろう用アダプターの栄養剤注入部に代えて前記第1項に記載の胃ろう用コネクターを接続したことにより、アダプターに直接栄養剤バッグを接続するだけで胃に栄養剤を供給することができ、取り扱いが簡単かつ迅速に行えると共に注入速度を所望の速度に調節することができるという優れた効果を奏するものである。更には本発明の第5項に記載の発明は、前記第4項に記載の胃ろう用コネクターと栄養剤取出部とを接続したことにより、直接胃ろうボタンに接続することができるので、きわめて簡単かつ容易に取り扱いことができるという格別顕著な効果を奏するものである。本発明の第6項に記載の発明は、前記第5項に記載の胃ろう用コネクター組立体の胃ろうボタン接続部に蓋を有することにより、気密下に保存されるので、胃ろうボタン接続部13が細菌に汚染されるおそれがなく、衛生上清潔に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を図面を用いて具体的に説明するが、本発明は、以下に説明する具体的事例に限定されるものではない。図1は、本発明の胃ろう用コネクターを示す断面面である。図1において、胃ろう用コネクターIは、該コネクター本体1の一端には、胃ろう用アダプター(図7参照)に接続するためのアダプター挿入部2を有し、また他端には栄養剤バッグの取出部31を系合し得る接続部(以下、バッグ接続部という。)3を有する。該バッグ接続部3の内壁9の表面にはネジ山4を有しており、更に該接続部3の奥部には同心円状に嵌合壁7を設けて接続部内壁9との間に嵌合溝6を形成し、該嵌合溝6には、バッグ接続部3の接続口11に栄養剤取出部31をねじ込むと、その取出部31の先端が嵌合して気密に接続され、栄養剤がコネクターのバッグ接続部3から漏れ難くなる。その結果、(b)の不都合であるわき漏れがおきないという優れた効果を奏する。本発明の胃ろう用コネクターIは、図7に示されている如き、アダプターと接続されて使用される。このアダプターには、図7のaに示される如き、直角アダプターIIと図7のbに示される如き、ストレートアダプターIIIが知られている。まず、本発明の胃ろう用コネクターを前述の如きアダプターに使用する場合について説明する。図2は、図7のbに示されるストレートアダプターの栄養剤注入部42に接続した例が示されており、該ストレートアダプターIIIの栄養剤注入部42に胃ろう用コネクターIのアダプター挿入部2を挿入して接続されている。この接続は取り外し可能にねじ込み式が好ましいが、これらを一体化してもよい。一体化は、接着剤による固着又は溶着等の方法がある。
【0008】
本発明の胃ろう用コネクターIは、図3に示されるように、胃ろう用コネクターIにアダプターII又はIIIと栄養剤バッグ30とを共に接続して使用される。接続は、図3及び図4示されている如き、胃ろう用コネクターのバッグ接続部3に栄養剤取出部31を挿入して嵌合する。この結果、栄養剤取出部31は、バッグ接続部3の嵌合壁7と接続部内壁面9との間に形成された嵌合溝6に嵌合されるので、栄養剤のわき漏れがない。したがって、本発明の胃ろう用コネクターIを用いることにより、栄養剤バッグを圧迫して適度の注入速度を得ることができるので、所要時間で注入できるばかりでなく、取り扱いが簡単でかつ注入速度が速いことによる不都合がない、即ち(a)注入速度が早いと下痢や不快感が現れるが、注入速度を所望の速度に調節できるので、下痢をおこすことがなく、また不快感がない所望の速度で注入することができる。本発明の胃ろう用コネクターを用いることにより、胃ろう用アダプター側及び栄養剤挿入側の接続部が気密に接続されるので、(b)わき漏れがおきない。(c)胃・食道への逆流が起き難いという非常に優れた効果を奏するものである。この際、栄養剤注入部42及び栄養剤バッグ30の栄養剤取出部31との接続部は、共に一体化しておいてもよい。本発明の胃ろう用コネクターIは、図2の如く一体化した状態で製品としてもよい。本発明に用いられるアダプターとしては、ストレートアダプターIと直角アダピターIIのいずれにも用いることができる。図4は、本発明の胃ろう用コネクターIを栄養剤バッグ30に接続した形態で製品としたもので、この形態で製品とする場合には、接続部は一体化することが好ましい。またこの場合には、アダプアター挿入部2には、図6のbに示される如き、蓋17を設けることが好ましい。
【0009】
一方、本発明の胃ろう用コネクターは、該コネクター単品として用いられるが、あらかじめ、胃ろうチューブに接続しておくこともできる。図5は、胃ろう用アダプターの栄養剤注入部に代えて本発明の胃ろう用コネクターを直接接続した胃ろう用コネクターを示す側面図である。図5において、チューブ12の一端には、胃ろうボタン(図9参照)に嵌合する胃ろうボタン接続部13を有し、また他端には本発明の胃ろう用コネクターIが接続されている。このようにアダプターチューブに直接胃ろう用コネクターが設けられているので、該コネクターのバッグ接続部3に直接栄養剤バッグ30の栄養剤取出部31を接続することができ、その結果、直接かつ迅速にアダプターに栄養剤バッグを接続することができるので、直接栄養剤バッグを接続するだけで胃に栄養剤を供給することができ、取り扱いが簡単かつ迅速に行えると共に注入速度を所望の速度に調節することができるという優れた効果を奏するものである。
【0010】
図6は、本発明の別実施の形態を示す胃ろう用コネクター組立体の側面図である。図6のaにおいて、図5に示される本発明の胃ろう用コネクターのバッグ接続部3に、栄養剤バッグ30を接続した場合であり、本発明は、この形態で製品として販売される。この際、バッグ接続部3と栄養剤取出部31は、一体化してもよく、また取り外し可能に取り付けてもよい。このように胃ろう用コネクターのバッグ接続部3に、栄養剤バッグ30を接続した場合には、図6のbに示される部分断面図のように、蓋17をしておくことが好ましい。これにより、気密下に保存されるので、胃ろうボタン接続部13が細菌に汚染されるおそれがなく、衛生上清潔に保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明の胃ろう用コネクター及びアダプター等を有する胃ろう用コネクターは、胃ろう造設術に係る分野に使用されるばかりでなく、広く医療分野にも医療器具のコネクターとして使用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の胃ろう用コネクターを示す断面面である。
【図2】本発明の胃ろう用コネクターをアダプターに接続したところを示す側面図である。
【図3】胃ろう用コネクターをアダプターと栄養剤バッグに接続した組立体を示す側面図である。
【図4】胃ろう用コネクターを栄養剤バッグに接続したところを示す側面図である。
【図5】本発明の胃ろう用コネクターを接続したアダプターを示す側面図である。
【図6】図3の組立体の別の実施形態(一体化)を示す側面図である。
【図7】本発明に用いられるアダプターの種類を示す側面図である。
【図8】本発明に用いられる栄養剤バッグを示す側面図である。
【図9】胃ろうボタンを示す断面図である。
【符号の説明】
【0013】
1 コネクター本体
11 接続口
2 アダプター挿入部
3 バッグ接続部
30 栄養剤バッグ
31 栄養剤取出部
4、32 ねじ山
5 ストッパー
6 嵌合溝
7 嵌合壁
9 接続部内壁面又は内壁
12 チューブ
13 胃ろうボタン接続部
14 胃壁及び腹部
15 胃ろうボタン
16、17、41 蓋
18 クリップ
40、42 栄養剤注入部
I 胃ろう用コネクター
II、III、 アダプター
IV 本発明のチューブに直接接続した胃ろう用コネクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にアダプター挿入部と他端に栄養剤取出部を系合し得る接続部を有する胃ろう用コネクターであって、該接続部の奥部には同心円状に嵌合壁を設けて接続部内壁との間に嵌合溝を形成し、更に前記接続部内壁面にはネジ山を有することを特徴とする胃ろう用コネクター。
【請求項2】
請求項1に記載の胃ろう用コネクターのアダプター挿入部とアダプターの栄養剤注入部とを接続して一体化したことを特徴とする胃ろう用コネクター。
【請求項3】
前記請求項2に記載のアダプターを有する胃ろう用コネクターの栄養剤取出部と係合し得る接続部と栄養剤取出部とを接続し一体化したことを特徴とする胃ろう用コネクター組立体。
【請求項4】
胃ろう用アダプターの栄養剤注入部に代えて請求項1に記載の胃ろう用コネクターを接続したことを特徴とする胃ろう用コネクター。
【請求項5】
請求項4に記載の胃ろう用コネクターと栄養剤取出部とを接続したことを特徴とする胃ろう用コネクター組立体。
【請求項6】
請求項5に記載の胃ろう用コネクター組立体の胃ろうボタン接続部に蓋を有することを特徴とする胃ろう用コネクター組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−42856(P2006−42856A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224018(P2004−224018)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(504293632)株式会社エムケイメディカル (5)
【出願人】(000111546)ハナコメディカル株式会社 (7)
【出願人】(590001452)国立がんセンター総長 (80)
【Fターム(参考)】