説明

胃保持型医薬剤形

本発明は、少なくとも1つの医薬上の活性成分と少なくとも1つのポリマーアジュバンドとを含む、経口投与可能な胃保持型の医薬剤形に関する。アジュバントは、その医薬上の活性成分が放出され吸収されるのに十分な時間、当該剤形を胃腸管の選択領域に保持する役目を果たす。理想的には、当該剤形は、胃腸管の異なる領域に送達される2つ以上の医薬上の活性成分を有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、医薬剤形に関し、より具体的には、経口投与可能な胃保持型(gastroretentive)の医薬剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
医薬組成物の経口投与は、ほとんどの臨床用途に依然として選択される経路である。胃腸管(GIT)全体を通じた良好な吸収について、幾つかの薬物は理想的な特徴を有するが、一方で、他のものはこの点に関して不十分な特徴を示す。
【0003】
そのような欠点を有する薬物では、経口経路は、医薬組成物が部位特異的な吸収を示すという難題を提起する。そのような化合物は、しばしば、GIT内の狭い部位での吸収という結果のように、不十分な可変性のバイオアベイラビリティーを示す。これらの医薬組成物は、「狭い吸収帯(Narrow Absorption Window)」(NAW)を有すると称される。
【0004】
医薬剤形がGITを抜ける通過速度が、医薬剤形がその好ましい吸収部位に接触し続ける時間を決定する。ヒトでは、胃内の通過速度は1〜2時間の範囲にあり、小腸内ではかなり一定して3時間の残留であるが、一方で、結腸ではこれは20時間と長時間であり得る。従って、腸に吸収される医薬組成物に関して、比較的短い滞留時間は、遠位腸領域よりもむしろ近位腸での吸収を促進する。胃の時間は、医薬組成物がその吸収に特異的な部位に接触し続ける期間を決定し、そのため、医薬剤形の胃腸管での通過時間を延ばすことによりバイオアベイラビリティーは増強され得る。
【0005】
胃での滞留時間を増加させるために胃腸管内での医薬組成物の放出を延ばすことは、従来の経口での即時放出型(immediate-release)の薬物送達システムに勝る多くの利点を提供する。これは、医薬組成物が胃腸内でより長い期間にわたって放出されるためであり、この長期化は、低いバイオアベイラビリティーまたは狭い吸収帯の吸収されるべき医薬組成物の利用を可能とするためである。さらに、薬物の主要な「狭い吸収帯」が見出される腸に侵入する前に、医薬剤形は胃部でより長期間保持され、その後の薬物放出を伴う結果、その「狭い吸収帯」領域での吸収に、遊離の薬物が利用可能となる。
【0006】
胃内容排出に影響を及ぼし、結果的に、医薬剤形の胃滞留時間に影響を及ぼし得る要因が多数存在する。前記医薬剤形の大きさおよび形状は、幽門括約筋を通じた通過に影響を及ぼすが、一方で、その密度は、胃浮揚性(gastrofloatibility:結果的に胃内容物に対して浮揚性となる)またはガストロイメンシティー(gastroimmensity:結果的に胃部の胃洞への沈殿となる)を決定する。これらの要因は、GIT薬物送達システムを設計する場合には考慮されるべき重要な要因である。
【0007】
生物学的要因もまた、GITの機能に重要な役割を果たし、結果的に、経口投与された医薬圧縮物の取り込み速度に重要な役割を果たす。これらの生物学的要因には、患者の年齢および性別、疾患の存在、ならびに彼らの身体活動のレベル、体格指数および心構えが挙げられる。胃内容排出に影響を及ぼす更なる要因としては、食物の摂取およびGIT運動性に影響を有し得る特定の薬物の摂取が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の目的)
本発明の目的は、経口投与可能な胃保持型の医薬剤形、より具体的には、少なくとも部分的に上記の欠点を取り扱う胃保持型医薬剤形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
本発明によれば、少なくとも1つの医薬上の活性成分と、胃腸管の所定の領域における前記のそのまたは各々の医薬上の活性成分の保持を増強する少なくとも1つのポリマー・アジュバントとを含む、経口投与可能な胃保持型の医薬剤形が提供される。
【0010】
マイクロおよび/またはナノ構造物が配合されたマルチユニットの剤形である医薬剤形が提供され、水和することで浮揚性となる錠剤形の医薬剤形もまた提供される。
【0011】
その吸収帯に達する前に、連続的に低速で放出され、それによって使用時の最適なバイオアベイラビリティーを保証する医薬上の活性成分がさらに提供される。
【0012】
胃浮揚性および/または生体付着性の増強組成物であるポリマー・アジュバントが提供され、使用時に、剤形の胃腸管内での滞留時間を引き延ばし、結果的に、そのまたは各々の医薬上の活性成分の滞留時間を引き延ばす組成物も提供される。
【0013】
さらに、不十分なバイオアベイラビリティーまたは狭い吸収帯を有する医薬上の活性組成物が提供され、ならびに、23%の絶対的または相対的バイオアベイラビリティーのアシクロビル、好ましくは65%の絶対的または相対的バイオアベイラビリティーのカプトプリル、好ましくは15%の絶対的または相対的バイオアベイラビリティーのリボフラビン、好ましくは30%の絶対的または相対的バイオアベイラビリティーのレボドパ、好ましくは40%のバイオアベイラビリティーのニトロフラントイン、および好ましくは69%の絶対的または相対的バイオアベイラビリティーのシプロフロキサシンからなる群より選択される医薬上の活性化合物が提供される。
【0014】
(複数の)ポリマー・アジュバントと混合される(複数の)医薬上の活性成分が均一なブレンドとして提供され、あるいは、少なくとも1つの操作可能な(operatively)内側の成分と操作可能な外側の成分とを含むマルチユニット構造を有する(複数の)医薬上の活性成分および(複数の)ポリマー・アジュバントが提供され、前記操作可能な内側および外側の成分は、医薬上の活性成分、もしくはポリマー・アジュバント、あるいは医薬上の活性成分とポリマー・アジュバントとのブレンドのいずれか、からなるものである。
【0015】
さらに、胃浮揚性かつ生体付着性である医薬剤形が提供され、前記剤形は、使用時に、最初は胃内容物表面上に浮揚しており、胃内容物が胃を通過して腸管に移動するときに、前記剤形は胃の粘膜表面に付着し、かくして前記医薬剤剤が胃の内部に保持される期間を引き延ばし、結果的に(複数の)医薬上の活性成分の胃内での保持時間が増加する。
【0016】
生体付着性ポリマー・アジュバントと少なくとも1つの医薬上の活性成分とを含むマイクロ構造物またはナノ構造物が配合された剤形もまた提供され、前記マイクロ構造物またはナノ構造物は放出されて胃内容物が腸管に移動するときに、胃の粘膜表面に付着し、かくして前記医薬剤剤が胃の内部に保持される期間を引き延ばし、結果的に(複数の)医薬上の活性成分の胃内での保持時間が増加する。
【0017】
電解質溶液または塩溶液中で、限定されるわけではないが、ホフマイスター・シリーズ(Hofmeister Series)塩由来の塩から選択される電解質または塩と架橋され、マルチユニットを生成するポリマーも提供される。
【0018】
経口摂取可能な錠剤の形態である医薬剤形もまた提供され、前記医薬剤形は、使用時に、胃内容物と接触した場合に発泡性し、かくして前記剤形は低密度となり、胃内容物の表面に移動することが可能となる。
【0019】
多種のポリマー・マルチユニットを含有する経口摂取可能な錠剤の形態である医薬剤形もまた提供され、前記医薬剤形は、胃内容物と接触すると、そのポリマー・マルチユニットを放出し、前記マルチユニットは水和して膨張し、そのマルチユニットの密度は低下し、結果的に前記マルチユニットは胃内容物の表面に浮揚したままでいることが可能となり、後に、胃内容物が腸管に移動する前か後のいずれかで、胃の粘膜内層に付着することとなる。
【0020】
使用時に、(複数の)医薬上の活性化合物が延長された期間にわたって放出されることを可能にする速度調節型の放出コーティング(rate-modulated release coating)で被覆された医薬剤形、あるいはマルチユニットもまた提供される。
【0021】
(複数の)医薬上の活性化合物、賦形剤および/または浸透エンハンサーと混合された内側のマルチユニット成分もまた提供される。
【0022】
錠剤の形態である医薬剤形もまた提供され、前記錠剤は、複数の層を有し、各層は不活性化合物を含むか、あるいは少なくとも1つの医薬上活性な化合物と少なくとも1つの生体分解性ポリマーとを含み、前記生体分解性ポリマーは、使用時に生分解し、前記ポリマーのその生体分解性に依存した所定の放出速度で(複数の)前記医薬上活性な化合物を放出する。
【0023】
標準的な親水性ポリマー、あるいは親水性の膨張性または浸食性(erodible)または生体付着性のポリマー、さらに別には標準的な疎水性ポリマー、よりさらに別には疎水性の膨張性/侵食性/生体付着性ポリマー、好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、エチルセルロース(EC)、ポリ(乳酸)コ−グリコール酸(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメタクリレート、ポリカプロラクトン、ポリエステル、ポリアクリル酸およびポリアミドからなる群より選択される1つ以上のポリマーであるポリマー・アジュバントもまた提供される。
【0024】
コポリマーと混合されたポリマーまたは医薬剤形に単独で用いられるポリマーもまた提供される。
【0025】
使用時に、12時間を超えた期間の1つ以上の医薬上の活性成分の零次、一次およびバースト放出を達成するよう選択されたポリマーもまた提供される。
【0026】
胃腸管に関連する状態の局所療法に適用される前記医薬剤形もまた提供される。
【0027】
本発明は、経口投与可能な錠剤の形態の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形の生産方法に関するものであり、各錠剤は、複数のマルチユニットを含み、各マルチユニットは少なくとも1つの医薬上の活性成分と、前記マルチユニットの保持を高めて結果的に胃腸管の所定の領域に前記のそのまたは各々の医薬上の活性成分の保持を高める少なくとも1つのポリマー・アジュバントとを有しており、前記方法は、錠剤に配合する前後に前記マルチユニットを凍結乾燥させることを含む。
【0028】
多孔性構造を有する凍結乾燥されたマルチユニットもまた提供され、前記マルチユニットは、使用時に、その密度が低下することで、それらは胃部での浮揚性を維持することが可能となる。
【0029】
1g/cm未満の密度の胃保持型の医薬剤形もまた提供され、かくして、前記剤形は、使用時に、胃内容物との接触に際して浮陽性であり、その剤形の密度はその剤形の多孔性の関数であり、剤形の多孔性は、孔形成剤(pore forming excipient)の添加および/または凍結乾燥プロセスの調整によって、その製造の間に調整される。
【0030】
粘膜付着性の性質を有する胃保持型の医薬剤形がさらに提供され、その性質は、適切なポリマー、好ましくはポリアクリル酸の配合の結果、および/または胃保持型の医薬剤形と胃腸管との静電相互作用、水素結合、疎水性相互作用および相互拡散の結果である。
【0031】
好ましくは胃内での粘膜付着性の性質を有する胃保持型の医薬剤形もまた提供され、その性質は、伸縮性の(extended)高分子ネットワーク、有意な水和、カルボキシル基の数、ならびにイオン電荷の存在の関数である。
【0032】
ポリマーと賦形剤とで構成される堅剛なマトリックスを有する胃保持型の医薬剤形がさらに提供され、好ましくはポリマーおよび賦形剤は、亜鉛、カルシウム、アルギン酸塩、ペクチンおよびPLGAからなる群より選択されるものであり、前記ポリマーおよび賦形剤は、3〜4の間のpKaを有するように形成され、Hイオンの減少した解離により作動し、胃内容物との接触プロセスにおいて、結果的により多くなった水素結合となる。
【0033】
使用時に、胃保持型の医薬剤形からの薬物放出速度に影響を及ぼす可変の厚みおよび侵食動力学を有する外側のバリアを使用時に形成する、胃保持型の医薬剤形の堅剛なマトリックスを構成するポリマーおよび賦形剤もまた提供される。
【0034】
本発明の実施形態を単なる例示として以下に記載し、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】胃浮揚性装置からの薬物放出に関して提案する機序の略図である。
【図2】マイクロ構造物またはナノ構造物を包埋し得るマルチユニットに関して提案する成分の解説図である。
【図3】ボックス−ベンケン計画(Box-Behnken design)テンプレートのように、胃浮揚性装置により達成される放出プロフィールを示す。
【図4】様々な濃度のPAAやPLGAおよびモデル薬物としてのメトホルミンを使用する胃浮揚性装置から得られた放出プロフィールを示す。
【図5】a)微粒子のみ、およびb)胃浮揚性装置内に配合された微粒子から得られた放出プロフィールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(好ましい具体例の説明)
胃保持型の機構としての薬物送達システムの浮揚化は広く用いられている。これらのシステムは、流体力学的バランスとして知られており、胃液上で浮揚性であり、幽門括約筋を通じて排出されることを、膨張および拡張することにより遅延させる。浮揚性は、マトリックス密度の低下の結果である(Kwon and Singh, 1998; Yasunori et al., 2004)。浮揚性の送達システムは、シングルユニット装置やマルチユニット装置(Whitehead et al., 1999)として設計されており、後者は製剤化の難題であるため稀にしか使用されない。シングルユニットシステムには、不十分な胃保持、絶食状態や食後の状態での多様な隆起や運動性、および乏しい機械的完全性(mechanical integrity)のように重大な限界がある。
【0037】
一方、マルチユニット浮揚性システムは、以下の特性のために有利である:
(i) シングルユニットシステムの「全か無か」の胃内容物排出挙動に打ち勝つ、それらの能力;
(ii) それらは、より予測可能な放出プロフィールを提供する;
(iii) それらは、1つのユニットがシステム全体の効果を構成しないため、装置の性能を著しく損なわない;および
(iv) その各々が異なる放出速度を有する1つを超える薬物を包含するその能力。
【0038】
現在までに、架橋されたマルチユニットの強化された胃保持型の装置の医薬上の性能に関する研究は報告されていない。本発明の全体的な目的は、モデル薬物であるリボフラビンやメトホルミンについての長期に及ぶ放出速度を提供し得るマルチユニット胃浮揚性装置を開発することであった。
【0039】
このシステムにおいて考えられるポリマーはすべて、生分解性かつ生体適合性であって、生体付着性および膨張特性を有する。生体付着性ポリマーは、様々な方法で胃の粘膜内層と相互作用する。これには、イオン結合、水素結合、ジスルフィド結合および物理的な結合が挙げられる。調べたポリマーには、セルロース・クラスのもの、すなわちヒドロキシプロピルメチルセルロース、同様にアルギン酸塩、キトサン、ペクチン、ポリ(ラクチド)およびグリコリド、PLGA、ポリ(メタクリル酸塩)およびポリ(アクリル酸)ポリマーが含まれる。ポリマー、架橋剤および賦形剤はすべて、分析等級のものであった。
【0040】
胃浮揚性であり生体付着性の長期間に及ぶ放出の薬物送達システムは、シングルまたはマルチ−ユニット製剤のいずれかとしても開発できる。シングルユニット製剤に関して主として不利な点は、それらの「全か無か」の排出プロセスであり、それは、バイオアベイラビリティーおよび胃刺激症状に大きな変動をもたらし得る。しかしながら、マルチユニット薬物送達システムは、より再現可能な胃滞留時間や対象間での低下した吸収変動を提供し、胃腸管を通じて優れた分散パターンを示し、結果として、局所粘膜に対する損傷に関する低下した危険性をもたらす。粘膜付着性薬物送達システムは、十分に長期間の薬物の徐放を達成することに失敗していたため、胃腸管内に薬物を送達するその完全な潜在能には依然として達していなかった。
【0041】
胃保持型の医薬剤形に適したポリマーは、文献で提供されている一般に利用可能な情報に基づいて特定した。本願の目的は、外側の錠剤−様装置内に配合された、凍結乾燥膨張性ポリマー・マルチユニットシステムを利用したマルチユニットの胃保持型の医薬剤形を開発することであった。リボフラビンおよびメトホルミンは、典型的な狭い吸収帯の医薬上の活性化合物であり、胃保持型の装置からの長期間の放出速度を評価するために用いた(図1)。
【0042】
ボックス−ベンケン(Box-Behnken)統計計画テンプレートの27の無作為実験試行および3つの中心点を、ミニタブ(Minitab(USA))を用いて確立した。ポリマー・マトリックスは、様々な濃度および組合せのポリマー、好ましくは、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、ポリ酪酸コポリマーおよびポリアクリル酸を用いて製剤化した。(複数の)医薬上の活性化合物を、様々な比率で、好ましくは2:1(ポリマー:薬物)の割合でポリマー分散に加えた。ゲル化を利用して、統計計画に一致した架橋されたポリマー、生物活性充填型(bioactive-loaded)マルチユニットを形成させた。
【0043】
マルチユニットの浮揚性を最適化するために、各製剤を、所定の期間、凍結乾燥に付した。(複数の)医薬上の活性成分の薬物の配合効率は、分光光度法で決定した。薬物放出の試験管内(in vitro)評価、マトックス堅剛性の決定およびシステムの浮揚性の観察は、pH 1.2の模擬胃液(simulated gastric fluid)およびpH 6.8のリン酸緩衝液中で行った。
【0044】
マルチユニットの調製には、様々な濃度のプロタノール(Protanol、アルギン酸塩)、ペクチン、PAA、PLGAおよびグルコン酸亜鉛または水酸化カルシウム溶液中で架橋されたメトホルミンを含む均質化ポリマー溶液を伴った。このマルチユニットを、一晩(グルコン酸亜鉛)または20分間(水酸化カルシウム)放置して硬化させ、脱イオン水で3回洗浄した。次いで、それらを、−72℃で24時間凍結させ、−60℃、25ミリトルで24時間凍結乾燥させた。
【0045】
微粒子調製には、水性キトサン溶液の有機ポリ(メタクリル酸塩)溶液への乳化が伴った。結果としてのエマルジョンは、架橋剤を用いてイオン的に架橋された。微粒子を洗浄し、ろ過および空気乾燥し、ガストロスフェア内に配合した。
【0046】
2つの異なる製剤化手法もまた研究し、第一の手法には水/油/水のダブルエマルジョンを伴い、一方、第二の手法にはイオン・ゲル化を伴った。ダブルW/O/Wエマルジョン法を用いて、多様なクラスのポリマーを使用した。上記ポリマー溶液は、有機溶媒、例えばジクロロメタンの使用により調製した。次いで、薬物水溶液を、第一のポリマー溶液に加え、最初のW/Oエマルジョンを開発した。次いで、この最初のエマルジョンを、ゆっくり第二のポリマー溶液に激しく攪拌しながら注入し、最終的なW/O/Wダブルエマルジョンを作成した。過剰な有機溶媒を蒸発させ、残ったエマルジョンをろ過し、凍結乾燥した。
【0047】
イオン・ゲル化手法に関して、モデル薬物であるリボフラビンを、アルギン酸ナトリウム、ペクチンおよび/またはポリラクチド・コグリコリドのいずれかを含むポリマー溶液中に、2:1の割合(ポリマー:薬物)で加えた。キサトサン、マンヌロン酸塩(mannuronate)およびグルクロン酸塩(guluronate)を100mLの脱イオン水に溶解した。その分散液に覆いをして光への暴露をすべて遮り、1時間攪拌した。その後、ポリ(ラクチド・コグリコリド)顆粒混合物をその分散液にコンソリデイター(consolidator)として加えた。ポリ(ラクチド・コグリコリド)は、脱イオン水中で不溶性であるため、均質化して一様なマルチポリマー分散を形成させる。薬物−ポリマー分散液のゲル化のための溶液は、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムまたはホフマイスターシリーズから選択される組合せのいずれかを含んだ。蠕動ポンプを用いて、この薬物−ポリマー溶液を、穏やかに攪拌しながらゲル化溶液に1mL/分でゆっくり滴定した。このプロセスの完了時に、架橋されたマルチユニットをこの溶液中でさらに45分間攪拌し、ろ過、洗浄および凍結乾燥させた。この期間の後、それらをろ過し、脱イオン水で洗浄した。それらの水和物状態で、このマルチユニットを、プラスチック・トレイに移し、凍結乾燥した。
【0048】
凍結乾燥は、マルチユニットの多孔性を高めることによりマルチユニットの浮陽性を補助し、それにより、薬物送達システム全体の密度は減少する。形成されたマルチユニットは、−60℃で2時間、次いで40ミリトルで24時間の真空条件下で凍結乾燥させた。
【0049】
pH±1.2で可溶性の適切なポリマー溶液を用いた。ディオスナ・ミニラボ(登録商標)リキッド・ベッド・プロセッサー(DIOSNA MiniLab(R) Fluid Bed Processor:DIOSNA,Osnabruck,Lower Saxony, Germany)を使用して、2段階のコーティングを行った。最初に、マルチユニットをコーティングして、ポリマーの厚みを変え、薬物放出が重ならないようにずらした。第2の段階は、錠剤の薬物送達システム全体のコーティングに関するものであり、これは、錠剤が胃に侵入する前に発泡、膨張および付着が生じないことを保証するものである。
【0050】
二層錠剤は、ミニプレス・タブレット・プレス(MiniPress Tablet Press:DIOSNA, Osnabruck, Lower Saxony, Germany)を用いて調製した。第一層は発泡性ディスクを含むが、第二層は薬物充填マルチユニットを含有した。他の賦形剤、例えばラクトースおよび無菌タルクを、潤滑剤として、また希釈剤として含んだ(図1)。
【0051】
4つの要素、27個の無作為実験試行および3つの中心点からなるボックス−ベンケン計画は、エッセンシャル・リグレッション・オブ・エクスペリメンタル・デザイン(Essential Regression of Experimental Design)V2.207(Pennsylvania, USA)ソフトフェアを用いて確立した。試験した製剤の可変量にはポリマー濃度が挙げられるが、一方で、凍結乾燥時間がプロセスの重要な可変量を構成した。理想的には、ポリマーは0.25〜2%w/vで試験した。凍結乾燥時間は、2〜24時間の範囲であった。
【0052】
表面構造および構造体内部の孔の生成を可視化するために、形成されたマルチユニットの形態および寸法を、走査型電子顕微鏡(SEM)(JEOL, Tokyo, Japan)により分析した。
【0053】
マルチユニット内部に取り込まれた薬物量を決定するために、薬物の充填効率を測定した。かくして、薬物取り込み試験を行った。マルチユニット試料を、模擬胃液に溶解し、完全な抽出を確実に行わせるために24時間放置した。その溶液をろ過し、存在する薬物量を超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)を用いて決定した。各決定は3回の繰り返しで実施した。
【0054】
マルチユニットを、真空チャンバー内に、異なる温度で、蛍光の光の非存在下また存在下の湿度条件で保存した。用いた典型的な条件は、5℃、21℃および37℃で、75%の相対湿度を有するものであった。この試験は、3ヶ月の期間にわたって実施した。用いたモデル薬物からなる未処理の薬物と分解産物の両方を分析するためのUPLC法を開発した。UPLCに加えて、マルチユニットの水分含有量を、カール−フィッシャー(Karl-Fischer)装置を用いて分析した。そのマルチユニットの浮揚性を視覚的に観察した。マルチユニットが浮揚性になるまでの時間(ラグタイム)および浮揚性の期間を記した。
【0055】
約50mgのマルチユニットを、一塩基のリン酸緩衝液、pH6.8に溶解した。マルチユニットの溶解は、それらを粉砕することによって容易にし、その後、緩衝液に加えた。その溶液をろ過し、薬物濃度を分光光度法で測定した。それぞれの決定は、3回の繰り返しで実施した。放出試験は、USP23装置を用い、USP推奨緩衝液(pH1.5、4、6.8;900mL;37±0.5℃)において、完全に較正された6ステーション・希釈試験装置で実施した。すべての研究は、自動サンプリング手順を用いて3回の繰り返しで実施した。薬物放出は、UPLCを用いて決定した。
【0056】
さらに別の溶解試験においては、重量200mgのマルチユニット試料をカプセル化した。その薬物放出は、37℃に維持されたpH 1.2の模擬胃液中で12時間を超える期間のUSP1方法を用いて決定した。所定の時期に試料を5mL取り、溶解溶媒を、シンク条件(sink condition)を維持するために薬物を含まない緩衝液と交換した。試料は、UV分光法により分析した(図1)。
【0057】
時間に伴う連続的なpH変化(すなわち、模擬した胃腸でのpH変化)の効果を決定するために、USP25装置3(Bio-Diss II Release Rate Tester, Vankel Industries)およびpHの異なる緩衝液(管あたり220mL)を用いて、37±0.5℃で溶解試験を実施した。塩化ナトリウム、ペプシン、塩酸および脱イオン水を含む模擬胃液を調製した。製剤を、pH 1.5、4および6.8の各々に12時間の連続試行に2回の繰り返しで付した。10dips毎分(dpm)の標準的な振動率を、この試験で一貫して用いた。試料を取り出し、濃度を決定する時間間隔は、0、0.5、2、4、6、10、12、18および24時間であった。
【0058】
膨張性の決定については、マルチユニット試料を、10mLの模擬胃液を含み、37±0.5℃で維持されたガラス瓶に移した。膨張したマルチユニットを一定期間ごとに取り出し、測量した。実験は3回の繰り返しで実施した。ポリマー膨張性のパーセンテージは、数式1から算出した:
【0059】
【数1】

【0060】
薬物送達システムの浮揚性の特性は、回転パドル装置を使用し、37±0.5℃に維持された模擬胃液中での外観観察により決定した。マルチユニットの溶解溶媒中への導入とその溶媒上部での浮遊性となるまでの間の時間間隔を、浮揚性とした。浮揚性であった期間も記録した。浮揚性ラグタイムおよび浮揚性の期間は、塩酸緩衝液pH 1.5中で決定し、比較の目的で、リン酸緩衝液pH 6.8中でのラグタイムおよびシステム浮揚性の期間を視覚的に観察した。
【0061】
テクスチャー分析を、テクスチャー・エクスポネット(Texture Exponent)V3.2ソフトウェア・パッケージを備えたテクスチャー・アナライザー(Texture Analyzer:Stable Microsystems, Surrey, UK)を用いて実施した。薬物送達システムについての生体付着性および弾力を決定した。
【0062】
薬物送達システムの生体付着性を評価するために、新鮮な摘出後のウサギの胃部分から当該ポリマーを引き離すのに要する張力を測定した。胃の組織部分をプローブに固定し、そのプローブを組織マウントと接触するまで下げ、ポリマーを取り出すのに必要とされる力を、力−時間の曲線(Force-Time curve)により決定した。実験は、3回の繰り返しで実施した。
【0063】
圧縮はマルチユニットを錠剤化する際に関係する選択肢であるため、マルチユニットは十分に弾力的でなければならない。従って、マルチユニットを、弾力測定にかけた。有孔率は、マルチユニットのテクスチャー・プロファイリングにより定量的に分析した。
【0064】
マルチユニットは塩酸緩衝液pH 1.5中でおよびリン酸緩衝液pH 6.8で24時間の期間にわたって水和した。所定の時期に、試料を取り出し、5kgのロードセルにより制御された40Nの負荷をかけた。力−距離プロフィール(Force-Displacement profile)を作り出し、マトリックス変形の程度を分析した。これらの試験は、テクスチャー・アナライザーを用いて実施した。力・距離プロフィールのラグフェーズは、周辺のゲル成長の目安を提供し、したがって、膨張の程度に変換することができた。
【0065】
膨張率(SR)はまた、数式2を用いて算出した:
【数2】

式中、Wは乾燥マルチユニットの当初の質量であり、Wは、媒体中で膨張が平衡状態にある膨張したマルチユニットの質量である。各実験は3回の繰り返しで、平均値±標準偏差をSR値とした。
【0066】
水和系のレオロジーは、サーモ−ハックMARSレオメーター(Thermo-Haake MARS Rheometer)を用いて評価した。試料を、生物学的温度37±0.5℃を達成するために水槽内の模擬胃酸に移した。所望の温度に達するとすぐに、試料をその水槽から取り出し、レオメーターのステージに乗せ、フロー−カーブ分析した。センサーを最小の5rpmで回転させた後に、粘性を測定した。すべての測定は3回の繰り返しで実施した。薬物送達システムの寸法安定性を記録することは、再現性にとって重要であった。寸法安定性は、温度暴露の結果として得られる直線的な寸法変化の測定である。寸法安定性は、溶解装置を用いて、模擬胃酸中で視覚的に観察された。
【0067】
各応答(すなわち、従属変数)に対する分散分析を95%信頼区間で行い、独立変数(主効果)間の相互の影響の程度を決定した。二次設計(quadratic design)を用いたため、以下の指標が得られた:R、ダービン・ワトソン統計量およびモデルの適合性および安定性を保証するPRESSインデックス。加えて、薬物放出動力学は、べき法則、ホプフェンブルグ・モデル・アンド・ペッパーズ−サーリン・リラクゼーション・イクエイション(Hopfenberg Model and Peppas-Sahlin Relaxational Equation)により分析した。
【0068】
しばしば、ボックス−ベンケン計画を用いて、応答表面を研究する。この計画は、通常、二次応答表面(quadratic response surface)がフィットすること可能とするように作られる。その要素は、3つの均等な距離のレベル、すなわち−1、0、1で試験される。その構成は、−1および+1の要素の組合せのすべてに適用されるが、一方で、他の要素は0に維持される、うまくいく要素の組合せを選択するための釣合い型不完備ブロック計画(balanced incomplete block design)を用いる。エッセンシャル・リグレッション・アンド・エクスペリメンタル・デザイン(Essential Regression and Experimental Design)V2.207により作成された95%信頼区間(ANOVA)のp値は、独立変数と従属変数との間の相互の影響についての有意性に関する情報を提示した。最大の変動係数(CV)0.1を許容基準として用いた予備試験を行い、製剤化プロセスの再現性を決定した。各応答(従属変数)に関するボックス−ベンケン計画(Box-Behnken Design)の適合度を評価するために用いた統計パラメータは、相関係数(R)、粘度指標(Precision Index)およびアンダーソン−ダーリン(Anderson-Darling)統計が挙げられる。ポリアクリル酸(PAA)を含むまたは含まないマルチユニット製剤は、迅速に浮揚性となり、72時間を超えて浮揚性を維持した。生体接着性の結果は、PAAのアルギン酸塩−ペクチンのマルチユニット製剤への添加は結果としてより好ましい生体接着性プロフィールを与えることを示唆した。PAAを含有する製剤は、生体付着の段階的な増加を示し、4時間後に最初のピークを示し、かくして、付着性は時間の要因を越えて増加したことを明らかにした。1%w/vのPAAを含有する試料が最適な生体接着性を実際に示したことが観察された。結果は、PAAのアルギン酸塩−ペクチン酸塩のマルチユニットへの配合が、浮揚性を変化させることなく、生体接着性をうまく改善したことを明らかにした。両方の特性は、胃保持型の薬物送達システムの設計に重要であり、従って、これらのマルチユニットは狭い吸収帯の薬物の送達に利用することができる(テーブル1)。
【0069】
さらに、結果は、胃保持の達成に対する凍結乾燥時間およびポリマー濃度の影響を実証した(テーブル1)。加えて、上記製剤の可変量は、ポリマー・マルチユニットの特性に有意に影響を及ぼした。浮遊ラグ時間および膨張傾向は、マルチユニットに関する有孔率の程度および水和速度により決定された。薬物放出は、零次動力学で12時間の期間にわたって維持され得た(n≒0.90)(図3および4)。
【0070】
すべてのマルチユニットは迅速に浮揚性となり、浮揚性は48時間を超えて維持された。薬物の取り込み効率(entrapment efficacy)は望ましくは高く、それは80〜95%の範囲である。PAA濃度の増加は、結果として薬物放出が増加することとなった。結果は、浮揚性ラグ時間および膨張傾向が、マルチユニットの有孔率の程度および水和速度により決定されたこともまた示した。薬物放出は、零次動力学が12時間を超えて維持された(n≒0.90)(図3)。
【0071】
装置は、HCl緩衝液(pH1.5)およびPBS緩衝液(pH7.4)中で、長期間(それぞれ、t>48時間およびt>24時間)浮揚性を維持した。各緩衝媒体における浮揚性の期間は、製剤の可変量から独立していた。この装置は、最初のアップ−カービング零次放出フェーズ(up-curving zero-order release phase、t4時間で65%)、続いて持続性ラグフェーズ(sustained lag phase、t24時間で40%)を伴うツーフェーズ(two phase)で薬物を放出することができた。DEE試験は、取り込み効率が70〜90%の間にあることを実証した(図3および4)。
【0072】
架橋された薬物充填ポリマー・マルチユニットの27の統計学的に計画された組合せを調合した。ポリマー濃度は、0.5〜2%w/vの範囲であった。架橋したマルチユニットを、所定の凍結乾燥時間に供した。用いたポリマー濃度はマルチユニットの堅剛性に影響することが観察された。加えて、凍結乾燥時間は、マルチユニットの有孔率に影響を及ぼした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの医薬上の活性成分と、胃腸管の所定の領域における前記医薬上の活性成分の保持を増強する少なくとも1つのポリマー・アジュバントとを含む、経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項2】
マイクロおよび/またはナノ構造物が配合されたマルチユニット剤形である、請求項1記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項3】
水和することで浮揚性となる錠剤の形態である、請求項1または請求項2の記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項4】
医薬上の活性成分が、その吸収帯に達する前に連続的に低速で放出され、それによって使用時の最適なバイオアベイラビリティーを保証する、請求項1〜3のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項5】
ポリマー・アジュバントが胃浮揚性および/または生体付着性の増強組成物である、請求項1〜4のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項6】
胃浮揚性および/または生体付着性の増強組成物が、使用時に、当該剤形の胃腸管内での滞留時間を延長するよう作用し、結果的に、前記のそのまたは各々の各医薬上の活性成分の胃腸管内での滞留時間を延長するよう作用する、請求項5記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項7】
医薬上の活性組成物が、不十分なバイオアベイラビリティーまたは狭い吸収帯を有する、請求項1〜6のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項8】
医薬上の活性化合物が、23%の絶対的または相対的バイオアベイラビリティーを有するアシクロビル;好ましくは65%の絶対的または相対的バイオアベイラビリティーを有するカプトプリル;好ましくは15%の絶対的または相対的バイオアベイラビリティーを有するリボフラビン;好ましくは30%の絶対的または相対的バイオアベイラビリティーを有するレボドパ;好ましくは40%のバイオアベイラビリティーを有するニトロフラントイン;および、好ましくは69%の絶対的または相対的バイオアベイラビリティーを有するシプロフロキサシンからなる群より選択されるものである、請求項7記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項9】
医薬上の活性成分が、ポリマー・アジュバントと均一なブレンドとして混合されたものである、請求項1〜8のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項10】
医薬上の活性成分およびポリマー・アジュバントが、少なくとも1つの操作可能な内側の成分および操作可能な外側の成分を含有するマルチユニット構造を有し、前記操作可能な内側および外側の成分は、医薬上の活性成分、またはポリマー・アジュバント、あるいは医薬上の活性成分とポリマー・アジュバントとのブレンドのいずれかから構成されるものである、請求項1〜8のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項11】
当該剤形は、使用時に胃浮揚性かつ生体付着性であって、前記医薬剤形は、最初は胃内容物の表面上で浮揚性であり、胃内容物が胃を通過して腸管に移動するときに、胃の粘膜表面に付着し、かくして、前記医薬剤形は胃の内部で保持される期間が引き延ばされ、結果的に、その医薬上の活性成分の胃での保持時間が増加する、請求項1〜10のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項12】
当該剤形は、生体付着性ポリマー・アジュバントと少なくとも1つの医薬上の活性成分とを含むマイクロ構造物またはナノ構造物が配合されており、前記構造物は、胃内容物が腸管に移動するときに放出されて胃の粘膜表面に付着し、かくして、前記医薬剤形が胃の内部に保持される期間が延長され、結果的に、その医薬上の活性成分の胃での保持時間が増加する、請求項1〜11のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項13】
ポリマーが、電解質または塩を含む所望の電解質溶液または塩溶液中で架橋されたものである、請求項1〜12のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項14】
電解質または塩を含む所望の電解質溶液または塩溶液が、マルチユニットを生成するための、ホフマイスター・シリーズ(Hofmeister Series)塩から選択される、請求項13記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項15】
使用時に、胃内容物と接触すると発泡し、かくして、当該剤形は低密度となり、胃内容物の表面に移動することが可能となる経口摂取可能な錠剤の形態である、請求項1〜14のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項16】
当該剤形は、多様なポリマー・マルチユニットを含有する経口摂取可能な錠剤の形態であって、前記剤形は胃内容物と接触すると、前記ポリマー・マルチユニットを放出し、それらは水和して膨張し、前記マルチユニットの密度は低下し、結果的に、前記マルチユニットは、胃内容物の表面に浮揚したままでいることが可能となり、後に胃内容物が腸管に移動する前または後のいずれかで胃の粘膜内層に付着する、請求項1〜14のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項17】
使用時に、医薬上の活性化合物が長期間にわたって放出されることを可能にする、速度調節放出コーティングで被覆されている、請求項15記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項18】
マルチユニットが、使用時に、医薬上の活性化合物が長期間にわたって放出されることを可能にする、速度調節放出コーティングで被覆されている、請求項16記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項19】
内側のマルチユニット成分が、医薬上の活性化合物、賦形剤および/または浸透促進剤と混合されたものである、請求項1〜18のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項20】
錠剤の形態である、請求項1〜19のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項21】
錠剤が複数の層を有する、請求項20記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項22】
錠剤の各層が、少なくとも1つの医薬上の活性化合物と少なくとも1つの生分解性ポリマーとを有し、前記ポリマーは使用時に生分解され、前記ポリマーの生分解性に依存して、前記医薬上の活性化合物を所定の放出速度で放出する、請求項21記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項23】
ポリマー・アジュバントが疎水性ポリマーである、請求項1〜22のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項24】
ポリマーが、親水性の膨張性または侵食性または生体付着性のポリマーである、請求項23記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項25】
ポリマー・アジュバントが疎水性ポリマーである、請求項1〜22のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項26】
ポリマーが、疎水性の膨張性または侵食性または生体付着性のポリマーである、請求項25記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項27】
ポリマー・アジュバントが、ヒドロキシエチルセルロース(HEC);ヒドロキシプロピルセルロース(HPC);ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);ポリエチレンオキシド(PEO);ポリビニルアルコール(PVA);アルギン酸ナトリウム;ペクチン;エチルセルロース(EC);ポリ(乳酸)コ−グリコール酸(PLGA);ポリ乳酸(PLA);ポリメタクリレート;ポリカプロラクトン;ポリエステル;ポリアクリル酸;および、ポリアミドからなる群より選択される1つ以上のポリマーである、請求項23〜26のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項28】
ポリマーが、コポリマーと混合されたものであるか、または医薬剤形に単独で用いられるものである、請求項27記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項29】
ポリマーが、使用時に、12時間の期間にわたって1つ以上の医薬上の活性成分の零次、一次およびバースト放出を達成するために選択されたものである、請求項23〜26のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項30】
胃腸管に関連する状態の局所的な処置に適用される、請求項1〜29のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項31】
各マルチユニットが、少なくとも1つの医薬上の活性成分と少なくとも1つのポリマー・アジュバントとを含有し、前記アジュバントは、胃腸管の所定の領域における前記マルチユニットの保持を増強し、結果的に前記医薬上の活性成分の保持を増強する、請求項16〜30のいずれか一項記載の経口投与可能な医薬剤形。
【請求項32】
マルチユニットが、錠剤に配合される前に凍結乾燥されることを特徴する、請求項31記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項33】
マルチユニットが、錠剤に配合された後に凍結乾燥されることを特徴とする、請求項31記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項34】
凍結乾燥されたマルチユニットは多孔性の構造を有し、前記構造は、使用時に、前記マルチユニットの密度を低下させ、前記マルチユニットが胃部で浮揚性を維持することを可能にする、請求項32または請求項33記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項35】
胃保持型の医薬剤形の密度が、1g/cm未満であり、かくして、前記剤形が使用時に胃内容物との接触に際して浮揚性である、請求項1〜34のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項36】
当該剤形の密度が、前記剤形の多孔性の関数である、請求項1〜35のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項37】
当該剤形の多孔性が、孔形成剤を添加すること、および/または凍結乾燥プロセスを調整することによって、その製造の間に調整されることを特徴とする、請求項36記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項38】
胃保持型の医薬剤形の生体付着性の特性が、少なくとも1つの適切なポリマーの配合の結果であるか、および/または、静電相互作用、水素結合、疎水性相互作用、もしくは胃保持型の医薬剤形と胃腸管との間の相互作用の結果である、請求項5〜37のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項39】
ポリマーがポリアクリル酸である、請求項38記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項40】
胃保持型の医薬剤形の生体付着性の特性が、伸縮性の高分子ネットワーク、有意な水和、カルボキシル基の数およびイオン電荷の存在のうちの少なくとも1つの関数である、請求項5〜39のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項41】
当該剤形は、ポリマーと賦形剤とで構成される堅剛なマトリックスを有し、それは、使用時に、Hイオンの減少した解離により作動し、胃内容物との接触プロセスにおいて、結果的により多くなった水素結合となる、請求項1〜40のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項42】
ポリマーおよび賦形剤が、亜鉛、カルシウム、アルギン酸塩、ペクチンおよびPLGAからなる群より選択されるものである、請求項41記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項43】
ポリマーおよび賦形剤が、3〜4の間のpKaを有する、請求項41または請求項42記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形。
【請求項44】
当該剤形の堅剛なマトリックスを構成するポリマーおよび賦形剤が、使用時に、前記医薬保持型の医薬剤形からの薬物放出速度に影響を及ぼす、可変の厚みおよび侵食動力学を示す外側のバリアを使用時に形成する、請求項41〜43のいずれか一項記載の経口投与可能な医薬剤形。
【請求項45】
請求項1〜44のいずれか一項記載の経口投与可能な胃保持型の医薬剤形を製造する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−504551(P2012−504551A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514137(P2011−514137)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005828
【国際公開番号】WO2009/153632
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(507198875)ユニバーシティ・オブ・ジ・ウィトウォーターズランド・ヨハネスブルク (7)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF THE WITWATERSRAND, JOHANNESBURG
【Fターム(参考)】