説明

胃切除および胃形成を行うための方法および装置

【課題】胃切除および胃形成を行うための方法および装置を提供する。
【解決手段】一実施形態では、方法は、患者の腹壁に形成された開口部および患者の膣壁に形成された開口部を通して、患者の胃へのアクセスを得ることを含む。胃に付着した組織は、腹部開口部および膣開口部のうち一方を通して挿入された外科器具を用いて張力をかけられてよく、別の開口部を通して、例えば腹部開口部および膣開口部のうち一方を通して、挿入された切開用外科器具を用いて、胃の基底部を解放するように胃から分離されることができる。基底部は、腹部開口部および膣開口部のうち一方を通して挿入された外科ステープラを用いて、少なくとも部分的に横切開され、それによって、胃「スリーブ」を形成することができる。別の実施形態では、方法は、膣壁に開口部を形成する代わりに、患者の腹壁に別の開口部を形成するように改変される。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、胃切除および胃形成と、胃切除および胃形成を行うための方法および装置と、に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
肥満は、肥満の人数が増え続け、肥満の健康への悪影響について多くのことが知られるにつれて、特に米国では、大きな懸念事項になってきている。理想体重を100ポンド(45.36kg)以上超える病的肥満は、特に、重篤な健康問題に対する著しいリスクを呈する。したがって、肥満患者の治療に大きな注目が集まっている。病的肥満を治療するための外科処置には、胃バイパス(胃のステープル留め)、調節可能な胃結紮、ならびに垂直な結紮胃形成およびスリーブ胃切除(胃のすべてまたは一部の除去)が含まれてきた。このような外科処置は、腹腔鏡下でますます実行されている。術後の回復期間の減少、術後の痛みおよび外傷感染の著しい減少、ならびに美容上の結果(cosmetic outcome)の改善は、体腔壁のより小さな切開部を利用して手術を行う腹腔鏡外科医の能力から主に得られる、腹腔鏡手術の確立した利点である。しかしながら、このような肥満治療処置では、複数の腹部切開部がしばしば必要とされ、それによって、表面上の瘢痕など望ましくない術後の結果が生じる可能性が増える。
【0003】
スリーブ胃切除および胃形成は、肥満を治療するため、ならびに胃の一部が除去される癌などの胃の疾患を治療するために、外科医および患者にますます好まれてきている。これは、スリーブ胃切除および胃形成が、患者内にいかなる異物も残さず、複雑な腸バイパスを必要としないためである。代わりに、胃の容積は、胃の部分的除去または分割により減少し、それにより、食道と腸との間に胃「スリーブ」を残す。腹腔鏡的スリーブ胃切除または胃形成処置は、一般的に、約15水銀柱mm(mmHg)(約1999.84Pa)の圧力になるまで炭酸ガスにより腹腔に吹き込みを行う(insufflation)ことを伴う。腹壁は穴をあけられ、直径5〜10mmのまっすぐな管状カニューレもしくはトロカールが、次に腹腔に挿入される。手術室のモニターに接続された腹腔鏡的円筒状拡大光学器械(laparoscopic telescope)が、術野を可視化するのに使用され、また、トロカールのうち1つを通して設置される。腹腔鏡的器具は、外科医および外科助手により操作されるように、2つ以上の追加のトロカールを通して設置される。ゆえに、このような腹腔鏡処置は、複数の器具が、瘢痕化する可能性のある複数の切開部を通して患者に導入されることを必要とする場合があり、かつ/または、互いに近くにある器具間で干渉を生じる場合がある。2つ以上の標準的なカニューレおよび腹腔鏡的器具を腹部において隣り合わせに置くこと、ならびに/または、2つ以上の器具を同じ切開部を通して腹部内に置くことは、いわゆる「チョップスティック(chopstick)」効果を生じ、これは、外科医の手同士の間、外科医の手と器具との間、また、器具間の、干渉を説明したものである。この干渉は、前記の処置を行う外科医の能力を大いに低減する。
【0004】
したがって、患者の回復期間を最小にし、美容上の結果を改善し、「チョップスティック」効果を減少させる、胃切除および胃形成を行う方法および装置に対する必要性が残っている。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明は、概して、胃切除および胃形成を行うための方法および装置を提供する。一実施形態では、患者の腹壁に第1のアクセス孔を形成すること、および患者の消化管を通り、患者の腹腔内へ入る第2のアクセス孔を形成することを含む、手術方法が提供される。この方法は、第1および第2のアクセス孔のうち一方を通して挿入された第1の外科器具を用いて、患者の胃に付着した組織に張力をかけること、第1および第2のアクセス孔のうち一方を通して挿入された第2の外科器具を用いて胃から組織を引き離すこと、ならびに、胃スリーブを形成するために、第1および第2のアクセス孔のうち一方を通して挿入された外科ステープラを用いて胃の一部分を横切開すること、も含みうる。この方法はまた、第1および第2のアクセス孔のうち一方を通して、胃の、横切開された部分を除去することを含むことができる。例えば、観察要素が表面に位置するスコープ装置(scoping device)を、第1および第2のアクセス孔のうち一方を通して患者の中に進めることによって、様々なステップが、可視化の下で実行されうる。
【0006】
様々な器具が、胃スリーブの形成を促進するのに用いられうる。例えば、方法は、寸法測定装置(sizing device)を胃の中に経口腔的に(transorally)導入すること、および横切開されるべき胃の部分の寸法測定のために寸法測定装置を使用することを含むことができる。さらに別の例として、第1のアクセス孔を形成することは、複数のシールポートを有するハウジングを腹壁に位置付けることを含みうる。
【0007】
他の実施形態では、胃の一部分を横切開することは、患者の食道に実質的に近い胃の領域から胃の基底部を分離することを含んでよく、基底部は、患者の幽門弁と流体連通を維持している。さらに別の例については、第2のアクセス孔は、胃スリーブに形成されてよく、いくつかの実施形態では、方法は、第1および第2のアクセス孔のうち一方を通して挿入された装置を用いて患者の肝臓を後退させることを含みうる。
【0008】
別の態様では、胃切除および胃形成を行うための方法および装置が提供され、これらは、患者の膣壁にアクセス孔を形成することを含む。一実施形態では、手術方法が提供され、この方法は、複数のシールポートを有するハウジングを腹壁に位置付けることにより、患者の腹壁に第1のアクセス孔を形成すること、患者の膣壁に第2のアクセス孔を形成すること、第2のアクセス孔を通して挿入された第1の外科器具を用いて、患者の胃に付着した組織に張力をかけること、ハウジングのシールポートのうち1つを通して挿入された第2の外科器具を用いて胃から組織を引き離すこと、および、ハウジングのシールポートのうち1つを通して挿入された第3の外科器具を用いて胃の一部分を横切開すること、を含む。この方法は、多くの変形体を有しうる。例えば、この方法は、ハウジングのシールポートのうち1つを通して挿入された装置を用いて患者の肝臓を後退させることを含みうる。別の例として、この方法は、第1および第2のアクセス孔のうち1つを通して、胃の、横切開された部分を患者から除去することを含みうる。さらに別の例として、第1の外科器具は、第1の把持器を含んでよく、方法は、第2のアクセス孔を通して挿入された第2の把持器を用いて組織に張力をかけることを含んでよい。さらに別の例として、方法は、寸法測定装置を胃の中に経口腔的に導入すること、および横切開されるべき胃の部分を寸法測定するために寸法測定装置を使用することを含むことができる。別の例として、方法は、観察要素が表面に位置するスコープ装置を、第2のアクセス孔を通して患者内に進めることを含みうる。スコープ装置を進めることは、胃の基底部に向かう方向で胃を可視化するため、胃の中で、スコープ装置の長さ方向軸に対して少なくとも2つの方向にスコープ装置を曲げることを含むことができる。
【0009】
別の実施形態では、手術方法が提供され、この手術方法は、患者の腹壁に第1および第2のアクセス孔を形成すること、患者の膣壁に第3のアクセス孔を形成すること、第2のアクセス孔を通して挿入された外科器具を用いて、胃に付着した組織に張力をかけること、第3のアクセス孔を通して患者内に挿入された、観察要素が表面に位置するスコープ装置を用いて、胃を可視化すること、ならびに、第1のアクセス孔を通して挿入された外科ステープラを用いて胃の全長より短い患者の胃の一部分を横切開することを含む。第1のアクセス孔は、第2のアクセス孔の直径より大きな直径を有しうる。この方法は、多くの変形体を有しうる。例えば、この方法は、第1のアクセス孔を通して患者内に挿入された装置を用いて患者の肝臓を後退させることを含みうる。別の例について、胃の一部分を横切開することは、患者の食道の実質的に近くの胃の領域から胃の基底部を分離することを含んでよく、基底部は、患者の幽門弁と流体連通を維持している。さらに別の例について、スコープ装置を用いて胃を可視化することは、胃の基底部に向かう方向で胃を可視化するため、胃の中で、スコープ装置の長さ方向軸に対して少なくとも2つの方向にスコープ装置を曲げることを含みうる。スコープ装置を胃の中で曲げることは、長さ方向軸に沿った第1の場所で第1の方向にスコープ装置を曲げること、およびスコープ装置の上に配されたオーバーチューブ(overtube)を、長さ方向軸に沿った第2の場所で第2の方向に曲げることを含みうる。さらに別の例については、方法は、寸法測定装置を胃の中に経口腔的に導入すること、および横切開されるべき胃の部分を寸法測定するために寸法測定装置を使用することを含むことができる。別の例として、方法は、患者の外部の支持体にスコープ装置を据え付けることを含みうる。さらに別の例として、方法は、胃を囲む組織に張力をかけるため、第3のアクセス孔を通して把持器を挿入することを含みうる。さらに別の例として、第3のアクセス孔を形成することは、外科器具の光学的に透明な先細先端部を用いて膣壁に穴をあけることを含みうる。別の例として、方法は、意識下鎮静システムを用いて患者を鎮静させることを含みうる。さらに別の例として、方法は、薬剤溶出装置を胃の中に送達することを含みうる。
【0010】
別の実施形態では、手術方法が提供され、この手術方法は、患者の腹壁に第1および第2のアクセス孔を形成すること、患者の膣壁に第3のアクセス孔を形成すること、第2のアクセス孔を通して挿入された第1の外科器具を用いて、患者の胃に付着した組織に張力をかけること、第1のアクセス孔を通して挿入された第2の外科器具を用いて胃から組織を引き離すこと、ならびに、第1のアクセス孔を通して挿入された第3の外科器具を用いて胃の一部分を横切開することを含む。第1のアクセス孔は、第2のアクセス孔の直径よりも大きな直径を有しうる。方法は、多数の変形体を有しうる。例えば、組織を引き離すことは、第1の外科器具を用いて組織が張力をかけられているときに行われてよい。別の例として、第1の外科器具は、少なくとも1つの把持器を含んでよく、第2の外科器具は、調和振動メス(harmonic scalpel)を含みうる。さらに別の例として、方法は、胃の中に寸法測定装置を経口腔的に導入すること、および横切開されるべき胃の部分を寸法測定するために寸法測定装置を使用することを含むことができる。さらに別の例として、第3のアクセス孔を形成することは、外科器具の光学的に透明な先細先端部を用いて膣壁に穴をあけることを含みうる。別の例として、方法は、意識下鎮静システムを用いて患者を鎮静させること、および/または薬剤溶出装置を胃の中に送達することを含みうる。さらに別の例として、方法は、観察要素が表面に位置するスコープ装置を、第3のアクセス孔を通して患者内に進めることを含みうる。スコープ装置を進めることは、胃の基底部に向かう方向で胃を可視化するため、胃の中で、スコープ装置の長さ方向軸に対して少なくとも2つの方向にスコープ装置を曲げることを含みうる。スコープ装置を胃の中で曲げることは、長さ方向軸に沿った第1の場所で第1の方向にスコープ装置を曲げること、およびスコープ装置の上に配されたオーバーチューブを、長さ方向軸に沿った第2の場所で第2の方向に曲げることを含みうる。方法は、患者外部の支持体にスコープ装置を据え付けること、および/または、胃を囲む組織に張力をかけるため第3のアクセス孔を通して把持器を挿入することをさらに含みうる。
【0011】
別の実施形態では、手術方法が提供され、この手術方法は、患者の腹壁に第1のアクセス孔を形成すること、患者の膣壁に第2のアクセス孔を形成すること、第2のアクセス孔を通して挿入された第1の外科器具を用いて、患者の胃に付着した組織に張力をかけること、第1のアクセス孔を通して挿入された第2の外科器具を用いて胃から組織を引き離すこと、および、第2のアクセス孔を通して挿入された外科ステープラを用いて胃の一部分を横切開することを含む。この方法は多数の変形体を有しうる。例えば、組織に張力をかけることは、組織に張力をかけるため、第2のアクセス孔を通して挿入された少なくとも2つの把持器を使用することを含みうる。別の例については、方法は、第1のアクセス孔を通して挿入された少なくとも1つの把持器を用いて外科ステープラによってステープル留めされるべき胃組織を扱うことを含みうる。さらに別の例について、第1のアクセス孔を形成することは、複数のシールポートを有するハウジングを腹壁に位置付けることを含みうる。別の例として、方法は、観察要素が表面に位置するスコープ装置を、第1のアクセス孔を通して患者内へ進めることを含みうる。さらに別の例として、方法は、第1および第2のアクセス孔のうち一方を通して、胃の、横切開された部分を患者から除去することを含みうる。別の例については、方法は、寸法測定装置を胃の中に経口腔的に導入すること、および横切開されるべき胃の部分を寸法測定するため、寸法測定装置を使用することを含みうる。
【0012】
本発明は、添付図面と共に理解される、以下の詳細な説明から、さらに十分に理解されるであろう。
【0013】
〔発明の詳細な説明〕
本明細書で開示される装置および方法の構造、機能、製造、および使用の原理の全体的理解をもたらすため、ある例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ以上の例が、添付図面に示される。当業者は、本明細書で特に説明され、添付図面に示される装置および方法が、非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲は請求項によってのみ定められることを理解するであろう。1つの例示的な実施形態と関連して示されるかまたは説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせられてよい。そのような改変および変形体は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0014】
胃切除および胃形成を行うための様々な例示的方法および装置が提供される。ある実施形態では、胃切除または胃形成を行う方法は、患者の消化管、腹壁、および膣壁のうち1つ以上に形成された1つ以上の開口部を通して、患者の胃へのアクセスを得ることを含みうる。様々な器具が、様々な開口部を通して挿入されて、組織に張力をかけて組織を切断すること、胃を寸法測定して横切開すること、手術部位を観察することなどといった、特定のステップを行うことができる。
【0015】
患者は、当業者に認識されるであろうように、あらゆる方法で、胃切除または胃形成外科処置のために準備されることができる。例えば、患者は、処置のために、完全に鎮静させられるか、または意識的に鎮静させられうる。意識下鎮静システムの非限定的な実施形態は、「Oral Nasal Cannula」と題された2005年6月21日出願の米国特許出願公開第2006/0042636号、「Apparatus And Method For Providing A Conscious Patient Relief From Pain And Anxiety Associated With Medical Or Surgical Procedures」と題された2004年10月26日発行の米国特許第6,807,965号、「Apparatus For Drug Delivery In Association With Medical Or Surgical Procedures」と題された2007年4月10日発行の米国特許第7,201,734号、「Method For Drug Delivery In Association With Medical Or Surgical Procedures」と題された2007年7月24日発行の米国特許第7,247,154号に見出すことができ、これらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0016】
図1に示された胃切除処置の例示的な一実施形態では、腹部開口部またはアクセス孔12が、患者10の腹壁14に形成されうる。胃切除中、患者10は、好ましくは、図示のように、横になった、実質的に水平な切石位で検査台18上に位置付けられて、患者の腹部領域への妨げのないアクセス(clear access)を提供する。本明細書で論じられる図1および他の図面は、表示しやすくするため単純化されており、患者10および/または外科処置の所定の瞬間に存在する装置、例えば、先に説明された1つ以上の図面に示された装置および任意の必要な追加的設備、例えば、患者監視設備、安全装置、ビデオモニターなど、を常に示しているわけではない。胃切除は、外科医により行われるものとして説明されるが、当業者が認識するであろうように、1人以上の医学の専門家、例えば、外科医、外科助手、看護師など、が、処置の任意の1つ以上の部分を行うことができる。さらに、外科処置は胃切除と言われているが、当業者は、方法および装置が、胃の一部のみが横切開されるMagenstrasse and Mill法などの胃形成にも同様に適用可能であってよいことを認識するであろう。
【0017】
図1に示されるように、腹部開口部またはアクセス孔12は、患者の腹壁14に形成されてよい。より小さく、より少数の体腔切開部は、一般に患者の回復期間を改善し、痛みを軽減することができるので、臍の1つの腹部切開部のみを用いて手術を行うことは有利となりうる。臍は、腹壁14の、最も薄く最も血管新生が少なく、かつ十分に隠れた領域(the thinnest and least vascularized, and a well hidden area)である。臍の切開部は、例えば、美容面を著しく損なわずに、かつ外傷の合併症が起こる可能性を増大させずに、より大きな検体を摘出するために、容易に拡大されうる。腹部アクセス孔12は、実質的に円形の切断部(substantially circular otomy)の形であってよく、あるいは、腹部アクセス孔12は、図示のような経皮的切開部であってよい。本明細書で使用される用語「切断部(otomy)」は、約25.4mm(約1インチ)の外径を有する、より大きな開口部またはアクセス孔を含むことを意図していること、および、本明細書で使用される用語「経皮的開口部」または「経皮的アクセス孔」は、好ましくは約3〜5mmの範囲の直径を有する、患者における比較的小さな開口部またはアクセス孔を含むことを意図していることを、当業者は認識するであろう。
【0018】
腹部アクセス孔12は、当業者が認識するであろうように、あらゆる方法で形成されてよい。示されるように、腹部アクセス孔12は、トロカール16を用いて形成される。トロカール16は、組織を切開するように構成され、かつカニューレ状内部を有する、あらゆるカニューレを含むことができ、外科器具は、切開組織を通って患者内へと、そのカニューレ状内部を通過することができる。トロカール16は、光学的先端部も含んでよく、光学的先端部は、例えば、トロカール16に挿入される、観察要素が表面に位置するスコープ装置、例えば腹腔鏡20を用いて、トロカール16が腹壁14を通過するときに腹壁14の可視化をもたらすように構成されている。腹腔鏡20は、組織を貫通する間もしくはトロカール16が腹壁14を貫通した後を含むあらゆる時間に、トロカール16に挿入されることができる。胃切除に用いられるスコープ装置は、観察要素、例えばレンズ、が表面に位置するあらゆる外科装置を含みうることも、当業者は認識するであろう。スコープ装置の非限定的な例には、内視鏡、腹腔鏡、胃鏡、および結腸鏡が含まれる。腹腔鏡20、ならびに本明細書で論じるその他の装置は、剛性材料および/または可撓性材料のあらゆる組み合わせから作られうるが、例示的な実施形態では、材料は生体適合性である。本明細書で使用される用語「可撓性」は、種々の構成を含むことを意図していることを、当業者は認識するであろう。一般的に、「可撓性」部材は、ある程度の弾性を有し、例えば、破損することなく曲がることができる。例示的な実施形態では、可撓性装置またはその少なくとも一部は、少なくとも1つの生体適合性かつ可撓性の材料、例えば、プラスチック、チタン、ステンレス鋼など、で構成される。可撓性装置の様々な部分はまた、ニチノールなどの形状記憶材料から形成されうる。
【0019】
いったん腹腔へのアクセスが得られたら、外科医は、当業者に認識されるであろうように、腹部アクセス孔12を通して患者の腹腔に吹き込みを行い、腹腔を拡張し、より大きく、より容易に通れる外科的作業空間をもたらすことができる。例えば、外科医は、圧力下で、例えば無毒の炭酸ガスなどの流体をトロカール16に通すことによって、腹腔に吹き込みを行うことができる。流体は、当業者に認識されるであろうように、約10〜15mmHg(約1333.22〜1999.84Pa)の範囲の圧力、または任意の他の圧力を有しうる。トロカール16は、吹き込み流体がトロカール16を通って腹腔から流出することを防ぐ、1つ以上のシール(one more seals)を含みうる。シールを用いない、密封トロカールの非限定的な例は、コネチカット州オレンジ(Orange, Connecticut)のSurgiQuest, Inc.から入手可能なSurgiQuest AirSeal(商標)である。
【0020】
図2に示されるように、外科医はまた、膣開口部またはアクセス孔22を患者10の膣壁に形成して、膣と患者の腹腔との間に開口部を作り、腹腔へのアクセスを得ることができる。観察要素が表面に位置するスコープ装置、例えば内視鏡62は、膣アクセス孔22の形成前に膣の中に進められてよく、かつ/または、外科処置中に患者身体の内側の可視化をもたらすために形成後に膣アクセス孔22の中を進められてよい。膣アクセス孔22は、図1の腹部アクセス孔12より前または後に形成されうるが、例示的な実施形態では、膣アクセス孔22は、腹部アクセス孔12より後に形成されて、腹部アクセス孔12を通した患者の腹腔の事前吹き込みを可能にする。当業者により認識されるであろうように、膣アクセス孔22を形成する前に、外科医は、外科器具、例えば、重りの付いた検鏡(weighted speculum)、および/または1つ以上の縫合糸を用いて、患者の膣開口部を拡張および固定することができる。膣アクセス孔22はあらゆる形状およびサイズを有してよいが、膣アクセス孔22は、好ましくは約18mmの直径を有し、例えば、トロカール、スコープ装置、外科ステープラ、クリップアプライヤなど、約5mm〜18mmの範囲の直径を有する外科器具の通過を可能にするよう構成されている。
【0021】
当業者により認識されるであろうように、腹壁および/または膣壁を貫通するアクセス孔は、あらゆる方法で形成されてよい。例示的な実施形態では、外科医は、膣壁を通してトロカールを挿入して膣アクセス孔22を形成し、膣と患者の腹腔との間に開口部を作ることができる。トロカールの非限定的な実施形態は、「Endoscopic Translumenal Surgical Systems」と題された、2006年5月8日出願の米国特許出願公開第2007/0260273号に見出すことができ、これは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。トロカールの例示的な実施形態は、外科装置を中に通すように構成されたトロカールハウジングと、トロカールハウジングに結合されるかまたはトロカールハウジングから延びる、トロカールスリーブまたはオーバーチューブと、を含むことができる。トロカールはまた、トロカールハウジングおよびトロカールスリーブを通り抜けるように構成された閉塞具を含むことができる。閉塞具は、スコープ装置および/または他の外科装置を内部に受容するように閉塞具を貫通して形成された内側内腔と、組織を貫通するように構成された遠位端部と、を有しうる。トロカールスリーブは、閉塞具の上にスライド可能に配されてよく、また、以下でさらに論じるように、トロカールが組織を通して挿入されて閉塞具が除去された後で、プレースホルダー(placeholder)として機能することができる。
【0022】
図3および図4は、閉塞具の非限定的な実施形態を示す。図3は、近位ハンドル38を有する剛性閉塞具24を示し、細長い剛性シャフト26が近位ハンドル38から延びている。剛性シャフト26は、その近位端部30aと遠位端部30bとの間に延在する内側内腔28を有し、内側内腔28は、内部に外科装置を受容するように構成されている。図4は、近位ハンドル34を有する可撓性閉塞具32を示し、細長い可撓性シャフト36が近位ハンドル34から延びている。可撓性シャフト36は、その近位端部42aと遠位端部42bとの間に延在する内側内腔40を有し、内側内腔40は、内部に外科装置を受容するように構成されている。可撓性閉塞具32は、可撓性閉塞具32が通過しうる、関節運動するカニューレ状装置の可撓性部分と協働するように構成された遠位可撓性部分44を含む。関節運動するカニューレ状装置は、あらゆる構成を有するいかなる外科装置も含みうる。図5は、関節運動するトロカールスリーブ50の非限定的な実施形態を示し、トロカールスリーブ50は、リップシール56およびダックビルシール58を有する剛性近位ハウジング54から延びる細長いシャフト上に、可撓性遠位継手52を含み、リップシール56は、その中を通過する外科装置の周りにシールを形成し、ダックビルシール58は、内側内腔28においてシールを形成する。可撓性継手52は、受動的に作動される、例えば1つ以上の隣接する構造体により接触されると動くことができ、かつ/または、例えば、機械的および/もしくは手動の作動機構の操作を通じて、能動的に作動されることができる。受動的に作動されるか能動的に作動されるかにかかわらず、可撓性継手52は、トロカールスリーブ50を通して挿入された装置のよりよい位置付けを可能にすることができる。閉塞具の可撓性部分44はまた、受動的に、かつ/または手動で作動されることができるが、例示的な実施形態では、可撓性部分44は、閉塞具32を、例えば関節運動するトロカールに通して進ませることに対して受動的である。当業者に認識されるであろうように、トロカールの可撓性継手52および閉塞具の可撓性部分44はそれぞれ、互いに同じかまたは異なるあらゆる方法で形成されうる。非限定的な例について、トロカールの可撓性継手52および閉塞具の可撓性部分44は、可撓性材料から作られてよく、可撓性を促進するために形成された1つ以上の特徴部、例えば、複数の切り抜き、スロットなど、を含んでよく、かつ/または、互いに可動に連結された複数のリンク装置から形成されてよい。関節運動するトロカールスリーブ50はあらゆるサイズを有しうるが、例示的な実施形態では、関節運動するトロカールスリーブは、例えば約5mm以下の直径を有する、経皮的開口部に配されるように構成されうる。
【0023】
図3および図4を再び参照すると、閉塞具24、32の遠位先端部46、48はそれぞれ、先細にされて、先端部46、48が組織を貫通するのを容易にすることができる。例示されるように、先端部46、48は、端部キャップを含んでよく、組織分離器46a、48aが、端部キャップの対向する側部に形成されており、また、先端部46、48の近位端部と遠位端部との間に延在している。分離器46a、48aは、それぞれの先端部46、48の外表面から外方に突出していてよく、組織を貫通することができる。分離器46a、48aは、組織の切断または分離を容易にするためエネルギー源に連結されるように構成されてもよい。例えば、焼灼ワイヤが分離器に連結されてよく、焼灼ワイヤは、端部キャップに取り付けられたスコープ装置を通って延びて、ワイヤの近位端部をエネルギー源に接続することができる。別の実施形態では、分離器46a、48aは、パドルの形であってよく、このパドルは、組織を切断しないが、それぞれの先端部46、48の外表面から外方に単に延びている。パドルは、概ね平坦な細長い構成を有してよく、使用中、パドルは、例えば切断器具で形成された、予め形成済みの切れ目もしくはスリットが組織にあろうとなかろうと、組織を貫通するように構成されてよい。例えば、パドルは、組織を貫通して作られた細長い切断部を広げて開くように回転されうる。分離器46a、48aはまた、組織を広げて離すため、および/または組織を貫通して形成された穿刺孔の拡大を容易にするために、用いられうる。先端部および分離器が1つの物質(single piece of material)として形成されるように、分離器46a、48aが、それぞれの先端部46、48と一体的に形成されうるか、または、分離器46a、48aが、それぞれの先端部46、48から分離され、先端部46、48に結合されうることを、当業者は認識するであろう。先端部46、48は、遠位に先細り、組織を通した挿入および貫通を容易にすることができる。先端部46、48は、最遠位端部における開口部をオプションとして含んでよく、この開口部により、切断器具、例えば、ニードルナイフ、メス、フックナイフなどがその開口部の中を進んで組織を切断し、かつ/またはスコープ装置などの外科装置がその開口部の中を進むことができる。
【0024】
閉塞具24、32の遠位先端部46、48はそれぞれ、光学的に透明な材料から作られて、観察要素が表面に位置するスコープ装置は、観察要素が遠位先端部の近くに適切に位置付けられると、遠位先端部を透かして見ることができる。光学的に透明な遠位端部は、好ましくは閉じられている、例えば、内側内腔28、40と連絡しておらず、流体および/または他の破片が、それら内腔に配されたスコープ装置に接触することを防ぐ。他の実施形態では、遠位先端部46、48は、不透明な、または別様に光学的に透明でない材料から作られてもよい。閉塞具の遠位端部が光学的に透明でない場合、遠位端部は、好ましくは開口部を含み、スコープ装置などの外科装置がその開口部を通して見る、および/もしくはその開口部の中を進められること、ならびに/または、内視鏡付属物、例えば、ニードルナイフ、メスなどが、組織を切断するためその開口部の中を進められること、を可能にする。遠位先端部46、48は、シャフト26、36それぞれと一体的に形成されてよく、あるいは、遠位先端部46、48は、シャフト26、36に取り付けられた端部キャップとして構成されてよい。
【0025】
前記のように、膣アクセス孔22を形成するのに用いられるトロカールは、スリーブを含んでよい。スリーブは、事実上あらゆる構成を有しうるが、閉塞具の上にスライド可能に配されるよう構成された、中空で細長い可撓性シャフトを含むのが好ましい。トロカールスリーブの可撓性シャフトのサイズは様々であってよいが、閉塞具の遠位先端部が細長いシャフトの遠位端部を越えて遠位に延びることができるように、可撓性シャフトは、閉塞具のシャフトの長さよりわずかに短い長さを有するのが好ましい。シャフトの直径もまた様々であってよいが、前記のとおり、直径は、トロカールスリーブの細長いシャフトが、閉塞具の細長いシャフトを受容できるのに十分でなければならない。トロカールスリーブの細長いシャフトは、剛性または可撓性であってよい。一実施形態では、トロカールスリーブは、可撓性スリーブであって、よじれを防ぐため、スリーブに巻き付けられるかもしくはその中に埋め込まれた巻きワイヤ(coiled wire)を有し、また、閉塞具がスリーブを円滑に通過するのを容易にするため、滑る内側の裏張り(slipping interior lining)を有する、可撓性スリーブである。トロカールスリーブの細長いシャフトはまた、可撓性の異なる複数の領域を含みうる。
【0026】
トロカールスリーブは、閉塞具と共にトロカールスリーブを使用するのを容易にするための他の特徴部も含みうる。例えば、トロカールスリーブの遠位端部は、トロカールスリーブから閉塞具の遠位先端部まで実質的に滑らかな連続的移行部を形成するように遠位に先細る外径を有することができる。スリーブの遠位端部は、角度を付けられうるか、あるいは、様々な他の構成を有しうる。他の例示的な実施形態では、スリーブの遠位端部は、その遠位端部を通して見ることを容易にするように、光学的に透明であってよい。トロカールスリーブはまた、スリーブの近位端部上に形成されるか、またはその近位端部に連結されたハウジングを含みうる。ハウジングは、閉塞具のハンドルまたはハウジングに取り外し可能に結合するよう構成されうる。スリーブのハウジングは、内側内腔も含んでよく、内側内腔は、ハウジングを貫通して形成されており、スリーブのシャフトの内腔と同軸で、閉塞具の細長いシャフトが、スリーブのハウジングを通って、スリーブの細長いシャフト内へ挿入されることを可能にする。1つ以上のシールが、スリーブのハウジングの内腔内部に配されて、スリーブのシャフトを密封し、かつ/または、閉塞具のシャフトの外表面に係合して、閉塞具のシャフトを、トロカールスリーブハウジングに対して密封することができる。当業者に認識されるであろうように、ダックビルバルブまたはダブルダックビルバルブ、絞りシール、ゼロ閉鎖バルブ(zero closure valves)、ガスケットなどといった、あらゆるシールが用いられてよい。当業者は、スリーブのハウジングが、当技術分野で既知の様々な他の特徴部を含みうること、ならびに、ハウジングが、事実上あらゆる形状およびサイズを有しうること、も認識するであろう。代替的に、トロカールスリーブは、ハウジングを含む必要はなく、単に細長いシャフトの形であってよく、この細長いシャフトは、内部に配された閉塞具に結合し、閉塞具の周りでシールを形成するためのルアーロック(luer lock)などのロック機構をオプションとして含みうる。
【0027】
スリーブは、スリーブの長さ方向長さに沿った一定の場所において1つ以上の可撓性継手をオプションとして含むことができる。可撓性継手は、スリーブの長さ方向長さに沿ってどこに位置してもよいが、少なくとも1つの可撓性継手が、スリーブの遠位部分に位置するのが好ましく、それゆえ、スリーブは、外科器具がスリーブから出て患者の身体内まで延びる場所の近くで関節運動することができる。スリーブは、可撓性継手において能動的に、かつ/または受動的に関節運動して、身体内の潜在的妨害物、例えば、組織、他の外科器具などの周りでスリーブを操縦するのを助け、また、スリーブを通して、身体内のより望ましい手術場所まで進められる外科装置を導くのを助けることができる。可撓性継手は、前述のトロカール可撓性継手52および閉塞具の可撓性部分44に類似していてよく、当業者に認識されるであろうように、あらゆる方法で形成されてよい。当業者は、可撓性継手が、シャフトの長さに沿って屈曲するのではなく、1つの点の周りで旋回することもできることを認識するであろう。
【0028】
例示的な実施形態では、スリーブは独立型スリーブであってよい。独立型スリーブは、アクセス孔を通して挿入された独立型装置として用いられてよく、あるいは、トロカールシャフトのそばに、またはトロカールシャフトを通して設置されることができる。独立型スリーブは、複数のツールが中に挿入されることを可能にすることができる。独立型スリーブは、前記のように、その長さ方向長さに沿って1つ以上の可撓性継手をオプションとして含むことができる。図6は、可撓性独立型スリーブの一実施形態を示し、図7〜図10は、剛性独立型スリーブの例示的な実施形態を示し、図11は、剛性または可撓性であってよい独立型スリーブを示す。
【0029】
図6に示されるように、可撓性独立型スリーブ66は、身体内のアクセス孔を通して配されるように構成された細長い可撓性シャフトを含みうる。1つ以上の可撓性外科器具、例えば図示のような把持器70が、可撓性独立型スリーブ66の内側進路72を通過することができる。本明細書で使用される用語「把持器」は、組織をつかみ、かつ/または組織に付着し、それによって組織を扱うように構成されたあらゆる外科器具、例えば、鉗子、開創器、可動ジョー、磁石、接着剤、支持縫合糸(stay sutures)など、を含むことを意図していることを、当業者は認識するであろう。
【0030】
剛性スリーブは、剛性スリーブの中を進められる1つ以上の可撓性外科装置に剛性を与えると共に、可撓性外科装置を剛性スリーブの外側で屈曲させることができる。図7および図8は、剛性スリーブ74の一実施形態を示し、剛性スリーブ74は、そのスリーブ74を貫通して延びる内側進路88を有しており、内側進路88を、外科器具、例えば可撓性スコープ装置90が通過することができる。剛性スリーブ70は、その中を延びる補足的器具通路92を含みうる。4つの補足的通路92が示されているが、剛性スリーブ74は1つ以上の補足的通路を含むことができる。補足的通路92は、剛性スリーブ74においてあらゆる構成を有してよく、例えば、図示のように可撓性内側進路76の周りで等距離かつ円周方向に位置する。剛性または可撓性の外科器具、例えば一対の剛性可動ジョー82、剛性組織開創器84などが、任意の組み合わせで可撓性または剛性であってよい補足的通路92のうちいずれか1つを通過させられうる。ゆえに、補足的通路92により、複数の外科器具が、剛性スリーブ74が配される単一のポートまたはアクセス孔を通って身体内に選択的に進められることができる。スコープ装置78は、補足的通路92のうちいずれか1つ以上の中を進められる装置と協力して働いて、装置の可視化をもたらすことができ、スコープ装置78の可撓性は、装置の可視化の角度を改善し、また、スコープ装置78を手術部位から離して屈曲させて、スコープ装置78の、身体内の装置の操作との干渉を軽減するのを助けることができる。
【0031】
図9は、剛性スリーブ86の代替的実施形態を示し、剛性スリーブ86は、前記の内側進路88に類似の内側進路を含み、この内側進路を、外科器具、例えば剛性スコープ装置90が通り抜けることができる。代替的剛性スリーブ86は、その中を延びる1つ以上の補足的器具通路を含んでよく、この補足的器具通路は、前記の補足的通路92に類似している。剛性スリーブの内側進路は、その通路の中を進められた可撓性もしくは剛性の外科器具、例えば一対の可撓性の可動ジョー94、可撓性の組織開創器96などに対する、スコープ装置90の一定で連続的な向きをもたらすことができ、一方、補足的通路の中を進められた可撓性器具は、スコープ装置90に対してさらに大きな斜角に操縦されうる。
【0032】
図10は、独立型スリーブ98の別の実施形態を示し、独立型スリーブ98は、その中を延びる中央内側進路100と、これもまた独立型スリーブ98の中を延びており、中央進路100の対向する側部に位置する、一対の側部内側進路102と、を含む。独立型スリーブ98は剛性のものとして示されるが、剛性でも可撓性でもよい。概して、中央進路100は、内部に配される可撓性スコープ装置104または剛性スコープ装置106を受容するように構成されうるが、側部進路102はそれぞれ、内部に配される少なくとも1つの外科器具を受容するように構成されうる。2つの側部進路102が例示されているが、独立型スリーブ98は、任意の数の側部進路を含んでよい。側部進路102のうち1つ以上が、その遠位端部から延びる、可撓性または関節運動するアーム108であって、それぞれの側部進路102と連絡している内側進路110を有する、可撓性または関節運動するアーム108を含むことができる。関節運動するアーム108は、前述したものに類似した、受動的かつ/または能動的に関節運動される可撓性継手として構成されて、内部に配された外科装置を曲げ、身体内でより有利に方向付けることができる。
【0033】
図2を再び参照すると、膣アクセス孔22を形成するのに用いられるトロカールは、近位端部にトロカールハウジング60を有するトロカールスリーブまたはオーバーチューブ64を含んでよく、トロカールスリーブまたはオーバーチューブ64を通して1つ以上の外科装置が挿入されうる。閉塞具、例えば図3の剛性閉塞具24または図4の可撓性閉塞具32が、スリーブ64の中を進められて、膣アクセス孔22の形成を助けることができる。スリーブ64は、オプションとして、スリーブ64上、スリーブ64の中に配された内視鏡62上の操縦機構を用いて、または、当技術分野で既知の他の技術を用いて、身体の中をガイドされることができる。膣アクセス孔22の形成後、閉塞具は、スリーブ64から取り外されてよい。スリーブ64が膣アクセス孔22を通って腹腔内に延びることができるので、スリーブ64は、患者10の中に残り、膣アクセス孔22のためのプレースホルダーとして機能することができる。内視鏡62は、閉塞具から取り外されうる(または、端部キャップを有するスコープ装置の形をとる閉塞具の実施形態については、端部キャップがスコープ装置から取り外されうる)。内視鏡62は、図2に示されるようにトロカールスリーブ64を通して再挿入されうる。トロカールスリーブ64は、所定の場所に残ってよく、あるいは、取り外されて、膣アクセス孔22を通る所定の場所に内視鏡62を残すことができる。
【0034】
図示のとおり、スリーブ64は、好ましくは患者10の中に残る。これは、少なくとも、例示されたスリーブ64が、前記のように、内視鏡62(および/またはスリーブ64の中を進められるあらゆる他の装置)を方向付けるのを助けることができる少なくとも1つの遠位可撓性継手64aを有する操縦可能な遠位端部を含むためである。スリーブの可撓性継手64aは、作動ケーブル67により可撓性継手64aに接続された作動装置65を用いて作動されうるが、当業者は、可撓性継手64aが、この方法またはあらゆる他の方法で作動されうることを認識するであろう。可撓性継手64aは、作動ケーブル67を用いて作動されると1つの方向に曲がるように構成されてよく、この1つの方向は、作動装置65により、左、右、上、下など、選択的に選ばれてよい。スリーブ64が複数の可撓性継手を含む場合、可撓性継手はそれぞれ、スリーブ64の残りの可撓性継手のいずれかと同じかまたは異なるあらゆる方向に、独立して作動されるように構成されてよい。作動装置65は、選んだ方向における、動きの量を制御するように構成されうる。オプションとして、内視鏡62は、スリーブの可撓性継手64aに加えて、またはその代わりに、それ自体の遠位可撓性継手62aのうち少なくとも1つを有することができる。内視鏡の可撓性継手62aは、内視鏡62のあらゆる追加の可撓性継手と同じように、あらゆる方法で作動されうる。ゆえに、図11に示されるように、スリーブの可撓性継手64aは、内視鏡62の長さ方向軸Aに沿った第1の場所で、第1の方向に、内視鏡の長さ方向軸Aに対して第1の角度αで、スリーブ64、および、スリーブ64に配された内視鏡62を曲げることができるが、内視鏡の可撓性継手62aは、内視鏡の長さ方向軸Aに沿った第2の場所で、第2の方向に、内視鏡の長さ方向軸Aに対して第2の角度αで、内視鏡62を曲げることができる。第1の角度α、および第2の角度αは、内視鏡62の遠位端部を、あらゆる所望の方法で、例えば例示されるように「S」字形状に、位置付けるように選択されてよい。「S」字形状を有するように構成されると、内視鏡62は、患者10の中に経膣的に導入されるが、腹部14の切開部を通して腹腔に挿入されたスコープ装置によりもたらされうる図と同様である、胃の基底部に向かう方向における患者の胃の図(view)をもたらすことができる。
【0035】
代替的実施形態では、スコープ装置は、その長さ方向軸に沿った異なる場所にそれぞれが設けられた2つ以上の可撓性継手を有して、スリーブを用いて、またはスリーブを用いずに、スコープ装置を、スコープ装置の長さ方向軸に対して少なくとも2つの方向に曲げることができる。多屈曲(multibending)スコープ装置の非限定的な例は、日本国東京のOlympus Corp.から入手可能なR-Scope XGIF-2TQ260ZMYである。
【0036】
オプションとして、患者10の中へ進められる内視鏡62は、患者10の外部の支持体に据え付けられて、ハンズフリーの使用(hands free use)を可能にすることができる。内視鏡62は、いかなるときに据え付けられてもよく、また、その据え付けは、いかなるときに再調節および/または解除されてもよいが、例示的な実施形態では、内視鏡62は、内視鏡の観察要素を、患者10の中の所望の場所に配列した後で据え付けられる。内視鏡62を据え付けることにより、外科医は、外科処置中、内視鏡62を所定の場所に連続して保持する必要がなくなり、それによって、外科医が自由に、他の外科的事柄の世話をする(attend)ようにし、かつ/または、手術室職員の必要な人数を減少させる。観察要素が表面に位置するスコープ装置を安定的に据え付けることは、観察要素を通して得られる画像を安定させるのにも役立ちうる。支持体が、内視鏡62、および/または、絶え間ない手動の操作を必要としない胃切除中に使用されるあらゆる他の外科器具を据え付けるのに用いられうることを、当業者は認識するであろう。複数の支持体が、1つの外科処置で使用されてよい。
【0037】
据え付けられる外科器具の重量などの力、および、据え付けられる外科器具を手で設置することによる力(forces from hand-placing the mounted surgical instrument)を考慮すると、支持体は、負荷限度(load limit)を有することができる。支持体の負荷限度は、例えばS字型管(gooseneck)および/または支持体の他の構成要素によって制限されるものとして、予め決められてよく、あるいは、例えば、可動の凹状および/または凸状端部を有する中央引張ケーブル、ギア面を備えたプレート、様々なVlierピンなどを用いて、調節可能としてもよい。
【0038】
支持体は様々な構成を有することができ、図12は、内視鏡62を検査台18に据え付けるのに使用されている支持体の一実施形態を示す。例示された支持体は、スコープホルダー112、アダプタ114、ならびに、それぞれの末端部でスコープホルダー112およびアダプタ114に連結された可撓性アーム116を含む。アダプタ114は、図示のように、検査台18に連結された台マウント部(table mount)であって、台レール118と、それぞれの末端部で台レール118およびアダプタ114に連結されたブラケット120と、を含む、台マウント部に結合することができる。代替的実施形態では、検査台18に加えて、またはその代わりに、支持体は、患者10の近くの別の安定的な構造体、例えば、壁、天井、IVポールまたはマイクスタンドに類似の、床に立てて置かれる独立構造体、頭上据え付け品などに据え付けられてもよい。
【0039】
スコープホルダー112は一般に、据え付けられている装置に係合するように構成されている。図示のとおり、スコープホルダー112は、中を延びるボアを有するブロックを含み、ボアは内視鏡62を受容し保持することができる。ボアの直径は、遠位端部が最初にボアに挿入される内視鏡62のシャフト122の通過を可能にするのに十分大きくされてよく、内視鏡62の近位ハンドル124の通過を防いで、それにより、内視鏡62を保持するのに十分小さくてよい。異なるサイズのボアを有する、異なるスコープホルダーが、可撓性アーム116に選択的に取り付けられて、異なるサイズの外科器具が、支持体を用いて据え付けられるのを可能にすることができる。代替的に、スコープホルダーのボアの直径は調節可能であってよい。
【0040】
図13は、装置ホルダー112’の代替的実施形態を示し、装置ホルダー112’は、ホルダーアダプタ126を含み、ホルダーアダプタ126は、外科装置を受容するための、内部を貫通するボアを有する、ホルダーブロック128に据え付けられるように構成されている。ホルダーアダプタ126およびブロック128は、例えば1つ以上のネジを用いて、あらゆる方法で互いに取り付けられうる。ホルダーアダプタ126は、ホルダーアダプタ126から延びるペグ130を有してよく、ペグ130は、調節バー134に形成されたボア132に係合するように構成されている。ホルダーアダプタ126は、ペグ130の長さ方向軸の周りで回転することができ、ホルダーアダプタ126に連結された指回し式円形板136を回すことにより、所望の位置で固定されることができる。指回し式円形板136は、指回し式円形板138に連結された柱138を進めて、調節バー134に接触させ、ホルダーアダプタ126を調節バー134に対して所定の場所に固定することができる。調節バー134は、カニューレ状内部をオプションとして有してよく、カニューレ状内部の中に、1本以上の外科装置コードが入れられて、コードを外科処置との干渉から守るのを助けることができる。
【0041】
図14は、装置ホルダー112’’の別の代替的実施形態を示す。スコープホルダー112’’は、可撓性アーム116’’に連結された、一対の対向するクランプアーム140を含む。外科装置142が、クランプアーム140の装置接触表面間に位置付けられてよく、クランプアーム140は、例えば締め付けネジ144を回すことにより、クランプアーム140間に装置142を固定するように、互いに締め付けられることができる。クランプアーム140はそれぞれ、凸状の装置接触表面を有して、円筒形装置、例えばスコープ装置のシャフトを握るのを助けることができる。
【0042】
図15は、装置ホルダー112’’’のさらに別の代替的実施形態を示す。装置ホルダー112’’’は、据え付けられるべき外科装置、例えば円筒形の装置シャフト、を受容するための第1の半円筒形凹部146と、据え付けられた装置からのハンドル、コード、および/または他の近位延長部を受容するための第2の半円筒形凹部148と、を含む。第2の凹部148は、装置を所定の場所に保持できる、停止機構または停止部(rest)として作用するように構成されてよく、第1の凹部146は、第2の凹部148と協働して、据え付けられた装置が、装置ホルダー112’’’において旋回するのを防ぐことを助けうる。第1の凹部146および第2の凹部148はそれぞれ、半円筒形状を有するものとして示されているが、当業者によって認識されるであろうように、凹部146、148は、あらゆる装置に適応するように、同じかまたは互いに異なるあらゆる形状を有することができる。
【0043】
図12を再び参照すると、可撓性アーム116は、当業者によって認識されるであろうように、概して、可動であるように構成されて、据え付けられた装置の位置を検査台18に対して調節することができる。可撓性アーム116は、一定の、または調節可能な長さ方向長さを有してよい。可撓性アームの長さ方向長さは、例えば1つ以上の可撓性継手をアコーディオン状に拡張可能とするなど、当業者が認識するあらゆる方法で調節可能にされてよい。
【0044】
アダプタ114は、概して、可撓性アーム116をブラケット120に、ゆえに台18に固定するように構成されている。アダプタ114は、可動である、例えば、ブラケット120に沿って軸方向に可動であり、かつ/または、ブラケット120の長さ方向軸の周りで回転可能に可動で、内視鏡62の可能な据え付け位置を増やすことができる。
【0045】
台マウント部はブラケット120および台レール118を含み、ブラケット120および台レール118はそれぞれ、概して、可撓性アーム116の台18への確実な取り付けをもたらしうる、剛性の細長いバーとして構成されている。ブラケット120および台レール118は、一定の長さを有してよく、あるいは、それらのうち少なくとも一方は、長さが拡張可能となるよう構成されてよい。図16は、可撓性アームに直接連結されうる台マウント部の代替的実施形態を示す。cクランプ150は、「C」字部内部に台18を位置付け、例えば手回しネジクランプ152を用いて「C」字部を締め付けることによって、検査台18(またはあらゆる他の安定的な構造体)に据え付けられることができる。可撓性アームが、例えば、係合解除可能な金属球状連結装置(disengagable metallic ball coupling)により、cクランプ150のアームコネクタ154においてcクランプ150に連結されて、それによって、可撓性アーム、および可撓性アームに連結されたあらゆる外科装置をしっかりと据え付けることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、1つの支持体は、複数の装置を据え付けるために複数のアダプタに連結された複数の可撓性アームを固定するように構成されたアダプタを用いることによるなどして、複数の外科器具を据え付けるように構成されうる。図17は、マルチアームアダプタの一実施形態を示し、マルチアームアダプタは、互いに積み重なるように構成された、積み重ね可能な少なくとも2つのアダプタ114’を含み、積み重ね可能なアダプタ114’は軸方向に整列される。積み重ね可能なアダプタ114’は、アダプタ114’の長さ方向軸の周りで回転できるので、装置が、アダプタの各ホルダーブロックのそれぞれの中に保持され、また、それぞれの可撓性アーム116’を用いて可動に調節されることができる。図18は、マルチアームアダプタ114’’の別の実施形態を示し、マルチアームアダプタ114’’は、そのアダプタ114’’から接線方向に延びる、少なくとも2つの半径方向可撓性アーム116’’’を含む。半径方向アーム116’’は、可動であり、例えばアダプタ114’’の長さ方向軸の周りを回転されて、アーム116’’’を所望のとおりに位置付けることができる。
【0047】
外科処置中、患者の胃は、適切にアクセスするのが困難である場合がある。患者の肝臓は、胃切除中、後退されて、外科医が胃へのよりよいアクセスを得るのを助けることができる。肝臓は外科処置中いつでも後退されてよいが、例示的な実施形態では、肝臓は、観察要素が表面に位置するスコープ装置、例えば内視鏡62を、膣アクセス孔22に通して患者10に挿入した後で後退されて、肝臓の後退前および後退中に腹腔の可視化をもたらす。肝臓の後退前、後退中、および/または後退後の可視化は、腹壁14の開口部を通して腹腔に導入されたスコープ装置を用いてもたらされてよいが、経膣的に導入されたスコープ装置で可視化をもたらすことにより、腹部作業空間の増大を可能にし、かつ/または腹部に導入された器具の「チョップスティック」効果を低減させることができる。肝臓は、当業者が認識するあらゆる方法で後退されうるが、肝臓は、好ましくは、例えば事前形成された腹部アクセス孔12、別の腹部開口部、患者の消化管壁のアクセス孔などを通して、患者10の腹腔に挿入された少なくとも1つの装置を用いて、後退される。これも当業者により認識されるであろうように、排出装置、例えばペンローズドレーン(penrose drain)、ジャクソンプラットドレーン(Jackson-Pratt drain)などは、患者の腹腔に配されて、肝臓を保持し、かつ/または、外科処置中、特に肝臓後退の後で、腹腔に蓄積しうる過剰な流体を排出するのを助けることができる。
【0048】
Nathanson肝臓開創器などの開創器装置が用いられて、患者の肝臓を後退させることができる。図19および図20は、患者10の肝臓162を患者10の胃164から離して後退させるために、Nathanson肝臓開創器160を用いた肝臓後退処置の一実施形態を示す。当業者によって認識されるであろうように、外科医は、Nathanson 肝臓開創器160を用いて、図19に示されるように肝臓162を「突き刺し(hook)」、また図20に示されるような所望の後退位置で、肝臓162を胃164から離して保持することができる。図12の支持体に類似した支持体168は、Nathanson肝臓開創器160を検査台18に据え付けるのに用いられてよいが、支持体が肝臓開創器のために用いられる場合、あらゆる他の支持体が使用されてよい。Nathanson肝臓開創器160は、示されるように腹部アクセス孔12を通して直接挿入されてよく、あるいは、Nathanson肝臓開創器160は、例えばトロカール16、複合的ポートアクセス装置、スリーブなどを通して、患者の腹腔166内へのアクセスを与えるカニューレ状装置の中を進められてよい。
【0049】
図21は、Nathanson肝臓開創器174、および患者10の臍において患者の腹壁14に位置付けられた複合的ポートアクセス装置176を用いた、肝臓後退処置の代替的実施形態を示す。複合的ポートアクセス装置176は、腹部アクセス孔12の中、または例示的な実施形態では経皮的開口部を含む、別の腹部アクセス孔の中に位置付けられてよい。複合的ポートアクセス装置の様々な非限定的実施形態は、「Multi-port Laparoscopic Access Device」と題された2006年4月5日出願の米国特許出願公開第2006/0247673号、「Surgical Access Device」と題された本出願と同日出願の米国特許出願第[ ]号[代理人整理番号100873-310(END6485USNP)]、「Surgical Access Device with Protective Element」と題された本出願と同日出願の米国特許出願第[ ]号[代理人整理番号100873−311(END6485USNP1)]、「Multiple Port Surgical Access Device」と題された本出願と同日出願の米国特許出願第[ ]号[代理人整理番号100873−312(END6485USNP2)]、および「Variable Surgical Access Device」と題された本出願と同日出願の米国特許出願第[ ]号[代理人整理番号100873−313(END6485USNP3)]において見出すことができ、これらは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。複合的ポートアクセス装置176は、あらゆるサイズ、形状、および構成を有してよいが、図22に示される例示的な実施形態では、複合的ポートアクセス装置176は、3つのポート178a、178b、178cが中を延びるハウジング180を有している。しかし、複合的ポートアクセス装置176は、任意の数のポートを有してよい。加えて、ポート178a、178b、178cは、同じサイズを有するか、または異なるサイズの外科器具の挿入に備えるように構成された異なるサイズを有することができる。例示的な実施形態では、ポート178a、178b、178cはそれぞれ、約5mmの直径を有することで、直径が約5mm以下の器具に備えるようにサイズ決めされてよく、好ましくは、ポートのうち少なくとも1つ、例えば、例示されるように、より小さなポート178a、178bが、約3mmの直径を有する。ポート178a、178b、178cはそれぞれ、吹き込みガスの流出を防ぐためにシールを提供するように、かつ/または中に挿入された器具の周りでシールを形成するように構成された、1つ以上のシールポートを含みうる。ハウジング180はまた、ハウジング180から遠位に延びる可撓性開創器181であって、ポート178a、178b、178cを通して挿入された器具のための、組織を貫通する進路を形成するために、組織の開口部、例えば切断部内部に位置付けられるように構成された、可撓性開創器181を含むことができる。複合的ポートアクセス装置176はまた、膣を通して複数の装置を腹腔内に導入するための膣アクセス孔を形成するために用いられうる。
【0050】
図21を再び参照すると、患者の肝臓162は、Nathanson肝臓開創器160を用いた図19および図20の肝臓後退処置と同様にNathanson肝臓開創器174を用いて後退されうる。しかしながら、この実施形態では、Nathanson肝臓開創器174は、複合的ポートアクセス装置176の、より小さなポート178a、178bのうち1つを通して患者10に挿入されることができる。患者の腹腔は、膣アクセス孔22の中を進められた内視鏡62を用いて可視化されてよく、あるいは、図示のように、観察要素が表面に位置するスコープ装置、例えば腹腔鏡181が、複合的ポートアクセス装置のポート178a、178b、178cのうち1つ、例えばより大きなポート178c、の中を進められることができる。腹腔鏡181によりもたらされる可視化では、内視鏡62は、膣アクセス孔22の中を進められる必要がない(あるいは、既にアクセス孔22の中を進められている場合は、膣アクセス孔22から除去されることができる)。さらに、把持器(不図示)が、例えば直接的に、内視鏡62のワーキングチャネル、経膣的に位置付けられた複合的ポートアクセス装置などを通して、膣アクセス孔22の中を進められて、肝臓162の後退を助け、かつ/または別様に胃切除を助けることができる。
【0051】
図23は、患者の胃164から離れた所望の場所まで患者の肝臓162を後退させるのを助けるために、鋲打ち装置170を用いる肝臓後退処置の代替的実施形態を示す。当業者により認識されるであろうように、鋲打ち装置170は、1つ以上の鋲171を送達して取り付け、かつ/または腹腔166に対して噛み合って、肝臓162を持ち上げ支持することができる。図23は、手術部位から流体を排出するのを助けるために、ペンローズドレーン172を取り付けている鋲171を示しており、この実施形態では、ペンローズドレーン172は、肝臓162を所望の後退位置で保持するのを助けるための開創器装置としても役立つことができる。鋲打ち装置170は、複合的ポートアクセス装置176のポート178a、178b、178cのうち1つを通して、または腹部の別のアクセス孔を通して挿入されうる。
【0052】
別の実施形態では、外科医は、患者10の中に、縫合糸が取り付けられた縫合糸アンカー、例えばtタグ、フックなどを導入することができる。縫合糸は、肝臓162に取り付けられ、肝臓162を所望どおり位置付けるよう張力をかけられ、肝臓162を所望の位置に保持するよう、体外で結ばれるか、または別様に固定されることができる。さらに別の実施形態では、肝臓162は、磁石を用いて後退されうる。外科医は、1つ以上の内部磁石を肝臓162に、1つ以上の外部磁石を患者の腹壁14の外表面上に、貼り付けることができる。外部磁石は内部磁石を引き寄せ、それにより、肝臓162を腹壁14の内表面に向かって動かすことができる。肝臓後退装置は、単独で、または任意の1つ以上の他の肝臓後退装置、例えば、鋲打ち装置およびメッシュと組み合わせられた磁石、縫合糸アンカーおよび縫合糸と組み合わせられたNathanson肝臓開創器、外科用接着剤と組み合わせられたNathanson肝臓開創器など、と組み合わせて、使用されることができる。
【0053】
患者の胃164が所望の程度までアクセス可能および可視である状態で、外科医は、胃164を操作して胃チューブもしくは胃スリーブを形成することができ、胃チューブもしくは胃スリーブは、胃164において最大限(full)であるか、または部分的なものであってよい。図24および図25に示されるように、外科医は、胃スリーブを形成するであろう胃164の部分の寸法測定を助けるように、寸法測定装置(sizing device)182を胃164の中に導入することができる。寸法測定装置182は、あらゆる方法で胃164の中に導入されうるが、この示された例示的な実施形態では、寸法測定装置182は、例えば患者10の口184および食道186を通して、胃164の中に経口腔的に導入される。本明細書で使用される用語「寸法測定器(sizer)」、「寸法測定装置」、または「寸法測定器具(sizing instrument)」は、所望の胃スリーブ領域を示すように構成されたあらゆる外科器具、例えば、消息子、スコープ装置、カテーテルなど、を含むことを意図していることを、当業者は認識するであろう。寸法測定器182は、オプションとして、その遠位端部に照明を含み、外科医が、食道186を通して寸法測定器182を進め、寸法測定器182を胃164の中に所望どおりに位置付けるのを助けることができる。寸法測定器のサイズおよび形状は、概して、患者10に形成されることが望まれる胃スリーブのサイズおよび形状に対応していてよいので、外科医は、所望の胃スリーブ寸法に概ね対応するあらゆるサイズ、形状、および構成を有する寸法測定器を選択することができる。例示的な実施形態では、寸法測定器182は、実質的に円筒形の形状と、寸法測定器の長さ方向長さに沿って約28〜42フレンチ(約9.3〜14mm)の範囲の、実質的に一定の直径と、を有する、可撓性外科器具を含む。
【0054】
外科医は、胃164を少なくとも部分的に横切開した後で、胃スリーブのサイズおよび位置を概して示す寸法測定位置(sizing position)に、寸法測定器182を置くために、胃164の中で寸法測定器182を可動に調節することができる。寸法測定位置は外科医により選択されてよいが、例示的な実施形態では、寸法測定位置における寸法測定器182は、胃164の小弯194に沿って、胃164の幽門190内へ延びるので、寸法測定器182の少なくとも最遠位端部182aが、幽門190の幽門括約筋または幽門弁192へと延びる。寸法測定器182は、当業者により認識されるであろうように、患者10の中であらゆる方法で調節されうる。例示的な実施形態では、寸法測定器の調節は、寸法測定器182を調節するため膣アクセス孔22を通して胃164の中に挿入された可撓性把持器を用いて行われてよい。把持器は、寸法測定器182がいったん患者10の中へ適切に進められたら寸法測定器182をつかんで動かすように構成された対向する2つの可動ジョーを有する、エンドエフェクタを含むことができる。把持器は、膣アクセス孔22を通して挿入された内視鏡62のワーキングチャネルの中を進められうる。内視鏡62は、その表面に位置する照明を有してよく、照明は、外科医が寸法測定器182を見つけて把持器で寸法測定器182をつかみ、幽門弁192の位置を突き止めるのを助けることができる。代わりに、または加えて、患者の腹壁14を通して挿入されたスコープ装置が、外科処置のこの部分または任意の他の部分を行う間に、可視化および/または照明をもたらすことができる。
【0055】
外科医は、幽門弁192から胃164の大弯198に沿った距離を測定して、胃164の横切開の開始場所を決定することができる。開始場所は、幽門弁192からいかなる距離のところであってもよいが、例示的な実施形態では、その距離は約6cmである。外科医は、あらゆる方法で、例えば、開始場所を心の中でマークするかもしくは覚えることによって、またはマーカーを適用することによって、開始場所をマークすることができる。当業者により認識されるであろうように、例えば、膣もしくは腹部アクセス孔を通して挿入されたマーキング装置によって適用されるインク、電気焼灼器を用いるマーク、調和振動メスを用いるマークなど、あらゆるマーカーが、開始場所をマークするのに用いられうる。開始場所は、寸法測定器182を胃164の中に導入する前もしくは後、および寸法測定器182を寸法測定位置に置く前もしくは後で、決定されうる。
【0056】
胃164を横切開する前に、胃164は、胃164に付着した組織、例えば、網(omentum)、脈管、胃164の上のあらゆる付着物など、から分離されて、胃164の基底部を解放することができる。当業者により認識されるであろうように、胃164に付着した組織は、任意の1つ以上の切開用装置を用いて、胃164から分離されうる。本明細書で使用される用語「解剖器具(dissector)」、「切開用装置(dissecting device)」、または「切開用外科器具(dissecting surgical instrument)」は、組織を切断するように構成されたあらゆる外科器具、例えば、メス、調和振動メス、鈍的解剖器具、組織を切断するように構成された焼灼ツール、はさみ、内視鏡的線形カッター、外科ステープラなど、を含むことを意図していることも、当業者は認識するであろう。遠位フードを有する解剖器具の非限定的な実施形態が、「Method And Devices For Performing Gastroplasties Using A Multiple Port Access Device]と題された本出願と同日に出願された米国特許出願第[ ]号[代理人整理番号100873‐319(END6489USNP)]に見出されることができ、これは参照により全体として本明細書に組み込まれる。所望の組織は、あらゆる方法で胃164から分離されうるが、例示的な実施形態では、外科医は、胃164の大弯の近傍で切断し、基底部を網から自由にする。解剖器具は、(自然であるか、または外科的に作られた)あらゆるアクセス孔を通して患者10の中に導入されうる。図26に示される一実施形態では、解剖器具200が、腹部アクセス孔12におけるトロカール16を通して挿入されてよく、解剖器具200は、網202を胃164から切り離すのに用いられうる。この例示された実施形態に示されるように、解剖器具200は、組織を切断するように構成された一対の可動ジョーを有する遠位端部を備えた、エンドエフェクタ200aを有する。図27に示される代替的実施形態では、解剖器具200は、患者の腹壁14を通して挿入された複合的ポートアクセス装置、例えば図22の複合的ポートアクセス装置176、を通して挿入されてよく、また、網202を胃164から切り離すのに用いられてよい。
【0057】
例示的な実施形態では、網202および/またはあらゆる他の所望の組織は、解剖器具200が組織を胃164から切断する間に把持器を用いて張力をかけられうる。把持器は、あらゆる方法で患者10の中に導入されてよいが、図28および図29に示される例示的な実施形態に示すように、外科医は、膣アクセス孔22を通して挿入された膣トロカール206を通して、把持器、例えば把持器204を進めることができる。概して、外科医は、解剖器具200から把持器204に組織を渡し、把持器204で組織をつかみ、把持器204を引っ張って、つかまれた組織に張力をかけ、解剖器具200を用いて組織を切断することができる。外科医は、胃の基底部を解放するため、このプロセスを何回でも繰り返してよい。図28は、第2の腹部アクセス孔208、例えば経皮的開口部を示し、この開口部は、トロカール16を用いて形成された腹部アクセス孔12に関して前述したものと類似した第2のトロカール210を用いて形成されることができる。外科医は、第2のトロカール210が中に配されていても配されていなくても、第2の腹部アクセス孔208を通して同時かつ/または連続的に、任意の1つ以上の所望の外科器具を挿入することができる。非限定的な一例について、外科医は、第2の腹部アクセス孔208を通して少なくとも1つの追加の把持器を進め、また、膣トロカール206を通して挿入された把持器204と協働する第2の把持器を用いて網202に張力をかけることができる。いくつかの実施形態では、外科医は、経膣的に挿入された把持器ではなく、腹壁14を通して、例えば第2の腹部アクセス孔208を通して、挿入された把持器のみを使用してよい。代替的に、外科医は、別のアクセス孔を通して、例えば内視鏡62のワーキングチャネルにより膣アクセス孔22を通して、腹部または膣アクセス孔に挿入された複合的ポートアクセス装置を通してなど、追加の把持器を進めることができる。いくつかの実施形態では、切断組織に張力をかけるための1つ以上の把持器は、膣アクセス孔22を通して、例えば複合的ポートアクセス装置を通して、挿入されてよく、患者の腹部は通さない。
【0058】
スコープ装置、例えば、内視鏡62、腹腔鏡20などが、腹腔に挿入された場合、外科医は、スコープ装置を使用して可視化をもたらし、把持器204および/または追加の把持器を位置付けるのを助けることができる。外科医は、あらゆる所望の方法で、例えば、前述し図29に示したような「S」字型に、内視鏡62の遠位端部を位置付けて、胃164の基底部212に向かう方向において胃164を可視化することができる。把持器204が例えば網202をつかんで所望どおり位置付けられると、スコープ装置は、オプションとして、スコープ装置が挿入されたアクセス孔から除去されてよく、解剖器具200は、好ましくは別のスコープ装置が可視化をもたらすために存在する場合に、そのアクセス孔を通して挿入されうる。
【0059】
複合的ポートアクセス装置176を用いた図27の代替的実施形態に類似した図30に示されるように、把持器222が、胃164の中に経口腔的に進められ、消化管開口部224を通して進められ、また、患者10の腹腔の中に進められて、網202をつかみ網202に張力をかけることができる。消化管開口部224は、当業者が認識するあらゆる方法で形成されてよい。消化管開口部224は、胃164の横切開のための測定された開始場所など、胃164のあらゆる場所に形成されてよいが、好ましくは、横切開の前、横切開中、および/または横切開後に消化管開口部224を通して挿入されたあらゆる装置の一定の位置付けを保つのを助けるために、横切開後に胃スリーブの部分を形成するであろう、胃164の一部に形成される。消化管開口部224は、胃壁に形成されたところが示されているが、消化管開口部224は、患者の消化管のどこにでも、例えば、胃壁、腸壁など、に形成されうる。消化管開口部224は、あらゆる形状およびサイズを有してよい。消化管開口部224が横切開中に胃164の残部から引き離された胃の基底部の一部に含まれていない場合、消化管開口部224は、当業者が認識するあらゆる方法で、例えば、腹部に挿入された複合的ポートアクセス装置を通して挿入された外科ステープラを用いて、閉じられうる。
【0060】
図31は、胃164に付着した組織を切断するため、腹部に挿入された複合的ポートアクセス装置176を用いた図21の代替的実施形態に類似の代替的実施形態を示す。この例示された実施形態では、外科医は、手術部位を可視化するため複合的ポートアクセス装置176のポート178a、178b、178cのうち第1のポートを通して進められたスコープ装置、例えば図21の腹腔鏡181を使用し、胃164に付着した組織を切断するためポート178a、178b、178cのうち第2のポートを通して進められた解剖器具を使用し、切断されている組織に張力をかけるためポート178a、178b、178cのうち第3のポートを通して進められた把持器を使用することができる。代替的に、または加えて、経皮的膣アクセス孔216を通して挿入されたトロカール214を通して進められた把持器、および/または経皮的腹部アクセス孔220を通して挿入されたトロカール218を通して進められた把持器は、切断されている組織に張力をかけるのに用いられうる。少なくとも経皮的腹部アクセス孔220を通して挿入された把持器により、組織は、臍における複合的ポートアクセス装置176を通して患者10に挿入された外科器具、例えば切断器具、に対して横向きの角度で、患者10において張力をかけられることができる。
【0061】
胃164に付着した組織がいったん所望どおりに胃164から切断されると、胃164は、横切開されることができる。当業者により認識されるであろうように、胃164は、任意の1つ以上の横切開装置を用いて横切開されうる。本明細書で使用される用語「横切開器(transector)」、「横切開装置」または「横切開用外科器具」は、単独または組み合わせて、組織を切断および固定しうる外科装置、例えば組織を切断およびステープル留めするように構成された外科ステープラ、を含むことを意図していることも、当業者は認識するであろう。外科ステープラの非限定的な実施形態は、「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」と題された1995年2月14日発行の米国特許第5,285,945号、「Surgical Stapling Instrument Incorporating A Firing Mechanism Having A Linked Rack Transmission」と題された2005年6月14日発行の米国特許第6,905,057号、「Surgical Instrument Incorporating An Articulation Mechanism Having Rotation About The Longitudinal Axis」と題された2006年9月26日発行の米国特許第7,111,769号、「Surgical Stapling Instrument Incorporating An Articulation Joint For A Firing Bar Track」と題された2004年9月7日発行の米国特許第6,786,382号、「Surgical Instrument With A Lateral-Moving Articulation Control」と題された2006年1月3日発行の米国特許第6,981,628号、「Surgical Stapling Instrument Incorporating A Tapered Firing Bar For Increased Flexibility Around The Articulation Joint」と題された2006年6月6日発行の米国特許第7,055,731号、「Surgical Stapling Instrument Having Articulation Joint Support Plates For Supporting A Firing Bar」と題された2005年11月15日発行の米国特許第6,964,363号、「Surgical Stapling Instrument With Multistroke Firing Incorporating An Anti-Backup Mechanism」と題された2005年11月1日発行の米国特許第6,959,852号、「Surgical Stapling Instrument Having Multistroke Firing With Opening Lockout」と題された2003年9月29日出願の米国特許出願公開第2005/0070925号、「Surgical Stapling Instrument Having Multistroke Firing Incorporating A Traction-Biased Ratcheting Mechanism」と題された2006年2月21日発行の米国特許第7,000,819号、および「Surgical Stapling Instrument Incorporating A Multistroke Firing Position Indicator And Retraction Mechanism」と題された2008年4月29日発行の米国特許第7,364,061号において見出すことができ、これらは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。横切開器は、あらゆるサイズおよび形状を有しうるが、例示的な実施形態では、横切開器が患者10の中に経膣的に進められる場合、横切開器は、好ましくは、例えば少なくとも約4フィート(約1.22m)の比較的長い長さ方向長さを有し、少なくとも1つの可撓性継手を有する。少なくとも1つの可撓性継手を有する横切開器の非限定的な実施形態は、「Methods And Devices For Performing Gastroplasties Using A Multiple Port Access Device」と題された、本出願と同日出願の、先に言及した米国特許出願第[ ]号[代理人整理番号100873‐319(END6489USNP)]に見出すことができる。例示的な実施形態では、横切開器は、1列以上のステープルを取り付けるように、また、ステープル留めされた組織を切断するように構成された線形外科ステープラである。横切開器は、あらゆる開口部を通して、例えば、腹部アクセス孔、膣アクセス孔、自然のオリフィスなどを通して(トロカールもしくは複合的ポートアクセス装置が内部に位置付けられていても位置付けられていなくても)患者10に挿入されうることも、当業者は認識するであろう。さらに、患者10の任意の開口部を通して挿入された少なくとも1つの把持器は、横切開されている間に胃164に張力をかけるため、および/または、胃の小弯に沿った所望の場所に寸法測定器を保持するために使用されうる。図32に示される一実施形態では、胃164は、膣アクセス孔22に挿入されたトロカール228を通して進められた横切開装置226を用いて、横切開されうる。図33に示される別の実施形態では、外科医は、患者の臍を通して挿入された複合的ポートアクセス装置228の中を進められた横切開装置230を用いて、胃164を横切開することができる。横切開は、本明細書に記載されたように、任意の開口部を通して挿入された少なくとも1つのスコープ装置を用いて可視化されうる。非限定的な一例として、外科医は、例えば腹部アクセス孔12においてトロカール16を通して挿入された腹腔鏡20を用いて、胃164の上および/または下を可視化して、所望の横切開通路が、組織および/もしくは他の破片を取り除かれているか、または容易に取り除かれるかどうかを判断することができる。別の非限定的な例については、外科医は、横切開前に可視化するための1つのスコープ装置、例えば腹部アクセス孔12においてトロカール16を通して挿入された腹腔鏡20を使用し、横切開中および横切開後に別のスコープ装置、例えば経膣的に導入された内視鏡62を使用することができる。外科医は、オプションとして、横切開(transaction)中に胃に張力をかけることもできる。例えば、縫合糸は、例えばトロカールもしくは他のポートを通して、経皮的開口部を通過させられてよく、縫合糸は、胃の基底部を通して挿入され、胃を出て、経皮的ポートを出ることができる。ゆえに、縫合糸の自由端は、胃を持ち上げ伸ばすように張力をかけられて、それにより横切開(transaction)を促進することができる。外科医はまた、横切開後に、例えば横切開により形成された胃スリーブの大弯に沿って、胃の基底部に1つ以上の排出装置を置くことができる。使用される場合、寸法測定器は、外科処置中いつでも胃164から取り出されてよいが、例示的な実施形態では、外科医は、胃164が、横切開され、かつ、未修正の潜在的に危険な異常、例えば不適切に曲がったステープル、不適切に置かれたステープル、結ばれていない縫合糸などについて、スコープ装置の可視化により検査された後で、患者の口を通して寸法測定器を後退させることによって、患者10から寸法測定器を除去する。
【0062】
外科医は、オプションとして、任意の1つ以上の補足的固定要素を任意の組み合わせで用いて、例えば、基底部の、ステープル留めまたは別様に固定された切断縁部に沿って、横切開された胃を固定して、横切開部をよりよく固定し、かつ/または出血を減らすのを助けることができる。補足的固定要素は、好ましくは生体適合性であり、オプションとして生体吸収性であってよく、補足的固定要素は、横切開部が治癒するときに経時的に患者10体内で溶解しうる。補足的固定要素の非限定的な実施形態は、縫合糸、フィブリン接着剤(fibron glues)などの接着剤、ステープル、綿撒糸などを含む。補足的固定要素は、横切開後に適用されてよく、かつ/または、横切開器は、胃164を横切開するときに、1つ以上の補足的固定要素を適用するように構成されうる。生体吸収性綿撒糸と共にステープルを取り付けうる外科ステープラの非限定的な実施形態は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、先に出願された米国特許出願[代理人整理番号END5966]に見出すことができる。
【0063】
前記のように、胃164の任意の部分を横切開することができる。一実施形態では、胃164は、完全に横切開されて、胃164を分離し、基底部の一部を取り除き、基底部の別の部分、すなわち、寸法測定器により寸法測定された胃スリーブ、を残し、患者の食道および幽門弁を流体連通状態に保つ。外科医は、当業者が認識するあらゆる方法で胃164を横切開することができるが、例示的な実施形態では、外科医は、解剖器具を用いて、外科医が予めマークした開始場所で始めて、胃164を、幽門弁からある距離だけ切断し固定する。外科医は、胃164のHIS角が破壊される(breached)まで、開始場所から、ガイドとして寸法測定器を用いて、胃164の切断および固定を続け、それによって胃スリーブを形成できる。基底部の、引き離された非スリーブ部分は、胃スリーブから引き離された後でいつでも、また、患者10のあらゆる開口部を通して、例えば腹部に挿入された複合的ポートアクセス装置、膣切断部(vaginal otomy)などを通して、あらゆる方法で患者10から除去されうる。非限定的な例について、外科医は、腹部に(または別様に)挿入された把持器および経膣的に(または別様に)導入された検体除去装置、例えばオハイオ州シンシナティのEthicon Endo-Surgery, Inc.から入手可能なEndopouch Retriever(商標)検体除去バッグ、を組み合わせて用いて、基底部を検体除去装置の中へ導き、検体除去装置の中に配された、引き離された基底部分を患者10から除去することができる。
【0064】
別の実施形態では、胃164は、Magenstrasse and Mill法などの胃形成において、胃164の全長よりも短い胃164の一部に沿って、部分的に横切開される。このような部分的横切開は、患者の食道に実質的に近くの胃164の領域から基底部を分離し、基底部を、患者の幽門弁と流体連通したままにすることができる。外科医は、例えば円形ステープラを用いて、開始場所において胃を貫通する開口部を形成することにより、胃164を横切開することができる。横切開器は次に、HIS角と所望の終点との間で、ガイドとして寸法測定器を用いて、胃を切断および固定するために、ステープル留めおよび切断された開口部を通して挿入されることができる。
【0065】
胃切除の終わりに、患者に形成された任意のアクセス孔は、当業者により認識されるであろうようにあらゆる方法で、またあらゆる順番で、例えば開口部を縫合することにより、閉じられてよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、例えば男性患者について、胃切除処置は、膣アクセス孔の形成を含まないであろう。これらの胃切除では、1つの腹部アクセス孔であって、例えば複合的ポートアクセス装置を用いて、このアクセス孔を通して挿入される複数の外科器具を収容できる、1つの腹部アクセス孔が患者に形成されてよく、あるいは、少なくとも2つの腹部アクセス孔が患者に形成されてよい。図34は、そのような胃切除のために配列された腹部アクセス孔の例示的な実施形態を示す。第1のアクセス孔232a、第2のアクセス孔232b、および第3のアクセス孔232cは、患者236の腹壁234を通してあらゆる方法で経皮的開口部もしくは切断部として形成されて、患者の腹腔へのアクセスを与えうるが、任意の数の腹部アクセス孔が患者236に形成されてよい。例示されるように、第1の腹部アクセス孔232a、および第2の腹部アクセス孔232bは、患者の腹部の向かい合う側部において実質的に側方に整列され、かつ第1のトロカール238aおよび第2のトロカール238bがそれぞれ挿入されている、経皮的開口部を含み、第3の腹部アクセス孔232cは、第1の腹部アクセス孔232aおよび第2の腹部アクセス孔232bと側方に整列されておらず、かつ、第1の腹部アクセス孔232aと第2の腹部アクセス孔232bとの間にある、患者の臍に位置する切断部であって、複合的ポートアクセス装置240が挿入されている、切断部を含む。胃切除は前記のあらゆる方法で行われうるが、例示的な実施形態では、膣開口部を通して挿入可能な外科器具は、代わりに、第1の腹部アクセス孔232aおよび第2の腹部アクセス孔232bのうち一方を通して挿入されてよい。非限定的な例として、第1および第2の把持器が、それぞれ、第1のトロカール238aおよび第2のトロカール238bを通して患者236に挿入されて、把持器を異なる角度で患者の胃242に接近させることができ、一方、スコープ装置、横切開装置、および後退装置は、同時に、かつ/または連続的に、複合的ポートアクセス装置240を通して患者236に挿入されて、第1のトロカール232aおよび/または第2のトロカール232bを通して挿入された器具の角度とは異なる角度で、それらの器具を胃242に接近させることができる。
【0067】
患者10は、オプションとして、患者10が体重を落とすのを助けるために胃スリーブと関連して作用しうる、食欲を抑制する薬剤および/または装置を備えていてよい。このような薬剤または装置は、胃切除の最後に、および/または次の外科処置で、患者10に与えられてよい。植え込み可能な食欲抑制装置の非限定的な実施形態は、イスラエル国ラマト・ハシャロン(Ramat-Hasharon, Israel)のDuocore, Inc.から入手可能である。
【0068】
本明細書に記載された胃切除処置は、オプションとして、1つ以上の他の外科処置と組み合わせられうる。非限定的な例として、胃切除は、経口腔的低侵襲性外科処置と組み合わせられてよく、例えば胃腸吻合または腸腸吻合(enteroenteroanastomosis)を作り出す、その経口腔的低侵襲性外科処置の非限定的な例を、「Double Loop Gastric Bypass Procedure」と題された、2006年5月18日出願の米国特許出願公開第2006/0271075号に見出すことができ、これは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。非限定的な別の例として、胃切除は、2段階外科処置の第1段階として行われてよく、この2段階外科処置では、第2段階、例えば、十二指腸スイッチ(duodenal switch)、ルーワイ処置(Roux en Y procedure)など、が、胃切除の直後、または次の外科処置で実行されうる。
【0069】
当業者は、本発明が、従来の内視鏡的および切開外科器具使用における適用、ならびにロボット支援手術における適用を有することを認識するであろう。
【0070】
本明細書に開示された装置はまた、1回使用した後で処分されるように設計されてもよく、あるいは、複数回使用されるように設計されてもよい。しかしながら、いずれの場合も、装置は、少なくとも1回使用した後で、再利用のため再調整されることができる。再調整には、装置の分解ステップ、それに続く、特定の部品の洗浄もしくは取替ステップ、およびその後の再組み立てステップのあらゆる組み合わせが含まれうる。詳細には、装置は、分解されてよく、装置の、任意の数の特定の部品または部分が、任意の組み合わせで選択的に取り替えられるかまたは取り外されうる。特定の部分が洗浄され、かつ/または取り替えられると、装置は、再調整施設で、または、外科処置の直前に外科チームによって、次の使用のため再組み立てされることができる。当業者は、装置の再調整が、分解、洗浄/取替、および再組み立てのための様々な技術を用いてよいことを認識するであろう。そのような技術の使用、および結果として生じる、再調整された装置はすべて、本出願の範囲内である。
【0071】
当業者は、前述した実施形態に基づいて、本発明のさらなる特徴および利点を認識するであろう。したがって、本発明は、添付の請求項により示されるものを除き、具体的に示し説明したことにより限定されるものではない。本明細書で引用したすべての刊行物および参考文献は、参照により全体として本明細書に明白に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】腹壁にアクセス孔が形成された患者の一実施形態の部分的に透明な斜視図である。
【図2】膣壁にアクセス孔が形成された患者の一実施形態の部分的に透明な斜視図である。
【図3】剛性閉塞具の一実施形態の側面図である。
【図4】可撓性閉塞具の一実施形態の側面図である。
【図5】関節運動するトロカールの一実施形態の側面図である。
【図6】可撓性独立型スリーブの一実施形態の部分的に透明な斜視図である。
【図7】外科装置が中を延びる剛性独立型スリーブの一実施形態の斜視図である。
【図8】図7のスリーブの断面図である。
【図9】外科装置が中を延びる剛性独立型スリーブの別の実施形態の斜視図である。
【図10】独立型スリーブの別の実施形態の、部分的に分解組立図で示した斜視図である。
【図11】2つの遠位領域で屈曲された内視鏡の遠位端部の一実施形態の斜視図である。
【図12】内視鏡を検査台に据え付けるための支持体の一実施形態の斜視図である。
【図13】図12の支持体用の装置ホルダーの代替的実施形態の部分的に透明な斜視図である。
【図14】図12の支持体用の装置ホルダーの別の代替的実施形態の側面図である。
【図15】図12の支持体用の装置ホルダーの別の代替的実施形態の斜視図である。
【図16】図12の支持体用のマウント部の代替的実施形態の側面図である。
【図17】図12の支持体用のマルチアームアダプタの実施形態の、部分的に透明な側面図である。
【図18】図12の支持体用のマルチアームアダプタの別の実施形態の上面図である。
【図19】患者の肝臓を後退させる肝臓後退装置の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。
【図20】図19の肝臓後退装置の部分的に断面図で示した斜視図である。
【図21】複合的ポートアクセス装置を通して挿入された開創器により後退されている患者の肝臓の部分的に透明な斜視図である。
【図22】図21の複合的ポートアクセス装置の一実施形態の斜視図である。
【図23】患者の肝臓を後退させているところが示されている、鋲打ち装置の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。
【図24】患者の胃の中に進められた寸法測定器の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。
【図25】図24の患者および寸法測定器の側面断面図である。
【図26】患者の胃から組織を切断する切開用装置の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。
【図27】複合的ポートアクセス装置を用いて患者の胃から組織を切断する切開用装置の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。
【図28】患者の胃から組織を切断する、経膣的に挿入された切開用装置の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。
【図29】組織に張力をかける把持器と共に患者の胃から組織を切断する切開用装置の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。
【図30】組織に張力をかける把持器と共に患者の胃から組織を切断し、かつ患者の消化管の開口部を通して進められる、切開用装置の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。
【図31】膣壁にアクセス孔が形成され、臍において第1の腹部ポートが形成され、腹壁に形成された第2の腹部ポートが形成された患者の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。
【図32】患者の胃を横切開する横切開装置であって、患者の膣壁に形成されたアクセス孔を通して患者に挿入される、横切開装置の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。
【図33】患者の胃を横切開する横切開装置であって、患者の腹部に配された複合的ポートアクセス装置を通して患者に挿入される、横切開装置の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。
【図34】臍に第1の腹部ポートが形成され、腹壁に第2および第3の腹部ポートが形成された患者の一実施形態の、部分的に透明な斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術方法において、
患者の腹壁に第1のアクセス孔を形成することと、
前記患者の消化管を通り、前記患者の腹腔内へ入る第2のアクセス孔を形成することと、
前記第2のアクセス孔を通して挿入された第1の外科器具を用いて、前記患者の胃に付着した組織に張力をかけることと、
前記第1のアクセス孔を通して挿入された第2の外科器具を用いて、前記胃から前記組織を引き離すことと、
胃スリーブを形成するために、前記第1のアクセス孔を通して挿入された外科ステープラを用いて、前記胃の一部分を横切開することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記第1のアクセス孔を通して、前記胃の横切開された前記部分を除去すること、
をさらに含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
観察要素が表面に位置するスコープ装置を、前記第2のアクセス孔を通して前記患者の中に進めること、
をさらに含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記胃の中に寸法測定装置を経口腔的に導入することと、
横切開されるべき前記胃の前記部分を寸法測定するため前記寸法測定装置を使用することと、
をさらに含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
第1のアクセス孔を形成することは、複数のシールポートを有するハウジングを前記腹壁に位置付けることを含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記胃の一部分を横切開することは、前記患者の食道の実質的に近くの前記胃の領域から、前記胃の基底部を分離することを含み、前記基底部は、前記患者の幽門弁と流体連通を維持する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記第2のアクセス孔は、前記胃スリーブに形成される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記第1および第2のアクセス孔のうち一方を通して挿入された装置を用いて、前記患者の肝臓を後退させること、
をさらに含む、方法。
【請求項9】
手術方法において、
患者の腹壁に第1のアクセス孔を形成することと、
前記患者の消化管を通り、前記患者の腹腔内へ入る第2のアクセス孔を形成することと、
前記第2のアクセス孔を通してスコープ装置を挿入することと、
前記第1のアクセス孔を通して挿入された第1の外科器具を用いて、前記患者の胃に付着した組織に張力をかけることと、
前記第1のアクセス孔を通して挿入された第2の外科器具を用いて、前記胃から前記組織を引き離すことと、
前記第1のアクセス孔を通して挿入された外科ステープラを用いて前記胃の一部分を横切開することと、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記第1のアクセス孔を通して、前記患者から前記胃の横切開された前記部分を除去すること、
をさらに含む、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、
第1のアクセス孔を形成することは、複数のシールポートを有するハウジングを前記腹壁に位置付けることを含む、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法において、
前記胃の中に寸法測定装置を経口腔的に導入することと、
横切開されるべき前記胃の前記部分を寸法測定するために前記寸法測定装置を使用することと、
をさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法において、
前記胃の一部分を横切開することは、前記患者の食道の実質的に近くの前記胃の領域から、前記胃の基底部を分離することを含み、前記基底部は、前記患者の幽門弁と流体連結を維持する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2010−82444(P2010−82444A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−224042(P2009−224042)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(595057890)エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド (743)
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
【Fターム(参考)】