説明

胃癌遺伝子ZNF312b、該遺伝子から翻訳されるタンパク質、ならびに診断キット及び該タンパク質を使用する抗癌剤スクリーニング方法

本発明は、ZNF312b遺伝子及びその断片を含む胃癌診断用マーカー、それを使用した胃癌診断方法、及び前記マーカーを使用した胃癌誘発物質又は胃癌抑制物質のスクリーニング方法に関するもので、より詳細には、ZNF312b遺伝子が胃癌で特異的に発現が増加しており、前記遺伝子の過剰発現または抑制によって胃癌細胞株の細胞増殖と腫瘍形成能が活性または抑制され、ZNF312b遺伝子の発現が細胞増殖シグナル伝達系に作用して胃癌を誘発するので、前記遺伝子をマーカーにして胃癌の診断、胃癌誘発動物の製造、胃癌の予防及び治療、及び胃癌特異的抗癌剤の開発等に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃癌遺伝子であるZNF312b又はその断片を含む胃癌診断用マーカー、それを使用する胃癌診断方法、及び該マーカーを使用する胃癌誘発物質又は胃癌抑制物質のスクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトを含む高等動物は、約30,000個の遺伝子を有しており、その中の約15%だけがそれぞれの個体で発現される。したがって、どんな遺伝子が選択されて発現されるのかによって、生命のすべての現象、すなわち発生、分化、恒常性、刺激に対する反応、細胞分裂周期調節、老化及びアポトーシス(プログラム細胞死)等が決定される(Liang,P.andA.B.Pardee,Science,1992年,第257巻,967−971頁)。
【0003】
腫瘍発生のような病理学的現象は、遺伝子変異過程で誘発され、結局は遺伝子発現の変化を誘導するようになる。このような遺伝子変化は、細胞シグナル伝達の異常を招来する。したがって、相異している細胞間で現われる遺伝子発現の比較は、多くの生物学的現象を理解するのに基本的かつ効果的なアプローチ方法と言える。腫瘍発生に対する多くの研究結果を総合してみると、染色体ヘテロ接合性の消失、発癌遺伝子の活性化及びp53遺伝子を含む他の腫瘍抑制遺伝子の不活性化等の様々な遺伝的変化が、腫瘍組織に蓄積されてヒトの腫瘍を起こすことが報告されている(Bishop,J.M.,Cell,1991年,第64巻,235−248頁、及びHunter,T.,Cell,1991年,第64巻,249−270頁)。また、癌の10〜30%は、発癌遺伝子が増幅されることによって発癌遺伝子が活性化して起きると報告されている。発癌遺伝子の活性化は、多くの癌の病因学研究に重要な役割をし、それを明らかにすることが求められている。
【0004】
胃癌は、韓国及び日本等のアジア地域で最も多く発生が見られる癌であり、死亡率1位を示す癌である(Parkinら,Int.J.Cancer,1999年,第80巻,827−841頁;Neugutら,Semin.Oncol.,1996年,第23巻,281−291頁)。胃癌と関連した遺伝子は、あまり報告されていないが、最近分子的生物学的分析により、p53(Yokozakiら,Int.Rev.Cytol.,2001年,第204巻,49−95頁)、β−カテニン(朴ら,Cancer Res.,1999年,第59巻,4257−4260頁)、E−カデリン(Berxら,Hum. Mutat.,1998年,第12巻,226−237頁)、トレホイル因子1(trefoil factor 1)(朴ら、Gastroenterology,2000年,第119巻,691−698頁)、c−met(李ら,Oncogene,2000年,第19巻,4947−4953頁)のような遺伝子が、胃癌で多くの遺伝的変異があると報告されている。また、CA11(Yoshikawaら,Jpn.J.Cancer Res.,2000年,第91巻,459−463頁;Shiozakiら,Int.J.Oncol.,2001年,第19巻,701−707頁)と胃腸粘膜で合成されるトレホイル因子(trefoil factor)であるTFF1とTFF2(Shiozakiら,Int.J.Oncol.,2001年,第19巻,701−707頁;KirikoshiとKatohKirikoshi,Int.J.Oncol.,2002年,第21巻,655−659頁)のような遺伝子が胃癌で低発現されるという報告もある。また、長谷川らは、腸タイプの胃癌で発現される23,040個の遺伝子からなるcDNAマイクロアレイを使用して、RPL10、HSPCB、LOC56287、IGHM、PGC、REGIA、RNASE1、TFF1及びTFF2遺伝子の発現が胃癌の転移と関連するという事実を報告したことがある(Hasegawaら,Cancer Res.,2002年,第62巻,7012−7017頁)。しかし、このような遺伝子だけで胃癌を診断および治療するには、まだ不十分で現在まで臨床に使用される胃癌標的遺伝子は、存在しないのが実情である。
【0005】
ZNF312b遺伝子は、Fezf1(forebrain embryonic zinc finger−like1 gene)とも呼ばれ、カエル(Xenopus)の前脳(forebrain)と嗅覚神経(olfactory sensory neuron;OSN)で初めて同定されたもので、亜鉛(Zinc)イオンを有するタンパク質をコードする(Matsuo−Takasakiら.,Mech.Dev.,2000年,第93巻,201−204頁)。前記遺伝子は、嗅覚神経の適切な終了、嗅球(olfactory bulb)の形成と中間ニューロンプロジェニター(interneuron progenitor)のロストラルストリーム転移(rostral stream migration)等のために必要な遺伝子で、嗅覚神経軸索突起(axonal projection)の細胞自律的調節(cell−autonomously control)と嗅球の膜形成の調節のための必須因子として知られている(Tsutomu Hirataら.,Development,2006年,第133巻,1433−1443頁)。また、ZNF312bの発現は、胚芽発生段階で現われ、その後、成体になった後、胃でその発現が微弱に起きて他の組織では発現しないことが報告されている。今までZNF312b遺伝子の機能として報告されたものの中で、胃癌または癌発生等に関しては、いかなる報告もないのが実情である。
【0006】
そこで、本発明者らは、ZNF312b遺伝子が胃癌組織で発現が増加していることに着眼し、癌発生と関連した前記遺伝子の機能を研究した結果、ZNF312b遺伝子が胃癌で特異的に発現が増加して、発癌関連機能を有し、細胞増殖シグナル伝達系の一因子として作用し、K−rasプロモーター部位に結合して、K−ras発現を増加させることを解明して本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Liang,P.andA.B.Pardee,Science,1992年,第257巻,967−971頁
【非特許文献2】Bishop,J.M.,Cell,1991年,第64巻,235−248頁
【非特許文献3】Hunter,T.,Cell,1991年,第64巻,249−270頁
【非特許文献4】Parkinら,Int.J.Cancer,1999年,第80巻,827−841頁
【非特許文献5】Neugutら,Semin.Oncol.,1996年,第23巻,281−291頁
【非特許文献6】Yokozakiら,Int.Rev.Cytol.,2001年,第204巻,49−95頁
【非特許文献7】朴ら,Cancer Res.,1999年,第59巻,4257−4260頁
【非特許文献8】Berxら,Hum. Mutat.,1998年,第12巻,226−237頁
【非特許文献9】朴ら、Gastroenterology,2000年,第119巻,691−698頁
【非特許文献10】李ら,Oncogene,2000年,第19巻,4947−4953頁
【非特許文献11】Yoshikawaら,Jpn.J.Cancer Res.,2000年,第91巻,459−463頁
【非特許文献12】Shiozakiら,Int.J.Oncol.,2001年,第19巻,701−707頁
【非特許文献13】KirikoshiとKatohKirikoshi,Int.J.Oncol.,2002年,第21巻,655−659頁
【非特許文献14】Hasegawaら,Cancer Res.,2002年,第62巻,7012−7017頁
【非特許文献15】Matsuo−Takasakiら.,Mech.Dev.,2000年,第93巻,201−204頁
【非特許文献16】Tsutomu Hirataら.,Development,2006年,第133巻,1433−1443頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ZNF312b遺伝子またはその断片を含む胃癌診断及びスクリーニング用遺伝子マーカー、ならびにZNF312bタンパク質またはその断片を含む胃癌診断及びスクリーニング用タンパク質マーカーを提供して、前記マーカーを使用した胃癌診断方法、胃癌誘発物質スクリーニング方法、胃癌抑制物質スクリーニング方法、及び胃癌予防及び治療用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片を含むオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドを増幅することができるプライマー対を含む胃癌診断用キットを提供する。
【0010】
また、本発明は、配列番号2で表わされるZNF312bタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体を含む胃癌診断用キットを提供する。
【0011】
また、本発明は、配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片を含むオリゴヌクレオチド、またはそれに相補的なオリゴヌクレオチドが組み込まれた胃癌診断用DNAマイクロアレイを提供する。
【0012】
また、本発明は、配列番号2で表わされるZNF312bタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体を胃組織、胃細胞、尿、血液、血清及び血漿の中から選択される生物学的試料と接触させる工程を含む胃癌マーカー検出方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、
1)個体の試料から前記マーカー遺伝子の発現レベルを測定する工程;及び
2)工程1)のマーカー遺伝子の発現レベルが正常対照群より高い個体を選別する工程を含む胃癌診断方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、
1)実験群として胃由来細胞を被検組成物または被検化合物で処理する工程;
2)工程1)の実験群細胞と処理しない対照群細胞の前記マーカー遺伝子の発現レベルを測定して比較する工程;及び
3)前記実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に増加または減少させる被検組成物または被検化合物を選別する工程とを含む、胃癌誘発物質または抑制物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、
1)配列番号9で表わされる塩基配列で構成されるZNF312bプロモーター及びその断片に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを製造する工程;
2)前記工程1)の遺伝子コンストラクトを発現ベクターに導入した後、動物細胞に形質転換して形質転換体を製造する工程;
3)前記工程2)の形質転換体を被検組成物または被検化合物で処理した実験群と処理しない対照群を製造する工程;
4)前記工程3)の実験群及び対照群のレポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程;及び
5)前記工程4)の実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に増加または減少する被検組成物または被検化合物を選別する工程とを含む、胃癌誘発物質または抑制物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、
1)配列番号15で表わされる塩基配列で構成されるK−rasプロモーター及びその断片に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを製造する工程;
2)前記工程1)の遺伝子コンストラクトを発現ベクターに導入し、配列番号2で表わされるアミノ酸配列で構成されるZNF312bタンパク質またはその断片を発現する動物細胞に形質転換することにより形質転換体を製造する工程;
3)前記工程2)の形質転換体を被検組成物または被検化合物で処理した実験群と処理しない対照群を製造する工程;
4)前記工程3)の実験群及び対照群のレポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程;及び
5)前記工程4)の実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に増加または減少する被検組成物または被検化合物を選別する工程を含む、胃癌誘発物質または抑制物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、
1)実験群として配列番号15で表わされる塩基配列で構成されるK−rasプロモーターまたはその断片を含むオリゴヌクレオチドと配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含むZNF312bタンパク質またはその断片とを、被検組成物または被検化合物と一緒に処理する工程;
2)工程1)の実験群と処理しない対照群で、K−rasプロモーターまたはその断片に対するZNF312bタンパク質またはその断片の結合レベルを測定して比較する工程;及び
3)前記実験群の結合レベルを対照群と比較して有意に増加または減少する被検組成物または被検化合物を選別する工程とを含む、胃癌誘発物質または抑制物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片を含むベクターをヒトを除いた動物に形質転換して、胃癌が誘発された胃癌診断及びスクリーニング用動物を提供する。
【0019】
また、本発明は、配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片から転写されるmRNA配列の全部または一部と相補的な配列を有し、前記mRNAに結合して前記ZNF312b遺伝子またはその断片の発現を抑制する、アンチセンス遺伝子を提供する。
【0020】
また、本発明は、配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片から転写されるmRNAの配列の全部または一部と相補的な配列を有し、ダイサータンパク質によって認識され、前記ZNF312b遺伝子またはその断片の発現を阻害するsiRNA配列を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記方法によってスクリーニングされた胃癌抑制物質を有効成分として含む胃癌予防及び治療用組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、薬学的に有効な量の前記胃癌予防及び治療用組成物を個体に投与する工程を含む、胃癌の予防及び治療方法を提供する。
【0023】
同時に、本発明は、前記方法によってスクリーニングされた胃癌抑制物質を胃癌予防及び治療用組成物の製造に使用する用途を提供する。
【0024】
以下、本発明の用語を定義する。
【0025】
本発明において、「マーカー」は、胃癌細胞を正常細胞と区分して診断することができる物質で、ZNF312b遺伝子に対する核酸マーカー及びZNF312bタンパク質に対するポリペプチドマーカーであり得る。これらマーカーは、正常細胞と比較して胃癌細胞で発現が増加する特徴を示すことを意味する。
【0026】
本発明において、「診断」は、胃癌状態の存在または特徴を確認することを意味する。
【0027】
本発明において、「遺伝子発現レベル」というのは、試料におけるZNF312b胃癌マーカー遺伝子のmRNA発現レベルを意味する。
【0028】
本発明において、「プライマー」は、短い自由3’末端水酸化基を有する核酸配列で、相補的な鋳型と塩基対を形成することができ、鋳型鎖複写のための開始地点に機能する短い核酸配列を意味する。
【0029】
本発明において、「タンパク質発現レベル」というのは、試料におけるZNF312b胃癌マーカー遺伝子で発現されたタンパク質の発現レベルを意味する。
【0030】
本発明において、「抗体」というのは、抗原性が決定される部位に特異的なタンパク質分子を意味する。
【0031】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0032】
本発明は、配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子(GeneBank Accession number:AY726588)またはその断片を含むオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドを増幅することができるプライマー対を含む胃癌診断用キットを提供する。
【0033】
前記ZNF312b遺伝子の断片は、配列番号1で表わされる塩基配列の中でカルボキシ末端部位(配列番号20)が含まれることが好ましいが、これに限定されない。
【0034】
前記ZNF312b遺伝子は、転写調節因子として作用し、細胞増殖に係わる遺伝子を活性化する。配列番号1の塩基配列で、ヌクレオチド番号104部位に該当するオープンリーディングフレームは、全体タンパク質のコード領域で、それから誘導されるアミノ酸配列は、配列番号2に現われていて、475個のアミノ酸で成り立っている(「ZNF312bタンパク質」)。しかし、コドンの縮退(degeneracy)または前記発癌遺伝子を発現させるのに好適なコドンを考慮して、本発明の遺伝子は、コード領域から発現される発癌タンパク質のアミノ酸を変化させない範囲内で、コード領域の多様な変形が成立し得、コード領域を除外した部分でも遺伝子の発現に影響を及ぼさない範囲内で、多様な変形または修飾が成立し得るので、そのような変形遺伝子も本発明の範囲に含まれる。したがって、本発明は、前記配列番号1の発癌遺伝子と実質的に同一な塩基配列を有するポリヌクレオチド及び前記遺伝子の断片を含む。実質的に同一なポリヌクレオチドというのは、80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列相同性を有するものを含む。
【0035】
本発明者らは、ZNF312b遺伝子が胃癌細胞で特異的に過剰発現するかどうか調べるため、ZNF312b遺伝子のmRNA発現量を胃癌細胞株及び臨床組織で調査した。その結果、ZNF312b遺伝子は、胃癌細胞で特異的に過剰発現されることを確認した(図1及び図2参照)。
【0036】
また、本発明者らは、ZNF312b遺伝子の発現レベルが胃癌細胞に及ぼす影響を調べるため、ZNF312b遺伝子を導入した発現ベクター、及びZNF312b shRNA(small hairpin RNA)発現ベクターをそれぞれ製造して胃癌細胞株に形質導入した後、前記胃癌細胞の細胞増殖及び細胞周期変化を調査した。その結果、ZNF312b遺伝子の過剰発現が対照群と比較して胃癌細胞株の細胞増殖を増加させ、細胞周期のG1期を減少させてG2+M期を増加させ、細胞増殖率を増加させることが分かった。一方、ZNF312b遺伝子の発現抑制が、対照群と比較して胃癌細胞株の細胞増殖を減少させ、細胞周期のG1期を増加させてG2+M期を減少させ、細胞増殖率を減少させることが分かった(図3〜図11参照)。
【0037】
また、本発明者らは、ZNF312b遺伝子の発癌遺伝子としての機能を確認するため、コロニー形成実験及びヌードマウスを使用した腫瘍形成実験を行なった。その結果、ZNF312b遺伝子の過剰発現がコロニー形成を増加させ、ヌードマウスで腫瘍の大きさを対照群と比較して顕著に増加させることを確認した(図12〜図17参照)。
【0038】
したがって、本発明のZNF312b遺伝子が、胃癌遺伝子として胃癌診断用マーカー遺伝子に使用できることが分かる。
【0039】
前記胃癌診断用キットは、ZNF312b mRNAを定量的に検出して診断及びスクリーニングすることが好ましいが、これに限定されない。
【0040】
前記胃癌診断用キットは、ZNF312b mRNAに特異的に結合する配列番号3または配列番号4のヌクレオチドを追加的に含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0041】
前記胃癌診断用キットは、ZNF312b mRNAに対応するcDNA製造用プライマー、逆転写酵素、Taqポリメラーゼ、PCR用プライマー及びdNTPからなる群から選択されたいずれか一つ以上を追加的に含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0042】
前記胃癌診断用キットは、前記マーカー遺伝子を増幅することができるプライマー対を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0043】
前記プライマーは、マーカー遺伝子の塩基配列に特異的な配列を有するヌクレオチドとして、好ましくは約7〜50bpの塩基配列、より好ましくは10〜30bpの塩基配列で構成されるが、これに限定されるのではない。
【0044】
前記プライマーは、適切な緩衝溶液及び温度で重合反応のための試薬、及び相異した四種類ヌクレオチド三リン酸の存在下でDNA合成を開始することができる。プライマーは、DNA合成の開始点で作用するプライマーの基本性質を変化させない、追加の特徴を混入することができる。
【0045】
前記プライマーは、ホスホロアミダイト固体支持体方法またはその他広く公知された方法を使用して変形または化学的に合成することができる。
【0046】
前記胃癌診断用キットは、テストチューブ、適切なコンテナ、反応緩衝液、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、Taqポリメラーゼ、逆転写酵素、DNase、RNase抑制剤、DEPC水及び滅菌水からなる群から選択されるいずれか一つ以上を追加的に含むことが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0047】
また、本発明は、配列番号2で表わされるZNF312bタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体を含む胃癌診断用キットを提供する。
【0048】
前記ZNF312bタンパク質の断片は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列の中でカルボキシ末端部位が含まれることが好ましいが、これに限定されない。
【0049】
本発明者らは、ZNF312bタンパク質またはその断片の転写因子としての機能及び作用部位を調べるため、前記タンパク質又はその断片を発現する組換えベクターを胃癌細胞株に導入した後、核分画及び免疫細胞染色法を使用して細胞内位置を確認した。その結果、ZNF312bタンパク質または前記タンパク質の中でカルボキシ末端部位(配列番号20)を含有した断片が、核に移行したことが分かった(図18〜図20参照)。
【0050】
また、本発明者らは、ZNF312bタンパク質またはその断片が胃癌細胞株の細胞増殖及びコロニー形成に及ぼす影響を調べるため、前記タンパク質及びその断片を過剰発現する組換えベクターを胃癌細胞株に導入した後、細胞増殖程度及びコロニー形成程度を測定した。その結果、ZNF312bタンパク質または前記タンパク質の中でカルボキシ末端を含有した断片が過剰発現された場合、細胞増殖が増加し、コロニー形成が増加した(図21〜図23参照)。
【0051】
また、本発明者らは、ZNF312bタンパク質またはその断片の胃癌細胞株の細胞増殖シグナル伝達系を確認するために、前記タンパク質又はその断片の発現を過剰発現または抑制する組換えベクターをそれぞれ胃癌細胞株に導入した後、多様な抗体を使用したウエスタンブロット分析をした。その結果、ZNF312bまたはその断片による抑制は、K−rasの発現を減少させ、これは、ERKシグナル伝達の不活性化を誘導する一方、ZNF312b及びその断片の過剰発現は、K−rasの発現の活性を誘導してそれを通じてERKシグナル伝達が活性化することが分かった(図24〜図25参照)。
【0052】
したがって、本発明のZNF312bタンパク質及び前記タンパク質の中でカルボキシ末端部位(配列番号20)を含有した断片は、胃癌を診断及びスクリーニングするタンパク質マーカーとして使用することができることが分かる。
【0053】
前記キットは、好ましくは前記ZNF312bタンパク質またはその断片を追加的に含むが、これに限定されない。
【0054】
前記キットに含まれる抗体は、好ましくはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体または組換え抗体であるが、これに限定されない。
【0055】
前記抗体を生成することは、当業者に広く知られた技術を使用して容易に製造することができる。当業者に公知の方法によって、ポリクローナル抗体は、ZNF312bタンパク質抗原を動物に注射して、動物から採血して抗体を含む血清を得ることができる。動物としては、ヤギ、ウサギ、ブタ等、任意の動物宿主を使用して製造することができる。モノクローナル抗体は、本発明が属する技術分野において公知である、ハイブリドーマ法(Kohler & Milstein、European J.Immunology,1976年,第6巻,511−519頁)またはファージ抗体ライブラリ(Clackson等.,Nature,1991年,第352巻,624−628頁;Marks等,J.Mol.Biol.,1991年,第222巻,58,1−597頁)技術を使用して製造することができる。
【0056】
前記ハイブリドーマ法は、ZNF312bタンパク質抗原を注射したマウスのような免疫学的に相応しい宿主動物の細胞を使用して、もう一つは、癌または骨髄腫細胞株を使用することができる。このような二つの種類の細胞をポリエチレングリコールのような当業界に広く公知された方法で融合させた後、抗体生産細胞を標準的な組織培養方法で増殖させることができる。限界希釈法によるサブクローニングによって均一な細胞集団を得た後、ZNF312bタンパク質に対して特異的な抗体を生産することができるハイブリドーマを、標準技術にしたがって試験管内または生体内で大量培養することができる。
【0057】
前記ファージ抗体ライブラリ方法は、ZNF312bタンパク質に対する抗体遺伝子を獲得して、それをファージの表面に融合タンパク質形態で発現して抗体ライブラリを試験管内で作製し、前記ライブラリからZNF312bタンパク質と結合するモノクローナル抗体を分離して作製することができる。
【0058】
前記方法によって製造された抗体は、電気泳動、透析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の方法で分離することができる。
【0059】
前記キットに含まれる抗体は、2個の全長軽鎖及び2個の全長重鎖を有する完全な形態だけではなく、抗体分子の機能的な断片を含む。抗体分子の機能的断片というのは、少なくとも抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)、F(ab)及びFv等がある。
【0060】
前記キットは、好ましくは、ELISA用診断キットとし、対照群タンパク質に特異的な抗体を含むことができ、その他にも、抗原抗体複合体を検出することができる試薬、例えば、標識された2次抗体、発色団、抗体とコンジュケートされた酵素もしくはその基質又は抗体と結合することができる他の物質等を含むことができる。
【0061】
また、本発明は、前記マーカー遺伝子塩基配列の全部または一部を含むオリゴヌクレオチド、またはそれに相補的なオリゴヌクレオチドが組み込まれた胃癌診断用マイクロアレイを提供する。
【0062】
また、本発明は、配列番号2で表わされるZNF312bタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体を胃組織、胃細胞、尿、血液、血清及び血漿の中から選択される生物学的試料と接触させる工程を含む、胃癌マーカー検出方法を提供する。
【0063】
前記胃癌マーカー検出方法は、具体的に、
1)分析する生物学的試料とZNF312bタンパク質、またはその断片に特異的に結合する抗体を接触させる工程;
2)前記工程1)の接触で形成された抗原抗体複合体を定量検出する工程;及び
3)前記工程2)の検出レベルを対照群と比較して選別する工程を含む。
【0064】
前記方法において、工程2)の抗原抗体複合体を定量検出する方法では、好ましくはウエスタンブロット、ELISA、RIA(Radioimmunoassay)、放射免疫拡散法、オークタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈降、補体固定アッセイ(Complement fixation assay)、FACS及びタンパク質チップからなる群から選択されるが、これに限定されない。
【0065】
前記方法において、工程2)の抗原抗体複合体の形成量は、検出レベルのシグナルの大きさを通じて定量的に測定することができる。検出レベルは、好ましくは酵素、蛍光物質、リガンド、発光物質、微少粒子(microparticle)、レドックス分子及び放射線同位元素からなる群から選択されるいずれか一つであるが、これに限定されるのではない。
【0066】
前記検出レベルの測定において、酵素は、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼ及びヘキソキナーゼからなる群から選択されたいずれか一つであることが好ましいが、これに限定されない。前記蛍光物質は、フルオレシン、ピコシアニンまたはフルオレスカミンが好ましいが、これに限定されない。前記リガンドは、ビオチン誘導体が好ましいが、これに限定されない。前記発光物質は、ルシフェリンが好ましいがこれに限定されない。前記微少粒子では、金コロイドが好ましいが、これに限定されない。前記レドックス分子は、キノン、1,4−ベンゾキノンまたはヒドロキノンが好ましいが、これに限定されない。前記放射線同位元素は、Hまたは14Cが好ましいが、これに限定されない。
【0067】
また、本発明は、
1)個体の試料からZNF312bマーカー遺伝子及びその断片の発現レベルを測定する工程;及び
2)工程1)のマーカー遺伝子の発現レベルが正常対照群より高い個体を選別する工程を含む胃癌診断方法を提供する。
【0068】
前記方法において、工程1)の試料は、胃組織、胃細胞、尿、血液、血清及び血漿から選択されるいずれか一つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0069】
前記方法において、工程1)の発現レベルは、mRNAレベル及びタンパク質レベルですべて測定することができる。
【0070】
前記mRNAレベルで測定する方法では、RT−PCR、競合的RT−PCR、リアルタイムRT−PCR、RNase保護分析法(RNase protection assay)、ノ−ザンブロッティング(Nothern blotting)及びDNAチップからなる群から選択されるいずれが一つを使用することが好ましいが、これに限定されない。前記方法を通じて、正常対照群でのmRNA発現量と胃癌の疑いがある患者でのmRNA発現量を比較することができ、ZNF312b遺伝子マーカーでmRNAへの有意な発現量の増加有無を判断して、胃癌の疑いがある患者が実際に胃癌患者であるかどうかを診断することができる。
【0071】
前記タンパク質レベルで測定する方法は、2次元電気泳動、タンパク質チップ、ELISAまたは前記マーカータンパク質に特異的に結合することができる抗体を使用することが好ましいが、これに限定されない。
【0072】
前記タンパク質発現レベルは、固体支持体に付着した抗体と抗原の複合体で抗原を認識する標識された他の抗体を使用する直接的サンドイッチELISA、固体支持体に付着した抗体と抗原の複合体で抗原を認識する他の抗体と反応させた後、前記抗体を認識する標識された2次抗体を使用する間接的サンドイッチELISA等、多様なELISA方法を使用して検出することができる。さらに好ましくは、固体支持体に抗体を付着させて試料を反応させた後、抗原抗体複合体の抗原を認識する標識された抗体を付着させて酵素的に発色させるか、抗原抗体複合体の抗原を認識する抗体に対して標識された2次抗体を付着させて酵素的に発色させる、サンドイッチELISA方法によって検出することができる。
【0073】
前記タンパク質発現レベルは、ZNF312bタンパク質マーカーに対する一つ以上の抗体が基板上の決められた位置に配列され、高密度に固定化されているタンパク質チップを使用して検出することができる。タンパク質チップを使用して試料を分析する方法は、試料からタンパク質を分離して、分離したタンパク質をタンパク質チップと混成化させて抗原抗体複合体を形成させ、それを判読してタンパク質の存在または発現レベルを確認して、胃癌発病の有無を確認することができる。
【0074】
前記タンパク質発現レベルは、ZNF312bに対する抗体を使用してウエスタンブロットを遂行して検出することができる。試料から全体タンパク質を分離して、それを電気泳動してタンパク質を大きさによって分離した後、ニトロセルロース膜に移動させて抗体と反応させる。生成された抗原抗体複合体の量を標識された抗体を使用して確認することで、胃癌発病の有無を確認することができる。
【0075】
本発明は、
1)実験群として胃由来細胞に被検組成物または被検化合物を処理する工程;
2)工程1)の実験群細胞と処理しない対照群細胞の配列番号1で表わされる塩基配列またはその断片を含む胃癌診断用ZNF312bマーカー遺伝子の発現レベルを測定して比較する工程;及び
3)前記実験群の発現レベルを対照群と比較して、有意に増加する被検組成物または被検化合物を選別する工程を含む、胃癌誘発物質スクリーニング方法を提供する。
【0076】
前記方法において、工程2)のZNF312b遺伝子は、配列番号1で表わされる塩基配列またはその断片を含むことが好ましく、前記断片は、配列番号1で表わされる塩基配列中でカルボキシ末端部位が含まれることが好ましいが、これに限定されない。
【0077】
前記方法において、工程2)の遺伝子発現レベルを測定する方法は、RT−PCR、競合的RT−PCR、リアルタイムRT−PCR、RNase保護分析法、ノ−ザンブロットティング及びDNAチップからなる群から選択されるいずれか一つを使用することが好ましいが、これに限定されない。前記検出方法を通じて、正常対照群でのmRNA発現量と実験群でのmRNA発現量を比較することができ、ZNF312b遺伝子マーカーでmRNAへの有意な発現量の減少有無を判断して、胃癌抑制物質をスクリーニングすることができる。
【0078】
また、本発明は、
1)実験群として胃由来細胞に被検組成物または被検化合物を処理する工程;
2)工程1)の実験群細胞と処理しない対照群細胞の配列番号1で表わされる塩基配列またはその断片を含む胃癌診断用ZNF312bマーカー遺伝子の発現レベルを測定して比較する工程;及び
3)前記実験群の発現レベルを対照群と比較して、有意に減少させる被検組成物または被検化合物を選別する工程を含む、胃癌抑制物質スクリーニング方法を提供する。
【0079】
前記方法において、工程2)のZNF312b遺伝子は、配列番号1で表わされる塩基配列またはその断片を含むことが好ましく、前記断片は、配列番号1で表わされる塩基配列中でカルボキシ末端部位を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0080】
前記方法において、工程2)の遺伝子発現レベルを測定する方法は、RT−PCR、競合的RT−PCR、リアルタイムRT−PCR、RNase保護分析法、ノ−ザンブロットティング及びDNAチップからなる群から選択されるいずれか一つを使用することが好ましいが、これに限定されない。前記検出方法たちを通じて正常対照群でのmRNA発現量と実験群でのmRNA発現量を比較することができ、ZNF312b遺伝子マーカーでmRNAへの有意な発現量の減少有無を判断して、胃癌抑制物質をスクリーニングすることができる。
【0081】
また、本発明は、
1)配列番号9で表わされる塩基配列で構成されるZNF312bプロモーター又はその断片に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを製造する工程;
2)前記工程1)の遺伝子コンストラクトを発現ベクターに導入した後、動物細胞に形質転換して形質転換体を製造する工程;
3)前記工程2)の形質転換体に被検組成物または被検化合物を処理した実験群と処理しない対照群を製造する工程;
4)前記工程3)の実験群及び対照群のレポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程;及び
5)前記工程4)の実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に増加する被検組成物または被検化合物を選別する工程を含む、胃癌誘発物質スクリーニング方法を提供する。
【0082】
前記方法において、工程1)の断片は、配列番号9で表わされる塩基配列の中で転写開始点を基準に−850bp〜+1bp部位(配列番号12)を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0083】
前記方法において、工程1)のレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子を使用することが好ましいが、これに限定されない。
【0084】
本発明者らは、転写活性能が高いZNF312bプロモーター部位の選択及び細胞株を樹立するために、前記プロモーターの多様な断片をルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードすることができるベクターに導入し、胃癌細胞株に形質転換させ、ルシフェラーゼの活性を分析した。その結果、ZNF312bプロモーターの転写活性能は、前記プロモーター部位の中で転写開始点を基準に−850bp〜+1bp部位(配列番号12)を含むものが最も高く、転写活性能を持続的に有するベクターが、一時的に有するベクターと比較して高いことが分かる。
【0085】
また、本発明は、
1)配列番号9で表わされる塩基配列で構成されるZNF312bプロモーター及びその断片に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを製造する工程;
2)前記工程1)の遺伝子コンストラクトを発現ベクターに導入した後、動物細胞に形質転換して形質転換体を製造する工程;
3)前記工程2)の形質転換体に被検組成物または被検化合物を処理した実験群と処理しない対照群を製造する工程;
4)前記工程3)の実験群及び対照群のレポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程;及び
5)前記工程4)の実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に減少させる被検組成物または被検化合物を選別する工程とを含む、胃癌抑制物質スクリーニング方法を提供する。
【0086】
前記方法において、工程1)の断片は、配列番号9で表わされる塩基配列の中で転写開始点を基準に−850bp〜+1bp部位(配列番号12)を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0087】
前記方法において、工程1)のレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子を使用することが好ましいが、これに限定されない。
【0088】
本発明者らは、ZNF312bプロモーター転写活性能を阻害する化合物をスクリーニングするため、ZNF312bプロモーター及び転写開始点を基準に−850bp〜+1bp部位(配列番号12)を含む断片を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードする持続的に転写活性能を有するベクターに導入した後、胃癌細胞株に形質転換させた後、多様な化合物を処理して、ルシフェラーゼレポーター活性の阻害程度を測定した。その結果、実験に使用された化合物の中で、約50%がルシフェラーゼレポーター活性を40%以上阻害し、これら阻害化合物の中で約60%が、10%未満の細胞毒性を有することが分かった(表1及び表2参照)。
【0089】
したがって、ZNF312bプロモーター転写活性能を使用して、ZNF312b発現レベルを阻害する化合物をスクリーニングすることができることが分かる。
【0090】
また、本発明は、
1)配列番号15で表わされる塩基配列で構成されるK−rasプロモーター及びその断片に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを製造する工程;
2)前記工程1)の遺伝子コンストラクトを発現ベクターに導入し、配列番号2で表わされるアミノ酸配列で構成されるZNF312bタンパク質またはその断片を発現する動物細胞に形質転換することにより形質転換体を製造する工程;
3)前記工程2)の形質転換体に被検組成物または被検化合物を処理した実験群と処理しない対照群を製造する工程;
4)前記工程3)の実験群及び対照群のレポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程;及び
5)前記工程4)の実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に増加させる被検組成物または被検化合物を選別する工程とを含む、胃癌誘発物質スクリーニング方法を提供する。
【0091】
前記方法において、工程1)のK−rasプロモーターの断片は、配列番号19で表わされる塩基配列を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0092】
前記方法において、工程1)のレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子を使用することが好ましいが、これに限定されない。
【0093】
前記方法において、好ましくはZNF312bの断片は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列の中で配列番号20で表わされるアミノ酸配列であるカルボキシ末端部位を含むことが好ましいが、これに限定されない。
前記方法において、工程2)のZNF312bの断片は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列の中で配列番号19で表わされるアミノ酸配列であるカルボキシ末端部位を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0094】
また、本発明は、
1)配列番号15で表わされる塩基配列で構成されるK−rasプロモーター及びその断片に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを製造する工程;
2)前記工程1)の遺伝子コンストラクトを発現ベクターに導入し、配列番号2で表わされるアミノ酸配列で構成されるZNF312bタンパク質またはその断片を発現する動物細胞に形質転換することにより形質転換体を製造する工程;
3)前記工程2)の形質転換体に被検組成物または被検化合物を処理した実験群と処理しない対照群を製造する工程;
4)前記工程3)の実験群及び対照群のレポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程;及び
5)前記工程4)の実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に減少させる被検組成物または被検化合物を選別する工程とを含む、胃癌抑制物質スクリーニング方法を提供する。
【0095】
前記方法において、工程1)のK−rasプロモーターの断片は、配列番号19で表わされる塩基配列を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0096】
前記方法において、工程1)のレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子を使用することが好ましいが、これに限定されない。
【0097】
前記方法において、工程2)のZNF312bの断片は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列の中で配列番号20で表わされるアミノ酸配列であるカルボキシ末端部位を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0098】
本発明者らは、ZNF312bタンパク質またはその断片によるK−rasの発現レベルの調節機序を解明するため、K−rasプロモーターをルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするベクターに導入した後、胃癌細胞株にZNF312bタンパク質またはその断片とともに形質転換させ、ルシフェラーゼレポーター活性を測定した。その結果、ZNF312bタンパク質またはその断片の発現によって、K−rasプロモーターが活性化することが分かった。
【0099】
また、本発明者らは、ZNF312bタンパク質またはその断片によるK−rasプロモーター活性の作用部位を確立するため、多様な断片のK−rasプロモーターをルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするベクターに導入した後、胃癌細胞株にZNF312bタンパク質またはその断片とともに形質転換させた後、ルシフェラーゼレポーター活性を測定した。その結果、ZNF312bタンパク質またはその断片のK−rasプロモーター活性の作用部位は、配列番号16で表わされる57bp部位であることが分かった。
【0100】
したがって、K−rasプロモーターの中で配列番号19で表わされる57bp部位の転写活性能を測定して、ZNF312bタンパク質またはその断片の作用活性を分析することで、胃癌誘発物質または抑制物質をスクリーニングすることができる。
【0101】
また、本発明は、
1)配列番号15で表わされる塩基配列で構成されるK−rasプロモーターまたはその断片を含むオリゴヌクレオチドと配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含むZNF312bタンパク質またはその断片とを、被検組成物または被検化合物と一緒に処理する工程;
2)工程1)の実験群と処理しない対照群で、K−rasプロモーターまたはその断片に対するZNF312bタンパク質またはその断片の結合レベルを測定して比較する工程;及び
3)前記実験群の結合レベルを対照群と比較して有意に増加させる被検組成物または被検化合物を選別する工程とを含む、胃癌誘発物質スクリーニング方法を提供する。
【0102】
前記方法において、工程1)のK−rasプロモーターの断片は、配列番号16で表わされる塩基配列を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0103】
前記方法において、工程1)のZNF312bの断片は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列の配列番号20で表わされるアミノ酸配列であるカルボキシ末端部位を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0104】
前記方法において、工程2)の測定は、2次元電気泳動、タンパク質チップ、ELISAまたは前記マーカータンパク質に特異的に結合することができる抗体を使用して測定することが好ましいが、これに限定されない。
【0105】
また、本発明は、
1)配列番号15で表わされる塩基配列で構成されるK−rasプロモーターまたはその断片を含むオリゴヌクレオチドと配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含むZNF312bタンパク質またはその断片とを、被検組成物または被検化合物と一緒に処理する工程;
2)工程1)の実験群と処理しない対照群で、K−rasプロモーターまたはその断片に対するZNF312bタンパク質またはその断片の結合レベルを測定して比較する工程;及び
3)前記実験群の結合レベルを対照群と比較して有意に減少させる被検組成物または被検化合物を選別する工程とを含む、胃癌抑制物質スクリーニング方法を提供する。
【0106】
前記方法において、好ましくは工程1)のZNF312bの断片は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列の配列番号20で表わされるアミノ酸配列であるカルボキシ末端部位を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0107】
前記方法において、工程2)の測定は、2次元電気泳動、タンパク質チップ、ELISAまたは前記マーカータンパク質に特異的に結合することができる抗体を使用して測定することが好ましいが、これに限定されない。
【0108】
本発明者らは、ZNF312bタンパク質またはその断片のK−rasプロモーター活性の作用部位を確認するため、DNA結合部位分析キットを使用して分析した結果、ZNF312bタンパク質及びその断片が、K−rasプロモーター内配列番号19で表わされる57bp部位に結合することが分かった。
【0109】
したがって、K−rasプロモーターの配列番号19で表わされる57bp部位に対するZNF312bタンパク質またはその断片の結合レベルを測定して、ZNF312bタンパク質またはその断片の作用活性を分析することにより、胃癌誘発物質または抑制物質をスクリーニングすることができる。
【0110】
また、本発明は、配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片を含むベクターを、ヒトを除いた動物に形質転換して、胃癌が誘発された胃癌診断及びスクリーニング用動物を提供する。
【0111】
前記形質転換動物は、本発明のZNF312b遺伝子またはその断片を哺乳動物、例えば、マウス等のげっ歯類動物に導入することで製造することができ、その遺伝子を少なくとも8細胞期以前の受精卵工程で導入することが好ましい。このように製造された形質転換動物は、発癌性物質、または前記遺伝子阻害物質及び抗癌物質の探索等に有用に使用することができる。
【0112】
また、本発明は、前記胃癌抑制物質スクリーニング方法によってスクリーニングされた胃癌抑制物質を有効成分として含む、胃癌予防及び治療用組成物を提供する。
【0113】
前記胃癌抑制物質は、配列番号1の塩基配列で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片から転写されるmRNAの配列の全部または一部と相補的な配列を有し、前記mRNAに結合してZNF312b遺伝子またはその断片の発現を抑制するアンチセンス遺伝子を含むことが好ましいが、これに限定されない。前記アンチセンス遺伝子は、mRNAと結合してリボソームによる翻訳過程を阻害することができる配列を有するDNA配列を患者の体内に導入することで、前記ZNF312b遺伝子の発現による胃癌を治療することができる。
【0114】
前記胃癌抑制物質は、ZNF312b遺伝子またはその断片から転写されるmRNAの配列の全部または一部と相補的な配列を有して、ダイサータンパク質によって認識され、ZNF312b遺伝子またはその断片の発現を阻害するsiRNAを含むことが好ましいが、これに限定されない。前記siRNAは、21〜30ヌクレオチドのRNA断片で細胞内に導入されるとダイサーによって認識され、これは細胞内に存在する前記遺伝子のmRNAを分解するようになって遺伝子の発現を阻害するようになる。
【0115】
本発明の胃癌予防及び治療用組成物は、胃癌抑制物質の中で1種の有効成分以外に、薬学的に許容可能な担体、すなわち食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エチルアルコール、リポゾーム及びこれら成分の中で1種以上を混合して使用することができ、必要によって抗酸化剤、緩衝液等他の通常の添加剤を加えることができる。また希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液等のような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができ、標的器官に特異的に作用するように標的器官特異的抗体または、その他リガンドを前記担体と結合させて使用することができる。さらに、当該技術分野の適正な方法で、またはレミントンの文献(Remington’s Pharmaceutical Science(最新版)、Mack Publishing Company、Easton PA)に開示されている方法を使用して、各成分によって好ましく製剤化することができる。
【0116】
また、本発明は、薬学的に有効な量の前記胃癌予防及び治療用組成物を、胃癌にかかった個体に投与する工程を含む胃癌治療方法を提供する。
【0117】
また、本発明は、薬学的に有効な量の前記胃癌予防及び治療用組成物を、個体に投与する工程を含む胃癌の予防方法を提供する。
【0118】
本発明の組成物の投与方法は、特別に制限されるものではないが、目的と方法によって、静脈内、皮下、腹腔内または局所適用のように非経口投与するか、経口投与することができる。投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度等によってその範囲が多様である。一日投与量は、化合物の場合、約0.1〜100mg/kgであり、好ましくは0.5〜10mg/kgであり、一日に1回〜数回に分けて投与することが好ましい。
【0119】
本発明の組成物を使用した治療方法中、siRNAまたはアンチセンスを使用した遺伝子治療は、通常的な方法で患者に投与して発癌遺伝子の発現を阻害することができる。例えば、文献(J.S.Kim等,J.Controlled Release,1998年,第53巻,175−182頁)の方法によって、アンチセンスオリゴジオキシヌクレオチド(ODN)をポリ−L−リジン誘導体と静電気的引力によって混合させて、その混合体を患者に静脈投与することができる。
【発明の効果】
【0120】
本発明の新規な胃癌の診断及び治療用マーカーであるZNF312bは、胃癌患者試料で過剰発現し、前記遺伝子の過剰発現または抑制によって胃癌細胞株の細胞増殖と腫瘍形成能が活性または抑制されることにより 、胃癌の診断、胃癌誘発動物の製造、胃癌の予防及び治療、及び胃癌特異的抗癌剤の開発等に効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】ヒト胃癌患者から得た総RNAを使用して、ZNF312b遺伝子に対するリアルタイムRT−PCRを行なった結果を示した図である。
【図2】ヒト胃癌患者から得た総RNAを使用して、ZNF312b遺伝子に対するリアルタイムRT−PCRを行なった結果を示した図である。
【図3】ZNF312bのsiRNAでの前記遺伝子の発現を示した図である。
【図4】前記siRNAの中でsi−ZNF312b−1配列を使用して作製されたベクターであるshZNF312bを導入して樹立された胃癌細胞株であるSNU668−shZNF312bでの前記遺伝子の発現を示した図である。
【図5】ZNF312b遺伝子の細胞増殖実験結果を示した図で、ZNF312bのsi−ZNF312b−1オリゴマーを胃癌細胞株であるSNU668に導入した後の細胞増殖結果を示した図である。
【図6】ZNF312bの抑制細胞株であるSNU668−shZNF312bの細胞増殖結果を示した図である。
【図7】ZNF312bの過剰発現細胞株であるSNU638−ZNF312b及びSNU668−ZNF312bの細胞増殖実験結果を示した図である。実験結果は、有意性検定を通じて結果の信頼性を確認した。*は、P値0.05以下で95%の信頼度を有するもの、**は、0.01以下で99%の信頼性を有するもの、***は、0.001以下は99.9%で信頼性を有するものである。
【図8】ZNF312bの過剰発現細胞株であるSNU638−ZNF312b及びSNU668−ZNF312bの細胞増殖実験結果を示した図である。実験結果は、有意性検定を通じて結果の信頼性を確認した。*は、P値0.05以下で95%の信頼度を有するもの、**は、0.01以下で99%の信頼性を有するもの、***は、0.001以下は99.9%で信頼性を有するものである。
【図9】ZNF312b遺伝子の細胞周期実験結果を示したもので、PI染色法を使用してDNAを染色した後、細胞分析機を使用して測定した結果を示した図であり、ZNF312bのsi−ZNF312b−1を胃癌細胞株であるSNU668に導入した後の細胞周期結果を示した図で、細胞分析機を通じて分析された細胞周期を示していて、分析された細胞周期は、細胞増殖率(G2+M+S期の細胞数/全体細胞数×100)で計算して図10のグラフに示した。
【図10】ZNF312b遺伝子の細胞周期実験結果を示したもので、PI染色法を使用してDNAを染色した後、細胞分析機を使用して測定した結果を示した図が図9であり、ZNF312bのsi−ZNF312b−1を胃癌細胞株であるSNU668に導入した後の細胞周期結果を示し、細胞分析機を通じて分析された細胞周期を示していて、分析された細胞周期は、細胞増殖率(G2+M+S期の細胞数/全体細胞数×100)で計算してグラフに示した。
【図11】ZNF312b遺伝子の細胞周期実験結果を示したもので、PI染色法を使用してDNAを染色した後、細胞分析機を使用して測定した結果を示した図であり、ZNF312bの過剰発現細胞株であるSNU638−ZNF312b及びSNU668−ZNF312bの細胞周期実験結果を示した図である。
【図12】ZNF312b遺伝子の腫瘍形成能を調べるために実施した実験でコロニー形成実験結果を示した図で、ZNF312bの抑制細胞株であるSNU668−shZNF312bのコロニー形成結果を示した図である。
【図13】ZNF312b遺伝子の腫瘍形成能を調べるために実施した実験でコロニー形成実験結果を示した図で、ZNF312bの抑制細胞株であるSNU668−shZNF312bのコロニー形成結果を示した図である。
【図14】ZNF312b遺伝子の腫瘍形成能を調べるために実施した実験でコロニー形成実験結果を示した図で、ZNF312bの過剰発現細胞株であるSNU638−ZNF312b及びSNU668−ZNF312bのコロニー形成実験結果を示した図である。
【図15】ZNF312b遺伝子の腫瘍形成能を調べるために実施した実験でコロニー形成実験結果を示した図で、ZNF312bの過剰発現細胞株であるSNU638−ZNF312b及びSNU668−ZNF312bのコロニー形成実験結果を示した図である。
【図16】ZNF312b遺伝子の過剰発現細胞株であるSNU668−ZNF312bをヌードマウスに移植して腫瘍形成能実験を行なった結果を示した図である。
【図17】ZNF312b遺伝子の過剰発現細胞株であるSNU668−ZNF312bをヌードマウスに移植して腫瘍形成能実験を行なった結果を示した図である。
【図18】ZNF312bの腫瘍関連作用部位を解明するために、ZNF312bのドメイン分析と細胞内存在位置を実験した結果を示した図で、ZNF312bタンパク質の欠失突然変異を示した模式図である。
【図19】ZNF312bの腫瘍関連作用部位を解明するために、ZNF312bのドメイン分析と細胞内存在位置を実験した結果を示した図で、各ZNF312b断片に対する核での移動程度を確認するために核分画を通じて細胞質と核を区分した後、それぞれのタンパク質をウエスタンブロットで確認した図である。
【図20】ZNF312bの腫瘍関連作用部位を解明するために、ZNF312bのドメイン分析と細胞内存在位置を実験した結果を示した図で、核分画を通じて得たZNF312bの位置を確認するために免疫染色法を通じて、ZNF312bの細胞内存在位置を示した図である。
【図21】全長ZNF312bとカルボキシ基末端を含有した断片ZNF312bの過剰発現によって、細胞増殖と腫瘍形成能が活性化になることを示した図であり、対照群(pHA)、全長ZNF312b(FL)、アミノ末端部分を含有した断片ZNF312b(N1)、及びカルボキシ末端を含有した断片ZNF312b(C1)を細胞内に形質導入して一時的に過剰発現させた後、細胞増殖をCCK−8試薬を使用して測定した結果を示した図である。
【図22】全長ZNF312bとカルボキシ基末端を含有した断片ZNF312bの過剰発現によって、細胞増殖と腫瘍形成能が活性化になることを示した図であり、前記DNAを使用して細胞内にこれらを恒常的に発現する細胞株を作った後、図21と同じ実験を行なって得た結果を示した図である。
【図23】全長ZNF312bとカルボキシ基末端を含有した断片ZNF312bの過剰発現によって、細胞増殖と腫瘍形成能が活性化になることを示した図であり、図8bで使用した細胞株を使用して実施した実験でコロニー形成実験結果を示したもので、soft−agarを使用してコロニー形成効率を測定した実験の結果を示した図である。
【図24】ZNF312bの腫瘍形成能の作用メカニズムを確認するための実験として、ZNF312bはK−rasの転写活性を調節し、RAS−ERK−pathwayを活性化して細胞増殖を誘導することを示した図であり、ZNF312bのsiRNAを使用して細胞内のZNF312bの発現量を減少させた後、RASタンパク質量とRAS−ERK経路の活性化程度をウエスタンブロットで確認した図である。
【図25】ZNF312bの腫瘍形成能の作用メカニズムを確認するための実験として、ZNF312bはK−rasの転写活性を調節し、RAS−ERK−pathwayを活性化して細胞増殖を誘導することを示した図であり、RASタンパク質の量とERK経路活性化が一時的に増加されたZNF312bによって増加するのか、また、C−末端部位含有断片ZNF312bによっても同じ結果を得ることができるかどうかを確認した図である。
【図26】多様なZNF312bプロモーター部位を導入したpGL3b−ZNF312bベクターマップを示した図である。
【図27】それぞれのpGL3b−ZNF312bベクターを胃癌細胞株に形質導入させた後、ルシフェラーゼレポーター活性を測定した結果を示した図である。
【図28】ZNF312bプロモーター中、+1bp〜−850bp部位を導入したpGL4.14−ZNF312b−0.85ベクターマップを示した図である。
【図29】pGL4.14−ZNF312b−0.85ベクターを胃癌細胞株に形質導入させた後、ルシフェラーゼレポーター活性を測定した結果を示した図である。
【図30】K−rasプロモーターを含む多様なレポーターベクターを示した図である。
【図31】ZNF312b遺伝子及び前記遺伝子の中でカルボキシ末端を含む断片ZNF312bの発現によって、K−rasレポーターの活性化有無を確認した図である。
【図32】ZNF312b遺伝子及び前記遺伝子の中でカルボキシ末端を含む断片ZNF312bによって活性化するK−rasプロモーター部分を同定するための実験を行なった結果を示した図である。
【図33】K−rasプロモーターのZNF結合予想部位とZNF312bタンパク質を直接結合させて、K−rasプロモーター中の−650bp〜−500bp部位に存在するZNF結合予想部位である57bpに、ZNF312bの結合有無を確認した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0122】
以下、本発明を実施例及び実験例によって詳しく説明する。
但し、下記の実施例及び実験例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が、下記の実施例及び実験例に限定されるものではない。
【実施例】
【0123】
<実施例1>腫瘍細胞培養及び総RNAの分離
<1−1>腫瘍細胞培養
本発明者らは、1982年韓国胃癌患者から樹立されたもので、韓国細胞株銀行から分譲受けたSNU−638及びSNU−668細胞株を培養した。前記細胞株は、10%牛胎児血清、100mg/mlストレプトマイシン、そして100IU/mlアンピシリンが含まれたRPMI−1640(Hyclone,米国)培地で培養した。
【0124】
<1−2>総RNA分離
本発明者らは、商業的に販売されているシステムであるRNeasy Total RNAキット(Qiagen Inc.,ドイツ)を使用して胃癌患者から得た組織から総RNAを抽出した。DNA汚染源を除去するためにDNase(Promega,米国)を使用し、フェノールクロロホルム法によって総RNAのみを精製した。
【0125】
<実施例2>RT−PCR
本発明者らは、前記実施例<1−2>で得た総RNA 1mgにオリゴdTをプライマーとして逆転写反応を行なった。続いて、生成されたcDNAを1/20に希釈した後、希釈されたcDNA 2μlを鋳型にして、ZNF312bのプライマー[正方向:5’−CGAAGTGTGTGGAAAGGT−3’(配列番号3)、逆方向:5’−AATACACGCGGGCTACAAAC−3’(配列番号4)]でPCRを行なった。前記PCR反応の条件は、94℃で45秒、58℃で45秒、及び72℃で45秒反応させながら、それを35回繰り返した後、最終伸長時間として7分反応させた。増幅された産物は、1.2%アガロースゲルに電気泳動した後、EtBrで染色して紫外線を照射してイメージ分析装置で確認した。その結果を映像分析装置で分析して定量化した。対照群にB2Mを使用して試料間の差異を補正した。図2は、胃癌患者等の組織からZNF312bの発現レベルを確認した結果を示したものであり、それを図1に定量化して示した。図1から分かるように、ZNF312bは胃癌組織で過量に過剰発現されることが確認された(図1及び図2)。
【0126】
<実施例3>ZNF312b発現または抑制ベクターの製造
<3−1>ZNF312b発現ベクターの製造
本発明者らは、ZNF312b遺伝子をpcDNAベクターにクローニングした。まず、総cDNAを鋳型にして、KpnIとBamHI制限酵素認識部位を含有したZNF312bプライマーを使用してPCRを行なった。生成されたPCR産物を精製した後、KpnIとBamHI制限酵素で切断後、pcDNAベクターに挿入してpcDNA−ZNF312b発現ベクターを製造した。
【0127】
<3−2>ZNF312b抑制ベクターの製造
本発明者らは、ZNF312b shRNAを発現するベクターを製造するために、pSilencer4.1−CMVneo(Ambion,米国)ベクターにZNF312b shRNA配列を含有したsi−ZNF312b−1オリゴマー[5’−GCA CTC TCT GCA TCT CAA C−3’(配列番号5)]を挿入して、pSilent−ZNF312bベクターを製造した。
【0128】
<実施例4>形質転換胃癌細胞株の樹立
<4−1>ZNF312b過剰発現胃癌細胞株の樹立
本発明者らは、前記実施例<3−1>で製造したpcDNA−ZNF312bベクターを胃癌細胞株であるSNU−638及びSNU−668に形質導入し、ZNF312b過剰発現細胞株であるSNU638−ZNF312bとSNU668−ZNF312bをそれぞれ樹立した。
【0129】
まず、過剰発現細胞株を樹立するためにSNU−638及びSNU−668細胞に、Fugene−6(Roche、ドイツ)を使用してそれぞれpcDNA−ZNF312bを形質導入させた。前記遺伝子が発現される細胞株のみを選択するために選別マーカーであるG418を600μg/mlになるように培養液に入れた。また、単一クローンを有した細胞株を得るために、コロニーを選別した。そのために、G418培地を3日間隔で交換した。形成されたコロニーを選別して細胞数を増やし、凍結保管して一部は前記遺伝子の発現確認のためにRNA抽出またはタンパク質抽出のために使用した。
【0130】
<4−2>ZNF312b抑制胃癌細胞株の樹立
本発明者らは、前記実施例<3−2>で製造されたベクターpSilent−ZNF312bを、SNU−668に形質導入させてZNF312b抑制細胞株であるSNU668−shZNF312bを樹立した。
【0131】
まず、抑制細胞株を樹立するためにSNU−668細胞にFugene−6(Roche,ドイツ)を使用して、それぞれpSilent−ZNF312bを形質導入させた。前記遺伝子が発現される細胞株のみを選択するために、選別マーカーであるG418を600μg/mlになるように培養液に入れた。また、単一クローンを有した細胞株を得るために、コロニーを選別した。そのためにG418培地を3日間隔で交換した。形成されたコロニーを選別して細胞数を増やして凍結保管し、一部は前記遺伝子の発現確認のためにRNA抽出またはタンパク質抽出用に使用した。前記遺伝子の抑制が確認された細胞株は、多量で培養して凍結保管用と機能解明用に使用した。
【0132】
<実施例5>ウエスタンブロット実験
本発明者らは、前記<実施例4>で製造されたベクターのタンパク質の発現レベルを評価するために、ウエスタンブロット実験を行なった。
【0133】
まず、細胞に溶解緩衝溶液A[20mM HEPES(pH7.5),150mM NaCl,1mM EDTA,2mM EGTA,1%TritonX−100,10%グリセロール、プロテアーゼカクテルI、II(Sigma、米国)]を添加した後、4℃で20分間放置した。細胞溶解物を新しいチューブに移した後、4℃、15000rpmで10分間遠心分離してタンパク質を得た。前記細胞溶解物を5×試料緩衝溶液を添加して、95℃で10分間沸してゲルローディング試料に作ってSDS−PAGEゲルに電気泳動した。前記電気泳動で分子量によって分離したタンパク質バンドは、ニトロセルロース膜でtransfer kit(Bio−Rad、米国)を使用して移動させた後、5%脱脂乳で1時間ブロッキングした。次に、各々の抗体[HA−ZNF312bを検出するためのHA抗体、及び対照群であるチューブリンを検出するためのチューブリン抗体]を4℃で12時間処理した。TBST(0.2%Tween20)緩衝溶液を使用して膜を洗浄した後、2次抗体を1時間処理した後、TBSTで洗浄した後、HRP detection kit(AB frontier,韓国)を使用してフィルムに現像した。
【0134】
<実施例6>細胞増殖実験
<6−1>ZNF312b遺伝子の発現抑制による細胞増殖
本発明者らは、ZNF312b遺伝子の発現抑制による胃癌細胞株の細胞増殖能を調査するために、ZNF312bの塩基配列(配列番号1)中で19個のヌクレオチドからなる三つの種類のsiRNA[si−ZNF312b−1:5’−GCA CTC TCT GCA TCT CAA C−3’(配列番号6)、si−ZNF312b−2:5’−GTG TGT GGA AAG GTC TTT A−3’(配列番号7)、及びsi−ZNF312b−3’:5’−GCA GTT CAA GTG CAA TAT C−3’(配列番号8)]を作製し、それによって、ZNF312b遺伝子の発現阻害能を測定した。その結果、図3のように、si−ZNF312b−1の阻害能が最も高いことが調査され、それをZNF312b遺伝子の一時的な発現阻害実験に使用した(図3)。
【0135】
また、恒常的な前記遺伝子の発現抑制を誘導するために、前記実施例<3−2>で製造したSNU668−shZNF312b細胞株から総RNAを抽出して発現阻害程度を確認した結果、ZNF312b遺伝子が抑制されることが確認され、それをZNF312b遺伝子の恒常的な抑制実験に使用した。細胞増殖実験は、CCK−8(Dojindo,日本)試薬を使用して行なった。これは、テトラゾリウム塩を使用する方法で、細胞内に存在する脱水素酵素によって親水性のホルマザンに転換されることを測定して細胞増殖有無を判断した。図5は、一時的に前記ZNF312b遺伝子の発現を阻害した時、細胞増殖が減少することを示していて、グラフ中の図は、ZNF312bの抑制程度をRT−PCRで確認したものを示したものである。図6は、恒常的に前記遺伝子を阻害する細胞株を使用して細胞増殖実験を行なったもので、細胞増殖が対照群と比較して減少することが分かった(図5及び図6)。
【0136】
<6−2>ZNF312b遺伝子の過剰発現による細胞増殖
本発明者らは、前記<実施例4>で樹立された細胞株であるSNU638−ZNF312b及びSNU668−ZNF312bを使用して、前記遺伝子の過剰発現を通じた胃癌細胞株の細胞増殖能を調査した。細胞増殖実験は、CCK−8試薬を使用して行ない、細胞(5×10個)を96ウェルプレートに入れて、24時間培養した後、24時間間隔で細胞増殖実験を行なった。図7はSNU638−ZNF312bを、図8はSNU668−ZNF312bを使用して細胞増殖実験を行なった結果を示したものであり、グラフ中の図は、HA−ZNF312bの過剰発現レベルをウエスタンブロットで示したもので、前記遺伝子の過剰発現が細胞増殖を増加させたことが分かった(図7及び図8)。
【0137】
<実施例7>細胞周期実験
本発明者らは、細胞周期を測定してZNF312b遺伝子の細胞増殖関連性を調査した。細胞周期実験は、PI染色法を使用して行なった。PIは、核を染色する方法で、各細胞を24時間培養した後、70%エチルアルコールで4℃、12時間以上固定させた後、PIで染色してFACS分析機を使用して測定した。その結果、図9〜図11に見られるように、対照群と比較して前記ZNF312b遺伝子の発現が阻害された時、G1期が増加されて、G2+M時期が減少して細胞増殖が減少したが、前記ZNF312b遺伝子を過剰発現した場合は、G1期が減少して、G2+M時期が増加することによって細胞増殖率が増加することが分かった。細胞周期を使用した細胞増殖実験も、ZNF312b遺伝子の抑制または過剰発現によって細胞増殖の抑制または活性が確認され、本遺伝子が細胞増殖と関連があることが分かった(図9、図10及び図11)。
【0138】
<実施例8>コロニー形成実験
本発明者らは、ZNF312b遺伝子が発癌遺伝子として機能をするかどうかを確認するために、コロニー形成実験を行なった。まず、45℃の2倍濃度のRPMI1640培地と1.2%アガロース溶液を同量ずつ混ぜて0.6%の1×培地を作って、6ウェルプレートに入れて1時間固めた後、5000個の細胞を0.5ml培地に希釈して同量の0.6%アガロースと混ぜて0.6%のアガロース平板上に入れた。常温で1時間固めた後、1×培地を入れて、37℃の培養器で培養しながらコロニーの形成を観察した。形成されたコロニーは、100倍率の顕微鏡で観察して計数して図式化した。図12及び図13は、ZNF312b胃癌抑制細胞株であるSNU668−shZNF312bを使用して前記遺伝子を阻害した後、コロニー形成を観察したものであり、図14及び図15は、前記遺伝子を過剰発現胃癌細胞株であるSNU638−ZNF312bとSNU668−ZNF312bを使用してコロニー形成実験を行なったものである。その結果、図12〜図15に見られるように、ZNF312b遺伝子発現を阻害する胃癌抑制細胞株であるSNU668−shZNF312bを使用した場合、対照群と比較してコロニー形成が阻害され、ZNF312b遺伝子を過剰発現する胃癌細胞株であるSNU638−ZNF312b及びSNU668−ZNF312bを使用した場合、対照群と比較してコロニー形成が増加したことが分かった(図12、図13、図14及び図15)。
【0139】
<実施例9>腫瘍形成実験
本発明者らは、ZNF312b遺伝子が発癌遺伝子として機能するかどうかを確認するために、ヌードマウスを使用した腫瘍形成実験を行なった。前記実施例<4−1>で樹立されたSNU668−ZNF312b細胞株、及び対照群であるSNU668−Neo細胞株をヌードマウスにそれぞれ移植して腫瘍形成を観察した。実験群は、各3匹のヌードマウスに各細胞株5×10の細胞を接種した。接種4週後、それぞれの腫瘍の大きさを測定して数値化して比較した。腫瘍の大きさ(mm)は、広さ×高さ/2の公式を使用して数値化した。その結果、図16〜図17にみられるように、ZNF312b遺伝子の過剰発現細胞株であるSNU668−ZNF312bを移植したヌードマウスの腫瘍大きさが顕著に大きくなっていることを確認することができた(図16及び図17)。
【0140】
<実施例10>ZNF312b断片過剰発現ベクター製造及びその胃癌細胞株樹立
<10−1>ZNF312b断片過剰発現ベクターの製造
本発明者らは、pcDNA−ZNF312bベクターを鋳型にして、図7aのような断片をPCR方法で増幅した後、pcDNAベクターにクローニングした。まず、pcDNA−ZNF312bを鋳型にして、KpnIとBamHI制限酵素認識部位を含有したZNF312bプライマーを使用してPCRを行なった。生成された各PCR産物を精製した後、KpnIとBamHI制限酵素で切断後、pcDNAベクターに挿入してpcDNA−ZNF312bN1(N1で表記)、pcDNA−ZNF312bN2(N2)、pcDNA−ZNF312bC1(C1)及びpcDNA−ZNF312bC2(C2)発現ベクターを製造した(図18)。
【0141】
<10−2>ZNF312b断片過剰発現胃癌細胞株の樹立
本発明者らは、前記実施例<10−1>で製造したベクターpcDNA−ZNF312b−N1と−C1を胃癌細胞株であるSNU−638に形質導入し、全長ZNF312b及び断片ZNF312b過剰発現細胞株であるSNU638−ZNF312b(SNU638−FL)、SNU638−ZNF312bN1(SNU638−N1)及びSNU638−ZNF312bC1(SNU638−C1)をそれぞれ樹立した。
【0142】
まず、過剰発現細胞株を樹立するために、胃癌細胞株SNU−638細胞にFugene−6(Roche,ドイツ)を使用して、FL、N1及びC1をそれぞれ形質導入した。前記遺伝子が発現される細胞株のみを選択するために、選別マーカーであるG418を600μg/mlになるように培養液に入れた。また、単一クローンを有した細胞株を得るためにコロニーを選別した。そのために、G418培地を3日間隔で交換した。形成されたコロニーを選択して細胞数を増やし、凍結保管して一部は前記遺伝子の発現確認のためにRNA抽出またはタンパク質抽出のために使用した。
【0143】
<実施例11>ZNF312b断片タンパク質の細胞内位置確認
<11−1>核分画実験
本発明者らは、ZNF312bの細胞内位置と核に移動するのに必要なタンパク質部分を同定するために、核分画法を使用して細胞質と核を分離した。分離した試料を使用してウエスタンブロット法を行い、ZNF312bが核内に存在し、カルボキシ末端(配列番号20)を通じて核に移動するということを確認した。
【0144】
まず、SNU−638細胞にZNF312b及びその断片を形質導入して発現させた。前記細胞を回収して、冷たいPBS緩衝溶液で二度洗浄した後、1ml DNB[10mM HEPES(pH7.5),2mM MgCl,10mM KCl,0.5mM EDTA,0.5mM EGTA,プロテアーゼ阻害剤カクテルI,II(Sigma,米国)、及び0.2% NP−40]で浮遊させた後、22ゲージ針注射器を使用して、細胞を破裂させた。均質懸濁液を500×gで10分間遠心分離して細胞核を分離した。そこに、溶解緩衝溶液(lysis buffer)A[20mM HEPES (pH7.5),150mM NaCl,1mM EDTA,2mM EGTA,1%TritonX−100,10%グリセロール,プロテアーゼカクテルI,II(Sigma,米国)]を添加して溶解させた後、同一条件で遠心分離して核内のタンパク質を取得した。その結果、図19に見られるように、カルボキシ末端を含有したZNF312bだけが、核に移動したことを確認した(図19)。
【0145】
<11−2>免疫細胞染色法による局在の確認
本発明者らは、ZNF312b及びその断片を発現させた細胞をカバースリップガラス上において、24時間後に前記細胞を4%パラホルムアルデヒドで20分間処理して固定させた。前記固定された細胞等は、PBSを使用して3回洗浄した後、1%TritonX−100で10分間処理した後、1時間1%BSAで常温でブロッキングし、4℃でモノクローナル抗−HAで12時間反応させた。PBSで3回洗浄した後、Alexa−568が付いている抗マウス2次抗体を1時間処理して、PBSで3回洗浄した。その後、30分間DPAIで反応させて、PBSで3回洗浄した。前記過程を経た細胞は、スライドの上に蓄積して、蛍光顕微鏡(olympus,日本)を使用して分析した。その結果、図20に見られるように、核分画実験と同様にカルボキシ末端を含有したZNF312bだけが、核に存在し、アミノ末端のみを含有した断片ZNF312bタンパク質は、細胞質に存在することが分かった(図20)。
【0146】
<実施例12>ZNF312b断片過剰発現胃癌細胞株の細胞増殖及びコロニー形成実験
<12−1>ZNF312b断片過剰発現胃癌細胞株の細胞増殖
本発明者らは、前記実施例<10−2>で樹立された細胞株であるSNU638−FL及びその断片ZNF312bを発現する細胞株SNU638−N1及びSNU638−C1を使用して、胃癌細胞株の細胞増殖能を調査した。細胞増殖実験は、前記実施例<6−1>のようなCCK−8試薬を使用して行ない、全長ZNF312b及びカルボキシ末端(配列番号20)含有ZNF312b断片を一時的に形質導入させて短期間発現させた後、細胞増殖実験を行なった。その結果、図21にみられるように、一過性の過剰発現は、胃癌細胞株の細胞増殖を増加させることが分かり、図22にみられるように前記遺伝子を恒常的に発現する細胞株を使用して細胞増殖実験を行なった結果、恒常的過剰発現も胃癌細胞株の細胞増殖を増加させることが分かった(図21及び図22)。
【0147】
<12−2>ZNF312b断片過剰発現胃癌細胞株のコロニー形成実験
本発明者らは、全長ZNF312b及びカルボキシ末端含有ZNF312b断片を恒常的に過剰発現する胃癌細胞株SNU638−FL、SNU638−N1及びSNU638−C1を使用して、前記<実施例8>と同じ方法でコロニー形成実験を行なった。その結果、図8cにみられるように全長ZNF312b及びカルボキシ末端含有ZNF312断片を過剰発現させた時、コロニー形成が増加した。したがって、ZNF312bの胃癌腫瘍形成能は、ZNF312bタンパク質のカルボキシ末端部分に存在することが分かった(図23)。
【0148】
<実施例13>ZNF312b及びその断片過剰発現による細胞増殖シグナル伝達系確認
<13−1>ZNF312b抑制による細胞増殖シグナル伝達
本発明者らは、ZNF312b遺伝子の発現抑制による胃癌細胞株の細胞増殖と係わるシグナル伝達系を調査するために、si−ZNF312b−1を胃癌細胞株に形質導入させてZNF312bの発現を減少させた後、前記<実施例5>の方法でウエスタンブロットを実施した。ここで、使用された抗体は、phospho−MEK1/2、MEK1/2、phospho−ERK1/2、ERK1/2、K−ras、及びチューブリンで、これらを通じてZNF312bのタンパク質がK−rasの発現を調節し、調節されたK−rasが細胞増殖シグナル伝達であるERK経路に作用するかどうかを確認した。その結果、図24に見られるように、ZNF312bの抑制は、K−rasの発現減少を誘導した。これは、ERKシグナル伝達であるMEK1/2及びERK1/2のリン酸化減少、すなわちERKシグナル伝達の不活性化につながることを観察することができた(図24)。
【0149】
<13−2>ZNF312b及びその断片過剰発現による細胞増殖シグナル伝達
本発明者らは、ZNF312b遺伝子及びその断片の過剰発現による胃癌細胞株の細胞増殖と係わるシグナル伝達を調査するために、SNU−638細胞に各断片を形質導入させた後、それら細胞を溶解させて、前記実施例<13−1>と同じ方法でシグナル伝達系を確認した。その結果、図25にみられるように、図24の結果とは反対に、全長ZNF312b及びカルボキシ末端を含有した断片ZNF312bの過剰発現は、K−rasの発現活性を誘導してそれを通じてERK経路が活性化することを確認した。したがって、ZNF312bは、細胞増殖シグナル伝達を調節し、前記調節は、ZNF312bのカルボキシ末端が核心的役割を果たして、それを通じて胃癌発生に関与していることが分かった(図25)。
【0150】
<実施例14>ZNF312bプロモーター発現ベクターの製造
<14−1>ZNF312bプロモーター部位を含むpGL3b−ZNF312bベクターの製造
本発明者らは、ZNF312b遺伝子のプロモーター部位をルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードすることができるベクターに導入するため、ZNF312bのプロモーター(配列番号9)及びその断片(配列番号10〜配列番号14)をNheIとBglII制限酵素認識部位を含有したプライマーを使用してPCRで増幅させた後、pGL3 basicベクター(Promega,米国)に挿入した。まず、SNU638 cDNAを鋳型にして増幅させたPCR産物を精製した後、NheIとBglII制限酵素で切断し、pGL3 basicベクターに挿入して、ZNF312bのプロモーター部位を有する6種類のpGL3b−ZNF312bベクターを製造した(図26)。
【0151】
<14−2>ZNF312bプロモーター転写活性能を一時的に有する細胞株の樹立
本発明者らは、ZNF312bのプロモーター(配列番号9)及びその断片(配列番号10〜配列番号14)中、活性を有する部位を解明するために、前記実施例<14−1>で製造されたpGL3−ZNF312bベクターを胃癌細胞株であるSNU−638に形質導入させて、ZNF312bプロモーター活性を一時的に有する細胞株を樹立した。まず、胃癌細胞株SNU−638の細胞(2×10個)にリポフェクタミン2000(Invitrogen,米国)6μlを使用して、それぞれのpGL3−ZNF312bベクター2μgを形質導入した後、48時間培養した。
【0152】
<実施例15>ZNF312bプロモーターの転写活性能測定
本発明者らは、前記実施例<14−2>で樹立した細胞株でのZNF312bのプロモーターの転写活性能を測定した。前記転写活性能の測定は、ルシフェラーゼレポーターの活性を評価した。測定には、ルシフェラーゼ分析システムキット(Promega,米国)を使用した。
【0153】
まず、6ウェルプレートに樹立した細胞株の密度が、2.5×10個になるようにして24時間培養し、細胞が単層に均一に分布するようにした。細胞溶解液300μlを使用して、細胞を溶解させた。前記細胞溶解液を15,000rpmで10分間遠心分離して、上澄み液を新しい1.5mlチューブに移して使用した。ブラッドフォード方法(Bradford method)で対照群タンパク質にBSAを0、1、2、3、4及び5μgを使用して、標準曲線を描いてタンパク質を定量した後、細胞抽出物2μlを使用して595nm波長で吸光度を測定した。タンパク質定量が終わった試料を使用して、ルシフェラーゼ活性を測定した。細胞抽出物20μlとルシフェラーゼレポーター基質50μlを混ぜた後、ルミネセンス測定機(Luminometer:Molecular Devices,カナダ)を使用してルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現量を確認した。前記発現量を使用してルシフェラーゼの活性を測定した。計算法は、下記のとおりであり、ここで、ルシフェラーゼ分析試薬が入って測定された値がRLU(relative luciferase unit)である。
【0154】
【数1】

【0155】
その結果、図27に見られるように、ZNF312bのプロモーター中の+1bp〜−850bp部位(配列番号12)を含有したクローンが、対照群と比較してルシフェラーゼ活性が最も高いことが確認された(図27)。
【0156】
<実施例16>ZNF312bプロモーター中の+1bp〜−850bp部位を含有したベクター及びその胃癌細胞株の樹立
<16−1>ZNF312bプロモーター断片を含有したpGL4−ZNF312bベクターの製造
本発明者らは、プロモーター断片の転写活性能を恒常的に有する細胞株を樹立するため、ZNF312bのプロモーター中の+1bp〜−850bp部位(配列番号12)をNheIとHindIII制限酵素認識部位を含有したプライマーを使用して、pGL4.14ベクター(Promega,米国)に挿入して、pGL4.14−ZNF312b−0.85ベクターを製造した(図28)。
【0157】
<16−2>ZNF312bプロモーター転写活性能を恒常的に有する細胞株の樹立
本発明者らは、ZNF312bプロモーター中の+1bp〜−850bp部位(配列番号12)の転写活性能を恒常的に有する細胞株を樹立するために、前記実施例<16−1>で作製したpGL4.14−ZNF312b−0.85をSNU−638細胞株にリポフェクタミン2000(Invitrogen,米国)を使用して形質導入した。48時間培養後、前記遺伝子が発現される細胞株のみを選択するために、選別マーカーであるハイグロマイシンを100μg/mlになるように培養液に入れた。また、単一クローンを有した細胞株を得るために、ハイグロマイシン培地を3日間隔で交換しながらコロニーを選別した。前記樹立された細胞株は、薬効がある化合物を選別するのに使用した。
【0158】
<実施例17>ZNF312bプロモーターの転写活性能測定
本発明者らは、前記実施例<16−2>で樹立した細胞株でのZNF312bプロモーター中の+1bp〜−850bp部位(配列番号12)の転写活性能を、前記<実施例10>と同一な方法で測定した。ZNF312bプロモーター転写活性能を恒常的に有するpGL4.14−ZNF312b−0.85含有細胞株を使用して実験した結果、図29に見られるように、対照群と比較してルシフェラーゼ活性が約15倍増加することが確認された(図29)。
【0159】
<実施例18>ZNF312bプロモーター転写活性能阻害化合物選別
本発明者らは、前記実施例<16−2>で樹立したpGL4.14−ZNF312b−0.85細胞株を96ウェルプレートに密度が1×10個になるようにして24時間培養し、細胞が単層に均一に分布するようにした。100μl培地に化合物の最終濃度が10μMになるように処理した。ここで、化合物が溶解しているDMSOは、最終濃度0.3%になるようにした。24時間をさらに培養した後、25μlの細胞溶解液で細胞を溶解させた。細胞抽出物25μlとルシフェラーゼレポーター基質20μlを混ぜた後、前記<実施例10>と同一な方法でルシフェラーゼレポーター活性を測定して、薬効がある化合物を選別した。化合物を処理しないでDMSOだけ処理した細胞株を対照群にして、それぞれの化合物を処理した時、レポーター活性の阻害程度を示した。ルシフェラーゼレポーターの阻害活性は、下記の方法で計算した:
【0160】
【数2】

【0161】
その結果、表1に見られるように、54個中27個の化合物(50%)が、ルシフェラーゼレポーター活性を40%以上阻害することが示された(表1)。
【0162】
【表1】

【0163】
<実施例19>転写活性能阻害化合物の細胞毒性測定
本発明者らは、ZNF312bの転写活性能を阻害するものとして選別された化合物の細胞毒性を測定するために、CCK−8(Dojindo,日本)試薬で処理した。これは、テトラゾリウム塩を使用する方法で、細胞内に存在する脱水素酵素によって親水性のホルマザンに転換されることを測定して細胞毒性を確認した。まず、96ウェルプレートに前記実施例<16−2>で樹立した細胞株の密度が1.5×10個になるようにして24時間培養し、細胞が単層に均一に分布するようにした。100μl培地に化合物の最終濃度が10μMになるように処理した。ここで、化合物が溶解しているDMSOは、最終濃度0.3%になるようにした。24時間さらに培養した後、CCK−8試薬10μlを処理して細胞毒性を測定した。
【0164】
その結果、表2に見られるように、16個化合物は、10%未満の細胞毒性を有することが示された(表2)。
【0165】
【表2】

【0166】
<実施例20>K−rasプロモーター部位を含有したpGL3b−K−rasベクターの製造及びその胃癌細胞株の樹立
<20−1>K−rasプロモーター部位を含有したpGL3b−K−rasベクターの製造
本発明者らは、ZNF312bによるK−ras発現量増加と調節機序を解明するために、K−rasプロモーターレポーターを製造した。図30に見られるように、K−rasのプロモーター部位の断片として、Ras2.0(−2000〜+1bp;配列番号15)、Ras1.0(−1000〜+1bp;配列番号16)、Ras0.65(−650〜+1bp;配列番号17)、及びRas0.5(−500〜+1bp;配列番号18)を作製した(図30)。プロモーターの作動有無を確認するためのレポーターシステムには、ルシフェラーゼ遺伝子を使用した。
【0167】
まず、ヒトゲノムDNAを鋳型にして前記各プロモーター断片のオリゴマーを使用してPCRで増幅した後、ルシフェラーゼ遺伝子が入っているpGL3 basicベクターにNheI/BglIIでクローニングした。
【0168】
<20−2>K−rasプロモーター転写活性能を一時的に有する胃癌細胞株の製造
本発明者らは、前記実施例<20−1>のK−rasレポーター(Ras2.0)を前記実施例<10−1>のZNF312b(FL)及びその断片(N1、N2、C1及びC2)と共にSNU−638細胞株に形質導入させた後、48時間培養した。
【0169】
<実施例21>K−rasプロモーターレポーター活性
<21−1>ZNF312b及びその断片によるK−rasプロモーター活性測定
本発明者らは、前記実施例<20−2>で樹立した細胞株でのK−rasプロモーターの転写活性能を測定するため、ルシフェラーゼレポーターの活性を分析した。前記ルシフェラーゼ分析は、ルシフェラーゼ分析キット(Promega,米国)を使用して、キットのプロトコルにしたがって行なった。すなわち、前記実施例<20−2>の培養された細胞を溶解(lysis)させて、4℃、15000rpmで10分間遠心分離してタンパク質を分離した後、タンパク質定量で試料間の総タンパク質を補正して、ルミノメーター(Victor 3 microplate)を使用してルシフェラーゼ活性を測定した。ここで、使用された溶解物(lysate)は10μlで、前記溶解物内ルシフェラーゼの基質は、50μlを使用した。
【0170】
その結果、図31に見られるように、ZNF312bの発現によってK−rasプロモーターが活性化してルシフェラーゼ活性が増加し、ZNF312bのカルボキシ末端を含有した断片でも、やはりルシフェラーゼ活性が増加した(図31)。
【0171】
<21−2>ZNF312bのK−rasプロモータートランス因子の確認
本発明者らは、SNU−638細胞にそれぞれのK−rasレポーター(Ras2.0,Ras1.0,Ras0.65,及びRas0.5)とZNF312b−C1を一緒に形質導入した。48時間経過後、細胞を溶解してルシフェラーゼ分析及びZNF312b−C1の発現量を調査するために、ウエスタンブロットを実施した。それを3回反覆して有意性のある結果を得た。
【0172】
その結果、図32に見られるように、ZNF312b−C1の発現によってK−rasレポーターであるルシフェラーゼの活性が増加し、Ras0.5ではその活性が減少した。したがって、ZNF312bのK−rasプロモーター結合部位は、−650〜−500bp間であることが分かる(図32)。
【0173】
<21−3>K−rasプロモーターの結合部位とZNF312bの結合確認
本発明者らは、ZNF312bによるK−ras活性の作用部位が−650〜−500bp部位であることをより正確に調べるため、TransAM flexi DNA binding assay kit(Active motif,米国)を使用して確認した。
【0174】
まず、SNU638細胞にZNF312bの断片を形質導入させた後、48時間後、前記細胞を核分画して核タンパク質を得た。その後、HA抗体を核タンパク質と1時間反応させた。一方、K−rasプロモーターの−650〜−500bp部位で亜鉛フィンガータンパク質(Zinc finger protein;ZNF)結合部位で予想される57bp部位[5’−tgt tta ttt aca tgc agt caa tga tag taa atg gat gcg cgc cag tat agg ccg acc−3’(配列番号19)]を5’にビオチンが添加されたオリゴで合成した。それをTansAM Flexi DNA binding assay kitで提供される96ウェルプレートのストレプトアビジンと反応させて結合させた後、前記の抗体と核タンパク質混合物を入れて1時間反応させた。その後、洗浄緩衝溶液を使用して2回洗浄して2次抗体を入れ、1時間反応させた後、基質を入れて色の反応程度を観察して1時間インキュベーションした後、ELISAマイクロプレートを使用して測定した。ウエスタンブロットで核タンパク質内のZNF312bタンパク質量を定量した。
【0175】
その結果、図33に見られるように、ZNF結合予想オリゴDNAへの結合能が、ZNF312b、及びそのカルボキシ末端を含有したZNF312b断片で確認され、ZNF312bは、K−rasプロモーターの−650〜−500bp部位に存在するZNF結合部位に結合することが分かった(図33)。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の新規な胃癌の診断及び治療用マーカーであるZNF312bは、胃癌患者試料で過剰発現して、前記遺伝子の過剰発現または抑制によって胃癌細胞株の細胞増殖と腫瘍形成能が活性または抑制されるので、胃癌の診断、胃癌誘発動物の製造、胃癌の予防及び治療、及び胃癌特異的抗癌剤の開発等に効果的に使用することができる。


































【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドを増幅することができるプライマー対を含む胃癌診断用キット。
【請求項2】
前記断片が、配列番号1で表わされる塩基配列中にカルボキシ末端部位(配列番号20)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の胃癌診断用キット。
【請求項3】
配列番号2で表わされるZNF312bタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体を含む胃癌診断用キット。
【請求項4】
正常対照群と比較して、ZNF312bタンパク質またはその断片の量の増加で胃癌を診断することを特徴とする、請求項3に記載の胃癌診断用キット。
【請求項5】
配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド、またはそれに相補的なオリゴヌクレオチドが組み込まれた胃癌診断用DNAマイクロアレイ。
【請求項6】
配列番号2で表わされるZNF312bタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体を、胃組織、胃細胞、尿、血液、血清及び血漿からなる群から選択される生物学的試料と接触させる工程を含む胃癌マーカー検出方法。
【請求項7】
1)個体の試料から配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片の発現レベルを測定する工程;及び
2)工程1)のマーカー遺伝子の発現レベルが正常対照群より有意に高い個体を選別する工程、を含む胃癌診断方法。
【請求項8】
工程1)の試料が、胃組織、胃細胞、尿、血液、血清及び血漿からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の胃癌診断方法。
【請求項9】
1)実験群として胃由来細胞に被検組成物または被検化合物を処理する工程;
2)工程1)の実験群細胞と処理しない対照群細胞の配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片の発現レベルを測定して比較する工程;及び
3)前記実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に増加させる被検組成物または被検化合物を選別する工程、とを含む胃癌誘発物質スクリーニング方法。
【請求項10】
工程2)の断片が、配列番号1で表わされる塩基配列中にカルボキシ末端部位(配列番号20)を含むことを特徴とする、請求項9に記載の胃癌誘発物質スクリーニング方法。
【請求項11】
1)実験群として胃由来細胞に被検組成物または被検化合物を処理する工程;
2)工程1)の実験群細胞と処理しない対照群細胞の配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片の発現レベルを測定して比較する工程;及び
3)前記実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に減少させる被検組成物または被検化合物を選別する工程、とを含む胃癌抑制物質スクリーニング方法。
【請求項12】
工程2)の断片は配列番号1で表わされる塩基配列の中でカルボキシ末端部位(配列番号20)を含むことを特徴とする、請求項9に記載の胃癌抑制物質スクリーニング方法。
【請求項13】
1)配列番号9で表わされる塩基配列で構成されるZNF312bプロモーター及びその断片に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを製造する工程;
2)前記工程1)の遺伝子コンストラクトを発現ベクターに導入し、動物細胞に形質転換して形質転換体を製造する工程;
3)前記工程2)の形質転換体を被検組成物または被検化合物で処理した実験群と処理しない対照群を製造する工程;
4)前記工程3)の実験群及び対照群のレポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程;及び
5)前記工程4)の実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に増加させる被検組成物または被検化合物を選別する工程、とを含む胃癌誘発物質スクリーニング方法。
【請求項14】
工程1)の断片が、配列番号9で表わされる塩基配列中において、転写開始点を基準に−850bp〜+1bp部位(配列番号12)を含むことを特徴とする、請求項13に記載の胃癌誘発物質スクリーニング方法。
【請求項15】
工程1)のレポーター遺伝子が、ルシフェラーゼ遺伝子であることを特徴とする、請求項13に記載の胃癌誘発物質スクリーニング方法。
【請求項16】
1)配列番号9で表わされる塩基配列で構成されるZNF312bプロモーター及びその断片に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを製造する工程;
2)前記工程1)の遺伝子コンストラクトを発現ベクターに導入し、動物細胞に形質転換して形質転換体を製造する工程;
3)前記工程2)の形質転換体を被検組成物または被検化合物で処理した実験群と処理しない対照群を製造する工程;
4)前記工程3)の実験群及び対照群のレポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程;及び
5)前記工程4)の実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に減少させる被検組成物または被検化合物を選別する工程、とを含む胃癌抑制物質スクリーニング方法。
【請求項17】
工程1)の断片が、配列番号9で表わされる塩基配列の中で転写開始点を基準に−850bp〜+1bp部位(配列番号12)を含むことを特徴とする、請求項16に記載の胃癌抑制物質スクリーニング方法。
【請求項18】
工程1)のレポーター遺伝子が、ルシフェラーゼ遺伝子であることを特徴とする、請求項13に記載の胃癌抑制物質スクリーニング方法。
【請求項19】
1)配列番号15で表わされる塩基配列で構成されるK−rasプロモーター及びその断片に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを製造する工程;
2)前記工程1)の遺伝子コンストラクトを発現ベクターに導入し、配列番号2で表わされるアミノ酸配列で構成されるZNF312bタンパク質またはその断片を発現する動物細胞に形質転換することにより形質転換体を製造する工程;
3)前記工程2)の形質転換体を被検組成物または被検化合物で処理した実験群と処理しない対照群を製造する工程;
4)前記工程3)の実験群及び対照群のレポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程;及び
5)前記工程4)の実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に増加させる被検組成物または被検化合物を選別する工程、とを含む胃癌誘発物質スクリーニング方法。
【請求項20】
工程1)の断片が、配列番号19で表わされる塩基配列を含むことを特徴とする、請求項19に記載の胃癌誘発物質スクリーニング方法。
【請求項21】
1)配列番号15で表わされる塩基配列で構成されるK−rasプロモーター及びその断片に作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む遺伝子コンストラクトを製造する工程;
2)前記工程1)の遺伝子コンストラクトを発現ベクターに導入し、配列番号2で表わされるアミノ酸配列で構成されるZNF312bタンパク質またはその断片を発現する動物細胞を形質転換することにより形質転換体を製造する工程;
3)前記工程2)の形質転換体を被検組成物または被検化合物で処理した実験群と処理しない対照群を製造する工程;
4)前記工程3)の実験群及び対照群のレポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程;及び
5)前記工程4)の実験群の発現レベルを対照群と比較して有意に減少させる被検組成物または被検化合物を選別する工程、とを含む胃癌抑制物質スクリーニング方法。
【請求項22】
工程1)の断片が、配列番号19で表わされる塩基配列を含むことを特徴とする、請求項19に記載の胃癌抑制物質スクリーニング方法。
【請求項23】
1)配列番号15で表わされる塩基配列で構成されるK−rasプロモーターまたはその断片を含むオリゴヌクレオチドと配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含むZNF312bタンパク質またはその断片とを、被検組成物または被検化合物と一緒に処理する工程;
2)工程1)の実験群と処理しない対照群でK−rasプロモーターまたはその断片に対するZNF312bタンパク質またはその断片の結合レベルを測定して比較する工程;及び
3)前記実験群の結合レベルを対照群と比較して有意に増加させる被検組成物または被検化合物を選別する工程、とを含む胃癌誘発物質スクリーニング方法。
【請求項24】
工程1)のK−rasプロモーターの断片が、配列番号19で表わされる塩基配列を含むことを特徴とする、請求項23に記載の胃癌誘発物質スクリーニング方法。
【請求項25】
工程1)のZNF312bタンパク質の断片が、配列番号2で表わされるアミノ酸配列の中でカルボキシ末端部分(配列番号20)を含むことを特徴とする、請求項23に記載の胃癌誘発物質スクリーニング方法。
【請求項26】
1)配列番号15で表わされる塩基配列で構成されるK−rasプロモーターまたはその断片を含むオリゴヌクレオチドと配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含むZNF312bタンパク質またはその断片とを、被検組成物または被検化合物と一緒に処理する工程;
2)工程1)の実験群と処理しない対照群で、K−rasプロモーターまたはその断片に対するZNF312bタンパク質またはその断片の結合レベルを測定して比較する工程;及び
3)前記実験群の結合レベルを対照群と比較して有意に減少させる被検組成物または被検化合物を選別する工程、とを含む胃癌抑制物質スクリーニング方法。
【請求項27】
工程1)のK−rasプロモーターの断片が、配列番号19で表わされる塩基配列を含むことを特徴とする、請求項26に記載の胃癌抑制物質スクリーニング方法。
【請求項28】
工程1)のZNF312bタンパク質の断片が、配列番号2で表わされるアミノ酸配列の中でカルボキシ末端部分(配列番号20)を含むことを特徴とする、請求項26に記載の胃癌抑制物質スクリーニング方法。
【請求項29】
配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片を含むベクターを、ヒトを除いた動物に形質転換することによって胃癌が誘発される胃癌診断及びスクリーニング用動物。
【請求項30】
配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片から転写されるmRNAの配列の全部または一部と相補的な配列を有し、前記mRNAに結合して前記ZNF312b遺伝子またはその断片の発現を抑制するアンチセンス遺伝子。
【請求項31】
配列番号1で表わされるZNF312b遺伝子またはその断片から転写されるmRNAの配列の全部または一部と相補的な配列を有し、ダイサータンパク質によって認識されて前記ZNF312b遺伝子またはその断片の発現を阻害するsiRNA配列。
【請求項32】
請求項11、請求項16、請求項21または請求項26に記載のいずれか一項の方法でスクリーニングされた胃癌抑制物質を有効成分として含む、胃癌予防及び治療用組成物。
【請求項33】
請求項32に記載の薬学的に有効な量の組成物を、胃癌にかかった個体に投与する工程を含む胃癌の治療方法。
【請求項34】
請求項32に記載の薬学的に有効な量の組成物を、個体に投与する工程を含む胃癌の予防方法。
【請求項35】
胃癌予防及び治療用組成物の製造のための請求項32に記載の胃癌抑制物質の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2010−523107(P2010−523107A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502039(P2010−502039)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004566
【国際公開番号】WO2009/020346
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(508139457)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (19)
【Fターム(参考)】