説明

胃腸用ステントをインプラントするための装置と方法

一つの実施態様においては、外科装置は、ステントと、拡張器と、外科装置から延出又は退避が選択的に可能な切開要素とを有するステント展開装置を有している。幾つかの実施態様においては、患者の自然孔を通して外科装置を通し、外科装置を用いて腹腔にアクセスし、外科装置を用いて小腸内腔に経管腔的にアクセスし、外科装置を用いてステント展開装置を内腔に通し、外科装置を用いてステント内腔の中でステントを拡張することで患者にステントをインプラントするために外科装置が使用できる。他の実施態様においては、外科装置は、すい臓仮性嚢胞の排膿の経管腔内視鏡手術を行うために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、胃腸内管にステントをインプラントするための装置と方法に係り、この出願は、「胃腸用ステントをインプラントするための装置と方法」という名称で、2009年4月1日出願の同時係属中の米国仮特許出願第61/165599号の優先を主張し、その全記載を引用により合体する。
【背景技術】
【0002】
ステントは体内の種々の内腔に使用される。例えば、血管形成手術中に動脈内にステントをインプラントすることは良く行われる。ステントは消化器系統内にも使用される。例えば、ステントは食道、十二指腸、胆管、膵管および結腸内にインプラントされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ステントが有用な体内のほかの内腔もある。例えば、腸閉塞又はフィステルを治すために小腸内に配置できる。しかしながら現在では、小腸内視鏡を通して小腸に内視鏡的にアクセスするのが困難であるために、小腸内へのステントのインプラントは常用されていない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
この開示は、下の図を参照してより良く理解できる。図において、類似の番号は図の全体に亘って対応する部品を示している。図は必ずしも等比率で描かれていない。
【図1】図1A−1Eは人体とその消化器系の概観図で、自然孔を経由して行われる小腸ステントのインプラント手術のステップを示す。
【図2】図2A−2Bは夫々、図1A−1Eに示めされる手術に使用できる一体型外科装置の第一の実施態様の側面図と端面図を示す。
【図3】図3A−3Hは、図2Aと2Bに示された外科装置を用いて、ステントを展開するために、小腸への経管腔内アクセスを概観的に示す。
【図4】図4Aおよび4Bは、それぞれ、図1A−1Eに図示された手術に使用される一体型外科装置の第二の実施態様の側面図と端面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ここに開示されているのは、胃腸内管にステントをインプラントするための装置と方法である。より特定すれば、小さい腸とも呼ばれる小腸にステントをインプラントするための装置と方法である。開示された方法においては、小腸は、自然孔を挿入点として使用してアクセスされる。ある実施例においては、腹腔は、胃、結腸、膣を経てアクセスされ、次いで小腸が内腔を経管腔的にアクセスされる。ある実施態様においては、ステントの小腸内への挿入とそこで展開することは、切開要素、案内ワイヤ、拡張具、およびステント展開装置を有する一つに合体された外科用器具により達成される。この装置と方法の特定の実施態様がここに開示されているが、これらの実施態様は、開示された発明の単なる実施手段であり、その他の実施態様も可能であると共にこの発明の範囲に含むことを意図していることを留意しておく。
【0006】
図1Aは、患者10と口14、食道16、胃18、小腸20、大腸22、直腸24及び肛門26を含む消化器系12を概観的に示す。この開示のために、小腸20内にステントインプラントにより軽減される腸閉塞やフィステルのようなある医学的状態が存在するこが仮定されている。小腸内視鏡を介して小腸に内視鏡によりアクセスする困難性を避けるために、自然孔を挿入点として利用して経管腔的な内視鏡外科手術が行われる。この手順は、時には、自然孔経管腔内視鏡手術または「NOTE」手術と呼ばれている。下に述べる例においては、選ばれる自然孔は口(および食道)である。結腸や尿道、患者が女性の場合には、膣が他の自然孔として選ぶこともできることを言及しておく。
【0007】
次に図1Bを参照して、柔軟で、手動で操作可能な内視鏡などの内視鏡28の軸が、口14と食道16を通して、内視鏡の先端30が、胃の内部に到達するまで送られる。次いで、外部の摂動により生じる凹みを内視鏡により観察することで、胃18の前壁が、特定される。図1Cを参照して、適当な切開要素34を用いて、胃壁全厚にわたる切開32が胃壁を通して設けられる。ある実施態様においては、切開要素34は、図1Cに示されるように、内視鏡で方向を見ながら切開ができるように、内視鏡28の内腔(例、ワーキングチャンネル)を通る内視鏡切開要素を有している。例として、切開要素34は、電気焼約ナイフを有する。
【0008】
切開32が作られると、内視鏡28が、この切開と胃壁を通され、腹腔へのアクセスが達成できる。次いで、胃通過内視鏡腹腔検査がおこなわれ、小腸20が、内視鏡による直接観察で、特定される。図1Dに示されるように、内視鏡28の先端30は、これも内視鏡直接観察で、小腸内の所望の箇所へと操作される。
【0009】
小腸20の所望の挿入点が特定されると、図1Eに示されるように、小腸内の内腔へアクセスするために腸切開を行うことができる。ケースによっては、このようなアクセスは、小腸内腔へのアクセスとそこにステントを展開するために特別に設計された合体された外科装置によって達成できる。図2Aと2Bは、そのような装置36の第一の実施態様を示している。図2Aに示されるように、装置36は、内視鏡28のような、内視鏡の中を進めることができる長い柔軟な管38(その一部のみが図に見える)を有している。管38に含まれるのは、ステント42を有する一体的なステント展開装置40である。ある実施態様においては、ステント42は、初期に圧縮された自己展開型の金属ステント(SEMS)を有する。さらに管38に含まれるのは、金属バンドのような、装置36とそのステント42の位置と向きを透過検査により特定するために使用される電波不透過性の一つ又はそれ以上のマーカー44である。
【0010】
一体型の外科装置36は、さらに末端48が装置の先端を構成する拡張器46を有している。図2Aと2Bの実施態様においては、拡張器46は、漸次に変化する円錐台形の拡張器を有している。下に述べるように、これに代わるタイプの拡張器が使用できる。装置36には、装置の先端から延出したり、退避したりできる切開要素50も含まれる。この切開要素50は、図2Aにおいては、延出した状態で示されている。ある実施態様では、切開要素50は、電気焼約針状ナイフを有する。この切開要素50は、ある場合には、胃壁を切開するために用いられた電気焼約針状ナイフである(図1C参照)。図2Aに示されるように、切開要素50は、鋭く、傾斜した先端52を有している。
【0011】
一体型外科装置36は、装置の先端から延出されうるガイドワイア54をも有している。図2Aと2Bに示された実施態様においては、ガイドワイア54は、中空の切開要素50の内部空間内に位置していて、切開要素の先端52から延出できる。代わりの実施態様においては、ガイドワイア54は切開要素50の内部に収められる必要はない(例、ガイドワイアが切開要素の中を通すには大きすぎるとか切開要素が中空でない場合)。このような場合には、ガイドワイア54は、装置36の別の内腔(図示なし)の中を通すことができる。費用を厭わなければ、ガイドワイア54は、被覆されたスティール及び/又は形状記憶合金(例、ニッケルチタニウム)のワイアで小腸を通すのを容易にする柔軟又は撓み性のワイアを有することができる。少なくとも幾つかの実施態様においては、ガイドワイア54は、インプラント術を行うのに要する時間を減らすために装置36内で予荷重を掛けられている。
【0012】
図3A−3Fは、小腸20の一部内において、ステントを展開する準備に一体型外科装置36を使用する一例を示している。図3Aから初めて、切開要素50は、装置36の先端から延出され、切開要素に電流が流され、この要素が小腸20の壁58を通して孔56を切り開くようにされる。孔56が形成されると、装置36の先端48は、この孔に通されて図3Bに示されるように、小腸20の内腔60内に至る(図1Eも参照)。特に留意するのは、先端48が内腔60内に深く入るにつれて孔56のサイズが拡張器46により増大されていることである。
【0013】
次に図3Cを参照して、ガイドワイア54は、装置36(即ち、切開要素50の先端52)から内腔60に延出される。所望長さのガイドワイア54が内腔60内に位置されると、図3Dに示されるように、小腸壁58の意図しない裂断を避けるために、切開要素50は、引き込まれる。次に、図3Eと3Fに示されるように、装置36は孔56を通してさらに進められステント42が展開のために適切な位置に置かれる。必要ならば、腸ループは、この術中のいかなる時間においても、内視鏡ピンセット(図示せず)により操作される。装置が内腔60を進んでいるために図3Fには示されていないが、この時点で装置36は孔56内にある。この一体型外科装置36が、図3Gに示されるような所望の位置に至ると、ステント42は、小腸の内腔内に展開できる。例示として、長い管38は、ステント42のための鞘の役目を果たすが、図3Hに略示されているようにステントが展開できるように退避されてもよい。代わりに、ステント42が管38から押し進められても良い(図示なし)。
【0014】
ステント42が、小腸20内の所定の位置に展開されたなら、一体型外科装置36は、引き込まれることができ、小腸に形成された孔56は閉じることができる。ある実施例においては、孔56は、内視鏡クリップを用いて閉じることができる。他の実施例においては、孔56は、適当な内視縫合装置を用いて縫合できる。孔56が閉じられた後、内視鏡28の先端30は、胃18内に退避させることができ(図1B)、胃の切開部32も閉じることができる。
【0015】
上述の説明からわかるように、ステントは、自然孔を通す経管腔内視鏡手術を用いて小腸内にインプラントすることができ、それにより小腸切開手術またはオープン外科手術の必要をさけることができる。一体型外科装置が使用されると、切開具をステントを展開する装置に代える時間が必要でないので、時間が節約できる。加えて、切開要素とステント展開装置が一つの装置に一体化されているので、小腸の壁を通して開けられる孔のサイズが小さくされて、閉じるのが容易で患者のリスクを低減できる。
【0016】
図4Aと4Bは、上述の手術に用いることができる一体型外科装置70の第二の実施態様を示す。装置70は、多くの点で、図2Aと2Bに示された装置36と類似している。したがって、図4Aに示されるように、装置70は、ステント76と一つまたはそれ以上の電波不透過性のマーカー78とを含む一体型ステント展開装置74を収めている長い柔軟性管72(その一部のみ図に現れている)を有している。装置70は、拡張器80も有している。しかしながら、拡張器46と違い、拡張器80は、適当な流体(例、消毒液)で満たされると初期の圧縮状態から拡張される膨張可能なバルーン拡張器を有している。拡張状態が図4Aと4Bに示めされている。加えて、装置70は、延伸可能/退避可能な切開要素82と、延伸可能なガイドワイア84とを有している(図4B)。
【0017】
一体型外科装置70は、一体型外科装置36と類似の方法で使用できる。これら二つの装置の間の主な相違は、一体型外科装置70においては、漸次変化する拡張器を孔に通すのと異なり切開要素82によって形成された孔の拡張は拡張器80のバルーンを拡張することで達成されることである。
【0018】
開示された外科装置は、経管腔内視鏡手術と胃腸ステント展開に向いているとして説明されたが、この装置は他の目的にも使用できることにも注目する。例えば、この外科装置はすい臓仮性嚢胞の排膿にも使用できる。このような場合に、この装置は胃壁又は小腸壁を通してすい臓に形成された嚢胞にアクセスするために使用できる。この装置は、胃や小腸の壁を通しておよび嚢胞の壁に切開部を形成し、切開により形成された孔を拡張し、胃や腸にまで延びるすい臓嚢胞内にステントを置き、嚢胞が胃又は小腸に排膿するのに使用できる。従って、三つの独立した装置により行われる仕事を一つの装置により行うことができる。ステントは、嚢胞が完全に排膿されるまで数週間の間放置できる。この時点でステントは内視鏡により除去できる。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図3E】

【図3F】

【図3G】

【図3H】

【図4A】

【図4B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントを有するステント展開装置と、
拡張器と、
外科装置から延出か退避かを選択できる切開要素とを有する外科装置。
【請求項2】
長い柔軟性管をさらに有しており、該ステント展開装置が該長い柔軟性管内に収められている請求項1に記載の外科装置。
【請求項3】
該ステントが、自己展開できるステントである請求項1に記載の外科装置。
【請求項4】
該拡張器が該ステント展開装置の端末に位置している請求項1に記載の外科装置。
【請求項5】
該拡張器が、該外科装置の先端を形成している請求項1に記載の外科装置。
【請求項6】
該切開要素が、該拡張器の先端から延出可能および退避可能な請求項5に記載の外科装置。
【請求項7】
該拡張器が漸次変化する円錐台形の拡張器である請求項1に記載の外科装置。
【請求項8】
該拡張器が膨張可能なバルーンを有している請求項1に記載の外科装置。
【請求項9】
該切開要素が、電気焼約針状ナイフを有している請求項1に記載の外科装置。
【請求項10】
該外科装置から延出可能なガイドワイアをさらに有している請求項1に記載の外科装置。
【請求項11】
該ガイドワイアが、該切開要素の先端から延出可能な請求項10に記載の外科装置。
【請求項12】
単一の外科装置を用いて患者にステントをインプラントする方法であって、該方法は、
患者の自然孔を通して該外科装置を通すことと、
該外科装置により腹腔にアクセスすることと、
該外科装置により、小腸内腔に経管腔的にアクセスすることと、
該外科装置により、該内腔にステント展開装置を通すことと、
該外科装置を用いて、該内腔内で該ステントを展開することとを含んでいる方法。
【請求項13】
該自然孔は、口であり、腹腔にアクセスすることが、該外科装置を内視鏡に挿入することと、該内視鏡を口と食道を通して胃内へ通すことと、切開要素を用いて胃壁を通して切開部を形成することとを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該自然孔が肛門であり、腹腔にアクセスすることが、外科装置を内視鏡に挿入することと、該内視鏡を直腸を通して、結腸内に通すことと、該外科装置の切開要素を用いて、結腸の壁を通して切開部を形成することとを含む請求項12に記載の方法。
【請求項15】
該自然孔が、尿道であり、腹腔にアクセスすることが、外科装置を内視鏡に挿入することと、該内視鏡を尿道を通して膀胱内に通すことと、該外科装置の切開要素を用いて、膀胱の壁を通して切開部を形成することとを含む請求項12に記載の方法。
【請求項16】
該自然孔が、膣であり、腹腔にアクセスすることが、外科装置を内視鏡に挿入することと、該内視鏡を膣を通すことと、該外科装置の切開要素を用いて、膣の壁を通して切開部を形成することとを含む請求項12に記載の方法。
【請求項17】
小腸内腔に経管腔的にアクセスすることが、該外科装置の切開要素を用いて該小腸の壁に孔を切開することを含む請求項12に記載の方法。
【請求項18】
該外科装置の先端を小腸内腔に挿通することをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ガイドワイアを該外科装置から延出して小腸内腔に入れることをさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該切開要素を該外科装置内に退避させることをさらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該外科装置のステント展開装置が少なくとも小腸内腔の中に収められる程度に該外科装置を小腸内腔の中に通すことをさらに含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
小腸内腔の中でステントを展開することをさらに含む請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2012−522590(P2012−522590A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503687(P2012−503687)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/029557
【国際公開番号】WO2010/114960
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(507371168)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド (38)
【Fターム(参考)】