説明

胃腸管または泌尿生殖器官エリアのための自己膨張性デバイス

胃腸、特に胃あるいは泌尿生殖器に関連した疾患および障害の治療用デバイスを開示する。最初に、この治療用デバイスは、経口投与または直腸投与にふさわしい一時的な形態にある。温度変化またはpH変化のような刺激にさらされた後に、デバイスはその形状を永続的な形態に成形され、胃、食道あるいは腸にメカニカルに固定されるようになることを可能にする。治療用デバイスの1つの実施形態では、胃腸管を通過する食物の流れを阻止することなく、胃、食道あるいは腸のボリュームを縮小するために使用される。また、この治療用デバイスは、太り過ぎの患者が減量をするのを助け、かつ障害と疾患を治療する薬剤を胃また腸内に輸送するのに使用することができる。このデバイスは、生物学的適合性を有し、かつデバイスが適用されるエリアの機械的性質および幾何学形状に主として適合するような、刺激に敏感な高分子材料から製造される。好ましい実施形態では、高分子材料は形状記憶ポリマーであり、適用目的に応じて、生分解性あるいは非生分解性のものを使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃腸管または泌尿生殖器官エリアに関連した疾患および障害を治療するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
胃腸(GI)管を通過するトランシット時間は、その最も効率的な吸収部位での吸収に、あるいは胃腸(GI)管の1つのセグメントの局所的な活性に利用できる薬剤の量をしばしば制限する。例えば、後者については、吸収部位が胃腸(GI)管において高い場合、例えば、潰瘍ではよくあることだが、必要とする治療が胃において局所的である場合に、特にあてはまることである。
【0003】
多くの異なる特許は、薬剤が胃に配達される時間を増加させるための経口組成物について記載している。例えば、特許文献1(ミトラ特許)には、経口投与され、リリース状態を維持された柔軟な薬物デバイスを開示している。これらの薬物装置は、多層合成物から形成され、胃の中に浮かんでいる。
【0004】
また、特許文献2〜4(コルドウェル特許)には、胃の中に保持されたポリマー成形体を含む薬剤配達装置を記載している。この装置は、経口配達のために圧縮され、幽門を介した通行を阻止するようなサイズに胃の中で拡張し、次いで、胃液がある状態で時間とともに浸食される。また、特許文献5(シェル特許)には、胃に配達されると膨張し、それが胃の中にあるときには、延長された薬剤配達を提供するような経口投薬形態を記載している。その薬物は、固体の状態としてよりもむしろ溶液の状態で胃の粘膜に提供される。また、特許文献6(シール特許)には、ポリマーが徐々に浸食される結果として、わずかに可溶性または不溶性の薬剤を胃腸(GI)管に配達するようにデザインされた、膨張可能なポリマー・システムを記載している。
【特許文献1】米国特許明細書第4,451,260号
【特許文献2】米国特許明細書第4,735,804号
【特許文献3】米国特許明細書第4,758,436号、
【特許文献4】米国特許明細書第4,767,627号
【特許文献5】米国特許明細書第5,007,790号
【特許文献6】米国特許明細書第5,972,389号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような従来技術にかかる組成物または構成物は、様々な疾患および障害を治療するために特別にデザインされることができないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、胃腸管または泌尿生殖器官の異なる疾患および障害を治療するために調整することができる治療用デバイスを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、胃腸管または泌尿生殖器官から容易に排出または除去する(removed)ことができる治療用デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、胃腸管または泌尿生殖器官の疾患および障害を治療するためのデバイスであって、胃腸管または泌尿生殖器官内に挿入され得るような第1の一時的な形態と、胃腸管または泌尿生殖器官内に保持され得るような第2の永続的な形態を有する形状記憶ポリマーからなることを特徴とする治療用デバイスである。
【0007】
この治療用デバイスは、最初、経口投与または管腔内投与に適するような一時的な形態(temporary form)にある。そのような治療用デバイスは、温度変化またはpH変化のような刺激に晒された後に、それが胃、食道あるいは腸にメカニカルに固定されるようになることを可能にするような永続的な形態(permanent form)に変化する。
【0008】
本発明の治療用デバイスは、胃腸管を通過する食物の流れを阻止することなく、胃、食道あるいは腸のボリュームを減少させるために使用される。そのデバイスは、太り過ぎの患者が減量をするのを助け、かつ胃または腸の中の障害および疾病を治療する薬剤を配達するために使用することができる。また、そのデバイスは、生体適合性があり、かつ適用される部位のメカニカルな性質および幾何学的な形状に主として適合される、刺激に敏感な高分子材料から製造することができる。本発明の治療用デバイスは形状記憶ポリマーを用いて形成することができ、そのポリマーは、適用目的に応じて、生分解性または非分解性のものが用いられる。
【0009】
また、本発明は、胃腸管または泌尿生殖器官の疾患および障害を治療する方法であって、
形状記憶ポリマーからなるデバイスを含む構成物を患者に対して経口投与し、そのデバイスを刺激に晒して、そのデバイスの形状を変化させることを特徴とする治療方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、様々な疾患および障害を治療するためのデバイスにデザインすることができ、特に、胃腸管または泌尿生殖器官の異なる疾患および障害を治療するために調整することができる治療用デバイスを提供することができる。また、胃腸管または泌尿生殖器官から容易に排出または除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明にかかる胃腸管または尿生殖器管に関連した疾患および障害を治療するための治療用デバイスの実施形態について説明する。
【0012】
1.デバイス
この治療用デバイスは、例えば胃、食道あるいは腸のいずれかに、メカニカルに固定されるようになることを可能な形態を有する。その治療用デバイスは、刺激に敏感な高分子材料から製造され、その高分子材料は、生体適合性を有し、それが適用される部位のメカニカルな性質および幾何学的な形状に主として適合するような材料である。好ましい実施形態では、その材料は形状記憶ポリマーである。
【0013】
本発明にかかる治療用デバイスは、刺激の存在に基づいて、ある形態から別の形態に変化することができる。その刺激とは、温度変化またはpH変化であり、あるいは水または光の存在/不存在である。第1の形態は、ここでは「一時的な形態」と言い、第2の形態は、ここに「永続的な形態」と言うことにする。
【0014】
異なるタイプのポリマーは異なる刺激に応答する。本発明にかかる治療用デバイスが適切な刺激に晒された場合、その形状は変化する(ここでは「形状記憶効果」と言う)。その形状記憶効果とは、一時的な形態から永続的な形態への遷移のことである。このような形状記憶効果を活性化(activating)する適切な刺激としては、以下のようなものがある。即ち、(1)温度の上昇、(2)pHの変化、(3) 光を加えること、および(4)水の存在である。たとえば、pHの変化による刺激は、7より大きいpHから7より小さいpHへの変化であり得、このような変化は胃の中へ進入する際に起きる。一方、7より小さいpHから7より大きいpHへの変化もあり得、このような変化は腸の中へ進入する際に起きる。光は環境の温度を上げることができる。さらに光は、デバイスを形成する材料に光敏感性または光化学的反応に触媒作用を及ぼすことができる。 水の存在は、デバイスを膨張させ、および/または、材料の拡散を増大させることができる。
【0015】
A. 形状記憶ポリマー
形状記憶ポリマーは形状記憶効果に応答する。形状記憶ポリマーは、米国特許第6160084号(ランガー等特許)、および米国特許第6388043号(ランガー、レンドライン特許)に記載されており、それらの文献の開示事項は、参照によってここに組込まれる。
【0016】
形状記憶ポリマーは、ネットポイント(netpoints)と柔軟なセグメントを有することが一般的な特徴である。 これらのネットポイントは、事実上、化学的または物理的なものであり得る。
形状記憶ポリマーは、一般的に、ハードなセグメントおよびソフトなセグメントを有する相分離された直線状ブロック共重合体として特徴付けられる。ハードなセグメントは、典型的には、結晶性(規定された融点を有する)であり、ソフトなセグメントは、典型的には、アモルファス(規定されたガラス転移温度を有する)である。しかし、いくつかの実施態様では、ハードなセグメントは、アモルファスであり、融点というよりもむしろガラス転移温度を有する。他の実施態様では、ソフトなセグメントは、結晶性であり、ガラス転移温度というよりもむしろ融点を有する。ソフトなセグメントの融点またはガラス転移温度は、実質的にハードなセグメントの融点またはガラス転移温度よりも低い。
【0017】
形状記憶ポリマーが、ハードなセグメントの融点またはガラス転移温度よりも上に加熱される場合、この材料は形造られ得る。この(原形の)形状は、ハードなセグメントの融点またはガラス転移温度よりも下に形状記憶ポリマーを冷却することによって記憶され得る。形状が変形されながら、形造られた形状記憶ポリマーがソフトなセグメントの融点またはガラス転移温度よりも下に冷却される場合、新しい(一時的な)形状が固定される。原形は、ソフトなセグメントの融点またはガラス転移温度よりも上で、しかしハードなセグメントの融点またはガラス転移温度よりも下に加熱することによって、回復される。一時的な形態を設定する別の方法では、この材料は、ソフトなセグメントの融点またはガラス転移温度よりも低い温度で変形され、応力およびひずみはソフトなセグメントによって吸収されるようになる。この材料がソフトなセグメントの融点またはガラス転移温度よりも上で、しかし、ハードなセグメントの融点(またはガラス転移温度)よりも下に加熱される場合、この応力およびひずみは解放され、この材料はその原形に戻る。原形の回復(これは、温度の上昇によって誘発される)は、熱形状記憶効果と呼ばれる。材料の形状記憶能力を示す性質は、原形の形状回復および一時的な形態の形状固定である。
【0018】
形状を記憶するための能力以外の形状記憶ポリマーのいくつかの物理的な性質は、特にソフトなセグメントの融点またはガラス転移温度で、温度および応力の外部変化に応じて有意に変更される。これらの性質には、弾性率、硬度、可撓性、気体透過性、減衰(damping)、屈折率、および誘電率が挙げられる。形状記憶ポリマーの弾性率(物体の応力とそれに対応するひずみの比)は、ソフトなセグメントの融点またはガラス転移温度よりも上に加熱される場合、200までの因子によって変化し得る。また、材料の硬度は、ソフトなセグメントがその融点またはガラス転移温度以上にある場合、劇的に変化する。材料がソフトなセグメントの融点またはガラス転移温度よりも上の温度に加熱される場合、減衰能は、従来のゴム製品よりも5倍まで高くなり得る。この材料は、多くの熱サイクルの後に元の成型された形状に容易に回復され得、ハードなセグメントの融点よりも上に加熱されて、再形成され、冷却されて新しい原形に固定され得る
【0019】
好ましい形状記憶ポリマーは、メモリの中に1つを越える形状を保持することができる。例えば、その構成物は、1つのハードなセグメントと、少なくとも2つのソフトなセグメントを含むことができる。ハードなセグメントのガラス転移温度Ttransは、少なくとも10℃、より好ましくは20℃であり、それは、ソフトなセグメントのうちの一方のセグメントのガラス転移温度より高い。ハードなセグメントに続いているソフトなセグメントのそれぞれのガラス転移温度は、少なくとも10℃、好ましくは20℃であり、それは、前のソフトなセグメントのガラス転移温度より低い。
比較的高いガラス転移温度Ttransを有するハードなセグメントと、比較的低いTtransを有するソフトなセグメントを備えた多重ブロック共重合体は、比較的低いTtransを有するハードなセグメントと、第1の多重ブロック共重合体中のそれと同じソフトなセグメントを有する別の多重ブロック共重合体と混合することができる。両方の多重ブロック共重合体中のソフトなセグメントが同一であるので、ソフトなセグメントが溶ける場合、ポリマーは互いに混和します。結果として生じた混合物は3つの転移温度を有る。一つは、第1のハードなセグメントの転移温度であり、もう一つは、第2のハードなセグメントの転移温度であり、さらにもう一つは、ソフトなセグメントの転移温度である。従って、これらの材料は2つの異なる形を記憶することができる。
【0020】
ハードなセグメントは、直鎖状オリゴマーまたはポリマーであり得、そして環状化合物(例えば、クラウンエーテル、環状ジ‐、トリ‐、またはオリゴペプチドおよび環状オリゴ(エステルアミド))であり得る。
【0021】
ハードなセグメント間の物理的な相互作用は、電荷移動錯体(charge transfer complex)、水素結合、または他の相互作用に基づき得、これはいくつかのセグメントは分解温度よりも高い融点を有するからである。この場合、セグメントについての融点またはガラス転移温度は存在しない。非熱的機構(non-thermal mechanism)(例えば溶媒)は、セグメント結合を変化させるために必要とされる。
【0022】
そのセグメントは好ましくはオリゴマーである。ここで用いられる、用語「オリゴマー」は、15,000ダルトンまでの分子量を有する直鎖分子を意味する。ハードなセグメント:ソフトなセグメントの重量比は、約5:95と95:5との間であり、好ましくは20:80と80:20との間である。
【0023】
ポリマーは、所望のガラス転移温度(単数または複数)(少なくとも1つのセグメントがアモルファスである場合)または融点(単数または複数)(少なくとも1つのセグメントが結晶性である場合)に基づいて選択され、あるいは使用される環境を考慮して所望の適用に基づいて選択される。好ましくは、このポリマーブロックの数平均分子量は、400よりも大きく、好ましくは500と15,000との間の範囲である。
【0024】
ポリマーが急激にソフトになり変形する転移温度は、モノマー組成物およびモノマーの種類を変化することによって制御され得、これにより所望の温度で形状記憶効果を調整することが可能になる。
【0025】
ポリマーの熱特性は、例えば、動的なメカニカルな熱分析または示差走査熱量測定(DSC)研究によって検出され得る。加えて、融点が標準的な融点装置(mp apparatus)を使用して測定され得る。
【0026】
ポリマーは、熱硬化性または熱可塑性ポリマーであり得るが、成形が容易であることから、熱可塑性ポリマーが好ましく用いられる。
【0027】
好ましくは、ポリマーまたはポリマー性ブロック(単数または複数)の結晶化度は、3%〜80%の間、より好ましくは3%〜60%との間である。結晶化度が80%よりも高いが、全てのソフトなセグメントがアモルファスである場合、得られるポリマー組成物は、乏しい形状記憶特性を有する。
【0028】
Ttransより下のポリマーの引張り係数は、典型的には、50MPaと2GPa(ギガパスカル)との間であるのに対して、Ttransより上のポリマーの引張り係数は、典型的には、1MPaと500MPaとの間である。好ましくは、Ttransより上と下の弾性率の比は、20以上である。この比が高くなるほど、得られるポリマー組成物の形状記憶はより良くなる。
【0029】
ポリマーセグメントは、天然または合成であり得るが、合成ポリマーが好ましい。ポリマーセグメントは、生分解性または非生分解性であり得、得られる形状記憶ポリマーは生分解性である。本明細書中に使用される場合、用語「生分解性」は、生再吸収可能(bioresorbable)であり、および/または分解し、および/または機械的な分解によって崩壊する材料を言い、これらは、必要な構造的一体性を維持しながら、数分〜3年の期間に渡って(好ましくは1年未満で)、生理学的な環境と相互作用して、代謝可能または排出可能な成分に分解する。一般的に、これらの材料は、加水分解によって、生理学的な条件下で水または酵素に曝すことによって、表面侵食、バルク侵食(bulk erosion)、またはそれらの組み合わせによって分解する。医療用途に使用される非生分解性ポリマーは、好ましくは、天然に存在するアミノ酸中に存在するもの以外で、芳香族基を含まない。
【0030】
代表的な天然のポリマーセグメントまたはポリマーには、タンパク質(例えば、ゼイン、改変ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、およびコラーゲン)、ならびに多糖類(例えばアルギネート、セルロース、デキストラン、プルラン(pullulane)、およびポリヒアルロン酸)、ならびにキチン、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(特に、ポリ(β−ヒドロキブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート))およびポリ(3−ヒドロキシ脂肪酸)が挙げられる。
【0031】
代表的な天然の生分解性ポリマーセグメントまたはポリマーは、多糖類(例えば、アルギネート、デキストラン、セルロース、コラーゲン、ならびにそれらの化学的誘導体(化学基(例えばアルキル、アルキレン)の置換、付加、ヒドロキシル化、酸化、および当業者によって慣用的になされる他の修飾)、ならびにアルブミン、ゼインのようなタンパク質および共重合体およびこれらのブレンドを、単一で、または合成ポリマーとの組み合わせで含む。
【0032】
代表的な合成ポリマーのブロックは、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリ(アミノ酸)、合成ポリ(アミノ酸)、ポリ無水物、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリオルトエステルポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびこれらの共重合体を含む。
【0033】
適切なポリアクリレートの例には、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)およびポリ(オクタデシルアクリレート)が挙げられる。
【0034】
合成的に改質された天然のポリマーは、セルロース誘導体(例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサン)を含む。適切なセルロース誘導体の例には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルセルロース、セルローストリアセテートおよびセルローススルフェートナトリウム塩が挙げられる。これらは本明細書中では「セルロース」と総称する。
【0035】
代表的な合成分解性ポリマーセグメントまたはポリマーは、ポリヒドロキシ酸(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリドおよびこれらの共重合体;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリ(ヒドロキシ酪酸);ポリ(ヒドロキシ吉草酸);ポリ[ラクチド‐co‐(ε‐カプロラクトン)];ポリ[グリコリド‐co‐(ε‐カプロラクトン)]);ポリカーボネート、ポリ(擬アミノ酸);ポリ(アミノ酸);ポリ(ヒドロキシアルカノエート);ポリ無水物;ポリオルトエステル;ならびにこれらのブレンドおよび共重合体を含む。
【0036】
非生分解性ポリマーセグメントまたはポリマーの例には、エチレンビニルアセテート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルフェノール、ならびにこれらの共重合体および混合物が挙げられる。
【0037】
迅速な生腐食性(bioerodible)ポリマー(例えば、ポリ(ラクチド‐co‐グリコリド)、ポリ無水物、およびポリオルトエステル)(これらは、ポリマーの滑らかな表面が侵食されるような、外部面上に曝されるカルボキシル基を有する)はまた使用され得る。さらに、不安定な結合を含むポリマー(例えば、ポリ無水物およびポリエステル)は、加水分解反応性が周知である。これらの加水分解速度は、一般的に、ポリマー骨格およびその配列構造の簡単な変化で、変更され得る。
【0038】
種々のポリマー(例えば、ポリアセチレンおよびポリピロール)は、導電性ポリマーである。これらの材料は、電気的伝導性が重要である使用について、特に好ましい。これらの使用の例には、細胞増殖が刺激される、組織工学および任意の医用適用が挙げられる。これらの材料は、コンピュータサイエンスの分野において特定の有用性を見出し得、なぜならこれらは、温度上昇なしでSMAよりも良好に熱を吸収し得るからである。導電性形状記憶ポリマーは、細胞増殖(例えば、神経組織)を刺激するための組織工学の分野において有用である。
【0039】
一般に使用可能な形状記憶ポリマーは、結晶性ポリオレフィン架橋物質、結晶性トランスイソプレン架橋物質、結晶性トランスポリブタジエン架橋物質、ポリ(ノルボルネン)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエン(AB)樹脂、ポリエーテル、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、ポリウレタン/尿素、ポリエーテルエステルおよびウレタン/ブタジエン共重合体である。
【0040】
形状記憶効果は、形状記憶ポリマーを水に接触させることでも引き起こすことができる。この形状記憶ポリマーは、ガラス転移温度によって特徴付けられ、好ましくはアモルファス(無定形)である。形状記憶ポリマーのプログラミングは、標準の熱形状記憶を使用して行なうことができる。そのポリマーは、ヒドロゲルのように、ある量の水を吸収することができるが、その結果としての膨張(膨らみ)の程度はより小さい。例えば、形状記憶ポリマーの重さは、約0.5〜4wt%増加する。ヒドロゲルと比較して、このわずかに膨張した材料の機械的性質は、バルク材(膨張していない)に主として似ている。
【0041】
水の吸収によって、ガラス転移温度が約10〜30K低下することになる(柔らかくなる効力)。したがって、はじめは体温以上であったガラス転移温度が、体温以下に低下することもできる。そのような形状記憶ポリマーが体温で使用される、例えば、胃で使用される時、形状記憶効果は活性化される(吸水によって)。形状記憶ポリマーの膨張は、好ましくは20〜90分以内に生じ、胃の中の形状記憶ポリマーデバイスの滞在時間に一致させることができる。その滞在時間は、典型的には2〜4時間である。
【0042】
さらに、形状記憶ポリマーの膨張は、pHを調節することおよび又はpHに敏感な材料で形状記憶ポリマーを被覆することにより変化させて、形状記憶ポリマーの膨張がpHのある範囲内で生じるようにできる。例えば、pHに敏感なコーティングは製薬産業においては良く知られているが、そのようなコーティングは、例えば、胃の中での適用のために、より低いpHでのみ形状記憶ポリマーが膨張できるように使用することができ、また、例えば、腸管内での適用のために、より高いpHでのみ形状記憶ポリマーが膨張できるように使用することができる。
したがって、pHに敏感なコーティングは、経口輸送される時に形状記憶ポリマーが食道内で膨張することを阻止するために使用することができる。
【0043】
pHに敏感な材料は典型的には、中性の水溶液あるいは酸性水溶液に不溶性の固体であるが、溶液のpHが3〜9の範囲、好ましくは6〜8の範囲を超えて上がると、それらは溶ける(あるいは低下し、溶ける)。典型的なpHに敏感な材料は、ポリアクリルアミドや、フタレート誘導体(即ち、共有結合して付着したフタル酸塩部分を有する化合物)、例えば、炭水化物の酸のフタル酸塩、アミロースアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセテート水素フタレート(polyvinyl acetate hydrogen phthalate)、ナトリウムセルロースアセテートフタレート(sodium cellulose acetate phthalate)、デンプン酸フタレート(starch acid phthalate)、スチレン−マレイン酸ジブチルフタレート共重合体、スチレン−マレイン酸ポリビニルアセテートフタレート共重合体、スチレンとマレイン酸の共重合体、形式化したゼラチン(formalized gelatin)、グルテン、セラック、ザロール、ケラチン、ケラチンサンダラックトルー(keratin sandarac-tolu)、アンモニアと化合したセラック(ammoniated shellac)、ベンゾフェニルサリシレート(benzophenyl salicylate)、セルロースアセテートトリメリテート(cellulose acetate trimellitate)、セラックと混合したセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサシネート(hydroxypropylmethyl cellulose acetate succinate)、酸化されたセルロース、アクリル酸などのポリアクリル酸誘導体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸およびそのエステル、ビニルアセテートとクロトン酸の共重合体を含む。
【0044】
好ましいpHに敏感な材料は、セラックや、フタレート誘導体(特に、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、ポリアクリル酸誘導体(特に、アクリル酸とアクリル酸エステルの共重合体と混合したポリメチルメタクリレート、アクリル酸とアクリル酸エステルの共重合体を混合したポリメチルメタクリレート)、およびビニルアセテートとクロトン酸の共重合体を含んでいる。
【0045】
pHに敏感な材料は、不活発な溶解しない材料と混合されることが好ましい。「不活発(inert)」という用語は、形状記憶効果が引き起こされる範囲内(triggering range)でのpHの変化によって本質的に影響されないということを意味する。不活発な溶解しない材料とpHに敏感な材料の比率の変更によって、形状記憶効果の発動からリリースまでのタイムラグを調整することができる。例えば、カプセル装置については、pHに敏感な材料と不活発な溶解しない材料との混合は、カプセル半分が形状記憶効果の発動(トリガ)後に分離する時間をコントロールするために調整することができる。したがって、不活発な溶けない材料へのpHに敏感な材料の比例した混合物を使用することによって、トリガに続く所望のリリースタイムラグを提供することができる。トリガで反応しないどんな不活発な溶解しない材料も使用されてもよい。典型的には、不活発な溶解しない材料の割合を増加させることは、トリガ後に有益な医薬品のリリースに続くタイムラグを延長する。不活発な材料は、好ましくは、半透膜のために与えられた材料のリストから選ぶことができる。
【0046】
pHに敏感な材料としては、中性またはアルカリ性溶液において不溶性の固体からなる材料を使用することもでき、そのような材料は、溶液のpHが3〜9の範囲のpH値より下がると、それらは溶ける(あるいは低下し、溶ける)。典型的なpHに敏感な材料は、アミノ置換基とアクリル酸エステルを持つアクリル酸塩重合体の共重合体を含む。追加のpHに敏感な材料は、pHがそれらのpKa以下に落ちるとともにイオン化されるようになる多数のグループを含んでいる多官能性ポリマーを含む。これらのイオン化可能なグループの十分な量がポリマーに組み入れられると、イオン化可能なグループのpKaより下のpHを有する水溶液では、ポリマーは溶ける。これらのイオン化可能なグループは、ブロック共重合体としてポリマーに組み入れることができる、あるいはポリマーバックボーンに付けられた垂下のグループであり得る、あるいはポリマー鎖を架橋または接続するのに使用される材料の一部分であり得る。そのようなイオン化可能なグループの例は、ポリフォスフェン(polyphosphen)、ビニルピリジン、ビニルアニリン、ポリリシン、ポリオルニチン、他の蛋白質、アミノ部分を含んでいる置換基を有するポリマーを含んでいる。
【0047】
本発明の一実施形態では、プログラム可能な形状記憶ポリマーは、熱形状記憶を有しており、ヒドロゲルのような水媒体の中で膨張することができる。このポリマーは、自由に多価イオンあるいはポリマーとイオン的に架橋される。プログラムされたポリマーが膨張すると、物理的な架橋は消えて、形状記憶効果を引き起こす。ヒドロゲルとは対照的に、形状は変化し、形状記憶ポリマーのボリュームは増加する。
【0048】
他の実施形態では、形状記憶ポリマーの膨張はpHを変更することにより調節することができます。また、好ましい実施形態では、形状記憶ポリマーは、特定のpHでのみ膨張するpHに敏感なコーティングを含む。
【0049】
このポリマーは、ヒドロゲル(典型的には、約90重量%までの水を吸収する)の形態であり得、必要に応じて、多価のイオンまたはポリマーとイオン的に架橋され得る。ソフトなセグメント間のイオン架橋は構造を保持するために使用され得、この構造は、変形した場合、ソフトなセグメント間のイオン架橋を切断することによって再形成され得る。このポリマーはまた、水または水溶液以外の溶媒中のゲルの形態であり得る。これらのポリマーでは、一時的な形態は、ソフトなセグメント間の親水性相互作用によって固定され得る。
【0050】
ヒドロゲルは、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ならびにこれらの共重合体およびブレンドから形成され得る。数種のポリマー性セグメント(例えば、アクリル酸)は、ポリマーが水和され、ヒドロゲルが形成される場合だけ、エラストマー性である。他のポリマー性セグメント(例えば、メタクリル酸)は、ポリマーが水和されない場合でさえ、結晶であり、融解可能である。所望される適用および使用する条件に依存して、いずれかの種のポリマー性ブロックが使用され得る。
【0051】
例えば、形状記憶は、アクリル酸共重合体についてヒドロゲルの状態でのみ観察される。なぜならば、アクリル酸単位は実質的に水和され、非常に低いガラス転移温度を有するソフトなエラストマーのように振る舞うためである。乾燥ポリマーは、形状記憶ポリマーではない。乾燥される場合、アクリル酸単位は、ガラス転移温度よりも上でさえハードなプラスチックとして振る舞い、加熱で力学的性質に急激な変化を示さない。反対に、ソフトなセグメントとしてアクリル酸メチルポリマーセグメントを含む共重合体は、乾燥時でさえ形状記憶特性を示す。
【0052】
このポリマーは、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO.;Polysciences,Warrenton,PA;Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI;Fluka,Ronkonkoma,NY;およびBioRad,Richmond,CAのような市販の供給源から得られ得る。あるいは、これらのポリマーは、市販の供給源から得られるモノマーから、標準的な技術を使用して合成され得る。
【0053】
B.デバイスの形状
本発明にかかる治療用デバイスは、一時的な形態では、マトリクス材の形状記憶効果によって、圧縮または伸張された形状で固定される(図2参照)。一時的な形態でのデバイスの形状は、患者による呑み込み、あるいは直腸投与または尿生殖器投与に適するような形状に選択される。この状況では、デバイスの形状は、適用目的によって決定され、例えば、胃の縮小のためには、デバイスのサイズは胃のどれだけの部分がデバイスによって満たされるかに基づいて決定される。
【0054】
刺激に晒された後に、デバイスは永続的な形態に変化する(図1参照)。永続的な形態は、胃、食道あるいは腸に機械的に固定する。好ましい実施形態では、デバイスは胃の縮小のために使用される。デバイスは、胃腸管を通過する食品の流れを邪魔することなく、胃、食道あるいは腸のボリュームを減少させる。ボリュームの減少は、大きくても小さくてもよい。例えば、減量を助けるために使用される食欲抑制デバイスの場合には、多くの胃はデバイスで満たされるべきである。
【0055】
それとは対照的に、デバイスが薬剤貯蔵所として、また生物活性物質の配達用デバイスとして使用する場合、あるいは保護コーティングとして使用する場合には、胃、食道または腸のボリュームの減少は最小限とすべきである。太り過ぎの患者は、このデバイスを減量をするために使用することができる。このデバイスは、胃に満たされることによって、食物に対する胃の能力および飢えの感じを減少させることができる。
【0056】
本発明にかかるデバイスの別の実施形態では、胃炎の治療の中で使用されるマトリックスの形態をとる。そのマトリックスは、胃の隔膜(septum)を裏打ちすることによって、離散的な期間だけ胃の内容物や胃液から胃を保護する。
【0057】
1.薬剤の配達
薬剤配達(ドラッグ・デリバリー)のためには、本発明にかかる治療用デバイスは、錠剤またはカプセルの形態とすることができる(図2参照)。別の形態としては、デバイスはカプセルに組み込まれた形態をとることができる。しかしながら、この実施態様では、カプセルは一時的な形態として機能しない。典型的には、デバイスには、薬、予防薬あるいは診断分析用物質(例えば、造影剤)を含む1種類以上の生物活性物質が詰め込まれる。これらの生物活性物質は、有機化合物、タンパク質またはペプチド、砂糖または炭水化物、核酸、脂質あるいはそれらの組合せであり得る。本発明にかかるデバイスの材料は、生分解性または非生分解性であり得る。また、このデバイスは、オプションで、そのシェルフライフを改善し、飲み込むために滑りを増大させるか、胃または腸の中への一般的な浸潤を改善するか、あるいはリリース特性を変更するためにコートされる。
【0058】
一つの実施態様では、このデバイスは、食道においてステントに類似したデバイスを形成するマトリックス(matrix)である。このマトリックスは、薬剤のような1種類以上の生物的活動物質を含むことができる。例えば、薬剤は胸焼けの治療に有効である。
【0059】
2.泌尿生殖器官用デバイス
本発明にかかる治療用デバイスは、泌尿生殖器官への投与に適している。また、オプションで、このデバイスは、1種類以上の生物活性物質を含んでいる。本発明にかかるデバイスの一つの実施態様では、避妊薬として機能する。例えば、泌尿生殖器官への適用、例えば、避妊のために、あるいは子宮に薬剤を配達するために、デバイスは、膣または頚部への挿入がし易いように形造られ、そこに保持されるように伸張するかあるいは形状が変化する。本発明にかかるデバイスはまた、膀胱尿管逆流または失禁のような膀胱疾患のために、補足保持が望まれるポイント、例えば、尿管が膀胱に接続するポイントに安全に位置することができるように形造られる。
【0060】
C.生物活性物質
本発明にかかる治療用デバイスは、薬剤および診断用薬剤のような1種類以上の生物活性物質を含むことができる。その生物活性物質は、胃腸管の疾患および障害の治療に有効である。ここで、用語「薬剤」は、どれも微粒子の構成で投与され、所望の効果を達成できるような薬学的に活性な物質を指している。その薬剤は、合成された有機化合物または天然の有機化合物、タンパク質またはペプチド、オリゴヌクレオチドまたはヌクレオチド、あるいは多糖類または砂糖であり得る。その薬剤は、抑制的または刺激的な様々な活性、例えば抗生物質の活性、抗ウイルス活性、抗真菌性の活性、ステロイド性活性、細胞毒素または反増殖の活性、抗炎症の活性、鎮痛麻酔の活性、のいずれをも有することができ、あるいは造影剤または他の診断用薬剤として有用である。
【0061】
各分類内の薬剤および種の分類の記述は、マーチンデール著「特別な薬局方」第31版、調剤プレス社、ロンドン(1996)、およびグッドマンおよびギラン共著、「治療学の薬学的基礎」(第9版、マグロウヒル出版社(1996)[Martindale, The Extra Pharmacopoeia, 31st Ed., The Pharmaceutical Press, London(1996) and Goodman and Gilinan, The Pharmacological Basis of Therapeutics, (9th Ed., McGraw-Hill Publishing company (1996))]に見出すことができる。
【0062】
好ましい実施態様では、薬剤は、胃炎、胃不全麻痺、消化性潰瘍、メネトリエー病、胃および結腸直腸癌を含んだ、胃または腸の障害および疾病を治療するのに適しているが、これらの障害および疾病に限定されるものではない。別の実施態様では、薬剤は、細菌性膣疾患、トリコモナス症、カンジダ症、卵巣癌、膣癌、子宮頸癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、陰門癌、子宮癌、尿路感染症および失禁を含んだ泌尿生殖器の感染と障害の治療に使用されるが、これらに限定されるものではない。最後に、薬剤は避妊用にも使用することができる。
【0063】
II. デバイスを製造する方法
本発明にかかる治療用デバイスは、標準技術を用いて成型(モールド)、鋳造、または造形される。このデバイスは、形状記憶ポリマーを使用して準備することができる。一つの実施態様では、形状記憶ポリマーは、ハードなセグメントと、第1のソフトなセグメントと、第2のソフトなセグメントを含む。第1のソフトなセグメントの転移温度Ttransは、ハードなセグメントの転移温度よりも少なくとも10℃低く、かつ第2のソフトなセグメントの転移温度よりも少なくと10℃高い。
【0064】
形状記憶ポリマー組成物は、ハードなセグメントの転移温度Ttransよりも高い温度で形造られた(第1の形状)後、第1のソフトなセグメントの転移温度Ttransよりも低く、かつ第2のソフトなセグメントの転移温度よりも高い温度まで冷やされて、別の形状(第2の形状)に形成される。その組成物は、第2のソフトなセグメントの転移温度Ttrans以下の温度に冷やされた後、第3の形状に形成され得る。その組成物は、第2のソフトなセグメントの転移温度よりも高い温度で熱せられて、その形状が第2の形状に復帰され得る。
【0065】
そして、組成物は、第1のソフトなセグメントの転移温度Ttransよりも高い温度で熱せられると、第1の形状に復帰する。さらに、その組成物は、ハードなセグメントの転移温度Ttransよりも高く、組成物が第1の形状および第2の形状の記憶を失うような温度に熱せられると、上述したような方法を用いて、その形状が作り直され得る。
【0066】
III. デバイスを使用する方法
本発明にかかる治療用デバイスは、患者の胃腸管への配達のために経口投与されあるいは患者の口から配達され、また患者の胃腸管の治療のために直腸投与され得る。典型的に、デバイスは、膣または尿管を介して尿生殖器官に投与される(administered)。一つまたは数個のデバイスを同時に適用することもできる。本発明にかかるデバイスは、規定された期間だけ胃腸管の所定の部位に留まった後、その部位から排出または除去される。
【0067】
一つの実施形態では、デバイスの材料は、前もって定義した期間内に水力により(hydrolytically)あるいは酵素により分解可能である。その後、分解された可溶性の生成物または腸管を動かしている粒子は排出される。
【0068】
別の実施形態では、材料は第1の一時的な形態に戻るか、あるいはプログラムされた第2の一時的な形態に戻る。そのような形態では、デバイスは非常に小さいので、部位にメカニカルに固定されることができず、デバイスは排出される。永続的な形態から第1あるいは第2の一次的な形態への転移の引き金となる刺激としては、以下のような刺激を含む。(1) 温度変化、(2)時間のどの時点でもそれをとることにより刺激を伝える物質、(3)光、例えば、紫外線または赤外線、および(4)超音波。
【0069】
以上説明したように、本発明は、変わり得るものとして説明された特定の方法、規約、および試薬に制限されないということが理解される。 本明細書中で用いられた専門用語が、特定の実施形態だけを説明するためのものであり、本発明の範囲を制限することを意図していないものであり、添付された特許請求の範囲によってのみ制限されることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明にかかる治療用デバイスの永続的な形態を示す図である。
【図2】本発明にかかる治療用デバイスの一時的な形態を示す図であり、収縮した形態または伸長された形態をとる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃腸管または泌尿生殖器官の疾患および障害を治療するためのデバイスであって、
胃腸管または泌尿生殖器官内に挿入され得るような第1の一時的な形態と、胃腸管または泌尿生殖器官内に保持され得るような第2の永続的な形態を有する形状記憶ポリマーからなるデバイス。
【請求項2】
前記デバイスは、さらに生物活性物質を含むことを特徴とする請求項1に記載されたデバイス。
【請求項3】
前記デバイスは、さらにpHに敏感なコーティングを含むことを特徴とする請求項1に記載されたデバイス。
【請求項4】
前記形状記憶ポリマーは、生分解性であることを特徴とする請求項1に記載されたデバイス。
【請求項5】
前記形状記憶ポリマーは、刺激に晒されることにより第1の形態から第2の形態に変化することを特徴とする請求項1に記載されたデバイス。
【請求項7】
前記デバイスは、胃を保持するために用いられることを特徴とする請求項1に記載されたデバイス。
【請求項8】
前記デバイスは、膣を介する子宮内挿入用であることを特徴とする請求項1に記載されたデバイス。
【請求項9】
前記デバイスは、尿管内挿入用であることを特徴とする請求項1に記載されたデバイス。
【請求項10】
胃腸管または泌尿生殖器官の疾患および障害を治療する方法であって、
形状記憶ポリマーからなるデバイスを含む構成物を患者に対して経口投与し、
そのデバイスを刺激に晒して、そのデバイスの形状を変化させることを特徴とする治療方法。
【請求項11】
前記構成物は、胃に配達されることを特徴とする請求項8に記載の治療方法。
【請求項12】
前記構成物は、食道に配達されることを特徴とする請求項8に記載の治療方法。
【請求項13】
前記刺激は、(a)温度変化、(b)pH変化、(c)光、(d)水、
から成るグループから選ばれることを特徴とする請求項8に記載の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−518392(P2006−518392A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503670(P2006−503670)
【出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/004776
【国際公開番号】WO2004/073690
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(500334081)ニーモサイエンス ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】