説明

胃腸障害および関連障害の治療におけるコレシストキニン−1(CCK1)受容体アンタゴニスト

【課題】従来の制酸療法が全く効果を奏さない胃腸障害および関連障害を患っている患者の治療のための治療薬の提供。
【解決手段】コレシストキニン−1(CCK1)受容体アンタゴニストおよびCCK1受容体アンタゴニストとプロトンポンプインヒビター(PPI)からなる医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の制酸療法が全く効果を奏さない胃腸障害および関連障害を患っている患者の治療のためのコレシストキニン−1(CCK1)受容体アンタゴニストおよびCCK1受容体アンタゴニストとプロトンポンプインヒビター(PPI)との併用に関する。
【背景技術】
【0002】
医師らは、上部消化管に影響を及ぼす状態は、通例、上腹部の痛み、不快感、腹部膨満、鼓脹、早期満腹、吐き気、胸焼けおよび逆流を生み出すと長く認識している。このような症状は、典型的に、食後であり、単独または組み合わせて起こる。全体的に、消化不良型および逆流型の両方を含む上部消化管症状は、西欧諸国において25%以上の成人に影響を及ぼしており、機能状態および個々の健康の感覚の両方に、重大で否定的な影響を及ぼす(Tougasら、Am J Gastroenterol.1999;94:2845−2854)。上部消化管機能の障害に関連する症状は、一次医療および消化管専門医療業務において最も多く見られる病状である。これらの障害として、通例、GERD(胃食道逆流症)、びらんを伴うGERD、NERD(非びらん性逆流症)、PUD(消化性潰瘍)、FD(非潰瘍性消化不良とも言われる機能性消化不良)、糖尿病性胃不全麻痺、胃腸潰瘍、ゾリンジャー・エリソン症候群および洞G細胞過形成が挙げられる。
【0003】
従来の制酸療法として、制酸剤、ペプシンインヒビター、胃粘膜保護剤、胃の塩酸の分泌を抑えるための抗コリン剤、副交感神経遮断薬、ヒスタミンH2受容体アンタゴニスト(以降、“H2遮断薬”と称する)、プロトンポンプインヒビターなどの使用が挙げられる。プロトンポンプインヒビターの例として、ランソプラゾール(商品名:プレバシド(登録商標)、ゾトン(登録商標)、米国特許第4 628 098号)、オメプラゾール(商品名:ロセク(登録商標)、プリロセク(登録商標)、米国特許第4 255 431号および第5 693 818号)、パントプラゾール(商品名:プロトニクス(登録商標)、ソマク(登録商標)、米国特許第4 758 579号)、ラベプラゾール(商品名:アシフェックス(登録商標)、パリエット(登録商標)、米国特許第5 045 552号)およびAZD−0865(Holsteinら、Gastroenterology 2004、126(4、Suppl 2):Abst M1436)が挙げられる。
【0004】
プロトンポンプインヒビター(PPI)は、胃壁細胞における胃プロトンポンプの阻害によって、胃酸分泌を低下させる。しかし、プロトンポンプインヒビターおよび胃液酸度を低下させるその他の従来の治療は、すべての患者を適切に対処するとは限らない。たとえば、食道炎は、プロトンポンプインヒビターを用いて軽減されうるが、主に逆流型の症状を有する患者においては、内視鏡により、少数の患者において食道炎が依然として存在することが示される。
【0005】
さらに、主として消化不良型の症状を有する患者は、食道または胃のいずれにおいても特定できる肉眼的または顕微鏡的病変が無いことが多い。解剖学的病変は、概して消化不良の患者には存在しないけれども、様々なその他の異常(たとえば、胃の調節、洞運動/排出および洞十二指腸協調などにおける)が、同定され、病態生理学的であるとみなされているが、すべての患者に一貫するものは見出されていない。同様に、胃酸の存在と消化不良症状との間の病因学的関連を確立しようとする試みは、24時間自由行動下pH測定を採用する場合でさえ、不成功のままである。したがって、上腹部の痛みおよび不快感、腹部膨満、鼓脹、げっぷ、早期満腹、吐き気および/または嘔吐などの「消化不良性」とまとめて称される症状の基となる統一的メカニズムは無い。
【0006】
上部消化管障害は、たとえば、症状の部位特異的一団の存在を示唆する疫学的証拠に基づく、食道に起因するものおよび胃十二指腸に起因するものなどの解剖学的領域によって典型的に分類される。しかし、消化管の解剖学的連続性および消化と栄養素の吸収における統合された機能は、部位による症状の一団の分離を多少不自然なものにする。事実、たとえば、胸焼けといったような横隔膜の上に局在する症状を胸郭器官である食道に起因すると考えること、および心窩部の痛みおよび不快感といったような横隔膜の下部に局在する症状を腹部器官である胃に起因すると考えることなどなど、横隔膜が上部消化管障害を定義するための解剖学的境界であるとみなすことは、非常に有用というわけではない。たとえば、胃食道逆流症(GERD)を定義する唯一または主な症状である「胸焼け」は、特異性が高い(約90%)にもかかわらず、感受性は非常に低い(38%)(Dentら、Gut.2004、53(May):Supp 4:1−24)。GERDの徴候として単独で起こるよりもむしろ、胸焼けは、患者の少なくとも3分の2において心窩部の痛みを伴う。
【0007】
消化不良症状(胸焼けを伴うかまたは伴わない心窩部における痛みまたは不快感、逆流、吐き気、嘔吐または鼓脹)を有する500人の患者の治療方策を比較する研究は、患者の評価の困難性を明らかにしている(H.pylori test−and−eradicate versus prompt endoscopy)(Lassenら、Lancet 2000、356:455−460)。主な参加基準は、すべての患者によって報告される心窩部の痛みまたは不快感であったが、主な心窩部の痛みを有する患者(37%)とほぼ同数である32%が、主な症状として胸焼けおよび/または逆流を経験した(See Lassenら参照)。したがって、利用可能なデータは、症状の有意なオーバーラップは、食道および胃障害に存在することを示す;GERD患者は、消化不良症状を有し、消化不良患者は、胸焼けおよび/または逆流を有する。
【0008】
15−19%のアメリカ人の集団が、少なくとも週に1回はGERDの症状を経験し、10%以上が、消化不良の症状を合併して経験すると判断されている(Lockeら、Gastroenterology 1997、112(5):1448−1456)。全国外来医療調査(National Ambulatory Medical Care Survey)からの結果に基づいて、2000年には米国における胸焼けおよび消化不良は併せて、180万人以上の外来患者の来院に相当することが予測された(Russoら、Gastroenterology 2004、126:1448−1453)。
【0009】
コレシストキニン(CCK)は、脳腸ペプチドとして知られる物質のグループに属し、神経ペプチドおよび胃ホルモンとして機能する(Nobleら、Pharmacol.Rev.1999、51(4):745−781;Crawleyら、Peptides 1994、15(4):731−755)。少なくとも2つの異なる受容体、すなわち、CCK1(以前はCCKAまたは消化)およびCCK2(以前はCCKまたは脳)受容体が、CCK生物作用を媒介することが、今や明らかである(Nobleら、Pharmacol.Rev.、1999、51(4):745−781;WoodruffおよびHughes、Ann.Rev.Pharmacol.1991、31:469−501)。CCK1受容体は、消化管などの末梢組織に見出される。
【0010】
CCKは、最初、食事に反応して分泌され、胆嚢収縮および膵酵素分泌において、よく認識された役割を果たす。過去10年間で、かなりの証拠が出現して、CCKが、ヒト上部消化管の様々なレベルにおける運動および感覚機能の調節において同等に重要な役割を果たすという概念を裏付けている。具体的に言えば、天然のペプチドは、胃排出を遅らせ、胃の感覚機能を調節し(特に脂肪に反応して)、食事誘発性の一過性下部食道括約筋弛緩(TLESR)の速度を増加させ、小腸および結腸通過に影響を及ぼす。
【0011】
CCK1アンタゴニストであるロキシグルミドおよびデキシロキシグルミド(dexloxiglumide)は、胃排出におけるCCKの生理的効果を逆転させ、空気拡張および脂肪投入によって誘発される消化不良症状を減少させる能力を実証している。たとえば、ロキシグルミドは、健康な被験者の液体および固体の胃排出において外因性および内因性CCK誘発性遅延の両方を低下させた(Borovickaら、Am J Physiol.1996、271:448−453;Schwizerら、Gut.1997、41(4):500−504)。デキシロキシグルミドは、十二指腸脂質投入に反応したCCK放出から生じる水分量に対する低下した耐性を逆行させた;効果は、最初は胃排出が促進されることによる、胃内容積の減少によるものであった(Lalら、Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2004,287(1):72−79)。脂肪の十二指腸投入によって近接した胃の弛緩が健康な被験者で生じた場合、ロキシグルミドによってCCK放出の強力な刺激である弛緩が逆転される(Feinleら、Gastroenterology 1996,110(5):1379−1385)。また、消化不良症状が混合流動食の十二指腸内投入によって健康な被験者において実験的に誘発された後、ロキシグルミドは、消化不良症状の発生において役割を演じると仮定される洞−幽門十二指腸運動障害を調節した(Katschinskiら、Eur J Clin Invest。1996、26(7):574−583)。ロキシグルミドはまた、脂質の十二指腸投入が膨満および吐き気などの感覚を誘発した後、健康な被験者の胃内圧の低下を逆転させることができた(Feinleら、1996を参照)。
【0012】
非潰瘍性消化不良および胃排出遅延の患者において、ロキシグルミドは、プラセボと比較して、胃排出を促進することが明らかにされた(Chua AS、Bekkering Mら、1994)。ロキシグルミドは、8週間の実験において、非潰瘍性消化不良の患者において消化不良症状を有意に改善した(Chuaら、Ann N Y Acad Sci.1994、713:298−299)。機能性消化不良の患者におけるもう1つの研究において、バルーン拡張有りまたは無しでの脂質の十二指腸投入によって、吐き気、膨満、不快感、鼓脹および痛みの悪化が生じた;デキシロキシグルミドは、プラセボと比較して、消化不良症状スコアを有意に改善した(Feinleら、Gut.2001、48(3):347−355)。
【0013】
胃腸障害における胃酸分泌をコントロールするためのCCK−Bアンタゴニストおよびプロトンポンプインヒビターを含む医薬組成物が、文献に記載されている(WO04/098610、WO04/101533、WO04/098609、WO03/041714、WO01/90078、WO01/85724、WO01/85723、WO01/85704、WO01/85167およびWO93/12817を参照)。CCK−B受容体は、脳においてCCK生物作用を媒介し、胃酸分泌の数種の調節因子の1つである。しかし、胃排出および食道括約筋作用などの末梢組織におけるCCK生物作用を媒介するのは、CCK1受容体である。
【0014】
さらに、食道運動障害を改善するためのPPIと、たとえばロキシグルミドなどの第2作用剤との併用療法が、胃食道逆流症の可能な治療として開示されている(Toniniら、Drugs 2004、64(4):347−361)。国際出願番号PCT/EP2004/050936およびPCT/EP2005/050336もまた、プロトンポンプインヒビターと胃腸運動を変更する化合物との薬剤併用を開示する。両方の国際出願は、デキシロキシグルミドが、過敏性腸症候群(IBS)またはGERDの治療に有用であるかもしれず、胃腸運動を変更するのに用いてもよいことを開示する。
【0015】
しかし、胃腸障害に伴う消化不良症状に対する認可された治療はない。さらに、現在の消化管治療が、うまく消化不良症状を軽減しているという納得のいく証拠はない。GERDによる症候性胸焼けおよび/または逆流患者における制酸療法の有効性に対する有力な証拠はあるが、GERDにともなう消化不良症状に対する制酸療法の有効性の納得のいく証拠はない。実際、GERDに対してPPIで治療された患者の大部分が、消化不良症状を残したままであることが頻繁に観察される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
消化不良型の症状をともなう胃腸障害に対する現在の制酸治療の選択は、これらの疾患の複雑さに適切に取り組んでいないので、この患者集団の少なくとも多くの部分において有効であり、副作用のない治療の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の要約
本発明は、従来の制酸療法が全く効果を奏さない胃腸障害および関連障害を患っている患者の治療のためのコレシストキニン−1(CCK1)受容体アンタゴニストおよびCCK1受容体アンタゴニストとプロトンポンプインヒビター(PPI)との併用に関する。本発明は、CCK1アンタゴニストの臨床投与が、従来の制酸療法が全く効果を奏さない胃腸障害および関連障害を患っている患者の治療に有効であることを初めて記載する。さらに、これらの患者は、未解決の消化不良型症状において予期せぬ改善を実証している。
【0018】
1つの実施態様において、本発明は、従来の制酸療法が全く効果を奏さない患者に、胃腸障害を治療するのに有効な量で、CCK1受容体アンタゴニストを投与することを含む、胃腸障害の治療方法に関する。たとえば、治療される対象は、従来の制酸療法が全く効果を奏せず、GERD(胃食道逆流症)、びらんを伴うGERD、NERD(非びらん性逆流症)、PUD(消化性潰瘍)、FD(非潰瘍性消化不良とも言われる機能性消化不良)、糖尿病性胃不全麻痺、夜間の胸焼け、胸焼け、鼓脹、胃腸潰瘍、ゾリンジャー・エリソン症候群および洞G細胞過形成を患っている。
【0019】
もう1つの実施態様において、本発明は、(i)CCK1受容体アンタゴニスト;および(ii)医薬的に許容しうる担体または賦形剤を含む、従来の制酸療法が全く効果を奏さない患者の胃腸障害を治療するための医薬組成物に関し、ここで、CCK1受容体アンタゴニストは、医薬的有効量で存在する。
【0020】
もう1つの実施態様において、本発明は、このような治療を必要とする患者に、第1量のCCK1受容体アンタゴニストおよび第2量のプロトンポンプインヒビター(PPI)を投与することを含む、胃腸障害の治療方法に関し、組み合わせての第1量および第2量は、胃腸障害に由来する少なくとも1つの症状を改善するのに有効である。
【0021】
もう1つの実施態様において、本発明は、(i)CCK1受容体アンタゴニスト;(ii)プロトンポンプインヒビター(PPI);および(iii)医薬的に許容しうる担体または賦形剤を含む、従来の制酸療法が全く効果を奏さない患者の胃腸障害を治療するための医薬組成物に関し、ここで、CCK1受容体アンタゴニストは、医薬的有効量で存在する。
【0022】
発明の詳細な記載
本発明は、従来の制酸療法が全く効果を奏さない胃腸障害および関連障害を患っている患者の治療のためのコレシストキニン−1(CCK1)受容体アンタゴニストおよびCCK1受容体アンタゴニストとプロトンポンプインヒビター(PPI)との併用に関する。好ましくは、CCK1受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプインヒビターは、併用した場合の治療的に有効な量で投与され、有利な効果を提供する。
【0023】
少なくとも10種のCCK1受容体アンタゴニストが現在入手可能である(D’Amatoら、Exp.Opin.Invest.Drugs 1997、6(7):819−836)。アミノ酸誘導体であるCCK受容体アンタゴニスト、プログルミドは、Rotta Research Laboratorium SpAによって20年以上前に発見された。しかし、それは、作用が弱く、特異性が低い(この化合物は、CCK2受容体にも効率的に結合する)。最近になって合成されたグルタミン酸誘導体であるロルグルミドおよびロキシグルミドは(両方ともRotta Research Laboratorium SpAから)は、強力でCCK1受容体の特異的競合的アンタゴニストである。それらは、経口投与後に活性であり、内因性および外因性CCKの両方の効果をアンタゴナイズすることができる。これらの選択的CCK1受容体アンタゴニストは、消化管運動を増進するのに有効である。
【0024】
ロキシグルミドの(R)−異性体である、デキシロキシグルミド(R−4−(3,4−ジクロロベンゾイルアミノ)−5−(N−3−メトキシプロピル−ペンチルアミノ)−5−オキソ−ペンタン酸)は、抗CCK活性が(R)体に存在するので、ラセミ化合物の約2倍強力である(D’Amatoら、1997を参照)。デキシロキシグルミドは、Rotta Research Laboratorium SpAによって、胃腸運動、食物摂取および膵臓疾患などのCCK受容体活性が潜在的に関与する疾患の治療ために開発された(Vargaら、Curr.Opin.Investig.Drugs 2002、3(4):621−626)。前臨床および臨床試験の両方からの結果は、デキシロキシグルミドが、胆嚢収縮の有効なインヒビターであり、下部食道括約筋(LES)機能を改善し、胃排出を促進し、結腸通過を促進し、その結果、胃腸および関連障害に対する有効な治療として潜在能力を有することを示している(Scarpignatoら、J.Physiol.Paris 1993、87(5):291−300;See D’Amatoら、1997;Feinieら、Gut 2001、48(3):347−355)。
【0025】
定義
他に特記しない限り、以下の定義は、本明細書および請求の範囲を通して適用される。これらの定義は、用語がそれ自体で用いられるか、他の用語と組み合わせて用いられるかに関わらず、適用される。したがって、「アルキル」の定義は、「アルキル」ならびに「アルコキシ」の「アルキル」部分に適用される。
【0026】
「アルコキシ」は、アルキル−O−基を意味する;適当なアルコキシ基の非限定的例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシおよびブトキシが挙げられる。アルキル基は、エーテル酸素を介して隣接する部分に連結される。
【0027】
式(I)で示される化合物は、ラセミ混合物または本発明の範囲内のエナンチオマー的に純粋な化合物として投与することができる。
式(I)で示される化合物は、これもまた本発明の範囲内である塩および溶媒和物を形成することができる。
【0028】
「溶媒和物」は、本発明化合物と1つ以上の溶媒分子との物理的結合を意味する。この物理的結合は、種々の程度のイオン結合および水素結合を含む。本発明化合物の溶媒和物も、本発明の範囲内に企図される。本明細書中における式(I)で示される化合物への言及は、他に特記しない限り、その塩および溶媒和物への言及も含むと理解される。
【0029】
本明細書の意義の範囲内で、用語「内蔵」は、たとえば、心臓、肝臓、腸などの体幹内に位置する臓器を意味するためにその最も広い意味で用いられる。
【0030】
用語「腸運動(gut motility)」、「胃運動(gastric motility)」、「消化管運動(GI motility)」および「腸運動(intestinal motility)」は、一般的に消化管の蠕動運動を称するために同じ意味で用いられる。さらに詳しくは、これらの用語は、腸を通して腸内容物を推し進める腸の平滑筋の収縮を称するためにも用いられる(「蠕動」と称されるプロセス)。
【0031】
本明細書において、活性成分に適用される用語「併用」は、本発明の両薬剤(すなわち、CCK1受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプインヒビター)を含む単一の医薬組成物(製剤)またはそれぞれ本発明の単一の薬剤(すなわち、CCK1受容体アンタゴニストまたはプロトンポンプインヒビター)を含み、一緒に投与される2つの別々の医薬組成物(製剤)を定義するために用いられる。
【0032】
本発明の意義の範囲内で、「一緒に投与される」は、1つの組成物として同時に、または別の組成物として同時にあるいは連続して、CCK1受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプインヒビターを投与することを称するために用いられる。「一緒に」とみなされる連続的投与のためには、CCK1受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプインヒビターは、胃腸または関連障害にともなう哺乳動物の胃運動性障害の発症を治療、予防、停止、遅延するため、および/またはその発病の危険性を減少するための、結果として起こる有利な効果を可能にする時間間隔によって投与されなければならない。たとえば、本発明の意義の範囲内で、CCK1受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプインヒビターは、同じ日(たとえば、1日1回または2回)に、好ましくは互いに1時間以内に、最も好ましくは同時に投与することができる。
【0033】
本明細書において、用語「治療すること」は、患者の疾患の少なくとも1つの症状を軽減、緩和、遅延、削減または予防することを意味するために用いられる。たとえば、胃腸障害に関して、用語「治療する」は、胃壁の伸展増加、内臓壁圧の増加、急激な腹痛、大腸炎、鈍痛、腹痛、便秘、下痢、吐き気、嘔吐、便意、テネスムス、血便などの症状(これらに限定されるものではない)の少なくとも1つを軽減または緩和することを意味する。本発明の意義の範囲内で、用語「治療する」は、発病(すなわち、疾患の臨床徴候前の期間)を停止、遅延すること、および/または疾患の進行または悪化の危険を低下することも意味する。
【0034】
たとえば、本明細書に開示するように、プロトンポンプインヒビターと併用でのCCK1受容体アンタゴニストの予防的投与は、胃腸障害の進行の危険から受容する被験者を保護することができる。同様に、本発明にしたがって、プロトンポンプインヒビターと併用でのCCK1受容体アンタゴニストの治療的投与は、臨床症状の進行の減速または症状の逆行さえも、もたらすことができる。
【0035】
本発明の意義の範囲内において、用語「プロトンポンプインヒビター」は、水素−カリウム アデノシン三リン酸酵素系の機能を抑制して、胃および腸における酸の放出を減少することができる化合物を称するために用いられる。H−K ATPアーゼ(プロトンポンプ)のインヒビターは、不可逆的または可逆的に酵素に結合することができる。プロトンポンプインヒビター(プロトンポンプインヒビター)として称される作用剤は、典型的に、不可逆的インヒビターを包含する。最も一般的に知られている不可逆的プロトンポンプインヒビターとして、オメプラゾール(商品名:ロセク(登録商標)、プリロセク(登録商標))、ランソプラゾール(商品名:プレバシド(登録商標)、ゾトン(登録商標))、エソメプラゾール(商品名:ネキシウム(登録商標))、パントプラゾール(商品名:プロトニクス(登録商標)、ソマク(登録商標))およびラベプラゾール(商品名:アシフェックス(登録商標)、パリエット(登録商標))が挙げられる。これらの不可逆的プロトンポンプインヒビターは、ベンゾイミダゾールとピリジン環との間に位置するスルフィニル基を含む。中性のpHにおいて、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールおよびパントプラゾールは、化学的に安定であり、脂溶性であり、阻害活性を欠いているにもかかわらず、酸性pHにおいて、これらの化合物は、転位して、スルフェン酸およびスルフェンアミドを形成する。これらの形成された化学種は、酵素のスルフヒドリル基と相互作用する能力があり、不可逆的阻害を提供する。
【0036】
可逆的インヒビターは、酸ポンプアンタゴニスト(APA)とも称される。APAは、それらがH−K ATPアーゼを阻害する方法において、上記の古典的なプロトンポンプインヒビターとは相違する。たとえば、酸誘導変換は、活性化にとって必要ではなく、酵素動力学は、典型的に、APAに対する酵素への可逆的結合を示す。適当なAPAの例として、CS−526(三共)、AZD0865(アストラゼネカ)、ソラプラザン(Altana AG)挙げられるが、これらに限定されるものではない。他のAPAは、Sachsら、米国特許第6,132,768号に記載されている。この記載は、全体として参照することにより本発明に援用される。
【0037】
したがって、本発明の意義の範囲内において、用語「プロトンポンプインヒビター」は、不可逆的または可逆的インヒビターのいずれかとして作用して、H−K ATPアーゼ活性を抑制することができるすべての化合物を包含する。
【0038】
用語「コレシストキニン−1(CCK1)受容体アンタゴニスト」または「CCK1受容体アンタゴニスト薬」は、CCK1受容体の正常な機能を抑制することができる化合物を称するために用いられる。このような本発明のCCK1受容体アンタゴニスト薬は、グルタミン酸の誘導体、最も好ましくはデキシロキシグルミドなどの(R) 5
【0039】
本発明のCCK1受容体アンタゴニストは、グルタミン酸、すなわち、5−ペンチルアミノ−5−オキソペンタン酸誘導体である。これらの誘導体およびその製造方法は、米国特許第4,769,389、4,880,938および5,130,474号に開示されている。この記載は、全体として参照することにより本発明に援用される。本発明のグルタミン酸誘導体は、一般式(I):

I
[式中、R1は、2−ナフチル、3,4−ジクロロフェニルおよび3,4−ジメチルフェニルから選ばれる;
R2は、ペンチル基または4個の炭素原子を有するアルコキシアルキル基である]
、およびその医薬的に許容しうる塩によって表すことができる。
【0040】
本発明化合物は、式(I)で示される化合物のエナンチオマー、水和物および混合物を包含する。たとえば、式(I)において星印を付けたキラル中心上の置換基は、R(レクタス)またはR,S(レクタス,シニスター)立体配座を有する。中心のキラル基上の置換基が、R(レクタス)立体配座であるのが好ましい。
【0041】
本発明のCCK1受容体アンタゴニストの例として、
デキシロキシグルミド (R−4−(3,4−ジクロロベンゾイルアミノ)−5−(N−3−メトキシプロピル−ペンチルアミノ)−5−オキソ−ペンタン酸);
ロキシグルミド (R,S−4−(3,4−ジクロロベンゾイルアミノ)−5−(N−3−メトキシプロピル−ペンチルアミノ)−5−オキソ−ペンタン酸);
ロルグルミド (R,S−4−[(3,4−ジクロロベンゾイル)アミノ]−5−(ジペンチルアミノ)−5−オキソペンタン酸);
アミグルミド ((R)−4−(2−ナフタミド)−N,N−ジペンチルグルタミン酸);
ならびにその多形、溶媒和物、医薬的に許容しうる塩および混合物;
が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本明細書に挙げる薬物の種々の塩および異性体(立体異性体およびエナンチオマーを含む)を用いることができる。塩または異性体の性質は、重要な意味をもつものではない。ただし、非毒性であり、実質的に所望の薬理学的活性を妨げない。
【0043】
たとえば、医薬的に許容しうる塩基付加塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミンなどの金属またはアミンと形成される。カチオンとして用いることができる金属の例として、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。適当なアミンの例として、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミンおよびN−メチルグルカミンが挙げられる。
【0044】
本明細書で用いる、用量または量に適用される用語「治療的に有効な」は、投与を必要とする哺乳動物への投与において所望の活性をもたらすのに十分である化合物または医薬組成物の量を意味する。さらに詳しくは、用語「治療的に有効な」は、胃腸障害の少なくとも1つの症状を減少または排除するのに十分である化合物または医薬組成物の量を意味する。
【0045】
本発明組成物に関連して用いる、語句「医薬的に許容しうる」は、哺乳動物(たとえば、ヒトなど)に投与する場合に、生理的に耐えられ、典型的に有害反応を生み出さない分子的実体およびこのような組成物の他の成分を意味する。好ましくは、本明細書で用いる用語「医薬的に許容しうる」は、哺乳動物、さらに詳しくは、ヒトにおける使用のために、連邦の規制機関もしくは州政府によって承認されたもの、または米国薬局方もしくは他の一般に認められた薬局方に記載されたものを意味する。
【0046】
本発明の医薬組成物に適用される、用語「担体」は、活性化合物がそれとともに投与される希釈剤、賦形剤またはビヒクルを意味する。このような医薬的担体は、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、および動物油,落花生油,大豆油,鉱物油,胡麻油といったような石油、植物油もしくは合成油などの油などの滅菌液でありうる。適当な医薬的賦形剤として、結合剤(たとえば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(たとえば、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトールおよび他の還元および非還元糖、微結晶セルロース、硫酸カルシウムまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウムなど);崩壊剤(たとえば、ジャガイモデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムまたは架橋ポビドン);または湿潤剤(たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム)、着色および香味剤、ゼラチン、甘味料、天然および合成ゴム(アラビアゴムなど、トラガカントゴムまたはアルギン酸塩)、緩衝塩、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス、不活性担体(たとえば、エタノール、グリセロール、水)、懸濁剤(たとえば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水添食用脂)、乳化剤(たとえば、レシチンまたはアラビアゴム)、非水性ビヒクル(たとえば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画植物油)、保存剤(たとえば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)なども挙げられる。他の例として、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、E.W.Martin、18th Editionを参照。これは、全体として参照することにより本発明に援用される
【0047】
本発明の活性剤は、従来の非毒性の医薬的に許容しうる担体を含む用量単位製剤として、経口、局所、非経口または経粘膜(たとえば、口腔または直腸)で投与することができる。好ましい実施態様において、本発明の活性剤は、経口投与することができる。たとえば、活性剤は、カプセル剤または錠剤の剤形で経口投与することができる(Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack 5 Publishing Co.、Easton、PAを参照)。経口投与用医薬は、拡散律速システム、浸透圧デバイス、溶解律速マトリックスおよび浸食性/崩壊性マトリックスなどの放出を調整した製剤またはデバイスの剤形で投与することができる。
【0048】
錠剤またはカプセル剤の剤形として経口投与するために、活性薬物成分は、結合剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤、着色および香味剤、ゼラチン、甘味料、天然および合成ゴム、緩衝塩、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールおよびワックスなどの非毒性の医薬的に許容しうる賦形剤と組み合わせることができる。液体剤形として経口投与するために、薬物成分は、非毒性の医薬的に許容しうる不活性担体、懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクルおよび保存剤と組み合わせることができる。投与剤形を安定化するために、抗酸化剤などの安定化剤(たとえば、BHA、BHT、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウムおよびクエン酸)を加えることもできる。
【0049】
液体製剤のために、経口投与は、たとえば、溶液剤、シロップ剤、乳液剤または懸濁液剤の剤形をとることができ、あるいは、使用前に水または他の適当なビヒクルで戻して用いる乾燥生成物とすることができる。経口投与用製剤は、活性化合物の制御または遅延放出を提供するように適当に製剤することができる。
【0050】
活性薬物は、小単層ベシクル、大単層ベシクルおよび多層ベシクルなどのリポソームデリバリーシステムの剤形で投与することもできる。周知の通り、リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの種々のリン脂質から形成することができる。
【0051】
活性薬物に、標的を定めることができる担体として可溶性ポリマーを加えてもよい。このようなポリマーとして、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルタミドフェノールまたはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリシンを挙げることができる。
【0052】
さらに、活性薬物に、たとえば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ酪酸とポリグリコール酸の共重合体、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびハイドロゲルの架橋または両親媒性ブロック共重合体などの薬物の制御放出を達成するのに有用な生分解性ポリマーを加えてもよい。
【0053】
本発明の製剤は、たとえば、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)、皮下(s.d.)または皮内(i.d.)投与によって、直接注射により、たとえば、ボーラス注射または継続的注入を介するなどの非経口でデリバリーすることができる。注射用製剤は、たとえば、保存剤を添加して、アンプル、複数回投与容器に入れて、などの単位投与剤形で提供することができる。組成物は、賦形剤、懸濁剤、溶液剤または油性もしくは水性ビヒクル中の乳液剤などの剤形をとることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤用作用剤を含むことができる。別法として、活性成分はたとえば、滅菌した発熱物質を含まない水などの適当なビヒクルで、使用前に戻すための粉末形態であることができる。
【0054】
本明細書に開示するように、プロトンポンプインヒビターおよびCCK1受容体アンタゴニストは、医薬的に許容することができ、活性成分と適合する賦形剤と混合することができる。さらに、必要に応じて、製剤は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤および/または医薬組成物の有効性を増強する作用剤などの少量の補助物質を含んでもよい。
【0055】
本発明の活性剤は、たとえば、1日2または3回といったように分割して投与してもよいが、1日1回投与が好ましく、1つの組成物中、あるいは同時に投与される2つの別の組成物中に、両方の作用剤を、単回1日投与量を含むようにするのが最も好ましい。
【0056】
本発明は、医薬的に許容しうる担体および/または賦形剤とともに、CCK1受容体アンタゴニストおよび/またはプロトンポンプインヒビターを含む医薬組成物の製造方法も包含する。
【0057】
本発明の単位用量で用いてもよいプロトンポンプインヒビターの好ましい特定量として、たとえば、約1〜60 mg、好ましくは約5〜50 mgおよびより好ましくは約10〜40 mgが挙げられる。本発明の単位用量で用いてもよいCCK1受容体アンタゴニストの好ましい特定量として、たとえば、約10〜1000 mg、好ましくは約50〜600 mgおよびより好ましくは約100〜400 mgが挙げられる。
【0058】
本発明はまた、本発明製剤の1つ以上の成分を入れた1つ以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。関連する実施態様において、本発明は、第1の容器にCCK1受容体アンタゴニスト、第2の容器にプロトンポンプインヒビターを含み、任意に、2つの薬物の混合用、および/または医薬組成物の投与用の説明書を含む、本発明医薬組成物の製造用キットを提供する。該キットの各容器は、任意に、1つ以上の生理的に許容しうる担体および/または賦形剤および/または補助物質を含んでもよい。このような容器は、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された書式による通告に従うものであり、該通告は、ヒトへの投与のための製造、使用または販売に関する該機関による承認を反映する。
【0059】
組成物は、必要に応じて、活性成分を含む1つ以上の単位投与剤形を含むパックまたはディスペンサーデバイスに入れて提供してもよい。パックは、たとえば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチック箔を含んでもよい。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与用説明書を添付してもよい。適合しうる医薬的担体中に製剤された本発明組成物は、製造し、適切な容器に入れ、適応症の治療のためにラベル付けしてもよい。
【0060】
本発明組成物は、放出調整製剤で投与してもよい。放出調整製剤は、患者のコンプライアンスを改善する手段および医薬品副作用の発生率を低下させることによる効果的で安全な療法を確実にする手段を提供する。速放性投与剤形と比べて、放出調整投与剤形は、投与後の薬理作用を延長するのに用いることができ、薬剤の投与間隔にわたって薬物の血漿濃度のばらつきを減少することによって鋭いピークを除去または減少することができる。
【0061】
放出調整投与剤形の大部分は、薬物でコーティングされるか、または薬物を含有するコアを含む。コアは、薬物が分散している放出調整ポリマーでコーティングされてもよい。次いで、放出調整ポリマーは、徐々に崩壊し、長期間にわたって薬物を放出する。したがって、組成物が水性環境、すなわち、消化管に曝されるときに、組成物の最も外層が効率的に減速することによって、コーティング層を横切る薬物の拡散が調節される。薬物の拡散の正味速度は、主として、胃液のコーティング層またはマトリックスを貫通する能力および薬物自体の溶解度に従属する。
【0062】
本発明の方法にしたがって、治療的に有効な用量で、好ましくは最小の毒性を有する量で、医薬組成物を患者に投与する。プロトンポンプインヒビターおよびCCK1受容体アンタゴニストが、それぞれ、併せたときに、増強された効果、最も好ましくは各作用剤単独の投与で見られない効果を提供する用量で用いられるのが好ましい。
【0063】
CCK1受容体アンタゴニストまたはPPIの効力は、CCK1受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプインヒビターの両方が治療的に有効であることが見出され、これらの薬物がヒトの臨床試験に提案される同じ経路によって投与されうることが見出された、小動物モデル(たとえば、ラット)を用いる前臨床試験において決定された。
【0064】
本発明方法に用いる医薬組成物のいずれについても、治療的に有効な用量は、動物モデルから最初に評価して、IC50(すなわち、最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度の範囲を達成することができる。次いで、動物システムから誘導された用量−反応曲線を用いて、ヒトにおける最初の臨床試験のための試験用量を決定する。各組成物の安全性の決定において、用量および投与頻度は、臨床試験に用いるために想定された用量に適うか、または超えるべきである。
【0065】
本明細書に開示するように、本発明組成物中のCCK1受容体アンタゴニストの用量は、継続的または断続的に投与される用量が、実験動物および患者の健康状態における結果の考慮後に決定された量を超えないことを確実にするように決定される。特定の用量は、当然のことながら、量的手順、年齢、体重、性別、感受性、食事、投与期間、併用薬物、疾患の重篤度などの患者または被検動物の条件に応じて変化する(医師の判断および各患者の環境についての判断によって最終的に決定される)。たとえば、CCK1受容体アンタゴニストの適切な用量は、一般に、約1〜約20 mg/体重kgの範囲である。
【0066】
本発明組成物の毒性および治療効力は、実験動物における標準の薬学的手順、たとえば、LD50(集団の50%が死亡する用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することによって決定することができる。治療効果と毒性作用の間の用量比が、治療指数であり、ED50/LD50の比で表すことができる。治療指数の大きい組成物が、好ましい。
【0067】
動物実験から得られたデータを用いて、ヒトにおける使用のための用量範囲を作成することができる。ヒトに用いる誘導体の用量は、毒性が少ないかまたは無いED50を包含する循環濃度の範囲内にあるのが好ましい。用量は、使用する投与剤形および利用する投与経路に応じて、この範囲内において変化することができる。
【0068】
本発明の薬物の併用は、相対的に低用量で有効性が高いばかりでなく、毒性が低く、副作用が少ない。事実、CCK1受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプインヒビターの使用がもたらす最も一般的な副作用は、軽い一過性の吐き気、下痢、腹痛、倦怠感および食欲増加である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下の実施例は、本発明の説明に過ぎず、決して本発明の範囲を限定すると解釈すべきではなく、本発明に包含される多くの変形物および等価物が、本明細書の開示を読むことにより当業者にとって明らかになるであろう。
【実施例】
【0070】
前臨床研究
ラットの急性逆流性食道炎における効果
試験前に、体重175−200 gの雄性ラットを24時間絶食させる。水は、自由に取らせる。エーテル麻酔下、腹部を正中切開し、幽門および境界縁(噴門洞と胃体の間の遷移領域)を同時に結索する。その結果として、胃液を保持するための胃の総容量は、大きく減少し、食道への胃液の逆流が起こる。幽門および境界縁の結索に続いて、試験化合物を十二指腸内に投与し(5 ml/kg)、腹部を縫合して閉じる。3時間後、エーテルの過剰投与によりラットを屠殺し、胃食道部分を摘出する。次の基準にしたがう病変インデックスを用いて、胸部食道における病変を肉眼で得点化する:病変なし 0;浮腫 1;発赤 2;出血部の長さ<20 mm 3;出血部の長さ20−30 mm 4;出血部の長さ30−40 mm 5;出血部の長さ>40 mmまたは穿孔 6。
【0071】
食道病変を50%減少させる試験化合物の用量(ED50)およびそのP=0.05信頼限界を、用量−反応回帰直線から計算する。得られる結果を表1に示す。
【0072】
表1:幽門結索ラットの急性逆流性食道炎におけるデキシロキシグルミド、オメプラゾールおよびその併用処置の保護効果

【0073】
別々に投与されたデキシロキシグルミドおよびオメプラゾールの計算された保護効果は、それぞれ、37.5 mg/kgおよび5.4 mg/kgである。2つの化合物の併用処置は、保護効果を増大させる。併用処置に対して計算されたED50は、それぞれ、デキシロキシグルミド+オメプラゾール(0.3 mg/kg)について、14.4 mg/kgおよびデキシロキシグルミド+オメプラゾール(1 mg/kg)について、9.8 mg/kgである。
【0074】
平均して、併用処置は、審査した薬物の両方に対して、効力を相乗的に増大させる。たとえば、20 mg/kg デキシロキシグルミド+1 mg/kg オメプラゾールの併用処置は、予測された32%(等価の別の実験で得られる結果、すなわち、17.2および14.3%の保護効果の合計)に対して80%の保護効果を生み出す。
【0075】
臨床研究
消化不良症状の軽減におけるデキシロキシグルミドの安全性および効力
消化不良症状の軽減におけるデキシロキシグルミドの安全性および効力を評価するために、我々は、機能性消化不良(FD)の病歴をもち、先立つ12ヶ月の間に少なくとも4週間にわたって適切な用量のPPIを投与された男性および女性患者において、プラセボを対照とした二重盲検試験を行うことを提案する。プロトンポンプインヒビター(PPI)で適切に処置されながらもFDの症状を持ち続ける患者のみが、参加する資格がある。下記の概要は、実験をさらに詳細に説明する。
【0076】
8週間処置、前向き、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、単回投与、パラレルグループ、マルチセンター研究を行って、プロトンポンプインヒビターで処置されている患者の消化不良症状の軽減のためのデキシロキシグルミド 300 mg b.i.d.の安全性および効力を調査する。年齢18歳以上の男性および女性計200人の患者(100人/処置グループ)をこの8週間処置、前向き、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、単回投与、パラレルグループ、マルチセンター研究に参加させる。参加するために、患者は、消化不良症状の適切な軽減を経験することなく、先立つ12ヶ月の間に適切な量のPPIを4週間以上受けていなければならず、食道胃十二指腸内視鏡検査(EGD)における食道または胃粘膜病変の内視鏡的形跡がなく、6ヶ月以上存在するFD症状(痛み/上腹部を中心とする不快感、早期満腹感、膨満感、上腹部鼓脹、吐き気、嘔吐または悪心およびげっぷまたはおくび)を有さなければならない。馴らし期間に入るに際して、すべての患者は、彼らの制酸療法をエソメプラゾール40 mg PO 1日1回 毎日(q.d.)に標準化し、4〜6週間の馴らし期間および8週間の二重盲検処置期間を通して、この処方計画を継続する。
【0077】
患者は、最初に、4〜6週間の馴らし期間に入り、その間、電子手帳を用いて彼らの消化不良症状ならびに胸焼け、逆流、夜間胸焼けおよび夜間逆流の頻度および重篤度を記録する。消化不良/FD症状が、胸焼け症状(PPI処置にもかかわらず、もし存在するならば)よりも優勢であることを確実にするために、胸焼けおよび酸逆流も2週間の馴らし期間中、毎日評価する。ベースラインにおける患者の不定期の胸焼け症状の描写から、適切なPPI療法にもかかわらず残存しているこれらの症状の軽減に対するデキシロキシグルミドの潜在的効力を評価することもできる。無作為化にとって適格であるために、馴らし期間中に胸焼けおよび逆流を報告している患者は、彼らの胸焼けおよび逆流が、彼らの消化不良症状よりも重篤度および頻度が低いものであることを実証しなければならない。
【0078】
馴らし期間の最後に、前もって指定された消化不良症状の頻度および重篤度の基準(すなわち、毎週少なくとも2日間「関連性のある」または「重篤な」と評価される少なくとも2つの消化不良症状)を満たしている患者を、300 mg b.i.d.の用量でデキシロキシグルミドまたはプラセボを8週間投与するために1:1に無作為化する。このように、消化不良症状、特に機能性消化不良(FD)の軽減におけるデキシロキシグルミドの安全性および効力を評価する。
【0079】
本発明は、例示的実施態様を参照して表現され、記載されているが、このような参照は、本発明の制限を含意するものではなく、このような制限が推測されるべきではない。本開示から利益を受ける関連技術における当業者には明らかなように、本発明は、形態および機能において、著しい変更、改変をすることができ、等価物がありうる。したがって、本発明は、すべての態様における等価に対する全面的な認識を与える添付の請求の範囲の精神および範囲によってのみ限定されることを意図される。本明細書に引用した全ての参考文献は、全体として参照することにより本発明に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)コレシストキニン−1受容体アンタゴニスト;(ii)プロトンポンプインヒビター(PPI);および(iii)医薬的に許容しうる担体または賦形剤を含む胃腸障害を治療するための医薬組成物であって、コレシストキニン−1受容体アンタゴニストが、医薬的有効量で存在する医薬組成物。
【請求項2】
コレシストキニン−1受容体アンタゴニストが、約10〜約1000 mgの用量で存在し、プロトンポンプインヒビターが、約1〜約60 mgの用量で存在する請求項1に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2013−6858(P2013−6858A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194326(P2012−194326)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2009−514781(P2009−514781)の分割
【原出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(598105824)ロッタファルム・ソシエタ・ペル・アチオニ (18)
【氏名又は名称原語表記】ROTTAPHARM S.p.A.
【Fターム(参考)】