胃腸障害処置用プロスタグランジン誘導体
【課題】ヒト対象における胃腸障害を長期間処置する方法の提供。
【解決手段】有効量のハロゲン化プロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体を対象に投与することを含む、ヒト対象における胃腸障害を長期間処置する方法。該方法は、処置の期間、実質的に電解質シフトを惹起しない。使用される化合物は、胃腸障害を有するヒト対象のQOLを改善することができ、男性および女性対象の処置において同様に有効であり、そして、65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象においても有効である。
【解決手段】有効量のハロゲン化プロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体を対象に投与することを含む、ヒト対象における胃腸障害を長期間処置する方法。該方法は、処置の期間、実質的に電解質シフトを惹起しない。使用される化合物は、胃腸障害を有するヒト対象のQOLを改善することができ、男性および女性対象の処置において同様に有効であり、そして、65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象においても有効である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト対象の胃腸障害の長期間処置のための方法および組成物に関する。
本発明は、男性および女性の両方のヒト対象の胃腸障害の処置のための方法および組成物にも関する。
【0002】
本発明は、さらに、65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害の処置のための方法および組成物に関する。
さらに、本発明は、胃腸障害を有するヒト対象のQOL(quality of life)を改善するための、方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
便秘は一般に便通の回数が少なく便通に困難を伴うこととして定義される。医学的報告によると、米国において50人に1人が便秘をわずらっていると評価されており、便秘は米国人の中で最も一般的な障害の1つである。男性より女性のほうが便秘になりやすく、高年齢になるほど便秘になりやすいようであり、65歳を超えると指数関数的に増加することが示されている。実際、便秘は報告されている以上に起こっているようであり、専門化の治療を求めることなく家庭において多くの個人が便秘に苦しんでいる。
【0004】
便秘は閉塞により引き起こされる場合もあるが、ほとんどの便秘は、可溶性および不溶性繊維の少ない食事、運動不足、薬物の使用(特に、オピエート鎮痛薬、抗コリン抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、およびビンカアルカロイド)、腸障害、神経筋障害、代謝障害、低腹圧または筋無緊張症などの因子に関連付けられる。
【0005】
便秘を厳密に定量的に定義するのは困難である。というのは、「正常な」腸習慣と認識される範囲が広く、便秘には様々な症状および兆候が伴うからである。FDAは偶発的便秘には規範的な処置が必要であることを認識している。
【0006】
プロスタグランジン類(以後PG(類)として示す)はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の一群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】
【0007】
PG類は5員環部分の構造と置換基によって、例えば以下のようにいくつかのタイプに分類される:
プロスタグランジンA類(PGA類);
【化2】
プロスタグランジンB類(PGB類);
【化3】
プロスタグランジンC類(PGC類);
【化4】
プロスタグランジンD類(PGD類);
【化5】
プロスタグランジンE類(PGE類);
【化6】
プロスタグランジンF類(PGF類);
【化7】
等に分類される。さらにPG類は、13,14−二重結合を含むPG1類;5,6−および13,14−二重結合を含むPG2類;そして5,6−、13,14−および17,18−二重結合を含むPG3類に分類される。PG類が種々の薬理学的、生理的活性を有することは知られており、例えば、血管拡張、起炎作用、血小板凝集作用、子宮筋刺激作用、腸管筋刺激作用、抗潰瘍作用などが知られている。ヒトの胃腸(GI)系において産生される主なプロスタグランジン類は、E、IおよびF類のものである(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109: 285-301 (1995))。
【0008】
正常な生理条件下で、内因的に産生されたプロスタグランジン類はGI機能の維持に主要な役割を果たし、これには腸管運動および輸送の調節、便の硬さの調節が含まれる(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981);Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109:285- 285-301 (1995); Robert、Adv Prostagrandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976); Main、et al.、Postgrad Med J、64 Suppl 1: 3-6 (1988); Sanders、Am J Physiol、247: G117 (1984); Pairet、et al.、Am J Physiol.、250 (3 pt 1): G302-G308 (1986); Gaginella、Textbook of Secretory Diarrhea 15-30 (Raven Press、1990))。薬理学的用量投与した場合、PGE2とPGF2αはともに腸管輸送を刺激し、下痢を引き起こすことが示された(Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Robert、Adv Prostagrandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976))。さらに、消化性潰瘍疾患の処置のために開発されたPGE1アナログであるミソプロストールの最も一般的に報告されている副作用は下痢である(Monk、et al.、Drugs 33 (1): 1-30 (1997))。
【0009】
PGEまたはPGFは腸を刺激し、腸管収縮を引き起こすことができるが、エンテロプーリング作用は弱い。したがって、PGE類またはPGF類を下剤として使用するのは、腸管収縮によって起こる腹痛などの副作用のために不可能である。
【0010】
腸神経応答の調節、平滑筋収縮の変化、粘膜分泌の刺激、細胞イオン輸送(ionic)(特に起電性Cl−輸送)の刺激および腸管内容量の増加を含む多数の機構がプロスタグランジン類のGI効果に寄与していると報告されている(Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostaglandins: Biology and Chemistry of Prostaglandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109: 285-301 (1995); Robert、Adv Prostaglandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976); Main、et al.、Postgrad Med J、64 Suppl 1: 3-6 (1988); Sanders、Am J Physiol、247: G117 (1984); Pairet、et al.、Am J Physiol、250 (3 pt 1): G302-G308 (1986); Gaginella、Textbook of Secretory Diarrhea 15-30 (Raven Press、1990); Federal Register Vol. 50、No. 10 (GPO,1985); Pierce、et al.、Gastroenterology 60 (1): 22-32 (1971); Beubler、et al.、Gastroenterology、90: 1972 (1986); Clarke、et al.、Am J Physiol 259: G62 (1990); Hunt、et al.、J Vet Pharmacol Ther、8 (2): 165-173 (1985); Dajani、et al.、Eur J Pharmacol、34(1): 105-113 (1975); Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management 1451-1471 (WB Saunders Company、1998))。プロスタグランジン類は、さらに細胞保護効果を有することが示された(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Robert、Adv Prostaglandin Thromboxane Res 2:507-520 (1976); Wallace、et al.、Aiiment Pharmacol Ther 9: 227-235 (1995))。
【0011】
上野らの米国特許第5317032号は、二環式互変異性体の存在を含むプロスタグランジンアナログの下剤について記載しており、上野らの米国特許第6414016号は、抗便秘薬として顕著な活性を有する該二環式互変異性体について記載している。C−16位において、1または複数のハロゲン原子、とりわけフッ素原子によって置換されているプロスタグランジンアナログである該二環式互変異性体は、低用量で便秘の緩和のために使用することができる。
【0012】
上野らの米国特許公開第2003/0130352号は、プロスタグランジン化合物が、クロライドチャンネル、とりわけClCチャンネル、さらにとりわけ、ClC−2チャンネルをオープンし、活性化することを記載している。
【0013】
上野らの米国特許公開第2003/0119898号は、便秘の処置および予防のためのハロゲン化されたプロスタグランジンアナログの特定の組成物を記載している。
【0014】
上野らの米国特許公開第2004/0138308号は、クロライドチャンネルオープナー、とりわけプロスタグランジン化合物が、腹部不快感の処置、並びに過敏性腸症候群および機能性消化不良等の機能性胃腸障害の処置のために使用できることを記載している。
【0015】
MiraLax(登録商標)(ポリエチレングリコール3350、溶液用NF粉末)は、平均分子量3350の合成ポリグリコールであり、偶発的便秘に使用される。この製剤は、基本的に2週間までの間使用される。長期の、頻繁な、もしくは過剰なMiraLax(登録商標)の使用は、電解質平衡異常および下剤への依存をもたらし得る(MiraLax(登録商標)添付文書)。MiraLax(登録商標)は浸透圧性薬剤として機能し、消化管腔において平衡異常を作りだし、液体を浸透圧的に管腔へ引き出す。増加した液体のレベルは、便を軟らかくし、排便を促進する。
【0016】
同様に、前述のClC−2クロライドチャンネルアクチベーターは、消化管腔へのクロライド分泌を刺激することによって機能し、水を浸透圧メカニズムを介して管腔へ引き出すことで排便を促進すると信じられている。特定のプロスタグランジン化合物は、イオンチャンネルアクチベーターであり、MiraLax(登録商標)と同様に、浸透圧の様式で、本質的に作用すると信じられているので、該プロスタグランジン化合物の長期使用は、また、MiraLax(登録商標)で見られる不利益を有するであろうと予想するであろう。従って、その使用は、実際には、MiraLax(登録商標)と同様に、数週間に制限されるであろう。
【0017】
ゼルノーム(登録商標)(マレイン酸テガセロッド)は、主要な腸症状が便秘である、過敏性腸症候群(IBS)を有する女性における短期間処置に適用がある。288名の男性を登録した2つの無作為化、プラセボ対照、二重盲検試験では、プラセボとゼルノーム(登録商標)の奏功率に、有意差はなかった。便秘を有するIBSの男性におけるゼルノーム(登録商標)の安全性および有効性は確立されていない。さらに、65歳およびそれ以上の年齢の患者についてのサブグループ解析では、プラセボに対するゼルノーム(登録商標)の有意な処置効果は示されなかった。すなわち、65歳およびそれ以上の年齢の、慢性特発性便秘を有する患者におけるゼルノーム(登録商標)の有効性は、確立されていない。さらに、患者がゼルノーム(登録商標)の服用を中止した場合、症状は1または2週間以内に元に戻り得る(ゼルノーム(登録商標)添付文書)。
【発明の開示】
【0018】
発明の概要
本質的に浸透圧の作用メカニズムであるにもかかわらず、発明者らは、驚くべきことに、ヒト患者への長期間にわたる特定のハロゲン化プロスタグランジン化合物の使用において、電解質シフトがないことを見出した。
【0019】
発明者らは、また、長期間処置においてハロゲン化プロスタグランジン化合物が有効であり、該化合物の長期間処置ですら、その中止の後にリバンド効果が実質的に見られないことを見出した。
【0020】
さらに、発明者らは、ハロゲン化プロスタグランジン化合物が胃腸障害を有する患者のQOLを改善し、男性および女性のヒト患者、そして65歳およびそれ以上の年齢の患者の処置において同様に有効であることを見出した。
【0021】
すなわち、本発明は、有効量の式(I)で表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体:
【化8】
(式中、W1およびW2は、
【化9】
であり;
R3およびR4は水素であり;または、それらのうちの一方がOH、他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つがハロゲンであり;
R2は水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和C2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、またはアリールオキシによって置換された、飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13およびC−14位間の結合が二重結合または単結合であり、そしてC−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
を、それを必要とする対象に投与することを含む、ヒト対象における胃腸障害の長期間処置のための方法を提供する。
【0022】
本発明は、また、有効量の式(I)により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体を、それを必要とする対象に投与することを含む、男性ヒト対象、または65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害の処置のための方法を提供する。
【0023】
本発明は、さらに、有効量の式(I)で表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体を、それを必要とする対象に投与することを含む、胃腸障害を有するヒト対象のQOLを改善させる方法を提供する。
【0024】
本発明の方法のそれぞれの実施態様において、PG化合物の1日の総投与量は、好ましくは6−96μgであり得る。
【0025】
本発明の方法は、上記に特定されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体を含む医薬組成物を処置される患者に投与することによって実施され得る。したがって、本発明の他の態様において、(i)有効量の式(I)により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、そして(ii)医薬的に好適な賦形剤を含む、ヒト対象の胃腸障害を長期間処置するための医薬組成物が提供される。
【0026】
さらに、本発明は、(i)有効量の式(I)により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、そして(ii)医薬的に好適な賦形剤を含む、男性および女性の両方の患者、または65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害の処置のための医薬組成物を提供する。
【0027】
本発明は、よりさらに、(i)有効量の式(I)により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、そして(ii)医薬的に好適な賦形剤を含む、胃腸障害を有するヒト対象のQOLの改善のための医薬組成物を提供する。
【0028】
本発明の他の態様において、上記で定義される医薬組成物の製造のための式(I)により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の使用が提供される。
【0029】
図の簡単な説明
図1は、6ヶ月処置の間の便秘の重症度を示すグラフである。
図2は、12ヶ月処置の間の便秘の重症度を示すグラフである。
図3は、6ヶ月処置の間の腹部膨満を示すグラフである。
図4は、12ヶ月処置の間の腹部膨満を示すグラフである。
図5は、6ヶ月処置の間の腹部不快感を示すグラフである。
図6は、12ヶ月処置の間の腹部不快感を示すグラフである。
図7は、1週当たりの排便に対する効果を示すグラフである。
図8は、腹部膨満に対する効果を示すグラフである。
図9は、腹部不快感に対する効果を示すグラフである。
図10は、便秘の重症度に対する効果を示すグラフである。
図11は、いきみに対する効果を示すグラフである。
図12は、硬さに対する効果を示すグラフである。
図13は、排便における、男性vs女性患者に対する効果を示すグラフである。
図14は、排便における年齢による効果を示すグラフである。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明において、「有効量」は、年齢、体重、処置される患者の状態、望まれる治療効果、投与経路、処置期間等に基づいて決定され得る。本発明によれば、投与されるプロスタグランジン化合物の量は、1日当たり、0.001-1000μg/kg体重、より好ましくは、0.01-100μg/kg体重、そして、最も好ましくは, 0.1-10μg/kg体重であり得る。投与の頻度は、1日当たり1またはそれ以上の回数、好ましくは、1日当たり2またはそれ以上の回数であり得る。患者に対する典型的な投与量は、約6−96μg/日である。本明細書および特許請求の範囲によれば、投与量または用量は、約60kgの体重の患者に基づいて決定される。
【0031】
本明細書で用いられるように、測定単位と共に用いられるとき、用語「約」は、+/−30%、好ましくは+/−20%、そしてとりわけ+/−10%として定義される。例えば、約6−96μgの1日の総投与量は、好ましくは、5.4−105.6μgの範囲を意味する。好ましい投与量は、約6−72μgの範囲である。より好ましい実施態様において、投与量は、約6−60μgの範囲である。例えば、該ハロゲン化化合物の投与量は、約8−48μgであり得る。
【0032】
(i)式(I)のプロスタグランジン化合物
本発明は、式(I):
【化10】
(式中、W1およびW2は、
【化11】
であり;
R3およびR4は水素であり;または、それらのうちの一方がOHであり、そして他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、アリールまたはアリールオキシにより置換された、飽和または不飽和の、直鎖、分岐鎖または環形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13およびC−14位の間の結合は、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置は、R、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物を利用する。
【0033】
上記式において、用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子を含むために使用される。とりわけ好ましい、X1およびX2のためのハロゲン原子は、フッ素原子である。
【0034】
R1およびYの定義における用語「不飽和」は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間に孤立して、分離してまたは連続して存在する、少なくとも1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を含むことを意図している。通常の命名法に従って、2つの連続した位置の間の不飽和結合は、2つの位置の低い数を表示することによって表され、2つの遠位の間の不飽和結合は、その両方の位置を表示することによって表される。
【0035】
明細書および特許請求の範囲を通して、用語「低級」は、他に明記されていない限り、1乃至6個の炭素原子を有する基を含むことを意図する。
【0036】
用語「環」は、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシを言う。
【0037】
用語「低級アルキル」は、1乃至6個の炭素原子を含む、直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素基を言い、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0038】
用語「低級アルコキシ」は、低級アルキルが上記で定義される、低級アルキル−O−の基を言う。
【0039】
用語「低級アルカノイルオキシ」は、RCO−が、上記で定義される低級アルキル基の酸化により形成されるアシル基である、アセチル等の、式RCO−O−により表される基を言う。
【0040】
用語「低級シクロアルキル」は、上記で定義されるが、3またはそれ以上の炭素原子を含む低級アルキル基の環化により形成される環状基を言い、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0041】
用語「低級シクロアルキルオキシ」は、低級シクロアルキルが上記で定義される、低級シクロアルキル−O−の基を言う。
【0042】
用語「アリール」は、非置換または置換された芳香族炭素環式またはヘテロ環式の基(好ましくは、単環式の基)を言い、例えば、フェニル、ナフチル、トリル、キシリル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノ、インドリル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、プリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナントリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾリニル、ベンゾチアゾリルおよびフェノチアジニルである。置換基の例は、ハロゲン原子および低級アルキルが上記で定義される、ハロゲン原子およびハロ(低級)アルキルである。
【0043】
用語「アリールオキシ」は、Arが上記で定義されるアリールである、式ArO−により表される基を言う。
【0044】
用語Aの「機能性誘導体」は、塩(好ましくは、医薬的に許容され得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0045】
好適な「医薬的に許容され得る塩」は、慣用される非毒性塩、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩等、の無機塩基との塩;または、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等、の有機塩基との塩を含む。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0046】
エーテルの例は、アルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;およびオクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;フェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルを含む。
【0047】
エステルの例は、脂肪族エステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステル;および、例えばフエニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフエニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフエニルエステル、ベンズアミドフエニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;およびベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルを含む。
【0048】
Aのアミドは、式−CONR’R’’で表される基を意味する。ここで、R’およびR’’はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキルあるいはアリールスルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニルであり、例えば、メチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド、アニリドおよびトルイジド等のアリールアミド、メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミドおよびトリルスルホニルアミド等のアルキルもしくはアリールスルホニルアミド等を含む。
【0049】
Yの例としては、例えば、以下の基:
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
-CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−O−CH2−、
−CH2−C≡C−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、および
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−
を含む。
【0050】
さらに、Yの脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は、場合により酸素、窒素または硫黄により置換される。
【0051】
好ましいAは、−COOH、その医薬的に許容され得る塩、またはエステルである。
好ましいX1およびX2は、共にハロゲン原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。
好ましいW1は=Oである。
好ましいW2は、
【化12】
(式中R3およびR4は共に水素原子である)である。
好ましいYは、6−8個の炭素原子を有する非置換の、飽和または不飽和炭化水素鎖である。
【0052】
好ましいR1は、1−6個の炭素原子、より好ましくは、1−4の炭素原子を含む炭化水素である。R1は、1個の炭素原子を有する1または2の側鎖を有し得る。
R2は、好ましくは水素である。
【0053】
最も好ましい実施態様は、Aが−COOHであり;Yが(CH2)6であり;W1が=Oであり;W2が
【化13】
(式中、R3およびR4は、共に水素である)であり;R2は水素であり;X1およびX2はフッ素であり;そして、R1は(CH2)3CH3またはCH2CH(CH3)CH2CH3である、式(I)のプロスタグランジン化合物である。
【0054】
本発明の活性物質または式(I)のPG化合物は、固体状態で二環式化合物として存在するが、溶媒に溶解すると、該化合物の一部は、互変異性体を形成する。水非存在下では、式(I)で表される化合物は、主に二環構造の形態で存在する。水性媒体中では、水素結合は、水分子と、例えば、C−15位のケト部分との間に形成され、それにより二環式の環形成が妨げられると信じられている。さらに、C−16位のハロゲン原子は、二環式の環形成を促進すると信じられている。C−11位のヒドロキシとC−15位のケト部分との互変異性は、以下に示すように、13,14単結合およびC−16位で2個のフッ素原子を有する化合物の場合とりわけ重要である。
【0055】
従って、本発明は、ハロゲン化プロスタグランジン化合物の異性体を含み得る。例えば、C−15位にケト基を有し、C−16位にハロゲン原子を有する単環式互変異体は、以下に示される。
【化14】
【0056】
単環式形態の、本発明による好ましい化合物は、従来のプロスタグランジン命名法によれば、13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ-PGE1として名付けることができる。
【0057】
(ii)医薬的に好適な賦形剤
本発明によれば、医薬組成物は、いずれかの形態で製剤化され得る。医薬的に好適な賦形剤は、従って、組成物の望まれる形態に依存して選択され得る。本発明によれば、「医薬的に好適な賦形剤」は、本発明の活性成分と混合されて、望まれる形態の調製に適する、不活性物質を意味する。
【0058】
例えば、本発明の経口投与のための固体組成物は、錠剤、調合液、顆粒等を含み得る。係る固体組成物においては、1またはそれ以上の活性成分は、少なくとも1つの不活性な希釈剤、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、マグネシウム アルミン酸メタケイ酸(magnesium aluminate metasilicate)等と混合され得る。通常の後処理に従って、組成物は不活性な希釈剤以外の添加物、例えば、ステアリン酸マグネシウムのような滑剤;線維性グルコン酸カルシウムのような崩壊剤;シクロデキストリン、例えば、α、β−またはγ−シクロデキストリンのような安定化剤;ジメチル−α−, ジメチル−β−, トリメチル−β−またはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのようなエーテル化シクロデキストリン;グルコシル−、マルトシル−シクロデキストリンのような分岐鎖シクロデキストリン;ホルミル化シクロデキストリン、硫黄含有シクロデキストリン;リン脂質等を含み得る。上記シクロデキストリンを使用したとき、シクロデキストリンとの包接化合物が形成され、安定性を増強し得ることもある。あるいは、リン脂質がリポソームを形成するために使用されることもあり、その結果安定性が増強される。
【0059】
錠剤または丸薬は、必要とされれば、糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の、胃または腸で可溶なフィルムで被覆され得る。さらに、それらは、ゼラチンのような吸収可能な物質でカプセルとして形成され得る。好ましくは、組成物は、ハロゲン化プロスタグランジン化合物および中鎖脂肪酸トリグリセリドの液体内容物をソフトゼラチンカプセル中に製剤化される。本発明で使用される中鎖脂肪酸トリグリセリドの例は、側鎖を有し得る6−14個の炭素原子を有する、飽和または不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含む。好ましい脂肪酸は、直鎖飽和脂肪酸であり、例えば、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)およびミリスチン酸(C14)である。さらに、2またはそれ以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドが、組み合わされて使用され得る。さらに、好適な賦形剤は、発行されたPCT出願WO01/27099に開示される。
【0060】
経口投与のための液体組成物は、一般的に使用される不活性な希釈剤を含む乳液、溶液、懸濁液、シロップ、またはエリキシルの形態であり得る。このような組成物は、不活性な希釈剤に加えて、滑剤、甘味剤、香味剤、保存剤、可溶化剤、抗酸化剤等のような添加物を含み得る。添加物は、医薬分野のいずれかの一般的な教科書に記載されているものから選択され得る。このような液体組成物は、直接ソフトカプセル内に充填され得る。本発明の組成物は、坐薬、または浣腸等であり得る。例えば、それらは、滅菌水性の、または非水性の溶液、懸濁液および乳液等の形態であり得る。水性の溶液、懸濁液、または乳液のための賦形剤の例には、例えば、蒸留水、生理食塩水およびリンゲル液が含まれ得る。
【0061】
非水性の溶液、懸濁液または乳液のための賦形剤の例には、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪酸トリグリセリド、オリーブ油等のベジタブルオイル、エタノール等のアルコール、ポリソルベート等を含み得る。このような組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、抗酸化剤等の添加物を含み得る。
【0062】
本発明によれば、医薬組成物は、非経口または経口のいずれかの投与用であることができ、経口適用組成物が好ましい。実施例において、活性成分は、好ましくは、中鎖脂肪酸トリグリセリドに溶解され、カプセルに充填される。
【0063】
本発明の方法によれば、本発明の組成物は、坐薬、浣腸等を用いる非経口投与を含む、経口投与または非経口投与の手段によって、全身性に、または局所的に投与され得る。本発明の組成物は、1日に1乃至数回投与され得る。
【0064】
好ましくは、本発明のプロスタグランジン化合物の1日の総投与量は、約6-96μgの範囲であり、より好ましくは、約6-72μg、よりさらに好ましくは、約6-60μg、そして特に8-48μgである。投与量は、医師の判断で、患者の年齢、体重、症状、治療効果、投与経路、処置期間等によって、いくらか変わり得る。
【0065】
用語「実質的に電解質シフトがない」は、本明細書において、処置期間の電解質平衡異常が既知の電解質平衡異常惹起剤よりも非常に少ないことを意味する。さらに、用語「実質的に電解質シフトがない」は、臨床医が、臨床的に正常範囲であると理解できるような処置される患者の血清電解質レベルを言う。上記に記載されるように、便秘の処置に用いられるMiraLax(登録商標)は、電解質平衡異常を惹起することがあり、その結果、他のことの中でも、危険な心臓の問題をもたらし得る。一方、以下の実施例に示されるように、本発明で使用されるプロスタグランジン化合物は、長期間にわたって投与されても、実質的に電解質シフトを惹起しない。
【0066】
以下の実施例は、また、本発明の医薬組成物が、組成物の長期にわたる処置を中止した後に、実質的にリバンドの便秘または他の不都合を惹起しないことを示す。従って、結果として、本発明の組成物は、長期間処置に有用であることができる。
【0067】
さらに、便秘およびIBSの両方の患者のQOLの評価は、本組成物が該患者のQOLを改善したことを見出した。
【0068】
本発明によれば、本発明の組成物は胃腸障害の長期間処置に有用である。男性および女性患者において、それは同様に有効である。さらに、65歳およびそれ以上の年齢の患者の処置において、それは有用である。
【0069】
本発明で使用される「胃腸障害」は、例えば、限定はされないが、急性または慢性の便秘、過敏性腸症候群および機能性消化不良等の機能性胃腸障害、胃潰瘍、大腸または小腸潰瘍、および腹部不快感を含む。
【0070】
処置される便秘のタイプに含まれるのは、特に限定はされないが、弛緩性便秘(relaxing constipation)、けいれん性便秘、直腸性便秘、および手術後腸閉塞等の機能性便秘;腸疾患を原因とする器質性便秘、および手術後の癒着による狭窄;そして、オピオイド等の薬剤により惹起される便秘である。
【0071】
便秘の緩解または予防に加えて、本発明の組成物は、ヘルニアまたは心血管障害を有する患者が排便時いきむことを防ぐため、または肛門直腸疾患を有する患者の便を軟らかくするために用いられ得る。さらに、本発明の組成物は、内視鏡検査のための、または大腸内視鏡検査、バリウム浣腸X線および静脈性腎盂造影、並びに毒素排除のための緊急胃腸洗浄等の緊急処置等の診断または手術処置のための、準備における消化管洗浄に用いられ得る。従って、本発明は、本発明の組成物が、それを必要とする、ヒト男性対象または65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象の消化管洗浄に用いられる実施態様を包含する。
【0072】
本明細書で使用される用語「処置」は、症状の予防、治療、緩解、症状の抑制、および進行の阻止等の制御のいずれかの手段を含む。本明細書で使用される用語「長期間処置」は、少なくとも2週間化合物を投与することを意味する。化合物は、処置の全期間にわたり毎日、または数日に1回の間隔で投与されることができる。
【0073】
本発明が提供する実施態様の例には下記(1)〜(63)が含まれる。
(1)ヒト対象における胃腸障害を長期間処置するための方法であって、必要とする対象に式(I):
【化15】
(式中、W1およびW2は、
【化16】
であり;
R3およびR4は、水素であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の有効量を投与することを含む方法。
(2)該プロスタグランジン化合物が、式(I)の単環式互変異性体である、(1)に記載の方法。
(3)投与される該プロスタグランジン化合物の量が、約6−96μg/日の範囲内にある、(1)に記載の方法。
(4)投与される該プロスタグランジン化合物の量が、約6−72μg/日の範囲内にある、(1)に記載の方法。
(5)投与される該プロスタグランジン化合物の量が、約6−60μg/日の範囲内にある、(1)に記載の方法。
(6)投与される該プロスタグランジン化合物の量が、約8−48μg/日の範囲内にある、(1)に記載の方法。
(7)プロスタグランジン化合物が経口で投与される、(1)に記載の方法。
(8)該プロスタグランジン化合物が、賦形剤として油性溶媒とともに投与される、(7)に記載の方法。
(9)該油性溶媒が中鎖脂肪酸である、(8)に記載の方法。
(10)Aが−COOHであり;Yが(CH2)6であり;W1が=Oであり;W2が
【化17】
(R3およびR4は共に水素原子)であり;R2が水素原子であり;X1およびX2がフッ素原子であり;そして、R1が(CH2)3CH3である、(1)に記載の方法。
(11)該胃腸障害が、便秘、過敏性腸症候群および機能性消化不良からなる群から選択される、(1)に記載の方法。
(12)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも2週間投与される、(1)に記載の方法。
(13)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも3週間投与される、(1)に記載の方法。
(14)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも4週間投与される、(1)に記載の方法。
(15)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも2ヶ月間投与される、(1)に記載の方法。
(16)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも6ヶ月間投与される、(1)に記載の方法。
(17)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも1年間投与される、(1)に記載の方法。
(18)該プロスタグランジン化合物が慢性的に投与される、(1)に記載の方法。
(19)男性ヒト対象における胃腸障害を処置するための方法であって、必要とする男性対象に式(I):
【化18】
(式中、W1およびW2は、
【化19】
であり;
R3およびR4は、水素であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の有効量を投与することを含む方法。
(20)65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害を処置するための方法であって、必要とする65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象に式(I):
【化20】
(式中、W1およびW2は、
【化21】
であり;
R3およびR4は、水素であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の有効量を投与することを含む方法。
(21)胃腸障害を有するヒト対象のQOLを改善するための方法であって、対象に式(I):
【化22】
(式中、W1およびW2は、
【化23】
であり;
R3およびR4は、水素であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の有効量を投与することを含む方法。
(22)ヒト対象における胃腸障害の長期間処置用組成物であって、
(i)有効量の式(I):
【化24】
(式中、W1およびW2は、
【化25】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、および
(ii)医薬的に許容され得る賦形剤、
を含む組成物。
(23)該プロスタグランジン化合物が、式(I)の単環式互変異性体である、(22)に記載の組成物。
(24)約6−96μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化された、(22)に記載の組成物。
(25)約6−72μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化された、(22)に記載の組成物。
(26)約6−60μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化された、(22)に記載の組成物。
(27)約8−48μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化された、(22)に記載の組成物。
(28)経口投与される、(22)に記載の組成物。
(29)医薬的に許容され得る賦形剤が油性溶媒である、(28)に記載の組成物。
(30)該油性溶媒が中鎖脂肪酸である、(29)に記載の組成物。
(31)Aが−COOHであり;Yが(CH2)6であり;W1が=Oであり;W2が
【化26】
(R3およびR4は共に水素原子)であり;R2が水素原子であり;X1およびX2がフッ素原子であり;そして、R1が(CH2)3CH3である、(22)に記載の組成物。
(32)該胃腸障害が、便秘、過敏性腸症候群および機能性消化不良からなる群から選択される、(22)に記載の組成物。
(33)少なくとも2週間投与される、(22)に記載の組成物。
(34)少なくとも3週間投与される、(22)に記載の組成物。
(35)少なくとも4週間投与される、(22)に記載の組成物。
(36)少なくとも2ヶ月間投与される、(22)に記載の組成物。
(37)少なくとも6ヶ月間投与される、(22)に記載の組成物。
(38)少なくとも1年間投与される、(22)に記載の組成物。
(39)慢性的に投与される、(22)に記載の組成物。
(40)男性および女性の両方のヒト対象における胃腸障害の処置用組成物であって、
(i)有効量の式(I):
【化27】
(式中、W1およびW2は、
【化28】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、および
(ii)医薬的に好適な賦形剤、
を含む組成物。
(41)65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害の処置用組成物であって、
(i)有効量の式(I):
【化29】
(式中、W1およびW2は、
【化30】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、および
(ii)医薬的に好適な賦形剤、
を含む組成物。
(42)胃腸障害を有するヒト対象におけるQOL改善用組成物であって、
(i)有効量の式(I):
【化31】
(式中、W1およびW2は、
【化32】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、および
(ii)医薬的に好適な賦形剤、
を含む組成物。
(43)必要とする患者に投与される、ヒト対象における胃腸障害の長期間処置用医薬組成物を製造するための、式(I):
【化33】
(式中、W1およびW2は、
【化34】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の使用。
(44)該プロスタグランジン化合物が式(I)の単環式互変異性体である、(43)に記載の使用。
(45)組成物が、約6−96μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化される、(43)に記載の使用。
(46)組成物が、約6−72μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化される、(43)に記載の使用。
(47)組成物が、約6−60μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化される、(43)に記載の使用。
(48)組成物が、約8−48μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化される、(43)に記載の使用。
(49)組成物が経口で投与される、(43)に記載の使用。
(50)組成物が、賦形剤として油性溶媒をさらに含む、(49)に記載の組成物。
(51)該油性溶媒が中鎖脂肪酸である、(50)に記載の使用。
(52)Aが−COOHであり;Yが(CH2)6であり;W1が=Oであり;W2が
【化35】
(R3およびR4は共に水素原子)であり;R2が水素原子であり;X1およびX2がフッ素原子であり;そして、R1が(CH2)3CH3である、(43)に記載の使用。
(53)該胃腸障害が、便秘、過敏性腸症候群および機能性消化不良からなる群から選択される、(43)に記載の使用。
(54)組成物が、少なくとも2週間投与される、(43)に記載の使用。
(55)組成物が、少なくとも3週間投与される、(43)に記載の使用。
(56)組成物が、少なくとも4週間投与される、(43)に記載の使用。
(57)組成物が、少なくとも2ヶ月間投与される、(43)に記載の使用。
(58)組成物が、少なくとも6ヶ月間投与される、(43)に記載の使用。
(59)組成物が、少なくとも1年間投与される、(43)に記載の使用。
(60)組成物が慢性的に投与される、(43)に記載の使用。
(61)必要とする対象に投与される、男性および女性の両方のヒト対象における胃腸障害の処置用医薬組成物の製造のための、式(I):
【化36】
(式中、W1およびW2は、
【化37】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の使用。
(62)必要とする対象に投与される、65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害の処置用医薬組成物の製造のための、式(I):
【化38】
(式中、W1およびW2は、
【化39】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の使用。
(63)必要とする対象に投与される、胃腸障害を有するヒト対象におけるQOL改善用医薬組成物の製造のための、式(I):
【化40】
(式中、W1およびW2は、
【化41】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の使用。
【0074】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、これはこの発明を限定するものではない。
【実施例】
【0075】
実施例1
(方法)
偶発的便秘を有する患者に24週(6ヶ月)または48週(12ヶ月)毎日投与されるときの、化合物A(13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)48μg(化合物Aの24μg、1日2回)の安全性を評価するために、多施設、非盲検試験を実施した。少なくとも3ヶ月の間の慢性便秘の病歴(1週当たり3SBMより少ない)、そして、硬い便、不完全な排便、いきみ等の少なくとも1つの関連症状を示す患者を登録した。14日の薬物なしの洗浄期間の後、彼らに、48μgの化合物A(24μgの化合物A、1日2回)を経口で48週間与えた。
【0076】
本試験において、以下のパラメーターを評価した。
1)電解質バランス
患者(n=299)血清中のナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウムおよびリンのイオン濃度を、化合物A処置の開始前、および開始後6、12、18、24、30、36、48および50週で測定した。
電解質のパネルの実験室標準値を、中央実験室の正常参照範囲から用いた。
【0077】
2)便秘の重症度、3)腹部膨満、および4)腹部不快感
それぞれのパラメーター(便秘の重症度、腹部膨満、または腹部不快感)を、6ヶ月間(n=246)または12ヶ月間(n=304)処置の間の患者において、スケール:0(なし)、1(軽度)、2(中程度)、3(重度)および4(極めて重度)に基づき評価した。
【0078】
(結果)
1)電解質バランス
表1で示されるように、化合物Aによる処置は、患者の血清中のナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウムおよびリンのイオン濃度に影響を与えなかった。結果は、化合物Aが長期間投与にわたり実質的に電解質シフトを惹起しないことを示す。
【0079】
【表1】
【0080】
2)便秘の重症度(6および12ヶ月)、3)腹部膨満(6および12ヶ月)および4)腹部不快感(6および12ヶ月)を、それぞれ図1乃至図6に示した。
図1乃至6に示すように、化合物Aは6ヶ月および12ヶ月処置の間有効である。
【0081】
実施例2
(方法)
4週間の実薬処置(1日の総投与量48μg化合物A)および3週間の無作為化された使用中止期間の後の、全集団の一部における、処置後の応答を評価するために、多施設、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験を実施した。少なくとも6ヶ月の間の慢性便秘の病歴(1週当たり3SBMより少ない)、そして、硬い便、不完全な排便、いきみ等の少なくとも1つの関連症状を示す患者を登録した。14日の薬物なしの洗浄期間の後、彼らに、48μg(1日の総投与量)の化合物Aを28日間与え、続いて0μgまたは48μg(1日の総用量)の化合物Aを21日間与えた。
【0082】
本試験において、以下のパラメーターを評価した。
1)1週間当たりの排便
2)腹部膨満
3)腹部不快感
4)便秘の重症度
5)いきみ
6)硬さ
【0083】
それぞれのパラメーター(腹部膨満、腹部不快感、便秘の重症度、または、いきみ)をスケール:0(なし)、1(軽度)、2(中程度)、3(重度)および4(極めて重度)で、患者において評価した。硬さは、スケール:0(非常に緩い)、1(緩い)、2(正常)、3(硬い)および4(非常に硬い、小球)で評価した。
【0084】
(結果)
1)1週間当たりの排便、2)腹部膨満、3)腹部不快感、4)便秘の重症度、5)いきみ、6)硬さを図7乃至図12にそれぞれ示した。
図7乃至12に示すように、化合物Aの処置の中止後のリバウンド効果は、実質的に観察されず、化合物Aの効果は、処置を止めた後でさえ持続した。
この結果は、患者のQOLが、化合物Aの投与により改善されることを示す。
【0085】
実施例3
(方法)
過敏性腸症候群(IBS)を有する患者を、48μgの化合物A(24μgの化合物A、1日2回)で、48週間処置した。
本試験において、以下のパラメーターを評価した。
1)腹部不快感
2)腹部膨満
3)便秘の重症度
【0086】
腹部不快感および腹部膨満のそれぞれを、スケール:0(なし)、1(軽度)、2(中程度)、3(重度)および4(極めて重度)で、患者において評価した。便秘の重症度をスケール:0(非常に緩い)、1:(緩い)、2:(正常)、3:(硬い)、4:(非常に硬い)で、患者において評価した。
【0087】
(結果)
1)腹部不快感、2)腹部膨満、および3)便秘の重症度を、表2乃至表4に、それぞれ示した。
表2乃至4に示されるように、化合物Aは、IBS患者における12ヶ月処置の間有効である。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
実施例4
(方法)
男性および女性患者において、1週間の自発的な排便数に及ぼす化合物Aの効果を比較するために、多施設、並行群間、二重盲検、プラセボ対照試験を実施した。偶発的便秘を有する男性および女性患者に、48μg(1日の総投与量)の化合物A(24μgの化合物A、1日2回)を4週間与えた。患者の排便を処置の間記録した。
【0092】
(結果)
男性vs女性患者における1週間の自発的排便数に及ぼす48μgの化合物Aの効果を図13に示す。
図13に示されるように、化合物Aは、男性および女性の両方の患者に対し、有意に有効であった。男性および女性の患者における効果間に、有意な違いは無かった。
【0093】
実施例5
(方法)
偶発的便秘を有する相違する年齢の患者における、1週間の自発的な排便数の改善に及ぼす化合物Aの効果を比較するために、多施設、並行群間、二重盲検、プラセボ対照試験を実施した。患者に、48μg(1日の総投与量)の化合物A(24μgの化合物A、1日2回)を4週間与えた。患者の排便を処置の間記録した。
【0094】
(結果)
結果を図14に示す。図14に示されるように、化合物Aは、全ての年齢の群、そして、65歳およびそれ以上高齢の患者において有意に有効であった。
【0095】
実施例6
(方法)
偶発的便秘を有する対象に対する48μg(1日の総投与量)の化合物Aの安全性および有効性を評価するために、48週多施設試験を実施した。少なくとも3ヶ月の間の慢性便秘の病歴(1週当たり3SBMより少ない)、そして、硬い便、不完全な排便、いきみ等の少なくとも1つの関連症状を示す患者を登録した。14日の薬物なしの洗浄期間の後、彼らに、48μgの化合物A(24μgの化合物A、1日2回)を経口で48週間毎日与えた。
【0096】
対象は、医療結果試験(MOS)36項目略式用紙(SF−36)、すなわち、通常用いられたQOL評価用紙を、登録時(ベースライン)および処置の終了時(48週)に完成させた。MOS SF−36の要素(Med Care 30(6), 473-483, 2000)を、以下に概説する:
身体的要素:身体機能、日常役割機能(身体)(Role-Physical)、身体の痛み、および全体的健康感
精神的要素:活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)(Role-Emotional)、および心の健康
【0097】
8要素それぞれは、欠落変数の帰属に対する出版社のガイドラインを含む出版社のガイドライン内でスコア付けされた。処置の終了時(48週)での8要素のスコアーそれぞれにおけるベースラインからの変化を記録し、対応のあるt-検定で評価した。
【0098】
(結果)
表5に示されるように、8要素のスコアーのそれぞれにおいて、平均ベースラインスコアーは約47および52の間であり、対象集団が総じて健康であることを示す。48週でのそれぞれの要素のスコアーについてのベースラインからの平均変化は、少しの増加を示しており、それぞれのカテゴリーでの改善を示唆する。ゼロから有意に相違する改善は、身体機能、日常役割機能(身体)、身体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能および心の健康に対して、48週で観察された。
結果は、化合物Aが患者のQOLを改善することを示す。
【0099】
(結果)
【表5】
【0100】
実施例7
(方法)
過敏性腸症候群(IBS)を有する対象に対する、経口16μg、32μgおよび48μg(1日の総投与量)の化合物Aの安全性および有効性を評価するために、12週、二重盲検、無作為化試験を実施した。
患者は、ベースライン、試験の4週、12週、および終了時にIBS QOL質問書に回答し、質問結果をIBS QOL 使用者マニュアル(A Quality of Life Measure for Persons with Irritable Bowel Syndrome (IBS−QOL): User’s Manual and Scoring Diskette for United States Version. Seattle, Washington: University of Washington; 1997)に従って、スコアー付けした。スケール化されたスコアーを全ての解析に使用し、そして、スコアーを使用者マニュアルに従い、下記のように計算した:
スケール化されたスコアー=([IBS−QOL項目の総数−最も低い可能なスコアー]の和/可能な生スコアー範囲))X100
【0101】
試験の4週、12週、および終了時のベースラインからの変化を、平均総体的スコアーおよび平均領域スコアー(不快、活動の障害、ボディイメージ、健康不安、食物忌避、社会応答、性、および関係)のために評価した。
【0102】
(結果)
LOCF(Last observation carried forward)解析をせずに解析されたIBS−QOLスコアーのベースラインからの平均変化の概要を、表6乃至表8に示す。
これらのデータは、ベースラインからの変化が、全ての群において、ゼロから有意に相違したことを示した。概して、16μgの化合物A群は、全ての詳細な領域およびQOL全体において、全ての群のうち最もベースラインからの改善が示された。
【0103】
【表6】
【0104】
【表7】
【0105】
【表8】
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】6ヶ月処置の間の便秘の重症度を示すグラフである。
【図2】12ヶ月処置の間の便秘の重症度を示すグラフである。
【図3】6ヶ月処置の間の腹部膨満を示すグラフである。
【図4】12ヶ月処置の間の腹部膨満を示すグラフである。
【図5】6ヶ月処置の間の腹部不快感を示すグラフである。
【図6】12ヶ月処置の間の腹部不快感を示すグラフである。
【図7】1週当たりの排便に対する効果を示すグラフである。
【図8】腹部膨満に対する効果を示すグラフである。
【図9】腹部不快感に対する効果を示すグラフである。
【図10】便秘の重症度に対する効果を示すグラフである。
【図11】いきみに対する効果を示すグラフである。
【図12】硬さに対する効果を示すグラフである。
【図13】排便における、男性vs女性患者に対する効果を示すグラフである。
【図14】排便における年齢による効果を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト対象の胃腸障害の長期間処置のための方法および組成物に関する。
本発明は、男性および女性の両方のヒト対象の胃腸障害の処置のための方法および組成物にも関する。
【0002】
本発明は、さらに、65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害の処置のための方法および組成物に関する。
さらに、本発明は、胃腸障害を有するヒト対象のQOL(quality of life)を改善するための、方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
便秘は一般に便通の回数が少なく便通に困難を伴うこととして定義される。医学的報告によると、米国において50人に1人が便秘をわずらっていると評価されており、便秘は米国人の中で最も一般的な障害の1つである。男性より女性のほうが便秘になりやすく、高年齢になるほど便秘になりやすいようであり、65歳を超えると指数関数的に増加することが示されている。実際、便秘は報告されている以上に起こっているようであり、専門化の治療を求めることなく家庭において多くの個人が便秘に苦しんでいる。
【0004】
便秘は閉塞により引き起こされる場合もあるが、ほとんどの便秘は、可溶性および不溶性繊維の少ない食事、運動不足、薬物の使用(特に、オピエート鎮痛薬、抗コリン抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、およびビンカアルカロイド)、腸障害、神経筋障害、代謝障害、低腹圧または筋無緊張症などの因子に関連付けられる。
【0005】
便秘を厳密に定量的に定義するのは困難である。というのは、「正常な」腸習慣と認識される範囲が広く、便秘には様々な症状および兆候が伴うからである。FDAは偶発的便秘には規範的な処置が必要であることを認識している。
【0006】
プロスタグランジン類(以後PG(類)として示す)はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の一群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】
【0007】
PG類は5員環部分の構造と置換基によって、例えば以下のようにいくつかのタイプに分類される:
プロスタグランジンA類(PGA類);
【化2】
プロスタグランジンB類(PGB類);
【化3】
プロスタグランジンC類(PGC類);
【化4】
プロスタグランジンD類(PGD類);
【化5】
プロスタグランジンE類(PGE類);
【化6】
プロスタグランジンF類(PGF類);
【化7】
等に分類される。さらにPG類は、13,14−二重結合を含むPG1類;5,6−および13,14−二重結合を含むPG2類;そして5,6−、13,14−および17,18−二重結合を含むPG3類に分類される。PG類が種々の薬理学的、生理的活性を有することは知られており、例えば、血管拡張、起炎作用、血小板凝集作用、子宮筋刺激作用、腸管筋刺激作用、抗潰瘍作用などが知られている。ヒトの胃腸(GI)系において産生される主なプロスタグランジン類は、E、IおよびF類のものである(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109: 285-301 (1995))。
【0008】
正常な生理条件下で、内因的に産生されたプロスタグランジン類はGI機能の維持に主要な役割を果たし、これには腸管運動および輸送の調節、便の硬さの調節が含まれる(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981);Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109:285- 285-301 (1995); Robert、Adv Prostagrandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976); Main、et al.、Postgrad Med J、64 Suppl 1: 3-6 (1988); Sanders、Am J Physiol、247: G117 (1984); Pairet、et al.、Am J Physiol.、250 (3 pt 1): G302-G308 (1986); Gaginella、Textbook of Secretory Diarrhea 15-30 (Raven Press、1990))。薬理学的用量投与した場合、PGE2とPGF2αはともに腸管輸送を刺激し、下痢を引き起こすことが示された(Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Robert、Adv Prostagrandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976))。さらに、消化性潰瘍疾患の処置のために開発されたPGE1アナログであるミソプロストールの最も一般的に報告されている副作用は下痢である(Monk、et al.、Drugs 33 (1): 1-30 (1997))。
【0009】
PGEまたはPGFは腸を刺激し、腸管収縮を引き起こすことができるが、エンテロプーリング作用は弱い。したがって、PGE類またはPGF類を下剤として使用するのは、腸管収縮によって起こる腹痛などの副作用のために不可能である。
【0010】
腸神経応答の調節、平滑筋収縮の変化、粘膜分泌の刺激、細胞イオン輸送(ionic)(特に起電性Cl−輸送)の刺激および腸管内容量の増加を含む多数の機構がプロスタグランジン類のGI効果に寄与していると報告されている(Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostaglandins: Biology and Chemistry of Prostaglandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109: 285-301 (1995); Robert、Adv Prostaglandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976); Main、et al.、Postgrad Med J、64 Suppl 1: 3-6 (1988); Sanders、Am J Physiol、247: G117 (1984); Pairet、et al.、Am J Physiol、250 (3 pt 1): G302-G308 (1986); Gaginella、Textbook of Secretory Diarrhea 15-30 (Raven Press、1990); Federal Register Vol. 50、No. 10 (GPO,1985); Pierce、et al.、Gastroenterology 60 (1): 22-32 (1971); Beubler、et al.、Gastroenterology、90: 1972 (1986); Clarke、et al.、Am J Physiol 259: G62 (1990); Hunt、et al.、J Vet Pharmacol Ther、8 (2): 165-173 (1985); Dajani、et al.、Eur J Pharmacol、34(1): 105-113 (1975); Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management 1451-1471 (WB Saunders Company、1998))。プロスタグランジン類は、さらに細胞保護効果を有することが示された(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Robert、Adv Prostaglandin Thromboxane Res 2:507-520 (1976); Wallace、et al.、Aiiment Pharmacol Ther 9: 227-235 (1995))。
【0011】
上野らの米国特許第5317032号は、二環式互変異性体の存在を含むプロスタグランジンアナログの下剤について記載しており、上野らの米国特許第6414016号は、抗便秘薬として顕著な活性を有する該二環式互変異性体について記載している。C−16位において、1または複数のハロゲン原子、とりわけフッ素原子によって置換されているプロスタグランジンアナログである該二環式互変異性体は、低用量で便秘の緩和のために使用することができる。
【0012】
上野らの米国特許公開第2003/0130352号は、プロスタグランジン化合物が、クロライドチャンネル、とりわけClCチャンネル、さらにとりわけ、ClC−2チャンネルをオープンし、活性化することを記載している。
【0013】
上野らの米国特許公開第2003/0119898号は、便秘の処置および予防のためのハロゲン化されたプロスタグランジンアナログの特定の組成物を記載している。
【0014】
上野らの米国特許公開第2004/0138308号は、クロライドチャンネルオープナー、とりわけプロスタグランジン化合物が、腹部不快感の処置、並びに過敏性腸症候群および機能性消化不良等の機能性胃腸障害の処置のために使用できることを記載している。
【0015】
MiraLax(登録商標)(ポリエチレングリコール3350、溶液用NF粉末)は、平均分子量3350の合成ポリグリコールであり、偶発的便秘に使用される。この製剤は、基本的に2週間までの間使用される。長期の、頻繁な、もしくは過剰なMiraLax(登録商標)の使用は、電解質平衡異常および下剤への依存をもたらし得る(MiraLax(登録商標)添付文書)。MiraLax(登録商標)は浸透圧性薬剤として機能し、消化管腔において平衡異常を作りだし、液体を浸透圧的に管腔へ引き出す。増加した液体のレベルは、便を軟らかくし、排便を促進する。
【0016】
同様に、前述のClC−2クロライドチャンネルアクチベーターは、消化管腔へのクロライド分泌を刺激することによって機能し、水を浸透圧メカニズムを介して管腔へ引き出すことで排便を促進すると信じられている。特定のプロスタグランジン化合物は、イオンチャンネルアクチベーターであり、MiraLax(登録商標)と同様に、浸透圧の様式で、本質的に作用すると信じられているので、該プロスタグランジン化合物の長期使用は、また、MiraLax(登録商標)で見られる不利益を有するであろうと予想するであろう。従って、その使用は、実際には、MiraLax(登録商標)と同様に、数週間に制限されるであろう。
【0017】
ゼルノーム(登録商標)(マレイン酸テガセロッド)は、主要な腸症状が便秘である、過敏性腸症候群(IBS)を有する女性における短期間処置に適用がある。288名の男性を登録した2つの無作為化、プラセボ対照、二重盲検試験では、プラセボとゼルノーム(登録商標)の奏功率に、有意差はなかった。便秘を有するIBSの男性におけるゼルノーム(登録商標)の安全性および有効性は確立されていない。さらに、65歳およびそれ以上の年齢の患者についてのサブグループ解析では、プラセボに対するゼルノーム(登録商標)の有意な処置効果は示されなかった。すなわち、65歳およびそれ以上の年齢の、慢性特発性便秘を有する患者におけるゼルノーム(登録商標)の有効性は、確立されていない。さらに、患者がゼルノーム(登録商標)の服用を中止した場合、症状は1または2週間以内に元に戻り得る(ゼルノーム(登録商標)添付文書)。
【発明の開示】
【0018】
発明の概要
本質的に浸透圧の作用メカニズムであるにもかかわらず、発明者らは、驚くべきことに、ヒト患者への長期間にわたる特定のハロゲン化プロスタグランジン化合物の使用において、電解質シフトがないことを見出した。
【0019】
発明者らは、また、長期間処置においてハロゲン化プロスタグランジン化合物が有効であり、該化合物の長期間処置ですら、その中止の後にリバンド効果が実質的に見られないことを見出した。
【0020】
さらに、発明者らは、ハロゲン化プロスタグランジン化合物が胃腸障害を有する患者のQOLを改善し、男性および女性のヒト患者、そして65歳およびそれ以上の年齢の患者の処置において同様に有効であることを見出した。
【0021】
すなわち、本発明は、有効量の式(I)で表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体:
【化8】
(式中、W1およびW2は、
【化9】
であり;
R3およびR4は水素であり;または、それらのうちの一方がOH、他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つがハロゲンであり;
R2は水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和C2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、またはアリールオキシによって置換された、飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13およびC−14位間の結合が二重結合または単結合であり、そしてC−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
を、それを必要とする対象に投与することを含む、ヒト対象における胃腸障害の長期間処置のための方法を提供する。
【0022】
本発明は、また、有効量の式(I)により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体を、それを必要とする対象に投与することを含む、男性ヒト対象、または65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害の処置のための方法を提供する。
【0023】
本発明は、さらに、有効量の式(I)で表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体を、それを必要とする対象に投与することを含む、胃腸障害を有するヒト対象のQOLを改善させる方法を提供する。
【0024】
本発明の方法のそれぞれの実施態様において、PG化合物の1日の総投与量は、好ましくは6−96μgであり得る。
【0025】
本発明の方法は、上記に特定されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体を含む医薬組成物を処置される患者に投与することによって実施され得る。したがって、本発明の他の態様において、(i)有効量の式(I)により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、そして(ii)医薬的に好適な賦形剤を含む、ヒト対象の胃腸障害を長期間処置するための医薬組成物が提供される。
【0026】
さらに、本発明は、(i)有効量の式(I)により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、そして(ii)医薬的に好適な賦形剤を含む、男性および女性の両方の患者、または65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害の処置のための医薬組成物を提供する。
【0027】
本発明は、よりさらに、(i)有効量の式(I)により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、そして(ii)医薬的に好適な賦形剤を含む、胃腸障害を有するヒト対象のQOLの改善のための医薬組成物を提供する。
【0028】
本発明の他の態様において、上記で定義される医薬組成物の製造のための式(I)により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の使用が提供される。
【0029】
図の簡単な説明
図1は、6ヶ月処置の間の便秘の重症度を示すグラフである。
図2は、12ヶ月処置の間の便秘の重症度を示すグラフである。
図3は、6ヶ月処置の間の腹部膨満を示すグラフである。
図4は、12ヶ月処置の間の腹部膨満を示すグラフである。
図5は、6ヶ月処置の間の腹部不快感を示すグラフである。
図6は、12ヶ月処置の間の腹部不快感を示すグラフである。
図7は、1週当たりの排便に対する効果を示すグラフである。
図8は、腹部膨満に対する効果を示すグラフである。
図9は、腹部不快感に対する効果を示すグラフである。
図10は、便秘の重症度に対する効果を示すグラフである。
図11は、いきみに対する効果を示すグラフである。
図12は、硬さに対する効果を示すグラフである。
図13は、排便における、男性vs女性患者に対する効果を示すグラフである。
図14は、排便における年齢による効果を示すグラフである。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明において、「有効量」は、年齢、体重、処置される患者の状態、望まれる治療効果、投与経路、処置期間等に基づいて決定され得る。本発明によれば、投与されるプロスタグランジン化合物の量は、1日当たり、0.001-1000μg/kg体重、より好ましくは、0.01-100μg/kg体重、そして、最も好ましくは, 0.1-10μg/kg体重であり得る。投与の頻度は、1日当たり1またはそれ以上の回数、好ましくは、1日当たり2またはそれ以上の回数であり得る。患者に対する典型的な投与量は、約6−96μg/日である。本明細書および特許請求の範囲によれば、投与量または用量は、約60kgの体重の患者に基づいて決定される。
【0031】
本明細書で用いられるように、測定単位と共に用いられるとき、用語「約」は、+/−30%、好ましくは+/−20%、そしてとりわけ+/−10%として定義される。例えば、約6−96μgの1日の総投与量は、好ましくは、5.4−105.6μgの範囲を意味する。好ましい投与量は、約6−72μgの範囲である。より好ましい実施態様において、投与量は、約6−60μgの範囲である。例えば、該ハロゲン化化合物の投与量は、約8−48μgであり得る。
【0032】
(i)式(I)のプロスタグランジン化合物
本発明は、式(I):
【化10】
(式中、W1およびW2は、
【化11】
であり;
R3およびR4は水素であり;または、それらのうちの一方がOHであり、そして他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、アリールまたはアリールオキシにより置換された、飽和または不飽和の、直鎖、分岐鎖または環形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13およびC−14位の間の結合は、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置は、R、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物を利用する。
【0033】
上記式において、用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子を含むために使用される。とりわけ好ましい、X1およびX2のためのハロゲン原子は、フッ素原子である。
【0034】
R1およびYの定義における用語「不飽和」は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間に孤立して、分離してまたは連続して存在する、少なくとも1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を含むことを意図している。通常の命名法に従って、2つの連続した位置の間の不飽和結合は、2つの位置の低い数を表示することによって表され、2つの遠位の間の不飽和結合は、その両方の位置を表示することによって表される。
【0035】
明細書および特許請求の範囲を通して、用語「低級」は、他に明記されていない限り、1乃至6個の炭素原子を有する基を含むことを意図する。
【0036】
用語「環」は、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシを言う。
【0037】
用語「低級アルキル」は、1乃至6個の炭素原子を含む、直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素基を言い、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0038】
用語「低級アルコキシ」は、低級アルキルが上記で定義される、低級アルキル−O−の基を言う。
【0039】
用語「低級アルカノイルオキシ」は、RCO−が、上記で定義される低級アルキル基の酸化により形成されるアシル基である、アセチル等の、式RCO−O−により表される基を言う。
【0040】
用語「低級シクロアルキル」は、上記で定義されるが、3またはそれ以上の炭素原子を含む低級アルキル基の環化により形成される環状基を言い、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0041】
用語「低級シクロアルキルオキシ」は、低級シクロアルキルが上記で定義される、低級シクロアルキル−O−の基を言う。
【0042】
用語「アリール」は、非置換または置換された芳香族炭素環式またはヘテロ環式の基(好ましくは、単環式の基)を言い、例えば、フェニル、ナフチル、トリル、キシリル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノ、インドリル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、プリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナントリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾリニル、ベンゾチアゾリルおよびフェノチアジニルである。置換基の例は、ハロゲン原子および低級アルキルが上記で定義される、ハロゲン原子およびハロ(低級)アルキルである。
【0043】
用語「アリールオキシ」は、Arが上記で定義されるアリールである、式ArO−により表される基を言う。
【0044】
用語Aの「機能性誘導体」は、塩(好ましくは、医薬的に許容され得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0045】
好適な「医薬的に許容され得る塩」は、慣用される非毒性塩、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩等、の無機塩基との塩;または、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等、の有機塩基との塩を含む。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0046】
エーテルの例は、アルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;およびオクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;フェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルを含む。
【0047】
エステルの例は、脂肪族エステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステル;および、例えばフエニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフエニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフエニルエステル、ベンズアミドフエニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;およびベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルを含む。
【0048】
Aのアミドは、式−CONR’R’’で表される基を意味する。ここで、R’およびR’’はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキルあるいはアリールスルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニルであり、例えば、メチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド、アニリドおよびトルイジド等のアリールアミド、メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミドおよびトリルスルホニルアミド等のアルキルもしくはアリールスルホニルアミド等を含む。
【0049】
Yの例としては、例えば、以下の基:
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
-CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−O−CH2−、
−CH2−C≡C−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、および
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−
を含む。
【0050】
さらに、Yの脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は、場合により酸素、窒素または硫黄により置換される。
【0051】
好ましいAは、−COOH、その医薬的に許容され得る塩、またはエステルである。
好ましいX1およびX2は、共にハロゲン原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。
好ましいW1は=Oである。
好ましいW2は、
【化12】
(式中R3およびR4は共に水素原子である)である。
好ましいYは、6−8個の炭素原子を有する非置換の、飽和または不飽和炭化水素鎖である。
【0052】
好ましいR1は、1−6個の炭素原子、より好ましくは、1−4の炭素原子を含む炭化水素である。R1は、1個の炭素原子を有する1または2の側鎖を有し得る。
R2は、好ましくは水素である。
【0053】
最も好ましい実施態様は、Aが−COOHであり;Yが(CH2)6であり;W1が=Oであり;W2が
【化13】
(式中、R3およびR4は、共に水素である)であり;R2は水素であり;X1およびX2はフッ素であり;そして、R1は(CH2)3CH3またはCH2CH(CH3)CH2CH3である、式(I)のプロスタグランジン化合物である。
【0054】
本発明の活性物質または式(I)のPG化合物は、固体状態で二環式化合物として存在するが、溶媒に溶解すると、該化合物の一部は、互変異性体を形成する。水非存在下では、式(I)で表される化合物は、主に二環構造の形態で存在する。水性媒体中では、水素結合は、水分子と、例えば、C−15位のケト部分との間に形成され、それにより二環式の環形成が妨げられると信じられている。さらに、C−16位のハロゲン原子は、二環式の環形成を促進すると信じられている。C−11位のヒドロキシとC−15位のケト部分との互変異性は、以下に示すように、13,14単結合およびC−16位で2個のフッ素原子を有する化合物の場合とりわけ重要である。
【0055】
従って、本発明は、ハロゲン化プロスタグランジン化合物の異性体を含み得る。例えば、C−15位にケト基を有し、C−16位にハロゲン原子を有する単環式互変異体は、以下に示される。
【化14】
【0056】
単環式形態の、本発明による好ましい化合物は、従来のプロスタグランジン命名法によれば、13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ-PGE1として名付けることができる。
【0057】
(ii)医薬的に好適な賦形剤
本発明によれば、医薬組成物は、いずれかの形態で製剤化され得る。医薬的に好適な賦形剤は、従って、組成物の望まれる形態に依存して選択され得る。本発明によれば、「医薬的に好適な賦形剤」は、本発明の活性成分と混合されて、望まれる形態の調製に適する、不活性物質を意味する。
【0058】
例えば、本発明の経口投与のための固体組成物は、錠剤、調合液、顆粒等を含み得る。係る固体組成物においては、1またはそれ以上の活性成分は、少なくとも1つの不活性な希釈剤、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、マグネシウム アルミン酸メタケイ酸(magnesium aluminate metasilicate)等と混合され得る。通常の後処理に従って、組成物は不活性な希釈剤以外の添加物、例えば、ステアリン酸マグネシウムのような滑剤;線維性グルコン酸カルシウムのような崩壊剤;シクロデキストリン、例えば、α、β−またはγ−シクロデキストリンのような安定化剤;ジメチル−α−, ジメチル−β−, トリメチル−β−またはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのようなエーテル化シクロデキストリン;グルコシル−、マルトシル−シクロデキストリンのような分岐鎖シクロデキストリン;ホルミル化シクロデキストリン、硫黄含有シクロデキストリン;リン脂質等を含み得る。上記シクロデキストリンを使用したとき、シクロデキストリンとの包接化合物が形成され、安定性を増強し得ることもある。あるいは、リン脂質がリポソームを形成するために使用されることもあり、その結果安定性が増強される。
【0059】
錠剤または丸薬は、必要とされれば、糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の、胃または腸で可溶なフィルムで被覆され得る。さらに、それらは、ゼラチンのような吸収可能な物質でカプセルとして形成され得る。好ましくは、組成物は、ハロゲン化プロスタグランジン化合物および中鎖脂肪酸トリグリセリドの液体内容物をソフトゼラチンカプセル中に製剤化される。本発明で使用される中鎖脂肪酸トリグリセリドの例は、側鎖を有し得る6−14個の炭素原子を有する、飽和または不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含む。好ましい脂肪酸は、直鎖飽和脂肪酸であり、例えば、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)およびミリスチン酸(C14)である。さらに、2またはそれ以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドが、組み合わされて使用され得る。さらに、好適な賦形剤は、発行されたPCT出願WO01/27099に開示される。
【0060】
経口投与のための液体組成物は、一般的に使用される不活性な希釈剤を含む乳液、溶液、懸濁液、シロップ、またはエリキシルの形態であり得る。このような組成物は、不活性な希釈剤に加えて、滑剤、甘味剤、香味剤、保存剤、可溶化剤、抗酸化剤等のような添加物を含み得る。添加物は、医薬分野のいずれかの一般的な教科書に記載されているものから選択され得る。このような液体組成物は、直接ソフトカプセル内に充填され得る。本発明の組成物は、坐薬、または浣腸等であり得る。例えば、それらは、滅菌水性の、または非水性の溶液、懸濁液および乳液等の形態であり得る。水性の溶液、懸濁液、または乳液のための賦形剤の例には、例えば、蒸留水、生理食塩水およびリンゲル液が含まれ得る。
【0061】
非水性の溶液、懸濁液または乳液のための賦形剤の例には、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪酸トリグリセリド、オリーブ油等のベジタブルオイル、エタノール等のアルコール、ポリソルベート等を含み得る。このような組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、抗酸化剤等の添加物を含み得る。
【0062】
本発明によれば、医薬組成物は、非経口または経口のいずれかの投与用であることができ、経口適用組成物が好ましい。実施例において、活性成分は、好ましくは、中鎖脂肪酸トリグリセリドに溶解され、カプセルに充填される。
【0063】
本発明の方法によれば、本発明の組成物は、坐薬、浣腸等を用いる非経口投与を含む、経口投与または非経口投与の手段によって、全身性に、または局所的に投与され得る。本発明の組成物は、1日に1乃至数回投与され得る。
【0064】
好ましくは、本発明のプロスタグランジン化合物の1日の総投与量は、約6-96μgの範囲であり、より好ましくは、約6-72μg、よりさらに好ましくは、約6-60μg、そして特に8-48μgである。投与量は、医師の判断で、患者の年齢、体重、症状、治療効果、投与経路、処置期間等によって、いくらか変わり得る。
【0065】
用語「実質的に電解質シフトがない」は、本明細書において、処置期間の電解質平衡異常が既知の電解質平衡異常惹起剤よりも非常に少ないことを意味する。さらに、用語「実質的に電解質シフトがない」は、臨床医が、臨床的に正常範囲であると理解できるような処置される患者の血清電解質レベルを言う。上記に記載されるように、便秘の処置に用いられるMiraLax(登録商標)は、電解質平衡異常を惹起することがあり、その結果、他のことの中でも、危険な心臓の問題をもたらし得る。一方、以下の実施例に示されるように、本発明で使用されるプロスタグランジン化合物は、長期間にわたって投与されても、実質的に電解質シフトを惹起しない。
【0066】
以下の実施例は、また、本発明の医薬組成物が、組成物の長期にわたる処置を中止した後に、実質的にリバンドの便秘または他の不都合を惹起しないことを示す。従って、結果として、本発明の組成物は、長期間処置に有用であることができる。
【0067】
さらに、便秘およびIBSの両方の患者のQOLの評価は、本組成物が該患者のQOLを改善したことを見出した。
【0068】
本発明によれば、本発明の組成物は胃腸障害の長期間処置に有用である。男性および女性患者において、それは同様に有効である。さらに、65歳およびそれ以上の年齢の患者の処置において、それは有用である。
【0069】
本発明で使用される「胃腸障害」は、例えば、限定はされないが、急性または慢性の便秘、過敏性腸症候群および機能性消化不良等の機能性胃腸障害、胃潰瘍、大腸または小腸潰瘍、および腹部不快感を含む。
【0070】
処置される便秘のタイプに含まれるのは、特に限定はされないが、弛緩性便秘(relaxing constipation)、けいれん性便秘、直腸性便秘、および手術後腸閉塞等の機能性便秘;腸疾患を原因とする器質性便秘、および手術後の癒着による狭窄;そして、オピオイド等の薬剤により惹起される便秘である。
【0071】
便秘の緩解または予防に加えて、本発明の組成物は、ヘルニアまたは心血管障害を有する患者が排便時いきむことを防ぐため、または肛門直腸疾患を有する患者の便を軟らかくするために用いられ得る。さらに、本発明の組成物は、内視鏡検査のための、または大腸内視鏡検査、バリウム浣腸X線および静脈性腎盂造影、並びに毒素排除のための緊急胃腸洗浄等の緊急処置等の診断または手術処置のための、準備における消化管洗浄に用いられ得る。従って、本発明は、本発明の組成物が、それを必要とする、ヒト男性対象または65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象の消化管洗浄に用いられる実施態様を包含する。
【0072】
本明細書で使用される用語「処置」は、症状の予防、治療、緩解、症状の抑制、および進行の阻止等の制御のいずれかの手段を含む。本明細書で使用される用語「長期間処置」は、少なくとも2週間化合物を投与することを意味する。化合物は、処置の全期間にわたり毎日、または数日に1回の間隔で投与されることができる。
【0073】
本発明が提供する実施態様の例には下記(1)〜(63)が含まれる。
(1)ヒト対象における胃腸障害を長期間処置するための方法であって、必要とする対象に式(I):
【化15】
(式中、W1およびW2は、
【化16】
であり;
R3およびR4は、水素であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の有効量を投与することを含む方法。
(2)該プロスタグランジン化合物が、式(I)の単環式互変異性体である、(1)に記載の方法。
(3)投与される該プロスタグランジン化合物の量が、約6−96μg/日の範囲内にある、(1)に記載の方法。
(4)投与される該プロスタグランジン化合物の量が、約6−72μg/日の範囲内にある、(1)に記載の方法。
(5)投与される該プロスタグランジン化合物の量が、約6−60μg/日の範囲内にある、(1)に記載の方法。
(6)投与される該プロスタグランジン化合物の量が、約8−48μg/日の範囲内にある、(1)に記載の方法。
(7)プロスタグランジン化合物が経口で投与される、(1)に記載の方法。
(8)該プロスタグランジン化合物が、賦形剤として油性溶媒とともに投与される、(7)に記載の方法。
(9)該油性溶媒が中鎖脂肪酸である、(8)に記載の方法。
(10)Aが−COOHであり;Yが(CH2)6であり;W1が=Oであり;W2が
【化17】
(R3およびR4は共に水素原子)であり;R2が水素原子であり;X1およびX2がフッ素原子であり;そして、R1が(CH2)3CH3である、(1)に記載の方法。
(11)該胃腸障害が、便秘、過敏性腸症候群および機能性消化不良からなる群から選択される、(1)に記載の方法。
(12)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも2週間投与される、(1)に記載の方法。
(13)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも3週間投与される、(1)に記載の方法。
(14)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも4週間投与される、(1)に記載の方法。
(15)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも2ヶ月間投与される、(1)に記載の方法。
(16)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも6ヶ月間投与される、(1)に記載の方法。
(17)該プロスタグランジン化合物が、少なくとも1年間投与される、(1)に記載の方法。
(18)該プロスタグランジン化合物が慢性的に投与される、(1)に記載の方法。
(19)男性ヒト対象における胃腸障害を処置するための方法であって、必要とする男性対象に式(I):
【化18】
(式中、W1およびW2は、
【化19】
であり;
R3およびR4は、水素であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の有効量を投与することを含む方法。
(20)65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害を処置するための方法であって、必要とする65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象に式(I):
【化20】
(式中、W1およびW2は、
【化21】
であり;
R3およびR4は、水素であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の有効量を投与することを含む方法。
(21)胃腸障害を有するヒト対象のQOLを改善するための方法であって、対象に式(I):
【化22】
(式中、W1およびW2は、
【化23】
であり;
R3およびR4は、水素であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の有効量を投与することを含む方法。
(22)ヒト対象における胃腸障害の長期間処置用組成物であって、
(i)有効量の式(I):
【化24】
(式中、W1およびW2は、
【化25】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、および
(ii)医薬的に許容され得る賦形剤、
を含む組成物。
(23)該プロスタグランジン化合物が、式(I)の単環式互変異性体である、(22)に記載の組成物。
(24)約6−96μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化された、(22)に記載の組成物。
(25)約6−72μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化された、(22)に記載の組成物。
(26)約6−60μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化された、(22)に記載の組成物。
(27)約8−48μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化された、(22)に記載の組成物。
(28)経口投与される、(22)に記載の組成物。
(29)医薬的に許容され得る賦形剤が油性溶媒である、(28)に記載の組成物。
(30)該油性溶媒が中鎖脂肪酸である、(29)に記載の組成物。
(31)Aが−COOHであり;Yが(CH2)6であり;W1が=Oであり;W2が
【化26】
(R3およびR4は共に水素原子)であり;R2が水素原子であり;X1およびX2がフッ素原子であり;そして、R1が(CH2)3CH3である、(22)に記載の組成物。
(32)該胃腸障害が、便秘、過敏性腸症候群および機能性消化不良からなる群から選択される、(22)に記載の組成物。
(33)少なくとも2週間投与される、(22)に記載の組成物。
(34)少なくとも3週間投与される、(22)に記載の組成物。
(35)少なくとも4週間投与される、(22)に記載の組成物。
(36)少なくとも2ヶ月間投与される、(22)に記載の組成物。
(37)少なくとも6ヶ月間投与される、(22)に記載の組成物。
(38)少なくとも1年間投与される、(22)に記載の組成物。
(39)慢性的に投与される、(22)に記載の組成物。
(40)男性および女性の両方のヒト対象における胃腸障害の処置用組成物であって、
(i)有効量の式(I):
【化27】
(式中、W1およびW2は、
【化28】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、および
(ii)医薬的に好適な賦形剤、
を含む組成物。
(41)65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害の処置用組成物であって、
(i)有効量の式(I):
【化29】
(式中、W1およびW2は、
【化30】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、および
(ii)医薬的に好適な賦形剤、
を含む組成物。
(42)胃腸障害を有するヒト対象におけるQOL改善用組成物であって、
(i)有効量の式(I):
【化31】
(式中、W1およびW2は、
【化32】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体、および
(ii)医薬的に好適な賦形剤、
を含む組成物。
(43)必要とする患者に投与される、ヒト対象における胃腸障害の長期間処置用医薬組成物を製造するための、式(I):
【化33】
(式中、W1およびW2は、
【化34】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の使用。
(44)該プロスタグランジン化合物が式(I)の単環式互変異性体である、(43)に記載の使用。
(45)組成物が、約6−96μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化される、(43)に記載の使用。
(46)組成物が、約6−72μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化される、(43)に記載の使用。
(47)組成物が、約6−60μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化される、(43)に記載の使用。
(48)組成物が、約8−48μg/日の該プロスタグランジン化合物が投与されるように製剤化される、(43)に記載の使用。
(49)組成物が経口で投与される、(43)に記載の使用。
(50)組成物が、賦形剤として油性溶媒をさらに含む、(49)に記載の組成物。
(51)該油性溶媒が中鎖脂肪酸である、(50)に記載の使用。
(52)Aが−COOHであり;Yが(CH2)6であり;W1が=Oであり;W2が
【化35】
(R3およびR4は共に水素原子)であり;R2が水素原子であり;X1およびX2がフッ素原子であり;そして、R1が(CH2)3CH3である、(43)に記載の使用。
(53)該胃腸障害が、便秘、過敏性腸症候群および機能性消化不良からなる群から選択される、(43)に記載の使用。
(54)組成物が、少なくとも2週間投与される、(43)に記載の使用。
(55)組成物が、少なくとも3週間投与される、(43)に記載の使用。
(56)組成物が、少なくとも4週間投与される、(43)に記載の使用。
(57)組成物が、少なくとも2ヶ月間投与される、(43)に記載の使用。
(58)組成物が、少なくとも6ヶ月間投与される、(43)に記載の使用。
(59)組成物が、少なくとも1年間投与される、(43)に記載の使用。
(60)組成物が慢性的に投与される、(43)に記載の使用。
(61)必要とする対象に投与される、男性および女性の両方のヒト対象における胃腸障害の処置用医薬組成物の製造のための、式(I):
【化36】
(式中、W1およびW2は、
【化37】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の使用。
(62)必要とする対象に投与される、65歳およびそれ以上の年齢のヒト対象における胃腸障害の処置用医薬組成物の製造のための、式(I):
【化38】
(式中、W1およびW2は、
【化39】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の使用。
(63)必要とする対象に投与される、胃腸障害を有するヒト対象におけるQOL改善用医薬組成物の製造のための、式(I):
【化40】
(式中、W1およびW2は、
【化41】
であり;
R3およびR4は、水素原子であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素原子、低級アルキルまたはハロゲン原子、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であり;
R2は、水素原子またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル基、ヒドロキシルまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の使用。
【0074】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、これはこの発明を限定するものではない。
【実施例】
【0075】
実施例1
(方法)
偶発的便秘を有する患者に24週(6ヶ月)または48週(12ヶ月)毎日投与されるときの、化合物A(13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)48μg(化合物Aの24μg、1日2回)の安全性を評価するために、多施設、非盲検試験を実施した。少なくとも3ヶ月の間の慢性便秘の病歴(1週当たり3SBMより少ない)、そして、硬い便、不完全な排便、いきみ等の少なくとも1つの関連症状を示す患者を登録した。14日の薬物なしの洗浄期間の後、彼らに、48μgの化合物A(24μgの化合物A、1日2回)を経口で48週間与えた。
【0076】
本試験において、以下のパラメーターを評価した。
1)電解質バランス
患者(n=299)血清中のナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウムおよびリンのイオン濃度を、化合物A処置の開始前、および開始後6、12、18、24、30、36、48および50週で測定した。
電解質のパネルの実験室標準値を、中央実験室の正常参照範囲から用いた。
【0077】
2)便秘の重症度、3)腹部膨満、および4)腹部不快感
それぞれのパラメーター(便秘の重症度、腹部膨満、または腹部不快感)を、6ヶ月間(n=246)または12ヶ月間(n=304)処置の間の患者において、スケール:0(なし)、1(軽度)、2(中程度)、3(重度)および4(極めて重度)に基づき評価した。
【0078】
(結果)
1)電解質バランス
表1で示されるように、化合物Aによる処置は、患者の血清中のナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウムおよびリンのイオン濃度に影響を与えなかった。結果は、化合物Aが長期間投与にわたり実質的に電解質シフトを惹起しないことを示す。
【0079】
【表1】
【0080】
2)便秘の重症度(6および12ヶ月)、3)腹部膨満(6および12ヶ月)および4)腹部不快感(6および12ヶ月)を、それぞれ図1乃至図6に示した。
図1乃至6に示すように、化合物Aは6ヶ月および12ヶ月処置の間有効である。
【0081】
実施例2
(方法)
4週間の実薬処置(1日の総投与量48μg化合物A)および3週間の無作為化された使用中止期間の後の、全集団の一部における、処置後の応答を評価するために、多施設、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験を実施した。少なくとも6ヶ月の間の慢性便秘の病歴(1週当たり3SBMより少ない)、そして、硬い便、不完全な排便、いきみ等の少なくとも1つの関連症状を示す患者を登録した。14日の薬物なしの洗浄期間の後、彼らに、48μg(1日の総投与量)の化合物Aを28日間与え、続いて0μgまたは48μg(1日の総用量)の化合物Aを21日間与えた。
【0082】
本試験において、以下のパラメーターを評価した。
1)1週間当たりの排便
2)腹部膨満
3)腹部不快感
4)便秘の重症度
5)いきみ
6)硬さ
【0083】
それぞれのパラメーター(腹部膨満、腹部不快感、便秘の重症度、または、いきみ)をスケール:0(なし)、1(軽度)、2(中程度)、3(重度)および4(極めて重度)で、患者において評価した。硬さは、スケール:0(非常に緩い)、1(緩い)、2(正常)、3(硬い)および4(非常に硬い、小球)で評価した。
【0084】
(結果)
1)1週間当たりの排便、2)腹部膨満、3)腹部不快感、4)便秘の重症度、5)いきみ、6)硬さを図7乃至図12にそれぞれ示した。
図7乃至12に示すように、化合物Aの処置の中止後のリバウンド効果は、実質的に観察されず、化合物Aの効果は、処置を止めた後でさえ持続した。
この結果は、患者のQOLが、化合物Aの投与により改善されることを示す。
【0085】
実施例3
(方法)
過敏性腸症候群(IBS)を有する患者を、48μgの化合物A(24μgの化合物A、1日2回)で、48週間処置した。
本試験において、以下のパラメーターを評価した。
1)腹部不快感
2)腹部膨満
3)便秘の重症度
【0086】
腹部不快感および腹部膨満のそれぞれを、スケール:0(なし)、1(軽度)、2(中程度)、3(重度)および4(極めて重度)で、患者において評価した。便秘の重症度をスケール:0(非常に緩い)、1:(緩い)、2:(正常)、3:(硬い)、4:(非常に硬い)で、患者において評価した。
【0087】
(結果)
1)腹部不快感、2)腹部膨満、および3)便秘の重症度を、表2乃至表4に、それぞれ示した。
表2乃至4に示されるように、化合物Aは、IBS患者における12ヶ月処置の間有効である。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
実施例4
(方法)
男性および女性患者において、1週間の自発的な排便数に及ぼす化合物Aの効果を比較するために、多施設、並行群間、二重盲検、プラセボ対照試験を実施した。偶発的便秘を有する男性および女性患者に、48μg(1日の総投与量)の化合物A(24μgの化合物A、1日2回)を4週間与えた。患者の排便を処置の間記録した。
【0092】
(結果)
男性vs女性患者における1週間の自発的排便数に及ぼす48μgの化合物Aの効果を図13に示す。
図13に示されるように、化合物Aは、男性および女性の両方の患者に対し、有意に有効であった。男性および女性の患者における効果間に、有意な違いは無かった。
【0093】
実施例5
(方法)
偶発的便秘を有する相違する年齢の患者における、1週間の自発的な排便数の改善に及ぼす化合物Aの効果を比較するために、多施設、並行群間、二重盲検、プラセボ対照試験を実施した。患者に、48μg(1日の総投与量)の化合物A(24μgの化合物A、1日2回)を4週間与えた。患者の排便を処置の間記録した。
【0094】
(結果)
結果を図14に示す。図14に示されるように、化合物Aは、全ての年齢の群、そして、65歳およびそれ以上高齢の患者において有意に有効であった。
【0095】
実施例6
(方法)
偶発的便秘を有する対象に対する48μg(1日の総投与量)の化合物Aの安全性および有効性を評価するために、48週多施設試験を実施した。少なくとも3ヶ月の間の慢性便秘の病歴(1週当たり3SBMより少ない)、そして、硬い便、不完全な排便、いきみ等の少なくとも1つの関連症状を示す患者を登録した。14日の薬物なしの洗浄期間の後、彼らに、48μgの化合物A(24μgの化合物A、1日2回)を経口で48週間毎日与えた。
【0096】
対象は、医療結果試験(MOS)36項目略式用紙(SF−36)、すなわち、通常用いられたQOL評価用紙を、登録時(ベースライン)および処置の終了時(48週)に完成させた。MOS SF−36の要素(Med Care 30(6), 473-483, 2000)を、以下に概説する:
身体的要素:身体機能、日常役割機能(身体)(Role-Physical)、身体の痛み、および全体的健康感
精神的要素:活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)(Role-Emotional)、および心の健康
【0097】
8要素それぞれは、欠落変数の帰属に対する出版社のガイドラインを含む出版社のガイドライン内でスコア付けされた。処置の終了時(48週)での8要素のスコアーそれぞれにおけるベースラインからの変化を記録し、対応のあるt-検定で評価した。
【0098】
(結果)
表5に示されるように、8要素のスコアーのそれぞれにおいて、平均ベースラインスコアーは約47および52の間であり、対象集団が総じて健康であることを示す。48週でのそれぞれの要素のスコアーについてのベースラインからの平均変化は、少しの増加を示しており、それぞれのカテゴリーでの改善を示唆する。ゼロから有意に相違する改善は、身体機能、日常役割機能(身体)、身体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能および心の健康に対して、48週で観察された。
結果は、化合物Aが患者のQOLを改善することを示す。
【0099】
(結果)
【表5】
【0100】
実施例7
(方法)
過敏性腸症候群(IBS)を有する対象に対する、経口16μg、32μgおよび48μg(1日の総投与量)の化合物Aの安全性および有効性を評価するために、12週、二重盲検、無作為化試験を実施した。
患者は、ベースライン、試験の4週、12週、および終了時にIBS QOL質問書に回答し、質問結果をIBS QOL 使用者マニュアル(A Quality of Life Measure for Persons with Irritable Bowel Syndrome (IBS−QOL): User’s Manual and Scoring Diskette for United States Version. Seattle, Washington: University of Washington; 1997)に従って、スコアー付けした。スケール化されたスコアーを全ての解析に使用し、そして、スコアーを使用者マニュアルに従い、下記のように計算した:
スケール化されたスコアー=([IBS−QOL項目の総数−最も低い可能なスコアー]の和/可能な生スコアー範囲))X100
【0101】
試験の4週、12週、および終了時のベースラインからの変化を、平均総体的スコアーおよび平均領域スコアー(不快、活動の障害、ボディイメージ、健康不安、食物忌避、社会応答、性、および関係)のために評価した。
【0102】
(結果)
LOCF(Last observation carried forward)解析をせずに解析されたIBS−QOLスコアーのベースラインからの平均変化の概要を、表6乃至表8に示す。
これらのデータは、ベースラインからの変化が、全ての群において、ゼロから有意に相違したことを示した。概して、16μgの化合物A群は、全ての詳細な領域およびQOL全体において、全ての群のうち最もベースラインからの改善が示された。
【0103】
【表6】
【0104】
【表7】
【0105】
【表8】
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】6ヶ月処置の間の便秘の重症度を示すグラフである。
【図2】12ヶ月処置の間の便秘の重症度を示すグラフである。
【図3】6ヶ月処置の間の腹部膨満を示すグラフである。
【図4】12ヶ月処置の間の腹部膨満を示すグラフである。
【図5】6ヶ月処置の間の腹部不快感を示すグラフである。
【図6】12ヶ月処置の間の腹部不快感を示すグラフである。
【図7】1週当たりの排便に対する効果を示すグラフである。
【図8】腹部膨満に対する効果を示すグラフである。
【図9】腹部不快感に対する効果を示すグラフである。
【図10】便秘の重症度に対する効果を示すグラフである。
【図11】いきみに対する効果を示すグラフである。
【図12】硬さに対する効果を示すグラフである。
【図13】排便における、男性vs女性患者に対する効果を示すグラフである。
【図14】排便における年齢による効果を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象における胃腸障害を長期間処置するための方法であって、必要とする対象に式(I):
【化1】
(式中、W1およびW2は、
【化2】
であり;
R3およびR4は、水素であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の有効量を投与することを含む方法。
【請求項1】
ヒト対象における胃腸障害を長期間処置するための方法であって、必要とする対象に式(I):
【化1】
(式中、W1およびW2は、
【化2】
であり;
R3およびR4は、水素であり;または、それらのうちの一方がOHで他方が水素であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン、ただし、それらのうちの少なくとも1つはハロゲンであり;
R2は、水素またはアルキルであり;
Yは、非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシまたはアリールにより置換された、飽和または不飽和のC2−10炭化水素鎖であり;
Aは、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはその機能性誘導体であり;
R1は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリールまたはアリールオキシで置換された飽和または不飽和の、直鎖−、分岐鎖−または環−形成低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール;またはアリールオキシであり;
C−13位とC−14位間の結合が、二重結合または単結合であり、そして、
C−15位の立体配置がR、Sまたはそれらの混合物である)
により表されるプロスタグランジン化合物および/またはその互変異性体の有効量を投与することを含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−49688(P2013−49688A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232180(P2012−232180)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2007−511111(P2007−511111)の分割
【原出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2007−511111(P2007−511111)の分割
【原出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】
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