説明

胃部検診用造影剤

【課題】腸管内で塩析凝集固化することがなく、発泡剤の効果が持続するバリウム造影剤の提供。
【解決手段】 既存の胃部検診用バリウム造影剤1の硫酸バリウム或いは新たな胃部検診用物質を、非溶性マイクロカプセル2中に封入する。更に炭酸水素ナトリウムを酸溶解性マイクロカプセルに封入したもの混入させる。
【効果】硫酸バリウムが、腸管内で塩析凝集固化しないため、宿滞便化を防ぐことができる。更に飲みやすく、発泡剤の効果を連続的に補助できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、胃部検診等に用いる造影剤の内容物に関する。
【特許文献1】 特開平06−000804 顔料マイクロカプセルとその製造方法
【非特許文献1】マイクロカプセルとは/教材/新潟大学田中研究室 新潟大学工学部化学システム工学科田中研究室(教授:田中眞人,助手:田口佳成)複合体粒子,マイクロカプセルの説明.capsule.eng.niigata−u.ac.jp/howto/ht_def/index.html
【非特許文献2】マイクロカプセルとは マイクロカプセル製剤とは.マイクロカプセル製剤は有効成分を高分子樹脂の薄い膜で包み込んだ製剤です。有効成分が高分子のカプセル内に封入されているため、分解や蒸散が抑えられます。 マイクロカプセル製剤は安定性と安全性に優れます。www.nipponkayaku.co.jp/japan/kagaku/agro/microtoha.htm
【非特許文献3】日本油脂−事業案内(食品事業) 日本油脂独自で開発した“マイクロカプセル技術”は、芯物質の安定性向上、味のマスキング、吸湿防止、接触回避などを実現し、...その一つとして、ビフィズス菌のマイクロカプセルが注目されています。ビフィズス菌は酸、空気、熱に弱いことが知られて...www.nof.co.jp/depart/syokuhin.htm
【非特許文献4】マイクロ/ナノ系カプセル・微粒子の開発と応用 マイクロカプセル形成の基礎2.1マイクロカプセルの調整法 (1) コアセルベーション法(2)相分離法2.2マイクロカプセル...マイクロカプセルの設計3.1金属吸着剤マイクロカプセル (1)設計概念3.2マイクロカプセルインキ (1)設計概念...www.cmcbooks.co.jp/books/t0364.php
【背景技術】
【0002】
従来の胃部検診に用いるバリウム造影剤は、硫酸バリウムを水に溶いたものに味や香りを付けて飲みやすくしようと工夫されたものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、以上の技術によれば、検診後に飲む下剤の効果が弱かった場合、特に腸管内に硫酸バリウムが長く留まることになると、起こりにくいとされていても塩析擬集効果によって固化を起こし、便秘や腸閉塞等の原因にもなる宿滞便になることがある。実際に、胃部検診時のバリウム造影剤が原因で私の同僚の1人は腸閉塞を起こし、入院手術を余儀なくされた。
さらに硫酸バリウムはその式量(233.39)、比重(4.47〜4.50)はともに大きく、胃腸にもたれる場合も多々考えられ、これが飲みにくさにもつながっている。これを解消するために、硫酸バリウムよりも式量や比重などが小さく、かつ、硫酸バリウム以外で使用されるガストログラフィンのようなヨード系造影剤などよりも安価に手に入れられる物質を造影剤として使用したくとも、胃液等に反応して造影剤としての機能を失ったり、体へ吸収されて毒性を示す可能性があると、造影剤として使用できなかった。
また、検診中に於いて胃を膨らませる発泡剤は、検診中にゲップをしてしまうと再度発泡剤の飲み直しを迫られることが度々あった。
そこで、この発明は、腸管内で塩析凝集固化することのないバリウム造影剤を提供することと、硫酸バリウムに代わる物質を使用した造影剤を提供すること、発泡剤の効果持続させることを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、第一発明は、硫酸バリウムを非溶性マイクロカプセルに封入したものに置き換えたことを特徴とする胃部検診用バリウム造影剤である。
次に第二発明は、硫酸バリウムの代わりにヨウ化鉄やヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどを非溶性マイクロカプセルに封入したものに置き換えたことを特徴とする胃部検診用バリウム造影剤である。
また、第三発明は、発泡剤の炭酸水素ナトリウム顆粒を酸溶解性マイクロカプセルに封入したものを先の発明の造影剤に混合することを特徴とする胃部検診用バリウム造影剤である。
【発明の効果】
【0005】
第一発明によれば、硫酸バリウムが、腸管内で塩析凝集固化することのない非溶性マイクロカプセルに封入されることによって宿滞便化することを防ぐことができる造影剤になる。次に、第二発明によれば、従来よりも飲みやすく胃腸に負担をかけにくい効果を期待できる造影剤になる。また、第三発明によれば、発泡剤の効果を連続的に補助できる造影剤になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明の一実施形態を、図1および図2に示す。
第一発明によるマイクロカプセルの製法に関しては既存技術であり、懸濁コロイド溶液になる大きさの粒子径の外殻になる非溶性マイクロカプセルに、硫酸バリウムを芯物質として封入したものである。
第二発明による芯物質に関しては既知の物質であり、硫酸バリウムの代わりにヨウ化鉄やヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどを芯物質として非溶性マイクロカプセルに封入したものである。
第三発明によるマイクロカプセルの製法に関しても既存技術であり、懸濁コロイド溶液になる大きさの粒子径の外殻になる酸溶解性マイクロカプセルに、炭酸水素ナトリウムを芯物質として封入したものである。
【0007】
「実施形態の効果」
この実施形態によれば、非溶性マイクロカプセルに芯物質として封入された硫酸バリウムによって胃部検診に使用されるX線を吸収遮蔽し、現在行われている検診方法を妨げるものではない。さらに、非溶性マイクロカプセルによって硫酸バリウムの塩析凝集効果が起こらない状態にある。したがって、検査後の宿滞便による腸閉塞を引き起こす心配を下げることができる。
この上で、非溶性マイクロカプセルに芯物質として封入されたヨウ化鉄やヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどによって硫酸バリウムと同等の造影効果が期待でき、現在おこなわれている検診方法を妨げるものではない。さらに、非溶性マイクロカプセルによって胃液等と芯物質が反応したり、体内へ吸収されたりする危険もない状態にできる。ただし、ここで示したヨウ化鉄やヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどは、万一、マイクロカプセルが破損し芯物質が胃腸管内に流出した場合でも、体毒性を低く抑えることを考慮できるものとして提案するものである。非溶性マイクロカプセルの芯物質保護効果がさらに安定し信頼性が増せば、芯物質として、鉛など体毒性を示すような物質や重金属を芯物質として使用することも可能であると考えるが、現段階では可能性としておく。
また、酸溶解性マイクロカプセルは胃液の酸に反応して溶解し、芯物質の炭酸水素ナトリウムが胃の中に開放され、これが胃液と反応することによって連続的に二酸化炭素の気泡を胃の中に提供してくれるはたらきをする。
【0008】
「他の実施形態」
図1の実施形態では、非溶性マイクロカプセルに封入される芯物質として硫酸バリウムと、これに代わるヨウ化鉄やヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどを考案したが、他の実施形態では、今後の研究によっては、今提案以外の造影剤の有効な物質を、非溶性マイクロカプセルの芯物質として封入したものでも良い。
図2の実施形態では、酸溶解性マイクロカプセルを考案したが、他の実施形態では、個人によってはこれを必要としない形態も考えられるし、酸溶解性マイクロカプセルの代わりに油脂マイクロカプセルに換えたものを使うと、腸内での二酸化炭素気泡を提供する形態も考えられる。このように応用を利かせたものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0009】
集団検診、人間ドック等、胃腸科検診時の活用。ペットの検診への拡大利用の可能性を追及されることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一及び、二の実施形態を示す図である。
【図2】この発明の三の実施形態を示す図である。
【図3】従来技術を示す図である。
【符号の説明】
【0011】
1 造影剤
2 非溶性マイクロカプセル
3 芯物質(硫酸バリウム、ヨウ化鉄またはヨウ化カリウムやヨウ化ナトリウム)
4 酸溶解性または油脂マイクロカプセル
5 芯物質(炭酸水素ナトリウム)
6 硫酸バリウム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸バリウムを芯物質とした非溶性マイクロカプセルであることを特徴とする胃部検診用等バリウム造影剤。
【請求項2】
前記造影剤の、硫酸バリウム以外の物質を芯物質とした非溶解性マイクロカプセルであることを特徴とする胃部検診用等バリウム造影剤。
【請求項3】
前記造影剤に、炭酸水素ナトリウムを芯物質とした酸溶解性マイクロカプセルを混合することを特徴とする胃部検診用等バリウム造影剤。
【請求項4】
前記造影剤は、飲みやすく腸管内で固まらないことを特徴とする請求項1記載の造影剤。
【請求項5】
前記造影剤は、飲みやすく腸管内で固まらないことおよび、硫酸バリウムよりも胃腸に負担をかけにくいことを特徴とする請求項2記載の造影剤。
【請求項6】
前記造影剤は、事前に飲む発泡剤の効果を補助することを目的とすることを特徴とする請求項1または請求項2、及び請求項3記載の造影剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−120780(P2008−120780A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335095(P2006−335095)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(506411829)
【Fターム(参考)】