説明

胃酸分泌阻害組成物

プロトンポンプインヒビターの遅延放出および/または延長放出をもたらす少なくとも1種の薬剤として許容される賦形剤と合わせて、薬理学的に有効な量の酸感受性プロトンポンプインヒビターとH2受容体アンタゴニストを含む経口医薬剤形。このH2受容体アンタゴニストは、それが投与後急速に放出される形で剤形中に含まれる。この剤形は胃酸の過剰な分泌に関連する病態の治療に適しており、その効果の迅速な発現と長期持続期間の適切な組合せを提供する。本発明はまた、そうした剤形の製造方法、および胃酸の分泌に関連する病態の治療方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃酸分泌阻害組成物、その製造方法および胃酸の分泌に関連した病態の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
胃食道逆流疾患(GORD)、十二指腸潰瘍および胃潰瘍ならびに非潰瘍性消化不良などの消化不良の治療の不可欠な要素である、酸分泌の抑制において、過去数十年の間多くの進歩がなされてきた。これらの障害の病態生理は同じものではないが、胃酸分泌の阻害は、器質的病変の治癒、不快感の症状の緩和および生活の質の向上に極めて重要である。さらに酸関連の損傷は癌の進行やこれらの病態の他の後期合併症のもととなることがある。酸分泌の阻害は、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)感染症の根絶を目指す治療投与計画での基礎となるものでもある。
【0003】
消化不良(酸消化不良)はよくある障害である。胸やけは消化不良の1つの症状である。44%のアメリカ人は月に少なくとも一度は胸やけを起こしているが、消化不良の問題の理由で、医者にかかっているのはその約25%だけしかいないと推定されている。消化不良に伴う症状は例えば上腹部痛/不快感および胸やけ、消化不良、「胃酸」過多(「酸味」の胃)ならびに胃食道逆流である。
【0004】
消化不良は多くの要因による疾患であり、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、食道炎、バレット型食道または胃-十二指腸炎症(例えばヘリコバクターピロリ感染症)などの器質病理と関連することがある。消化不良は器質病理が見られない病態、例えば非潰瘍性消化不良(NUD)または機能的消化不良も含む。
【0005】
消化不良は胃中のpHを高める医薬品の投与によって制御することができる。消化不良の治療に有効な治療薬には、ヒスタミンH2受容体アンタゴニスト(以下H2受容体アンタゴニストと称する)などの胃酸抑制剤、酸感受性プロトンポンプインヒビター、制酸剤/アルギン酸塩、抗コリン作用薬および運動促進剤が含まれる。これらはその作用の機序、安全プロファイルおよび薬物動態によって区別される。胃病原体ヘリコバクターピロリは消化不良、胃-十二指腸潰瘍疾患および胃癌と関連している。H.ピロリ感染症の治療は通常、酸分泌抑制剤と1種または2種の抗生物質製剤の併用投与を含む。
【0006】
酸分泌-阻害性薬物の投与によって酸の生成を阻害する場合の、消化不良関連の不快感および器質的病変に対する治療効果は、酸阻害の程度ならびに個々の薬物の作用の発現と持続期間に関係する。症候性酸逆流疾患の患者の大部分は正常な食道粘膜を有するか、または軽度の食道炎を有するだけである。症状が現れたときに治療して症状を軽減するのがこれらの患者を扱う最も良い方法である。患者への症状軽減のスピードが最も重要である
【0007】
制酸剤、すなわち酸-中和剤、およびアルギン酸塩は軽度の胸やけの治療に置ける第1の治療的選択である。これらは作用の持続期間が極端に短いが、安価で安全性が高いとされている。制酸剤は胃酸の中和によって局部的に働く。アルギン酸塩は胃酸の食道への逆流に対するある種の物理的保護(mechanical protection)を提供する。制酸剤およびアルギン酸塩の主な利点はそれらが迅速な症状の軽減をもたらすことである。制酸剤およびアルギン酸塩の主な欠点は、その作用の持続期間が極端に短いこと、患者の症状からの解放を保つためには投薬を頻繁に繰り返さなければならないこと、さらには、制酸剤が症状の回復すなわち症状の完全な軽減をもたらさないことがよく有ることである。さらに、これらの薬剤は、酸誘発器質的病変、GORDまたはヘリコバクターピロリ感染症の治療にまったく有用でない。
【0008】
胃酸の分泌に影響を及ぼす複数の部類の化合物が知られている。その中では、ベンズイミダゾール、オメプラゾール、ランゾプラゾール、ラベプラゾールおよびパントプラゾールなどの酸感受性プロトンポンプインヒビター、ならびにシメチジン、ラニチジンおよびファモチジンなどのヒスタミンH2受容体アンタゴニストが最も顕著なものである。H2受容体および酸感受性プロトンポンプインヒビターは全身的に胃酸分泌を減少させるために広く処方されている。
【0009】
酸抑制治療の設計には、その機序が、薬理学的介入で効果的に目標とされ得るように、水素イオンの分泌、すなわち壁細胞と水素-カリウムアデノシン三リン酸(H+、K+-ATPアーゼ)の背後の機序の詳細な理解が必要となる。酸関連障害の効果的な薬理学的治療を実現するための鍵となる3つの要素が特定されている(Dig Dis Sci 1995 vol 40:24S〜49S、「Optimizing acid suppression for treatment of acid-related diseases」)。
【0010】
すなわち、
1)作用の発現までの時間、すなわち酸分泌の阻害は可能な限り迅速に発生しなければならない。
2)酸阻害の程度、すなわち胃内のpHは4を十分超えて保持されなければならない。
3)作用の持続期間、すなわち、酸分泌の阻害は第1の用量で24時間事実上完全に持続し、治療の過程の間、完全に作用を持続しなければならない。
【0011】
前記抑制治療をいかに最適化するかを決定するには、これらの要素をすべて考慮しなければならない。しかし、既存の医薬品の壁細胞生理学および薬理学/生化学のいくつかの側面によってこの目標の達成が今日まで阻まれてきた。
【0012】
酸分泌の機序の中心をなすものは胃の壁細胞である。これらの細胞は、ニューロクリン、パラクリンおよびエンドクリン経路の制御下で、胃管腔の中に水素イオンを分泌する。主要なパラクリン要素の1つは、エンテロクロマフィン様(ECL)細胞によって放出されるヒスタミンである。ECL細胞から放出されたヒスタミンは、細胞表面上に位置するヒスタミン-2(H2)受容体を介して、酸分泌へと壁細胞を刺激する。これらの受容体の関与は、環状アデノシン-3,5-モノリン酸(cAMP)の上昇と調節サブ単位へのcAMP結合をもたらす。様々なタンパク質がリン酸化され、そのすべてが分泌の活性化に関連することになる。この細胞内経路の分子解離は決して完全なものではないが、cAMPの作用には、H+、K+-ATPアーゼの分泌小管中への転位置およびKCL輸送体の活性化、すなわち壁細胞を分泌状態にすることが含まれる。
【0013】
酸分泌の低減の第1の試みは、パラクリン経路、すなわち酸分泌のヒスタミンH2受容体活性化誘発刺激を標的とした。したがって、酸インヒビターの第1の部類はシメチジン、ラニチジン、ファモチジンおよびニザチジンなどの化合物を含むH2受容体アンタゴニスト(H2遮断剤)であった。その作用の様式は、ヒスタミンの作用に拮抗する、すなわち、プロトンポンプの分泌小管への補充を阻害し、KCL輸送の活性を低下させることである。これは、壁細胞を非分泌状態にし、それによって水素イオンの生成量を低下させることになる(Dig Dis Sci 1995、vol 40.3S〜23S、「Pharmacological aspects of acid secretion」)。
【0014】
しかし、酸反跳の現象と耐性が、酸関連疾患の治療におけるこれらの薬物の使用での主な欠点である。反復投薬の間において、酸低減能力に約50%の損失があり、これは、例えばGORDの治療におけるこの部類の薬物の使用を著しく制限するものである(Aliment Pharmacol Ther 1990、vol 4:29〜46頁、「Tolerance during 29 days of conventional dosing with cimetidine,nizatidine,famotidine or ranitidine」)。さらにこれらの薬剤は、ヘリコバクターピロリ感染症の治療(酸分泌の効果的でかつ持続的な低減が影響を及ぼす治療である)においてはまったく有用性がない。
【0015】
酸関連障害の最近の治療はより直接的な標的、すなわち活性壁細胞のH+、K+-ATPアーゼ(「プロトンポンプ」)に焦点が当てられている。これらの細胞は最終的酸供給源である酸分泌小管と酸ポンプ自体を構成する。したがって、このレベルで酸分泌を阻害するように設計された薬物はより高い効能と特異性を示す。プロトンポンプインヒビター(PPI)は壁細胞刺激の下流の段階で作用するので、H2受容体アンタゴニストとは対照的に、これらの化合物の使用によって耐性は生じない。さらに、これらの薬物は、他のすべての経路がそれに集中する最終標的である酸空間(acid space)すなわち刺激された壁細胞の小管中のH+、K+ATPアーゼに当たる。
【0016】
個々のPPIはその一般構造に関して類似しており、その構造は置換されたピリジルメチルスルフィニルベンズイミダゾールからなる。これらの化合物のPKa値は4.0〜5.0の範囲である。すべてのPPIは本質的に同じである同一薬理学的機序を共有している。すなわち、そのpKaは化合物の酸空間への蓄積、例えば壁細胞中での蓄積を制限する。壁細胞の小管中でのPPI蓄積の後、酸依存性活性化の段階が続き、それによってPPIはスルフェン酸またはスルフェンアミドに転換される。これらの反応性中間体の生成によって、H+、K+-ATPアーゼの曝露された管腔表面内のシステイン残基との結合が可能になる。共有結合によるジスルフィド結合の生成によって、酵素は機能的に不活性化される。したがって、阻害を覆すためには酵素の新規の合成を必要とするので、PPIによるH+、K+-ATPアーゼの阻害は、酵素の比較的安定した阻害をもたらす結果となる。これらの作用の機序はDig Dis Sci 1995、vol 40:3S〜23S、「Pharmacological aspects of acid secretion」に記載されている。
【0017】
PPIの基本的な特徴の1つは、PPIは活性な壁細胞においてのみ機能する、すなわちその細胞は分泌状態でなければならないということである。その理由は3つからなる。第1に、ほとんどの壁細胞において、酸空間(小管)は約1.0のpHを有している。このpHでは、PPIのそのpKa値によって、壁細胞中においてPPIを1000倍〜10,000倍で蓄積することが可能になる。しかし、より高いpH、例えば3では、この蓄積は次数2程度、すなわち10倍〜100倍に減少する。したがって、PPIの弱塩基性の特徴が、壁細胞によって酸が形成される場合だけPPIを蓄積させることができる。これは、壁細胞が非分泌状態におかれた病態の際に、PPIを投与する場合に重要となる。第2に、PPIのスルフェン酸またはスルフェンアミドへの転換は、酸依存性過程である。第3に、H+、K+-ATPアーゼが活性化されなければならない、すなわち酵素が、分泌小管の膜中に挿入されなければならない。その分泌小管の膜で、スルフェンアミドがそのシステイン残基に到達することができる(Pharmacotherapy 1997 vol 17:22〜37頁、「Proton pump inhibitors and acid related diseases」;Drugs 1998 vol 56:307〜335頁、「Proton pump inhibitors:pharmacology and rationale for use in gastrointestinal disorders」;Ann NY Acad Sci 1997 vol 834 :65〜76頁、「Structural aspects of the gastric H+,K+-ATPase」;Annu Rev Pharmacol Toxicol 1995 vol 35:277〜305頁、「The pharmacolology of the gastric acid pump」)
【0018】
PPIの薬理学/生化学のこうした特徴は、この部類の化合物の薬力学に深く影響を及ぼすことになる。一方で、これらの薬物は阻害のための活性酵素を必要とし、血液中に薬物が存在する間、いくらかのポンプは不活性である。他方で、PPIは60分間という比較的短い血漿半減期を示し、新たなポンプが24時間当たり25%の速度で合成される。
【0019】
これらの事実は、現在でのPPIの治療上のジレンマを示している。化合物が、壁細胞の酸空間中で蓄積され転換されるので、酸を分泌しているポンプだけが阻害されることになる。細胞は不活性ポンプの蓄えを有しており、新たなポンプの合成過程にあるので、次の24時間以内に活性であることが必至である多くのポンプは第1の用量によって阻害されないことになる。しかし、次の日にPPIを再度与えると新たなポンプが漸増しており、このポンプは阻害されることができ、その前24時間阻害されていたポンプはまったく補充されていなかった。したがって、PPIに対する応答は蓄積するものであり、少なくとも3日間連続治療後に初めて、定常状態と治療的な酸阻害に達する。
【0020】
したがって、PPIの作用の機序に関する最近の考え方は、その効果を媒介する活性ポンプの必要性に関するものである。休止状態では、壁細胞は酸を生成せず、ポンプは不活性である。PPIによる酸生成の阻害は、壁細胞中での蓄積によってこれらのポンプが活性状態にあり、それによって続く薬物の活性化がポンプの阻害をもたらす場合に起こる(Eur J of Gastroentereol Hepatol 2001 vol 13.S35〜S41、「Improving on PPI-based therapy of GORD」)。
【0021】
まとめると、現在入手できるどの部類の抗分泌性薬物も、上記した酸制御の目標、すなわち急速な作用の発現、酸分泌の強力な阻害および治療の過程での作用の持続期間を達成しない。治療効果は、作用の発現、程度および持続期間、すなわちいかに速く、いかに多くかつ胃の中でいかに長くpHが高く保てるかと関連するので、この目標は、治療の臨床転帰のために最も重要なものである。
【0022】
制酸剤および/または粘膜保護剤と、酸分泌を低減する薬剤の様々な併用が、消化不良の治療において有用であることが開示されている。
【0023】
国際特許出願WO95/017080は、ファモチジンなどのH2受容体アンタゴニスト、アルギン酸塩、任意選択でシメチコン(活性化ポリシロキサン)を含む、例えば胸やけの治療での使用のための組成物を開示している。
【0024】
欧州特許第EP338861A号は制酸剤と賦形剤からなる固形の薬剤調製物を記載している。これを、酸感受性プロトンポンプインヒビターまたは任意の他の胃酸分泌阻害物質と併用して使用することが提案されている。これらの物質を固定単位剤形中で併用することは提案されていない。
【0025】
米国特許第5244670A号は、制酸剤、酸分泌防止剤、ビスマス含有薬剤およびその混合物からなる群から選択される物質、ならびに喉に清涼感覚をもたらすために入れる3-(1-メントキシ)-プロパン-1,2-ジオールを含む経口摂取可能な薬剤組成物を記載している。
【0026】
国際特許出願WO97/25066は酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはH2受容体アンタゴニストと、1種または複数の制酸剤またはアルギン酸塩との組合せを含む薬剤調製物を開示している。
【0027】
酸感受性プロトンポンプインヒビターもH2受容体アンタゴニストも、単独でもあるいは制酸剤および/またはアルギン酸塩と組み合わせても、患者に十分満足のいく迅速さと軽減をもたらすことはない。その患者にとって症状の軽減速度が最も重要であり、また患者はより長い期間症状から解放されたいと望むものである。したがって、現在まで報告されている経口投与用の固形薬剤調製物はどれも、基本的な要件、すなわち、酸分泌阻害の急速な発現、酸分泌の強力な低減および持続性のある酸分泌の阻害を満足させるものではない。
【0028】
さらに、プロトンポンプインヒビターの使用は化学的安定性に関して重大な欠点を有している。
【0029】
この物質は酸に対して非常に不安定であり、そのため特殊な製剤を要するものにしている。通常、インビボで活性物質を覆って胃酸耐性のあるコーティング(腸溶性コーティング)を施すことによってこの物質を保護する。そうしたコーティング物自体が酸性である(水素イオンを放出する)ので、インビトロで、すなわち製品を保存する場合ある種の保護をすることが必要であることも分かっている。
【0030】
インビトロでのこうした保護は、米国特許第6183776Bl号(Depui等)に記載のようにして行うことができる。すなわち、アルカリ反応性物質をプロトンポンプインヒビターに加えて一緒にし、胃酸耐性コーティングのすぐ下に補助的な保護コーティング(サブコーティング)を施すものである。
【0031】
別の手法が国際特許出願WO00/78284(米国特許第5225202号)に記載されている。すなわち、胃酸耐性コーティングを中和する。その結果、保存中に酸反応は示されない。飲み込んだあと、胃の中に存在する水素イオンが、コーティングを酸性化し、それによって、コーティングの酸保護特性がその場で再度生み出されることになる。
【0032】
迅速で長期に持続する症状の軽減に関する問題、ならびに酸感受性の高いプロトンポンプインヒビターの化学的不安定性の問題はどちらも、本発明によって解決されることをここに見出した。
【非特許文献1】Dig Dis Sci 1995 vol 40:24S〜49S、「Optimizing acid suppression for treatment of acid-related diseases」
【非特許文献2】Dig Dis Sci 1995、vol 40.3S〜23S、「Pharmacological aspects of acid secretion」
【非特許文献3】Aliment Pharmacol Ther 1990、vol 4:29〜46頁、「Tolerance during 29 days of conventional dosing with cimetidine,nizatidine,famotidine or ranitidine」
【非特許文献4】Pharmacotherapy 1997 vol 17:22〜37頁、「Proton pump inhibitors and acid related diseases」
【非特許文献5】Drugs 1998 vol 56:307〜335頁、「Proton pump inhibitors: pharmacology and rationale for use in gastrointestinal disorders」
【非特許文献6】Ann NY Acad Sci 1997 vol 834:65〜76頁、「Structural aspects of the gastric H+,K+-ATPase」
【非特許文献7】Annu Rev Pharmacol Toxicol 1995 vol 35:277〜305頁、「The pharmacolology of the gastric acid pump」
【非特許文献8】Eur J of Gastroentereol Hepatol 2001 vol 13.S35〜S41、「Improving on PPI-based therapy of GORD」
【特許文献1】国際特許出願WO95/017080
【特許文献2】欧州特許第EP338861A号
【特許文献3】米国特許第5244670A号
【特許文献4】国際特許出願WO97/25066
【特許文献5】米国特許第6183776Bl号
【特許文献6】国際特許出願WO00/78284(米国特許第5225202号)
【非特許文献10】「Pharmaceutics.The Science of Dosage Form Design」、1st edition;Ed.M.E.Aulton、Churchill Livingstone、Edinburgh 1988
【特許文献7】米国特許第6132768号
【特許文献8】米国特許第6274173Bl号
【特許文献9】ドイツ特許第DE19925710Al号
【特許文献10】国際特許出願PCT/SE02/00757
【特許文献11】欧州特許第EP005129Al号
【特許文献12】欧州特許第174726Al号
【特許文献13】欧州特許第EP166287Al号
【特許文献14】ドイツ特許第2163747号
【特許文献15】国際特許出願WO90/06925
【特許文献16】国際特許出願W091/19711
【特許文献17】国際特許出願W091/19712
【特許文献18】国際特許出願W094/27988
【特許文献19】国際特許出願W095/01977
【非特許文献11】Huang J Q and Hunt R H、「pH,healing rate and symptom relief in patients with GERD」、Yale J Biol Med 1999、72:181〜94頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明の目的は、胃酸分泌に関連した病態に苦しむ患者に迅速で持続性のある軽減をもたらす医薬品を提供することである。
【0034】
本発明の別の目的は、胃酸分泌に関連した病態に苦しむ患者に、迅速で持続性のある軽減をもたらす治療方法を提供することである。
【0035】
本発明の他の目的は、以下の本発明の短い説明、その好ましい実施形態および添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、迅速な放出のために調合されたH2受容体アンタゴニストと、延長放出(expanded release)のために調合されたPPIとを含むことを特徴とする経口投与のための固形医薬剤形に関する。本発明の剤形では、迅速に放出されるH2受容体アンタゴニストは、上記の機序によって、急速に吸収され、酸分泌を阻害することになる。遅延放出および/または延長放出のために調合されたPPIは第1の用量後にすでに最大の酸抑制を維持し、かつ治療過程の間に最大の酸抑制を維持することになる。
【0037】
酸感受性プロトンポンプインヒビターは、胃のH+、K+-ATPアーゼ、すなわち胃内の塩酸生成に関与するプロトン輸送酵素を共有結合的に阻害する酸活性化プロドラッグである。胃のH+、K+-ATPアーゼの作用は、一連の現象における最終段階を表し、壁細胞による塩酸の分泌をもたらす。したがって、この酵素の阻害は、分泌への刺激の性質に関係なく、酸分泌を制御する最も有効でかつ特異的な手段である。そうした作用の機序から予想されるように、オメプラゾールなどのプロトンポンプインヒビターは基礎酸分泌と刺激による酸分泌の両方を阻害することが示されている。オメプラゾールは、壁細胞の分泌膜の酸性環境で蓄積する弱塩基である。そこにおいて、オメプラゾールは酸の中で、続いて酸ポンプのスルフヒドリル基と反応するその活性スルフェンアミド型に転位する。
【0038】
胃の粘膜中では、酸感受性プロトンポンプは頂端膜中と壁細胞の分泌小管に隣接する細管小胞(tubovesicle)中に位置する。したがって、単回用量の後、オメプラゾールは、その活性スルフェンアミド型がH+、K+-ATPアーゼと不可逆的に結合する分泌膜の酸性区画において急速に蓄積する。しかし、細管小胞内に位置するH+、K+-ATPアーゼは活性化オメプラゾールには曝されない。したがって、合成されたH+、K+-ATPアーゼの大部分は、単一オメプラゾール用量の後、遮断を免れることになる。このことは、なぜ治療の約5日後に初めて、オメプラゾールの最大の酸阻害効果がもたらされるかを説明している。
【0039】
H2受容体アンタゴニストは、すべてのH2受容体に対して、主に壁細胞の表面でヒスタミンの作用を競争的に阻害する。治療用量では、これらの薬剤は、基礎酸分泌および夜間酸分泌の両方を低下させるだけでなく、食物、ヒスタミン、インスリンおよびペンタガストリンによって刺激される分泌も低下させることができる。H2受容体アンタゴニストの単回用量によって、摂取後すでに2時間以内で最大の酸阻害効果が得られる。さらに、H2受容体アンタゴニストの高い用量で得られる酸阻害効果は急速に増大するが実質的にその後2〜7日間で衰える傾向があり、他方、オメプラゾールの酸阻害効果は、前記と同じ期間で徐々に増大する。
【0040】
本発明は、延長放出製剤として投与された酸感受性プロトンポンプインヒビターの第1の用量によって、酸分泌のほとんど完全な阻害が達成されるという予期せざる発見に基づくものである。さらに、血漿中にPPIが存在する期間に酸を分泌する活性化プロトンポンプだけが阻害されることが予測されるので、驚くべきことに、急速に放出されたH2受容体アンタゴニストによって壁細胞は非分泌状態におかれても、持続的な酸分泌の阻害を実現することができることを見出した。
【0041】
したがって、本発明によれば、薬理学的に有効な量の酸感受性プロトンポンプインヒビターもしくはその塩と、H2受容体アンタゴニストもしくはその塩と、プロトンポンプインヒビターの遅延放出および/または延長放出をもたらす薬剤として許容される賦形剤とを含む経口医薬剤形が提供される。「プロトンポンプインヒビター」および「H2受容体アンタゴニスト」という用語には、プロトンポンプインヒビターの光学異性体などのその異性体、ならびにそうした異性体の薬剤として許容される塩が含まれる。
【0042】
本発明は、より短い期間での強力な酸の低減が必要であり、作用の迅速な発現が最も重要であり、最大限の酸低減が好ましい胃食道逆流の訴え、例えば胸やけの「オンデマンド」治療に特に適している。H2-遮断剤を単独で与えた後に見られる「減衰」現象を排除することによって、最大の酸阻害効果を7日間維持することができる。これは、胃潰瘍、食道での酸関連損傷およびヘリコバクターピロリ根絶の治療の時間を短縮するために重要である。
【0043】
プロトンポンプインヒビターに関連する上記の問題を克服するために、本発明は以下の3つの部分を含む。
【0044】
1)プロトンポンプインヒビターを、遅延効果(遅延放出)および/または持続効果(延長放出)を有する活性物質を放出する組成物に製剤することによって、効果の迅速な発現に関してこれまで望まれてきたことにまったく反した作用をする組成物が得られる。しかし、これらの酸感受性薬剤物質のための新たなタイプの保護が提供される。
【0045】
この種の放出制御された組成物は当分野の技術者によく知られており、複数の異なる表現がある。
【0046】
本明細書では、「延長放出」という表現は、「長期放出」や「持続放出」の同義語として用いる。どの表現を用いるかに関係なく、共通する機能は、活性物質の放出が遅延され、より長い時間にわたって引き延ばされることである。これは通常、放出を制御する適切な助剤のコーティングもしくは膜に活性物質のコアを付与するか、または活性物質を適切な助剤のマトリックス中に混合することによって得られる。
【0047】
本明細書では、「遅延放出」とは、活性物質を直ちには放出しない組成物を述べるのに用いる。したがって、放出の開始は小腸または大腸に移される。この種の組成物は通常は、組成物が受けるpHの変化、あるいは、組成物が体液と接触したときの時間の関数としてのコーティングの変化によって活性物質のコアに胃-腸管における輸送の間に変化する、コーティングもしくは膜を施すことによって得られる。本発明のタイプの組成物は、組成物を水素イオンから保護するか、あるいは医薬品化合物の胃に対する悪影響から患者を保護するためだけのものである胃酸耐性組成物(「非腸溶性」放出)と混同すべきではない。
【0048】
「制御された放出」や「調節された放出」という表現も本発明のこの部分を説明するために用いるが、これは、より集合的な表現をなすものであり、本発明のタイプの放出機序を具体的には記述していない。
【0049】
すべてのこの種の表現、製剤の原則および適切な助剤は当分野の技術者によく知られており、本明細書ではマニュアルの「Pharmaceutics.The Science of Dosage Form Design」、1st edition;Ed.M.E.Aulton、Churchill Livingstone、Edinburgh 1988を参照する。この文献を参照により本明細書に組み込む。289〜305頁を特に参考にする。
【0050】
本明細書で提供する基本的組成物を他の助剤の添加と組み合わせることができることは明らかである。したがって、例えばプロトンポンプインヒビターをアルカリ反応性物質と混合して、胃を通過する間に膜もしくはマトリックス構造を通過できる少量の水素イオンを中和することができる。この手段は必ず必要というわけではないが、より完全な組成物をもたらす。同様の方法で、胃酸耐性コーティングを、組成物の膜もしくはマトリックス部分の外側に施すことができる。他の実施形態では、これらの2つの製剤手段を同時に用いることができる。
【0051】
2)pHの増大の発現が遅過ぎるという問題は、明らかに、さらに放出を遅らせるか、時間を延長させることによっては解決されない。しかし、続いて放出された酸感受性プロトンポンプインヒビターの作用の発現を危うくすることなく、効果を迅速に発現する(迅速な放出によって得られる)H2受容体アンタゴニストを投与することが可能であることが分かった。PPIの重要な特徴は、その効果を媒介するために活性ポンプが必要であるということなので、これは予期されなかったことである。H2受容体アンタゴニストの影響のある間、壁細胞は休止状態におかれる。休止状態では、壁細胞は酸を生成せずポンプは不活性である。PPIによる酸生成の阻害は壁細胞での蓄積によってこれらのポンプが活性状態にある場合だけ起こり、それによって後続する薬物の活性化がポンプの阻害をもたらす。したがって、本発明は、同時に投与されたPPIの効果を相殺することなく、ヒスタミン2受容体アンタゴニストからの酸分泌の迅速な阻害を活用する新規の薬理学的組成物を提供する。
【0052】
3)PPIの作用様式およびH+、K+-ATPアーゼの生化学の最近の知見からでは、PPIの第1の用量(上記を参照)で酸分泌の最大の阻害をいかに達成するかは明らかではない。しかし、PPIが放出される期間を延ばすことによって、酸分泌の予期しない効果的な第1用量による阻害がもたらされることが分かった。PPIが血液中に存在する期間が長くなることによって、新たに合成されたポンプは連続的に不活性化されることになる。これは予期されなかったことであるが、ポンプの初期の阻害に続いて、分泌空間でのpHは上昇し、薬物は脱プロトン化し、小管から拡散してもどる。さらに、PPI作用における明らかに重要な第2の段階である、酸触媒による活性スルフェンアミドへの転換は起こらない。
【0053】
ここで述べた組合せは2つの方法で得られる。第1は、プロトンポンプインヒビターの遅延放出性/延長放出性を有する別個の用量を、H2受容体アンタゴニストの別個の用量と同時に投与することができる。あるいは、異なる放出プロファイルを有するこれらの2つの物質を同じ調製物中に混ぜることができる。複数の実施例によって、これがどのように適切に行われるかが示されよう。
【0054】
したがって、本発明は第1の用量の後ですでに、持続した酸抑制を提供する。これは次のような従来技術で提案された製品では得られない。
H2遮断剤は最初の6〜8時間活性であるだけである。
H2遮断剤+制酸剤は急速な発現をもたらすが、6〜8時間活性であるだけである。
第1の用量の後で、PPIはまったく作用をしない。
PPI+制酸剤は、制酸剤効果によって約1時間活性である。
第1の用量の後で、PPI光学異性体はその最大可能性に到達しない。
PPI遅行放出だけでは、5〜6時間後で初めて効果がもたらされる。
【0055】
したがって、本発明は、従来技術の製剤を凌ぐ重要な改善は提供する。改良されたこの効果は、本発明の独特の調製によって得られた予期しない臨床的/生理学的効果、すなわちH2遮断剤の急速な放出と一緒になったPPIの遅延効果/延長効果によるものと考えられる。
【0056】
プロトンポンプインヒビターと遅延放出のための組成物の組合せを開示しているいくつかの公開特許が知られている。ここでは米国特許第6132768号、同6274173Bl号およびドイツ特許第DE19925710Al号を参照する。これらの文献は水素イオンによって引き起こされる分解と変色に対してプロトンポンプインヒビターの安定性を高めることを指向している。しかし、これらはプロトンポンプインヒビターとH2受容体アンタゴニストの組合せとそれによって得られる予期せざる利点については何も教示していない。
【0057】
さらに、胃酸分泌阻害組成物は国際特許出願PCT/SE02/00757に記載されている。この組成物は酸感受性プロトンポンプインヒビターとH2受容体アンタゴニストの組合せを含んでいるが、本発明の賦形剤系とその予期せざる利点については言及していない。
【0058】
本発明によれば、投与後に胃内の酸性度を低下させるのに有効な量のH2受容体アンタゴニストと、延長された時間にわたってH2受容体アンタゴニストによってなされた低い酸性度を持続させるのに有効な量の酸感受性プロトンポンプインヒビターとを含む経口剤形が提供される。薬理学的に有効な量であるためには、投与から2時間以内に胃のpHを3超に上げ、pHを3超で少なくとも4時間、好ましくは少なくとも8時間保持することができる量であることが好ましい。前記薬理学的に有効な量であるためには、投与後2時間以内に胃のpHを4超に上げ、4超で少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも16時間保持することができる量であることが好ましい。
【0059】
本発明の第1の好ましい態様によれば、H2受容体アンタゴニストは、約2時間以内に胃内の酸性度の最大低減の少なくとも80%の、より好ましくは最大低減の少なくとも95%を提供できる量で提供される。「最大低減」とは、H2受容体アンタゴニストを単独で薬剤として許容される量、すなわちそうした薬物が当技術分野で投与される量で投与して最大限得られる酸の低減である。本明細書では、「H2受容体アンタゴニスト」という用語には、胃の中のヒスタミン型の2受容体と結合して胃酸の分泌を実質的に阻害するか遮断するすべての薬剤が含まれる。治療用量では、そうしたH2受容体アンタゴニストは基礎酸分泌および夜間酸分泌だけでなく、食物、ヒスタミン、インスリンおよびペンタガストリンで刺激された分泌も低下させることができる。本発明によるH2受容体アンタゴニストの例にはシメチジン、ラニチジン、ニザチジンおよびファモチジンがある。これらは通常、薬理学的に許容されるその塩、特に塩酸塩の形態で用いられる。本発明の剤形は、1mg〜800mg、より好ましくは5mg〜400mgのH2受容体アンタゴニストもしくはその塩を含むことが好ましい。
【0060】
本発明の第2の好ましい態様によれば、酸感受性プロトンインヒビターを、ヒスタミンH2アンタゴニストによってもたらされた低酸性度を少なくとも6時間にわたって維持できる量で提供する。酸感受性プロトンポンプインヒビターは、H2受容体アンタゴニストから市場のシェアを急速に奪っている。本明細書では、「酸感受性プロトンポンプインヒビター」という用語は、実質的なH+、K+-ATPアーゼ阻害活性を有するベンズイミダゾール誘導体、特にオメプラゾール、パントプラゾール、ランゾプラゾール、ラベプラゾール、パリプラゾール、レミノプラゾールおよび薬剤として許容されるその塩ならびに光学異性体および光学異性体の塩を含むが、国際特許出願WO97/25066の7〜11頁に開示されている他の化合物(これらを参照により本明細書に組み込む)、ならびに欧州特許第EP005129Al号、同EP174726Al号、同EP166287Al号、ドイツ特許第2163747号、国際特許出願WO90/06925、同WO91/19711、同WO91/19712、同WO94/27988、同WO95/01977に開示されているものも含む。
【0061】
したがって、本発明の剤形は酸感受性プロトンポンプインヒビターもしくはその塩の単回用量当たり1mg〜100mg、より好ましくは5mg〜50mgを含むことが好ましい。酸感受性プロトンポンプインヒビターもしくはその塩は製剤原則によってH2受容体アンタゴニストから分離されている。ここで、遅延放出および/または延長放出のためにプロトンポンプインヒビターだけを膜でコーティングするかまたはこれをマトリックス中に混合する。
【0062】
本発明の第3の好ましい態様によれば、迅速な放出のために製剤したH2受容体アンタゴニストと、遅延放出および/または延長放出のために製剤した酸感受性プロトンポンプインヒビターは、同一薬剤組成物中に含める必要はなく、別々に投与してよい。しかし、狭い時間間隔内、例えば、1時間間隔、特に30分間隔、最も好ましくは10分の間隔で投与する。したがって、胃酸分泌関連の病態を治療するために、酸感受性プロトンポンプインヒビターとH2受容体アンタゴニストとを別々ではあるが、協同的に投与するための対応する用量計画を開示する。
【0063】
したがって、本発明の経口剤形は、遅延放出および/または延長放出のために製剤した酸感受性プロトンポンプインヒビターと、迅速な放出のために製剤したH2受容体アンタゴニストと、任意選択で胃酸抑制剤および/またはアルギン酸塩とを含む。本発明の剤形は、100mg〜1000mgの制酸剤および/またはアルギン酸塩を含むことが好ましい。本発明の制酸剤は水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムおよび炭酸水素ナトリウムのうちの1種または複数を含む。
【0064】
酸感受性プロトンポンプインヒビターが一般に酸に対して敏感である(酸感受性プロトンポンプインヒビター)という事実のために、これらのインヒビターを、胃内での分解からそれを保護して小腸に送り、そこで吸収されるようにする形態で投与する必要がある。新規の本発明では、保護をもたらす遅延放出および/または延長放出のための賦形剤の使用によって、腸溶性コーティング層の既知の欠点(すなわち、プロトンポンプインヒビターの分解速度を増大させることになる、水素イオンの遊離)もなく、これはほぼ解決される。他方、H2受容体アンタゴニストはそうした保護なしで投与することができる。本発明の別の好ましい態様によれば、本発明の目的に都合よく適合させることができる組成物が国際特許出願WO97/25066に開示されているものの中にある。
【0065】
国際特許出願WO97/25066の経口剤形は、本発明の組成物で使用する量と類似したまたは同一の量の酸感受性プロトンポンプインヒビターと、1種または複数の制酸剤および/またはアルギン酸塩とを含む。国際特許出願WO97/25066の組成物を適合させるには、本質的に、まず膜またはマトリックス系を、プロトンポンプインヒビターを含む製剤の一部に加え、次に制酸剤および/またはアルギン酸塩の一部または全量を薬理学的に有効な量のH2受容体アンタゴニストに置き換える。
【0066】
本発明によれば、個々に遅延放出/延長放出コーティングされ、任意選択で腸溶性コーティング層でコーティングされた各単位中に酸感受性プロトンポンプインヒビターを含み、粉末もしくは顆粒を圧縮成形して錠剤にした形態のH2受容体アンタゴニストと組み合わせた経口の多単位錠剤化剤形が提供される。酸感受性プロトンポンプインヒビターの個々の単位を覆う腸溶性コーティング層は、その単位を圧縮成形して1つの錠剤にすることで、個々にコーティングされた単位の酸耐性が有意に影響を受けないような特性を有している。さらに、多単位錠剤化剤形は、活性物質の長期保存時の良好な安定性をもたらす。
【0067】
本発明によれば、分割可能で取り扱いが容易な多単位錠剤化剤形も提供される。そうした多単位錠剤化剤形は、腸溶性コーティング層を任意選択でコーティングし、粉状のH2受容体アンタゴニストと共に圧縮成形した、酸感受性プロトンポンプインヒビターの遅延放出/延長放出コーティングペレットを含む。この剤形は、水に入れたときに急速に崩壊するように発泡性の成分を含むこともできる。次いで、水相のpHを若干酸性にして腸溶性層の溶解を防止しなければならない。この剤形は、嚥下障害の患者や小児科の患者に与えることができる。そうした、分散された妥当なサイズの単位/ペレットの懸濁液は、経口投与のために用いることができ、また経鼻胃管を通して供給することもできる。
【0068】
本発明によれば、遅延放出および/または延長放出のために賦形剤でコーティングされた錠剤コアを形成する錠剤賦形剤と混合した酸感受性プロトンポンプインヒビターと、錠剤コアを包む別の層とを含む錠剤調製物も提供される。この包囲層は薬剤用賦形剤と混合したH2受容体アンタゴニストを含む。錠剤コアをコーティングで覆う前に、錠剤コア上に任意選択で別の層を塗布することができる。別の選択は他のコーティング物の上に腸溶性コーティング層も塗布することである。あるいは調製される錠剤を、それぞれが異なる活性物質を含む別々の層に区分化する。その層のうちの1つは(好ましくは最内層(コア))は、薬剤用賦形剤と混合したコーティングされたペレットの形態の酸感受性プロトンポンプインヒビターを含み、他の層は1種または複数のヒスタミンH2-アンタゴニストを含む。それぞれは薬剤用賦形剤と混合して含む。任意選択で2つの層は、2つの層同士が結合するのを防止するための分離層で分離する。酸感受性プロトンポンプインヒビターを含むコーティングされたコアは、例えば国際特許出願WO00/78284(その開示を参照により本明細書に組み込む)に開示されている手順にしたがって、腸溶性層で有利にコーティングすることもできる。
【0069】
本発明によれば、コーティングされたペレットの形態の酸感受性プロトンポンプインヒビターを、ヒスタミンH2-アンタゴニストと、任意選択で薬剤用賦形剤と混合して、若干酸性の水溶液中に分散させた後に経口投与用にしたサッシェで投与することができる。
【0070】
したがって、本発明の剤形のためには、遅延放出および/または延長放出のためにコーティング層で保護された酸感受性プロトンポンプインヒビターもしくはその塩を含み、任意選択で腸溶性コーティング層も含むことが好ましい。本発明の剤形は、1種または複数の分離層で任意選択で分離された2つの同心状の層であって、一方の層が前記酸感受性プロトンポンプインヒビターもしくはその塩を含み、他方の層が前記H2受容体アンタゴニストもしくはその塩を含む層を含むことが好ましい。
【0071】
内層は酸感受性プロトンポンプインヒビターもしくはその塩を含み、外層はH2受容体アンタゴニストもしくはその塩を含む。好ましい態様によれば外層は崩壊剤を含む。本発明の経口剤形は、例えば錠剤、カプセル剤、分包した散剤/ペレット製剤等の異なった形状をとることができる。
【0072】
さらに、製剤のプロトンポンプ含有部分は、プロトンポンプインヒビターのコア材料にコーティングを施すことによってその遅延放出および/または延長放出効果を発揮することは先に述べてきた。しかし、別の手法は、その代わりにコーティング層すなわち膜系をマトリックス系に取り替えることである。次いで賦形剤を選択して脂質もしくは水不溶性マトリックスを形成する。すなわちマトリックスの機能はプロトンポンプインヒビターの延長放出性を付与することである。
【0073】
本発明によれば、消化不良に関連する病態を治療するのに薬理学的に有効な量の酸感受性プロトンポンプインヒビターもしくはその塩とH2受容体アンタゴニストもしくはその塩を含む経口錠剤化剤形の作製方法であって、その方法が、前記酸感受性プロトンポンプインヒビターもしくはその塩、遅延放出および/または延長放出のための賦形剤のコーティングおよび任意選択で前記第1の層を包む腸溶性コーティングを含む第1の層と、前記第1の層と前記コーティングを包む前記H2受容体アンタゴニストもしくはその塩を含む第2の層とを形成することを含む方法も開示される。消化不良に関連する病態を治療するのに薬理学的に有効な量の酸感受性プロトンポンプインヒビターもしくはその塩と、H2受容体アンタゴニストもしくはその塩とを含む経口剤形の作製方法であって、その方法が、前記酸感受性プロトンポンプインヒビターもしくはその塩を含むペレットを形成するステップと、上記コーティングで前記ペレットを覆うステップと、前記ペレットを、前記H2受容体アンタゴニストもしくはその塩を含む担体(任意選択で崩壊剤を含む)と混合するステップとを含む方法も開示される。上記の本発明の方法は、任意選択でフィルム被覆ステップが後続する最終錠剤形成ステップをさらに含む。
【0074】
本発明の経口剤形の作成のための別の方法は、胃腸の流体中で崩壊してその内容物を放出することができるカプセルに、粉末もしくは顆粒の形態でコーティングされたプロトンポンプインヒビターペレットとH2受容体アンタゴニストを含む混合物を充てんすることを含む。
【0075】
作製方法に関して、製剤のプロトンポンプ含有部分は、プロトンポンプインヒビターのコア材料にコーティングを施すことによってその遅延放出および/または延長放出効果を発揮することは先に述べてきた。しかし、別の手法は、その代わりにコーティング層すなわち膜系をマトリックス系に取り替えることである。次いで賦形剤を選択して脂質もしくは水不溶性マトリックスを形成する。すなわちマトリックスの機能はプロトンポンプインヒビターの延長放出性を付与することである。
【0076】
しかし、本発明の医薬剤形の使用は、胃酸分泌関連の病態に苦しむ患者に迅速で持続性のある軽減を提供することに限定されるものではない。阻害の維持と一緒になった胃酸分泌の阻害の迅速な発現(酸感受性プロトンポンプインヒビターを含む組成物の反復投与、好ましくは本発明の組成物の反復投与によって)は、望む限り、そのためには胃内のpHを4超にできるだけ長い期間保持することが認識されている胃潰瘍および十二指腸潰瘍ならびに食道炎の治癒(Huang J Q and Hunt R H、「pH,healing rate and symptom relief in patients with GERD」、Yale J Biol Med 1999、72:181〜94頁)に対して正の効果があることを期待できる。したがって、本発明の組成物は、胃のpHを4超に長い期間、例えば4時間以上保持されることも好ましい。
【0077】
本発明の剤形は、ヘリコバクターピロリを根絶するために、1種または複数の抗生物質製剤と一緒に用いることもできる。
【0078】
本発明によれば胃酸分泌に関連した障害を治療する方法であって、本発明の剤形の投与、あるいは、一方が、遅延放出および/または延長放出のために製剤した薬理学的に有効な量の酸感受性プロトンポンプインヒビターもしくはその塩を含み、他方が、迅速な放出のために製剤した薬理学的に有効な量のH2受容体アンタゴニストもしくはその塩を含む2つの別の経口剤形の併用投与を含む方法も開示される。
【0079】
さらに、本発明によれば、本発明の剤形の投与、あるいは、一方が、薬理学的に有効な量の酸感受性プロトンインヒビターもしくはその塩を含み、他方が、薬理学的に有効な量のH2受容体アンタゴニストもしくはその塩を含む2つの別の経口剤形の併用投与を含み、H.ピロリに対して有効な1種または複数の抗生物質製剤の投与を組み合わせた、ヘリコバクターピロリによる感染症を治療する方法が開示される。
【0080】
本発明の上記治療方法のためには、第1の用量の投与から2時間の時点で始まって最後の用量の投与から6時間までにわたる期間の少なくとも95%の期間、胃のpHを4超に保持することができる用量計画、具体的には、その期間が1週間以上、好ましくは2週間以上、より好ましくは4週間以上である投与計画を含むことが好ましい。これに関して、第1の用量の投与から2時間の時点で始まって最後の用量の投与から6時間までにわたる期間の少なくとも95%の期間、具体的には4週間以上胃のpHを3超に保持することができる用量計画も好ましい。
【0081】
これらに限定されないが、図に示す複数の好ましい実施形態を参照して、ここで本発明をより詳細に説明することとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
多単位錠剤化剤形:図1で示した本発明の多単位錠剤化剤形は、任意選択でフィルム層3に覆われた錠剤本体1と錠剤本体1中で無作為に分布する小ペレット2とからなる。ペレット2はラセミ化合物、アルカリ塩またはその光学異性体のうちの1つの形態の酸感受性プロトンポンプインヒビターを含む。酸感受性プロトンポンプインヒビターと任意選択でアルカリ物質を含む個々の単位2(小ビーズ、顆粒またはペレット)は、遅延放出物および/または延長放出物を有する層と任意選択で追加の腸溶性コーティング層でコーティングされている。次いでコーティングされた単位2を、H2受容体アンタゴニストおよび一緒に錠剤本体1を形成する従来の錠剤賦形剤と混合する。H2受容体アンタゴニストと錠剤賦形剤は乾式で混合するか、湿式で混合して顆粒にすることができる。コーティングされた層状化単位、H2受容体アンタゴニストおよび賦形剤の混合物を圧縮成形して多単位錠剤化剤形にする。「個々の単位」という表現は、以下でプロトンポンプインヒビターペレットと称する小ビーズ、顆粒またはペレットを意味する。本発明のさらに別の実施形態では、H2受容体アンタゴニストも、「個々の単位」上にコーティングする。次に、胃-腸管において迅速に放出されるために、H2受容体アンタゴニストは、遅延放出および/または延長放出および腸溶性放出のためのコーティング層に対して周縁部に位置していなければならない。混合物を圧縮成形して錠剤にする際、コーティングされたペレットの酸耐性にあまり影響を与えないように注意しなければならない。酸感受性プロトンポンプインヒビターを含むコーティング層状化ペレットのためのコア材料については、国際特許出願WO97/25066の13頁の第2段〜最終段から15頁の第2段の最後を参照されたい。これを参照により本明細書に組み込む。遅延放出および/または延長放出を発揮するコーティング層については、米国特許第6274173号を参照されたい。これを参照により本明細書に組み込む。「Pharmaceutics.The Science of Dosage Form Design」、1st edition;Ed.M.E.Aulton、Churchill Livingstone、Edinburgh 1988も参照されたい。特に289〜305頁を参照されたい。腸溶性コーティング層については、国際特許出願WO97/25066、15頁の第2段〜最終段から18頁の第2段の最後を参照されたい。これらを参照により本明細書に組み込む。遅延放出および/または延長放出のための層と、任意選択で腸溶性コーティング層に覆われた酸感受性プロトンポンプインヒビターペレットを、さらに1種または複数の上塗り層で覆うことができる。上塗り層については、国際特許出願WO97/25066、18頁の最終段から19頁、第1段の最後を参照されたい。これらを参照により本明細書に組み込む。H2受容体アンタゴニストは充てん剤、結合剤、崩壊剤および他の薬剤として許容される添加剤などの不活性賦形剤と乾式混合する。混合物を顆粒化液で湿潤塊とする。湿潤塊を、好ましくは3重量%未満の乾燥時減少まで乾燥する。次いで乾燥塊を粋砕して適切なサイズ、好ましくは1mmより小さい顆粒にする。適切な不活性賦形剤は、例えばマンニトール、とうもろこしデンプン、ジャガイモデンプン、低置換のヒドロキシプロピルセルロース、微晶質セルロースおよび架橋ポリビニルピロリドンである。H2受容体アンタゴニストを含む乾燥混合物は、例えば、水もしくはアルコールまたはその混合液に溶解したヒドロキシプロピルセルロースまたはポリビニル-ピロリドンを含む適切な造粒液と混合することができる。あるいは、H2受容体アンタゴニストを薬剤として許容される賦形剤と乾式混合する(上記参照)。上記のように、本発明の別の実施形態では、H2受容体アンタゴニストを、賦形剤と混合して錠剤本体1を形成するのではなく、小単位2上にコーティングすることができる。H2受容体アンタゴニストがどのように混合されているかに関係なく、迅速な放出性を備えていなければならない。
【0083】
多単位錠剤:酸感受性プロトンポンプインヒビターを含むコーティングした層状化ペレットを、H2受容体アンタゴニスト顆粒と混合するか、またはH2受容体アンタゴニストを含む調製された乾燥混合物と混合する。混合物を滑剤と混合し、圧縮成形して多単位錠剤化剤形にする。錠剤化プロセスに適した滑剤は、例えばステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクである。平滑表面を得るために、任意選択で、圧縮成形した錠剤を皮膜形成剤で覆うことができる。そうしたコーティング層はさらに、結合防止剤、着色剤および顔料あるいは他の添加剤などの添加剤を含むことができる。
【0084】
コーティングされたペレットの部分は、好ましくは全錠剤重量の60重量%未満を構成する。したがって、好ましい多単位錠剤製剤は、酸感受性プロトンポンプインヒビターを含む、任意選択で腸溶性コーティング層でコーティングされた遅延放出および/または延長放出コーティングした層化ペレットからなり、任意選択で、アルカリ反応性化合物と混合されており、圧縮成形されて、調製されたH2受容体アンタゴニスト/賦形剤混合物を有する錠剤にされている。任意選択の腸溶性コーティング層は、酸性媒体中で剤形のペレットを不溶性にするが、中性近傍からアルカリ性の媒体、例えば酸感受性プロトンポンプインヒビターの溶解と摂取が望まれる小腸の近位部に存在する胃液中で崩壊/溶解する。次いで、遅延放出コーティング層は、ある期間の後胃腸管内で、または、腸もしくは大腸中のある位置で達した特定のpHで、酸感受性プロトンポンプインヒビターの放出を始めることになる。薬物の吸収が数時間もたらされるようにするために、延長放出コーティング層はプロトンポンプインヒビターの放出を引き伸ばすことになる。錠剤に製剤する前に、遅延放出および/または延長放出コーティングされたプロトンポンプインヒビターペレットを、上塗り層で覆うこともでき、またコア材料と他の層との間に1つまたは複数の分離層を含むこともできる。
【0085】
多単位錠剤の作製方法:この剤形を作製するための方法は、本発明の他の態様を示す。酸感受性プロトンポンプインヒビターの乾式混合(規則的混合物(ordered mixture))、種晶上への噴霧コーティングまたは層状化、または押出/球状化もしくは顆粒化によって、ペレットを製剤した後、ペレットをまず任意選択で分離層で覆い、次いで遅延放出および/または延長放出層で覆い、次いで任意選択で腸溶性コーティング層で覆う。コーティングは上記および添付の実施例のようにして実施する。H2受容体アンタゴニスト混合物の調製物も実施例で説明する。任意選択で、H2受容体アンタゴニストを、遅延放出および/または延長放出層および腸溶性コーティング層を含む既存の層上にコーティングすることができる。
【0086】
上塗りしているか、またはしていないコーティングペレットを、調製したH2受容体アンタゴニストの顆粒もしくは乾燥粉末、錠剤賦形剤および他の薬剤として許容される添加剤と混合し、圧縮成形して錠剤にする。あるいは、コーティングされたプロトンポンプインヒビターペレットを、以下の実施例で述べるようなH2受容体アンタゴニストを含む第2の層で覆うことができる。さらに、図2に示すように、コーティングされたペレット4を賦形剤5と密に混合して、予備的に圧縮成形し、その後でH2受容体アンタゴニスト調製物7を加えて錠剤全体の塊を最終的に圧縮成形して錠剤にすることができ、任意選択で皮膜形成剤6を用いて平滑表面を得ることができる。図3に示したさらなる代替案として、粉末の形態の酸感受性プロトンポンプインヒビターを錠剤賦形剤と混合し、圧縮成形して、任意選択で分離層で覆われている錠剤8にし、次いで遅延放出および/または延長放出コーティング9で覆うことができる。任意選択で腸溶性コーティング層を施すことができる。そのように作製した錠剤コアを続いてH2受容体アンタゴニスト調製物10で押圧コーティングする。最終的に錠剤を錠剤コーティング11で覆って平滑表面を得ることができる。
【0087】
コーティングされた層状化ペレットの形態の酸感受性プロトンポンプインヒビターを、H2受容体アンタゴニストと一緒に、任意選択で賦形剤と混合してサッシェに充てんすることも可能である。
【0088】
図4は図1の実施形態の圧縮成形されていないコア材料14、15を充てんした硬カプセル剤16を示す。
【0089】
示した例(図1、2、3および4)において、コーティング、コーティング層または層という用語を用いてきた。これらの用語は互換できるものであり、膜という用語とも同じである。呼び方に関係なく、それらが例えばコア材料上への噴霧によって塗布された賦形剤材料のほぼ連続した相に相当している点で共通している。加工の性質からその厚さに関しては、これらの膜は比較的薄いものである。
【0090】
遅延放出および/または延長放出のためのコーティング層(または膜)に適切な賦形剤材料はリン酸カルシウム、エチルセルロース、メタクリレートコポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリビニルアルコールまたはポリ酢酸ビニルなどの非ポリマー系またはポリマー系材料である。
【0091】
さらに、製剤のプロトンポンプ含有部分(図1では2、図2では4、図3では8、図4では15)は、プロトンポンプインヒビターのコア材料にコーティングを施すことによってその遅延放出および/または延長放出効果を発揮することを先に述べた。しかし、別の手法は、その代わりに、コーティング層すなわち膜系をマトリックス系に取り替えることである。次いで賦形剤を選択して脂質もしくは水不溶性マトリックスを形成する。マトリックスの機能はプロトンポンプインヒビターの延長放出性を発揮することである。賦形剤を形成する適切なマトリックスは非ポリマー系またはポリマー系材料、例えばリン酸カルシウム、エチルセルロース、メタクリレートコポリマー、ポリアミド、ポリエチレンもしくはポリ酢酸ビニル、カルナウバワックス、セチルアルコール、水素化植物油、マイクロクリスタリンワックス、モノグリセリドおよびトリグリセリド、ポリエチレングリコールもしくはポリエチレングリコールモノステアレートであり、最も好ましくはカルナウバワックス、セチルアルコール、水素化植物油、マイクロクリスタリンワックス、モノグリセリドおよびトリグリセリド、ポリエチレングリコールもしくはポリエチレングリコールモノステアレートである。最適の放出速度を得るために、親水性の細孔形成用賦形剤を任意選択で加えることができる。適切な親水性の、細孔形成用材料はアルギン酸塩、カルボポール、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはメチルセルロースである。
【0092】
一般に、酸感受性プロトンポンプインヒビターおよび制酸剤またはアルギン酸塩を含む経口医薬剤形を作製するための国際特許出願WO97/25066の方法を、まず、プロトンポンプインヒビターを含む製剤の部分に膜もしくはマトリックス系を加え、次に、制酸剤またはアルギン酸塩の一部もしくは全部の量を、薬理学的に有効な量のH2受容体アンタゴニストで置き換え、制酸剤またはアルギン酸塩の残部(置換が重量で1:1でない場合)を除くかまたは微晶質セルロース、シリカ、ラクトース、マンニトール等の賦形剤で置き換えて、本発明の目的に適合するようにすることができる。
【0093】
本発明による剤形の使用
本発明の剤形は、消化不良および胃酸の生成に関連する他の胃腸障害の治療において、症状からの迅速で持続する軽減を提供するために特に有利である。その剤形は一日に一度かまたは複数回投与する。酸感受性プロトンポンプインヒビターとH2受容体アンタゴニストの典型的な一日量は様々な要素、例えば患者の個別要件、投与の様式、および治療を受ける具体的な病態に応じて変ることになる。一般に各剤形は1mg〜100mgの酸感受性プロトンポンプインヒビターと1〜800mgのH2受容体アンタゴニストを含む。各剤形は5〜50mgの酸感受性プロトンポンプインヒビターと5〜200mgのH2受容体アンタゴニストを含むことが好ましい。多単位錠剤調製物はクエン酸を加えて若干酸性にした水の分散液にも適している。
【実施例1】
【0094】
マグネシウムオメプラゾールおよびシメチジンヒドロクロリドを含む多単位錠剤化剤形;バッチサイズ400錠剤。オメプラゾールMg塩ペレット製造(コア材料、分離層、腸溶性コーティング層および上塗り層について、国際特許出願WO97/25066、22〜23頁のそれぞれの表題部分を参照)については、国際特許出願WO97/25066、最初の2段を参照されたい。その開示全体を参照により本明細書に組み込む。米国特許第6274173号の実施例1〜4(その情報を参照により本明細書に組み込む)に記載されたコーティング方法によって、延長放出形成賦形剤としてエチルセルロースまたはポリ酢酸ビニルを用いて、分離層と腸溶性コーティング層との間に延長放出層を塗布する。
【0095】
錠剤
オメプラゾールMg塩を含む調製ペレット 31.3g
微晶質セルロース 300.0g
シメチジン塩酸塩 40.0g
ジャガイモデンプン 50.0g
水 200.0g
架橋PVP 38.0g
ステアリルフマル酸ナトリウム 4.6g
【0096】
少量のジャガイモデンプンを、熱した純水中に溶解して造粒液を形成させる。シメチジン塩酸塩、ジャガイモデンプンの残分および微晶質セルロースを乾式混合する。造粒液を乾燥混合物に加え、その塊を湿式混合する。湿潤塊をオーブン中50℃で乾燥する。調製した顆粒を振動ミル装置で1mm篩にかけて粋砕した。上塗り層を有するコーティングされたペレット、調製したH2受容体アンタゴニスト顆粒、架橋ポリビニルピロリドンおよびステアリルフマル酸ナトリウムを混合し、円形パンチを備えた打錠機を用いて圧縮成形して錠剤にする。各錠剤中のオメプラゾールの量は約10mgであり、シメチジン塩酸塩の量は約100mgである。
【0097】
若干の変更によって、この多単位錠剤形態を制酸剤(微晶質セルロース300mgの代わりに:微晶質セルロース100g;炭酸カルシウム100mg;酸化マグネシウム100mg;水を除く他のすべての構成要素は上記の量で)を含むようにすることができる。
【実施例2】
【0098】
3層化した錠剤化剤形。この錠剤は酸感受性プロトンポンプインヒビターオメプラゾール、分離層およびシメチジン塩酸塩を含むコア層を含む。バッチサイズは1000錠剤である。
【0099】
第1の錠剤層
シメチジン塩酸塩 200.0g
微晶質セルロース 250.0g
架橋PVP 13.0g
ステアリルフマル酸ナトリウム 3.8g
分離層
微晶質セルロース 80.0g
第2の錠剤層
オメプラゾールマグネシウム塩を含むコーティングされたペレット(実施例1と同様)
78.3g
微晶質セルロース 174.0g
架橋PVP 26.0g
ステアリルフマル酸ナトリウム 1.4g
【0100】
第1の錠剤層の構成要素を乾式混合し、円形パンチを備えた打錠機中で第1の層として予備的に圧縮成形する。微晶質セルロースを第1の層の上に充たしその層の次に分離層を形成させる。第2の錠剤層の構成要素を乾式混合し、分離層の上に充たす。第3の層を圧縮成形して3層の錠剤にする。この錠剤は錠剤コーティング層でコーティングされていてよい。オメプラゾールの量は錠剤当たり約10mgであり、シメチジン塩酸塩の量は約200mgである。
【実施例3】
【0101】
カプセル剤形。No.1硬カプセル剤(16)(図5;容積0.48ml)に、20mgオメプラゾールを含む延長放出コーティングしたオメプラゾールペレット(15)(実施例1と同様にして調製)と、市販のファモチジン20mgからなる乾燥混合物14を充てんして封じる。
【実施例4】
【0102】
分包した散剤/ペレット製剤。15mgランソプラゾールを含む延長放出ペレット(実施例1と同様にして調製)およびファモチジン調製物をクエン酸と乾式混合した。ランソプラゾールおよびファモチジンの塩酸塩各10mgと、200mgの粉末状クエン酸を含むその単回用量部をプラスチックラミネート中に乾式包装する。この組成物は、これを20mlの水に注ぎ、短時間攪拌して飲み込もうとするためのものである。
【実施例5】
【0103】
多単位カプセル剤形。カプセル剤はマグネシウムオメプラゾールとファモチジンの塩酸塩を含む。延長放出コーティング層については、米国特許第6274173号、実施例1〜4を参照されたい。その情報を参照により本明細書に組み込む。腸溶性コーティング層と上塗り層については、国際特許出願WO97/25066、22〜23頁のそれぞれの見出し以下を参照されたい。その情報を参照により本明細書に組み込む。
【0104】
マグネシウムオメプラゾールを球状微晶質セルロースと混合して規則的混合物とする。規則的混合物を、流動床装置中で、ポリ酢酸ビニル、微粉化したラクトース、プロピレングリコールおよびアンモニア(25%)からなる延長放出層でコーティングする。これらの延長放出ペレットを、流動床装置中で、メタクリル酸コポリマー、モノグリセリドおよびジグリセリド、クエン酸トリエチルおよびポリソルベートからなる腸溶性コーティング層でコーティングした。次いで、延長放出/腸溶性コーティングされた規則的単位を、流動床装置中で、ファモチジン塩酸塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムを含む水懸濁液で上塗りする。上塗り層を有する延長放出/腸溶性コーティングされた規則的混合物を、硬カプセル剤中に充てんした。オメプラゾールの量はカプセル剤当たり約10mgであり、ファモチジン塩酸塩の量は約20mgである。
【実施例6】
【0105】
多単位錠剤化剤形。この錠剤はマグネシウムオメプラゾールおよびシメチジン塩酸塩を含む。マグネシウムオメプラゾールをマンニトール顆粒と混合して、実施例5で述べたようにして延長放出コーティング層と腸溶性コーティング層の両方でコーティングされた規則的混合物にする。シメチジン塩酸塩を実施例1で述べたようにして顆粒化する。マグネシウムオメプラゾール、シメチジン顆粒および賦形剤を含むコーティングされた規則的混合物を乾式混合し、圧縮成形して錠剤にする。各錠剤中のオメプラゾールの量は約10mgであり、シメチジンの量は約100mgである。
【実施例7】
【0106】
H2受容体アンタゴニストの即時放出およびプロトンポンプインヒビターの大腸延長放出のための多単位錠剤化剤形。この錠剤はマグネシウムオメプラゾールおよびシメチジン塩酸塩を含む。
【0107】
コア材料
オメプラゾールマグネシウム塩 120g
球状糖種晶(Sugar sphere seed) 150g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 18g
ポリソルベート80 2.4g
純水 562g
【0108】
流動床装置中で懸濁法による層状化を実施した。オメプラゾールマグネシウム塩を、溶解した結合剤とポリソルベート80を含む水懸濁液から球状糖種晶上に噴霧した。球状糖種晶のサイズは0.25〜0.35mmの範囲であった。
【0109】
延長放出層
コア材料(上記による) 200g
Eudragit(登録商標)RTM 100g
ヒドロキシプロピルセルロース 1Og
【0110】
遅延放出層
延長放出層で覆ったペレット(上記による) 250g
Eudragit(登録商標)FS30D 100g
【0111】
流動床装置中で、市販の水をベースにした懸濁液、Eudragit(登録商標)RTMおよびEudragit(登録商標)FS30Dをそれぞれ用いて、調製コア材料を、延長放出層と遅延放出層の両方で覆った。
【0112】
腸溶性コーティング層
遅延放出兼延長放出の層で覆ったペレット(上記による) 250g
メタクリル酸コポリマー(30%懸濁液) 333.7g
クエン酸トリエチル 30g
モノグリセリドおよびジグリセリド(NF) 5g
ポリソルベート80 0.5g
純水 196g
【0113】
メタクリル酸コポリマー、モノグリセリドおよびジグリセリド、クエン酸トリエチルおよびポリソルベートからなる腸溶性コーティング層を、流動床装置中で、延長放出/遅延放出層で覆ったペレット上に噴霧した。腸溶性コーティング層状化ペレットを篩で分級した。
【0114】
錠剤
オメプラゾールMg塩を含む調製ペレット 63.7g
シメチジン塩酸塩 65.0g
炭酸カルシウム 123.9g
水酸化マグネシウム 123.9g
ジャガイモデンプン 52.2g
純水 435g
微晶質セルロース 175g
架橋ポリビドン 50.0g
ステアリルフマル酸ナトリウム 6.0g
【0115】
少量のジャガイモデンプンを熱純水中に溶解して造粒液を生成させた。シメチジン塩酸塩、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムおよびジャガイモデンプンを乾式混合した。造粒液を乾燥混合物に加えて、その塊を湿式混合した。
【0116】
湿潤塊をスチームオーブン中で40℃で乾燥した。調製した顆粒を振動ミル装置で1mm篩を通して粋砕した。
【0117】
多重コーティングされた層状化ペレット、調製顆粒、架橋ポリビドン、微晶質セルロースおよびステアリルフマル酸ナトリウムを混合し、9つの20mm円形パンチを備えた打錠機を用いて、圧縮成形して錠剤にした。各錠剤中のオメプラゾールの量は約20mgであり、シメチジン塩酸塩にも同じ値を用いた。
錠剤の硬さは30Nと測定された。
【0118】
任意選択で得られた錠剤を錠剤コーティング層で覆った。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】遅延放出および/または延長放出コーティングされたペレットの形態で、薬剤担体中に分散されたH2-受容体アンタゴニストと混合して、酸感受性プロトンポンプインヒビターを含む多単位錠剤化剤形の断面を示す図である。
【図2】2つの部分からなる錠剤化剤形であって、その一方が、賦形剤と混合されて酸感受性プロトンポンプインヒビターの遅延放出および/または延長放出コーティングで被覆したペレットを含み、他方が、賦形剤と混合してH2受容体アンタゴニストを含む剤形の断面を示す図である。
【図3】遅延放出および/または延長放出コーティング層で囲まれたコア中にある酸感受性プロトンポンプインヒビターと、コアを包む薬剤担体中に分散したH2受容体アンタゴニストを含む層とを含む多層化錠剤化剤形の断面を示す図である。
【図4】H2受容体アンタゴニストおよび薬剤用賦形剤と混合して、遅延放出および/または延長放出コーティング被覆ペレット中に酸感受性プロトンポンプインヒビターを含むカプセル剤形の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0120】
1 錠剤本体
2 ペレット
3 フィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬理学的に有効な量の酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩と、H2受容体アンタゴニストまたはその塩と、前記酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩の遅延放出および/または延長放出をもたらす少なくとも1種の薬剤として許容される賦形剤とを含み、前記H2受容体アンタゴニストまたはその塩が、前記剤形から急速に放出されるように含まれる経口医薬剤形。
【請求項2】
前記酸感受性プロトンポンプインヒビターが、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、パリプラゾール、レミノプラゾール、薬剤として許容されるその塩、光学異性体および光学異性体の塩から選択される請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
単回用量当たり1mg〜100mgの前記酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩を含む請求項1または2に記載の剤形。
【請求項4】
前記H2受容体アンタゴニストが、シメチジン、ラニチジン、ニザチジンおよびファモチジン、薬剤として許容されるその塩、光学異性体および光学異性体の塩から選択される請求項1に記載の剤形。
【請求項5】
1mg〜800mgのH2受容体アンタゴニストまたはその塩を含む請求項4に記載の剤形。
【請求項6】
前記賦形剤が、前記酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩を含むコア上に塗布した膜の形で、あるいは、前記酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩を前記賦形剤中に混合したマトリックス系の形で、放出制御活性を発揮する請求項1から5のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項7】
前記H2受容体アンタゴニストまたはその塩が、前記酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩および賦形剤を含むコア上に塗布した外層を形成し、前記コアが、前記酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩の遅延放出および/または延長放出を可能とするマトリックスまたは膜の系を形成する請求項1から6のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項8】
前記膜またはマトリックスを形成するのに使用される前記賦形剤が、不活性物質または脂質である請求項1から7のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項9】
前記不活性賦形剤が、リン酸カルシウム、エチルセルロース、メタクリレートコポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリビニルアルコールまたはポリ酢酸ビニルなどの非ポリマー系またはポリマー系材料である請求項8に記載の剤形。
【請求項10】
前記脂質賦形剤が、カルナウバワックス、セチルアルコール、水素化植物油、マイクロクリスタリンワックス、モノグリセリドおよびトリグリセリド、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノステアレートなどの非ポリマー系またはポリマー系材料である請求項8に記載の剤形。
【請求項11】
アルギン酸塩、カルボポール、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはメチルセルロースなどの追加の親水性賦形剤を使用する請求項9または10に記載の剤形。
【請求項12】
腸溶性コーティング層を、前記膜またはマトリックスの系上と、任意選択で前記膜またはマトリックスの系から前記腸溶性コーティングを隔てる層上とに塗布する請求項6から11のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項13】
アルカリ反応性物質を前記酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩と一緒に混合する請求項6から12のいずれかに記載の剤形。
【請求項14】
前記薬理学的に有効な量が、胃のpHを投与後2時間以内に4超に上げ、そのpHを4超に少なくとも4時間保持できる量である請求項1から13のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項15】
前記量が、胃のpHを4超に少なくとも8時間保持できる量である請求項14に記載の剤形。
【請求項16】
前記薬理学的に有効な量が、胃のpHを投与から2時間以内に3超に上げ、そのpHを3超に少なくとも4時間保持することができる量である請求項14または15に記載の剤形。
【請求項17】
前記量が、胃のpHを3超に少なくとも8時間保持することができる量である請求項16に記載の剤形。
【請求項18】
100mg〜1000mgの制酸剤および/またはアルギン酸塩を含む請求項1から17のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項19】
前記制酸剤が、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウムのうちの1種または複数を含む請求項18に記載の剤形。
【請求項20】
一緒になって膜またはマトリックスの系を形成する、前記酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩、および賦形剤が、ペレット、顆粒またはビーズからなる複数の小単位からなる多単位系の形で存在する請求項1から19のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項21】
前記多単位系中の前記小単位が、H2受容体アンタゴニストまたはその塩の外層も含む請求項20に記載の剤形。
【請求項22】
崩壊剤などの薬剤として許容される賦形剤と任意選択で混合するH2受容体アンタゴニストまたはその塩の中に、前記小単位を分散させる請求項20に記載の剤形。
【請求項23】
一方の半分が、マトリックスまたは膜の系を形成することができる賦形剤と混合した酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩を含み、他方の半分が、崩壊剤などの薬剤として許容される賦形剤と任意選択で混合するH2受容体アンタゴニストまたはその塩を含む、その両方の半分を含む請求項1から19のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載のカプセル剤。
【請求項25】
請求項1から23のいずれか一項に記載の分包した散剤/ペレット製剤。
【請求項26】
請求項1から23のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項27】
分割できる請求項26に記載の錠剤。
【請求項28】
水に分散することができる請求項26に記載の錠剤。
【請求項29】
崩壊剤を含む請求項28に記載の錠剤。
【請求項30】
薬理学的に有効な量の酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩と、H2受容体アンタゴニストまたはその塩と、前記酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩の遅延放出および/または延長放出をもたらす少なくとも1種の薬剤として許容される賦形剤とを含み、前記H2受容体アンタゴニストまたはその塩が、前記剤形から急速に放出されるように含まれる、経口医薬剤形の製造方法であって、前記酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩を含む第1の層を形成するステップと、その上に前記少なくとも1種の賦形剤のコーティングを形成するステップと、前記第1の層と前記コーティングとを包む前記H2受容体アンタゴニストまたはその塩を含む第2の層を形成するステップと、続いて、前記第1の層、前記コーティングおよび前記第2の層との組合せ生成物を経口医薬剤形に製剤するステップとを含む方法。
【請求項31】
前記酸感受性プロトンポンプインヒビターが前記少なくとも1種の賦形剤中に囲まれており、前記賦形剤が脂質または水不溶性のマトリックスを形成する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の層をペレットに成形し、続いてこれを前記少なくとも1種の賦形剤でコーティングし、続いて前記H2受容体アンタゴニストまたはその塩を含む担体と混合する請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記担体が薬理学的な崩壊剤を含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記組合せ生成物を製剤して錠剤にする請求項30から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記組合せ生成物を製剤して胃腸流体中で崩壊可能なカプセル剤にする請求項30から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記経口医薬剤形が腸溶性コーティングを備える請求項30から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記酸感受性プロトンポンプインヒビターが、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、パリプラゾール、レミプラゾールおよび薬剤として許容されるその塩、光学異性体および光学異性体の塩からなる群から選択される請求項30から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記H2受容体アンタゴニストが、シメチジン、ラニチジン、ニザチジン、ファモチジンおよび薬剤として許容されるその塩、光学異性体および光学異性体の塩からなる群から選択される請求項30から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
胃酸の分泌に関連した病態の治療用医薬品の製造のための請求項1から29のいずれか一項に記載の経口医薬剤形の使用。
【請求項40】
1種または複数の抗生物質製剤と組み合わせた、ヘリコバクターピロリを根絶するための請求項1から29のいずれか一項に記載の経口医薬剤形の使用。
【請求項41】
胃酸の分泌に関連した病態の治療方法であって、請求項1から29のいずれか一項に記載の経口医薬剤形を、薬剤として有効な量で前記病態に苦しむ個々のヒトまたは動物に投与する方法。
【請求項42】
ヘリコバクターピロリによる感染症の治療方法であって、請求項1から29のいずれか一項に記載の経口医薬剤形を、H.ピロリに対して有効である1種または複数の抗生物質製剤と組み合わせて、薬剤として有効な量で前記感染症に苦しむ個体またはヒトに投与する方法。
【請求項43】
前記経口医薬剤形を、一方の剤形が薬理学的に有効な量の前記酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはその塩を含み、他方の剤形が薬理学的に有効な量の前記H2受容体アンタゴニストまたはその塩を含む、2つの別々の経口剤形として同時に投与する請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
第1の用量の投与後2時間から始まって最後の用量の投与後6時間にわたる期間の少なくとも95%の期間、胃のpHを4超に保持することができる用量計画を含む請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記期間が少なくとも1週間である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記期間が少なくとも2週間である請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記期間が少なくとも4週間である請求項44に記載の方法。
【請求項48】
第1の用量の投与後2時間から始まって最後の用量の投与後6時間にわたる期間の少なくとも95%の期間、具体的には少なくとも4週間、胃のpHを3超に保持することができる用量計画を含む請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−505566(P2006−505566A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545135(P2004−545135)
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001598
【国際公開番号】WO2004/035090
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(505141945)オレクソ・アクチエボラゲット (11)
【Fターム(参考)】