胆汁酸結合剤、血清コレステロール量低下剤、及び血清コレステロール量を低下させる方法
【課題】RJに含まれている胆汁酸結合能や高コレステロール血症改善能を備える特定の成分を有効成分とする胆汁酸結合剤、及び当該特定成分を用いて血清コレステロール量を低下させる方法の提供。
【解決手段】MRJP1、MRJP2、及びMRJP3からなる群より選択される1種以上を有効成分とすることを特徴とする、胆汁酸結合剤;MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、血清コレステロール量低下剤;MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、コレステロールミセルの溶解性低下剤;MRJP1を経口摂取することを特徴とする、血清コレステロール量を低下させる方法。
【解決手段】MRJP1、MRJP2、及びMRJP3からなる群より選択される1種以上を有効成分とすることを特徴とする、胆汁酸結合剤;MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、血清コレステロール量低下剤;MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、コレステロールミセルの溶解性低下剤;MRJP1を経口摂取することを特徴とする、血清コレステロール量を低下させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆汁酸結合能を有するローヤルゼリー由来のタンパク質を有効成分とする胆汁酸結合剤及び血清コレステロール量低減剤、並びに、当該タンパク質を用いた血清コレステロール量を低下させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO)の統計では、世界の死因の第1位は、動脈硬化症等の心臓血管疾患である。血液中のLDL−コレステロール濃度が過剰に高いことが動脈硬化症の主因と考えられており、コレステロール代謝を改善するためのより効果的な医薬品や機能性食品の開発が強く求められている。
【0003】
近年、ローヤルゼリーの摂取により、高コレステロール血症が改善されるという報告がなされている(例えば、非特許文献1〜4参照。)。また、ローヤルゼリーには、一般成分として粗タンパク質が12〜15%含まれているほかに、特殊成分として10−ヒドロキシデセン酸とロイヤリシンが含まれているが、この10−ヒドロキシデセン酸は、高脂血症ラットの血液中のトリグリセリド、総コレステロールを減少させるという報告がなされている(例えば、非特許文献5参照。)。
【0004】
一方で、コール酸を結合させた担体を充填させたカラムを胆汁酸結合アフィニティーカラム(胆汁酸結合能を有する成分に対するアフィニティーカラム)として用い、血清アルブミンを単離する方法(例えば、非特許文献6参照。)や、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いて、大豆タンパク質の中から胆汁酸結合能を有するタンパク質を単離・同定する方法(例えば、非特許文献7及び8参照。)等が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ナカジン(Nakajin)、他4名、生薬学雑誌、1982年、第36巻、第65〜69ページ。
【非特許文献2】ヴィテック(Vittek)、エクスペリエンチア(Experientia)、1995年、第51巻、第927〜935ページ。
【非特許文献3】グオ(Guo)、他6名、ジャーナル・オブ・ニュートリショナル・サイエンス・アンド・ビタミノロジー(Journal of Nutritional Science and Vitaminology)、2007年、第53巻、第345〜348ページ。
【非特許文献4】カマクラ(Kamakura)、他2名、ジャーナル・オブ・ファーマシー・アンド・ファーマコロジー(Journal of pharmacy and pharmacology)、2006年、第58巻、第1683〜1689ページ。
【非特許文献5】ク(Xu)、他2名、ジョン・ヤオ・カイ(Zhong Yao Cai)(英文誌名:ジャーナル・オブ・チャイニーズ・メディシナル・マテリアルズ(Journal of chinese medicinal materials))、2002年、第25巻、第346〜347ページ。
【非特許文献6】パッチンソン(Pattinson)、他2名、ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー(Journal of Chromatography)、1980年、第187巻、第409〜412ページ。
【非特許文献7】マキノ(Makino)、他4名、アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)、1988年、第52巻、第803〜809ページ。
【非特許文献8】ミナミ(Minami)、他3名、アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)、1990年、第54巻、第511〜517ページ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、ローヤルゼリー(以下、RJ)は、働き蜂が下咽頭腺と大腮腺から分泌する乳白色ゼリー状の栄養物質である。ローヤルゼリーは女王蜂幼虫の唯一の食糧であり、様々なビタミン類、ミネラル、糖質、アミノ酸、タンパク質成分を含み、非常に栄養価が高い。また、科学的に立証されてはいないものの、昔から、疲労回復作用、抗アレルギー作用、抗癌作用、免疫増強作用等の多くの薬理作用を有すると考えられており、栄養補助食品や医薬品原料として広く用いられている。このため、RJ由来の成分を有効成分とすることにより、安全な新しい高コレステロール血症予防・改善のための食品や医薬品を開発し得ることが期待される。
【0007】
RJ中には様々な成分が含まれているため、新規の医薬品や機能性食品を開発するためには、RJ中の有効成分の特定が不可欠である。しかしながら、非特許文献1〜4では、RJ自身には、高コレステロール血症改善効果があることは明らかにされているものの、その有効成分については全く解明されておらず、その作用機序も未解明である。
【0008】
本発明は、RJに含まれている胆汁酸結合能や高コレステロール血症改善能を備える特定の成分を有効成分とする胆汁酸結合剤、及び当該特定成分を用いて血清コレステロール量を低下させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いてRJから胆汁酸結合能を有する複数の成分を特定し、これらの成分の胆汁酸結合能や血清コレステロールに対する影響を調べることにより、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) MRJP1、MRJP2、及びMRJP3からなる群より選択される1種以上を有効成分とすることを特徴とする、胆汁酸結合剤、
(2) MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、血清コレステロール量低下剤、
(3) MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、コレステロールミセルの溶解抑制剤、
(4) MRJP1を経口摂取することを特徴とする、血清コレステロール量を低下させる方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の胆汁酸結合剤や血清コレステロール量を低下させる方法においては、RJ由来の胆汁酸結合剤を経口服用することにより、血清コレステロール量を安全に低下させることができる。したがって、本発明の胆汁酸結合剤等は、特に高コレステロール血症や動脈硬化症等の、血清中のコレステロール量の増大に起因する疾患に対する治療や予防効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】参考例1において、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによって、BSA溶液及びOvalbumin溶液を分画し、各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を示したチャート図である。
【図2】実施例1において、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによって、RJタンパク質溶液を分画し、各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を示したチャート図である。
【図3】実施例1において、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによって、RJタンパク質溶液を分画し、得られた分画物を10%のSDS−PAGEした結果、得られたCBB染色像を示した図である。
【図4】実施例2において、ゲル濾過クロマトグラフィーによってRJタンパク質溶液を分画し、各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を示したチャート図である。
【図5】実施例2において、スタンダードの移動度と分子量から得た検量線を示した図である。
【図6】実施例2において、分子量約290kDaの画分を15%のSDS−PAGEした結果、得られたCBB染色像を示した図である。
【図7】実施例2において、分子量約51kDaの画分を15%のSDS−PAGEした結果、得られたCBB染色像を示した図である。
【図8】実施例2において、陰イオンクロマトグラフィーによって分子量約51kDaの画分を分画し、各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を示したチャート図である。
【図9】実施例2において、陰イオンクロマトグラフィーによって得られたピーク1〜4を15%のSDS−PAGEした結果、得られたCBB染色像を示した図である。
【図10】実施例2において、胆汁酸結合能試験により算出された各分子と結合した胆汁酸の割合を示した図である。
【図11】実施例3において、ミセルへのコレステロールの溶解割合を示した図である。
【図12】実施例4において、ラットへのMRJP1の経口投与実験の概要を示した図である。
【図13】実施例4において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の体重の変化を示した図である。
【図14】実施例4において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の1日当たりの食餌摂取量を示した図である。
【図15】実施例4において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の肝臓重量を示した図である。
【図16】実施例4において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の血清総コレステロール量を示した図である。
【図17】実施例5において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の体重の変化を示した図である。
【図18】実施例5において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の1日当たりの食餌摂取量を示した図である。
【図19】実施例5において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の肝臓重量を示した図である。
【図20】実施例5において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の血清総コレステロール量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の胆汁酸結合剤は、MRJP1(Major royal jelly protein 1)、MRJP2、及びMRJP3からなる群より選択される1種以上を有効成分とすることを特徴とする。MRJP1、MRJP2、及びMRJP3は、後記実施例において示すように、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いて、RJから初めて単離・同定された胆汁酸結合タンパク質である。胆汁酸結合アフィニティークロマトグラフィーを使用した胆汁酸結合タンパク質の単離・同定法は、本発明者らにより初めて、RJに対して適用された。
【0014】
MRJP1はRJに含まれているタンパク質全体の約39.4%を占めるタンパク質であり、MRJP2はRJに含まれているタンパク質全体の約21.5%を占めるタンパク質であり、MRJP3はRJに含まれているタンパク質全体の約21.2%を占めるタンパク質である(泉宏樹、米倉政実著。「ローヤルゼリータンパク質のプロテオーム解析」、社団法人全国ローヤルゼリー公正取引協議会、平成20年度報告書(2008年)、第21ページ。)。MRJP1は、432アミノ酸からなるタンパク質であり、一般的にはSDS−PAGEでは約55kDaの分子量として知られている(J.Schmitozova et. al, Cell.Mol.Life Sci., vol.54, p1020-1030 (1998))。また、MRJP1は、アメリカ合衆国のNCBI(国立生物工学情報センター)の配列データベースに、アクセッション番号NP_001011579として登録されている。MRJP2は、452アミノ酸からなるタンパク質であり、一般的にはSDS−PAGEでは約49kDaの分子量として知られている(J.Schmitozova et. al, Cell.Mol.Life Sci., vol.54, p1020-1030 (1998))。また、MRJP2のNCBIのアクセッション番号はNP_001011580である。MRJP3は、544アミノ酸からなるタンパク質であり、一般的にSDS−PAGEでは60〜70kDaの分子量である(J.Schmitozova et. al, Cell.Mol.Life Sci., vol.54, p1020-1030 (1998))。また、MRJP3のNCBIのアクセッション番号はNP_001011601である。
以下、これらのタンパク質を、「本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質」と総称することがある。
【0015】
さらに、本発明においては、MRJP1、MRJP2、又はMRJP3が有する胆汁酸結合能を損なわない限り、MRJP1、MRJP2、又はMRJP3中の1〜数個のアミノ酸を欠失、置換若しくは付加させてもよい。このようなアミノ酸を付加等させたタンパク質も、本発明の胆汁酸結合剤の有効成分とすることができる。例えば、MRJP1、MRJP2、又はMRJP3のN末端やC末端にそれぞれ、1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸を付加することができる。本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質のN末端やC末端に付加させるアミノ酸配列としては、例えば、Hisタグ等の通常、リコンビナントタンパク質の生成に用いられるタグ配列等が挙げられる。
【0016】
本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質のうち、MRJP1は、胆汁酸結合能に加えて、コレステロールミセルの溶解低下作用と、血清コレステロール量低下作用とを有する。すなわち、本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質は、コレステロールミセルの溶解抑制剤及び血清コレステロール量低下剤の有効成分として好適である。なお、MRJP1の1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロールミセルの溶解抑制能や血清コレステロール量低下能を有するタンパク質も、MRJP1と同様にコレステロールミセルの溶解抑制剤及び血清コレステロール量低下剤の有効成分として好適である。
【0017】
食事由来のコレステロールは、レシチン、脂肪酸、胆汁酸等とミセルを形成し、水溶性となり、非撹拌水層(UWL)を通過し、小腸から吸収される。このような小腸におけるコレステロール吸収メカニズムから、本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質は、小腸内において、胆汁酸と結合することにより、コレステロールのミセル形成を抑制する結果、コレステロールの吸収を抑制すると推察される。
【0018】
本発明の胆汁酸結合剤、コレステロールミセルの溶解抑制剤、及び血清コレステロール量低下剤(以下、胆汁酸結合剤等)の有効成分であるRJ由来胆汁酸結合タンパク質は、RJから精製されたものであってもよく、遺伝子組換え技術を用いた公知の発現系により合成されたリコンビナントタンパク質であってもよく、ペプチド合成により得られた合成品であってもよい。例えば、RJタンパク質溶液を胆汁酸結合アフィニティークロマトグラフィーによって分画し、RJ由来胆汁酸結合タンパク質を含有する画分を回収する。この回収された画分を、本発明の胆汁酸結合剤等の有効成分とすることができる。また、RJタンパク質溶液をゲル濾過クロマトグラフィーによって分画し、MRJP1、MRJP2、又はMRJP3を含有する画分を回収する。これらの回収された画分を、本発明の胆汁酸結合剤等の有効成分とすることもできる。
【0019】
本発明の胆汁酸結合剤等は、医薬品やサプリメント等の飲食品として単独で摂取されてもよく、他の飲食用組成物や医薬用組成物と同様に、飲食品や医薬品への添加剤として用いることもできる。
【0020】
本発明の胆汁酸結合剤等の剤型は、特に限定されるものではない。例えば、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤等であってもよい。培養細胞等へ用いられる場合には、乾燥粉末や、水や緩衝液等の適当な溶液に溶解させた液剤であることが好ましい。一方、生物個体へ用いられる場合には、経口投与に適した剤型であることが好ましく、腸溶剤であることがより好ましい。
【0021】
本発明の胆汁酸結合剤等に含まれるRJ由来胆汁酸結合タンパク質は、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。また、これらの胆汁酸結合剤等に含まれるRJ由来胆汁酸結合タンパク質の量は、該RJ由来胆汁酸結合タンパク質の胆汁酸結合能、コレステロールミセル溶解抑制能、又は血清コレステロール低下能が発揮され得る量であれば、特に限定されるものではなく、RJ由来胆汁酸結合タンパク質の種類や、剤型等を考慮して、適宜決定することができる。
【0022】
本発明の胆汁酸結合剤等は、本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質のみからなるものであってもよく、その他の成分を含有するものであってもよい。その他の成分としては、本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質の活性を損なわない限り、どのような成分であってもよく、例えば、本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質以外のRJ由来の成分を含有していてもよく、胆汁酸結合能や血清コレステロール低下能を有する機能性ペプチドを含有していてもよい。その他にも、本発明の胆汁酸結合剤等は、例えば、賦型剤、結合剤、界面活性剤、酸化防止剤、pH調整剤、崩壊剤、滑沢剤、防腐剤、殺菌剤、着色剤、矯味矯臭剤等の、医薬品や飲食品に添加される成分を含有することができる。
【0023】
本発明の胆汁酸結合剤等の製造方法は、含有される本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質の活性を損なわない方法であれば特に限定されるものではなく、通常、機能性タンパク質を含有する飲食用組成物又は医薬用組成物を製造する場合に使用される方法を用いて製造することができる。
【0024】
本発明の胆汁酸結合剤等の投与量は、RJ由来胆汁酸結合タンパク質の胆汁酸結合等の活性が発揮され得る量であれば、特に限定されるものではなく、RJ由来胆汁酸結合タンパク質の種類、対象とする細胞の種類や状態、剤形、投与方法等を考慮して適宜決定することができる。例えば、培養細胞等の生物個体外の細胞へ用いる場合には、本発明の胆汁酸結合剤又はコレステロールミセル溶解抑制剤を、培養液中のRJ由来胆汁酸結合タンパク質の含有量が10mg〜100mg/mLとなるように培養液へ添加することができる。
【0025】
生物個体に摂取させる場合には、本発明の胆汁酸結合剤等の摂取量は、該RJ由来胆汁酸結合タンパク質の胆汁酸結合等の活性が発揮され得る量であれば、特に限定されるものではなく、摂取する人や動物の体重、年齢、性別、剤型等により適宜決定することができる。例えば、RJ由来胆汁酸結合タンパク質の一日当たりの摂取量が300mg〜1g/kgとなるように、1度に又は数回に分けて摂取させることが好ましい。
【0026】
本発明の胆汁酸結合剤等は、経口摂取することにより、生体内において、胆汁酸と結合し、さらに、食事として摂取されたコレステロールのミセルの溶解性を低下させる結果、血清コレステロール量を低減させる。このため、本発明の胆汁酸結合剤等は、高コレステロール血症や動脈硬化症等の、血清中のコレステロール量が過剰となることに起因する疾患の治療や予防に好適である。
【0027】
本発明の血清コレステロール量を低下させる方法(以下、血清コレステロール量低下方法)は、MRJP1、MRJP2、及びMRJP3からなる群より選択される1種以上を経口摂取することを特徴とする。RJ由来胆汁酸結合タンパク質を経口摂取させる生物は、小腸や胆管等の組織を有する動物であれば特に限定されるものではなく、ヒトであってもよく、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ウシ等のヒト以外の動物であってもよい。
【実施例】
【0028】
次に実施例等を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
[参考例1]
<胆汁酸結合アフィニティーカラムの作製>
胆汁酸結合アフィニティーカラムは、カルボジイミドをスペーサーとして、コール酸をカラム担体であるEAH−Sepharose 4Bに結合させることにより作製した。胆汁酸結合アフィニティーカラムの調製方法は、Pattinsonらの方法(非特許文献6)に準じて行った。
具体的には、まず、EAH−Sepharose 4B担体50mL容量に対し、625mLの胆汁酸溶液(スペーサーとして33.4mM 1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide HClと3.7mMのコール酸を含む50%エタノール溶液)をpH6.4で16時間反応させ、担体にコール酸を結合させた。その後、カラムに非吸着の過剰なコール酸溶液を0.5M NaClを含む50%エタノールで洗浄したものを充填することにより、胆汁酸結合アフィニティーカラム(カラムのベッド容量:50mL)を作製した。なお、カラムは使用前に0.02%NaN3溶液にて平衡化した。
【0030】
<胆汁酸結合アフィニティーカラムによる分画>
次いで、作製されたカラムが、実際に胆汁酸結合能を有する化合物に対するアフィニティーを備えているかどうかを、BSAとOvalbuminをアプライすることにより、確認した。カラムからの溶出条件は、マキノらの方法(非特許文献7)に準じて行った。
まず、作製された胆汁酸結合アフィニティーカラムに、1.5mg/mLのBSA溶液又はOvalbumin溶液をアプライした。次に、当該カラムに第1次洗浄液(0.5M NaCl、10mM Tris−HCl、pH8.0)を通し、当該カラム中の担体に吸着していなかった物質を洗浄除去した。次いで、当該カラムに、溶出液(0.5%Sodium deoxycholate、10mM Tris−HCl、pH8.0)を通し、コール酸と結合したタンパク質、すなわち胆汁酸結合能を有するタンパク質を溶出した。最後に、当該カラムに、第2次洗浄液(8M urea、10mM Tris−HCl、pH8.0)を通し、当該カラムに非特異的に結合した物質を溶出した。
【0031】
各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を図1に示す。図1中、「(1)」が第1次洗浄液の画分であり、「(2)」が溶出液の画分であり、「(3)」が第2次洗浄液の画分である。この結果、Ovalbuminは第1次洗浄液の画分に溶出されており、BSAは溶出液の画分に溶出されていた。これらの結果から、作製された胆汁酸結合アフィニティーカラムは、非特許文献7に記載されている胆汁酸結合アフィニティーカラム同様に、Ovalbuminは吸着せず、BSAを吸着することが確認された。
【0032】
[実施例1]
<胆汁酸結合アフィニティーカラムによるRJタンパク質の分画>
参考例1で作製された胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いて、RJタンパク質の分画を行い、胆汁酸結合能を有するタンパク質を単離・精製した。この胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いたRJ由来胆汁酸結合タンパク質の単離精製は、これまで報告が無く、非常に効率的な精製法である。
まず、RJタンパク質溶液を調製した。具体的には、RJ(中国産)に純水を加えて懸濁したものを、孔径10kDaの透析膜を用いて、純水にて72時間透析した。透析膜内液を回収し、凍結乾燥した後、再びNaN3含有トリス緩衝液(0.2%NaN3、10mM Tris−HCl(pH8.0))に懸濁し、117mg/25mLのRJタンパク質溶液(10kDa cut off RJ)を調製した。
【0033】
次いで、参考例1で作製された胆汁酸結合アフィニティーカラムに、RJタンパク質溶液をアプライした後、参考例1と同様にして、第1次洗浄液、溶出液、第2次洗浄液を順次当該カラムにアプライした。各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を図2に示す。図2中、「(1)」、「(2)」、及び「(3)」は図1と同じである。
さらに、溶出液により溶出された画分(図2中の「A」、以下、「画分A」)を回収した。
【0034】
<胆汁酸結合アフィニティーカラムにより単離・精製されたRJ由来胆汁酸結合タンパク質の同定>
胆汁酸結合アフィニティーカラムにより単離・精製されたRJ由来胆汁酸結合タンパク質の同定を行った。
まず、画分Aを孔径10kDaの透析膜を用いて、純水にて4℃、72時間透析・脱塩した。透析膜内液を回収し、凍結乾燥することにより、脱塩画分Aを調製した。
次いで、脱塩画分Aを10%のSDS−PAGEに供し、含まれているタンパク質を分離した。SDS−PAGEの結果を図3に示す。図3中、「std」は分子量マーカーを、「A」は脱塩画分Aを意味し、これらをそれぞれアプライしたものである。この結果、「A」レーンには約49〜75kDaの範囲内に3本のバンド(図3中、(1)〜(3))が検出された。この結果から、脱塩画分A溶液には、胆汁酸と結合する3種類のRJ由来タンパク質が含まれていたことが明らかである。
【0035】
各バンドをSDS−PAGEのゲルから切り出し、還元アルキル化した後、トリプシン処理によりIn−gel digestionを行った。その後、ゲルより抽出したペプチド断片を脱塩精製して、MALDI−TOF/MSにて質量分析を行った。この結果、図3中、バンド(1)はMRJP3、バンド(2)はMRJP1、バンド(3)はMRJP2であると同定された。SDS−PAGEの結果、得られたCBB染色像を画像解析(Image J分析)したところ、これら3種のタンパク質の割合は、MRJP1が76%、MRJP2が22%、MRJP3が2%であった。
【0036】
[実施例2]
RJから単離精製されたMRJP1及びMRJP2の胆汁酸結合能を測定した。
【0037】
<RJからのMRJP1の単離精製>
まず、RJからゲル濾過クロマトグラフィーを用いてMRJP1を精製した。具体的には、まず、実施例1と同様にして調製した23.5mg/5mLのRJタンパク質溶液(
10kDa cut off RJ)を5mL、HiLoad superdex 200p.g(GE healthcare社製)にアプライした。その後、溶出液(20mM Na2HPO4・20mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7.5)を溶出速度1.5mL/minで当該カラムに通し、5mLずつを1画分として回収した。各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を図4に示す。また、RJタンパク質溶液と同時に、当該カラムに36mg/mlのGel Filtration Standard (BIO−RAD社製)をアプライし、移動度(溶出開始からの総溶出量)と、当該画分に含まれる分子の大きさとの関係を調べ、検量線を作成した。作成された検量線を図5に示す。
本発明者らは、前記の胆汁酸結合アフィニティーカラムから溶出した複合体の、ゲル解析において量的に一番多かったMRJP1画分に着目した。図4に示すゲル濾過クロマトグラフィーのうち、画分B(Frac.B:図4中、点線で囲まれた画分)は、図5に示すスタンダードの移動度と分子量から得た検量線から、分子量約290kDa付近であることがわかった。この画分を15%のSDS−PAGEに供したところ、図6に示すように、約55kDaの位置に単一なバンドとして検出された。また、当該画分に含まれている分子に対してMALDI−TOF/MSにて質量分析を行ったところ、MRJP1を含む画分であると判明した。これらの結果から、MRJP1は約55kDaであり、RJ中では、5〜6量体として存在していることが確認された。以下、当該画分をMRJP1画分という。
なお、当該MRJP1画分には、非特許文献5において、高脂血症ラットの血液中のトリグリセリド、総コレステロールを減少させる作用が報告されている10−デセン酸は含まれていないことが、定量的に明らかにされた。
【0038】
<RJからのMRJP2の単離精製>
本発明者らはさらに、前記の胆汁酸結合アフィニティーカラムから溶出した複合体の、ゲル解析において量的に一番多かったMRJP1画分に次いで多かったMRJP2に着目した。図4に示すゲル濾過クロマトグラフィーのうち、画分E(Frac.E:図4中、一点鎖線で囲まれた画分)に含まれているタンパク質を調べた。当該画分Eは、図5に示すスタンダードの移動度と分子量から得た検量線から、分子量約51kDa付近であることがわかった。この画分Eを15%のSDS−PAGEに供したところ、図7に示すように、46〜66kDaの位置に2本のバンドとして検出された。
また、この画分Eを陰イオンクロマトグラフィーに供し、単一のタンパク質に精製した。具体的には、画分Eを結合用溶液(20mM Tris−HCl、pH8.0)で125mg/5mLに希釈した上で、5mLをHiPrep Q FF(GE Healthcare社製)にアプライした。その後、溶出液(20mM Tris−HCl、0.5M NaCl、pH8.0)を用いて、移動相中の塩化ナトリウム濃度を図8中の点線で示すような0〜0.5Mにグラジエントをかけることにより、タンパク質を溶出させた。なお、移動相の移動速度は1.5mL/minとした。
各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を図8に示す。図8中に示す得られたピークのうちの1〜4を、それぞれ15%のSDS−PAGEに供したところ、図9に示すように、ピーク1から2までは単一なバンドとして検出された。そこで、ピーク1及び2を合わせて回収し、当該画分に含まれている分子に対してMALDI−TOF/MSにて質量分析を行ったところ、MRJP2を含む画分であると判明した。以下、当該画分をMRJP2画分という。
【0039】
<透析法による胆汁酸結合試験>
上記で精製されたMRJP1及びMRJP2の胆汁酸結合能の評価を、透析法により行った。ポジティブコントロールとして抗高コレステロール剤であるコレスチラミンを、ネガティブコントロールとしてカゼインをそれぞれ用いた。
具体的には、タウロコール酸含有リン酸緩衝液(50mM タウロコール酸、100mMリン酸緩衝液、pH7.4)中に、コレスチラミン、カゼイン、MRJP1画分、MRJP2画分、又は生RJを凍結乾燥させたものを、それぞれ100mg/mLとなるように添加したものを反応溶液とした。これらの反応溶液を37℃で2時間インキュベートした後、室温で72時間透析した。透析膜外液に含まれている総胆汁酸量を測定することにより、透析膜内液に含まれている(すなわち、各分子と結合した)胆汁酸の割合を算出した。
算出された各分子と結合した胆汁酸の割合を図10に示す。図10中、「Intact RJ」は、生RJを凍結乾燥させたものを添加した反応溶液の結果である。この結果、胆汁酸結合能はネガティブコントロール群のカゼイン(33%)と比較し、MRJP1は46%、MRJP2は37%であった。すなわち、MRJP1のほうがMRJP2よりも高い胆汁酸結合能を示した。
【0040】
[実施例3]
<コレステロールミセル溶解性試験>
RJから単離精製されたMRJP1及びMRJP2のコレステロールミセル溶解抑制能を測定した。MRJP1及びMRJP2は、実施例2において調製したMRJP1画分及びMRJP2画分をそれぞれ用いた。また、ネガティブコントロールとしてカゼインを用いた。
【0041】
まず、最終濃度が3.7kBq/mL(2.1Gbq/mmol,NEN)となるように[4−14C]コレステロール/クロロホルム(Perkin Elmer Life Science社製)を、2μMとなるようにコレステロール(片山化学工業社製)/クロロホルムを、20μMとなるようにOleic acid(SIGMA社製)/クロロホルムを、5μMとなるようにMono oleoyl−rac−Glycerol(SIGMA社製)/クロロホルムを、0.6mMとなるようにL−α−phosphatidylcholine(SIGMA社製)/クロロホルムを20mL容量のガラスバイアルに分取し、よく混合した後、窒素ガスを吹き付け乾固させた。その後、得られた乾固物を、6.6mMのTaurocholic acid(SIGMA社製)及び132mM NaClを含む15mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させた。ボルテックミキサーで2分間攪拌した後、超音波処理(25W、output6、3分間)し、その後37℃で24時間振とうしながらインキュベートすることにより、[14C]−コレステロールミセル溶液を調製した。
【0042】
コレステロールミセル溶解性試験は、具体的には、[14C]−コレステロールミセル溶液に、最終濃度が10mg/mLとなるようにCasein、MRJP1、又はMRJP2を添加したものを反応溶液とした。各反応溶液をボルテックミキサーで2分間攪拌した後、超音波処理(25W、output 6、3分間)し、37℃で1時間インキュベートした後、380μLを37℃、100,000×gで1時間遠心分離を行い、上清を回収した。回収された上清50μLに、乳化シンチレーターを10mL加えて、液体シンチレーションカウンターにより、上清中の[14C]−コレステロールを測定した。上清中には、水溶液中に安定して溶解しているコレステロールミセルが存在する。このため、反応溶液に予め添加した[14C]−コレステロール量に対する上清中の[14C]−コレステロール量の割合から、水溶液中に安定して溶解しているコレステロールミセルの割合が算出できる。
【0043】
ミセルへのコレステロールの溶解割合を図11に示す。各試験区は、Duncan’s multiple range testによりp<0.05で統計学的な有意差検定処理した。その結果、ネガティブコントロール群のカゼイン(79%)と比較し、MRJP1は46%であり、有意に低下していた。これに対してMRJP2は93%であり、有意な上昇が見られた。すなわち、MRJP1はコレステロールミセル溶解抑制能を有することが明らかである。
【0044】
[実施例4]
<ラットへの経口投与試験>
高コレステロール血症のモデルである1%コレステロール摂取ラットに、RJから単離精製されたMRJP1を経口投与し、血清コレステロールに与える影響を調べた。MRJP1は、実施例2において調製したMRJP1画分を用いた。また、ネガティブコントロールとしてカゼインを用いた。
図12に示すように、実験期間の3日間、コレステロールを含む食餌を与えたラットに、1日1回、MRJP1又はカゼインを経口投与した。3回目の投与から24時間経過後、4時間絶食させた後、心臓採血によりラットを屠殺した。採取された血液を用いて、血清コレステロールを測定した。さらに解剖し、肝臓重量を測定した。その他の具体的な実験条件は以下の通りである。
【0045】
実験群:4週齢のWistar系雄ラット(70g)
実験群数:n=9
投与開始時間:AM8:00
試験飼育期間:3日間(予備飼育3日間)
絶食時間:4時間
実験サンプル:カゼインナトリウム(CS)又はMRJP1(MR)
サンプル投与量:300mg/kg(B.W.)/day、又は600mg/kg(B.W.)/day
食餌組成:20%カゼイン+1%コレステロール
【0046】
血清は、3000rpm、15分間の遠心分離により調製した。血清コレステロールの定量は酵素法、具体的には市販のキット(コレステロールE−テストワコー;和光純薬工業社製))を用いて測定した。同様にして、HDL−コレステロールはHDL−コレステロールE−テストワコー(和光純薬工業社製)を用いて測定した。LDL+VLDL−コレステロールは計算により求めた。
【0047】
各種測定結果などを図13〜16に示す。なお、各数値は、1群9匹の平均±標準誤差とし、実験結果の統計的分析には、Duncan’s multiple range testとStudent’s t−testを用いた。
各実験群の体重の変化を図13に、1日当たりの食餌摂取量を図14に、肝臓重量を図15に、それぞれ示す。この結果、各群のうち、カゼインナトリウム(CS)投与群とMRJP1(MR)投与群とでは、いずれも特に差は観察されなかった。
一方、図16のように、血清総コレステロール量は、300mg/kg(B.W.)/dayの投与群と600mg/kg(B.W.)/dayの投与群のいずれにおいても、カゼインナトリウム(CS)投与群よりもMRJP1(MR)投与群のほうが、血清総コレステロール量が低下する傾向が観察された。特に600mg/kg(B.W.)/dayの投与群では、カゼインナトリウム(CS)投与群よりもMRJP1(MR)投与群のほうが、血清総コレステロール量が有意に(Duncan’s multiple range testとStudeut’s t−testの両方でp<0.05)低下していた。
これらの結果から、単離精製されたMRJP1を経口投与することにより、血清総コレステロール量を低下させられることが明らかである。
【0048】
[実施例5]
<ラットへの経口投与試験>
実験群数を10匹(n=10)、試験飼育期間を7日間(予備飼育3日間)、サンプル投与量を600mg/kg(B.W.)/dayとした以外は、実施例4と同様にして、高コレステロール血症のモデルである1%コレステロール摂取ラットに、RJから単離精製されたMRJP1を7日間経口投与し、血清コレステロールに与える影響を調べた。
【0049】
各実験群の体重の変化を図17に、1日当たりの食餌摂取量を図18に、肝臓重量を図19に、血清総コレステロール量を図20に、それぞれ示す。なお、各数値は、1群10匹の平均±標準誤差とし、実験結果の統計的分析には、Student’s t−testを用いた。
この結果、体重の変化、1日当たりの食餌摂取量、及び肝臓重量は、カゼインナトリウム(CS)投与群とMRJP1(MR)投与群とでは、いずれも有意差は観察されなかった。
一方、血清総コレステロール量は、カゼインナトリウム(CS)投与群よりもMRJP1(MR)投与群のほうが、血清総コレステロール量が有意に(約26%)低下した(Student’s t−testでp<0.05)。特に、血清LDLコレステロール及び血清VLDLコレステロールの総量が有意に低下した。
これらの結果から、単離精製されたMRJP1を7日間経口投与することにより、血清総コレステロール量を低下させられることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の胆汁酸結合剤や血清コレステロール量低下方法は、RJ由来の胆汁酸結合剤を経口服用することにより、血清コレステロール量を安全に低下させることができる。このため、本発明の胆汁酸結合剤等は、特に高コレステロール血症や動脈硬化症の治療や予防のための医薬や機能性食品等の有効成分として利用が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆汁酸結合能を有するローヤルゼリー由来のタンパク質を有効成分とする胆汁酸結合剤及び血清コレステロール量低減剤、並びに、当該タンパク質を用いた血清コレステロール量を低下させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO)の統計では、世界の死因の第1位は、動脈硬化症等の心臓血管疾患である。血液中のLDL−コレステロール濃度が過剰に高いことが動脈硬化症の主因と考えられており、コレステロール代謝を改善するためのより効果的な医薬品や機能性食品の開発が強く求められている。
【0003】
近年、ローヤルゼリーの摂取により、高コレステロール血症が改善されるという報告がなされている(例えば、非特許文献1〜4参照。)。また、ローヤルゼリーには、一般成分として粗タンパク質が12〜15%含まれているほかに、特殊成分として10−ヒドロキシデセン酸とロイヤリシンが含まれているが、この10−ヒドロキシデセン酸は、高脂血症ラットの血液中のトリグリセリド、総コレステロールを減少させるという報告がなされている(例えば、非特許文献5参照。)。
【0004】
一方で、コール酸を結合させた担体を充填させたカラムを胆汁酸結合アフィニティーカラム(胆汁酸結合能を有する成分に対するアフィニティーカラム)として用い、血清アルブミンを単離する方法(例えば、非特許文献6参照。)や、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いて、大豆タンパク質の中から胆汁酸結合能を有するタンパク質を単離・同定する方法(例えば、非特許文献7及び8参照。)等が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ナカジン(Nakajin)、他4名、生薬学雑誌、1982年、第36巻、第65〜69ページ。
【非特許文献2】ヴィテック(Vittek)、エクスペリエンチア(Experientia)、1995年、第51巻、第927〜935ページ。
【非特許文献3】グオ(Guo)、他6名、ジャーナル・オブ・ニュートリショナル・サイエンス・アンド・ビタミノロジー(Journal of Nutritional Science and Vitaminology)、2007年、第53巻、第345〜348ページ。
【非特許文献4】カマクラ(Kamakura)、他2名、ジャーナル・オブ・ファーマシー・アンド・ファーマコロジー(Journal of pharmacy and pharmacology)、2006年、第58巻、第1683〜1689ページ。
【非特許文献5】ク(Xu)、他2名、ジョン・ヤオ・カイ(Zhong Yao Cai)(英文誌名:ジャーナル・オブ・チャイニーズ・メディシナル・マテリアルズ(Journal of chinese medicinal materials))、2002年、第25巻、第346〜347ページ。
【非特許文献6】パッチンソン(Pattinson)、他2名、ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー(Journal of Chromatography)、1980年、第187巻、第409〜412ページ。
【非特許文献7】マキノ(Makino)、他4名、アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)、1988年、第52巻、第803〜809ページ。
【非特許文献8】ミナミ(Minami)、他3名、アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)、1990年、第54巻、第511〜517ページ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、ローヤルゼリー(以下、RJ)は、働き蜂が下咽頭腺と大腮腺から分泌する乳白色ゼリー状の栄養物質である。ローヤルゼリーは女王蜂幼虫の唯一の食糧であり、様々なビタミン類、ミネラル、糖質、アミノ酸、タンパク質成分を含み、非常に栄養価が高い。また、科学的に立証されてはいないものの、昔から、疲労回復作用、抗アレルギー作用、抗癌作用、免疫増強作用等の多くの薬理作用を有すると考えられており、栄養補助食品や医薬品原料として広く用いられている。このため、RJ由来の成分を有効成分とすることにより、安全な新しい高コレステロール血症予防・改善のための食品や医薬品を開発し得ることが期待される。
【0007】
RJ中には様々な成分が含まれているため、新規の医薬品や機能性食品を開発するためには、RJ中の有効成分の特定が不可欠である。しかしながら、非特許文献1〜4では、RJ自身には、高コレステロール血症改善効果があることは明らかにされているものの、その有効成分については全く解明されておらず、その作用機序も未解明である。
【0008】
本発明は、RJに含まれている胆汁酸結合能や高コレステロール血症改善能を備える特定の成分を有効成分とする胆汁酸結合剤、及び当該特定成分を用いて血清コレステロール量を低下させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いてRJから胆汁酸結合能を有する複数の成分を特定し、これらの成分の胆汁酸結合能や血清コレステロールに対する影響を調べることにより、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) MRJP1、MRJP2、及びMRJP3からなる群より選択される1種以上を有効成分とすることを特徴とする、胆汁酸結合剤、
(2) MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、血清コレステロール量低下剤、
(3) MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、コレステロールミセルの溶解抑制剤、
(4) MRJP1を経口摂取することを特徴とする、血清コレステロール量を低下させる方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の胆汁酸結合剤や血清コレステロール量を低下させる方法においては、RJ由来の胆汁酸結合剤を経口服用することにより、血清コレステロール量を安全に低下させることができる。したがって、本発明の胆汁酸結合剤等は、特に高コレステロール血症や動脈硬化症等の、血清中のコレステロール量の増大に起因する疾患に対する治療や予防効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】参考例1において、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによって、BSA溶液及びOvalbumin溶液を分画し、各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を示したチャート図である。
【図2】実施例1において、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによって、RJタンパク質溶液を分画し、各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を示したチャート図である。
【図3】実施例1において、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによって、RJタンパク質溶液を分画し、得られた分画物を10%のSDS−PAGEした結果、得られたCBB染色像を示した図である。
【図4】実施例2において、ゲル濾過クロマトグラフィーによってRJタンパク質溶液を分画し、各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を示したチャート図である。
【図5】実施例2において、スタンダードの移動度と分子量から得た検量線を示した図である。
【図6】実施例2において、分子量約290kDaの画分を15%のSDS−PAGEした結果、得られたCBB染色像を示した図である。
【図7】実施例2において、分子量約51kDaの画分を15%のSDS−PAGEした結果、得られたCBB染色像を示した図である。
【図8】実施例2において、陰イオンクロマトグラフィーによって分子量約51kDaの画分を分画し、各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を示したチャート図である。
【図9】実施例2において、陰イオンクロマトグラフィーによって得られたピーク1〜4を15%のSDS−PAGEした結果、得られたCBB染色像を示した図である。
【図10】実施例2において、胆汁酸結合能試験により算出された各分子と結合した胆汁酸の割合を示した図である。
【図11】実施例3において、ミセルへのコレステロールの溶解割合を示した図である。
【図12】実施例4において、ラットへのMRJP1の経口投与実験の概要を示した図である。
【図13】実施例4において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の体重の変化を示した図である。
【図14】実施例4において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の1日当たりの食餌摂取量を示した図である。
【図15】実施例4において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の肝臓重量を示した図である。
【図16】実施例4において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の血清総コレステロール量を示した図である。
【図17】実施例5において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の体重の変化を示した図である。
【図18】実施例5において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の1日当たりの食餌摂取量を示した図である。
【図19】実施例5において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の肝臓重量を示した図である。
【図20】実施例5において、ラットへのMRJP1の経口投与実験における各ラット群の血清総コレステロール量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の胆汁酸結合剤は、MRJP1(Major royal jelly protein 1)、MRJP2、及びMRJP3からなる群より選択される1種以上を有効成分とすることを特徴とする。MRJP1、MRJP2、及びMRJP3は、後記実施例において示すように、胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いて、RJから初めて単離・同定された胆汁酸結合タンパク質である。胆汁酸結合アフィニティークロマトグラフィーを使用した胆汁酸結合タンパク質の単離・同定法は、本発明者らにより初めて、RJに対して適用された。
【0014】
MRJP1はRJに含まれているタンパク質全体の約39.4%を占めるタンパク質であり、MRJP2はRJに含まれているタンパク質全体の約21.5%を占めるタンパク質であり、MRJP3はRJに含まれているタンパク質全体の約21.2%を占めるタンパク質である(泉宏樹、米倉政実著。「ローヤルゼリータンパク質のプロテオーム解析」、社団法人全国ローヤルゼリー公正取引協議会、平成20年度報告書(2008年)、第21ページ。)。MRJP1は、432アミノ酸からなるタンパク質であり、一般的にはSDS−PAGEでは約55kDaの分子量として知られている(J.Schmitozova et. al, Cell.Mol.Life Sci., vol.54, p1020-1030 (1998))。また、MRJP1は、アメリカ合衆国のNCBI(国立生物工学情報センター)の配列データベースに、アクセッション番号NP_001011579として登録されている。MRJP2は、452アミノ酸からなるタンパク質であり、一般的にはSDS−PAGEでは約49kDaの分子量として知られている(J.Schmitozova et. al, Cell.Mol.Life Sci., vol.54, p1020-1030 (1998))。また、MRJP2のNCBIのアクセッション番号はNP_001011580である。MRJP3は、544アミノ酸からなるタンパク質であり、一般的にSDS−PAGEでは60〜70kDaの分子量である(J.Schmitozova et. al, Cell.Mol.Life Sci., vol.54, p1020-1030 (1998))。また、MRJP3のNCBIのアクセッション番号はNP_001011601である。
以下、これらのタンパク質を、「本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質」と総称することがある。
【0015】
さらに、本発明においては、MRJP1、MRJP2、又はMRJP3が有する胆汁酸結合能を損なわない限り、MRJP1、MRJP2、又はMRJP3中の1〜数個のアミノ酸を欠失、置換若しくは付加させてもよい。このようなアミノ酸を付加等させたタンパク質も、本発明の胆汁酸結合剤の有効成分とすることができる。例えば、MRJP1、MRJP2、又はMRJP3のN末端やC末端にそれぞれ、1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸を付加することができる。本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質のN末端やC末端に付加させるアミノ酸配列としては、例えば、Hisタグ等の通常、リコンビナントタンパク質の生成に用いられるタグ配列等が挙げられる。
【0016】
本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質のうち、MRJP1は、胆汁酸結合能に加えて、コレステロールミセルの溶解低下作用と、血清コレステロール量低下作用とを有する。すなわち、本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質は、コレステロールミセルの溶解抑制剤及び血清コレステロール量低下剤の有効成分として好適である。なお、MRJP1の1〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロールミセルの溶解抑制能や血清コレステロール量低下能を有するタンパク質も、MRJP1と同様にコレステロールミセルの溶解抑制剤及び血清コレステロール量低下剤の有効成分として好適である。
【0017】
食事由来のコレステロールは、レシチン、脂肪酸、胆汁酸等とミセルを形成し、水溶性となり、非撹拌水層(UWL)を通過し、小腸から吸収される。このような小腸におけるコレステロール吸収メカニズムから、本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質は、小腸内において、胆汁酸と結合することにより、コレステロールのミセル形成を抑制する結果、コレステロールの吸収を抑制すると推察される。
【0018】
本発明の胆汁酸結合剤、コレステロールミセルの溶解抑制剤、及び血清コレステロール量低下剤(以下、胆汁酸結合剤等)の有効成分であるRJ由来胆汁酸結合タンパク質は、RJから精製されたものであってもよく、遺伝子組換え技術を用いた公知の発現系により合成されたリコンビナントタンパク質であってもよく、ペプチド合成により得られた合成品であってもよい。例えば、RJタンパク質溶液を胆汁酸結合アフィニティークロマトグラフィーによって分画し、RJ由来胆汁酸結合タンパク質を含有する画分を回収する。この回収された画分を、本発明の胆汁酸結合剤等の有効成分とすることができる。また、RJタンパク質溶液をゲル濾過クロマトグラフィーによって分画し、MRJP1、MRJP2、又はMRJP3を含有する画分を回収する。これらの回収された画分を、本発明の胆汁酸結合剤等の有効成分とすることもできる。
【0019】
本発明の胆汁酸結合剤等は、医薬品やサプリメント等の飲食品として単独で摂取されてもよく、他の飲食用組成物や医薬用組成物と同様に、飲食品や医薬品への添加剤として用いることもできる。
【0020】
本発明の胆汁酸結合剤等の剤型は、特に限定されるものではない。例えば、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤等であってもよい。培養細胞等へ用いられる場合には、乾燥粉末や、水や緩衝液等の適当な溶液に溶解させた液剤であることが好ましい。一方、生物個体へ用いられる場合には、経口投与に適した剤型であることが好ましく、腸溶剤であることがより好ましい。
【0021】
本発明の胆汁酸結合剤等に含まれるRJ由来胆汁酸結合タンパク質は、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。また、これらの胆汁酸結合剤等に含まれるRJ由来胆汁酸結合タンパク質の量は、該RJ由来胆汁酸結合タンパク質の胆汁酸結合能、コレステロールミセル溶解抑制能、又は血清コレステロール低下能が発揮され得る量であれば、特に限定されるものではなく、RJ由来胆汁酸結合タンパク質の種類や、剤型等を考慮して、適宜決定することができる。
【0022】
本発明の胆汁酸結合剤等は、本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質のみからなるものであってもよく、その他の成分を含有するものであってもよい。その他の成分としては、本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質の活性を損なわない限り、どのような成分であってもよく、例えば、本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質以外のRJ由来の成分を含有していてもよく、胆汁酸結合能や血清コレステロール低下能を有する機能性ペプチドを含有していてもよい。その他にも、本発明の胆汁酸結合剤等は、例えば、賦型剤、結合剤、界面活性剤、酸化防止剤、pH調整剤、崩壊剤、滑沢剤、防腐剤、殺菌剤、着色剤、矯味矯臭剤等の、医薬品や飲食品に添加される成分を含有することができる。
【0023】
本発明の胆汁酸結合剤等の製造方法は、含有される本発明のRJ由来胆汁酸結合タンパク質の活性を損なわない方法であれば特に限定されるものではなく、通常、機能性タンパク質を含有する飲食用組成物又は医薬用組成物を製造する場合に使用される方法を用いて製造することができる。
【0024】
本発明の胆汁酸結合剤等の投与量は、RJ由来胆汁酸結合タンパク質の胆汁酸結合等の活性が発揮され得る量であれば、特に限定されるものではなく、RJ由来胆汁酸結合タンパク質の種類、対象とする細胞の種類や状態、剤形、投与方法等を考慮して適宜決定することができる。例えば、培養細胞等の生物個体外の細胞へ用いる場合には、本発明の胆汁酸結合剤又はコレステロールミセル溶解抑制剤を、培養液中のRJ由来胆汁酸結合タンパク質の含有量が10mg〜100mg/mLとなるように培養液へ添加することができる。
【0025】
生物個体に摂取させる場合には、本発明の胆汁酸結合剤等の摂取量は、該RJ由来胆汁酸結合タンパク質の胆汁酸結合等の活性が発揮され得る量であれば、特に限定されるものではなく、摂取する人や動物の体重、年齢、性別、剤型等により適宜決定することができる。例えば、RJ由来胆汁酸結合タンパク質の一日当たりの摂取量が300mg〜1g/kgとなるように、1度に又は数回に分けて摂取させることが好ましい。
【0026】
本発明の胆汁酸結合剤等は、経口摂取することにより、生体内において、胆汁酸と結合し、さらに、食事として摂取されたコレステロールのミセルの溶解性を低下させる結果、血清コレステロール量を低減させる。このため、本発明の胆汁酸結合剤等は、高コレステロール血症や動脈硬化症等の、血清中のコレステロール量が過剰となることに起因する疾患の治療や予防に好適である。
【0027】
本発明の血清コレステロール量を低下させる方法(以下、血清コレステロール量低下方法)は、MRJP1、MRJP2、及びMRJP3からなる群より選択される1種以上を経口摂取することを特徴とする。RJ由来胆汁酸結合タンパク質を経口摂取させる生物は、小腸や胆管等の組織を有する動物であれば特に限定されるものではなく、ヒトであってもよく、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ウシ等のヒト以外の動物であってもよい。
【実施例】
【0028】
次に実施例等を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
[参考例1]
<胆汁酸結合アフィニティーカラムの作製>
胆汁酸結合アフィニティーカラムは、カルボジイミドをスペーサーとして、コール酸をカラム担体であるEAH−Sepharose 4Bに結合させることにより作製した。胆汁酸結合アフィニティーカラムの調製方法は、Pattinsonらの方法(非特許文献6)に準じて行った。
具体的には、まず、EAH−Sepharose 4B担体50mL容量に対し、625mLの胆汁酸溶液(スペーサーとして33.4mM 1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide HClと3.7mMのコール酸を含む50%エタノール溶液)をpH6.4で16時間反応させ、担体にコール酸を結合させた。その後、カラムに非吸着の過剰なコール酸溶液を0.5M NaClを含む50%エタノールで洗浄したものを充填することにより、胆汁酸結合アフィニティーカラム(カラムのベッド容量:50mL)を作製した。なお、カラムは使用前に0.02%NaN3溶液にて平衡化した。
【0030】
<胆汁酸結合アフィニティーカラムによる分画>
次いで、作製されたカラムが、実際に胆汁酸結合能を有する化合物に対するアフィニティーを備えているかどうかを、BSAとOvalbuminをアプライすることにより、確認した。カラムからの溶出条件は、マキノらの方法(非特許文献7)に準じて行った。
まず、作製された胆汁酸結合アフィニティーカラムに、1.5mg/mLのBSA溶液又はOvalbumin溶液をアプライした。次に、当該カラムに第1次洗浄液(0.5M NaCl、10mM Tris−HCl、pH8.0)を通し、当該カラム中の担体に吸着していなかった物質を洗浄除去した。次いで、当該カラムに、溶出液(0.5%Sodium deoxycholate、10mM Tris−HCl、pH8.0)を通し、コール酸と結合したタンパク質、すなわち胆汁酸結合能を有するタンパク質を溶出した。最後に、当該カラムに、第2次洗浄液(8M urea、10mM Tris−HCl、pH8.0)を通し、当該カラムに非特異的に結合した物質を溶出した。
【0031】
各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を図1に示す。図1中、「(1)」が第1次洗浄液の画分であり、「(2)」が溶出液の画分であり、「(3)」が第2次洗浄液の画分である。この結果、Ovalbuminは第1次洗浄液の画分に溶出されており、BSAは溶出液の画分に溶出されていた。これらの結果から、作製された胆汁酸結合アフィニティーカラムは、非特許文献7に記載されている胆汁酸結合アフィニティーカラム同様に、Ovalbuminは吸着せず、BSAを吸着することが確認された。
【0032】
[実施例1]
<胆汁酸結合アフィニティーカラムによるRJタンパク質の分画>
参考例1で作製された胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いて、RJタンパク質の分画を行い、胆汁酸結合能を有するタンパク質を単離・精製した。この胆汁酸結合アフィニティーカラムを用いたRJ由来胆汁酸結合タンパク質の単離精製は、これまで報告が無く、非常に効率的な精製法である。
まず、RJタンパク質溶液を調製した。具体的には、RJ(中国産)に純水を加えて懸濁したものを、孔径10kDaの透析膜を用いて、純水にて72時間透析した。透析膜内液を回収し、凍結乾燥した後、再びNaN3含有トリス緩衝液(0.2%NaN3、10mM Tris−HCl(pH8.0))に懸濁し、117mg/25mLのRJタンパク質溶液(10kDa cut off RJ)を調製した。
【0033】
次いで、参考例1で作製された胆汁酸結合アフィニティーカラムに、RJタンパク質溶液をアプライした後、参考例1と同様にして、第1次洗浄液、溶出液、第2次洗浄液を順次当該カラムにアプライした。各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を図2に示す。図2中、「(1)」、「(2)」、及び「(3)」は図1と同じである。
さらに、溶出液により溶出された画分(図2中の「A」、以下、「画分A」)を回収した。
【0034】
<胆汁酸結合アフィニティーカラムにより単離・精製されたRJ由来胆汁酸結合タンパク質の同定>
胆汁酸結合アフィニティーカラムにより単離・精製されたRJ由来胆汁酸結合タンパク質の同定を行った。
まず、画分Aを孔径10kDaの透析膜を用いて、純水にて4℃、72時間透析・脱塩した。透析膜内液を回収し、凍結乾燥することにより、脱塩画分Aを調製した。
次いで、脱塩画分Aを10%のSDS−PAGEに供し、含まれているタンパク質を分離した。SDS−PAGEの結果を図3に示す。図3中、「std」は分子量マーカーを、「A」は脱塩画分Aを意味し、これらをそれぞれアプライしたものである。この結果、「A」レーンには約49〜75kDaの範囲内に3本のバンド(図3中、(1)〜(3))が検出された。この結果から、脱塩画分A溶液には、胆汁酸と結合する3種類のRJ由来タンパク質が含まれていたことが明らかである。
【0035】
各バンドをSDS−PAGEのゲルから切り出し、還元アルキル化した後、トリプシン処理によりIn−gel digestionを行った。その後、ゲルより抽出したペプチド断片を脱塩精製して、MALDI−TOF/MSにて質量分析を行った。この結果、図3中、バンド(1)はMRJP3、バンド(2)はMRJP1、バンド(3)はMRJP2であると同定された。SDS−PAGEの結果、得られたCBB染色像を画像解析(Image J分析)したところ、これら3種のタンパク質の割合は、MRJP1が76%、MRJP2が22%、MRJP3が2%であった。
【0036】
[実施例2]
RJから単離精製されたMRJP1及びMRJP2の胆汁酸結合能を測定した。
【0037】
<RJからのMRJP1の単離精製>
まず、RJからゲル濾過クロマトグラフィーを用いてMRJP1を精製した。具体的には、まず、実施例1と同様にして調製した23.5mg/5mLのRJタンパク質溶液(
10kDa cut off RJ)を5mL、HiLoad superdex 200p.g(GE healthcare社製)にアプライした。その後、溶出液(20mM Na2HPO4・20mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7.5)を溶出速度1.5mL/minで当該カラムに通し、5mLずつを1画分として回収した。各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を図4に示す。また、RJタンパク質溶液と同時に、当該カラムに36mg/mlのGel Filtration Standard (BIO−RAD社製)をアプライし、移動度(溶出開始からの総溶出量)と、当該画分に含まれる分子の大きさとの関係を調べ、検量線を作成した。作成された検量線を図5に示す。
本発明者らは、前記の胆汁酸結合アフィニティーカラムから溶出した複合体の、ゲル解析において量的に一番多かったMRJP1画分に着目した。図4に示すゲル濾過クロマトグラフィーのうち、画分B(Frac.B:図4中、点線で囲まれた画分)は、図5に示すスタンダードの移動度と分子量から得た検量線から、分子量約290kDa付近であることがわかった。この画分を15%のSDS−PAGEに供したところ、図6に示すように、約55kDaの位置に単一なバンドとして検出された。また、当該画分に含まれている分子に対してMALDI−TOF/MSにて質量分析を行ったところ、MRJP1を含む画分であると判明した。これらの結果から、MRJP1は約55kDaであり、RJ中では、5〜6量体として存在していることが確認された。以下、当該画分をMRJP1画分という。
なお、当該MRJP1画分には、非特許文献5において、高脂血症ラットの血液中のトリグリセリド、総コレステロールを減少させる作用が報告されている10−デセン酸は含まれていないことが、定量的に明らかにされた。
【0038】
<RJからのMRJP2の単離精製>
本発明者らはさらに、前記の胆汁酸結合アフィニティーカラムから溶出した複合体の、ゲル解析において量的に一番多かったMRJP1画分に次いで多かったMRJP2に着目した。図4に示すゲル濾過クロマトグラフィーのうち、画分E(Frac.E:図4中、一点鎖線で囲まれた画分)に含まれているタンパク質を調べた。当該画分Eは、図5に示すスタンダードの移動度と分子量から得た検量線から、分子量約51kDa付近であることがわかった。この画分Eを15%のSDS−PAGEに供したところ、図7に示すように、46〜66kDaの位置に2本のバンドとして検出された。
また、この画分Eを陰イオンクロマトグラフィーに供し、単一のタンパク質に精製した。具体的には、画分Eを結合用溶液(20mM Tris−HCl、pH8.0)で125mg/5mLに希釈した上で、5mLをHiPrep Q FF(GE Healthcare社製)にアプライした。その後、溶出液(20mM Tris−HCl、0.5M NaCl、pH8.0)を用いて、移動相中の塩化ナトリウム濃度を図8中の点線で示すような0〜0.5Mにグラジエントをかけることにより、タンパク質を溶出させた。なお、移動相の移動速度は1.5mL/minとした。
各画分の移動度と280nmの吸光度との関係を図8に示す。図8中に示す得られたピークのうちの1〜4を、それぞれ15%のSDS−PAGEに供したところ、図9に示すように、ピーク1から2までは単一なバンドとして検出された。そこで、ピーク1及び2を合わせて回収し、当該画分に含まれている分子に対してMALDI−TOF/MSにて質量分析を行ったところ、MRJP2を含む画分であると判明した。以下、当該画分をMRJP2画分という。
【0039】
<透析法による胆汁酸結合試験>
上記で精製されたMRJP1及びMRJP2の胆汁酸結合能の評価を、透析法により行った。ポジティブコントロールとして抗高コレステロール剤であるコレスチラミンを、ネガティブコントロールとしてカゼインをそれぞれ用いた。
具体的には、タウロコール酸含有リン酸緩衝液(50mM タウロコール酸、100mMリン酸緩衝液、pH7.4)中に、コレスチラミン、カゼイン、MRJP1画分、MRJP2画分、又は生RJを凍結乾燥させたものを、それぞれ100mg/mLとなるように添加したものを反応溶液とした。これらの反応溶液を37℃で2時間インキュベートした後、室温で72時間透析した。透析膜外液に含まれている総胆汁酸量を測定することにより、透析膜内液に含まれている(すなわち、各分子と結合した)胆汁酸の割合を算出した。
算出された各分子と結合した胆汁酸の割合を図10に示す。図10中、「Intact RJ」は、生RJを凍結乾燥させたものを添加した反応溶液の結果である。この結果、胆汁酸結合能はネガティブコントロール群のカゼイン(33%)と比較し、MRJP1は46%、MRJP2は37%であった。すなわち、MRJP1のほうがMRJP2よりも高い胆汁酸結合能を示した。
【0040】
[実施例3]
<コレステロールミセル溶解性試験>
RJから単離精製されたMRJP1及びMRJP2のコレステロールミセル溶解抑制能を測定した。MRJP1及びMRJP2は、実施例2において調製したMRJP1画分及びMRJP2画分をそれぞれ用いた。また、ネガティブコントロールとしてカゼインを用いた。
【0041】
まず、最終濃度が3.7kBq/mL(2.1Gbq/mmol,NEN)となるように[4−14C]コレステロール/クロロホルム(Perkin Elmer Life Science社製)を、2μMとなるようにコレステロール(片山化学工業社製)/クロロホルムを、20μMとなるようにOleic acid(SIGMA社製)/クロロホルムを、5μMとなるようにMono oleoyl−rac−Glycerol(SIGMA社製)/クロロホルムを、0.6mMとなるようにL−α−phosphatidylcholine(SIGMA社製)/クロロホルムを20mL容量のガラスバイアルに分取し、よく混合した後、窒素ガスを吹き付け乾固させた。その後、得られた乾固物を、6.6mMのTaurocholic acid(SIGMA社製)及び132mM NaClを含む15mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させた。ボルテックミキサーで2分間攪拌した後、超音波処理(25W、output6、3分間)し、その後37℃で24時間振とうしながらインキュベートすることにより、[14C]−コレステロールミセル溶液を調製した。
【0042】
コレステロールミセル溶解性試験は、具体的には、[14C]−コレステロールミセル溶液に、最終濃度が10mg/mLとなるようにCasein、MRJP1、又はMRJP2を添加したものを反応溶液とした。各反応溶液をボルテックミキサーで2分間攪拌した後、超音波処理(25W、output 6、3分間)し、37℃で1時間インキュベートした後、380μLを37℃、100,000×gで1時間遠心分離を行い、上清を回収した。回収された上清50μLに、乳化シンチレーターを10mL加えて、液体シンチレーションカウンターにより、上清中の[14C]−コレステロールを測定した。上清中には、水溶液中に安定して溶解しているコレステロールミセルが存在する。このため、反応溶液に予め添加した[14C]−コレステロール量に対する上清中の[14C]−コレステロール量の割合から、水溶液中に安定して溶解しているコレステロールミセルの割合が算出できる。
【0043】
ミセルへのコレステロールの溶解割合を図11に示す。各試験区は、Duncan’s multiple range testによりp<0.05で統計学的な有意差検定処理した。その結果、ネガティブコントロール群のカゼイン(79%)と比較し、MRJP1は46%であり、有意に低下していた。これに対してMRJP2は93%であり、有意な上昇が見られた。すなわち、MRJP1はコレステロールミセル溶解抑制能を有することが明らかである。
【0044】
[実施例4]
<ラットへの経口投与試験>
高コレステロール血症のモデルである1%コレステロール摂取ラットに、RJから単離精製されたMRJP1を経口投与し、血清コレステロールに与える影響を調べた。MRJP1は、実施例2において調製したMRJP1画分を用いた。また、ネガティブコントロールとしてカゼインを用いた。
図12に示すように、実験期間の3日間、コレステロールを含む食餌を与えたラットに、1日1回、MRJP1又はカゼインを経口投与した。3回目の投与から24時間経過後、4時間絶食させた後、心臓採血によりラットを屠殺した。採取された血液を用いて、血清コレステロールを測定した。さらに解剖し、肝臓重量を測定した。その他の具体的な実験条件は以下の通りである。
【0045】
実験群:4週齢のWistar系雄ラット(70g)
実験群数:n=9
投与開始時間:AM8:00
試験飼育期間:3日間(予備飼育3日間)
絶食時間:4時間
実験サンプル:カゼインナトリウム(CS)又はMRJP1(MR)
サンプル投与量:300mg/kg(B.W.)/day、又は600mg/kg(B.W.)/day
食餌組成:20%カゼイン+1%コレステロール
【0046】
血清は、3000rpm、15分間の遠心分離により調製した。血清コレステロールの定量は酵素法、具体的には市販のキット(コレステロールE−テストワコー;和光純薬工業社製))を用いて測定した。同様にして、HDL−コレステロールはHDL−コレステロールE−テストワコー(和光純薬工業社製)を用いて測定した。LDL+VLDL−コレステロールは計算により求めた。
【0047】
各種測定結果などを図13〜16に示す。なお、各数値は、1群9匹の平均±標準誤差とし、実験結果の統計的分析には、Duncan’s multiple range testとStudent’s t−testを用いた。
各実験群の体重の変化を図13に、1日当たりの食餌摂取量を図14に、肝臓重量を図15に、それぞれ示す。この結果、各群のうち、カゼインナトリウム(CS)投与群とMRJP1(MR)投与群とでは、いずれも特に差は観察されなかった。
一方、図16のように、血清総コレステロール量は、300mg/kg(B.W.)/dayの投与群と600mg/kg(B.W.)/dayの投与群のいずれにおいても、カゼインナトリウム(CS)投与群よりもMRJP1(MR)投与群のほうが、血清総コレステロール量が低下する傾向が観察された。特に600mg/kg(B.W.)/dayの投与群では、カゼインナトリウム(CS)投与群よりもMRJP1(MR)投与群のほうが、血清総コレステロール量が有意に(Duncan’s multiple range testとStudeut’s t−testの両方でp<0.05)低下していた。
これらの結果から、単離精製されたMRJP1を経口投与することにより、血清総コレステロール量を低下させられることが明らかである。
【0048】
[実施例5]
<ラットへの経口投与試験>
実験群数を10匹(n=10)、試験飼育期間を7日間(予備飼育3日間)、サンプル投与量を600mg/kg(B.W.)/dayとした以外は、実施例4と同様にして、高コレステロール血症のモデルである1%コレステロール摂取ラットに、RJから単離精製されたMRJP1を7日間経口投与し、血清コレステロールに与える影響を調べた。
【0049】
各実験群の体重の変化を図17に、1日当たりの食餌摂取量を図18に、肝臓重量を図19に、血清総コレステロール量を図20に、それぞれ示す。なお、各数値は、1群10匹の平均±標準誤差とし、実験結果の統計的分析には、Student’s t−testを用いた。
この結果、体重の変化、1日当たりの食餌摂取量、及び肝臓重量は、カゼインナトリウム(CS)投与群とMRJP1(MR)投与群とでは、いずれも有意差は観察されなかった。
一方、血清総コレステロール量は、カゼインナトリウム(CS)投与群よりもMRJP1(MR)投与群のほうが、血清総コレステロール量が有意に(約26%)低下した(Student’s t−testでp<0.05)。特に、血清LDLコレステロール及び血清VLDLコレステロールの総量が有意に低下した。
これらの結果から、単離精製されたMRJP1を7日間経口投与することにより、血清総コレステロール量を低下させられることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の胆汁酸結合剤や血清コレステロール量低下方法は、RJ由来の胆汁酸結合剤を経口服用することにより、血清コレステロール量を安全に低下させることができる。このため、本発明の胆汁酸結合剤等は、特に高コレステロール血症や動脈硬化症の治療や予防のための医薬や機能性食品等の有効成分として利用が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRJP1、MRJP2、及びMRJP3からなる群より選択される1種以上を有効成分とすることを特徴とする、胆汁酸結合剤。
【請求項2】
MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、血清コレステロール量低下剤。
【請求項3】
MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、コレステロールミセルの溶解抑制剤。
【請求項4】
MRJP1を経口摂取することを特徴とする、血清コレステロール量を低下させる方法。
【請求項1】
MRJP1、MRJP2、及びMRJP3からなる群より選択される1種以上を有効成分とすることを特徴とする、胆汁酸結合剤。
【請求項2】
MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、血清コレステロール量低下剤。
【請求項3】
MRJP1を有効成分とすることを特徴とする、コレステロールミセルの溶解抑制剤。
【請求項4】
MRJP1を経口摂取することを特徴とする、血清コレステロール量を低下させる方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図3】
【図6】
【図7】
【図9】
【図2】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図3】
【図6】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2012−106988(P2012−106988A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221902(P2011−221902)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(398062998)株式会社秋田屋本店 (5)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(398062998)株式会社秋田屋本店 (5)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】
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