説明

背負バンドの取付構造

【課題】背負式作業機の作業機本体部を接地させる際にフック部や背負バンドが作業機本体部の下に入り込みにくい背負バンドの取付構造の提供を課題とする。
【解決手段】互いに一定の隙間をあけて対向する一対の支持部8,8と、この支持部8,8同士を繋ぐ軸部9とを作業機本体部1に設ける。また、軸部9に引っ掛けられて係合するフック部12と、フック部12の開口の端部同士の間を閉塞してフック部12と共に環形状をなす閉塞体13とを背負バンド3の下端に設ける。さらに、閉塞体13の幅を、フック部12が軸部9に引っ掛けられて係合した状態で一対の支持部8,8同士の隙間内に進入不能となる大きさにし、フック部12の軸部9回りの回動を制限する。以上により、軸部9に係合したフック部12の下方への回動を制限し、フック部12や背負バンド3を作業機本体部1の下に入り込みにくくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背負式作業機の作業機本体部を作業者が背負うための背負バンドの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体ポンプや液体タンクを含む作業機本体部を作業者が背負って作業を行う背負式作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような背負式作業機の作業機本体部には一対の背負バンドが取り付けられ、作業者は各々の背負バンドを両肩にかけるようにして作業機本体部を背負う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4286816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、背負バンドを作業機本体部に取り付ける一般的構造として、背負バンドの端部に設けられた所謂ナスカンのフック部を、作業機本体部に設けられた軸部に係合させる構造が挙げられる。しかし、このような構造にあっては、作業機本体部を接地させる際にフック部や背負バンドが作業機本体部の下に入り込む場合があり、作業機本体部の接地が不安定となるのに加え、フック部の破損、背負バンドの汚れ等を生じる可能性があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、背負式作業機の作業機本体部を接地させる際にフック部や背負バンドが作業機本体部の下に入り込みにくい背負バンドの取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による背負バンド(3)の取付構造は、背負式作業機(100)の作業機本体部(1)を作業者が背負うための背負バンド(3)の下端部を作業機本体部(1)の下側に着脱可能とする取付構造において、互いに一定の隙間をあけて対向し、当該一定の隙間が作業機本体部(1)を背負う作業者側に開口するよう当該作業機本体部(1)に設けられた一対の支持部(8,8)と、一対の支持部(8,8)同士を繋ぐ軸部(9)と、背負バンド(3)の下端部に設けられ、軸部(9)に引っ掛けられて係合するフック部(12)と、フック部(12)の開口を形成する端部同士の間を開閉自在に閉塞し、フック部(12)と共に環形状をなす閉塞体(13)とを備え、閉塞体(13)は、フック部(12)が軸部(9)に係合した状態で一対の支持部(8,8)同士の隙間に進入不能となる幅を有することを特徴とする。
【0007】
このような背負バンド(3)の取付構造によれば、フック部(12)と共に環形状をなして軸部(9)を囲む閉塞体(13)が一対の支持部(8,8)同士の隙間に進入できないため、軸部(9)回りのフック部(12)の回動が制限される。これにより、下方への回動が制限されるようにフック部(12)を取付け、フック部(12)や背負バンド(3)を作業機本体部(1)の下に入り込みにくくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明によれば、背負式作業機の作業機本体部を接地させる際にフック部や背負バンドが作業機本体部の下に入り込みにくい背負バンドの取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の背負バンドの取付構造が適用された背負式作業機の前方斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る背負バンドの取付構造の取り付け前を詳細に示す斜視図である。
【図3】図2の取り付け後を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る背負式作業機の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。以下の説明において、上下、前後、左右の語は、背負式作業機を背負った作業者を基準とした方向を表すものとする。
【0011】
図1は、本発明の背負バンドの取付構造が適用された背負式作業機の前方斜視図、図2は、本発明の実施形態に係る背負バンドの取付構造の取り付け前を詳細に示す斜視図、図3は、図2の取り付け後を示す斜視図であり、本実施形態では背負式作業機を薬剤等の散布に用いる背負式動力噴霧機として説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る背負式動力噴霧機100は、動力源を含む作業機本体部1と、作業機本体部1の前側(図1の左側)を覆い背負時に作業者の背中に当接する背当て部材2と、作業者が作業機本体部1を背負うための一対の背負バンド3,3とを備えている。また、この背負式動力噴霧機100は、作業機本体部1から送り出された薬剤等を作業者の手元まで伝送する噴霧ホースと、噴霧ホースの端部に設けられた噴霧ノズルとを備えている。なお、ここでは噴霧ホース及び噴霧ノズルは取り外されている。
【0013】
作業機本体部1は、液体や粉体からなる薬剤(ここでは薬液)を噴霧するためのポンプ等を搭載した架台4と、この架台4の上部に載置され、噴霧すべき薬剤を収容するタンク5とを備えている。
【0014】
背当て部材2は、スポンジ等のクッション性に優れた材質で形成されており、背負時には架台4及びタンク5と作業者の背中との間に介在し、相互の接触を和らげる。
【0015】
一対の背負バンド3,3の上端部は、タンク5の前側の上端部に左右対称に設けられた一対の上側バンド取付部6,6に着脱自在に各々連結され、一対の背負バンド3,3の下端部は、架台4の前側の下端部に左右対称に設けられた一対の下側バンド取付部7,7に着脱自在に各々連結されている。そして、一対の背負バンド3,3及び作業機本体部1のなす一対のループに作業者が両肩を通し、作業機本体部1を背負うことが可能となっている。
【0016】
ここで、各々の背負バンド3の下端部の取付構造の詳細について、図2及び図3を参照して説明する。
【0017】
図2に示すように、下側バンド取付部7は、一対の支持部8,8と軸部9とを備えている。各々の支持部8,8は、前後方向及び上下方向に延びる板状体であって架台4の下部前側の位置から前方へ突出するように形成されており、互いに一定の隙間をあけて左右方向に並設され、この隙間は前方即ち作業機本体部1を背負う作業者側へ向かって開口している。また、軸部9は左右方向に延びる軸心を有する円柱体であり、一対の支持部8,8同士を繋ぐように形成されている。
【0018】
一方、背負バンド3は、作業者の肩に掛かるバンド部10を有し、このバンド部10の下端部にナスカン11が連結されている。ナスカン11は、上記一対の支持部8,8同士の隙間内で上記軸部9に引っ掛けられて係合するフック部12と、このフック部12の基端部12aに連設され、フック部12の先端部12bと基端部12aとの間に形成された開口を閉塞してフック部12と共に環形状をなす閉塞体13とを備えている。
【0019】
閉塞体13は、フック部12の基端部12aを支点として上記環形状の内側から外側へ向かう付勢力を有する板ばね体であり、その先端部は、フック部12の先端部12bに対し上記環形状の内側から当接している。
【0020】
また、フック部12の基端部12aにはバンド部10と連結するための連結孔14が形成されている。そして、バンド部10の下端部は折り返されて筒部15が形成されており、上記連結孔14と筒部15とに共通の環状体16を挿通させることでナスカン11とバンド部10とが連結されている。
【0021】
このようにバンド部10の下端部に連結したナスカン11は、閉塞体13を上記環形状の内側に押し込むことでフック部12の先端部12bと基端部12aとの間を開口させ、そこに軸部9を通すことで上記下側バンド取付部7に装着される。装着状態にあっては、図3に示すように、フック部12が軸部9に引っ掛けられて係合し、フック部12の先端部12bと基端部12aとの間が閉塞体13により閉塞されて当該係合の外れが防止される。この状態において、閉塞体13の左右方向の幅aと一対の支持部8,8同士の隙間bとは、a>bという関係になっており、閉塞体13は一対の支持部8,8同士の隙間内に進入不能となっている。
【0022】
以上のように構成された背負バンド3の下端部の取付構造によれば、閉塞体13が一対の支持部8,8同士の隙間内に進入不能となっているため、閉塞体13と一対の支持部8,8とが当接すると軸部9回りのフック部12の回動が阻止される。これにより、図3に示す取付状態にあってはフック部12の下方への回動が制限され、フック部12や背負バンド3が作業機本体部1の下に入り込みにくくなる。
【0023】
このように、本実施形態によれば、下方への回動が制限されるようにフック部12を取付け、フック部12や背負バンド3を作業機本体部1の下に入り込みにくくすることが可能となる。
【0024】
また、フック部12が一対の支持部8,8の間で軸部9に係合するため、一対の支持部8,8によって左右方向へのフック部12の倒れが制限され、背負時の背負バンド3の位置が安定して作業機本体部1を背負い易くなる。
【0025】
なお、本実施形態では支持部8,8を板状体として説明したが、支持部8,8の形態はこれに限られるものではなく、一定の隙間をあけて対向し、その隙間が作業機本体部1を背負う作業者側に開口するものであれば他のどのような形態であっても良い。例えば、架台4の前側から後側にへこむ凹部を形成し、当該凹部を形成する一対の側面同士を支持部8,8として用いる形態であっても良い。
【0026】
また、本実施形態では背負式作業機を背負式動力噴霧機100として説明したがこれに限られるものではなく、例えば背負式ブロワ等にも応用可能である。
【符号の説明】
【0027】
4…架台、8…支持部、9…軸部、12…フック部、13…閉塞体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背負式作業機(100)の作業機本体部(1)を作業者が背負うための背負バンド(3)の下端部を前記作業機本体部(1)の下側に着脱可能とする取付構造において、
互いに一定の隙間をあけて対向し、当該一定の隙間が前記作業機本体部(1)を背負う作業者側に開口するよう当該作業機本体部(1)に設けられた一対の支持部(8,8)と、
前記一対の支持部(8,8)同士を繋ぐ軸部(9)と、
前記背負バンド(3)の下端部に設けられ、前記軸部(9)に引っ掛けられて係合するフック部(12)と、
前記フック部(12)の開口を形成する端部同士の間を開閉自在に閉塞し、前記フック部(12)と共に環形状をなす閉塞体(13)とを備え、
前記閉塞体(13)は、前記フック部(12)が前記軸部(9)に係合した状態で前記一対の支持部(8,8)同士の隙間に進入不能となる幅を有することを特徴とする背負バンド(3)の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−5407(P2012−5407A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143699(P2010−143699)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】