説明

背負式動力作業機

【課題】作業者の背中の蒸れを十分に軽減することができる背負式動力作業機を提供する。
【解決手段】作業者に背負われ当該作業者の背中に面する背負部材1と、背負部材1の下端部から後方に延びた架台3と、架台3の上に搭載された送風機6と、背負部材1の作業者側に取り付けられ作業者の背中に当接する背当部材4と、を備えた背負式動力作業機100において、送風機6には、背負部材1との隙間の空気を吸引する吸気口9を設け、背負部材1には、作業者側から送風機6側に貫通した通気孔11を設け、背当部材4の内部の空気を背負部材1側に排出可能とし、背当部材4の作業者側の表面を通気性のある素材で構成することで、送風機6の吸引力により、作業者の背中に生じた湿気を背当部材4の内部に進入させ、背当部材4の内部の空気と共に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者に背負われる背負部材と、背負部材から後方に延びた架台と、架台の上に搭載された送風機と、を備えた背負式動力作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、作業者に背負われ当該作業者の背中に面する背負部材と、背負部材の下端部から後方に延びた架台と、架台の上に搭載された送風機と、背負部材の作業者側に取り付けられた背当部材と、を備えた背負式動力作業機であって、送風機による空気の流れを利用して作業者の背中の蒸れを軽減させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この背負式動力作業機では、送風機は、背負部材との隙間の空気を吸引する吸気口を有し、背負部材は、作業者側から送風機側に貫通した通気孔を有し、背当部材は、通気孔を覆うように背負部材に取り付けられている。そして、背当部材は、作業者側から凹状に形成された複数の溝部を有し、この複数の溝部には、作業者側から背負部材側に貫通した複数の孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5−17163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成では、作業者の背中に生じた湿気が、背当部材の溝部の空気と共に溝部の複数の孔を通って背負部材の通気孔に排出され、送風機に吸引される。このため、作業者の背中の蒸れが軽減される。しかしながら、背当部材の溝部以外の部分は作業者の背中に当接し、その部分に生じた湿気は排出されない。このため、上記構成では、作業者の背中の蒸れが十分に軽減されなかった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、作業者の背中の蒸れを十分に軽減することができる背負式動力作業機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による背負式動力作業機(100)は、作業者に背負われ当該作業者の背中に面する背負部材(1)と、背負部材(1)の下端部から後方に延びた架台(3)と、架台(3)の上に搭載された送風機(6)と、背負部材(1)の作業者側に取り付けられ作業者の背中に当接する背当部材(4)と、を備えた背負式動力作業機(100)であって、送風機(6)は、背負部材(1)との隙間の空気を吸引する吸気口(9)を有し、背負部材(1)は、作業者側から送風機(6)側に貫通した通気孔(11)を有し、背当部材(4)は、内部の空気を背負部材(1)側に排出可能とされ、通気孔(11)を覆うように背負部材(1)に取り付けられ、背当部材(4)の作業者側の表面は通気性のある素材で構成されていることを特徴とする。
【0007】
このような背負式動力作業機(100)によれば、作業者の背中に生じた湿気は、送風機(6)の吸引力により、通気性のある素材で構成された表面を通って背当部材(4)の内部に進入し、背当部材(4)の内部の空気と共に背負部材(1)の通気孔(11)に排出され、送風機(6)に吸引される。背当部材(4)の内部の空気が排出されると、通気性のある素材で構成された表面を通して新たな空気が吸入される。そして、背当部材(4)による空気の吸入及び排出が連続的に行われ、作業者の背中に生じた湿気の吸入及び排出も連続的に行われ、その結果作業者の背中の蒸れが十分に軽減される。
【0008】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成として、背当部材(4)は、背負い時に作業者の背中と背負部材(1)とに挟まれて潰れる弾性部材(12)と、弾性部材(12)の作業者側を被覆する前側シート(13)と、を有し、弾性部材(12)及び前側シート(13)は、通気性のある素材で構成されているものが挙げられる。
【0009】
また、弾性部材(12)は、ウレタンフォームで構成され、前側シート(13)は、メッシュシートで構成されていると、弾性部材(12)及び前側シート(13)の通気性が確保されると共に、背当部材(4)と作業者の背中との接触面積が小さくなり、作業者の背中の蒸れがより十分に軽減される。さらに、弾性部材(12)のクッション性が確保される。
【0010】
また、背当部材(4)は、背負部材(1)の通気孔(11)と対応する位置に、弾性部材(12)が存在しない中空部(17)を有する構成であると、中空部(17)の通気性が向上し、背当部材(4)の内部を空気が流れ易くなる。このため、背当部材(4)の内部に進入した湿気がより早く送り出され、作業者の背中の蒸れが一層十分に軽減される。
【0011】
また、背当部材(4)は、弾性部材(12)の背負部材(1)側を被覆する後側シート(15)を有し、後側シート(15)は、前側シート(13)よりも曲げ剛性の高い素材で構成され、背負部材(1)の通気孔(11)と対応する位置に通気孔(16)を有する構成であると、背当部材(4)の通気性が確保されると共に、背当部材(4)の型崩れが抑制され、背当部材(4)の管理、組付に好都合である。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明の背負式動力作業機によれば、作業者の背中の蒸れを十分に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る背負式動力作業機の側面図である。
【図2】図1の背負式動力作業機の前面図である。
【図3】送風機、背負部材、及び背当部材の部分断面図である。
【図4】背当部材を外した背負式動力作業機の前面図である。
【図5】背当部材の背面図である。
【図6】背当部材の他の形態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る背負式動力作業機の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の説明において、上下、前後、左右の語は、背負式動力作業機を背負った作業者を基準とした方向を表すものとする。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る背負式動力作業機の側面図、図2は、図1の背負式動力作業機の前面図、図3は、送風機、背負部材、及び背当部材の部分断面図、図4は、背当部材を外した背負式動力作業機の前面図、図5は、背当部材の背面図、図6は、背当部材の他の形態を示す背面図であり、本実施形態では背負式動力作業機を背負式動力散布機として説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る背負式動力散布機100は、作業者に背負われ作業者の背中に面する背負部材1と、背負部材1を背負うための一対の背負バンド2,2と、背負部材1の下端部から後方に延びた架台3と、背負部材1の前側に取り付けられ作業者の背中に当接する背当部材4と、を備えている。架台3の上には、動力源(ここでは、内燃機5)により駆動される送風機6が搭載され、送風機6の上には、薬剤等を収容するタンク7が搭載されている。また、この背負式動力散布機100は、送風機6により送り出された薬剤等を作業者が散布するための散布噴頭を備えている。なお、ここでは散布噴頭は取り外されている。
【0017】
図3に示すように、送風機6は、前側(図示右側)に開口した吸気口9と、排気口10と、を有し、タンク7内の薬剤を、吸気口9から吸引した空気と共に排気口10に送り出す。吸気口9は、送風機6と背負部材1との間に形成された隙間8に向かっており、隙間8の空気が吸気口9内に吸引される(図4参照)。
【0018】
背負部材1は、例えば樹脂材料からなり、前後方向に貫通した通気孔11を有している。この通気孔11は、隙間8に連通している(図4参照)。
【0019】
背当部材4は、背負い時に作業者の背中と背負部材1とに挟まれて潰れる弾性部材12と、弾性部材12の前側を覆う前側シート13と、弾性部材12の後側を覆う第1後側シート14と、第1後側シート14のさらに後側を覆う第2後側シート15と、を有している。
【0020】
弾性部材12は、例えばウレタンフォーム等の通気性のある素材で構成されている。前側シート13及び第1後側シート14は、例えば布製のメッシュシート等の通気性のある素材で構成されている。第2後側シート15は、例えば樹脂の板材など、前側シート13よりも曲げ剛性の高い素材で構成されている。前側シート13及び第1後側シート14に比べ、通気性に乏しい第2後側シート15には、図3及び図5に示すように、前後方向に貫通する通気孔16が形成され、背当部材4の内部の空気を後側に排出することが可能となっている。また、弾性部材12のうち、通気孔16に対応する位置には、前後に貫通する孔が形成され、前側シート13と第1後側シート14との間に弾性部材12のない中空部17が形成されている。
【0021】
このように構成された背当部材4は、背負部材1の通気孔11を覆うように背負部材1に取り付けられている。また、背当部材4を背負部材1に取り付けた状態において、第2後側シート15の通気孔16及び弾性部材12の中空部17の位置は、通気孔11の位置と対応し、ここでは通気孔11の上部と対応している。
【0022】
以上の背負式動力散布機100によれば、通気性のある素材で構成された弾性部材12の前側が、通気性のある素材で構成された前側シート13に覆われ、背当部材4の作業者側の表面が通気性のある素材で構成されているため、作業者の背中に生じた湿気は、送風機6の吸引力により、通気性のある素材で構成された表面を通って背当部材4の内部に進入し、背当部材4の内部の空気と共に背負部材1の通気孔11に排出され、送風機6に吸引される。背当部材4の内部の空気が排出されると、通気性のある素材で構成された表面を通して新たな空気が吸入される。そして、背当部材4による空気の吸入及び排出が連続的に行われ、作業者の背中に生じた湿気の吸入及び排出も連続的に行われ、その結果作業者の背中の蒸れが十分に軽減される。
【0023】
さらに、弾性部材12は、ウレタンフォームで構成され、前側シート13は、メッシュシートで構成されているため、弾性部材12及び前側シート13の通気性が確保されると共に、背当部材4と作業者の背中との接触面積が小さくなり、作業者の背中の蒸れがより十分に軽減される。さらに、弾性部材12のクッション性が確保される。
【0024】
また、背当部材4は、背負部材1の通気孔11と対応する位置に、弾性部材12が存在しない中空部17を有するため、中空部17の通気性が向上し、背当部材4の内部を空気が流れ易くなる。これにより、背当部材4の内部に進入した湿気がより早く送り出され、作業者の背中の蒸れが一層十分に軽減される。
【0025】
また、背当部材4は、第1後側シート14の後側、即ち弾性部材12の後側を被覆する第2後側シート15を有し、第2後側シート15は、前側シート13よりも曲げ剛性の高い素材で構成され、背負部材1の通気孔11と対応する位置に通気孔16を有するため、背当部材4の通気性が確保されると共に、背当部材4の型崩れが抑制され、背当部材4の管理、組付に好都合である。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0027】
背当部材4の構成は、上記構成に限られず、内部の空気を背負部材1側に排出可能であり、作業者側の表面が通気性のある素材で構成されたものであれば他の構成であってもよい。例えば、弾性部材12は、前側シート13及び第1後側シート14,15に覆われていなくてもよい。この場合、背当部材4の作業者側の表面は、通気性のある弾性部材12により構成される。また、弾性部材12は、第1後側シート14に覆われず、前側シート13及び第2後側シート15のみによって覆われていてもよいし、第1後側シート14,15に覆われず、前側シート13のみに覆われていてもよい。
【0028】
また、背当部材4の中空部17は、通気孔16の位置に対応して弾性部材12に形成された孔によって構成されているが、これに限られない。例えば、図6に示すように、中空部17は、前後から見てU字形状をなすように弾性部材12に形成された切欠部により構成されていてもよい。
【0029】
また、弾性部材12に通気性があるため、背当部材4は、中空部17を有さないものであってもよい。
【0030】
また、本実施形態では背負式動力作業機を背負式動力散布機として説明したが、これに限られない。本発明は、送風機を搭載した背負式動力作業機であればどのようなものにも適用でき、例えば、背負式のブロワにも適用することもできる。
【符号の説明】
【0031】
1…背負部材、3…架台、4…背当部材、6…送風機、8…隙間、9…吸気口、11…通気孔、12…弾性部材、13…前側シート、15…第2後側シート、16…通気孔、17…中空部、100…背負式動力散布機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者に背負われ当該作業者の背中に面する背負部材(1)と、前記背負部材(1)の下端部から後方に延びた架台(3)と、前記架台(3)の上に設置された送風機(6)と、前記背負部材(1)の前記作業者側に取り付けられ前記作業者の背中に当接する背当部材(4)と、を備えた背負式動力作業機(100)であって、
前記送風機(6)は、前記背負部材(1)との隙間の空気を吸引する吸気口(9)を有し、
前記背負部材(1)は、前記作業者側から前記送風機(6)側に貫通した通気孔(11)を有し、
前記背当部材(4)は、内部の空気を前記背負部材(1)側に排出可能とされ、前記通気孔(11)を覆うように前記背負部材(1)に取り付けられ、
前記背当部材(4)の前記作業者側の表面は通気性のある素材で構成されていることを特徴とする背負式動力作業機(100)。
【請求項2】
前記背当部材(4)は、背負い時に前記作業者の背中と前記背負部材(1)とに挟まれて潰れる弾性部材(12)と、前記弾性部材(12)の前記作業者側を被覆する前側シート(13)と、を有し、
前記弾性部材(12)及び前記前側シート(13)は、通気性のある素材で構成されていることを特徴とする請求項1記載の背負式動力作業機(100)。
【請求項3】
前記弾性部材(12)は、ウレタンフォームで構成され、前記前側シート(13)は、メッシュシートで構成されていることを特徴とする請求項2記載の背負式動力作業機(100)。
【請求項4】
前記背当部材(4)は、前記背負部材(1)の前記通気孔(11)と対応する位置に、前記弾性部材(12)が存在しない中空部(17)を有することを特徴とする請求項2又は3記載の背負式動力作業機(100)。
【請求項5】
前記背当部材(4)は、前記弾性部材(12)の前記背負部材(1)側を被覆する後側シート(15)を有し、
前記後側シート(15)は、前記前側シート(13)よりも曲げ剛性の高い素材で構成され、前記背負部材(1)の前記通気孔(11)と対応する位置に通気孔(16)を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載の背負式動力作業機(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−115776(P2012−115776A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268488(P2010−268488)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】