説明

胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法及び乾燥装置

【課題】胡椒の持つ特質(薬効及び香味)を失うことなく、安全な黒胡椒を提供するための胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法及び乾燥装置を提供する。
【解決手段】胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法は、(a)収穫した生の胡椒を房より分解した後、アルカリ性洗浄剤を使用した洗浄液で洗浄する洗浄工程、(b)前記(a)工程にて洗浄された胡椒を、濃度25ppm以上、pH4.5〜pH7.0の次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌する殺菌工程、(c)次いで、前記(b)工程にて殺菌された胡椒を、乾燥室に移送し、乾燥室内にて温度75℃以下にて乾燥する乾燥工程を、有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫した生の胡椒を房より分解した後、洗浄し、殺菌し、乾燥する胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法及び乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、黒胡椒等熱帯で生産される食品は、耐熱芽胞菌やカビ等の微生物が多く、完全且つ安価な殺菌剤がなく、現在、粉砕又は粉末化前の黒胡楸の殺菌方法としては、特に、放射線を照射する方法、或いは過熱水蒸気による方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、放射線を照射する方法は、外国では幾つかの国で実施されているものの、我が国では、放射線照射による変異原の発生等の解決すべき課題が存在するとし、実施されてはいない。従って、我が国では、過熱水蒸気による殺菌方法が実施されているのが現状である。
【0004】
しかし、過熱水蒸気による殺菌方法は、菌数を低減するには長時間を必要とし、加熱による胡椒の特質(薬効及び香味)が気散又は反応して失われ、胡椒の持つ風味を損ねることが問題として挙げられている。
【0005】
特許文献1は、斯かる問題を解決するために、香辛料を、過酢酸濃度100〜3000ppm、温度が15〜100℃の水溶液中に、1分以上浸漬させる殺菌方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−252369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の香辛料殺菌方法は、乾燥済みの胡椒の細菌を、過酢酸を使用して相当程度にまで殺菌している。特許文献1の方法においても、黒胡椒の殺菌においては、微生物が付着した黒胡椒を天日乾燥し、そして、乾燥後に殺菌し、梱包している。特許文献1の方法では、後殺菌を実施していることもあって、特許文献1に記載された実験結果が示す通り、菌数はかなり残留している。
【0008】
そこで、本発明は、胡椒の持つ特質(薬効及び香味)を失うことなく、安全な黒胡椒を提供するための胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法及び乾燥装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法及び乾燥装置にて達成される。要約すれば、第1の本発明によると、胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法であって、
(a)収穫した生の胡椒を房より分解した後、アルカリ性洗浄剤を使用した洗浄液で洗浄する洗浄工程、
(b)前記(a)工程にて洗浄された胡椒を、濃度25ppm以上、pH4.5〜pH7.0の次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌する殺菌工程、
(c)次いで、前記(b)工程にて殺菌された胡椒を、乾燥室に移送し、乾燥室内にて温度75℃以下にて乾燥する乾燥工程、
を有することを特徴とする胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法が提供される。
【0010】
第1の本発明にて、一実施態様によると、前記(c)工程は、前記乾燥室内の胡椒に、日中は太陽光線を照射し、夜間は、加熱装置により加熱された加熱空気を前記乾燥室に供給することにより行う。
【0011】
他の実施態様によると、前記(c)工程は、前記乾燥室に供給される前記加熱空気は、除湿機により湿度が70%以下とされる。好ましくは、前記(c)工程にて、前記乾燥室に供給される前記加熱空気は、循環使用される。
【0012】
第2の本発明によると、収穫した生の胡椒を房より分解した後、アルカリ性洗浄剤を使用した洗浄液で洗浄し、次いで、濃度25ppm以上、pH4.5〜pH7.0の次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌された胡椒を乾燥するための乾燥装置であって、
空気の流通が可能とされた仕切り壁にて上部室と下部室とに仕切られ、前記殺菌済み胡椒が前記上部室に配置され、且つ、太陽光が照射可能に透明部材にて形成された乾燥室と、
前記乾燥室の下方に位置して配置された導管本体部と、前記導管本体部と前記下部室の入口開口部に接続された入口連結導管部と、前記導管本体部と前記上部室の出口開口部に接続された出口連結導管部と、を備えた導管部と、
前記出口連結導管部に隣接した前記導管本体部に設置された除湿機と、
前記乾燥室に隣接した前記入口連結導管部に設置された加熱装置と、
前記除湿機と前記加熱装置との間に設置されたフィルター装置と、
を備え、
前記除湿機を駆動することにより、空気流が、前記除湿機から前記フィルター装置及び前記加熱装置を介して前記乾燥室の前記下部室に流入し、次いで、前記上部室に流動し、更に、前記出口連結導管部を介して前記除湿機へと流れ、前記上部室に配置された前記殺菌済み胡椒を乾燥させることを特徴とする乾燥装置が提供される。
【0013】
第2の本発明にて、一実施態様によると、前記乾燥室は、天井部及び両側部が透明部材にて形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の胡椒の洗浄・殺菌、乾燥方法によれば、殺菌工程に加熱や放射線照射を実施することなく、低温度で薬剤殺菌を行い、そして、乾燥工程にて、微生物(細菌)汚染を起こさず、無菌的に乾燥された黒胡椒を得ることができる。従って、本発明にて得られた黒胡椒は、胡椒本来の特質(薬効及び香味)を維持することができる。
【0015】
つまり、本発明によれば、熱帯で採取される生胡椒に付着している多量の細菌と、天日による屋外乾燥工程によって付着する大量の細菌を、胡椒が持つ本来の特質(薬効及び香味)を失うことなく、且つ、安全に殺菌し、乾燥することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法の一実例を説明するフロー図である。
【図2】本発明に係る乾燥装置の一実例を示す正面図である。
【図3】本発明に係る乾燥装置の一実例を示す断面図である。
【図4】図2にて線A−Aに取った乾燥装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法及び乾燥装置を図面に即して更に詳しく説明する。
実施例1
図1は、本発明に係る胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法を説明するためのフロー図である。図1に示すように、本発明の胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法は、主として、洗浄工程、殺菌工程、及び乾燥工程にて構成される。
【0018】
つまり、本発明に係る胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法は、
(a)収穫した生の胡椒を房より分解した後、殺菌工程における殺菌剤を効果的に作用させるために、アルカリ性洗浄剤を使用した洗浄液で洗浄する洗浄工程、
(b)前記(a)工程にて洗浄された生胡椒を、濃度25ppm以上、pH4.5〜pH7.0に調整した次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌する殺菌工程、
(c)次いで、前記(b)工程にて殺菌された胡椒を、乾燥室に移送し、乾燥室内にて温度75℃以下にて乾燥する乾燥工程、
を有して構成される。
【0019】
(洗浄工程)
収穫した生の胡椒(以下、「生胡椒」という。)は、房より分解した後、従来と異なり、天日乾燥は行うことなく、直ちに、洗浄工程へと移す。本明細書にて、生胡椒とは、主として胡椒の種実から成るものであるが、茎などを少量(10%重量)程度含むものも意味する。
【0020】
本実施例にて、洗浄工程に持ち込まれた生胡椒は、食品添加物であるアルカリ性洗浄剤の溶液、pH9.5以上、温度4℃以上にて1回以上洗浄される。洗浄工程では、生胡椒を洗浄により、付着した汚れ、及びその中の微生物を除去し、また、露出させる。洗浄工程は、次の工程の、安全な殺菌剤による殺菌(殺菌工程)、次いで、無菌気流式の乾燥装置による乾燥(乾燥工程)を可能とするためである。アルカリ性洗剤は、温度10℃未満だと効果が高く、30℃を超えると空気と反応することによる特性劣化といった問題が起こる。
【0021】
アルカリ性洗浄剤としては、焼成カルシウム水溶液及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液等を使用し得る。
【0022】
洗浄方法としては、例えば、1kgの生胡椒あたり、4〜10Lのアルカリ性洗浄剤溶液の中に、20〜60分浸漬することによって実施することができる。アルカリ性洗浄剤溶液を使用し、且つ、手もみ洗浄や、超音波洗浄などを併用しても良い。
【0023】
(殺菌工程)
洗浄工程にて、アルカリ性洗浄剤で1回以上洗浄された生胡椒は、次いで、次亜塩素酸ナトリウム溶液では、1回以上洗浄、即ち、殺菌される。次亜塩素酸ナトリウム溶液は、濃度25ppm以上、pH4.5以上とされる。通常、次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度は50〜100ppmとされ、pH4.5〜7.0、温度4〜60℃とされる。濃度が25ppm未満では、効果が少なく、250ppmを超えると、殺菌剤特有の臭いが発生するといった問題が生じる。また、温度は、4℃未満だと、作業性が悪く、60℃を超えると、殺菌剤の分解が早まることと、生胡椒の成分分解が生じる可能性がある。
【0024】
つまり、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の性状が、上記範囲を外れると良好な殺菌効果を得ることができなかった。
【0025】
殺菌方法としては、例えば、1kgの生胡椒あたり、4〜10Lの次亜塩素酸ナトリウム溶液の中に、10〜60分浸漬することによって実施することができる。
【0026】
次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用した殺菌方法としては、他には、手もみや超音波などを併用して、殺菌剤の接触率を高めることも可能である。
【0027】
(乾燥工程)
殺菌工程にて殺菌処理された生胡椒は、乾燥室内へと移送される。
【0028】
詳しくは後述するように、本実施例にて、図2〜図4に示す乾燥装置1は、乾燥室3を備えており、乾燥室3の天井部34は、透明とされる。また、乾燥装置1は、加熱装置53及び除湿機51を備えており、乾燥室3とは空気循環路、即ち、空気流入路42及び空気流出路43にて接続される。空気循環路には、フィルター装置52が配置されている。
【0029】
従って、乾燥室3に移送された殺菌済みの生胡椒は、日中は、太陽光線(太陽エネルギー)の照射を受け、自然加温により乾燥される。また、同時に、太陽エネルギーが照射されることにより、乾燥室1内の、殺菌処理済み生胡椒中の残留微生物の殺菌或いは残留微生物の増殖が防止される効果もある。
【0030】
夜間時においてもまた、加熱装置53にて加熱された空気が乾燥室3へと供給される。
【0031】
従って、日中、夜間を通して、乾燥室3内の温度は、75℃以下、通常、50℃〜70℃とされる。これは、胡椒の成分を失うことなく、且つ、最も早く乾燥させるためである。また、乾燥室3を循環される乾燥用空気流は、除湿機51により、湿度が70%以下(相対湿度)に維持されるのが好ましい。これは、胡椒の成分を失うことなく、短時間に乾燥させるためである。
(乾燥装置)
次に、乾燥装置1の一例を更に詳しく説明する。
【0032】
乾燥装置1は、胡椒のような薬効及び香味成分を有した食品の乾燥に適した構成とされる。本実施例によると、乾燥装置1は、フレーム枠体2により構成された乾燥室3と、乾燥室3の入口と出口とを接続する空気流入路及び空気流出路を構成する空気循環路である導管部4を備えている。
【0033】
乾燥室3を構成するフレーム枠体2は、基板をなす底板21と、底板21の入口側(図3にて右側)にて底板21に立設された入口板22と、底板21と、底板21の出口側(図3にて左側)にて底板21に立設された出口板23と、を備えている。底板21は、複数の縦、横フレーム24a、24bから成る支持台24にて、地上より所定の高さ位置、例えば70cm程度、の高さ位置に保持されている。また、支持台24は、導管部4を支持具(図示せず)を介して支持する機能をも有している。
【0034】
乾燥室3は、空気の流通が可能とされた、例えば金網、或いは、格子板などとされる仕切り版(即ち、棚板)31にて上部室32と下部室33とに仕切られている。上部室32に、乾燥すべき対象物100、即ち、生胡椒が直接に、或いは、容器等に入れた状態で載置される。
【0035】
また、乾燥室3は、少なくとも一部は、太陽光が内部へと入射できるように、太陽光照射可能の部材、即ち、透明部材34にて形成される。本実施例では、乾燥室3の天井部34a、及び、両側部34bには、透明のプラスチック、例えば、ポリエチレンやテフロン(登録商標)のフィルム又は、プラスチック板等が、配置される。透明部材34は、フレーム枠体2に対して、ボルト、ナットなどの取り付け具(図示せず)により着脱自在に固定される。
【0036】
上部室32は、出口板23に形成した出口開口部23aに連通しており、乾燥室3は、入口板22に形成した入口開口部22aに連通している。
【0037】
上記構成により、乾燥室3aは、入口開口部22a及び出口開口部23aを除いて密閉された空間を形成している。
【0038】
導管部4は、上記乾燥室3の下方に位置して配置された導管本体部41と、導管本体部41と下部室33の入口開口部22aに接続された入口連結導管部(空気流入路)42と、導管本体部41と上部室出口開口部23aに接続された出口連結導管部(空気流入路)43と、を備えている。
【0039】
導管本体部41には、出口導管部43に隣接した上流側に除湿機51が設置され、その下流側にフィルター装置52が設置されている。また、入口連結導管部42の入口開口部22aに隣接した位置に加熱装置(電気ヒータ)53が配置されている。
【0040】
また、導管部4には、掃除のための掃除穴44を複数箇所設置することができる。本実施例では、図2に示すように、導管本体部41には、フィルター部52に隣接してその上流側に一つ、また、入口連結導管部42の上下に一つずつ、設けた。しかし、これに限定されるものではなく、乾燥装置1の大きさ、即ち、処理能力等により、適宜設けるのがよい。
【0041】
上記構成の乾燥装置1の作動について説明する。
【0042】
上記構成の乾燥装置1は、少なくとも昼間、太陽が出ている時には、屋外に据え付けられ、太陽光線が、乾燥室3を照射するようにする。
【0043】
乾燥室3の天井部、又は、両側部のプラスチック板34a、34bを取り外して、上部室32の棚板31の上に、洗浄し、殺菌された、胡椒である乾燥対象物100を直接に、或いは、容器等に入れた状態で載置する。乾燥室3内は、通常、太陽エネルギーにより60℃程度まで昇温する。これにより、乾燥対象物100中の水分が蒸発する。
【0044】
除湿機51を駆動すると、導管部4中に空気流動が起こる。即ち、導管内を、除湿機51から入口連結導管部42の方へと、矢印で示すように、空気が流動する。空気流は、フィルター装置52により除塵された後、入口連結導管部42から入口開口部22aを介して乾燥室3の下部室33に流入する。下部室33の空気流は、棚板31の穴を通して上部室32へと流動し、太陽エネルギーにより加熱蒸発された乾燥対象物中の水分を含んだ空気流となって、上部室32の出口開口部23aから出口連結導管部43を通って、導管本体部41へと流動する。本実施例では、導管部4内を流動する空気流は、2〜4m3/分とした。
【0045】
除湿機51は、場合によっては、昼間時は、単に、導管部4内の空気流は排気し、外気を吸気する空気流動のための送風機として機能し、除湿機能は停止することも可能である。
【0046】
勿論、必要に応じて、除湿機51を駆動して、除湿機能により空気流中の水分を除去し、流動する空気中の湿度を25℃、30%〜30℃、50〜75%に維持することもできる。
【0047】
上記乾燥装置1の動作により、乾燥対象物100の乾燥が良好に実施される。
【0048】
次に、太陽光の照射がなくなる夜間時には、温度が低下し、例えば、20℃程度まで低下することもあり、乾燥装置2内を流動する空気流は、高湿化する。
【0049】
従って、本実施例によれば、除湿機51の除湿機能を駆動することにより、湿度を50%以下に維持する。
【0050】
また、乾燥作業時の天候次第では、必要により、昼間又は夜間の乾燥作業時において、加熱装置53を稼動させ、乾燥対象物100が、所定以上の湿度環境下に置かれるのを防ぐことができる。
【0051】
本実施例の乾燥装置1によれば、上記乾燥作業を2〜3日連続して実施することにより、乾燥対象物100、即ち、胡椒が、水分活性0.46以下とし得ることが立証されている。
【0052】
このように、上記構成とされる本実施例の乾燥装置1によれば、乾燥対象物100である胡椒に対して、長期保存による薬効及び香味成分の消失を回避して、長期保存のための乾燥を良好に行うことができる。
【0053】
また、夜間等太陽光エネルギーの低下時には、電気エネルギーにより空中湿度を下げて乾燥し、太陽エネルギーの多い時間には、太陽エネルギーを利用する方式とされるので、乾燥に使用するエネルギーを低減することができる。また、本乾燥装置は、昼間時に充分な太陽光が得られない地域での使用においては、太陽光によることなく、加熱装置53及び、除湿機51を作動させることによって、同等の乾燥が実現できる。
【0054】
上記本実施例による方法の殺菌効果を確認するために、食品衛生検査指針に則った微生物検査及び乾燥度合いを確認するための水分含有量の確認試験を行った結果を表1に示す。
【0055】
実験例1
カンボジア産の生胡椒1kgをpH10以上のアルカリ性洗浄剤溶液4Lの中に、室温30℃にて、20分間浸漬し、1回の洗浄を行った。アルカリ性洗浄剤としては、焼成カルシウム水溶液を使用した。
【0056】
次いで、上記アルカリ性洗浄剤で、1回洗浄された生胡椒1kgを、濃度100ppm、pH5.5の次亜塩素酸ナトリウム溶液4Lに20分浸漬し、1回殺菌した。
【0057】
水切り後、殺菌済み生胡椒を乾燥装置1に移し、日中55℃の乾燥室3内で、10時間、乾燥させた。夜間は、加熱装置53(及び除湿機51)を作動させ、乾燥室3内を40℃、湿度60%以下に維持して生胡椒を乾燥させた。このような乾燥工程を2日間継続して行った。
【0058】
その後、乾燥室3から乾燥した黒胡椒を得た。殺菌性と乾燥度合いを確認するために一般生菌・大腸菌・カビ数と水分量をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から、本発明に従った洗浄・殺菌・乾燥方法によると、洗浄・殺菌・乾燥後の黒胡椒に対する殺菌効果が充分に達成されていることが分かった。また、風味評価をも実施したが、本発明に従った、洗浄・殺菌・乾燥方法によると洗浄・殺菌・乾燥後の黒胡椒の香りや辛味が、一般流通品と比べて格段に強いことが分かった。
【0061】
このように、本発明に従った胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法は、殺菌工程に加熱や放射線照射を実施することなく、低温度で薬剤殺菌を行い、そして、乾燥工程にて、微生物(細菌)汚染を起こすことがない。従って、本発明によれば、熱帯で作られる黒胡椒が有する多量の細菌を、胡椒が持つ特質(薬効及び香味)を失うことなく、且つ、安全に、洗浄し、殺菌し、乾燥することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 乾燥装置
2 フレーム枠体
21 底板
22 入口板
23 出口板
24 支持台
3 乾燥室
31 仕切り板
32 上部室
33 下部室
34 透明部材
4 導管部
41 導管本体部
42 入口連結部
43 出口連結部
51 除湿機
52 フィルター装置
53 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法であって、
(a)収穫した生の胡椒を房より分解した後、アルカリ性洗浄剤を使用した洗浄液で洗浄する洗浄工程、
(b)前記(a)工程にて洗浄された胡椒を、濃度25ppm以上、pH4.5〜pH7.0の次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌する殺菌工程、
(c)次いで、前記(b)工程にて殺菌された胡椒を、乾燥室に移送し、乾燥室内にて温度75℃以下にて乾燥する乾燥工程、
を有することを特徴とする胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法。
【請求項2】
前記(c)工程は、前記乾燥室内の胡椒に、日中は太陽光線を照射し、夜間は、加熱装置により加熱された加熱空気を前記乾燥室に供給することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法。
【請求項3】
前記(c)工程は、前記乾燥室に供給される前記加熱空気は、除湿機により湿度が70%以下とされることを特徴とする請求項2に記載の胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法。
【請求項4】
前記(c)工程にて、前記乾燥室に供給される前記加熱空気は、循環使用されることを特徴とする請求項2に記載の胡椒の洗浄・殺菌・乾燥方法。
【請求項5】
収穫した生の胡椒を房より分解した後、アルカリ性洗浄剤を使用した洗浄液で洗浄し、次いで、濃度25ppm以上、pH4.5〜7.0の次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌された胡椒を乾燥するための乾燥装置であって、
空気の流通が可能とされた仕切り壁にて上部室と下部室とに仕切られ、前記殺菌済み胡椒が前記上部室に配置され、且つ、太陽光が照射可能に透明部材にて形成された乾燥室と、
前記乾燥室の下方に位置して配置された導管本体部と、前記導管本体部と前記下部室の入口開口部に接続された入口連結導管部と、前記導管本体部と前記上部室の出口開口部に接続された出口連結導管部と、を備えた導管部と、
前記出口連結導管部に隣接した前記導管本体部に設置された除湿機と、
前記乾燥室に隣接した前記入口連結導管部に設置された加熱装置と、
前記除湿機と前記加熱装置との間に設置されたフィルター装置と、
を備え、
前記除湿機を駆動することにより、空気流が、前記除湿機から前記フィルター装置及び前記加熱装置を介して前記乾燥室の前記下部室に流入し、次いで、前記上部室に流動し、更に、前記出口連結導管部を介して前記除湿機へと流れ、前記上部室に配置された前記殺菌済み胡椒を乾燥させることを特徴とする乾燥装置。
【請求項6】
前記乾燥室は、天井部及び両側部が透明部材にて形成されていることを特徴とする請求項5に記載の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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