胴縁留め付け部材及びそれを用いた施工構造

【課題】簡易な構造で、断熱材を長期にわたって固定することができる胴縁留め付け部材及びそれを用いた施工構造を提供する。
【解決手段】胴縁受板と、背面板と、バネ部と、雌ネジ部とからなる胴縁留め付け部材。胴縁受板と背面板は平板状で、互いに対面しており、該胴縁受板は、中心部に、貫通孔を有するとともに、突出した雌ネジ部係止部を有しており、該背面板は、中心部に、貫通孔を有しており、バネ部は、該胴縁受板と該背面板とを連結しており、雌ネジ部は、内周にねじが形成されている貫通孔を有するとともに、雌ネジ部係止部により係止されている。及び、建物の施工構造であって、胴縁留め付け部材は、コンクリート壁とその外側に配された断熱材とからなる建物の躯体壁に、雌ネジ部がボルトと螺合した状態で連結しており、胴縁受板が該胴縁を、背面板が該断熱材を押圧している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、鉄筋コンクリート、プレキャストコンクリート、軽量気泡コンクリートなどのコンクリート製の建物の躯体壁に、一定の間隔を置いて胴縁を留め付けるために用いる胴縁留め付け部材に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から、コンクリート製の建物の躯体壁の外側に断熱材を配し、更にその外側に空気層を設け、該空気層を介して外壁材を取り付けることが行われている。例えば、特許文献１には、雌ネジ部と固定部とを有する補強部材が取り付けられているボルトと、コンクリート外壁に固定されるボルトによって支持されるチャンネルとからなる外装材取付具が開示されている。この補強部材は、その雌ネジ部においてボルトの雄ネジ部と螺合することができると共に、その固定部においてコンクリート外壁に固定されることができる。
【０００３】
しかし、特許文献１の外装材取付具では、断熱材をコンクリート壁に固定するために、断熱材固定プレートで別途断熱材を固定する必要があり、手間がかかる。また、経年、地震等により、断熱材固定プレートが緩み、断熱材の固定が不十分となる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００６−９００４５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明は、簡易な構造で、断熱材を長期にわたって固定することができる胴縁留め付け部材及びそれを用いた施工構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明は、胴縁留め付け部材とそれを用いた建物の施工構造を提供する。
胴縁留め付け部材は、建物の躯体壁に、一定の間隔を置いて胴縁を留め付けるために用いるものであって、胴縁受板と、背面板と、バネ部と、雌ネジ部とからなる。胴縁受板と背面板は平板状で、互いに対面している。胴縁受板は、中心部に、貫通孔を有するとともに、突出した雌ネジ部係止部を有している。背面板は、中心部に、貫通孔を有している。バネ部は、胴縁受板と背面板とを連結している。雌ネジ部は、内周にねじが形成されている貫通孔を有するとともに、雌ネジ部係止部により係止されている。そして、胴縁受板の貫通孔と、雌ネジ部の貫通孔と、背面板の貫通孔は直線上に設けられている。それらの特徴により、本発明の胴縁留め付け部材は、ボルトを介して建物の構造躯体に固定することができるとともに、バネ部の反発により、胴縁受板が胴縁を、背面板が断熱材を長期にわたって押圧することができる。また、雌ネジ部が、胴縁受板に設けられた雌ネジ部係止部により係止されているので、該雌ネジ部は、胴縁受板と一体型の場合よりも該胴縁受板から外れにくい。それにより、ボルトの緩みが抑えられ、胴縁留め付け部材の固定は強固となる。なお、胴縁受板において、雌ネジ部係止部は、背面板と対面した側に突出するよう設けても良いし、背面板と対面していない側に突出するよう設けても良い。前者の場合には、雌ネジ部が、胴縁受板と背面板の間に、後者の場合は、雌ネジ部が、胴縁受板の外側に係止されることになるが、どちらの場合でも、問題は無く、前述した効果を得ることができる。
また、胴縁受板は、外縁に折り曲がった鍔を有すると、胴縁受板が高強度となるので好ましい。
更に、背面板は、略円形であると、胴縁留め付け部材を施工する際に、背面板を断熱材に押圧した状態で回転させて、胴縁受板の位置を調整することが容易になるので、好ましい。なお、略円形とは、円形及び五角形以上の多角形のことである。
更に、胴縁受板と背面板は、バネ部を係止するバネ部係止部を有すると、胴縁受板と、背面板と、バネ部とが一体となり、作業が行いやすいので好ましい。なお、胴縁留め付け部材を施工する際に、背面板を断熱材に押圧した状態で回転させて、胴縁受板の位置を調整するので、背面板において、バネ部係止部は、胴縁受板と対面した側に設けることが好ましい。
また、本発明では、建物の躯体壁に、前述した胴縁留め付け部材を用いて胴縁を留め付けた建物の施工構造も提供する。本発明における建物の施工構造では、建物の躯体壁は、コンクリート壁とその外側に配された断熱材とからなり、アンカーが、建物の躯体壁に打ち込まれており、ボルトが、アンカーに取り付けられており、胴縁留め付け部材は、背面板の貫通孔をボルトが貫通し、該ボルトと雌ネジ部が螺合した状態で連結しており、胴縁は、胴縁留め付け部材に連結しており、胴縁には、外壁材が留め付けられている。そして、胴縁留め付け部材は、バネ部の反発により、胴縁受板が胴縁を、背面板が断熱材を押圧している。
また、本発明の建物の施工構造においては、胴縁の位置は、胴縁留め付け部材の雌ネジ部とボルトの螺合位置により調整されていると、外壁材を施工する際に不陸がなくなるので好ましい。
【発明の効果】
【０００７】
本発明によれば、簡易な構造で、断熱材を長期にわたって固定することができる胴縁留め付け部材及びそれを用いた施工構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【０００８】
【図１】図１は、本発明に係る胴縁留め付け部材の一実施例の正面図である。
【図２】図２は、図１に示す胴縁留め付け部材の右側面図である。
【図３】図３は、図１に示す胴縁留め付け部材の背面図である。
【図４】図４は、図１に示す胴縁留め付け部材を施工した状態の縦断面図である。
【図５】図５は、本発明に係る胴縁留め付け部材の別の実施例の正面図である。
【図６】図６は、図５に示す胴縁留め付け部材の右側面図である。
【図７】図７は、図５に示す胴縁留め付け部材の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【０００９】
本発明に係る胴縁留め付け部材及びそれを用いた施工構造の実施形態を図面を用いて説明する。
【００１０】
図１、２、３は、本発明に係る胴縁留め付け部材の一実施例の正面図、右側面図、背面図である。胴縁留め付け部材Ａ１は、胴縁受板ａ１と、雌ネジ部ｂ１と、バネ部ｃ１と、背面板ｄ１とからなる。胴縁受板ａ１と背面板ｄ１は円形で、平板状であり、互いに対面している。胴縁受板ａ１は、中心部に、貫通孔ｅ１１を有するとともに、背面板と対面した側に突出した雌ネジ部係止部ｆ１と、突出したバネ部係止部ｇ１１を有し、更に、外縁に背面板に向かって折り曲がった鍔ｈ１を有する。背面板ｄ１は、中心部に、貫通孔ｅ１２を有するとともに、胴縁受板と対面した側に、突出したバネ部係止部ｇ１２を有している。バネ部ｃ１は、弦巻バネであり、胴縁受板ａ１のバネ部係止部ｇ１１と、背面板ｄ１のバネ部係止部ｇ１２とにより係止されており、胴縁受板ａ１と背面板ｄ１は、バネ部ｃ１により連結している状態である。雌ネジ部ｂ１は、内周にねじが形成されている貫通孔を有するとともに、胴縁受板ａ１の背面板と対面した側に、雌ネジ部係止部ｆ１により係止されている。また、雌ネジ部ｂ１は、バネ部ｃ１の径内に位置するよう設けられているとともに、図３で、背面板ｄ１の貫通孔ｅ１２から雌ネジ部ｂ１が見えることから明らかなように、胴縁受板ａ１の貫通孔ｅ１１と、雌ネジ部の貫通孔と、背面板ｄ１の貫通孔ｅ１２は直線上に設けられている。
【００１１】
図４は、図１に示す胴縁留め付け部材Ａ１を施工した状態の縦断面図である。建物の躯体壁は、コンクリート壁とその外側に配された断熱材Ｂとからなり、アンカーＣが、建物の躯体壁に打ち込まれており、ボルトＤが、アンカーＣに取り付けられている。そして、胴縁留め付け部材Ａ１は、背面板ｄ１の貫通孔ｅ１２、雌ネジ部ｂ１の貫通孔、胴縁受板ａ１の貫通孔ｅ１１をボルトＤが貫通し、ボルトＤと雌ネジ部ｂ１が螺合した状態で固定されている。胴縁Ｅは、胴縁留め付け部材Ａ１の胴縁受板ａ１に接面するとともに、ビスにより胴縁受板ａ１に固定されている。更に、胴縁Ｅには、外壁材留め付け金具Ｆが固定されており、外壁材留め付け金具Ｆにより外壁材Ｇが係止されて、建物の外壁を構築している。図４の施工構造の胴縁留め付け部材Ａ１は、胴縁受板ａ１と、雌ネジ部ｂ１と、バネ部ｃ１と、背面板ｄ１とからなるので、非常に簡易な構造である。また、図４の施工構造において、胴縁留め付け部材Ａ１は、バネ部ｃ１の反発により、胴縁受板ａ１が胴縁Ｅを、背面板ｄ１が断熱材Ｂを押圧しているので、経年、地震等により緩みにくく、断熱材Ｂを長期にわたって確実に固定することができる。更に、図４の施工構造において、胴縁Ｅの位置は、胴縁留め付け部材Ａ１の雌ネジ部ｂ１とボルトＤの螺合位置により調整されているので、外壁材Ｇには不陸がない。更に、図４の施工構造において、胴縁留め付け部材Ａ１の背面板ｄ１は円形であるので、施工の際に背面板ｄ１を断熱材Ｂに押圧した状態で回転させることが容易であり、施工しやすい。更に、胴縁受板ａ１と背面板ｄ１は、バネ部係止部ｇ１１、ｇ１２を有しており、バネ部係止部ｇ１１、ｇ１２にバネ部ｃ１を係止させているので、胴縁受板ａ１と、背面板ｄ１と、バネ部ｃ１とが一体となり、施工しやすい。更に、胴縁受板ａ１は、外縁に鍔ｈ１を有するので、胴縁受板ａ１は高強度である。更に、雌ネジ部ｂ１が、胴縁受板ａ１に設けられた雌ネジ部係止部ｆ１により係止されているので、ボルトＤの緩みが抑えられ、胴縁留め付け部材Ａ１の固定は強固となる。
【００１２】
図５〜７は、本発明に係る胴縁留め付け部材の別の実施例の正面図、右側面図、背面図である。胴縁留め付け部材Ａ２は、胴縁受板ａ２と、雌ネジ部ｂ２と、バネ部ｃ２と、背面板ｄ２とからなる。胴縁受板ａ２と背面板ｄ２は互いに対面しており、胴縁受板ａ２は、中心部に、貫通孔ｅ２１を有するとともに、雌ネジ部係止部ｆ２と、バネ部係止部ｇ２１を有する。背面板ｄ２は、中心部に、貫通孔ｅ２２を有するとともに、胴縁受板ａ２と対面した側に突出したバネ部係止部ｇ２２を有している。バネ部ｃ２は、弦巻バネであり、胴縁受板ａ２のバネ部係止部ｇ２１と、背面板ｄ２のバネ部係止部ｇ２２とにより係止されており、胴縁受板ａ２と背面板ｄ２は、バネ部ｃ２により連結している状態である。雌ネジ部ｂ２は、内周にねじが形成されている貫通孔を有するとともに、雌ネジ部係止部ｆ２により係止されている。しかし、胴縁留め付け部材Ａ２は、胴縁受板ａ２が八角形で、鍔を有さないこと、雌ネジ部ｂ２が背面板ｄ２とは対面していない側に設けてあること、背面板ｄ２が八角形であることが胴縁留め付け部材Ａ１とは異なる。しかし、胴縁留め付け部材Ａ２を用いても、胴縁留め付け部材Ａ１と同じように、図４に示した施工構造を行うことができる。また、胴縁留め付け部材Ａ２も非常に簡易な構造である。そして、胴縁留め付け部材Ａ２を用いた施工構造でも、胴縁留め付け部材Ａ２のバネ部ｃ２の反発により、胴縁受板ａ２が胴縁Ｅを、背面板ｄ２が断熱材Ｂを押圧して、経年、地震等により緩みにくく、断熱材Ｂを長期にわたって確実に固定することができる。更に、胴縁Ｅの位置は、胴縁留め付け部材Ａ２の雌ネジ部ｂ２とボルトＤの螺合位置により調整されているので、外壁材Ｇには不陸がない。更に、胴縁受板ａ２と背面板ｄ２は、バネ部係止部ｇ２１、ｇ２２によりバネ部ｃ２を係止しているので、胴縁受板ａ２と、背面板ｄ２と、バネ部ｃ２とが一体となり、施工しやすい。更に、雌ネジ部ｂ２が、胴縁受板ａ２に設けられた雌ネジ部係止部ｆ２により係止されているので、ボルトＤの緩みが抑えられ、胴縁留め付け部材Ａ２の固定は強固となる。
【００１３】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲において種々の変形態を取り得る。例えば、胴縁留め付け部材において、バネ部は皿バネ形状でも良い。。
【産業上の利用可能性】
【００１４】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な構造で、断熱材を長期にわたって固定することができる胴縁留め付け部材及びそれを用いた施工構造を提供することができる。
【符号の説明】
【００１５】
Ａ１〜Ａ２胴縁留め付け部材
Ｂ断熱材
Ｃアンカー
Ｄボルト
Ｅ胴縁
Ｆ外壁材留め付け金具
Ｇ外壁材
ａ１〜ａ２胴縁受板
ｂ１〜ｂ２雌ネジ部
ｃ１〜ｃ２バネ部
ｄ１〜ｄ２背面板
ｅ１１〜ｅ２２貫通孔
ｆ１〜ｆ２雌ネジ部係止部
ｇ１１〜ｇ２２バネ部係止部
ｈ１鍔

【特許請求の範囲】
【請求項１】
建物の躯体壁に、一定の間隔を置いて胴縁を留め付けるために用いる胴縁留め付け部材であって、
胴縁受板と、背面板と、バネ部と、雌ネジ部とからなり、
胴縁受板と背面板は平板状で、互いに対面しており、
胴縁受板は、中心部に、貫通孔を有するとともに、突出した雌ネジ部係止部を有しており、
背面板は、中心部に、貫通孔を有し、
バネ部は、胴縁受板と背面板とを連結しており、
雌ネジ部は、内周にねじが形成されている貫通孔を有するとともに、雌ネジ部係止部により係止されており、
胴縁受板の貫通孔と、雌ネジ部の貫通孔と、背面板の貫通孔は直線上に設けられている
ことを特徴とする胴縁留め付け部材。
【請求項２】
請求項１に記載の胴縁留め付け部材であって、
胴縁受板は、外縁に折り曲がった鍔を有する
ことを特徴とする胴縁留め付け部材。
【請求項３】
請求項１又は２に記載の胴縁留め付け部材であって、
背面板は、略円形である
ことを特徴とする胴縁留め付け部材。
【請求項４】
請求項１〜３のいずれかに記載の胴縁留め付け部材であって、
胴縁受板と背面板は、バネ部を係止するバネ部係止部を有する
ことを特徴とする胴縁留め付け部材。
【請求項５】
請求項４に記載の胴縁留め付け部材であって、
背面板のバネ部係止部は、胴縁受板と対面する側に設けられている
ことを特徴とする胴縁留め付け部材。
【請求項６】
請求項１〜５のいずれかに記載の胴縁留め付け部材であって、
雌ネジ部は、雌ネジ部係止部により、胴縁受板の背面板と対面した側に係止されている
ことを特徴とする胴縁留め付け部材。
【請求項７】
請求項１〜５のいずれかに記載の胴縁留め付け部材であって、
雌ネジ部は、雌ネジ部係止部により、胴縁受板の背面板と対面しない側に係止されている
ことを特徴とする胴縁留め付け部材。
【請求項８】
建物の躯体壁に、請求項１〜７のいずれかに記載の胴縁留め付け部材を用いて胴縁を留め付けた、建物の施工構造であって、
建物の躯体壁は、コンクリート壁とその外側に配された断熱材とからなり、
アンカーが、建物の躯体壁に打ち込まれており、
ボルトが、アンカーに取り付けられており、
胴縁留め付け部材は、背面板の貫通孔をボルトが貫通し、該ボルトと雌ネジ部が螺合した状態で連結しており、
胴縁は、胴縁留め付け部材に連結しており、
胴縁には、外壁材が留め付けられており、
胴縁留め付け部材は、バネ部の反発により、胴縁受板が胴縁を、背面板が断熱材を押圧している
ことを特徴とする建物の施工構造。
【請求項９】
請求項８に記載の建物の施工構造であって、
胴縁の位置は、胴縁留め付け部材の雌ネジ部とボルトの螺合位置により調整されている
ことを特徴とする建物の施工構造。

【図１】