説明

胸当てプロテクター

【課題】腰ベルトの有効長さを簡単に調節でき、適切な腰ベルトの締め付け力を確保できる胸当てプロテクターを提供することである。
【解決手段】腰ベルト3の左右2箇所の部位に、腰ベルト3を形成する帯状体3aが送り込まれる枠11a内に、帯状体3aが掛け回される軸部が差し渡され、この軸部に掛け回される帯状体3aの戻りを楔で係止するバックル11を設け、このバックル11の軸部に掛け回された帯状体3aの先端側を送り込まれた元方向側へ引っ張ったときに、腰ベルト3の有効長を短くして腰の回りに締め付けることにより、着用後に腰ベルト3の締め付け力を実感できる状態で、各バックル11の軸部に掛け回された帯状体3aの先端側を引っ張って、腰ベルト3の有効長さを簡単に調節でき、適切な腰ベルト3の締め付け力を確保できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球等のスポーツで着用される胸当てプロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
野球やソフトボールの捕手や審判が着用する胸当てプロテクターは、上半身の胸部を含む前面に当てられるプロテクター本体の上部側に、首に掛けられる吊りバンドが取り付けられ、プロテクター本体の下部の左右両側に、腰の回りに締め付けられる腰ベルトが取り付けられており、この腰ベルトの締め付けでプロテクター本体を上半身の前面に固定するようになっている。吊りバンドと腰ベルトの中間部を縦向きに連結する連結バンドを設けたものもある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたものは、連結バンドや腰ベルトをプロテクター本体と着脱可能にしている。
【0003】
上述した従来の胸当てプロテクターは、特許文献1に記載されたものも含めて、腰ベルトの有効長さを調節する送りカンを1箇所に設け、着用前または着用後に、腰ベルトの有効長さを調節するようにしている。送りカンは、腰ベルトを形成する帯状体を一方側からカン内に送り込んで撓ませ、この撓ませた帯状体をカン内から他方側へ引き出して、腰ベルトの有効長さを調節するものである。さらに、腰ベルトを形成する帯状体を伸縮性の弾性帯で形成して、腰ベルトの締め付け性を確保するようにしたものもある。
【0004】
【特許文献1】特開2000−176072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の胸当てプロテクターは、腰ベルトの1箇所に設けた送りカンで、腰ベルトの有効長さを調節するようにしているので、有効長さを調節するのに手間がかかり、かつ、腰ベルトの締め付け力を適切に調節するのが難しい問題がある。すなわち、送りカンは、見込みで帯状体をカン内に送り込み、撓ませた帯状体をカン内から引き出したときに、有効長さの調節量が適切であるか否かが分かるので、1回の送り込みで有効長さを適切に調節できることはほとんどなく、何回も調節を繰り返すことが多い。また、このように調節を繰り返しても、締め付け力を適切に確保することは難しい。
【0006】
前記腰ベルトを形成する帯状体を伸縮自在な弾性帯で形成すれば、締め付け力の確保が多少容易になるが、腰ベルトをプロテクター本体と着脱可能にすると、着脱部が外れたときに帯状体が跳ね返り、帯状体の着脱部の先端に設けられた係止具が顔等に当たって怪我をする恐れがある。
【0007】
前記腰ベルトの締め付け力が不十分な場合は、胸当てプロテクターが上下や左右にずれやすくなり、着用者の動作の妨げとなるのみでなく、胸当てプロテクターが下方へずれたときは、ボールが着用者の喉部を直撃する恐れもある。また、腰ベルトの締め付け力が過大な場合は、着用者に窮屈な感じを与える。
【0008】
そこで、本発明の課題は、腰ベルトの有効長さを簡単に調節でき、適切な腰ベルトの締め付け力を確保できる胸当てプロテクターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、上半身の胸部を含む前面に当てられるプロテクター本体の上部側に、首に掛けられる吊りバンドを取り付け、前記プロテクター本体の下部の左右両側に、腰の回りに締め付けられる腰ベルトを取り付けた胸当てプロテクターにおいて、前記腰ベルトの左右2箇所の部位に、腰ベルトを形成する帯状体が送り込まれる枠内に、帯状体が掛け回される軸部が差し渡され、この軸部に掛け回される帯状体の戻りを楔で係止するバックルを設け、このバックルの軸部に掛け回された帯状体の先端側を送り込まれた元方向側へ引っ張ったときに、腰ベルトの有効長を短くして腰の回りに締め付ける構成を採用した。
【0010】
すなわち、腰ベルトの左右2箇所の部位に、腰ベルトを形成する帯状体が送り込まれる枠内に、帯状体が掛け回される軸部が差し渡され、この軸部に掛け回される帯状体の戻りを楔で係止するバックルを設け、このバックルの軸部に掛け回された帯状体の先端側を送り込まれた元方向側へ引っ張ったときに、腰ベルトの有効長を短くして腰の回りに締め付けるようにすることにより、着用後に腰ベルトの締め付け力を実感できる状態で、各バックルの軸部に掛け回された帯状体の先端側を元方向側へ引っ張って、腰ベルトの有効長さを簡単に調節でき、適切な腰ベルトの締め付け力を確保できるようにした。バックルを左右2箇所の部位に設けたのは、腰ベルトを左右均等に締め付けて、プロテクター本体が自然に体の真正面に来るようにするためである。
【0011】
前記腰ベルトの左右2箇所の部位のバックルを、腰の前面側に回される部位に設けることにより、バックルに掛け回された帯状体の一端を、体の前面側で引っ張りやすくすることができる。
【0012】
前記腰ベルトを非伸縮性の帯状体で形成することにより、腰ベルトをプロテクター本体と着脱可能としたときに、着脱部が外れた場合の帯状体の跳ね返りをなくすことができる。
【0013】
前記腰ベルトを前記プロテクター本体の左右両端よりも内側の前面側に取り付けることにより、プロテクター本体の左右両端部を腰ベルトで押さえ込んで、プロテクター本体のずれをより確実に防止することができる。
【0014】
前記腰ベルトの中間部に、腰の後面に当てられる腰パッドを設けることにより、胸当てプロテクターをより安定させて着用することができる。
【0015】
前記腰パッドを前記腰ベルトの中間部に介在させ、腰ベルトに着脱可能に連結することにより、胸当てプロテクターを着用しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の胸当てプロテクターは、腰ベルトの左右2箇所の部位に、腰ベルトを形成する帯状体が送り込まれる枠内に、帯状体が掛け回される軸部が差し渡され、この軸部に掛け回される帯状体の戻りを楔で係止するバックルを設け、このバックルの軸部に掛け回された帯状体の先端側を送り込まれた元方向側へ引っ張ったときに、腰ベルトの有効長を短くして腰の回りに締め付けるようにしたので、腰ベルトの有効長さを簡単に調節でき、適切な腰ベルトの締め付け力を確保することができる。また、プロテクター本体が自然に体の真正面に来るようにすることもできる。
【0017】
前記腰ベルトの左右2箇所の部位のバックルを、腰の前面側に回される部位に設けることにより、バックルに掛け回された帯状体の一端を、体の前面側で引っ張りやすくすることができる。
【0018】
前記腰ベルトを非伸縮性の帯状体で形成することにより、腰ベルトをプロテクター本体と着脱可能としたときに、着脱部が外れた場合の帯状体の跳ね返りをなくすことができる。
【0019】
前記腰ベルトをプロテクター本体の左右両端よりも内側の前面側に取り付けることにより、プロテクター本体の左右両端部を腰ベルトで押さえ込んで、プロテクター本体のずれをより確実に防止することができる。
【0020】
前記腰ベルトの中間部に、腰の後面に当てられる腰パッドを設けることにより、胸当てプロテクターをより安定させて着用することができる。
【0021】
前記腰パッドを腰ベルトの中間部に介在させ、腰ベルトに着脱可能に連結することにより、胸当てプロテクターを着用しやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この胸当てプロテクターは野球の捕手用のものであり、図1および図2に示すように、上半身の胸部を含む前面に当てられるプロテクター本体1の上部側に、首に掛けられる吊りバンド2が取り付けられ、プロテクター本体1の下部の左右両側に、腰の後側へ回される腰ベルト3が取り付けられて、腰ベルト3の中間部に、腰の後面に当てられる腰パッド4が介在するように設けられており、吊りバンド2の中間部と腰パッド4が縦向きの連結バンド5で連結されている。
【0023】
前記プロテクター本体1は、前面側に凸となる複数の発泡芯体を、合成皮革や布製等の前面材と後面材で覆ったものであり、上部側の左右に、首の両側の肩部に沿わされる上方への突出部1aが形成され、下部側の左右に、腰の両側に沿わされる拡幅部1bが形成されている。左右の突出部1aの間の凹部には、喉部に当てられる喉パッド6が取り付けられ、左側の突出部1aには、左肩に当てられる肩パッド7が取り付けられている。
【0024】
前記吊りバンド2は、伸縮性の帯状体2aで形成され、両端部が送りカン8aを介して有効長さを調節可能に、プロテクター本体1の左右の突出部1aに取り付けられている。また、連結バンド5は、非伸縮性の帯状体5aで形成され、その上端が連結部材9への縫い付けで吊りバンド2の中間部に連結され、下端が送りカン8bを介して、有効長さを調節可能に腰パッド4の中央部上側に連結されている。
【0025】
前記腰ベルト3は、非伸縮性の帯状体3aで形成され、両端部がプロテクター本体1の前面側に左右の拡幅部1bの内側で取り付けられ、中間部に介在する腰パッド4と、雌雄一対の係脱自在な係止体10a、10bからなる連結具10で、着脱可能に連結されている。この実施形態では、プロテクター本体1に取り付けられた左右の帯状体3a側に雄の係止体10bが設けられ、腰パッド4の左右に取り付けられた帯状体3a側に雌の係止体10aが設けられている。これらの係止体10a、10bは、互いに逆側に設けてもよい。
【0026】
前記プロテクター本体1に取り付けられた左右の帯状体3aには、腰の前面側に回される左右対称の2箇所の部位に、腰ベルト3の有効長を短くするバックル11が設けられている。このバックル11は、図3(a)に拡大して示すように、矩形状の枠11a内に2本の軸部11b、11cが平行に差し渡され、軸部11bに近接する枠11aの内面側に楔11dが形成され、その外面側につまみ片11eが形成されており、プロテクター本体1に取り付けられた帯状体3aが、枠11a内に送り込まれて一方の軸部11bに掛け回され、その先端側が送り込まれた元方向へ引き出されている。また、他方の軸部11cには、腰パッド4に連結される定長の帯状体3aが係止されている。軸部11cを省略して、この定長の帯状体3aを枠11aに係止することもできる。
【0027】
図3(a)に矢印で示すように、前記プロテクター本体1に取り付けられ、バックル11の軸部11bに掛け回された帯状体3aの先端側を、送り込まれた元方向側へ引っ張ると、腰ベルト3の有効長が短くなり、バックル11の枠11aを帯状体3aと平行な方向に向けると、軸部11bに掛け回された帯状体3aが楔11dに係止されて、その戻りが止められる。したがって、胸当てプロテクターを着用して腰パッド4を腰ベルト3に連結した状態で、左右のバックル11の軸部11bに掛け回された各帯状体3aの先端側を、送り込まれた元方向側となる身体の前面内側へ引っ張ることにより、腰ベルト3の締め付け力を実感しながら、腰ベルト3の有効長さを簡単に調節でき、適切な締め付け力を確保することができる。
【0028】
なお、前記腰ベルト3の締め付けを緩めるときは、図3(b)に示すように、つまみ片11eを持ってバックル11の枠11aを、送り込まれた帯状体3aと直角方向へ起こすことにより、楔11dによる帯状体3aの係止を解除して、帯状体3aの先端側を戻すことができる。
【0029】
上述した実施形態では、腰パッドに連結される帯状体を定長とし、プロテクター本体に取り付けられた帯状体をバックルの軸部に掛け回し、その先端側を身体の前面内側へ引っ張るようにしたが、プロテクター本体に取り付けられた帯状体を定長とし、腰パッドに連結される帯状体をバックルの軸部に掛け回し、その先端側を身体の前面外側へ引っ張るようにすることもできる。また、帯状体が腰の後面側に回される左右対称の2箇所の部位にバックルを設け、帯状体の先端側を身体の後面で内側または外側へ引っ張るようにすることもできる。なお、バックルの枠の形状は、矩形状以外の多角形状や長円形状等とすることもできる。
【0030】
また、上述した実施形態では、吊りバンドと腰ベルトの中間部を連結バンドで連結し、腰ベルトの中間部に腰パッドを介在させたが、本発明に係る胸当てプロテクターは、連結バンドや腰パッドのないものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】胸当てプロテクターの実施形態を示す正面図
【図2】図1の背面図
【図3】aは図1のバックルで腰ベルトを締め付ける状態を示す断面図、bはaの腰ベルトの締め付けを緩める状態を示す断面図
【符号の説明】
【0032】
1 プロテクター本体
1a 突出部
1b 拡幅部
2 吊りバンド
2a 帯状体
3 腰ベルト
3a 帯状体
4 腰パッド
5 連結バンド
5a 帯状体
6 喉パッド
7 肩パッド
8a、8b 送りカン
9 連結部材
10 連結具
10a、10b 係止体
11 バックル
11a 枠
11b、11c 軸部
11d 楔
11e つまみ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上半身の胸部を含む前面に当てられるプロテクター本体の上部側に、首に掛けられる吊りバンドを取り付け、前記プロテクター本体の下部の左右両側に、腰の回りに締め付けられる腰ベルトを取り付けた胸当てプロテクターにおいて、前記腰ベルトの左右2箇所の部位に、腰ベルトを形成する帯状体が送り込まれる枠内に、帯状体が掛け回される軸部が差し渡され、この軸部に掛け回される帯状体の戻りを楔で係止するバックルを設け、このバックルの軸部に掛け回された帯状体の先端側を送り込まれた元方向側へ引っ張ったときに、腰ベルトの有効長を短くして腰の回りに締め付けるようにしたことを特徴とする胸当てプロテクター。
【請求項2】
前記腰ベルトの左右2箇所の部位のバックルを、腰の前面側に回される部位に設けた請求項1に記載の胸当てプロテクター。
【請求項3】
前記腰ベルトを非伸縮性の帯状体で形成した請求項1または2に記載の胸当てプロテクター。
【請求項4】
前記腰ベルトを前記プロテクター本体の左右両端よりも内側の前面側に取り付けた請求項1乃至3のいずれかに記載の胸当てプロテクター。
【請求項5】
前記腰ベルトの中間部に、腰の後面に当てられる腰パッドを設けた請求項1乃至4のいずれかに記載の胸当てプロテクター。
【請求項6】
前記腰パッドを前記腰ベルトの中間部に介在させ、腰ベルトに着脱可能に連結した請求項5に記載の胸当てプロテクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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