胸腔チューブ/排気機構を備えた側副換気装置
【課題】肺に閉じ込められた空気を除去するための安全かつ効率的な肺へのアクセスを提供すること。
【解決手段】胸腔チューブ排気装置を備えた側副換気バイパスシステムであって、閉じ込められた空気を肺から除去することができる。胸腔チューブ排気装置を用いて、胸膜腔内に閉じ込められた全ての空気をこのバイパスシステムから排気して、気胸症を防止することができる。
【解決手段】胸腔チューブ排気装置を備えた側副換気バイパスシステムであって、閉じ込められた空気を肺から除去することができる。胸腔チューブ排気装置を用いて、胸膜腔内に閉じ込められた全ての空気をこのバイパスシステムから排気して、気胸症を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、病変した肺を治療する装置に関し、詳細には、胸膜腔から空気を除去して局所胸膜癒着を形成するための側副換気装置と共に用いる排気装置に関する。
【0002】
〔関連分野〕
1930年代に始まり、特に1960年代および1970年代初めに行われた研究結果から、長期に亘る連続的な酸素治療が、慢性閉塞性肺疾患を患っている低酸素血症の患者の治療に有効であることが分かった。言い換えれば、患者の肺に常に酸素を補給することで患者の寿命および生活の質が改善され得る。
【0003】
しかしながら、医療コスト抑制の点で、慢性肺疾患の連続的な酸素治療を行うための追加コストにより酸素治療の年間コストが過剰に増すという懸念が増大している。従って、酸素治療を行う場合は、できる限りコスト効率を上げるのが望ましい。
【0004】
酸素補給が必要な患者の標準的な治療は、鼻カニューレによって酸素源から酸素を供給することである。しかしながら、このような治療には、無駄となる酸素が多量に必要であり、鼻が痛みや刺激を受け、一層悪化する恐れもある。他の不所望の副作用も報告されている。連続的な酸素治療のコスト削減に役立つと提案された様々な他の医療方法も研究されてきた。
【0005】
緊急輪状甲状軟骨切開により気管切開チューブを挿入して気道が閉塞した患者の呼吸を継続できるようにするために、様々な装置および方法が考案されてきた。このような装置は、通常は、自発呼吸していない患者に対してのみ使用されるようになっており、慢性肺疾患の長期の治療には適していない。一般に、このような装置は、皮膚に突刺して装着し、比較的大きな湾曲した気管切開チューブを挿入する気管の上の喉頭の輪状膜内に孔を開ける。上記したように、このようなチューブの使用は、医療上、気管の閉塞で患者が窒息するような緊急事態に制限されている。このような緊急用気管切開チューブは、気道の閉塞が解除された後の長期の治療には適していない。
【0006】
緊急時の使用または換気目的に適した他の装置が、ロジャース(Rogers)による米国特許第953,922号、シェルデン(Shelden)による米国特許第2,873,742号、ブラメルカンプ(Brummelkamp)による米国特許第3,384,087号、トイ(Toy)による米国特許第3,511,243号、カルホウン(Calhoun)による米国特許第3,556,103号、シェルデン(Shelden)らによる米国特許第2,991,787号、ウェイス(Weiss)による米国特許第3,688,773号、ウェイス(Weiss)らによる米国特許第3,817,250号、およびポッジ(Pozzi)による米国特許第3,916,903号に開示されている。
【0007】
気管切開チューブは目的の用途には適しているが、慢性閉塞性肺疾患で自発呼吸している患者に酸素を補給する手段として長期に亘って外来患者に使用するようには意図されていない。このような気管切開チューブは、通常は、比較的短期間に亘って患者に全空気を供給するようにデザインされている。気管切開チューブは、通常は硬質または半硬質であって、外径が乳児用の2.5mmから成人用の15mmまでの口径範囲を有する。気管切開チューブは、通常は、緊急時または外科処置として手術室で、組織の血管が少なく出血が少ない輪状甲状膜を介して挿入する。このような装置の目的は、他の手段によって正常な呼吸が回復するまで、空気の両方向の通過を可能にすることである。
【0008】
別のタイプの気管切開チューブが、ヤコブ(Jacobs)による米国特許第3,682,166号および同第3,788,326号に開示されている。ここに開示したカテーテルは、無呼吸の患者の呼吸を回復させるべく緊急ベースで空気または酸素を供給および排気するために、14ゲージまたは16ゲージの針に取り付けて輪状甲状膜から挿入する。空気または酸素は、患者の肺を膨張および収縮させるために30psi〜100psi(約207kPa〜約689kPa)で供給する。従来の他の気管切開チューブと同様のヤコブによるカテーテルは、外来患者の長期使用には適しておらず、このような使用目的には容易に適合させることができない。
【0009】
気管切開チューブの機能が限定的であるため、経気管カテーテルが提案され、長期の酸素補給治療に用いられている。例えば、ヘンリーJ・ハイムリッヒ博士(Dr. Henry J. Heimlich)によって開発された小径経気管カテテール(16ゲージ)(「経気管酸素システムでの呼吸回復(Respiratory Rehabilitaion with Transtracheal Oxygen System)」、ザ・アナルズ・オブ・オトロジー、ライノロジー&ラリンガロジー(THE ANNALS OF OTOLOGY, RHINOLOGY & LARYNGOLOGY)、1982年11月‐12月)が、輪状甲状膜と胸骨隆起との中間点における気管内に比較的大きな角針(14ゲージ)を挿入して用いられる。このカテーテルのサイズは、2psi(約14kPa)のような低圧で最大約3L/分の酸素を供給できるが、大きな流量が必要な患者には不十分であろう。しかしながら、このカテーテルは、外来患者への使用や、定期的な取り外しや洗浄などのメンテナンスには役立たないであろう。その主な理由は、カテーテルと酸素供給ホースとの間のコネクタが、気管の前部に向かって近接しており、患者の確認や操作が困難なことである。さらに、カテーテルは、外来患者ベースの効果的な使用を妨げる捻転や潰れを防止する有効な手段を備えていない。このような機能は、望ましいだけではなく、長期の外来患者や在宅療養での使用に不可欠である。また、出口が唯1つであるカテーテルの構造により、カテーテルから酸素が直接、気管を下り、気管支の間の分岐部に向かって移動する。左気管支が右気管支よりも気管に対してより鋭角である気管支の通常の解剖学的構造では、カテーテルからより多くの酸素が右気管支内に送られる傾向にあり、両方の気管支により均等に送られ、混合され、使用されるのではない。また、構造的に酸素が気管分岐部に衝当し、不所望のむずがゆさや咳が起こる。加えて、このような装置では、酸素の相当な部分が気管の後壁に送られると、この部分の粘膜がびらんし、これにより荒れて出血することがある。全体として、装置からの出力が制限されているため、患者が運動している場合、活発に活動している場合、または重篤な場合に酸素を十分には補給できないであろう。
【0010】
慢性閉塞性肺疾患に関連した疾患には、慢性気管支炎や肺気腫がある。気腫肺の1つの特徴は、近接する気嚢間の空気の流通が健常な肺に比べて著しいことである。この現象は、側副換気として知られている。気腫肺の別の特徴は、組織の弾性反発および気道の径方向の支持の喪失により天然の気道から空気を呼気できないことである。本質的に、肺組織の弾性反発の喪失が、患者の完全な呼気を妨げる。また、気道の径方向の支持の喪失により、潰れ現象が呼吸の呼息相で起こり得る。この潰れ現象が、患者の完全な呼気をさらに妨げる。患者の呼気が悪化するにつれて、肺に残る容量が増大する。これにより、肺が過膨張した状態となり、患者が短く浅い呼吸しかできなくなる。本質的に、空気が効率的に呼気されず、古い空気が肺に溜まる。古い空気が肺に溜まると、患者の酸素が欠乏する。
【0011】
現在、慢性閉塞性肺疾患の治療には、気管支拡張剤、上記したような酸素治療、および肺容量減少術がある。気管支拡張剤は、慢性閉塞性肺疾患の一定の患者にしか効果がなく、通常はその効果が短期間である。酸素治療は、上記した理由から実用的ではなく、肺容量減少術は、肺の一部を切除する極端な外傷性処置である。肺容量減少術の長期に亘る恩恵は十分には分かっていない。
【0012】
従って、閉じ込められた気体を除去するための安全かつ効率的な肺へのアクセスが要望されている。
【0013】
〔発明の概要〕
本発明は、簡単に上述したような慢性閉塞性肺疾患に関連した疾患における制限を解消する。
【0014】
一態様に従えば、本発明は、側副換気バイパスシステムを含む。このシステムは、所定の部位の少なくとも一方の肺内に導入されて、閉じ込められた気体を少なくとも一方の肺から除去するための少なくとも1つの導管と、少なくとも1つの導管に連結された、胸膜腔から空気を排気するための排気装置と、排気装置に取り付けられた、局所的胸膜癒着を形成するために動作する手段と、を含む。
【0015】
本発明は、側副換気現象を利用して病変した肺からの呼気の流れを増大させる装置、および胸郭壁の開口によって形成された胸膜腔の空気を排気するために用いることができる装置に関する。空気を排気したら、臓側面と壁側面を互いに接着して胸膜癒着を形成する。この局所的な胸膜癒着の形成により、装置のアクセスポートを介して肺に安全にアクセスすることができる。
【0016】
本発明の装置の側副換気バイパスシステムが胸郭壁を介して肺にアクセスする場合、外部環境または肺から胸膜腔内に空気が漏れて肺が潰れて気胸症になることがある。気胸症のある治療法では、胸膜腔内に外部から負圧をかけて、処置の結果として漏れた空気を排気することができる。この負圧は、漏れが止まるまでかけることができる。最終的に、内側胸郭壁(壁側胸膜)と外側の肺(臓側胸膜)の間の癒着により胸膜腔がシールされる。本質的に、この装置はシステムの組み合わせである。この組み合わせにより、胸郭壁を通る追加の開口を形成しなくても済む。
【0017】
本発明の前記および他の特徴および利点は、添付の図面に例示された以下に示す本発明の好適な実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0018】
〔好適な実施形態の詳細な説明〕
通常は、空気は、鼻孔から鼻腔を通って哺乳動物の体内に進入する。空気が鼻孔および鼻腔を通過する時に、濾過され、湿り、そして体温に近づくように温度調節される。鼻腔の後部が咽頭(喉)につながっているため、空気は、口または鼻腔から咽頭に達することができる。従って、このような器官を有する場合、哺乳動物は鼻または口で呼吸することができる。一般に、口からの空気は、鼻からの空気ほどは濾過および温度調節が十分になされない。咽頭の空気は、咽頭底の開口から喉頭(声帯)内に送られる。飲み込む際に喉頭蓋が咽頭を自動的に閉止するため、固形物および/または液体が下部気道または気道ではなく食道に送られる。空気は、喉頭から気道および気管を経て、気管から分岐した2つの気管支に送られる。気管支は肺につながっている。
【0019】
肺は、胸腔内にある対をなした大きいスポンジ状の弾性器官である。肺は、胸腔壁に接触している。人間の場合、右肺は3葉からなり、左肺は2葉からなる。肺は、全ての哺乳動物で対になっているが、肺の葉または分節の数は哺乳動物によって様々である。健常な肺は、後述するように、ガス/空気交換のために広大な表面積を有する。左肺および右肺の両方が胸膜に覆われている。本質的に、各肺の周りの胸膜が、肺全体を覆う連続的な嚢をなしている。胸膜はまた、胸腔の内層をなしている。胸腔の内層をなしている胸膜と肺を覆っている胸膜との間に胸膜腔が存在する。胸膜腔は、肺と胸郭壁との間の潤滑剤となる流体の膜を含む。
【0020】
肺では、気管支が、細気管支と呼ばれる複数の小脈管に分枝している。一般に、それぞれの肺に100万を超える細気管支が存在する。それぞれの細気管支は、肺胞と呼ばれる極端に小さな空気嚢のクラスターまで延びている。各肺胞壁の内層をなしている上皮細胞の極めて薄い単層と毛細血管壁の内層をなしている上皮細胞の極めて薄い単層が、肺胞内の空気/ガスを血液から分離している。高濃度の酸素分子が、単純な拡散によって肺胞から2つの薄膜を通過して肺毛細血管の血液内に移動する。これと同時に、高濃度の二酸化炭素分子が、単純な拡散によって肺毛細血管の血液から2つの薄膜を通過して肺胞内に移動する。
【0021】
呼吸は、吸気と呼気を伴う機械的な工程である。胸腔は、通常は閉じた系であり、気管を介さない限り、空気が肺に出入りすることができない。胸壁が何らかの理由で損傷して空気/ガスが胸膜腔内に進入すると、通常は、肺が押し潰される。胸腔の容量が横隔膜の収縮で増大すると、肺の容量も増大する。肺の容量が増大すると、肺内の空気の圧力が体外の空気の圧力(大気圧)よりも僅かに低くなる。従って、この僅かな圧力差により、外部の空気すなわち大気が上記したように気道を通って、圧力が等しくなるまで肺に送られる。この工程が吸気である。横隔膜が弛緩すると、胸腔の容量が減少して肺の容量が減少する。肺の容量が減少すると、肺の空気の圧力が体外の空気の圧力よりも僅かに高くなる。従って、この僅かな圧力差により、肺胞内の空気が気道を通って、圧力が等しくなるまで排出される。この工程が呼気である。
【0022】
呼吸器系の継続的な発作により、例えば、慢性閉塞性肺疾患などの様々な疾患が起こり得る。慢性閉塞性肺疾患は、慢性気管支炎および肺気腫によって引き起こされる気道の持続的な閉塞である。慢性閉塞性肺疾患は、米国だけで約1400万人もおり、死因の10位以内である。
【0023】
慢性気管支炎および急性気管支炎は、一定の同様の特徴を有するが、異なった疾患である。慢性気管支炎および急性気管支炎は共に、炎症、および気管支および細気管支の収縮を伴うが、急性気管支炎は、通常は、ウイルス感染および/または細菌感染に関連し、その期間は、慢性気管支炎よりも相当短いのが普通である。慢性気管支炎では、気管支が、吸引した異物に対する生体防御機構の一部として過度の粘液を分泌する。綿毛細胞(毛髪状構造)を含む粘膜が、気管と気管支を覆っている。綿毛細胞すなわち繊毛が、粘膜から分泌される粘液を肺から咽頭に向かって連続的に押し出すすなわち押し流し、そこで定期的に飲み込まれる。繊毛のこの押し流し動作が、肺への異物の侵入を防止している。鼻や喉頭で濾過されなかった異物は、上記したように粘液に捕捉され、繊毛によって咽頭に送られる。過度の粘液が分泌されると、綿毛細胞が損傷し、繊毛が、異物を含む粘液を気管支および気管から効率的に押し流すことができなくなる。これにより、細気管支が収縮して炎症を起こし、患者の呼吸が短くなる。加えて、気道の過度の粘液を除去しようとして患者に慢性咳が起こる。
【0024】
慢性気管支炎の患者は肺気腫を発症することがある。肺気腫は、通常はかなり硬質の構造である肺胞壁が破壊される疾患である。肺胞壁の破壊は回復不能である。肺気腫は、慢性気管支炎、繊毛を損傷させる空気汚染などの吸引した刺激物に対する長期の曝露、酵素欠乏、および他の病理状態を含め、様々な因子によって引き起こされ得る。肺気腫では、肺の肺胞が弾性を失い、最終的に近接する肺胞間の壁が破壊される。従って、肺胞壁が段々失われていくと、肺の空気交換(酸素と二酸化炭素)表面積が減少して空気交換が著しく障害される。慢性閉塞性肺疾患では、粘液の過度の分泌と動的な気道の収縮が組み合わさって空気の流れが制限される。動的な気道の収縮は、肺組織の弾性の低下による気道に対する束縛力の低下から起こる。粘液の過度の分泌については、気管支炎に基づいて既に述べたとおりである。言い換えれば、肺組織の破壊により、肺の反発力が低下し、気道の径方向の支持力が失われる。従って、肺組織の弾性反発の喪失により、患者が完全には呼気できなくなる。また、気道の径方向の支持の喪失により、呼吸の呼息相で潰れ現象が起こり得る。この潰れ現象により、さらに患者が完全には呼気できなくなる。患者の呼気が悪化するにつれて、肺に残る容量が増大する。これにより、肺が過膨張した状態となり、患者が短く浅い呼吸しかできなくなる。本質的に、空気が効率的に呼気されず、古い空気が肺に溜まる。古い空気が肺に溜まると、患者の酸素が欠乏する。肺気腫は治癒するものではなく、運動、気管支拡張剤などの薬物治療、肺容量減少術、および長期の酸素治療を含め、単に様々な治療法があるだけである。
【0025】
上記したように、長期の酸素治療は、慢性閉塞性肺疾患によって引き起こされる低酸素症の標準的な治療法として広く受け入れられている。一般に、酸素治療は、鼻カニューレを用いて行われる。鼻カニューレを使用することにより問題が起こる。鼻カニューレの使用による1つの問題は、カニューレと鼻との間で多量の酸素の損失が起こることであり、酸素源を頻繁に交換しなければならず、またより多くの酸素を供給するためにより大きなエネルギーが必要である。鼻カニューレの使用によるもう1つの問題は、カニューレにより、鼻道が乾燥してひび割れ、痛むことである。
【0026】
経気管酸素治療が、長期酸素治療の実行可能な代替法になった。経気管酸素治療では、気管内に通されたカテーテルを用いて肺に酸素を直接供給する。酸素を直接供給することから、様々な利点が得られる。このような利点として、効率向上による必要な酸素量の低下、可動性の向上、運動性の向上、および自己像の改善を挙げることができる。
【0027】
長期酸素治療システムを用いて、肺への酸素移送効率を最適化するために酸素を肺組織に直接供給することができる。言い換えれば、酸素を肺の肺胞組織内に直接供給すれば、効率を改善することができる。肺気腫では、肺胞壁が破壊されているため、空気交換の表面積が減少している。より多くの肺胞壁が破壊されると、側副換気の抵抗が低下する。言い換えれば、肺気腫により側副換気が増大し、慢性気管支炎によっても側副換気がある程度増大する。本質的に、気腫肺では、近接する気嚢(肺胞)間の側副換気と呼ばれる空気の流通が正常な肺に比べて著しい。組織の弾性反発および気道の径方向の支持の喪失(呼気の際の動的な潰れ)により天然の気道から空気を排気できないため、側副換気が増大しても患者の呼吸は著しくは改善されず、患者は呼吸困難に陥る。従って、側副換気がどの部位で起こっているかが確認できたら、病変肺組織を分離して、その正確な部位に酸素を供給する。例えば、コンピュータ断層撮影すなわちCATスキャン、磁気共鳴映像法すなわちMRI、ポジトロン放出断層撮影すなわちPET、および/または標準的なX線映像法などの様々な方法で、病変組織部位を特定することができる。病変組織の位置が分かったら、加圧酸素をその病変部位に直接供給し、空気交換のために、より効率的かつ効果的に肺組織内に圧入する。
【0028】
図1は、第1の例示的な長期酸素治療システム100を例示している。このシステム100は、酸素源102、酸素導管104、および逆止め弁106を含む。酸素源102は、加圧酸素タンク、液体酸素レザバー、酸素濃縮装置、およびレギュレータなどの圧力および流量の調節に用いる付属装置を含め、調節可能に制御された圧力および流量の下で濾過酸素を供給できる任意の好適な装置を含むことができる。酸素導管104は、連続的な酸素曝露による損傷に対して高い耐性を有する任意の好適な生体適合性配管を含むことができる。酸素導管104は、約1/16〜約1/2インチ(約1.6〜約12.7mm)、より好ましくは約1/8〜1/4インチ(約3.2〜約6.4mm)の範囲の内径を有する管を含む。逆止め弁106は、酸素導管104を介して肺108内に酸素を流すことができるが、肺108から酸素源102には流さない任意の好適なインライン機械弁を含むことができる。例えば、単純なチェッキ弁を用いることができる。図1に例示されているように、酸素導管104は、肺108を通って側副換気が最も重度であると確認された部位に配置される。
【0029】
上記した例示的なシステム100は、インラインフィルターの使用を含め、様々な方法で変更することができる。この例示的な実施形態では、酸素と空気の両方を、システム内を流すことができる。言い換えれば、吸気の際に、酸素導管104を介して酸素が肺に送られ、呼気の際に、酸素導管104を介して空気が肺から排気される。インラインフィルターが、粘液や汚染物質を捕捉し、酸素源102が閉塞するのを防止している。この例示的な実施形態では、弁106を用いていない。肺への酸素の流れと肺からの空気の流れは圧力差によるものである。
【0030】
例示的な長期酸素治療システム100が機能するためには、酸素導管104が胸腔および肺を通過する部分で、気密シールが維持されるようにするのが好ましい。この気密シールは、肺の膨張/機能を持続させるために維持される。気密シールが破れると、空気が胸腔に入って、上記したように肺が潰れる。
【0031】
この気密シールを形成する方法では、肺の臓側胸膜と胸腔の内壁との間を癒着する。これは、ドキシサイクリンおよび/またはブレオマイシンなどの刺激薬を含む化学法、胸膜切除や胸腔鏡タルク胸膜癒着を含む外科法、または放射性金や外部放射を含む放射線療法のいずれかを用いて行うことができる。これらの方法は全て、胸膜を癒着させるための当分野で周知の方法である。換気バイパス部位にシールを形成することで、肺の気胸が起こるリスクなしに介入を安全に行うことができる。
【0032】
造瘻術(ostomy pouches or bags)と同様に、酸素導管104を、換気バイパスの部位で皮膚にシールすることができる。例示的な一実施形態では、図2に例示されているように、酸素導管104を、接着剤を用いて胸郭壁の皮膚にシールすることができる。例示されているように、酸素導管104は、皮膚接触面に対する生体適合性接着コーティングを有するフランジ200を含む。この生体適合性接着剤が、フランジ200と胸郭壁の皮膚すなわち表皮との間の流体密閉シールとなる。好適な実施形態では、生体適合性接着剤は、酸素導管104を換気バイパス部位から取り外せるように一時的な流体密閉シールを形成する。こうすることにより、換気バイパス部位を清掃することができ、かつ長期酸素治療システム100を定期的にメンテナンスすることができる。
【0033】
図3は、換気バイパス部位における胸郭壁の皮膚に対して酸素導管104をシールするための別の例示的な実施形態を例示している。この例示的な実施形態では、結合プレート300が、生体適合性接着コーティングまたは任意の他の好適な手段によって換気バイパス部位の皮膚にシールされている。酸素導管104が、螺合および固定リングを含め、任意の好適な手段で結合プレート300に結合されている。この例示的な実施形態でも、換気バイパス部位の清掃とシステム100のメンテナンスが可能である。
【0034】
図4は、換気バイパス部位における胸郭壁の皮膚対して酸素導管104をシールするためのさらに別の例示的な実施形態を例示している。この例示的な実施形態では、バルーンフランジ400を用いてシールを形成することができる。バルーンフランジ400は、収縮した状態で酸素導管104およびバルーンフランジの1つが換気バイパス吻合部を通過させて酸素導管104に取り付けることができる。バルーンフランジ400は、胸郭壁の両側にフランジが維持されるように互いに十分な距離離間している。膨張させると、バルーンが膨張して胸郭壁を挟んで流体密閉シールを形成する。この例示的な実施形態も同様に、酸素導管104を容易に取り外すことができる。
【0035】
図5は、換気バイパス部位における胸郭壁の皮膚に対する酸素導管104をシールするためのさらに別の例示的な実施形態を例示している。この例示的な実施形態では、単一バルーンフランジ500が固定フランジ502と共に用いられている。バルーンフランジ500は、上記した要領で酸素導管104に結合されている。この例示的な実施形態では、バルーンフランジ500は、膨張すると流体密閉シールを形成する。胸郭壁の皮膚に維持される固定フランジ502は、シールを形成するためにバルーンによって圧力が加えられる構造的な支持体となっている。
【0036】
患者が呼気するのが困難で追加の酸素が必要な場合は、側副換気バイパスを直接酸素治療と共に用いることができる。図6は、側副換気バイパス/直接酸素治療システム600の例示的な実施形態を例示している。システム600は、酸素源602、2本の分岐管606および608を有する酸素導管604、および制御弁610を含む。酸素源602および酸素導管604は、図1に例示されている上記した例示的な実施形態と同様の構成要素を含むことができる。この例示的な実施形態では、患者が吸気すると、弁610が開いて、酸素が肺612および気管支614に流れる。代替の例示的な実施形態では、分岐管608を気管616に接続することができる。従って、吸気の際に酸素が、一方または両方の肺の病変部位に流れると共に、正常な気管を介して肺の他の部分にも流れる。呼気の際、弁610が閉じるため、酸素は供給されず、肺の病変部位の空気が肺612から一方の分岐管606および第2の分岐管608を経て気管支616に送られる。この方式では、古い空気が除去され、酸素が直接供給される。ここでも同様に、上記したように、酸素と空気の流れが単純な圧力差によって制御される。
【0037】
肺612および気管支614に対する酸素導管604および分岐管606、608の結合およびシールは、上記した要領と同様の要領で行うことができる。
【0038】
上記した長期酸素治療システムを用いて、慢性閉塞性肺疾患によって引き起こされる低酸素症を効果的に治療することができるが、この疾患の別の面を治療するには他の手段が望ましいであろう。上記したように、気腫は、肺組織に回復不可能な損傷を与えるという特徴を持つ。肺組織の破壊により、肺の反発力が低下する。また、このような組織の破壊により、天然の気道の径方向の支持が失われる。従って、肺組織の弾性反発の喪失により、気腫の患者が完全には呼気できなくなる。また、気道の径方向の支持の喪失により、呼吸の呼息相で潰れ現象が起こり得る。この潰れ現象により、患者の呼気がさらに妨げられる。呼気能力が低下するにつれて、肺の残気容量も増大する。これにより、肺が過膨張した状態となり、患者が短く浅い呼吸しかできなくなる。
【0039】
側副換気バイパストラップシステムが、上記した側副換気現象を利用して病変した一方または両方の肺からの排気の流れを増大させ、慢性閉塞性肺疾患の別の面を治療することができる。本質的に、一方または両方の肺の最も側副換気されている部位は、上記したスキャニング技術で特定することができる。このような1または複数の部位の位置が分かったら、1または複数の導管を、病変した一方または両方の肺の外側胸膜層にアクセスできる通路に配置する。導管は、一方または両方の肺の側副換気を利用して閉じ込められた空気を天然の気道にバイパスし、これにより、空気が、体外の格納システムに排出される。
【0040】
図7は、第1の例示的な側副換気バイパストラップシステム700を例示している。このシステム700は、トラップ702、空気導管704、およびフィルター/逆止め弁706を含む。空気導管704により、フィルター/逆止め弁706を介してトラップ702と患者の肺708との間が連通している。1つの空気導管704が例示されているが、2つ以上の高い側副換気の部位が確認された場合は、それぞれの肺708に複数の空気導管を用いることができる。
【0041】
トラップ702は、患者の一方または両方の肺708からの排泄物を収集するための任意の好適な装置を含むことができる。本質的に、トラップ702は、肺に蓄積され得る粘液や他の流体などの肺からの排泄物を一時的に貯蔵するための単純な格納容器である。トラップ702は、任意の好適な形状を有することができ、任意の好適な金属または非金属の材料から形成することができる。トラップ702は、軽量の非腐食性材料から形成するのが好ましい。加えて、トラップ702は、効果的かつ効率的に清掃できるようにデザインすべきである。例示的な一実施形態では、トラップ702は、トラップ702が一杯になったら除去することができる使い捨ての内層を含むことができる。トラップ702は、いつ空になるかまたはいつ清掃すべきかを容易に判断できるように、透明な材料から形成したり、表示窓を設けたりすることができる。軽量トラップ702により、患者の可動性が向上する。
【0042】
フィルター/逆止め弁706は、コンプレッサーの接続に一般的に利用されているねじ込み継手または圧縮型継手を含め、任意の好適な手段でトラップ702に取り付けることができる。フィルター/逆止め弁706は、様々な機能を果たす。フィルター/逆止め弁706により、流体排泄物または固体粒状物質をトラップ702内に維持したまま、空気を患者の一方または両方の肺708からトラップ702に排気できる。フィルター/逆止め弁706は、肺708からトラップ702への空気の流れをこの一方向に維持されるように、トラップ702内の圧力を患者の一方または両方の肺708の内部の圧力よりも必ず低く維持すべきである。フィルター/逆止め弁706のフィルター部分は、空気中に浮遊している特定のサイズの粒子状物質を捕捉するが、清浄な空気は通過して外気に排気されるようにデザインすることができる。フィルター部分はまた、排気される空気の湿分を減らすようにデザインすることもできる。
【0043】
空気導管704により、トラップ702がフィルター/逆止め弁706を介して患者の一方または両方の肺708に連結されている。空気導管704は、空気中に含まれるガスに対する耐性を有する任意の好適な生体適合性の管を含むことができる。空気導管704は、約1/16〜約1/2インチ(約1.6〜約12.7mm)、より好ましくは約1/8〜1/4インチ(約3.2〜約6.4mm)の範囲の内径を有する管を含む。フィルター/逆止め弁706は、空気を、空気導管704を介して一方または両方の肺708から流すが、トラップ702から肺708には逆流させない任意の好適な弁を含むことができる。例えば、単純なチェッキ弁を用いることができる。空気導管704は、任意の好適な手段でフィルター/逆止め弁706に接続することができる。メンテナンスのためにトラップを容易に取り外すことができるように迅速解除機構を利用するのが好ましい。図7に例示されているように、空気導管704は、肺708を通って側副換気が最も重度であると確認された部位に配置されている。2つ以上の部位が確認された場合は、複数の空気導管704を用いることができる。フィルター/逆止め弁706に対する複数の空気導管704の接続は、スキューバダイビングのレギュレータに用いられるのに類似したオクトパス装置を含め、任意の好適な手段で行うことができる。
【0044】
空気導管704は、所定の位置に配置されても押し潰す力に耐えることができるのが好ましい。空気が導管704内を流れるため、導管704が潰れて回復しなければ、システムの有効性が損なわれてしまう。従って、空気導管704が圧潰しても回復できるように、空気導管704に圧潰回復材料を含めることができる。任意の好適な材料を用いることができる。例えば、ニチノールを空気導管704に含めると、導管圧潰耐性および圧潰回復性が得られる。
【0045】
導管704の端部の膨張特性を利用して、導管704の肺胸膜への接触の維持およびシールを容易にすることができる。導管704に含められたニチノールにより、導管704を圧縮された状態で目的の部位に送り、拡張した状態にして配置し、所定の位置に固定できる。空気導管の端部の肩が、詳細を後述するように、挿入に対する機械的なストッパーの領域、および接合部に対する接着/密封剤の領域となる。
【0046】
例示的な側副換気バイパストラップシステム700が動作するように、空気導管704が胸腔および肺708を通過する部分で気密シールが維持されるようにするのが好ましい。肺の膨張/機能を持続するために、気密シールが維持される。気密シールが破れると、空気が胸腔に入って肺が潰れる。気密シールを形成するための例示的なある方法では、肺の臓側胸膜と胸腔の内壁との間を癒着させる。これは、ドキシサイクリンおよび/またはブレオマイシンなどの刺激薬を含む化学法、胸膜切除や胸腔鏡タルク胸膜癒着を含む外科法、または放射性金や外部放射を含む放射線療法のいずれかを用いて行うことができる。これらの方法は全て、胸膜を癒着させるための当分野で周知の方法である。別の代替の例示的な実施形態では、空気導管704と外側胸膜層との間の気密接合に、空気導管704の接着/シールに役立つ様々な接着剤が用いられる。現在、フォーカル社(Focal Inc.)が、Focal/Seal‐Lという商標で、気密目的のために肺に用いられる密封剤を販売している。Focal/Seal‐Lは、光に反応して硬化する。サージカル・シーランツ社(Surgical Sealants Inc.)がThorexという商標で販売している別の密封剤が現在、肺用の密封剤として臨床試験を受けている。Thorexは、2つの成分からなり、混合した後に一定時間で硬化する。
【0047】
胸腔における開口は、様々な方法で形成することができる。このような外科処置には、例えば、開胸処置、胸骨切開術、または開胸術を用いることができる。別法では、このような外科処置は、侵襲性が低い腹腔鏡手術で行うことができる。使用する方法に関係なく、固体接着面を維持するために少なくとも部分的に肺が膨張した状態でシールすべきである。導管部分と肺胸膜面との間に十分な接合がなされた後で開口を形成することができる。この開口の断面積は、過膨張した肺を十分に収縮させるのに十分な大きさとすべきである。上記したようにこの開口は、切開、突刺、拡張、鈍器切開、無線周波数エネルギー、超音波エネルギー、マイクロ波エネルギー、または凍結焼灼エネルギー(cryoblative energy)などの様々な方法で形成することができる。
【0048】
空気導管704は、図2‐図5に例示されているように酸素導管704を用いて上記した任意の手段および方法で皮膚の所定部位にシールすることができる。
【0049】
動作の際には、患者が呼気すると、肺の圧力がトラップ702の圧力よりも高くなる。従って、肺の最も重度の側副換気部位の空気が空気導管704を通ってトラップ702に送られる。これにより、患者がより容易かつ完全に呼気することができる。
【0050】
側副換気の現象を利用して病変した肺からの呼気を増大させるための上記した例示的な装置および方法では、肺の1または複数の最も重度の側副換気部位にアクセスするべく肺の外側胸膜を穿刺するための最適な位置が存在する。上記したように、肺の1または複数の最も重度の側副換気部位の位置を求める様々な方法が存在する。装置の機構または構成要素により、肺に閉じ込められた空気を天然の気道にバイパスして体外に排気できるため、壁(胸郭壁)側胸膜と臓(肺)側胸膜を気密シールするのが特に有利である。装置と壁側胸膜と臓側胸膜の間に適切な気密シールが形成されないと、気胸症(潰れた肺)が起こる恐れがある。本質的に、肺が突刺されて装置が挿入された状態では、気密シールを維持するのが好ましい。
【0051】
気密シールを形成する1つの方法は、胸膜癒着すなわち胸膜腔の閉塞である。胸膜癒着法は、化学法、外科法、および放射線療法を含め、多数存在する。化学的な胸膜癒着法では、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ブレオマイシン、またはナイトロジェンマスタードなどの薬物を用いることができる。外科的な胸膜癒着法では、胸膜切除または胸腔鏡タルク処置を行うことができる。放射線療法では、放射性金または外部放射を用いることができる。本発明では、化学的な胸膜癒着法を用いる。
【0052】
上記した装置の適切な気密シールが確実に得られるように局所的に化学物質または薬物を送達するための例示的な装置および方法は次の通りである。化学物質、薬物、および/または化合物を用いて、壁側胸膜と臓側胸膜との間に胸膜癒着を形成し、装置の構成要素を特定の部位に突刺し、気胸症にならないようにする。胸膜腔に胸膜癒着を形成するために用いることができる化学物質、薬物、および/または化合物は多数存在する。化学物質、薬物、および/または化合物の例として、タルク、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ブレオマイシン、およびミノサイクリンを挙げることができる。
【0053】
例示的な一実施形態では、改良型ドラッグデリバリーカテーテルを用いて、化学物質、薬物、および/または化合物を、胸膜癒着を形成する局所部位に送達する。この例示的な実施形態では、胸膜癒着を形成し、次いで、図7に例示されているように導管704を、胸膜癒着部位を介して肺708に通す。ドラッグデリバリーカテーテルは、局所胸膜癒着を形成するための侵襲性が最も低い手段である。図8を参照すると、本発明に従って用いることができるドラッグデリバリーカテーテルの例示的な実施形態が例示されている。任意の数のドラッグデリバリーカテーテルを用いることができる。加えて、カテーテルの先端部は、あらゆる好適な大きさ、形状、または構造を有することができるため、あらゆる大きさ、形状、または構造の胸膜癒着を形成できる。
【0054】
図8に例示されているように、カテーテル800が患者の体内に挿入され、先端部802が胸郭壁808と肺806との間の胸膜腔804に配置されている。この例示的な実施形態では、カテーテル800の先端部802は、矢印810によって示されているように実質的に円形の内径に向かって化学物質、薬物、および/または化合物を放出できる実質的に円形の形状を有する。カテーテル800の先端部802は、複数の孔すなわち開口812を含み、これらの開口を介して化学物質、薬物、および/または化合物を放出できる。上記したように、先端部802は、任意の好適な大きさ、形状、または構造を有することができる。化学物質、薬物、および/または化合物が放出されたら、導管704(図7)を移植できるようにカテーテル800を除去する。別法では、導管704の送達を容易にするためにカテーテル800を用いることができる。
【0055】
カテーテル800の先端部すなわち先端802は、胸膜腔内に配置されたら、その所望の大きさ、形状、および/または構造を維持するのが好ましいであろう。これは、様々な法方法で達成することができる。例えば、カテーテル800の先端部802を形成する材料は、カテーテル800を挿入するためのある程度の可撓性および配置された後で元の形状またはプログラムされた形状を取ることができるある程度の形状記憶特性を有するように選択される。このような特性を有するあらゆる種類の生体適合性ポリマーを用いることができる。代替の実施形態では、別の材料を用いることもできる。例えば、形状記憶特性を有する金属材料を、カテーテル800の先端部802に含めることができる。この金属材料は、ニチノールまたはステンレス鋼を含むことができる。加えて、この金属材料は、放射線不透過性とする、または放射線不透過性マーカーを含むことができる。放射線不透過性材料または放射線不透過性マーカーを有することで、カテーテル800をX線透視下で確認でき、いつカテーテル800が最も重度の側副換気部位に達するかの決定が容易になる。
【0056】
別の代替の例示的な実施形態では、局所ドラッグデリバリー装置を用いて、胸膜癒着用の化学物質、薬物、および/または化合物を送達することができる。この例示的な実施形態では、胸膜癒着が形成され、図7に例示されているように導管704が胸膜癒着を介して肺708に配置されている。この例示的な実施形態では、化学物質、薬物、および/または化合物を移植用医療装置に付加することができる。次いで、この医療装置を、胸膜腔の特定の部位に移植し、化学物質、薬物、および/または化合物を放出させて胸膜癒着を形成する。
【0057】
上記した化学物質、薬物、および/または化合物のいずれも医療装置に付加することができる。化学物質、薬物、および/または化合物は、任意の好適な手段で医療装置に付加することができる。例えば、化学物質、薬物、および/または化合物は、スピンコーティング、スプレー、または浸漬を含む様々な周知の技術で医療装置にコーティングする、医療装置の外面に含浸する、医療装置の孔または空洞部の中に導入する、医療装置の表面に設けられたポリマーマトリックス内に組み入れる、医療装置の表面にコーティングしてから、その放出を制御する拡散障壁となるポリマー層をコーティングする、医療装置を形成する材料内に直接含める、またはこれらの方法の任意の組み合わせを用いることができる。別の代替の実施形態では、医療装置は、分解する時に化学物質、薬物、および/または化合物を溶出する生体分解性材料から形成することができる。
【0058】
この移植用医療装置は、任意の好適な大きさ、形状、および/または構造を含むことができ、任意の好適な生体適合性材料から形成することができる。図9は、移植用医療装置900の例示的な一実施形態を例示している。この実施形態では、移植用医療装置900は、実質的に円柱のディスク900を含む。このディスク900は、胸郭壁904と肺906との間の胸膜腔902内に配置されている。この位置に配置されると、ディスク900は、胸膜癒着を形成する化学物質、薬物、および/または化合物を溶出する、または他の方法で放出する。放出速度は、例えば、ポリマー拡散障壁などの上記した任意の様々な技術で正確に制御することができる。また、上記したように、ディスク900は、分解または溶解する時に化学物質、薬物、および/または化合物を溶出する生体分解性材料から形成することができる。非生体分解性ディスク900を、胸膜癒着が形成された後に胸膜腔902から除去すべきか否かは、ディスク900の製造に用いる材料による。例えば、ディスク900は、胸膜癒着と一体化する永久移植が好ましい。
【0059】
前出の例示的な実施形態で説明したように、ディスク900は、放射線不透過性マーカーを含む、または放射線不透過性材料から形成することができる。放射線不透過性マーカーまたは放射線不透過性材料により、ディスク900を蛍光透視下で確認して正確に配置することができる。
【0060】
さらに別の代替の例示的な実施形態では、化学物質、薬物、および/または化合物の流体特性を変更することができる。例えば、化学物質、薬物、および/または化合物の粘度を高く製造することができる。粘度の高い化学物質、薬物、および/または化合物を用いることで、胸膜腔の所望の位置からずれる可能性を小さくすることができる。化学物質、薬物、および/または化合物は、放射線不透過性成分を含むこともできる。化学物質、薬物、および/または化合物を放射線不透過性にすることにより、側副換気の最適な位置に対する化学物質、薬物、および/または化合物の位置を確認できる。
【0061】
上記したように変更した化学物質、薬物、および/または化合物は、標準的な化学的な胸膜癒着装置および方法または上記した例示的な実施形態に用いることができる。
【0062】
さらに別の代替の例示的な実施形態に従えば、局所胸膜癒着排気装置を用いて、気胸症が起こらないように胸膜腔内の空気を排気することができる。肺に開口を形成することなく、胸郭壁を介して胸膜腔内にアクセスすることができる。この方法では、胸膜腔内への空気漏れの通路のみが、胸郭壁アクセスを介している。胸膜排出カテーテルまたは胸腔チューブと同様に、装置を、胸郭壁を介して配置し、胸膜腔内に漏れた空気を排気して気胸症を防止することができる。加えて、この装置が胸膜腔に残された場合、その周りに癒着部を形成し、これにより局所胸膜癒着が形成される。この装置が配置されて胸膜癒着が形成されると、上記した任意の装置を配置するために肺に安全にアクセスすることができるようになり、通常は肺にアクセスして、例えば、薬物を送達する。本質的に、本発明の局所胸膜癒着排気装置は、局所的な排気領域を形成し、次いで局所的な癒着領域を形成する。加えて、この装置は、癒着を誘導し得る化学物質または薬物を送達して癒着部を形成し、この癒着部内に肺へアクセスできる通路を形成できるように構成することができる。
【0063】
現在、胸膜腔から流体を排出できる装置が存在する。このような装置の例として、デンバー・バイオメディカル(Denver Biomedical)の胸膜排出カテーテル(Pleura Drainage Catheter)およびハイムリック弁(Heimlich)を備えた単純な胸腔チューブを挙げることができる。これらの装置が長寸のチューブ装置であるため、装置の周りに形成される癒着部は小さく、予測できない。本発明では、この装置の排出要素は、胸郭壁を通るアクセス点と同軸であるのが好ましい。従って、装置の周りに形成される癒着部が、実質的にアクセス点を取り囲む。これにより、気密を保って肺にアクセスでき、気胸症を防止できる。言い換えれば、癒着部およびアクセス点の位置は問題とならない。
【0064】
図10aおよび図10bを参照すると、本発明に従った局所胸膜癒着排気装置1000の例示的な実施形態が例示されている。この装置1000は、アクセスポート1002および排気構造1004を含む。排気装置1000は、外科的介入すなわちトロカールを用いた最も侵襲性の低い配置を含め、様々な周知の方法を用いて胸膜腔内に挿入することができる。排気装置1000は、肋骨1006間の肋間腔または2つ以上の肋骨間に形成された人工ブリッジに配置することができる。排気装置1000は、アクセスポート1002と胸郭壁の皮膚との間にシールを形成するために外側シール1008を含むこともできる。シール1008は、上記したような任意の好適な装置を含むことができる。アクセスポート1002は、あらゆる好適な構造をとることができ、肺にアクセスするための任意の数の装置を受容できる大きさにするのが好ましい。例示的な実施形態では、アクセスポートは実質的にチューブ構造である。排気構造1004は、アクセスポート1002の周りに同軸的に配置されている。排気構造1004は、臓側胸膜1010に近接して壁側胸膜1012と臓側胸膜1010との間に位置する。例示的な実施形態では、排気構造1004は、アクセスポート1002に連通した複数の孔1014を備えた実質的に平坦なディスクを含む。胸膜腔内の空気が、孔1014に入り、アクセスポート1002を介して体外に出る。任意の数の弁および/または逆流防止フラップを用いて、空気が胸膜腔から流出するが胸膜腔内へは流入しないようにすることができる。空気が胸膜腔から排気されると、壁側胸膜と臓側胸膜が接触して、図10bに例示されているように、気胸症のリスクがかなり低下する。一定時間が経過すると、排気構造1004の周りに癒着部が形成される。癒着部が形成されたら(胸膜癒着)、空気漏れの点で安全に肺にアクセスすることができる。
【0065】
アクセスポート1002および排気構造1004は、あらゆる好適な生体適合性材料から形成することができる。排気構造1004は、上記したように癒着形成を促進する化学物質でコーティングする、またはそのような化学物質を含めることができる。排気装置1000は、所望に応じて排気構造1004の孔1014から放出できる癒着形成化学物質を送達するための別個の装置を含むこともできる。排気構造は、吸収性材料から形成することもできる。
【0066】
別の例示的な実施形態に従えば、側副換気バイパスシステムを排気装置に組み合わせることができる。上記したように、肺の最も重度の側副換気部位を上記したスキャニング法で決定する。最も重度の側副換気部位の位置を求めたら、装置を、病変した肺の外側胸膜層にアクセスできる通路に配置する。この装置は、肺の側副換気を利用して閉じ込められた空気を天然の気道にバイパスし、図7に例示されているように体外の格納システムまたは単純に周囲環境に排気することができる。しかしながら、二次装置を側副換気バイパスシステムと組み合わせて、空気を胸膜腔内に排気することもできる。
【0067】
側副換気バイパスシステムが胸郭壁を介して肺にアクセスする場合、外部環境から胸膜腔内への空気漏れ、または肺から胸膜腔内への空気漏れにより、肺が潰れ気胸症が起きる可能性がある。この例示的な実施形態に従えば、結果として起こる気胸症を治療する1つの方法では、胸膜腔内に外部から負圧をかけて、結果として溜まった空気を排気することができる。この負圧は、漏れが止まるまでかけることができる。最終的に、内側胸郭壁(壁側胸膜)と外側の肺(臓側胸膜)との間の癒着すなわち胸膜癒着により胸膜腔がシールされる。壁側胸膜と臓側胸膜との接触が必ずなされるのが好ましい。このシールにより、側副換気バイパスシステムが適切に機能し得る。2つのシステムまたは装置を組み合わせることで、患者の胸部を通る追加のアクセスポートを設けなくて済む。
【0068】
図11aおよび図11bを参照すると、本発明に従った装置1100が例示されている。装置1100は、側副換気バイパスシステム1102および排気装置1104を含む。側副換気バイパスシステム1102は、肺の空気をトラップシステムまたは外部環境に排気できる任意の好適な装置とすることができる。システム1102は、空気が誤った方向に流れるのを防止するために単純に導管および逆止め弁を含むことができる。別法では、システム1102は、図7に例示されているシステムに類似したより複雑な装置にすることができる。システム1102は、胸壁を介して肺実質組織1106内に挿入することができる。システム1102を、図示されているように肋骨1108間の肋間腔、肋骨1008、または肋骨1108間のブリッジ要素(不図示)を通過させることができる。排気装置1104は、胸膜腔1110内の空気をバイパスシステム1102を介して排気できるように、バイパスシステム1102に連結するのが好ましい。この例示されている例示的な実施形態では、排気装置1104は、胸膜腔内に延在する導管を単純に含む。他の実施形態を用いることもできる。全ての構成要素は、類似の生体適合性材料または上記した材料から形成される。図11aは、壁側胸膜1112と臓側胸膜1114との間の空間を例示している。全ての空気が排気されると、図11bに例示されているように胸膜腔1110がなくなる。
【0069】
代替の例示的な実施形態では、図10aおよび図10bに例示されているディスク1014に類似したディスクを、上記したように図11aおよび図11bに例示されている導管の代わりに用いることができる。
【0070】
最も実用的な実施形態および好適な実施形態と考えられる実施形態を図示および説明したが、当業者には、図示および説明した特定のデザインおよび方法の変更が可能であることが明らかであり、このような変更を本発明の概念および範囲から逸脱することなく利用することができるであろう。本発明は、記載および例示した特定の構造に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内となる全ての変更を含むと解釈すべきである。
【0071】
〔実施の態様〕
(1)側副換気バイパスシステムであって、
少なくとも1つの肺から閉じ込められた気体を除去するために、所定の部位の前記少なくとも1つの肺の中に延在する少なくとも1つの導管と、
胸膜腔から空気を排気するために前記少なくとも1つの導管に連結された排気装置と、
局所的な胸膜癒着を形成するように動作する前記排気装置に取り付けられた手段と、を含む、側副換気バイパスシステム。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に従った長期酸素治療システムの第1の例示的な実施形態を示す線図である。
【図2】本発明の長期酸素治療システムと共に用いられる密閉装置の第1の例示的な実施形態を示す線図である。
【図3】本発明の長期酸素治療システムと共に用いられる密閉装置の第2の例示的な実施形態を示す線図である。
【図4】本発明の長期酸素治療システムと共に用いられる密閉装置の第3の例示的な実施形態を示す線図である。
【図5】本発明の長期酸素治療システムと共に用いられる密閉装置の第4の例示的な実施形態を示す線図である。
【図6】本発明に従った長期酸素治療システムの第2の例示的な実施形態を示す線図である。
【図7】本発明に従った側副換気バイパストラップシステムの第1の例示的な実施形態を示す線図である。
【図8】局所胸膜癒着用化学物質デリバリーシステムの第1の例示的な実施形態を示す線図である。
【図9】局所胸膜癒着用化学物質デリバリーシステムの第2の例示的な実施形態を示す線図である。
【図10】本発明に従った局所胸膜癒着排気装置を示す線図である。
【図11】例示的な側副換気装置と胸膜チューブ/排気装置の組み合わせを示す線図である。
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、病変した肺を治療する装置に関し、詳細には、胸膜腔から空気を除去して局所胸膜癒着を形成するための側副換気装置と共に用いる排気装置に関する。
【0002】
〔関連分野〕
1930年代に始まり、特に1960年代および1970年代初めに行われた研究結果から、長期に亘る連続的な酸素治療が、慢性閉塞性肺疾患を患っている低酸素血症の患者の治療に有効であることが分かった。言い換えれば、患者の肺に常に酸素を補給することで患者の寿命および生活の質が改善され得る。
【0003】
しかしながら、医療コスト抑制の点で、慢性肺疾患の連続的な酸素治療を行うための追加コストにより酸素治療の年間コストが過剰に増すという懸念が増大している。従って、酸素治療を行う場合は、できる限りコスト効率を上げるのが望ましい。
【0004】
酸素補給が必要な患者の標準的な治療は、鼻カニューレによって酸素源から酸素を供給することである。しかしながら、このような治療には、無駄となる酸素が多量に必要であり、鼻が痛みや刺激を受け、一層悪化する恐れもある。他の不所望の副作用も報告されている。連続的な酸素治療のコスト削減に役立つと提案された様々な他の医療方法も研究されてきた。
【0005】
緊急輪状甲状軟骨切開により気管切開チューブを挿入して気道が閉塞した患者の呼吸を継続できるようにするために、様々な装置および方法が考案されてきた。このような装置は、通常は、自発呼吸していない患者に対してのみ使用されるようになっており、慢性肺疾患の長期の治療には適していない。一般に、このような装置は、皮膚に突刺して装着し、比較的大きな湾曲した気管切開チューブを挿入する気管の上の喉頭の輪状膜内に孔を開ける。上記したように、このようなチューブの使用は、医療上、気管の閉塞で患者が窒息するような緊急事態に制限されている。このような緊急用気管切開チューブは、気道の閉塞が解除された後の長期の治療には適していない。
【0006】
緊急時の使用または換気目的に適した他の装置が、ロジャース(Rogers)による米国特許第953,922号、シェルデン(Shelden)による米国特許第2,873,742号、ブラメルカンプ(Brummelkamp)による米国特許第3,384,087号、トイ(Toy)による米国特許第3,511,243号、カルホウン(Calhoun)による米国特許第3,556,103号、シェルデン(Shelden)らによる米国特許第2,991,787号、ウェイス(Weiss)による米国特許第3,688,773号、ウェイス(Weiss)らによる米国特許第3,817,250号、およびポッジ(Pozzi)による米国特許第3,916,903号に開示されている。
【0007】
気管切開チューブは目的の用途には適しているが、慢性閉塞性肺疾患で自発呼吸している患者に酸素を補給する手段として長期に亘って外来患者に使用するようには意図されていない。このような気管切開チューブは、通常は、比較的短期間に亘って患者に全空気を供給するようにデザインされている。気管切開チューブは、通常は硬質または半硬質であって、外径が乳児用の2.5mmから成人用の15mmまでの口径範囲を有する。気管切開チューブは、通常は、緊急時または外科処置として手術室で、組織の血管が少なく出血が少ない輪状甲状膜を介して挿入する。このような装置の目的は、他の手段によって正常な呼吸が回復するまで、空気の両方向の通過を可能にすることである。
【0008】
別のタイプの気管切開チューブが、ヤコブ(Jacobs)による米国特許第3,682,166号および同第3,788,326号に開示されている。ここに開示したカテーテルは、無呼吸の患者の呼吸を回復させるべく緊急ベースで空気または酸素を供給および排気するために、14ゲージまたは16ゲージの針に取り付けて輪状甲状膜から挿入する。空気または酸素は、患者の肺を膨張および収縮させるために30psi〜100psi(約207kPa〜約689kPa)で供給する。従来の他の気管切開チューブと同様のヤコブによるカテーテルは、外来患者の長期使用には適しておらず、このような使用目的には容易に適合させることができない。
【0009】
気管切開チューブの機能が限定的であるため、経気管カテーテルが提案され、長期の酸素補給治療に用いられている。例えば、ヘンリーJ・ハイムリッヒ博士(Dr. Henry J. Heimlich)によって開発された小径経気管カテテール(16ゲージ)(「経気管酸素システムでの呼吸回復(Respiratory Rehabilitaion with Transtracheal Oxygen System)」、ザ・アナルズ・オブ・オトロジー、ライノロジー&ラリンガロジー(THE ANNALS OF OTOLOGY, RHINOLOGY & LARYNGOLOGY)、1982年11月‐12月)が、輪状甲状膜と胸骨隆起との中間点における気管内に比較的大きな角針(14ゲージ)を挿入して用いられる。このカテーテルのサイズは、2psi(約14kPa)のような低圧で最大約3L/分の酸素を供給できるが、大きな流量が必要な患者には不十分であろう。しかしながら、このカテーテルは、外来患者への使用や、定期的な取り外しや洗浄などのメンテナンスには役立たないであろう。その主な理由は、カテーテルと酸素供給ホースとの間のコネクタが、気管の前部に向かって近接しており、患者の確認や操作が困難なことである。さらに、カテーテルは、外来患者ベースの効果的な使用を妨げる捻転や潰れを防止する有効な手段を備えていない。このような機能は、望ましいだけではなく、長期の外来患者や在宅療養での使用に不可欠である。また、出口が唯1つであるカテーテルの構造により、カテーテルから酸素が直接、気管を下り、気管支の間の分岐部に向かって移動する。左気管支が右気管支よりも気管に対してより鋭角である気管支の通常の解剖学的構造では、カテーテルからより多くの酸素が右気管支内に送られる傾向にあり、両方の気管支により均等に送られ、混合され、使用されるのではない。また、構造的に酸素が気管分岐部に衝当し、不所望のむずがゆさや咳が起こる。加えて、このような装置では、酸素の相当な部分が気管の後壁に送られると、この部分の粘膜がびらんし、これにより荒れて出血することがある。全体として、装置からの出力が制限されているため、患者が運動している場合、活発に活動している場合、または重篤な場合に酸素を十分には補給できないであろう。
【0010】
慢性閉塞性肺疾患に関連した疾患には、慢性気管支炎や肺気腫がある。気腫肺の1つの特徴は、近接する気嚢間の空気の流通が健常な肺に比べて著しいことである。この現象は、側副換気として知られている。気腫肺の別の特徴は、組織の弾性反発および気道の径方向の支持の喪失により天然の気道から空気を呼気できないことである。本質的に、肺組織の弾性反発の喪失が、患者の完全な呼気を妨げる。また、気道の径方向の支持の喪失により、潰れ現象が呼吸の呼息相で起こり得る。この潰れ現象が、患者の完全な呼気をさらに妨げる。患者の呼気が悪化するにつれて、肺に残る容量が増大する。これにより、肺が過膨張した状態となり、患者が短く浅い呼吸しかできなくなる。本質的に、空気が効率的に呼気されず、古い空気が肺に溜まる。古い空気が肺に溜まると、患者の酸素が欠乏する。
【0011】
現在、慢性閉塞性肺疾患の治療には、気管支拡張剤、上記したような酸素治療、および肺容量減少術がある。気管支拡張剤は、慢性閉塞性肺疾患の一定の患者にしか効果がなく、通常はその効果が短期間である。酸素治療は、上記した理由から実用的ではなく、肺容量減少術は、肺の一部を切除する極端な外傷性処置である。肺容量減少術の長期に亘る恩恵は十分には分かっていない。
【0012】
従って、閉じ込められた気体を除去するための安全かつ効率的な肺へのアクセスが要望されている。
【0013】
〔発明の概要〕
本発明は、簡単に上述したような慢性閉塞性肺疾患に関連した疾患における制限を解消する。
【0014】
一態様に従えば、本発明は、側副換気バイパスシステムを含む。このシステムは、所定の部位の少なくとも一方の肺内に導入されて、閉じ込められた気体を少なくとも一方の肺から除去するための少なくとも1つの導管と、少なくとも1つの導管に連結された、胸膜腔から空気を排気するための排気装置と、排気装置に取り付けられた、局所的胸膜癒着を形成するために動作する手段と、を含む。
【0015】
本発明は、側副換気現象を利用して病変した肺からの呼気の流れを増大させる装置、および胸郭壁の開口によって形成された胸膜腔の空気を排気するために用いることができる装置に関する。空気を排気したら、臓側面と壁側面を互いに接着して胸膜癒着を形成する。この局所的な胸膜癒着の形成により、装置のアクセスポートを介して肺に安全にアクセスすることができる。
【0016】
本発明の装置の側副換気バイパスシステムが胸郭壁を介して肺にアクセスする場合、外部環境または肺から胸膜腔内に空気が漏れて肺が潰れて気胸症になることがある。気胸症のある治療法では、胸膜腔内に外部から負圧をかけて、処置の結果として漏れた空気を排気することができる。この負圧は、漏れが止まるまでかけることができる。最終的に、内側胸郭壁(壁側胸膜)と外側の肺(臓側胸膜)の間の癒着により胸膜腔がシールされる。本質的に、この装置はシステムの組み合わせである。この組み合わせにより、胸郭壁を通る追加の開口を形成しなくても済む。
【0017】
本発明の前記および他の特徴および利点は、添付の図面に例示された以下に示す本発明の好適な実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0018】
〔好適な実施形態の詳細な説明〕
通常は、空気は、鼻孔から鼻腔を通って哺乳動物の体内に進入する。空気が鼻孔および鼻腔を通過する時に、濾過され、湿り、そして体温に近づくように温度調節される。鼻腔の後部が咽頭(喉)につながっているため、空気は、口または鼻腔から咽頭に達することができる。従って、このような器官を有する場合、哺乳動物は鼻または口で呼吸することができる。一般に、口からの空気は、鼻からの空気ほどは濾過および温度調節が十分になされない。咽頭の空気は、咽頭底の開口から喉頭(声帯)内に送られる。飲み込む際に喉頭蓋が咽頭を自動的に閉止するため、固形物および/または液体が下部気道または気道ではなく食道に送られる。空気は、喉頭から気道および気管を経て、気管から分岐した2つの気管支に送られる。気管支は肺につながっている。
【0019】
肺は、胸腔内にある対をなした大きいスポンジ状の弾性器官である。肺は、胸腔壁に接触している。人間の場合、右肺は3葉からなり、左肺は2葉からなる。肺は、全ての哺乳動物で対になっているが、肺の葉または分節の数は哺乳動物によって様々である。健常な肺は、後述するように、ガス/空気交換のために広大な表面積を有する。左肺および右肺の両方が胸膜に覆われている。本質的に、各肺の周りの胸膜が、肺全体を覆う連続的な嚢をなしている。胸膜はまた、胸腔の内層をなしている。胸腔の内層をなしている胸膜と肺を覆っている胸膜との間に胸膜腔が存在する。胸膜腔は、肺と胸郭壁との間の潤滑剤となる流体の膜を含む。
【0020】
肺では、気管支が、細気管支と呼ばれる複数の小脈管に分枝している。一般に、それぞれの肺に100万を超える細気管支が存在する。それぞれの細気管支は、肺胞と呼ばれる極端に小さな空気嚢のクラスターまで延びている。各肺胞壁の内層をなしている上皮細胞の極めて薄い単層と毛細血管壁の内層をなしている上皮細胞の極めて薄い単層が、肺胞内の空気/ガスを血液から分離している。高濃度の酸素分子が、単純な拡散によって肺胞から2つの薄膜を通過して肺毛細血管の血液内に移動する。これと同時に、高濃度の二酸化炭素分子が、単純な拡散によって肺毛細血管の血液から2つの薄膜を通過して肺胞内に移動する。
【0021】
呼吸は、吸気と呼気を伴う機械的な工程である。胸腔は、通常は閉じた系であり、気管を介さない限り、空気が肺に出入りすることができない。胸壁が何らかの理由で損傷して空気/ガスが胸膜腔内に進入すると、通常は、肺が押し潰される。胸腔の容量が横隔膜の収縮で増大すると、肺の容量も増大する。肺の容量が増大すると、肺内の空気の圧力が体外の空気の圧力(大気圧)よりも僅かに低くなる。従って、この僅かな圧力差により、外部の空気すなわち大気が上記したように気道を通って、圧力が等しくなるまで肺に送られる。この工程が吸気である。横隔膜が弛緩すると、胸腔の容量が減少して肺の容量が減少する。肺の容量が減少すると、肺の空気の圧力が体外の空気の圧力よりも僅かに高くなる。従って、この僅かな圧力差により、肺胞内の空気が気道を通って、圧力が等しくなるまで排出される。この工程が呼気である。
【0022】
呼吸器系の継続的な発作により、例えば、慢性閉塞性肺疾患などの様々な疾患が起こり得る。慢性閉塞性肺疾患は、慢性気管支炎および肺気腫によって引き起こされる気道の持続的な閉塞である。慢性閉塞性肺疾患は、米国だけで約1400万人もおり、死因の10位以内である。
【0023】
慢性気管支炎および急性気管支炎は、一定の同様の特徴を有するが、異なった疾患である。慢性気管支炎および急性気管支炎は共に、炎症、および気管支および細気管支の収縮を伴うが、急性気管支炎は、通常は、ウイルス感染および/または細菌感染に関連し、その期間は、慢性気管支炎よりも相当短いのが普通である。慢性気管支炎では、気管支が、吸引した異物に対する生体防御機構の一部として過度の粘液を分泌する。綿毛細胞(毛髪状構造)を含む粘膜が、気管と気管支を覆っている。綿毛細胞すなわち繊毛が、粘膜から分泌される粘液を肺から咽頭に向かって連続的に押し出すすなわち押し流し、そこで定期的に飲み込まれる。繊毛のこの押し流し動作が、肺への異物の侵入を防止している。鼻や喉頭で濾過されなかった異物は、上記したように粘液に捕捉され、繊毛によって咽頭に送られる。過度の粘液が分泌されると、綿毛細胞が損傷し、繊毛が、異物を含む粘液を気管支および気管から効率的に押し流すことができなくなる。これにより、細気管支が収縮して炎症を起こし、患者の呼吸が短くなる。加えて、気道の過度の粘液を除去しようとして患者に慢性咳が起こる。
【0024】
慢性気管支炎の患者は肺気腫を発症することがある。肺気腫は、通常はかなり硬質の構造である肺胞壁が破壊される疾患である。肺胞壁の破壊は回復不能である。肺気腫は、慢性気管支炎、繊毛を損傷させる空気汚染などの吸引した刺激物に対する長期の曝露、酵素欠乏、および他の病理状態を含め、様々な因子によって引き起こされ得る。肺気腫では、肺の肺胞が弾性を失い、最終的に近接する肺胞間の壁が破壊される。従って、肺胞壁が段々失われていくと、肺の空気交換(酸素と二酸化炭素)表面積が減少して空気交換が著しく障害される。慢性閉塞性肺疾患では、粘液の過度の分泌と動的な気道の収縮が組み合わさって空気の流れが制限される。動的な気道の収縮は、肺組織の弾性の低下による気道に対する束縛力の低下から起こる。粘液の過度の分泌については、気管支炎に基づいて既に述べたとおりである。言い換えれば、肺組織の破壊により、肺の反発力が低下し、気道の径方向の支持力が失われる。従って、肺組織の弾性反発の喪失により、患者が完全には呼気できなくなる。また、気道の径方向の支持の喪失により、呼吸の呼息相で潰れ現象が起こり得る。この潰れ現象により、さらに患者が完全には呼気できなくなる。患者の呼気が悪化するにつれて、肺に残る容量が増大する。これにより、肺が過膨張した状態となり、患者が短く浅い呼吸しかできなくなる。本質的に、空気が効率的に呼気されず、古い空気が肺に溜まる。古い空気が肺に溜まると、患者の酸素が欠乏する。肺気腫は治癒するものではなく、運動、気管支拡張剤などの薬物治療、肺容量減少術、および長期の酸素治療を含め、単に様々な治療法があるだけである。
【0025】
上記したように、長期の酸素治療は、慢性閉塞性肺疾患によって引き起こされる低酸素症の標準的な治療法として広く受け入れられている。一般に、酸素治療は、鼻カニューレを用いて行われる。鼻カニューレを使用することにより問題が起こる。鼻カニューレの使用による1つの問題は、カニューレと鼻との間で多量の酸素の損失が起こることであり、酸素源を頻繁に交換しなければならず、またより多くの酸素を供給するためにより大きなエネルギーが必要である。鼻カニューレの使用によるもう1つの問題は、カニューレにより、鼻道が乾燥してひび割れ、痛むことである。
【0026】
経気管酸素治療が、長期酸素治療の実行可能な代替法になった。経気管酸素治療では、気管内に通されたカテーテルを用いて肺に酸素を直接供給する。酸素を直接供給することから、様々な利点が得られる。このような利点として、効率向上による必要な酸素量の低下、可動性の向上、運動性の向上、および自己像の改善を挙げることができる。
【0027】
長期酸素治療システムを用いて、肺への酸素移送効率を最適化するために酸素を肺組織に直接供給することができる。言い換えれば、酸素を肺の肺胞組織内に直接供給すれば、効率を改善することができる。肺気腫では、肺胞壁が破壊されているため、空気交換の表面積が減少している。より多くの肺胞壁が破壊されると、側副換気の抵抗が低下する。言い換えれば、肺気腫により側副換気が増大し、慢性気管支炎によっても側副換気がある程度増大する。本質的に、気腫肺では、近接する気嚢(肺胞)間の側副換気と呼ばれる空気の流通が正常な肺に比べて著しい。組織の弾性反発および気道の径方向の支持の喪失(呼気の際の動的な潰れ)により天然の気道から空気を排気できないため、側副換気が増大しても患者の呼吸は著しくは改善されず、患者は呼吸困難に陥る。従って、側副換気がどの部位で起こっているかが確認できたら、病変肺組織を分離して、その正確な部位に酸素を供給する。例えば、コンピュータ断層撮影すなわちCATスキャン、磁気共鳴映像法すなわちMRI、ポジトロン放出断層撮影すなわちPET、および/または標準的なX線映像法などの様々な方法で、病変組織部位を特定することができる。病変組織の位置が分かったら、加圧酸素をその病変部位に直接供給し、空気交換のために、より効率的かつ効果的に肺組織内に圧入する。
【0028】
図1は、第1の例示的な長期酸素治療システム100を例示している。このシステム100は、酸素源102、酸素導管104、および逆止め弁106を含む。酸素源102は、加圧酸素タンク、液体酸素レザバー、酸素濃縮装置、およびレギュレータなどの圧力および流量の調節に用いる付属装置を含め、調節可能に制御された圧力および流量の下で濾過酸素を供給できる任意の好適な装置を含むことができる。酸素導管104は、連続的な酸素曝露による損傷に対して高い耐性を有する任意の好適な生体適合性配管を含むことができる。酸素導管104は、約1/16〜約1/2インチ(約1.6〜約12.7mm)、より好ましくは約1/8〜1/4インチ(約3.2〜約6.4mm)の範囲の内径を有する管を含む。逆止め弁106は、酸素導管104を介して肺108内に酸素を流すことができるが、肺108から酸素源102には流さない任意の好適なインライン機械弁を含むことができる。例えば、単純なチェッキ弁を用いることができる。図1に例示されているように、酸素導管104は、肺108を通って側副換気が最も重度であると確認された部位に配置される。
【0029】
上記した例示的なシステム100は、インラインフィルターの使用を含め、様々な方法で変更することができる。この例示的な実施形態では、酸素と空気の両方を、システム内を流すことができる。言い換えれば、吸気の際に、酸素導管104を介して酸素が肺に送られ、呼気の際に、酸素導管104を介して空気が肺から排気される。インラインフィルターが、粘液や汚染物質を捕捉し、酸素源102が閉塞するのを防止している。この例示的な実施形態では、弁106を用いていない。肺への酸素の流れと肺からの空気の流れは圧力差によるものである。
【0030】
例示的な長期酸素治療システム100が機能するためには、酸素導管104が胸腔および肺を通過する部分で、気密シールが維持されるようにするのが好ましい。この気密シールは、肺の膨張/機能を持続させるために維持される。気密シールが破れると、空気が胸腔に入って、上記したように肺が潰れる。
【0031】
この気密シールを形成する方法では、肺の臓側胸膜と胸腔の内壁との間を癒着する。これは、ドキシサイクリンおよび/またはブレオマイシンなどの刺激薬を含む化学法、胸膜切除や胸腔鏡タルク胸膜癒着を含む外科法、または放射性金や外部放射を含む放射線療法のいずれかを用いて行うことができる。これらの方法は全て、胸膜を癒着させるための当分野で周知の方法である。換気バイパス部位にシールを形成することで、肺の気胸が起こるリスクなしに介入を安全に行うことができる。
【0032】
造瘻術(ostomy pouches or bags)と同様に、酸素導管104を、換気バイパスの部位で皮膚にシールすることができる。例示的な一実施形態では、図2に例示されているように、酸素導管104を、接着剤を用いて胸郭壁の皮膚にシールすることができる。例示されているように、酸素導管104は、皮膚接触面に対する生体適合性接着コーティングを有するフランジ200を含む。この生体適合性接着剤が、フランジ200と胸郭壁の皮膚すなわち表皮との間の流体密閉シールとなる。好適な実施形態では、生体適合性接着剤は、酸素導管104を換気バイパス部位から取り外せるように一時的な流体密閉シールを形成する。こうすることにより、換気バイパス部位を清掃することができ、かつ長期酸素治療システム100を定期的にメンテナンスすることができる。
【0033】
図3は、換気バイパス部位における胸郭壁の皮膚に対して酸素導管104をシールするための別の例示的な実施形態を例示している。この例示的な実施形態では、結合プレート300が、生体適合性接着コーティングまたは任意の他の好適な手段によって換気バイパス部位の皮膚にシールされている。酸素導管104が、螺合および固定リングを含め、任意の好適な手段で結合プレート300に結合されている。この例示的な実施形態でも、換気バイパス部位の清掃とシステム100のメンテナンスが可能である。
【0034】
図4は、換気バイパス部位における胸郭壁の皮膚対して酸素導管104をシールするためのさらに別の例示的な実施形態を例示している。この例示的な実施形態では、バルーンフランジ400を用いてシールを形成することができる。バルーンフランジ400は、収縮した状態で酸素導管104およびバルーンフランジの1つが換気バイパス吻合部を通過させて酸素導管104に取り付けることができる。バルーンフランジ400は、胸郭壁の両側にフランジが維持されるように互いに十分な距離離間している。膨張させると、バルーンが膨張して胸郭壁を挟んで流体密閉シールを形成する。この例示的な実施形態も同様に、酸素導管104を容易に取り外すことができる。
【0035】
図5は、換気バイパス部位における胸郭壁の皮膚に対する酸素導管104をシールするためのさらに別の例示的な実施形態を例示している。この例示的な実施形態では、単一バルーンフランジ500が固定フランジ502と共に用いられている。バルーンフランジ500は、上記した要領で酸素導管104に結合されている。この例示的な実施形態では、バルーンフランジ500は、膨張すると流体密閉シールを形成する。胸郭壁の皮膚に維持される固定フランジ502は、シールを形成するためにバルーンによって圧力が加えられる構造的な支持体となっている。
【0036】
患者が呼気するのが困難で追加の酸素が必要な場合は、側副換気バイパスを直接酸素治療と共に用いることができる。図6は、側副換気バイパス/直接酸素治療システム600の例示的な実施形態を例示している。システム600は、酸素源602、2本の分岐管606および608を有する酸素導管604、および制御弁610を含む。酸素源602および酸素導管604は、図1に例示されている上記した例示的な実施形態と同様の構成要素を含むことができる。この例示的な実施形態では、患者が吸気すると、弁610が開いて、酸素が肺612および気管支614に流れる。代替の例示的な実施形態では、分岐管608を気管616に接続することができる。従って、吸気の際に酸素が、一方または両方の肺の病変部位に流れると共に、正常な気管を介して肺の他の部分にも流れる。呼気の際、弁610が閉じるため、酸素は供給されず、肺の病変部位の空気が肺612から一方の分岐管606および第2の分岐管608を経て気管支616に送られる。この方式では、古い空気が除去され、酸素が直接供給される。ここでも同様に、上記したように、酸素と空気の流れが単純な圧力差によって制御される。
【0037】
肺612および気管支614に対する酸素導管604および分岐管606、608の結合およびシールは、上記した要領と同様の要領で行うことができる。
【0038】
上記した長期酸素治療システムを用いて、慢性閉塞性肺疾患によって引き起こされる低酸素症を効果的に治療することができるが、この疾患の別の面を治療するには他の手段が望ましいであろう。上記したように、気腫は、肺組織に回復不可能な損傷を与えるという特徴を持つ。肺組織の破壊により、肺の反発力が低下する。また、このような組織の破壊により、天然の気道の径方向の支持が失われる。従って、肺組織の弾性反発の喪失により、気腫の患者が完全には呼気できなくなる。また、気道の径方向の支持の喪失により、呼吸の呼息相で潰れ現象が起こり得る。この潰れ現象により、患者の呼気がさらに妨げられる。呼気能力が低下するにつれて、肺の残気容量も増大する。これにより、肺が過膨張した状態となり、患者が短く浅い呼吸しかできなくなる。
【0039】
側副換気バイパストラップシステムが、上記した側副換気現象を利用して病変した一方または両方の肺からの排気の流れを増大させ、慢性閉塞性肺疾患の別の面を治療することができる。本質的に、一方または両方の肺の最も側副換気されている部位は、上記したスキャニング技術で特定することができる。このような1または複数の部位の位置が分かったら、1または複数の導管を、病変した一方または両方の肺の外側胸膜層にアクセスできる通路に配置する。導管は、一方または両方の肺の側副換気を利用して閉じ込められた空気を天然の気道にバイパスし、これにより、空気が、体外の格納システムに排出される。
【0040】
図7は、第1の例示的な側副換気バイパストラップシステム700を例示している。このシステム700は、トラップ702、空気導管704、およびフィルター/逆止め弁706を含む。空気導管704により、フィルター/逆止め弁706を介してトラップ702と患者の肺708との間が連通している。1つの空気導管704が例示されているが、2つ以上の高い側副換気の部位が確認された場合は、それぞれの肺708に複数の空気導管を用いることができる。
【0041】
トラップ702は、患者の一方または両方の肺708からの排泄物を収集するための任意の好適な装置を含むことができる。本質的に、トラップ702は、肺に蓄積され得る粘液や他の流体などの肺からの排泄物を一時的に貯蔵するための単純な格納容器である。トラップ702は、任意の好適な形状を有することができ、任意の好適な金属または非金属の材料から形成することができる。トラップ702は、軽量の非腐食性材料から形成するのが好ましい。加えて、トラップ702は、効果的かつ効率的に清掃できるようにデザインすべきである。例示的な一実施形態では、トラップ702は、トラップ702が一杯になったら除去することができる使い捨ての内層を含むことができる。トラップ702は、いつ空になるかまたはいつ清掃すべきかを容易に判断できるように、透明な材料から形成したり、表示窓を設けたりすることができる。軽量トラップ702により、患者の可動性が向上する。
【0042】
フィルター/逆止め弁706は、コンプレッサーの接続に一般的に利用されているねじ込み継手または圧縮型継手を含め、任意の好適な手段でトラップ702に取り付けることができる。フィルター/逆止め弁706は、様々な機能を果たす。フィルター/逆止め弁706により、流体排泄物または固体粒状物質をトラップ702内に維持したまま、空気を患者の一方または両方の肺708からトラップ702に排気できる。フィルター/逆止め弁706は、肺708からトラップ702への空気の流れをこの一方向に維持されるように、トラップ702内の圧力を患者の一方または両方の肺708の内部の圧力よりも必ず低く維持すべきである。フィルター/逆止め弁706のフィルター部分は、空気中に浮遊している特定のサイズの粒子状物質を捕捉するが、清浄な空気は通過して外気に排気されるようにデザインすることができる。フィルター部分はまた、排気される空気の湿分を減らすようにデザインすることもできる。
【0043】
空気導管704により、トラップ702がフィルター/逆止め弁706を介して患者の一方または両方の肺708に連結されている。空気導管704は、空気中に含まれるガスに対する耐性を有する任意の好適な生体適合性の管を含むことができる。空気導管704は、約1/16〜約1/2インチ(約1.6〜約12.7mm)、より好ましくは約1/8〜1/4インチ(約3.2〜約6.4mm)の範囲の内径を有する管を含む。フィルター/逆止め弁706は、空気を、空気導管704を介して一方または両方の肺708から流すが、トラップ702から肺708には逆流させない任意の好適な弁を含むことができる。例えば、単純なチェッキ弁を用いることができる。空気導管704は、任意の好適な手段でフィルター/逆止め弁706に接続することができる。メンテナンスのためにトラップを容易に取り外すことができるように迅速解除機構を利用するのが好ましい。図7に例示されているように、空気導管704は、肺708を通って側副換気が最も重度であると確認された部位に配置されている。2つ以上の部位が確認された場合は、複数の空気導管704を用いることができる。フィルター/逆止め弁706に対する複数の空気導管704の接続は、スキューバダイビングのレギュレータに用いられるのに類似したオクトパス装置を含め、任意の好適な手段で行うことができる。
【0044】
空気導管704は、所定の位置に配置されても押し潰す力に耐えることができるのが好ましい。空気が導管704内を流れるため、導管704が潰れて回復しなければ、システムの有効性が損なわれてしまう。従って、空気導管704が圧潰しても回復できるように、空気導管704に圧潰回復材料を含めることができる。任意の好適な材料を用いることができる。例えば、ニチノールを空気導管704に含めると、導管圧潰耐性および圧潰回復性が得られる。
【0045】
導管704の端部の膨張特性を利用して、導管704の肺胸膜への接触の維持およびシールを容易にすることができる。導管704に含められたニチノールにより、導管704を圧縮された状態で目的の部位に送り、拡張した状態にして配置し、所定の位置に固定できる。空気導管の端部の肩が、詳細を後述するように、挿入に対する機械的なストッパーの領域、および接合部に対する接着/密封剤の領域となる。
【0046】
例示的な側副換気バイパストラップシステム700が動作するように、空気導管704が胸腔および肺708を通過する部分で気密シールが維持されるようにするのが好ましい。肺の膨張/機能を持続するために、気密シールが維持される。気密シールが破れると、空気が胸腔に入って肺が潰れる。気密シールを形成するための例示的なある方法では、肺の臓側胸膜と胸腔の内壁との間を癒着させる。これは、ドキシサイクリンおよび/またはブレオマイシンなどの刺激薬を含む化学法、胸膜切除や胸腔鏡タルク胸膜癒着を含む外科法、または放射性金や外部放射を含む放射線療法のいずれかを用いて行うことができる。これらの方法は全て、胸膜を癒着させるための当分野で周知の方法である。別の代替の例示的な実施形態では、空気導管704と外側胸膜層との間の気密接合に、空気導管704の接着/シールに役立つ様々な接着剤が用いられる。現在、フォーカル社(Focal Inc.)が、Focal/Seal‐Lという商標で、気密目的のために肺に用いられる密封剤を販売している。Focal/Seal‐Lは、光に反応して硬化する。サージカル・シーランツ社(Surgical Sealants Inc.)がThorexという商標で販売している別の密封剤が現在、肺用の密封剤として臨床試験を受けている。Thorexは、2つの成分からなり、混合した後に一定時間で硬化する。
【0047】
胸腔における開口は、様々な方法で形成することができる。このような外科処置には、例えば、開胸処置、胸骨切開術、または開胸術を用いることができる。別法では、このような外科処置は、侵襲性が低い腹腔鏡手術で行うことができる。使用する方法に関係なく、固体接着面を維持するために少なくとも部分的に肺が膨張した状態でシールすべきである。導管部分と肺胸膜面との間に十分な接合がなされた後で開口を形成することができる。この開口の断面積は、過膨張した肺を十分に収縮させるのに十分な大きさとすべきである。上記したようにこの開口は、切開、突刺、拡張、鈍器切開、無線周波数エネルギー、超音波エネルギー、マイクロ波エネルギー、または凍結焼灼エネルギー(cryoblative energy)などの様々な方法で形成することができる。
【0048】
空気導管704は、図2‐図5に例示されているように酸素導管704を用いて上記した任意の手段および方法で皮膚の所定部位にシールすることができる。
【0049】
動作の際には、患者が呼気すると、肺の圧力がトラップ702の圧力よりも高くなる。従って、肺の最も重度の側副換気部位の空気が空気導管704を通ってトラップ702に送られる。これにより、患者がより容易かつ完全に呼気することができる。
【0050】
側副換気の現象を利用して病変した肺からの呼気を増大させるための上記した例示的な装置および方法では、肺の1または複数の最も重度の側副換気部位にアクセスするべく肺の外側胸膜を穿刺するための最適な位置が存在する。上記したように、肺の1または複数の最も重度の側副換気部位の位置を求める様々な方法が存在する。装置の機構または構成要素により、肺に閉じ込められた空気を天然の気道にバイパスして体外に排気できるため、壁(胸郭壁)側胸膜と臓(肺)側胸膜を気密シールするのが特に有利である。装置と壁側胸膜と臓側胸膜の間に適切な気密シールが形成されないと、気胸症(潰れた肺)が起こる恐れがある。本質的に、肺が突刺されて装置が挿入された状態では、気密シールを維持するのが好ましい。
【0051】
気密シールを形成する1つの方法は、胸膜癒着すなわち胸膜腔の閉塞である。胸膜癒着法は、化学法、外科法、および放射線療法を含め、多数存在する。化学的な胸膜癒着法では、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ブレオマイシン、またはナイトロジェンマスタードなどの薬物を用いることができる。外科的な胸膜癒着法では、胸膜切除または胸腔鏡タルク処置を行うことができる。放射線療法では、放射性金または外部放射を用いることができる。本発明では、化学的な胸膜癒着法を用いる。
【0052】
上記した装置の適切な気密シールが確実に得られるように局所的に化学物質または薬物を送達するための例示的な装置および方法は次の通りである。化学物質、薬物、および/または化合物を用いて、壁側胸膜と臓側胸膜との間に胸膜癒着を形成し、装置の構成要素を特定の部位に突刺し、気胸症にならないようにする。胸膜腔に胸膜癒着を形成するために用いることができる化学物質、薬物、および/または化合物は多数存在する。化学物質、薬物、および/または化合物の例として、タルク、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ブレオマイシン、およびミノサイクリンを挙げることができる。
【0053】
例示的な一実施形態では、改良型ドラッグデリバリーカテーテルを用いて、化学物質、薬物、および/または化合物を、胸膜癒着を形成する局所部位に送達する。この例示的な実施形態では、胸膜癒着を形成し、次いで、図7に例示されているように導管704を、胸膜癒着部位を介して肺708に通す。ドラッグデリバリーカテーテルは、局所胸膜癒着を形成するための侵襲性が最も低い手段である。図8を参照すると、本発明に従って用いることができるドラッグデリバリーカテーテルの例示的な実施形態が例示されている。任意の数のドラッグデリバリーカテーテルを用いることができる。加えて、カテーテルの先端部は、あらゆる好適な大きさ、形状、または構造を有することができるため、あらゆる大きさ、形状、または構造の胸膜癒着を形成できる。
【0054】
図8に例示されているように、カテーテル800が患者の体内に挿入され、先端部802が胸郭壁808と肺806との間の胸膜腔804に配置されている。この例示的な実施形態では、カテーテル800の先端部802は、矢印810によって示されているように実質的に円形の内径に向かって化学物質、薬物、および/または化合物を放出できる実質的に円形の形状を有する。カテーテル800の先端部802は、複数の孔すなわち開口812を含み、これらの開口を介して化学物質、薬物、および/または化合物を放出できる。上記したように、先端部802は、任意の好適な大きさ、形状、または構造を有することができる。化学物質、薬物、および/または化合物が放出されたら、導管704(図7)を移植できるようにカテーテル800を除去する。別法では、導管704の送達を容易にするためにカテーテル800を用いることができる。
【0055】
カテーテル800の先端部すなわち先端802は、胸膜腔内に配置されたら、その所望の大きさ、形状、および/または構造を維持するのが好ましいであろう。これは、様々な法方法で達成することができる。例えば、カテーテル800の先端部802を形成する材料は、カテーテル800を挿入するためのある程度の可撓性および配置された後で元の形状またはプログラムされた形状を取ることができるある程度の形状記憶特性を有するように選択される。このような特性を有するあらゆる種類の生体適合性ポリマーを用いることができる。代替の実施形態では、別の材料を用いることもできる。例えば、形状記憶特性を有する金属材料を、カテーテル800の先端部802に含めることができる。この金属材料は、ニチノールまたはステンレス鋼を含むことができる。加えて、この金属材料は、放射線不透過性とする、または放射線不透過性マーカーを含むことができる。放射線不透過性材料または放射線不透過性マーカーを有することで、カテーテル800をX線透視下で確認でき、いつカテーテル800が最も重度の側副換気部位に達するかの決定が容易になる。
【0056】
別の代替の例示的な実施形態では、局所ドラッグデリバリー装置を用いて、胸膜癒着用の化学物質、薬物、および/または化合物を送達することができる。この例示的な実施形態では、胸膜癒着が形成され、図7に例示されているように導管704が胸膜癒着を介して肺708に配置されている。この例示的な実施形態では、化学物質、薬物、および/または化合物を移植用医療装置に付加することができる。次いで、この医療装置を、胸膜腔の特定の部位に移植し、化学物質、薬物、および/または化合物を放出させて胸膜癒着を形成する。
【0057】
上記した化学物質、薬物、および/または化合物のいずれも医療装置に付加することができる。化学物質、薬物、および/または化合物は、任意の好適な手段で医療装置に付加することができる。例えば、化学物質、薬物、および/または化合物は、スピンコーティング、スプレー、または浸漬を含む様々な周知の技術で医療装置にコーティングする、医療装置の外面に含浸する、医療装置の孔または空洞部の中に導入する、医療装置の表面に設けられたポリマーマトリックス内に組み入れる、医療装置の表面にコーティングしてから、その放出を制御する拡散障壁となるポリマー層をコーティングする、医療装置を形成する材料内に直接含める、またはこれらの方法の任意の組み合わせを用いることができる。別の代替の実施形態では、医療装置は、分解する時に化学物質、薬物、および/または化合物を溶出する生体分解性材料から形成することができる。
【0058】
この移植用医療装置は、任意の好適な大きさ、形状、および/または構造を含むことができ、任意の好適な生体適合性材料から形成することができる。図9は、移植用医療装置900の例示的な一実施形態を例示している。この実施形態では、移植用医療装置900は、実質的に円柱のディスク900を含む。このディスク900は、胸郭壁904と肺906との間の胸膜腔902内に配置されている。この位置に配置されると、ディスク900は、胸膜癒着を形成する化学物質、薬物、および/または化合物を溶出する、または他の方法で放出する。放出速度は、例えば、ポリマー拡散障壁などの上記した任意の様々な技術で正確に制御することができる。また、上記したように、ディスク900は、分解または溶解する時に化学物質、薬物、および/または化合物を溶出する生体分解性材料から形成することができる。非生体分解性ディスク900を、胸膜癒着が形成された後に胸膜腔902から除去すべきか否かは、ディスク900の製造に用いる材料による。例えば、ディスク900は、胸膜癒着と一体化する永久移植が好ましい。
【0059】
前出の例示的な実施形態で説明したように、ディスク900は、放射線不透過性マーカーを含む、または放射線不透過性材料から形成することができる。放射線不透過性マーカーまたは放射線不透過性材料により、ディスク900を蛍光透視下で確認して正確に配置することができる。
【0060】
さらに別の代替の例示的な実施形態では、化学物質、薬物、および/または化合物の流体特性を変更することができる。例えば、化学物質、薬物、および/または化合物の粘度を高く製造することができる。粘度の高い化学物質、薬物、および/または化合物を用いることで、胸膜腔の所望の位置からずれる可能性を小さくすることができる。化学物質、薬物、および/または化合物は、放射線不透過性成分を含むこともできる。化学物質、薬物、および/または化合物を放射線不透過性にすることにより、側副換気の最適な位置に対する化学物質、薬物、および/または化合物の位置を確認できる。
【0061】
上記したように変更した化学物質、薬物、および/または化合物は、標準的な化学的な胸膜癒着装置および方法または上記した例示的な実施形態に用いることができる。
【0062】
さらに別の代替の例示的な実施形態に従えば、局所胸膜癒着排気装置を用いて、気胸症が起こらないように胸膜腔内の空気を排気することができる。肺に開口を形成することなく、胸郭壁を介して胸膜腔内にアクセスすることができる。この方法では、胸膜腔内への空気漏れの通路のみが、胸郭壁アクセスを介している。胸膜排出カテーテルまたは胸腔チューブと同様に、装置を、胸郭壁を介して配置し、胸膜腔内に漏れた空気を排気して気胸症を防止することができる。加えて、この装置が胸膜腔に残された場合、その周りに癒着部を形成し、これにより局所胸膜癒着が形成される。この装置が配置されて胸膜癒着が形成されると、上記した任意の装置を配置するために肺に安全にアクセスすることができるようになり、通常は肺にアクセスして、例えば、薬物を送達する。本質的に、本発明の局所胸膜癒着排気装置は、局所的な排気領域を形成し、次いで局所的な癒着領域を形成する。加えて、この装置は、癒着を誘導し得る化学物質または薬物を送達して癒着部を形成し、この癒着部内に肺へアクセスできる通路を形成できるように構成することができる。
【0063】
現在、胸膜腔から流体を排出できる装置が存在する。このような装置の例として、デンバー・バイオメディカル(Denver Biomedical)の胸膜排出カテーテル(Pleura Drainage Catheter)およびハイムリック弁(Heimlich)を備えた単純な胸腔チューブを挙げることができる。これらの装置が長寸のチューブ装置であるため、装置の周りに形成される癒着部は小さく、予測できない。本発明では、この装置の排出要素は、胸郭壁を通るアクセス点と同軸であるのが好ましい。従って、装置の周りに形成される癒着部が、実質的にアクセス点を取り囲む。これにより、気密を保って肺にアクセスでき、気胸症を防止できる。言い換えれば、癒着部およびアクセス点の位置は問題とならない。
【0064】
図10aおよび図10bを参照すると、本発明に従った局所胸膜癒着排気装置1000の例示的な実施形態が例示されている。この装置1000は、アクセスポート1002および排気構造1004を含む。排気装置1000は、外科的介入すなわちトロカールを用いた最も侵襲性の低い配置を含め、様々な周知の方法を用いて胸膜腔内に挿入することができる。排気装置1000は、肋骨1006間の肋間腔または2つ以上の肋骨間に形成された人工ブリッジに配置することができる。排気装置1000は、アクセスポート1002と胸郭壁の皮膚との間にシールを形成するために外側シール1008を含むこともできる。シール1008は、上記したような任意の好適な装置を含むことができる。アクセスポート1002は、あらゆる好適な構造をとることができ、肺にアクセスするための任意の数の装置を受容できる大きさにするのが好ましい。例示的な実施形態では、アクセスポートは実質的にチューブ構造である。排気構造1004は、アクセスポート1002の周りに同軸的に配置されている。排気構造1004は、臓側胸膜1010に近接して壁側胸膜1012と臓側胸膜1010との間に位置する。例示的な実施形態では、排気構造1004は、アクセスポート1002に連通した複数の孔1014を備えた実質的に平坦なディスクを含む。胸膜腔内の空気が、孔1014に入り、アクセスポート1002を介して体外に出る。任意の数の弁および/または逆流防止フラップを用いて、空気が胸膜腔から流出するが胸膜腔内へは流入しないようにすることができる。空気が胸膜腔から排気されると、壁側胸膜と臓側胸膜が接触して、図10bに例示されているように、気胸症のリスクがかなり低下する。一定時間が経過すると、排気構造1004の周りに癒着部が形成される。癒着部が形成されたら(胸膜癒着)、空気漏れの点で安全に肺にアクセスすることができる。
【0065】
アクセスポート1002および排気構造1004は、あらゆる好適な生体適合性材料から形成することができる。排気構造1004は、上記したように癒着形成を促進する化学物質でコーティングする、またはそのような化学物質を含めることができる。排気装置1000は、所望に応じて排気構造1004の孔1014から放出できる癒着形成化学物質を送達するための別個の装置を含むこともできる。排気構造は、吸収性材料から形成することもできる。
【0066】
別の例示的な実施形態に従えば、側副換気バイパスシステムを排気装置に組み合わせることができる。上記したように、肺の最も重度の側副換気部位を上記したスキャニング法で決定する。最も重度の側副換気部位の位置を求めたら、装置を、病変した肺の外側胸膜層にアクセスできる通路に配置する。この装置は、肺の側副換気を利用して閉じ込められた空気を天然の気道にバイパスし、図7に例示されているように体外の格納システムまたは単純に周囲環境に排気することができる。しかしながら、二次装置を側副換気バイパスシステムと組み合わせて、空気を胸膜腔内に排気することもできる。
【0067】
側副換気バイパスシステムが胸郭壁を介して肺にアクセスする場合、外部環境から胸膜腔内への空気漏れ、または肺から胸膜腔内への空気漏れにより、肺が潰れ気胸症が起きる可能性がある。この例示的な実施形態に従えば、結果として起こる気胸症を治療する1つの方法では、胸膜腔内に外部から負圧をかけて、結果として溜まった空気を排気することができる。この負圧は、漏れが止まるまでかけることができる。最終的に、内側胸郭壁(壁側胸膜)と外側の肺(臓側胸膜)との間の癒着すなわち胸膜癒着により胸膜腔がシールされる。壁側胸膜と臓側胸膜との接触が必ずなされるのが好ましい。このシールにより、側副換気バイパスシステムが適切に機能し得る。2つのシステムまたは装置を組み合わせることで、患者の胸部を通る追加のアクセスポートを設けなくて済む。
【0068】
図11aおよび図11bを参照すると、本発明に従った装置1100が例示されている。装置1100は、側副換気バイパスシステム1102および排気装置1104を含む。側副換気バイパスシステム1102は、肺の空気をトラップシステムまたは外部環境に排気できる任意の好適な装置とすることができる。システム1102は、空気が誤った方向に流れるのを防止するために単純に導管および逆止め弁を含むことができる。別法では、システム1102は、図7に例示されているシステムに類似したより複雑な装置にすることができる。システム1102は、胸壁を介して肺実質組織1106内に挿入することができる。システム1102を、図示されているように肋骨1108間の肋間腔、肋骨1008、または肋骨1108間のブリッジ要素(不図示)を通過させることができる。排気装置1104は、胸膜腔1110内の空気をバイパスシステム1102を介して排気できるように、バイパスシステム1102に連結するのが好ましい。この例示されている例示的な実施形態では、排気装置1104は、胸膜腔内に延在する導管を単純に含む。他の実施形態を用いることもできる。全ての構成要素は、類似の生体適合性材料または上記した材料から形成される。図11aは、壁側胸膜1112と臓側胸膜1114との間の空間を例示している。全ての空気が排気されると、図11bに例示されているように胸膜腔1110がなくなる。
【0069】
代替の例示的な実施形態では、図10aおよび図10bに例示されているディスク1014に類似したディスクを、上記したように図11aおよび図11bに例示されている導管の代わりに用いることができる。
【0070】
最も実用的な実施形態および好適な実施形態と考えられる実施形態を図示および説明したが、当業者には、図示および説明した特定のデザインおよび方法の変更が可能であることが明らかであり、このような変更を本発明の概念および範囲から逸脱することなく利用することができるであろう。本発明は、記載および例示した特定の構造に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内となる全ての変更を含むと解釈すべきである。
【0071】
〔実施の態様〕
(1)側副換気バイパスシステムであって、
少なくとも1つの肺から閉じ込められた気体を除去するために、所定の部位の前記少なくとも1つの肺の中に延在する少なくとも1つの導管と、
胸膜腔から空気を排気するために前記少なくとも1つの導管に連結された排気装置と、
局所的な胸膜癒着を形成するように動作する前記排気装置に取り付けられた手段と、を含む、側副換気バイパスシステム。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に従った長期酸素治療システムの第1の例示的な実施形態を示す線図である。
【図2】本発明の長期酸素治療システムと共に用いられる密閉装置の第1の例示的な実施形態を示す線図である。
【図3】本発明の長期酸素治療システムと共に用いられる密閉装置の第2の例示的な実施形態を示す線図である。
【図4】本発明の長期酸素治療システムと共に用いられる密閉装置の第3の例示的な実施形態を示す線図である。
【図5】本発明の長期酸素治療システムと共に用いられる密閉装置の第4の例示的な実施形態を示す線図である。
【図6】本発明に従った長期酸素治療システムの第2の例示的な実施形態を示す線図である。
【図7】本発明に従った側副換気バイパストラップシステムの第1の例示的な実施形態を示す線図である。
【図8】局所胸膜癒着用化学物質デリバリーシステムの第1の例示的な実施形態を示す線図である。
【図9】局所胸膜癒着用化学物質デリバリーシステムの第2の例示的な実施形態を示す線図である。
【図10】本発明に従った局所胸膜癒着排気装置を示す線図である。
【図11】例示的な側副換気装置と胸膜チューブ/排気装置の組み合わせを示す線図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側副換気バイパスシステムであって、
閉じ込められた気体を少なくとも一方の肺から除去するために、所定の部位の前記少なくとも一方の肺の中に延在する少なくとも1つの導管と、
胸膜腔から空気を排気するために前記少なくとも1つの導管に連結された排気装置と、
局所的な胸膜癒着を形成するように機能する前記排気装置に取り付けられた手段と、を含む、側副換気バイパスシステム。
【請求項1】
側副換気バイパスシステムであって、
閉じ込められた気体を少なくとも一方の肺から除去するために、所定の部位の前記少なくとも一方の肺の中に延在する少なくとも1つの導管と、
胸膜腔から空気を排気するために前記少なくとも1つの導管に連結された排気装置と、
局所的な胸膜癒着を形成するように機能する前記排気装置に取り付けられた手段と、を含む、側副換気バイパスシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−167459(P2006−167459A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−356696(P2005−356696)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(500304486)ニチノル・デベロップメント・コーポレーション (18)
【氏名又は名称原語表記】Nitinol Development Corporation
【住所又は居所原語表記】47533 Westinghouse Drive, Fremont, California 94539, U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356696(P2005−356696)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(500304486)ニチノル・デベロップメント・コーポレーション (18)
【氏名又は名称原語表記】Nitinol Development Corporation
【住所又は居所原語表記】47533 Westinghouse Drive, Fremont, California 94539, U.S.A.
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]